説明

自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法、およびその利用

【課題】客観的かつ簡便な自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法、およびその利用を提供する。
【解決手段】本発明に係る自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法は、生体から採取した試料における抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出する工程を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法、およびその利用に関する。より具体的には、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを指標とした、自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法、およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、本来外界からの有害な異物の侵入に対する生体の防御機構として存在するものである。しかし、時にはこの免疫系の働きが、結果的に生体に有害であることがある。その1つがアレルギーである。生体は、外界からの異物に対するのみならず、自己の成分に対しても一種のアレルギー反応を起こすことが知られており、自己免疫現象と呼ばれている。自己免疫によりある種の病態が生じた疾患は、自己免疫疾患と呼ばれている。
【0003】
自己免疫疾患は、全身性の疾患であるが、臓器特異性のある疾患と、特異性のない疾患の2つに大別される。臓器特異的自己免疫疾患には、慢性甲状腺炎、原発性粘膜水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、急性進行性糸球体腎炎、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病、アジソン病、萎縮性胃炎、男性不妊症、早発性更年期、水晶体原性ぶどう膜炎、交感性脈炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、発作性血色素尿症、突発性血小板減少性紫斑病、およびシェーグレン症候群がある。臓器非特異的自己免疫疾患には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、多発性筋炎、強皮症、および混合結合組織病がある。
【0004】
これら自己免疫疾患の多くは、組織に病変が認められ、組織傷害を伴うものである。
【0005】
ところで、実験動物を同一抗原で繰り返して免疫し続けると、免疫応答は極期をむかえ、やがて疲弊する。そして、その結果として、組織傷害を伴う種々の自己免疫病態が生じることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−288382号公報(平成18年10月26日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実験動物を同一抗原で繰り返して免疫し続けると、この実験動物において組織傷害を伴う自己免疫病態が生起してくる。しかしながら、組織傷害の発症の過程においてどのような細胞が関与しているのかなどについては、具体的には未解明である。そのため、免疫性の組織傷害を予防および治療する技術は、十分に確立されているとはいえず、新たな技術の確立が強く望まれている。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、客観的かつ簡便な、自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、(1)実験動物に対する同一抗原の繰り返し投与(すなわち、遷延感作)により、クロスプレゼンテーションが増強されること、(2)抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションにより、CD8T細胞が活性化すること、(3)遷延感作に起因する自己免疫疾患による組織傷害は、CD8T細胞によって誘導されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法は、生体から採取した試料における抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る診断方法は、抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションに関わる遺伝子の発現の変化を検出することにより、上記クロスプレゼンテーションを検出することが好ましい。
【0011】
本発明に係る診断方法は、CD8T細胞の活性化を検出することにより、上記クロスプレゼンテーションを検出することが好ましい。
【0012】
また、本発明には、上記の自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法を実施するために用いる診断キットであって、上記クロスプレゼンテーションを検出するためのプライマー、プローブ、マイクロアレイおよび抗体のうち、少なくとも1つを備えていることを特徴とする自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断キットが包含される。
【0013】
また、本発明には、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを阻害する因子を含む自己免疫疾患による組織傷害を抑える組織傷害抑制剤であって、該因子がクロロキン、プリマキン、ブレフェルジンA、ラクタシスチン、MG132、US6またはICP47であることを特徴とする組織傷害抑制剤が包含される。
【0014】
また、本発明には、抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションに関わる因子の同定方法であって、抗原により被験体を遷延感作する工程と、上記被験体から採取した抗原提示細胞を上記抗原と共培養する工程と、共培養した上記抗原提示細胞において存在量に異常がある因子を検出する工程とを含む、同定方法が包含される。
【0015】
また、本発明には、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを促進する工程を含む、自己免疫疾患による組織傷害を発症する組織傷害発症モデル動物の製造方法が包含される。
【0016】
本発明の製造方法では、抗原の遷延感作により、上記クロスプレゼンテーションの促進をおこなうことが好ましい。
【0017】
また、本発明には、自己免疫疾患による組織傷害の治療剤をスクリーニングする方法であって、自己免疫疾患による組織傷害を誘導する組織傷害誘導剤により遷延感作した生体由来の抗原提示細胞を、候補因子の存在下にて培養する培養工程と、培養工程の後に、上記抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションを検出する検出工程とを含むことを特徴とするスクリーニング方法が包含される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法は、以上のように、生体から採取した試料における抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出する工程を含むものである。そのため、自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性を、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを指標として、客観的かつ簡便に、診断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法、診断キット、組織傷害抑制剤、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションに関わる因子の同定方法、組織傷害発症モデル動物の製造方法、および組織傷害の治療剤をスクリーニングする方法について、詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
〔1.自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法〕
本発明に係る自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法(以下、単に「本発明の診断方法」ともいう)は、生体から採取した試料における抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出する工程を含むものであればよく、その他の具体的な工程、条件、使用器具および使用装置は特に限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、「自己免疫疾患」とは、自己成分(例えば、免疫グロブリンなど)に対する自己抗体(例えば、リウマチ因子など)が検出され、自己免疫が病態に関与している疾患が意図される。自己免疫疾患としては、臓器特異的自己免疫疾患(例えば、慢性甲状腺炎、原発性粘膜水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、急性進行性糸球体腎炎、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病、アジソン病、萎縮性胃炎、男性不妊症、早発性更年期、水晶体原性ぶどう膜炎、交感性脈炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、発作性血色素尿症、突発性血小板減少性紫斑病、およびシェーグレン症候群など)、および臓器非特異的自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、多発性筋炎、強皮症、および混合結合組織病など)が挙げられる。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、多発性筋炎、強皮症および混合結合組織病は、膠原病として知られている。すなわち膠原病は、全身性自己免疫疾患に含まれるものである。本発明の適用対象としての自己免疫疾患は、膠原病であることが好ましい。
【0022】
本明細書において、「組織傷害」とは、生体内の組織の形態および生理学的機能のうち少なくとも何れかが、健常者と比べて異なる状態が意図される。例えば、腎臓における組織傷害の場合には、増殖性糸球体腎炎の発症およびタンパク尿の陽性度の異常が挙げられる。
【0023】
本明細書において、「自己免疫疾患による組織傷害」とは、上述した組織傷害が免疫応答の異常による自己免疫現象により引き起こされるものが意図される。自己免疫現象とは、外界からの異物に対してではなく、自己の成分に対して免疫反応を起こす現象である。
【0024】
自己免疫疾患による組織傷害が発症する可能性のある組織としては、例えば、腎臓、肝臓、甲状腺、唾液腺(顎下腺)、耳介および皮膚などが挙げられる。
【0025】
本明細書において、「クロスプレゼンテーション」とは、抗原提示細胞が外来性抗原を取り込み、プロテアソーム等により外来性抗原をプロセッシングした後、MHCクラスI分子で抗原を提示する抗原提示機構をいう。通常、MHCクラスI分子は、細胞内に侵入した細菌およびウイルスによって産生されプロセッシングされた抗原(例えば、プロテアソームにより分解されて生じたペプチド断片)を提示する。一方、体内に侵入した細菌および毒物等の外来性抗原は、抗原提示細胞にエンドサイトーシスによって取り込まれると、細胞内の酵素によってプロセッシングされ分解される。そしてこの分解産物(例えば、ペプチド断片)が抗原としてMHCクラスII分子によって提示される。すなわち、抗原提示細胞によって取り込まれた外来性抗原は、本来、MHCクラスII分子により提示される。しかしながら、クロスプレゼンテーションによれば、本来MHCクラスII分子により提示される抗原が、MHCクラスI分子により提示される。
【0026】
なお、本明細書中で使用される場合、「クロスプレゼンテーション」は、本来MHCクラスII分子により提示される抗原が、MHCクラスI分子により提示される現象または提示されている状態をも意図するものである。
【0027】
本明細書において、「クロスプレゼンテーションの増強」とは、抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションの生じる頻度が、生体または細胞に対して何も処理をしていない状態または対照の処理をした状態と比較して高くなっている状態にすることを意図している。なお、本明細書中で使用される場合、「クロスプレゼンテーションの増強」は、「クロスプレゼンテーションの促進」と交換可能に使用される。
【0028】
本明細書において、「発症可能性」は、自己免疫疾患による組織傷害が発生する危険度を示す指標をいい、発症可能性が高ければそれだけ自己免疫疾患による組織傷害が発症しやすく、逆に発症可能性が低ければ自己免疫疾患による組織傷害に罹患し難いということを示すものである。
【0029】
本発明の診断方法において、生体から採取する試料としては、抗原提示細胞が含まれていればよい。このような試料は、例えば、末梢血、脾臓、リンパ節、肝臓、および皮膚などの各生体器官または生体組織から、公知の方法に従って採取すればよい。
【0030】
本発明の診断方法における、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出する工程は、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出するものであれば、特に限定されるものではない。好ましくは、クロスプレゼンテーションを検出して、クロスプレゼンテーションの増強を評価するものである。
【0031】
抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出する方法としては、例えば、後述するCD8T細胞の活性化または活性を検出する方法、およびクロスプレゼンテーションに関わる遺伝子の発現の異常を検出する方法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。なお、クロスプレゼンテーションに関わる遺伝子としては、後述する同定方法により得ることができる。
【0032】
クロスプレゼンテーションを検出する抗原提示細胞としては、樹状細胞であることが好ましい。
【0033】
本発明の診断方法における一実施形態において、CD8T細胞の活性化を検出することにより、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出することができる。
【0034】
後述する実施例に示すように、CD8T細胞は、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションによって、活性化する。
【0035】
本明細書において、「CD8T細胞の活性化」とは、CD8T細胞(CD8陽性T細胞)が、細胞の内外からのシグナルに応答して、CD8T細胞に特有の機能を発現する状態になることが意図される。具体的には、標的細胞表面の主要組織適合(MHC)抗原のクラスI分子およびMHCクラスI分子に提示された外来抗原ペプチドを認識し、抗原ペプチドを提示している標的細胞に対して細胞傷害機能を発揮するようになることが意図される。
【0036】
CD8T細胞に発現しているCD8はMHCクラスI分子を認識する補助レセプターであるため、MHCクラスII分子に提示される抗原に対しては、CD8T細胞が認識できない。したがってこのような抗原が存在しても、CD8T細胞が活性化されることはない。しかし、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションが引き起こされると、本来MHCクラスII分子により提示される抗原がMHCクラスI分子により提示されることになる。それにより、CD8T細胞がこの抗原を認識できるようになり、CD8T細胞が活性化される。すなわち、クロスプレゼンテーションが引き起こされると、CD8T細胞が活性化される。
【0037】
CD8T細胞の活性化を検出する方法は、活性化したCD8T細胞に特異的に存在する成分(例えば、DNA、RNAおよびタンパク質などの高分子化合物、ならびに低分子化合物)、活性化したCD8T細胞に特徴的な形態および生理活性(例えば、物質生産能、物質分泌能、物質吸収能および物質分解能など)、ならびに活性化したCD8T細胞を識別するために用いられる従来公知の識別マーカーを指標として、CD8T細胞の活性化を検出する方法であれば、特に限定されない。
【0038】
CD8T細胞の活性化を検出する方法としては、例えば、後述する実施例に示すように、CD8T細胞におけるCD69の発現を検出する方法が挙げられる。この場合、CD69に対する抗体を識別マーカーとして用いて、CD8T細胞中におけるCD69陽性CD8T細胞の存在比率を測定し、対照CD8T細胞における存在比率と比較することにより、CD8T細胞の活性化を検出することができる。
【0039】
CD8T細胞の活性化を検出する他の方法としては、CD8T細胞におけるインターフェロンγ(IFNγ)産生細胞の存在を検出する方法が挙げられる。この場合、IFNγを識別マーカーとして、全CD8T細胞におけるIFNγを産生するCD8T細胞の存在比率を測定し、対照CD8T細胞における存在比率と比較することにより、CD8T細胞の活性化を検出することができる。
【0040】
CD8T細胞の活性化を検出するさらに他の方法としては、CD8T細胞が産生したインターフェロンγ(IFNγ)またはインターロイキン2(IL−2)を検出する方法が挙げられる。この場合、CD8T細胞が産生した培養上清中のIFNγまたはIL−2の量を測定し、対照CD8T細胞からの産生量と比較することにより、CD8T細胞の活性化を検出することができる。
【0041】
上記識別マーカーは、単独で、または複数のものを組み合わせて用いられてもよい。識別マーカーを検出する方法は、それぞれの識別マーカーに応じて、適宜選択可能であり、特に限定されるものではない。識別マーカーを検出する方法としては、例えば、PCR法、遺伝子導入法、DNAアレイ、タンパク質アレイ、サザンブロッテイング法、ノザンブロッティング法、ウェスタンブロッティング法、ラジオイムノアッセイ法、酵素免疫測定法、形態学的検出方法(例えば、組織免疫染色法、および細胞免疫染色法)、蛍光活性化セルソータ(fluorescence−activated cell sorter:FACS)などのフローサイトメトリー、クロマトグラフィー(例えば、液体クロマトグラフィー、およびガスクロマトグラフィー)、および質量分析法などが挙げられる。またこれらの方法は、単独で、または複数を組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明の一実施形態における抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出する工程においては、上述した方法により被験者におけるCD8T細胞の活性または活性化したCD8T細胞の存在比率を測定する。その後、得られたCD8T細胞の活性または活性化したCD8T細胞の存在比率を、同様の方法で測定した健常者におけるCD8T細胞の活性または活性化したCD8T細胞の存在比率と比較する。両者の間で有意な相違が見られた場合には、この被験者は、自己免疫疾患による組織傷害を発症しているか、または自己免疫疾患による組織傷害を発症可能性があると診断する。
【0043】
より具体的にいえば、CD8T細胞の活性、または活性化したCD8T細胞の存在比率が健常者と比較して上昇していれば、自己免疫疾患による組織傷害を発症しているか、または自己免疫疾患による組織傷害を発症可能性があると診断できる。
【0044】
また、本発明の診断方法における別の実施形態において、クロスプレゼンテーションに関わる遺伝子の発現の変化を検出することにより、クロスプレゼンテーションを検出することができる。
【0045】
本明細書において、「遺伝子の発現の変化を検出する」とは、以下の(i)〜(iii)の何れをも包含するものである。
(i)遺伝子の転写産物であるmRNAの発現量を測定する。
(ii)遺伝子の翻訳産物であるタンパク質の発現量を測定する。
(iii)遺伝子の翻訳産物であるタンパク質に由来する活性量を測定する。
【0046】
本明細書において、「遺伝子の発現量」とは、その遺伝子の転写量、すなわち、その遺伝子のmRNA量、およびその遺伝子の翻訳産物であるタンパク質量のいずれをも含む意味で用いている。
【0047】
対象とする遺伝子の発現を検出する方法として、対象とする遺伝子の発現量を測定する方法を用いる場合、その測定方法は、特に限定されるものではない。具体的には、遺伝子の発現量の測定方法は、mRNAレベルで遺伝子の発現量を測定する方法もしくはタンパク質レベルで遺伝子の発現量の測定する方法、またはその両方を測定する方法であってもよい。より具体的には、(A)対象とする遺伝子のmRNA(cDNA)を定量することにより、遺伝子の発現量を測定する方法、(B)対象とする遺伝子の翻訳産物であるタンパク質を定量することにより、遺伝子の発現量を測定する方法のいずれをも用いることができる。また、上記(A)および(B)の両方の方法で遺伝子の発現量を測定してもよい。そうすることにより、対象とする遺伝子の発現量をより正確に測定することができる。以下、上記(A)および(B)の方法について説明する。
【0048】
(A)mRNA(cDNA)を用いる方法
mRNAを利用する場合、例えば、被験者から採取した試料より抽出したmRNAまたは全RNAを用いて、ノザンハイブリダイゼーション法、ドットブロット法、DNAマイクロアレイを用いた方法などにより、対象とする遺伝子のmRNAを定量することができる。さらには、RT−PCR法等の遺伝子増幅技術を利用することができる。RT−PCR法においては、遺伝子の増幅過程においてPCR増幅モニター法を用いることにより、より定量的な解析をおこなうことが可能である。
【0049】
PCR遺伝子増幅モニター法においては、両端に互いの蛍光を打ち消し合うことができる異なる蛍光色素で標識したプライマーを用い、検出対象(DNAもしくはRNAの逆転写産物)にハイブリダイズさせる。PCRが進んでTaqポリメラーゼの5'−3'エクソヌクレアーゼ活性により、このプライマーが分解されると二つの蛍光色素が離れ、蛍光が検出されるようになる。この蛍光の検出をリアルタイムにおこなう。上記検出対象についてコピー数の明らかな標準試料についても同時に測定することにより、PCR増幅の直線性のあるサイクル数で目的試料中の検出対象のコピー数を決定する(Holland,P.M.et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276-7280;Livak,K.J.et al.,1995,PCR Methods and Applications 4(6):357-362;Heid,C.A.et al.,Genome Research 6:986-994;Gibson,E.M.U.et al.,1996,Genome Research 6:995-1001を参照)。これにより、検出対象を定量することができる。
【0050】
上記プライマーは、特に限定されるものではなく、対象とする遺伝子のcDNAの塩基配列を利用して、従来公知の方法で設計すればよい。
【0051】
採取した試料からmRNAまたは全RNAを抽出する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法または市販のキットを用いてmRNAまたは全RNAを抽出することができる。
【0052】
また、RT−PCRに用いるプライマーならびにノザンハイブリダイゼーション法およびドットブロット法に用いるプローブを蛍光色素などにより標識する場合には、その標識方法は特に限定されるものではない。例えば、DNAポリメラーゼIを用いるニックトランスレーション法、ポリヌクレオチドキナーゼを用いる末端標識法、クレノーフラグメントによるフィルイン末端標識法(Berger SL,Kimmel AR.(1987)Guide to Molecular Cloning Techniques,Method in Enzymology,Academic Press;Hames BD,Higgins SJ(1985)Genes Probes:A Practical Approach.IRL Press;Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T.(1989)Molecular Cloning:a Laboratory Manual,2nd Edn.Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照)、RNAポリメラーゼを用いる転写による標識法(Melton DA,Krieg,PA,Rebagkiati MR,Maniatis T,Zinn K,Green MR.(1984)Nucleic Acid Res.,12,7035−7056を参照)、放射性同位体を用いない修飾ヌクレオチドをDNAに取り込ませる方法(Krick a LJ.(1992)Nonisotopic DNA Probing Techniques.Academic Pressを参照)などを用いることができる。また、アルカリホスファターゼ等の酵素を化学架橋によって核酸に直接結合させて、プローブを標識することも可能である。
【0053】
(B)タンパク質を用いる方法
被験者から採取した試料より抽出したタンパク質を用いる場合、分析対象となる遺伝子の翻訳産物であるタンパク質に特異的に結合する抗体を用いて、ウェスタンブロット法およびELISA法などの従来公知の免疫化学的手法によりタンパク質を定量することができる。また、分析対象となるタンパク質の活性を測定することにより、タンパク質を定量することができる。さらに、本発明はこれに限定されず、従来公知のあらゆる手法を用いて、タンパク質を定量することができる。このように、対象とする遺伝子の翻訳産物であるタンパク質を定量することで、遺伝子の発現量を測定することができる。
【0054】
また、採取した試料からタンパク質を抽出する方法は、特に限定されるものではなく、上記タンパク質を含有する生物学的試料(例えば、細胞、および組織等)などから、タンパク質が分解されない条件下で、従来公知の緩衝液および装置、キット等を用いてタンパク質を抽出することができる。
【0055】
抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。また、抗体の取得方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ポリクローナル抗体は、抗原を感作した哺乳動物の血液を取り出し、この血液から公知の方法により血清を分離することにより取得することができる。また、ポリクローナル抗体としては、ポリクローナル抗体を含む血清を使用することができる。さらに、必要に応じてこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離してもよい。
【0056】
また、モノクローナル抗体は、例えば、抗原を感作した哺乳動物から免疫細胞を取り出して骨髄腫細胞などと細胞融合させて得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から抗体を回収することにより取得することができる。
【0057】
本発明の一実施形態における抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出する工程においては、上述した方法により被験者における対象とする遺伝子の発現量を測定する。その後、その発現量を、同様の方法で測定した健常者における発現量と比較する。両者の間で有意な相違が見られた場合には、この被験者は、自己免疫疾患による組織傷害を発症しているか、または自己免疫疾患による組織傷害を発症可能性があると診断する。
【0058】
より具体的にいえば、クロスプレゼンテーションが増強したときに発現が上昇する遺伝子の場合には、その遺伝子が健常者と比較して上昇していれば、自己免疫疾患による組織傷害を発症しているか、または自己免疫疾患による組織傷害を発症可能性があると診断できる。一方、クロスプレゼンテーションが増強したときに発現が低下する遺伝子の場合には、その遺伝子が健常者と比較して低下していれば、自己免疫疾患による組織傷害を発症しているか、または自己免疫疾患による組織傷害を発症可能性があると診断できる。
【0059】
〔2.診断キット〕
本発明に係る診断キットは、上述した自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法を実施するために用いる診断キットであって、クロスプレゼンテーションを検出するためのプライマー、プローブ、マイクロアレイおよび抗体のうち、少なくとも1つを備えていればよい。
【0060】
クロスプレゼンテーションを検出するためのプライマー、プローブ、マイクロアレイおよび抗体としては、例えば、活性化したCD8T細胞の識別マーカーを検出するために用いられるものが挙げられる。上述したように、クロスプレゼンテーションにより、CD8T細胞が活性化する。CD8T細胞は、活性化するとCD69、IL−2およびIFNγを産生する。したがって、これらプライマー、プローブ、マイクロアレイまたは抗体を用いて、活性化したCD8T細胞を検出することにより、クロスプレゼンテーションの増強を判定することができる。
【0061】
また、クロスプレゼンテーションを検出するためのプライマー、プローブ、マイクロアレイおよび抗体としては上記したものの他に、クロスプレゼンテーションに関わる遺伝子の発現を検出するためのプライマー、プローブ、マイクロアレイおよび抗体が挙げられる。上述したように、クロスプレゼンテーションに関わる遺伝子の発現の変化を検出することにより、クロスプレゼンテーションの増強を検出することができる。したがって、これらプライマー、プローブ、マイクロアレイまたは抗体を用いて、抗原提示細胞における遺伝子の発現の変化を検出することにより、クロスプレゼンテーションの増強を判定することができる。
【0062】
これらのプライマー、プローブ、マイクロアレイおよび抗体についての説明は、上記〔1.自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法〕の項における説明を準用できる。
【0063】
また、キットの構成としては上述したものに限定されるものではなく、他の酵素、試薬、培養器具および測定器具等を備えていてもよい。
【0064】
本発明に係る判定キットを用いれば、抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションを指標として、自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性を、客観的にかつ簡便に診断することができる。
【0065】
〔3.自己免疫疾患による組織傷害を抑える組織傷害抑制剤〕
本発明に係る組織傷害抑制剤は、自己免疫疾患による組織傷害を抑制する分子を含むことを特徴としている。この分子は、クロスプレゼンテーションを阻害する因子であればよく、その生物学的特性および物理学的特性については特に限定されない。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「因子」は、ポリヌクレオチド(DNA、およびRNAなど)、ペプチド(ポリペプチド、およびタンパク質なと)、糖類(オリゴ糖、多糖類、および糖鎖誘導体など)などの高分子化合物、および低分子化合物が意図される。また、この因子は、クロスプレゼンテーションの阻害に直接的に関与しても、他の因子を介して間接的に関与してもよい。
【0067】
本明細書において、「クロスプレゼンテーションの阻害」には、(i)抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションの生じる頻度が、生体または細胞に対して阻害処理を何もしていない状態または対照の処理をした状態と比較して低くなるようにすること、(ii)クロスプレゼンテーションを促進させる処理をおこなっても、クロスプレゼンテーションの生じる頻度が、阻害処理をおこなわずクロスプレゼンテーションを促進させる処理のみをおこなった状態と比較して低くなるようにすること、および(iii)クロスプレゼンテーションにより提示された抗原および抗原を提示したMHCクラスI分子を、CD8T細胞が認識できないようにすること、が包含される。
【0068】
阻害因子は、上述したようにクロスプレゼンテーションを阻害すれば、特に限定されるものではない。抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを阻害する因子としては、抗原がMHCクラスI分子に提示される過程を阻害する因子であることが好ましい。このような因子としては、クロロキン(chloroquine;CQ)、プリマキン、ブレフェルジンA、ラクタシスチン、MG132、US6およびICP47などが挙げられる。
【0069】
本発明に係る組織傷害抑制剤を被験体に投与することにより、被験体における自己免疫疾患による組織傷害の発症を抑制することができる。
【0070】
組織傷害抑制剤を被験体に投与する方法は、特に限定されるものではなく、使用する組織傷害抑制剤に応じて当業者は適宜決定し得る。好ましい投与方法としては、例えば、経皮的、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、腹腔内、静脈内、関節内、皮下、脊髄腔内、脳室内および経口的な投与が挙げられる。
【0071】
本発明に係る組織傷害抑制剤によれば、クロスプレゼンテーションに起因する自己免疫疾患による組織傷害の発症を抑制することができる。したがって、本発明は、自己免疫疾患による組織傷害の予防および治療に利用することができる。
【0072】
〔4.クロスプレゼンテーションに関わる因子の同定方法〕
本発明に係る同定方法は、抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションの促進に関わる因子の同定方法であって、抗原により被験体を遷延感作する工程と、上記被験体から採取した抗原提示細胞を上記抗原と共培養する工程と、共培養した上記抗原提示細胞において存在量に異常がある因子を検出する工程とを含むものであればよく、その他の具体的な工程、条件、使用器具および使用装置は特に限定されるものではない。
【0073】
本明細書において、「抗原の遷延感作」とは、同一抗原を被験体に繰り返し投与し、抗体産生またはT細胞応答を誘導しておくことが意図される。
【0074】
被験体に抗原を投与する方法は、特に限定されない。好ましい投与方法としては、例えば、経皮的、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、腹腔内、静脈内、関節内、皮下、脊髄腔内、脳室内および経口的な投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
繰り返し投与における、1回あたりの投与量、繰り返しの回数、間隔および期間は、特に限定されるものではなく、使用する抗原、傷害を引き起こされる組織、傷害の程度および態様、被験体の種類、体重および状態等に応じて適宜決定すればよい。例えば、繰り返しの回数は、8回〜24回、各投与間の間隔は、5日〜15日、繰り返し投与をおこなう期間は、40日間〜20週間おこなうことが好ましい。
【0076】
遷延感作に用いる抗原は、最終的にMHC抗原により提示され得る物質であればよく、例えば、RNAおよびDNA等のポリヌクレオチド、ペプチドおよびタンパク質等のポリペプチド、オリゴ糖、多糖類および糖類誘導体等の糖類、ならびにその他の高分子化合物および低分子化合物等が挙げられる。
【0077】
遷延感作に用いる抗原として好ましいのは、卵白アルブミン(ovalbumin;OVA)である。
【0078】
抗原提示細胞を抗原と共培養する方法は、抗原提示細胞を抗原の存在下において培養するものであれば、特に限定されるものではない。培養する細胞、および使用する抗原等に応じて、当業者は適宜決定し得る。
【0079】
本明細書中で用いられる限り、「存在量に異常がある」とは、遷延感作した被験体の抗原提示細胞を抗原と共培養した場合と、遷延感作していない被験体の抗原提示細胞を抗原と共培養した場合とを比較して、抗原提示細胞における存在量に変化があることが意図される。また、存在量に変化があるとは、存在量が増加しているもの、および減少しているものいずれをも含む意味である。
【0080】
存在量に異常がある因子を検出する方法は、抗原提示細胞における存在量の変化を検出できる方法であれば、特に限定されるものではない。存在量に異常がある因子を検出する方法としては、マイクロアレイ、ディファレンシャル・ディスプレイ法、二次元電気泳動、質量分析など、従来公知のトランスクリプトーム解析手法、プロテオーム解析手法およびメタボローム解析手法を用いることができる。
【0081】
抗原提示細胞からmRNA、全RNA、タンパク質、糖類、または代謝産物を抽出する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いて抽出することができる。また、市販のキットを用いて抽出することもできる。
【0082】
本発明に係る同定方法の一実施形態において、存在量に異常がある因子を検出する方法は、抗原提示細胞から抽出したRNAを用いたマイクロアレイ解析であることが好ましい。マイクロアレイ解析によれば、簡便に、多数の遺伝子に関する情報を得ることができる。
【0083】
本発明に係る同定方法によれば、クロスプレゼンテーションが促進されたときに、存在量が変化する因子を同定することができる。抗原提示細胞内において、これら同定された因子の量を測定することにより、クロスプレゼンテーションの増強の有無を検出できる。したがって、本発明に係る同定方法により得られた因子を検出することにより、自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性を診断することができる。また、本発明に係る同定方法により得られた因子の量を調節することにより、クロスプレゼンテーションの増強を調節でき、自己免疫疾患による組織傷害の発症を誘導したり、または抑制したりすることができる。
【0084】
〔5.自己免疫疾患による組織傷害を発症する組織傷害発症モデル動物の製造方法〕
本発明に係る組織傷害発症モデル動物の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう)は、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを促進する工程を含むものであればよく、その他の具体的な工程、条件、使用器具および使用装置は特に限定されるものではない。
【0085】
抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを促進する方法は、促進させる処理をおこなった抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションの頻度が、対照抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションの頻度よりも高くなればよく、特に限定されるものではない。抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを促進する方法としては、例えば、被験体に対する抗原の遷延感作が挙げられる。
【0086】
本発明の製造方法における一実施形態において、非ヒト哺乳動物を抗原により遷延感作することにより、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを促進することができる。
【0087】
被験体を遷延感作する方法としては、例えば、上記〔4.クロスプレゼンテーションに関わる因子の同定方法〕において説明した方法を用いることができる。
【0088】
被験体である非ヒト哺乳動物としては、ヒト以外の哺乳動物であれば限定されるものではないが、ヒトの自己免疫疾患による組織傷害に対する予防法または治療法を開発するために用いられる実験動物が好ましい。具体的には、マウス、ラット、ウサギ、サル、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシおよびイヌ等が挙げられる。
【0089】
また、本発明の製造方法における別の実施形態において、抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションが促進した生体から、活性化したCD8T細胞を採取し、採取した活性化CD8T細胞を別の生体に移入することにより、自己免疫疾患による組織傷害を発症するモデル動物を製造することができる。
【0090】
CD8T細胞を生体に移入する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。例えば、皮下、皮内、静脈、動脈および腹腔に注入する方法が挙げられる。活性化したCD8T細胞を生体に移入する場合に、移入するCD8T細胞は、移入先である生体と同種または同系の動物由来であることが好ましい。
【0091】
また、活性化したCD8T細胞は、例えば、末梢血、脾臓、リンパ節、肝臓および皮膚などの各生体器官または生体組織から、公知の方法に従って採取すればよい。
【0092】
本発明の製造方法によれば、免疫性の組織傷害を引き起こした非ヒトモデル動物を製造することができる。したがって、本発明は、自己免疫疾患による組織傷害を発症する組織傷害発症モデル動物を用いた自己免疫疾患による組織傷害の研究(例えば、自己免疫疾患による組織傷害の予防剤および治療剤のスクリーニングなど)に利用することができる。
【0093】
なお、組織傷害発症モデル動物が自己免疫疾患による組織傷害を発症しているか否か、またはその可能性があるか否かは、上述した本発明の診断方法により診断することができる。また、組織傷害発症モデル動物が自己免疫疾患による組織傷害を発症しているか否かを検出するその他の方法としては、組織における遺伝子発現の異常の有無の検出、生理学的手法(例えば、物質生産、物質分泌、物質吸収および物質分解等の検出)、組織免疫染色などの組織病理学的手法、および組織傷害を識別するために用いられる従来公知の識別マーカーを指標とした手法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの手法は、単独で、または複数のものを組み合わせて用いられてもよい。
【0094】
〔6.自己免疫疾患による組織傷害の治療剤のスクリーニング方法〕
本発明に係るスクリーニング方法は、自己免疫疾患による組織傷害を誘導する組織傷害誘導剤により遷延感作した生体由来の抗原提示細胞を、候補因子の存在下にて培養する培養工程と、培養工程の後に、上記抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションを検出する検出工程とを含むことを特徴とする。
【0095】
本発明における遷延感作は、被験体を遷延感作できれば特に限定されるものではなく、例えば、上記〔4.クロスプレゼンテーションに関わる因子の同定方法〕の項で説明した方法を用いることができる。
【0096】
候補因子は、特に限定されるものではなく、クロスプレゼンテーションを直接的または間接的に阻害することが期待される、ポリヌクレオチド(DNA、およびRNAなど)、ペプチド(ポリペプチド、およびタンパク質なと)、糖類(オリゴ糖、多糖類、および糖鎖誘導体など)などの高分子化合物、および低分子化合物が好ましい。
【0097】
上述した本発明に係るスクリーニング方法を用いることにより、自己免疫疾患による組織傷害の治療剤を得ることができる。
【0098】
また、本発明により得られる治療剤は、クロスプレゼンテーションに起因する自己免疫疾患による組織傷害を引き起こしている患者の治療に用いられ得る。
【0099】
臨床適用のための治療剤の投与条件は、本明細書に記載した組織傷害発症モデル動物系を用いて決定され得る。すなわち、このモデル動物を用いて、投与量、投与間隔、投与ルートなどの投与条件を検討し、適切な予防効果または治療効果を得るための条件が決定され得る。このような治療剤は、自己免疫疾患による組織傷害の発症に対する予防または治療のための医薬となる。
【0100】
また、治療剤は、薬学的に受容可能な任意のキャリアをさらに含む組成物であり得る。キャリアとしては、例えば、滅菌水、生理食塩水、緩衝剤、植物油、乳化剤、懸濁剤、塩、安定剤、保存剤、界面活性剤、徐放剤、他のタンパク質(BSAなど)およびトランスフェクション試薬(リポフェクション試薬、リポソーム等を含む)等が挙げられる。さらに、本発明において使用可能なキャリアとしては、グルコース、ラクトース、アラビアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンのり、マグネシウムトリシリケート、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイドシリカ、ばれいしょデンプンおよび尿素などが挙げられる。
【0101】
本発明に係るスクリーニング方法により得られた治療剤が製剤化される場合の剤型は、特に制限されず、例えば、溶液(注射剤)、粉体、マイクロカプセルまたは錠剤などであってもよい。例えば、本発明に係る治療剤を徐放剤と組み合わせるか、または徐放性容器(例えば、カプセル)中に格納することにより、自己免疫疾患による組織傷害を発症している組織を標的とするドラッグデリバリーをおこなうことが可能となる。それにより、効果的な治療がおこなわれ得る。
【0102】
本発明に係るスクリーニング方法により得られた治療剤の患者への投与経路は、有効成分の性質に応じて適宜選択され、例えば、経皮的、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、腹腔内、静脈内、関節内、皮下、脊髄腔内、脳室内または経口的におこなわれ得るがこれらに限定されない。また、治療剤は全身的または局所的に投与され得るが、全身投与による副作用が問題となる場合には、病変部位への局所投与が好ましい。投与量および投与方法は、治療剤の有効成分の組織移行性、治療目的、患者の体重、年齢、症状などにより変動するが、当業者は適宜選択し得る。
【0103】
本発明に係るスクリーニング方法により得られた治療剤は、目的物質を総組成物の0.1〜90重量%含む。治療剤中に含まれる目的物質の投与量は、非経口投与では、1日当たり体重1kg当たり、0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg〜300mg、より好ましくは0.01mg〜100mgである。しかし、疾患状態、体重、治療に対する患者の個々反応、治療剤が投与される組成物の種類、投与形態、病気の経過の段階、または投与の間隔に依存して、これら投与頻度は適宜調整され得る。なお、投与は、1回〜数回に分けておこなわれ得、1日あたり1〜5回投与され得る。
【0104】
治療対象となる個体としては、例えば、ヒトおよび非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、およびサルなど)、ならびにその他の脊椎動物が挙げられる。非ヒト哺乳動物への適用は、ヒトの組織傷害疾患に対する予防法または治療法を開発するためにも有用である。例えば、非ヒト哺乳動物を用いて作製したモデル動物を用いることにより、自己免疫疾患による組織傷害の発症を予防する新たな治療プロトコルを開発することができる。
【0105】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0106】
[実施例1:CD8T細胞による組織傷害の誘導]
BALB/cマウスに、0.5mgの卵白アルブミン(ovalbumin;OVA)またはPBSを5日毎に1回、合計12回、腹腔内投与により投与した。投与後のマウスの脾臓から、B細胞(B220陽性細胞)、T細胞(CD3陽性細胞)、CD4T細胞(CD4陽性細胞)およびCD8T細胞を磁気ビーズにより単離した。
【0107】
これらの細胞を2.5×10個ずつ、それぞれ別の未感作のBALB/cマウスに、静脈注射により養子移入した。細胞の移入から24時間後に、0.5mgのOVAを1回腹腔内投与した。細胞の移入から2週間後にタンパク尿を検出した。さらに、これらのマウスを屠殺した後、ヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色、H&E染色)により腎臓の病理学的評価をおこなった。
【0108】
タンパク尿の検出結果を図1に示す。図1に示すように、T細胞移入群においてタンパク尿が検出された。また、CD4T細胞移入群とCD8+T細胞移入群とを比較すると、タンパク尿の陽性度は、CD8T細胞移入群の方がより高かった。
【0109】
腎臓のHE染色の結果を図2に示す。図2に示すように、腎臓の病理学的評価の結果、CD8T細胞移入群では、増殖性糸球体腎炎が発症していた。
【0110】
以上より、OVAの遷延感作により活性化したCD8T細胞を移入することにより、組織傷害が誘導されることが分かった。
【0111】
[実施例2:CD8T細胞欠損による組織傷害の抑制]
BALB/cマウス(野生型マウス)およびCD8T細胞欠損マウスであるβ−microglobulin(βm)欠損マウス(遺伝的背景はBALB/cマウス)に、0.5mgのOVAまたはPBSを5日毎に1回、合計12回、腹腔内投与により投与した。
【0112】
最終投与から9日目にタンパク尿を検出した。さらに、これらのマウスを屠殺し、腎臓におけるIgGとC3との免疫複合体の沈着を、免疫蛍光染色により検出した。
【0113】
免疫蛍光染色による結果を図3に示す。図3に示すように、OVAを12回投与したβm欠損マウスの腎臓における免疫複合体の沈着は、野生型マウスの腎臓における沈着と同程度であった。
【0114】
タンパク尿の検出結果を図4に示す。図4に示すように、βm欠損マウスにおけるタンパク尿の陽性度は、野生型マウスにおける陽性度と比較して低下していた。
【0115】
野生型マウスと比較して、βm欠損マウスでは、免疫複合体の沈着は同程度であるが、タンパク尿の陽性度が低下していることから、CD8T細胞欠損マウスでは腎炎が抑制されることが示された。
【0116】
以上より、自己免疫疾患による組織傷害には、CD8T細胞が必要であることが分かった。
【0117】
[実施例3:クロスプレゼンテーションによるCD8T細胞の活性化]
BALB/cマウスに、0.5mgのOVAまたはPBSを5日毎に1回、合計12回、腹腔内投与により投与した。投与後のマウスの脾臓から樹状細胞(dendritic cell;DC、CD11c陽性細胞)を磁気ビーズにより単離し、in vitroにおいてOVA(1mg/ml)と共に3時間培養した。OVAをパルスしたDCを、OVA特異的T細胞レセプター(TCR)が導入されているトランスジェニックマウス(DO11.10TCR TGマウス)から単離したOVA応答性CD8T細胞と共に培養した。
【0118】
OVA応答性CD8T細胞との共培養を開始してから24時間後、CD8T細胞上のCD69(活性化マーカー)の発現をFACSで検出した。さらに、培養上清中のIL−2およびIFNγをELISAにより測定し、OVA応答性CD8T細胞の活性化を検討した。
【0119】
なお、DCにOVAをパルスした際、処理されたOVAペプチドがMHCクラスI上に提示されなければ、OVA応答性CD8T細胞が活性化されることはない。クロスプレゼンテーションが起こり、OVAペプチドがMHCクラスI上に提示されると、OVA応答性CD8T細胞が活性化される。したがって、DCとの共培養後のOVA応答性CD8T細胞の活性化を解析することにより、DCにおける抗原のクロスプレゼンテーションの有無を検討することができる。
【0120】
OVA応答性CD8T細胞におけるCD69の発現の検出結果を図5に示す。図中(a)は、CD69を発現しているOVA応答性CD8T細胞の割合を計測した結果であり、図中(b)は、(a)の結果を棒グラフとして表したものである。図5に示すように、PBS投与群のDC(図中、「PBS DC」)を用いた場合と比較して、OVA投与群(図中、「OVA DC」)を用いて共培養をおこなった場合には、OVA応答性CD8T細胞(DO11.10 CD8 T cell)におけるCD69の発現が有意に(P<0.001)増加した。
【0121】
培養上清中のIL−2およびIFNγの発現の検出結果を図6に示す。図6に示すように、培養上清中のIL−2およびIFNγも同様に、OVA投与群のDCを用いて共培養をおこなった場合には、これらの産生が有意に(IL−2:P<0.001、IFNγ:P<0.005)増加した。
【0122】
以上より、OVAの繰り返し投与によって、DCにおけるクロスプレゼンテーションが増強し、これによりCD8T細胞が活性化することが分かった。
【0123】
[実施例4:in vitroにおけるクロスプレゼンテーションの阻害]
BALB/cマウスに、0.5mgのOVAまたはPBSを5日毎に1回、合計12回、腹腔内投与により投与した。投与後のマウスの脾臓からDC(CD11c陽性細胞)を磁気ビーズにより単離し、in vitroにおいてクロロキン(chloroquine;CQ)(20μg/ml)と共に2時間培養し、その後、クロロキンを含まない培養液中においてOVA(1mg/ml)と共に3時間培養した。
【0124】
CQおよびOVAをパルスしたDCを、OVA特異的TCRが導入されているDO11.10TCR TGマウスから単離したOVA応答性CD8T細胞およびCD4T細胞とそれぞれ共培養した。
【0125】
OVA応答性CD8T細胞およびCD4T細胞とのそれぞれの共培養開始から24時間後、CD8+T細胞およびCD4+T細胞上のCD69の発現をFACSで検出し、OVA応答性T細胞の活性化を検討した。
【0126】
OVA応答性T細胞におけるCD69の発現の検出結果を図7に示す。図7に示すように、実施例3においても示したとおり、DCにOVAのみをパルスする場合に、OVA投与群のDC(図中、「OVA DC」)を用いて共培養をおこなうと、OVA応答性CD8T細胞(図中、「DO11.10CD8 T cell」)におけるCD69の発現が増加した。
【0127】
一方、DCにCQをパルスすると、OVA投与群のDCを用いた場合でも、OVA応答性CD8T細胞上のCD69の発現はPBS投与群のDC(図中、「PBS DC」)を用いた場合と同程度に抑制された。
【0128】
OVAのみをパルスしたDCをOVA応答性CD4T細胞(DO11.10CD4 T cell)と共培養した場合、OVA投与群およびPBS投与群のDCは、互いに同程度にOVA応答性CD4T細胞を活性化させた。さらに、DCにCQをパルスした場合でもOVA応答性CD4T細胞を十分に活性化させた。
【0129】
以上より、CQはCD4T細胞の活性化には影響せず、CD8T細胞の活性化のみを抑制する、すなわちクロスプレゼンテーションを阻害することが分かった。
【0130】
[実施例5:クロスプレゼンテーションの阻害による組織傷害の抑制]
BALB/cマウスに、250μgのCQを腹腔内投与により投与し、3時間後に、0.5mgのOVAまたはPBSを腹腔内投与により投与した。これを5日毎に1回、合計12回繰り返しおこなった。
【0131】
最終投与から9日目にタンパク尿を検出した。さらに、このマウスを屠殺し、脾細胞の細胞内染色をおこない、IFNγ産生CD8T細胞をFACSにより検出した。
【0132】
IFNγ産生CD8T細胞の検出結果を図8に示す。図8に示すように、OVAを単独で繰り返し投与した場合には、IFNγ産生CD8T細胞の割合は増加する。これに対し、CQとOVAとを繰り返し投与した場合(図中、「CQ+OVA」)には、IFNγ産生CD8T細胞の割合は増加しなかった。
【0133】
タンパク尿の検出結果を図9に示す。図9に示すように、CQとOVAとを繰り返し投与した場合に検出されるタンパク尿は、OVA単独を繰り返し投与した場合におけるタンパク尿と比較して、陽性度が低下していた。
【0134】
CQの投与によりクロスプレゼンテーションを阻害することで、CD8T細胞の活性化を抑制し、腎炎を抑制した。
【0135】
[実施例6:クロスプレゼンテーションに関与する遺伝子の探索]
BALB/cマウスに、0.5mgのOVAまたはPBSを5日毎に1回、合計12回腹腔内投与により投与した。これらのマウスの脾臓からDC(CD11c陽性細胞)を磁気ビーズにより単離した。DCをOVA(1mg/ml)と共に3時間培養し、クロスプレゼンテーションを誘導した後、RNAを抽出した。このRNAを用いてAgilent社のWhole Mouse Genome Oligo Microarrayによりマイクロアレイ解析をおこない、PBS投与群およびOVA投与群のDCにおける遺伝子発現を比較した。
【0136】
PBS投与群のDCにおける発現と比較して、OVA投与群のDCにおけるmRNAの発現が5倍以上増加していた遺伝子を表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
表1に示すように、クロスプレゼンテーションに関与する遺伝子を同定することができた。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上のように、本発明によれば、クロスプレゼンテーションを指標として、自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性を診断することができる。また、本発明は、自己免疫疾患による組織傷害の予防または治療のための医薬品のスクリーニング試験などに好適に用いることができる。したがって、本発明は、医療分野、製薬分野および保健医学分野をはじめ、生命科学分野の産業に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本実施例において、抗原を繰り返し投与したBALB/cマウスの細胞が移入されたマウスのタンパク尿を測定した結果を示すグラフである。
【図2】本実施例において、抗原を繰り返し投与したBALB/cマウスの細胞が移入されたマウスにおける腎炎の発症を調べた結果を示す図である。
【図3】本実施例において、抗原を繰り返し投与したCD8T細胞欠損マウスの腎臓における免疫複合体の沈着を、免疫蛍光染色により検出した結果を示す図である。
【図4】本実施例において、抗原を繰り返し投与したCD8T細胞欠損マウスのタンパク尿を測定した結果を示すグラフである。
【図5】(a)および(b)は、本実施例において、抗原を繰り返し投与したBALB/cマウスのDCと共に培養したOVA応答性CD8T細胞における、CD69陽性細胞の変動を調べた結果を示す図である。
【図6】本実施例において、抗原を繰り返し投与したBALB/cマウスのDCと共に培養したOVA応答性CD8T細胞が産生した、IL−2およびIFNγの量の変動を調べた結果を示す図である。
【図7】本実施例において、抗原を繰り返し投与したBALB/cマウスのDCと共にCQの存在下で共培養したOVA応答性CD8T細胞における、CD69陽性細胞の変動を調べた結果を示す図である。
【図8】本実施例において、抗原およびCQを繰り返し投与したBALB/cマウスのCD8T細胞におけるIFNγの産生細胞の変動を調べた結果を示す図である。
【図9】本実施例において、抗原およびCQを繰り返し投与したBALB/cマウスのタンパク尿を測定した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から採取した試料における抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを検出する工程を含む、自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法。
【請求項2】
抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションに関わる遺伝子の発現の変化を検出することにより、上記クロスプレゼンテーションを検出することを特徴とする請求項1に記載の診断方法。
【請求項3】
CD8T細胞の活性化を検出することにより、上記クロスプレゼンテーションを検出することを特徴とする請求項1に記載の診断方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断方法を実施するために用いる診断キットであって、
上記クロスプレゼンテーションを検出するためのプライマー、プローブ、マイクロアレイおよび抗体のうち、少なくとも1つを備えていることを特徴とする自己免疫疾患による組織傷害の発症または発症可能性の診断キット。
【請求項5】
抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを阻害する因子を含む、自己免疫疾患による組織傷害を抑える組織傷害抑制剤であって、該因子がクロロキン、プリマキン、ブレフェルジンA、ラクタシスチン、MG132、US6またはICP47であることを特徴とする組織傷害抑制剤。
【請求項6】
抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションに関わる因子の同定方法であって、
抗原により被験体を遷延感作する工程と、
上記被験体から採取した抗原提示細胞を上記抗原と共培養する工程と、
共培養した上記抗原提示細胞において存在量に異常がある因子を検出する工程とを含む、同定方法。
【請求項7】
抗原提示細胞のクロスプレゼンテーションを促進する工程を含む、自己免疫疾患による組織傷害を発症する組織傷害発症モデル動物の製造方法。
【請求項8】
遷延感作により、上記クロスプレゼンテーションの促進をおこなうことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
自己免疫疾患による組織傷害の治療剤をスクリーニングする方法であって、
自己免疫疾患による組織傷害を誘導する組織傷害誘導剤により遷延感作した生体由来の抗原提示細胞を、候補因子の存在下にて培養する培養工程と、
培養工程の後に、上記抗原提示細胞におけるクロスプレゼンテーションを検出する検出工程とを含むことを特徴とするスクリーニング方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−4750(P2010−4750A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164584(P2008−164584)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.「第52回日本リウマチ学会総会・学術集会第17回国際リウマチシンポジウムプログラム・抄録集」 発行日 平成20年3月21日 発行所 有限責任中間法人 日本リウマチ学会 2.「MODERN RHEUMATOLOGY,ABSTRACT SUPPLEMENT The 52nd Annual Scientific Meeting and The 17th International Rheumatology Symposium 」 発行日 平成20年3月21日 発行所 Japan College of Rheumatology(JCR) MR Editorial Board 3.「最新医学」第63巻 第5号 発行日 平成20年5月10日 発行所 株式会社最新医学社
【出願人】(504156706)株式会社膠原病研究所 (13)
【Fターム(参考)】