自己免疫疾患の予防および抑制のための寄生生物剤の使用

【課題】過剰な免疫応答または異常な/増強したTh1応答が関与する自己免疫疾患に関する、より詳しくは、クローン病および潰瘍性大腸炎(共にIBDとして公知である)の治療法を提供する。
【解決手段】個体における過剰な免疫応答を軽減するのに十分な量の寄生蠕虫製剤を投与することによる、異常な/増強したTh1応答を含む過剰な免疫応答の治療方法。また、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、紅斑性狼瘡、サルコイドーシスおよび多発性硬化症は、該方法および該組成物により治療されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1997年12月31日付け出願の米国仮特許出願第60/070,147号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、過剰な免疫応答から生じる個体の症状または疾病の予防および/または治療に関する。
【背景技術】
【0003】
寄生生物は、その生活環の一部の間、他の生物宿主から栄養を吸収しながら該宿主の内部または表面に寄生する生命体である。腸に生息する寄生生物は、粘膜免疫系との間で複雑な相互作用を行なう。それは、生存するためには宿主の粘膜防御との間で安定した関係を確立する必要がある。
【0004】
蠕虫は、複雑な生活環および発生を有する精巧な多細胞虫類である。ヒトの腸内でコロニーを形成する2つの蠕虫群として、線虫(非分節化回虫)および扁形動物(扁虫)が挙げられる。現在、おそらく世界の人口の3分の1以上がこれらの生物の1種以上に寄生されている。しかしながら、一生の間にそれらにさらされる割合は実際にははるかに高い。蠕虫の罹患率は、温暖な気候帯において、ならびに人口密集、衛生不良および不潔な食料の供給にさらされる集団において最も高い。炎症性腸疾患(IBD)、慢性関節リウマチおよび自己免疫疾患は、これらの地域では稀である。
【0005】
ヒトの腸にしばしば生息する線虫としては、回虫(Ascaris lumbricoides)、ぎょう虫(Enterobius vermicularis)、鞭虫(Trichuris trichiura)、十二指腸虫(Ancylostoma duodenale)およびアメリカ十二指腸虫(Necator americanus)(鉤虫)ならびに糞線虫(Strongyloides stercoralis)が挙げられる。旋毛虫(Trichinella spiralis)は、しばらくの間、小腸に寄生する。
【0006】
扁形動物には吸虫および条虫が含まれる。ヒトの腸内に生息する最も一般的な成体吸虫としては、肥大吸虫(Fasciolopsis)、棘口吸虫(Echinostoma)および異形吸虫(Heterophyes)種が挙げられる。胆管系に生息するものには、肝吸虫(Clonorchis sinensis)、タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)、ネコ肝吸虫(Opisthorchis felineus)および肝蛭(Fasciola hepatica)が含まれる。住血吸虫(Schistosoma)は静脈系内に寄生するが、いくつかの種は、腸壁を通して卵を通過させることにより慢性的に腸を冒す。一般にヒトに感染する成体条虫としては、裂頭条虫(Diphyllobothrium)種(魚類条虫)、無鉤条虫(Taenia saginata)(かぎなしさなだ)、有鉤条虫(Taenia solium)(かぎさなだ)および小形条虫(Hymenolepsis nana)(矮小条虫)が挙げられる。
【0007】
宿主は、伝染形態の寄生虫に汚染された土壌、食物または水との接触により種々の蠕虫種を取込む。小児は、土壌と密接に接触し衛生上最適とは言えない活動を行なうため、蠕虫感染に最も頻繁に冒される。蠕虫は腸のTh2応答を誘発し、これにより、寄生虫が駆除されたり感染の度合が抑制されうる。開発途上国に住むほとんどの子供が、これらの寄生虫を有する。多数の蠕虫種は腸、胆管樹(biliary tree)または腸間膜静脈内で数年にわたり生存し、毎日、数千個の卵を産む。したがって、幼少期の初期に、これらの寄生虫および/またはそれらの卵は、腸粘膜表面を覆う分子を何年にもわたり放出し、Th2型炎症を誘発する。過剰なTh1応答を招く免疫系の調節不全が、ヒトにおけるいくつかの疾患の原因かもしれない。優勢なTh1応答によるいくつかの疾患には、IBD、慢性関節リウマチ、サルコイドーシス、多発性硬化症およびインスリン依存性糖尿病が含まれる。
【0008】
IBDは、温和な気候帯において、より一般的である。地理的な相違の原因は不明である。温和な気候の国および工業先進国社会に特有の環境にさらされることがIBDの発生の素因を与える、と種々の観察が示唆している。もう1つの解釈は、「清潔すぎる」環境での生育が健康によくないというものである。IBDの素因を与える主な環境的要因は、強力なTh2型炎症を促進する、幼少期の間の腸蠕虫への暴露の不足であることを、本発明において提案する。
【0009】
CDの頻度は、過去40年にわたり実質的に増加してきている。それは、高度に工業化された温帯地方において最も頻繁に見られる。これは、頻度の変化をもたらすいくつかの重要な環境的要因が存在することを示唆している。また、潰瘍性大腸炎は発展途上国では稀である。幼少期に腸蠕虫感染にさらされないことが、CDおよび恐らく潰瘍性大腸炎(UC)の発生を促進する重要な環境的要因であることを、本発明で提案する。
【0010】
先進工業国の人々は、益々衛生的になりつつある環境で生活しており、蠕虫を取込む頻度ははるかに低い。蠕虫感染の頻度の低下は、CDの罹患率の増加と相関するらしい。そのよい例が、イスラエルに10年以上住んだ後の若いアジア人およびアフリカ人におけるCDの頻度の著しい増加である。また、蠕虫の寄生の頻度はユダヤのイスラエル人とアラブ人とで異なる。1969年における、アラブ人が優勢な東エルサレムの入院患者の検便は、当時の60%以上が蠕虫卵を含有していた。イスラエル人が優勢な東エルサレムにおける頻度は10%以下であった。
【0011】
したがって、蠕虫に寄生されず粘膜性Th2条件付けを経験していないことがCDおよびUCの素因を与えている可能性がある。防御を与えうるこれらの生物を胃腸管において再コロニー形成(recolonization)させることによりCDおよびUCに対処することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの目的は、個体における過剰な免疫応答を予防または治療することである。過剰または異常な免疫応答は、自己免疫疾患(例えば、IBD、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、紅斑性狼瘡、サルコイドーシスおよび多発性硬化症)により引き起こされうる。
【0013】
さらに、自己免疫疾患(例えば、IBD、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、紅斑性狼瘡、サルコイドーシスおよび多発性硬化症)に対して個体にワクチン接種する方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0014】
IBDの改善を促進する個体における免疫環境を作る方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0015】
寄生蠕虫と製薬上許容される担体とを含む医薬組成物を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0016】
病原体を含有しない寄生蠕虫および許容される医薬担体を提供することが、本発明のもう1つの目的である。
【0017】
病原体を含有しない寄生蠕虫の製造方法を提供することが、本発明のもう1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、個体における過剰な免疫応答を軽減するために寄生蠕虫製剤の有効量を投与することによる、個体における過剰な免疫応答の予防または治療方法を提供する。
【0019】
本発明は、過剰な免疫応答を軽減するのに十分な量の寄生蠕虫製剤を投与することを含んでなる、異常な/増強したTh1応答を含む過剰な免疫応答の治療方法を含む。
【0020】
本発明で用いる「寄生蠕虫製剤」なる語は、全寄生虫、寄生虫抽出物、寄生虫卵、寄生虫卵抽出物、寄生虫幼虫、寄生虫幼虫抽出物、寄生虫セルカリアおよび寄生虫セルカリア抽出物の任意のものを意味する。
【0021】
該蠕虫製剤は、自然界でヒトにおいてコロニーを形成する蠕虫および動物においてコロニーを形成するが過剰なTh1応答からヒトを防御しうる蠕虫よりなる群から選ばれうる。
【0022】
本発明の他の好ましい実施形態においては、該寄生蠕虫は線虫であり、回虫(Ascaris lumbricoides)、ぎょう虫(Enterobius vermicularis)、鞭虫(Trichuris trichiura)、十二指腸虫(Ancylostoma duodenale)およびアメリカ十二指腸虫(Necator americanus)、糞線虫(Strongyloides stercoralis)ならびに旋毛虫(Trichinella spiralis)などの群から選ばれうる。
【0023】
本発明の他の好ましい実施形態においては、該寄生蠕虫は扁形動物であり、吸虫および条虫、例えば、肥大吸虫(Fasciolopsis)、棘口吸虫(Echinostoma)および異形吸虫(Heterophyes)種、肝吸虫(Clonorchis sinensis)、タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)、ネコ肝吸虫(Opisthorchis felineus)、肝蛭(Fasciola hepatica)、住血吸虫(Schistosoma)種、裂頭条虫(Diphyllobothrium)種、無鉤条虫(Taenia saginata)、有鉤条虫(Taenia solium)および小形条虫(Hymenolepsis nana)よりなる群から選ばれうる。
【0024】
他の好ましい実施形態においては、該寄生蠕虫は、フィラリア原性寄生虫および肺吸虫よりなる群から選ばれる。
【0025】
追加的な実施形態においては、該寄生蠕虫は、Trichuris muris、旋毛虫(Trichinella spiralis)、Nippostrongylus prasiliensis、Heligmonsomoides polygyrus、小形条虫(Hymenolepsis nanan)、アンギオストロンギルス(Angiostrongylus)種、Trichuris suis、ブタ回虫(Ascaris suum)、Trichuris vuipis、トキソカラ(Toxocara)種、顎口虫(Gnathostoma)種、鉤虫(Anacylostoma)種、アニサキス(Anisakis)種およびPseudoterranova種よりなる群から選ばれる。
【0026】
本発明はまた、個体における自己免疫疾患を予防または治療するのに十分な量の寄生蠕虫を投与することを含んでなる、個体における自己免疫疾患の予防または治療方法を含む。
【0027】
本発明で用いる「自己免疫疾患」なる語は、IBD、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、紅斑性狼瘡、サルコイドーシス、多発性硬化症などの疾患を意味する。
【0028】
該寄生蠕虫製剤の「有効な投与」量は、過剰または異常な免疫応答の具体的な原因に左右され、後記において詳細に検討する。
【0029】
本発明で用いる「過剰」または「異常」な免疫応答は、該疾患に冒されていない個体におけるTヘルパー1細胞の活性に比べて、Tヘルパー1細胞の活性が個体において上昇しているTヘルパー細胞1型(Th1)応答を意味する。典型的には、罹患個体におけるTh1応答の上昇は、罹患していない個体におけるTh1応答の少なくとも2倍、場合によっては5倍、10倍であろう。Th1型炎症は、大量のIFN-γおよびTNFαを産生し、今度はこれらが強力な細胞性免疫反応を刺激する。後記において詳細に説明するとおり、これらは、過剰または異常なTh1応答を示すために測定されうるサイトカインの一部である。
【0030】
好ましくは、該寄生蠕虫は、寄生虫、寄生虫抽出物、寄生虫卵、寄生虫卵抽出物、寄生虫幼虫、寄生虫幼虫抽出物、セルカリアおよびセルカリア抽出物よりなる群から選ばれる。
【0031】
本発明はまた、IBDを軽減するのに十分な量の寄生蠕虫製剤を投与することを含んでなる、IBDの治療方法を含む。
【0032】
本発明はまた、過剰な免疫応答を予防するのに十分な量の寄生蠕虫製剤を投与することを含んでなる、過剰な免疫応答が関与する疾患に対して個体にワクチン接種する方法を含む。
【0033】
本発明はまた、寄生蠕虫製剤と製薬上許容される担体とを含んでなる医薬組成物を含む。
【0034】
本発明のその他の特徴および利点は、本発明の実施形態および図面に関する以下の説明において及び特許請求の範囲から、より完全に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、M.avium、S.mansoniまたはそれらの両方の生物に感染したマウスの脾臓細胞上清中で測定したIFNγ、IL-4およびIL-5の濃度を示す。最適濃度のPPDまたはSEAの存在下または不存在下、200μlの培地中、脾細胞(4 x 105/ウェル)をin vitroで37℃にて48時間培養した。サイトカインの分泌をELISAにより定量した。
【図2】図2は、M.avium、S.mansoniまたはそれらの両方の生物に感染したマウスの肉芽腫細胞上清中のIFNγおよびIL-4の濃度を示す。最適濃度のPPDまたはSEAの存在下または不存在下、200μlの培地中の肉芽腫細胞(4 x 105/ウェル)をin vitroで37℃にて48時間培養した。サイトカインをELISAにより定量した。
【図3】図3は、M.avium、S.mansoniまたはそれらの両方(同時)に感染したマウスにおいて測定した血清IgG1、IgEおよびIgG2aレベルを示す。免疫グロブリンの濃度をELISAにより測定した。
【図4】図4は、IL-4療法が、慢性H.polygyrus感染のマウスを治療しうることを示す。マウスには、屠殺の12日前から開始してIL-4複合体を3回注射した。データは複数回の測定の平均+/-SEである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、過剰または異常なTh1免疫応答が関与する疾患が寄生蠕虫製剤の投与により治療可能であるという認識に基づく。
【0037】
本発明は、個体における過剰な免疫応答を軽減するのに十分な量の寄生蠕虫製剤を投与することによる、異常な/増強したTh1応答を含む過剰な免疫応答の治療方法に関する。本発明は、一般に、過剰な免疫応答または異常な/増強したTh1応答が関与する自己免疫疾患に関する。より詳しくは、本発明は、クローン病および潰瘍性大腸炎(共にIBDとして公知である)の治療に関する。本発明はIBDの治療に関する特定の情報を開示しているが、該開示は何ら限定的なものではない。また、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、紅斑性狼瘡、サルコイドーシス、多発性硬化症は、本発明で開示する方法および組成物により治療されうる。
【0038】
以下において引用する各参照文献の全開示を、参照により本明細書に組み入れることとする。
【0039】
本発明で有用な寄生蠕虫
寄生蠕虫の定義においては、2つのグループが存在する。第1のグループは、自然界でヒトにおいてコロニーを形成する寄生蠕虫であり、第2のグループは、動物においてコロニー形成するがヒトに防御をもたらしうる寄生蠕虫である。
【0040】
第1のグループにおける寄生蠕虫は、複雑な生活環および発生を有する精巧な多細胞虫類である。ヒトの腸内にコロニーを形成する2つの蠕虫群として、線虫(非分節化回虫)および扁形動物(扁虫)が挙げられる。本発明においては、自然界でヒトまたは動物においてコロニーを形成する多数の寄生蠕虫の任意のものが、意図される結果を与えるであろう。
【0041】
ヒトの腸にしばしば生息する線虫としては、回虫(Ascaris lumbricoides)、ぎょう虫(Enterobius vermicularis)、鞭虫(Trichuris trichiura)、十二指腸虫(Ancylostoma duodenale)およびアメリカ十二指腸虫(Necator americanus)(鉤虫)ならびに糞線虫(Strongyloides stercoralis)が挙げられる。旋毛虫(Trichinella spiralis)は、しばらくの間、小腸に寄生する。
【0042】
扁形動物には吸虫および条虫が含まれる。ヒトの腸内に生息する最も一般的な成体吸虫としては、肥大吸虫(Fasciolopsis)、棘口吸虫(Echinostoma)および異形吸虫(Heterophyes)種が挙げられる。胆管系に生息するものには、肝吸虫(Clonorchis sinensis)、タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)、ネコ肝吸虫(Opisthorchis felineus)および肝蛭(Fasciola hepatica)が含まれる。住血吸虫(Schistosoma)は静脈系内に寄生するが、いくつかの種は、腸壁を通して卵を通過させることにより慢性的に腸を冒す。一般にヒトに感染する成体条虫としては、裂頭条虫(Diphyllobothrium)種(魚類条虫)、無鉤条虫(Taenia saginata)(かぎなしさなだ)、有鉤条虫(Taenia solium)(かぎさなだ)および小形条虫(Hymenolepsis nana)(矮小条虫)が挙げられる。
【0043】
関心のある他の蠕虫には、フィラリア原性寄生虫および肺吸虫が含まれる。これらは腸期(gut phase)をもたないが、強力なTh2型応答を刺激する。
【0044】
本発明で使用しうる寄生蠕虫の第2の一般的グループには、動物においてコロニーを形成するがTh1媒介性疾患に対してヒトを防御しうる蠕虫が含まれる。これらには、Trichuris Muris(マウス鞭虫)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、Nippostrongylus brasiliensis、Heligmonsomoides polygyrusおよび小形条虫(Hymenolepsis nana)(これらはすべて、マウスに感染する腸蠕虫である)が含まれる。また、アンギオストロンギルス(Angiostrongylus)はラット蠕虫である。Trichuris suisおよびブタ回虫(Ascaris suum)は、ヒトに感染しうるブタ蠕虫である。Trichuris vuipis、トキソカラ(Toxocara)種、顎口虫(Gnathostoma)および鉤虫(Anacylostoma)は、ヒトにも感染しうるイヌまたはネコ蠕虫である。アニサキス(Anisakis)およびPseudoterranovaは、ヒトに伝染しうる海洋哺乳動物の線虫である。トリ住血吸虫は、一時的にヒトに感染しうる。そのような住血吸虫には、S.douthitti、Trichobilharzia ocellata、T. stagnicolae、T. physellaeおよびGigantobilharzia huronensisが含まれる。
【0045】
本発明により治療可能な疾患
A.炎症性腸疾患(CDおよびUC)
疫学的データは、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)の発生に対する遺伝的感受性を示唆している。先進工業国社会におけるCDの頻度は1950年代から1980年代中頃にかけて増加しており、現在では1年当たり100,000人当たり1〜8件となっている。このことは、我々の環境における未知の変化がCDの頻度に影響を及ぼしていることを示唆している。
【0046】
IBDの原因は依然として明らかでないが、腸粘膜の免疫系の調節不全から生じると考えられる。通常は、粘膜中の炎症細胞が内腔内容物から我々を防御している。この非常に強力な慢性炎症は、組織損傷を抑制するよう厳密に制御されている。IBDは、内腔因子に対する不適当に激しい免疫応答により生じうる。CDは、IFN-γおよびTNFαを産生する過度に激しいTh1型炎症であるらしい。UCの性質は、それほど十分には明らかにされていない。
【0047】
慢性腸炎症の動物モデルがいくつか存在し、例えば、Elliottらが報告しているもの(Elliottら, 1998, Inflammatory Bowel Disease and Celiac Disease.: The Autoimmune Diseases. 第3版, N.R. RoseおよびI.R. MacKay.編, Academic Press, San Diego, CA)が挙げられる。重要な進歩は、遺伝的に操作された遺伝子欠失を有するいくつかのマウスが、IBDに類似した慢性腸炎症を発生しうることが最近見出されたことである(Elsonら, 1995, Gastroenterology 109:1344を参照されたい)。これらには、とりわけ、IL-2、IL-10、MHCクラスIIまたはTCR遺伝子のターゲッティングされた欠失を有する突然変異マウスが含まれる。これらのモデルのいくつかを用いて、Bergら(1996, J. of Clin. Investigation 98:1010)、Ludvikssonら(1997, J. of Immunol. 158:104)およびMombaertsら(1993, Cell 75:274)は、調節不全の免疫系自体が腸の損傷を媒介しうることを示している。これらのいくつかのモデルの粘膜炎症は大量のINF-γおよびTNF-αを産生する。このことは、Th1型サイトカインの過剰産生が、疾患の病理発生の根底を成す1つの共通のメカニズムであることを示唆している。また、Th1回路の遮断は炎症を抑制する。CDはTh1応答である。したがって、これらのモデルは、このヒト疾患過程の免疫病理学に関して直接的な関係を有するかもしれない。
【0048】
B.慢性関節リウマチ(RA)
RAは、持続性の炎症性滑膜炎を特徴とする慢性疾患であり、通常は、対称に分布するよう末梢関節を冒す。この炎症は骨侵食、軟骨損傷および関節破壊を引き起こしうる。全人口の約1%がそれに悩まされている。その罹患率は年齢と共に増加し、男性より女性の方が頻繁に罹患する。RAの進行は、CD4+ Th1細胞により駆動される免疫学的媒介性事象である。
【0049】
C.インスリン依存性若年型糖尿病(DM)(1型)
1型DMは、通常は成人初期に開始する疾患であり、血糖増加に応答したインスリン産生の不能により生じる。この持続性高血糖および適切なグルコース代謝の不能は、最終的には眼、腎臓、心臓および他の器官を損なう代謝障害を引き起こす。インスリンの非経口摂取は、これらの代謝の問題を部分的に抑制する。1型DMは、インスリンの産生源である膵β細胞に対する自己免疫の攻撃により生じる。活性化されたマクロファージおよび細胞傷害性T細胞は、膵β細胞を包囲し破壊する。遺伝的感受性および十分には明らかにされていない環境的事象が、該疾患過程を誘発する。
【0050】
D.紅斑性狼瘡(LE)
LEは、成人期の初期から中期の女性に最も頻繁に生じる全身性自己免疫疾患である。組織損傷は自己抗体および反応亢進性の調節性T細胞により生じる。異常な免疫応答は病原性の自己抗体および免疫複合体の持続的産生を可能にする。これは筋骨格、皮膚、血液、腎臓および他の系の損傷を招く。異常な免疫応答は、おそらく、複数の遺伝的および環境的要因の相互作用に基づくものであろう。
【0051】
E.サルコイドーシス
サルコイドーシスは、原因不明の肺および他の器官の慢性肉芽腫性疾患である。ほとんどの患者は20〜40歳で発症する。最も頻繁な症状は息切れである。該疾患は、過剰なTh1型細胞性免疫応答(おそらく、限られた数の抗原に対するものである)から生じる。サルコイドーシスは世界中で発生し、すべての人種を冒す。しかしながら、民族および人種群間でサルコイドーシスの罹患率の著しい相違が認められる。例えば、該疾患はポーランド、東南アジアおよびインドでは稀である。
【0052】
F.多発性硬化症(MS)
MSは、病巣の脱髄および脳の瘢痕を引き起こす、中枢神経系の再発性の多病巣性慢性炎症障害である。それは、約350,000人の米国人を冒し成人期の初期から中期に始まるよく見られる疾患である。MSは、少なくとも部分的にTh1細胞に媒介される自己免疫疾患である。MSの病変は、活性化T細胞およびマクロファージを含む遅延型過敏応答により誘発される病変に類似している。それは温和な気候帯の疾患であり、その罹患率は赤道からの距離と共に増加する。
【0053】
本発明の寄生蠕虫製剤
A.生存可能な生物ワクチン
生存可能な寄生蠕虫生物は、最も顕著な粘膜性Th2条件付けを与えうる。なぜなら、それは、成分ワクチンと比べて長い相対寿命を有するからである。生存可能な生物は、蠕虫に応じて、卵、幼虫、セルカリアまたは被嚢幼虫形態のいずれかで投与することができる。ヒトおよび予備動物においてコロニー形成する蠕虫を使用することができる。
【0054】
予備動物は、蠕虫による高い開通性(patency)を可能にするための操作を必要とするかもしれない。そのような操作には、グルココルチコイドまたはアザチオプリンなどの免疫抑制性の物質;抗ヒスタミン剤、抗サイトカイン剤、組換えサイトカインなどのTh2作用を妨げる物質;および抗コリン作用薬、アヘン剤などの腸運動性に影響を及ぼす物質での処理が含まれうる。その動物の食餌は、粗繊維含量を減らすように変更されるであろう。該動物はラット、ブタ、ハムスター、トリまたは他の予備動物であってもよい。
【0055】
予備動物は、当技術分野で公知の方法に従い、特定の病原体を含まない環境(specific pathogen-free:SPF)中で飼育する。ヒトの細菌性、マイコバクテリア性およびウイルス性病原体が存在しないことを確認するために、該動物を試験する。
【0056】
卵:いくつかの腸蠕虫は、生存可能な卵の摂取により取込まれる。蠕虫を、SPF予備動物(例えば、SPFブタ)中で維持する。卵を回収するために、粗繊維が少ない特別の食餌を該動物に与える。便通を促すために、動物に経口下剤を与える。糞便を回収し、酵素的に消化して、卵を遊離させる。密度勾配上での浮選(flotation)、ふるい(screen)濾過、ビッサー(Visser)濾過または遠心溶離により、液化した糞便から卵を単離する。卵の保存は、使用する蠕虫によって異なる。乾燥に抵抗性である蠕虫からの卵は乾燥させ、不活性物質と混合し、腸溶カプセル中に封入し、冷凍保存する。乾燥に感受性である蠕虫からの卵は、液体媒体中での冷凍により又は凍結保護剤の添加および液体窒素中での凍結により保存する。生存可能な卵を洗浄し、ラクトースを含有しない冷却したプディングまたは他のビヒクルと混合する(送達のための場で行なう)。グリセロールをベースとした凍結保護剤中で保存する卵は洗浄を要さないかもしれない。有効な投与量を決定するために、各ロットからの卵を孵化率に関して試験する。各ロットからの卵を、細菌性およびウイルス性病原体の不存在に関して試験する。
【0057】
幼虫:いくつかの蠕虫(すなわち、鉤虫)は、ヒトにおいてコロニー形成しうる前に土壌成熟期を必要とする。これらの寄生因子からの卵を最適な条件下でインキュベートして、胚を成熟させ又は卵を孵化させ幼虫形態を得る。生存可能な幼虫の皮下注射により患者に接種することができる。
【0058】
セルカリア:いくつかの蠕虫は、中間宿主を利用する複雑な生活環を有する。中間宿主は、ヒトにおいてコロニー形成しうる形態を放出する。セルカリアは、マキガイなどの中間宿主が放出する吸虫蠕虫(すなわち、吸虫)の形態である。SPF条件中で成長させたコロニー形成したマキガイからセルカリアを単離する。セルカリアを洗浄する。凍結保護剤を加え液体窒素中で凍結することにより、これを保存することができる。融解した又は新鮮なセルカリアを洗浄し、皮下注射して、患者に接種する。各ロットからのサンプルを、病原体の不存在に関して及び有効投与量の決定のために試験する。
【0059】
被嚢幼虫:いくつかの蠕虫(例えば、条虫)は、中間宿主中で被嚢幼虫または嚢尾虫を形成する。ヒトにおいてコロニー形成を開始するのは被嚢幼虫形態である。被嚢幼虫を中間宿主(例えば、SPF条件中で成長させたウシ若しくは魚類または植物)から取り出す。被嚢を洗浄して、残存する宿主組織を除去する。凍結保護剤を加え液体窒素中で凍結することにより、被嚢を保存することができる。被嚢を融解し又は新鮮なまま使用し、洗浄し、ラクトースを含まない冷却したプディングまたは他のビヒクルと混合し(送達のための場で行なう)、個体に与える。各ロットからのサンプルを、病原体の不存在に関して及び有効投与量の決定のために試験する。
【0060】
B.非生育性成分ワクチン:
寄生蠕虫の非生育性成分は、免疫応答の十分なTh2条件付けをもたらし、Th1-媒介の疾病を予防する。非生育性成分は、蠕虫の卵、幼虫または成虫から得られる。
【0061】
非生育性の無傷住血吸虫卵は、強いTh2応答を発生する。SPF条件下で成長させた予備動物(すなわち、ハムスター)の肝臓から卵を単離する。卵の単離は、CokerおよびLichtenbergが、1956年、Proceedings of the Soc. For. Exp. Biol. & Med.、92:780に初め記載したものに変更を加えた方法により実施する。この変更は、インキュベーション用の1.7%食塩水の代わりに、グルコースを含むリン酸緩衝食塩水を使用し、洗浄段階に、自己消化時間を短縮させることから成る。これらの変更によって、生育性卵の単離が促進される。この方法は、次の通りである。
【0062】
ゴールデンハムスターに1,000〜1,500匹のセルカリアを感染させる。次いで、感染を成熟させる(6〜7週間)。これらのハムスターから肝臓を摘出し、5%グルコース、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含有する600mOsm滅菌リン酸緩衝食塩水に浸ける。これらの肝臓を、室温で24時間自己消化させる。次に、低温ワーリングブレンダーを用いて、3分間低速で、肝臓をパルスホモジネートする。得られたホモジネートを、コラゲナーゼ(2mg/ml)およびトリプシン(2mg/ml)と共に、32℃で1時間インキュベートする。50および80〜100メッシュ篩で、このホモジネートを濾過することにより、組織の塊や残屑を除去する。さらに、325メッシュ篩で濾過することにより、濾液から卵を回収する。卵は、スクリーンを通過しない。スクリーンを洗い流して、卵を50mlポリプロピレン遠心管に流し込む。5%グルコースを含有する滅菌リン酸緩衝食塩水で、低速(400xg)遠心分離を繰り返すことにより、卵を洗浄する。卵に、コラーゲンの残屑が付着していてはならない。1mlセドウィックチャンバー(Sedwick chamber)中で卵のアリコートをカウントし、卵の総数を測定する。
【0063】
単離した卵を食塩水に懸濁させ、凍結保存剤を含まない液体窒素中でフラッシュ凍結する。これによって、卵は死ぬ。解凍した卵を皮下、筋肉内または静脈内注射する、あるいは、Th1炎症部位に注射することにより、強度のTh2応答を誘発する。尚、その他の蠕虫からの卵を使用することも可能である。
【0064】
寄生虫卵から単離したタンパク質、脂質、もしくは炭水化物を用いた成分ワクチンを使用してもよい。一例として、住血吸虫可溶性卵抗原(soluble egg antigen:SEA)が挙げられる。住血吸虫卵抗原の製造方法は、BorosおよびWarrenにより既に記載されている(1970年、J. of Experimental Med.、132:488)が、以下に簡単に示す。
【0065】
洗浄した卵を、50,000卵/mlのリン酸緩衝食塩水で再懸濁させる。これをガラス製の組織ホモジナイザーに移す。氷上で卵をホモジネートする。外殻がすべて破壊され、ミラシジウムが粉砕されたことを確認するため、アリコート(5μl)を採取し、顕微鏡で観察する。ホモジネートを超遠心管に移す。4℃、100,000xgで、2時間遠心分離にかける。アリコート画分(SEA)を回収し、タンパク質含有量を測定する。少量のアリコート中でSEAを−70℃で保存する。この方法には、Th2条件付けを最も強力に促進する寄生虫卵産物を単離する、すなわち、最適有効濃度(100μgSEAまたは10,000ova/動物)を達成するという変更を加える必要がある場合もある。卵または可溶性卵成分を使用して、Th2応答を開始させる、あるいは、生育性蠕虫のコロニー形成によりすでに開始したTh2応答を増強する。卵もしくは卵成分を試験して、病原体や内毒素がないことを確認する。
【0066】
また、成分ワクチンは、寄生蠕虫の幼虫や成虫からも開発することができる。SPF条件で成長した予備動物から、幼虫または成虫を単離する。非生育性無傷生物、または、蠕虫から単離したタンパク質、脂質、もしくは炭水化物を用いたワクチンを製造し、蠕虫卵について前述したものと同様に使用する。
【0067】
C.蠕虫生物の維持
SPF条件で成長した中間および予備動物を介して蠕虫を循環させる。コロニー形成速度、繁殖力、ならびに、駆虫薬に対する感受性等の表現型安定性を確認するため、蠕虫集団サンプルの試験を行った。
【0068】
用量、投与、ならびに医薬製剤
選択した寄生蠕虫に応じて、数種類の方法から一つを選んで、治療を施す。治療を必要とする個体は、選択した寄生虫の自然の生活環に応じて、経口もしくは非経口的に寄生虫(卵、セルカリア、もしくは幼虫)の感染形態を受ける。あるいは、可溶性の成虫または卵抽出物を経口もしくは非経口的に与えることによって、Th2応答を誘発することも可能である。
【0069】
腸管および肝蠕虫および住血吸虫に関しては、これらの蠕虫は産卵を開始するが、これは、接種から約30〜60日後に、便に現れる。感染の適切性および強度を評価するのに十分であることがわかるまで、便中の卵を定量化する。便のアリコートをスクロース浮遊により処理し、各試料中の卵の総数を決定する。スクロース溶液上の浮遊は、KoontzおよびWeinstockが、1996年、Gastroenterology Clinics of N. America、25:435に記載しているように、正確な計数のために、便から卵を単離するのによく使用されている方法である。
【0070】
本発明の寄生蠕虫配合物は、任意の好適な方法で投与するために製剤化することができる。従って、本発明は、その範囲に、ヒトへの使用のために適合化した本発明の寄生蠕虫化合物を含有する医薬組成物を含む。このような組成物は、必要であれば、製薬上の担体または賦形剤を用いて、従来方法において使用しうる。
【0071】
本発明に従う寄生蠕虫化合物は、注射、従って、ワクチン使用のために製剤化することができ、アンプル状の単位用量、多数回用量容器等の形態で、必要であれば、防腐剤を添加してもよい。組成物はまた、油性または水性ビヒクルの懸濁液、溶液もしくは乳濁液等の形態をしていてもよく、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤等の調合剤を含有することもできる。さらにまた、寄生蠕虫は、粉末状でもよいし、あるいは、使用前に、例えば、発熱物質を除去した滅菌水のような適切なビヒクルで再調製することもできる。
【0072】
所望であれば、このような粉末状製剤は、適切な非毒性塩基を含有し、この粉末を水で再調製して、得られた水性製剤のpHが、確実に、生理学的に許容されるようにしてもよい。
また、寄生蠕虫化合物は、例えば、ココアバターまたはその他のグリセリド等の通常の座薬ベースを含む座薬として製剤化することもできる。
【0073】
さらに、寄生蠕虫化合物は、通常の充填剤、担体、ならびに賦形剤を含む経口剤形として製剤化してもよい。寄生虫の投与を必要とする個体に投与する寄生虫の量は、自己免疫疾患の予防または治療に十分な量とする。この量は、寄生蠕虫を無傷状態で投与するが、あるいは、卵、幼虫、抽出物もしくはセルカリアとして投与するか、治療または予防する疾患によって変動し得る。
【0074】
典型的には、本明細書で述べるあらゆる自己免疫疾患に対して、寄生虫を投与する場合、投与量は、約50〜約50,000匹の範囲である。さらに具体的には、この量は、約500〜約5,000匹の間でよい。卵を用いる場合には、本明細書に記載する自己免疫疾患を治療するのに、約500〜約5,000個を使用する。抽出物を投与する場合には、自己免疫疾患を治療するのに、約100μg〜約10,000μgを使用する。また、幼虫およびセルカリアを投与する場合には、投与量は、それぞれ、約500〜約5,000匹の範囲でよい。
予防もしくはワクチン使用の場合にも、寄生虫の量は、500〜5,000匹でよい。
【0075】
D.Th1およびTh2応答の測定
本発明の有効性を示すためには、Th1およびTh2応答を識別しなければならない。Metawaliらは、1996年、J. of Immunol.、157:4546に、マウスにおいて、組織分析、ならびに、サイトカインおよび免疫グロブリンプロフィール分析により、Th1およびTh2応答を識別できることを明らかにしている。さらに、Sandorらは、1990年、J. of Exp. Med.、171:2171に、Fcγ3の細胞表面発現、ならびに、MHCクラスII分子により、識別が可能であることを示している。この手順では、小腸や結腸を組織学的に検査し、粘膜の炎症、好酸球増加症、ならびに、肥満細胞症の程度を測定する。後者のタイプの細胞は、Th2応答を表している。腸間膜リンパ節(MLN)および脾臓を、マイクロウェルプレートでのin vitro培養用の単細胞懸濁液中に解離させることができる。完全RPMI培地中の細胞(1-2 x 107/ウェル)を蠕虫抗原もしくは抗CD3の存在または非存在下で、72時間まで培養した後、上澄みをサイトカインおよび免疫グロブリンについてアッセイする。IFN-γ、TNFαおよびIgG2aは、Th1応答の特徴を成すのに対し、IL-4、IL-5、IgEならびにIgGlは、典型的にTh2反応の特徴を表す。また、サイトカインおよび免疫グロブリン濃度について、血清をアッセイすることができる。さらに、マクロファージ上のFcγ3発現(Th1)、ならびに、B細胞上のMHCクラスII発現(Th2)についてフローサイトメトリーにより、分散した炎症性白血球を試験する。対照には、寄生虫を全く寄生させていない適当な同齢同腹子マウスからの血清、MLNおよび脾臓が含まれる。また、上記以外にも、Th1対Th2応答のマーカーがある。
【0076】
同様の分析を実施して、ヒトのTh1とTh2応答を区別することができる。炎症を起こした組織を検定し、炎症領域ならびに周囲の血液細胞から白血球を単離する。白血球を単独で、あるいは、サイトカイン放出を刺激するために、寄生虫抗原またはマイトジェンの存在下で、in vitro培養する。この場合、IgG2が、IgG2aに代わる。
【0077】
フローサイトメトリによるサイトカイン検出:
RPMI完全培地中の脾臓細胞、MLNもしくは腸管炎症性細胞を、2x106細胞/ウェルで、24ウェル組織培養プレートに配置する。抗CD3もしくは適した抗原の存在または非存在下で、10μg/mlのブレフェルジンAを用いて、細胞を4〜6時間インキュベートする。ブレフェルジンは、タンパク質のエキソサイトーシスを阻害し、細胞内のサイトカインの蓄積を促進する。細胞質性サイトカインを検出するために、細胞のサブタイプを識別するための表面染色の後、室温で、5分間、細胞を2%パラホルムアルデヒド中で固定化する。細胞を洗浄し、50μlのPBS0.2%サポニンおよび1μg抗サイトカイン抗体中に再懸濁した後、室温で、20分間インキュベートする。次に、細胞をサポニンで二度洗浄した後、PBS/FCS中に再懸濁する。同じアイソタイプおよびサイトカイン特異性の過剰量の非複合抗体を用いて、細胞を予備ブロックする、あるいは、組換えサイトカインの存在下で細胞をインキュベートすることにより、サイトカイン抗体染色の特異性を確認する。また、フィコエリトリン(PE)標識した無関係の抗体対照には、バックグラウンド染色を評価することが含まれる。フローサイトメトリーを用いて細胞を分析する。
【0078】
ELISA法:
ELISA法は、マイクロタイタープレートで培養し、前記のように操作した細胞からの細胞上澄み中のサイトカインおよび抗体濃度を測定する。これらアッシの多くは、本発明者らの研究室で既に実施されている。サイトカインを、2部位サンドイッチ式ELISA中の二つのモノクローナル抗体(mAbs)を用いてアッセイする。抗体分泌ハイブリドーマクローンの上澄みからのアンモニウム沈殿によって、抗サイトカインmAbsを精製する。マイクロプレートを、Tween20含有PBS(PBS−T)中1μg/mlの被覆抗体(50μl)で被覆し、4℃で一晩インキュベートする。次に、PBS中10%FCS(150μl)を添加することにより、ウェルをブロックし、37℃で、30分間インキュベートする。標準液は、住血吸虫症感染マウスからのCon A活性化脾臓細胞から得られた組換え型サイトカイン、もしくは、サイトカイン含有上澄みを含む。区切られた96ウェル平底マイクロタイタープレートに入った10%FCS含有RPMI(完全RPMI)中でサンプルおよび標準希釈液を作製し、50μlの容量をELISAプレートに移す。尚、このELISAプレートは、事前に、PBS−Tで3回洗浄しておく。サンプルを、アッセイプレートにおいて、37℃で、1時間インキュベートする。適切なmAbをビオチンと結合させる。PBS−Tで3回洗浄した後、各ウェルは、1%BSA/PBS−T中濃度が0.5μg/mlの抗体−ビオチン複合体50μlを得る。プレートを室温で1時間インキュベートした後、PBS−Tで3回洗浄する。ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体(75μl)を1%BSA/PBS−T中に1μg/mlの割合で添加し、室温で1時間インキュベートする。プレートを新鮮なPBS−Tで10回洗浄し、44mMのNa2HPO4、28mMのクエン酸、および0.003%H22中1mg/mlの基質(2.2'-アジノ(3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸)100μlを添加する。着色した生成物を、マルチスキャンマイクロプレート読取り装置を用いて、基準波長が490nmで、波長405nmで測定する。
【0079】
抗アイソタイプ特異的ELISAを用いて、免疫グロブリンを定量化する。親和性精製ヤギ抗IgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgAおよびIgEを捕獲抗体として使用し、10μg/mlで、柔軟ポリビニル製マイクロタイターディッシュに吸着させる。培養上澄みの添加、インキュベート、および洗浄の後、適切なアイソタイプのアルカリ性ホスファターゼ複合ヤギ抗免疫グロブリンを用いて、プレートに結合したマウス免疫グロブリンの総量を検出する。精製免疫グロブリンを用いて、標準曲線を作る。寄生虫抗原特異的抗体を測定するために、可溶性抗原をビオチニル化し、これを使用して、結合したマウス免疫グロブリンを検出する。410nmにおいてELISA読取り装置でプレートを分析し、標準曲線および最も適した解析ソフトウエアを用いて、総免疫グロブリン濃度を測定する。可溶性寄生虫抗原は、正確な定量化を可能にする明確な抗原ではないため、抗原特異的抗体濃度をO.D.読取り値と相対的に比較する。
【0080】
ELISPOTアッセイ:
ELISPOTアッセイは、ポリクローナル抗体またはサイトカインのいずれかを分泌するリンパ球を計数するために確立されている。裏面がニトロセルロースの96ウェルマイクロタイタープレートを、PBS−T中濃度が1μg/mlの抗免疫グロブリンもしくは抗サイトカイン抗体のいずれかで、4℃で一晩被覆する。次に、これらのプレートを10%FCS含有PBSでブロックし、PBS−Tで入念に洗浄する。
【0081】
5x104細胞/ウェルから出発する単一細胞懸濁液の連続的な希釈液を、吸湿した5%CO2雰囲気において、37℃で、5時間、プレート上でインキュベートする。プレートをPBS−Tで洗浄し、ビオチニル化した抗免疫グロブリンもしくはサイトカイン抗体を塗布して、4℃で、一晩放置する。次に、プレートを洗浄し、ストレプトアビジン−グルコースオキシダーゼ複合体で2時間処理した後、再度洗浄する。
【0082】
単一細胞が分泌した抗体またはサイトカインを基質を用いて視覚化する。30分後に、洗浄することによって、比色分析反応を停止させ、30Xの倍率で、スポットを数える。10〜50スポット/ウェルを生成した細胞の希釈液を使用して、サンプル当たりの分泌細胞の総数を計数する。対照は、不適切なヤギ抗体もしくは不適切な抗原で被覆したウェル、あるいは、被覆していないままのウェルを含む。
【0083】
ウェルを被覆するのに可溶性抗原を用いて、上記アッセイを変更することにより、寄生虫抗原に特異的な、免疫グロブリン分泌B細胞の定量化も行うことができる。簡潔に言えば、例えば、0.25μg/ウェルの割合で、成虫T. Muris抗原、あるいは、適当な無関係の対照抗原でプレートを被覆する。洗浄後のウェルに細胞を添加する。適切なインキュベートの後、プレートを再度洗浄し、前記と同様に処理する。
【0084】
統計学的方法:
一つのサンプルt−試験により一部のデータを分析し、平均値が0から大きくかけ離れているかどうかを決定する。対にしたt−検定を用いて、グループの平均値間の差を分析する。分散分析およびDunnettのt−検定を用いて、多数の比較データを分析する。
【0085】
治療の必要性を決定し、治療経過を監視するためには、自己免疫疾患の存在、ならびに、その治癒もしくは改善の徴候が必要となる。下記の手順を実施して、記載した疾患の臨床学的パラメータを測定する。
【0086】
1.炎症性腸疾患
炎症の評価:
マウスでは、疾患の臨床上の徴候としては、体重の減少、下痢、脱腸が挙げられ、また、組織学的徴候としては、腸管炎症がある。従って、これらのパラメータの改善が、疾患の改善を意味すると考えられる。
【0087】
動物モデルでの腸管炎症を分類するために、組織を摘出して、標準的方法に従って、パラフィンでスイスロール状に巻く、あるいは、パラフィンに包埋する。切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。コロニーの炎症の程度を、通常の標準化方法を用いて、ただ一人の病理学者により、被験体名を伏せて、半定量的に、次のように0〜4まで分類する:0=炎症なし;1=軽度の炎症;2=中程度の炎症;3=壁肥厚を伴う重度の炎症;4=経壁浸潤、ならびに、壁肥厚を伴う杯状細胞の消失。
【0088】
マスト細胞を数えるために、個々のマウスからの腸管組織をスイスロール法により用意し、カルノア固定液で固定し、パラフィン包埋した後、アルシアンブルーおよびサフラニンを用いて、染色処理を行う。固有層および筋肉層の粘膜マスト細胞について、所定切片の50個所の隣接領域のスキャンを行う。アルシアンブルーによる差異を示す細胞間粒状染色により、マスト細胞を同定する。サンプルはすべて名前を伏せて評価する。
【0089】
ヒトにおける疾患活性は、多様な臨床、実験室および組織学的基準を用いて監視する。下痢の頻度や腹痛等の臨床パラメータを監視する数種の周知のIBD疾患活性指数がある。クローン病の評価に特に有用な指数は、クローン病活性指数、すなわち、CDAI(Bestら、1976、Gastroenterology、70:439)である。CDAIは、疾患活性に関する八つの変数を組み込み、クローン病の治療薬に関する最新の研究に使用されてきた。この指数には、液体状もしくは重度の軟便の回数、腹痛または腹部痙攣の程度、一般的良好状態、疾患の腸外出現、腹部塊の存在または非存在、下痢止め剤の使用、ヘマトクリット法、ならびに体重が含まれる。総合点は、0〜約600点の範囲である。150点以下の点数は寛解を、また、450点以上は重症を意味する。
【0090】
また、試験済で、許容された、疾患特有のクオリティオブライフ(生活の質)質問票を治療前および後に配布して、治療の経過を評価することもできる。アービン炎症性腸疾患質問票は、32項目から成る質問票である。この質問票は、腸機能(例えば、軟便や腹痛)、全身性症状(疲労や、睡眠パターンの変化等)、社会的機能(勤務状態や、社交行事参加取消しの必要性)、ならびに、感情的状態(怒り、鬱状態、あるいは、感応性)に関して、クオリティオブライフを評価する。点数は、32〜224点までの範囲で、点数が高いほど、クオリティオブライフが優れていることを示す。寛解状態にある患者は、通常170〜190点である。
【0091】
また、腸疾患活性の内視鏡、X線、ならびに、組織学による評価も役に立つ。炎症の全身性の指標として、C反応性タンパク質レベルおよび血液細胞沈降速度を監視することもできる。
【0092】
2.慢性関節リウマチ
炎症の評価:
コラーゲン誘発性の関節炎を有するマウスについては、マウスを1日おきに検定し、その前足を次のように採点する:0は、正常;1は、足関節または足指に限定される紅斑および軽い膨張;2は、足関節から中足まで広がる紅斑および軽い膨張;3は、足関節から中足関節まで広がる紅斑およびひどい膨張;4は、関節膨張を伴う強直性変形。これら四つのパラメータは、関節炎を起こした関節の組織学的変化と相関する可能性がある。治療がうまくいけば、組織学的な改善に従い、関節炎の点数が減少する。
【0093】
プリスタン誘発性の関節炎については、関節をマイクロメータで測定して、膨張を検出することができる。ヒトでは、関節膨張、紅斑、運動制限、ならびに痛みを測定することにより、RAを採点する。さらに、当業者には公知の方法に従って、サイトカインおよび炎症性タンパク質濃度、ならびに、白血球の組成および機能について、滑液を分析することもできる。滑液の生検により、当業者には公知の方法に基づいて、組織学的分析のための組織が得られる。
【0094】
3.狼瘡
炎症の評価:
免疫系の正常な発達および機能は、アポトーシスと呼ばれるプロセスによる不要な細胞の除去に決定的に左右される。特異的細胞表面分子およびその受容体を介した細胞対細胞の相互作用が、アポトーシスのプロセスを誘発することが多い。このようなシステムをFASおよびFASリガンドと呼ぶ。FAS(LPR-/-)またはFASリガンド(GLD-/-)のいずれかが欠損したマウスは、狼瘡のような自己免疫疾患を発症する。
【0095】
特定病原体のない条件下で、LPRまたはGLDマウスのコロニーをマイクロアイソレータ収納ユニットに保持する。これらのマウスは、自然に自己免疫を発達させることができるが、人工的誘発後には、さらに確実である。疾患を誘発するために、生後8週間のマウスにプリスタン等の薬剤を注射する。2カ月以内に、マウスは自己免疫疾患を発症する。マウスおよびヒトの両方における疾患の誘発ならびに改善を判断するのに有用な多数の臨床学的、組織学的、ならびに免疫学的基準は、当業者には公知である。
【0096】
4.若年性インスリン依存性糖尿病(I型)
炎症の評価:
NODマウスは、膵島β細胞の自己免疫破壊により、ヒトと類似したI型糖尿病を発症する。当業者には公知の方法に基づく臨床学、生化学、免疫学、ならびに組織学的検査により、マウスにおける疾患の誘発および改善を評価することができる。
【0097】
5.サルコイドーシス
炎症の評価:
肺炎症のビーズ塞栓形成法モデルにおいて、抗原(すなわち、Th1またはTh2)をセファローズビーズに結合させ、マウスの尾部静脈への注射によって、マウスの肺をこれらビーズで塞栓する。動物は、通常、結合した抗原に対して準備感作してある。宿主の免疫系は、病原体のビーズに対して、激しい免疫応答を示す。これらの病巣炎症性応答は、数週間続くこともあるが、大きさについては、組織学的に検定することができる。また、これらを組織から摘出して、細胞組成およびサイトカイン生成について検定することもできる。さらに、実験用の肺門リンパ節および脾臓は、容易に入手することができる。
【0098】
ヒトの疾患であるサルコイドーシスは、通常、肺に発生する。サルコイドーシス、ならびに該疾患の範囲の決定は、当業者には公知の方法に従って実施することができる。肺機能試験で、肺のコンプライアンスおよび機能を評価する。また、細気管支洗浄によって、炎症過程で、気管支樹に浸潤した炎症細胞が得られる。これらの細胞は、組成および機能について試験することができる。肺浸潤ならびに肺門リンパ節症は、サルコイドーシスに特徴的である。このように、定期的な胸部X線撮影もしくはCTスキャンが、疾患活性を評価するのに役立つ。当業者には公知の方法に基づくアンギオテンシン変換酵素活性の測定等の血清学試験を実施することにより、疾患の範囲ならびに活性を測定することができる。
【0099】
6.多発性硬化症
炎症の評価:
適切な感作ミエリン抗原を繰り返し注射することにより、敏感なマウスに実験的自己免疫脳脊髄炎を誘発させる。次の基準に従って、マウスを臨床的に評価する:0は、疾患なし;1は、尾部アトニー;2は、後肢衰弱;3は、後肢麻痺;4は、後肢麻痺と、前肢麻痺または衰弱;5は、瀕死。組織学的分析のために、脊髄および脳を摘出し、ホルマリンで固定する。パラフィン包埋した切片を染色し、光顕微鏡で検査する。分散した脾臓細胞、ならびに、他の領域からの細胞を、前記のように、in vitroで試験することができる。これらのパラメータは、疾患の改善または軽減を測定する上で有用である。
【0100】
ヒトでは、神経学的徴候および症状の進行ならびに寛解を監視することによって、MS疾患活性を測定する。この最も広範に使用されている結果測定は、広範囲障害状態評価法(The Expanded Disability Status Scale)と呼ばれる。当業者には公知の方法に従って分析した大脳脊髄液タンパク質の組成および細胞含有量を用いて、疾患活性を監視することもできる。さらに、一連のMRI研究から、ガドリニウムにより増強される新しい脳病変が明らかになっている。
【0101】
本発明に有用な動物モデル
下の表Iは、本発明に従い、寄生蠕虫により予防、もしくは、治療が可能な疾患の症状を示すものである。
【0102】
【表1】

【0103】
作用機構
本発明は、寄生蠕虫の投与による個体の自己免疫の予防および/または治療、ならびに、IBD、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、慢性関節リウマチ(RA)、インスリン依存性、若年性糖尿病(DM)(1型)、紅斑性狼瘡(LE)、サルコイドーシス、ならびに多発性硬化症(MS)によって個体に起こる過剰免疫応答、もしくは、異常免疫応答の、該個体に寄生蠕虫の投与による予防もしくはワクチン接種および/または治療に関する。
【0104】
本発明は、いかなる作用機構にも制限されることなく、次の機構を提案する。
炎症は、多くの種類の細胞に関与し、サイトカインと呼ばれる多様な免疫制御分子の放出を伴う複合的な過程である。分泌されるサイトカインの種類が、炎症応答のタイプを決定する。免疫応答は、通常、Th1およびTh2のいずれかとして現れる。Th1型炎症は、多量のIFN-γおよびTNFαを生成し、これらが、侵入してくる細菌、ウイルス、原虫類等の病原体に対する強度の細胞免疫反応を刺激する。Th2型応答には、IL-4、IL-5、IgE、IgG1、マスト細胞ならびに好酸球が含まれる。このタイプの炎症は、一般に、アレルギー反応に認められる。強度のTh1およびTh2反応は、互いに排他的である。IFN-γはIL-4の生成を阻止し、IL-4は、IFN-γの生成を阻害する。これらは、Th1およびTh2パターンの炎症には最も重要な二つのサイトカインである。また上記以外にも、IL-10やTGF-β等、IFN-γの合成を阻害するサイトカインがある。
【0105】
寄生蠕虫に対する免疫応答は、無関係の抗原に対するTh2反応を促進する。寄生蠕虫の感染は、すべて、Th2型炎症を誘発するが、これによって、無関係の随伴性寄生虫、細菌、および、ウイルスの感染に対するTh1免疫反応を調節することができる(Kullbergら、1992、J. Immunol. 148:3264)。S. mansoniに感染した患者は、通常のTh1またはTh0と比較して、破傷風トキソイド免疫法に対するTh2様応答が大きい(Sabinら、1996年、J. Infec. Dis. 173:269)。蠕虫感染が流行しているエチオピア移民は、好酸球増加症を有し、Th1サイトカインよりもむしろTh2を伴うPHAに応答する傾向がある(Bentwichら、1996、Clin. Exp. Immunol. 103:239)。
【0106】
動物実験によって、この主張が支持される。鳥結核菌(Mycobacterium avium)に感染したマウスは、肺および肝臓に慢性Th1型肉芽腫性炎症を発症する。これらの感染した動物からの脾細胞および肉芽腫は、通常、IgG2aおよびIFN-γを生成するが、IL-4もしくはIL-5はまったく生成しない。しかし、鳥結核菌(Mycobacterium avium)感染の確立後、S. mansoniに感染したマウスは、好酸球を含むマイコバクテア肉芽腫を発症する。また、同時感染したマウスからの脾細胞および肉芽腫細胞は、IgG1の分泌が多くIgG2aはだいぶ少ない。これらの細胞から放出されたサイトカインは、構造的に、あるいはマイコバクテリア抗原(Mycobacterial antigen)刺激の後、IL-4およびIL-5を含み、IFN-γは通常の量よりはるかに少ない。
【0107】
別の例もある。S. mansoniへのマウスの感染は、種痘ウイルスのクリアランスを遅延させ、マッコウクジラミオグロビンに対する応答性を変化させる。また、マウスは、ミクロフィラリアであるマレー糸状虫(Brugia malayi)に感染したとき、あるいはこの寄生虫からの可溶性フィラリア抽出物に免疫したとき、Th2応答を生じる。この蠕虫抗原に対する進行中のTh2応答が、マイコバクテリア抗原に対するTh1応答を調節する。さらに、ネズミの腸内線虫であるNippostrongylus brasiliensisは、Th2活性を刺激する。Nippostrongylusは、ラットにおける腎移植片拒絶反応を遅延させる。
【実施例】
【0108】
以下に示す非制限的実施例により、本発明を説明する。これらの実施例では、下記の材料および方法を使用する。尚、以下に引用する文献は、各々、参照として本明細書中にその全内容を組み込むものとする。
【0109】
実施例1.一般的方法
動物:129/SV IL-10-/-突然変異マウス、ならびに、適切な対照マウスのコロニーを保存し、標準的方法に従って、特定の病原体がない環境として維持される施設に収容する。
生虫保存、動物感染、住血吸虫卵の生成:T. murisの保存、および感染に使用する方法は、ElseおよびWakelinにより、1990年、寄生虫学(Parasitology)、第100巻、第3部:479に記載されている通りである。
住血吸虫卵を住血吸虫に感染したハムスターの肝臓から採取し、Elliottにより、1996年、「方法:酵素学における方法との併用」、9:255に記載された通りに保存した。5匹の感染ハムスターから約2x106個の卵を得た。
【0110】
T.suis卵の製造:T.suis卵の製造および採取のために、次の方法を用いた。T.suis卵の実験接種の後7〜8週間のブタの結腸から、成虫のT. suis蠕虫を分離した。in vitroで成虫を培養することにより、受精卵を製造し、次に、遠心分離によって培養物から分離した排出卵を0.2%重クロム酸カリウム溶液に導入し、22℃で気泡を生成しながら、5〜6週間放置することにより、感染第1期幼虫を得た。滅菌水中で、10分間の1,200xg遠心分離によって卵を2回洗浄した後計数し、計数した2,500個毎に所望量の食塩水中で再懸濁する。これらの卵を被験者に使用するため保存した。卵は冷蔵庫で少なくとも1年間安定している。感染能を確実にするため、コロニー形成後の便における卵の存在について患者を監視した。便中の卵の数は、感染の強度に比例する。また、連続的な感染能を確実にするため、保存した卵を随時ブタに感染させた。
【0111】
M.aviumによる感染:マウスに鳥結核菌(Mycobacterium avium)(ATCC 25291)の100コロニー形成単位(CFU)を腹腔内に注射して感染させた。感染第60日に、何匹かのマウスに35匹のS. mansoniセルカリアも投与して、二重感染を誘発した。
【0112】
住血吸虫感染および卵の単離:いくつかの実験では、S. mansoniに感染後8〜9週間のマウス(18〜20g)を使用した。Puerto Rican株からの40匹のセルカリアをマウスに皮下注射した。
【0113】
芽腫摘出と分散:自然の卵沈着によって、肉芽腫が住血吸虫感染マウスに発生する。この卵沈着は、感染から6週間目に開始する。M. aviumもまた、肉芽腫を誘発する。既述(前記Elliott、1996)の通り、感染させたマウスから摘出した肝肉芽腫を検査する。肉芽腫を分散して、単細胞懸濁液を製造した。5mg/mlのコラゲナーゼを含有するRPMI培地中の摘出した肉芽腫を振盪機水浴において、37℃で35分間撹拌した。残った肉芽腫を1ml注射器により吸引および押し出しを行い、さらに解離を誘発した。このようにして得られた細胞懸濁液をガーゼで濾過し、3回洗浄した。細胞の生育性をエオジンY排除により測定した。このプロトコルにより、保存された表面分子発現を示す生育性炎症細胞を高い収率で得た。
【0114】
脾臓およびMLNの分散:ステンレス鋼製メッシュを介して、組織を細かく裂き洗浄することにより、脾細胞およびMLNを分散した。汚染したRBCをH20で溶解させ、使用前に、細胞をRPMI中で3回洗浄した。
【0115】
TNBC大腸炎の誘発:Neurathらが、1995年、J. Exp. Med.、182:1281に記載した通りに、トリニトロベンゼスルホン酸(TNBC)の直腸点滴注入により大腸炎を誘発した。簡潔に言うと、対照もしくは寄生虫に暴露したBALB/cマウスを30時間絶食させた後、メトキシフルランを用いて麻酔した。1.2mmカテーテルを結腸に4cm進入させ、0.1mlのTNBC溶液(50%エタノールに5mg/mlのTNBC(Sigma))を点滴注入した。結腸粘膜との均質な接触を確実にするため、マウスの尾をつまんで3分間逆さにした。
【0116】
粘膜炎症の評価:腸の炎症を等級分けするため、示した時点で、組織を摘出し、標準的方法に従い、スイルロール巻きしてパラフィンで包埋した。切片をヘマトキシリンとエオジンで染色した。通常の標準化方法(19)を用いて、一人の病理学者により検体名を伏せて、半定量的に結腸の炎症の程度を0〜4に等級分けした。0=炎症なし、1=軽度の炎症、2=中程度の炎症、3=壁肥厚を伴う重度の炎症、4=経壁浸潤、小滴状(globlet)細胞の消失、壁肥厚。
【0117】
ネズミのサイトカインのELISA:前記第VI節に記載したように、ELISAを実施した。
【0118】
実施例2.無関係の細菌Th1誘発抗原に対する進行中のTh1応答を、S. mansoniに対するTh2応答が、ダウンモジュレートする
Th細胞免疫応答が、Th1またはTh2パターンに偏向することはよく知られている。この分極化は、Th1細胞からのIFNγが、Th2細胞の増殖を阻害すると同時に、Th2細胞からのIL-4およびIL-10が、Th1細胞の増殖を阻害するために起こる。次の実験により、住血吸虫症が、確立したマイコバクテリア感染に対するネズミのTh1応答を変化させることが明らかになった。
【0119】
マウスをM. aviumおよびS. mansoniに同時感染させて、これらの明らかに異なるTh1およびTh2炎症刺激に対する宿主の応答を評価した。BALB/cAnNマウスは、M. avium(106CFU)を注射すると、慢性M. avium感染を生じた。マイコバクテリア感染の確立から60日後に、マウスをS. mansoni(40個のセルカリア)に感染させた。マウスは、60日後に死亡した。対照グループは、120日間M. aviumだけを投与したマウス、もしくは、60日間S. mansoniだけを投与したマウスから成る。これらマウスからの分散脾細胞または摘出した肉芽腫細胞を、最適濃度の住血吸虫卵抗原(SEA、強力なTh2抗原)、または、マイコバクテリア抗原精製タンパク質誘導体(PPD、強力なTh1誘導体抗原)の存在下または不在下で、48時間in vitroで培養した(4x105細胞/ウェル)。インキュベートした後、ELISAによって、サイトカインまたは免疫グロブリン生成について、上澄みを検定した。図1〜3に示すデータは、三つの個別実験の平均+/−SDである。M. aviumだけに感染したマウスからの脾細胞は、PPD(Th1抗原)による刺激の後、多量のIFNγを分泌した。感染していない対照マウスからの脾細胞は何も生成しなかった。最も重要なことには、同時感染したマウスからの脾細胞培養物にはIFN-γがまったく検出されなかった(M.aviumのみ対同時感染、P<001、図1)。
【0120】
可溶性住血吸虫卵抗原(SEA、Th2抗原)は、S.mansoni感染マウスの脾細胞からIL-4およびIL-5の放出のみを刺激しただけであった。M. aviumだけに感染したマウスは、PPDまたはSEAに応答してIL-4またはIL-5を生成しなかった。しかし、同時感染したマウスからの脾細胞は、PPD刺激の後、多少のIL-4を分泌した(図1)。
【0121】
M.aviumまたはS.mansoniに感染したマウスの肝臓、あるいは、同時感染したマウスから肉芽腫を摘出した。同時感染したマウスは、住血吸虫卵およびマイコバクテリアの両方を含む肝肉芽腫を発症した。これらは、組織検査で容易に明らかにされた。これらマウスからの分散肉芽腫細胞を、最適濃度のSEAまたはPPDの存在下もしくは不在下で、48時間in vitroで培養した。M.aviumだけに感染したマウスからの肉芽腫細胞は、PPDによる刺激の後、多量のIFNγを分泌した。同時感染したマウスからの肉芽腫細胞培養物には、IFNγはまったく検出されなかった(M.aviumのみ対その他、P<001)(図2)。SEAは、S. mansoni感染マウスの肉芽腫細胞からIL-4放出を刺激した。SEAは、どんな状況下でもIFNγの分泌を促進しなかった。M.aviumだけに感染したマウスは、PPDに応答してIL-4をまったく生成しなかった。しかし、同時感染したマウスからの肉芽腫細胞は、PPD刺激の後、多少のIL-4を分泌した(図2)。
【0122】
Th1応答は、IgG2a生成を促進するのに対し、Th2反応は、IgG1およびIgEを増強する。図3は、M.aviumに感染したマウスが、高い血清IgG2aレベルを有することを示している。しかし、同時感染したマウスは、IgG2a濃度は正常だが、IgG1およびIgEレベルは増加している。これらのデータを総合すると、蠕虫感染に対するTh2応答は、M. aviumのような強力なTh1誘発生物に対してさえも、進行中の宿主応答をダウンモジュレートできることがわかる。
【0123】
実施例3.腸蠕虫のコロニー形成、もしくはそれらの卵への暴露は、ネズミのTNBS誘発大腸炎におけるTh1型腸炎症を軽減する
50%エタノール中のTNBSの直腸点滴注入は、クローン病と特徴が類似する大腸炎をマウスに誘発する。結腸の炎症は、浸潤するCD4+ T細胞を特徴とし、IFNγmRNA発現が高い。TNBSで処理したマウスからの粘膜固有層T細胞は、対照と比較して、50倍に増加したIFNγと、5分の1に減少したIL-4を分泌する(前記Neurathら、1995)。粘膜固有層単核細胞は、対照マウスからの細胞と比較して、30倍のTNFαを分泌する(Neurathら、1997、Eur. J. Immunol.、27:1743)。重要なことには、抗IL-12(前記Neurathら、1995)、抗TNFα(前記Neurathら、1997)、もしくはrIL-10(Duchmannら、1996、Eur. J. Immunol.、26:934)を用いた治療により、TNBS大腸炎を予防、もしくは改善することができる。また、TNBS誘発大腸炎は、ハプテンの事前の経口暴露により(Elsonら、1996、J. Immunol.、157:2174)、恐らく、粘膜IL-4、IL-10およびTGFβ応答を増強することにより(Neurathら、1996、J. Exp. Med.、183:2605)、予防することができる。
【0124】
本研究者らは、研究室で、BALB/cマウスを用いて、このTNBS大腸炎モデルを発症させた。50%エタノール中のTNBS(5mg/mlストックの0.1ml)の直腸投与により、これらマウスに、繰り返し大腸炎を発生させた。以下に述べるTNBS実験の各々について、寄生虫暴露した動物、ならびに対照動物に対して、処理グループには検体名を知らない同じオペレータが、同じ日に、同じTNBS調合物を投与した。
【0125】
A.住血吸虫症は、TNBS処理マウスのMLNおよび脾細胞からのIFNγ放出を阻害する
既に述べたように、住血吸虫症は、確立したマイコバクテリア感染に対するネズミのTh1応答を阻害する。本研究者らは、これらの観察を延長して、住血吸虫感染が、TNBS処理マウスのTh1応答を変化させるかどうかを観測した。マウスに住血吸虫を注射することにより、35個のS. mansoniセルカリアを感染させた。蠕虫は成熟し、注射開始から約6週間後に産卵を開始した。2週間後(感染から8週間後)、マウスをTNBSで処理した。数日後MLNおよび脾細胞が、T細胞刺激(抗CD3)に応答してIFNγを生成する能力を検査した。表1に示すように、自然住血吸虫感染は、TNBS処理マウスの腸間膜リンパ節(MLN)および脾細胞からのIFNγの放出を強力に阻害している。
【0126】
【表2】

【0127】
B.住血吸虫卵への暴露が、TNBS処理マウスのMLNおよび脾細胞からのIFNγ放出を阻害する
住血吸虫症では、Th2応答を誘発するのは、成虫よりも寄生虫卵への暴露である。住血吸虫感染は、蠕虫が成熟して、産卵するまでは強いTh2応答を誘発しない(Grzychら、1991、J. Immunol、146:1322)。自然感染の不在下で、無傷の住血吸虫卵に暴露したマウスは、強力なTh2応答を発生する(Oswaldら、1994年、J. Immunol、153:1707)。これらの観察結果は、自然感染不在下での住血吸虫卵への暴露がTh2を誘発し、Th1応答を抑制する可能性があることを示している。
【0128】
本研究者らは、住血吸虫卵への準備暴露が、成虫による感染を必要とせずに、Th1応答を抑制するという仮定を確認するための試験を行った。TNBSによる直腸攻撃の14日および4日前に、腹腔内(ip)注射で、104個の住血吸虫卵をマウスに2回接種した。これらの時間は、自然感染で起こる連続的な卵の沈着をモデル化するように選択した。寄生虫卵には暴露せず、TNBSで処理したマウスを対照として使用した。卵は、予め凍結していたため、注射した時点では、生育性ではなかった。再び、TNBSの点滴注入から数日後、MLNおよび脾細胞が、T細胞刺激(抗CD3)に応答してIFNγを生成する能力を検定した。表2に示すように、自然の住血吸虫感染と同様(図1)、ip.卵暴露は、TNBS処理マウスのMLNおよび脾臓T細胞からのIFNγ生成を阻害した。
【0129】
【表3】

【0130】
C.住血吸虫卵暴露が、TNBS誘発大腸炎からマウスを防御する
粘膜Th1応答の発生を阻害することにより、TNBS誘発大腸炎を軽減することができる。住血吸虫卵への準備暴露は、MLNおよび脾臓T細胞によるTh1サイトカイン分泌を阻害する。本研究者らは、次に、住血吸虫卵のip注射が、TNBS誘発大腸炎を阻害することを確認した。卵を前述のように注射した後、TNBS処理をおこなった。三つの個別実験において、卵による処理は、対照グループの60%(16/27)から、卵に暴露したマウスの22%(6/27)へと、累積死亡率を大幅に減少させた。前記一般的方法で詳細に説明したように、4点評価方式で腸炎症を採点した。生存したマウスでは、卵による処理によって、対照グループの3.1±0.5(平均±SD)から、卵に暴露したマウスの1.3±0.3へと、腸炎症が軽減した(p<0.05、図4)。続いて行った実験によって、TNBS処理から3日後に、グループ間の最大の相違が明らかになった。TNBS点滴注入後14日までに実施したその他の実験から、卵暴露が防御を延長することがわかった。これらのデータは、住血吸虫卵が粘膜Th1応答を阻害することによって、マウスを致命的な大腸炎の発生から防御していることを示している。
【0131】
D.腸蠕虫は、宿主Th2応答を誘発する
S. mansoni以外の寄生蠕虫が、宿主Th1応答を制御できると考えられる。腸線虫に対する防御免疫の現れは、CD4T細胞次第である。マウスは、Th2応答を発生することにより、蠕虫を駆逐、もしくは、感染を制限する。蠕虫の駆逐は、腸内好酸球増加症、または、粘膜肥満細胞症のいずれにも、排他的に左右されるわけではないようだ。IL-4は、蠕虫の駆逐に重大な役割を果たしている可能性がある。というのは、ブロッキング用抗IL-4または抗IL-4受容体mAbによる処理が、蠕虫の貯留を促進するからである(Elseら、1994、J. Exp. Med.、179:347)。反対に、IL-4での処理は、蠕虫のクリアランスを促進する(図4)。
【0132】
T. murisは、ネズミ科宿主の結腸に寄生している。これは、約10億人がその寿命中に保有する寄生虫である鞭虫(Trichuris trichiura)に類似している(Grencisら、1996、北アメリカ胃腸病学臨床学、25:579)。卵の経口摂取により、感染が開始する。卵から孵化した幼虫は、盲腸上皮を通過する。やがて、幼虫は成虫に成熟する。寄生虫は、宿主内で複製しないため、感染の強度を制御することができる(Bancroftら、1994、Eur. J.Immunol.、24:3113)。
【0133】
T. murisを用いて、Th1応答性をダウンモジュレートした。T. muris感染は、生育性幼虫を含む250個の受精卵を経口強制栄養することにより定着させた。BALB/cマウスは、T. murisを寄生させ、感染から4週間以内に蠕虫を自然に駆逐することができる。感染開始から4週間後に、TNBSの直腸点滴注入により、T. muris感染、もしくは、疑似感染したマウスを処理した。T. murisの準備コロニー形成によって、二つの個別実験において、累積死亡率が、疑似感染グループの58%(7/12)から、寄生虫暴露グループの21%(3/14)まで減少した。さらに、T. murisを予めコロニー形成させたマウスは、疑似感染マウス(3.13±0.63、p<0.05)と比較して、発症したTNBS大腸炎が軽減している(0.92±0.5、平均±SD)。これらのデータから、腸寄生虫(T. muris)に準備暴露することにより、マウスを重度のTh1媒介大腸炎の発症から防御できることがわかる。
【0134】
実施例4.IL-10遺伝子の破壊は、宿主/寄生虫の相互作用を有意に変化させない
IL-10は、マクロファージ活性化ならびに補助細胞機能をダウンモジュレートする重要な免疫制御サイトカインである(Mooreら、1993、Ann. Rev. Immunol.、11:165)。標的遺伝子の破壊(IL-10-/-)により、IL-10欠損症にしたマウスは、結腸内生理的寄生菌により影響される慢性全腸炎を発症する(Kuhnら、1993、Cell、75:263)。腸炎症は、抗IFNγ抗体を用いた処理により軽減されるが、これは、大腸炎が、結腸内容物に対する過剰に活発なTh1応答により発生することを証明している(Bergら、1996、J. Clin. Invest.、98:1010)。これらのマウスは、クローン病に類似した自然発症大腸炎の優れたモデルとして役立つ。この実施例では、129およびC57B1/6バックグラウンドで、IL-10-/-マウスを使用した。
【0135】
A.IL-10遺伝子の破壊は、寄生虫コロニー形成に対する宿主の感受性を変化させない
IL-10-/-マウスは、慢性腸炎症を自然発症する。考えられるのは、この炎症が、T. murisの有効なコロニー形成を阻害する恐れがあることである。しかし、本研究者らは、129およびC57B1/6の両バックグラウンドで、IL-10-/-マウスにおけるT. murisによる明らかなコロニー形成が、ほぼ確実に(>95%)得られることをみいだした。これまで、本研究者らは、40匹以上のIL-10-/-マウスにT. murisをコロニー形成させている。また、IL-10欠損症マウスも、S. mansoniを寄生させることができ、この寄生虫は、成熟して成虫になり、産卵する(Wynnら、1998年、J. Immunol.、160:4473)。本研究者らは、これらの研究結果を確認した(以下参照)。
【0136】
B.IL-10マウスは、寄生虫に対するTh2応答を開始することができる
腸内線虫であるN. brasiliensisに感染したマウスは、寄生虫に対してTh2型炎症を発症すると同時に、IL-4、IL-5およびIL-10を生成する。N. brasiliensisは、IL-10-/-マウスにコロニー形成し、適切な腸Th2応答を刺激する(前記Kuhnら、1993年)。本研究者らは、IL-10-/-マウスをS. mansoniに感染させて、Th2応答を示すかどうかを調べた。
【0137】
表3から、S. mansoniを8週間コロニー形成させたIL-10遺伝子破壊マウスからの脾細胞が、住血吸虫卵抗原(SEA)もしくは抗CD3による刺激を受けて、多量のIL-4を分泌することがわかる。これらマウスにおいて、住血吸虫卵を取り囲む肉芽腫は、通常の高いパーセンテージ(45〜50%)の好酸球を含み、IL-4およびIL-5を生成する。このように、これらのマウスは、有効なTh2応答を示す。上記のデータから、S. mansoniのような寄生蠕虫に対する暴露が、たとえIL-10が不在であっても、強いTh2応答を誘発することがわかる。
【0138】
【表4】

【0139】
D.蠕虫Th2による条件付けが、IL-10-/-マウスにおける粘膜炎症の自然発症を阻止する
本研究者らは、IL-10欠損症マウスが、寄生蠕虫を寄生させ、強いTh2応答を示すことを明らかにした。IL-10-/-マウスは、Th2応答を開始し、腸内寄生虫を寄生させることができるため、これらのマウスは、自然発症もしくは進行中の大腸炎に対する寄生虫暴露の効果を調べる上で優れたモデルとして使用できるかもしれない。IL-10は、重要な抗炎症サイトカインである。この重要な免疫制御回路を破壊すれば、寄生虫による粘膜Th2条件付けを阻止することができる。この論証は、T. murisによる感染が、IL-10-/-マウスに発症する自然発症大腸炎を阻害することを示している。T. murisまたは疑似感染を受けた動物(生後6週間)は、6週間後に死亡した。T. muris感染または疑似感染したIL-10-/-マウスの結腸炎症を、前記一般的方法に詳述したように、4点評価方式で採点した。T. murisによる準備感染は、疑似感染グループの3.3±0.3(平均±SE)から、寄生虫暴露IL-10-/-マウスの2.2±0.1(p<0.05)へと、腸炎症を軽減した。これらのデータから、寄生蠕虫への準備暴露が、IL-10欠損症マウスにおける自然発症大腸炎を軽減することが明らかである。
【0140】
実施例6.鞭虫(Trichuris suis)による腸内コロニー形成が、クローン病患者の疾患活性をダウンモジュレートする
我々の主要な仮定は、小児期に蠕虫感染を獲得せず、従って、粘膜のTh2条件付けを被っていないことが、過剰活性のTh1反応の結果として起こるクローン病やその他の自己免疫疾患の素因を作るということである。重要な推定仮説は、腸内寄生虫のコロニー形成が、定着した炎症をダウンモジュレートするということである。本研究者らは、併発の住血吸虫症が、定着したM. avium感染におけるTh1応答を阻害することから、上記推定が可能であると予想している。本研究者らは、クローン病患者に鞭虫(Trichuris suis)をコロニー形成させ、疾患活性の改善を評価することにより、この仮説の確認のための試験をした。
【0141】
ブタの鞭虫であるT. suisは、低開発諸国に共通する人の腸内蠕虫であるT. trichuraに極めて類似している。この鞭虫は、治療用の薬剤となる可能性がある。天然のヒト寄生虫である鞭虫(Trichuris trichiura)は非常に微小な生物で、粘膜に付着することにより結腸内に寄生する。通常のコロニー形成では、何の症状も現われず、宿主の健康状態に何らの問題も引き起こさない。世界中の何百万人というコロニー形成された人々のほとんどの場合がそうである。しかし、少数のケースで、重度の感染によって、下痢、出血、ならびに鉄欠乏症貧血を引き起こす。寄生虫の生活サイクルが、宿主が自己感染しないようなものであることは興味深い。卵は、成熟して感染性になるのに、土壌相を必要とし、その後、個体に対する寄生虫負荷を増すために、再摂取されなければならない。従って、ヒト鞭虫(T. trichiura)感染は、土壌中の卵が摂取されない限り、宿主内で増加することはない。この薬剤は、3日間メベンダゾールで容易かつ有効に処理することができる。ヒト鞭虫は、宿主にコロニー形成させるのに使用することができ、クローン病の免疫過程を調節する実験的薬剤とみなすことができる。
【0142】
しかし、ヒト鞭虫(Trichuris trichiura)は、宿主に対して健康上の問題を引き起こす恐れがある。ヒトが、唯一の自然宿主であるため、実験用の卵は、他の人から採取しなければならない。実験被験者に対して、別のヒト伝染病が伝播する可能性が生まれる。従って、本研究者らは、代わりに、これに極めて近い動物寄生虫、すなわちブタ鞭虫(Trichuris suis)を使用した。このブタ鞭虫は、何らかの症候、疾病、同時伝染病を引き起こしたり、あるいは、公衆衛生に危険を及ぼすことなく、ヒト宿主に一時的にコロニー形成することができる。
【0143】
ブタ鞭虫は、ヒトに感染する種に極めて近い。これら二つの微生物は、同じ科で、形態学的に類似しているが、異なる種に属し、形態学、発生学、ならびに臨床的に識別することができる。ブタ鞭虫卵は、ヒト鞭虫(Trichuris trichiura)卵より若干大きく、突起の形状が異なり、卵から成虫への生育速度が、ヒト鞭虫(Trichuris trichiura)のそれより遅い(Beer、1976、Res. Vct.Sci.、20:47)。重要なことには、SPF動物から感染性寄生虫を得ることができる。
【0144】
本発明者らは、前述したように、供給用の感染性T.suis卵を製造した。腸病原体(例えば、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、カンピロバクター(Campylobacter)、エルシニア(Yersinia)、および腸毒性大腸菌(E.coli))ならびにウイルス(例えば、CMV、HSV、VZV、アデノウイルスおよびエンテロウイルス)の不在を確認するために、卵を試験した。
【0145】
抗療性クローン病が進行した二人の患者に、T. suisをコロニー形成させた。両患者は、この微生物に起因する症候をほとんど、もしくはまったく発症せずに、該寄生虫に耐容した。表4から、明らかなコロニー形成を達成した後、両患者は、CDAI値、下痢、ならびに炎症指数が低下したことがわかる。この結果は、限定しないが、クローン病を含む異常免疫応答の調節のために、蠕虫が有用であることを示している。
【0146】
【表5】

【0147】
その他の実施形態
その他の実施形態は、当業者には明らかである。以上行ってきた詳細な説明は、明瞭化、ならびに例として示したにすぎないことに留意すべきである。本発明の精神および範囲は、前記実施例に限定されないが、添付の特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常な/増強したTh1応答を含む過剰な免疫応答を治療するための、過剰な免疫応答を軽減するのに十分な量の寄生蠕虫製剤。
【請求項2】
前記過剰な免疫応答が、自己免疫応答である請求項1に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項3】
前記自己免疫応答が、炎症性腸疾患である請求項2に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項4】
前記治療が、過剰な免疫応答が関与する疾患に対して個体にワクチン接種することである請求項1に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項5】
前記寄生蠕虫製剤が、寄生虫、寄生虫抽出物、寄生虫卵、寄生虫卵抽出物、寄生虫幼虫、寄生虫幼虫抽出物、寄生虫セルカリアおよび寄生虫セルカリア抽出物よりなる群から選ばれる寄生虫を含む請求項1に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項6】
前記寄生蠕虫製剤が、ヒトにおいて自然界でコロニーを形成する蠕虫および動物においてコロニーを形成するがヒトを防御する蠕虫よりなる群から選ばれる寄生虫を含む請求項1に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項7】
前記寄生蠕虫製剤が、扁形動物である寄生虫を含む請求項6に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項8】
前記寄生蠕虫製剤が、吸虫および条虫よりなる群から選ばれる寄生虫を含む請求項7に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項9】
前記寄生蠕虫製剤が、肥大吸虫(Fasciolopsis)、棘口吸虫(Echinostoma)および異形吸虫(Heterophyes)種、肝吸虫(Clonorchis sinensis)、タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)、ネコ肝吸虫(Opisthorchis felineus)、肝蛭(Fasciola hepatica)、住血吸虫(Schistosoma)種、裂頭条虫(Diphyllobothrium)種、無鉤条虫(Taenia saginata)、有鉤条虫(Taenia solium)および小形条虫(Hymenolepsis nana)よりなる群から選ばれる寄生虫を含む請求項8に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項10】
前記寄生蠕虫製剤が、Trichuris muris、旋毛虫(Trichinella spiralis)、Nippostrongylus prasiliensis、Heligmonsomoides polygyrus、小形条虫(Hymenolepsis nanan)、アンギオストロンギルス(Angiostrongylus)種、Trichuris suis、ブタ回虫(Ascaris suum)、Trichuris vuipis、トキソカラ(Toxocara)種、顎口虫(Gnathostoma)種、鉤虫(Ancylostoma)種、アニサキス(Anisakis)種およびPseudoterranova種よりなる群から選ばれる寄生虫を含む請求項6に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項11】
前記寄生蠕虫製剤が、フィラリア原性寄生虫および肺吸虫よりなる群から選ばれる寄生虫を含む請求項1に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項12】
前記寄生蠕虫製剤が、線虫である寄生虫を含む請求項1に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項13】
前記寄生蠕虫製剤が、回虫(Ascaris lumbricoides)、ぎょう虫(Enterobius vermicularis)、鞭虫(Trichuris trichiura)、十二指腸虫(Ancylostoma duodenale)およびアメリカ十二指腸虫(Necator americanus)、糞線虫(Strongyloides stercoralis)ならびに旋毛虫(Trichinella spiralis)よりなる群から選ばれる寄生虫を含む請求項12に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項14】
前記寄生蠕虫製剤が、寄生蠕虫製剤と製薬上許容される担体とを含んでなる医薬組成物である請求項1に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項15】
前記寄生蠕虫製剤が、病原体を含まない特定の環境中に収容された哺乳動物の糞便から寄生蠕虫を単離し、前記寄生虫と製薬上許容される担体とを含む医薬組成物を製剤化することにより製造される請求項1に記載の寄生蠕虫製剤。
【請求項16】
前記寄生蠕虫製剤が、病原体を含まない特定の環境中の動物もしくは植物の組織または土壌から寄生蠕虫を単離し、前記寄生虫と製薬上許容される担体とを含む医薬組成物を製剤化することにより製造される請求項1に記載の寄生蠕虫製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−16840(P2011−16840A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213264(P2010−213264)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【分割の表示】特願2000−526233(P2000−526233)の分割
【原出願日】平成10年12月11日(1998.12.11)
【出願人】(399034714)ユニヴァーシティー オブ アイオワ リサーチ ファンデーション (1)
【Fターム(参考)】