説明

自己炎症性疾患の処置のためのICEインヒビター

本発明は、自己炎症性疾患の処置のための方法と組成物に関する。本発明はまた、自己炎症性疾患を処置するICEインヒビターの能力を評価するためのアッセイにも関する。本発明の化合物は、自己炎症性症候群および関連する症状(これには、Muckle−Wells症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)(家族性寒冷蕁麻疹すなわちFCUとしても知られている)、家族性地中海熱(FMF)、慢性乳児神経性皮膚および間接症候群(CINCAS)(別名新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID))、TNFR1関連周期性症候群(TRAPS)、高IgD周期性発熱症候群(HIDS)、およびブラウ症候群を含むがこれらに限定はされない)、全身発症性若年性突発性関節炎(スティル病としても知られる)およびマクロファージ活性化症候群を伴う特定の疾患の緩和、処置、および/または予防に特に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/574,993号(2004年5月27日出願)について米国特許法第119条(e)の下の優先権を主張し、この米国出願の開示は、本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
自己炎症性疾患は、Muckle−Wells症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)(家族性寒冷蕁麻疹すなわちFCUとしても知られている)、家族性地中海熱(FMF)、慢性乳児神経性皮膚および間接症候群(Chronic Infantile Neurological Cutaneous and Articular Syndrome:CINCAS)(別名新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID))、TNFR1関連周期性症候群(TRAPS)、高IgD周期性発熱症候群(HIDS)、およびブラウ症候群(Blau’s syndrome)を含む関連する症状のグループである(非特許文献1)。
【0003】
これらの症状は、異なる遺伝的特性と表現形の特性を有しているが、それらの臨床所見の一定の特徴(発熱、蕁麻疹、関節痛、漿膜炎、よく見られる合併症としての全身性アミロイドーシス、強い急性期反応、および罹患組織の中での顕著な好中球増加を含む)は共通している。
【0004】
これらの症状は、細胞によるシグナル伝達に関係している種々のタンパク質(特に、インターロイキン−1β変換酵素(ICE、別名カスパーゼ−1)の活性化の調節に関係しているタンパク質)をコードする遺伝子の中の突然変異によって引き起こされる。ICEは、不活性な前駆体であるプロ−インターロイキン−1β(pro−IL−1β)を活性なサイトカインであるインターロイキン−1β(IL−1β)に、さらには、pro−IL−18を成熟した活性なIL−18に変換するプロテアーゼである。これらの調節遺伝子およびタンパク質のうち、例としては、遺伝子CAIS1であり、これは、タンパク質であるクリオピリン(cryopyrin)をコードする。この遺伝子の突然変異、およびクリオピリンの変化によって、ICEの活性化が変化し、結果として、pro−IL−1βからIL−1βへのプロセシングが生じ、そしてMWSおよびFCASを引き起こす(非特許文献2)。
【0005】
MWSの(ならびに、FCAS、FMF、CINCAS、NOMID、TRAPS、HIDS、および他の自己炎症性疾患および症状において推定される)病因におけるIL−1βの重要な役割は、MWSの患者が組み換え体であるヒトインターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(rhuIL−1Ra、アナキンラ(anakinra))での処置に反応し、臨床的な炎症症状の劇的な、迅速な、そして持続性の軽減、血清アミロイドA(急性期炎症反応物質)の減少、およびアミロイドの尿中排泄を伴うことの実証によって説明される。この処置は有効ではあるが、この治療薬を毎日注射することが必要であるとの理由から、その使用には限界がある。
【0006】
アナキンラに反応した完全な臨床的改善は、IL−1が疾患状態の根底にある重要な炎症性サイトカインであり、そして、このような疾患状態が、実際には、その根底にある遺伝的な根拠がまだ決定されていない自己炎症性症候群であるということを示すものであり得る。例としては、全身発症性(systemic−onset)若年性突発性関節炎(soJIA)(スティル病としても知られている)およびマクロファージ活性化症候群が挙げられる。本発明にはまた、これらの適応症も含まれる。
【0007】
本発明には、ICE/カスパーゼ−1について選択的であるか、または他のカスパーゼ(2〜14)の範囲に対して広く活性であるかにはかかわらず、ICE/カスパーゼ−1のインヒビターの使用が記載される。ICEを阻害すること、およびIL−1βの生産を阻害することによるこの処置によって、MWS、FCAS、FMF、CINCAS、NOMID、TRAPS、HIDS、および他の自己炎症性疾患、症状、または症候群の兆候および他の疾患の症状を軽減できるであろう。
【非特許文献1】Gumucioら,Clin.Exp.Rheumatol.,2002年,第20巻,S−45−S−53
【非特許文献2】Hoffmanら,Nat.Genet.,2001年,第29巻,p.301−305
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アナキンラは、Muckle−Wells症候群、家族性寒冷自己炎症性症候群、高IgD症候群、および全身発症性若年性突発性関節炎の処置に有効であることが示されているが、アナキンラはタンパク質であり、したがって、これは、理想的な薬剤学的性質は有していない。したがって、特定の疾患を処置するためには、低分子であり、経口によって活性があるICEインヒビターが必要である。このような化合物は、ICEが役割を担っている上記の疾患状態の処置に極めて有効である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、自己炎症性疾患と関係している特定の疾患(時々、自己炎症性発熱症候群と呼ばれる)、クリオピリンが関係している周期性症候群、ならびに、Muckle−Wells症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)(家族性寒冷蕁麻疹すなわちFCUとしても知られている)、家族性地中海熱(FMF)、慢性乳児神経性皮膚および間接症候群(CINCAS)(別名新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID))、TNFR1関連周期性症候群(TRAPS)、高IgD周期性発熱症候群(HIDS)、およびブラウ症候群のような関連する症候群を処置するための化合物に関する。本発明はまた、アナキンラに反応して完全な臨床的改善を示す特定の疾患を処置するための化合物にも関する。本発明はまた、上記の疾患を処置するための方法にも関係する。
【0010】
本発明はまた、これらの疾患の処置に有用な薬剤を同定するための方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明により、本明細書中で開示される化合物と、その薬学的に受容可能な誘導体が提供される。これらは、自己炎症性症候群および関連する症状(これには、Muckle−Wells症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)(家族性寒冷蕁麻疹すなわちFCUとしても知られている)、家族性地中海熱(FMF)、慢性乳児神経性皮膚および間接症候群(CINCAS)(別名新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID))、TNFR1関連周期性症候群(TRAPS)、高IgD周期性発熱症候群(HIDS)、およびブラウ症候群を含むがこれらに限定はされない)、さらには、全身発症性若年性突発性関節炎(スティル病としても知られている)およびマクロファージ活性化症候群を伴う特定の疾患の緩和、処置、および/または予防に特に有効である。これらの疾患に付随する症候としては、発熱、蕁麻疹、関節痛、漿膜炎、全身性アミロイドーシス、強い急性期反応、および罹患組織の中での顕著な好中球増加が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0012】
本発明の化合物は、哺乳動物におけるこれらの疾患状態を処置するために使用することができる。ICEを阻害する任意の化合物を、本発明の方法および組成物において使用することができる。このような化合物には、ICEを選択的に阻害するこれらの化合物、およびカスパーゼまたはICE/CED−3ファミリーの中の1つ以上の酵素を阻害する化合物が含まれる。
【0013】
本発明の化合物は、ICEを阻害し、そして/またはIL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)のレベルを低下させる。これらの化合物は、例えば、ICEを阻害するそれらの能力、IL−1βおよび/またはIL−18の生産、IL−1および/またはIL−18のレベルの調節、ならびに/あるいは、IL−1βおよび/またはIL−18活性に影響を与えるそれらの能力についてアッセイすることができる。これらの活性のそれぞれを試験するためのアッセイは当該分野で公知である(本明細書中の実施例、WO95/35308、WO97/22619、WO99/47545、またはWO01/90063を参照のこと)。したがって、これらの化合物は、本明細書中に示されるICEおよび/またはIL−1によって媒介される疾患の複数の事象を標的化し阻害することができる。
【0014】
本発明と組み合わせて使用することができる化合物としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられるが、これらに限定はされない:
【0015】
【数1】

2001年4月に行われたカリフォルニア州サンディエゴ(米国)での米国化学会(ACS)会議、
【0016】
【数2】

【0017】
【数3】

(本明細書中で示されるように、これらは全てが引用により本明細書中に組み入れられる)。1つの実施形態においては、本発明で使用される化合物としては、
【0018】
【数4】

2001年4月に行われたカリフォルニア州サンディエゴ(米国)での米国化学会(ACS)会議、
【0019】
【数5】

に記載されているものが挙げられる。別の実施形態においては、本発明で使用される化合物としては、
【0020】
【数6】

に記載されているものが挙げられる。あるいは、本発明で使用される化合物としては、
【0021】
【数7】

に記載されているものが挙げられる。好ましい化合物は、本明細書中の特許請求の範囲に記載されているものである。これらの化合物は、当業者に公知の方法、および本明細書中に記載されている文献に開示されている方法によって得ることができる。
【0022】
したがって、本発明の薬学的組成物および方法は、インビトロまたはインビボでの、IL−1β、IL−18、および他の生体マーカーのレベル、ならびに/または活性の制御に有用である。本発明の組成物および方法は、したがって、インビボでのIL−1β、IL−18、および他の生体マーカーのレベルの制御に、ならびに、特定の症状(本明細書中に記載される疾患、障害、または作用を含む)の進行、重篤度、または作用を処置するかまたは減少させるために有用である。
【0023】
別の実施形態にしたがうと、本発明により、上記のような本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体(例えば、塩)と薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物が提供される。
【0024】
別の実施形態にしたがうと、本発明の組成物にはさらに、別の治療薬が含まれる場合がある。このような薬剤としては、血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノゲン活性化因子およびストレプトキナーゼ)、抗炎症薬、マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビター、リポキシゲナーゼインヒビター、サイトカインアンタゴニスト(TNF、IL−1、IL−6、IL−12、IL−18、またはそれらのレセプターに対する抗体、あるいはそれらに結合するタンパク質が含まれるが、これらに限定はされない)、ケモカインアンタゴニスト、免疫抑制剤、抗ガン剤、抗ウイルス剤、サイトカイン(インターロイキン−1レセプターアンタゴニストまたはアナキンラが含まれるが、これらに限定はされない)、成長因子、免疫調節因子(例えば、ブロピリミン、抗ヒトαインターフェロン抗体、IL−2、GM−CSF、メチオニンエンケファリン、インターフェロンα、ジエチルジチオカルバミン酸塩、腫瘍壊死因子、ナルトレキソン、およびrEPO)、プロスタグランジン、あるいは、抗血管過増殖性の化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0025】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、本発明の化合物と一緒に患者に投与することができ、そしてその薬学的活性を損なうことのない、毒性のないキャリアを意味する。
【0026】
これらの組成物において使用することができる薬学的に受容可能なキャリアとしては、イオン交換体、酸化アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ロウ、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0027】
活性成分として本発明の化合物のみを含む薬学的組成物においては、これらの組成物を投与するための方法にはさらに、別の薬剤を被験体に投与する工程が含まれる場合がある。このような薬剤としては、血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノゲン活性化因子およびストレプトキナーゼ)、抗炎症薬、マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビター、リポキシゲナーゼインヒビター、サイトカインアンタゴニスト(TNF、IL−1、IL−6、IL−12、IL−18、またはそれらのレセプターに対する抗体、あるいはそれらに結合するタンパク質が含まれるが、これらに限定はされない)、ケモカインアンタゴニスト、免疫抑制剤、抗ガン剤、抗ウイルス剤、サイトカイン(インターロイキン−1レセプターアンタゴニストまたはアナキンラが含まれるが、これらに限定はされない)、成長因子、免疫調節因子(例えば、ブロピリミン、抗ヒトαインターフェロン抗体、IL−2、GM−CSF、メチオニンエンケファリン、インターフェロンα、ジエチルジチオカルバミン酸塩、腫瘍壊死因子、ナルトレキソン、およびrEPO)プロスタグランジン、あるいは、抗血管過増殖性の化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。第2の薬剤が使用される場合には、第2の薬剤は、別々の投与形態として投与することができるか、または、本発明の化合物または組成物と一緒に1つの投与形態の一部として投与することができるかの、いずれかである。
【0028】
上記組成物中に存在する化合物の量は、疾患の重篤度またはICEの阻害、IL−1β、IL−18、もしくは他の生体マーカーのレベル、あるいは、IL−1β、IL−18、もしくは他の生体マーカーの活性において検出可能な低下を生じるために十分でなければならない。
【0029】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩がこれらの組成物に利用される場合は、これらの塩は、無機もしくは有機の酸または塩基から誘導されることが好ましい。このような酸性塩には以下が含まれる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳塩、カンホルスルホナート、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルクロン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、へプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニル−プロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩。塩基性塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、有機塩基を含む塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン)、ならびにアルギニン、リジンなどのようなアミノ酸を含む塩などが挙げられる。
【0030】
また、塩基性窒素を含む基は、ハロゲン化低級アルキル(例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、およびヨウ化ブチル);ジアルキル硫酸塩(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、および硫酸ジアミル);長鎖ハロゲン化物(例えば、塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチル、塩化ステアリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチル、臭化ステアリル、ヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチル、およびヨウ化ステアリル);ハロゲン化アラルキル(例えば、臭化ベンジルおよび臭化フェネチル)などの薬剤で四級化することができる。それによって、水溶性または油溶性、あるいは水分散性または油分散性産物が得られる。
【0031】
本発明の組成物および方法で利用される化合物はまた、選択的な生物学的特性を高めるために、適切な官能基を結合させることによって修飾することができる。このような修飾は当該分野で公知であり、これには、所定の生物学的システム(例えば、血液、リンパ系、または中枢神経系)への生物学的浸透を増大させる修飾、経口による有効性を高めるための修飾、注射による投与を可能にするための溶解度を増大させる修飾、代謝を変化させる修飾、および/または排出速度を変化させる修飾が含まれる。
【0032】
好ましい実施形態にしたがうと、本発明の組成物は、被験体または患者(例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒト)への薬剤の投与のために処方される。このような薬学的組成物は、被験体における自己炎症性疾患を緩和、処置または予防するために使用され、これには、ICEを阻害する化合物と薬学的に受容可能なキャリアが含まれる。
【0033】
本発明のこのような薬学的組成物は、経口で、非経口に、噴霧吸入によって、局所的に、直腸から、鼻腔に、舌下に、膣に、または埋め込まれたレザーバーによって投与することができる。用語「非経口に」には、本明細書中で使用される場合は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病変内、および頭蓋内への注射および注入技術が含まれる。組成物は、経口投与されるかまたは静脈内に投与されることが好ましい。
【0034】
本発明の組成物の滅菌の注射可能な形態は、水性懸濁液である場合も、また、油性懸濁液である場合もある。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤と懸濁剤を使用して、当該分野で公知の技術にしたがって処方することができる。滅菌の注射可能な調製物はまた、毒性のない非経口用の受容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌の注射可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)である場合もある。中でも、使用することができる受容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液、および等張性の塩化ナトリウム溶液である。加えて、滅菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として通常使用される。この目的については、任意のブレンドされた不揮発性油を使用することができ、これには、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドが含まれる。脂肪酸(例えば、オレイン酸)およびそのグリセリド誘導体は、それらが自然界に存在している薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油およびヒマシ油)であるので、特に、それらのポリオキシエチレン化されたバージョンにおいて、注射用物質の調製に有用である。これらの油溶液または懸濁液にはまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤(これらは、乳濁液および懸濁液を含む薬学的に受容可能な投与形態の処方に一般的に使用されている))も含まれる場合がある。他の一般的に使用されている界面活性剤(例えば、Tween、Span、および他の乳化剤または生体利用可能なエンハンサー(これらは、薬学的に受容可能な固体、液体、または他の投与形態の製造に一般的に使用されている))もまた、処方の目的のために使用することができる。
【0035】
固体のキャリアが使用される場合は、調製物は、硬ゼラチンカプセルに入れられた錠剤の形態、粉末またはペレットの形態、あるいは、トローチ剤または薬用キャンディーの形態にすることができる。固体のキャリアの量は、例えば、約25mgから800mgまで、好ましくは、約25mgから400mgまでで変化させることができる。液体のキャリアが使用される場合には、調製物は、例えば、シロップ剤、乳濁物、軟ゼラチンカプセル、滅菌の注射可能な液体(例えば、アンプルまたは非水性の液体懸濁液の形態)にすることができる。組成物がカプセル剤の形態である場合には、任意の日常的に行われているカプセル化が適しており、例えば、硬ゼラチンカプセル殻の中で上記のキャリアが使用される。
【0036】
シロップ処方物は、香味剤または着色剤を含む液体のキャリア(例えば、エタノール、グリセリン、または水)中の化合物の懸濁液または溶液から構成され得る。エアゾール調製物は、液体のキャリア(例えば、水、エタノール、またはグリセリン)中の化合物の溶液または懸濁液から構成され得;一方、粉末の乾燥エアゾールにおいては、調製物には、例えば、湿潤剤が含まれ得る。
【0037】
本発明の処方物には、有効成分が、それについての1つ以上の薬学的に受容可能なキャリア(単数または複数)、および状況に応じて任意の他の治療用成分(単数または複数)と一緒に含まれる。キャリア(単数または複数)は処方物の他の成分と適合性であり、そしてそのレシピエントに対して有害ではないという意味で、「受容可能」でなければならない。
【0038】
本発明の薬学的組成物は、任意の経口によって受容される投与形態(これには、カプセル剤、錠剤、および水性の懸濁液または溶液が含まれるが、これらに限定はされない)で経口投与することができる。経口で使用される錠剤の場合には、一般的に使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが挙げられる。潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)もまた、通常添加されている。カプセル形態での経口投与については、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性の懸濁液が経口での使用に必要である場合には、活性成分は、乳化剤および懸濁剤と混合される。所望される場合には、特定の甘味剤、香味剤、または着色剤もまた添加される場合がある。
【0039】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与される場合もある。これらは、薬剤を、室温では固体であるが、直腸の温度では液体であり、したがって直腸で融解して薬剤を放出する適切な刺激性のない賦形剤と混合することによって調製することができる。このような物質としては、ココアバター、ミツロウ、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0040】
本発明の薬学的組成物はまた、特に、処置の標的に局所投与によって容易に接近することができる領域または臓器が含まれる場合には、局所投与される場合もある。これには、眼疾患、皮膚疾患、または下部腸管の疾患が含まれる。適切な局所用処方物は、これらの領域または臓器のそれぞれについて容易に調製される。
【0041】
下部腸管への局所投与は、直腸用の坐剤処方物(上記を参照のこと)で、または適切な浣腸剤処方物で行うことができる。局所用の経皮パッチもまた使用することができる。
【0042】
局所投与については、薬学的組成物は、1つ以上のキャリアの中に懸濁させられたかまたは溶解させられた活性成分を含む適切な軟膏に処方される場合がある。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとしては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウ、および水が挙げられるが、これらに限定はされない。あるいは、薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアの中に懸濁させられたかまたは溶解させられた活性成分を含む、適切なローション剤またはクリーム剤に処方することができる。適切なキャリアとしては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0043】
眼科的な使用については、薬学的組成物は、等張性のpHが調節された滅菌の生理食塩水中の微粉化懸濁液として、または、好ましくは、等張性のpHが調節された滅菌の生理食塩水中の溶液として、保存剤(例えば、塩化ベンジルアルコニウム)を伴うかまたは伴わないかのいずれかで、処方される場合がある。あるいは、眼科的な使用については、薬学的組成物は、ワセリンのような軟膏に処方される場合がある。
【0044】
本発明の薬学的組成物はまた、鼻腔エアゾールまたは吸入によって投与される場合もある。このような組成物は、薬学的処方物の分野で周知である技術にしたがって調製され、そしてベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、生体利用性を高めるための吸収促進剤、過フッ化炭化水素、および/または当該分野で公知の他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製することができる。
【0045】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤の形態および特性が、混合される活性成分の量、投与経路、および他の周知の変数によって決定されることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0046】
上記化合物および組成物はまた、特定の疾患に関係する治療への応用にも有用である。
【0047】
このような特定の疾患としては、クリオピリンが関係している周期性症候群(Muckle−Wells症候群、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS、家族性寒冷蕁麻疹すなわちFCUとしても知られている)、慢性乳児神経性皮膚および間接症候群(別名新生児期発症多臓器系炎症性疾患)を含む)、家族性地中海熱、TNFR1関連周期性症候群(TRAPS)、高IgD周期性発熱症候群(HIDS)、およびブラウ症候群のような自己炎症性症候群が挙げられる。まだ決定されていない遺伝的根拠がその根底にある他の自己炎症性症候群としては、全身発症性若年性突発性関節炎(soJIA)(スティル病としても知られている)およびマクロファージ活性化症候群を挙げることができる。
【0048】
本発明の化合物は、IL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)の放出を阻害することができ、したがって、本明細書中に記載されている特定の疾患のいくつかの生理学的作用を阻害またはブロックするために有用であり得る。
【0049】
本発明はまた、(1)細胞からのIL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)の放出を阻害すること、そして/または(2)ヒトを含む哺乳動物での異常に高いIL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)の組織レベルの望ましくない有害な毒性作用または致死作用を防ぐことによる、特定の疾患(特に、自己炎症性疾患)を処置するための治療方法にも関する。この方法には、哺乳動物に、有効ICE阻害量の1つ以上のICE/CED−3インヒビターを投与する工程が含まれる。この方法はまた、以下を含む罹患しやすい特定の疾患の予防的処置または予防のためにも使用することができる:Muckle−Wells症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群および関連する症候群、例えば、クリオピリンが関係している周期性症候群、寒冷自己炎症性症候群(FCAS、家族性寒冷蕁麻疹すなわちFCUとしても知られている)、家族性地中海熱(FMF)、慢性乳児神経性皮膚および間接症候群(CINCAS)(別名新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID))、TNFR1関連周期性症候群(TRAPS)、高IgD周期性発熱症候群(HIDS)、およびブラウ症候群、全身発症性若年性突発性関節炎、スティル病、およびマクロファージ活性化症候群。本発明によって、それが必要なヒトを含む哺乳動物に、有効量のそのような化合物を投与することによってこれらの障害を処置するための方法が提供される。
【0050】
化合物は、これらの環境のそれぞれにおいて、ICEを阻害すること、IL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)の放出をブロックすること、あるいはIL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)レベルおよび活性を低下させること、さらには、IL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)の過剰なレベルの病態生理学的作用を低下させることによって、特定の疾患の停止または解決を直接促進し、そして正常な機能の回復を促進する。まとめると、これらの作用は、特定の疾患を処置することにおけるそれらの新規の使用に関する。
【0051】
ICEの阻害は、当該分野で公知であり、本明細書中にさらに十分に記載される方法によって測定することができる。
【0052】
句「IL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)の放出の阻害」は以下を意味する:
a)ヒトのような哺乳動物におけるインビボでのIL−1βおよび/またはIL−18のレベルの低下;
b)インビトロまたはインビボでのIL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)のレベルのダウンレギュレーション;あるいは、
c)IL−1βおよびIL−18の合成の直接的な阻害、または、インビボもしくはインビトロの翻訳後事象の阻害、ならびに、IL−1αの間接的な阻害による、IL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)活性のダウンレギュレーション。
【0053】
これらの化合物は、単球、マクロファージ、神経細胞、内皮細胞、上皮細胞、間質細胞(例えば、線維芽細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞)、および多くの他のタイプの細胞による、IL−1の放出(特に、IL−1βおよびIL−18の放出)を阻害することに有用であり得る。
【0054】
用語「症状」または「状態」は、被験体において有害な生物学的結果を生じる任意の疾患、障害、または作用を意味する。
【0055】
患者の血液または細胞中、あるいは細胞培養物中(すなわち、細胞または細胞培養倍地中)のIL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)のレベルは、例えば、活性なIL−1βおよびIL−18(IL−1αが含まれるが、これらに限定はされない)の存在の結果として生じることが公知である、IL−1βまたはIL−18への、あるいは他のタンパク質への免疫特異的結合をアッセイすることによって決定することができる。このような方法は当該分野で公知である。例えば、使用できる免疫アッセイとしては、競合アッセイシステムおよび非競合アッセイシステム、ウェスタンブロット、放射免疫測定、ELISA(酵素結合免疫吸着測定)、「サンドイッチ」免疫測定、免疫沈降測定、沈殿反応、ゲル拡散沈殿反応、免疫拡散法、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法、プロテインA免疫測定法、および標識された抗体を使用するFCAS分析が挙げられるが、これらに限定はされない。このようなアッセイは当該分野で周知である(例えば、Ausubelら,編,1994、Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkを参照のこと(これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる))。
【0056】
競合結合アッセイはまた、IL−1(特に、IL−1βタンパク質およびIL−18タンパク質)のレベルを決定するためにも使用することができる。競合結合アッセイの1つの例は、放射免疫測定であり、これには、IL−1(特に、IL−1βおよびIL−18)を発現する細胞に由来する標識された(例えば、Hまたは125I)タンパク質の、IL−1βまたはIL−18抗体との、漸増量の未標識のIL−1βまたはIL−18の存在下でのインキュベーションと、標識されたIL−1βまたはIL−18に結合したIL−1βまたはIL−18抗体の検出が含まれる。特定の抗原についての目的の抗体の親和性と、結合解離速度は、Scatchardプロット分析によるデータから決定することができる。第2の抗体との競合もまた、放射免疫測定を使用して決定することができる。この場合、抗原は、標識された化合物(例えば、Hまたは125I)に結合させられた目的の抗体とともに、漸増量の未標識の二次抗体の存在下でインキュベートされる。
【0057】
IL−1βまたはIL−18のレベルは活性によってアッセイすることもでき、例えば、IL−1レベルは、サイトカイン様IL−1βもしくはIL−18、または成長因子の生体活性レベルを決定することができる細胞株によってアッセイすることができる。1つの実施形態にしたがうと、生物学的試料中の生体活性IL−1βのレベルは、遺伝子操作された細胞株をイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドとともにインキュベートすることによって検出される。細胞株は、試験される試料とともにインキュベートされ、細胞株の中の細胞死が青色の強度を決定することによってモニターされる。これは、試験される試料中の生体活性サイトカインまたは成長因子の指標である。患者の血清のIL−1活性のアッセイについては、例えば、Burns(1994)20(1):40−44もまた参照のこと。
【0058】
約0.01から約100mg/kg体重/日の間、好ましくは、約0.5から約75mg/kg体重/日の間、そして最も好ましくは、約1から約50mg/kg体重/日の間の活性成分化合物の投与レベルが、単剤療法に有用である。
【0059】
別の実施形態においては、約2から約200mg/kg体重/日の間、好ましくは、約6から約100mg/kg体重/日の間、そして最も好ましくは、約25から約100mg/kg体重/日の間の活性成分化合物の投与レベルが、単剤療法に有用である。
【0060】
本発明の1つの実施形態にしたがうと、活性成分である本発明の化合物は、1回の投与について約20mgから約10,000mgの間の用量で被験体に投与される。別の実施形態においては、活性成分である本発明の化合物は、1回の投与について約300mgから約2,400mgの間の用量で被験体に投与される。本発明のなお別の実施形態においては、活性成分である本発明の化合物は、1回の投与について約600mgから約1,800mgの間の用量で被験体に投与される。好ましい実施形態においては、本発明の化合物は、1回の投与について約900mgの用量で被験体に投与される。
【0061】
通常、本発明の薬学的組成物は、1日に約1回から5回、あるいは、持続注入として投与される。このような投与は、長期治療または救急治療として使用することができる。単回投与形態を生産するためにキャリア物質と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される宿主、および特定の投与の態様に応じて様々である。典型的な調製物には、約5%から約95%(w/w)の活性のある化合物が含まれる。好ましくは、このような調製物には、約20%から約80%の活性のある化合物が含まれる。
【0062】
本発明の組成物に本発明の化合物と1つ以上の別の治療薬の組み合わせが含まれる場合は、化合物と別の薬剤のいずれもが単剤療法レジメンにおいて通常投与される投与量の約10%から約80%の間の投与量レベルで存在しなければならない。
【0063】
患者の症状が改善すると、本発明の化合物、組成物、または組み合わせの維持量が、必要に応じて投与される場合がある。続いて、投与量または投与頻度、あるいはそれらの両方を、改善された症状が維持されるレベルにまで、症状の関数として、減少させることができる。症状が所望されるレベルにまで緩和されると、処置を中断することができる。しかし、疾患が再発または疾患の症状が現れた場合には、患者に長期間の断続的な処置が必要な場合もある。
【0064】
任意の特定の患者についての特異的な投与量および処置レジメンは、使用される特異的な化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食餌療法、投与のタイミング、排出速度、薬剤の組み合わせ、および処置を行う医師の判断、ならびに処置される特定の疾患の重篤度を含む種々の要因によって様々であることが理解されるべきである。活性成分の量はまた、特定の化合物、および存在する場合には、組成物中の他の治療薬にも依存して変化する。
【0065】
したがって、被験体の疾患を緩和、処置、または予防するための本発明の方法には、本明細書中に記載される任意の化合物、薬学的組成物、または組み合わせを被験体に投与する工程が含まれる。
【0066】
好ましい実施形態においては、本発明によって、上記の疾患の1つを有している哺乳動物を処置する方法が提供される。この方法には、前記哺乳動物に、上記の薬学的に受容可能な組成物を投与する工程が含まれる。この実施形態において、患者に別の治療薬も投与される場合には、これは、本発明の化合物と一緒に1つの投与形態において送達される場合も、また、別々の投与形態として送達される場合もある。別々の投与形態として投与される場合には、他の治療薬は、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物の投与の前に、同じタイミングで、またはその投与後に、投与することができる。
【0067】
本発明の疾患を処置するための化合物または組成物を同定するための方法には、特定の疾患(単数または複数)の作用を緩和する、および/または本発明の特定の疾患(単数または複数)を有している患者の症状を改善するそれらの能力について、複数の化合物または組成物をスクリーニングするための方法が含まれる。本発明の1つの実施形態にしたがうと、高速スクリーニングを、マイクロタイタープレート中の複数のウェルに培養物中の細胞を入れること、個々のウェルに種々の化合物または組成物を添加すること、および対照ウェル中の細胞培養物中に存在するレベルまたは活性に対して、個々の細胞培養物中でのICE阻害および/またはIL−1レベルおよび/または活性を比較することによって行うことができる。本発明にしたがう比較工程に有用な対照としては、化合物または組成物で処理されていない細胞または被験体、およびICEの阻害または活性に対する影響がないことが公知である化合物または組成物で処理した細胞または被験体が挙げられる。本発明の1つの実施形態にしたがうと、化合物または組成物の添加後のデータの回収および分析までの、プレートへの細胞の添加を含む工程を機械によって行うように、高速スクリーニングが自動化される。本発明の比較工程に有用な機器、例えば、標識された目的物(例えば、放射標識された目的物、蛍光標識された目的物、もしくは着色された目的物)またはそれ自体が検出可能である目的物を検出することができる機器は、市販されており、そして/または当該分野で公知である。したがって、本明細書中で開示される特定の疾患の処置に有用な本発明の化合物および組成物は、迅速に、そして効率よくスクリーニングすることができる。
【0068】
本発明の別の実施形態においては、被験体の自己炎症性疾患を緩和、処置、または予防するための化合物または組成物を同定するための方法には、前記被験体に、ICEを阻害する化合物またはその化合物を含む薬学的組成物を投与する工程と、化合物での処置の前および後に被験体におけるICE阻害を比較する工程が含まれる。別の実施形態においては、本発明により、被験体の自己炎症性疾患を緩和、処置、または予防するための化合物または組成物を同定するための方法が提供される。この方法には、前記被験体に、ICEを阻害する化合物またはこの化合物を含む薬学的組成物を投与する工程と、前記化合物での処置の前および後に、前記被験体における自己炎症性疾患についての生体マーカーを比較する工程が含まれる。
【0069】
用語「生体マーカー」は、物理的、機能的、または生化学的指標であり、例えば、生理学的プロセスまたは疾患プロセスの特定の代謝産物の存在である。本発明にしたがうと、炎症についての特定の生体マーカーを、本明細書中に列挙されている自己炎症性疾患の患者のICEを阻害する化合物に対する応答を評価するために使用することができる。これらの炎症についての生体マーカーとしては、インターロイキン−1、インターロイキン−6(全て自己炎症性疾患)、インターロイキン−8(全て自己炎症性疾患)、インターロイキン−18、血清アミロイドA、C反応性タンパク質、赤血球沈降速度(ESR)、ハプトグロビン、TNFα、免疫グロブリン(特に、IgD)、フェリチン、白血球数、血小板数、およびヘモグロビンが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0070】
したがって、本発明によってはまた、自己炎症性疾患を有している被験体において、IL−1β、IL−18、または他の生体マーカーの減少させるための方法が提供される。この方法には、前記被験体に、ICEを阻害する化合物または前記化合物を含む薬学的組成物を投与する工程が含まれる。1つの実施形態においては、被験体における化合物または組成物の血漿濃度は、本発明で教示されるIC50値とほぼ等しいかまたはそれ以上である(例えば、実施例18および19を参照のこと)。別の実施形態においては、被験体中の化合物または組成物の血漿濃度は、約0.2μMから約50μMの間、または約0.8μMから約6μMの間である。なお別の実施形態においては、被験体におけるIL−1β、IL−18、または他の生体マーカーの減少は、(a)前記化合物または組成物での処置前または処置後の前記被験体におけるIL−1β、IL−18、または他の生体マーカーの濃度を、(b)前記化合物または組成物での処置の間の前記被験体におけるIL−1β、IL−18、または他の生体マーカーの濃度に対して比較することによって測定される。本発明にしたがうと、被験体におけるIL−1β、IL−18、または他の生体マーカーの減少の割合は、(a)少なくとも約50%から約100%の減少;(b)少なくとも約50%から約90%の減少;および(c)少なくとも約60%から約90%の減少からなる群より選択される。
【0071】
本明細書中に開示される全ての出願、特許、および参考文献は、引用により本明細書中に組み入れられる。本発明がさらに十分に理解されるように、以下の代表的な、そして試験的な実施例が示される。これらの実施例は説明の目的のためのものにすぎず、決して本発明の範囲の限定とは解釈されない。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸)
【0073】
【化9】

方法A:(S)−(1−フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸メチルエステル
【0074】
【化10】

THF(10ml)中のメチルピペコレートハイドロクロライド(1g,5.57mmol)の撹拌溶液に、フェノチアジンカルボニルクロライド(1.457g,5.57mmol)を添加し、続いてジイソプロピルエチルアミン(2.02ml,11.68mmol)を添加した。得られた溶液を16時間撹拌し、その後酢酸エチルと飽和NHCl水溶液との間で分配した。有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過して蒸発させた。この残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中、15%酢酸エチル)によって精製し、無色の油状物として副題の化合物を得、これを静置すると結晶化した(1.823g,89%):
【0075】
【化11】

方法B:(S)−(1−フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸
【0076】
【化12】

THF(15ml)中の(S)−(1−フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸メチルエステル(0.912g)および水(8ml)の撹拌溶液に、2M NaOH(3.71ml)を添加し、反応混合物を16時間撹拌した。この反応混合物を炭酸水素ナトリウム溶液(50ml)に注ぎ、酢酸エチル(40ml)で抽出した。水相を酸性にし、酢酸エチル(2x75ml)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥させ(MgSO)、濃縮して白色の固形物として副題の化合物を得た(0.709g,81%):
【0077】
【化13】

方法C:[3S/R,4S/R(2S)]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸tert−ブチルエステル
【0078】
【化14】

(S)−(1−フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸(233mg,0.658mmol)、3−アミノ−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−ペンタン酸tert−ブチルエステル(150mg,0.724mmol)、HOBt(98mg,0.724mmol)、DMAP(88mg,0.724mmol)および無水THF(10ml)の撹拌混合物を0℃に冷却し、その後EDC(139mg,0.724mmol)を添加した。この混合物を16時間の間に室温まで温め、次いで減圧下で濃縮した。この残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中、50%酢酸エチル)によって精製し、薄ピンク色の泡状物質として副題の化合物を得た(294mg,82%):
【0079】
【化15】

方法D:[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸tert−ブチルエステル
【0080】
【化16】

無水DCM(10mL)中の[3S/R,4S/R(2S)]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸tert−ブチルエステル(294mg,0.541mmol)の撹拌溶液を、1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール(benziodoxol)−3(1H)−オン(344mg,0.812mmol)により0℃で処理した。得られた混合物を2時間かけて室温まで温め、酢酸エチルで希釈し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液との1:1混合物に注いだ。有機層を除去し、水層を酢酸エチルで再抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、濃縮した。この残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中、30%酢酸エチル)によって精製し、ピンク色の泡状物質として副題の化合物を得た(220mg,75%):
【0081】
【化17】

【0082】
【化18】

方法E:[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸
【0083】
【化19】

無水DCM(5mL)中の[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸tert−ブチルエステル(130mg,0.24mmol)の撹拌氷冷溶液に、トリフルオロ酢酸(5mL)を添加した。この混合物を0℃で0.5時間撹拌し、次いで室温で0.5時間撹拌した。この混合物を減圧下で濃縮し、次いで残渣を乾燥DCM中に溶解した。過剰なトリフルオロ酢酸を除去するために、このプロセスを数回繰り返した。この粘性物質をHPLCグレードの水で2回凍結乾燥し、白色粉末として表題化合物を得た(77mg,66%):
【0084】
【化20−1】

【0085】
【化20−2】

(実施例2)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(2−クロロフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸
【0086】
【化21−1】

方法A〜Eにおいて上記に記載したものと類似の手順を使用して、2−クロロフェノチアジンカルボニルクロライドからこれを調製した(73mg,69%):
【0087】
【化21−2】

【0088】
【化21−3】

(実施例3)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(3−クロロフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸
【0089】
【化22】

方法A〜Eにおいて上記に記載したものと類似の手順を使用して、3−クロロフェノチアジンカルボニルクロライドからこれを調製した(108mg,65%):
【0090】
【化23】

(実施例4)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(3,4−ジクロロフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸
【0091】
【化24】

方法A〜Eにおいて上記に記載したものと類似の手順を使用して、3,4−ジクロロフェノチアジンカルボニルクロライドからこれを調製した(91mg,66%):
【0092】
【化25】

(実施例5)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(2,6−ジクロロフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0093】
【化26】

方法A〜Eにおいて上記に記載したものと類似の手順を使用して、2.7gのジクロロフェノチアジンカルボニルクロライドからこれを調製した(91mg,70%):
【0094】
【化27】

(実施例6)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(カルバゾール−9−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0095】
【化28】

方法A〜Eにおいて上記に記載したものと類似の手順を使用して、9−カルバゾールカルボニルクロライドからこれを調製した(180mg,75%):
【0096】
【化29】

(実施例7)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(6H−フェナントリジン−5−カルボニル)−ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸)
【0097】
【化30】

方法A〜Eにおいて上記に記載したものと類似の手順を使用して、9,10−ジヒドロフェナントリジンカルボニルクロライドからこれを調製した(115mg,61%):
【0098】
【化31−1】

【0099】
【化31−2】

(実施例8)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸、トリフルオロ酢酸塩(化合物1))
【0100】
【化32】

方法A:
(2S)−2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸tert−ブチルエステル
【0101】
【化33】

N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(3mL)中の1H−イミダゾール−2−カルボン酸(0.17g)の溶液を、アラニンtert−ブチルエステルハイドロクロライド(0.22g)、ジイソプロピルエチルアミン(0.27mL)およびHOBT(0.41g)に添加し、その後0℃に冷却し、次いで反応混合物をEDC HCl(0.32g)で処理した。冷却浴を除き、この反応混合物を周囲温度で18時間撹拌し、その後酢酸エチルで希釈した。そしてこれを水およびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮した。この残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中、30%酢酸エチル)によって精製し、無色の油状物として副題の化合物を得た(0.263g,73%):
【0102】
【化34】

方法B:
[3S/R,4S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−ペンタン酸tert−ブチルエステル
【0103】
【化35】

ジクロロメタン(2ml)中の(2S)−2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸tert−ブチルエステル(0.257g)の溶液を0℃に冷却し、その後、トリフルオロ酢酸を滴下し、そして反応混合物を室温まで温めて2時間撹拌し、その後減圧下で蒸発させた。この残渣をジクロロメタン(2回)およびトルエン(2回)と共に同時蒸発させると、必要とされる(2S)−2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸が残り、これをさらに精製することなく使用した(0.40g)。
【0104】
THF(7mL)中の(2S)−2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸および3−アミノ−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−ペンタン酸tert−ブチルエステル(0.254g)の溶液を0℃に冷却し、その後DMAP(0.151g)、ジイソプロピルエチルアミン(0.56mL)、HOBT(0.16g)およびEDC HCl(0.23g)を添加した。この反応混合物を周囲温度で18時間撹拌し、その後減圧下で濃縮した。この残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン中、5%メタノール)によって精製し、無色の固形物として副題の化合物を得た(0.386g,97%):
【0105】
【化36】

方法C:
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)アミノ]−プロピオニルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸tert−ブチルエステル
【0106】
【化37】

ジクロロメタン中の[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−ペンタン酸tert−ブチルエステル(0.381g)の溶液を0℃に冷却し、その後1,1,1トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール−3(1H)−オン(0.476g)を添加した。この混合物を室温で2時間撹拌し、その後さらに1,1,1トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール−3(1H)−オン(0.05g)を添加し、次いで反応混合物を90分間撹拌して、その後減圧下で濃縮した。この残渣を酢酸エチルに溶解し、NaHSO水溶液とNa水溶液との1:1混合物で洗浄した。この有機層を回収し、乾燥させ(MgSO)、そして濃縮した。この残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中、5%メタノール)によって精製し、無色の泡状物質として副題の化合物を得た(319mg,84%):
【0107】
【化38】

方法D:
化合物1
【0108】
【化39】

ジクロロメタン(2ml)中の[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸tert−ブチルエステル(0.31g)の溶液を0℃に冷却し、その後トリフルオロ酢酸を滴下した。そして反応混合物を室温まで温めて2時間撹拌し、その後減圧下で蒸発させた。この残渣をジクロロメタン(2回)と共に同時蒸発させてエーテルのもとで粉砕し、無色の固形物として表題化合物を得た(0.35g):
【0109】
【化40】

(実施例9)
([3S/R,(2S)]−3−{2−[(1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸、トリフルオロ酢酸塩(化合物2))
【0110】
【化41】

方法A〜Dにおいて上記に記載したものと類似の手順を使用して、1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボン酸からこれを調製した(142mg,最終工程に対して90%):(TFA塩として単離した化合物)灰色がかった白色の固形物;
【0111】
【化42】

(実施例10)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−ブチリルアミノ(butyrylamino)}−4−オキソ−ペンタン酸、トリフルオロ酢酸塩(化合物3))
【0112】
【化43】

方法A〜Dにおいて上記に記載したものと類似の手順を使用して、1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボン酸からこれを調製した(147mg、最終工程に対して64%):
【0113】
【化44】

(実施例11)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−3−メチルブチリルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸(化合物4))
【0114】
【化45】

方法A〜Dにおいて上記に記載したものと類似の手順を使用して、1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボン酸からこれを調製した(80g、最終工程に対して85%):白色粉末、
【0115】
【化46】

(実施例12)
([3S/R,(2S)]−3−{2−[(1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−3−メチルブチリルアミノ}−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸(化合物5))
【0116】
【化47】

方法A〜Dにおいて上記に記載したものと類似の手順を使用して、1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボン酸からこれを調製した(90mg、最終工程に対して87%):白色粉末、
【0117】
【化48】

(実施例13)
【0118】
【化49】

([3S/R(2S)]−3−[2−(カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
方法A:(4S)−ベンジル−3−ペンタノイル−オキサゾリジン−2−オン
【0119】
【化50】

−78℃の無水THF(200ml)中の4(S)−(−)−ベンジル−2−オキサゾリジノン(10g,56.43mmol)の溶液を、ヘキサン中のn−ブチルリチウムの2.5M溶液(23.70ml,59.26mmol)で撹拌しながら処理した。この反応混合物を−78℃で30分間撹拌し、その後バレリルクロライド(7.57ml,62.10mmol)を添加した。次いで、この反応混合物を15時間かけて周囲温度まで温め、その後、NHCl溶液で希釈し、酢酸エチルで希釈してブラインで洗浄した。有機相を乾燥させ(NaSO)、濃縮して粘性物質を得た。フラッシュクロマトグラフィー(40/60ヘキサン中、10% EtOAc)によってこれを精製し、無色の油状物として副題の化合物(14.61g,99%)を得た:
【0120】
【化51】

方法B:[4S(3R)]−3−(4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−カルボニル)−ヘキサン酸tert−ブチルエステル
【0121】
【化52】

−78℃のTHF(100ml)中の(4S)−ベンジル−3−ペンタノイル−オキサゾリジン−2−オン(14.20g,54.34mmol)の溶液を、THF中のナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1M溶液(59.80ml,59.77mmol)で10分間にわたって撹拌しながら処理した。この反応混合物を−78℃で30分間撹拌し、その後tert−ブチルブロモ酢酸(10.43ml,70.64mmol)を添加した。次いで、この反応混合物をさらに−78℃で3.5時間撹拌し、NHCl溶液で希釈し、酢酸エチルで希釈してNaHCO溶液およびブラインで連続的に洗浄した。有機相を乾燥させ(NaSO)、濃縮して粘性物質を得た。静置すると白色固形物が形成され、これを40/60 DCM/ヘキサンで再結晶化して白色の固形物として副題の化合物を得た(14.62g,72%):
【0122】
【化53】

方法C:(2R)−2−プロピル−コハク酸1−ベンジルエステル4−tert−ブチルエステル
【0123】
【化54】

−20℃のTHF(80ml)中のベンジルアルコール(4.62ml,44.64mmol)の溶液を、ヘキサン中のn−ブチルリチウムの2.5M溶液(13.36ml,33.48mmol)で撹拌しながら処理した。この反応混合物を40分かけて−5℃まで温め、その後THF(20ml)中の[4S(3R)]−3−(4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−カルボニル)−ヘキサン酸tert−ブチルエステル(8.38g,22.32mmol)の溶液を添加した。この反応混合物を15時間かけて周囲温度まで温め、NHCl溶液および酢酸エチルで希釈し、そしてブラインで洗浄した。この有機相を乾燥させ(NaSO)、濃縮して粘性物質を得た。フラッシュクロマトグラフィー(40/60ヘキサン中、11% EtOAc)によってこれを精製し、無色の油状物として副題の化合物を得た(4.56g,67%):
【0124】
【化55】

方法D:(2R)−2−プロピル−コハク酸1−ベンジルエステル
【0125】
【化56】

0℃の無水DCM(20ml)中の(2R)−2−プロピル−コハク酸1−ベンジルエステル4−tert−ブチルエステル(4.56g,14.88mmol)の撹拌溶液を、無水DCM(10ml)中のトリフルオロ酢酸(10ml)の溶液で処理した。この反応混合物を3時間にわたって周囲温度に温め、減圧下で濃縮した。残渣を乾燥DCM中に溶解し、その後再度濃縮した。過剰なトリフルオロ酢酸を除去するためにこのプロセスを数回繰り返すと、粘性物質として副題の化合物が残った(3.70g,99%):
【0126】
【化57】

方法E:(2R)−2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタン酸ベンジルエステル
【0127】
【化58】

−78℃の無水THF(30ml)中のカルバゾール(2.49g,14.88mmol)の撹拌溶液を、THF中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(14.88ml,14.88mmol)で処理した。反応混合物を2時間にわたって周囲温度まで温め、再度−78℃に冷却した。
【0128】
0℃の無水DCM(20ml)中の(2R)−2−プロピル−コハク酸1−ベンジルエステル(3.70g,14.78mmol)の撹拌溶液を、オキサリルクロライド(1.43ml,16.37mmol)およびDMF(14滴)で処理した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、その後真空下で濃縮した。この残渣を無水THF(10mL)中に溶解し、前もって−78℃に調製したカルバゾールのリチウムアニオンに添加した。反応混合物を40時間にわたって周囲温度に温め、その後NHCl溶液、酢酸エチルで希釈し、そして2N HCl、NaHCO溶液およびブラインで連続的に洗浄した。この有機相を乾燥させ(NaSO)、濃縮して粘性物質を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(40/60ヘキサン中、10% EtOAc)によって精製して半固体/油状物として副題の化合物を得た(4.50g,76%)。この化合物もまたカルバゾールを含んでいた:
【0129】
【化59】

方法F:(2R)−2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタン酸
【0130】
【化60】

EtOAc(60ml)中の(2R)−2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタン酸ベンジルエステル(4.50g,11.26mmol)の撹拌溶液を、炭素上10%Pd(約400mg)で処理し、次いで反応混合物を水素雰囲気下に配置した。1時間後、炭素上10%Pd(約300mg)をさらに添加し、撹拌しながら反応混合物を水素下にさらに3時間配置した。その後、この反応混合物をセライトパッドを通して濾過し、濃縮して白色の固形物として副題の化合物を得た(2.94g,84%)。この化合物もまたカルバゾールを含んでいた:
【0131】
【化61】

方法G:[3S/R,4S/R,(2R)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−ペンタン酸tert−ブチルエステル
【0132】
【化62】

(2R)−2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタン酸(2.94g,9.50mmol)、3−アミノ−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−ペンタン酸tert−ブチルエステル(2.07g,9.99mmol)、HOBT(1.41g,10.43mmol)、DMAP(1.34g,10.97mmol)および無水THF(40ml)の撹拌混合物を0℃に冷却し、その後EDC(2.00g,10.43mmol)を添加した。この混合物を16時間の間に室温まで温め、次いで減圧下で濃縮した。この残渣をフラッシュクロマトグラフィー(40/60ヘキサン中、33% EtOAc)によって精製し、泡状物質として副題の化合物を得た(2.51g,53%):
【0133】
【化63】

方法H:[3S/R,(2R)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸tert−ブチルエステル
【0134】
【化64】

無水DCM(60ml)中の[3S/R,4S/R,(2R)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−ペンタン酸tert−ブチルエステル(2.51g,5.03mmol)の撹拌溶液を、1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール−3(1H)−オン(2.35g,5.53mmol)で0℃で処理した。得られた混合物を3時間0℃に保ち、DCMで希釈し、次いで飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、NaHCO溶液およびブラインで連続的に洗浄した。この有機物を乾燥させて(NaSO)濃縮した。この残渣をフラッシュクロマトグラフィー(40/60ヘキサン中、25%酢酸エチル)によって精製し、灰色がかった白色の固形物として副題の化合物を得た(1.437g,57%):
【0135】
【化65】

方法I:[3S/R,(2R)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸
【0136】
【化66】

無水DCM(20ml)中の[3S/R,(2R)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸tert−ブチルエステル(1.43g,2.88mmol)の溶液を、無水DCM(10ml)中のTFA(10ml)の溶液で撹拌しながら処理した。この混合物を0℃で2時間撹拌し、次いで室温で2時間撹拌した。減圧下でこの混合物を濃縮し、次いで残渣を乾燥DCM中に溶解した。過剰なトリフルオロ酢酸を除去するためにこのプロセスを数回繰り返した。EtO/40/60ヘキサンでこの灰色がかった白色の固形物を再結晶化して、白色の粉末として表題化合物を得た(71mg):
【0137】
【化67】

(実施例14)
【0138】
【化68】

([3S/R(2S)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−3−メチル−ブチリルアミノ]−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
方法A〜Iに記載したものと類似の手順を使用して、これを調製した。この生成物を白色の粉末として単離した(最終工程に対して71%):
【0139】
【化69】

(生物学的方法)
(実施例15)
ICEの阻害は、当該分野で公知の方法によって測定することができる。
【0140】
MWS、FCU、FMF、CINCAS、NOMID、TRAPS、HIDS、全身発症性若年性突発性関節炎、スティル病、およびマクロファージ活性化症候群、ならびに他の自己炎症性疾患、症状、または症候群の処置におけるICEインヒビターの有効性は、2つの試験によって明らかにすることができる:
(実施例16)
血液試料を、MWS、FCU、FMF、CINCAS、NOMID、TRAPS、HIDS、全身発症性若年性突発性関節炎、スティル病、およびマクロファージ活性化症候群、あるいは、他の自己炎症性疾患または症状を有している患者から採取し、そして全血としてインビトロで培養するか、または末梢血単核細胞(PBMC)の調製のために処理する。IL−1βの生産を、通常の刺激しない条件下で、またはリポ多糖、Staphylococcus aureus、ニゲリシン、またはミリスチン酸ホルボールのような刺激物質の存在下で評価する。ICEインヒビターを、1〜100,000nMの濃度で培養物に添加して、MWS、FCU、FMF、CINCAS、NOMID、TRAPS、HIDS、全身発症性若年性突発性関節炎、スティル病、およびマクロファージ活性化症候群、あるいは、他の自己炎症性疾患、症状、または症候群を有している患者由来の細胞によるIL−1βおよび/またはIL−18の生産を阻害するそれらの能力を明らかにする。
【0141】
(実施例17)
MWS、FCU、FMF、CINCAS、NOMID、TRAPS、HIDS、全身発症性若年性突発性関節炎、スティル病、およびマクロファージ活性化症候群、あるいは、他の自己炎症性疾患または症状の患者を臨床試験に登録して、ICEインヒビターでの処置を受けさせる。薬剤を、適切な経路(経口、静脈内、皮下など)により、1〜4回/日の投与頻度で10〜10,000mgの用量で投与するか、または必要に応じて、疾患、症状、または症候群の症候および他の兆候を制御するように投与する。処置期間は、1日以上の周期的な使用から、患者の生存期間の終わりまでの毎日の使用までの範囲であり得る。効力は、発熱、蕁麻疹、関節痛、漿膜炎、全身性アミロイドーシス、強い急性期反応、および罹患組織の中での顕著な好中球のような、臨床的な兆候および症状を減少させるそれらの能力によって明らかにされる。
【0142】
(実施例18)
(健常である対照と比較したFCAS患者のPBMCからのLPSによって刺激されるIL−1βおよびIL−18の放出の化合物7による阻害)
クリオピリン(FCASにおいて突然変異しているCAIS1遺伝子によってコードされるタンパク質)は、ICE/カスパーゼ−1の活性化と、pro−IL−1βから活性なIL−1βへのそのプロセシング、さらには,pro−IL−18から活性なIL−18へのそのプロセシングを調節する。突然変異したクリオピリンタンパク質は、ICE/カスパーゼ−1と異なるように相互作用し、そしてICEインヒビター化合物のICE/カスパーゼ−1との相互作用を変化させる様式でICE/カスパーゼ−1の立体構造を変化させることができ、これによって、ICEの活性化、ならびにIL−1βおよびIL−18のプロセシングを阻害する化合物の能力を低下させると予想することができる。したがって、本実施例の実験を、化合物7がFCAS患者の細胞内でICEを阻害できることを確認するために行った。
【0143】
3つの家族によるFCAS患者を、健常である対照と一緒に試験した。FCAS患者は3種類の異なるCIAS1遺伝子突然変異を発現していた。5人の関係のある患者(母親、2人の娘、女である孫、および別の男性の血縁者)は、クリオピリンの中に共通するL353Pの祖先から受け継がれている突然変異を有していた。これは、以前に記載されている(Johnstone RF,Dolen WK,Hoffman HM.A large kindred with familial cold autoinflammatory syndrome.Ann Allergy Asthma Immunol.2003;90(2):233−7)。他の患者は、報告されていない新しい突然変異を有していた。2人の患者(母親と娘)は、CIAS1遺伝子の1976位のヌクレオチドにTからAへの変異を有しており、これによってクリオピリンにおいてM659K置換が生じていた。1人の患者は、CIAS1遺伝子の1573位のヌクレオチドにGからAへの変異を有しており、これによって、報告されていないE525Kアミノ酸置換が生じており、さらに、様々な表現形を有している幾人かの患者においては、以前に記載されたV198Mのバリエーションが含まれていたが、これは正常な対照にも含まれていた。全ての突然変異は、NBS(NACHT)ドメインまたはNBS関連ドメインをコードするエキソン3の中に位置しており、全てが、他のこれまでに報告されている突然変異から3アミノ酸以内に存在しており、突然変異のホットスポットを示唆している試験と一致していた(Neven B,Callebaut I,Prieur AM,Feldmann J,Bodemer C,Lepore L,Derfalvi B,Benjaponpitak S,Vesely R,Sauvain MJ,Oertle S,Allen R,Morgan G,Borkhardt A,Hill C,Gardner−Medwin J,Fischer A,de Saint Basile G.Molecular basis of the spectral expression of CIAS1 mutations associated with phagocytic cell−mediated autoinflammatory disorders CINCA/NOMID,MWS,and FCU.Blood.2004;103(7):2809−15)。
【0144】
全血試料をFCAS患者から、そして健常であるボランティアの対照から採取し、インビトロで培養した。IL−1βの生産を、通常の刺激しない条件下で、ならびに10〜10,000ng/mLの濃度範囲のリポ多糖の存在下で評価した。化合物7を30〜30,000nMの濃度で培養物に添加して、FCAS患者または健常であるボランティア由来の細胞によるIL−1βおよびIL−18の生産を阻害するその能力を観察した。図1は、これらの実験の結果を示す。
【0145】
さらに詳細に、図1Aにおいては、FCAS患者および正常な対照に由来するPBMCを漸増濃度の化合物7(0.03〜30μM)の存在下で10ng/mlのLPSと共に24時間インキュベートした。細胞培養培地中のIL−1βをELISAによって測定し、個々の被験体についての結果を、化合物7を含まない条件下でのIL−1βの放出のレベルに対して正規化した。結果を、3人のFCAS患者と5人の対照患者について、平均±SEMで報告した。LPSで刺激したIL−1βは化合物7によって阻害され、正常な被験体由来のPBMCの効力と極めて似た効力を有していた(IC50値は約1μM)。
【0146】
図1Bには、化合物7を含まない条件、または10μMの化合物7の存在下での24時間のLPSに対する暴露後の、FCAS患者または対照被験体由来のPBMCによるIL−1βの放出を示す。結果は、7人のFCAS患者と5人の対照患者について、平均±SEMで報告した。LPSは、正常な被験体よりもFCAS患者由来のPBMCによるIL−1βの放出の量をより多く刺激し、FCAS患者のPBMCは、より低い濃度のLPSに対して反応した。それにもかかわらず、LPSで刺激したIL−1βは、正常な被験体由来のPBMCと同様に、10μMの化合物7によって阻害された。
【0147】
図1Cは、化合物7を含まない条件、または10μMの化合物7の存在下での24時間のLPSに対する暴露後の、FCAS患者または対照被験体由来のPBMCによるIL−18の放出を示す。結果は、3人のFCAS患者と3人の対照患者について、平均±SEMで報告する。LPSは、正常な被験体よりもFCAS患者由来のPBMCによるIL−18の放出の量をより多く刺激し、FCAS患者のPBMCは、より低い濃度のLPSに対して反応した。それにもかかわらず、LPSで刺激したIL−18は、正常な被験体由来のPBMCと同じ程度に、10μMの化合物7によって阻害された。
【0148】
これらのデータは、FCAS患者が、LPSでの刺激に対してIL−1βとIL−18の両方の分泌について明らかな過敏反応性を示したことを明らかにしているが、これらのサイトカインの基底分泌の増加、またはpro−IL−1βの基底レベルまたは刺激されたpro−IL−1βレベルの変化についての証拠はない。化合物7は、IL−1βおよびIL−18の分泌をブロックし(図1)、これは、FCAS被験体および対照被験体由来のLPSで刺激した細胞においては同等の効力であった。さらに、本明細書中に示したFCAS患者のデータは、FCAS患者のCAIS1遺伝子とそれがコードするクリオピリンタンパク質の突然変異によっては、ICEインヒビター様の化合物7に対するICE/カスパーゼ−1の感度は変わらないことを示唆している。
【0149】
(実施例19)
(漸増濃度の化合物7(0.03〜10μM)の存在下で10ng/mlのLPSとともに24時間インキュベートした4人のMWS患者由来のPBMCからのLPSによって刺激されたIL−1βの放出の化合物7による阻害)
実施例18に記載したように、突然変異したクリオピリンタンパク質は、ICE/カスパーゼ−1と異なるように相互作用し、そしてICEインヒビター化合物のICE/カスパーゼ−1との相互作用を変化させる様式でICE/カスパーゼ−1の立体構造を変化させることができ、これによって、ICEの活性化、ならびにIL−1βおよびIL−18のプロセシングを阻害する化合物の能力を低下させると予想することができる。したがって、本実施例の実験を、化合物7がMWS患者の細胞内でICEを阻害できることを確認するために行った。
【0150】
4人のMWS患者について試験を行い、これらのうちの3人は、262位にアルギニンからトリプトファンへの置換(R262W)を有しており、1人は、350位にスレオニンからメチオニンへの突然変異(T350M)を有していた。
【0151】
全血試料を、MWS患者から採取し、インビトロで培養した。IL−1βの生産を、通常の刺激しない条件下で、および10〜10,000ng/mLの濃度範囲のリポ多糖の存在下で評価した。化合物7を30〜10,000nMの濃度で培養物に添加して、MWS患者または健常であるボランティア由来の細胞によるIL−1βの生産を阻害するその能力を観察した。図2は、これらの実験の結果を示す。
【0152】
さらに詳細に、図2においては、細胞培養培地中のIL−1βをELISAによって測定し、個々の被験体についての結果を、化合物7を含まない条件下でのIL−1βの放出のレベルに対して正規化した。結果を、4人のMWS患者のそれぞれについて別々に報告した。MWS患者由来のPBMCによるLPSで刺激されたIL−1βの放出は、化合物7によって阻害され、正常な被験体由来のPBMCの効力と似た効力を有していた(実施例18で観察したものと同様)このことは、これらのMWS患者のクリオピリン突然変異によっては、化合物7の活性な代謝産物(化合物8)のICE/カスパーゼ−1との相互作用の効力を変化させる様式では、ICE/カスパーゼの活性化は変わらないことを示している。
【0153】
(実施例20)
(錠剤の処方)
以下の実施例21で使用する化合物7の錠剤の組成を、表1に提供する。製剤を、1錠につき300mgの化合物7を提供するように処方した。
【0154】
(表1:化合物7の300mgの錠剤の組成)
【0155】
【表1】

(実施例21)
(14日間にわたって1日3回経口投与した900mgの化合物7に対する4人のMWS患者の臨床反応)
4人のMWS患者を非盲検臨床試験に登録して、化合物7での処置を受けさせた。これらのMWS患者のうち3人は262位にアルギニンからトリプトファンへの置換(R262W)を有しており、1人の患者は、350位にスレオニンからメチオニンへの突然変異(T350M)を有していた。
【0156】
化合物7を、14日間にわたって1日3回、900mgの用量で経口投与した。MWS患者における化合物7の坑炎症活性は、処置期間の間の血清インターロイキン−18、アミロイドA、およびC反応性タンパク質のレベルの顕著な低下によって明らかになった(図3を参照のこと)。化合物7の臨床上の有効性は、発疹、発熱/悪寒、関節痛/筋肉痛、眼の不快感、疲労を含む症状の合計として図3に示す、患者によって報告された臨床症状の減少によって明らかになった(図3を参照のこと)。化合物7はまた、14日間の処置の間に、4人の患者によって良好な耐容性が示された。
【0157】
具体的には、図3Aでは、血清インターロイキン−18(IL−18)を、化合物7での処置の前(−9日目および0日目(第1基準))、処置の間(0日目(第2基準)、7日目、および14日目(第1基準))、ならびに処置後(14日目(第2基準)および21日目)に測定した。平均すると、血清IL−18のレベルは、14日目には55%低下した。4人の患者からのデータを、平均±SEMで報告した。血清IL−18の基底レベルは170〜370pg/mLであり、これは健常である対照被験体において通常観察されるレベルと比較してわずかに高いだけであった。
【0158】
図3Bにおいては、血清アミロイドA(SAA)とC反応性タンパク質(CRP)を、化合物7での処置の前、処置の間、および処置後に測定し、SAAおよびCRPの量は、それぞれ、平均で、75%および65%減少した。SAAの基底レベルは150〜650mg/Lであり、CRPは20〜90mg/Lであった。これらはいずれも、健常である対照被験体と比較すると大幅に高かった。
【0159】
図3Cは、自己報告された患者の症状についての合計スコアが、平均すると処置の間に60%低下したことを示している。個々の症状(発疹、発熱/悪寒、関節痛/筋肉痛、眼の不快感、疲労)を、患者自身によって、ない(0)、ごくわずか(1)、軽度(2)、中度(3)、または重症(4)として毎日評価させ、合計スコアを個々の症状のスコアの合計として計算した(0〜20の範囲)。患者は、処置の開始時には軽度〜中度の症状を有しており(スコア10〜15)、これは、化合物7での処置の間にごくわずかであるレベル(約5のスコア)にまで低下した。
【0160】
したがって、この実施例においては、本発明者らは、ICE/カスパーゼ−1インヒビターである化合物7が、自己炎症性疾患、特に、Muckle−Wells症候群の処置に有効であり、有用であることを明らかにした。その理由は、化合物7の投与によって、血清インターロイキン−18、血清アミロイドA、および血清C反応性タンパク質を含む炎症のマーカーが低下し、そして患者が経験したMWSの症状が軽減したからである。
【0161】
本発明者らは本発明の多数の実施形態について記載したが、本発明者らによる基本的な実施例を、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために変更することができることは明らかである。したがって、本発明の範囲は、例として提示される特定のな実施形態によるのではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1A】図1A〜1Cは、健常なボランティアと比較した、FCAS患者由来の全血によるIL−1βおよびIL−18の生産の化合物7によるインビトロでの阻害を示す。実施例18を参照のこと。
【図1B】図1A〜1Cは、健常なボランティアと比較した、FCAS患者由来の全血によるIL−1βおよびIL−18の生産の化合物7によるインビトロでの阻害を示す。実施例18を参照のこと。
【図1C】図1A〜1Cは、健常なボランティアと比較した、FCAS患者由来の全血によるIL−1βおよびIL−18の生産の化合物7によるインビトロでの阻害を示す。実施例18を参照のこと。
【図2】図2は、MWS患者由来の全血によるIL−1βの生産の化合物7によるインビトロでの阻害を示す。実施例19を参照のこと。
【図3A】図3A〜3Cは、1日3回投与した900mgの化合物7での14日間の処置に対するMWS患者の臨床反応を示す。図3Aにおいては、血清インターロイキン−18が、14日目に平均で55%減少した。図3Bにおいては、血清の急性期反応物質である血清アミロイドタンパク質A(SAA)とC反応性タンパク質(CRP)が、それぞれ、平均すると75%および65%減少した。図3Cにおいては、自己報告による患者の総合的な症状が、平均すると処置の間に60%軽減した。実施例21を参照のこと。
【図3B】図3A〜3Cは、1日3回投与した900mgの化合物7での14日間の処置に対するMWS患者の臨床反応を示す。図3Aにおいては、血清インターロイキン−18が、14日目に平均で55%減少した。図3Bにおいては、血清の急性期反応物質である血清アミロイドタンパク質A(SAA)とC反応性タンパク質(CRP)が、それぞれ、平均すると75%および65%減少した。図3Cにおいては、自己報告による患者の総合的な症状が、平均すると処置の間に60%軽減した。実施例21を参照のこと。
【図3C】図3A〜3Cは、1日3回投与した900mgの化合物7での14日間の処置に対するMWS患者の臨床反応を示す。図3Aにおいては、血清インターロイキン−18が、14日目に平均で55%減少した。図3Bにおいては、血清の急性期反応物質である血清アミロイドタンパク質A(SAA)とC反応性タンパク質(CRP)が、それぞれ、平均すると75%および65%減少した。図3Cにおいては、自己報告による患者の総合的な症状が、平均すると処置の間に60%軽減した。実施例21を参照のこと。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における自己炎症性疾患を緩和、処置、または予防するための方法であって、ICEを阻害する化合物または該化合物を含む薬学的組成物を該被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
被験体におけるクリオピリンが関係している周期性症候群、Muckle−Wells症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS、家族性寒冷蕁麻疹すなわちFCUとしても知られている)、家族性地中海熱(FMF)、慢性乳児神経性皮膚および間接症候群(CINCAS)(別名新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID))、TNFR1関連周期性症候群(TRAPS)、高IgD周期性発熱症候群(HIDS)、ブラウ症候群、全身発症性若年性突発性関節炎(スティル病)、またはマクロファージ活性化症候群を緩和、処置、または予防するための方法であって、ICEを阻害する化合物または該化合物を含む薬学的組成物を該被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項3】
前記化合物が、WO00/55114、WO00/55127、WO00/61542、WO00/61542、WO01/05772、WO01/10383、WO01/16093、WO01/42216、WO01/72707、WO01/90070、WO01/94351、米国特許公開番号2003/0092703、WO02/094263、米国特許公開番号2002/0169177、米国特許第6,184,210号、米国特許第6,184,244号、米国特許第6,187,771号、米国特許第6,197,750号、米国特許第6,242,422号、2001年4月カリフォルニア州サンディエゴ(米国)での米国化学会(ACS)会議、WO02/22611、米国特許公開番号2002/0058630、米国特許公開番号2003/0096737、WO95/35308、WO97/22619、WO99/47545、およびWO01/90063のいずれかに記載されている化合物である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が、WO95/35308、WO97/22619、WO99/47545、およびWO01/90063のいずれかに記載されている化合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が以下および個々の立体異性体であり:
【化1】

該化合物は、以下を含む:
【化2】

請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が以下および個々の立体異性体であり:
【化3】

該化合物は、以下を含む:
【化4】

請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が以下および個々の立体異性体であり:
【化5】

該化合物は、以下を含む:
【化6】

請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が以下および個々の立体異性体であり:
【化7】

該化合物は、以下を含む:
【化8】

請求項1に記載の方法。
【請求項9】
被験体における自己炎症性疾患を緩和、処置、または予防するための化合物を同定するための方法であって、ICEを阻害する化合物または該化合物を含む薬学的組成物を投与する工程、および該化合物での処置の前および後の該被験体におけるICEの阻害を比較する工程を含む、方法。
【請求項10】
被験体における自己炎症性疾患を緩和、処置、または予防するための化合物を同定するための方法であって、ICEを阻害する化合物または該化合物を含む薬学的組成物を投与する工程、および該化合物での処置の前および後の該被験体における該自己炎症性疾患についての生体マーカーを比較する工程を含む、方法。
【請求項11】
前記生体マーカーは、インターロイキン−1β、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−18、血清アミロイドA、C反応性タンパク質、赤血球沈降速度(ESR)、ハプトグロビン、TNFα、免疫グロブリン、フェリチン、白血球数、血小板数、およびヘモグロビンからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ICEを阻害する化合物と薬学的に受容可能なキャリアを含む、被験体における自己炎症性疾患を緩和、処置、または予防するための薬学的組成物。
【請求項13】
前記化合物が請求項3〜8のいずれか1項に記載されている化合物である、請求項12に記載の薬学的組成物、または請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、以下:
(a)1回の投与について約300mg〜約2,400mgの間;
(b)1回の投与について約600mg〜約1,800mgの間;および
(c)1回の投与について約900mg
からなる群より選択される用量で前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、以下:
(a)1日あたり約2mg/kg体重〜約200mg/kg体重の間;
(b)1日あたり約6mg/kg体重〜約100mg/kg体重の間;および
(c)1日あたり約25mg/kg体重〜約75mg/kg体重の間
からなる群より選択される用量で前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
自己炎症性疾患を有している被験体においてIL−1β、IL−18、または他の生体マーカーを減少させるための方法であって、該被験体に、ICEを阻害する化合物または該化合物を含む薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2008−500374(P2008−500374A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515458(P2007−515458)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/018949
【国際公開番号】WO2005/117846
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】