説明

自己分散型顔料、自己分散型顔料の製造方法、インクセット、インクジェット記録方法

【課題】 分散安定性に優れた自己分散型顔料、該自己分散型顔料の製造方法の提供。
【解決手段】 本発明は、顔料と、該顔料に直接結合したイオン性基と、該顔料にアミド結合を介して結合したノニオン性分子鎖とを少なくとも有することを特徴とする自己分散型顔料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体中での分散安定性に優れた自己分散型顔料とその製造方法、及びインクセット、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録に用いられる水性インクの色材として、染料に比べ画像の耐光性、耐水性に優れた顔料が注目されている。しかし、顔料は水に不溶であるため水性インクの色材として用いるためには、顔料が水中で安定して存在していなければならない。最近では、顔料を水性媒体中で分散安定化させるための顔料の処理技術が活発に開発されるようになった。これら開発されている技術の中でも特に、顔料自体を処理して顔料自身の分散性を向上させて、顔料を分散剤を用いずに水性媒体中に分散可能な自己分散型顔料とする顔料の自己分散化の技術は、インクジェットヘッドへの信頼性が高いことからインクジェット用水性インクの顔料を処理する技術として好適に用いられている。
【0003】
上述した顔料自体を処理する技術の一つとして、特許文献1には酸化剤で顔料を酸化処理する技術が記載されている。また、特許文献2にはジアゾニウム塩を用いて顔料を処理する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−3498号公報
【特許文献2】特許第4001922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術について本発明者等が検討を行ったところ、酸化剤の添加量や酸化処理の回数を多くしても、顔料に対し一定以上の分散安定性を付与することができなかった。また、特許文献2の技術を用いて製造した自己分散型顔料は、分散安定性は得られるものの、印字の際に記録媒体内部へ浸透してしまい、十分な画像濃度を得ることができなかった。また、カラー画像を形成した際には色調の異なるインク同士の境界部分で色の滲み(以下、ブリーディングともいう)が生じてしまい、本発明者等が満足するレベルの画像は得られなかった。
【0006】
本発明は上述した従来技術の課題を鑑み、水性媒体中で極めて高い分散安定性を有する自己分散型顔料及び該自己分散型顔料の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は優れた画像濃度を有し、ブリーディングを低減した画像を提供するインクジェット用水性インクと液体組成物とのインクセット、及び該インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、顔料と、該顔料に直接結合したイオン性基と、該顔料にアミド結合を介して結合したノニオン性分子鎖とを少なくとも有することを特徴とする自己分散型顔料である。また、本発明は該自己散型顔料の製造方法、該自己分散型顔料を含むインクと液体組成物とのインクセット、該インクセットを用いたインクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水性媒体中での分散安定性に優れた自己分散型顔料及び該自己分散型顔料の製造方法を提供することができる。また、優れた画像濃度を有し、ブリーディングを低減した画像を実現するインクジェット用水性インクと液体組成物とのインクセット、及び該インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
【0010】
<自己分散型顔料>
本発明の自己分散型顔料は顔料と、該顔料に直接結合したイオン性基と、該顔料にアミド結合を介して結合したノニオン性分子鎖とを少なくとも有する。以下、本発明の自己分散型顔料が有する各成分について詳細に説明する。
【0011】
[顔料]
本発明には、自己分散型顔料を製造するための顔料として黒色顔料、着色顔料のいずれも用いることができる。具体的には、下記に挙げる顔料を好ましく用いることができる。
【0012】
黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックといったカーボンブラックが挙げられる。また、上述したカーボンブラックのうち、一次粒子径が5nm以上40nm以下、BET法による比表面積が40m/g以上600m/g以下、pH値が2以上10以下であるカーボンブラックが好ましい。本発明の一次粒子径はSEM等の電子顕微鏡を用いて下記のように算出することができる。SEMを用いる場合、SEM画像を撮影した後、撮影した画像から30点〜50点程度の顔料を任意にピックアップし、ピックアップした各顔料の直径を測り、縮尺を考慮して顔料の直径を算出する。算出した各顔料の直径の平均値を求めることで顔料の一次粒径を算出することができる。
【0013】
上述した一次粒子径及び比表面積を有するカーボンブラックとしては、具体的には以下のものが挙げられる。例えば、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL330R、400R、660R、MOGUL L(以上、キャボット製)、Nipex 160IQ、Nipex 170IQ、Nipex 75、Printex 95、Printex 90、Printex 80、Printex 85、Printex 35、Printex U(以上、デグサ製)である。
【0014】
また、本発明で用いることのできる着色顔料としては以下のものが挙げられる。イエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、13、16、74、83、109、128、155等が挙げられる。また、マゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122;キナクリドン固溶体、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。また、シアンの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15:3、15:4、16、22、C.I.Vat Blue 4、6等が挙げられる。
【0015】
勿論、本発明は、これらに限られるものではなく、上記した着色顔料以外の色の顔料を用いることもできる。また、2種類以上の顔料を混合したものを用いてもよい。また、新たに製造された顔料も使用することができる。
【0016】
<顔料に直接結合するイオン性基>
本発明において、顔料に直接結合するイオン性基は特に限定されず、アニオン性基、カチオン性基のいずれも用いることができる。イオン性基は水性媒体中で電離し、電離したイオン性基が電荷により反発し合い、自己分散型顔料同士が凝集することを抑制するため、顔料にイオン性基が直接結合した自己分散型顔料は水性媒体中で分散可能である。
【0017】
尚、「顔料に直接結合するイオン性基」とは、他の原子団を介さずに、顔料に結合しているイオン性を示す官能基を指す。
【0018】
また、顔料に直接結合するイオン性基はアニオン性基であることが好ましい。アニオン性基はカチオン性基に比べ化学安全上の制約が比較的少ないため、多種の官能基を選択することができる。
【0019】
[アニオン性基]
本発明の顔料に直接結合するアニオン性基としては、具体的には、−COO(M)、−SO(M)、−POH(M)が挙げられる。尚、Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Xはハロゲン原子を表す。しかし、本発明は上記したものに限られるものではなく、上記したもの以外のアニオン性基が顔料に直接結合していても良い。顔料に直接結合するアニオン性基の中でも−COO(M)は−SO(M)に比べて高い分散安定性を顔料に付与することができ、−POH(M)よりも安価であるため、好ましい。また、顔料に直接結合するアニオン性基は1種類である必要はなく、複数種のアニオン性基が顔料に付加していても構わない。尚、アニオン性基はインク中で電離して存在するため、例えば−COO(M)はインク中で−COOという状態を取り得る。本発明では説明を簡略化するため、後述の実施例におけるアニオン性基はすべて塩の状態で表現する。
【0020】
<アミド結合を介して顔料に結合するノニオン性分子鎖>
本発明の自己分散型顔料は、アミド結合を介して顔料に結合したノニオン性分子鎖を有している。本発明において「ノニオン性分子鎖」とは、炭素原子を少なくとも1つ有し、該分子鎖が有する官能基がすべてノニオン性基である分子鎖を指す。本発明においては、ノニオン性基がノニオン性分子鎖をなすもの、具体的にはCHのようなノニオン性基もノニオン性分子鎖と呼ぶ。アミド結合を介して顔料に結合したノニオン性分子鎖を有することで、長期間保存した際にも高い分散安定性を保つことができる。上述の効果が発現した理由を、本発明者等は以下のように推測している。ノニオン性分子鎖はアミド結合を介して顔料と結合しているため、高い立体障害を持つ。そのため、顔料同士の立体反発が働き、顔料の会合が抑制される。加えて、アミド結合はエステル結合に比べて加水分解しにくいため、顔料とノニオン性分子鎖とを強固に繋ぎ止めることができる。従って長期間保存を行った際のノニオン性分子鎖の脱離を低減することができ、長期間の分散安定性に優れた自己分散型顔料を得ることができる。
【0021】
本発明のアミド結合を形成する窒素原子は3級であることが好ましい。窒素原子の級数が3級であると、1つのアミド結合に対し2つのノニオン性分子鎖が結合することができる。そのため、1つのアミド結合に対し1つのノニオン性分子鎖が結合する2級の窒素原子に比べ、高い立体反発を付与することができる。
【0022】
また、ノニオン性分子鎖が炭化水素であり、炭化水素が環状炭化水素を有することが好ましい。炭化水素を有することで高い立体障害を得ることができ、顔料同士の会合を抑制することができる。同様に、ノニオン性分子鎖が炭化水素であり、炭化水素の有する炭素原子うち少なくとも1つの炭素原子が第4級炭素原子であることが好ましい。4級炭素原子は、4つの炭素原子に直接結合している。そのため直鎖型の炭化水素に比べ、高い立体障害を得ることができる。
【0023】
また、ノニオン性分子鎖がアルキルエーテルを含むことも好ましい。アルキルエーテルは親水性であり、水に対する自己分散型顔料の親和性を高めることができる。そのため、アルキルエーテルを含む自己分散型顔料は水中で安定して存在することができる。また、アルキルエーテルを含むノニオン性分子鎖は、高分子鎖であることが好ましい。アルキルエーテルの重量平均分子量(以下、MWともいう)は、500以上10000以下であることが好ましい。アルキルエーテルの重量平均分子量とは、GPCでポリエチレングリコールを基準として測定される重量平均分子量を指す。
【0024】
本発明のノニオン性分子鎖の構造は以下の方法で同定することができる。自己分散型顔料を含む自己分散型顔料分散液に過剰量の水酸化ナトリウム水溶液または塩酸水溶液を加え、アミド結合の加水分解条件下で攪拌する。攪拌後、遠心分離装置にて自己分散型顔料を沈降させ、上澄み液を回収する。回収した上澄み液中の水性溶媒を蒸発させ、固形分を回収する。回収した固形分をNMR、IR、元素分析で解析することで、ノニオン性分子鎖の構造を同定することができる。
【0025】
<顔料の単位質量あたりに対するイオン性基の量、ノニオン性分子鎖の量>
一般的に、顔料の単位質量あたりに対する官能基または分子鎖の量を表す単位として、mmol/gを用いることが知られている。本発明では、自己分散型顔料中における顔料の単位質量あたりに対するイオン性基の量、若しくは該単位質量あたりに対するノニオン性分子鎖の量について以下、詳細に説明する。その際、表現の簡略化を行うために、以下、「自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するイオン性基の量」を単に「イオン性基の量」といい、「自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量」を、単に「ノニオン性分子鎖の量」ともいう。
【0026】
本発明の自己分散型顔料はイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計が0.20mmol/g以上であることが好ましい。該合計が0.20mmol/g以上であると、自己分散型顔料は高い分散安定性を得ることができる。また、より好ましくは該合計が0.35mmol/g以上であり、特に好ましくは該合計が0.50mmol/g以上である。
【0027】
また、該合計は2.0mmol/g以下であることが好ましい。該合計が2.0mmol/g以下であると、記録媒体上で顔料が凝集しやすくなり、画像濃度の低下やブリーディングを更に抑制することができるため、より優れた画像特性を有する印字物を得ることができる。尚、本発明の自己分散型顔料を含むインクと後述する液体組成物とのインクセットであった場合、該合計の上限値は特に限定されない。インク中の自己分散型顔料と液体組成物中の色材を凝集する成分とが速やかに凝集するため、画像濃度の低下やブリーディングの発生は自己分散型顔料を含むインク単独で用いた場合よりも抑制される。敢えて上限値を挙げるとすれば、インクと液体組成物とのインクセットにおける該合計は3.0mmol/g以下であることが好ましい。
【0028】
本発明のイオン性基とノニオン性分子鎖の合計は、以下の方法で測定することができる。自己分散型顔料を含む自己分散型顔料分散液に過剰量の水酸化ナトリウム水溶液または塩酸水溶液を加え、アミド結合の加水分解条件下で攪拌する。攪拌後、遠心分離装置にて自己分散型顔料を沈降させ、沈降した自己分散型顔料を回収する。自己分散型顔料を脱水乾燥した後、秤量し、既知量の炭酸水素ナトリウムを加えて攪拌する。攪拌後、遠心分離装置にて自己分散型顔料を沈降させ、上澄み液を回収する。回収した上澄み液を秤量し、既知濃度の塩酸で中和滴定を行い、滴定量からイオン性基とノニオン性分子鎖の合計を算出する。
【0029】
また、自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するイオン性基の量と、自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量との合計に対し、顔料の単位質量に対するイオン性基の割合が5.0%以上であることが好ましい。該割合が5.0%以上であれば、自己分散型顔料を含むインクと色材を凝集する成分を含む液体組成物とのインクセットとして用いた際に良好な定着性を有することができる。より好ましくは10.0%以上であり、更に好ましくは15.0%以上である。また、自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するイオン性基の量と、自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量との合計に対し、顔料の単位質量に対するイオン性基の割合が99.5%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明において、自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するイオン性基の量は、以下の方法で測定することができる。自己分散型顔料を含む自己分散型顔料分散液に過剰量の塩酸水溶液を加え、攪拌する。攪拌後、遠心分離装置にて自己分散型顔料を沈降させ、沈降した自己分散型顔料を回収する。自己分散型顔料を脱水乾燥した後、秤量し、既知量の炭酸水素ナトリウムを加えて攪拌する。その後、遠心分離装置にて自己分散型顔料を沈降させ、上澄み液を回収する。回収した上澄み液を秤量し、既知濃度の塩酸で中和滴定を行い、滴定量からイオン性基の量を算出する。
【0031】
本発明の自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量は0.010mmol/g以上であることが好ましい。0.010mmol/g未満であった場合、ノニオン性分子鎖による自己分散型顔料の立体反発が十分に得られず、分散安定性が低下する場合がある。顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量は0.050mmol/g以上であることがより好ましく、0.100mmol/g以上であることが特に好ましい。また、本発明の自己分散型顔料中における顔料の単位質量に対するノニオン性分子鎖の量は1.9mmol/g以下であることが好ましく、1.7mmol/g以下であることがより好ましい。また、本発明のノニオン性分子鎖の量は、イオン性基の量とノニオン性分子鎖の量の合計からイオン性基の量を差し引くことで算出することができる。
【0032】
<インクジェット用水性インク>
本発明のインクジェット用水性インク(単にインクともいう)は、本発明の自己分散型顔料と、水性媒体とが含まれていればよい。インクジェット用水性インク中の自己分散型顔料の含有量は特に限定されないが、インクジェット用水性インク全質量に対して1質量%以上20質量%以下が好ましい。
【0033】
[水性媒体]
本発明のインクジェット用水性インクは水性媒体を含む。水性媒体としては、水または水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。本発明の水は、脱イオン水を使用することが好ましい。また、本発明の水溶性有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが挙げられる。水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合物として用いることができる。また、本発明のインクジェット用水性インク中の水性媒体の含有量は、特に限定されないが、インクジェット用水性インク全質量に対して50質量%以上95質量%以下が好ましい。また、インクジェット用水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量はインクジェット用水性インク全質量に対して3質量%以上50質量%以下が好ましい。また、本発明のインクジェット用水性インクが界面活性剤を含んでも良い。界面活性剤としては、具体的にはアセチレノール100(川研ファインケミカル製)、アセチレノール40(川研ファインケミカル製)、BC−20(日光ケミカルズ製)、L31(ADEKA製)等が挙げられる。界面活性剤の好ましい含有量としては、インク全質量に対し0.1質量%以上2.0質量%以下である。
【0034】
更に、本発明のインクジェット用水性インクは、前記成分の他に必要に応じて適宜添加剤であるpH調整剤、防腐剤、水溶性樹脂等を加えても良い。pH調整剤、防腐剤としては、一般的に使われるものをいずれも用いることができる。また、水溶性樹脂としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等を用いることができる。
【0035】
<インクセット>
本発明のインクジェット用水性インクは、単独で用いても高い効果を得ることができるが、インクジェット用水性インク中の自己分散型顔料を凝集する成分を含む液体組成物とのインクセットであることがより好ましい。液体組成物中の自己分散型顔料を凝集する成分がインク中の自己分散型顔料を凝集させることで、定着性の向上や、ブリーディングの低減を行うことができる。本発明者等が検討したところ、イオン性基が直接顔料に結合している自己分散型顔料は、イオン性基が他の原子団を介して顔料に結合している自己分散型顔料に比べて、高い反応性を有することがわかった。
【0036】
<液体組成物>
本発明の液体組成物は、自己分散型顔料を凝集する成分を少なくとも有する。また、液体組成物が透明であることが好ましいが、必ずしも可視域に吸収を示さないものである必要はない。即ち、可視域に吸収を示すとしても、実質上画像に影響を与えない範囲であれば可視域に吸収を示すものであってもかまわない。本発明において、実質上画像に影響を与えない範囲とは、具体的には、光路長1cmのセルを用いて液体組成物の可視光吸収スペクトル測定を行った際に、400nm〜700nmの範囲にわたって吸光度が0.1以下であることを指す。
【0037】
[自己分散型顔料を凝集する成分]
本発明の自己分散型顔料は、顔料にイオン性基が直接結合している。そのため、イオン性基の電荷を打ち消すと、自己分散型顔料同士の静電反発がなくなるため、自己分散型顔料の凝集性が向上する。本発明の自己分散型顔料の上記した特性を利用するために、自己分散型顔料を凝集する成分は、水中で自己分散型顔料が有するイオン性基と逆の極性の電荷を有している。そのため、イオン性基がアニオン性基であった場合には、自己分散型顔料を凝集する成分は水中でカチオン性を呈する。
【0038】
イオン性基がアニオン性基であった際の、自己分散型顔料を凝集する成分としては、具体的には金属塩、カチオン性ポリマー、pH緩衝剤等が挙げられる。また、イオン性基がカチオン性基であった際の、自己分散型顔料を凝集する成分としては、具体的にはアニオン性ポリマー等が挙げられる。
【0039】
(金属塩)
本発明において金属塩とは、金属イオンと陰イオンからなる。具体的に、金属イオンとはCa2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、Ba2+の二価の金属イオンや、Al3+、Fe3+、Cr3+、Y3+の三価の金属イオンが挙げられる。
【0040】
また、陰イオンとはCl、NO、I、Br、ClO、SO2−、CO2−、CHCOO、HCOOが挙げられる。
【0041】
本発明では、反応性や着色性、更には取り扱いの容易さ等の点から、金属イオンとしては、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+、Y3+が特に好ましく、更には好適にはCa2+が用いられる。また、陰イオンとしては、溶解性等の点からNOが特に好ましい。液体組成物中の金属塩の含有量は、液体組成物の全質量に対して0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0042】
(カチオン性ポリマー)
本発明のカチオン性ポリマーとしては、具体的には、ポリアリルアミン、ポリアミンスルホン及びこれらの共重合体、ポリビニルアミン等が挙げられる。カチオン性ポリマーの重量平均分子量は400以上5000以下であることが好ましい。尚、本発明における重量平均分子量とは、GPCでポリエチレングリコールを標準として測定される重量平均分子量を指す。カチオン性ポリマーの含有量は、液体組成物全質量に対して1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
【0043】
(pH緩衝剤)
本発明のpH緩衝剤としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、ピペリジン酸、グルタミン酸、スルファミン酸、アミノギ酸、p−アニス酸、N−メチルモルホリン N−オキシド等が挙げられる。液体組成物中のpH緩衝剤の含有量は、液体組成物の全質量に対して0.01質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0044】
[液体組成物中の水性媒体]
本発明の液体組成物には、上述したインクジェット用水性インクに用いることのできる水性媒体をいずれも用いることができる。また、液体組成物中の水性媒体の含有量は、液体組成物全質量に対し25質量%以上95質量%以下が好ましい。また、液体組成物中の水溶性有機溶剤の含有量は、液体組成物全質量に対して3質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0045】
[液体組成物中のその他の成分]
本発明の液体組成物には、耐擦過性や耐ラインマーカー性の更なる向上のために、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンを添加しても良い。また、液体組成物の吐出を良好にする目的で、水性媒体に低揮発性溶剤を用いることが好ましい。また、本発明の液体組成物が界面活性剤を含んでも良い。界面活性剤としては、具体的にはアセチレノール100(川研ファインケミカル製)、アセチレノール40(川研ファインケミカル製)、BC−20(日光ケミカルズ製)、L31(ADEKA製)等が挙げられる。界面活性剤の好ましい含有量としては、液体組成物全質量に対し0.1質量%以上2.0質量%以下である。
【0046】
<自己分散型顔料の製造方法>
本発明の自己分散型顔料の製造方法は特に限定されないが、顔料に直接結合するイオン性基がカルボキシル基またはスルホン酸基である場合、以下に示す方法を好適に用いることができる。カルボキシル基またはスルホン酸基が直接結合した顔料と、縮合剤と、後述するアミン化合物とを反応させる方法である。上記方法を用いることで分散安定性が高く、画像特性に優れた自己分散型顔料を高い収率で得ることができる。以下、メカニズムについてイオン性基がカルボキシル基である場合を例に挙げて説明するが、イオン性基がスルホン酸基であった場合も、アミド結合がスルホンアミド結合に変わることを除けば同様である。
【0047】
カルボキシル基が直接結合した顔料と縮合剤とアミン化合物とを反応させると、カルボキシル基とアミン化合物の有するアミノ基とが反応し、アミド結合を形成する。その結果、顔料とアミン化合物のアミノ基以外の部位とがアミド結合を介して結合した自己分散型顔料を得ることができる。例えば、アミン化合物としてメチルアミンを用いた場合には、顔料とメチル基とがアミド結合を介して結合した自己分散型顔料を得ることができる。
【0048】
上述したように、本発明においてはカルボキシル基がアミド結合を形成するサイトとなるため、イオン性基がカルボキシル基である場合、最終的に得られる自己分散型顔料に直接結合するカルボキシル基の量と顔料と直接結合するアミド結合の量との合計は、アミド結合を形成する工程の前の自己分散型顔料が有するカルボキシル基の量と等しい。従ってあらかじめアミド結合の形成によってなくなるカルボキシル基の量分だけ過剰にカルボキシル基が修飾された顔料を用いることで、カルボキシル基の量とアミド結合の量とを所望の量含有した自己分散型顔料を得ることができる。
【0049】
カルボキシル基が直接結合した顔料は、以下に示す市販の酸化顔料を用いることができる。具体的には、Aqua−Black001(東海カーボン)、Aqua−Black162(東海カーボン)、BONJET BLACK CW−1(オリエント化学工業)、BONJET BLACK CW−2(オリエント化学工業)、BONJET BLACK M−800(オリエント化学工業)等を用いることができる。また、表面処理を行っていない顔料にカルボキシル基を直接結合しても良い。顔料にカルボキシル基を直接結合する方法としては、次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を用いて顔料を酸化処理する方法が挙げられる。
【0050】
本発明において、アミド結合を形成する際には縮合剤を加えることが求められる。縮合剤を加えることで、アミド結合を高い収率で得ることができる。
【0051】
本発明に用いることのできる縮合剤としては特に限定されないが、具体的には下記に示す縮合剤を用いることができる。具体的には、無水酢酸、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニルホスホリルアジド、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド、1,1−カルボニルジイミダゾール、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1−(ジメチルカルボモイル)−4−(2−スルホエチル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド等を用いることができる。
【0052】
上述した縮合剤の中でも、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(以下、該縮合剤をDMT−MMともいう)を用いることが好ましい。DMT−MMを用いた場合、反応残渣が少なく、より高い反応収率を得ることができる。通常、アミド結合を形成する際に用いるカルボキシル基の脱水縮合反応は可逆反応であるため、脱水条件下でのアミド結合形成が好まれる。そのため、従来用いられてきたカルボジイミド系の縮合剤を用いる場合には、顔料を油中に分散させなければならなかった。本発明者等の検討により、油中でアミド結合を形成する場合収率が低く、また、反応後の残渣等の不要な成分を除去するのが困難であることがわかった。DMT−MMは水中且つ室温で反応を進行させることができるため、取り扱いが極めて容易である。また、DMT−MMを用いた際の副生成物は水溶性であるため容易に除去することができる。
【0053】
本発明の自己分散型顔料の製造方法に用いることのできるアミン化合物としては、ノニオン性分子鎖とアミノ基とを有する化合物であれば好適に用いることができる。具体的には、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ポリオキシアルキレンアミン(JEFFAMINE M−600(別名:XTJ−505、HUNTSMAN製)、JEFFAMINE M−1000(別名:XTJ−506、HUNTSMAN製)、JEFFAMINE M−2005(別名:XTJ−507、HUNTSMAN製)、JEFFAMINE M−2070(HUNTSMAN製)、JEFFAMINE XTJ−435(HUNTSMAN製)、JEFFAMINE XTJ−436(HUNTSMAN製))、メトキシPEGアミン(SUNBRIGHT MEPA、日油化学製)、ヒドロキシPEGアミン(SUNBRIGHT HO、日油化学製)、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、グリシン−tert−ブチル、メチルアミン、n−ブチルアミン、iso−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロペンチルアミン、メトキシポリエチレングリコールアミン等が挙げられる。中でもポリオキシアルキレンアミンJEFFAMINE XTJ−436(HUNTSMAN製)、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、シクロペンチルアミンはアミド結合を形成した際に、ノニオン性分子鎖として環状炭化水素を有する炭化水素を形成するため好ましい。また、ジグリコールアミン、ポリオキシアルキレンアミン(JEFFAMINE M−600(別名:XTJ−505、HUNTSMAN製)、JEFFAMINE M−1000(別名:XTJ−506、HUNTSMAN製)、JEFFAMINE M−2005(別名:XTJ−507、HUNTSMAN製)、JEFFAMINE M−2070(HUNTSMAN製)、JEFFAMINE XTJ−435(HUNTSMAN製))、メトキシPEGアミン(SUNBRIGHT MEPA、日油化学製)、ヒドロキシPEGアミン(SUNBRIGHT HO、日油化学製)は、アミド結合を形成した際に、ノニオン性分子鎖としてアルキルエーテルを形成するため好ましい。
【0054】
本発明においてはアミド結合を形成する工程を行った後に、自己分散型顔料及びインクに不要な成分である反応の副生成物や反応残渣を除去することが好ましい。具体的には電気泳動法、限外濾過法、遠心分離法、濾過法等を用いて上記不要な成分を除去することができる。
【0055】
〔インクジェット記録方法〕
本発明のインクセットを用いたインクジェット記録方法は、インクと液体組成物とが互いに接触するように、インクと液体組成物とを記録媒体に付与する方法である。上記の記録方法を用いることでインク中の自己分散型顔料の凝集性を高めることができるため、自己分散型顔料の定着性を高めることができ、インク同士が接触した際に発生するブリーディングを低減することができる。
【0056】
本発明ではインクを記録媒体に付与する際にインクジェット記録方法を用いるが、液体組成物を記録媒体に付与する際には、インクジェット記録方法以外の方法を用いても良い。具体的には、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法による塗布方法が挙げられる。塗布方法を用いると、インクが形成する画像がどのような形状であっても、インクと液体組成物とを接触させることができるため好ましい。
【0057】
また、インク、液体組成物のそれぞれを記録媒体に付与する順序としては特に限定されないが、液体組成物を先に記録媒体に付与することが好ましい。あらかじめ記録媒体に液体組成物を付与することで、インクの浸透速度の影響を低減した、効率的な凝集反応を起こすことができる。
【実施例】
【0058】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0059】
[分散液1]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム125gとを加え、105℃で24時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液1を得た。分散液1の顔料濃度は10%であった。
【0060】
[自己分散型顔料分散液1]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン1.52gと、DMT−MM0.47gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料1を含む自己分散型顔料分散液1を得た。自己分散型顔料分散液1中の顔料濃度は6%であった。
【0061】
自己分散型顔料1が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.35mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.43mmol/gであると算出した。
【0062】
[分散液2]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム80gとを加え、105℃で48時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液2を得た。分散液2の顔料濃度は10%であった。
【0063】
[自己分散型顔料分散液2]
分散液2を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン1.87gと、DMT−MM0.57gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料2を含む自己分散型顔料分散液2を得た。自己分散型顔料分散液2中の顔料濃度は6%であった。
【0064】
自己分散型顔料2が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ1.19mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.66mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.53mmol/gであると算出した。
【0065】
[分散液3]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム80gとを加え、105℃で72時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液2を得た。分散液3の顔料濃度は10%であった。
【0066】
[自己分散型顔料分散液3]
分散液3を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン1.45gと、DMT−MM0.44gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料3を含む自己分散型顔料分散液3を得た。自己分散型顔料分散液3中の顔料濃度は6%であった。
【0067】
自己分散型顔料3が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ1.61mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、1.20mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.41mmol/gであると算出した。
【0068】
[分散液4]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム50gとを加え、105℃で24時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液4を得た。分散液4中の顔料濃度は10%であった。
【0069】
[自己分散型顔料分散液4]
分散液4を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン0.64gと、DMT−MM0.19gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料4を含む自己分散型顔料分散液4を得た。自己分散型顔料分散液4中の顔料濃度は6%であった。
【0070】
自己分散型顔料4が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.38mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.20mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.18mmol/gであると算出した。
【0071】
[分散液5]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム12gとを加え、105℃で24時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液5を得た。分散液5中の顔料濃度は10%であった。
【0072】
[自己分散型顔料分散液5]
分散液5を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン0.39gと、DMT−MM0.12gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料5を含む自己分散型顔料分散液5を得た。自己分散型顔料分散液5中の顔料濃度は6%であった。
【0073】
自己分散型顔料5が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.20mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.09mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.11mmol/gであると算出した。
【0074】
[分散液6]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム10gとを加え、105℃で12時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液6を得た。分散液6中の顔料濃度は10%であった。
【0075】
[自己分散型顔料分散液6]
分散液6を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン0.28gと、DMT−MM0.09gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料6を含む自己分散型顔料分散液6を得た。自己分散型顔料分散液6中の顔料濃度は6%であった。
【0076】
自己分散型顔料6が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.15mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.07mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.08mmol/gであると算出した。
【0077】
[自己分散型顔料分散液7]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン2.16gと、DMT−MM0.66gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料7を含む自己分散型顔料分散液7を得た。自己分散型顔料分散液7中の顔料濃度は6%であった。
【0078】
自己分散型顔料7が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.17mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.61mmol/gであると算出した。
【0079】
[自己分散型顔料分散液8]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン2.37gと、DMT−MM0.72gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料8を含む自己分散型顔料分散液8を得た。自己分散型顔料分散液8中の顔料濃度は6%であった。
【0080】
自己分散型顔料8が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.11mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.67mmol/gであると算出した。
【0081】
[自己分散型顔料分散液9]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン2.51gと、DMT−MM0.77gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料9を含む自己分散型顔料分散液9を得た。自己分散型顔料分散液9中の顔料濃度は6%であった。
【0082】
自己分散型顔料9が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.07mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.71mmol/gであると算出した。
【0083】
[自己分散型顔料分散液10]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン2.65gと、DMT−MM0.81gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料10を含む自己分散型顔料分散液10を得た。自己分散型顔料分散液10中の顔料濃度は6%であった。
【0084】
自己分散型顔料10が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.03mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.75mmol/gであると算出した。
【0085】
[自己分散型顔料分散液11]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン0.53gと、DMT−MM0.16gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料11を含む自己分散型顔料分散液11を得た。自己分散型顔料分散液11中の顔料濃度は6%であった。
【0086】
自己分散型顔料11が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.63mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.15mmol/gであると算出した。
【0087】
[自己分散型顔料分散液12]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン0.32gと、DMT−MM0.10gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料12を含む自己分散型顔料分散液12を得た。自己分散型顔料分散液12中の顔料濃度は6%であった。
【0088】
自己分散型顔料12が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.69mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.09mmol/gであると算出した。
【0089】
[自己分散型顔料分散液13]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン141mgと、DMT−MM43mgとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料13を含む自己分散型顔料分散液13を得た。自己分散型顔料分散液13中の顔料濃度は6%であった。
【0090】
自己分散型顔料13が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.74mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.04mmol/gであると算出した。
【0091】
[自己分散型顔料分散液14]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジグリコールアミン35mgと、DMT−MM11mgとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料14を含む自己分散型顔料分散液14を得た。自己分散型顔料分散液14中の顔料濃度は6%であった。
【0092】
自己分散型顔料14が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.77mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.01mmol/gであると算出した。
【0093】
[自己分散型顔料分散液15]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジエタノールアミン1.41gと、DMT−MM0.43gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料15を含む自己分散型顔料分散液15を得た。自己分散型顔料分散液15中の顔料濃度は6%であった。
【0094】
自己分散型顔料15が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.38mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.40mmol/gであると算出した。
【0095】
[分散液16]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム100gとを加え、105℃で24時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液16を得た。分散液16の顔料濃度は10%であった。
【0096】
[自己分散型顔料分散液16]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にベンジルアミン1.05gと、DMT−MM0.31gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料16を含む自己分散型顔料分散液16を得た。自己分散型顔料分散液16中の顔料濃度は6%であった。
【0097】
自己分散型顔料16が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.34mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.29mmol/gであると算出した。
【0098】
[分散液17]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム100gとを加え、105℃で48時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液17を得た。分散液17中の顔料濃度は10%であった。
【0099】
[自己分散型顔料分散液17]
分散液17を30g分取した後、分取した分散液17中にベンジルアミン2.02gと、DMT−MM0.61gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料17を含む自己分散型顔料分散液17を得た。自己分散型顔料分散液17中の顔料濃度は6%であった。
【0100】
自己分散型顔料17が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ1.35mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.79mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.56mmol/gであると算出した。
【0101】
[分散液18]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム100gとを加え、105℃で72時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液18を得た。分散液18中の顔料濃度は10%であった。
【0102】
[自己分散型顔料18]
分散液3を30g分取した後、分取した分散液2中にベンジルアミン2.38gと、
DMT−MM0.71gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料18を含む自己分散型顔料分散液18を得た。自己分散型顔料分散液18中の顔料濃度は6%であった。
【0103】
自己分散型顔料18が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ1.71mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、1.05mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.66mmol/gであると算出した。
【0104】
[分散液19]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム50gとを加え、105℃で24時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液19を得た。分散液19中の顔料濃度は10%であった。
【0105】
[自己分散型顔料分散液19]
分散液19を30g分取した後、分取した分散液19中にベンジルアミン0.54gと、DMT−MM0.16gとを加え、室温で4時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料19を含む自己分散型顔料分散液19を得た。自己分散型顔料分散液19中の顔料濃度は6%であった。
【0106】
自己分散型顔料19が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.38mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.23mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.15mmol/gであると算出した。
【0107】
[分散液20]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム15gとを加え、105℃で24時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液20を得た。分散液20中の顔料濃度は10%であった。
【0108】
[自己分散型顔料分散液20]
分散液20を30g分取した後、分取した分散液20中にベンジルアミン0.43gと、DMT−MM0.13gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料20を含む自己分散型顔料分散液20を得た。自己分散型顔料分散液20中の顔料濃度は6%であった。
【0109】
自己分散型顔料20が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.24mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.12mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.12mmol/gであると算出した。
【0110】
[分散液21]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム10gとを加え、105℃で24時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行い、酸化された顔料を含む分散液21を得た。分散液21中の顔料濃度は10%であった。
【0111】
[自己分散型顔料分散液21]
分散液21を30g分取した後、分取した分散液21中にベンジルアミン0.36gと、DMT−MM0.11gとを加え、室温で24時間攪拌した。その後、限外濾過法による濾過精製を行った。精製後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料21を含む自己分散型顔料分散液21を得た。自己分散型顔料分散液21中の顔料濃度は6%であった。
【0112】
自己分散型顔料21が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.18mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.08mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.10mmol/gであると算出した。
【0113】
[自己分散型顔料分散液22]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にベンジルアミン1.77gと、DMT−MM0.53gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料22を含む自己分散型顔料分散液22を得た。自己分散型顔料分散液22中の顔料濃度は6%であった。
【0114】
自己分散型顔料22が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.14mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.49mmol/gであると算出した。
【0115】
[自己分散型顔料分散液23]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にベンジルアミン1.98gと、DMT−MM0.59gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料23を含む自己分散型顔料分散液23を得た。自己分散型顔料分散液23中の顔料濃度は6%であった。
【0116】
自己分散型顔料23が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.08mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.55mmol/gであると算出した。
【0117】
[自己分散型顔料分散液24]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にベンジルアミン2.09gと、DMT−MM0.63gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料24を含む自己分散型顔料分散液24を得た。自己分散型顔料分散液24中の顔料濃度は6%であった。
【0118】
自己分散型顔料24が有するイオン性基とノニオン性分子鎖の合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.05mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.58mmol/gであると算出した。
【0119】
[自己分散型顔料分散液25]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にベンジルアミン2.16gと、DMT−MM0.65gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料25を含む自己分散型顔料分散液25を得た。自己分散型顔料分散液25中の顔料濃度は6%であった。
【0120】
自己分散型顔料25が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.03mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.60mmol/gであると算出した。
【0121】
[自己分散型顔料分散液26]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にベンジルアミン0.47gと、DMT−MM0.14gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料26を含む自己分散型顔料分散液26を得た。自己分散型顔料分散液26中の顔料濃度は6%であった。
【0122】
自己分散型顔料26が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.50mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.13mmol/gであると算出した。
【0123】
[自己分散型顔料分散体27]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にベンジルアミン0.25gと、DMT−MM0.08gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料27を含む自己分散型顔料分散液27を得た。自己分散型顔料分散液27中の顔料濃度は6%であった。
【0124】
自己分散型顔料27が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量と合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.56mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.07mmol/gであると算出した。
【0125】
[自己分散型顔料分散体28]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にベンジルアミン108mgと、DMT−MM32mgとを加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料28を含む自己分散型顔料分散液28を得た。自己分散型顔料分散液28中の顔料濃度は6%であった。
【0126】
自己分散型顔料28が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.60mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.03mmol/gであると算出した。
【0127】
[自己分散型顔料分散液29]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にベンジルアミン36mgと、DMT−MM11mgとを加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料29を含む自己分散型顔料分散液29を得た。自己分散型顔料分散液29中の顔料濃度は6%であった。
【0128】
自己分散型顔料29が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.62mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.01mmol/gであると算出した。
【0129】
[自己分散型顔料分散液30]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にDMT−MMを0.16g加え、ベンジルアミンに代えてジベンジルアミンを1.00g加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料30を含む自己分散型顔料分散液30を得た。自己分散型顔料分散液30中の顔料濃度は6%であった。
【0130】
自己分散型顔料30が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.48mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.15mmol/gであると算出した。
【0131】
[自己分散型顔料分散液31]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にDMT−MMを0.31g加え、ベンジルアミンに代えてグリシンtert‐ブチル塩酸塩を1.64g加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料31を含む自己分散型顔料分散液31を得た。自己分散型顔料分散液31中の顔料濃度は6%であった。
【0132】
自己分散型顔料31が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.34mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.29mmol/gであると算出した。
【0133】
[自己分散型顔料分散液32]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にDMT−MMを0.34g加え、ベンジルアミンに代えてメチルアミンを0.32g加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料32を含む自己分散型顔料分散液32を得た。自己分散型顔料分散液32中の顔料濃度は6%であった。
【0134】
自己分散型顔料32が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.32mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.31mmol/gであると算出した。
【0135】
[自己分散型顔料分散液33]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にDMT−MMを0.31g加え、ベンジルアミンに代えてn−ブチルアミンを0.71g加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料33を含む自己分散型顔料分散液33を得た。自己分散型顔料分散液33中の顔料濃度は6%であった。
【0136】
自己分散型顔料33が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.34mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.29mmol/gであると算出した。
【0137】
[自己分散型顔料分散液34]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にDMT−MMを0.31g加え、ベンジルアミンに代えてiso−ブチルアミンを0.71g加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料34を含む自己分散型顔料分散液34を得た。自己分散型顔料分散液34中の顔料濃度は6%であった。
【0138】
自己分散型顔料34が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.34mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.29mmol/gであると算出した。
【0139】
[自己分散型顔料分散液35]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にDMT−MMを0.31g加え、ベンジルアミンに代えてtert−ブチルアミンを0.71g加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料35を含む自己分散型顔料分散液35を得た。自己分散型顔料分散液35中の顔料濃度は6%であった。
【0140】
自己分散型顔料35が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.34mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.29mmol/gであると算出した。
【0141】
[自己分散型顔料分散液36]
分散液16を30g分取した後、分取した分散液16中にDMT−MMを0.31g加え、ベンジルアミンに代えてシクロペンチルアミンを0.83g加えた以外は自己分散型顔料分散液16の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料36を含む自己分散型顔料分散液36を得た。自己分散型顔料分散液36中の顔料濃度は6%であった。
【0142】
自己分散型顔料36が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.34mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.29mmol/gであると算出した。
【0143】
[自己分散型顔料分散液37]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にDMT−MMを0.29g加え、ジグリコールアミンに代えてMwが600のポリオキシアルキレンアミン(JEFFAMINE M−600(別名:XTJ−505、HUNTSMAN製))を5.46g加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料37を含む自己分散型顔料分散液37を得た。自己分散型顔料分散液37中の顔料濃度は6%であった。
【0144】
自己分散型顔料37が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.36mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.42mmol/gであると算出した。
【0145】
[自己分散型顔料分散液38]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にDMT−MMを11mg加え、ジグリコールアミンに代えてMwが600のポリオキシアルキレンアミン(JEFFAMINE M−600(別名:XTJ−505、HUNTSMAN製))を202mg加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料38を含む自己分散型顔料分散液38を得た。自己分散型顔料分散液38中の顔料濃度は6%であった。
【0146】
自己分散型顔料38が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.77mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.01mmol/gであると算出した。
【0147】
[自己分散型顔料分散液39]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にDMT−MMを0.37g加え、ジグリコールアミンに代えてMwが2000のポリオキシアルキレンアミン(JEFFAMINE M−2005(別名:XTJ−507、HUNTSMAN製))を22.90g加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料39を含む自己分散型顔料分散液39を得た。自己分散型顔料分散液39中の顔料濃度は6%であった。
【0148】
自己分散型顔料39が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.34mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.44mmol/gであると算出した。
【0149】
[自己分散型顔料分散液40]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にDMT−MMを11mg加え、ジグリコールアミンに代えてMwが2000のポリオキシアルキレンアミン(JEFFAMINE M−2005(別名:XTJ−507、HUNTSMAN製))を673mg加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料40を含む自己分散型顔料分散液40を得た。自己分散型顔料分散液40中の顔料濃度は6%であった。
【0150】
自己分散型顔料40が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.77mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.01mmol/gであると算出した。
【0151】
[自己分散型顔料分散液41]
顔料(Printex80 Evonik製)10gにイオン交換水200gと次亜塩素酸ナトリウム50gとを加え、105℃で24時間撹拌した。その後撹拌を止め、冷却した後、遠心分離で固形分を取り出した。次に、取り出した固形分にイオン交換水を1000g加えて1時間撹拌した後、限外濾過法による濾過精製を行った。濾過精製後、過剰量の塩酸水溶液を加え、1時間攪拌した。1時間後、5,000rpmの遠心分離を30分間行い、沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱水乾固させた後に3g分取した。分取した3gの固形分にメチルエチルケトン27gと、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド0.12gとを加えた。1時間攪拌した後、ベンジルアミンを1.05g加え、60℃で48時間攪拌した。48時間後、溶媒を除去し、イオン交換水を1000g加えて限外濾過法による濾過精製を行い、アニオン性基が直接結合し、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料分散体41を含む自己分散型顔料分散液41を得た。自己分散型顔料分散液41中の顔料濃度は6%であった。
【0152】
自己分散型顔料41が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、0.34mmol/gであった。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.29mmol/gであると算出した。
【0153】
[自己分散型顔料分散液42]
分散体1をそのまま用いることで、顔料にCOOHが直接結合した自己分散型顔料42を含む自己分散型顔料分散液42を得た。自己分散型顔料42が有するイオン性基の量は0.63mmol/gであり、ノニオン性分子鎖の量は0mmol/gであった。
【0154】
[自己分散型顔料分散液43]
分散体2をそのまま用いることで、顔料にCOOHが直接結合した自己分散型顔料43を含む自己分散型顔料分散液43を得た。自己分散型顔料43が有するイオン性基の量は1.19mmol/gであり、ノニオン性分子鎖の量は0mmol/gであった。
【0155】
[自己分散型顔料分散液44]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にジエタノールアミン2.76gと、DMT−MM0.84gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料44を含む自己分散型顔料分散液44を得た。自己分散型顔料分散液44中の顔料濃度は6%であった。
【0156】
自己分散型顔料44が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.78mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、検出限界未満であった。従ってイオン性基の量は0mmol/gであるとした。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.78mmol/gであると算出した。
【0157】
[自己分散型顔料分散液45]
分散液1を30g分取した後、分取した分散液1中にベンジルアミン2.45gと、DMT−MM0.74gとを加えた以外は自己分散型顔料分散液1の製造方法と同様の操作を行った。上記操作後、ノニオン性分子鎖がアミド結合を介して結合した顔料である自己分散型顔料45を含む自己分散型顔料分散液45を得た。自己分散型顔料分散液45中の顔料濃度は6%であった。
【0158】
自己分散型顔料45が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計を求めたところ0.63mmol/gであった。また、イオン性基の量を求めたところ、検出限界未満であった。従ってイオン性基の量は0mmol/gであるとした。従って、ノニオン性分子鎖の量は0.63mmol/gであると算出した。
【0159】
<自己分散型顔料が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計>
自己分散型顔料分散液に塩酸水溶液を加えてpH1以下に調整した後、105℃で96時間攪拌した。攪拌後、5,000rpmの遠心分離装置にて30分間遠心分離を行い、沈降した自己分散型顔料を回収した。自己分散型顔料を脱水乾燥した後、秤量し、既知量の炭酸水素ナトリウムを加えて攪拌した。攪拌後、80,000rpmの遠心分離装置にて1時間遠心分離を行い、上澄み液を回収した。回収した上澄み液を秤量し、0.1Nの塩酸で中和滴定を行い、滴定量から自己分散型顔料が有するイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計値を算出した。
【0160】
<自己分散型顔料が有するイオン性基の量>
自己分散型顔料分散液に過剰量の塩酸水溶液を加え、室温で24時間攪拌した。攪拌後、5,000rpmの遠心分離装置にて30分間遠心分離を行い、沈降した自己分散型顔料を回収した。回収した自己分散型顔料を脱水乾燥した後、秤量し、既知量の炭酸水素ナトリウムを加えて攪拌した。攪拌後、80,000rpmの遠心分離装置にて1時間遠心分離を行い、上澄み液を回収した。回収した上澄み液を秤量し、0.1Nの塩酸で中和滴定を行い、滴定量から自己分散型顔料が有するイオン性基の量を算出した。
【0161】
<自己分散型顔料が有するノニオン性分子鎖の量>
上記した方法によって求めた自己分散型顔料中のイオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計から、上述した方法によって求めた自己分散型顔料中のイオン性基の量を差し引き、自己分散型顔料が有するノニオン性分子鎖の量を算出した。
【0162】
自己分散型顔料1〜45の組成及び物性をまとめたものを表1に示す。尚、イオン性基の量の単位、ノニオン性分子鎖の量の単位、イオン性基の量とノニオン性分子鎖の量との合計値の単位は、いずれもmmol/gである。
【0163】
【表1】

【0164】
[インクの作製]
次に、自己分散型顔料1〜45を用いて、インクジェット用水性インクを作製した。インクジェット用水性インクの組成は下記に示す通りであり、自己分散型顔料に、自己分散型顔料1を用いて作製したインクをインクジェット用水性インク1とし、順次自己分散型顔料とインクジェット用水性インクとの番号が対応したインクを作製した。
インクジェット用水性インク
自己分散型顔料 3質量%
グリセリン 5質量%
ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000) 5質量%
アセチレノール100 1質量%
イオン交換水 86質量%
【0165】
<インクジェット用水性インクの評価>
上述の操作によって得られたインクジェット用水性インク1〜45について、下記に示す方法で各種の物性の測定、及び評価を行った。各インクジェット用水性インクの評価においては、インクジェット用水性インク1〜41を実施例1〜41とし、インクジェット用水性インク42〜45を比較例1〜4とした。
【0166】
[分散安定性]
上述の操作によって得られたインクジェット用水性インク1〜45について、自己分散型顔料及び顔料の平均粒径を測定した。次いで、ガラス製のサンプル瓶中に各インクジェット用水性インクを入れ、60℃で1ヶ月間保存した。また、2週間保存した後の粒径を測定した。測定後、再び60℃で1ヶ月保存した後の粒径を測定した。得られた測定データを元に、保存前に対する2週間後及び1ヶ月後の平均粒径の変化率を求めた。尚、顔料の平均粒径の測定には、ELS−8000(大塚電子製)を用いた。各インクジェット用水性インクの平均粒径の変化率を、表2、表3に示す。尚、表2、表3中の「−」とは、平均粒径の変化が著しく、測定を行うことすらできなかったことを指す。また、本発明においては1ヶ月保存した時の平均粒径の変化率が50%以下であれば十分な分散安定性を有するとした。
【0167】
<インクの画像濃度、ブリーディングの評価>
各インクジェット用水性インクを搭載したキヤノン製のサーマルインクジェット記録装置PIXUS Pro−9500を用い、記録媒体としてオフィスプランナー(A4普通紙、キヤノン製)用いて画像形成を行った。得られた画像から画像濃度、ブリーディング等の評価を行った。
【0168】
[画像濃度]
普通紙上に上記した記録装置を用いて各インクを付与し、ベタ画像を形成した後、1時間放置した。放置後、マクベスRD915で画像濃度を測定した。各インクジェット用水性インクを用いた結果を、表2に示す。また、本発明のインクの評価においては画像濃度が0.90以上であれば十分な性能を有するとした。
【0169】
[ブリーディング]
ブラックインクとして各インクジェット用水性インクを用い、カラーインクとしてPGI−2Y(イエローインク、キヤノン製)を用いた。
【0170】
インクジェット用水性インクで印字するベタ部と、該ベタ部に隣接するようにカラーインクで印字するベタ部とが、同一のスキャンで形成されるように、インクジェット用水性インクとカラーインクとを、上記した記録装置を用いて記録媒体上に付与した。得られた印字物の各インクジェット用水性インクとカラーインクの間をカメラで2値化し、基準線からの滲みの最大長さ(最大滲み長さ)を測定した。各インクジェット用水性インクを用いた際の結果を表2に示す。また、本発明のインクの評価においては、最大滲み長さが35μm以下であれば十分な性能を有するとした。
【0171】
【表2】

【0172】
<インクセットの評価>
[インクセットの作製]
上述した操作で得られたインクジェット用水性インク1〜45と、下記に示す組成の液体組成物1とを用いて、インクセットを作成した。作製した各インクセットについて下記の評価を行った。また、各インクセットの評価においては、インクジェット用水性インク1〜41を実施例42〜82とし、インクジェット用水性インク42〜45を比較例5〜8とした。
液体組成物1
硝酸マグネシウム6水和物 10質量%
1,2,6−ヘキサントリオール 30質量%
トリメチロールプロパン 5質量%
アセチレノール100 1質量%
イオン交換水 54質量%
【0173】
<インクセットの画像濃度、ブリーディングの評価>
各インクジェット用水性インクを搭載したキヤノン製のサーマルインクジェット記録装置PIXUS Pro−9500を用いて画像形成を行った。得られた画像から画像濃度、ブリーディング等の評価を行った。尚、記録媒体にはあらかじめバーコーターにて液体組成物を2.4g/m付与したオフィスプランナー(A4普通紙、キヤノン製)を用いた。
【0174】
[画像濃度]
液体組成物が付与された記録媒体上に上記した記録装置を用いて各インクを付与し、ベタ画像を形成した後、1時間放置した。放置後、マクベスRD915で画像濃度を測定した。各インクジェット用水性インクを用いた結果を、表3に示す。また、本発明のインクセットの評価においては画像濃度が1.10以上であれば十分な性能を有するとした。
【0175】
[ブリーディング]
ブラックインクとして各インクジェット用水性インクを用い、カラーインクとしてPGI−2Y(イエローインク、キヤノン製)を用いた。
【0176】
インクジェット用水性インクで印字するベタ部と、該ベタ部に隣接するようにカラーインクで印字するベタ部とが、同一のスキャンで形成されるように、インクジェット用水性インクとカラーインクとを、上記した記録装置を用いて液体組成物が付与された記録媒体上に付与した。得られた印字物の各インクジェット用水性インクとカラーインクの間をカメラで2値化し、基準線からの滲みの最大長さ(最大滲み長さ)を測定した。各インクジェット用水性インクを用いた際の結果を表3に示す。また、本発明のインクセットの評価においては、最大滲み長さが20μm以下であれば十分な性能を有するとした。
【0177】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、該顔料に直接結合したイオン性基と、該顔料にアミド結合を介して結合したノニオン性分子鎖とを少なくとも有することを特徴とする自己分散型顔料。
【請求項2】
前記顔料に対するノニオン性分子鎖の量が0.010mmol/g以上であり、前記顔料に対するノニオン性分子鎖の量と前記顔料に対するイオン性基の量との合計が0.20mmol/g以上であり、前記合計に対する前記イオン性基の割合が5.0%以上である請求項1に記載の自己分散型顔料。
【請求項3】
前記イオン性基がアニオン性基である請求項1に記載の自己分散型顔料。
【請求項4】
前記イオン性基が−COO(M)である請求項1〜3のいずれかに記載の自己分散型顔料(Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す)。
【請求項5】
前記ノニオン性分子鎖の分子鎖が炭化水素である請求項1〜4のいずれかに記載の自己分散型顔料。
【請求項6】
前記炭化水素のうち少なくとも1つの炭素原子が4級炭素原子である請求項5に記載の自己分散型顔料。
【請求項7】
前記炭化水素が環状炭化水素を有する請求項5または6に記載の自己分散型顔料。
【請求項8】
前記ノニオン性分子鎖の分子鎖がアルキルエーテルである請求項1〜4のいずれかに記載の自己分散型顔料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の自己分散型顔料と水性媒体とを少なくとも含むことを特徴とするインクジェット用水性インク。
【請求項10】
請求項9に記載のインクジェット用水性インクと、自己分散型顔料を凝集する成分を含む液体組成物とを少なくとも有することを特徴とするインクセット。
【請求項11】
前記イオン性基がアニオン性基であり、前記凝集する成分が金属塩、pH緩衝剤、カチオン性ポリマーのいずれかである請求項10に記載のインクセット。
【請求項12】
カルボキシル基またはスルホン酸基が直接結合した顔料と縮合剤とアミン化合物とを反応させることを特徴とする自己分散型顔料の製造方法。
【請求項13】
前記カルボキシル基またはスルホン酸基が直接結合した顔料と縮合剤とを反応させた後に、アミンと反応させる請求項12に記載の自己分散型顔料の製造方法。
【請求項14】
酸化剤を用いてカルボキシル基が直接結合した顔料を得る請求項12または13に記載の自己分散型顔料の製造方法。
【請求項15】
前記縮合剤が4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドである請求項12〜14のいずれかに記載の自己分散型顔料の製造方法。
【請求項16】
請求項10または11に記載のインクセットを用い、前記インクジェット用水性インクと前記液体組成物とが互いに接触するように記録媒体に付与することを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2010−270312(P2010−270312A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95269(P2010−95269)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】