説明

自己免疫障害に対する処置方法

本発明は、1つまたはそれより多くのSAPアゴニストを用いて、エクスビボまたはインビボにおいて、T調節細胞を増やす方法および組成物を提供する。上記方法および組成物は、自己免疫疾患の処置において、および外来移植片拒絶を予防することにおいて有用である。本開示は、治療上有効な量のSAPアゴニストを投与することにより移植片対宿主病を処置または予防する必要のある患者における移植片対宿主病を処置または予防する方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
免疫寛容は、自己と外来タンパク質とを区別する免疫系の能力の中心である。中枢性寛容は、初めに、自己反応性T細胞の欠失による胸腺選択の間に達成される。しかしながら、中枢性寛容は不完全であり、末梢においてさらなる免疫調節が必要とされる。T細胞調節の末梢メカニズムとしては、アネルギーの誘導、誘導される細胞死の活性化、およびT細胞活性の調整が挙げられる。
【0002】
調節T細胞は、種々の免疫応答を制御することにおいて基本である。調節T細胞の欠如、または調節T細胞の欠陥のある機能は、ヒトにおける自己免疫と相関し、ここでその存在は、寛容に関連している。前臨床の動物モデルからの説得力のあるデータは、自己抗原または同種抗原に対する免疫寛容を回復することにより調節T細胞の養子移入がいつくかのT細胞を媒介した疾患(自己免疫疾患および同種移植拒絶が挙げられる)を予防または治癒し得ることを示す。調節T細胞の3つのカテゴリーが、CD4+Tリンパ球細胞集団で記載されてきた:TH3細胞、1型調節細胞、およびCD4+CD25+T調節細胞。TH3細胞は、TGF−βの分泌を介して機能し、IL−4の存在下で、刺激によりインビトロで生成され得るか、または低用量の抗原の経口投与を介してインビボで生成され得る(非特許文献1;非特許文献2)。1型調節T細胞は、IL−10およびTGF−βの産生を介してT細胞を抑制し、IL−10の存在下で記憶T細胞の刺激により誘導される(非特許文献3;非特許文献4)。CD4+CD25+調節T細胞は、炎症部位におけるCD4+CD25−T細胞レスポンダー細胞の増殖および/またはサイトカインの産生を抑制することによる自己免疫の調節因子として機能することが考えられる。さらに、これらのT調節細胞は、免疫応答の大きさを減らし、無害な抗原が病変を誘導することなく、取り除かれることを可能にする。
【0003】
CD4+CD25+調節T細胞は、ヒトおよびマウスにおいて存在し、CD25の発現により特徴付けられる(概説については、非特許文献5を参照のこと)。ヒトの末梢血液から単離される調節T細胞は、それらのFACS染色の特徴付け、および短いテロメア長に基づき高度に分化した記憶細胞であって、歴史的に胸腺に由来することが考えられている(非特許文献6;非特許文献7)。ヒトにおいて、調節T細胞は全てのCD4+T細胞の1〜3%を表すこと、およびサプレッサー機能を誘導するために活性化を必要とすることが考えられている。これらの調節T細胞の抑制性の機能は、主に細胞−細胞接触を介して媒介され、IL−2の添加により抑止される(abrogate)(非特許文献8)。
【0004】
調節T細胞集団は、自己免疫の傾向がある動物およびヒトにおいて、減少する(非特許文献9;非特許文献10を参照のこと)。X連鎖の壊血病変異を持つマウスは、多臓器自己免疫疾患を発達させていて、従来のCD4+CD25+調節T細胞を欠いている(非特許文献11;非特許文献12)。これらのマウスにおける変異した遺伝子はFoxP3であって、これは、フォークヘッド/ウィングドへリックスファミリーのメンバーをコードし、転写リプレッサーとして働くことが示されている(非特許文献13)。マウスにおいて、FoxP3は、CD4+CD25+調節T細胞において独占的に発現されることが示されており、CD25−細胞の活性化の際に誘導されない。しかしながら、FoxP3がレトロウイルスを介してか、またはトランスジーンの発現を介して導入されるとき、ナイーブCD4+CD25−T細胞は、調節T細胞へと転換される(非特許文献14)。ヒトにおいて、FoxP3における変異により、リンパ増殖性疾患、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、湿疹、および若年での死によって特徴付けられるIPEX(免疫調節異常、多発性内分泌腺症、腸症、X連鎖)症候群として知られる重症のリンパ増殖性障害になることが記載されている(非特許文献15を参照のこと)。
【0005】
CD4+CD25+調節集団は、20〜30%がまた、HLA−DRを発現するので、異質性である。DR+調節T細胞は、FoxP3 mRNAの追加的な誘導を伴う初期の接触依存性メカニズムを介してT細胞の増殖およびサイトカインの産生を阻害する。対照的に、DR−調節T細胞は、初期の接触依存性抑制を誘導しないが、むしろ初めにIL−10およびIL−4の分泌を高める。結局、DR−調節T細胞は、調節T細胞によるFoxP3 mRNAにおける遅延した上昇を伴う増殖の後期の抑制を誘導する。従って、DR+およびDR−調節T細胞の両方は、細胞接触媒介のメカニズムを介して抑制し得るが、DR−集団はまた、IL−10の分泌を誘導することにより抑制し得る。従って、異なるタイプの自己免疫疾患がDR+またはDR−調節T細胞のいずれかによる抑制における欠陥と関連し得る可能性がある。
【0006】
末梢血におけるその低頻度に起因して、抑制性の機能を有する新鮮に単離されたヒトCD4+CD25+T細胞は、単離および増やすことが難しい。自己免疫NODマウスモデルにおいて、研究者の1つのグループは、最近、マウスの脾臓およびリンパ節から天然に存在する抗原特異的調節T細胞を単離した。これらの調節T細胞は、エクスビボで増やし、糖尿病の傾向があるNODマウスに移された。これらの調節T細胞の移植は、糖尿病の発達を抑制することが実証された(非特許文献16,非特許文献17;非特許文献18)。このアプローチは、自己免疫疾患を処置するための調節T細胞を移植する治療上の利益を実証する。しかしながら、NODマウスモデルにおいて使用されるアプローチは、多数の希少なCD4+CD25+T細胞(循環T細胞の約4%)が末梢血から単離される必要がある必要性があることから、ヒト被験体へ治療上適用可能ではない。さらに、このマウスモデルは、単一の固定されたT細胞レセプター(TCR)含み、TCRレパトワ進化(repertoire evolution)を追跡するか、またはポリクローナルT細胞の応答が存在する複雑な系において抗原特異的T細胞を同定する問題を扱わない。同様の研究は、末梢血中に循環する抗原特異的調節T細胞、特に自己反応性T細胞に関しての低頻度に起因して、ヒト被験体において可能ではなかった。
【0007】
I型調節細胞は、末梢において、IL−10の存在下で抗原との遭遇後に現れる。独特なサイトカイン産生プロフィール(IL−2低/− IL−4、IL−5、IL−10、TGF−β)は、I型調節細胞をTヘルパー0(T1)およびT2細胞と識別する。現在までに、I型調節細胞についての特異的な細胞表面マーカーは、同定されていない。I型調節細胞は、増殖能力が非常に低く、IL−10のオートクライン産生に一部起因する、インビトロにおけるT細胞レセプターを介する活性化が続く。I型調節細胞は、免疫抑制性サイトカインIL−10およびTGF−βの分泌を介して免疫応答を調節し、それらは、ナイーブT細胞の応答および記憶T細胞の応答の両方を抑制し、抗原提示細胞による共刺激分子および炎症性サイトカインの発現を下方調節する。さらに、I型調節細胞は、B細胞によるIgD、IgAおよびIgGの産生を助ける。重要なことに、I型調節細胞は、誘導性であり、抗原特異的であって、その抑制性機能を働かせるために、そのTCRを介して活性化される必要がある。しかしながら、一旦活性化されると、それらは、抗原非特異的なやり方で抑制を媒介する(非特許文献19)。
【0008】
免疫寛容において調節T細胞が担う重要な役割を考慮すると、自己免疫疾患、炎症状態の処置および/または予防における使用のため、ならびに実質臓器または幹細胞移植に続く、レシピエントにおける移植片拒絶反応に対する予防のためのヒト調節T細胞を産生、選択、および増やす方法を開発する必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Chen et al.,Science 265:1237−1240,1994
【非特許文献2】Inobe et al.,Eur.J.Immunol.28:2780−2790,1998
【非特許文献3】Groux et al.,Nature 389:737−742,1996
【非特許文献4】Groux et al.,J.Exp.Med.184:19−29,1996
【非特許文献5】Sakaguchi et al.,Immunol.Rev.182:18−32
【非特許文献6】Taams et al.,Eur.J Immunol.32:1621−1630,2002
【非特許文献7】Jonuleit et al.,J.Exp.Med.193:1285−1294,2001
【非特許文献8】Baecher−Allan et al.,J.Immunol 167:1245−1253,2001
【非特許文献9】Salomon et al.,Immunity 12:431−440,2000
【非特許文献10】Kukreja et al.,J.Clin.Invest.109:131−140,2002
【非特許文献11】Fontenot et al.,Nat.Immunol.4:330−336,2003
【非特許文献12】Khattri et al.,Nat.Immunol.4:337−342,2003
【非特許文献13】Schubert et al.,J.Biol.Chem.276:37672−37679,2001
【非特許文献14】Hori et al.,Science 299:1057−1061,2003
【非特許文献15】Wildin et al.,J.Med.Genet.39:537−545,2002
【非特許文献16】Tang et al., J.Exp.Med.199:1455−1465,2004
【非特許文献17】Masteller et al.,J.Immunol 175:3053−3059,2005
【非特許文献18】Tarbell et al.,J.Exp Med 199:1467−1477,2004
【非特許文献19】Roncarolo et al.Immunol.Rev.2006.212:28−50
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一部、本開示は、自己免疫障害の処置において、血清アミロイドP(SAP)およびSAPアゴニストが有用であることを実証する。本開示の1つの局面は、治療上有効な量のSAPアゴニストを投与することにより自己免疫障害または状態を処置または予防することを必要とする患者における自己免疫障害または状態を処置または予防する方法を提供する。SAPアゴニストは、T細胞が媒介する、自己免疫障害または状態の抑制を促進し得る。SAPアゴニストの投与は、自己免疫障害または状態の開始を阻害し得、患者が自己免疫障害または状態で苦しむ日数を減少させ得、および/または過敏症の障害または状態についての重篤度を低減させ得る。本開示は、自己免疫障害で苦しむ患者ならびに自己免疫障害を発達させる危険のある患者の両方を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、SAPアゴニストの投与は、自己免疫障害を発達させる危険に患者を置き得る処置または他のイベントの、前に、同時に、または後に開始し得る。特定の局面では、SAPアゴニストは、線維症の発症前の自己免疫障害の処置において有用である。いくつかの実施形態では、患者は追加の活性薬剤を投与される。特定の局面では、その追加の活性薬剤は、自己免疫障害または症状の処置または予防のために使用される治療薬剤である。特定の実施形態では、SAPおよびSAPアゴニストは、線維症の発症前の自己免疫障害または状態の処置において有用である。
【0011】
本開示は、治療上有効な量のSAPアゴニストを投与することにより移植片対宿主病を処置または予防する必要のある患者における移植片対宿主病を処置または予防する方法をさらに提供する。SAPアゴニストは、移植片対宿主病に対する調節T細胞が媒介する抑制を促進し得る。SAPアゴニストの投与は、自己免疫障害または状態の発症を阻害し得、患者が自己免疫障害または状態で苦しむ日数を減少させ得、および/または移植片対宿主病の重篤度を低減させ得る。本開示は、移植片対宿主病で苦しむ患者および移植片対宿主病を発達させる危険のある患者の両方を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、SAPアゴニストの投与は、移植片対宿主病を発達させる危険に患者を置き得る処置の、前に、同時に、または後に開始し得る。特定の局面では、SAPアゴニストは、線維症の発症前の移植片対宿主病の処置において有用である。いくつかの実施形態では、患者は追加の活性薬剤を投与される。特定の局面では、その追加の活性薬剤は、移植片対宿主病の処置または予防のために使用される治療薬剤である。特定の実施形態では、SAPおよびSAPアゴニストは、線維症の発症前の移植片対宿主病の処置において有用である。
【0012】
本開示は、調節T細胞を用いる、患者における自己免疫障害または状態を処置または予防する方法をさらに含む。その方法は、T細胞を含むサンプルを得る工程、エクスビボの培養物中でそのT細胞サンプルとSAPアゴニストとを接触させ、調節T細胞を富化した細胞の集団を産生する工程、その調節T細胞を単離する工程、および治療上有効な量のその単離された調節T細胞を患者へ投与し、自己免疫障害または状態を処置または予防する工程を包む。いくつかの実施形態では、その調節T細胞はFoxP3調節T細胞および/またはIL−10を産生する調節T細胞である。SAPアゴニストは、調節T細胞が媒介する、自己免疫障害または状態の抑制を促進し得る。調節T細胞の投与は、自己免疫障害または状態の発症を阻害し得、患者が自己免疫障害または状態で苦しむ日数を減少させ得、および/または自己免疫障害または状態の重篤度を低減させ得る。本開示は、自己免疫障害で苦しむ患者および自己免疫障害を発達させる危険のある患者の両方を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、調節T細胞の投与は、自己免疫障害を発達させる危険に患者を置き得る処置の、前に、同時に、または後に開始し得る。いくつかの実施形態では、調節T細胞は、定期投与を基本に(on a periodic basis)投与される。特定の局面では、調節T細胞は線維症の発症前の自己免疫障害の処置において有用である。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも1つの追加の活性薬剤を投与される。特定の局面では、その追加の活性薬剤は、自己免疫障害の処置または予防のために使用される治療薬剤である。特定の局面では、その追加の活性薬剤は、SAPアゴニストである。特定の局面では、その追加の活性薬剤は、サイトカインである。本発明の方法において有用なサイトカインとしては、IL−2、IL−4、IL−10、TGF−β、IL−15および/またはIL−17が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、その追加の活性薬剤は、定期投与を基本に投与される。
【0013】
本開示は、器官または組織の移植を受けた、または受ける患者における有害な免疫応答を処置または予防する方法を追加的に提供する。その方法は、T細胞を含むサンプルを得る工程、エクスビボの培養物中でそのT細胞サンプルとSAPアゴニストとを接触させ、その調節T細胞を富化した細胞の集団を産生する工程、その調節T細胞を単離する工程、および治療上有効な量のその単離された調節T細胞を患者へ投与し、有害な免疫応答を処置または予防する工程を包む。特定の実施形態では、患者は、T細胞含有サンプルを得る前にSAPアゴニストを投与される。いくつかの実施形態では、その調節T細胞は、FoxP3調節T細胞および/またはIL−10を産生する調節T細胞である。いくつかの実施形態では、移植器官または組織は、腎臓、心臓、肺、肝臓、膵臓、または角膜組織から選択される実質臓器である。いくつかの実施形態では、移植器官または組織は、血液、または骨髄である。特定の局面では、有害な免疫応答は、移植片対宿主病である。特定の局面では、調節T細胞は、移植の少なくとも1日前に投与される。特定の局面では、調節T細胞は、移植の1〜5日後に投与される。特定の局面では、調節T細胞は、定期投与を基本に投与される。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも1つの追加の活性薬剤を投与される。特定の局面では、その追加の活性薬剤は、移植片対宿主病の処置または予防のために使用される治療薬剤である。いくつかの実施形態では、その追加の活性薬剤は、SAPアゴニストである。特定の局面では、その追加の活性薬剤は、サイトカインである。本発明の方法によって有用なサイトカインとしては、IL−2、IL−4、IL−10、TGF−β、IL−15および/またはIL−17が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、その追加の活性薬剤は、定期投与を基本に投与される。特定の実施形態では、本発明の調節T細胞は、線維症の発症前に器官または組織の移植を受けた、または受ける患者における有害な免疫応答の処置または予防において有用である。
【0014】
本開示は、単離されたFoxP3調節T細胞の集団およびヒト患者における使用に適した薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物をさらに提供する。いくつかの実施形態では、その組成物は、少なくとも1つの追加の活性薬剤をさらに含む。特定の実施形態では、その追加の活性薬剤は、SAPアゴニストである。特定の局面では、その追加の活性薬剤は、サイトカインである。本発明の方法において有用なサイトカインとしては、IL−2、IL−4、IL−10、TGF−β、IL−15および/またはIL−17が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、その追加の活性薬剤は、自己免疫障害の処置または予防のために使用される治療薬剤である。
【0015】
本開示は、末梢血単核細胞サンプル(PBMC)を提供して、そのPBMCサンプルをSAPアゴニストと接触させて、そのPBMCサンプルをT細胞と共培養することにより調節T細胞を富化した細胞の集団を産生する方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのPBMCサンプルは、T細胞を含む。特定の局面では、その調節T細胞は、FoxP3調節T細胞および/またはIL−10を産生する調節T細胞である。
【0016】
本開示は、末梢血単核細胞(PBMC)サンプルを提供して、そのPBMCサンプルをSAPアゴニストと接触させて、他方、T細胞と共培養して調節T細胞を富化した細胞の集団を産生し、その調節T細胞を患者へ投与することにより、患者における自己免疫障害を処置する方法をさらに提供する。
【0017】
本開示は、T細胞の集団を提供し、そのT細胞をSAPアゴニストと接触させることにより調節T細胞を富化した細胞の集団を産生する方法を追加的に提供する。
【0018】
本開示は、調節T細胞の集団をSAPアゴニストと接触させることにより調節T細胞を増やす方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、その接触はエクスビボで達成される。いくつかの実施形態では、その接触は、SAPアゴニストを患者へ投与することによりインビボで達成される。特定の局面では、その患者は、自己免疫疾患で苦しむか、または自己免疫疾患を発達させる危険がある。特定の局面では、その患者は移植片対宿主病に苦しむ。特定の局面では、調節T細胞の集団は、FoxP3調節T細胞および/またはIL−10を産生する調節T細胞を含む。
【0019】
本開示の方法により処置され得る自己免疫障害または状態としては、I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、自己免疫性心筋炎、天疱瘡、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、アジソン病、自己免疫性肝炎、慢性ライム関節炎、家族性拡張型心筋症、若年性皮膚筋炎、多発性軟骨炎、シェーグレン症候群、乾癬、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、および移植片対宿主病が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明のSAPアゴニストおよび調節T細胞は、線維症の発症前の自己免疫障害または状態の処置において有用である。特定の実施形態では、本発明のSAPアゴニストおよび調節T細胞は、線維症の発症前の関節リウマチの処置において有用である。特定の実施形態では、本発明のSAPアゴニストおよび調節T細胞は、線維症の発症前の乾癬性関節炎の処置において有用である。特定の実施形態では、本発明のSAPアゴニストおよび調節T細胞は、線維症の発症前の乾癬の処置において有用である。特定の実施形態では、本発明のSAPアゴニストおよび調節T細胞は、線維症の発症前の全身性エリテマトーデスの処置において有用である。特定の実施形態では、本発明のSAPアゴニストおよび調節T細胞は、線維症の発症前の炎症性腸疾患の処置において有用である。
【0020】
特定の局面では、本開示のSAPアゴニストおよび調節T細胞は、炎症性眼疾患(例えば、ドライアイ疾患、アレルギー性結膜炎、ブドウ膜炎、およびブドウ膜網膜炎(uveoretinitis)が挙げられる)、ならびに角膜移植、腫瘍性障害、および先天性障害に関連する眼の炎症の重篤度の処置、予防または低減のために使用され得る。
【0021】
本開示は、その本開示の方法において有用なSAPアゴニストを提供する。SAPアゴニストは、局所的に、注射(例えば、静脈内注射)により、吸入、持続性デポ(depot)もしくはポンプにより、または任意のこれらの組み合わせにより投与され得る。SAPアゴニストは、SAPシグナリングを増加もしくは模倣し得、SAP活性を増加し得、SAP mRNA発現および/もしくはタンパク質発現を増加し得、または血清におけるSAPレベルを増加し得る。SAPアゴニストは、低分子、核酸、ポリペプチド、または抗体であり得る。特定の局面では、そのSAPアゴニストは、SAPポリペプチド、抗FcγRI抗体、抗FcγRII抗体、抗FcγRIII抗体、架橋した抗FcγR抗体、凝集したIgG抗体、または架橋したIgG抗体である。そのSAPアゴニストは、1つまたはそれより多くのSAPアゴニストまたは他の活性薬剤と共同投与されるように処方され得る。
【0022】
SAPアゴニストと共同投与され得る追加の活性薬剤としては、β−インターフェロン、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、腫瘍壊死αブロッカー、抗マラリア薬物、シクロスポリン、腫瘍壊死αインヒビター、免疫抑制剤、免疫モジュレーター、抗体治療剤、細胞ベースの治療剤(therapy)およびT細胞エピトープ(例えば、Circassiaによる、ToleroTrans Transplant Rejection Therapyなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、ヒト(配列番号1、Genbank受託番号第NP_001630のアミノ酸20〜223)、Gallus gallus(配列番号2、Genbank受託番号第NP_001034653のアミノ酸20〜227)、Bos taurus(配列番号3、Genbank受託番号第AAI02624のアミノ酸20〜224)、およびCricetulus migratorius(配列番号4、Genbank受託番号第AAB28726のアミノ酸20〜223)、血清アミロイドPポリペプチド(シグナル配列は描写されていない)のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。ヒトSAPと同一なアミノ酸は、影をつけてある。
【図2A】図2は、外因性SAP療法により、真菌類の喘息モデルにおいて、確立された気道過敏性(airway hyperresponsiveness)を予防および逆転したことを示す図である。A.fumigatusで感作した、および分生胞子をチャレンジしたC57BL/6マウスに、腹腔内注射を介して、分生胞子の後、0〜15日目(A)または15〜30日目(B)の間、1日おきにPBSまたはhSAPを与えた。気道抵抗を、侵襲性気道抵抗分析(invasive airway resistance analysis)(Buxco)を用いてメタコリンチャレンジに続いて測定した。データは、平均値±SEM、n=5マウス/群である。適切な処置群におけるベースラインの気道抵抗と比較して、P<0.05、***P<0.001。
【図2B】図2は、外因性SAP療法により、真菌類の喘息モデルにおいて、確立された気道過敏性(airway hyperresponsiveness)を予防および逆転したことを示す図である。A.fumigatusで感作した、および分生胞子をチャレンジしたC57BL/6マウスに、腹腔内注射を介して、分生胞子の後、0〜15日目(A)または15〜30日目(B)の間、1日おきにPBSまたはhSAPを与えた。気道抵抗を、侵襲性気道抵抗分析(invasive airway resistance analysis)(Buxco)を用いてメタコリンチャレンジに続いて測定した。データは、平均値±SEM、n=5マウス/群である。適切な処置群におけるベースラインの気道抵抗と比較して、P<0.05、***P<0.001。
【図3A】図3は、単離され、アスペルギルス抗原で刺激(simulated)され、インビトロおよびインビボにおいてhSAPで処置された細胞由来の脾細胞(splenocyte)培養物におけるサイトカイン生成を示す図である。脾臓細胞は、気管内分生胞子チャレンジ後15日(A)または30日(B)の動物から単離した。動物を、インビボにおいてhSAP(8mg/kg、q2d、鼻内;黒塗りバー)、またはPBSコントロール(q2d、鼻内;白抜きバー)で、上記モデルの最後の2週間の間、処置した。
【図3B】図3は、単離され、アスペルギルス抗原で刺激(simulated)され、インビトロおよびインビボにおいてhSAPで処置された細胞由来の脾細胞(splenocyte)培養物におけるサイトカイン生成を示す図である。脾臓細胞は、気管内分生胞子チャレンジ後15日(A)または30日(B)の動物から単離した。動物を、インビボにおいてhSAP(8mg/kg、q2d、鼻内;黒塗りバー)、またはPBSコントロール(q2d、鼻内;白抜きバー)で、上記モデルの最後の2週間の間、処置した。
【図4】図4は、肺の流入領域(draining)リンパ節(AおよびB)、または脾細胞培養物(C)におけるFoxP3発現を示す図である。AおよびBは、PBS(コントロール)で処置された動物、またはSAP(+SAP)で処置された動物から15日目に取得された肺からの流入領域リンパ節由来であって、FoxP3に対して染色した。Cは、インビトロにおけるSAP(0.1〜10μg/ml)の存在下、または非存在下で、インビトロにおいて、24時間、Aspergillus抗原で刺激した脾細胞培養物由来である。総FoxP3発現は、リアルタイムRT−PCRを用いて定量した。
【図5】図5は、インビボおよびインビトロにおけるSAPのIL−10および抗原リコール(antigen recall)に及ぼす影響を示す図である。マウスをインビボにおいてAspergillus fumigatusで感作およびチャレンジし、コントロール(PBS、i.p.、2qd、白抜きバー)、またはSAP(5mg/kg、i.p.q2d、黒塗りバー)で、生の分生胞子チャレンジ後、15〜30日に処置した。30日目にマウスを屠殺し、(A)肺の総IL−10をluminexにより測定し、(B〜E)脾細胞培養物を、インビトロにおいて、SAPの存在下、または非存在下で、Aspergillus fumigatus抗原を用いて刺激し、細胞が存在しない上清を(B)IL−10、(C)IL−4、(D)IL−5、および(E)IFN−γのタンパク質レベルについて、特異的ELISAによって評価した。SAP(i.p.、15〜30日に2qd)で処置された動物は、PBS(i.p.、q2d、15〜30日に)で処置された動物と比較すると、および天然の(native)、非アレルギー肺と比較すると、肺におけるIL10のレベルを増大させた。さらに、抗原リコール応答が小さくなり、このことは、T調節細胞数および/または機能の増大を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
(発明の概要)
調節T細胞は、エフェクターT細胞、ならびに生得免疫および適応免疫の両方に関与するその他の細胞型の活性を抑制するT細胞のサブセットである(Shevach、EM.2006.Immunity 25:195〜201)。調節T細胞の主要機能の1つは自己抗原に対して宿主を保護することであり、それ故、自己免疫を制限する。さらに、糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチおよび若年性特発性関節炎を含む特定の自己免疫疾患は、T細胞数または機能いずれかの欠損から生じる(Baecher−Allanら、2006、Immunological reviews 212:203〜216)。事実、IPEX(免疫調節異常多発性内分泌腺症、X連鎖症候群)は、調節T細胞によって発現される主要な転写因子であるFoxP3の変異の結果である(Baecher−Allanら、2003、Novartis foundation symposium 252:67〜91;Fontenotら、2003.Nature immonology4:330〜336)。自己免疫障害を処置するための現在の治療戦略は、精製され、そしてインビトロで増殖された調節T細胞の患者への養子移入である。本開示は、血清アミロイドP(SAP)タンパク質のインビボの投与が、T細胞媒介疾患を処置することに効き目があるサプレッサーT細胞の増殖を生じることを実証する。本開示は、調節T細胞数および/または機能における異常が観察された疾患(例えば、自己免疫疾患、移植片−対−宿主疾患など)を処置または予防するために調節T細胞を(インビボまたはエクスビボで)増殖するための新たな治療アプローチを提供する。
【0025】
SAPは、ディスク様分子中に非共有結合で会合する5つの同じサブユニットまたはプロモーターから構成される哺乳動物における天然に存在する血清タンパク質である。SAPは、5つの非共有結合で連結された25,000ダルトンのプロモーターから構成される125,000ダルトンのペンタマーである。SAPは、ペントラキシンスーパーファミリーに属するタンパク質であり、この環状ペンタマー構造によって特徴付けられる。古典的な短いペントラキシンは、SAPならびにC−反応性プロテインを含む(Osmand、A.P.ら、Proc.Nat.Acad.Sci.74:739〜743(1977))。SAPは肝臓で合成され、そしてヒトSAPの生理学的半減期は24時間である。ヒトSAPサブユニットの配列は、配列番号1に描写されている(Genbank受託番号第NP_001630のアミノ酸20〜223、シグナル配列は描写されていない)。先の研究は、SAPがIgGに対するFcレセプター(FcγR)に結合することを実証した。FcγRへのSAP結合は、線維細胞、線維細胞前駆体、筋線維芽細胞前駆体、および/または造血単球前駆体分化に対する阻害信号を提供する。
【0026】
(定義)
本明細書で用いられるとき、用語「処置」、「処置すること」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることをいう。この効果は、その障害または症状を完全または部分的に防ぐという点で予防であり得、そして/または障害(例えば、自己免疫疾患)および/またはこの障害に起因する有害作用に対する部分的または完全な治癒という点で治療的であり得る。本明細書で用いられるとき、「処置」は、哺乳類、特にヒトにおける疾患の任意の処置をカバーし、そして:(a)生存期間を増加すること(b)この疾患に起因する死亡のリスクを低減すること;(c)この疾患の素因があり得るが、それを有すると未だ診断されていない被験体においてこの疾患が発症することを防ぐこと;(d)この疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること(例えば、疾患進行の速度を低減すること);および(e)この疾患を軽減すること、すなわち、この疾患の後退を引き起こすこと、を含む。
【0027】
本明細書で用いられるとき、障害または状態を「阻害する」治療薬は、統計学的なサンプルにおいて、処置されていないコントロールサンプルに対して、処置されたサンプルにおける障害または状態の発生を減少させるか、あるいは、処置されていないコントロールサンプルに対して障害または状態の1つ以上の徴候の発症を遅延させるか、または重篤度を低減する化合物である。
【0028】
本明細書で用いられるとき、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計学的なサンプルにおいて、処置されていないコントロールサンプルに対して、処置されたサンプルにおける障害または状態の発生を減少させるか、あるいは、処置されていないコントロールサンプルに対して障害または状態の1つ以上の徴候の発症を遅延させるか、または重篤度を低減する化合物である。
【0029】
本明細書で用いられるとき、用語「被験体」および「患者」は、ヒトを含む哺乳動物を含む動物をいう。用語「哺乳動物」は、霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットを含む家畜動物、動物園の動物のような捕らわれの動物、および野生動物を含む。
【0030】
本明細書で用いられるとき、用語「組織」は、器官、または皮膚組織、肺組織、腎臓組織、およびその他のタイプの細胞のような分化細胞のセットをいう。
【0031】
用語「治療効果」は当該技術分野で認識されており、そして薬理学的に活性な物質によって引き起こされる動物、特に哺乳動物、そしてより特定すればヒトにおける局所または全身効果をいう。語句「治療上有効な量」は、任意の処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で一部の所望の局所または全身効果を生成するそのような物質の量を意味する。このような物質の治療上有効な量は、被験体および処置される疾患状態、被験体の体重および年齢、疾患状態の重篤度、当業者によって容易に決定され得る投与の様式などに依存して変動する。本明細書に記載される特定の組成物は、このような処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で所望の効果を生成するに十分な量で投与され得る。
【0032】
用語「免疫応答」は、外来または自己抗原に対する宿主応答をいう。用語「異常免疫応答」は、非自己から自己を区別する免疫系の不全、または外来抗原に対する応答の不全をいう。換言すれば、異常免疫応答は、自己免疫応答および外来抗原に対する過剰応答性を含む患者障害に至る不適切に調節された免疫応答である。「不適切に調節された」は、不適切に誘導、不適切に抑制および/または非応答性を意味し得る。
【0033】
本明細書で用いられるとき、「自己免疫疾患」は、個体自身の組織から生じ、そしてそれに向かう疾患または障害である。自己免疫疾患または障害の例は、制限されないで、I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、自己免疫性心筋炎、天疱瘡、セリアック病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、アジソン病、自己免疫性肝炎、慢性ライム関節炎、家族性拡張型心筋症、若年性皮膚筋炎、多発性軟骨炎、シェーグレン症候群、乾癬、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、および移植片対宿主病を含む。
【0034】
本明細書で用いられるとき、用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、そして適切な場合にはリボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチドをいう。この用語はまた、等価物として、ヌクレオチドアナログから作製されるRNAまたはDNAいずれかのアナログを、そして記載される実施形態に適用可能であるように、(センスまたはアンチセンスのような)一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチドを含むことが理解されるべきである。
【0035】
用語「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書において交換可能に用いられる。用語「精製されたタンパク質」は、細胞また細胞溶解物中でこれらタンパク質(単数または複数)と通常付随するその他のタンパク質から好ましくは単離され、またはそうでなければ実質的にこのようなその他のタンパク質のないタンパク質または複数のタンパク質の調製物をいう。用語「その他の細胞タンパク質が実質的にない」(本明細書においてはまた、「その他の夾雑タンパク質が実質的にない」とも称される)は、20%(乾燥重量)未満の夾雑タンパク質を含む、そして好ましくは、5%未満の夾雑タンパク質を含む成分タンパク質の各々の個々の調製物を包含するとして規定される。各々の成分タンパク質の機能的形態は、添付の実施例に記載のようなクローン化遺伝子を用いることにより精製された調製物として調製され得る。「精製された」により、それは、再構成されたタンパク質混合物を生成するために用いられる成分タンパク質調製物について言及するとき、示された分子が、その他のタンパク質(特に、目的の再構成された混合物において、成分タンパク質の特徴を、精製された調製物として、またはそれらの機能のいずれかで実質的にマスク、消滅、混乱または改変し得るその他のタンパク質)のようなその他の生物学的高分子の実質的に不在で存在することを意味する。本明細書中で用いられる用語「精製された」は、好ましくは、存在する同じタイプの生物学的高分子(しかし、水、バッファー、およびその他の小分子、特に5000未満の分子量を有する分子が存在し得る)の少なくとも80乾燥重量%、より好ましくは85重量%の範囲、より好ましくは95〜99重量%の範囲、そして最も好ましくは99.8重量%の範囲を意味する。本明細書で用いられるとき、用語「純粋」は、好ましくは、まさに上記した「精製された」と同じ数字制限を有する。
【0036】
用語「化合物」、「試験化合物」、および「活性薬剤」は、本明細書中では交換可能に用いられ、そして制限されないで、ポリペプチド、核酸、小分子および抗体を含むことを意味する。本明細書で用いられるとき、「小分子」は、約5kD未満、そして最も好ましくは約2.5kD未満、または1kD未満さえの分子量を有する分子をいうことを意味する。小分子は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、炭水化物、脂質またはその他の有機分子(炭素含有)または無機分子(制限されないで、金属および有機金属化合物を含む)であり得る。多くの製薬会社は、小分子、しばしば、本開示のアッセイのいずれかでスクリーニングされ得る、カビ抽出物、細菌抽出物、または藻抽出物、のアレイを含む化学的および/または生物学的混合物の広範囲のライブラリーを有している。
【0037】
(処置方法)
本開示の1つの局面は、患者における自己免疫障害または状態を処置または予防する方法を提供し、その必要のある患者に治療上有効な量のSAPアゴニストを投与することによる。本開示の実施例は、哺乳動物へのSAPの投与が、Fox3細胞の増加、およびエフェクターT細胞活性の増大したT細胞媒介抑制によって決定されるように(例えば、図3を参照のこと)、調節T細胞の増殖を生じることを実証する。ヒトにおける多くの自己免疫疾患が少数の調節T細胞および/または減少した調節T細胞機能を伴うので、自己反応性エフェクターT細胞に対する調節T細胞の優先的増殖は、自己免疫障害に苦しむ患者に実質的な治療利益を約束する。本開示は、自己免疫疾患または状態の調節T細胞媒介抑制を促進するためにSAPアゴニストを投与する方法を教示する。
【0038】
いくつかの実施形態では、SAPアゴニストの投与は、患者が自己免疫障害に苦しむ日数を、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、またはそれより多くの日数低減する。いくつかの実施形態では、SAPアゴニストの投与は、患者における自己免疫障害の発症を、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、またはそれより多くの日数低減する。
【0039】
本発明の方法は、自己免疫障害に苦しむ患者を処置するために使用され得るが、いくつかの実施形態では、この方法はまた、自己免疫応答を有さないが、自己免疫応答を発達させる危険のある患者に適用される。自己免疫障害を発達させる危険のある患者においては、本開示の方法による処置は、患者が自己免疫障害に苦しむ日数を減少させ得るか、または少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、またはそれより多くの日数その発症を阻害し得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法による処置は、このような疾患を発達させる危険のある患者における自己免疫障害を予防する。
【0040】
本開示の特定の局面では、SAPアゴニストは、自己免疫応答を引き起こすか、または患者をそのような障害を発達させるリスクに置く治療での、その治療での処置の前、処置の間、および/またはその治療での処置の後に患者に投与される。いくつかの実施形態では、この自己免疫障害は、移植片対宿主病である。
【0041】
本開示の別の局面は、自己免疫障害を処置する方法を提供し、複数SAPアゴニストの共同投与による。本明細書で用いられるとき、用語「共同投与」は、2つ以上の異なる治療化合物の投与の任意の形態をいい、第2の化合物が投与され、その一方、先に投与された治療化合物は身体中でなお有効である(例えば、これら2つの化合物は患者において同時に有効であり、これは、2つの化合物の相乗効果を含み得る)。例えば、これら異なる治療化合物は、同じ製剤で、または別個の製剤でのいずれかで、同時に、または逐次的に、のいずれかで投与され得る。従って、このような処置を受けた個体は、組み合わされた効果または異なる治療化合物からの利益を受け得る。
【0042】
本開示の別の局面は、自己免疫関連障害を処置する方法を提供し、1つ以上のSAPアゴニスト、および少なくとも1つの追加の活性薬剤の共同投与による。本発明の活性薬剤は、制限されないで、β−インターフェロン、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、腫瘍壊死ブロッカー、抗マラリア薬物、シクロスポリン、腫瘍壊死αインヒビター、免疫抑制剤、免疫モジュレーター、サイトカイン、抗移植片拒絶治療剤、細胞ベースの治療剤、ビタミンD3、デキサメタゾンおよび抗体治療剤を含む。共同投与に適切なサイトカインは、制限されないで、IL−2、IL−4、IL−10、TGF−β、IL−15および/またはIL−17を含み得る。いくつかの実施形態では、追加の活性薬剤は、自己免疫疾患を処置または予防するために用いられる治療薬剤である。
【0043】
1つの局面では、本開示は、T細胞を含むサンプルから調節T細胞を富化した細胞の集団を生成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、調節T細胞を富化した細胞の集団を生成する方法は、インビボで行われる。いくつかの実施形態では、この方法は、T細胞(例えば、CD4+細胞)を含む哺乳動物被験体からサンプルを得る工程、およびこのT細胞を、調節T細胞を生成するに十分な時間の間SAPと接触させる工程を包含する。これらT細胞は、SAPに曝す前に哺乳動物サンプルから単離される。いくつかの実施形態では、これら調節T細胞は、SAPに曝した後、培養物中のその他の細胞から単離される。いくつかの実施形態では、患者は、患者からT細胞を含む生物学的サンプルを得る工程の前にSAPを投与される。
【0044】
T細胞に関して、用語「単離され」は、少なくとも、70、80、90、95、99、または100%のT細胞を有する形態である細胞集団調製物をいう。いくつかの実施形態では、これらT細胞は、70、80、90、95、99、または100%のFoxP3および/またはIL−10産生性調節T細胞であり得る。いくつかの局面では、所望の細胞集団は、その他の細胞成分から単離され、いくつかの例では、「夾雑」または単離において細胞の研究を妨害し得るその他の細胞タイプを特異的に排除する。しかし、そのような「単離された」細胞集団は、細胞生存のため、または本開示によって提供される所望の結果を達成するために必要であるさらなる細胞タイプを取り込み得る。例えば、単球(マクロファージ)または樹状細胞のような抗原提示細胞が、調節T細胞の生成のために、「単離された」T細胞集団中に存在し得るか、または単離されたT細胞の集団に添加され得る。いくつかの局面では、これらの抗原提示細胞は、活性化された単球または樹状細胞であり得る。いくつかの局面では、これら抗原提示細胞は、刺激性抗原および/またはSAアゴニストへの曝露によって活性化される。
【0045】
本開示の方法における使用のための哺乳動物T細胞は、哺乳動物被験体から採取された生物学的サンプルから単離され得る。このサンプルは、多くの供給源からもたらされ得、制限されないで、末梢血、白血球搬出血液製剤(leukapheresis blood product)、アフェレーシス血液製剤、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、リンパ節組織、消化管付随リンパ組織、粘膜付随リンパ組織、さい帯血、肝臓、免疫学的傷害の部位(例えば、滑液)、膵臓、および脳脊髄液を含む。ドナー被験体は、好ましくはヒトであり、そして胎児、新生児、子供、成人であり得、そして正常、問題の疾患に疾患した、または問題の疾患に罹患し易い場合がある。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、生物学的サンプルを単離する前にSAPを投与される。
【0046】
いくつかの実施形態では、T細胞サンプルは、血液サンプルからの末梢血単核細胞(PBMC)を含む。「末梢血単核細胞」または「PBMC」により、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞などを含む)、および単球が意味される。一般にPBMCは、標準的な技法を用いて患者から単離される。いくつかの実施形態では、PBMCのみが採取され、実質的にすべての赤血球細胞および多形核白血球がドナーに残されるか、または戻される。PBMCは、ロイコフォレーシス(leukophoresis)のような当該技術分野で公知の方法を用いて単離され得る。一般に、5〜7リットルのロイコフォレーシス工程が実施され、これは、患者からPBMCを本質的に除去し、残りの血液成分を戻す。サンプルの収集は、好ましくは、抗凝固剤(例えば、ヘパリン)の存在下で実施される。
【0047】
PBMCまたは単離されたT細胞を含むT細胞含有サンプルは、SAPまたはSAPアゴニストでの処理前に種々の方法を用いて前処理され得る。一般に、細胞が一旦収集されると、細胞はさらに濃縮され得、濃縮が収集と同時になされない場合でも、さらに細胞を精製そして/または濃縮する。例えば、PBMCは、密度勾配遠心分離(例えば、Ficoll−Hypaque勾配による)により部分精製され得る。ドナーサンプルから単離された細胞は、通常、血清タンパク質、および自己抗体、インヒビターなどの可溶性血液成分を除去するために、当該技術分野で周知の技法を用いて洗浄される。これは、生理学的媒体またはバッファーの添加を含み、遠心分離が続く。一般に、これは、必要に応じて繰り返され得る。細胞は、次いで、カウントされ得、そして一般に、1×10〜2×10白血球細胞が、5〜7リットルの白血球搬出法から収集される。精製された細胞は、生存率を維持するために適切な媒体またはバッファー中に再懸濁され得る。再懸濁に適切な溶液は、一般に、必要に応じてウシ胎仔血清、BSA、HSA、正常ヤギ血清、および/またはその他の天然に存在する因子を補充し、低濃度、一般に5〜50mMの受容可能なバッファーと組み合わせて、平衡化された塩溶液である(例えば、ノーマルセーライン、PBS、ハンクス平衡化塩溶液など)。便利なバッファーは、制限されないで、HEPES、リン酸バッファー、乳酸バッファーなどを含む。
【0048】
特定の細胞タイプ(例えば、エフェクターT細胞、調節T細胞など)は、所望の特徴を有する細胞(例えば、CD4+、FoxP3+など)を富化する技法を用いて細胞の複合混合物から分離され得る。大部分の標準的分離方法は、実質的に単離された細胞集団を得るためにアフィニティー精製技法を用いる。アフィニティー分離のための技法は、制限されないで、磁気分離(例えば、抗体被覆磁性ビーズを用いる)、アフィニティークロマトグラフィー、モノクローナル抗体に連結された細胞傷害性作用因子(例えば、補体およびサイトトキシン)、および固体マトリックスに付着された抗体での「パニング(panning)」を含み得る。正確な分離を提供する技法は、蛍光活性化細胞ソーティングを含み、これは、変動する程度の洗練、例えば、複数色チャンネル、インピーダンスチャンネルなどを有し得る。生存細胞は、死滅細胞に対して、死滅細胞に関連する色素(例えば、ヨウ化プロピジウム、LDSなど)を採用することにより選択され得る。選択された細胞の生存率に過度に有害でない任意の技法が用いられ得る。
【0049】
用いられるアフィニティー試薬は、細胞表面分子(例えば、CD4、CD25など)に対する特異的レセプターまたはリガンドであり得る。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであり得、そしてトランスジェニック動物、免疫動物、不死化B細胞、および抗体をコードするDNAベクターでトランスフェクトされた細胞によって産生され得る。抗体の調製の詳細、および特異的結合メンバーとしての使用のためのそれらの適合性は当業者に周知である。抗体試薬に加え、ペプチド−MHC抗原とT細胞レセプターペアが用いられ得、ペプチドリガンド、エフェクター分子およびレセプター分子も同様である。
【0050】
精製のためのアフィニティー試薬として用いられる抗体は、一般に、分離における使用のためにラベルで複合体化される。ラベルは、磁気ビーズ(これは直接分離を可能にする)、ビオチン(これは、支持体に結合されたアビジンまたはストレプトアビジンで取り出され得る)、蛍光色素(これは蛍光活性化細胞ソーターとともに使用され得る)、または特定細胞タイプの分離の容易さを可能にするその他のこのようなラベルを含み得る。蛍光色素は、フィコエリスリンおよびアロフィコシアニンのようなフィコビリプロテイン、フルオレセインおよびTexas redを含み得る。頻繁に、各抗体は、各マーカーについて独立のソーティングを可能にするために、異なる蛍光色素で標識される。
【0051】
所望の細胞集団の精製のために、細胞特異的抗体が細胞の懸濁物に添加され、そして利用可能な細胞表面抗原に結合するに十分な時間の期間インキュベートされる。このインキュベーションは通常少なくとも約5分、そして通常約30分未満である。反応混合物中に、分離の有効性が抗体の欠如により制限されないような十分な濃度の抗体を有することが所望される(すなわち、飽和量の抗体を用いる)。適切な濃度はまた、滴定により決定され得る。細胞が分離される媒体は、細胞の生存率を維持する任意の媒体である。好ましい媒体は、0.1%〜0.5%BSAを含むリン酸緩衝化食塩水である。種々の媒体が市販され利用可能であり、そして細胞の性質に従って使用され得、必要に応じてウシ胎仔血清、BSA、HSAなどを補填した、Dulbecco’s Modified Eagle Medium、Hank’s Basic Salt Solution、Dulbeccoのリン酸緩衝化食塩水、RPMI、Iscove培地、5mM EDTAを含むPBSなどを含む。
【0052】
細胞の染色強度はフローサイトメトリーによってモニターでき、ここで、レーザーが蛍光色素の定量的レベル(これは、抗体によって結合された細胞表面抗原の量に比例する)を検出する。フローサイトメトリー、または蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)はまた、抗体染色の強度、ならびに細胞サイズおよび光散乱のようなその他のパラメーターに基づき細胞集団を分離するために用いられ得る。染色の絶対レベルは、特定の蛍光色素および抗体調製物とともに異なり得るが、データは、コントロールに対して正規化され得る。
【0053】
標識された細胞は、次いで、指定されたマーカー(例えば、CD4、CD25など)の発現について分離される。分離された細胞は、これら細胞の生存率を維持する任意の適切な、通常、収集チューブの底に血清のクッションを有する、媒体中に収集され得る。種々の媒体が市販され入手可能であり、そして細胞の性質に従って用いられ得、頻繁にウシ胎仔血清が補填された、dMEM、HBSS、dPBS、RPMI、Iscoveの培地などを含む。
【0054】
所望の特徴(例えば、CD4+T細胞、CD4+CD25+調節T細胞など)について高度に富化された細胞集団は、このようにして達成される。この所望の集団は、70%以上の、または約70%以上の細胞組成物、そして通常90%以上の、または約90%以上の細胞組成物であり、そして約95%以上のほどの細胞集団であり得る。この富化された細胞集団は直ちに用いられ得る。細胞はまた、分離手順の前に細胞を凍結することが好ましいが、凍結され得る。あるいは、細胞は、液体窒素温度で凍結され得、そして長期間貯蔵され、融解され、そして再使用され得る。これら細胞は、通常、媒体、グルコースなどと組み合わせて、DMSOおよび/またはFCS中に貯蔵される。一旦融解されると、これら細胞は、増殖因子、抗原、刺激、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)などの使用により、増殖および分化のために増やされ得る。
【0055】
いくつかの局面では、本発明の方法は、患者中への移植のための調節T細胞のエクスビボ生成、または調節T細胞機能のインビトロモデルおよびアッセイの開発のために有用である。これら調節T細胞培養物は、新規な調節因子および薬剤の価値ある供給源として供される。通例の自己免疫治療薬は、組織損傷の末端事象をブロックするために用いられるが、一般に基礎となる自己免疫応答は改変しない。理論によって拘束されることは希望しないが、本明細書中に開示される方法の戦略は、通常の調節細胞機能を回復することにより、寛解を生成することであり、そしてそれ故、本明細書中の本開示に従って作製された調節T細胞を用いて免疫系を「リセット」する。
【0056】
一旦、PBMCまたは単離されたT細胞が、任意の必要な前処理を受けると、細胞は、SAPで処理される。本明細書においては、「処理される」により、細胞が、適切な栄養媒体中で、SAPと、エフェクターT細胞によって媒介される免疫応答を阻害する能力を有する調節T細胞を生成するに十分な時間の間インキュベートされることが意味される。いくつかの実施形態では、最初の培養物はほぼ等容量の栄養媒体で希釈される。その他の局面では、最初の細胞培養物は、次いで栄養媒体で希釈される2つ以上の部分に分割される。培養物分割の利点は、最初の培養物の分割の間に、最初の培養物中に形成された細胞クラスター(何千もの細胞)が機械的に破壊され、そしてより小さな細胞クラスター(数十〜数百の細胞)を形成することである。これらの小さなクラスターは、次いで、次の増殖期間の間により大きなクラスターに成長し得る。この様式で生成された細胞培養物は、同様の方法を用いて2回以上サブ培養され得る。いくつかの実施形態では、第2の培養物または任意の引き続く培養物は、実質的にSAPがなく、例えば、培養物は、10μg/ml未満、好ましくは0.1μg/ml未満、またはより好ましくは0.001μg/ml未満を含み得る。SAPの実質的にない培養物は、SAPの濃度が調節T細胞の生成を促進するには十分ではないものである。
【0057】
細胞集団は、種々の培養条件下で成長され得る。培養媒体は、液体または半固体(例えば、寒天、メチルセルロースなどを含む)であり得る。細胞集団は、便利には任意の適切な栄養媒体中に懸濁され得、制限されないで、通常、ウシ胎仔血清(約5〜10%)、L−グルタミン、および抗生物質(例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシン)が補填れた、Iscoveの改変Dulbeccoの培地、またはRPMI−1640を含む。
【0058】
細胞培養物は、細胞が応答性である増殖因子を含み得る。本明細書で規定されるとき、増殖因子は、膜貫通レセプターに対する特異的効果を通じて、培養においてか、またはインタクトな組織においてのいずれかで、細胞の生存、成長および/または分化を促進し得る分子である。増殖因子はポリペプチドおよび非ポリペプチド因子を含む。主題の細胞を培養することにおいて用いられ得る特定の増殖因子は、好ましくは、抗原提示細胞、レクチン、非特異的刺激物(例えば、ConA;LPS;など)と組み合わせた、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18など)および抗原(例えば、アロ抗原のような、ペプチド抗原、タンパク質抗原)を含む。培養物はまた、調節T細胞活性を刺激または阻害し得る細胞表面レセプターに対する、抗体(例えば、抗CD3)、または特異的リガンド(精製されたリガンド、Fc融合タンパク質の形態にあるか、またはロイシンジッパー形態のようなその他の組換えタグ化形態)を含み得る。例えば、調節T細胞上のTNFRまたはその他の同時刺激分子を結合し、そして調節T細胞活性を刺激および増加し、調節T細胞活性を無効にし(そして増殖を誘導する)、または調節T細胞のアポトーシスを刺激するmAbまたはリガンドが含められ得る。詳細な培養条件は、代表的には、特定の目的(すなわち、調節T細胞活性の維持、調節T細胞集団の増殖など)を達成するために選択される。調節T細胞は、未熟または成熟樹状細胞、およびその他の抗原提示細胞(例えば、単球、B細胞、マクロファージなど)と、SAPでの処理前、SAPでの処理の間、SAPでの処理の後に同時培養され得る。調節T細胞は、その他のT細胞集団と同時培養され得る。いくつかの局面では、培養物はまた、IL−10産生性調節CD4+T細胞の生成を促進することが実証された(Barratら、J.Exp.Med.195(5):2002、603〜616)、ビタミンD3および/またはデキサメタゾンを含む。
【0059】
遺伝子が、種々の目的(例えば、感染を予防するか、または感染に対する感受性を低減する、機能変異の損失を有する遺伝子を置き換える、Th細胞を阻害する調節T細胞の能力を増加する、インビボで調節T細胞を特定領域にホームさせるなど)のために培養または移植の前に調節T細胞中に導入され得る。あるいは、アンチセンスmRNAまたはリボザイムを発現するベクターが導入され、それによって、所望されない遺伝子の発現をブロックし得る。遺伝子治療のその他の方法は、移植された細胞が、選択圧(例えば、多剤耐性遺伝子(MDR)、またはbcl−2のような抗アポトーシス遺伝子)に有利であり、そして選択圧を受け得ることを可能にする薬物耐性遺伝子の導入を含む。当該技術分野で公知の種々の技法が、標的細胞をトランスフェクトするために用いられ得る(例えば、エレクトロポレーション、カルシウム沈殿DNA、融合、トランスフェクション、リポフェクションなど)。DNAが導入される特定の様式は、細胞の生存率に影響しないことを条件に本発明の実施には重要ではない。
【0060】
外来遺伝子を哺乳動物細胞に移入するために有用な多くのベクターが利用可能である。これらベクターはエピソーム性(例えば、プラスミド、サイトメイガロウイルス、アデノウイルスなどのようなウイルス由来ベクター)であり得るか、または相同性組換え、またはランダム組み込み(すなわち、MMLV、HIV−1、ALVなどのようなレンチウイルス由来ベクターを含むレトロウイルス)を通じて標的細胞ゲノムに組み込まれ得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって生成された調節T細胞は、患者に移植または再導入され得る。調節T細胞の養子移入のための方法は、当該技術分野においては良く記載され、例えば、米国特許出願2006/0115899、2005/0196386、2003/0049696、2006/0292164、および2007/0172947(これらの内容は参考として本明細書に援用される)。従って、当業者は、本開示の方法によって産生される調節T細胞をその必要のある患者に容易に移植または再導入し得る。移植されたT細胞は、患者自身から得られたT細胞含有サンプルから、または、処置を受けない別のドナーからもたらされ得る。これは、一般に、当該技術分野で公知のようになされ、そして通常、静脈内投与を経由して処置された細胞を患者に戻して注入すること、または導入するその他の方法を含む。例えば、細胞は、滅菌シリンジまたはその他の滅菌移入機構を用いる注入により、50mlのFenwall注入バッグ中に配置されてもよい。細胞は、次いで、患者中へのフリーフローIVライン中にある期間に亘りIV投与を経由して直ちに注入され得る。いくつかの局面では、バッファーまたは塩のようなさらなる試薬が同様に添加され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって生成された調節T細胞は、患者における自己免疫障害または状態を処置または予防するために用いられ得、治療上有効な量の調節T細胞をその必要のある患者に投与することによる。本開示の調節T細胞は、自己免疫障害または状態の調節T細胞媒介抑制を促進し得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法によって生成された調節T細胞の投与は、患者が自己免疫障害に苦しむ日数を、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15またはそれより多くの日数低減する。いくつかの実施形態では、本開示の方法によって生成された調節T細胞の投与は、患者における自己免疫障害の発症を、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15またはそれより多くの日数阻害する。
【0063】
本発明の方法は自己免疫障害に苦しむ患者を処置するために用いられ得、いくつかの実施形態では、これら方法はまた、自己免疫応答を有さないが、自己免疫応答を発達させる危険のある患者に適用され得る。自己免疫障害を発達させる危険のある患者において、本開示の方法によって生成された調節T細胞での処置は、患者が自己免疫障害に苦しむ日数を少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15またはそれより多い日数低減し得るか、または自己免疫障害の発症を、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15またはそれより多い日数阻害し得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法によって生成された調節T細胞での処置は、このような疾患を発達させる危険のある患者における自己免疫障害を予防する。
【0064】
本開示の特定の局面では、調節T細胞は、自己免疫応答を引き起こすか、または患者をこのような障害を発症するリスクに置く治療での処置の前、その治療での処置の間、および/またはその治療での処置の後に患者に投与される。特定の実施形態では、この自己免疫応答は、器官または組織の移植を受けた、または受ける患者における有害な免疫応答(例えば、移植片対宿主病)である。調節T細胞の、その必要のある患者への投与は、任意の器官(例えば、腎臓、心臓、肺、肝臓、膵臓、角膜組織など)または組織(例えば、血液、骨髄など)の結果として、移植片対宿主病を処置または予防するために用いられ得る。調節T細胞は、移植の前および/または後に投与され得る(例えば、移植の少なくとも1日前、移植後1〜5日など)。いくつかの実施形態では、調節T細胞は、移植前および/または後、定期投与を基本に投与される。
【0065】
本開示の別の局面は、自己免疫関連障害を処置する方法を提供し、調節T細胞と、少なくとも1つの追加の活性薬剤の共同投与による。いくつかの実施形態では、この追加の活性薬剤は、自己免疫疾患を処置または予防するために使用される治療薬剤である。本発明の活性薬剤は、制限されないで、β−インターフェロン、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、腫瘍壊死ブロッカー、抗マラリア薬物、シクロスポリン、腫瘍壊死αインヒビター、免疫抑制剤、免疫モジュレーター、サイトカイン、抗移植片拒絶治療剤、ビタミンD3、デキサメタゾン、抗体治療剤およびT細胞エピトープ(例えば、Circassiaによる、ToleroTrans Transplant Rejection Therapyなど)を含み得る。共同投与に適切なサイトカインは、制限されないで、IL−2、IL−4、IL−7、IL−10、TGF−β、IL−15および/またはIL−17を含み得る。いくつかの実施形態では、追加の活性薬剤は、調節T細胞以外の細胞タイプを含む細胞集団であり得る。例えば、調節T細胞は、その必要のある患者に、単球または樹状細胞のような1つ以上の抗原提示細胞タイプとともに共同投与され得る。いくつかの局面では、これらの抗原提示細胞は、活性化された単球または樹状細胞であり得る。いくつかの局面では、抗原提示細胞は、刺激性抗原および/またはSAPアゴニストへの曝露によって活性化される。いくつかの実施形態では、追加の活性薬剤は、SAPアゴニストであり得る。特定の局面では、自己免疫関連障害を処置する方法は、調節T細胞、少なくとも1つのSAPアゴニスト、および1つ以上の追加の活性薬剤の共同投与を包含する。この追加の活性薬剤は、定期投与を基本に投与され得る。
【0066】
本開示の任意の処置方法は、必要または要求に応じて繰り返され得る。例えば、処置は定期的基準でなされ得る。投与する処置の頻度は、当業者によって決定され得る。例えば、処置は、数週間の間一週間に一度、またはある期間について一週間に複数回(例えば、二週間の期間に亘って3〜5回)投与され得る。一般に、自己免疫疾患の症状の改善は、いくらかの期間、好ましくは、少なくとも数ヶ月持続する。経時的に、患者は、症状の再発を経験し得、その時点で、処置が繰り返され得る。
【0067】
細胞を患者に移植した後、所望の場合、処置の効果が評価され得る。当業者は、自己免疫疾患の免疫学的発現を評価する多くの方法(例えば、総抗体力価、または特定免疫グロブリンの定量、腎機能試験、組織損傷評価など)があることを認識する。T細胞の数、表現型、活性化状態、および抗原および/または有糸分裂促進剤に応答する能力のようなT細胞機能の試験がまたなされ得る。
【0068】
本開示はまた、1つ以上のSAPアゴニストを含む自己免疫関連障害を処置または予防するキットを提供する。いくつかの実施形態では、このキットは、1つ以上のSAPアゴニストと共同投与されるべき追加の活性薬剤を含み得る。いくつかの実施形態では、この追加の活性薬剤は、自己免疫疾患を処置または予防するために用いられる治療薬剤である。本発明の活性薬剤は、制限されないで、β−インターフェロン、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、腫瘍壊死ブロッカー、抗マラリア薬物、シクロスポリン、腫瘍壊死αインヒビター、免疫抑制剤、免疫モジュレーター、サイトカイン、抗移植片拒絶治療剤、および抗体治療剤を含み得る。共同投与に適切なサイトカインは、制限されないで、IL−2、IL−4、IL−10、TGF−β、IL−15および/またはIL−17を含み得る。特定の局面では、この追加の活性薬剤は、調節T細胞の集団である。このアゴニスト(単数または複数)および追加の活性薬剤は、共同投与されるように処方され得る。キットの活性薬剤は、別個に、または組み合わせ処方物で投与され得る。これら活性薬剤は、同時にまたは異なる投薬スケジュールで投与され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明はさらに、本発明の方法の実施のため(すなわち、調節T細胞を生成するためのSAPアゴニストとの細胞のインキニベーション)のキットを提供する。このキットは多くの成分を有し得る。いくつかの局面では、このキットは、患者から細胞を受けるように適合された細胞処置コンテナを含み得る。患者は正常なドナー、または自己免疫障害もしくはその他の状態に苦しむ患者であり得る。コンテナは滅菌状態であるべきである。いくつかの実施形態では、細胞処置コンテナは細胞の収集のために用いられ、例えば、それは、入口ポートを用いてロイコフェレーシス機械に取り付けられるように適合されている。その他の実施形態では、別個の細胞収集コンテナが用いられ得る。キットはまた、特定のT細胞サブセットを精製し、そして患者への戻し移入のためにそれらを増殖する自動化された閉鎖システムにおける使用のために適合され得る。
【0070】
細胞処置コンテナの形状および組成は、当業者に認識されるように、変動し得る。一般に、このコンテナは多くの異なる形態であり得、IVバッグに類似の可撓性バッグ、または細胞培養ベッセルに類似の剛直性コンテナを含む。それは、撹拌を可能にする形態であり得る。一般に、コンテナの組成物は、任意の適切な生物学的に不活性な材料(例えば、ガラスまたはプラスチック、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)である。細胞処置コンテナは、細胞、試薬、調節組成物などの導入または取り出しのために、1つ以上の入口ポートまたは出口ポートを有し得る。例えば、コンテナは、患者中への再導入の前の分析のための細胞のフラクションの取り出しのためのサンプリングポートを備え得る。同様に、コンテナは、細胞の患者中への導入を可能にする出口ポートを備え得;例えば、コンテナは、IVセットアップへの取り付けのためのアダプターを備え得る。
【0071】
キットはさらに、SAPアゴニストおよび必要に応じて1つ以上の追加の活性薬剤(例えば、サイトカイン、有糸分裂促進剤など)を含む組成物の少なくとも1つの用量を含む。これら成分は、別個の用量または組み合わせとして用いられ得る。例えば、SAPは、少なくとも1つ以上のサイトカインおよび/または1つ以上の有糸分裂促進剤と組み合わせられ得る。キットはまた、1つ以上のサイトカイン(例えば、IL−2、IL−7、IL−10、IL−15、IL−17など)、有糸分裂促進剤または追加の活性薬剤を含む第2の調節組成物の少なくとも1つの用量を含み得る。いくつかの実施形態では、追加の活性薬剤は、自己免疫疾患を処置または予防するために用いられる治療薬剤であり得る。キットの活性薬剤は、制限されないで、β−インターフェロン、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、腫瘍壊死ブロッカー、抗マラリア薬物、シクロスポリン、腫瘍壊死αインヒビター、免疫抑制剤、免疫モジュレーター、サイトカイン、抗移植片拒絶治療剤、および抗体治療剤を含み得る。投与に適切なサイトカインは、制限されないで、IL−2、IL−4、IL−10、TGF−β、IL−15および/またはIL−17自己免疫治療剤を含み得る。
【0072】
キットはまた、最初の培養物を希釈するため、そして/または凍結乾燥キット成分を溶解するために栄養媒体の少なくとも1つの用量を含み得る。この文脈で「用量」は、効果(すなわち、調節T細胞のSAPアゴニスト誘導増殖)を引き起こすに十分である組成物の量を意味する。いくつの場合には、複数用量が含められ得る。1つの実施形態では、この用量はポートを用いて細胞処置コンテナに添加され得;あるいは、好ましい実施形態では、最初の調節組成物は、既に細胞処置コンテナ中に存在している。いくつかの実施形態では、調節組成物および/または栄養媒体は、安定性のために凍結乾燥され、そして栄養媒体を用いて再構成される。いくつかの実施形態では、キットはさらに、少なくとも1つの試薬を含み、これには、バッファー、塩、媒体、タンパク質、薬物などが含まれる。例えば、有糸分裂促進剤、モノクローナル抗体、および細胞分離のための処置された磁性ビーズが含められ得る。いくつかの実施形態では、キットはさらに、キットを用いるための書面の指示書を含み得る。
(自己免疫障害)
多くの自己免疫疾患の病原は、生物中に存在する自己抗原に対する自己免疫T細胞応答によって引き起こされると考えられる。例えば、自己反応性T細胞は:I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、自己免疫性心筋炎、天疱瘡、セリアック病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、アジソン病、自己免疫性肝炎、慢性ライム関節炎、家族性拡張型心筋症、若年性皮膚筋炎、多発性軟骨炎、シェーグレン症候群、乾癬、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、および移植片対宿主病の病原に関係している。
【0073】
自己免疫からの保護における調節T細胞の重要性は、種々の動物モデルで実証されている。例えば、マウスからのCD4+CD25+調節T細胞の枯渇は、自発的な器官特異的自己免疫発現のスペクトルを生成し、そしてコラーゲン誘発性関節炎のような自己免疫疾患の誘発に対する感受性を増加させる(Sakaguchiら、J.Exp.Med.161:72〜87、1985;Morganら、Arthritis Rheum.48:1452〜1460、2003)。さらに、研究は、自己免疫疾患が、調節T細胞の添加により改善され得ることを実証した。調節T細胞治療が、糖尿病、大腸炎、胃炎および移植片対宿主病を含む種々の免疫学的疾患モデルにおいて動物を有効に遅延および/または処置し得ることが示されている(Salomonら、Immunity、12:431〜440、2000;Readら、J.Exp.Med.、192:295〜302、2000;Taylorら、Blood 99:3493〜3499、2002;Hoffmanら、J.Exp.Med.、196:389〜399、2002;およびEdingerら、Nat.Med.9:1144〜1150、2003)。
【0074】
ヒトにおいて、調節T細胞の抗原特異的様式でT細胞の活性を修飾する能力は、種々の疾患の文脈で実証されており、腫瘍抗原に特異的なT細胞調節(Viguierら、J.Immunol.173:1444〜1453、2004);骨髄移植のセッティングにおけるアロ抗原(Ngら、Blood 98:2736〜2744、2001);および外来抗原HA(Walkerら、PNAS 102:4103〜4108、2005)を含む。それ故、調節T細胞での免疫治療法は、被験体における免疫応答を調節するための細胞治療の文脈で有用である。
【0075】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって生成された調節T細胞および/またはSAPアゴニストは、自己免疫疾患、炎症性疾患、または移植片対宿主病の結果ししての移植片拒絶を含む疾患または状態を予防または処置するために用いられる。特定の実施形態では、調節T細胞および/またはSAPアゴニストは、1つ以上の追加の活性薬剤とともに共同投与される。特定の実施形態では、これらの追加の活性薬剤は、自己免疫疾患を処置または予防するために用いられる治療薬剤であり得る。自己免疫障害を処置または予防するために用いられる任意の治療薬剤または処置方法が、本開示の方法によって生成された調節T細胞および/またはSAPアゴニストの投与とともに共同治療の一部として用いられ得る。本明細書内に記載される各自己免疫適応症に対して、最も一般的な治療薬剤または処置方法が記載される。理論によって束縛されること、または特定される薬剤に限定されることは希望しないが、任意のこれら治療薬剤が、適切な共同治療剤として用いられ得る。
【0076】
(I型糖尿病)
I型糖尿病(T1DM)は、膵臓のインシュリン産生性β細胞である島細胞の破壊により媒介される自己免疫疾患である。この破壊は、免疫寛容の損失を提示し、そして膵臓中に見い出されるタンパク質に向けられる病原CD4+およびCD8+TおよびB細胞応答に起因する。ヒトにおいて、いくつかの研究が、T1DMをもつ患者において調節T細胞の数または機能における異常を同定した(Kukrejaら、J.Exp.Med.199:1285〜1291、2004;Kriegelら、J.Exp.Med.199:1285〜1291、2004)。調節T細胞の欠如はまた、調節T細胞の枯渇した動物、およびIPEXをもつヒトの両方における糖尿病の所見により糖尿病の病原に関連している(Wildinら、Nat.Genet.27:18〜20、2001を参照のこと)。NODマウスモデルにおいて、研究は、糖尿病を保護および処置するための島特異的調節T細胞を用いる能力を実証した(Tangら、J.Exp.Med 199:1455〜1465、2004;Tarbellら、J.Exp.Med 199:1467〜1477、2004)。
【0077】
I型糖尿病の処置は、血糖をモニターし、インシュリンを摂取し、健常体重を維持し、健康食品を食し、そして規則的に運動する一生の拘束である。血糖レベルを可能な限り正常に近く維持することの目的は、合併症を遅延または防ぐことである。事実、血糖レベルの堅固なコントロールは、糖尿病関連心臓麻痺およひ発作のリスクを50%超低減し得る。インシュリン治療は、I型糖尿病に苦しむ患者の生存にために必要である。胃酵素は、口によって摂取されたインシュリンを妨害するので、経口インシュリンは、血糖を低下するための好ましいオプションではない。しばしば、インシュリンは、微細ニードルおよびシリンジを用いて、またはインシュリンポンプにより注射される。多くのタイプのインシュリンが利用可能であり、迅速作用インシュリン、長期間作用インシュリンおよび中間オプションを含む。例は、通常インシュリン(例えば、Humulin R、Novolin Rなど)、インシュリンイソファン(例えば、Humulin N、Novolin Nなど)、インシュリンリスプロ(例えば、Humalog)、インシュリンアスパート(例えば、NovoLog)、およびインシュリングラージン(例えば、Lantus)を含む。
【0078】
その他の治療剤は、食後、および低用量アスピリン治療後に起こる血糖における鋭い増加を抑制するために胃を通る食物の移動を遅延するためのプラムリンチドを含み、これは、心臓および血管の疾患をの予防を助け得る。1型糖尿病に対する1つの可能な治癒は、膵臓移植である。治療効力のための現在調査中のその他のタイプの移植は、島細胞移植および幹細胞移植を含む。
【0079】
(移植片対宿主病(GVHD))
宿主T細胞によって媒介される移植片拒絶は、移植レシピエントの長期間免疫抑制によって処置される主要な問題である。マウスにおける研究は、調節T細胞の養子移入が、移植片対白血病応答に苦しむことなく移植片対宿主病をブロックし得ることを実証した(Edingerら、Nat.Med.9:1144〜1150、2003)。従って、1つの実施形態では、本発明は、器官移植を受けた、器官移植を受けている、または器官移植を受ける患者における有害な免疫応答のリスク、またはその重篤度を低減させる方法を提供し、患者に、本明細書に記載の方法に従って、患者における有害な免疫応答のリスクまたは重篤度を低減させるのに有効な量で調節T細胞の集団を投与することを包含する。これらの方法は、実質器官(例えば、腎臓(複数可)、心臓、肺(複数可)、肝臓および膵臓など)移植レシピエント、または組織(例えば、血液、骨髄など)移植レシピエントに適用され得る。
【0080】
GVHDに対する最良の処置は予防である。GVHDに対する予防は、通常、プレドニゾン、シクロスポリン、シクロホスファミド、またはタクロリムスあり、またはなしでのメトトレキセートからなる。局所的タクロリムスは、粘膜疾患に役に立ち得る。一旦、GVHDの診断が確立されると、処置は、当初の免疫抑制剤を継続すること、およびメチルプレドニゾロンを添加することからなる。慢性GVHDは、継続する免疫抑制治療プラスその他の改変薬剤を必要とする。ハロフギノン、局所的に適用されたI型コラーゲン合成のインヒビターは、強皮症GVHDをもつ患者で有益である。サリドマイドは、報告された利益とともに慢性GVHDに対して用いられたが、高割合の有害作用(顆粒球減少症を含む)が多くの患者におけるその使用を排除している。活性化されたT細胞に向けられたモノクローナル抗体(例えば、それぞれ、ダクリズマブ、ビジリズマブ、ねずみ抗CD14モノクローナル抗体など)、またはサイトカインに対するいずれかに向けられたモノクローナル抗体(例えば、インフリキシマブ、エタネルセプトなど)は、有望な予備結果を有していた。
【0081】
(多発性硬化症)
多発性硬化症(MS)における自己反応性T細胞の病原は、ミエリン抗原に対する、特にミエリン塩基性タンパク質(MBP)に対するT細胞応答から生じると考えられる。MBP反応性T細胞は、健常個体およびMS患者の両方から単離され得るけれども、MS患者から単離されたT細胞はインビボ活性化を受けることが見出され、そしてMS患者における血液および脳脊髄液においてより高い前駆体頻度で存在する。これらのMBP反応性T細胞は、IL−2、TNF−αおよびIFN−γを含むTh1サイトカインを産生し、これらは、炎症性細胞の中枢神経系中への移動を促進し、そしてMSにおけるミエリン破壊炎症応答を悪化させる。MSに対する共通の治療薬は、制限されずに、βインターフェロン(例えば、Avonex、Rebifなど)、Glatiramer、コルチコステロイド、筋弛緩剤(例えば、チザニジン、バクロフェンなど)、および疲労を低減する医薬(例えば、アマンタジン、モダフィニルなど)を含む。最近の研究で、神経自己抗原ミエリン塩基性タンパク質の異所性発現が、多発性硬化症のマウスモデルにおいて自己免疫神経炎症から保護することが実証された。自己免疫からの保護は、MBP特異的CD4+CD25+調節T細胞によって媒介され、これら細胞が他の自己免疫マウスに養子移入されたときに疾患を防ぐ能力により、およびインビトロでのミエリン塩基性タンパク質での抗原特異的刺激の後の通常のCD4+CD25−T細胞増殖を抑制することによって証明された(Luthら、The Journal of Clinical Investigation 118(10):3403〜3410、2008)。
【0082】
(乾癬および乾癬性関節炎)
乾癬性関節炎は、皮膚(乾癬)および関節(関節炎)の炎症によって特徴付けられる慢性自己免疫疾患である。乾癬は、合衆国において白人集団の2%をおかすありふれた皮膚状態であり、そしてスケーリングをともなう皮膚炎症の浮き出た、赤い領域によって特徴付けられる。乾癬は、肘および膝の先端、頭皮、臍、および生殖器の領域または肛門の周りをしばしばおかす。乾癬を有する患者の約10%はまた、かれらの関節の付随する炎症を発症する。乾癬性関節炎は、眼、心臓、肺、および腎臓のような皮膚以外の関節から離れた身体組織においてもまた炎症を引き起こし得る全身性リウマチ性疾患として特徴付けられる。乾癬性関節炎は、強直性脊椎炎、反応性関節炎(以前はライテル症候群)、およびクローン病または潰瘍性大腸炎にともなう関節炎のようないくつかのその他の関節炎状態と多くの特徴を共有する。これら状態のすべては、脊髄、関節、眼、皮膚、口、およびその他の器官において炎症を引き起こし得る。それらの類似性、および脊髄の炎症を引き起こす傾向を考慮して、これら状態は集合的に「脊椎関節症」と称される。
【0083】
目下のところ、乾癬性関節炎に対する3つの基礎タイプの処置があり;局所治療、光線療法、および全身治療である。最初の治療は、一般に、局所的非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)の罹患した関節の周りの領域への直接塗布を含む。その他の局所治療薬は、コルチコステロイド(例えば、クロベタゾール、フルオシノロン、ベタメタゾンなど)、ビタミンD−3誘導体(例えば、カルシポトリエンなど)、コールタール(DHS Tar、Doak Tar、Theraplex Tなど)、アントラリン(Dithranol、Anthra−Derm、Drithocremeなど)、またはレチノイド(例えば、Tazarotene)を含む。いくつかの例では、光線療法が、この疾患の乾癬適応症を処置するために用いられる。紫外線(UV)光は、皮膚細胞の産生を遅延させ、そして炎症を低減する。UV−B療法は、通常、1つ以上の局所的処置と組み合わされ、そして中程度〜重度のプラーク乾癬を処置するために極めて有効であり得る。UV−B療法は、通常、コルチコステロイド、カルシポトリエン、タザロテン、または皮膚を和らげ、そして軟化するクリームまたは軟膏の局所的塗布と組み合わされる。PUVAは、メトキサレンのような乾癬薬物を紫外線A(UV−A)光療法と組み合わせる別のタイプの光線療法である。乾癬薬物は皮膚を光および日光に対してより感受性にし、そしてUV−A光療法の前数時間に口から摂取される。
【0084】
重度の乾癬性関節炎には、患者は、全身性治療薬を投与され得る。これらの薬物は、一般に、局所的処置および光線療法の両方が失敗した後にのみ開始される。全身性治療薬は、制限されないで、ソラレン(例えば、Methoxsalen、トリオキサレンなど)、エタネルセプト、メトトレキセート、シクロスポリン、アレファセプト、アダリムマブ、およびインフリキシマブ、抗マラリア薬物(例えば、ヒドロシキクロロキノン、注射用金、および経口金オーラノフィン、スルファサラジン、レフルノミドなど)、TNF−ブロッカー(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブなど)、IL−12およびIL−23インヒビター(例えば、ウステキナブ)およびコルチコステロイドを含み得る。
【0085】
(関節リウマチ)
関節リウマチ(RA)は、関節(関節炎)および腱鞘において炎症および組織損傷を最も共通に引き起こす慢性障害であり、そして貧血がともなう。それはまた、肺、心膜、肋膜、および眼の強膜、そしてまた皮膚の下の皮下組織で最も一般的である結節性損傷においてびまん性炎症を生じ得る。関節リウマチは、全身障害を引き起こすが、滑膜組織を主におかす自己免疫疾患として特徴付けられる。リウマチ因子(RF)として知られ、そしてシトルリン化ペプチド(ACPA)に対する抗体であるIgG−Fcに対する自己抗体が、関節リウマチの特質である。その機構は完全に解明されていないけれども、疾患の発現は、異常なB細胞−T細胞相互作用が関与すると考えられており、HLA−DRを経由するB細胞によるT細胞への抗原の提示をともない、RFおよびACPA自己抗体の産生を導き出す。炎症が、次いで、TNFおよびその他のサイトカインの放出を刺激するB細胞またはT細胞いずれかの産物によって起こされる。
【0086】
関節リウマチの関節炎症状は、滑膜炎、すなわち、関節および腱鞘を裏打ちする滑膜の炎症に起因する。関節は腫れ、圧痛があり、そして熱のある、かつ堅いことがそれらの使用を妨げる。時間とともに、RAは、ほぼ常に複数の関節に影響する(多発関節炎)。最も一般には、手、足、および頸部脊椎の小関節が影響されるが、肩および膝のようなより大きな関節もまた、含まれ得る。滑膜炎は、運動の損失および関節表面の侵食をともなう組織の束縛に至り得、奇形および機能の損失を引き起こし得る。
【0087】
治癒はないので、RAに対する処置は、痛みを軽減するため、そして関節損傷を防ぐか遅延させるために関節における炎症を低減することに向けられる。関節リウマチを処置するために用いられる一般的な治療薬は:NSAID(例えば、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、Cox−2インヒビターなど)、ステロイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンなど)、疾患改変抗リウマチ薬物(例えば、ヒドロキシクロロキン、金化合物オーラノフィン、スルファサラジン、ミノサイクリンおよびメトトレキセート)、免疫抑制剤(例えば、レフルノミド、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミドなど)、TNF−αインヒビター(例えば、タネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブなど)アナキンラ、アバタセプト、およびリツキシマブを含む。
【0088】
(心筋炎)
心筋炎は、心筋の炎症性疾患であり、広範な範囲の臨床症状をともなう。それは、組織学的、免疫学的、および免疫化学的基準によって診断される。心筋炎は、隣接する筋細胞の壊死および/または変性をともなう心筋の炎症性浸潤巣として特徴付けられる。それは、別の方法で健常な人において発症し、そして迅速に進行する(そしてしばしば致命的)心不全および不整脈を生じ得る。臨床実践場面では、心筋炎は、炎症性心筋疾患と同義語である。
【0089】
心筋炎は、遺伝素因および環境素因とともに、広範な感染性生物、自己免疫傷害および外因性作用因子によって、引き起こされる。大部分のケースでは、自己免疫媒介損傷の共通経路によって引き起こされると仮定されるが、原因作用因子の直接的細胞傷害性作用および心筋におけるサイトカイン発現に起因する損傷が心筋炎病因で特定の役割を演じ得る。心筋損傷は、急性相および慢性相を有する。急性ステージでは、筋細胞破壊は、細胞が媒介する細胞傷害性およびサイトカイン放出を引き起こす有害作用因子の直接的結果であり、心筋損傷および機能不全を助長する。慢性相の間には、継続する筋細胞破壊があり、それは、自己免疫機構によって媒介され、筋細胞におけるヒト白血球抗原(HLA)の異常発現が付随する。一般に、急性および慢性両方の心筋炎の処置は、鬱血を低減すること、および心不全における心臓血流力学を改善することを目的とする。心不全の処置は、基礎となる原因にかかわらず、同じ処置養生法に従い、ACEインヒビター(例えば、エナラプリルなど)、β−アドレナリン作動性ブロッカー、血管拡張薬(例えば、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウムなど)、および利尿薬(例えば、フロセミドなど)の投与を含む。強い免疫抑制治療(例えば、コルチコステロイド、アザチオプリン、シクロスポリン、ムロモナブ−CD3/OKT3など)が、巨大細胞心筋炎の処置において小スケールの臨床研究でのみ特定の利益を有することが示されている。
【0090】
(自己免疫性肝炎)
自己免疫性肝炎は、急性A型肝炎、B型肝炎、はしか、またはエプスタインバーウイルスを含むウイルス感染の後に発症する。エプスタインバーは、最も一般的なヒトウイルスの1つであり、そして単核症を含む多くの障害に関連している。自己免疫性肝炎では、ウイルス、細菌およびその他の病原体を通常攻撃する宿主免疫系は、代わって肝臓を標的にする。これは、慢性炎症および肝臓細胞への重大な損傷に至り得る。自己免疫性肝炎の2つの主要な形態が同定されている。1型自己免疫性肝炎は、しばしば突然に発症し、そしてこの疾患の最も一般的なタイプである。それは任意の年齢で誰にでも生じ得るが、罹患した大部分のものは若い女性である。1型自己免疫性肝炎の約半分の人々は、甲状腺炎、関節リウマチまたは潰瘍性大腸炎のようなその他の自己免疫障害を有している。かれらの血液はまた、肝臓組織に対する抗体を含んでいるようである。成人は2型自己免疫性肝炎を発症し得るけれども、それは、若い少女で最も一般的であり、そしてしばしばその他の自己免疫問題とともに起こる。
【0091】
自己免疫性肝炎を処置する方法は、自己免疫応答を阻害すること、およびこの疾患の進行を遅延することに向ける。これを達成するために、医者は、通常、免疫系を抑制するために初期の高用量のコルチコステロイド薬物プレドニゾンを処方する。徴候および症状が改善するやいなや、この医薬はこの疾患を制御する最も低い可能な用量に低減される。患者は、処置を開始した後、数年、寛解を経験し得るが、この疾患は、薬物が中断されるとき、通常戻る。プレドニゾンは、特に長期間摂取するとき、広範で重大な副作用を生じ得る。従って、別の免疫抑制剤医薬であるアザチオプリンが、ときどき、プレドニゾンとともに用いられる。これは、必要であるプレドニゾンの量を低下することを支援し、その副作用を低減する。
【0092】
(慢性ライム関節炎)
ライム病の病原は、スピロヘータBorrelia burgdorferiでの感染に対する宿主免疫応答によって引き起こされる。B burgdorferiは、種々の器官における症状に至り得る免疫応答を誘発し、細菌侵入の証拠はほとんどない。ライム関節炎の研究は、この関節炎が、炎症性サイトカインの産生および免疫複合体の形成を含む特定の免疫学的因子、そしてまた、ヒト白血球抗原(HLA)−DR4およびHLA−DR2のような遺伝因子に関連することを示した。感染の結果として、断続的関節炎をもつ患者の約10%が、慢性関節炎を発症する。この状態は数年間継続し得、そして破壊的な関節炎に進行し得る。一般に、ライム病は、ドキシサイクリン、アモキシシリン、エリスロマイシン、セフトリアキソン、セフロキシム、およびクロラムフェニコールのような外来患者抗生物質で処置される。しかし、慢性関節炎に苦しむ患者は、免疫抑制薬剤で処置され得る。
【0093】
(拡張型心筋症)
拡張型心筋症(DCM)は、心室拡張および損傷した心臓収縮機能によって特徴付けられる心筋の疾患である。DCMは、心不全および不整脈の主要原因である。特発性拡張型心筋症の診断は、他の任意の記録された原因がない場合に、左心室の心臓収縮機能不全および拡張を有する患者に与えられる。特発性拡張型心筋症は、自己免疫メカニズムを含む多因子性の起源を有することが推定される。DCMを有する患者において、心臓の抗原に対して反応する非常に多様な自己抗体が同定されている。DCM治療剤は、通常、心臓の生理学的機能に影響し、アンギオテンシン変換酵素インヒビター(例えば、カプトプリル、エナラプリル、リジノプリルなど)、アンギオテンシン受容体ブロッカー(例えば、ロサルタン、バルサルタンなど)、利尿剤(例えば、フロセミド、ベメタニド(bemetanide)、エタクリン酸、トルセミドなど)、アセタゾラミド、アルドステロンインヒビター(例えば、スピロノラクトン、エプレレノン、バソプレシン、など)、イノトロープ(inotrope)(例えば、ジゴキシンなど)、β−アドレナリンブロッカー(例えば、ビソプロロール、メトプロロールスクシネート、カルベジロールなど)が挙げられる。
【0094】
(若年性皮膚筋炎)
若年性皮膚筋炎(JDM)は、子供に現れる脈管炎を引き起こす自己免疫疾患であって;小児における皮膚筋炎の対応物である。JDMにおいて、身体の免疫系は、全身にわたって血管を攻撃し、脈管炎と呼ばれる炎症を引き起こす。若年性筋炎の他の形態は、若年性多発性筋炎および若年性封入体筋炎であって、これらは、極めて稀で、子供においては大人においてほど一般的ではない。JDMによって引き起こされる脈管炎は、主に2つの様式:しばしば皮下のカルシウムの蓄積物に関連する桃色がかった紫色の発疹および筋肉の炎症で現れる。皮膚筋炎の治療は、その障害の両方の局面を最小限にすることに向けられる。さらに、いくらかの患者は、他の全身性の症状発現または合併症に対する処置を必要とし得る。JDMに対する一般的な処置としては、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾンなど)、免疫抑制薬剤(例えば、メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノレート、シロリムス、リツキシマブなど)、高用量静脈内免疫グロブリン(例えば、ガミミューン(gamimune)、ガンマガード、サンドグロブリンなど)、抗マラリア薬(例えば、ヒドロキシクロロキン、クロロキンホスフェートなど)、およびカルシウムチャネルブロッカー(例えば、ジルチアゼムなど)の全身性の投与が挙げられる。
【0095】
(シェーグレン症候群)
シェーグレン症候群は、身体の種々の組織に向けられる自己抗体の血液中での異常な産生によって特徴付けられる自己免疫疾患である。この特定の自己免疫疾病は、身体の特定の腺における炎症を特徴付ける。涙を産生する腺(涙腺)の炎症は、涙のための水の産生の低下、および眼の乾燥をもたらす。口の中で唾液を産生する腺(耳下腺を含む、唾液腺)の炎症は、口内乾燥および唇乾燥をもたらす。シェーグレン症候群に対する現在の治療剤としては、非ステロイド性抗炎症剤、コルチコステロイド、抗マラリア薬物(例えば、ヒドロキシクロロキンなど)、ピロカルピン、セビメリン、シクロスポリン、および免疫抑制剤(例えば、シクロホスファミド、メトトレキサート、ミコフェノレート、アザチオプリンなど)の投与が挙げられる。
【0096】
(若年性特発性関節炎)
若年性特発性関節炎(JIA)は、16歳より前に発症する、関節の内張りである滑膜の炎症である関節炎を記載するために使用される用語である。以前は、若年性関節リウマチと呼ばれていたが、名称は、関節炎の若年性形態と成人形態との違いを反映するために変更された。少数関節(Oligoarticular)(少関節)発症型JIA(症例の40〜60%)は、女児によく起こり、約2歳で発症する。4つまたはそれより少ない関節が、その疾患の最初の6ヶ月の間に冒される(しばしば非対称)。少数関節発症型は、膝、ならびにより低い頻度で、足首および手首を一般的に冒す。これらの患者の約75%が、抗核抗体に対して検査で陽性である。多関節発症型JIA(20〜40%)はまた、女児によく起こり、3歳に発症のピークが観察される。その疾患の最初の6ヶ月の間に5つまたはそれより多くの関節が冒され、手の小さな関節、およびより低い頻度で、膝、足首、または手首のより大きな関節が一般的に冒される。非対称性の関節炎は、急性または慢性であり得、患者の15%において破壊的であり得る。食欲不振、貧血、および成長遅延を含む全身性の症状は、中程度である。これらの患者の約40%が、自己抗体に対して検査で陽性である。全身発症型JIA(10〜20%)は、男児および女児において同じ頻度で起こり、あらゆる年齢で現れ得る。対称性の多発性関節炎は存在し、患者の25%において破壊的であり得る。手、手首、足、足首、肘、膝、股関節部、肩、頸椎、および顎が冒され得る。全身発症型は、熱、斑状の発疹、白血球増加症、リンパ節症、および肝腫を伴う。心筋炎、胸膜炎、脾腫、および腹痛は、あまり一般的に観察されない。JIAに対する現在の治療剤としては、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロンアセテート、トリアムシノロンアセトニド、プレドニゾンなど)、毛様態筋麻痺薬(例えば、シクロペントレート、臭化水素酸ホマトロピンなど)、非ステロイド性抗炎症剤(例えば、インドメタシン、ナプロキセン、イブプロフェン、ケトロラク、ジクロフェナクなど)、免疫抑制剤(例えば、エタネルセプト、メトトレキサート、シクロスポリン、シクロホスファミド、クロラムブシルなど)、腫瘍壊死因子インヒビター(例えば、アダリムマブ、インフリキシマブなど)、免疫モジュレーター(アバタセプトなど)が挙げられる。
【0097】
(全身性エリテマトーデス)
全身性エリテマトーデス(SLE)は、複数の器官系に影響する原因不明の慢性の炎症性疾患である。臨床経過は、自然な寛解および再発によって特徴付けられる。免疫学的異常、特に多数の抗核抗体の産生は、この疾患の別の目立った特徴である。自己抗体、循環する免疫複合体、およびTリンパ球は、全て、疾患の発現の一因となる。影響される器官系としては、真皮、漿膜、腎臓、中枢神経系、血液系、筋骨格、心臓血管、肺、血管内皮、および胃腸系のものが挙げられる。SLEに対する現在の治療剤としては、非アセチル化サリチレート(例えば、コリンマグネシウムトリサリチレートなど)、非ステロイド性抗炎症剤、抗マラリア剤(例えば、ヒドロキシクロロキンなど)、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンなど)、免疫抑制剤/細胞毒性剤(例えば、シクロホスファミド、アザチオプリンなど)が挙げられる。SLEに対する他の処置としては、B細胞除去技術、例えば、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、IMMU−106、GA−101など)、抗CD22抗体(例えば、エプラツズマブ)、TNF−αブロッカーおよびIL−6ブロッカー、およびTNF−αアンタゴニストおよびIL−6アンタゴニスト、ならびに補体活性化のインヒビター(例えば、エクリズマブ)が挙げられる。
【0098】
(炎症性腸疾患)
用語、炎症性腸疾患は、腸が炎症を起こす障害の群を含み、それは腸組織に対する自己免疫反応からもたらされると一般に考えられている。IBDの2つの主要なタイプが記載されている:潰瘍性大腸炎およびクローン病。その名称が示すように、潰瘍性大腸炎は、結腸に限定される。クローン病は、口から肛門までの消化管のあらゆる部分を冒し得るが、最も一般的に小腸および/または結腸に影響する。潰瘍性大腸炎およびクローン病の両方は、通常、疾病の強度および重篤度において、可変である。重度の炎症があるとき、その疾患は、活動段階にあるとみなされる。炎症の程度が、低減されるか存在しないとき、患者は通常、症状がなく、寛解にあるとみなされる。未知の因子/作用物質は、身体の免疫系を誘発し、腸管において、制御なく続く炎症反応を生む。炎症反応の結果、腸壁は損傷を受け、出血性下痢および腹痛をもたらす。身体の免疫系を起こす因子としては、病原体、外来抗原(例えば、牛乳由来のタンパク質)に対する免疫応答、または自己免疫プロセスが挙げられる。腸が免疫反応を引き起こし得る作用物質に持続的に曝されるので、その疾患は、身体の不全からもたらされ、正常な免疫応答を止めると考えられる。以下:アミノサリチレート(例えば、スルファサラジン、メサラミン、オルサラジン、バルサラジドなど)、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ブデソニド、デキサメタゾンなど)、免疫修飾物質(例えば、6−メルカプトプリン、アザチオプリンなど)、抗腫瘍壊死因子薬剤(例えば、インフリキシマブなど)、および抗生物質(例えば、メトロニダゾール、シプロフロキサシンなど)が挙げられるが、これらに限定されない、薬物の異なる群が、炎症性腸疾患を有する患者の処置のために使用される。症状の軽減のために、患者は、下痢止め薬、鎮痙薬、および酸抑制剤(acid suppressant)を投与される。
【0099】
(多発性軟骨炎)
再発性多発性軟骨炎(RP)は、重度の、エピソード性の(episodic)、および進行性の炎症状態であって、軟骨構造物、主に耳、鼻、および喉頭気管気管支樹の構造物を冒す。他の影響される構造物としては、眼、心臓血管系、末梢関節、皮膚、中耳および内耳、ならびに中枢神経系が挙げられ得る。この稀な疾患の病因(etiology)は不明であるが、病原(pathogenesis)は自己免疫として特徴付けられている。自己免疫の病因についての証拠としては、浸潤するT細胞の病理学的発見、影響される軟骨における抗原−抗体複合体の存在、コラーゲンII型抗原および他のコラーゲン抗原に対する細胞性および体液性の応答、ならびに免疫抑制の投薬計画がもっともよくその疾患を抑制するという観察が挙げられる。軟骨の組織に対する自己免疫傷害の特異性により、研究者はRPを有する患者の30〜70%に存在する、軟骨特異的コラーゲンII型、IX型、およびXI型に対する自己抗体を同定することになった。RPに対する治療についての対照群を置いた試験(controlled trial)は公開されていない。従って、現在の処置方法の目標は、現在の症状を緩和し、軟骨構造物の完全性を保つことである。RPに対する一般的な治療剤としては、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾンなど)、疾患修飾抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサートなど)、抗炎症剤(例えば、ダプソンなど)、腫瘍壊死因子αインヒビター(例えば、インフリキシマブ、エタネルセプトなど)、および免疫刺激薬/インターロイキン1インヒビター(例えば、アナキンラなど)の投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
(天疱瘡)
天疱瘡は皮膚および粘膜に影響する自己免疫性の水ぶくれを作る疾患の希な群である。天疱瘡においては、カドヘリンタンパク質(DSG1、DSG2、DSG3、およびDSG4)のファミリーであるデスモグレイン(desmoglein)に対する自己抗体形態が、接着斑(デスモソーム)と呼ばれる付着点を経由して隣接する上皮細胞に付着する。自己抗体が、デスモグレインを攻撃するとき、細胞は互いから分離されるようになり、そして上皮は、「はがされる」ようになり、この現象は、アカントリシス(棘細胞離開)と呼ばれる。これは、腐肉になり、潰瘍になる水ぶくれを引き起こす。いくつかの場合には、これらの水ぶくれは皮膚の顕著な領域を覆い得る。重篤度において異なる3つのタイプの天疱瘡がある:尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、および腫瘍随伴性天疱瘡である。処置されない場合、天疱瘡は、潰瘍の圧倒的な感染に起因して致死的であり得る。最も共通した処置は、ステロイド、特にプレドニゾンの経口投与である。コルチコステロイドの副作用は、ステロイド回避またはアジュバント薬物の使用を必要とし得る。免疫抑制剤CellCept(ミコフェノール酸)は用いられるものの1つである。静脈内γグロブリン(IVIG、例えば、ガミミューン、ガンマガード、サンドグロブリンなど)は、重篤な場合、特に腫瘍随伴性天疱瘡に有用であり得る。軽い場合には、ときどき、局所ステロイドの適用に応答する。最近、抗CD20抗体であるRituximabが、尋常性天疱瘡のそうでなければ処置不能の重篤な場合に、改善することが見出された。肺疾患とともに腫瘍随伴性天疱瘡が診断された場合、免疫抑制剤のカクテルが、ときどき、閉塞性細気管支炎の迅速な進行を止めるための試みで用いられ、ソルメドロール、シクロスポリン、アザチオプリンおよびサリドマイドを含む。皮膚損傷が感染されるようになる場合、抗体が処方され得る。
【0101】
(重症筋無力症)
重症筋無力症(MG)は、変動する筋肉弱化、および疲労に至る神経筋疾患である。それは、弱体化が、後シナプス神経筋接合部におけるアセチルコリンレセプターをブロックする循環性抗体によって引き起こされる自己免疫疾患であり、神経伝達因子アセチルコリンの刺激効果を阻害する。いくつかの自己抗体は、アセチルコリンの、レセプターに結合する能力を損なう。レセプターの破壊に至るその他は、補体固定化によるか、またはエンドサイトーシスによりレセプターを遊離するように筋肉細胞を誘導することによるかのいずれかである。重症筋無力症の特徴は疲労である。筋肉は活動の期間の間に漸次より弱くなり、そして休息の期間の後に改善する。眼および瞼の運動、顔の表現、噛むこと、話すこと、および嚥下を制御する筋肉は、特に罹患しやすい。呼吸ならびに頸部および四肢の動きを制御する筋肉もまた罹患され得る。筋無力症クリーゼにおいては、呼吸筋肉の麻痺が生じ、生命を維持するために補助換気を必要にする。MGは、コリンエステラーゼインヒビター(例えば、エンドロフォニウムピリドスティグミン、ネオスティグミンなど)または免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロスポリンなど)、そして、選択された場合には、胸腺摘出術で治療的に処置される。高用量のコルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンなど)が共通して用いられて自己免疫を抑制する。気管支拡張剤(例えば、アルブテロール、サルブタモール、イプラトロピウム、グリコピロレートなど)は、コリンクリーゼに付随する気管支痙攣を克服することで有用であり得る。
【0102】
(橋本甲状腺炎)
橋本甲状腺炎(HT)または慢性リンパ球性甲状腺炎は、T細胞が甲状腺組織を攻撃する自己免疫疾患である。甲状腺細胞の免疫系破壊の基礎となる詳細は明確に理解されていないけれども、HT患者においては種々の自己抗体が同定されており、甲状腺ペルオキシダーゼ、チログロブリンおよびTSHレセプターに対する抗体を含む。生理学的には、これらの自己抗体は、甲状腺の小胞の段階的な破壊を引き起こす。橋本甲状腺炎の症状は、甲状腺機能減退症、体重増加、憂鬱、躁病、疲労、パニック攻撃、徐脈、頻拍、高コレステロール、反応性低血糖症、便秘、片頭痛、記憶喪失、不妊および毛髪損失を含み得る。HTに対する選択の処置は、甲状腺ホルモン補充であり、そして最も頻繁に投与される薬物は、通常、患者の生涯の間のレボチロキシンナトリウムである。治療の目的は、臨床的および生化学的に甲状腺機能の正常状態を回復することである。最も一般的な処置は、緊密な甲状腺ホルモン生理学を模倣するための努力におけるリオチロニンとレボチロキシンとの組み合わせ使用である。
【0103】
(グレーヴス病)
グレーヴス病(バセドウ病またはグレーヴス−バセドウ病;GDとしても知られる)は、甲状腺腫、眼球突出、「オレンジピール」皮膚、および甲状腺機能亢進症によって特徴付けられる甲状腺障害である。この疾患は、甲状腺刺激ホルモン、チログロブリンのためのレセプター、そして甲状腺ホルモンに対する抗体媒介自己免疫反応によって引き起こされるが、この反応のためのトリガーはなお未知である。これらの抗体は、これらがTSHレセプターに結合して慢性的活性化を引き起こすので、甲状腺機能亢進症を引き起こす。TSHレセプターは、甲状腺の小胞細胞上で発現され、そして慢性的刺激の結果は、甲状腺ホルモン(T3およびT4)の異常に高い産生である。これは、次いで、甲状腺機能亢進症の臨床症状を引き起こし、および甲状腺腫として見られる甲状腺の拡大を引き起こす。自己抗体は、外眼筋に結合し、そして眼球の背後で腫れ物を生じる。「オレンジピール」皮膚は、炎症反応および引き続く線維性プラークを引き起こす、皮膚下の抗体の浸潤によると説明されている。大部分のGD患者は、チオアミド(例えば、プロピルチオウラシルおよびメチマゾール)のような、抗甲状腺薬で処置され、これらは、ヨード有機化およびカップリングプロセスを阻害し甲状腺ホルモンの合成を防ぐ。GDのためのその他の治療薬は、β−アドレナリン作動性ブロッカー(例えば、プロプラノロール、アテノロール、メトプロノールなど)、ヨウ素(例えば、ヨウ化カリウム;ルゴール溶液、ジアトリゾエートナトリウム、イオパノ酸など)、胆汁酸封鎖剤(例えば、コレスチラミンなど)、不整脈治療剤(例えば、アミオダロンなど)、およびグルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンなど)を含む。
【0104】
(アジソン病)
アジソン病(慢性副腎不全、慢性副腎皮質機能低下(hypocortisolism)または慢性副腎皮質機能低下(hypocorticism)としても知られる)は、副腎が不十分な量のステロイドホルモン(グルココルチコイドおよびしばしばミネラルコルチコイド)を産生する内分泌障害である。それは、子供および成人で発症し得、そして多くの基礎となる原因の結果として生じ得る。副腎皮質ホルモンの自己免疫破壊(しばしば酵素21−Hydroxylaseに対する抗体に起因する)は、ティーンエージャーおよび成人におけるアジソン病の共通の原因である。これは、単離され得るか、または自己免疫多内分泌症候群(APS1型または2型)と関連している。最も一般的な徴候は、疲労、筋肉弱化、体重減少、嘔吐、下痢、頭痛、発汗、気分および人格の変化、および関節痛および筋肉痛である。「アジソンクリーゼ(Addisonian crisis)」または「アドレナルクリーゼ」は、重度の副腎不全を示し、そして処置されなければ致死的であり得る症候の一群である。アジソンクリーゼの特徴的な症状は:脚、腰、または腹部における突然の鋭い痛み;脱水を生じる重度の嘔吐および下痢;低血圧;意識喪失/失神;低血糖症;錯乱;精神病;重度の昏睡;および痙攣を含む。アジソン病の処置は、副腎が産生していないホルモンを補充すること、または置換することを含む。コルチゾールは、1日に1回または2回摂取される合成グルコルチコイドである、ヒドロコルチゾン錠剤で口から補充される。アルドステロンがまた十分でない場合、それは、1日1回摂取されるフルドコルチゾンアセテートと呼ばれるミネラルコルチコイドの経口用量で補充される。アジソンクリーゼの間に、低血圧、低血糖、および高レベルのカリウムが、生命を脅かし得る。標準的な治療は、ヒドロコルチゾン、食塩水、およびデキストロースの静脈内注射を含む。
【0105】
(炎症性眼疾患)
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって生成された調節T細胞および/またはSAPアゴニストは、炎症性眼疾患の重篤度を処置、予防、または低減するために用いられ得る(例えば、Sugitaら、Invest Ophthalmol Vis Sci 2009;Sugitaら、J Immuno.183(8):5013〜22、2009;Gregersonら、J Immunol.183(2)814〜22、2009;Mattaら、Am J Pathol.173(5):1440〜54、2008;Siemaskoら、Invest Ophthalmol Vis Sci.49(12):5434〜40、2008;Caspi、R.Immunol Res.42(1〜3):41〜50、2008;Nankeら、Mod Rheumatol.18(4):354〜8、2008;Agarwalら、J Immunol.180(8):5423〜9、2008;Ngら、Invest Ophthalmol Vis Sci.48(11):5122〜7、2007;およびSilverら、J.Immunol.179(8):5146〜58、2007を参照のこと)。特に、本開示の方法によって生成された調節T細胞および/またはSAPアゴニストは、ブドウ膜炎および/またはブドウ膜網膜炎の重篤度を処置、予防、または低減するために用いられ得る(例えば、Commodaroら、Invest Ophthalmol Vis Sci.2009:Sunら、Invest Ophtalmol Vis Sci.51(2)816〜21、2010;Yehら、Arch Ophthalmol、127(4):407〜13;およびKeら、Invest Ophthalmol Vis Sci.49(9):3999〜4007を参照のこと)。例えば、本開示の組成物は、感染(例えば、HSV、VZVなど)、癌、または自己免疫障害(例えば、ウェゲナー肉芽腫症)から生じる肉芽腫性前部ぶどう膜炎(granulamatomatous anterior uveitis);特に角膜炎、強膜炎、虹彩萎縮症、関節痛、または癌に付随する非肉芽腫性前部ぶどう膜炎;感染、癌、若年性関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、扁平部炎、硝子体炎(vitritis)、または末梢ブドウ膜炎から生じる中程度ブドウ膜炎;特に網膜出血、知覚神経網膜剥離、巣状網膜炎(focal retinitis)、視神経円板浮腫、または網膜血管炎にともなう後部ブドウ膜炎;またはブドウ膜炎から生じる合併症(例えば、網膜剥離、脈絡膜剥離、硝子体不透明化、緑内障、石灰性バンド形状角膜症、または白内障)を処置するために用いられ得る。特定の局面では、本開示の方法によって生成される調節T細胞および/またはSAPアゴニストは、例えば、水涙不足(例えば、シェーグレン症候群)、蒸発性涙生成機能異常(例えば、サルコイド)、ならびに構造的および外因性障害(例えば、輪部角結膜炎(limpic keratoconjunctivitis))を含むドライアイ疾患の重篤度を処置、予防、または低減するために用いられ得る。(例えば、Chauhanら、J Immunol.182(3):1247〜52、2009を参照のこと)。特定の局面では、本開示の方法によって生成される調節T細胞および/またはSAPアゴニストは、アレルギー性結膜炎障害の重篤度を処置、予防、または低減するために用いられ得る(例えば、Sumiら、Int Arch Allergy Immunol.148(4):305〜10、2009;Niederkorn J.Curr Opin Allergy Clin Immunol.8(5):472〜6、2008;およびFukushimaら、Allergol Int.57(3):241〜6、2008を参照のこと)。特定の局面では、本開示の方法によって生成される調節T細胞および/またはSAPアゴニストは、角膜移植に付随する炎症性眼疾患の重篤度をを処置、予防、または低減するために用いられ得る。(例えば、Jinら、Invest Ophthalmol vis Sci.51(2):816〜21、2010;およびChauhanら、J Immunol.182(1):143〜53、2009を参照のこと)。特定の局面では、本開示の方法によって生成される調節T細胞および/またはSAPアゴニストは、新生物疾患に付随する炎症性眼疾患の重篤度をを処置、予防、または低減するために用いられ得る。特定の局面では、本開示の方法によって生成される調節T細胞および/またはSAPアゴニストは、先天的障害に付随する炎症性眼疾患の重篤度をを処置、予防、または低減するために用いられ得る。
【0106】
(自己免疫療法)
(SAPアゴニスト)
本開示の1つの局面は、種々の疾患、特に自己免疫障害の処置で有用なSAPアゴニストを提供する。SAPアゴニストは、内因性SAPシグナリングを増加またはそうでなければ模倣するすべての化合物および組成物を包含し、SAP活性を増加させる化合物を含む。
【0107】
(i)ヒト血清アミロイドP
特定の実施形態では、SAPシグナリングアゴニストは、SAPポリペプチドまたはその改変体である。特定の実施形態では、SAPポリペプチドは、5つのヒトSAPプロトマー(配列番号1)を含むSAPである。用語「SAPプロトマー」は、Brutlagら(Comp.App.Biosci.、6:237〜245(1990))のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータープログラムを用いて決定されるように、ヒトSAPプロモーターに少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%または100%同一であるポリペプチドをいうことが意図される。特定の実施形態では、アミノ酸アラインメントの%同一性および類似性を算出するために採用されるパラメーターは以下を含む:Matrix=PAM150、k−tuple=2、Mismatch Penalty=1、Joining Penalty=20、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Gap Penalty=5およびGap Size Penalty=0.05。用語「SAPプロトマー」は、先行する任意のものを含む機能的フラグメントおよび融合タンパク質を包含する。一般に、SAPプロトマーは、生物学的に相当する温度、pHレベルおよび容量オスモル濃度で水溶液中に可溶性であるように設計される。非共有結合で一緒に結合してSAPを形成するプロトマーは、同一のアミノ酸配列および/または翻訳後改変を有し得るか、または、それに代わって、個々のプロトマーは、異なる配列および/または改変を有し得る。
【0108】
本発明のいくつかの局面はポリペプチドを提供するか、またはこれらポリペプチドを採用するための治療方法を提供し、ここで、これらポリペプチドは、少なくとも一部は、参照配列に規定される。従って、このようなポリペプチドは、参照配列に同一でない特定%のアミノ酸残基を有し得る。いくつかの実施形態では、同一でない残基は、それらが同一でない残基に類似の化学的性質を有する。類似の性質を有するグループは、以下のアミノ酸を含む;E、D、N、およびQ;H、K、およびR;Y、FおよびW;I、L、V、M、C、およびA;ならびにS、T、C、P、およびA。
【0109】
いくつかの実施形態において、同一でない残基は、同じ目(order)内の種(species)においてのような、少なくとも1つの進化的に関連する種における参照配列と定向進化配列との間で進化的に保存されていない残基である。脊椎動物参照配列の場合においては、好ましい実施形態で変異され得るアミノ酸は、参照配列と別の脊椎動物種における定向進化配列との間で保存されていないものである。例えば、本発明の方法において用いられるポリペプチドが、ヒトSAP(配列番号1)に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むといわれる場合、このポリペブチドは、ヒトSAPと別の脊椎動物のそれが異なるような位置に対して同一でない残基を有し得る。図1は、2つの哺乳動物および1つのトリSAP配列に対してアラインされたヒトSAPを描写する。陰のない残基は、ヒトSAP配列とは異なる残基を示す。
【0110】
配列番号1と少なくとも95%同一性を共有するポリペプチドは、これらの相違の領域に保存的置換を有するポリペプチドを含む。代表的には、別のものに対する1つとして、保存的置換として見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIle間、ヒドロキシル残基SerとThrとの交換、酸性残基AspとGluとの交換、アミド残基AsnとGlnとの間の置換、塩基性残基LysとArgの交換、および芳香族残基Phe、Tyr間の置換である。どのアミノ酸変化が表現型的にサイレントであるようであるかに関するさらなるガイダンスは、Bowieら、Science 247:1306〜1310(1990)に見出され得る。
【0111】
SAPポリペプチドは、代表的には、配列番号1に少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%同一であるポリペプチドを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物が提供され、SAP、またはその機能的フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物が提供され、SAP改変体を含む。SAP改変体のアミノ酸配列は、配列番号1と1つ以上の保存的置換物によって異なり得る。本明細書で用いられるとき、「保存的置換物」は、対応する参照残基に物理的または機能的に類似である残基であり、すなわち、保存的置換物およびその参照残基は、類似のサイズ、形状、電荷、共有結合または水素結合を形成する能力を含む化学特性などを有する。好ましい保存的置換物は、Dayhoffら、Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345−352(1978&Supp.)において認められた点変異について規定された規準を満たすものである。保存的置換物の例は、以下の群内の置換物である:(a)バリン、グリシン;(b)グリシン、アラニン;(c)バリン、イソロイシン、ロイシン;(d)アスパラギン酸、グルタミン酸(e)アスパラギン、グルタミン;(f)セリン、スレオニン;(g)リジン、アルギニン、メチオニン;および(h)フェニルアラニン、チロシン。どのアミノ酸変化が表現型的にサイレントであるようであるかに関するさらなるガイダンスは、Bowieら、Science 247:1306〜1310(1990)に見出され得る。
【0113】
生物学的機能を保持するSAP改変体およびフラグメントは、本明細書に記載される薬学的組成物および方法において有用である。いくつかの実施形態では、SAPの改変体またはフラグメントは、FcγRI、FcγRIIA、および/またはFcγRIIIBを結合する。いくつかの実施形態では、SAPの改変体またはフラグメントは、自己免疫障害または状態を処置または予防するために用いられる。
【0114】
本発明の特定の実施形態では、SAP、SAP改変体、またはSAPの機能的フラグメントを含む組成物は、標的位置におけるSAP濃度をほぼ少なくとも0.5μg/mlまで上昇するように作動可能であり得る。SAPの機能的フラグメントは、ネイティブSAP活性を保持するSAPポリペプチドの部分である。ヒトでは、125I放射性同位元素標識SAPがアミロイドーシスをもつ試験患者に従前に投与された。この処置では、約600μgのSAPがヒト成人に投与された。従って、SAPの約600μgのヒト成人への全身投与は安全である。より高い用量もまた、適切な条件下で安全であり得る。
【0115】
(ii)SAPアゴニストとしての抗FcγR抗体
本発明の1つの局面では、SAPシグナリングを模倣する1つ以上の化合物が提供される。いくつかの実施形態では、これらSAPシグナリングアゴニストは、抗FcγR抗体であり、ここで、これら抗体は、FcγRI、FcγRIIA、およびFcγRIIIのいずれかにそれぞれ結合し得る抗FcγRI、抗FcγRIIA、および抗FcγRIII抗体のクラスから選択される。抗FcγR抗体は、IgG抗体のFc部分のレセプター(FcγR)に結合するIgG抗体である。抗FcγR抗体は、それらの可変領域を通じて結合し、そしてそれらの定常領域(Fc)を通じてではない。抗FcγR抗体は、抗体の任意のイソタイプを含み得る。これら抗FcγR抗体は、さらなる抗体またはその他の手段と、またはなしでさらに架橋または凝集され得る。このプロセスは、FcγR活性化と一致する細胞内シグナリング事象を開始する。いくつかの実施形態では、SAPシグナリングアゴニストは、架橋されたFcγRであり得る。
【0116】
抗FcγRI抗体、抗FcγRII抗体、および/または抗FcγRIII抗体を含む組成物は、不適切な位置にある過敏性障害(hypersensitive disorder)を抑制するために用いられ得る。
【0117】
特定の実施形態では、約1.0μg/mlの抗FcγR抗体を含む組成物は、自己免疫障害を約50%阻害するのに有効であり得る。その他の実施形態では、組成物は、1.0μg/mlの抗FcγR抗体を標的組織に送達するに十分な量を含み得る。
【0118】
抗FcγR抗体は、約1.0μg/mlの用量で、標的組織に1.0μg/mlの抗FcγR抗体を送達するに十分な量で、または患者において所望されない量の細胞死滅を引き起こすことなく自己免疫障害を阻害するに十分な別の用量で投与され得る。
【0119】
(iii)凝集したFcドメインおよびFc−含有抗体
いくつかの実施形態では、SAPシグナリングアゴニストは、架橋または凝集したIgGである。架橋または凝集したIgGは、少なくとも2つのそのようなIgG抗体が物理的に互いに結合されることを条件に、そのFc領域を通じて標的FcγRを結合し得る任意のIgGを含み得る。
【0120】
架橋または凝集したIgGは、抗体全体またはその一部分を、好ましくは自己免疫障害の抑制における機能的な部分を含み得る。例えば、それらは、FcγRを架橋し得る任意の抗体部分を含み得る。これは、凝集または架橋した抗体またはそのフラグメント、例えば、凝集または架橋した抗体全体、F(ab’)フラグメント、および可能にはFcフラグメントでさえ含み得る。
【0121】
抗体の凝集または架橋は、任意の公知の方法によって達成され得、例えば、熱または化学的凝集がある。任意のレベルの凝集または架橋が十分であり得るが、増加した凝集は、増加した自己免疫障害抑制を生じ得る。抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであり得、例えば、ハイブリドーマ細胞から産生された抗体であってよい。組成物および方法は、抗体の混合物(例えば、多価モノクローナル抗体の混合物)を採用し得、これは、同様または異なる抗体に架橋または凝集され得る。
【0122】
架橋または凝集したIgGを含む組成物は、不適切な位置における自己免疫障害を抑制するために用いられ得る。
【0123】
その他の特定の実施形態では、組成物は、0.1μg/ml程度の架橋または凝集したIgGを含み得る。凝集または架橋したIgGは、標的組織に少なくとも0.1μg/mlのIgGを送達するに十分な量で、または患者において所望されない量の細胞死滅を引き起こすことなく自己免疫障害を阻害するに十分な別の用量で投与され得る。
【0124】
(iv)(SAPペプチド模倣物)
特定の実施形態では、SAPアゴニストは、ペプチド模倣物を含む。本明細書で用いられるとき、用語「ペプチド模倣物」は、天然に存在しないアミノ酸、ペプトイドなどを含む化学的に改変されたペプチドおよびペプチド様分子を含む。ペプチド模倣物を識別する方法は、当該技術分野で周知であり、そして潜在的なペプチド模倣物のライブラリーを含むデータベースのスクリーニングを含む。例えば、Cambridge Structural Databaseは、結晶構造が知られた300,000超の化合物のコレクションを含む(Allenら、Acta Crystallogr.Section B、35:2331(1979))。標的分子の結晶構造が利用可能でない場合、構造は、例えば、プログラムCONCORD(Rusinkoら、J.Chem.Inf.Comput.Sci.29:251(1989))を用いて生成され得る。別のデータベース、Available Chemicals Directory(Molecular Design Limited、Informations Systems;San Leandro Calif.)は、市販され入手可能であり、そしてまたSAPポリペプチドの潜在的なペプチド模倣物を識別するためにサーチされ得る、約100,000の化合物を含む。
【0125】
(v)(SAP活性を増加させること)
いくつかの実施形態では、SAPアゴニストは、SAP活性を増加させる。SAP活性は、SAPの濃度を増加させることによって、例えば、SAP転写を増加させること、翻訳を増加させること、SAP分泌を増加させること、SAP RNA安定性を増加させること、SAPタンパク質安定性を増加させること、またはSAPタンパク質分解を低減させることにより、増加され得る。SAP活性はまた、SAPの「遊離濃度」、あるいはむしろは非結合形態を、例えば、SAP内因性結合パートナーを低減させることによって特異的に増加させることによってもまた、増加され得る。
【0126】
(iv)(Fcγ架橋物)
いくつかの実施形態では、フィブロネクチンを基礎にした足場ドメインタンパク質が、FcγRを架橋するSAPアゴニストとして用いられ得る。フィブロネクチンを基礎にした足場ドメインタンパク質は、フィブロネクチンタイプIIIドメイン(Fn3)、特にフィブロネクチンタイプIII第10ドメイン(10Fn3)を含み得る。FcγRを架橋するために、FcγR結合性Fn3ドメインのマチルマーが、米国特許第7,115,396号に記載のように生成され得る。
【0127】
フィブロネクチンタイプIIIドメイン(Fn3)は、N末端からC末端への順序で、βまたはβ様ストランド、A;ループ、AB;βまたはβ様ストランド、B;ループ、BC;βまたはβ様ストランド、C;ループCD;βまたはβ様ストランドD;ループDE;βまたはβ様ストランド、E;ループ、EF;βまたはβ様ストランドF;ループFG;およびβまたはβ様ストランドGを含む。これらBC、DE、およびFGループは、構造的および機能的の両方で、免疫グロブリンからの相補性−決定領域(CDR)に類似である。Fn3ドメインは、BC、DE、およびFGループの1つ以上の配列を改変することによりほとんどすべての任意の化合物を結合するように設計され得る。特異的結合体を生成するための方法は、高親和性TNFα結合体を開示する米国特許第7,115,396号に、および高親和性VEGFR2結合体を開示する米国特許出願公開第2007/0148126号に記載されている。フィブロネクチンを基礎にした足場タンパク質の例はAdnectinsTMである(Adnexus、Bristol−Myers Squibb R&D Company)。
【0128】
いくつかの実施形態では、SAPアゴニストはアプタマーである。FcγRを架橋するために、FcγR結合性アプタマーのマルチマーが生成され得る。
【0129】
アプタマーはオリゴヌクレオチドであり、これは、合成的によるか、または天然であり得、タンパク質または代謝物のような特定の標的分子に結合する。代表的には、この結合は、古典的なWatson−Crick塩基対合以外の相互作用による。アプタマーは、現在前臨床および臨床開発にある有望なクラスの治療剤を代表する。生物製剤、例えば、ペプチドまたはモノクローナル抗体のように、アプタマーは、分子標的に特異的に結合し得、そして結合により標的の機能を阻害する。代表的なアプタマーは、10〜15kDaのサイズ(すなわち、30〜45ヌクレオチド)であり、その標的をナノモル未満の親和性で結合し、そして緊密に関連した標的を区別する(例えば、代表的には、同じ遺伝子ファミリーからのその他のタンパク質を結合しない)(Griffinら(1993),Gene 137(1):25−31;Jenisonら(1998),Antisense Nucleic Acid Drug Dev.8(4):265−79;Bellら(1999),In vitro Cell.Dev.Biol.Anim.35(9):533−42;Watsonら(2000),Antisense Nucleic Acid Drug Dev.10(2):63−75;Danielsら(2002),Anal.Biochem.305(2):214−26;Chenら(2003),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100(16):9226−31;Khatiら(2003),J.Virol.77(23):12692−8;Vaishら(2003),Biochemistry 42(29):8842−51)。
【0130】
アプタマーは、治療薬としての使用のために多くの魅力的な特徴を有する。高い標的親和性および特異性に加え、アプタマーは、標準的なアッセイで毒性および免疫原性がほとんどないか、またはないことが示されている(Wlotzkaら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99(13):8898−902)。実際、いくつかの治療薬アプタマーは、薬物動力学的分析、細胞および動物疾患モデルにおける生物学的効力の特徴付け、および予備的な安全性の薬理学的評価(ReydermanおよびStavchansky(1998),Pharmaceutical Research 15(6):904−10;Tuckerら(1999),J.Chromatography B.732:203−212;Watsonら(2000),Antisense Nucleic Acid Drug Dev.10(2):63−75)を含む前臨床開発の種々のステージを通じて最適化され、そして進行されている。
【0131】
目的の標的に対するアプタマーを生成するための適切な方法は、「指数的富化によるリガンドの系統的な進化(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment)」(「SELEXTM」)と題するプロセスとともにある。このSELEXTMプロセスは、標的分子への高度に特異的な結合をもつ核酸分子のインビトロ進化のための方法であり、そして例えば、1990年6月11日に出願された米国特許出願第07/536,428号、今や放棄されている「核酸リガンド」と題する米国特許第5,475,096号、および「核酸リガンド」と題する米国特許第5,270,163号(WO91/19813もまた参照のこと)に記載されている。各SELEXTMと識別された核酸リガンドは、所定の標的化合物または分子の特異的リガンドである。このSELEXTMプロセスは、核酸が種々の二次元および三次元構造を形成する十分な能力、およびモノマー性またはポリマー性であろうと、実質的に任意の化合物との、リガンドとして作用する(特異的結合対を形成する)それらのモノマー内で利用可能な十分な化学的多様性を有するという特有の洞察に基づく。任意のサイズまたは組成の分子が、標的として供し得る。高親和性結合の付与に適用されるSELEXTM法は、同じ一般的選択スキームを用いる、候補オリゴヌクレオチドの混合物および結合のステップワイズ繰り返しからの選択、分画および増幅を含み、結合親和性および選択性の実際に任意の所望の基準を達成する。好ましくはランダム化された配列のセグメントを含む核酸の混合物から出発して、SELEXTM法は、結合に好適な条件下で混合物を標的と接触させる工程、標的分子に特異的に結合したこれらの核酸から未結合の核酸を分画する工程、核酸−標的複合体を解離する工程、核酸−標的複合体から解離した核酸を増幅し、核酸のリガンド−富化混合物を生じる工程、次いで、結合、分画、解離および増幅を、標的分子に対する高度に特異的な高親和性核酸リガンドを生じるために所望に応じて多くのサイクルを通じて繰り返す工程を包含する。指数的富化によるリガンドの系統的進化「SELEXTM」は、例えば、各々が参考として本明細書中に詳細に援用される、米国特許第5,475,096号および米国特許第5,270,163号、ならびにPCT/US91/04078に記載されるように、任意の所望の標的に対する核酸リガンドを作製する方法である。
【0132】
いくつかの実施形態では、SAPアゴニストは、Nanobodies(登録商標)である。Nanobodies(登録商標)は、天然に存在する重鎖抗体の特有の構造的および機能的性質を含む抗体由来の治療タンパク質である。このNanobody(登録商標)技術は、当初は、ラクダ科(ラクダおよびラマ)が、軽鎖を欠く完全に機能的な抗体を所有するという発見に従って開発された。これらの重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)および2つの定常ドメイン(CH2およびCH3)を含む。重要なことは、クローン化され、そして単離されたVHHドメインは、当初の重鎖抗体の完全な抗原結合能力を有する安定なポリペプチドである。特有の構造的および機能的性質を備えた、これらの新たなVHHドメインは、治療薬抗体の新たな世代の基礎を形成する。
【0133】
(薬学的調製物および処方物)
いくつかの実施形態では、本発明は、その必要のある患者への投与に適している処方物中に少なくとも1つのSAPグリコ改変体(glycovariant)を含む薬学的組成物を提供する。この組成物における使用のためのT細胞集団は、本明細書中に記載される方法によって生成され得る。いくつかの実施形態では、組成物の細胞の少なくとも70、80、90、または100%の細胞は調節T細胞である。
【0134】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に、または生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦型剤と組み合わせて、少なくとも1つのSAPグリコ改変体を含む。このような組成物は、中性緩衝化食塩水、リン酸緩衝化食塩水などのような緩衝液;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストランのような炭水化物;マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンのようなアミノ酸;抗酸化剤;EDTAのようなキレート剤;アジュバントおよび保存剤を含み得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ヒト被験体における自己免疫障害を処置または予防するために適切である。
【0135】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、有効量の1つ以上の活性薬剤と組み合わせて治療上有効な量の調節T細胞を含む。特定の局面では、活性薬剤は、少なくとも1つのサイトカイン(例えば、IL−2、IL−4、IL−10、TGF−β、および/またはIL−15)を含む。特定の局面では、活性薬剤は、1つ以上のSAPアゴニストである。特定の実施形態では、追加の活性薬剤は、自己免疫疾患を処置するために用いられる治療薬剤である。
【0136】
調節T細胞を含む薬学的組成物は、処置および/または予防されるべき疾患に適切な様式で、その必要のある被験体に投与される。投薬量および投与の頻度は、患者の状態および患者の疾患のタイプおよび/または重篤度のような因子によって決定される。適切な投薬量はまた、臨床試験によってもまた決定され得る。組成物の「有効量」は、年齢、体重、疾患重篤度、患者の状態、投与の経路、および患者の処置に関連する任意のその他の因子における個体の差異を考慮して医師によって決定され得る。一般に、T調節細胞を含む薬学的組成物は、約10〜10細胞/kg体重の投薬量で、これら範囲内のすべての整数値を含んで投与され得る。本発明の組成物はまた、これらの投薬量で複数回投与され得る。特定の患者のための最適投薬量および処置養生法は、疾患の徴候について患者をモニターすることにより、そしてそれに従い処置を調節することにより、医薬の当業者によって容易に決定され得る。
【0137】
細胞は、免疫療法で一般に用いられている注入技法を用いることにより投与され得、そして皮下、皮内、筋肉内、または静脈内注射により患者に投与され得る(例えば、Rosenburgら、New Eng.J.Med.を参照のこと)。本発明の組成物は、好ましくは、静脈内投与のために処方される。
【0138】
特定の実施形態では、本明細書中に記載される方法は、被験体への抗自己免疫治療の投与を含む。治療薬剤は、1つ以上の生理学的に受容可能なキャリアまたは賦型剤を用いて従来様式で処方され得る。例えば、治療薬剤およびそれらの生理学的に受容可能な塩および溶媒和物は、例えば、注射(例えば、SubQ、IM、IP)、吸入または吸入法(口または鼻を通るいずれか)または経口、頬、舌下、経皮、鼻、非経口または直腸投与による投与のために処方され得る。特定の実施形態では、治療薬剤は、標的細胞が存在する部位で、すなわち、特定組織、器官または流体(例えば、血液、脳脊髄液、腫瘍塊など)中に局所的に投与され得る。
【0139】
治療薬剤は、全身的および局所的または局在化された投与を含む、投与の種々のモードのために処方され得る。技法および処方は、一般に、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Meade Publishing Co.、Easton、PA中に見出され得る。非経口投与には、注射が好ましく、筋肉内、静脈内、腹腔内、および皮下を含む。注射には、化合物は、液体溶液中、好ましくはHank’s溶液またはRinger’s溶液のような生理学的に適合可能な緩衝液中に処方され得る。さらに、化合物は、固形形態に処方され得、そして使用直前に再溶解されるか、または懸濁される。凍結乾燥形態もまた、含まれる。いくつかの実施形態では、治療薬剤は、当該技術分野で一般的な公知の種々の方法によって細胞に投与され得、制限されないで、リポソーム中のカプセル化、イオン浸透療法によるか、または、ヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、および生体接着性マイクロスフェアなどのその他のビヒクル中への取り込みによることを含む。
【0140】
経口投与には、薬学的組成物は、結合剤のような薬学的に受容可能な賦型剤(例えば、アルファー化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(filler)(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)とともに、例えば、従来手段によって調製された、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態をとり得る。錠剤は、当該技術分野で周知の方法によってコーティングされ得る。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁物の形態をとり得るか、またはそれらは、使用前に水またはその他の適切なビヒクルでの再構成のための乾燥製品として提示され得る。このような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油状エステル、エチルアルコールまたは分別植物油);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)のような薬学的に受容可能な添加物とともに従来手段によって調製され得る。これら調製物はまた、適宜、緩衝塩、芳香剤、着色剤、および甘味剤を含み得る。経口投与のための調製物は、適切に処方されて活性化合物の制御放出を与え得る。
【0141】
吸入による投与には(例えば、肺送達)、治療薬剤は、加圧されたパックまたはネブライザーからエアロゾルスプレー提示物の形態で、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフロオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の適切なガスの使用によって、便利に送達され得る。加圧エアロゾルの場合には、投薬量単位は、計測された量を送達するためのバルブを提供することにより決定され得る。吸入器(inhalerまたはinsufflator)における使用のための、例えば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物と、ラクトースまたはデンプンのような適切な粉末ベースとの粉末混合物を含んで処方され得る。
【0142】
本発明の方法では、薬学的化合物はまた、吸入剤、粉末、およびエアロゾル処方物を含む、鼻内または気管支内経路によって投与され得る(ステロイド吸入薬の例には、Rohatagi(1995)J.Clin.Pharmacol.35:1187−1193;Tjwa(1995)Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107−111を参照のこと)。例えば、エアロゾル処方物は、ジクロロテトラフルオロエタン、プロパン、窒素などのような加圧された受容可能な噴射剤中に配置され得る。それらはまた、ネブライザーまたはアトマイザーのような非加圧調製物のための医薬品として処方され得る。代表的には、そのような投与は、水性の薬理学的に受容可能な緩衝液中にある。
【0143】
治療薬剤は、注入により、例えば、ボーラス注射または連続注入による、非経口投与のために処方され得る。注入のための処方物は、添加された保存剤とともに、単位剤形中、例えば、アンプル中または複数用量コンテナ中に提示され得る。組成物は、懸濁物、溶液、または油状または水性ビヒクル中のエマルジョンのような形態をとり得、そして懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方剤を含み得る。あるいは、活性成分は、使用前、適切なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリーの水との構築のための粉末形態で有り得る。
【0144】
さらに、治療薬剤はまた、デポ調製物として処方され得る。このような長く作用する処方物は、移植(例えば、皮下または筋肉内)によるか、または筋肉内注射により投与され得る。それ故、例えば、治療薬剤は、適切なポリマー性または疎水性材料(例えば、受容可能な油中のエマルジョンとして)もしくはイオン交換樹脂とともに、または難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として処方され得る。制御放出処方物はまた、パッチを含み得る。
【0145】
特定の実施形態では、本明細書中に記載の化合物は、中枢神経系(CNS)への送達のために処方され得る(Begley、Pharmacology&Therapeutics 104:29〜45(2004)に概説されている)。CNSへの薬物送達のための従来のアプローチは以下を含む:神経外科的戦略(例えば、大脳内注入または脳室内注入);薬剤の分子操作(例えば、血液脳関門の内因性トランスポート経路の1つを開発する試みにおいて、それ自体が血液脳関門を横切ることができない薬物と組み合わせて内皮細胞表面分子に対する親和性を有するトランスポートペプチドを含むキメラ融合タンパク質の産生);薬物の脂質溶解性を増加するように設計された薬理学的戦略(例えば、水溶性薬剤の脂質またはコレステロールキャリアへの複合体化);および高浸透圧破壊によるBBBの完全性の一時的破壊(頸動脈中へのマンニトール溶液の注入、またはアンギオテンシンペプチドのような生物学的に活性な薬剤の使用から得られる)。
【0146】
特定の実施形態では、治療薬剤は、一般に局所的薬物投与に適し、そして当該技術分野で公知の任意のそのような物質を含む局所的キャリアを含む局所処方物に取り込まれる。局所的キャリアは、所望の形態、例えば、軟膏、ローション、クリーム、マイクロエマルジョン、ゲル、オイル、溶液などとして組成物を提供するように選択され得、そして天然に存在するか、または合成起源のいずれかの材料からなり得る。選択されたキャリアは、局所処方物の活性薬剤またはその他の成分に有害に影響しないことが好ましい。本明細書における使用のための適切な局所的キャリアの例は、水、アルコールおよびその他の非毒性有機溶媒、グリセリン、鉱物油、シリコン、石油ゼリー、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン、ワックスなどを含む。
【0147】
(化粧品調製物を含む)薬学的組成物は、0.001〜10重量%または0.1〜5重量%のような約0.00001〜100%の本明細書中に記載される1つ以上の治療薬剤を含み得る。特定の局所処方物においては、活性薬剤は、処方物の約0.25重量%〜75重量%の範囲、好ましくは処方物の約0.25重量%〜30重量%の範囲、より好ましくは処方物の約0.5重量%〜15重量%の範囲、そして最も好ましくは処方物の約1.0重量%〜10重量%の範囲の量で存在する。
【0148】
眼の状態は、例えば、治療薬剤の全身、局所、眼内注入により、または治療薬剤を放出する持続放出デバイスの挿入により、処置または予防され得る。治療薬剤は、薬学的に受容可能な眼科ビヒクル中で送達され得、化合物は、例えば、前房、結膜、後房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、レンズ、脈絡膜/網膜および強膜のような角膜および眼の内部領域を貫通することを可能にするに十分な時間の期間、眼の表面と接触して維持される。薬学的に受容可能な眼科ビヒクルは、例えば、軟膏、植物油またはカプセル化材料であり得る。あるいは、化合物は、硝子体液および房水中に直接注入され得る。さらなる代替では、化合物は、眼の処置のために、全身投与され得、例えば、静脈内注入または注射による。
【0149】
本明細書に記載される治療薬剤は、当該技術分野の方法に従って、酸素のない環境で貯蔵され得る。
【0150】
核酸化合物を送達する方法は当該技術分野で公知である(例えば、Akhtarら,1992,Trends Cell Bio.,2,139;およびDelivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,Akhtar編,1995;Sullivanら,PCT Publication No.WO94/02595を参照のこと)。これらのプロトコールは、実質的にすべての核酸化合物の送達のために利用され得る。核酸化合物は、当該技術分野でなじみのような公知の種々の方法によって細胞に投与され得、制限されないで、リポソーム中のカプセル化、イオン浸透療法による、またはヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、および生体接着性マイクロスフェアなどのその他のビヒクル中への取り込みによることを含む。あるいは、核酸/ビヒクル組み合わせは、直接注射によるか、または注入ポンプの使用により局所的に送達される。送達のその他の経路は、制限されないで、経口(錠剤またはピル形態)および/または鞘内送達(Gold、1997、Neuroscience、76、1153〜1158)を含む。その他のアプローチは、種々のトランスポートおよびキャリアシステムの使用を含み、例えば、複合体および生分解性ポリマーの使用による。薬物送達戦略に関する総合的な総説には、Hoら、1999,Curr.Opin.Mol.Ther.,1,336−343およびJain,Drug Delivery Systems:Technologies and Commercial Opportunities,Decision Resources,1998およびGroothuisら,1997,J.NeuroVirol.,3,387−400を参照のこと。核酸送達および投与のより詳細な説明は、Sullivanら、前述,Draperら,PCT WO93/23569,Beigelmanら、PCT Publication No.WO99/05094,およびKlimukら、PCT Publication No.WO99/04819を参照のこと。
【0151】
siRNAのようなアンチセンスヌクレオチドは、種々の方法を用いて癌細胞に送達され得る。結合された「船荷(cargo)」分子をサイトゾル中に運搬する能力を有する細胞貫通性ペプチド(CPP)が用いられ得る(Juliano、Ann N Y Acad Sci.2006、10月;1082:18〜26を参照のこと)。特定の実施形態では、アテロコラーゲン媒介オリゴヌクレオチド送達システムが用いられる(Hanaiら、Ann N Y Acad Sci.2006、10月;1082:9〜17)。LPD処方物(リポソーム−ポリカチオン−DNA複合体)は、腫瘍細胞にsiRNAを送達するために用いられ得る(Liら、Ann N Y Acad Sci.2006、10月;1082:1〜8)。siRNAのポリエチレンイミン(PEI)との複合体化はまた、siRNAを細胞中に送達するために請われ得る(Aigner、J Biomed Biotechnol.2006;2006(4);71659)。siRNAはまた、インビボ送達のために、キトサンコーティングポリイソヘキシルシアノアクリレート(PIHCA)ナノパーティクルと複合体化され得る(Pilleら、Hum Gene Ther.2006 10月;17(10):1019)。
【0152】
本発明はさらに、患者における自己免疫障害または状態の処置または予防のための医薬の製造における本発明により同定された任意の薬剤の使用、例えば、自己免疫障害または状態の処置のための医薬の製造におけるSAPアゴニストの使用を提供する。いくつかの局面では、本発明により同定された任意の薬剤が、自己免疫疾患または状態を処置すること、または予防することにおける使用のための薬学的調製物を作製するために用いられ得る。
【0153】
以下の実施例は、上記に記載の発明を用いることの様式をより十分に記載するため、および本発明の種々の局面を実施するために企図される最良のモードを提示するために供される。これらの実施例は、いかなる様式においても、本発明の真の範囲を制限するためには共されず、むしろ例示の目的のために提示されることが理解される。
【実施例】
【0154】
(実施例1)
A.fumigatus分生胞子によって誘導される慢性アレルギー性気道疾患は、気道の過反応、肺の炎症、好酸球増加、粘液過分泌、杯細胞の過形成、および上皮下の線維症によって特徴付けられる。C57BL/6マウスを可溶性A.fumigatus抗原についての市販の調製物に対して、以前に記載された(Hogaboamら、The American Journal of Pathology.2000;156:723−732)ものと同様に感作した。3回目の鼻内チャンレンジの7日後、各マウスに30μlのPBS tween 80(0.1%、vol/vol)中に懸濁した5.0×10のA.fumigatus分生胞子を気管内経路を介して与えた。
【0155】
15日および30日の時点(それぞれ図2Aおよび図2B)に、SAPまたはコントロール(PBS)で処置したマウス5匹の群を気道過敏性(AHR)の変化について分析した。気管支過敏性を、気管内A.fumigatus分生胞子チャレンジの後にBuxcoTMプレチスモグラフ(Buxco、Troy、NY)を用いて評価した。要約すると、ペントバルビタールナトリウム(Butler Co.、Columbus、OH;0.04mg/gマウス体重)を使用し、挿管の前にマウスを麻酔して、そしてHarvardポンプ式人工呼吸器(pump ventilator)(Harvard Apparatus、Reno NV)を用いて換気を実施した。一旦ベースラインの気道抵抗が確立すると、カニューレを挿入した尾静脈を介して420mg/kgのメタコリンを各マウスへ導入し、気道過敏性を約3分間モニターした。気道抵抗におけるピーク増加を次に記録した。15日および30日の時点(それぞれ図2Aおよび図2B)に、SAPまたはコントロール(PBS)で処置したマウス5匹の群をペントバルビタールナトリウムで麻酔し、AHRの変化について分析した。SAPにより、静脈内メタコリンチャレンジに応答して、AHRの量は有意に低減した。
【0156】
(実施例2)
C57BL/6マウスを可溶性A.fumigatus抗原についての市販の調製物に対して、上に記載されたものと同様に感作した。動物をインビボにおいてhSAPまたはPBSコントロールで、上記モデルの最後の2週間の間、処置した。15日および30日の時点(それぞれ図3Aおよび図3B)に、処置したマウス5匹の群をサイトカイン産生の変化について分析した。気管内分生胞子チャレンジ後15日または30日の動物から脾臓細胞を単離し、アスペルギルス抗原で刺激し、インビトロにおいてhSAPで処理した。脾細胞培養物を、IL−4、IL−5、およびINF−γの産生について定量した(pg/mL)。
【0157】
(実施例3)
C57BL/6マウスを可溶性A.fumigatus抗原についての市販の調製物に対して、上に記載されたものと同様に感作した。15日目に、肺の流入領域リンパ節、または脾細胞培養物においてFoxP3発現の量を決定した。肺のリンパ節を各マウスから切り出し、組織学的分析のために、液体Nにおいて急速凍結する(snap frozen)か、または10%ホルマリンに固定した。PBS(コントロール)またはSAPで処置した動物からの組織学的サンプルをFoxP3に対して染色し(図4A)、調査した各領域に関してFoxP3+細胞の数を定量した(図4B)。精製した脾細胞培養物をインビトロにおけるSAP(0.1〜10μg/ml)の存在下、または非存在下で、インビトロにおいて、24時間、Aspergillus抗原で刺激した。総FoxP3発現をリアルタイムRT−PCRを用いて定量した(図4C)。
【0158】
(実施例4)
インビボおよびインビトロにおけるSAPのIL−10および抗原リコールに及ぼす影響を調査した。マウスをインビボにおいてAspergillus fumigatusで感作およびチャレンジし、コントロール(PBS、i.p.、白抜きバー)、またはSAP(5mg/kg、ip.p q2d、黒塗りバー)で、生の分生胞子チャレンジ後、15〜30日に処置した。30日目にマウスを屠殺した。A)肺の総IL−10をluminexにより測定した。B〜E)単一細胞の脾細胞培養物を、インビトロにおいて、SAPの存在下、または非存在下で、Aspergillus fumigatus抗原を用いて刺激した(図5)。細胞が存在しない上清をB)IL−10、C)IL−4、D)IL−5、およびE)IFN−γのタンパク質レベルについて、ELISAによって評価した。データは、SAPで処置した動物(i.p.、15〜30日にq2d)が、喘息コントロール(PBS、15〜30日にq2d)と比較すると、肺におけるIL−10のレベルを増大させたこと、およびレベルが、ナイーブな(naive)、非アレルギー肺におけるレベルと同等であることを実証する(図5)。SAPで処置したマウス由来の脾細胞において、Th1またはTh2抗原リコール応答が低減し、IL−10が増加した。FoxP3発現の増加も存在するため、このデータは、アレルギー性気道疾患の状況において、SAPが調節T細胞を誘導することを示す。
【0159】
(参考としての援用)
本明細書中で言及される全ての刊行物および特許は、あたかも個々の刊行物または特許のそれぞれが具体的に、かつ個々に参考として援用されることが示されるかのごとく、本明細書によりその全体が参考として援用される。
【0160】
本主題の特定の実施形態が論じられているが、上記の明細書は実例となるものであって限定するものではない。多くのバリエーションは、本明細書および下に列挙される特許請求の範囲の検討の際に当業者に明らかとなる。本発明の全範囲は、等価物の全範囲とともに特許請求の範囲への参照、およびそのようなバリエーションとともに本明細書への参照により決定されるべきである。
【0161】
(配列の列挙)
配列番号1 ヒト血清アミロイドタンパク質P
【0162】
【化1】

配列番号2 Gallus gallus血清アミロイドタンパク質P
【0163】
【化2】

配列番号3 Bos taurus血清アミロイドタンパク質P
【0164】
【化3】

配列番号4 Cricetulus migratorius血清アミロイドタンパク質P
【0165】
【化4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における自己免疫障害または状態を処置または予防する方法であって、該方法は、それを必要とする患者へ治療上有効な量の血清アミロイドP(SAP)アゴニストを投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記SAPアゴニストが、調節T細胞が媒介する、前記自己免疫障害または状態の抑制を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SAPアゴニストの投与が、前記自己免疫障害または状態の発症を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記SAPアゴニストの投与が、前記患者が前記自己免疫障害または状態で苦しむ日数を減少させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記患者は、自己免疫障害または状態を発達させる危険がある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記投与が、自己免疫障害または状態を発達させる危険に患者を置く処置の前に開始される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与が、自己免疫障害または状態を発達させる危険に患者を置く処置と同時に開始される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記投与が、自己免疫障害または状態を発達させる危険に患者を置く処置の後に開始される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記自己免疫障害が、以下:I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、自己免疫性心筋炎、天疱瘡、セリアック病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、アジソン病、自己免疫性肝炎、慢性ライム関節炎、家族性拡張型心筋症、若年性皮膚筋炎、多発性軟骨炎、シェーグレン症候群、乾癬、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患、および全身性エリテマトーデスから選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記自己免疫状態が移植片対宿主病である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記SAPアゴニストが、以下:局所的、注射による、静脈内注射による、吸入による、デポもしくはポンプによる持続的な放出による、またはそれらの組み合わせから選択される方式により投与される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記SAPアゴニストが、低分子、核酸、ポリペプチド、または抗体から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記SAPアゴニストが、SAPポリペプチドである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記SAPアゴニストが、抗FcγRI抗体、抗FcγRII抗体、抗FcγRIII抗体、架橋した抗FcγR抗体、凝集したIgG抗体、または架橋したIgG抗体から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
1つまたはそれより多くのSAPアゴニストが、前記自己免疫障害または状態の処置のために共同投与されるように処方される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
追加の活性薬剤を共同投与する工程をさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記追加の活性薬剤が、前記自己免疫障害を処置または予防するために使用される治療薬剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者における移植片対宿主病を処置または予防する方法であって、該方法は、それを必要とする患者へ治療上有効な量の血清アミロイドP(SAP)アゴニストを投与する工程を含む、方法。
【請求項19】
前記SAPアゴニストが、調節T細胞が媒介する、移植片対宿主病の抑制を促進する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記SAPアゴニストの投与が、移植片対宿主病の発症を阻害する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記SAPアゴニストの投与が、前記患者が移植片対宿主病で苦しむ日数を減少させる、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者は、移植片対宿主病を発達させる危険がある、請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記投与が、移植片対宿主病を発達させる危険に患者を置く処置の前に開始される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記投与が、移植片対宿主病を発達させる危険に患者を置く処置と同時に開始される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記投与が、移植片対宿主病を発達させる危険に患者を置く処置の後に開始される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記SAPアゴニストが、以下:局所的、注射による、静脈内注射による、吸入による、デポもしくはポンプによる持続的な放出による、またはそれらの組み合わせから選択される方式により投与される、請求項18〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記SAPアゴニストが、低分子、核酸、ポリペプチド、または抗体から選択される、請求項18〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記SAPアゴニストが、SAPポリペプチドである、請求項18〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記SAPアゴニストが、抗FcγRI抗体、抗FcγRII抗体、抗FcγRIII抗体、架橋した抗FcγR抗体、凝集したIgG抗体、または架橋したIgG抗体から選択される、請求項18〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
1つまたはそれより多くのSAPアゴニストが、患者における自己免疫障害の処置のために共同投与されるように処方される、請求項18〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記患者が、追加の活性薬剤を投与される、請求項18〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記追加の活性薬剤が、移植片対宿主病を処置または予防するために使用される治療薬剤である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
患者における自己免疫障害または状態を処置または予防する方法であって、該方法は、以下:
i)T細胞を含むサンプルを得る工程;
ii)エクスビボの培養物中で該T細胞と血清アミロイドP(SAP)アゴニストとを接触させ、それにより調節T細胞を富化した細胞の集団を産生する工程;
iii)該エクスビボの培養物から該調節T細胞を単離する工程;および
iv)治療上有効な量の該単離された調節T細胞を該患者へ投与し、自己免疫障害または状態を処置または予防する工程
を包む、方法。
【請求項34】
前記調節T細胞が、FoxP3調節T細胞および/またはIL−10を産生する調節T細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記SAPアゴニストが、調節T細胞が媒介する、前記自己免疫障害または状態の抑制を促進する、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記調節T細胞の投与が、前記自己免疫障害または状態の発症を阻害する、請求項33〜35に記載の方法。
【請求項37】
前記調節T細胞の投与が、前記患者が前記自己免疫障害または状態で苦しむ日数を減少させる、請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記患者は、自己免疫障害または状態を発達させる危険がある、請求項33〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記投与が、自己免疫障害または状態を発達させる危険に患者を置く処置の前に開始される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記投与が、自己免疫障害または状態を発達させる危険に患者を置く処置と同時に開始される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記投与が、自己免疫障害または状態を発達させる危険に患者を置く処置の後に開始される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記自己免疫障害が、以下:I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、自己免疫性心筋炎、天疱瘡、セリアック病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、アジソン病、自己免疫性肝炎、慢性ライム関節炎、家族性拡張型心筋症、若年性皮膚筋炎、多発性軟骨炎、シェーグレン症候群、乾癬、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患、および全身性エリテマトーデスから選択される、請求項33〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記調節T細胞が、定期投与を基本に患者へ投与される、請求項33〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つの追加の活性薬剤を前記患者へ共同投与する工程をさらに含む、請求項33〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記追加の活性薬剤がサイトカインである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記サイトカインが、IL−2、IL−4、IL−10、TGF−β、および/またはIL−15から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記追加の活性薬剤が、第二のSAPアゴニストである、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記SAPアゴニストが、低分子、核酸、ポリペプチド、または抗体から選択される、請求項33〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記SAPアゴニストが、SAPポリペプチドである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記SAPアゴニストが、抗FcγRI抗体、抗FcγRII抗体、抗FcγRIII抗体、架橋した抗FcγR抗体、凝集したIgG抗体、または架橋したIgG抗体から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記追加の活性薬剤が、自己免疫障害を処置または予防するために使用される治療薬剤である、請求項44〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記追加の活性薬剤が、定期投与を基本に投与される、請求項44〜51に記載の方法。
【請求項53】
前記患者が、T細胞を含む前記サンプルを得る前にSAPアゴニストを投与される、請求項33〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
器官または組織の移植を受けた、または受ける患者における有害な免疫応答を処置または予防する方法であって、該方法は、以下:
i)T細胞を含むサンプルを得る工程;
ii)エクスビボの培養物中で該T細胞と血清アミロイドP(SAP)アゴニストとを接触させる工程であって、ここで該T細胞と接触させることにより、調節T細胞を富化した細胞の集団を産生する、工程;
iii)該エクスビボの培養物から該調節T細胞を単離する工程;および
iv)治療上有効な量の該単離された調節T細胞を該患者へ投与し、有害な免疫応答を処置または予防する工程
を包む、方法。
【請求項55】
前記調節T細胞が、FoxP3調節T細胞またはIL−10を産生する調節T細胞である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記器官または組織が、腎臓、心臓、肺、肝臓、膵臓、または角膜組織から選択される実質臓器である、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
前記器官または組織が、血液または骨髄である、請求項54または55に記載の方法。
【請求項58】
前記有害な免疫応答が移植片対宿主病である、請求項54〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記調節T細胞が、移植の少なくとも1日前に投与される、請求項54〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記調節T細胞が、移植の1〜5日後に投与される、請求項54〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記調節T細胞が、定期投与を基本に、移植の前または後に投与される、請求項54〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
少なくとも1つの追加の活性薬剤を前記患者へ投与する工程をさらに含む、請求項54〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記追加の活性薬剤がサイトカインである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記サイトカインが、IL−2、IL−4、IL−10、TGF−β、および/またはIL−15から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記追加の活性薬剤が、第二のSAPアゴニストである、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記SAPアゴニストが、低分子、核酸、ポリペプチド、または抗体から選択される、請求項54〜65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記SAPアゴニストが、SAPポリペプチドである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記SAPアゴニストが、抗FcγRI抗体、抗FcγRII抗体、抗FcγRIII抗体、架橋した抗FcγR抗体、凝集したIgG抗体、または架橋したIgG抗体から選択される、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
前記追加の活性薬剤が、抗移植片拒絶治療剤である、請求項62〜68に記載の方法。
【請求項70】
前記追加の活性薬剤が、定期投与を基本に投与される、請求項62〜69に記載の方法。
【請求項71】
前記患者が、T細胞を含む前記サンプルを得る前にSAPアゴニストを投与される、請求項54〜70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
単離したFoxP3の調節T細胞の集団および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物であって、該組成物は、ヒト患者における使用に適している、薬学的組成物。
【請求項73】
前記組成物が、1つまたはそれより多くの追加の活性薬剤をさらに含む、請求項72に記載の薬学的組成物。
【請求項74】
前記1つまたはそれより多くの追加の活性薬剤がサイトカインである、請求項73に記載の薬学的組成物。
【請求項75】
前記サイトカインが、IL−2、IL−4、IL−10、TGF−β、および/またはIL−15から選択される、請求項74に記載の薬学的組成物。
【請求項76】
前記1つまたはそれより多くの追加の活性薬剤が、SAPアゴニストである、請求項73に記載の薬学的組成物。
【請求項77】
前記SAPアゴニストが、低分子、核酸、ポリペプチド、または抗体から選択される、請求項76に記載の薬学的組成物。
【請求項78】
前記SAPアゴニストが、SAPポリペプチドである、請求項77に記載の薬学的組成物。
【請求項79】
前記SAPアゴニストが、抗FcγRI抗体、抗FcγRII抗体、抗FcγRIII抗体、架橋した抗FcγR抗体、凝集したIgG抗体、または架橋したIgG抗体から選択される、請求項77または78に記載の薬学的組成物。
【請求項80】
前記追加の活性薬剤が抗自己免疫治療剤である、請求項73〜79のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項81】
調節T細胞を富化した細胞の集団を産生する方法であって、該方法は:
i)末梢血単核細胞サンプル(PBMC)を提供する工程;
ii)該PBMCサンプルを血清アミロイドP(SAP)アゴニストと接触させる工程;および
iii)該PBMCサンプルをT細胞と共培養する工程
を含む、方法。
【請求項82】
前記PBMCサンプルがT細胞を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記調節T細胞が、FoxP3細胞またはIL−10を産生する細胞である、請求項81または82に記載の方法。
【請求項84】
患者における自己免疫障害を処置する方法であって、該方法は:
i)末梢血単核細胞(PBMC)サンプルを提供する工程;
ii)該PBMCサンプルをSAPアゴニストと接触させ、T細胞と共培養する工程であって、ここでT細胞と接触および共培養されるSAPアゴニストが、調節T細胞を富化した細胞の集団を産生する工程;および
iii)該調節T細胞を該患者へ投与する工程
を含む、方法。
【請求項85】
前記SAPアゴニストが、低分子、核酸、ポリペプチド、または抗体から選択される、請求項81〜84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記SAPアゴニストが、SAPポリペプチドである、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記SAPアゴニストが、抗FcγRI抗体、抗FcγRII抗体、抗FcγRIII抗体、架橋した抗FcγR抗体、凝集したIgG抗体、または架橋したIgG抗体から選択される、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
調節T細胞を富化した細胞の集団を産生する方法であって、該方法は:
i)T細胞の集団を提供する工程;および
ii)該T細胞を血清アミロイドP(SAP)アゴニストと接触させる工程
を含む、方法。
【請求項89】
調節T細胞を増やす方法であって、該方法は、調節T細胞の集団を血清アミロイドP(SAP)アゴニストと接触させる工程を含む、方法。
【請求項90】
前記接触がエクスビボで達成される、請求項88または89に記載の方法。
【請求項91】
前記接触が、前記SAPアゴニストを患者へ投与することによりインビボで達成される、請求項88または89に記載の方法。
【請求項92】
前記調節T細胞の集団が、FoxP3細胞および/またはIL−10細胞を含む、請求項89〜91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記患者が、自己免疫傷害もしくは状態に苦しむか、または自己免疫傷害もしくは状態の危険がある、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記自己免疫障害が、以下:I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、自己免疫性心筋炎、天疱瘡、セリアック病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、アジソン病、自己免疫性肝炎、慢性ライム関節炎、家族性拡張型心筋症、若年性皮膚筋炎、多発性軟骨炎、シェーグレン症候群、乾癬、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患、および全身性エリテマトーデスから選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記患者が移植片対宿主病に苦しむ、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記SAPアゴニストが、低分子、核酸、ポリペプチド、または抗体から選択される、請求項88〜94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記SAPアゴニストが、SAPポリペプチドである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記SAPアゴニストが、抗FcγRI抗体、抗FcγRII抗体、抗FcγRIII抗体、架橋した抗FcγR抗体、凝集したIgG抗体、または架橋したIgG抗体から選択される、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
T細胞を含む前記サンプルが、哺乳類の患者から得られる、請求項1〜96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記患者が、T細胞を含む前記サンプルを得る前にSAPアゴニストを投与される、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記患者が、自身のT細胞含有サンプルに由来する、治療上有効な量の調節T細胞を投与される、請求項1〜100のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−520310(P2012−520310A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554156(P2011−554156)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/026841
【国際公開番号】WO2010/104961
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(510006945)プロメディオール, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】