説明

自己架橋性のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド水性分散物

【課題】 ウレタンポリマーおよびビニルポリマーを基礎としそして分離する傾向のない自己架橋性バインダーの提供。
【解決手段】 イオン−および/または非イオン安定化ポリウレタン−マクロモノマーをカルボニル基含有の他の官能性−並びに非官能性ビニルモノマーと遊離基開始重合することによって製造されるカルボニル基含有ウレタン−ビニル−ハイブリッドポリマーとポリヒドラジド類とより成る自己架橋性の水性ポリマー分散バインダーにおいて、ポリウレタン−マクロモノマーがイソシアネート基含有マクロモノマーと、イソシアネート基の数がイソシアネートに対して反応性である基の数を超えるという前提条件のもとで、イソシアネート基に対して反応性である2つ以上の基を持つビニル化合物とを反応させることによって生成される側位にビニル基を持つポリウレタンマクロモノマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己架橋性のポリウレタン−ビニル系ハイブリッド水性分散物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン水性分散物を主成分とする塗料系はその良好な性質、例えば色々な基体への接着性、耐摩耗性、柔軟性および強靱性のために、最近15年程の間に広い用途分野でますます重要になっている。ポリウレタン分散物は金属−および鉱物系基体の塗装におよび合成樹脂および木材の塗装に特に適している。ポリウレタン合成樹脂は、一般に外部添加乳化剤によってまたはポリウレタン樹脂内部に十分な量のイオン性基または非イオン性基を導入することによって水性相で安定化される。ポリウレタン分散物の性質のパターンは、例えばビニルポリマー分散物の添加によって変更できる。例示的に挙げられる米国特許第3,862,074号明細書、ドイツ特許第3,915,459号明細書およびヨーロッパ特許第379,158号明細書には、ポリウレタン分散物とアクリレート分散物とを単に混合することによって製造できる水性塗料が開示されている。
【0003】
ビニルモノマーをポリウレタン水性分散物の存在下に重合してビニルポリマーを製造する特別な方法が例えばヨーロッパ特許第98,752号明細書、同第167,188号明細書、同第189,945号明細書、同第308,115号明細書、同第522,419号明細書および同第522,420号明細書の各文献に説明されている。ヨーロッパ特許第189,945号明細書および同第308,115号明細書の各特許文献の場合には、ポリウレタンとビニルポリマーとの混合物が、ビニルモノマーの溶液中で合成されそして水性相に移した後に連鎖延長反応が行われる水分散性のイソシアネート末端基含有ポリウレタン樹脂の段階を経て製造される。これに引き続いて、更に他のビニルモノマーを配量供給して遊離基重合を行うことができる。これと対照的にヨーロッパ特許第167,188号明細書なる特許文献には、末端アクリロイル基を持つイソシアネート末端基含有ポリウレタン樹脂の中間段階を経てポリウレタン−アクリレート−ハイブリッド分散物の製造を可能とする方法が開示されている。遊離基重合性化合物で希釈した後に、この不飽和プレポリマーを水性相に分散しそして連鎖延長反応に委ねる。これに続いて水性相で遊離基開始重合を行って、ポリウレタン−およびアクリレートブロックが化学的に結合した一成分系分散物を得る。
【0004】
同様にヨーロッパ特許第98,752号明細書、ヨーロッパ特許第522,419号明細書およびヨーロッパ特許第522,420号明細書には、ポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を製造する方法が開示されている。ヨーロッパ特許第167,188号明細書に開示された方法と異なり、これらでは、末端にまたは側位にα,β−オレフィン性不飽和基を持つが末端イソシアネート基を持たずそしてそれ故に水性相で連鎖延長反応しないポリウレタン−マクロモノマーの段階を経てポリウレタン−アクリルハイブリッド分散物の合成を実施している。ここでもまた、これらのポリウレタン−マクロモノマーを水性相に移した後に、遊離基開始重合を単−および/または多官能性ビニルモノマーの存在下に実施している。上記のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物またはポリウレタン−とビニルポリマー分散物との混合物は室温でまたは低温では自己架橋しない。
【0005】
カルボニル基含有ビニルポリマーは20年以上前の特許文献に初めて掲載された。これらは一般にカルボニル基含有ビニルモノマーと他のビニルモノマーとを乳化重合法により重合することによって製造される。かゝる方法の例はドイツ特許第1,595,393号明細書、同第2,819,092号明細書、ヨーロッパ特許第127,834号明細書および同第332,011号明細書の各特許文献に掲載されている。
【0006】
ポリウレタン樹脂とビニルポリマーとの混合物を基礎とする自己架橋性水性塗料がヨーロッパ特許第332,326号明細書に開示されている。この特許文献では自己架橋をヒドラジン基とカルボニル基との間の反応の結果物であるアゾメチン結合によって達成している。これら塗料における架橋は、重合体骨格中にヒドラジン基またはカルボニル基を持つ少なくとも1種類のポリウレタン樹脂が関与している。ポリウレタンポリマーの有利な製造変法は、ポリウレタン樹脂を水性媒体に分散した後に遊離基重合に委ねるビニルモノマーの中でポリウレタンを合成するものである。この方法はポリウレタン樹脂とビニルポリマーとを含むポリマー混合物をもたらす。この特許文献も、ポリウレタンポリマーとビニルポリマーとの混合物を説明しており、その両方がカルボニル基を有しそしてポリヒドラジドによって架橋し得る。カルボニル官能性の場合には、カルボニル基は、プレポリマーの合成の間および/または連鎖延長プロセスでポリウレタン樹脂中に導入される。これらの両方の可能性はカルボニル官能性を有するイソシアネート反応性化合物を必要とする。このカルボニル基含有ポリウレタン樹脂の架橋はヒドラジン基含有ポリウレタンポリマーおよびビニルポリマー並びに、ポリウレタン系またはビニル系でないポリヒドラジドを用いて実施することができる。この場合にはウレタンポリマーおよびビニルポリマーが純粋に物理的混合物として存在している。かゝる系は分離する傾向があり、このことが不十分な貯蔵安定性の他に機械的性質、耐久性および塗膜外観の悪化(例えば光沢の欠陥、曇った塗膜)をもらすことは公知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、ウレタンポリマーおよびビニルポリマーを基礎としそして分離する傾向のない自己架橋性バインダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリヒドラジド類およびカルボニル基含有ポリウレタン−ビニル−ハイブリッドポリマー分散物より成る自己架橋性の水性バインダーに関する。このものは貯蔵安定性がありそして塗膜形成の間および/または後で、ヒドラジド類とポリウレタン−ビニル−ハイブリッドポリマーのカルボニル基との反応で得られるアゾメチン結合によって低温で架橋し得る。このポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物は、末端−および/または側位ビニル基および場合によっては末端水酸基、ウレタン−、チオウレタン−または尿素基を有するイオン−および/または非イオン安定化ポリウレタンマクロモノマーをカルボニル基含有の他の官能性−並びに非官能性ビニルモノマーと遊離基開始重合することによって製造される。
【0009】
“カルボニル官能性”とはケトン−またはアルデヒド化合物のカルボニル基を意味する。“ヒドラジド官能性”とは有機ヒドラジン−、ヒドラジド−またはヒドラゾン化合物のヒドラジン−、ヒドラジド−またはヒドラゾン基を意味する。バインダー組成物はヒドラジド基とカルボニル基とを1:40〜2:1、好ましくは1:20〜2:1の比で含有している。
【0010】
ポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物の各成分はポリヒドロキシ化合物A、ポリイソシアネートB、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1つの基および少なくとも1つのビニル基を含有しているビニルモノマーC、少なくとも1つの非イオン性親水性基および/または少なくとも1つのイオン−またはイオノゲン基を持つ親水性モノマーDおよびビニルモノマーE──複数の成分Eの内の少なくとも1種類(Ec)はカルボニル官能基を有する──である。これらのポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物はポリヒドラジド類Fとの反応によってアゾメチン結合の形成下に架橋する。
【0011】
ポリヒドロキシ化合物Aは、例えばポリヒドロキシポリエーテルA1、ポリヒドロキシポリエステルA2、ポリヒドロキシポリエステルアミドA3、ポリヒドロキシポリカルボナートA4およびポリヒドロキシポリオレフィンA5から選択する。場合によっては化合物Aに低分子量グリコール類、例えばグリコール自体、ジ−またはトリエチレングリコール、1,2−プロパンジオールまたは1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンおよび多価アルコール類、例えばトリスヒドロキシアルキルアルカン類(例えばトリメチロールプロパン)またはテトラキスヒドロキシアルキルアルカン(例えばペンタエリスリトール)が含まれる。これらのポリヒドロキシ化合物は個々にまたは混合物として使用することができる。
【0012】
ポリヒドロキシポリエーテルA1は例えば式
H−〔−O−(CHR)n −〕m −OH
〔式中、Rは水素原子または炭素原子数6までのアルキル残基であり、この残基 は別の置換基を有していてもよく、nは2〜6の整数でありそしてmは10〜 120の整数である。〕
で表されるポリエーテルジオール類である。例えばポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール、それのコポリマーおよびポリテトラメチレングリコール類がある。400〜5000g /molの分子量を有するポリプロピレングリコール類が有利である。他の適するポリヒドロキシポリエーテルは、3価以上の多価アルコール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールとエポキシド、例えばエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとの反応によって得られる構造式
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、n、n′、n″およびn"'は1・・・・6であり、
mは10・・・・120であり
pは0、1、2でありそして
Yは水素原子またはアルキル基である。〕
で表される枝分かれしたポリヒドロキシポリエーテル類である。
【0015】
ポリヒドロキシポリエステルA2はポリカルボン酸またはそれの酸無水物を有機ポリヒドロキシ化合物でエステル化することによって製造される。ポリカルボン酸およびポリヒドロキシ化合物は脂肪族−、芳香族−または混合された脂肪族−/芳香族化合物である。適するポリヒドロキシ化合物にはアルキレングリコール類、例えばグリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、および多価アルコール類、例えばトリスヒドロキシアルキルアルカン類(例えばトリメチロールプロパン)またはテトラキスヒドロキシアルキルアルカン類(例えばペンタエリスリトール)がある。分子中の炭素原子数2〜18の適するポリカルボン酸には例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、テトラクロロフタル酸、トリメリット酸およびピロメリット酸がある。これらの酸の変わりにそれらの酸無水物も存在する限り使用することが可能である。二量体−および三量体脂肪酸もポリカルボン酸として用いることができる。
【0016】
他の適するポリヒドロキシポリエステルは、例えばε−カプロラクトンとポリオールとの反応によって得ることのできるポリラクトン類から誘導される。かゝる生成物は例えば米国特許第3,169,945号明細書に開示されている。この反応によって得られるポリラクトンポリオールは、末端水酸基が存在していることおよびラクトンから誘導されるポリエステル単位が繰り返されることに特徴がある。この繰り返し分子単位は式
【0017】
【化2】

【0018】
〔式中、nは好ましくは4〜6でありそして置換基Rは水素原子、アルキル残基 、脂環式アルキル残基またはアルコキシ残基であり、その際に12より多い炭 素原子数の置換基を有しておらずそしてラクトン環中の該置換基の全炭素原子 数が12を超えない。〕
で表すことができる。
【0019】
出発物質として使用されるラクトンは、あらゆる所望のラクトンまたはラクトンのあらゆる所望の組合せでもよいが、これらのラクトンは環に少なくとも6個、例えば6〜8個の炭素原子を有しているべきでありそして少なくとも2つの水素置換分が環の酸素基に結合した炭素原子の上に存在しているべきである。出発物質として使用されるラクトンは次の式
【0020】
【化3】

【0021】
〔式中、nおよびRは既に定義した通りである。〕
で表すことができる。
本発明のための有利なラクトン類はnが4であるε−カプロラクトン類である。最も有利なラクトンはnが4でありそして全ての置換基Rが水素原子である非置換のε−カプロラクトンである。このラクトンは、多量に使用できそして優れた性質を持つバインダーをもたらすので、特に有利である。種々の他のラクトン類を個別にまたは組合せて使用することも可能である。
【0022】
ラクトンとの反応に適する脂肪族ポリオールの例には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールがある。
【0023】
ポリヒドロキシポリエステル−アミド類A3は、例えばポリカルボン酸と、ポリヒドロキシ化合物との混合物としてのアミノアルコールとから誘導される。適するポリカルボン酸およびポリヒドロキシ化合物はA2の所に説明しており、一方、適するアミノアルコールの例にはエタノールアミンおよびモノイソプロパノールアミンがある。
【0024】
ポリヒドロキシポリカルボナートA4としては、一般式
【0025】
【化4】

【0026】
〔式中、R′はアルキレン残基である。〕
で表されるポリカルボナートジオール類が有利である。これらのOH−官能性ポリカルボナート類はポリオール類、例えば1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビスヒドロキシ−メチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトール等とジカルボナート類、例えばジメチル−、ジエチル−、ジフェニルカルボナートとの反応によってまたはホスゲンとの反応によって製造できる。かゝるポリオール類の混合物も使用することができる。
【0027】
ポリヒドロキシポリオレフィンA5は例えば少なくとも2つの末端水酸基を持つオリゴマー−のまたはポリマーオレフィンから誘導される。α,ω−ジヒドロキシポリブタジエンが特に有利である。
【0028】
同様に適する他のポリヒドロキシ化合物はポリアセタール類、ポリシロキサン類およびアルキッド樹脂である。
ポリイソシアネートBはポリウレタン化学で一般的に使用されるものである。適するポリイソシアネートの例には、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアネート−2−メチルペンタン、1,12−ジイソシアネートドデカン、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2,3−ジメチルエチレンジイソシアネート、1−メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1−イソシアネートメチル−5−イソシアネート−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4′−イソシアネートシクロヘキシル)プロパン、4,4′−ジイソシアネートジフェニル−エーテル、2,3−ビス(8−イソシアネートオクチル)−4−オクチル−5−ヘキシルシクロヘキセン、テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよび上記のジイソシアネートのイソシアヌレートおよびアロファネート類がある。かゝるポリイソシアネートの混合物も使用できる。
【0029】
モノマーCは少なくとも1つのビニル基および少なくとも1つの、イソシアネートに対して反応性の基、例えば水酸基、メルカプト基およびアミノ基を含有している。炭素原子数25までの脂肪族ヒドロキシビニル化合物が特に有利である。
【0030】
末端ビニル基は、イソシアネート基の数がイソシアネート基に対して反応性である基の数よりも少ない場合、イソシアネート基含有のマクロモノマーを、イソシアネート基に対して反応性である基を持つビニル化合物C1と反応させることによっておよびイソシアネート基含有マクロモノマーをイソシアネート基に対して反応性である2つ以上の基を有するビニル化合物C2と反応させることによって得られる。側位ビニル基は、イソシアネート基の数がイソシアネート基に対し対して反応性の基の数より多い場合には、イソシアネート基含有マクロモノマーとイソシアネート基に対して反応性の2つ以上の基を持つビニル化合物C2との反応によつて得られる。
【0031】
適するモノビニルモノヒドロキシ化合物には、α,β−不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがある。他の例にはアミノ基含有(メタ)アクリレート、モノエポキシドとα,β−不飽和カルボン酸との反応生成物、例えばバーサテック酸グリシジルエステルと(メタ)アクリル酸とのそれ、およびα,β−不飽和グリシジルエステルまたは、エーテルとモノカルボン酸との反応生成物、例えばグリシジルメタクリレートとステアリン酸または亜麻仁油脂肪酸とのそれがある。適するモノビニルジヒドロキシ化合物にはビス(ヒドロキシアルキル)ビニル化合物、例えばグリセロールモノビニルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルおよびグリセロールモノ(メタ)アクリレート、またはトリメチロールプロパンから誘導される相応する化合物がある。他の例にはα,β−不飽和カルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸とジエポキシド、例えばビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール−ジグリシジルエーテルとの付加生成物;ジカルボン酸、例えばアジピン酸、テレフタル酸等とグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物がある。ジビニルジヒドロキシ化合物およびモノビニル−トリヒドロキシ化合物も適しており、例えばペンタエリスリトールから一つまたは二つの水酸基をエーテル化またはビニル化合物にてエステル化することによって製造される。これらの化合物は枝分かれした構造をもたらす。
【0032】
親水性モノマーDはポリイソシアネートDiまたは分子中に親水性基を持つポリヒドロキシ化合物Dhである。Dhの群には、イソシアネートに対して反応性である二つ以上の基を持つ他の親水性基含有化合物、例えば分子中に親水性基を持つポリアミノ−およびポリメルカプト化合物が含まれる。かゝる親水性基は非イオン性の基(n)、例えばポリアルキレンオキシド基、例えばポリエチレンオキシド−またはポリプロピレンオキシド基、またはポリエチレンオキシド基とプロピレンオキシド基との混合基であるかまたは(塩として)イオンの状態で存在するかまたは水の様な極性溶剤と接触させた時にイオンを形成し得る。この場合にはこのモノマーはアニオン基またはアニオノゲン基(a)、例えばカルボキシレート−、スルホナート−またはホスホナート基を有していてもよく、またはカチオン基またはカチオノゲン基(c)、例えば(置換)アンモニウム−またはアミノ基を有していてもよい。
【0033】
Diの種類のモノマー、即ち親水性基を持つポリイソシアネートは末端水酸基を持つウレタンプレポリマーとの反応の場合に使用され、Dhの種類のモノマー、即ちイソシアネートに対して反応性の1つ以上の基を持つ親水性化合物は、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとの反応の場合に使用される。適するDinの種類のモノマーの例には、モノヒドロシポリエーテル類、例えばポリエチレングリコール−モノブチルエーテルと少なくとも3つの官能性を有するポリイソシアネートとの反応生成物がある。
【0034】
Dhnの種類の適するモノマーの例には、異なる反応性の複数の基を持つジイソシアネートとポリアルキレングリコールとを反応させて、イソシアネート官能性が生ぜしめた反応生成物を得、次いでこのイソシアネートをジアルカノールアミン、例えばジエタノールアミンと反応させる。Dhaの種類の適するモノマーには、カルボキシル−、ホスホノ−またはスルホ基の状態でイオン性基を持つジオール類が有利である。この群のモノマーの例には炭素原子数2〜10のビスヒドロキシカルボン酸、例えばジヒドロキシプロピオン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジヒドロキシエチルプロピオン酸、ジメチロール酪酸、2,2−ジヒドロキシコハク酸、酒石酸、ジヒドロキシ酒石酸、ジヒドロキシマレイン酸、ジヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロパンスルホン酸および1,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸がある。これらのモノマーは第三アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリンまたはトリフェニルアミンを用いて、酸性基がイソシアネートと反応するのを回避するために、反応の前に中和するのが有利である。かゝる反応の確率が低い場合には、ポリウレタンマクロモノマー中に酸基が導入された後まで酸基を中和することはできない。
【0035】
Dhcの種類のモノマーの適する例にはモノアルキルジアルカノールアミン類、例えばN−メチルジエタノールアミンまたはジアルキルジアルカノールアンモニウム化合物である。
【0036】
ビニルモノマーEはカルボニル基含有ビニルモノマーEc単独かまたはカルボニル基を持たない他のビニルモノマーEnとの混合物である。
ビニルモノマーEcはビニル基および少なくとも1つのカルボニル基を有している。かゝるビニルモノマーの例にはメチルビニルケトン、(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレートおよび脂肪族ジオールと(メタ)アクリル酸およびアセト酢酸との混合エステルがある。本発明にとって適する他のビニルモノマー、即ちカルボニル基不含のEnの種類には、水性エマルジョン状態での遊離基開始重合できるビニルモノマー、例えば芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、ビニルトルエン類およびビニルナフタレン;ビニルエステル類、例えばビニルアセテート;ビニルハライド類、例えばビニルクロライドまたはビニルフルオライド;ビニルエーテル類;ビニルヘテロ環式化合物、例えばN−ビニルカルバゾール、(メタ)アクリロニトリル;不飽和カルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸、(イソ)クロトン酸またはバーサテック酸と線状または枝分かれしたアルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたは2−エチルヘキサノールとのエステル類、イミド類またはアミド類がある。他の適する例にはこれらのカルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチル−またはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および既にCの所で挙げた他のビニル化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレートがある。
【0037】
ヒドラジド官能基を持つ化合物Fは二つまたはそれ以上のヒドラジン−、ヒドラジド−またはヒドラゾン基を有している。かゝる化合物の例には炭素原子数2〜12のジカルボン酸のビスヒドラジド類、例えば蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸または異性体フタル酸類のビスヒドラジド類;カルボン酸ビスヒドラジド、アルキレン−またはシクロアルキレン−ビス−セミカルバジド類、N,N′−ジアミノグアニジン、アルキレンビスヒドラジン、例えばN,N’−ジアミノピペラジン、アリーレンビスヒドラジン、例えばフェニレン−またはナフチレンビスヒドラジン、アルキレンビスセミカルバジド類、およびジアルデヒド類およびジケトン類のビスヒドラジド類がある。高官能性の化合物Fには例えばニトリロトリ酢酸のまたはエチレンジアミン四酢酸のヒドラジド類がある。
【0038】
本発明のポリウレタン−ビニル−ハイブリッドポリマーは色々なルートで製造することができる。
一つのルートは、最初にポリヒドロキシ化合物AおよびポリイソシアネートBを重付加反応させることによって重付加生成物を製造する。イソシアネート官能性ABiの反応生成物ABをC1の種類のモノマーと次に更に反応させて、生成物ABClを得る。このイソシアネート官能性生成物ABCliは更に、Dhの種類のモノマーと反応して、ABClDhなる反応生成物をもたらす。この工程でイソシアネート基の全てが反応するかまたは末端水酸基がここで生じる場合には、生成物をただちに使用することができ、残る全ての末端イソシアネート基をアルコール類と、第一または第二アミン類とまたはチオール類と反応させて、ウレタン類、尿素類またはチオウレタン類を得、そして次にこれらの生成物を更に使用する。この目的に適する化合物は例えば第一アミン類、例えばプロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、エタノールアミンおよびプロパノールアミン;第二アミン類、例えばジエタノールアミン、ジブチルアミンおよびジイソプロパノールアミン;第一アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ドデカノールおよびステアリルアルコール;第二アルコール、例えばイソプロパノールおよびイソブタノール、および相応するチオアルコール類である。得られる生成物は全て末端ビニル基を有している。
【0039】
反応生成物ABiと多官能性モノマーC2との反応は、末端イソシアネート基を持つ生成物ABC2iを再びもたらすことができ、この場合には全てのビニル基が側位にある。化合物Dhとの続く反応では、完成したウレタンマクロモノマーがもたらされるが、このマクロモノマーは更に上記の通りに処理することができる。イソシアネート官能性が残っている場合には上述の如く更に加工するが、さもなければ直接的に更に使用してもよい。この場合にはモノマーDhがイソシアネートに対して反応性である一つだけの基を含有していてもよい。適する化合物の例にはアミノカルボン酸、アミノスルホン酸、アミノホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸またはヒドロキシスルホン酸、例えばアミノカプロン酸、アミノ酢酸、アミノ酪酸、アミノラウリン酸、ヒドロキシ酪酸、アミノメタンスルホン酸ン、アミノエタンスルホン酸、アミノプロパンスルホン酸または類似のアミノホスホン酸、サリチル酸、ヒドロキシステアリン酸および2−ヒドロキシエタンスルホン酸がある。
【0040】
側位ビニル基および末端ビニル基の両方を有するヒドロキシ官能性構造のABC2hをイソシアネート官能性モノマ−Diと反応させて、ウレタンマクロモノマーを得、イソシアネート基が未だ残っている場合には上記の通り実施する。
【0041】
別の一つの変法は、最初にA、BおよびCから生じる中間体の鎖を、この重付加生成物のイソシアネート基をDhaの種類のモノマー、例えばジアミノカルボン酸またはジアミノスルホン酸と反応させることによって鎖延長するものである。
【0042】
他の有利な反応ルートは、生成物ABiを最初にモノマーDhと反応させてイソシアネート官能基含有の生成物ABDhiを得、これを次にClと反応させて末端ビニル基含有のウレタン−マクロモノマーを得るかまたはC2と反応させて側位ビニル基を持ちそして末端ビニル基を持たないかまたは殆ど持たないウレタンマクロモノマーをもたらす。
【0043】
水酸基官能性ABh含有の反応生成物ABは、モノマーDiとの反応によってイソシアネート官能性構造ABDiをもたらし、これをモノマーClと反応させてビニル末端基含有ウレタン−マクロモノマーを得る。モノマーC2にて側位ビニル基を持つが末端ビニル基を有さないかまたは殆ど持たないウレタンマクロモノマーが得られる。操作はイソシアネート官能基が残っている場合には、上記の通りである。
【0044】
別々の段階で上記の反応を実施する替わりに、より少ない反応段階で、例えば2段階または1段階で実施することができる。
ウレタン−マクロモノマーは、ウレタン化学の慣用の方法および公知の方法で製造される。これらの方法では使用する触媒は第三アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンおよびジアザビシクロオクタン、およびジアルキル錫(IV)化合物、例えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライドおよびジメチル錫ジラウレートでもよい。反応は溶剤を用いずに溶融状態で、溶剤の存在下にまたはいわゆる反応性希釈剤の存在下に行う。適する溶剤には、蒸留によってまたは水での共沸蒸留によって除くことのできるもの、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエンおよびキシレンがある。これらの溶剤は、ポリウレタン−マクロモノマーの製造後にまたは遊離基重合の後に完全にまたは部分的に留去することができる。更に、水希釈性の高沸点溶剤、例えば分散物中に残るN−メチルピロリドンを用いることも可能である。反応性希釈剤には、最終段階でビニル基含有マクロモノマーと共重合されるビニルモノマーEが適する。
【0045】
上記の変法で得られるマクロモノマーは、かゝる基を含むモノマー中のイオン基が中和状態で未だ使用されていない場合に、次に中和する。
酸性化合物の中和はアルカリ金属水酸化物の水溶液またはアミン類、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、トリフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルエタノールアミン、アミノメチルプロパノールまたはジメチルイソプロパノールアミンを用いてまたはアンモニアを用いて実施する。中和の他にアミン類とアンモニアとの混合物を用いて実施してもよい。アルカリ性化合物は、例えば無機酸、例えば塩酸または硫酸、または有機酸、例えば酢酸を用いて中和する。
【0046】
本発明のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物の製造には、ビニル基を含有しておりそしてビニルモノマーEを既に含有していてもよい上記の製造変法によって得られるウレタン−マクロモノマーを水の添加によって水性分散物に変えそして、少なくとも1種類だけ(Ec)がカルボニル基を持つ(別の)ビニルモノマーEを添加した後に、自体公知の方法によって遊離基開始重合により重合する。
【0047】
共重合されたビニルモノマーの含有量は、ポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物の固形分含有量を基準として1〜95重量% 、殊に5〜70重量% である。ウレタンマクロモノマー中の軟質セグメントと硬質セグメントとの比は0.30〜6であり、0.8〜3が特に有利である。重合のための適する開始剤には公知の遊離基開始剤、例えばアンモニウム−ペルオキソジスルファート、カリウム−ペルオキソジスルファート、ナトリウム−ペルオキソジスルファート、過酸化水素、有機過酸化物、例えばクメン−ヒドロペルオキシド、第三−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−第三ブチルペルオキシド、ジオクチルペルオキシド、第三ブチル−ペルピバレート、第三ブチル−ペルイソノナノエート、第三ブチル−ペルエチルヘキサノエート、第三ブチルペルネオデカノエート、ジ−2−エチルヘキシル−ペルオキソジカルボナート、ジイソトリデシル−ペルオキソジカルボナート、およびアゾ化合物、例えばアゾビス(イソブチロニトリル)、アゾビス(4−シアノバレリン酸)、または慣用のレドックス系、例えば亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、およびアスコルビン酸および有機過酸化物または過酸化水素がある。更に分子量調整剤(チオール類)、乳化剤、保護コロイドおよび他の慣用の助剤も添加することができる。
【0048】
マクロモノマーの製造を、蒸留によって除くことができそして水と100℃以下の沸点を有する共沸混合物を生じる溶剤、例えばアセトンまたはキシレン中で実施する場合には、この溶剤を蒸留によって分散物から最後に除く。いずれの場合にも結果としてポリウレタン水性分散物が得られる。このポリウレタン分散物の酸価は5〜80単位の間にあり、そして10〜40単位の間が特に有利である。
【0049】
マクロモノマーを製造する好ましい実施態様および該マクロモノマーとビニルモノマーEとを共重合し本発明のポリウレタン−ビニル−ハイブリッドとする好ましい実施態様を以下の方法説明で実証する。
1. 溶剤不含
1.1 補助溶剤を用いない
1.1.1 末端OH基を持つ
100〜150℃、好ましくは120〜135℃の温度でモノマーDh(例えばポリヒドロキシ酸)を所望の場合には1種類以上のモノマーCと一緒におよび場合によっては低分子量ポリオールと一緒に、400〜5000g /molの平均分子量を有するポリヒドロキシ化合物A中に溶解しそしてポリイソシアネートBまたはポリイソシアネート混合物(ここでも以下の実施態様でもイソシアネート官能性ビニルモノマーDiも含有していてもよい)と反応させて、500〜12,000g /mol、特に好ましくは600〜8,000g /molの平均分子量(Mn )を有する末端OH基含有生成物を得る。この生成物を30〜100℃、特に好ましくは50〜70℃の温度に冷却し、イソシアネートに対して反応性でないビニルモノマー(反応性希釈剤)Eおよび少なくとも2官能性であるNCO反応性ビニル化合物C2を添加する。この温度で反応を、OH成分に対して不足する量で存在するポリイソシアネートBを更に添加することによって継続し、700〜24,000g /mol、特に好ましくは800〜16,000g /molの平均分子量を有するOH基官能性ポリウレタンマクロモノマーを得る。アミンまたは他の塩基で中和した後に、得られる樹脂溶液を水に分散させる。得られる分散物に別のビニル−コモノマーEcおよび場合によってはEnを遊離基重合の前または間に添加する。次いでビニル化合物の重合を、0〜95℃、特に好ましくは40〜95℃の温度で遊離基開始剤を用いて水性分散物中で実施し、そしてレドックス系を使用する場合には、30〜70℃の温度で実施する。この反応で溶剤不含のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物が生じる。
【0050】
1.1.2 末端ウレタン−、チオウレタン−または尿素基を持つ
100〜150℃、好ましくは120〜135℃の温度でモノマーDh(例えばポリヒドロキシ酸)を所望の場合には低分子量ポリオールと一緒におよび場合によっては1種類以上のモノマーCと一緒に、400〜5000g /molの平均分子量を有するポリヒドロキシ化合物A中に溶解しそしてポリイソシアネートBまたはポリイソシアネート混合物と反応させて、500〜12,000g /mol、特に好ましくは600〜8,000g /molの平均分子量(Mn )を有する末端OH基含有生成物を得る。この生成物を30〜100℃、特に好ましくは50〜70℃の温度に冷却し、イソシアネートに対して反応性でないビニルモノマー(反応性希釈剤)Eおよび少なくとも2官能性であるNCO反応性ビニル化合物C2を添加する。この温度でポリイソシアネートBを、NCO末端基含有樹脂の合成のために添加しそして、アルコール類、第一−または第二アミン類およびチオール類から選択される単官能性イソシアネート反応性化合物と更に反応させた後に、反応を継続して、ウレタン−、チオウレタン−または尿素基を介して結合した末端親水性基を持つそして700〜24,000g /mol、特に好ましくは800〜16,000g /molの平均分子量を持つポリウレタンマクロモノマーを得る。こうして得られる樹脂溶液をアミンまたは他の塩基で中和した後に、水で分散させる。別のビニル−コモノマーEcおよび場合によってはEnを遊離基重合の前または間に得られる分散物に添加する。次いで重合を、0〜95℃、特に好ましくは40〜95℃の温度で遊離基開始剤を用いて水性分散物中で実施し、そしてレドックス系を使用する場合には、30〜70℃の温度で実施する。この反応で溶剤不含のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物が生じる。
【0051】
1.2 補助溶剤を用いる
1.2.1 末端OH基を有する
1.1.1の方法と相違して、この場合にはイソシアネートに対して反応性である成分A、CおよびDhの全てを、分別蒸留によって水性相から除くことができるかまたは水と共沸混合物を形成する溶剤に溶解しそしてポリイソシアネートBとまたはポリイソシアネート混合物と直接的に反応させて、500〜30,000g /mol、好ましくは700〜20,000g /molの分子量を有する末端OH基含有ポリウレタン−マクロモノマーを得る。溶剤含有量はポリウレタン−マクロモノマーの固形分含有量を基準として1〜80重量% 、好ましくは10〜50重量% である。この段階の温度は30〜100℃、特に好ましくは50〜80℃である。アミンまたは他の塩基で中和した後に、生成物は水に分散させる。次に補助溶剤を場合によっては減圧下に蒸留によって水性相から除く。ビニル−モノマーEcおよび場合によってはEnを遊離基重合の前または間に溶剤不含分散物に添加する。次いで重合を、0〜95℃、特に好ましくは40〜95℃の温度で遊離基開始剤を用いて実施し、そしてレドックス系を使用する場合には、30〜70℃の温度で実施し、溶剤不含のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物が生じる。
【0052】
1.2.2 末端ウレタン基、チオウレタン基または尿素基を持つ
1.1.2の方法と相違して、この場合にはイソシアネートに対して反応性である成分A、CおよびDhの全てを、分別蒸留によって水性相から除くことができるかまたは水と共沸混合物を形成する溶剤に溶解しそしてポリイソシアネートBとまたはポリイソシアネート混合物と直接的に反応させて、末端NCO基含有ウレタン−マクロモノマーを得る。溶剤含有量は、ポリウレタン−マクロモノマーの固形分含有量を基準として1〜80重量% 、好ましくは10〜50重量% である。この段階の温度は30〜100℃、特に好ましくは50〜80℃である。アルコール類、第一−または第二アミン類およびチオール類から選択されるイソシアネートに対して反応性である単官能性化合物と更に反応させた後に、ウレタン−、チオウレタン−または尿素基を有しそして500〜30,000g /mol、特に好ましくは700〜20,000g /molの分子量を有するのポリウレタンマクロモノマーを得、この生成物をアミンまたは他の塩基で中和しそして水に分散させる。次に補助溶剤を場合によっては減圧下に蒸留によって水性相から除く。ビニル−モノマーEcおよび場合によってはEnを遊離基重合の前または間に溶剤不含分散物に添加する。次いで重合を、0〜95℃、特に好ましくは40〜95℃の温度で遊離基開始剤を用いて実施し、そしてレドックス系を使用する場合には、30〜70℃の温度で実施し、溶剤不含のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物が得られる。
【0053】
1.2.1および1.2.2に従う方法において適する溶剤は、例えばアセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンおよびキシレンである。
【0054】
2.溶剤含有
非蒸留性補助溶剤、例えばN−メチルピロリドンを用いる場合、操作は1.2.1および1.2.2の方法と全く同様に行うが、分散物の蒸留は省く。重合は1.2.1および1.2.2の方法と同様に実施する。溶剤含有量は、全部のバインダ−分散物を基準として0.1〜30重量% 、特に好ましくは1〜15重量% の範囲にある。
【0055】
本発明のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物はその化学構造のために、沢山の用途、例えば塗料の製造、水希釈性接着剤のためのバインダーとしてまたは印刷インキ用樹脂として適している。
【0056】
室温でも造膜の過程で生じる、本発明の自己架橋性ポリウレタン分散物の架橋反応のために、これらの分散物は熱に敏感な物質、例えば木材、紙およびプラスチックの上に耐薬品性、耐水性および耐熱性の塗膜を形成するのに非常に適している。
【0057】
本発明のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物は非常に広範な基体、例えばセラミック、複合材料、木材(例えば典型的な木材、ベニヤ、チップボードおよびプライウッド、等)、ガラス、コンクリート、皮革および繊維、および特に合成樹脂、例えばポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、RIM−PUR、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−ポリマーおよびこれらの類似物、および金属、例えば鉄、銅、アルミニウム、(亜鉛メッキされた)鋼鉄、真鍮、ブロンズ、錫、亜鉛、チタン、マグネシウムおよびこれらの類似物に適用できる。本発明の分散物は接着促進プライマーおよび/または中間層なしに種々の基体に付着する。これらは他の水性ポリマー分散物およびポリマー溶液、例えばアクリル−および/またはメタクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリ尿素樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニルを基礎とする熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリクロロプレン、ポリアクリロニトリルおよびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー等と組合せることができ、一般にこれらとの相容性がある。これらは増粘作用を示す物質、カルボキシル基含有ポリアクリレートまたはポリウレタン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコールおよび無機系揺変性剤、例えばベントナイト、ナトリウム−マグネシウム−シリケートおよびナトリウム−マグネシウム−弗素−リチウム−シリケートを基礎とするものと組合せることもできる。
【0058】
本発明のポリウレタン分散物は、腐食防止用塗料および/または広範な種々の用途のための中塗り塗料の製造、および特に自動車仕上およびプラスチックの塗装の分野での多重被覆塗料のメタリック−および一体色下塗り塗料の製造におよび合成樹脂塗装の分野での下塗り塗料の製造に適している。本発明のバインダーは特に、あらゆる種類(上記の通り)の基体への下塗り塗料の製造におよび特に木材および金属の被覆に特に適している。この関係では、改善された耐熱性は湿気に対する良好な耐久性と結び付けて非常に重要である。
【0059】
本発明のポリウレタン分散物を基礎とする下塗り塗料の短いフラッシュオフ時間のために、顔料含有下塗り塗料は焼付段階を行うことなしにクリヤラッカーで被覆することができ(ウエット・オン・ウエット塗布法)そして次にこれら塗膜を一緒に焼付けるかまたは強制された条件のもとで乾燥する。本発明のポリウレタン分散物を用いて製造した下塗り塗料は、焼付−または乾燥温度に全く無関係に同じ品質の塗膜をもたらし、その結果このものは自動車の修理剤として自動車の製造ラインの仕上げ工程で焼付塗料として用いることができる。両方の場合に、得られる塗膜は基体と元の上塗り塗膜との両方へ良好な接着性を示しそして高い耐湿性がある。
【0060】
更に塗膜の光沢が湿潤試験の後に目立った損傷がない。
本発明のポリウレタン分散物を用いて水希釈性被覆材料を調製する場合には、塗料工業において慣用の架橋剤、例えば水溶性−または水乳化性メラミンまたはベンゾグアナミン樹脂、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂、水乳化性ポリイソシアネートまたは水乳化性の末端イソシアネート基含有プレポリマー、水溶性−または水分散性ポリアジリジン類およびブロック−ポリイソシアネートを添加してもよい。水性塗料は塗料工業で慣用のあらゆる公知の無機−および/または有機顔料および/または染料を並びに助剤として湿潤剤、消泡剤、均展剤、ワックス、スリップ剤、安定剤、触媒、フィラー、合成樹脂および溶剤を含有していてもよい。
【0061】
本発明の分散物を基礎とする塗料は、上述の物質に当業者の熟知するあらゆる塗装法によって、例えば刷毛塗り、ローラー塗装、流し込み塗装、ナイフ塗装、浸漬塗装および噴霧塗装(空気使用、空気不使用、空気と混合、等)によって塗布できる。
【0062】
本発明のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物は所望のあらゆる基体に接合するために直接的に使用することもできる。特別な接着特性を得るためには、本発明のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物を他のポリマー分散物または−溶液(上記参照)と混合してもよい。更に、耐熱性および剥離強度を改善するためには、架橋剤、例えば水乳化性ポリイソシアネートまたは水乳化性の末端イソシアネート基含有プレポリマー、または水溶性−または水乳化性メラミンまたは−ベンゾグアナミン樹脂を添加してもよい。
【0063】
本発明のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物を基礎とする接着剤は、接着剤工業において慣用される添加物、例えば可塑剤、溶剤、造膜助剤、フィラーおよび合成−および天然樹脂を含有していてもよい。本発明の接着剤は、自動車工業で基体の接合に、例えば内装部品の接合に、および製靴工業において、例えば甲皮に靴の底部を接合するのに特に適している。本発明のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物を基礎とする接着剤の製造および加工は、水性分散物接着剤および溶液接着剤の場合に使用される接着技術の慣用の方法で実施することができる。
【0064】
本発明のポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物は、場合によってはアルキッド樹脂の如き他のバインダーとの混合物として、および可溶性または不溶性染料または−顔料を添加して、印刷インキを製造するのに用いることもできる。
【0065】
[実施例]
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する:
例1:(比較例:非自己架橋性ポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物) 1,6−ヘキサンジオール、イソフタル酸およびアジピン酸から製造される88の水酸基価で2より小さい酸価のポリエステル232.0g を、ジメチロールプロピオン酸23.0g 、1,6−ヘキサンジオール10.9g およびN−メチル−2−ピロリドン82.8g と一緒に90℃に加熱する。次に73.9g のイソホロン−ジイソシアネートを25〜30分にわたって攪拌下に配量供給する。更に60分の後に、メチルメタクリレート80.0g および2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール0.2g を90℃の温度で迅速に添加しそして均一化する。この後でイソホロンジイソシアネート41.3g を10分にわたって配量供給しそしてこの混合物を、遊離イソシアネート基の含有量が秤量使用した各成分の総重量を基準として1.11重量% となるまで、攪拌する。2−ヒドロキシエチル−メタクリレート18.9g を、得られるプレポリマー溶液に添加する。反応を、遊離イソシアネート基がもはや存在しなくなるまで継続する。メチルメタクリレート53.5g およびジメチルエタノールアミン11.4g の添加後に、70℃の温度の水758.0g を激しい攪拌下にプレポリマー溶液に添加する。次いで、80℃の温度で第三ブチル−ヒドロペルオキシド(ジ−第三ブチルペルオキシド中80% 濃度)0.7g を速やかに滴加する。更に30分の後に、水130.0g に溶解したアスコルビン酸1.3g を90分にわたって配量供給する。 得られるポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を室温に冷却しそして5μm の濾布に通して濾過する。分散物は36% の固形分含有量および7.3のpHを有している。
【0066】
例2:(実施例)
1,6−ヘキサンジオール、イソフタル酸およびアジピン酸から製造される88の水酸基価で2より小さい酸価のポリエステル232.0g を、ジメチロールプロピオン酸23.0g 、1,6−ヘキサンジオール10.9g およびN−メチル−2−ピロリドン82.8g と一緒に90℃に加熱する。次に73.9g のイソホロン−ジイソシアネートを25〜30分にわたって攪拌下に配量供給する。更に60分の後に、メチルメタクリレート80.0g および2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール0.2g を90℃の温度で迅速に添加しそして均一化する。この後でイソホロンジイソシアネート41.3g を10分にわたって配量供給しそしてこの混合物を、遊離イソシアネート基の含有量が秤量使用した各成分の総重量を基準として1.11重量% となるまで、攪拌する。2−ヒドロキシエチル−メタクリレート18.9g を得られるプレポリマー溶液に添加する。反応を、遊離イソシアネート基がもはや存在しなくなるまで継続する。メチルメタクリレート37.3g 、ジアセトンアクリルアミド16.0g およびジメチルエタノールアミン11.4g の添加後に、70℃の温度の水658.0g を激しい攪拌下にプレポリマー溶液に添加する。次いで、80℃の温度で第三ブチル−ヒドロペルオキシド(ジ−第三ブチルペルオキシド中80% 濃度)0.7g を速やかに滴加する。更に30分の後に、水130.0g に溶解したアスコルビン酸1.3g を90分にわたって配量供給する。
【0067】
得られるポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を室温に冷却しそして5μm の濾布に通して濾過する。水100g に溶解したアジピン酸ジヒドラジド8.2g を攪拌下に添加する。この分散物は36% の固形分含有量および7.5のpHを有している。
【0068】
例3:(比較例:非自己架橋性ポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物) ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、イソフタル酸およびアジピン酸から製造される41の水酸基価で2より小さい酸価のポリエステル232.0g を、ジメチロールプロピオン酸23.0g および1,4−ブタンジオール2.4g と一緒にメチルエチルケトン175.8g に還流下に溶解する。次に4,4′−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート93.3g を30〜35分にわたって攪拌下に配量供給し、そしてこの混合物を、遊離イソシアネート基の含有量が秤量使用した各成分の総重量を基準として1.16重量% となるまで、攪拌する。2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール0.2g およびバーサテック酸グリシジルエステルとメタクリル酸との反応生成物49.3g を、得られるプレポリマー溶液に添加する。反応を、遊離イソシアネート基がもはや存在しなくなるまで還流温度で継続する。トリエチルアミン13.0g の添加後に、60℃の温度の水1000.2g をこのプレポリマー溶液に激しい攪拌下に添加する。溶剤のメチルエチルケトンを次いで、得られる分散物から減圧下での共沸蒸留によって除く。メチルメタクリレート107.7g 、2−エチルヘキシルアクリレート107.7g および第三ブチル−ヒドロペルオキシド(ジ−第三ブチルペルオキシド中80% 濃度)0.7g の添加後に温度を80℃に高める。更に30分の後に、水130g に溶解したアスコルビン酸1.3g を90分にわたって配量供給する。
【0069】
得られるポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を室温に冷却しそして5μm の濾布に通して濾過する。分散物は35% の固形分含有量および7.4のpHを有している。
【0070】
例4:(実施例)
ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、イソフタル酸およびアジピン酸から製造される41の水酸基価で2より小さい酸価のポリエステル232.0g を、ジメチロールプロピオン酸23.0g および1,4−ブタンジオール2.4g と一緒にメチルエチルケトン175.8g に還流下に溶解する。次に4,4′−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート93.3g を30〜35分にわたって攪拌下に配量供給し、そしてこの混合物を、遊離イソシアネート基の含有量が秤量使用した各成分の総重量を基準として1.16重量% となるまで、攪拌する。2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール0.2g およびバーサテック酸グリシジルエステルとメタクリル酸との反応生成物49.3g を、得られるプレポリマー溶液に添加する。反応を、遊離イソシアネート基がもはや存在しなくなるまで還流温度で継続する。トリエチルアミン13.0g の添加後に、60℃の温度の水900.2g をこのプレポリマー溶液に激しい攪拌下に添加する。溶剤のメチルエチルケトンを次いで、得られる分散物から減圧下での共沸蒸留によって除く。メチルメタクリレート92.3g 、2−エチルヘキシルアクリレート92.3g 、ジアセトアクリルアミド30.8g および第三ブチル−ヒドロペルオキシド(ジ−第三ブチルペルオキシド中80% 濃度)0.7g の添加後に温度を80℃に高める。更に30分の後に、水130g に溶解したアスコルビン酸1.3g を90分にわたって配量供給する。
【0071】
得られるポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を室温に冷却しそして5μm の濾布に通して濾過する。次に水100g に溶解したアジピン酸ジヒドラジド15.8g を添加する。この分散物は34% の固形分含有量および7.6のpHを有している。
【0072】
例5:(比較例:非自己架橋性ポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物) 1,6−ヘキサンジオール、イソフタル酸およびアジピン酸から製造される80の水酸基価で2より小さい酸価のポリエステル285.6g を、ジメチロールプロピオン酸22.1g および1,4−ブタンジオール2.5g 、グリセロール−メタクリレート10.5g および2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール0.2g と一緒にアセトン120g 中に還流下に溶解する。次に4,4′−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート99.3g を30〜40分にわたって攪拌下に配量供給し、そして攪拌を、もはや遊離イソシアネート基が存在しなくなるまで還流温度で継続する。トリエチルアミン12.5g の添加後に、60℃の温度の水1092.2g をこのプレポリマー溶液に激しい攪拌下に添加する。溶剤のアセトンを次いで、得られる分散物から減圧下での蒸留によって除く。メチルメタクリレート90.0g 、n−ブチルアクリレート90.0g および第三ブチル−ヒドロペルオキシド(ジ−第三ブチルペルオキシド中80% 濃度)0.7g の添加後に温度を80℃に高める。更に30分の後に、水130g に溶解したアスコルビン酸1.3g を60分にわたって配量供給する。
【0073】
得られるポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を室温に冷却しそして5μm の濾布に通して濾過する。分散物は34% の固形分含有量および7.2のpHを有している。
【0074】
例6:(実施例)
1,6−ヘキサンジオール、イソフタル酸およびアジピン酸から製造される80の水酸基価で2より小さい酸価のポリエステル285.6g を、ジメチロールプロピオン酸22.1g および1,4−ブタンジオール2.5g 、グリセロール−メタクリレート10.5g および2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール0.2g と一緒にアセトン120g 中に還流下に溶解する。次に4,4′−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート99.3g を30〜40分にわたって攪拌下に配量供給し、そして攪拌を、もはや遊離イソシアネート基が存在しなくなるまで還流温度で継続する。トリエチルアミン12.5g の添加後に、60℃の温度の水992.2g をこのプレポリマー溶液に激しい攪拌下に添加する。溶剤のアセトンを次いで、得られる分散物から減圧下での蒸留によって除く。メチルメタクリレート75.0g 、n−ブチルアクリレート75.0g 、ジアセトンアクリルアミド30.0g および第三ブチル−ヒドロペルオキシド(ジ−第三ブチルペルオキシド中80% 濃度)0.7g の添加後に温度を80℃に高める。更に30分の後に、水130g に溶解したアスコルビン酸1.3g を60分にわたって配量供給する。
【0075】
得られるポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を室温に冷却しそして5μm の濾布に通して濾過する。次に水100g に溶解したアジピン酸ジヒドラジド15.4g を添加する。この分散物は34% の固形分含有量および7.4のpHを有している。
【0076】
新規の自己架橋性ポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物は優れた耐水性、耐溶剤性および耐薬品性に特徴がある。
例1〜6のポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を基礎とする非架橋性−および自己架橋性塗料の比較試験を、家具用基準DIN68861、1B章に従い実施した。湿潤剤Byk346(製造元:Byk Chemie GmbH)および凝集剤のブチルジグリコール(=BDG)を、マホガニーベニヤ木製パネルに分散物を塗布する前に該分散物に添加する。このように製造されたワニスの150μm の厚さのウエット塗膜を試験用パネルに二度塗布する。室温で10日の乾燥段階の後に、後記表に掲載した物質に対する耐久性を測定した。
【0077】
例7:(実施例)
1,6−ヘキサンジオール、イソフタル酸およびアジピン酸から製造される88の水酸基価で2より小さい酸価のポリエステル232.0g を、ジメチロールプロピオン酸23.0g 、1,6−ヘキサンジオール10.9g およびN−メチル−2−ピロリドン82.8g と一緒に90℃に加熱する。次にジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート83.2g を25〜30分にわたって攪拌下に配量供給する。更に60分後にメチルメタクリレート80g および2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール0.2g を90℃の温度で速やかに添加し均一化する。この後にジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート46.5g を10分にわたって配量供給しそしてこの混合物を、遊離イソシアネート基の含有量が、秤量使用した各成分の全重量を基準として1.11重量% となるまで攪拌する。2−ヒドロキシエチルメタクリレート18.9g を得られるプレポリマー溶液に添加する。反応を、遊離イソシアネート基がもはや存在しなくなるまで続ける。メチルメタクリレート37.3g 、ジアセトンアクリルアミド16.0g およびジメチルエタノールアミン11.4g の添加後に、70℃の温度の水672.5g を攪拌下にプレポリマー溶液に添加する。次に80℃の温度で第三ブチル−ヒドロペルオキシド(ジ−第三ブチルペルオキシド中80% 濃度)0.7g を速やかに滴加する。更に30分の後に、水130.0g に溶解したアスコルビン酸1.3g を90分にわたって配量供給する。
【0078】
得られるポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を室温に冷却しそして5μm の濾布に通して濾過する。次に水100g に溶解したアジピン酸ジヒドラジド8.2g を攪拌下に添加する。この分散物は37% の固形分含有量および7.7のpHを有している。
【0079】
例8:(実施例)
1,6−ヘキサンジオール、イソフタル酸およびアジピン酸から製造される88の水酸基価で2より小さい酸価のポリエステル232.0g を、ジメチロールプロピオン酸23.0g 、1,6−ヘキサンジオール10.9g およびN−メチル−2−ピロリドン82.8g と一緒に90℃に加熱する。次にトリレンジイソシアネート(異性体混合物:20% の2,6−異性体、80% の2,4−異性体)57.9g を25〜30分にわたって攪拌下に配量供給する。更に60分後にメチルメタクリレート80g および2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール0.2g を90℃の温度で速やかに添加し均一化する。この後にトルイレンジイソシアネート(異性体混合物:20% の2,6−異性体、80% の2,4−異性体)32.4g を10分にわたって配量供給しそしてこの混合物を、遊離イソシアネート基の含有量が、秤量使用した各成分の全重量を基準として1.11重量% となるまで攪拌する。2−ヒドロキシエチルメタクリレート18.9g を得られるプレポリマー溶液に添加する。反応を、遊離イソシアネート基がもはや存在しなくなるまで続ける。メチルメタクリレート37.3g 、ジアセトンアクリルアミド16.0g およびジメチルエタノールアミン11.4g の添加後に、70℃の温度の水672.5g を烈しい攪拌下にプレポリマー溶液に添加する。次に80℃の温度で第三ブチル−ヒドロペルオキシド(ジ−第三ブチルペルオキシド中80% 濃度)0.7g を速やかに滴加する。更に30分の後に、水130.0g に溶解したアスコルビン酸1.3g を90分にわたって配量供給する。
【0080】
得られるポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を室温に冷却しそして5μm の濾布に通して濾過する。次に水100g に溶解したアジピン酸ジヒドラジド8.2g を攪拌下に添加する。この分散物は36% の固形分含有量および7.2のpHを有している。
【0081】
例9:(実施例)
ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、イソフタル酸およびアジピン酸から製造される41の水酸基価で2より小さい酸価のポリエステル232.0g を、ジメチロールプロピオン酸23.0g および1,4−ブタンジオール2.4g を一緒にメチルエチルケトン175.8g に還流下に溶解する。次にジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート89.1g を30〜35分にわたって攪拌下に配量供給し、そして攪拌を、遊離イソシアネート基の含有量が、秤量使用した各成分の全重量を基準として1.16重量% となるまで還流下に継続する。2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェノール0.2g および、バーサテック酸グリシジルエステルとメタクリル酸との反応生成物49.3g を、得られるプレポリマー溶液に添加する。反応を、遊離イソシアネート基がもはや存在しなくなるまで還流温度で続ける。トリエチルアミン13.0g の添加後に、60℃の温度の水969.0g を激しい攪拌下にプレポリマー溶液に添加する。次いで溶剤のメチルエチルケトンを得られる分散物から減圧下に共沸蒸留によって除く。メチルメタクリレート92.3g 、2−エチルヘキシルアクリレート92.3g 、ジアセトンアクリルアミド30.8g および第三ブチル−ヒドロペルオキシド(ジ−第三ブチルペルオキシド中80% 濃度)0.7g の添加後に温度を80℃に上げる。更に30分の後に、水130.0g に溶解したアスコルビン酸1.3g を90分にわたって配量供給する。
【0082】
得られるポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を室温に冷却しそして5μm の濾布に通して濾過する。次に水100g に溶解したアジピン酸ジヒドラジド15.8g を攪拌下に添加する。この分散物は38% の固形分含有量および7.5のpHを有している。
【0083】
例10:(実施例)
ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、イソフタル酸およびアジピン酸から製造される41の水酸基価で2より小さい酸価のポリエステル232.0g を、ジメチロールプロピオン酸23.0g および1,4−ブタンジオール2.4g を一緒にメチルエチルケトン175.8g に還流下に溶解する。次にトリレンジイソシアネート(異性体混合物:20% の2,6−異性体、80% の2,4−異性体)62.0g を30〜35分にわたって攪拌下に配量供給し、そしてこの混合物を、遊離イソシアネート基の含有量が、秤量使用した各成分の全重量を基準として1.16重量% となるまで還流下に攪拌する。2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェノール0.2g および、バーサテック酸グリシジルエステルとメタクリル酸との反応生成物49.3g を、得られるプレポリマー溶液に添加する。反応を、遊離イソシアネート基がもはや存在しなくなるまで還流温度で続ける。トリエチルアミン13.0g の添加後に、60℃の温度の水942.0g を激しい攪拌下にプレポリマー溶液に添加する。次いで溶剤のメチルエチルケトンを得られる分散物から減圧下に共沸蒸留によって除く。メチルメタクリレート92.3g 、2−エチルヘキシルアクリレート92.3g 、ジアセトンアクリルアミド30.8g および第三ブチル−ヒドロペルオキシド(ジ−第三ブチルペルオキシド中80% 濃度)0.7g の添加後に温度を80℃に上げる。更に30分の後に、水130.0g に溶解したアスコルビン酸1.3g を90分にわたって配量供給する。
【0084】
得られるポリウレタン−アクリル−ハイブリッド分散物を室温に冷却しそして5μm の濾布に通して濾過する。次に水100g に溶解したアジピン酸ジヒドラジド15.8g を攪拌下に添加する。この分散物は37% の固形分含有量および7.0のpHを有している。
【0085】
表:耐水性、耐溶剤性および耐薬品性*)
┌─────────┬───┬───┬───┬───┬───┬───┐
│PU分散物 │ 例1│ 例2│ 例3│ 例4│ 例5│ 例6│
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│凝集溶剤BDGa) │ 3% │ 3% │ 3% │ 3% │ 3% │ 3% │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│湿潤剤Byk 346a)│ 0.10%│ 0.10%│ 0.10%│ 0.10%│ 0.10%│ 0.10%│
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│16時間/水 │1〜2│ 0 │1〜2│ 0 │2〜3│0〜1│
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│16時間/50% 濃度エ│ 3 │ 2 │2〜3│ 1 │2〜3│1〜2│
│タノール │ │ │ │ │ │ │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│16時間/インク │ 1 │ 0 │ 1 │ 0 │ 2 │ 1 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│20時間/ジブチル−│ 4 │ 3 │3〜4│ 2 │ 5 │ 3 │
│ フタレート │ │ │ │ │ │ │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│1時間/5%酢酸 │2〜3│ 2 │ 3 │0〜1│ 2 │ 1 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│2分/10% アンモニ│ 2 │ 0 │ 2 │ 0 │ 2 │ 0 │
│ア │ │ │ │ │ │ │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│10秒/アセトン │ 2 │ 1 │2〜3│ 1 │ 3 │ 1 │
└─────────┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
*)評価:0=視覚的に変化なし、5=試験表面が著しく変化しているかまたは崩壊している。
【0086】
暴露時間:第1欄の時間
a):直ぐ使用できる調製物を基準とする重量% のデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン−および/または非イオン安定化ポリウレタン−マクロモノマーをカルボニル基含有の他の官能性−並びに非官能性ビニルモノマーと遊離基開始重合することによって製造されるカルボニル基含有ビニルモノマーEc とカルボニル基不含のビニルモノマーEn との混合物と共重合することによって得られるカルボニル基含有ウレタン−ビニル−ハイブリッドポリマーとポリヒドラジド類とより成る自己架橋性の水性ポリマー分散バインダーにおいて、ポリウレタン−マクロモノマーがイソシアネート基含有マクロモノマーと、イソシアネート基の数がイソシアネートに対して反応性である基の数を超えるという前提条件のもとで、イソシアネート基に対して反応性である2つ以上の基を持つビニル化合物C2とを反応させることによって生成される側位にビニル基を持つポリウレタンマクロモノマーであることを特徴とする、上記自己架橋性の水性ポリマー分散バインダー。
【請求項2】
ポリヒドラジド類が少なくとも2つのヒドラジン−、ヒドラジド−および/またはヒドラゾン基を持つ低分子量の脂肪族−または芳香族−または混合された脂肪族−/芳香族化合物である、請求項 1に記載の自己架橋性の水性バインダー。
【請求項3】
ポリウレタン−ビニル−ハイブリッド分散物中のビニルブロックの含有重量が固形分含有量を基準として1〜95重量% である、請求項1に記載の自己架橋性水性バインダー。
【請求項4】
ウレタンマクロモノマーの製造に使用されるポリヒドロキシ化合物がポリヒドロキシポリエーテル、ポリヒドロキシポリエステルおよびポリヒドロキシポリカルボナートから選択されている、請求項 1〜3のいずれか一つに記載の自己架橋性水性バインダー。
【請求項5】
ウレタンマクロモノマーの製造に使用される親水性化合物がイソシアネート官能性のまたはヒドロキシ官能性のポリアルキレンオキシドおよびヒドロキシ官能性アニオン−、アニオノゲン−、カチオン−またはカチオノゲン化合物から選択されている請求項1〜3のいずれか一つに記載の自己架橋性水性バインダー。
【請求項6】
カルボニル基を持たないビニルモノマーが、炭素原子数1〜12の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸、(イソ)クロトン酸およびビニル酢酸より成る群から選択された不飽和カルボン酸とのエステル;またはビニルエステル;ビニルエーテル;スチレン、ビニルトルエンまたはビニルナフタリンの様な芳香族ビニル化合物より成る群から選択されており:そして少なくとも一つのカルボニル基を持つビニルモノマーが脂肪族不飽和モノ−またはジアルデヒドまたは脂肪族不飽和ケトンから選択されている請求項1〜3のいずれか一つに記載の自己架橋性水性バインダー。
【請求項7】
カルボニル基を持っていないビニルモノマーが炭素原子数1〜12の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである、請求項1〜3および6のいずれか一つに記載の自己架橋性水性バインダー。
【請求項8】
ヒドラジン基の数とカルボニル基の数との比が1:40〜2:1である請求項1〜8のいずれか一つに記載の自己架橋性水性バインダー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載のバインダーを用いる印刷インキ用樹脂において、接着剤においておよび木材、紙、合成樹脂、皮革、繊維物質および金属基体のための塗料において、架橋剤、他の樹脂および別の添加物、例えば顔料、均展剤等と組み合わせて用いる方法。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか一つに記載のバインダーを金属を被覆するための下塗り塗料において用いる方法。
【請求項11】
請求項1〜8の何れか一つに記載のバインダーを木材を塗装するための下塗り塗料において用いる方法。
【請求項12】
請求項1〜8の何れか一つに記載のバインダーをプラスチックを被覆するための下塗り塗料において用いる方法。

【公開番号】特開2006−299274(P2006−299274A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137583(P2006−137583)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【分割の表示】特願平6−258464の分割
【原出願日】平成6年10月24日(1994.10.24)
【出願人】(501282763)ゾルテイア・ジヤーマニー・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト (1)
【Fターム(参考)】