説明

自己支持形光ケーブル

【課題】山間地に架設された高圧電線に沿って、架設される光ケーブルのダンシング、ギャロッピング、スリートジャンプを防止し、禽獣の噛害がなく、架設作業の容易な自己支持形光ケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線(4心テープ心線21)の周りを金属管(ステンレス管22)で覆い、上記金属管(ステンレス管22)内の隙間にジェリー23を充填し、この金属管22の上にプラスチック外被24を施した光ケーブル20を、鋼撚線11の上にプラスチック外被12を施した支持線10の周りに巻き回してなるもので、上記ジェリーは、25℃におけるちょう度を380〜430とし、支持線外径/光ケーブル外径の比を0.925〜1.225の範囲とし、上記光ケーブルの巻き回しピッチを光ケーブル外径の50〜100cmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、渓谷を渡り、あるいは急傾斜面に設置された鉄塔やパンザマスト等の支持物に架設された高圧電線に沿わせて架設される光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所の運転制御は、発電所、ダムの監視所、一次変電所など、各要所間の情報交換をしながら行なわれ、その情報交換は、専用の通信回線で行われ、その通信回線は、先年まではメタルケーブルが使用されてきたが、今日では光ケーブルに代ってきており、メタルケーブルの耐用年数が到来したものは光ケーブルに取り替えられつつある。
【0003】
取り替えられる旧来のメタルケーブルが架設されたときの工法の多くは、先ず径間に支持線Aが架設され、更に支持線Aとは別に一定間隔でハンガーを取り付けた支持線Bを支持線Aの下に架設し支持線Aと支持線Bは中央付近で固定する。そして支持線Bのハンガーでもってメタルケーブルを吊架するいわゆるカテナリー工法が採用されており、この工法で取り替える光ケーブルを架設するには多大の工費が必要となる。
【0004】
一般的にダムや水力発電所は、山間地に建設されており、発生した電力は送電ロスを少なくするために昇圧され、渓谷を渡り、あるいは急斜面に設置された鉄塔やパンザマストに架設された高圧電線により送電され、上記情報交換用の通信ケーブルも、上記高圧電線に沿って架設される。
【0005】
上記のように鉄塔やパンザマストに架設された高圧電線やメタル・光等の通信ケーブルは、強風や極端な温度変化に曝され、また着雪や結氷にも見舞われる。
【0006】
上記のような環境のもとで架設される通信ケーブルについては、ケーブルの周りに付着した雪が、風圧や振動あるいは着雪のアンバランスによって一気に落下し、その弾みでスリートジャンプを起こし高圧電線に接触して断線する恐れがある。
【0007】
また、架設された通信ケーブルに横風が当たった場合、ケーブルの上側の表面積が下側の表面積より小さいときは、ケーブルの上側に働く風圧が下側より大きくなってケーブルを押し下げる力が働き、その逆の場合は押し上げる力が働く。また、下側から吹き上げる風のときは持ち上げられ、吹き下ろす風のときは押さえつけられ、これらが繰り返されて悪条件が重なると振幅が次第に大きくなってギャロッピングを起こし、高圧電線に接触して断線に至る恐れがある。
【0008】
また、風圧の掛かり方によっては、ケーブルが繰り返し捻られて振動、揺動あるいは波打って、いわゆるダンシング現象を起こしてケーブルの引き留め部分で疲労断線を起こす恐れもある。
【0009】
鉄塔やパンザマストに架設された高圧電線に沿わせて架設するのに適した通信ケーブルの形態として図2に示す自己支持形ケーブルを挙げることができる。同図(a)は支持線とケーブル本体を同一の被覆材料で押出し被覆したひょうたん状自己支持形通信ケーブル、(b)は、上記ひょうたん状自己支持形通信ケーブルの首部に、スリットを設けたスリットひょうたん状自己支持形通信ケーブル、(c)は、上記ひょうたん状自己支持形ケーブルの首部に風穴を開けた窓付きひょうたん状自己支持形通信ケーブル、(d)は、支持線とケーブル本体とを平行に配置し、両者をバインドでラッシングして一体化したラッシング自己支持形通信ケーブル、(e)は、支持線とケーブル本体とを平行に配置し、一定間隔ごとに連結部を形成して両者を一体化したプレハンガー自己支持形通信ケーブル、(f)は、支持線の周りにケーブル本体を一定のピッチで反転させながら巻き回した反転巻き回し自己支持形通信ケーブル、(g)は、支持線の周りにケーブル本体を一定のピッチで巻き回した巻き回し自己支持形通信ケーブルである。
【0010】
上記図2に示した各自己支持形通信ケーブルについて見ると、同図(a)のひょうたん状自己支持形通信ケーブルから(e)のプレハンガー自己支持形通信ケーブルまでは、その構造からして風圧を受けるとダンシングやギャロッピングを起こす傾向があり、架設ケーブルの伝送特性や耐用年数に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0011】
その点(f)の反転巻き回し自己支持形通信ケーブルと(g)の巻き回し自己支持形通信ケーブルは、受風等価外径が小さく、風圧が分散されてダンシングやギャロッピング現象を抑制する効果があって好ましいものである。しかし、(f)の反転巻き回し自己支持形ケーブルは、支持線にケーブル本体を反転させながら巻き回さなければならないため製造コストが嵩み好ましくない。また、反転部が支持線から脱落する可能性があり使用上好ましくない。
【0012】
着雪とスリートジャンプとの関係を見ると、ケーブルの上部表面に降り積もった雪は、その重さによってケーブルの下側に回転してぶら下がり、さらにその上から降り積もる雪は、その重さによってバランスを崩して回転する。こうした現象を繰り返しながら直径10cm〜20cmの着雪に成長し、風圧や振動によって上記着雪が一気に落下してスリートジャンプを起こすことになる。従って、山間地・降雪地に架設されるケーブルは上記のように着雪が成長しない構造である必要がある。その点、支持線に光ケーブル本体を巻き回したものは、着雪がケーブル表面を回転せず大きく成長するまでに落下するのでスリートジャンプを防止する効果がある。
【0013】
また、山間地に架設されるケーブルは、キツツキやネズミなど禽獣類に噛み切られる恐れがあり、ケーブルの外被が一般的なプラスチックである場合、外被を破られ内部の光ファイバ心線が噛み切られてしまう恐れがあってこの対策も必要である。
【0014】
また、自己支持形光ケーブルとして特許文献1があるが、この文献に記載の光ケーブルは、アルミパイプ内に光ファイバを収納し、これを支持線と一体にしたものであるが、風圧によるケーブルのダンシング、アルミパイプ内に充填されるジェリーのちょう度、支持線に対する光ケーブルの巻き回しピッチなどの点で検討を要するものであった。
【0015】
【特許文献1】特開平11−337790号公報(特許請求の範囲および図面)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記状況に鑑みこの発明は、降雪・山間地の渓谷を渡り、あるいは急傾斜地に設置された鉄塔やパンザマストに架設された高圧電線に沿って架設される光ケーブルが風圧を受けてもダンシングやギャロッピングを起こすことがなく、着雪の成長を阻止してスリートジャンプを防止し、また、禽獣の噛害がなく、架設工事の容易な自己支持形光ケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するためにこの発明は、光ファイバ心線の周りを金属管で覆い、上記金属管内の隙間にジェリーを充填し、この金属管の上にプラスチック外被を施した光ケーブルを、鋼線の上にプラスチック外被を施した支持線の周りに巻き回してなるもので、支持線外径/光ケーブル外径の比を0.925〜1.225とし(請求項1)、上記ジェリーの25℃におけるちょう度が380〜430で、上記鋼線は鋼撚り線(請求項2)とし、上記光ケーブルの巻き回しピッチを50〜100cm(請求項3)としたものである。
【発明の効果】
【0018】
上記の如く構成するこの発明によれば、降雪・山間地の渓谷を渡り、あるいは急傾斜地に設置された鉄塔やパンザマストに架設された高圧電線に沿って架設される光ケーブルが風圧を受けてダンシングやギャロッピングを起こすことなく、着雪の成長を阻止して着雪の落下によるスリートジャンプを防止し、また、禽獣の噛害がなく、架設を容易にすることができる。
【0019】
上記構成において、支持線外径/光ケーブル外径の比を0.925〜1.225とした(請求項1)のは、風力によるケーブルのダンシングを抑制することを目的とし、この範囲を外れると支持線と光ケーブルとの外径差が大きくなり、風力による揚力の発生、または押し下げ力の発生によりケーブルのダンシングが生じやすくなるからである。
【0020】
また、25℃におけるジェリーのちょう度を380〜430の範囲とした(請求項2)のは、これよりちょう度が低くなると傾斜地に架設したケーブルの端末からジェリーが漏出する恐れがあるからであり、これより高いちょう度では、ジェリーの緩衝効果が低下し架設した光ケーブルの屈曲部分等で光ファイバ心線の伝送特性の低下を招く恐れがあるからである。
【0021】
また、光ケーブルの巻き回しピッチを50〜100cmとした(請求項3)のは、これより小さいときは、架設作業が困難になることがあり、また、光ファイバ心線に側圧が加わり伝送特性の低下を招く恐れがある。これより大きいときは、もし光ケーブルが断線したとき、その端が垂れ下がって並行して架設している高圧電線に接触する恐れがあるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次にこの発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1に示すように2.6mmφの鋼線を7本撚りして鋼撚線11とし、その上に1mm厚さのポリエチレン外被12を施して外径9.8mmφの支持線10(単位長さ当りの質量320〜350kg/km)を製作する。また、1.8mmの鋼線を7本撚りして鋼撚線11とし、その上に1mm厚さのポリエチレン外被12を施して外径7.4mmφの支持線10(単位長さ当りの質量155〜175kg/km)とすることもできる。
【0024】
4心テープ心線21を5本並列し、この周りを内径3.2mm、厚さ0.2mm・外径3.6mmのステンレス(SUS304)管22を、隙間を設けて被せ、この隙間に、25℃におけるちょう度が380〜430(JIS K 2220による測定値)のジェリー23を充填し、その上に2.2mm厚のポリエチレン外被24を施して外径8mmの光ケーブル20(単位長さ当りの質量55〜65kg/km)を製作する。なお、難着雪性を向上させるためにポリエチレン外被に代えて低摩擦ポリエチレン、低摩擦ポリウレタンなどを採用することができる。
【0025】
上記製作した光ケーブル20を上記支持線10の周りに40cm、50cm、60cm、のピッチで巻き回して本発明に係る自己支持形光ケーブル30を試作した。
【0026】
[充填ジェリーの滴下試験]
架設された自己支持形光ケーブルは、輻射熱を受けてケーブル内部は60℃程度に上昇することは一般に知られている。一方、山間地では急斜面に架設することは避けられず、温度上昇により光ファィバーテープ心線とステンレス管との隙間に充填したジェリーが滴下して光ケーブルの伝送特性を低下させる恐れがある。
【0027】
そこで、給水塔を利用して本発明に係る自己支持形光ケーブルを10mの高さで垂直にクランプして下端を地上まで垂らし、3日、5日、7日間放置して、それぞれの時点でジェリーが滴下しているか否かを確認したところいずれも異常はなかった。ちょう度が380より小さい場合には上記試験においてはジェリーの漏出の恐れがある。
【0028】
[充填ジェリーのちょう度と伝送特性]
ちょう度が430より大きい場合にはジェリーの緩衝効果が低下し、光ファィバの伝送特性低下の恐れがある。
【0029】
[破断時の撚り戻り試験]
架設した本発明に係る自己支持形光ケーブルの光ケーブル本体が破断したとき、支持線の周りで撚りが戻り、その端末が振り回されると高圧電線に接触し、短絡や連鎖破断を起こす恐れがある。従って、上記問題の有無を確認するために、本発明に係る自己支持形光ケーブルを径間100m・張力500kgfで架設し、その中間で光ケーブル本体を人為的に切断して撚り戻りの発生状況を確認したところ、撚り戻りは少なく、さらに、ケーブルに衝撃を与えても撚り戻りは増加しなかった。光ケーブル本体の支持線に対する巻き回しピッチが長くなると、光ケーブル本体が破断したとき、前記撚り戻りが、ピッチが短い時に比べ多くなるので、破断した端末が高圧電線に接触する場合がある。
【0030】
[巻き回しピッチ/架設作業性試験]
光ケーブル本体の支持線に対する巻き回しピッチと、ケーブル架設時の支持物への固定作業の容易性の関係を明らかにするため、先に製作した巻き回しピッチ40cm、50cm、60cmについて、その作業性を確認したところ40cmでは巻き回しピッチが短く、支持線とケーブル間の作業スペースが十分とれず、ケーブル架設作業が困難で、50cmを超えるものについては、困難性は認められなかった。しかし100cmを超えると、光ケーブルが断線したとき、その端が垂れ下がり並行架設されている高圧電線に接触する恐れがある。
【0031】
[巻き回しピッチ/伝送損失試験]
光ケーブル本体の巻き回しピッチが50cmより小さい場合には光ケーブルに側圧が掛かって伝送特性に影響する恐れがある。
【0032】
[揺動試験]
架設ケーブルに風圧が掛かるとケーブルは揺動する。とりわけひょうたん形光ケーブルはその現れ方が顕著で、風圧の大きさ・方向の変化によって揺動は色々に変化する。たとえば、(1)ケーブルがヒラヒラする。(2)長さ方向に伝播しながら揺動する。(3)上記2つのケースが重なって揺動する。こうしたケーブルの揺動をダンシングといわれているが、ダンシングが繰り返されると疲労断線に至る。この点、本発明に係る自己支持形光ケーブルは、受風等価外径が小さく、かつ、風圧が巻き回された光ケーブル本体に沿って分散されるので上記のような揺動・振動が抑制されるものと考えられる。
【0033】
更に本発明のように支持線外径と光ケーブル外径との比が[0023][0024]に記載の通り、0.925(7.4mmφ/8mmφ)〜1.225(9.8mmφ/8mmφ)と両者外径にあまり差がないものにおいては、両者の受風圧の差が小さく、上記のような揺動、振動が抑制されるものと考えられる。
【0034】
[着雪に関するフィールドテスト]
また、着雪の成長と、その落下によるスリートジャンプの発生について確認するため、ベタ雪(水分量の多い雪)の豪雪地帯である中部電力飯田支店管内で100mの径間に本発明に係る自己支持形光ケーブルを架設して実証試験を行なったところ、着雪は、ケーブルの周りを回転せず、大きく成長するまでに落雪するのでスリートジャンプの可能性が極めて小さいことを確認した。
【0035】
[取り替え工事の容易性]
既設のメタル通信ケーブルは、カテナリー工法により架設していたが、本発明の自己支持形光ケーブルは、既設のメタル通信ケーブルを支持線とともに撤去し、そのあと、鉄塔またはパンザマストに架設するだけでよく、取り替え作業時間を大幅に短縮することができる。
【0036】
また、架設工事における本発明の自己支持形光ケーブルの架設張力は、延線距離550m間の支柱に屈曲部用金車を使用して延線したところ、10kgf程度であり、本発明の自己支持形光ケーブルと同程度の窓付きひょうたん状自己支持形通信ケーブルの50kgfと比べると非常に小さい架設張力で工事が可能となる。これは、本発明の支持線外径が前記通信ケーブルに比べ大きいため剛性が大きく直線性があるため支柱間に架設した際のケーブルの弛度が小さいためである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明した如くこの発明によれば、降雪・山間地の渓谷を渡り、あるいは急傾斜地に設置された鉄塔やパンザマストに架設された高圧電線に沿って架設される光ケーブルが風圧を受けてもダンシングやギャロッピングを起こすことがなく、着雪の成長と、成長した着雪の落下によるスリートジャンプを防止し、また、禽獣の噛害をなくすることができるとともに架設作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る自己支持形光ケーブルの(a)断面図、(b)同部分断面図(4心テープ心線の断面図)、(c)同側面図
【図2】一般的自己支持形ケーブルの説明図で、(a)ひょうたん状自己支持形通信ケーブル、(b)スリットひょうたん状自己支持形通信ケーブル、(c)窓付きひょうたん状自己支持形通信ケーブル、(d)ラッシング自己支持形通信ケーブル、(e)プレハンガー自己支持形通信ケーブル、(f)反転巻き回し自己支持形通信ケーブル、(g)巻き回し自己支持形通信ケーブル
【符号の説明】
【0039】
10 支持線
11 鋼撚線
12 ポリエチレン外被
20 光ケーブル
21 4心テープ心線
22 ステンレス管
23 ジェリー
24 ポリエチレン外被
30 自己支持形光ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線の周りを金属管で覆い、前記金属管内の隙間にジェリーを充填し、この金属管の上にプラスチック外被を施した光ケーブルを、鋼線の上にプラスチック外被を施した支持線の周りに巻き回し、支持線外径/光ケーブル外径の比を0.925〜1.225とした自己支持形光ケーブル。
【請求項2】
上記ジェリーの25℃におけるちょう度が380〜430であり、上記鋼線は鋼撚り線である請求項1に記載の自己支持形光ケーブル。
【請求項3】
上記光ケーブルの巻き回しピッチを50〜100cmとしてなる請求項1または2に記載の自己支持形光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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