説明

自己免疫疾患を検出するためのバイオマーカー抗体と診断装置

ペプチドに特異的に結合する抗体であって、配列
Ala-Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Thr-A la-Ala-Ala-Pro-Val(配列番号1)を含み、かつ、トリパノソーマクルーズ(T.cruzi)による感染後に宿主に誘導されない、抗体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学の分野、抗原と抗体の相互作用の分野に関する。より具体的に、本発明は、ヒト患者における特定の自己免疫疾患の診断を可能にする、シャーガス病に関連していない抗体を検出するために、シャーガス病の原因である単細胞寄生生物クルーズトリパノソーマのタンパク質由来の合成抗原(TCSP)の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感染性病原体は、効果的な体液性免疫応答の正常な成熟を妨げることおよび自己抗原に対して誘導された抗体を誘導することにより宿主の免疫系を回避されることが知られている。さらに、遺伝的素因を持つ宿主において特定の感染症抗原が自己免疫反応を誘発できることは、特定の感染症抗原と自己抗原との間の構造類似性に起因していると考えられる。
【0003】
シャーガス病は、ラテンアメリカと南アメリカの風土病であって、それが蔓延している国における罹患率および死亡率の主な原因である。こうしたことは他の大陸では事実上存在していない。凡そ1千6百万〜1千8百万の人々が感染し、毎年約5万人の患者がそれで死亡している。それは、キネトプラスト類と人間のシャーガス病を誘発するトリパノソーマ科の仲間である単細胞寄生生物のトリパノソーマクルーズ(T.cruzi)による感染症で、この寄生生物は多数の吸血性昆虫と、特にサシガメ(Triatominae;吸血植物のバグ)によって伝播される。寄生生物の感染形態は、虫に刺されて媒介昆虫の排泄物が血液または宿主の粘膜と接触した際に産み付けられるところで伝播される。媒介昆虫は、このように血液循環によって多数の細胞型に侵入することになる感染性発育終末錐鞭毛型を放出する。寄生生物の複雑なライフサイクルは、宿主の死を引き起こすことなく宿主の免疫反応を回避することができる。寄生生物は、媒介昆虫においての上鞭毛型ステップ、宿主哺乳動物の血液中での錐鞭毛型ステップ、および細胞内無鞭毛型のステップを経て、この最後のステップの間に、寄生生物は2次分裂で増殖する。感染のもう一つの経路は汚染された血の輸血で、数多くのスクリーニング法が開発されている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。
【0004】
トリパノソーマクルーズは、心臓および骨格筋細胞と、グリア細胞と単核食細胞系の細胞とに影響を及ぼすことが知られている。宿主細胞に受動的に侵入した後、寄生生物の錐鞭毛型は無鞭毛型に分化されて活発に分裂する。このように新しい細胞の浸入を引き起こして錐鞭毛型は放出される。この疾患の患者の約30%は重度の臨床心筋症型の症状を示し(非特許文献1および非特許文献2を参照。)、これらの心筋症は急性または慢性の可能性がある。
【0005】
同様の心臓の病状は、任意のシャーガス病のコンテキストの外でヒト免疫不全ウイルス(HIV)やその他の感染症に感染した患者において観察されることがある。同様の心臓の病状も明らかに健常者より少ない程度に存在する可能性があることは知られていて、(非特許文献3および非特許文献4を参照)、これらの病状は、原因不明の自己免疫メカニズムによって生じる。確かに、自己免疫反応は、正確な起源のない心筋症患者や、抗体の特異性、または特に関係する免疫原で観察できることが知られている。この自己免疫の原因となる抗原の構造およびより具体的にT.cruzi(TCSP)抗原の構造が定義された説明はどの文書にもない。受容体(アドレナリン作用またはコリン作用)に対する抗体は説明されているが、それらのTCSPペプチドとの関連をもつ特異性の定義、およびシャーガス病の自然背景の外でT.cruzi寄生生物の抗原関系は少しも説明されていない。
【0006】
例えば、非特許文献5に説明されているように、T.cruzi寄生生物のライフサイクルの各ステップは、特定の抗原タンパク質を発現させることが知られている。この文献に開示している研究で著者らは、T.cruzi発現バンクをスクリーニングして、ヒト抗血清と6〜34のアミノ酸含有の反復ユニットを含むポリペプチドをコードするcDNAを発見した。TCR70(TCR69と同一である)のアミノ酸配列は、偶発的置換しかないように、強く保たれている。全ての単離されたフラクションにおける頻繁な出現およびこれら反復ユニットの多様性は、それが免疫システムの破壊的な役割の回避に関与していることを示唆している。これらの反復ユニットは、免疫システムの効果的なモジュレーターであって、それは他の感染性病原体が同じような戦略、あるいは同一の反復ユニットを使用することと考えることができる。
【0007】
血液銀行で使用されて、T.cruziに対して管理されている抗体スクリーニング法(特にブラジルでは、このスクリーニングは義務である)は、間接免疫蛍光法(IFA)、間接赤血球凝集(IHA)、および免疫酵素アッセイ技術(ELISA)を含む。市場で入手可能なこれらのアッセイキットのほとんどは、生の寄生生物抽出物または抗原サンプルとしての細胞画分を用いている。寄生生物の抽出物は、リーシュマニア症、ランゲルトリパノソーマ感染症、梅毒やリウマチ熱のような他の疾患を持つ患者の血清と反応することがわかった。したがって、別の病原体による同様の反復ユニットの使用は、診断と治療を複雑にする。さらに、シャーガス病スクリーニングの偽陽性反応は、不必要および/または効果のない治療が続くことになる誤診につながりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0976763号
【特許文献2】米国特許第6458922号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】K. Karratolios et al.,"Inflammatory Cardiomyopathy", 2006, in thereview Hellenic Journal of Cardiology, vol. 47, p.54-65
【非特許文献2】J. Burian et al., "Myocarditis: the immunologist's view on pathogenesis andtreatment"、2005、in the review Swiss Medical Weakly、vol.135, p.359-364
【非特許文献3】F. Kierszenbaum,"Views on the autoimmunity hypothesis for Chagasdisease pathogenesis", 2003 in the review "FEMS Immunology andMedical Microbiology", vol. 1545, p.1-11
【非特許文献4】R. Jahns et al.,"Pathological autoantibodies in cardiomyopathy", 2008. 9. in the review Autoimmunity,vol. 41(6), p.454-461
【非特許文献5】Hoft et al., "Trypanosamacruzi Expresses Diverse Repetitive ProteinAntigens", 1989. 7. in the review Infectionand Immunity, vol. 57 (7), p.1959-1967
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、別の病原体で使用できる反復ユニットを検出することが可能であることが急務となっている。しかしながら、先行技術は、T.cruziによって同定されるポリペプチドモチーフTCR70がシャーガス病に関係のない他の疾患に存在していること、または自己免疫疾患につながることは、どの文献においても開示や示唆がなされていない。また、これら反復ユニットが、診断と治療のための信頼性の高いツールの開発を可能にできることや、シャーガス病に関連していたりしていなかったりする心臓病または自己免疫疾患の効果的な予防のための信頼性の高いツールの開発を可能にできることも、やはり先行技術には示唆されていない。従って、T.cruziによって発現する抗原に特異的に結合可能な病原性抗体を検出するために、好ましくは、迅速に、またはキットの形で使用され得る免疫診断法を提供する必要がある。最後に、血液中のこれらの病原性抗体の濃度を減少させる方法はない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、前述の問題は、配列Ala-Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Thr-A la-Ala-Ala-Pro-Val(配列番号1)を含むペプチドに特異的に結合する抗体を用いることによって解決される。そして、その抗体は、T.cruziによる感染後の宿主に誘導されないものである。これらの抗体は、本発明の第1の主題を表している。
【0012】
本発明の第2の主題は、第1の主題による抗体に特異的に結合する抗原であって、T.cruziによって誘導された抗体にも結合して、かつ、T.cruziの寄生生物によって遺伝的にコーディングされる抗原が除かれるもの、言い換えると、配列番号1の配列を含んでいる抗原が除かれるものである。
【0013】
第3の主題は、第1の主題による抗体の検出および/または沈殿のために、配列Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Ala(配列番号2)を、好ましくは、配列Ala-Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Ala(配列番号3)を、より好ましくは、配列番号1の配列を含むペプチドまたはタンパク質を用いるものであり、この場合、上記ペプチドまたは上記タンパク質は、抗体に対して特異的な活性を有する。特に、上記ペプチドまたは上記タンパク質は、TCSPペプチドまたはTCSPペプチドの変異体であってもよい。この場合、上記変異体は本発明の第1の主題の抗体に対して特異的な活性を有する。
【0014】
上記抗体は、感染性病原体、アレルゲンおよび/または自己抗原に結合することができ、感染性病原体は病原体となり得る。そして、上記抗体の存在はその後、感染症や自己免疫疾患に結びつく。上記病原体はまた、単細胞または多細胞であるプリオン、ウイルス、原核生物、および真核生物からなる群より選択され得る。上記感染症や自己免疫疾患は、心筋症、心筋炎、および全身性エリテマトーデスからなる群より選択され得る。
【0015】
本発明の別の主題は、液体サンプルから第1主題による抗体を検出する方法で、以下のステップを含む。
【0016】
(a)生体サンプル、好ましくは、体液および/または細胞培養の上清液からなるサンプル(「液体サンプル」)を、配列番号1、配列番号2、配列番号3を含むペプチドまたはタンパク質と接触させて、または、TCSPペプチドまたはTCSPペプチドの変異体と接触させて、セットする。この場合、上記ペプチドまたは上記タンパク質の場合は、請求項1に記載の抗体に対して特異的な活性を有する。
【0017】
(b)上記ペプチドまたはタンパク質と請求項1に記載の抗体との間に形成された錯体の決定ができる一つ以上の適切なバイオマーカーによって、上記液体サンプル中の請求項1に記載の抗体の結合を決定する。
【0018】
上記バイオマーカーは、化学発光マーカー、凝集マーカー、細胞膜マーカー、免疫酵素マーカー、および放射性マーカーからなるグループより選択することができる。
【0019】
本発明のさらに別の主題は、上記の主題による方法を実施するためのキットまたはデバイスで、以下を含む。
【0020】
(a)ペプチドまたはタンパク質が、本発明の第1の主題による抗体に対して特異的な活性を有する場合に、配列番号1、配列番号2、配列番号3を含む1つ以上の上記ペプチドおよび/または上記タンパク質における決定される量、および/またはTCSPペプチドまたは上記TCSPペプチドの変異体における決定される量、
(b)上記ペプチドまたは上記タンパク質と本発明の第1の主題の抗体との間に形成された錯体の決定ができる一つ以上の適切なバイオマーカー、
(c)任意ではあるが、好ましくは上記ペプチドまたは上記タンパク質によって含浸される固形担体。
【0021】
上記バイオマーカーは、化学発光マーカー、凝集マーカー、細胞膜マーカー、免疫酵素マーカー、および放射性マーカーからなる群より選択することができる。
【0022】
さらに別の主題は、ペプチドまたはタンパク質が最初の主題の抗体に対して特異的な活性を有する場合に、配列番号1、配列番号2、配列番号3を含む上記ペプチドまたは上記タンパク質を用いて、または、TCSPペプチドまたは上記TCSPペプチドの変異体を用いて、最初の主題にかかる抗体を定性的または定量的に検出するステップを含む免疫診断法である。
【0023】
さらに別の主題は、血液サンプルのような生体液サンプル中、または血流のような生体液循環の中で、最初の主題にかかる抗体の濃度を下げるための方法であって、ペプチドまたはタンパク質が最初の主題の抗体に対して特異的な活性を有する場合に、配列番号1、配列番号2、配列番号3を含む上記ペプチドまたは上記タンパク質を用いて、または、TCSPペプチドまたは上記TCSPペプチドの変異体を用いて、上記抗体を沈殿させるステップを含む。
【0024】
また、NCRA(非クルーズ関連抗体、すなわち、T.cruziによって誘導されない抗体)と同等の結合活性を有する抗体またはその抗体断片を得るために、TCSPペプチドまたはその変異体を用いることも可能であって、これは、本発明のさらに別の主題である。
【0025】
ペプチド配列(配列番号1、配列番号2、配列番号3)のいずれかを含むペプチドまたはタンパク質は、NCRAの抗体を誘導する免疫原を同定したり分離しさえするために、用いられ得る。高度なアルゴリズムを用いる配列相同性のためのコンピュータ検索実施方法は、免疫原候補を同定するためのツールとして機能する。上記免疫原候補は、合成されることができ、その後、NCRA含有が疑われる生体サンプルとの反応性についてテストされる。NCRAに特異的に結合する病原体、またはNCRAによって特異的に認識される病原体を同定または分離するために、ペプチドまたはタンパク質が、本発明の最初の主題の抗体に対して特異的な活性を有する場合に、配列番号1、配列番号2、配列番号3を含む上記ペプチドまたは上記タンパク質を用いること、または、TCSPペプチドまたは上記TCSPペプチドの変異体を用いることは、本発明の別の主題を形成する。この相互作用は、病原体とTCSPまたはTCSP変異体との間の相同性に基づいている。
【0026】
本発明のさらに別の主題は、NCRAと同等の結合活性を有する抗体または抗体断片を得るために、ペプチドまたはタンパクが、本発明の最初の主題の抗体に対して特異的な活性を有する場合に、配列番号1、配列番号2、配列番号3を含む上記ペプチドまたは上記タンパク質を用いること、または、TCSPペプチドまたは上記TCSPペプチドの変異体を用いることによって示される。
【0027】
本発明の最終主題は、NCRAと同等の結合活性を有する抗体または抗体断片、薬学的に許容される注射剤、および任意に1以上のキャリア(例えばポリソルベートおよび/またはサッカロースなど)や添加剤を含む医薬調整物である。上記抗体または抗体断片は、TCSPペプチドに対する生体の免疫化につながる、第3の主題にかかる生体中での用途によって、または、特定の抗体を発現するバクテリオファージ列上でのTCSPを用いたスクリーニングによって、得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、TCSPペプチドに特異的に結合する抗体の存在に関連付けられているがT.cruziの感染には必ずしも関連付けられていない信号の強度の分布を示す(これらの抗体は、NCRA、非クルージ関連抗体と呼ばれる)。このデータは、次の4グループに属する患者数のNを含む疫学的試験によってもたらされる。
【0029】
DS=健康なドナー「フランス語:donneurs sains」(すなわち、平均的な一般集団より良い健康状態を有する、モニタリングおよび選択された血液ドナー)
HIVアフリカ:HIVウイルスのスクリーニングに対して陽性反応をもつアフリカ患者
HIV西洋:HIVウイルスのスクリーニングに対して陽性反応をもつ西洋患者
シャーガス:T.cruziに感染した患者。
【0030】
このテーブルに含まれるデータは、ELISA型アッセイによってもたらされる。それは、表1、表2で数値的に表されている。
【図2】図2は、79患者の疫学調査の結果、すなわち、患者に対する研究開始からの経過時間関数(年数)としてのNCRA濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(用語の定義)
本発明の文脈において、以下の用語は、特定の意味を持っている。
【0032】
用語「シャーガス病」は、トリパノソーマクルーズ寄生生物の非経口経路を経由する感染によって引き起こされる病的状態を指す。
【0033】
用語「シャーガス病以外の病気」は、クルーズトリパノソーマ寄生生物が原因ではない任意の病的状態を意味し、これは新たな抗原に対する抗体の上昇反応につながる、以下で定義さるTCSPとしてここに指される。
【0034】
「アミノ酸」は、天然および非天然アミノ酸を意味する。「天然」アミノ酸は、天然由来のタンパク質に見られるL型アミノ酸が含まれている。すなわち、アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、:グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)およびバリン(V)。
【0035】
「非天然」アミノ酸は、天然アミノ酸のD型を含む。特定の天然アミノ酸のホモ型(アルギニン、リジン、フェニルアラニン、およびセリンなど)、また、ロイシンとバリンのノア型を含む。それらはまた、他の合成アミノ酸も含む。
【0036】
「ペプチド化合物」は、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化、または脂肪酸との反応により得られる誘導体を含む特定のペプチドおよびポリペプチドを含む。この用語はまた、天然由来のタンパク質とペプチドとを含む。
【0037】
用語「抗体」は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。用語「モノクローナル抗体」は、上記抗体を取得するための種や、原点、および方法とは無関係に、均質集団を有する抗体化合物のことを指す。さらに、用語「抗体」は、抗体断片および所謂VHVLドメイン(可変重鎖および可変軽鎖)などの少なくとも免疫グロブリンドメインの一部が存在するヒト抗体とミニ抗体とを含む。
【0038】
用語「NCRA」または「NCRA抗体」(非クルーズ関連抗体)は、TCSP抗原に特異的に結合し、そしてT.cruziによる感染後、その宿主に誘導されない抗体のことを指す。
【0039】
用語「TCSP」(クルーズトリパノソーマ合成ペプチド)、「TCSP抗原」、「TCSPペプチド」または「TCSPタンパク質」は、本発明によって定義されるすべての新しいペプチドのことを指す。それらは、また、タンパク質TCR70とTCR69に見出されるアミノ酸配列、すなわち、以下に定義される配列番号1を含んでいる。配列番号1は、T.cruziで分離され得るものであって、かつ、NCRAと抗原として機能するだけではなく、上記で定義したNCRAで認識されるそのリニアまたは非リニアのエピトープなどのすべての変異体および機能的等価物としても機能する。エピトープの最小構造は、以下に定義される配列番号2に対応する。
【0040】
用語「自己抗原」は、宿主の内在性分子内に存在するエピトープを指し、これは、おそらく免疫反応を誘発するために、上記ホストの免疫システムによって認識され得るものである。このメカニズムは、自己抗原(自己エピトープとも言う)に対する宿主の望ましくない免疫反応に起因する病理学的状態として、ここで定義される「自己免疫疾患」につながり得るものである。
【0041】
用語「感染性病原体」は、生きているか否かを問わず、免疫反応を誘発することができるすべての因子のことを指す。具体的には、病原体、アレルゲンおよびハプテンを指す。「病原体」は、分離されたかまたは分離されていない、特定のプリオン、ウイルス、原核生物および真核生物を含む。「アレルゲン」は、ホストが物質または分子に露出されたとき、自発的に宿主の免疫反応を誘発することができるすべての物質または分子を含む。
【0042】
用語「生体液」は、ヒト患者のような生体の体液、すなわち、血清、血漿、全血、尿、脳脊髄液、唾液、または細胞培養の上清液のようなヒト患者から採取した任意の体液のことを指す。
【0043】
(実施形態)
本発明によると、上述した問題は、シャーガス病を引き起こす単細胞寄生生物のタンパク質、すなわち、トリパノソーマクルーズ(T.cruzi)に由来の新しい抗原(TCSP)と反応する新たな抗体を用いることによって解決される。本発明の特徴は、T.cruzi寄生生物に関連していない、それゆえ上記抗原によって誘発されていない抗体(NCRA抗体と呼ばれる)によるTCSP抗原を特異的に認識することにある。この異種認識現象は、個体に免疫力を与えてかつNCRAを誘導する、内因性または外因性の別の免疫原を備えたTCSP抗原の構造上の擬態によって説明される。
【0044】
TCSP抗原のペプチド配列は公知のタンパク質に由来し、Swiss−Prot、UniProtおよびTrEMBL(Accession Q7M3W1)のデータベースに存在している。このタンパク質は、TCR69として知られていて、タンパク質TCR70に類似している。
【0045】
本発明によると、NCRAの抗体を定義するために用いられるタンパク質のペプチド配列は、3文字のアミノ酸コードで表され、次の通りである。
【0046】
Ala-Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Thr-Ala-Ala-Ala-Pro-Val(配列番号1)
このペプチドの免疫反応性の変異体はまた、同じ抗原特性を有する限り本発明に含まれる。
【0047】
ペプチド配列の変異体は、元の配列の生物活性が保持されることを条件として、例えば、他の化学物質によって一つ以上のアミノ酸を置換することによって、得ることが可能である。また、これらは、ビオチンまたはそのようなポリリジンや多糖類などの天然ポリマー若しくは合成ポリマーなどの化学化合物の添加によっても得ることが可能である。もともとの配列の生物活性を保持するこれらの変異体のすべては、この発明の範囲に含まれる。
【0048】
これらの変異体は、特に次の配列、すなわち、
Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Ala(配列番号2)、
好ましくは、
Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Ala(配列番号3)
で構成され得る。
【0049】
この配列は、1回以上繰り返すことができる。そして、この繰り返しの中で、(「C末端」の意味における)アラニンの末端ユニットは、配列番号1のように、スレオニンユニットで置換することができる。これらの配列で構成されるペプチドも、この同じ生物活性を持っており、かつ本発明で用いられることができる。
【0050】
TCSPは、配列番号1〜3を持つ一般的にタンパク質TCR69またはTCR70(非特許文献5を参照)をもたらすT.cruziの寄生生物のタンパク質抽出物から精製して得ることができる。 TCSPとその変異体はまた、(例えば、当業者にとって公知のメリフィールド法による)化学合成物から得られ得る。それらはまた、挿入されたペプチドの培養、抽出、精製と続く、ペプチドの配列をコードするヌクレオチド配列を挿入した後に、微生物発現系におけるタンパク質発現を含む組換えDNAなどの分子クローニング技術によって得られ得る。
【0051】
TCSP抗原とその変異体は、擬陽性反応を引き起こすため、シャーガス病のスクリーニングに用いることはできない。本発明者らは、TCSPはNCRAと特異的に相互作用することを発見した。これはTCSPがNCRAに結合することができる特定のペプチド配列を含むことを意味する。この結合は、化学発光法、凝集法、および免疫酵素または放射性法などの公知のいかなる方法によって検出することができる。
【0052】
バイオマーカー抗体は、生体液中に存在しており、その存在は、心筋症を有する患者、例えば、心臓病の合併症を患ったHIVに感染された被験者における臨床的兆候に相関している。本発明は、TCSPペプチド配列に関連するのと同様に、同じバイオマーカー抗体に結合可能であって、かつ、T.cruzi寄生生物(NCRA)によって必ずしも誘導されないすべての構造類似物に関連している。本発明はまた、感染または自己免疫炎症の後の患者における心筋炎および心筋症を検出またはモニタリングするための免疫学的アッセイ法に関する。
【0053】
本発明の一実施形態は、生体サンプル内のNCRA濃度を質的および量的に決定する方法であり、以下のステップを含む:
a)血清、血漿、全血、尿、脳脊髄液、唾液、生検標本、または細胞培養の上清液のような生体サンプルを取得するステップ、
b)上記生体サンプル中のNCRA濃度を決定するステップ。
【0054】
生体サンプルは、液体、ゲルまたは固体の形態になり得る。
【0055】
本発明はまた、妊娠女性中にNCRAが存在することが原因で、子宮内での心停止によって引き起こされる胎児の死亡確率を予測することにも適用され得る。実際、これらの抗体が経胎盤を通過することにより、胚形成中の心臓細胞にダメージを与え得る。こうした効果は、心臓組織が未発達である限り、よりずっと顕著になる。この方法では、患者、つまり妊娠女性の体液のサンプルが入手され、そして、このサンプルにおけるNCRA濃度が決定される。
【0056】
加えて、本NCRAアッセイは、心筋症を患う患者における治癒戦略または当該病気に対するワクチンの開発につながり得る。現在、バイオマーカー抗体を誘発する免疫の性質は知られていないが、本発明で開示されるTCSP配列は、当該病気の原因の特性評価につながり、また、T.cruzi寄生生物に接触しなかったヒト被験者中における上記NCRAを含む感染性または非感染性の病原体の分離につながり、このため、新しい治療戦略の開発に貢献するものである。
【0057】
例として、抗体または非TCSP抗体断片は、競争により、NCRAが生物のターゲット部位に結合し、このため病原効果を抑制するということを防げるように設計され得る。そのような競争的な抗体の設計は今回の発見によってなし得る。
【0058】
加えて、(同一患者における)NCRAの長期的な測定は、心筋症における変化とそのいかなる治療の有効性を示し得る。例えば免疫吸着技術によって、血液循環からこの同じNCRAを取り出すことは、これらの病原効果を減少させたり、完全に抑制させたりすることができる。
【0059】
本発明は、T.cruzi寄生生物に全く接触しなかった被験者中のT.cruzi寄生生物から分離されたたんぱく質の抗原特性の驚くべき発見に基づくものである。実際、TCSP抗原は、この寄生生物が蔓延している領域外において生存しているヒト被験者中に広がっているNCRAと一緒になって例外的な「異種特異的な」活性を有する。そのことはペプチド擬態構造を明確に含んでおり、これらの抗体は、シャーガス病をスクリーニングするテストにおいて擬陽性反応を誘発する。
【0060】
こうした構造により、TCSPペプチドが、自己抗原またはT.cruzi以外の感染した病原に対して向けられたNCRAに特異的に結合することを可能にする。結果として、本発明の一実施形態は、NCRAの検出のために、TCSPポリペプチドまたはその免疫反応変異体の用途に向けられている。これらのNCRA抗体はまた、TCSPに結合したNCRA抗体よりも、多かれ少なかれ、親和性と特異性をもって、自己抗原または感染した生命体の抗原に結合することができる。
【0061】
より具体的には、本発明は、自己免疫病を代わりに引き起こし得る病原を誘発する感染性または非感染性の病原を同定または分離するために、ポリペプチドを上述したように提供する。本発明はまた、ポリペプチドを上述したように提供するものであって、その内部において、感染性の病原は、明らかに健常なヒト被験者の間で相対的に広がっている、さらには、マイコプラズマやその他の日和見感染性病原など、HIVに感染された被験者において特に非常に広がっている、ウィルスや病原菌である。本発明はまた、ポリペプチドを上述したよう用いることが可能であって、その内部において、自己免疫疾患は、心筋症や心筋炎などの心臓病理学における上述した病気から選択されるものである。加えて、本発明は、生体液サンプル中に存在するNCRAと接触させてTCSPまたは変異体をセットすることにより、TCSPポリペプチドに対する抗体を検出するための方法を提供するものであり、当該生体液サンプル中のNCRA結合の検出は当業者に知られた方法によって可能である。
【0062】
加えて、本発明は、TCSPポリペプチドに対する抗体の検出用の分析方法を提供するものであって、免疫分析の分野で科学者に知られた方法を用いて抗原−抗体結合が検出されることを可能とする試薬またはツールを含んでいる。また本発明の別の実施形態では、シャーガス病用の血清学的スクリーニング分析の特異性を向上させるために、TCSPポリペプチドまたはその変異体が用いられるが、この場合、その変異体がNCRAに関して特異的な活性を有する。図1に示された結果から明らかであることは、スクリーニングテストで検出されたNCRAが、T.cruzi寄生生物による感染以外の起源をもち得ることである。その結果、TCSP抗原によるこれらの抗体の抑制は、シャーガス病診断テストの特異性の改善を可能にする。
【0063】
本発明における免疫診断テストは、当業者に知られたELISA(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay)法によって実行された。しかしながら、抗原−抗体結合を検出または測定することを可能とする他のいかなる技術もまた、特に本発明の手段の一つを形成する新規な免疫診断方法を実行する目的で、本発明に適用され得るものである。
【0064】
本発明の別の側面は、NCRAと同等の結合活動を行う抗体または抗体断片を得るための、TCSPペプチドまたはその変異体に関する治療用途である。この用途では、抗体または抗体断片は、TCSPペプチドに対する生体(例えば動物)の免疫付与によって最初に調整される。それから、これらの抗体または抗体断片を含む薬学的調整物、つまり、薬学的に許容できる注入可能な溶液に選択的にアジュバント(例えばポリソルベーとサッカローズ)を加えたものが調整される。
【0065】
それから、この薬学的調整物が、病原性のNCRAと競合するために、患者に対して投与(例えば注射)される。このため、病原性のNCRAの濃度は低減され、そして患者の臨床的兆候は改善する。
【0066】
また、本発明の別の側面は、生体液サンプル中、そして特には血液サンプルまたは血液循環中で、本発明に係る抗体の濃度を低減するための方法であって、ペプチド若しくはタンパク質が本発明の抗体に関して特異的な活性を有する場合に、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3を含むペプチド若しくはタンパク質を用いるか、または、TCSPペプチド若しくはTCSPペプチドの変異体を用いて、上記抗体を保持するステップを含む。この方法は、診断目的のために、大量の生体液の取り扱いのために、または、プラズマフェレーシスによる治療目的のために、実行され得る。この方法は、静的にまたは生体液循環の中で実行され得る。好ましくは、この方法は、免疫吸着方法として実行される。典型的な実施形態では、生体液は固形担体に接触しており、その固形担体の上で、上記ペプチド若しくは上記タンパク質、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3を含む上記タンパク質、上記TCSPペプチド、または上記TCSPペプチドの変異体が固定される。抗体は、存在する場合には、この固形担体上に沈殿し、生体液から取り除かれる。
【0067】
また、本発明の別の側面は、NCRAと同等の活動を有する抗体または抗体断片を含む薬学的調整物、つまり、薬学的に許容できる注入可能な溶液に選択的に1または複数のアジュバント(例えばポリソルベーおよび/またはサッカローズ)を加えた調整物である。これらの抗体または抗体断片は異なる方法で入手され得る。一つの実施形態では、これらは、特異的な抗体を発現するバクテリオファージ列上でのTCSPを用いたスクリーニングによって入手され得る。別の実施形態では、これらは、配列番号1を含むペプチドに特異的に結合して且つT.cruziによる感染後に宿主内に誘導されない抗体を検出する目的で、配列番号1、配列番号2または配列番号3を含むペプチドまたはタンパク質を用いて、生体中で入手され得るものであり、その使用によりTCSPペプチドに対する上記生体の免疫付与がもたらされ得る。
【0068】
また、本発明の別の側面は、TCSPの用途、特に、ワクチン化合物における配列番号1、配列番号2または配列番号3を含むTCSPの用途であって、少なくともシャーガス病以外の病気の一部に対して、特には自己免疫狭心症、心筋炎および全身性エリテマトーデスに対して、人に免疫を与えることを可能にする。このワクチン接種は、単一のドーズ量または複数のドーズ量の注射によって行うことができる。これらの組成物において、TCSPは、ペプチドとして、つまり、ビオチン化の形態で、および/またはアビジン誘導体、特には、NeutraLite Avidinとして知られる化学修飾および酵素修飾によって得られるアビジン誘導体と結合して、用いられる。上記組成物は、溶剤、添加剤、緩衝剤および薬学的に許容できるキャリア、場合によってはその他の有効成分を含むことができる。
【0069】
本発明の別の側面によると、NCRAに特異的に結合する病原体またはNCRAによって特異的に認識される病原体を同定または分離するために、配列番号1、配列番号2、配列番号3を含むペプチドもしくはタンパク質、またはTCSPペプチド若しくはTCSPペプチドの変異体が用いられ、この場合、上記ペプチドまたはタンパク質は本発明の抗体に関して特異的な活性を有する。
【0070】
本発明のTCSPの幾つかの用途では、例えば発色団、蛍光色素分子、または容易に検出可能な別の化学物質(酵素、放射性同位体、ビオチン、ハプテン、など)を用いて、上記TCSPをマークすることに有利であり得る。
【0071】
<実施例>
後述する実施例は本発明のある側面について示すものであって、その記述に限定されるものではない。
【0072】
(集団実験例)
例1:
これらの例は、数Nの複数のヒト集団に対して実行されたスクリーニングテストに対応している。表1と表2は、図1と同様に、これらスクリーニングテストの結果を示す。テストの一連のステップと同様、これらのテストのために使用されるELISA診断法は、ここで説明されている。
【0073】
ELISA法:
配列番号1の合成ペプチドで表されるTCSPペプチドは、1μg/mの濃度でポリスチレンマイクロプレートに吸着された。自由付着部位は、免疫学的に中性のタンパク質(この場合アルブミン)で飽和した。マイクロプレートは、洗浄バッファーで洗浄して、使用できる状態になるように乾燥した。テストされるサンプルは、希釈バッファー中で1/20希釈を行った後、ウェル中で培養された。抗原の表面に固定されていない抗体は、3つの洗浄サイクルによって除去された。マイクロプレートに固定したTCSPの特異的な抗体は、ヒトIgGに対して作られた抗体によって検出され、かつ、酵素トレーサーによってマークされた。使用された酵素の発色基質は、波長の適切な範囲で、特に約450nmの波長で、色素の吸収に相当する光学密度を測定することにより、抗TCSPの付着を露出させるように機能した。
【0074】
1.HIVに感染した患者から得られた血清中に存在するNCRAとTCSPペプチドとの反応:
HIVに感染した患者の血清サンプルは、2つの集団つまりアフリカの患者と西洋人の患者(ヨーロッパとアメリカに起源を有する人種)に対して、NCRAの存在をテストした。
【0075】
2.「健康」な血液ドナー、すなわち、抗HIV、抗HVC、抗HVB抗体および梅毒に陰性であるドナーから得られた血清とTCSPペプチドとの反応:
これらの抗体は、T.cruziの感染によって誘発されなかったという仮説に基づいて、TCSPに対する抗体の有病率を評価するために、欧州の血清サンプルが用いられた。上記のようにこれらの血清は、健康な血液ドナーによって得られた。これらのドナーはそれゆえ、それらが取得される平均的な集団よりも健康の良い状態にある。
【0076】
TCSPに対するこれらの抗体の起源に関して完全に信頼できるものであるためには、すべてのサンプルは、T.cruziの感染を検出することが可能である市販のキットを用いてランダムな順序でテストされた。その結果、陽性サンプルは見つからなかった。しかし、全く予期しない形で、これらのサンプルのかなりの割合がTCSPに対する抗体をそれにもかかわらず含んでいることが判明した。T.cruziは、他の病原体によっても使用される可能性のある、および/または自己免疫抗体につながる、高い免疫原性モチーフを使用するということが結論付けられる。
【0077】
3.患者血清中に存在するNCRAとTCSPペプチドとの反応:
血清サンプルとTCSPが以前に吸着されている固体表面との相互作用による。
【0078】
4.T.cruziの寄生生物によって感染した患者の血清とTCSPとの反応:
TCSPの抗原がT.cruziの寄生生物のタンパク質に由来することを考えると、従来の技術によっては、T.cruzi感染により誘発された抗体と自己免疫機構(NCRA)によって誘発された抗体とを区別するのは困難である。抗原としてTCSPを用いたELISAテストでは、抗体の2つのカテゴリが混同されていることが判明した。つまり、EIAの結果は判別できるものではない。
【0079】
結果は、図1と同様、表1および2に記載されている。この図は、患者数Nのそれぞれの患者集団に対しての、試験のために使用されたTCSPペプチドとNCRAとの反応性の分布(光学密度として表されている)を示す。個々の点の分布は、各集団それぞれに対して表され、長方形(ボックス)は、半四分位範囲を示す。実線の水平線は、集団のそれぞれの算術平均を示し、点線の水平線は、集団の95%を定義する。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
例2:
HIVに感染したN=79人の患者の別のグループでは、NCRA測定における増加と二年を超える時間スケールでのこれら患者の時系列的進行との間に明確な関係が(表3参照)が認められた。
【0083】
この研究は、NCRA濃度のモニタリングが、心臓合併症の観点から、HIV感染の進展とその結果の予測を可能にできることを示している。
【0084】
個別ケースの例(臨床試験)
クロスの研究で、HIVに感染された男性患者らのNCRAの濃度が測定され、そして、彼らの心臓状態を調べることができた。表3は、これらの結果を示している。例として、患者PAT_001ために、高いNCRAアッセイ(すなわち:8.19)の存在は、該患者の心イベントに先行して採取した血液サンプル中に記録されている。
【0085】
これらの例は、測定NCRAアッセイとそれに続く心イベントとの間の関係(PAT_001、PAT_004、PAT_005を参照)と、潜在性心イベントは高用量(PAT_009を参照)でNCRAの出現を誘導できる可能性とを示している。
【0086】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドに特異的に結合する抗体であって、
配列
Ala-Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Thr-Ala-Ala-Ala-Pro-Val(配列番号1)を含み、かつ、
トリパノソーマクルーズ(T.cruzi)による感染後に宿主に誘導されない、
抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の前記抗体と特異的に結合する抗原であって、
T.cruzi寄生生物によって遺伝的にコーディングされる抗原が除かれたものである、
抗原。
【請求項3】
ペプチドまたはタンパク質の用途であって、
前記ペプチドまたは前記タンパク質が請求項1に記載の抗体に関して特異的な活性を有する場合に、請求項1に記載の抗体の検出および/または沈殿のために、
配列
Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Ala (配列番号2)
を含み、好ましくは、
配列
Ala-Ala-Ala-Pro-Ala-Lys-Ala(配列番号3)
を含み、さらにより好ましくは、
前記配列番号1を含む、
ペプチドまたはタンパク質の用途
【請求項4】
請求項3に記載のペプチドまたはタンパク質の用途において、
TCSPペプチドの変異体が請求項1に記載の抗体に関して特異的な活性を有する場合に、前記ペプチドまたはタンパク質は、前記TCSPペプチドまたは前記TCSPペプチドの変異体である、
ことを特徴とするペプチドまたはタンパク質の用途。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のペプチドまたはタンパク質の用途において、
前記抗体は、感染性病原体、アレルゲン、および/または自己抗原に結合する、
ことを特徴とするペプチドまたはタンパク質の用途。
【請求項6】
請求項5に記載のペプチドまたはタンパク質の用途において、
前記感染性病原体は、病原体であり、
請求項1に記載の抗体の存在は、感染症または自己免疫疾患に関連している、
ことを特徴とするペプチドまたはタンパク質の用途。
【請求項7】
請求項6に記載のペプチドまたはタンパク質の用途において、
前記病原体は、単細胞または多細胞であるプリオン、ウイルス、原核生物および真核生物からなる群により選択される、
ことを特徴とするペプチドまたはタンパク質の用途。
【請求項8】
請求項6に記載のペプチドまたはタンパク質の用途において、
前記感染症または自己免疫疾患は、心筋症、心筋炎および全身性エリテマトーデスからなる群により選択されることを特徴とするペプチドまたはタンパク質の用途。
【請求項9】
液体サンプル中の請求項1に記載の抗体を検出する方法であって、
(c)ペプチドまたはタンパク質が請求項1に記載の抗体に関して特異的な活性を有する場合に、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3を含む前記ペプチド若しくは前記タンパク質、またはTCSPペプチド若しくは前記TCSPペプチドの変異体と接触させて、生体サンプル、好ましくは、体液および/または細胞培養の上清液のサンプル(「液体サンプル」)をセットし、
(d)前記ペプチドまたは前記タンパク質と請求項1に記載の前記抗体との間に形成された錯体の決定ができる一つ以上の適切なバイオマーカーによって、前記ペプチドまたは前記タンパク質を備えた前記液体サンプル中の請求項1に記載の抗体の結合を決定する、
抗体を検出する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の抗体を検出する方法において、
前記マーカーは、化学発光マーカー、凝集マーカー、細胞膜マーカー、免疫酵素マーカー、および放射性マーカーからなるグループより選択される、
ことを特徴とする抗体を検出する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法を実行するためのキットまたはデバイスであって、
(d)ペプチドまたはタンパク質が請求項1に記載の抗体に関して特異的な活性を有する場合に、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3を含む1つ以上の前記ペプチドおよび/もしくは前記タンパク質、および/またはTCSPペプチド若しくは前記TCSPペプチドの変異体についての決定された量と、
(e)前記ペプチドまたは前記タンパク質と請求項1に記載の抗体との間に形成された錯体の決定ができる一つ以上の適切な遺伝子マーカーとを備え、
(f)好ましくは、前記ペプチドまたは前記タンパク質によって含浸された固形担体を選択的に備える、
キットまたはデバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のキットまたはデバイスにおいて、
前記マーカーは、化学発光マーカー、凝集マーカー、細胞膜マーカー、免疫酵素マーカー、および放射性マーカーからなる群より選択される、
キットまたはデバイス。
【請求項13】
免疫診断方法であって、
ペプチドまたはタンパク質が請求項1に記載の抗体に関して特異的な活性を有する場合に、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3を含む前記ペプチド若しくは前記タンパク質、または、TCSPペプチド若しくは前記TCSPペプチドの変異体を用いることにより、請求項1に記載の抗体を定性的または定量的に検出するステップを含む、
免疫診断方法。
【請求項14】
血液サンプルのような生体サンプル中、または血流のような生体液循環中の請求項1に記載の抗体の濃度を下げる方法であって、
ペプチドまたはタンパク質が請求項1に記載の前記抗体に関して特異的な活性を有する場合に、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3を含む前記ペプチド若しくは前記タンパク質、または、TCSPペプチド若しくは前記TCSPペプチドの変異体を用いることにより、前記抗体を沈殿させるステップを含む、
抗体の濃度を下げる方法。
【請求項15】
ペプチドまたはタンパク質が請求項1に記載の抗体に関して特異的な活性を有する場合に、NCRAと同等の結合活性を有する抗体またはその抗体断片を得るための、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3を含む前記ペプチド若しくは前記タンパク質、またはTCSPペプチド若しくは前記TCSPペプチドの変異体の用途。
【請求項16】
ペプチドまたはタンパク質が請求項1に記載の抗体に関して特異的な活性を有する場合に、NCRAに特異的に結合する病原体、またはNCRAによって特異的に認識される病原体を同定または分離するための、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3を含む前記ペプチド若しくは前記タンパク質、またはTCSPペプチド若しくは前記TCSPペプチドの変異体の用途。
【請求項17】
NCRAと同等の結合活性を有する抗体または抗体断片、薬学的に許容される注射剤、および、(例えばポリソルベートおよび/またはサッカロースである)1以上のキャリアまたは添加剤を選択的に含む医薬調整物であって、
前記抗体または前記抗体断片は、前記TCSPペプチドに対する前記生体の免疫化をもたらす生体中の請求項3〜8のいずれか1項に記載の用途によって得られる、
医薬調整物。



【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−526088(P2012−526088A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509072(P2012−509072)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000349
【国際公開番号】WO2010/128223
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511264548)
【氏名又は名称原語表記】INFYNITY BIOMARKERS
【出願人】(511264559)
【氏名又は名称原語表記】HOSPICES CIVILS DE LYON
【出願人】(596096180)ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ (16)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】