説明

自己免疫疾患および変性疾患を治療する方法

【課題】自己免疫疾患、変性疾患、および移植片対宿主病などの症状を治療する方法の提供。
【解決手段】エフェクターT細胞の産生を阻害し、該細胞の機能および/または活性を制限する薬剤を含む、エフェクターT細胞の産生により特徴付けられる疾患の治療用医薬。該治療は、患者をモニタリングすることにより免疫系の周期的変化を分析するステップ、および該患者を、該疾患を治療する薬剤に曝すステップを含む。該疾患は自己免疫疾患または移植拒絶であり;該薬剤は、抗増殖薬、抗代謝薬、照射、dsRNAおよび抗体からなる群より選択され;該薬剤は、エフェクターT細胞の拡大が起こらないように、および/またはエフェクターT細胞の数が減少または消滅するように、エフェクターT細胞がクローン増殖し始める時、または直前に投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
多数の疾患はエフェクター細胞の産生と関係がある。本発明は、これらの疾患においてエフェクター細胞が周期的変化(cycling)をすることの認識に関する。さらに、本発明は変性疾患においてレギュレーター細胞が周期的変化をすることの測定に関する。これらの認識に基づいて、本発明は、自己免疫疾患、変性疾患および移植片対宿主病などの症状を治療する方法を提供する。本発明はまた、治療薬を患者に投与すべき時を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
自己免疫疾患
多数の自己免疫疾患は、特定組織の細胞がTリンパ球の標的になる時に発症する(総説についてはSantamaria、2001を参照)。いくつかの事例では、Tリンパ球は、Fas、パーフォリン、またはその両方を含む細胞性細胞傷害性過程を介して組織損傷に直接作用する。パーフォリンが仲介する溶解は、Tリンパ球上の抗原特異的T細胞受容体と、標的細胞の形質膜上のMHC分子に提示される特定抗原(通常、ペプチド)との間の同種相互作用を必要とする。Fasが仲介する細胞傷害性は、標的細胞上のFasとT細胞上のFasリガンド(FasL)とのライゲーションを含むが、エフェクターリンパ球とその標的との間の同種相互作用を必要としないので、潔白な周辺細胞に障害を与える可能性がある。他の事例では、Tリンパ球は標的細胞上のプロアポトーシス受容体と結合しうるサイトカインを分泌することによりその標的を死滅させる。他の事例では、自己反応性リンパ球は、非リンパ球が仲介する死-エフェクター機構に対する感受性を高めることにより、標的組織中へのさらなる炎症性細胞(すなわち細胞傷害性マクロファージ)の補充を促進することにより、または、自己反応性B細胞の、自己抗体分泌性形質細胞への分化を駆動することにより、その標的を間接的に死滅させる。
【0003】
自己免疫のエフェクター経路について現在知られていることの多くは、自己免疫疾患の自然発生的実験モデルから学んできた。非肥満性糖尿病(NOD)マウスにおける1型糖尿病(T1D)は自然発生的器官特異的自己免疫のプロトタイプモデルである。NODマウスは、Tリンパ球による膵臓β細胞の破壊から生じるヒトT1Dに酷似する自己免疫糖尿病の型を自発的に発生する。
【0004】
CD8+T細胞欠損NODマウスの研究は、T1Dにおける最初のβ細胞侵襲が細胞傷害性CD8+T細胞により果たされることを示している。いくつかのT1Dのトランスジェニックモデルは、CD8+T細胞がトランスジェニック腫瘍抗原(neo-antigen)を発現するβ細胞を容易に死滅させうることを示したが、NODマウス中のβ細胞を死滅させるCD8+T細胞の抗原特異性についてはあまり判っていない。Wongら(1999)は、若年NODマウスのランゲルハンス島のインスリン由来のペプチドを認識するCD8+T細胞亜集団が存在することを報じた。さらに、ヒト糖尿病患者および膵臓同系移植レシピエントからの膵臓の免疫病理学的研究は、ヒトT1D中のβ細胞の破壊が、少なくとも部分的には、CD8+エフェクターT細胞によっても行われることを示した(Bottazzoら、1985)。
【0005】
CD8+エフェクターT細胞はまた、甲状腺の自発性自己免疫疾患の発症に関わる。橋本甲状腺炎は、例えば、CD8+T細胞による甲状腺濾胞細胞の破壊からもたらされる(Bretzら、1999)。また、NODおよびNOD-H2h4マウスにおけるヨウ素が誘発する甲状腺炎の発症がCD8+T細胞の寄与を必要とすることも報じられている(Vermaら、2000)。T1Dにおけるように、甲状腺自己免疫疾患の発症はまたCD4+T細胞も関わる。
【0006】
実験自己免疫脳脊髄炎(EAE)は、ヒト多発性硬化症のモデルとなるプロトタイプの実験自己免疫疾患であって、この疾患は感受性げっ歯類系統においてミエリン塩基性タンパク質、プロテオリピド抗原またはミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質(MOG)による免疫感作後に発生する。確証はCD8+T細胞が疾患進行および重篤度に或る役割を果たすことを示す(Goverman、1999による総括を参照)。ミエリン塩基性タンパク質はin vivoでMHCクラスI経路によりプロセシングを受け、そしてMOG由来のペプチドが脳炎惹起性CD8+T細胞を活性化する。また、活性多発性硬化症病変におけるCD8+T細胞のクローン増殖の証拠もある(Babbeら、2000)。
【0007】
多数の自己免疫障害において、Tリンパ球は、自己免疫の間接的エフェクターとして、Bリンパ球の自己抗体分泌形質細胞への分化を駆動することによりまたは標的細胞から自己抗原をシェディングする(shedding)ことにより機能する。これらの疾患としては、とりわけ、自己免疫溶血性貧血、自己免疫血小板減少性紫斑病、グレーヴズ病、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、尋常性天疱瘡および全身エリテマトーデスが挙げられる。
【0008】
移植片対宿主病
移植片対宿主病は多段階プロセスである。エフェクターT細胞がこの疾患の誘導に中心的な役割を果たすことが示されている。「誘導期」に、エフェクターT細胞はアロ抗原不同性を確認し、次いで活性化され、そしてクローン増殖が起こる(「増殖期」)。これらのT細胞は次いでサイトカインおよび恐らくケモカイン(例えばマクロファージ炎症性タンパク質1α)を放出し、「動員(recruitment)期」に他の細胞型(マクロファージ、顆粒球、ナチュラルキラー細胞など)を動員する。最後にT細胞と他の細胞型は、移植片対宿主病に関連する病理を仲介する(「エフェクター期」)(総説はMurphyおよびBlazar、1999を参照)。
【0009】
移植片対宿主病のエフェクター機構の説明に研究の重点がおかれてきた。T細胞および他の細胞は、FasL、パーフォリン-グランザイム-BまたはTNFを介して、そのエフェクター機能を仲介する。最近、ノックアウトマウスの使用により、移植片対宿主病のエフェクター期におけるこれらの経路それぞれに対する中心的な役割が実証された。FasLおよびパーフォリン-グランザイム-Bは固体器官病理に対して非常に重要であるが、TNFは移植片対宿主病に関連する萎縮/体重減少を仲介するようである。TNFはまた、他のサイトカインとともに、条件付け後に誘導されるようであり(Hillら、1997)、ドナーまたはレシピエントにより誘発されたサイトカインが移植片対宿主病に影響を与えることが実証されている。TNF受容体ノックアウトマウスおよび抗TNF抗体の使用は移植片対宿主病モデルにおいて保護作用を有することが示されている(Speiserら、1997)。
【0010】
変性疾患
アルツハイマー病などの変性疾患に炎症または免疫系は介在しないと古典的に考えられる一方、いくつかの事例において免疫系は退行過程で重要な役割を果たすことができる。さらに、退行性と考えられる神経系疾患において免疫系自体が有益な効果を有しうることが明らかになってきた。体液性免疫応答を誘導するように設計された免疫治療手法が最近アルツハイマー病の治療用に開発された。動物モデルにおいて、細胞免疫応答を誘導するように設計された免疫療法は中枢神経系障害に有効でありうることも示されている、しかしT細胞は誘導されるT細胞応答の型に応じて有益な効果を与える場合と有害な効果を与える場合がありうる(MonsonegoおよびWeiner、2003)。
【0011】
調節性T細胞
諸研究は調節性/サプレッサーT細胞の天然集団の存在について確証を与えており、この集団はin vitroでTCRが仲介する刺激があると、エフェクターT細胞の増殖を抑制する(von HerrathおよびHarrison、2003)。これらの細胞はT細胞恒常性の制御に対しておよび自己抗原、癌細胞、病原体、およびアロ抗原に対する免疫応答のモジュレーションにおいて中心的な役割を果たす。
【0012】
若いマウスの末梢は自己免疫疾患の易発傾向がなく、調節性T細胞は安定してCD4+T細胞の10%を構成する。この比率は、遺伝的に、糖尿病などの自己免疫疾患の易発傾向があるマウスにおいては低下するようである(Salomonら、2000)。調節性T細胞の導入は、糖尿病、実験自己免疫脳脊髄炎および大腸炎を含む広範囲の実験自己免疫疾患を予防することが示されている(Salomonら、2000;Wuら、2002;Kohmら、2002;Readら、2000)。さらに、調節性T細胞の欠乏は、コラーゲンが誘導する関節炎を含む様々な実験自己免疫疾患を悪化させることが示されている(Morganら、2003)。ヒトにおいては、CD4+CD25+調節性T細胞の類似集団が末梢血および胸腺において同定されている(Jonulietら、2001;Annunziatoら、2002)。
【0013】
調節性T細胞が自己免疫疾患および移植片対宿主病を能動的に調節しかつ長期耐性を誘導する能力は、長寿命耐性を誘導する方法としての応用に大きな可能性を有する。調節性T細胞の利点は、この少量のT細胞サブセット(この細胞集団は自己免疫易発性動物および患者ではさらに減少する)を増殖して特徴付けることができないために、わかりにくくなっている。例えば、最近の研究は、自己反応性T細胞による進行中の自己免疫糖尿病を逆転させることは不可能であり、該自己反応性T細胞が疾患の活性期間中、抑制に対して耐性となっていることを示唆する。調節性T細胞をex vivoで増殖しようとする従来の努力にも関わらず、臨床的に十分な増殖も、または実証しうるin vivo効果も達成できなかった(Fuら、2004)。CD4+CD25+調節性T細胞の数が少ないこと、それらのアネルギー表現型、および多様な抗原特異性は、自己免疫疾患および移植拒絶を治療するためにこの効能のある免疫寛容集団を利用する上で大きな挑戦課題となっている。
【0014】
WO 2005/070090は、所定の自己抗原特異的な調節性T細胞富化組成物を作る方法、および得られる組成物および使用方法を提供する。一実施形態において、WO 2005/070090は被験者における自己免疫反応をモジュレートする方法であって、(a)被験者と適合しうる細胞の集団を得ること;(b)上記細胞の集団から、自己抗原特異的な、好ましくは所定の自己抗原特異的な調節性T細胞富化組成物を作ること;および(c)上記組成物を上記被験者中に導入して上記被験者における上記自己免疫反応をモジュレートすることによる上記方法を提供する。
【0015】
急性期炎症マーカー
ある特定の急性期タンパク質血漿濃度の測定値は、特定の臨床条件下において診断または予後上の価値がある。最もよく知られる急性期タンパク質はC反応性タンパク質(CRP)である。CRPはある特定症状由来の炎症とともに血中で上昇する血漿タンパク質である。血漿中のCRPのレベルは炎症に伴って1000倍の高さまで上昇しうる。通常、著しいCRPの変化を引き起こす症状としては、細菌およびウイルス感染、外傷、手術、火傷、炎症症状、冠血管および血管の疾患ならびに進行癌が挙げられる。
【0016】
ほとんどの急性期タンパク質は肝細胞により合成され、いくつかは他の細胞型、例えば単球、内皮細胞、繊維芽細胞および脂肪細胞により産生される。急性期タンパク質としては、血清アミロイドA(SAA)、CRPおよび血清アミロイドP成分(SAP)が挙げられる。
【0017】
CRPとSAAは刺激に対する即時応答性、ならびに広い濃度範囲を有しかつ自動化測定が容易であるので、血漿CRPおよびSAAレベルを利用してある特定病状の間の炎症重症度および疾患管理の有効性を正確にモニターすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来の研究は、エフェクター細胞集団を含む免疫系が自己免疫疾患においておよび移植拒絶中に、反復的かつ示差的なやり方で周期的変化(細胞数の変動)をすることを理解していない。さらに、従来の研究は、レギュレーター細胞集団を含む免疫応答が変性疾患状態で周期的変化をすることを理解していない。本発明はこれらの周期の認識に基づいて、これらの疾患を治療する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の概要
本発明者らは、意外なことに、エフェクター細胞の存在により特徴付けられる病状の間、エフェクター細胞とレギュレーター細胞の両方の数が周期的変化をすることを見出した。この周期的変化は、標的抗原に対するエフェクター細胞増殖とともに規則正しく起こり、ついで該エフェクターに対してレギュレーター細胞の増殖が起こる。エフェクター細胞がレギュレーター細胞により抑制されると、両方の型の細胞数が減少し、これらは次いで抗原が継続して存在するので同じ周期的変化をする。
【0020】
この周期的変化の知識を利用して、エフェクター細胞の出現が患者に有害であることがわかっている疾患を治療することができる。かかる症状の例は自己免疫疾患と移植拒絶である。より具体的には、患者の治療を、エフェクター細胞増殖が起こらないおよび/またはエフェクター細胞数が低下または消滅している時に合わせて行なうことができる。
【0021】
従って、第1の態様において、本発明は、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析してエフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患をもつ患者に薬剤を投与すべき時を決定する方法であって、患者または患者から得たサンプルを、a)エフェクター細胞数および/または活性、b)レギュレーター細胞数および/または活性、c)該疾患に関連する分子、ならびに/あるいはd)免疫系マーカーのうちの少なくとも1つの変動についてモニタリングすることを含んでなる上記方法を提供する。
【0022】
他の態様において、本発明は、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患を治療する方法であって、
i) a)レギュレーター細胞の数および/または活性、
b)エフェクター細胞の数および/または活性、
c)該疾患に関連する分子、ならびに/あるいは
d)免疫系マーカー
のうちの少なくとも1つの変動について疾患をもつ患者をモニタリングすることにより、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析するステップ、ならびに
ii) 患者を該疾患を治療する薬剤に曝すステップ
を含んでなる上記方法を提供する。
【0023】
ある好ましい実施形態においては、エフェクター細胞がクローン増殖し始める時、または直前に薬剤を投与する。
【0024】
好ましくは、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患は、限定されるものでないが、自己免疫疾患または移植拒絶から選択される。
【0025】
自己免疫疾患については、理論により限定されることを欲しないが、標的自己抗原に対するエフェクター細胞の拡大に続いて、該エフェクターに対するレギュレーター細胞の増殖が起こる。レギュレーター細胞によるエフェクター細胞の制御が起こると、両方のタイプの細胞の数および活性が減少し、次いで、標的自己抗原に対する患者免疫系の継続的作用によって同じ周期的変化が起こる。
【0026】
好ましくは、免疫系マーカーは急性期炎症マーカーである。より好ましくは、急性期炎症マーカーは血清アミロイドA、血清アミロイドPおよびc反応性タンパク質からなる群より選択される。
【0027】
好ましくは、急性期炎症マーカーのレベルがその最低点に到達する時と上記マーカーが次の周期にピークに達する前との間に薬剤を投与する。
【0028】
好ましくは、免疫系マーカーはレギュレーター細胞の数および/または活性、および/またはエフェクター細胞の数および/または活性を反映する。
【0029】
他の実施形態においては、免疫系マーカーは体温である。この実施形態については、体温がその最低点に達してかつ体温が次の周期にピークに達する前に、薬剤を投与することが好ましい。
【0030】
好ましくは、エフェクター細胞はCD8+CD4-T細胞である。好ましくは、CD8+CD4-T細胞数がその最低点にある時とCD8+CD4-T細胞数が次の周期にピークに達する前との間に、薬剤を投与する。より好ましくは、CD8+CD4-T細胞数がその最低点にあるかまたは次の周期で増加し始める時に、薬剤を投与する。
【0031】
好ましくは、レギュレーター細胞はCD4+CD8-T細胞である。好ましくは、CD4+CD8-T細胞数がほぼピークに達した時、または直前に、薬剤を投与する。
【0032】
上記態様については、薬剤がエフェクター細胞の産生を阻害し、その機能を制限し、および/または該細胞を破壊することが好ましい。より好ましくは、薬剤がエフェクター細胞の産生を阻害し、その機能および/またはその活性を制限する抗増殖薬、抗代謝薬、照射、dsRNAおよび抗体からなる群より選択される。好ましくは、抗増殖薬はタキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよび無水ビンブラスチンからなる群より選択される。
【0033】
好ましい抗体の一例は抗CD8+抗体である。
【0034】
エフェクター細胞の存在により特徴付けられる病状の期間中、免疫系が周期的変化をするという観察はまた、かかる疾患の存在の指標として利用することもできる。これらの診断手順は、患者を治療後に病状の再発について分析するために(例えば、自己免疫疾患など)、または該疾患に感受性があると確認された患者(例えば、被験者が先に、自己免疫疾患の素因となる遺伝子の対立遺伝子を有することを確認された事例において)を疾患の発症について分析するために有用である
従って、他の態様において、本発明はエフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析して、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患を診断する方法であって、患者または患者から得たサンプルを、a)エフェクター細胞数および/または活性、b)レギュレーター細胞数および/または活性、c)該疾患に関連する分子、ならびに/あるいはd)免疫系マーカーのうちの少なくとも1つの変動についてモニタリングするステップを含んでなり、その場合、a)〜d)のいずれか1つの周期的変化は疾患が存在しうることを示す上記方法を提供する。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析するために免疫系マーカーを検出するアッセイの使用であって、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患をもつ患者に薬剤を投与すべき時を決定するための上記使用を提供する。
【0036】
好ましくは、マーカーは急性期炎症マーカーである。より好ましくは、急性期炎症マーカーは血清アミロイドA、血清アミロイドPおよびc反応性タンパク質からなる群より選択される。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析するためにエフェクター細胞数および/または活性を検出するアッセイの使用であって、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患をもつ患者に薬剤を投与すべき時を決定するための上記使用を提供する。
【0038】
好ましくは、上記アッセイはCD8+CD4-T細胞の数を検出する。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析するためにレギュレーター細胞数および/または活性を検出するアッセイの使用であって、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患をもつ患者に薬剤を投与すべき時を決定するための上記使用を提供する。
【0040】
好ましくは、上記アッセイはCD4+CD8-T細胞の数を検出する。
【0041】
さらなる態様において、本発明は、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析するためにエフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患に関連する分子を検出するアッセイの使用であって、上記疾患を治療するために薬剤を投与すべき時を決定するための上記使用を提供する。
【0042】
さらなる態様において、本発明は、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患をもつ患者に投与する医薬を製造するための薬剤の使用であって、上記薬剤がエフェクター細胞の産生を阻害し、その機能を制限し、および/または該細胞を破壊する上記使用を提供する。
【0043】
他の態様において、本発明はエフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析して、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患をもつ患者に薬剤を投与すべき時を決定するために使用されるキットであって、患者または患者から得たサンプルを、a)エフェクター細胞数および/または活性、b)レギュレーター細胞数および/または活性、c)該疾患に関連する分子、および/またはd)免疫系マーカーのうちの少なくとも1つの変動についてモニタリングするための少なくとも1つの試薬を含む上記キットを提供する。
【0044】
好ましくは、上記キットは、分析すべきサンプルの好ましい数、およびサンプル分析の間のタイミングを含む本発明の方法を実施するための取扱説明書を含むものである。
【0045】
本発明者らはまた、意外なことに、変性疾患の間、エフェクター細胞とレギュレーター細胞の両方の数が周期的変化をすることを見出した。この周期的変化は、標的抗原に対するエフェクター細胞拡大とともに規則正しいベースで起こり、次いで該エフェクターに対してレギュレーター細胞の拡大が起こる。エフェクター細胞がレギュレーター細胞により抑制されると、両方の型の細胞数が減少し、これらは次いで、抗原の継続的な存在または不完全な除去によって同じ周期的変化をする。
【0046】
この周期的変化の知識を利用して、レギュレーター細胞の出現が患者に有害であることがわかっている疾患を治療することができる。より具体的には、患者の治療を、レギュレーター細胞拡大が起こらないおよび/またはレギュレーター細胞数が低下または消滅している時に合わせて行なうことができる。
【0047】
従って、さらなる態様において、本発明は、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析して、変性疾患をもつ患者に薬剤を投与すべき時を決定する方法であって、患者または患者から得たサンプルを、a)エフェクター細胞数および/または活性、b)レギュレーター細胞数および/または活性、c)該疾患に関連する分子、および/またはd)免疫系マーカーのうちの少なくとも1つの変動についてモニタリングすることを含んでなる上記方法を提供する。
【0048】
他の態様において、本発明は変性疾患を治療する方法であって、
i) a)レギュレーター細胞の数および/または活性、
b) エフェクター細胞の数および/または活性、
c) 該疾患に関連する分子、ならびに/あるいは
d) 免疫系マーカー
のうちの少なくとも1つの変動について疾患をもつ患者をモニタリングすることにより、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析するステップ、ならびに
ii) 薬剤の投与のタイミングがエフェクター細胞の活性を有意に低下させないように選んで、患者を該疾患を治療する薬剤に曝すステップ
を含んでなる上記方法を提供する。
【0049】
変性疾患の例としては、限定されるものでないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ルー・ゲーリッヒ病およびプリオン関連疾患が挙げられる。
【0050】
理論により拘束されることを欲しないが、標的抗原に対するエフェクター細胞増殖に続いて、該エフェクターに対するレギュレーター細胞の増殖が起こる。抗原の産生により特徴付けられる疾患として伝統的にみなされてないが、アルツハイマー病およびプリオン関連疾患などの変性疾患は、少なくとも部分的に、特定のタンパク質(抗原)のレベルの上昇により引き起こされる。免疫応答がかかるタンパク質に対して生起されうるという確証があり、アルツハイマー病およびプリオン関連疾患などの変性疾患を治療するためのワクチンを製造することについていくつかの提案がなされている。レギュレーター細胞によるエフェクター細胞の制御が起こると、両方のタイプの細胞の数および活性が減少し、次いで、抗原の継続的存在または不完全な除去によって同じ周期的変化が起こり、これが振動する持続的なしかし無効の免疫応答をもたらす。
【0051】
薬剤を投与する適当な時は、急性期炎症マーカーのレベルがピークに達した時とマーカーが次周期で上昇し始める前との間である。従って、特に好ましい免疫系マーカーは急性期炎症マーカーである。より好ましくは、急性期炎症マーカーは、限定されるものでないが、血清アミロイドA、血清アミロイドPおよびc反応性タンパク質からなる群より選択される。
好ましくは、免疫系マーカーはレギュレーター細胞の数および/または活性、および/またはエフェクター細胞の数および/または活性を反映する。
【0052】
他の実施形態においては、免疫系マーカーは体温である。この実施形態については、薬剤を、体温がピークに達してかつ体温が次周期で上昇し始める前に投与することが好ましい。
【0053】
一実施形態においては、患者を、CD4+CD8-T細胞レベルの分析によりレギュレーター細胞の数および/または活性の増加についてモニタリングする。この実施形態については、CD4+CD8-T細胞がその最低点にある時とCD4+CD8-T細胞数が次の周期にピークに達する前との間に、薬剤を投与することが好ましい。より好ましくは、CD4+CD8-T細胞数がその最低点にあるかまたは次周期で増加し始める時に、薬剤を投与する。
【0054】
他の実施形態においては、患者を、CD8+CD4-T細胞レベルの分析によってエフェクター細胞の数および/または活性の増加についてモニタリングする。この実施形態については、薬剤を、CD8+CD4-T細胞数がほぼピークに達したときまたはその直前に投与することが好ましい。
【0055】
変性疾患に関する本発明の態様については、好ましくは、薬剤がレギュレーター細胞の産生を阻害し、機能を制限し、および/または該細胞を破壊する。より好ましくは、薬剤がレギュレーター細胞の産生および/または活性を阻害する、抗増殖薬などの抗癌薬、抗代謝薬、照射、dsRNAおよび抗体からなる群より選択される。好ましくは、抗増殖薬は、限定されるものでないが、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよび無水ビンブラスチンからなる群より選択される。好ましい抗体の例としては、限定されるものでないが、抗CD4+、抗CTLA4(細胞傷害性リンパ球関連抗原4)、抗GITR(グルココルチコイドが誘導する腫瘍壊死因子受容体)、抗CD28および抗CD25が挙げられる。
【0056】
変性疾患の間、免疫系が周期的変化するという観察はまた、かかる疾患の存在の指標として利用することもできる。これらの診断手順は、患者を治療後の病状の再発について分析するために、または該疾患に感受性があると確認された患者を疾患の発症について分析するために有用である
さらなる態様において、本発明はエフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析して変性疾患を診断する方法であって、患者または患者から得たサンプルを、a)エフェクター細胞数および/または活性、b)レギュレーター細胞数および/または活性、c)該疾患に関連する分子、ならびに/あるいはd)免疫系マーカーのうちの少なくとも1つの変動についてモニタリングするステップを含んでなり、その場合、a)〜d)のいずれか1つの周期的変化は疾患が存在しうることを示す上記方法を提供する。
【0057】
本発明者らはまた、ワクチンを適当な時に投与すると、変性疾患に対する治療が促進されうる(または治療成功のチャンスを増加しうる)ことも確認した。この場合、ワクチンは疾患に対する生得の免疫応答をブーストする。これはほとんどエフェクター細胞の数および/または活性の増加の結果と思われる。理論的にはレギュレーター細胞がさらに究極的には産生されうるが、免疫系のブーストにより、患者がレギュレーター細胞の出現前に適切に疾患を抑制することを可能にする。
【0058】
さらに他の態様においては、本発明はエフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析して変性疾患をもつ患者にワクチンを投与すべき時を決定する方法であって、患者または患者から得たサンプルを、a)エフェクター細胞数および/または活性、b)レギュレーター細胞数および/または活性、c)該疾患に関連する分子、ならびに/あるいはd)免疫系マーカーのうちの少なくとも1つの変動についてモニタリングするステップを含んでなる上記方法を提供する。
【0059】
さらなる態様においては、本発明は変性疾患を治療する方法であって、
i) a)レギュレーター細胞の数および/または活性、
b) エフェクター細胞の数および/または活性、
c) 該疾患に関連する分子、ならびに/あるいは
d) 免疫系マーカー
のうちの少なくとも1つの変動について疾患をもつ患者をモニタリングすることにより、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析するステップ、ならびに
ii) ワクチンの投与のタイミングがエフェクター細胞の活性を有意に低下させないように選んで、患者を該疾患を治療するワクチンに曝すステップ
を含んでなる上記方法を提供する。
【0060】
一実施形態において、ワクチンは、エフェクター細胞のレベルが増加している時に投与される。他の実施形態において、ワクチンは、疾患に関連する分子のレベルが減少し始める時に投与される。さらなる実施形態において、ワクチンは、およそ急性期炎症マーカーのレベルが増加し始める時に投与される。
【0061】
さらなる態様においては、本発明は、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析して、変性疾患をもつ患者に薬剤またはワクチンを投与すべき時を決定するための、免疫系マーカーを検出するアッセイの使用に関する。
【0062】
好ましくは、上記マーカーは急性期炎症マーカーである。より好ましくは、急性期炎症マーカーは血清アミロイドA、血清アミロイドPおよびc反応性タンパク質からなる群より選択される。
【0063】
さらなる態様においては、本発明は、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析して、変性疾患をもつ患者に薬剤またはワクチンを投与すべき時を決定するための、エフェクター細胞の数および/または活性を検出するアッセイの使用に関する。
【0064】
好ましくは、上記アッセイはCD8+CD4-T細胞の数を検出する。
【0065】
さらなる態様においては、本発明は、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析して、変性疾患をもつ患者に薬剤またはワクチンを投与すべき時を決定するための、レギュレーター細胞の数および/または活性を検出するアッセイの使用に関する。
【0066】
好ましくは、上記アッセイはCD4+CD8-T細胞の数を検出する。
【0067】
さらなる態様においては、本発明は、エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析して、変性疾患を治療するために薬剤またはワクチンを投与すべき時を決定するための、変性疾患に関連する分子を検出するアッセイの使用に関する。
【0068】
さらなる態様においては、本発明は、変性疾患をもつ患者に投与するための医薬を製造するための薬剤の使用であって、エフェクター細胞の活性を有意に低下させないように選んだ時に薬剤を投与する上記使用に関する。
【0069】
好ましくは、薬剤はレギュレーター細胞の産生を阻害し、機能を制限し、および/または該細胞を破壊する。
【0070】
さらなる態様において、本発明はエフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析して、変性疾患をもつ患者に薬剤を投与すべき時を決定するために使用するキットであって、患者または患者から得たサンプルを、a)エフェクター細胞数および/または活性、b)レギュレーター細胞数および/または活性、c)該疾患に関連する分子、ならびに/あるいはd)免疫系マーカーのうちの少なくとも1つの変動についてモニタリングするための少なくとも1つの試薬を含む上記キットを提供する。
【0071】
好ましくは、キットは、分析すべきサンプルの好ましい数、およびサンプル分析の間のタイミングを含む本発明の方法を実施するための使用説明書を含む。
【0072】
本明細書に概説したように、本発明者らは、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患ならびに変性疾患をもつ患者において、多数の因子の変動が、免疫系は周期的に変化していることを示すのに気付いた。これらの因子には急性期炎症マーカーが含まれる。これらの因子は、限定されるものでないが、エフェクター細胞産生および/または活性、レギュレーター細胞産生および/または活性、および/またはB細胞産生および/または活性を含む免疫系の一般状態と直接または間接に連結している。
【0073】
当業者であれば、自己免疫疾患および変性疾患などの疾患は患者に複雑な影響を与えることを理解しうる。さらに、遺伝形質、栄養、適応度、今までおよび現在の病状などの因子と連結した個人間の自然の変化の全てが、所与の個人が病状に対していかに応答するかに影響を与える。従って、個人はその病状に応じてその免疫系周期の周期性または波長または頻度が変化する。さらに、月経周期と同じように周期の長さは自然変化および/または環境因子に応じて、個人においても若干変化しうる。従って、個々の変化が少なくとも、例えば、i)周期の長さ、ii)周期中のエフェクターまたはレギュレーター細胞の絶対数、またはiii)周期中の急性期炎症マーカーのレベルについて起こりうる。かかる変化は、患者の免疫系が相当長い時間にわたってチャレンジされている進行性疾患をもつ患者では過大に現れうる。
【0074】
その結果、周期間および周期内変動の傾向を追及するために十分であり、かつ、従って、関連細胞型またはそのマーカーにとって必要な極大値および/または極小値のいずれかを決定するために十分な長い時間にわたって、患者をモニタリングすることが最も望ましいようである。こうすることによって、特定患者内の免疫系周期的変化の動力学の理解が確実に行われる。好ましくは、患者を少なくとも7日間、より好ましくは少なくとも14日間、より好ましくは少なくとも21日間、より好ましくは少なくとも28日間モニタリングする。患者をさらに長い期間、例えば、少なくとも35日間、少なくとも42日間、少なくとも49日間、またはさらに長い期間、モニタリングすることも望ましい。
【0075】
患者を納得のいく長さの時間にわたってモニタリングすることの例外は、本方法を移植拒絶を治療するために用いる時である。この場合、エフェクター細胞への曝露は急速に移植片の拒絶をもたらしうる。従って、例えば、移植片対宿主病を扱う場合、移植片を受けた後、直ぐにまたは速やかに患者のモニタリングを開始し、そしてエフェクター細胞を最初の免疫周期中に標的化することが好ましい。例えば、ある好ましい実施形態においては、モニタリングを移植片受給後、ほぼ1日に開始し、そして少なくとも15日間、より好ましくは少なくとも21日間続ける。
【0076】
一般的に、多数の因子を同時にモニタリングすることが好ましい。その理由は、上記の諸因子の影響によってそれぞれの因子が、特にいくつかの周期にわたって、完全な周期プロファイルを有し、薬剤を投与するのに適当な時間の明確な徴候を日常的に提供するとは思われないからである。長期にわたる多数の因子の分析は費用がかかり、かつ患者に少なくともいくつかの不便を感じさせるが、自己免疫疾患および変性疾患などの疾患は生命を脅かしうる。従って、所与の患者の免疫系周期的変化について患者を治療する前にできる限り多く理解することは価値のあることである。
【0077】
さらに、いくつかの患者における色々な因子の周期的変化の分析は複雑なプロファイルを生じうるが、本明細書に記載のガイダンスがあれば、モニタリングデータを分析して薬剤を投与する最適時点を決定することは、医師の技能の範囲内にある。
【0078】
さらに複雑化する因子は、患者が治療すべき疾患と無関係な疾患または外傷を最近受けた場合である。例えば、自己免疫疾患を治療しようとする患者が通常のインフルエンザウイルスにも罹っていることがありうる。インフルエンザウイルスの存在は、例えば、自己免疫疾患によって起こるこれらのマーカーの周期的変化とは無関係な急性期炎症マーカーの増加をもたらしうる。本発明の方法で使用するエフェクター/レギュレーター細胞の周期的変化のモニタリングを複雑化しうる他の疾患としては他の感染症および癌が挙げられる。従って、患者を、例えば、急性期炎症マーカーのレベルの上昇をもたらしうるいずれかの因子についてモニタリングして、モニタリングする因子が治療する疾患由来のエフェクター/レギュレーター細胞の周期的変化を真に反映することの確証を得ることが望ましい。
【0079】
さらに、患者をできる限り高頻度でモニタリングして、所与の患者における免疫系の周期的変化が適切に特徴付けられていることを確実にすることが好ましい。当然、このことは、薬剤を適当な時に投与することおよび例えば、エフェクター/レギュレーター細胞の数または活性、またはそのマーカーのいずれかの小さい変化が誤って解釈されないことを保証する。好ましくは、患者を少なくとも3日ごとに、より好ましくは少なくとも2日ごとに、そして最も好ましくは少なくとも毎日、モニタリングする。周期的変化が、薬剤を投与するのに適当なタイミングと思われる段階に達すれば、モニタリングをもっと高頻度で、例えば毎12時間に行ってもよい。
【0080】
好ましくは、患者は哺乳動物である。より好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0081】
明らかなように、本発明の一態様の好ましい特性と特徴は本発明の多くの他の態様に応用することができる。
【0082】
本明細書を通して、用語「含む(comprise)」、またはその変形、例えば「含む(comprises)」または「含むこと(comprising)」は、表明した要素、整数またはステップ、または複数の要素、複数の整数、または複数のステップの群を包含すると解釈されうるが、いずれかの他の要素、整数またはステップ、あるいは複数の要素、複数の整数または複数のステップの群を除外するものでない。
【0083】
本発明を以下に、次の非限定性の実施例によりかつ添付の図面を参照して説明する。
【0084】
添付図面の簡単な説明
(下記の図面の簡単説明を参照のこと。)
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】FO氏(女性)における、C-反応性タンパク質および血清アミロイドAの経時変化である。
【図2】FO氏(女性)における、血清アミロイドAおよびIL-2の経時変化である。
【図3】FO氏(女性)における、血清アミロイドAおよび癌マーカーCA125の経時変化である。
【図4】FO氏(女性)における、C反応性タンパク質およびC3の経時変化である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
発明の詳細な説明
一般的技術と定義
特に断らない限り、本明細書に用いた全ての技術および科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学における)が一般的に理解しているのと同じ意味を有すると解釈される。
【0087】
特に断らない限り、本発明に利用される組換えタンパク質、細胞培養、および免疫学的技法は標準手順であり、当業者は周知している。かかる技法は次の文献;J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984);J. Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989);T.A. Brown (編), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1および2, IRL Press (1991);D.M. GloverおよびB.D. Hames (editors), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995および1996);F.M. Ausubelら (編), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience(1988年以後の全ての改定版を含む);Ed HarlowおよびDavid Lane (編) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988);ならびにJ.E. coliganら (編) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons(以後の全ての改定版を含む)などに記載されかつ説明されていて、これらの文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【0088】
本明細書に使用される用語「治療すること(treating)」、「治療する(treat)」または「治療(treatment)」には、疾患の少なくとも1つの症候を軽減または消失させるのに十分な治療上有効な量の薬剤を投与することが含まれる。
【0089】
「エフェクター細胞」には、必ずしも限定されるものでないが、CD8+細胞として公知のT細胞集団が含まれる。
【0090】
「レギュレーター細胞」には、必ずしも限定されるものでないが、CD4+T細胞の亜集団が含まれる。かかる細胞はまた、当技術分野では「サプレッサー細胞」とも呼ばれる。レギュレーター細胞はエフェクター細胞に直接作用するかまたは他の機構を介してエフェクター細胞に影響を与えることができる。
【0091】
CD4+細胞は当技術分野でCD4として知られるマーカーを発現する。典型的には、本明細書で使用される用語「CD4+T細胞」は、CD8をも発現する細胞を意味しない。しかしこの用語は、そのうえまたCD25のような他の抗原性マーカーを発現するT細胞を含みうる。
【0092】
本明細書で使用される、「エフェクター細胞」の薬剤に対する曝露に言及するときの用語「該細胞の産生を阻害し、該細胞の機能を制限し、および/または該細胞を破壊する」は、エフェクター細胞の数および/または活性が薬剤によりダウンレギュレーションされることを意味する。最も好ましくは、エフェクター細胞の数および活性が薬剤により完全に消滅される。
【0093】
本明細書に使用される、「レギュレーター細胞」の薬剤に対する曝露に言及するときの用語「該細胞の産生を阻害し、該細胞の機能を制限し、および/または該細胞を破壊する」は、レギュレーター細胞の数および/または活性が薬剤によりダウンレギュレーションされることを意味する。最も好ましくは、レギュレーター細胞の数および活性が薬剤により完全に消滅される。
【0094】
本明細書に使用される用語「エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患」は、エフェクター細胞の数または活性がその病状を延長するのに役割を果たすいずれかの症状を意味する。これらの疾患は、i)典型的には当技術分野で自己免疫疾患として一般的に知られる自己抗原に対する免疫応答により特徴付けられるか、またはii)好適なドナーからの器官/組織/細胞移植中の患者の免疫応答に関わる。
【0095】
本明細書に使用される用語「自己免疫疾患」は、身体がそれ自身の組織の或る構成要素に免疫原性(すなわち、免疫系)応答を生じるいずれかの疾患を意味する。言い換えれば、免疫系は身体内のいくつかの組織または系を「自己」として認識する能力を失いそれを外来であるかのように攻撃する。自己免疫疾患は、主に一器官が冒される疾患(例えば、溶血性貧血および抗免疫甲状腺炎)と自己免疫疾患プロセスが多数の組織を通って拡散する疾患(例えば、全身エリテマトーデス)に分類することができる。自己免疫疾患の例としては、限定されるものでないが、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、エリテマトーデス、重症筋無力症、強皮症、クローン病、潰瘍性大腸炎、橋本病、グレーブス病、シェーグレン症候群、多発性分泌不全、白斑、末梢神経障害、I型自己免疫多腺性症候群、急性糸球体腎炎、アジソン病、成人発症特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、全脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、自己免疫再生不良性貧血、自己免疫溶血性貧血、ベーチェット病、セリアック病、慢性活動性肝炎、CREST症候群、皮膚筋炎、拡張型心筋症、好酸球増多-筋痛症候群、後天性表皮水疱症(EBA)、巨細胞性動脈炎、グッドパスチャー症候群、ギラン・バレー症候群、血色素症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、特発性IgA腎障害、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、若年性慢性関節リウマチ、ランバート・イートン症候群、線状IgA皮膚疾患、心筋炎、ナルコレプシー、壊死性血管炎、新生児狼瘡症候群(NLE)、ネフローゼ症候群、類天疱瘡、天疱瘡、多発性筋炎、原発性硬化性胆管炎、乾癬、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)、ライター症候群、スティッフマン症候群、炎症性腸疾患、骨関節炎および甲状腺炎が挙げられる。
【0096】
用語「移植」およびその用語の変化は、その移植が同種異系間(その場合、ドナーとレシピエントは同種であるが異なる遺伝起源である)であるかまたは異種間(その場合、ドナーとレシピエントは異種である)である、移植片の宿主中への挿入を意味する。従って、典型的な筋書きでは、宿主はヒトでありかつ移植片は同じかまたは異なる遺伝起源のヒト由来の同系移植片である。他の筋書きでは、移植片は、移植される種と異なる種由来、例えば、ヒトレシピエント宿主中に移植されたヒヒ心臓であり、その場合には系統学的に広く離れた種からの動物、例えばブタ心弁またはヒト宿主中に移植された動物β島細胞もしくは神経細胞が含まれる。細胞、組織および/または器官を移植することができ、それらとしては、例えば、限定されるものでないが、単離された細胞、例えば島細胞;組織、例えば新生児の羊水膜、骨髄、造血前駆体細胞、および眼組織、例えば角膜組織;および器官、例えば皮膚、心臓、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺葉、肺、腎臓、管状器官(例えば、腸、血管、または食道)などが挙げられる。管状器官を食道、血管、または胆道の損傷した部分を置き換えるために用いることができる。皮膚移植片を火傷に対してだけでなく、損傷した腸の包帯としてまたは横隔膜ヘルニアなどのある特定の欠損部を閉じるために用いることもできる。移植片は、ヒトを含む、屍体または生体ドナー由来のいずれかの哺乳動物供給源から誘導される。好ましくは、移植片は骨髄または心臓などの器官である。
【0097】
本明細書に使用される「移植拒絶」またはその用語の変化は、宿主の免疫系が移植片に対して免疫応答を起こして、最終的に移植片が宿主により拒絶されることを意味する。一般的に2つのタイプの「移植拒絶」、すなわち、移植片対宿主病および宿主対移植片病が存在する。
【0098】
本明細書に使用される用語「移植片対宿主病」はドナー由来の細胞によるレシピエントに対する免疫攻撃を意味し、しばしば移植される細胞の拒絶に導く。移植される細胞はいずれの細胞型であってもよいが、典型的には、移植片対宿主病を引き起こすのに十分な免疫細胞を保有する移植される組織は血液と骨髄だけである。
【0099】
本明細書に使用される「宿主対移植片病」は、移植片として獲得した同種間または異種間の細胞に対する宿主のリンパ球が介在する反応、言い換えれば、移植される細胞の損傷および/または破壊を起こす反応を意味する。これは移植片拒絶の共通基盤である。
【0100】
本明細書に使用される「変性疾患」は、細胞の損失をもたらす症状である。好ましくは、変性疾患は神経細胞の損失により特徴付けられる神経変性疾患である。本発明に関係する神経変性疾患の例としては、限定されるものでないが、アレキサンダー病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリッヒ病)、毛細血管拡張性運動失調、キャナヴァン病、コケーン症候群、皮質基底変性症、ハンチントン病、ケネディー病、クラッベ病、レーヴィ小体痴呆、マチャド‐ジョセフ病、パーキンソン病、ペリツェーウス‐メルツバッヒャー病、ピック病、原発性側索硬化症、レフサム病、サンドホッフ病、シルダー病、スティール・リチャードソン・オルスゼフスキー病、脊髄ろう、およびプリオン関連疾患、例えばクロイツフェルト‐ヤーコブ病、アルパーズ病、クールー、ゲルストマン‐シュトロイスラー-シャインケル症候群、致死性家族性不眠症、スクラピー、伝染性ミンク脳症、慢性消耗病、およびウシ海綿状脳症が挙げられる。他の実施形態においては、変性疾患は、「アミロイド関連病」であり、その例としては、限定されるものでないが、アルツハイマー病、II型糖尿病および脳のアミロイドアンギオパチーが挙げられる。
【0101】
用語「免疫系マーカー」は一般的に、免疫系の状態および/または活性の徴候を与えるいずれかの分子または因子を意味する。これらのマーカーはレギュレーターおよび/またはエフェクター細胞の活性および/または産生に直接連結していてもよいし、および/またはある抗原に対する免疫系の全応答のもっと一般的な徴候を与えてもよい。好適な免疫系マーカーの例としては、急性期炎症マーカー、例えばc反応性タンパク質および血清アミロイドAが挙げられる。免疫系マーカーの他の例は、細胞破壊の指標、例えば、限定されるものでないが、血清中のコレステロールおよびβ-2-ミクログロブリンである。コレステロールおよびβ-2-ミクログロブリンは細胞膜の内在性成分である。特に、β-2-ミクログロブリンは主要組織適合性クラスIまたはMHC-I受容体に対するアクセサリー分子である。それ故に、抗疾患免疫応答ならびに標的細胞破壊の周期的変化とともに、これらの2種の分子の患者中の血清レベルはしばしば上昇する。従って、コレステロールおよびβ-2-ミクログロブリンなどの細胞破壊の指標の振動はまた、免疫応答周期の開始または終結を確認するのに有用でありうる。当然、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患における免疫系周期的変化、ならびに変性疾患をもつ患者における周期的変化についての本発明の発見によって、当業者は本発明の方法に有用なさらなるマーカーを容易に同定することができる。
【0102】
本明細書に使用される用語「疾患に関連する分子」は病状に連結したいずれかの分子を意味する。ある好ましい実施形態においては、マーカーはタンパク質である。かかるタンパク質マーカーは当技術分野において周知である。例えば、アミロイド-βペプチドのレベルはアルツハイマー病のマーカーでありうるし、かつβコンフォメーションのプリオンタンパク質はプリオン関連疾患のマーカーでありうる。
【0103】
本明細書に使用される用語「エフェクター細胞の活性を有意に低下させない」は、(変性疾患を治療するための)薬剤の投与のタイミングが、薬剤がレギュレーター細胞に対してエフェクター細胞より比率的に大きい効果を与えることを意味する。薬剤は、レギュレーター細胞に対する効果のエフェクター細胞に対する効果との比が最大である時に投与されることが明らかに好ましい。
【0104】
本明細書に使用される用語「周期的変化をする(cycling)」または「周期的変化(cycle)」またはそれらの用語の変化は、ある指標(細胞数、疾患のマーカー、免疫系マーカーの活性など)の変動を意味し、その場合、上記指標は極大値から極小値へ周期的に変化する。
【0105】
本明細書に使用される用語「エフェクター細胞および/またはレギュレーター細胞の周期的変化を分析する」は、定義された細胞、マーカーおよび/または分子を確認していずれかの所与の時点における周期の段階を評価することを意味する。好ましくは、分析する時点の数、各分析の間の期間、および分析を行う時間長さは、上記薬剤を投与すべき時を決定するのに十分なものである。
【0106】
「サンプル」は、レギュレーター細胞、エフェクター細胞、免疫系マーカーおよび/または疾患に関連する分子を含有すると考えられる材料を意味する。サンプルをその供給源から取得したまま直接使用しても、または1ステップ以上の(部分的)精製後に使用してもよい。サンプルを本発明の方法を妨げないいずれの好都合な培地中で調製してもよい。典型的なサンプルは、以下にさらに詳しく説明するように水溶液または生物学的液体である。サンプルは、いずれかの供給源、例えば生理学的液体由来であってもよく、これらには、血液、血清、血漿、唾液、痰、眼レンズ液、内頬スワブ、汗、糞便、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、経皮浸出液、咽頭浸出液、気管支肺胞洗浄、気管吸引、脳脊髄液、精液、頚管粘液、膣または尿道分泌物、羊水液などが含まれる。好ましくは、サンプルは血液またはその画分である。前処理は、例えば、血液から血漿の調製、粘性液の希釈などに関わってもよい。処理の方法には、濾過、蒸留、分離、濃縮、妨害成分の不活性化、および試薬の添加に関わってもよい。試験前の生物学的サンプルの選択と前処理は、当技術分野において周知であり、さらに説明する必要はない。
【0107】
本発明の目的のために、用語「抗体」は、特に反した記載がなければ、標的分析質に対する結合活性を保持する全抗体のフラグメントが含まれる。かかるフラグメントには、Fv、F(ab')およびF(ab')2断片、ならびに1本鎖抗体(scFv)が含まれる。さらに、抗体とそのフラグメントは、例えばEP-A-239400に記載のヒト化抗体であってもよい。
【0108】
急性期炎症マーカー
いくつかの急性期炎症マーカーは免疫応答中に最初増加する(本明細書では以後、ポジティブ急性期炎症マーカーと呼ぶ)一方、他のものは免疫応答中に最初減少する(本明細書では以後、ネガティブ急性期炎症マーカーと呼ぶ)。急性期炎症マーカーはまた、当技術分野で、急性期反応物または急性期タンパク質とも呼ばれる。当業者は急性期炎症マーカーをモニタリングするのに利用することができる多数のアッセイを知っているであろう。
【0109】
ポジティブ急性期炎症マーカーの例としては、限定されるものでないが、c反応性タンパク質、血清アミロイドA、血清アミロイドP成分、補体タンパク質、例えばC2、C3、C4、C5、C9、B、C1インヒビターおよびC4結合タンパク質、フィブリノーゲン、フォン・ビルブラント因子、α1-抗トリプシン、α1-抗キモトリプシン、α2-抗プラスミン、ヘパリン補因子II、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビターI、ハプトグロビン、ヘモペキシン、セルロプラスミン、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ、α1-酸糖タンパク質、ヘム・オキシゲナーゼ、マンノース-結合タンパク質、白血球タンパク質I、リポタンパク質(a)、リポ多糖-結合タンパク質、およびインターロイキン、例えばIL-1、IL-2、IL-6、IL-10ならびにそれらの受容体が挙げられる。
【0110】
ネガティブ急性期炎症マーカーの例としては、限定されるものでないが、アルブミン、プレアルブミン、トランスフェリン、アポAI、アポAII、α2HS糖タンパク質、インターαトリプシンインヒビター、ヒスチジンリッチ糖タンパク質が挙げられる。
【0111】
血清アミロイドA(SAA)は、抗原性をアミロイドAA(反応性AAアミロイド沈降物中の主な原繊維成分)と共有する血漿成分として発見された。SAAは急性期反応物であることが示されていて、その血液中のレベルは外傷、感染および炎症を含む様々な傷害に対する身体の応答の一部として1000倍以上上昇する。
【0112】
SAAレベルは、当技術分野で公知のように測定することができる(例えばWeinsteinら(1984)、Liuzzoら(1994)、O'Haraら(2000)、Kimuraら(2001)およびO'Hanlonら(2002)を参照)。
【0113】
C反応性タンパク質(CRP)は重要なポジティブ急性期応答タンパク質であり、血清中のその濃度は急性期応答中、1000倍程度増加しうる。CRPは、それぞれがほぼ分子量23,500を有する同一サブユニット5個からなる5量体である。
【0114】
C反応性タンパク質レベルは、当技術分野で公知の技法を用いて測定することができる、それらとしては、限定されるものでないが、Senjuら(1983)、Weinsteinら(1984)、Priceら(1987)、Liuzzoら(1994)、Edaら(1998)、Kimuraら(2001)およびO'Hanlonら(2002)に開示されている技法が挙げられる。
【0115】
補体タンパク質は少なくとも20種の免疫学的に異なる成分のグループである。これらは通常不活性型で血液中を循環する。これらの補体タンパク質は、逐次的に、抗原抗体複合体と、お互いと、そして細胞膜と、複雑であるが適合しうる方法で、相互作用してウイルスおよび細菌ならびに病理として宿主自身の細胞をすら破壊することができる。補体タンパク質の異常な血清レベルは遺伝性または後天性の疾患のいずれかが原因でありうる。少なくともC3およびC4の循環レベルは、免疫複合体形成による補体タンパク質消費と急性期応答による合成の増加の間のバランスを反映する。補体タンパク質レベルを測定する方法は当技術分野では周知である。
【0116】
色々なインターロイキンのレベルはまた、ProteoPlexTMサイトカインアッセイキット(EMD Biosciences Inc.、CA、USA)を利用するなどの当技術分野で公知の手順を用いて決定することができる。
【0117】
薬剤
本発明は概括すると3種の異なるタイプの薬剤の使用に関する。それらの試薬は次の通りである:
1)エフェクター細胞に特異的である薬剤(CD8+特異的抗体など)であって、エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患を治療するために用いることができるもの、
2)レギュレーター細胞に特異的である薬剤(CD4+特異的抗体など)であって、変性疾患を治療するために用いることができるもの、ならびに
3)エフェクター細胞およびレギュレーター細胞に影響を与える非選択的な薬剤であって、しかし投与のタイミングが標的とする細胞型を規定するもの。
【0118】
エフェクター細胞の産生により特徴付けられる疾患を治療するための薬剤
薬剤は、エフェクター細胞の破壊、その機能の制限、またはその産生の阻害を選択的にまたは非選択的にもたらすいずれの因子または処置であってもよい。例えばCD8+特異的抗体を、CD8+T細胞を特異的に標的化するために用いることができる。しかし、いくつかの事例では、それぞれが分裂中の細胞を標的化する抗増殖薬、抗代謝薬または照射などの非選択的薬剤を用いることができる。特に、他の細胞型と同じように、エフェクター細胞は、分裂時そして特に有糸分裂時に、抗分裂(抗増殖)薬または紡錘体毒(例えばビンブラスチンまたはパクリタキセル)による破壊に対して脆弱である。
【0119】
用語「抗増殖薬」および用語「抗代謝薬」は当技術分野ではよく理解されている用語であって、分裂細胞を破壊するかまたはそれらがさらなる増殖を行うことを阻害するいずれかの化合物を意味する。抗増殖薬としては、限定されるものでないが、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロランブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、メトトレキセート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、ビンブラスチン、無水ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、L-アスパラギナーゼ、シスプラチン、ミトキサントロン、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ミトタン、アミノグルテチミド、プレドニソン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、プロピオン酸テストステロン、放射性同位体、リシンA鎖、タキソール、ジフテリア毒素、コルヒチンおよびシュードモナス・エキソトキシンAが挙げられる。
【0120】
薬剤は通常、臨床医が直ぐ利用できる投与剤形で投与され、そして一般的にその通常処方された量(例えば、Physician's Desk Reference, 第55版, 2001に記載の量、または薬剤の使用についての製造業者の文献に記載の量)だけ投与される。
【0121】
一実施形態においては、薬剤を一度にボーラス注射として投与する。他の実施形態においては、薬剤を注入により投与する。注入期間は、例えば、少なくとも3時間、少なくとも12時間または少なくとも24時間であってもよい。
【0122】
本発明の方法で投与することができる他の薬剤の例はdsRNAである。dsRNAはRNA干渉(RNAi)において使用されるが、このRNAiはdsRNAを細胞中に導入するとdsRNAと相同的なmRNAが特異的に分解されて遺伝子産物の合成が抑制される現象である。かかるRNAiを引き起こす薬剤の例としては、限定されるものでないが、標的遺伝子の核酸配列に対して少なくとも約70%相同性を有する配列、もしくはストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる配列、少なくとも10個のヌクレオチド長さの2本鎖部分を含有するRNA、またはその変異体が挙げられる。標的遺伝子の例としては、限定されるものでないが、エフェクター細胞を複製または生存のために必要な遺伝子が挙げられる。
【0123】
ほぼ20個の塩基(例えば、代表的にほぼ21〜23個の塩基)またはほぼ20個未満の塩基の長さを有するdsRNA(これを当技術分野ではsiRNAと称するが)を用いることができる。細胞中のsiRNAの発現は、siRNAが標的化する遺伝子の発現を抑制することができる。他の実施形態において、RNAiを引き起こすことができる薬剤は、3'末端に粘着性部分を有する短いヘアピン構造(shRNA;short hairpin RNA)を有する。本明細書に使用される用語「shRNA」はほぼ20個以上の塩基対の分子を意味し、この分子内で1本鎖RNAは部分的にパリンドローム塩基配列を含有してそこに2本鎖構造(すなわち、ヘアピン構造)を形成する。shRNAは人為的に化学的手法で合成することができる。あるいは、DNAのセンスおよびアンチセンス鎖を逆方向に連結し、T7 RNAポリメラーゼにより該DNAをテンプレートとして用いてRNAをin vitroで合成することにより、shRNAを作ることができる。2本鎖部分の長さは特に限定されるものでないが、好ましくは、ほぼ10個以上のヌクレオチド、そしてより好ましくはほぼ20個以上のヌクレオチドである。3'-突出末端は、DNA、より好ましくは少なくとも2個のヌクレオチド長さのDNA、そしてさらにより好ましくは2〜4個のヌクレオチド長さのDNAでありうる。
【0124】
本発明に有用なRNAiを引き起こすことができる薬剤は、人為的に合成(化学的にまたは生化学的に)することができるしまたは天然のものであってもよい。本発明の効果という意味ではそれらの間に実質的に差がない。化学的に合成した薬剤は好ましくは液体クロマトグラフィなどによって精製する。
【0125】
本発明に用いられるRNAiを引き起こすことができる薬剤はまた、in vitroで作ることができる。この合成系においてT7RNAポリメラーゼおよびT7プロモーターを用いて、テンプレートDNAからアンチセンスおよびセンスRNAを合成することができる。これらのRNAをアニーリングし、その後、細胞中に導入する。
【0126】
dsRNAは当技術分野で公知の方法を用いて患者に送達することができる。dsRNAを患者に送達する方法の例は、例えば、US 20040180357、US 20040203024および20040192629に記載されている。
【0127】
変性疾患を治療するための薬剤
変性疾患を治療する際、薬剤は、レギュレーター細胞の破壊、その機能の制限、またはその産生の阻害を選択的にまたは非選択的にもたらすいずれの因子または処置であってもよい。例えばCD4+特異的抗体は、CD4+T細胞を特異的に標的化するために用いることができる。しかし、いくつかの事例では、それぞれ分裂中の細胞を標的化する抗増殖薬、抗代謝薬または照射などの非選択的薬剤を用いることができる。特に、他の細胞型と同じように、エフェクター細胞は、分裂時そして特に有糸分裂時に、抗分裂(抗増殖)薬または紡錘体毒(例えばビンブラスチンまたはパクリタキセル)による破壊に対して脆弱である。
【0128】
CD8+特異的抗体は別として、上記薬剤はそれぞれ、変性疾患を治療するためにも有用である。dsRNAについては、dsRNA分子はレギュレーター細胞においてのみ発現されるmRNAに対して特異的であってもよい。
【0129】
最近の研究は、CD4+CD25+T細胞が、自己抗原に対する免疫細胞を調節する上で重要な役割を果たすことを示唆している(Salomonら、2000;Suri-PayerおよびCantor、2001)。さらに、CD4+CD25+T細胞を標的化すると、動物の腫瘍増殖を抑制する能力を増進することが示されている(Onizukaら、1999;Shimizuら、1999;Sutmullerら、2001)。従って、CD4+CD25+T細胞は本明細書に用いられるレギュレーター細胞として作用しうる。CD4+CD25+T細胞の活性は、抗GITR、抗CD28および/または抗CTLA-4によりダウンレギュレートすることができる(Readら、2000;Takahashiら、2000;Shimizuら、2002)。従って、これらの抗体は本発明の方法で使用する薬剤として有用でありうる。
【0130】
患者のモニタリング
ほとんどの事例において、免疫応答の動力学が変わりうるので、薬剤を投与すべき時点は、疾患の異なる段階の患者において実験的に決定することが必要であろう。他の因子、例えば被験者の一般的健康および/または被験者の遺伝的体質なども、薬剤を投与するのに適当な時点に影響を与えうる。
【0131】
当技術分野で公知の技法を用いて、「周期的変化」中のエフェクター細胞の増殖集団をモニタリングすることができる。
【0132】
連続的な血液サンプルを採集して、T細胞サブセット(CD4+および/またはCD8+など)についてFACS分析によりスクリーニングすることができる。
【0133】
モニタリングは非常に頻繁に、例えば数時間ごとに行う必要があり、そして薬剤投与のための正しい時点が確実に選択されるようにする。好ましくは、モニタリングは少なくとも48時間ごとに実施する。より好ましくは、モニタリングを少なくとも24時間ごとに実施する。
【0134】
最適なのは、モニタリングが薬剤の影響を確認するまで継続されることである。(治療すべき病状に応じて)エフェクター細胞またはレギュレーター細胞の不十分な損失、再出現があれば、本発明の方法を繰り返すべきことを意味しうる。かかる治療の繰返しサイクルは免疫学的メモリーを生じうる。それ故に、本発明の方法を繰返し方式で用いると、多少の予防保護効果を与えうる。
【0135】
ワクチン
本明細書において用いるワクチンは、変性疾患の特徴であるタンパク質(抗原)に対する免疫応答をもたらす。かかるワクチンは少なくとも1つの抗原、または上記抗原をコードするポリヌクレオチドを含有しうる。ワクチンは当技術分野で公知のいずれかの形態、例えば、限定されるものでないが、DNAワクチン、抗原を発現するトランスジェニック生物の摂取、または抗原を含有する組成物の形態で提供することができる。
【0136】
本明細書に使用される用語「抗原」は、疾患に対して免疫応答を生じることができるエピトープを含有するいずれかのポリペプチド配列である。
【0137】
変性疾患に対して免疫応答を生起させることができる抗原は当技術分野で公知である。アルツハイマー病を治療する免疫応答を生起させる例はWO 2005/072777およびGelinasら(2004)に、そしてプリオン関連疾患を治療する免疫応答を生起させる例はWO 2005/034995に記載されている。
【0138】
抗原は、当技術分野で公知の免疫応答を得るいずれの方法で提供されてもよい。抗原は、例えば、生来、組み換えまたは合成であってもよい。
【0139】
ワクチンは、1以上の抗原から調製することができる。抗原を含有するワクチンの調製は当技術分野で公知である。典型的には、かかるワクチンは、溶液または懸濁液としての注入可能剤、または経口剤として調製するが;注射または経口使用前に液に加えて溶液または懸濁液を作るのに好適な固体剤形を調製することもできる。調製物は乳濁化しても、またはタンパク質をリポソーム中に封入してもよい。抗原はしばしば、製薬上許容されかつ活性成分と適合しうる担体/賦形剤と混合する。好適な担体/賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組み合わせである。
【0140】
さらに、所望であれば、ワクチンは少量の助剤、例えば湿潤剤または乳濁化剤、pH緩衝剤、および/またはワクチンの有効性を増強するアジュバントを含有してもよい。
【0141】
典型的には、ワクチンはアジュバントを含有する。本明細書に使用される用語「アジュバント」は抗原に対する免疫応答を非特異的に増強する物質を意味する。有効でありうるアジュバントの例としては、限定されるものでないが、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11637、nor-MDPと呼ばれる)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、MTP-PEと呼ばれる)、およびRIBI(細菌から抽出された3成分、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含有する)を含有する2%スクワレン/Tween 80エマルジョンが挙げられる。アジュバントのさらなる例としては、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、菌体内毒素、リピドX、Corynebacterium parvum(別名Propionobacterium acnes)、Bordetella pertussis(百日咳菌)、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、サポニン、リポソーム、レバミゾール、DEAE-デキストラン、ブロックコポリマーまたは他の合成アジュバントが挙げられる。かかるアジュバントは様々な供給元から市販されていて、例えば、Merckアジュバント65(Merck and Company、Inc.、Rahway、N.J.)またはフロイントの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、Michigan)がある。
【0142】
抗原とアジュバントの比率は、両方が有効な量で存在する限り、広範囲にわたって変化しうる。例えば、水酸化アルミニウムはワクチン混合物のほぼ0.5%の量(Al2O3基準)で存在しうる。ワクチンは、0.2〜200μg/ml、好ましくは5〜50μg/ml、最も好ましくは15μg/mlの最終濃度の抗原性ポリペプチドを含有するように製剤するのが好都合である。
【0143】
製剤後、ワクチンを無菌コンテナに詰め込み、これを次いでシールし、そして低温、例えば4℃で貯蔵するかまたは凍結乾燥することができる。凍結乾燥は安定な形態での長期貯蔵を可能にする。
【0144】
ワクチンは、注射により、例えば皮下にまたは筋肉内に、非経口投与するのが好都合である。他の投与モードに好適であるさらなる製剤には座薬および、いくつかの事例では、経口製剤が含まれる。座薬用の伝統的なバインダーおよび担体には、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが含まれ、かかる座薬は0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の活性成分を含有する混合物から作ることができる。経口製剤は通常使われる賦形剤、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含む。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤または散剤の形態であって、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の活性成分を含有する。ワクチン組成物を凍結乾燥する場合、凍結乾燥された材料を投与前に、例えば懸濁液として再構成することができる。再構成は好ましくはバッファー液中で行う。
【0145】
患者に経口投与するカプセル、錠剤および丸薬は、例えば、Eudragit-S、Eudragit-L、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶コーティングを施すことができる。
【0146】
DNAワクチン接種は、抗原をコードするDNAを被験者組織中へ直接in vivo導入して、被験者組織の細胞による抗原を発現させることに関わる。かかるワクチンは本明細書では「DNAワクチン」または「核酸系ワクチン」と呼ぶ。DNAワクチンは、US 5,939,400、US 6,110,898、WO 95/20660およびWO 93/19183に記載されていて、これらの開示は本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
【0147】
今まで、哺乳動物系のほとんどのDNAワクチンはサイトメガロウイルス(CMV)由来のウイルスプロモーターに依存している。これらはいくつもの哺乳動物種の筋肉および皮膚両方の接種において良い効率を有している。DNA免疫感作により誘発される免疫応答に影響を与えることが知られる1つの因子はDNA送達の方法であり、例えば、非経口経路は低い比率の遺伝子導入を生じかつ遺伝子発現にかなりの可変性を生じうる。遺伝子銃を用いるプラスミドの高速接種はマウスの免疫応答を増強したが、おそらくDNAトランスフェクションのより高い効率と樹状細胞によるより効果的な抗原提示の故であろう。本発明の核酸系ワクチンを含有するベクターも、当技術分野で公知の他の方法、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈降、リポフェクション(リソソーム融合)、またはDNAベクター輸送体により、所望の宿主中に導入することができる。
【0148】
抗原性ポリペプチドを産生するトランスジェニック植物を、当技術分野で周知の手順を利用して構築することができる。いくつもの植物系食用ワクチンが現在、動物およびヒト両方の病原体用に開発されつつある。免疫応答はまた、抗原性エピトープを提示するウイルス様粒子(VLP)またはキメラ植物ウイルスを産生するトランスジェニック植物による経口免疫感作からも得られている。これらのVLPまたはキメラウイルスの微粒子形態は胃における抗原のより高い安定性をもたらし、腸内摂取に利用される抗原の量を効果的に増加しうることが示唆されている。
【実施例】
【0149】
実施例1
以下に記載するのはいくつかの急性期炎症マーカーをモニタリングするために用いる典型的なアッセイの例である。
【0150】
C反応性タンパク質
C反応性タンパク質(CRP)は、DADE Behring Dimension RxL化学分析計を使用し、Dade Behring Diagnostics(Sydney、Australia)が供給する試薬と標準物質(試薬cat No. DF-34;標準物質cat. No. DC-34)を用いて測定した。
【0151】
CRP測定法は粒子増強免疫比濁試験法(particle enhanced turbidimetric immunoassay)に基づく。C反応性タンパク質に対する抗体を用いてコーティングしたラテックス粒子はサンプル中にC反応性タンパク質が存在すると凝集する。凝集に伴う濁度の増加はC反応性タンパク質濃度に比例する。
【表1】

【0152】
インターロイキン2受容体(IL2R)
サイトカインインターロイキン2の受容体(IL2R)は、Diagnostic Products Corporation(Los Angeles、CA、USA)のImmulite分析計を使って市販の自動化された化学発光酵素イムノアッセイ(EIA)により測定した。
【0153】
これは、アルカリホスファターゼ標識したIL2RをトレーサーとしてかつアダマンチルジオキセタンをALP酵素に対する発光基質として用いる競合イムノアッセイである。
【0154】
全ての試薬と標準物質はDPC-cat No. LKIPZによるキット形態で供給された。
【0155】
分析性能:
【表2】

【0156】
インターロイキン6
サイトカインインターロイキン6は、Diagnostic Products Corporation(Los Angeles、CA、USA)のImmulite分析計を使って市販の自動化された化学発光酵素イムノアッセイ(EIA)により測定した。
【0157】
これは、アルカリホスファターゼ標識したIL-6をトレーサーとしてかつアダマンチルジオキセタンをALP酵素に対する発光基質として用いる競合イムノアッセイである。
【0158】
全ての試薬と標準物質はDPC-cat No. LK6PZによるキット形態で供給される。
【0159】
分析性能:
【表3】

【0160】
インターロイキン10
サイトカインインターロイキン10は、Diagnostic Products Corporation(Los Angeles、CA、USA)のImmulite分析計を使って市販の自動化された化学発光酵素イムノアッセイ(EIA)により測定した。
【0161】
これは、アルカリホスファターゼ標識したIL-10をトレーサーとしてかつアダマンチルジオキセタンをALP酵素に対する発光基質として用いる競合イムノアッセイである。
【0162】
全ての試薬と標準物質はDPC- cat No. LKXPZによるキット形態で供給される。
【0163】
分析性能:
【表4】

【0164】
血清アミロイドA
ヒトSAAに対する抗体を用いてコーティングしたポリスチレン粒子は、SAAを含有するサンプルと混合すると凝集する。比濁計の散乱光の強度は、サンプル中の分析質の濃度に依存し、従って、その濃度は既知濃度の標準液の希釈液と比較して決定することができる。
【表5】

【0165】
補体タンパク質C3
自動化した方法を利用して、Dade Behring ProSpect分析計を使う比濁分析により、Dade Behring Diagnostics(Sydney、Australia)により供給された試薬と標準物質を用いて、血清サンプル中の補体タンパク質C3濃度を測定した。
【0166】
可溶抗原溶液(サンプル)と特異的抗体(抗血清cat No. OSAP15)を反応キュベット内で混合した。不溶の抗原-抗体複合体が直ぐ生成し、混合物中に濁りが生じて溶液による散乱光の量が増加した。インキュベーションの後に、溶液の吸収を分析波長において測定した。
【表6】

【0167】
補体タンパク質C4
自動化した方法を利用して、Dade Behring ProSpect分析計を使う比濁分析により、Dade Behring Diagnostics(Sydney、Australia)により供給された試薬と標準物質を用いて、血清サンプル中の補体タンパク質C4濃度を測定した。
【0168】
可溶性抗原溶液(サンプル)と特異的抗体(抗血清cat No. OSAO15)を反応キュベット内で混合した。不溶性の抗原-抗体複合体が直ぐ生成して混合物中に濁りが生じ、溶液による散乱光の量が増加した。インキュベートした後に、溶液の吸収を分析波長において測定した。
【表7】

【0169】
実施例2
当業者は気付くように、自己免疫疾患と癌の間には類似性がある。より具体的に言えば、自己免疫疾患は自己抗原に対する免疫応答により特徴付けられる。同じ様な方式で、癌患者の免疫系は癌細胞による抗原(癌抗原)の過剰発現を認識してこれらの細胞に対する免疫応答を引き起こす。しかし、少なくともいくつかの環境において癌細胞に対する免疫応答は癌を効果的に抑制することなく、疾患は持続する。このように、癌患者における免疫系の周期的変化は、自己免疫疾患の被験者と類似の周期的変化を示す好適なモデルである。
【0170】
患者は71歳齢の女性で本明細書において「FO氏(女性)」と呼んだ。先にFO氏(女性)は卵巣癌と診断されて、手術および数回の標準的化学療法を受けた。患者はモニタリング前に200U/mlの高いCA125を示した。
【0171】
患者を4週間、毎月曜日、水曜日および金曜日にモニタリングした。7/14日周期をもつ明確なほぼ同期しかつ規則的な振動がCRP、SAAおよびIL-2血清測定値の間の密接な相関を示した(図1および図2を参照)。さらに興味深いことに、CRPおよびCA125の経時変化を示す図3は、CRPとCA125の振動が相から外れて免疫系マーカーと癌マーカーとの間は逆転関係にあることを示す。
【0172】
図4はSAAと補体タンパク質因子C3の間の経時的関係を示す。2つの大きいC3ピークはほぼ14日離れ、同じくほぼ14日離れた交代性SAAピークと一致することに注目されたい。
【0173】
癌患者における免疫系周期的変化のさらなる例はWO 2005/040816に記載されている。
【0174】
実施例3
腎臓屍体アロ(allo)移植を必要とする慢性糸球体腎炎の患者に対する好適なドナーについての研究を行う。アロ移植は標準の手順を用いて実施する。アロ移植が完了した時、患者を血清アミロイドA(SAA)レベルについてモニタリングする。SAAレベルが増加し始める時、移植片に対するエフェクター細胞の産生により特徴付けられる免疫応答が移植片に対して引き起こされたことを示す(当技術分野では拒絶とも呼ぶ)。
【0175】
腎臓屍体アロ移植後のSAAとc反応性タンパク質(CRP)レベルの例はMauryおよびTeppo(1984)により記載されている。MauryおよびTeppo(1984)の図4に見ることができるように、移植後の拒絶事象と連結したCRPおよびSAAのピークレベルの間にはほぼ15日の期間があり、これはエフェクター細胞が研究した患者において周期的変化をしていることを示す。
【0176】
SAAレベルが上昇し始めるときに、ビンブラスチンを標準用量、例えば3〜4mg/m2(CasciatoおよびLowitz、1995)を投与する。この事例では、ビンブラスチンはエフェクター細胞などの分裂細胞を標的化して拒絶事象を軽減しうる。
【0177】
実施例4
若年性慢性関節炎の患者をSAAレベルについてモニタリングする。SAAレベルの明白な周期的変化が確立されると、SAAレベルが上昇し始めるときにビンクリスチンを標準用量だけ投与する。この事例では、ビンクリスチンはエフェクター細胞などの分裂細胞を免疫周期中のこの時点で標的化して疾患の症候群を軽減しうる。
【0178】
若年性慢性関節炎患者におけるSAAタンパク質レベルの周期的変化の一例は、Elliottら(1997)により記載されている。Elliottら(1997)に記載の図2から見られるように、SAAのピークレベルの間にはほぼ14日の期間がある。もしモニタリングをもっと高頻度で実施しておれば、CRPレベルについても類似の周期的変化がもっと明白であったであろうと考えられる。
【0179】
実施例5
アルツハイマー病の患者をc反応性タンパク質レベルについてモニタリングする。c反応性タンパク質レベルに明白な周期的変化が確立されると、c反応性タンパク質がピークに達したときにビンクリスチンを標準用量だけ投与する。この事例では、ビンクリスチンは免疫周期中のこの時点においてレギュレーター細胞などの分裂細胞を標的として、疾患の症候群を軽減しうる。
【0180】
関連出願の相互参照
本出願は2004年9月8日に出願された仮特許出願第2004905118号の優先権を主張するものであって、上記出願の内容は本明細書に参照により組み入れられる。
【0181】
当業者は、多数の変形および/または改変が、具体的な実施形態で示された本発明に対して、広く記載された本発明の思想または範囲を逸脱することなく行われうることを理解するであろう。本明細書に記載の実施形態は、それ故に、全ての点において、説明であって限定でないとみなされる。
【0182】
以上考察した全ての刊行物は本明細書にその全てが組み入れられる
本明細書に含まれる文書、条例、材料、機器、物品などのいずれの考察も、単に本発明の状況を提供することだけを目的とする。これらの事項のいずれかまたは全ては本出願の各請求項の優先日前に存在したので、従来の技術水準の一部分を形成するまたは本発明に関連する分野の通常の一般的知識であったことを容認すると解釈してはならない。
【0183】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
エフェクターT細胞の産生を阻害し、該細胞の機能および/または活性を制限する薬剤を含む、エフェクターT細胞の産生により特徴付けられる疾患の治療用医薬であって、
該治療は、
i) a) レギュレーターT細胞の数および/または活性、
b) エフェクターT細胞の数および/または活性、
c) 該疾患に関連するマーカー分子、ならびに/あるいは、
d) 免疫系マーカー
のうちの少なくとも1つの変動について疾患をもつ患者をモニタリングすることにより、
免疫系の周期的変化を分析するステップ、
および
ii) 該患者を、該疾患を治療する薬剤に曝すステップを含んでなり、
(a) 該疾患は、自己免疫疾患または移植拒絶であり;
(b) 該薬剤は、抗増殖薬、抗代謝薬、照射、dsRNAおよび抗体からなる群より選択され;そして、
(iii) 該薬剤は、エフェクターT細胞の拡大が起こらないように、および/またはエフェクターT細胞の数が減少または消滅するように、エフェクターT細胞がクローン増殖し始める時、または直前に投与される、
上記医薬。
【請求項2】
薬剤を含む変性疾患の治療用医薬であって、該治療は、
i) a)レギュレーターT細胞の数および/または活性、
b)エフェクターT細胞の数および/または活性、
c)該疾患に関連するマーカー分子、ならびに/あるいは、
d)免疫系マーカー
のうちの少なくとも1つの変動について疾患をもつ患者をモニタリングすることにより、
免疫系の周期的変化を分析するステップ、
および
ii) 該患者を、該疾患を治療する薬剤に曝すステップ
を含んでなり、
(a) 該疾患は、細胞の損失をもたらす症状、およびアルツハイマー病またはプリオン関連疾患であり;そして
(b) 該薬剤は、
(i) レギュレーターT細胞の産生を阻害し、該細胞の機能および/または活性を制限し、かつ、抗増殖薬、抗代謝薬、照射、dsRNAおよび抗体からなる群より選択され;そして、該薬剤の投与のタイミングは、該薬剤がレギュレーターT細胞に対してエフェクターT細胞より比率的に大きい効果を与えるような時であり;または
(ii) ワクチンであり、該ワクチンの投与のタイミングは、レギュレーターT細胞の出現前にエフェクターT細胞の数および/または活性の増加を生み出す生得の免疫応答をブーストするような時である、
上記医薬。
【請求項3】
免疫系マーカーが急性期炎症マーカーである、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
患者がエフェクターT細胞の産生により特徴付けられる疾患をもち、薬剤が急性期炎症マーカーのレベルがその最低点に達した時と、免疫系マーカーが次の周期にピークになる前との間に投与される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
エフェクターT細胞がCD8+CD4-T細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項6】
レギュレーターT細胞がCD4+CD8-T細胞である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項7】
患者が少なくとも7日間モニタリングされる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項8】
患者が少なくとも約3日毎にモニタリングされる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項9】
患者が哺乳動物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項10】
哺乳動物がヒトである、請求項9に記載の医薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−35859(P2013−35859A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211628(P2012−211628)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2007−530544(P2007−530544)の分割
【原出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(507074144)イミューンネイド ピーティーワイ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】