説明

自己崩壊性型枠材

【課題】軽量で取扱性に優れ且コンクリートの凝固後に自己崩壊せしめて、型枠作業を著しく削減する自己崩壊性型枠材の提供。
【解決手段】
シロキサン及びシラノール塩をその分子量換算で略4000程度に多分子量化させた錯化合物状で、シロキサン及びシラノール塩とからなる固形分が40乃至55重量%と水分45乃至60重量%割合のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、所要の寸法形状の成形型で200乃至300℃の加熱で内部圧力を10乃至50kg/cmで発泡させ、以って耐圧縮強度が10乃至50kg/cm、見掛比重が0.1乃至0.2及びその残留水分率が7乃至20重量%割合の珪酸態に形成された、自己崩壊性型枠材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土木工事におけるコンクリート構築物や建物基礎部のコンクリート構築物の形成に際して使用する型枠材に係わるもので、更に詳しくはコンクリート打ち込み後の凝固とともに自己崩壊せしめ、型枠に係わる諸作業工程を削減しえる自己崩壊性型枠材に関する。
【背景技術】
【0002】
土木作業における側溝や路肩を初め防水壁や用水路、或いは建物等の基礎の構築に際しては、その寸法や形状を勘案し十分な幅や深さを以って土壌を掘削したうえ図5に示すように掘削溝Aを形成のうえ、その内部に所要の幅と長さ及び高さの型枠材Bを組立て設置したうえ、該型枠材Bの間にコンクリートCを打ち込み、該コンクリートCの固化とともに型枠材Bを剥離撤去させるものであるが、該型枠材Bの組立てに際しては掘削溝A内に所要の厚さと高さ及び長さに亘って2枚の型枠材B、Bが配設され且この型枠材B、B間にも多数に亘るセパレーターDを配位させ、且型枠材B、Bの外側にもそれぞれ掘削溝Aの壁面との間に、コンクリートCの打ち込みに際して所要の厚さが保持されるよう、多数のサポーターEが配位される。
【0003】
そして打ち込みされたコンクリートの凝固とともに多数のサポーターEを除去し且型枠材B、Bを凝固したコンクリート構築物より剥除させ、而もこれらを集約のうえ資材保管場所へと運搬し、再利用可否について分別するばかりか再利用に際しては、改めてその内側面に剥離剤の塗布も要請される。
加えて現状の型枠材Bでは掘削溝Aとの間に多数のサポーターEを配位させるため、掘削溝Aの幅も十分なスペースを以って掘削をなす必要があるばかりか、コンクリートCの固化に伴う剥離撤去後には掘削したスペースへの土壌の埋戻しもなさねばならず、従って現状の型枠材Bではその組立てや撤去に際しての多くの工程が強いられ、そのコストは莫大であるばかりか、その形成素材も木板材や合成樹脂板材や金属板材等からなるため多重であって、その取扱や運搬等にも多大な労力と時間が強いられる。
【0004】
他方発明者は、軽量で耐火不燃性と且断熱性に優れる建築用内断熱板材の開発を推進しているもので、かかる建築用内断熱板材の実現のためには使用素材としてシロキサン及びシラノール塩からなり、フッ酸やホウ酸の存在下にその分子量換算で略4000程度に多分子量化させた錯化合物状で、且シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至60重量%に水分40乃至55重量%のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を用い、所要の成形型内で少なくとも200℃以上の高温度で加熱発泡させてシロキサン結合の促進と加熱融着性の創出及び水分蒸散に伴う連続気泡構造を膨大量に生成せしむるとともに、成形型内に適宜の内部圧力を付加させながら水分を確実に蒸散させることにより、酸化珪素態(Si0)からなり、その見掛比重が0.1乃至0.2の軽量で耐火不燃性と高断熱性を保持する無機発泡断熱板材が形成しえることを確認し、更に600乃至800℃の高温度処理により酸化珪素態がメノウ態やガラス態のセラミックス化することも究明している。
【0005】
而してかかる酸化珪素態(Si0)の無機発泡断熱板材の形成過程において、原料素材たるシロキサン及びシラノール塩多分子量の水分蒸散量を抑制し、残留水分率を所要の割合に保持させた無機発泡断熱板材は酸化珪素態(Si0)に至らずケイ酸態(Si0・nH0)の状態にあることから湿気や水分条件下においては吸湿吸水に伴う水分量の増大とともに発泡構造の脆化による自己崩壊が惹起され、且溶解液状にまで促進される。これがため発明者は加熱発泡により形成される無機発泡断熱板材若しくは無機発泡断熱成形材の残留水分及び発泡倍率を適宜に調整させることにより、コンクリートの打ち込みや屋外使用に際して所望の期間後に自己崩壊させることが可能なことに着目し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は軽量で取扱い性に優れるとともに、コンクリートの凝固の後に自己崩壊させ以って型枠に係わる工程を大幅に削減しえる、自己崩壊性型枠材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、使用素材がシロキサン及びシラノール塩をその分子量換算で略4000程度に多分子量化させた錯化合物状で、且その組成割合がシロキサン及びシラノール塩とからなる固形分が45乃至60重量%割合に水分が40乃至55重量%割合からなるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液であって、このシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を所要の寸法形状からなる成形雄型及び成形雌型からなる成形型において、その温度が200乃至300℃で加熱発泡させるとともに、内部圧力を10乃至50kg/cmに付加させてその耐圧縮強度が10乃至50kg/cmで且連続気泡構造の膨大量の微細孔隙を生成せしめ、而もその見掛比重が0.1乃至0.2で残留水分率が7乃至20重量%の珪酸態に発泡成形させてなる構成からなる自己崩壊性型枠材に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述の如き技術的手段を用いてなるもので、原料素材にシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が使用され、且加熱発泡に際して内部圧力を10乃至50kg/cmに付加させて発泡成形させるものであるから、成形金型も耐圧の小さい金属板材で簡便且安価に形成しえるとともに形成される型枠材は耐圧縮強度が10乃至50kg/cmと強靱なうえ、その見掛比重も0.1乃至0.2に形成されるため形枠の組立て作業や運搬も簡便になしえる。
そして本発明は残留水分率が7乃至20重量%の珪酸態で形成されてなるから、コンクリート打ち込みに伴う水分並びに湿気や雨水とともに逐次吸水するとともに、一方におけるコンクリートの凝固に反して形枠材が脆化し、やがては崩壊溶失されることとなる。
加えて本発明は自己崩壊させるものであるから、組立て作業に際しても掘削溝を最大限狭く掘削させれば良く、且組立てに際してもコンクリート打ち込み間隔をスペーサーで保持させるのみで、その外面はそれぞれ掘削溝壁で支持させるのみであるから、型枠材の剥離―収納―運搬―整理−埋戻し等の工程が全て削減されるためコスト及び工期の低減効果は莫大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、所要の寸法形状の成形型内で200乃至300℃の温度で加熱発泡させ、その耐圧縮強度が10乃至50kg/cmで且連続気泡構造からなる膨大量の微細孔隙を有し見掛比重が0.1乃至0.2で而も残留水分率が7乃至20重量%に発泡成形させてなる自己崩壊性型枠材。
【実施例1】
【0010】
以下に本発明実施例を図とともに説明すれば、図1は本発明自己崩壊性型枠材1の見取図、図2は本発明自己崩壊性型枠材1の使用態様図、図3は成形型による成形方法の説明図であって、本発明自己崩壊性型枠材1は、実用使用に際して所要の形状に組立てのうえコンクリートの打ち込みに際しての保形性と、且コンクリート凝固後にコンクリートの水分や屋外における湿気及び雨水等の水分により自己崩壊のうえ滅失させるものであるから、酸化珪素態と珪酸態とを共有しえる素材として、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2が用いられる。
このシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2は、シロキサン及びシラノール塩とをフッ酸やホウ酸の存在下に、その分子量換算で略4000程度にまで多分子量化させた錯化合物状で、且シロキサン及びシラノール塩とからなる固形分が45乃至60重量%に、水分が40乃至55重量%割合からなる水溶液状のものある。
【0011】
そして本発明自己崩壊性型枠材1は、図2の使用態様図で明らかなように、掘削溝10の溝壁10Aにそれぞれの外面が保持され、且コンクリート11の打ち込みに際しての所要の幅が保持されるよう適宜のセパレーター1Cで保持される所要の厚さと高さ及び長さの板状体1Aに形成され、且該板状体1Aの高さや長さを数段に連接させる連接細板状体1Bのものも形成されるものであって、当然にセパレーター1Cで保持される厚さや高さ及び長さの間にはコンクリート11が打ち込まれて凝固がなされる。更に板状体1Aからなる自己崩壊性型枠材1を連接細板状体1Bと連接させる方法としてはボルト及びナットからなる螺着具でも、或いはシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2の水分率を30重量%以下程度に脱水させてゲル状としたうえ接着剤として使用することも好適である。
【0012】
而して板状体1A或いは、連接細板状体1Bからなる自己崩壊性型枠材1は打ち込みされるコンクリート11の水分や屋外の湿気や雨水等の水分よりコンクリート11の凝固の後に自己崩壊させて滅失させるうえから、酸化珪素態に近い珪酸態として所要の寸法形状に形成されるもので、かかる形成手段としては成型雄型3A及び成形雌型3Bとからなる成形型3の利用が望ましい。
【0013】
即ち図3には成形型3による成形方法が例示されてなるもので、該成形型3の成形雄型3Aは所要の深さと幅及び長さを以って形成される成形雌型3B内に密着陥入しえるような寸法形状に形成され、且陥入に際しては実質的圧力を10乃至50kg/cmで加圧しえ、而も発泡成形された自己崩壊性形枠材1を成形雌型3Bより型抜きするうえからも、成形雄型3Aは油圧シリンダー3E等により上下方向に可動可能に形成されてなるものである。そしてかかる成形型3において本発明自己崩壊性形枠材1を形成する場合には、成形雌型3B内にシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2を所望の発泡倍率を勘案した容量割合で注入し、而して成形雄型3Aを成形雌型3B内に且シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2の加熱発泡に際して内部圧力が10乃至50kg/cmに付加されるような加圧力で密封加圧がなされる。かかる場合における内部圧力の付加は、加熱発泡成形される本発明自己崩壊性形枠材1の実用使用強度たる10乃至50kg/cmが内部圧力と略比例することによる。
【0014】
そして成形雌型3B内に注入されたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2は、なるべく短時間内に加熱発泡成形させるうえから加熱温度としては少なくとも200℃から300℃程度の加熱温度が好適で、且この加熱手段3Cとしては電磁誘導加熱や加熱ヒーター等が通常用いられるものであるが、かかる加熱手段3Cでは一旦電磁誘導加熱や加熱ヒーター等で所要の発泡温度に成形雄型3Aや成形雌型3Bを加熱し、この加熱エネルギーを注入されたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2を加熱伝導し発泡させるものである。
【0015】
特にシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2の加熱発泡成形に際しては、強力な加熱融着性の創出に伴い加熱発泡成形された自己崩壊性形枠材1が成形雄型3Aの加圧面や成形雌型3Bの内壁面と融着して成形後の型抜きが不能となることから、テトラフロロエチレン素材等からなる剥離層3Dの形成が不可欠となるため、加熱エネルギーの伝導性も悪く生産性のうえからは十分では無い。従って生産性を高めるうえからはシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2全体に亘って直接加熱させて発泡形成させる手段としてマグネトロンによる加熱が好適であって、かかる場合における成形型3は、非導電性と耐熱性を保持するセラミックス素材等が使用される。
【0016】
加えて加熱発泡に際しては、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2の水分を完全に加熱蒸散させて酸化珪素態(Si0)とはせずに、吸水に伴って自己崩壊させるため珪酸態(Si0・nH0)に形成させるものであり、且実用使用に際しては十分な使用強度と保形性を保持させる必要上から、その残留水分率としては少なくとも7重量%から最大20重量%割合の珪酸態で形成させることにある。
かかる場合における残留水分率は、内部加圧や形成される見掛比重によっても、更には吸水条件によっても自己崩壊性は変動するが、耐圧縮強度20kg/cm見掛比重0.15で残留水分率15重量%割合で形成された本発明自己崩壊性型枠材1は、100%湿度雰囲気中でも略5乃至6日で、更に90%湿度雰囲気中では略12乃至13日間で部分崩壊が発生する挙動を示す。
【0017】
更に見掛比重は実用使用に際しての組立作業や運搬作業の簡便性と且他方における自己崩壊性の促進のうえからも、水分蒸散により形成される連続気泡構造の微細孔隙1Fを多数形成させるためにも、見掛比重としては0.1乃至0.2が好適である。
【0018】
ところで本発明自己崩壊性型枠材1における板状体1Aや連接細板状体1Bは、その見掛比重が0.1乃至0.2で且耐圧縮強度も10乃至50kg/cmであるから、コンクリート11の打ち込み量に伴う大きな押圧力の付加時や、特には長尺状の場合では珪酸態でもあることから曲げ強度に脆く、従って構造の補強を図ることが望まれる。
かかる構造補強の具体的手段としては図4のAに示す如く、所要の幅と長さ及び厚さを以って形成される自己崩壊性型枠材1の板状体1A若しくは連接細板状体1Bの長さ方向に、所要の間隔を以って補強畝1Dを形成させる手段が提案され、更に他の手段としては自己崩壊性型枠材1の板状体1A若しくは連接細板状体1Bの長さ方向に亘って、所要の間隔を以って補強溝1Eを形成させることにある。
かかる場合の補強畝1Dの実質的高さ或いは補強溝1Eの実質的深さは、それぞれの厚さに対して略15乃至30%程度が実用使用上からも好適である。
【0019】
以下に本発明自己崩壊性型枠材についての自己崩壊性試験結果を述べれば、自己崩壊性試験に用いた試料は、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を成形雄型及び成形雌型を用いて、加熱温度260℃で内部圧力20kg/cmにより見掛比重0.15残留水分率8.0重量%に発泡成形させたものを試料1とし、更に加熱温度260℃で内部圧力20kg/cmにより見掛比重0.18残留水分率16.0重量%に発泡成形させたものを試料2として用いた。
【0020】
自己崩壊性試験方法は、試料1及び試料2をそれぞれ5cm平方に切断のうえ、湿度100%の雰囲気中に晒し、経過日数毎
に圧縮日荷重を付加させて崩壊圧縮荷重を測定し且合わせて外形変化を観察して自己崩壊性を判断したもので、結果は表1の通りであった。
【0021】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0022】
所要の幅と長さ及び厚さに形成された自己崩壊性板状体及び連接細板状を適宜の幅と長さに組立てて、掘削溝内に配置させてコンクリート打ち込みをなせば良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明自己崩壊性型枠材の見取図である。
【図2】本発明自己崩壊性型枠材の使用態様図である。
【図3】本発明自己崩壊性型枠材の成形方法の説明図である。
【図4】本発明自己崩壊性型枠材の構造補強の説明図である。
【図5】従来の型枠材の使用態様図である。
【符号の説明】
【0024】
1 自己崩壊性型枠材
1A 自己崩壊性型枠材の板状体
1B 自己崩壊性型枠材の連接細板状体
1C セパレーター
1D 補強畝
1E 補強溝
1F 微細孔隙
10 掘削溝
10A 溝壁
11 コンクリート
2 シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液
3 成形型
3A 成形雄型
3B 成形雌型
3C 加熱手段
3D 剥離層
3E 油圧シリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン及びシラノール塩を、その分子量換算で略4000程度に多分子量化させた錯化合物状で、且シロキサン及びシラノール塩とからなる固形分が45乃至60重量%に水分が40乃至55重量%割合の組成からなるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、所要の寸法形状の成形雄型及び成形雌型からなる成形型で、200乃至300℃で且内部圧力を10乃至50kg/cmで加熱発泡させ、以ってその耐圧縮強度が10乃至50kg/cmで見掛比重が0.1乃至0.2及びその残留水分率が7乃至20重量%の珪酸態に発泡形成されてなる、自己崩壊性型枠材。
【請求項2】
所要の寸法形状に発泡形成される自己崩壊性型枠材の長さ方向に、所要の間隔を以ってその厚さに対して15乃至30%の高さの補強畝、若しくはその厚さに対して15乃至30%の深さの補強溝が形成されてなる、請求項1記載の自己崩壊性型枠材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−137267(P2009−137267A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341633(P2007−341633)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(506154801)有限会社ダイアテック (13)
【Fターム(参考)】