説明

自己分散型顔料、自己分散型顔料の製造方法、インクセット、インクジェット記録方法

【課題】 分散安定性に優れた自己分散型顔料、該自己分散型顔料の製造方法の提供。
【解決手段】 本発明は顔料と、該顔料に直接結合したイオン性基と、該顔料に直接結合したノニオン性分子鎖とを有し、前記ノニオン性分子鎖の分子量は70以上であり、前記顔料に対する前記ノニオン性分子鎖の量が0.010mmol/g以上であり、前記顔料に対する前記ノニオン性分子鎖の量と、前記顔料に対する前記イオン性基の量との合計が0.20mmol/g以上であり、前記合計に対する前記イオン性基の割合が5.0%以上であることを特徴とする自己分散型顔料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体中での分散安定性に優れた自己分散型顔料とその製造方法、及びインクセット、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、飛翔させたインク滴を記録媒体に付与して記録を行う方法である。例えば、インクに電気熱変換体で熱エネルギーを供給して気泡を発生し、発生した気泡によってインク滴を吐出するサーマルインクジェット記録方法が挙げられる。
【0003】
近年、このインクジェット記録に用いられる水性インクの色材として、染料に比べ画像の耐光性、耐水性に優れた顔料が注目されている。しかし、顔料は水に不溶であり水性インクの色材として用いるためには、顔料が水中で安定して存在していなければならない。最近では、顔料を水性媒体中で分散安定化させるための顔料の処理技術が活発に開発されるようになった。これら開発されている技術の中でも特に、顔料自体を処理して顔料自身の分散性を向上させて、顔料を分散剤を用いずに分散可能とする自己分散化の技術は(以下、自己分散化によって得られる顔料を自己分散型顔料ともいう)、インクジェットヘッドへの悪影響が小さいことからインクジェット用水性インクの顔料を処理する技術として好適に用いられている。
【0004】
上述した顔料自体を処理する技術の一つとして、特許文献1には酸化剤で顔料を酸化処理する技術が記載されている。
【0005】
また、特許文献2にはアゾ化合物からなるラジカル発生剤の分解によって発生した官能基を顔料の表面に化学結合させたカーボンブラックを用いて、保存安定性を向上させる技術が記載されている。
【0006】
また、特許文献3にはアミジン骨格を有するカチオン性官能基が付与された顔料を用いて低pH領域での分散安定性を向上させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−3498号公報
【特許文献2】特許第3985337号公報
【特許文献3】特許第3669168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いた場合、酸化剤の添加量や、酸化処理の回数を多くしても、顔料に対し一定以上の分散安定性を付与することができなかった。また、特許文献2に記載の技術を用いて得られる自己分散型顔料は、顔料に対する官能基の修飾量が大きくばらついてしまっていた。更に、顔料に対する官能基の修飾量自体も極めて少なかった。そのため、顔料に十分な分散安定性を付与することはできなかった。
【0009】
また、特許文献3に記載の技術を用いても、顔料に対する官能基の修飾量は極めて少なかった。尚、特許文献3では、酸化処理した顔料にカチオン性官能基を付与しても良いことが記載されている。しかしながら本発明者等が検討したところ、酸化によって得られる酸性基とカチオン性官能基とが反応し、顔料同士の凝集が促進されてしまった。その結果、酸化処理した顔料単独またはカチオン性基を付与した顔料単独よりも分散安定性が低下してしまった。
【0010】
本発明は上述した従来技術の課題を鑑み、水性媒体中で極めて高い分散安定性を有する自己分散型顔料及び該自己分散型顔料の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は優れた画像濃度を有し、ブリーディングを低減した画像を提供するインクジェット用水性インクと液体組成物とのインクセット、及び該インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は顔料と、該顔料に直接結合したイオン性基と、該顔料に直接結合したノニオン性分子鎖とを有し、前記ノニオン性分子鎖の分子量は70以上であり、前記顔料に対する前記ノニオン性分子鎖の量が0.010mmol/g以上であり、前記顔料に対する前記ノニオン性分子鎖の量と、前記顔料に対する前記イオン性基の量との合計が0.20mmol/g以上であり、前記合計に対する前記イオン性基の割合が5.0%以上であることを特徴とする自己分散型顔料である。また本発明は該自己分散型顔料の製造方法、該自己分散型顔料を含むインクと液体組成物とのインクセット、該インクセットを用いたインクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水性媒体中での分散安定性に優れた自己分散型顔料及び該自己分散型顔料の製造方法を提供することができる。また、優れた画像濃度を有し、ブリーディングを低減した画像を実現するインクジェット用水性インクと液体組成物とのインクセット、及び該インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
【0014】
<自己分散型顔料>
本発明の自己分散型顔料は顔料と、顔料に直接結合したイオン性基と、顔料に直接結合したノニオン性分子鎖とを含む。以下、本発明の自己分散型顔料が有する各成分について詳細に説明する。
【0015】
[顔料]
本発明には、自己分散型顔料を製造するための顔料として黒色顔料、着色顔料のいずれも用いることができる。具体的には、下記に挙げる顔料を好ましく用いることができる。
【0016】
黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックといったカーボンブラックが挙げられる。また、上述したカーボンブラックのうち、一次粒子径が5nm以上40nm以下、BET法による比表面積が40m/g以上600m/g以下、pH値が2以上10以下であるカーボンブラックが好ましい。本発明の一次粒子径はSEM等の電子顕微鏡を用いて下記のように算出することができる。SEMを用いる場合、SEM画像を撮影した後、撮影した画像から30点〜50点程度の顔料を任意にピックアップし、ピックアップした各顔料の直径を測り、縮尺を考慮して顔料の直径を算出する。算出した各顔料の直径の平均値を求めることで顔料の一次粒径を算出することができる。
【0017】
上述した特性を有するカーボンブラックとしては、具体的には以下のものが挙げられる。例えば、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL330R、400R、660R、MOGUL L(以上、キャボット製)、Nipex 160IQ、Nipex 170IQ、Nipex 75、Printex 95、Printex 90、Printex 80、Printex 85、Printex 35、Printex U(以上、デグサ製)である。
【0018】
また、本発明で用いることのできる着色顔料としては以下のものが挙げられる。イエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、13、16、74、83、109、128、155等が挙げられる。また、マゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122;キナクリドン固溶体、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。また、シアンの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15:3、15:4、16、22、C.I.Vat Blue 4、6等が挙げられる。
【0019】
勿論、本発明は、これらに限られるものではなく、上記した着色顔料以外の色の顔料を用いることもできる。また、2種類以上の顔料を混合したものを用いてもよい。また、新たに製造された顔料も使用することができる。
【0020】
<顔料に直接結合するイオン性基>
本発明において、顔料に直接結合するイオン性基は特に限定されず、アニオン性基、カチオン性基のいずれも用いることができる。イオン性基は水性媒体中で電離し、電離したイオン性基が電荷により反発し合い、自己分散型顔料同士が凝集することを抑制するため、顔料にイオン性基が直接結合した自己分散型顔料は水中で分散可能である。
【0021】
尚、「顔料に直接結合するイオン性基」とは、他の原子団を介さずに、顔料に結合しているイオン性を示す官能基を指す。また、「ノニオン性分子鎖」とは、分子量70以上の分子鎖であって、該分子鎖が有する官能基がノニオン性基である分子鎖を指す。よって、「顔料に直接結合するノニオン性分子鎖」とは、他の原子団を介さずに顔料に結合している分子量70以上のノニオン性分子鎖を指す。
【0022】
本発明において、顔料に直接結合するイオン性基はアニオン性基であることが好ましい。アニオン性基はカチオン性基に比べ化学安全上の制約が比較的少ないため、多種の官能基を選択することができる。
【0023】
[アニオン性基]
本発明の顔料に直接結合するアニオン性基としては、具体的には、−COO(M)、−SO(M)、−POH(M)、−NH(X)が挙げられる。尚、Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Xはハロゲン原子を表す。しかし、本発明は上記したものに限られるものではなく、上記したもの以外のアニオン性基が顔料に直接結合していても良い。顔料に直接結合するアニオン性基の中でも−COO(M)は−SO(M)に比べて高い分散安定性を顔料に付与することができ、−POH(M)よりも安価であるため、好ましい。また、顔料に直接結合するアニオン性基は1種類である必要はなく、複数種のアニオン性基が顔料に付加していても構わない。尚、アニオン性基はインク中で電離して存在するため、例えば−COO(M)はインク中で−COOという状態を取り得る。本発明では説明を簡略化するため、後述の実施例におけるアニオン性基はすべて塩の状態で表現する。
【0024】
<顔料に直接結合するノニオン性分子鎖>
本発明の顔料に直接結合するノニオン性分子鎖としては、具体的には下記式(1)〜(8)に示すものを挙げることができるが、本発明はそれに限定されるものではなく、式(1)〜(8)に示した以外の構造を有するノニオン性分子鎖であっても良い。
式(1)
【0025】
【化1】

【0026】
(式(1)中、nは40以上150以下である。)
式(2)
【0027】
【化2】

【0028】
(式(2)中、nは40以上150以下である。)
式(3)
【0029】
【化3】

【0030】
式(4)
【0031】
【化4】

【0032】
式(5)
【0033】
【化5】

【0034】
式(6)
【0035】
【化6】

【0036】
式(7)
【0037】
【化7】

【0038】
式(8)
【0039】
【化8】

【0040】
本発明の顔料に直接結合するノニオン性分子鎖としては、アルキルエーテルないしアルキルシロキサンを含むことが好ましい。アルキルエーテル及びアルキルシロキサンは親水性であり、水に対する自己分散型顔料の親和性を高めることができる。また、顔料同士の立体反発を高めることができる。そのため、アルキルエーテルないしアルキルシロキサンを含むノニオン性分子鎖を有する自己分散型顔料は極めて高い分散安定性を有する。アルキルエーテルを含むノニオン性分子鎖としては、具体的には式(1)に示す構造のものを好適に用いることができ、アルキルシロキサンを含むノニオン性分子鎖としては、具体的には式(2)に示す構造のものを好適に用いることができる。
【0041】
また、ノニオン性分子鎖が4つ以上の炭素原子を有する環状炭化水素を含むことも好ましい。ノニオン性分子鎖が環状炭化水素を有する場合、環状炭化水素の立体障害によって、自己分散型顔料同士の立体反発が高くなり、自己分散型顔料の分散安定性が向上する。ノニオン性分子鎖が4つ以上の炭素原子を有する環状炭化水素を含む例としては、具体的には式(3)または式(8)に示す構造のものを好適に用いることができる。
【0042】
また、本発明の顔料に直接結合するノニオン性分子鎖は、分子サイズが大きいものが好ましい。ノニオン性分子鎖の分子サイズが大きい場合には、ノニオン性分子鎖を直接結合した顔料が大きな立体障害を持つため、立体反発により顔料の凝集を低減することができる。具体的には、分子量が140以上であることが好ましい。また、分子量が2000以上であることがより好ましい。
【0043】
<顔料の単位質量あたりに対するイオン性基の量、ノニオン性分子鎖の量>
一般的に、顔料の単位質量あたりに対する官能基または分子鎖の量を表す単位として、mmol/gを用いることが知られている。本発明では、自己分散型顔料中における顔料の単位質量あたりに対するイオン性基の量、若しくは該単位質量あたりに対するノニオン性分子鎖の量について以下、詳細に説明する。その際、表現の簡略化を行うために、以下、「自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するイオン性基の量」を単に「イオン性基の量」といい、「自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量」を、単に「ノニオン性分子鎖の量」ともいう。
【0044】
本発明の自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量は0.010mmol/g以上である。0.010mmol/g未満であった場合、ノニオン性分子鎖による自己分散型顔料の立体反発が十分に得られず、分散安定性が低下する場合がある。顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量は0.050mmol/g以上であることが好ましく、0.100mmol/g以上であることがより好ましい。また、本発明の自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量は1.9mmol/g以下であることが好ましく、1.7mmol/g以下であることがより好ましい。
【0045】
本発明において「ノニオン性分子鎖の量」とは、以下の方法で算出することができる。後述の自己分散型顔料製造方法で作成した自己分散型顔料から1gずつ不規則に10回抜き取ることで、10個のサンプルを作成する。作成した10個のサンプルに対して各々のノニオン性分子鎖の量を測定する。10個の測定データを元にノニオン性分子鎖の量の平均値を算出する。本発明においては該平均値を「ノニオン性分子鎖の量」と表現し、10個のサンプル各々のノニオン性分子鎖の量は「ノニオン性分子鎖の量の測定データ」と表現する。
【0046】
本発明の自己分散型顔料はイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計が0.20mmol/g以上である。該合計が0.20mmol/g以上であれば、自己分散型顔料は高い分散安定性を得ることができる。また、好ましくは該合計が0.35mmol/g以上であり、更に好ましくは該合計が0.50mmol/g以上である。
【0047】
また、該合計が2.0mmol/g以下であることが好ましい。該合計が2.0mmol/g以下であると、記録媒体上で顔料が凝集しやすくなり、画像濃度の低下やブリーディングを更に抑制することができるため、より優れた画像特性を有する印字物を得ることができる。尚、本発明の自己分散型顔料を含むインクと後述する液体組成物とのインクセットであった場合、該合計の上限値は特に限定されない。インク中の自己分散型顔料と液体組成物中の色材を凝集する成分とが速やかに凝集し、画像濃度の低下やブリーディングの発生は自己分散型顔料を含むインク単独で用いた場合よりも抑制されるためである。敢えて上限値を挙げるとすれば、インクと液体組成物とのインクセットにおける該合計3.0mmol/g以下であることが好ましい。
【0048】
また、イオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計に対するイオン性基の割合が5.0%以上であることが好ましい。5.0%以上であれば、自己分散型顔料を含むインクと色材を凝集する成分を含む液体組成物とのインクセットとして用いた際に良好な定着性を有することができる。より好ましくは10.0%以上であり、更に好ましくは15.0%以上である。また、イオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計に対するイオン性基の割合が99.5%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましい。
【0049】
本発明において、自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するイオン性基の量は、以下の方法で測定することができる。自己分散型顔料を含む自己分散型顔料分散液に過剰量の塩酸水溶液を加え、攪拌する。攪拌後、遠心分離装置にて自己分散型顔料を沈降させ、沈降した自己分散型顔料を回収する。自己分散型顔料を脱水乾燥した後、秤量し、既知量の炭酸水素ナトリウムを加えて攪拌する。その後、遠心分離装置にて自己分散型顔料を沈降させ、上澄み液を回収する。回収した上澄み液を秤量し、既知濃度の塩酸で中和滴定を行い、滴定量からイオン性基の量を算出する。
【0050】
本発明において、自己分散型顔料中におけるノニオン性分子鎖の量の測定データは、以下の方法で測定することができる。自己分散型顔料を含む自己分散型顔料分散液に過剰量の塩酸水溶液を加え、攪拌する。攪拌後、遠心分離装置にて自己分散型顔料を沈降させ、沈降した自己分散型顔料を回収する。自己分散型顔料を脱水乾燥した後、質量分析でノニオン性分子鎖の量の測定データを得る。また、ノニオン性分子鎖が窒素を有する場合には、元素分析で窒素量を測定し、ノニオン性分子鎖の量の測定データを得てもよい。
【0051】
<インクジェット用水性インク>
本発明のインクジェット用水性インク(単にインクともいう)は、本発明の自己分散型顔料と、水性媒体とが含まれていればよい。インクジェット用水性インク中の自己分散型顔料の含有量は特に限定されないが、インクジェット用水性インク全質量に対して1質量%以上20質量%以下が好ましい。
【0052】
[水性媒体]
本発明のインクジェット用水性インクは水性媒体を含む。水性媒体としては、水または水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。本発明の水は、脱イオン水を使用することが好ましい。また、本発明の水溶性有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが挙げられる。水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合物として用いることができる。また、本発明のインクジェット用水性インク中の水性媒体の含有量は、特に限定されないが、インクジェット用水性インク全質量に対して50質量%以上95質量%以下が好ましい。また、インクジェット用水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量はインクジェット用水性インク全質量に対して3質量%以上50質量%以下が好ましい。また、本発明のインクジェット用水性インクが界面活性剤を含んでも良い。界面活性剤としては、具体的にはアセチレノール100(川研ファインケミカル製)、アセチレノール40(川研ファインケミカル製)、BC−20(日光ケミカルズ製)、L31(ADEKA製)等が挙げられる。界面活性剤の好ましい含有量としては、インク全質量に対し0.1質量%以上2.0質量%以下である。
【0053】
更に、本発明のインクジェット用水性インクは、前記成分の他に必要に応じて適宜添加剤であるpH調整剤、防腐剤、水溶性樹脂等を加えても良い。pH調整剤、防腐剤としては、一般的に使われるものをいずれも用いることができる。また、水溶性樹脂としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等を用いることができる。
【0054】
<インクセット>
本発明のインクジェット用水性インクは、単独で用いても高い効果を得ることができるが、インクジェット用水性インク中の自己分散型顔料を凝集する成分を含む液体組成物とのインクセットであることがより好ましい。液体組成物中の自己分散型顔料を凝集する成分がインク中の自己分散型顔料を凝集させることで、定着性の向上や、ブリーディングの低減を行うことができる。本発明者等が検討したところ、イオン性基が直接顔料に結合している自己分散型顔料は、イオン性基が他の原子団を介して顔料に結合している自己分散型顔料に比べて、高い反応性を有することがわかった。
【0055】
<液体組成物>
本発明の液体組成物は、自己分散型顔料を凝集する成分を少なくとも有する。また、液体組成物が透明であることが好ましいが、必ずしも可視域に吸収を示さないものである必要はない。即ち、可視域に吸収を示すとしても、実質上画像に影響を与えない範囲であれば可視域に吸収を示すものであってもかまわない。
【0056】
[自己分散型顔料を凝集する成分]
本発明の自己分散型顔料は、顔料にイオン性基が直接結合している。そのため、イオン性基の電荷を打ち消すと、自己分散型顔料同士の静電反発がなくなるため、自己分散型顔料の凝集性が向上する。本発明の自己分散型顔料の上記した特性を利用するために、自己分散型顔料を凝集する成分は、水中で自己分散型顔料が有するイオン性基と逆の極性の電荷を有している。そのため、イオン性基がアニオン性基であった場合には、自己分散型顔料を凝集する成分は水中でカチオン性を呈する。
【0057】
イオン性基がアニオン性基であった際の、自己分散型顔料を凝集する成分としては、具体的には金属塩、カチオン性ポリマー、pH緩衝剤等が挙げられる。また、イオン性基がカチオン性基であった際の、自己分散型顔料を凝集する成分としては、具体的にはアニオン性ポリマー等が挙げられる。
【0058】
(金属塩)
本発明において金属塩とは、金属イオンと陰イオンからなる。具体的に、金属イオンとはCa2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、Ba2+の二価の金属イオンや、Al3+、Fe3+、Cr3+、Y3+の三価の金属イオンが挙げられる。
また、陰イオンとはCl、NO、I、Br、ClO、SO2−、CO2−、CHCOO、HCOOが挙げられる。
【0059】
本発明では、反応性や着色性、更には取り扱いの容易さ等の点から、金属イオンとしては、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+、Y3+が特に好ましく、更には好適にはCa2+が用いられる。また、陰イオンとしては、溶解性等の点からNOが特に好ましい。液体組成物中の金属塩の含有量は、液体組成物の全質量に対して0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0060】
(カチオン性ポリマー)
本発明のカチオン性ポリマーとしては、具体的には、ポリアリルアミン、ポリアミンスルホン及びこれらの共重合体、ポリビニルアミン等が挙げられる。カチオン性ポリマーの重量平均分子量は400以上5000以下であることが好ましい。尚、本発明における重量平均分子量とは、GPCでポリエチレングリコールを標準として測定される重量平均分子量を指す。
【0061】
(pH緩衝剤)
本発明のpH緩衝剤としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、ピペリジン酸、グルタミン酸、スルファミン酸、アミノギ酸、p−アニス酸、N−メチルモルホリン N−オキシド等が挙げられる。反応液中のpH緩衝剤の含有量は、反応液の全質量に対して0.01質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0062】
[液体組成物中の水性媒体]
本発明の液体組成物には、上述したインクジェット用水性インクに用いることのできる水性媒体をいずれも用いることができる。また、液体組成物中の水性媒体の含有量は、液体組成物全質量に対し25質量%以上95質量%以下が好ましい。また、液体組成物中の水溶性有機溶剤の含有量は、液体組成物全質量に対して3質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0063】
[液体組成物中のその他の成分]
本発明の液体組成物には、耐擦過性や耐ラインマーカー性の更なる向上のために、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンを添加しても良い。また、液体組成物の吐出を良好にする目的で、水性媒体に低揮発性溶剤を用いることが好ましい。また、本発明の液体組成物が界面活性剤を含んでも良い。界面活性剤としては、具体的にはアセチレノール100(川研ファインケミカル製)、アセチレノール40(川研ファインケミカル製)、BC−20(日光ケミカルズ製)、L31(ADEKA製)等が挙げられる。界面活性剤の好ましい含有量としては、液体組成物全質量に対し0.1質量%以上2.0質量%以下である。
【0064】
<自己分散型顔料の製造方法>
本発明の自己分散型顔料の製造方法は、イオン性基が直接結合した顔料に、ノニオン性分子鎖を直接結合する工程を少なくとも有する。上記した製造方法により、高い分散安定性を有し、画像特性に優れた自己分散型顔料を得ることができる。また、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得られる10個のノニオン性分子鎖の量の測定データを、該10個のノニオン性分子鎖の量の測定データから得られたノニオン性分子鎖の量に対して±10%以内とすることができる。即ち、本発明の自己分散型顔料の製造方法を用いることで、各顔料の修飾されたノニオン性分子鎖の量のばらつきを低減することができる。本発明者等の検討によれば、顔料にノニオン性分子鎖を直接結合した後に、顔料にイオン性基を直接結合しようとすると、顔料に付加していたノニオン性分子鎖が脱離してしまい、十分な量のノニオン性分子鎖を付加することができないため、十分な立体反発を得ることができない。また、上述したノニオン性分子鎖の量の測定データのばらつきを低減することができない。
【0065】
イオン性基が直接結合した顔料の中でもアニオン性基が直接結合した顔料としては市販のものを用いることができ、具体的には、Aqua−Black001(東海カーボン)、Aqua−Black162(東海カーボン)、BONJET BLACK CW−1(オリエント化学工業)、BONJET BLACK CW−2(オリエント化学工業)、BONJET BLACK M−800(オリエント化学工業)等を用いることができる。
【0066】
また、表面処理を行っていない顔料にアニオン性基を直接結合し、その後ノニオン性分子鎖を直接結合してもよい。顔料にアニオン性基を直接結合する方法としては、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素水、オゾン水といった酸化剤を用いて顔料を酸化処理する方法が挙げられる。
【0067】
上述の「顔料」として列挙している、ファーネスブラック、ランプブラック等の表面改質を行っていない顔料は、水中で顔料同士が凝集して存在している。顔料にアニオン性基を付加する際に酸化剤を用いると、顔料同士の凝集が解け、単位質量あたりの顔料の表面積が向上する。そのため、十分な量の官能基を付与することができる。一方、ラジカル重合開始剤を用いて表面改質を行っていない顔料に官能基を付与する場合には、水中でも顔料同士の凝集は緩和されない。そのため、ラジカル重合開始剤を用いて表面改質を行っていない顔料に官能基を付与する場合、十分な量の官能基を付与することができない。
【0068】
本発明において、顔料にノニオン性分子鎖を直接結合する方法としては、顔料とノニオン性分子鎖を有したラジカル重合開始剤とを反応させる方法が挙げられる。具体的には、分解した際にラジカルを有したノニオン性分子鎖を生じる重合開始剤を用いることで、ノニオン性分子鎖を顔料に直接結合することができる。ラジカルを有したノニオン性分子鎖を生じる重合開始剤としては、具体的には下記に示すものを用いることができる。例えば、V−70(和光純薬工業)、V−65(和光純薬工業)、V−60(和光純薬工業)、V−59(和光純薬工業)、V−40(和光純薬工業)、V−30(和光純薬工業)、VA−080(和光純薬工業)、VA−086(和光純薬工業)、VF−096(和光純薬工業)、Vam−110(和光純薬工業)、Vam−111(和光純薬工業)、V−601(和光純薬工業)、VE−073(和光純薬工業)、VR−110(和光純薬工業)、VPE−0201(和光純薬工業)、VPE−0401(和光純薬工業)、VPE−0601(和光純薬工業)、VPS−1001(和光純薬工業)等。上述したラジカル重合開始剤の中でも、VPE−0201、VPS−1001、V−40を用いることが好ましい。VPE−0201を用いた場合には式(1)に示す構造を、顔料に直接結合することができる。また、VPS−1001を用いた場合には、式(2)に示す構造を、顔料に直接結合することができ、V−40を用いた場合には、式(3)に示す構造を、顔料に直接結合することができる。
【0069】
〔インクジェット記録方法〕
本発明のインクセットを用いたインクジェット記録方法は、インクと液体組成物とが互いに接触するように、インクと液体組成物とを記録媒体に付与する方法である。上記の記録方法を用いることでインク中の自己分散型顔料の凝集性を高めることができるため、自己分散型顔料の定着性を高めることができ、インク同士が接触した際に発生するブリーディングを低減することができる。
【0070】
本発明ではインクを記録媒体に付与する際にインクジェット記録方法を用いるが、液体組成物を記録媒体に付与する際には、インクジェット記録方法以外の方法を用いても良い。具体的には、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法による塗布方法が挙げられる。塗布方法を用いると、インクが形成する画像がどのような形状であっても、インクと液体組成物とを接触することができるため好ましい。
【0071】
また、インク、液体組成物のそれぞれを記録媒体に付与する順序としては特に限定されないが、液体組成物を先に記録媒体に付与することが好ましい。あらかじめ記録媒体に液体組成物を付与することで、インクの浸透速度の影響を低減した、効率的な凝集反応を起こすことができる。
【実施例】
【0072】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。尚、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0073】
[分散液1]
顔料(Printex 80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム50gとを加え、105℃で24時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、顔料が分散した分散液1を得た。分散液1中の顔料濃度は10%であった。
【0074】
[自己分散型顔料分散液1]
分散液1を25g分取した後、分取した分散液1中にイオン交換水30gと、VPE−0201(和光純薬工業)3.2gとを加えて混合物を得た。混合物を、窒素雰囲気下にて70℃で攪拌した。攪拌時間が8時間経過する毎に、混合物にVPE−0201(和光純薬工業)を3.2g加え、合計攪拌時間が24時間になるまで攪拌した。従って自己分散型顔料分散液1を製造する際には合計9.6gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。24時間攪拌した後、アセトン溶媒を用いたソックスレー抽出により精製を行った。
【0075】
精製後、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料1を含む自己分散型顔料分散液1を得た。また、自己分散型顔料分散液1の顔料濃度は6%であった。尚、自己分散型顔料1中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.33mmol/gであった。また、自己分散型顔料1中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.38mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.38mmol/gに対して±3.4%以内であった。
【0076】
上述の測定結果より、自己分散型顔料1のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.71mmol/gであると算出した。
【0077】
[分散液2]
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を110gとし、攪拌時間を48時間とした以外は分散液1の製造方法と同様の操作を行い、分散液2を得た。
【0078】
[自己分散型顔料分散液2]
分散液1の代わりに分散液2を用い、合計攪拌時間を48時間とした以外は自己分散型顔料分散液2の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液2を得た。従って、自己分散型顔料分散液2を製造する際には合計19.2gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液2は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料2を含んでいた。尚、自己分散型顔料2中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.71mmol/gであった。また、自己分散型顔料2中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.75mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.75mmol/gに対して±2.3%以内であった。
【0079】
上述の測定結果より、自己分散型顔料2のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は1.46mmol/gであると算出した。
【0080】
[分散液3]
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を30gとした以外は分散液1の製造方法と同様の操作を行い、分散液3を得た。
【0081】
[自己分散型顔料分散液3]
分散液1の代わりに分散液3を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を2.4gとし、合計攪拌時間を16時間とした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液3を得た。従って、自己分散型顔料分散液3を製造する際には合計4.8gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液3は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料3を含んでいた。尚、自己分散型顔料3中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.20mmol/gであった。また、自己分散型顔料3中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.19mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.19mmol/gに対して±2.5%以内であった。
【0082】
上述の測定結果より、自己分散型顔料3のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.39mmol/gであると算出した。
【0083】
[分散液4]
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を17gとした以外は分散液1の製造方法と同様の操作を行い、分散液4を得た。
【0084】
[自己分散型顔料分散液4]
分散液1の代わりに分散液4を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を0.84gとした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液3を得た。従って、自己分散型顔料分散液3を製造する際には合計2.52gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液4は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料4を含んでいた。尚、自己分散型顔料4中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.11mmol/gであった。また、自己分散型顔料4中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.10mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.10mmol/gに対して±4.3%以内であった。
【0085】
上述の測定結果より、自己分散型顔料4のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.21mmol/gであると算出した。
【0086】
[分散液5]
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を18gとした以外は分散液1の製造方法と同様の操作を行い、分散液5を得た。
【0087】
[自己分散型顔料分散液5]
分散液1の代わりに分散液5を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を2.92gとし、合計攪拌時間を40時間とした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液5を得た。従って、自己分散型顔料分散液5を製造する際には合計11.68gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液5は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料5を含んでいた。尚、自己分散型顔料5中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.13mmol/gであった。また、自己分散型顔料5中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.58mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.58mmol/gに対して±4.2%以内であった。
【0088】
上述の測定結果より、自己分散型顔料5のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.71mmol/gであると算出した。
【0089】
[分散液6]
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を14gとし、攪拌時間を18時間とした以外は分散液1の製造方法と同様の操作を行い、分散液6を得た。
【0090】
[自己分散型顔料分散液6]
分散液1の代わりに分散液6を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を2.74gとし、合計攪拌時間を48時間とした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液6を得た。従って、自己分散型顔料分散液6を製造する際には合計16.44gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液6は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料6を含んでいた。尚、自己分散型顔料6中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.09mmol/gであった。また、自己分散型顔料6中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.65mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.65mmol/gに対して±4.4%以内であった。
【0091】
上述の測定結果より、自己分散型顔料6のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.74mmol/gであると算出した。
【0092】
[分散液7]
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を8gとした以外は分散液1の製造方法と同様の操作を行い、分散液7を得た。
【0093】
[自己分散型顔料分散液7]
分散液1の代わりに分散液7を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を2.46gとし、合計攪拌時間を56時間とした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液7を得た。従って、自己分散型顔料分散液7を製造する際には合計17.22gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液7は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料7を含んでいた。尚、自己分散型顔料7中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.05mmol/gであった。また、自己分散型顔料7中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.68mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.68mmol/gに対して±2.8%以内であった。
【0094】
上述の測定結果より、自己分散型顔料7のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.73mmol/gであると算出した。
【0095】
[分散液8]
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を80gとした以外は分散液1の製造方法と同様の操作を行い、分散液8を得た。
【0096】
[自己分散型顔料分散液8]
分散液1の代わりに分散液8を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を1.26gとした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液8を得た。従って、自己分散型顔料分散液8を製造する際には合計3.78gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液8は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料8を含んでいた。尚、自己分散型顔料8中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.53mmol/gであった。また、自己分散型顔料8中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.15mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.15mmol/gに対して±2.9%以内であった。
【0097】
上述の測定結果より、自己分散型顔料8のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.68mmol/gであると算出した。
【0098】
[分散液9]
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を110gとし、攪拌時間を48時間とした以外は分散液1の製造方法と同様の操作を行い、分散液9を得た。
【0099】
[自己分散型顔料分散液9]
分散液1の代わりに分散液9を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を1.76gとし、合計攪拌時間を8時間とした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液9を得た。従って、自己分散型顔料分散液9を製造する際には合計1.76gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液9は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料9を含んでいた。尚、自己分散型顔料9中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.72mmol/gであった。また、自己分散型顔料9中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.07mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.07mmol/gに対して±1.4%以内であった。
【0100】
上述の測定結果より、自己分散型顔料9のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.79mmol/gであると算出した。
【0101】
[分散液10]
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を120gとし、攪拌時間を48時間とした以外は分散液1の製造方法と同様の操作を行い、分散液10を得た。
【0102】
[自己分散型顔料分散液10]
分散液1の代わりに分散液10を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を0.50gとし、合計攪拌時間を48時間とした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液10を得た。従って、自己分散型顔料分散液10を製造する際には合計3.0gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液10は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料10を含んでいた。尚、自己分散型顔料10中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.80mmol/gであった。また、自己分散型顔料10中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.02mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.02mmol/gに対して±3.3%以内であった。
【0103】
上述の測定結果より、自己分散型顔料10のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.82mmol/gであると算出した。
【0104】
[自己分散型顔料分散液11]
VPE−0201の代わりにV−60(和光純薬工業)を用い、8時間毎のV−60の添加量を0.12gとした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液11を得た。従って、自己分散型顔料分散液11を製造する際には合計0.36gのV−60(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液11は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(4)で表されるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料11を含んでいた。尚、自己分散型顔料11中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.33mmol/gであった。また、自己分散型顔料11中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.38mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.38mmol/gに対して±2.8%以内であった。
【0105】
上述の測定結果より、自己分散型顔料11のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.71mmol/gであると算出した。
【0106】
[自己分散型顔料分散液12]
VPE−0201の代わりにV−40(和光純薬工業)を用い、8時間毎のV−40の添加量を0.17gとした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液12を得た。従って、自己分散型顔料分散液12を製造する際には合計0.51gのV−40(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液12は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(3)で表されるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料12を含んでいた。尚、自己分散型顔料12中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.33mmol/gであった。また、自己分散型顔料12中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところは0.38mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.38mmol/gに対して±2.5%以内であった。
【0107】
上述の測定結果より、自己分散型顔料12のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.71mmol/gであると算出した。
【0108】
[自己分散型顔料分散液13]
VPE−0201の代わりにV−65(和光純薬工業)を用い、8時間毎のV−65の添加量を0.18gとした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液13を得た。従って、自己分散型顔料分散液13を製造する際には合計0.54gのV−65(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液13は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(5)で表されるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料13を含んでいた。尚、自己分散型顔料13中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.33mmol/gであった。また、自己分散型顔料13中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.38mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.38mmol/gに対して±1.8%以内であった。
【0109】
上述の測定結果より、自己分散型顔料14のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.71mmol/gであると算出した。
【0110】
[自己分散型顔料分散液14]
VPE−0201の代わりにVPS−1001(和光純薬工業)を用い、8時間毎のVPS−1001の添加量を15gとした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液14を得た。従って、自己分散型顔料分散液14を製造する際には合計45gのVPS−1001(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液14は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(2)で表され、式(2)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料14を含んでいた。尚、自己分散型顔料14中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.33mmol/gであった。また、自己分散型顔料14中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.38mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.38mmol/gに対して±2.9%以内であった。
【0111】
上述の測定結果より、自己分散型顔料14のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.71mmol/gであると算出した。
【0112】
[自己分散型顔料分散液15]
分散液1の代わりに分散液7を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を0.84gとした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液15を得た。従って、自己分散型顔料分散液15を製造する際には合計2.52gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液15は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料15を含んでいた。尚、自己分散型顔料15中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.05mmol/gであった。また、自己分散型顔料15中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.10mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.10mmol/gに対して±4.9%以内であった。
【0113】
上述の測定結果より、自己分散型顔料15のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.15mmol/gであると算出した。
【0114】
[自己分散型顔料分散液16]
分散液1の代わりに分散液7を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を8.26gとした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液16を得た。従って、自己分散型顔料分散液16を製造する際には合計24.78gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液16は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料16を含んでいた。尚、自己分散型顔料16中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.05mmol/gであった。また、自己分散型顔料16中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.98mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.98mmol/gに対して±4.3%以内であった。
【0115】
上述の測定結果より、自己分散型顔料16のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は1.03mmol/gであると算出した。
【0116】
[自己分散型顔料分散液17]
分散液1の代わりに分散液2を用い、8時間毎のVPE−0201の添加量を0.1gとし、合計攪拌時間を48時間とした以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行い、自己分散型顔料分散液17を得た。従って、自己分散型顔料分散液17を製造する際には合計0.6gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。得られた自己分散型顔料分散液17は、−COOHで表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料17を含んでいた。尚、自己分散型顔料17中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.71mmol/gであった。また、自己分散型顔料17中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.008mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.008mmol/gに対して±9.6%以内であった。
【0117】
上述の測定結果より、自己分散型顔料17のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.718mmol/gであると算出した。
【0118】
[自己分散型顔料分散液18]
分散液2にVPE−0201などのラジカル重合開始剤を添加せず、分散液2をそのまま用いた。分散液2は−COOHで表されるイオン性基が顔料に直接結合した自己分散型顔料18を含んでいた。尚、自己分散型顔料18中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量は0.71mmol/gである。また、自己分散型顔料18中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量は0mmol/gである。
【0119】
[自己分散型顔料分散液19]
顔料(Printex 80 Evonik製)2.5gにイオン交換水52.5gと、VPE−0201(和光純薬工業)2.62gとを加えて混合物を得た。混合物を、窒素雰囲気下にて70℃で攪拌した。攪拌時間が8時間経過する毎に、混合物にVPE−0201(和光純薬工業)を2.62g加え、合計攪拌時間が40時間になるまで攪拌した。従って自己分散型顔料分散液19を製造する際には合計13.1gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。40時間攪拌した後、アセトン溶媒を用いたソックスレー抽出により精製を行った。
【0120】
精製後、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖が顔料に直接結合した自己分散型顔料19を含む自己分散型顔料分散液19を得た。また、自己分散型顔料分散液19の顔料濃度は6%であった。尚、自己分散型顔料19中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量は0mmol/gである。また、自己分散型顔料19中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.07mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.07mmol/gに対して±64.5%以内であった。
【0121】
[自己分散型顔料分散液20]
顔料(Printex 80 Evonik製)2.5gにイオン交換水52.5gと4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)3.2gとを加えて混合物を得た。混合物を、窒素雰囲気下にて70℃で攪拌した。攪拌時間が8時間経過する毎に、混合物に4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)を3.2g加え、合計攪拌時間が24時間になるまで攪拌した。従って自己分散型顔料分散液1を製造する際には合計9.6gの4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)を混合物に添加した。24時間攪拌した後、アセトン溶媒を用いたソックスレー抽出により精製を行った。
【0122】
精製後、イオン性基として後述の式(9)が顔料に直接結合した自己分散型顔料20を含む自己分散型顔料分散液20を得た。また、自己分散型顔料分散液20の顔料濃度は6%であった。尚、自己分散型顔料20中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.15mmol/gであった。また、自己分散型顔料20中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量は0mmol/gである。
式(9)
【0123】
【化9】

【0124】
[自己分散型顔料分散液21]
自己分散型顔料分散液20を42g分取した後、分取した自己分散型顔料分散液20中にイオン交換水13gと、VPE−0201(和光純薬工業)3.2gとを加えて混合物を得た。混合物を、窒素雰囲気下にて70℃で攪拌した。攪拌時間が8時間経過する毎に、混合物にVPE−0201(和光純薬工業)を3.2g加え、合計攪拌時間が24時間になるまで攪拌した。従って自己分散型顔料分散液21を製造する際には合計9.6gのVPE−0201(和光純薬工業)を混合物に添加した。24時間攪拌した後、アセトン溶媒を用いたソックスレー抽出により精製を行った。
【0125】
精製後、前述の式(9)で表されるイオン性基と、前述の式(1)で表され、式(1)中のn=40であるノニオン性分子鎖とが顔料に直接結合した自己分散型顔料21を含む自己分散型顔料分散液21を得た。また、自己分散型顔料分散液21の顔料濃度は6%であった。尚、自己分散型顔料21中における、顔料の単位質量に対するイオン性基の量を測定したところ0.15mmol/gであった。また、自己分散型顔料21中における、顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量を算出したところ0.07mmol/gであった。尚、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得たノニオン性分子鎖の量の測定データは、いずれもノニオン性分子鎖の量である0.07mmol/gに対して±61.2%以内であった。
【0126】
上述の測定結果より、自己分散型顔料21のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計は0.22mmol/gであると算出した。
【0127】
<自己分散型顔料のイオン性基とノニオン性分子鎖の合計>
各自己分散型顔料1〜21について、下記に示す方法にてイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量を算出した。また、得られたイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量とを足して、自己分散型顔料中における顔料に対するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を算出した。
【0128】
<イオン性基の量>
自己分散型顔料分散液に過剰量の塩酸水溶液を加え、室温で24時間攪拌した。攪拌後、遠心分離装置にて5,000rpm、30分間遠心分離を行うことで自己分散型顔料を沈降させ、沈降した自己分散型顔料を回収した。回収後の自己分散型顔料を脱水乾燥した後、秤量し、既知量の炭酸水素ナトリウムを加えて攪拌した。攪拌後、遠心分離装置にて80,000rpm、1時間遠心分離を行うことで自己分散型顔料を沈降させ、上澄み液を回収した。回収した上澄み液を秤量し、0.1Nの塩酸で中和滴定を行い、滴定量からイオン性基の量を算出した。
【0129】
<ノニオン性分子鎖の量>
自己分散型顔料分散液に過剰量の塩酸水溶液を加え、室温で24時間攪拌した。攪拌後、遠心分離装置にて5,000rpm、30分間遠心分離を行うことで自己分散型顔料を沈降させ、沈降した自己分散型顔料を回収した。回収した自己分散型顔料を脱水乾燥し、自己分散型顔料を1gずつ、不規則に10個分取し、10個のサンプルについて元素分析装置で窒素量を測定した。元素分析装置としてTCH−600型(LECO製)を用いた。得られた窒素量から10個のサンプル各々のノニオン性分子鎖の量の測定データを得た。得られたノニオン性分子鎖の量の測定データを元に、ノニオン性分子鎖の量を算出した。
【0130】
[自己分散型顔料の評価]
自己分散型顔料1〜21の組成及び物性値をまとめたものを表1に示す。
【0131】
尚、ノニオン性分子鎖の量のばらつきとは、ノニオン性分子鎖の量を算出する際に得られた10個のノニオン性分子鎖の量の測定データがノニオン性分子鎖の量を基準としてどの程度ばらついているのかを示したものである。また、合計値に占めるイオン性基の割合とは、イオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計値に占めるイオン性基の割合を指す。また、イオン性基の量、ノニオン性分子鎖の量、イオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計値の単位は、いずれもmmol/gである。
【0132】
【表1】

【0133】
[インクの作製]
次に、自己分散型顔料1〜21を用いて、インクジェット用水性インクを作製した。インクジェット用水性インクの組成は下記に示す通りであり、自己分散型顔料に、自己分散型顔料1を用いて作製したインクをインクジェット用水性インク1とし、順次自己分散型顔料とインクジェット用水性インクとの番号が対応したインクを作製した。
【0134】
インクジェット用水性インク
自己分散型顔料 3質量%
グリセリン 5質量%
ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000) 5質量%
アセチレノール100 1質量%
イオン交換水 86質量%
<インクジェット用水性インクの評価>
上述の操作によって得られたインクジェット用水性インク1〜21について、下記に示す方法で各種の物性の測定、及び評価を行った。各インクジェット用水性インクの評価においては、インクジェット用水性インク1〜14を実施例1〜14とし、インクジェット用水性インク15〜21を比較例1〜7とした。
【0135】
[分散安定性]
上述の操作によって得られたインクジェット用水性インク1〜21について、自己分散型顔料及び顔料の平均粒径を測定した。次いで、ガラス製のサンプル瓶中に各インクジェット用水性インクを入れ、80℃で1週間間保存した。2日間保存した後の粒径を測定した。測定後、更に80℃で5日間保存し1週間保存した後の粒径を測定した。得られた測定データを元に、保存前に対する2日後及び1週間後の平均粒径の変化率を求めた。尚、顔料の平均粒径の測定には、ELS−8000(大塚電子製)を用いた。各インクジェット用水性インクの平均粒径の変化率を、表2、表3に示す。尚、表2、表3中の「−」とは、平均粒径の変化が著しく、測定を行うことすらできなかったことを指す。また、本発明においては1週間保存した時の平均粒径の変化率が15%以下であれば十分な分散安定性を有するとした。
【0136】
<インクの画像濃度、ブリーディングの評価>
各インクジェット用水性インクを搭載したキヤノン製のサーマルインクジェット記録装置PIXUS Pro−9500を用い、記録媒体としてオフィスプランナー(A4普通紙、キヤノン製)用いて画像形成を行った。得られた画像から画像濃度、ブリーディング等の評価を行った。
【0137】
[画像濃度]
普通紙上に上記した記録装置を用いて各インクを付与し、ベタ画像を形成した後、1時間放置した。放置後、マクベスRD915で画像濃度を測定した。各インクジェット用水性インクを用いた結果を、表2に示す。また、本発明のインクの評価においては画像濃度が0.95以上であれば十分な性能を有するとした。
【0138】
[ブリーディング]
ブラックインクとして各インクジェット用水性インクを用い、カラーインクとしてPGI−2Y(イエローインク、キヤノン製)を用いた。
【0139】
上記した記録装置を用い、同一のスキャンで液体組成物が付与された記録媒体上に各インクジェット用水性インクで印字したベタ部と、該ベタ部に隣接するようにカラーインクで印字したベタ部を印字した。得られた印字物の各インクジェット用水性インクとカラーインクの間をカメラで2値化し、基準線からの滲みの最大長さ(最大滲み長さ)を測定した。各インクジェット用水性インクを用いた際の結果を表3に示す。また、本発明のインクの評価においては、最大滲み長さが25μm以下であれば十分な性能を有するとした。
【0140】
【表2】

【0141】
<インクセットの評価>
[インクセットの作製]
上述した操作で得られたインクジェット用水性インク1〜21と、下記に示す組成の液体組成物1とを用いて、インクセットを作成した。作製した各インクセットについて下記の評価を行った。また、各インクセットの評価においては、インクジェット用水性インク1〜14を用いたインクセットを実施例15〜28とし、インクジェット用水性インク15〜21を用いたインクセットを比較例8〜14とした。
【0142】
液体組成物1
硝酸マグネシウム6水和物 10質量%
1,2,6−ヘキサントリオール 30質量%
トリメチロールプロパン 5質量%
アセチレノール100 1質量%
イオン交換水 54質量%
<インクセットの画像濃度、ブリーディングの評価>
各インクジェット用水性インクを搭載したキヤノン製のサーマルインクジェット記録装置PIXUS Pro−9500を用いて画像形成を行った。得られた画像から画像濃度、ブリーディング等の評価を行った。尚、記録媒体にはあらかじめバーコーターにて液体組成物を2.4g/m付与したオフィスプランナー(A4普通紙、キヤノン製)を用いた。
【0143】
[画像濃度]
液体組成物が付与された記録媒体上に上記した記録装置を用いて各インクを付与し、ベタ画像を形成した後、1時間放置した。放置後、マクベスRD915で画像濃度を測定した。各インクジェット用水性インクを用いた結果を、表3に示す。また、本発明のインクセットの評価においては画像濃度が1.15以上であれば十分な性能を有するとした。
【0144】
[ブリーディング]
ブラックインクとして各インクジェット用水性インクを用い、カラーインクとしてPGI−2Y(イエローインク、キヤノン製)を用いた。
【0145】
上記した記録装置を用い、同一のスキャンで液体組成物が付与された記録媒体上に各インクジェット用水性インクで印字したベタ部と、該ベタ部に隣接するようにカラーインクで印字したベタ部を印字した。得られた印字物の各インクジェット用水性インクとカラーインクの間をカメラで2値化し、基準線からの滲みの最大長さ(最大滲み長さ)を測定した。各インクジェット用水性インクを用いた際の結果を表3に示す。また、本発明のインクセットの評価においては、最大滲み長さが15μm以下であれば十分な性能を有するとした。
【0146】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、該顔料に直接結合したイオン性基と、該顔料に直接結合したノニオン性分子鎖とを有し、
前記ノニオン性分子鎖の分子量は70以上であり、
前記顔料に対する前記ノニオン性分子鎖の量が0.010mmol/g以上であり、
前記顔料に対する前記ノニオン性分子鎖の量と、前記顔料に対する前記イオン性基の量との合計が0.20mmol/g以上であり、
前記合計に対する前記イオン性基の割合が5.0%以上である
ことを特徴とする自己分散型顔料。
【請求項2】
前記イオン性基がアニオン性基である請求項1に記載の自己分散型顔料。
【請求項3】
前記イオン性基が−COO(M)である請求項1または2に記載の自己分散型顔料。(Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の自己分散型顔料と水性媒体とを少なくとも含むことを特徴とするインクジェット用水性インク。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェット用水性インクと、前記自己分散型顔料を凝集する成分を含む液体組成物と、を少なくとも有することを特徴とするインクセット。
【請求項6】
前記イオン性基がアニオン性基であり、前記凝集する成分が金属塩、カチオン性ポリマー、pH緩衝剤のいずれかである請求項5に記載のインクセット。
【請求項7】
イオン性基が直接結合した顔料に、ノニオン性分子鎖を直接結合する工程を少なくとも有することを特徴とする自己分散型顔料の製造方法。
【請求項8】
酸化剤を用いてイオン性基が直接結合した顔料を得る請求項7に記載の自己分散型顔料の製造方法。
【請求項9】
ラジカル重合開始剤を用いて前記ノニオン性分子鎖を直接結合する請求項7または8に記載の自己分散型顔料の製造方法。
【請求項10】
請求項5または6に記載のインクセットを用い、前記インクジェット用水性インクと前記液体組成物とが互いに接触するように記録媒体に付与することを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2010−254765(P2010−254765A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104216(P2009−104216)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】