説明

自己剥離性フッ化炭素マトリックス外層を含む定着器部材コーティング

【課題】高性能定着用途に使用される低オイル又はオイルレス機械のための、新規なトップコート材料を提供する。
【解決手段】基材と、その上に、表面を有する外層ポリマーマトリックスとを含む自己剥離性定着器部材であって、外層ポリマーマトリックスがフルオロポリマー材料及びフッ化炭素鎖を含み、フッ化炭素鎖がフルオロポリマー材料に結合している、定着器部材。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
開示される実施態様は、一般に、静電写真式装置に有用な定着器部材に関する。実施態様において、定着器部材の外層はポリマーマトリックスを含み、このマトリックスは、フルオロポリマーと、このフルオロポリマーを下層として結合したフッ化炭素鎖とを有する。実施態様において、このフルオロポリマー層は、シロキサン硬化系により硬化されるフルオロエラストマーを含む。また、実施態様においては、ポリマーマトリックス層は、シロキサン終端されたフッ化炭素鎖を含み、このシロキサン終端されたフッ化炭素鎖は、シロキサン官能基を介してフルオロエラストマー又はフルオロポリマー層内に結合している。この外側層は、ローラ又はベルト用途に使用できる。この外層を製造するためのプロセスもまた本明細書に記載される。実施態様では、この外層は自己剥離性であり、定着オイルの必要性を低減し又は不要にする。
【0002】
典型的な静電写真式印刷装置において、コピーされるべき元の光像は感光性部材上に静電潜像の形態で記録され、この潜像が続いて、一般にトナーと呼ばれる検電性熱可塑性樹脂粒子の適用により可視化される。このとき、可視化されたトナー像は不安定な粉末形態であり、簡単に乱れるか又は壊れてしまう。トナー像は通常、感光性部材自体であってもよい支持体又は普通紙のような支持体シート上に固定又は定着される。
【0003】
トナー像を支持体部材上に固定するために熱エネルギーを使用することは周知である。検電性トナー材料を熱により永続的に支持体表面に定着させるためには、トナー材料の温度を、そのトナー材料の構成成分が融着し、粘着性になる温度にまで上昇させる必要がある。この加熱により、トナーが程度流動して支持体部材の繊維又は孔の中にある程度流れ込むようになる。その後、トナー材料が冷めるにつれて、トナー材料の固化により、トナー材料は支持体と堅く結合するようになる。
【0004】
典型的には、熱可塑性樹脂粒子は、トナーに使用される特定の樹脂の軟化範囲に応じて約90℃から約160℃又はそれ以上の温度に加熱することによって基材に定着される。しかし、基材の温度を約200℃より実質的に高い温度に上げるのは望ましくないが、それは、基材は特に紙の場合には、そのような高温で変色する傾向があるためである。
【0005】
先行技術には検電性トナー像を熱定着するためのいくつかの手法が記載されている。これらの方法は、圧力接触状態を維持したロール対、ロールと圧力接触したベルト部材などの種々の手段によって熱と圧力とを実質的に同時に適用することを含む。熱は、ロール、プレート部材又はベルト部材の1つ又は両方を加熱することによって適用することができる。トナー粒子の定着は、熱、圧力及び接触時間が適切に組み合わされた場合に生じる。トナー粒子の定着をもたらすためにこれらのパラメータのバランスをとることは当該技術分野において周知であり、それらは特定の機械又はプロセス条件に合うように調節することができる。
【0006】
熱を適用してトナー粒子を支持体へ熱定着させる定着システムの動作中、トナー像及び支持体の両方が、ロール対間、又はプレート若しくはベルト部材間に形成されるニップに通される。ニップ内で同時に行われる熱伝導及び圧力適用が、支持体上へのトナー像の定着に作用する。定着プロセスでは、通常動作中に支持体から定着器部材へのトナー粒子のオフセットが起こらないことが重要である。定着器部材上にオフセットしたトナー粒子は、引き続き機械の他の部分に、又は次のコピーサイクルにおいて支持体上に転写されることがあるので、バックグラウンドを増大させ、又はそこにコピーされる題材に干渉する。いわゆる「ホットオフセット」は、トナー粒子が液状化する点までトナー温度が上昇し、定着動作中に溶融トナーの分裂が起こり、一部が定着器部材上に残ったときに生じる。ホットオフセット温度又はホットオフセット温度に対する劣化は、定着ロールの剥離特性の指標であり、従って必要な剥離を与えるように表面エネルギーが低い定着面を提供することが望ましい。定着ロールの良好な剥離特性を保証し、維持するために、定着動作中に定着ロールに剥離剤を塗布するのが通例になっている。通常、これらの材料は、例えばシリコーンオイルの薄膜として塗布され、トナーのオフセットを防止する。
【0007】
最も初期の優れた定着システムの1つではシリコーンエラストマー定着面を使用することを必要とし、そのようなものとしてシリコーンエラストマー・ドナーロールから定着ロールに送給することができるシリコーンオイル剥離剤を伴ったロールがある。このようなシステムにおいて使用されるシリコーンエラストマー及びシリコーンオイル剥離剤は、多数の特許に記載されている。
【0008】
これらのシステムは、表面エネルギーが非常に低い定着面を提供して優れた剥離特性を与え、トナーが定着動作中に定着ロールから完全に剥離することを確実にするという点では非常に成功を収めているが、定着環境において時間の経過とともに物理的特性が顕著に悪化する。特に、シリコーンオイル剥離剤は、シリコーンエラストマー定着器部材の表面に浸透する傾向があるので、エラストマー本体の膨潤が生じ、基材からエラストマーが剥がれたり、エラストマーが軟化して、その靭性が減少し、ちぎれたり崩れたりして、機械を汚し、剥離剤の均一な送給がなされないといった重大な機械的障害が生じることになる。さらに、特に高温での定着ロールの酸化架橋の結果として、シリコーンエラストマーの物理的特性のさらなる悪化が生じる。
【0009】
定着及び固定ロール又はベルトは、好適な基材に1つ又はそれ以上の層を適用することによって調製することができる。例えば円筒状の定着及び固定ロールは、アルミニウムシリンダにエラストマー又はフルオロエラストマーを適用することによって調製することができる。コーティングされたロールは、エラストマーを硬化するために加熱される。
【0010】
定着トップコートは、典型的には、低表面エネルギーのフルオロポリマー、例えばパーフルオロアルコキシ若しくはその他のTEFLON(登録商標)様フルオロポリマー、又はフルオロエラストマー、例えばDuPont製の商標名VITON(登録商標)エラストマーから製造される。これらの材料は、耐熱性及び耐摩耗性、順応性及び定着ニップにおける改善された剥離性を提供することが期待される。DuPont製のVITON(登録商標)材料のような既存の定着材料に関する現在の問題は、トナー及びその他の混入物質の剥離のためにPDMS(ポリジメチルシロキサン)系定着オイルを必要とすることである。定着オイルは、結合、積層又は表面接着を必要とするその他のプロセスのような印刷材料の最終用途において問題を生じる。高性能定着用途に使用される低オイル又はオイルレス機械(剥離剤又は定着オイルを必要としない機械)のための、新規なトップコート材料が必要とされている。
【0011】
フルオロポリマー材料及び化学的に付加された半フッ素化又はフッ素化炭素鎖を含むトップコートポリマーマトリックスは、定着面に高いフッ素化度を付与し、実施態様においては、少ない量の定着オイルの使用で、又は定着オイルの必要なしに、剥離を容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,945,223号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施態様は、基材と、その上に、表面を有する外層ポリマーマトリックスとを含む自己剥離性定着器部材を含み、その外層ポリマーマトリックスは、フルオロポリマー材料及びフッ化炭素鎖を含み、フッ化炭素鎖はフルオロポリマー材料に結合している。
【0014】
実施態様はまた、基材と、その上に、互いに結合した下記構造を有するフルオロポリマー及びフッ化炭素鎖を含む、外層ポリマーマトリックスとを含む自己剥離性定着器部材を含み、
【0015】
【化1】

式中、Xは、フッ素及び水素から成る群から選択され、R’は、約1から約20個の炭素を有する脂肪族鎖であり、nは約1から約10の数である。
【0016】
さらに、実施態様は、記録媒体上に画像を形成するためのオイルレス画像形成装置を含み、この装置は、その上に静電潜像を受容するための電荷保持面と、電荷保持面にトナーを適用し、静電潜像を現像して電荷保持面に現像画像を形成するための現像構成部品と、現像画像を電荷保持面からコピー基材に転写するための転写構成部品と、現像画像をコピー基材に定着するための自己剥離性定着器部材を含み、自己剥離性定着器部材は、基材と、その上に、表面を有する外層ポリマーマトリックスとを含み、この外層ポリマーマトリックスは、フルオロポリマー材料とフッ化炭素鎖とを含み、フッ化炭素鎖はフルオロポリマー材料に結合している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一般的な静電写真式装置の図である。
【図2】本明細書に開示される1つの実施態様による定着アセンブリの断面図である。
【図3】3層構成を有する定着ローラの断面図である。
【図4】フルオロポリマー材料30を含むポリマーマトリックス外層2の側面図であり、フッ化炭素鎖29はポリマーマトリックス外層2の中で配向している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書の実施態様は、一部又は全てがフルオロポリマー材料に化学的に結合しているフッ化炭素鎖を含むフルオロポリマー材料を含有するフッ素化ポリマーマトリックス層を含む、定着器部材コーティングについて記載する。フッ化炭素鎖は、半フッ素化又は完全フッ素化されている。外層ポリマーマトリックス内のフッ化炭素鎖は、反応性官能基によってフルオロポリマー材料に結合している。実施態様において、フッ化炭素鎖は、シロキサン終端されており、さらなるシロキサン官能基との反応により、フルオロポリマーマトリックス内で反応する。実施態様において、この組成物は、高いフッ素化度を定着面に付与し、それによって最少量の定着オイルで又は定着オイルを使用することなく剥離を促進する。これにより、印刷された基材上への定着オイルの転写が低減又は排除される。印刷基材に転写された定着オイルは、積層又は製本といった表面に対する接着を必要とする後続の用途に関して望ましくない問題を生じさせる。本明細書に記載される外層を有する定着器部材を含む機械の製造コストに関しても、オイルレス機械の場合には定着オイル溜め及び構成部品を必要としないので削減される。
【0019】
図1を参照すると、典型的な静電写真式複写装置において、コピーされるべき元の光像が感光性部材上に静電潜像の形態で記録され、この潜像が続いて、一般にトナーと呼ばれる検電性熱可塑性樹脂粒子の適用により、可視化される。具体的には、感光体10の表面が、電源11から電圧が供給された帯電器12により帯電される。感光体は次に、レーザ及び発光ダイオードのような光学系又は画像入力装置13からの光により画像に合わせて露光されて、その上に静電潜像を形成する。一般に、静電潜像は、現像ステーション14からの現像剤混合物を接触させることにより現像される。現像は、磁気ブラシ、パウダークラウド、又はその他の既知の現像プロセスを用いることにより行うことができる。乾式現像剤混合物は、通常、摩擦電気的に付着しているトナー粒子を有するキャリア粒を含む。トナー粒子はキャリア粒から潜像に引きつけられて、その上にトナー粉末画像を形成する。或いは、トナー粒子が中に分散した液体キャリアを含む液体現像剤材料を用いることもできる。液体現像剤材料は静電潜像と接触するように前方に送られ、潜像の上にトナー粒子を画像の形状で堆積させる。
【0020】
トナー粒子は、画像形状で光導電性表面上に堆積された後、圧力転写又は静電転写とすることができる転写手段15によりコピーシート16に転写される。或いは、現像された画像を中間転写部材に転写して、その後にコピーシートに転写することができる。
【0021】
現像された画像の転写が完了した後、コピーシート16は、図1においては定着ロール及び圧力ロールとして示される定着ステーション19に進み、ここで現像された画像は、コピーシート16を定着器部材5と圧力部材6との間に通すことによりコピーシート16に定着されて、これにより永続的な画像が形成されるようになる。感光体10は、転写に続いて、クリーニングステーション17に進み、ここで感光体10上に残されたトナーが、ブレード(図1に示されるような)、ブラシ又はその他のクリーニング装置を用いることによりそこから清掃される。
【0022】
図2において、定着ローラ5は、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、鋼、ニッケル、銅などといったいずれかの好適な金属から製造された中空シリンダ又はコアとすることができ、その中空部分内に配設され、シリンダと同じ長さに延びる好適な加熱要素8を有する。
【0023】
バックアップ又は圧力ロール6は、定着ロール5と協働してニップ又は接触弧(contact arc)9を形成し、コピー紙又はその他の基材16はそこを通過し、その上のトナー像21が定着ロール5の表面2と接触する。図2に示されるように、バックアップロール6は、表面又は層18を有する剛性の鋼コア7を有する。
【0024】
定着構成部品は、少なくとも3つの異なる構成で構成することができる。1つの実施態様において、定着構成部品は、図2に示されるように、2層構成を有する。加熱要素8を有する定着器部材5は、基材4を含む。基材4の上に外層2が配置される。
【0025】
図3は、3層構成を示し、ここで定着ローラ5は内部に加熱部材8を有し、その上に基材4を有し、基材4上に配置された中間層26及び中間層26の上に配置された外層2を有する。図3は、任意の充填剤3及び28を示し、これらは同じであってもよく又は異なっていてもよく、任意に中間層26に分散されてもよく、及び/又は任意に外層2に分散されてもよい。各層内には充填剤が全く存在しなくてもよく、1つ又は1つより多い種類の充填剤が提供されてもよい。
【0026】
図4は、分散し、フルオロポリマー材料30に化学的に結合したフッ化炭素鎖29を中に有するトップコート又は外層ポリマーマトリックス2を上に有する中間層4の略側面図である。外層定着面1は、a)定着外層コートの上部において定着面1に向かって配向する、b)定着面1の上部の外側に配向する、及びc)フルオロポリマー材料30内で配向する、フッ化炭素鎖29を含む。
【0027】
実施態様において、定着器部材は、自己剥離性又は部分的に自己剥離性であり、剥離剤をほとんど又は全く必要としない。剥離剤が必要でない場合には、剥離剤溜め及び剥離剤ドナー部材も用いられることはない。フッ化炭素鎖は、フルオロポリマー材料に化学的に結合しており、ポリマーマトリックス層の表面に向かって配向するので、定着層の外側は主としてフッ素化炭素鎖で構成される。フッ素化炭素鎖は、定着面に高いフッ素化度を付与し、定着オイル又は剥離剤を必要とすることなく剥離性を促進する。定着剥離オイルを使用することなく、表面が、定着面と接触しているトナー、トナー添加剤及びその他の混入物質の剥離を促進する場合には、トップコートはそれ自体として「自己剥離性」である。定着剥離オイルは、通常、ポリジメチルシロキサン又はポリジメチルシロキサン誘導体を含む。実施態様はまた、部分的に自己剥離性であり、定着面において必要とされる性能仕様に適合するように最少量の定着オイルを必要とする定着器部材を含む。実施態様において、フッ化炭素鎖の反応性官能基はまた、互いの結合により自己架橋する。
【0028】
外側剥離層を形成するフッ素化炭素鎖は、完全フッ素化又は半フッ素化されることができる。完全フッ素化鎖は、1つ又はそれ以上の付加された反応性官能基を除いて全体がフッ素化された炭素鎖である。フッ素化炭素鎖は、1つ又はそれ以上の反応性官能基を介してフルオロポリマー材料のポリマー鎖と直接結合するか、又は反応性末端官能基とリンカー基との反応により間接的に結合する。反応性官能基は、実施態様において、シロキシ官能基とすることができ、これはフルオロエラストマー材料内に架橋された対応するシロキシ官能基に結合する。フッ化炭素鎖の表面エネルギーが低いことは、高度にフッ素化された面を形成する外側定着層面をもたらす。定着面における高いフッ素化度は、自己剥離性のために望ましく、それは、高いフッ素化度を有する(F/C比は2に近い)TEFLON(登録商標)(PFA)又はその他のTEFLON(登録商標)様フルオロポリマーのような材料を含有するフルオロポリマー外層において観察される。説明される新規な材料系は、定着のために望ましい機械的特性を与える商品名VITON(登録商標)として販売されているもののようなフルオロエラストマーを組み入れることを含み、外層としてTEFLON(登録商標)(PFA)のような既知のフルオロポリマーを用いた場合の処理及び堅牢性に関する問題を解消する。
【0029】
実施態様において、フッ化炭素鎖は、存在する反応性官能基を除いて、鎖全体に沿ってフッ素化されるか、又は鎖に沿って部分的にフッ素化される。したがって、フッ化炭素鎖は、完全フッ素化(鎖全体に沿ってフッ素化)されているか、又は半フッ素化(鎖の一部に沿ってフッ素化される)されているかのいずれかである。フッ化炭素鎖は、フルオロエラストマーコーティングと直接反応する官能基、又は架橋剤のようなフルオロエラストマー材料に連結するセグメントを介して間接的に反応する官能基で終端される。フッ化炭素鎖に付加される反応性官能基の例としては、シロキシ、アミノ、ヒドロキシル、フェニルヒドロキシ、アルコキシ又は酸性基が挙げられる。この場合、こうした反応性官能基により形成される連結官能基は、シロキサン(−Si−O−Si−)、アミン(−NH−)、エーテル(C−O−C)、又はエステル(−COO−)を含み、より具体的には、反応性官能基は
【0030】
【化2】

【0031】
から成る群から選択され、式中、R及びR’は、脂肪族鎖であり、同一又は異なり、約1から約20個の炭素、又は約1から約6個の炭素を有する。実施態様において、R及びR’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル又はイソブチルから成る群から選択される。
【0032】
実施態様において、外層は、フルオロポリマーに結合した反応性フッ化炭素鎖を含むポリマーマトリックスを含む。フッ化炭素とフルオロポリマーとの間の結合は、下記一般式Iによって説明することができ、
A−(C)r−Q−B (I)
式中、Aはフルオロポリマーであり、Cは架橋剤であり、QはBに付加された反応性官能基であり、Bはフッ化炭素鎖を含み、rは0又は1である。
【0033】
完全フッ素化されたフッ化炭素鎖Bの例には、反応性官能基Qに付加されたいずれかの脂肪族又は芳香族フッ化炭素が含まれ、例としては、下記式II又は式IIIを有するフッ化炭素鎖を含み、
CF3(CF2n−Q (II)
【化3】

【0034】
式中、nはフッ素化脂肪族繰り返し単位の数を表し、約0若しくは1から約40まで、又は約0若しくは1から約20まで、又は約0若しくは1から約10までの数であり、mは、フッ素化芳香族繰り返し単位の数を表し、約0若しくは1から約20まで、又は約0若しくは1から約10まで、或いは約0又は1から約5までの数であり、Qは反応性官能基を表す。
【0035】
半フッ素化フッ化炭素鎖Bの例には、反応性官能基Qに付加された部分的にフッ素化された脂肪族又は芳香族炭素が含まれ、例としては下記式IV又は式Vを有する半フッ素化鎖を含み
CF3(CF2n−(CH2pQ (IV)
【0036】
【化4】

(V)
【0037】
式中、nはフッ素化脂肪族繰り返し単位の数を表し、約0若しくは1から約40まで、又は約0若しくは1から約20まで、又は約0若しくは1から約10までの数であり、mは、フッ素化芳香族繰り返し単位の数を表し、約0若しくは1から約20まで、又は約0若しくは1から約10まで、又は約0若しくは1から約5までの数であり、pは、炭化水素繰り返し単位の数を表し、約1から約10まで、又は約2から約5までの数であり、Qは反応性官能基を表す。
【0038】
脂肪族の完全フッ素化又は半フッ素化フッ化炭素鎖の例としては、二重結合又は三重結合のような不飽和結合を含むもの、又は鎖のフッ素化部分若しくは非フッ素化部分に沿って分枝鎖を含むものが挙げられる。
【0039】
実施態様において、フッ化炭素鎖は、上記式Iの反応性官能基Qを有する。実施態様において、フッ化炭素鎖は、フッ化炭素含有セグメント及び反応性官能基を含み、そこで、フッ化炭素含有セグメントは、1つ又はそれ以上の反応性官能基に付加する。好適な反応性官能基の例には、アミノ官能基及びシロキシ官能基が含まれる。反応性官能基の具体例としては、下記式VI、VII及び式VIIIを有するものが挙げられ

2N−CH2−CH2− (VI)
【0040】
【化5】

(VII)

(VIII)
【0041】
式中、R及びR’は脂肪族鎖であり、同一又は異なり、約1から約20個の炭素を有し、又は約1から約6個の炭素を有する。実施態様において、R及びR’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、又はイソブチルから成る群から選択される。
実施態様において、フッ化炭素鎖は半フッ素化され、下記式IXにあるように反応性シロキシ官能基を有し、
【0042】
【化6】

(IX)
【0043】
式中、nは、約0若しくは1から約40まで、又は約0若しくは1から約20まで、又は約0若しくは1から約10までの数であり、Rは、約1から約20個の炭素、又は約1から約6個の炭素を有する脂肪族鎖である。実施態様において、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、又はイソブチルから成る群から選択される。
【0044】
実施態様において、上記式Iにおけるフッ化炭素鎖Bは、反応性官能基Qを介して直接ポリマーマトリックス内のフッ化炭素鎖と結合する。フルオロポリマー又はフルオロエラストマーと直接結合する反応性官能基Qの例は、式VIにおけるようなアミノ官能基である。
【0045】
実施態様において、上記式Iにおけるフッ化炭素鎖Bは、官能基Qと架橋剤Cとの反応により、ポリマーマトリックス内のフルオロポリマー鎖に結合する。好適な架橋剤Cは、フルオロポリマー鎖とフッ化炭素鎖に付加された官能性末端基Qとの両方に結合することができる二官能性架橋剤である。好適な架橋剤の例としては、シロキサン架橋剤、例えばビスフェノールA(BPA)シロキサン架橋剤、及びアミノシロキサン架橋剤、例えばAO700(Gelest製のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン架橋剤)が挙げられる。BPAシロキサン架橋剤の例としては、下記式Xを有するものが挙げられ、アミノシロキサン架橋剤の例としては、下記式XIを有するものが挙げられ、
【0046】
【化7】

(X)

(XI)
【0047】
式中、Xは水素又はフッ素であり、R及びR’は脂肪族鎖であり、同一又は異なり、約1から約20個の炭素、又は約1から約6個の炭素を有し、nは、約1から約10まで、又は約1から約5まで、又は約3から約4までの数である。実施態様において、R及びR’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、又はイソブチルから成る群から選択される。
【0048】
シロキサン含有架橋剤は、フルオロポリマーと反応するビスフェノール−A又はアミンのような官能基を介してフルオロポリマー層材料内にグラフトされることができる。シロキシ官能基で修飾されたフッ化炭素鎖は、縮合によってシロキサン含有架橋剤と結合してシロキサン−シロキサン(Si−O−Si)結合を生成することができ、フッ化炭素鎖をフルオロポリマーマトリックス材料に化学的に結合させることができる。ポリマーマトリックス内で、シロキサン−シロキサン結合は、フルオロポリマー鎖間、フルオロポリマーとフッ化炭素鎖との間、及び任意にフッ化炭素鎖間に形成される。
【0049】
実施態様において、フルオロポリマーとフッ化炭素鎖との架橋及び硬化は、同時に行うこともでき、又は段階的に行うこともできる。BPA−シロキサン架橋剤をフルオロポリマー層に導入し、シロキシフッ化炭素鎖を付加させる提案例を以下に図示する。シロキシフッ化炭素鎖と組合せて、堆積させて複合層を形成する前に、BPA−シロキサンをフルオロポリマー(例えばフルオロエラストマー)鎖にグラフトする。その後シロキサン−シロキサン結合が、縮合、架橋、及び硬化によって形成され、その結果として、硬化した複合コーティングが得られる。
シロキサン官能化フルオロポリマー
【0050】
【化8】

シロキサン結合を介してフルオロポリマーと結合するフルオロアルキル鎖
【0051】
【化9】

【0052】
上記の式中、Xはフッ素又は水素であり、R及びR’は脂肪族鎖であり、同一でも又は異なっていてもよく、約1から約20個の炭素、又は約1から約6個の炭素を有する。実施態様において、R及びR’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、又はイソブチルから成る群から選択され、nは約1から約10まで、又は約1から約5まで、又は約3から約4までの数である。
【0053】
好適なフッ素化ポリマー層材料(式IにおけるA)の例としては、1)フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(VITON(登録商標)Aとして商業的に既知)又はフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンのうち2つのコポリマー、2)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、及びテトラフルオロエチレンのターポリマー(VITON(登録商標)Bとして商業的に既知)、及び3)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、及びテトラフルオロエチレン、及び架橋点(cure site)モノマーのテトラポリマー(VITON(登録商標)GH及びVITON(登録商標)GFとして商業的に既知)のような、フルオロポリマー及びフルオロエラストマーが挙げられる。市販のフルオロエラストマーの例としては、VITON(登録商標)A、VITON(登録商標)B、VITON(登録商標)E、VITON(登録商標)E60C、VITON(登録商標)E430、VITON(登録商標)910、VITON(登録商標)GH、VITON(登録商標)GF、及びVITON(登録商標)ETPなどの種々の名称で販売されているものが挙げられる。VITON(登録商標)の名称は、E.I. DuPont de Nemours,Inc.の商標である。架橋点モノマーは、4−ブロモパーフルオロブテン−1,1,1−ジヒドロ−4−ブロモパーフルオロブテン−1、3−ブロモパーフルオロプロペン−1,1,1−ジヒドロ−3−ブロモパーフルオロプロペン−1、又はその他の好適な既知の架橋点モノマーのいずれかとすることができる。列挙したものは、DuPontから市販されている。フルオロエラストマーVITON GH(登録商標)及びVITON GF(登録商標)は、相対的にフッ化ビニリデンの量が少ない。VITON GF(登録商標)及びVITON GH(登録商標)は、約35重量%のフッ化ビニリデン、約34重量%のヘキサフルオロプロピレン、及び約29重量%のテトラフルオロエチレンと、約2重量%の架橋点モノマーとを有する。
【0054】
他の市販のフルオロポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)、及びFLUOREL LVS 76(登録商標)が挙げられ、FLUOREL(登録商標)は、3M Comopanyの商標である。さらなる市販材料としては、両方とも3M Companyから入手可能な、ポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)であるAFLAS(商標)及びポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンフッ化ビニリデン)であるFLUOREL II(登録商標)(LII900)、並びに、Montedison Specialty Chemical Companyから入手可能な、FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、及びTN505(登録商標)として識別されるTecnoflonが挙げられる。
【0055】
他のフルオロポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン樹脂、パーフルオロアルコキシ(PFA)、及びその他のTEFLON(登録商標)様材料及びそれらのポリマーのような、フルオロプラスチック又はフルオロポリマーが挙げられる。
【0056】
外層溶液におけるフルオロエラストマーの溶液の量は、全固形物に対する重量パーセントで、全固形物の約10から約25重量%、又は約16から約22重量%である。本明細書で使用される全固形物には、ポリマー、脱フッ化水素剤(存在する場合)、及び任意に補助剤、添加剤、及び充填剤が含まれる。外層を形成するための溶液中のフッ化炭素鎖の量は、約3pphから約50pph(溶液中に存在するフルオロポリマーの重量と比較して百部あたりの部)又は約10pphから約30pphである。
本明細書の定着器部材の複合ポリマー表面外層の厚さは、約10から約100マイクロメートル、又は約15から約35マイクロメートルである。
【0057】
任意に中間接着層及び/又は中間ポリマー層又はエラストマー層を本発明の所望の特性及び性能目的を達成するために適用することができる。中間層は、基材と外側ポリマー層との間に存在することができる。好適な中間層の例としては、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴム、及び低温加硫(LTV)シリコーンゴムのようなシリコーンゴムが挙げられる。これらのゴムは既知のものであり、両方ともDow Corning製のSILASTIC(登録商標)735ブラックRTV及びSILASTIC(登録商標)732RTV、及び両方ともGeneral Electric製の106RTVシリコーンゴム及び90RTVシリコーンゴムのように、容易に商業的に入手可能である。他の好適なシリコーン材料としては、シロキサン(例えばポリジメチルシロキサン)、フルオロシリコーン、例えばヴァージニア州リッチモンドのSampson Coatingsから入手可能なSilicone Rubber552、液体シリコーンゴム、例えばビニル架橋熱硬化性ゴム又はシラノール室温架橋材料などが挙げられる。別の具体例は、Dow Corning Sylgard182である。接着性中間層は、例えばエポキシ樹脂及びポリシロキサンから選択することができる。
【0058】
基材と中間層との間に接着層を設けることができる。中間層と外層との間にも接着層が存在してもよい。中間層がない場合には、ポリマー外層は接着層を介して基材に接合することができる。
中間層の厚さは、約0.5から約20mm、又は約1から約5mmである。
【0059】
その他の充填剤が外側定着層内に存在してもよく、及び/又は中間層に含まれてもよい。充填剤としては、金属及び合金、金属酸化物、ポリマー充填剤、炭素充填剤など、及びこれらの混合物が挙げられる。金属酸化物の例としては、酸化銅、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジンウム、酸化インジウムスズなど、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリマー充填剤の例としては、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン(polyphenelene)、ポリピロール、ポリテトラフルオロエチレンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な炭素充填剤の例としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フッ素化カーボンブラック、グラファイトなど、及びこれらの混合物が挙げられる。「導電性粒子状充填剤」という用語は、固有の導電性を有する充填剤を指す。
【0060】
好適な基材材料の例としては、ローラ基材の場合には、アルミニウム、ステンレス鋼、鋼、ニッケルなどのような金属が挙げられる。フィルム状の基材の場合(基材が定着ベルト、フィルム、ドレルト(drelt)(ドラムとベルトとの中間のクロス)などの場合)には、好適な基材としては、高い動作温度(すなわち約80℃より高い又は200℃より高い)を可能にするのに適し、高い機械的強度を示すことができる、高温プラスチックが挙げられる。
【0061】
外側材料組成物は、いずれかの好適な既知の方法により基材上にコーティングすることができる。こうした材料を強化部材上にコーティングするための典型的な技術としては、液体及び乾燥粉末噴霧コーティング、浸漬コーティング、巻線ロッドコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、静電噴霧、ソニックスプレー、ブレードコーティングなどが挙げられる。実施態様において、脂肪族材料コーティングは、基材に噴霧コーティング又は流しコーティングされる。流しコーティング手順の詳細は、特許文献1に見出すことができ、その開示は全体が本明細書に参考として組み入れられる。
【0062】
実施態様において、外層は、サンダー仕上げ、研磨、研削、ブラスチング、コーティングなどのような既知のいずれかの技術によって改質することができる。実施態様において、フルオロポリマーマトリックス外層は、約0.02から約1.5マイクロメートルまで、又は約0.3から約0.8マイクロメートルまでの表面粗さを有する。
特に示さない限り、全ての部及びパーセンテージは重量による。
【実施例1】
【0063】
アミノシロキサン架橋剤で架橋されたパーフルオロクチルシロキサン/フルオロエラストマー複合体コーティング
【0064】
室温にて18時間かけてメチルイソブチルケトン(MIBK)中に溶解させた固形分17重量%のVITON(登録商標)−GFフルオロエラストマーを含有するフルオロポリマー分散体を調製し、5pph(VITON(登録商標)−GFの百重量部あたりの部)のAO700架橋剤(Gelest製のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシラン架橋剤)、5−20pphのパーフルオロオクチルシロキサン(United Chemical Technologies製のトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロ―オクチル―1−トリエトキシシラン)及び24pphのメタノールと合わせた。この分散体を、バーコータを用いてアルミニウム基材にコーティングし、このコーティングを空気中で乾燥させて、25−30μmのフルオロエラストマー層を形成した。乾燥後、続けてコーティングを24時間かけて49℃から218℃のまでの間の温度で段階的に熱処理することにより硬化させた。得られたコーティングは、MIBKを塗布して表面を金属器具で引っ掻いた場合の傷に対して堅牢性を示した。
【0065】
コーティングを、Fibrodat_analyzerを用いて表面自由エネルギーについて特徴付けた。表面自由エネルギーは、3つの液体、すなわち、水、ホルムアミド、及びジヨードメタンの液滴の接触角によって測定され、複合コーティングの表面エネルギーは、フッ化炭素鎖を含有していない対照コーティングの23mN/m2から、複合コーティングでは11−23mN/m2の範囲まで表面エネルギーが低下し、最低の表面エネルギーは11mN/m2であり、パーフルオロオクチルシロキサンの添加量が最大のときに観測された。
【0066】
複合材料の厚いコーティング(100〜200μm)をさらに機械的特性について特徴付けた。Instron分析装置による引張試験は、5pph及び10pphのパーフルオロシロキサン添加量で試験した複合体の機械的特性が、定着用途に適した対照材料の場合と同等であることを示した。引張強度は〜1000psi、引張歪は〜230%、靭性は〜800in*lb/cm3、弾性率は〜750psiであった。
【実施例2】
【0067】
BPA−シロキサン架橋剤で架橋されたパーフルオロオクチルシロキサン/フルオロエラストマー複合コーティング
【0068】
パーフルオロオクチルシラン鎖及びVITON(登録商標)−GFにBPA−シロキサン架橋剤を組み合わせて、複合コーティングを調製することができると予想される。2.0部のVITON(登録商標)−GFの溶液を、75部のメチルイソブチルケトン(MIBK)中に室温で18時間かけて溶解することにより、溶解させる。次いで、0.031部のMgO及び0.021部のCa(OH)2を、25部のMIBK中に混合し、超音波処理して酸化物を分散させ、この混合物を上記溶液に添加する。次いで、0.362部のシラン架橋剤、ビスフェノール−AF−プロピルメチルジイソプロポキシシラン(式X参照、ここで、X=F、n=3、R=CH(CH32、R’=CH3である)、及び0.028部の塩化トリフェニルベンジルホスホニウムを続けて添加し、懸濁した混合物を還流温度にて約20時間攪拌する。混合物をろ過して懸濁した酸化物粒子を除去し、ろ液を過剰のイソプロパノールに滴下し、シラングラフト化フルオロポリマーを沈殿させる。過剰のシラン架橋剤(未反応有機グラフト)及び副生成物を、連続的にイソプロパノールで洗浄し、ポリマーから溶液をデカントすることによって除去する。シロキサングラフト化フルオロポリマー生成物を、イソプロパノールから沈殿させ、MIBKに再溶解させ、推定固形分添加量17.5%(w/w)で保存する。
【0069】
シロキサングラフト化フルオロポリマー生成物に、5−20pphのパーフルオロオクチルシロキサン(United Chemical Technologies製のトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロ−オクチル−1−トリエトキシシラン、式IX参照、ここで、n=5、R=CH2CH3である)及び24pphのメタノールを添加する。次いで分散体を、ケイ素、アルミニウム、ガラス又はその他の耐熱性基材のような基材に、バーコータ、フローコータ又はその他の好適なコーティング方法を用いて堆積させ、コーティングを空気乾燥させて、25−30μmのフルオロポリマー層を形成する。乾燥後、続けてコーティングを24時間かけて49℃から218℃までの間の温度で段階的に熱処理することにより硬化させる。パーフルオロオクチルシロキサン鎖はグラフト化BPA−シロキサン鎖に架橋し、したがってフルオロポリマーマトリックス内に結合することになると予想される。
【実施例3】
【0070】
アミノシロキサン架橋剤で架橋したパーフルオロアルキルアミン/フルオロエラストマー複合コーティング
【0071】
パーフルオロアルキルアミン鎖及びVITON(登録商標)−GFにアミノシロキサン架橋剤を組み合わせて、複合コーティングを調製することができると予想される。室温で18時間かけてメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解させた固形分17重量%のVITON(登録商標)−GFフルオロエラストマーを含有するフルオロポリマー分散液を調製し、5pph(VITON(登録商標)−GFの百重量あたりの部)AO700架橋剤(Gelest製のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン架橋剤、式XI参照、ここでn=3、R=CH3である)、5−20pphのパーフルオロアルキルアミン、例えばパーフルオロオクチルアミン(トリデカフルオロ−1−アミノ−1,1,2,2−テトラヒドロ−オクタン)、及び24pphのメタノールと合わせる。この分散体を、ケイ素、アルミニウム、ガラス又はその他の耐熱性基材のような基材に、バーコータ、フローコータ又はその他の好適なコーティング技術を用いて堆積させ、コーティングを空気乾燥させて、25−30μmのフルオロポリマー層を形成する。乾燥後、続けてコーティングを24時間かけて49℃から218℃までの間の温度で段階的に熱処理することにより硬化させる。パーフルオロオクチルアミンは、アミノ結合によってフルオロポリマー鎖と直接結合し、一方、AO700架橋剤はアミノ結合を介してフルオロポリマー鎖に直接結合すると共に、縮合とその後シロキサン−シロキサン結合の形成によって複合系を互いに結合させることが予想される。
【実施例4】
【0072】
ビスフェノールAF架橋剤で架橋されたパーフルオロアルキルアミン/フルオロエラストマー複合コーティング
【0073】
パーフルオロアルキルアミン鎖及びVITON(登録商標)−GFにビスフェノール−AF架橋剤を組み合わせて、複合コーティングを調製することができると予想される。VITON(登録商標)−GFを、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンの混合物に溶解させ、7重量pphのVC50架橋剤(DuPont製のビスフェノール−AF架橋剤)、1.5重量pphの酸化マグネシウム(マサチューセッツ州AndoverのRohm and Hassから入手可能なElastoMag170Special)、0.75重量pphの水酸化カルシウム、0.75重量pphのカーボンブラック(R.T.Vanderbilt Co.から入手可能なN990)、0.489重量pphのNovec(登録商標)FC−4430(3Mから入手可能)、及び0.86重量pphのAKF−290(Wackerから入手可能)と混合する。溶液中の総固形分添加量は17.5パーセントになる。この分散体に、5−20pphのパーフルオロアルキルアミン、例えばパーフルオロオクチルアミン(トリデカフルオロ−1−アミノ−1,1,2,2−テトラヒドロ−オクタン)を添加する。コーティング製剤を、ケイ素、アルミニウム、ガラス又はその他の耐熱性基材のような基材上に堆積させる。コーティングを架橋させ、149℃から232℃までの間の温度で4から12時間かけて空気中で段階的に加熱することによって硬化させた。パーフルオロオクチルアミンは、アミノ結合によってフルオロポリマー鎖と直接結合し、一方、VC50架橋剤はフルオロポリマー鎖を直接架橋させると予想される。
【符号の説明】
【0074】
1:外層定着面
2:外層
3、28:充填剤
4:基材
5:定着ロール
6:圧力ロール
7:コア
8:加熱要素
9:接触弧
10:感光体
16:コピーシート
19:定着ステーション
21:トナー像
26:中間層
29:フッ化炭素鎖
30:フルオロポリマー材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その上に、表面を有する外層ポリマーマトリックスとを含む自己剥離性定着器部材であって、前記外層ポリマーマトリックスがフルオロポリマー材料及びフッ化炭素鎖を含み、前記フッ化炭素鎖が前記フルオロポリマー材料に結合している、定着器部材。
【請求項2】
基材と、その上に、互いに結合した下記構造を有するフルオロポリマー及びフッ化炭素鎖を含む、外層ポリマーマトリックスとを含む自己剥離性定着器部材であって、
【化1】

上記式中、Xは、フッ素及び水素から成る群から選択され、R’は、約1から約20個の炭素を有する脂肪族鎖であり、nは約1から約10の数である、
定着器部材。
【請求項3】
記録媒体に画像を形成するためのオイルレス画像形成装置であって、静電潜像を受容するための電荷保持表面と、トナーを前記電荷保持表面に適用し、静電潜像を現像して前記電荷保持面に現像画像を形成するための現像構成部品と、前記現像画像を前記電荷保持面からコピー基材に転写するための転写構成部品と、前記現像画像をコピー基材に定着するための自己剥離性定着器部材とを含み、前記自己剥離性定着器部材は、基材と、その上に、表面を有する外層ポリマーマトリックスとを含み、前記外層ポリマーマトリックスは、フルオロポリマー材料とフッ化炭素鎖とを含み、前記フッ化炭素鎖は、前記フルオロポリマー材料に結合している、オイルレス画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−122680(P2010−122680A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259481(P2009−259481)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】