Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
自己炎症疾患又は自己免疫疾患関連遺伝子及びその利用
説明

自己炎症疾患又は自己免疫疾患関連遺伝子及びその利用

【課題】NNS等の自己炎症疾患又は自己免疫疾患と相関するSNPsを同定し、それに基づき、該疾患の素因の有無を検査する方法を確立すること、該SNPsを有する非ヒト哺乳動物を作製すること、及び該哺乳動物の用途を提供すること。
【解決手段】本発明は、被験者の生体試料中の、プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子における、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸への置換をもたらす変異を検出する工程を含む、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無を検査する方法を提供する。また、該変異を有する非ヒト哺乳動物及びその用途を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無の検査に有用な新規SNPsに関する。また本発明は、該SNPsを利用した自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無を検査する方法、該方法の実施に有用な試薬、該SNPsを有する非ヒト哺乳動物、及び該哺乳動物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
中條−西村症候群(NNS)(MIM256040、ORPHA2615)は、周期性発熱、部分的リポジストロフィー、関節拘縮、発疹及び大脳基底核の石灰化を含む症状を有し、常染色体劣性の様式で遺伝的に分離する疾患である(非特許文献1〜5)。NNSは、慢性炎症と消耗を特徴とする自己免疫疾患又は自己炎症疾患であると考えられ、70年以上前に最初に報告されている(非特許文献6)。
【0003】
現在のところ、NNSの治療において、標準的治療法は見出されていない。炎症軽減のためにステロイド内服が行なわれているが、長期服用による弊害も多い。一般に、遺伝性疾患の診断や治療法の開発において、原因遺伝子及びその変異を特定することは非常に重要であるが、NNSについては、原因遺伝子は特定されていない。そのため、NNS発症の分子機構の解明は進んでおらず、疾患の早期診断や治療法の開発に支障をきたしていた。
【0004】
26Sプロテアソームは、ユビキチンシステムと連携して真核細胞におけるタンパク質分解に関与するマルチサブユニットプロテアーゼである。26Sプロテアソームは、1つの触媒サブユニット20Sプロテアソームとその両端に付加される19S調節粒子から構成される(非特許文献7〜9)。20Sプロテアソームは、4つの7量体リングα1−7β1−7β1−7α1−7を含む円筒型粒子として配置された28個のサブユニットから構成される。標準的な20Sプロテアソームにおいては、3つのサブユニット(β1、β2、及びβ5)のみが、タンパク質分解活性を有する。3つのβサブユニットはそれぞれ、酸性残基、塩基性残基、及び疎水性残基を選択的に切断する(それらは、それぞれカスパーゼ様活性、トリプシン様活性、及びキモトリプシン様活性と呼ばれることが多い)。脊椎動物において、3つの追加のインターフェロン(IFN)-γ誘導性サブユニット(β1i、β2i、及びβ5iと呼ばれる)が存在し、それらは標準のサブユニットの代わりに20Sプロテアソーム中に選択的に取り込まれ、免疫プロテアソームを形成する。このことは、抗原ペプチドのより効率的な産生をもたらす。
【0005】
プロテアソームと関連する疾患としては、多発性骨髄腫や関節リウマチが知られており、それらの治療にプロテアソーム阻害剤(bortezomib等)が使用されている。このことは、プロテアソームの阻害が炎症を抑えることを意味している。従って、プロテアソームの活性低下と、自己炎症疾患や自己免疫疾患等の疾患の発症との関連性については全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Dermatol. Venereol. 60(5), 136-141 (1950).
【非特許文献2】Arch. Dermatol. 121(8), 1053-1056 (1985).
【非特許文献3】Acta Neuropathol. 73(4), 313-319 (1987).
【非特許文献4】Intern. Med. 32(1), 42-45 (1993).
【非特許文献5】Mod. Rheumatol. 18(2), 203-207 (2008).
【非特許文献6】J. Derm. Urol. 45(2), 77-86 (1939).
【非特許文献7】Nat. Rev. Mol. Cell Bio. 10(2), 104-115 (2009).
【非特許文献8】Mol. Aspects Med. 30(4), 191-296 (2009).
【非特許文献9】Proc. Jpn. Acad. Ser. B-Phys. Biol. Sci. 85(1), 12-36 (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、NNS等の自己炎症疾患又は自己免疫疾患と相関するSNPsを同定し、それに基づき、該疾患の素因の有無を検査する方法を確立すること、該SNPsを有する非ヒト哺乳動物を作製すること、及び該哺乳動物の用途を提供すること等である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、NNS患者及び健常対照のゲノム上に存在するSNPsを検出し、比較した結果、免疫プロテアソームのβ5iサブユニットをコードするPSMB8遺伝子のエキソン5中に、単一の非同義変異を見出した。この変異(G129V;活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシン(プロペプチドのアミノ酸配列における201番目のグリシン)のバリンへの置換)は、触媒残基であるスレオニンに構造上近接していた。更に、変異体β5iプロペプチドは免疫プロテアソームの生合成において効率のよい切断がなされず、その結果プロテアソーム活性が減少し、免疫プロテアソームを発現する細胞ではユビキチン化タンパク質が蓄積すること等を明らかにした。即ち、免疫プロテアソームサブユニット内の変異が、NNSの直接の原因であることを突き止めた。
本発明者らは、これらの知見に基づいて更に検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下を提供するものである。
[1]プロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列(ただし、活性型の該β5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンがプロテアソーム活性を低下させるように他のアミノ酸に置換されている)、又は該129番目のアミノ酸を含む8アミノ酸以上の連続したその部分配列を含むポリペプチド。
[2]プロテアソームβ5型サブユニットがプロテアソームβ5iサブユニットである、[1]に記載のポリペプチド。
[3]他のアミノ酸がバリンである、[1]又は[2]に記載のポリペプチド。
[4]プロテアソームβ5iサブユニットのアミノ酸配列が、配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列である、[3]に記載のポリペプチド。
[5][1]〜[4]に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
[6][5]に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[7][6]に記載の発現ベクターで形質転換された形質転換体。
[8]被験者の生体試料中の、プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子における、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸への置換をもたらす変異を検出する工程を含む、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無を検査する方法。
[9]他のアミノ酸がバリンである、[8]に記載の方法。
[10]被験者がヒトであり、且つ変異の検出が、該被験者より採取されたゲノムDNA含有試料において、配列番号5で表されるヌクレオチド配列中、3265番目の塩基における変異を検出することにより行われる、[8]に記載の方法。
[11]自己炎症疾患又は自己免疫疾患が、中條−西村症候群である、[8]に記載の方法。
[12]プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子の変異であって、プロテアソーム活性を低下させる、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸への置換をもたらす変異を特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該変異を含む領域を特異的に増幅し得るプライマーを含む、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無の診断剤。
[13]他のアミノ酸がバリンである、[12]に記載の診断剤。
[14]該核酸プローブ又はプライマーが、配列番号5で表されるヌクレオチド配列中、3265番目の塩基における変異を検出し得る核酸プローブ、又は該変異を含む領域を特異的に増幅し得るプライマーである、[12]に記載の診断剤。
[15]配列番号5で表されるヌクレオチド配列(ただし、3265番目の塩基がチミンである)、又は3265番目の塩基を含む12ヌクレオチド以上の連続したその部分配列、或いは該ヌクレオチド配列又は該部分配列の相補配列を含む核酸。
[16][1]のポリペプチドを発現する、非ヒト哺乳動物。
[17]プロテアソームβ5型サブユニットがプロテアソームβ5iサブユニットである、[16]に記載の非ヒト哺乳動物。
[18]野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で[1]のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子が改変されている、[16]又は[17]に記載の非ヒト哺乳動物。
[19]プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に、プロテアソーム活性を低下させる、活性型の該β5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸への置換をもたらす変異を有する、[18]に記載の非ヒト哺乳動物。
[20]他のアミノ酸がバリンである、[19]に記載の非ヒト哺乳動物。
[21]変異がホモ接合型の変異である、[18]〜[20]のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物。
[22]恒常的に炎症反応が惹起されている、[21]に記載の非ヒト哺乳動物。
[23]非ヒト哺乳動物がマウスである、[16]〜[22]のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物。
[24][1]のポリペプチドを発現する動物細胞。
[25]野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で[1]のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子が改変されている、[24]に記載の動物細胞。
[26]プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に、活性型の該β5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸への置換をもたらす変異を有する、[25]に記載の動物細胞。
[27]他のアミノ酸がバリンである、[26]に記載の動物細胞。
[28]変異がホモ接合型の変異である、[25]〜[27]のいずれか1項に記載の動物細胞。
[29][17]に記載の非ヒト哺乳動物に被験物質を投与する工程、及び炎症の改善効果を検定する工程、を含む、抗炎症薬の候補物質のスクリーニング方法。
[30][16]〜[23]のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物と他の疾患モデル非ヒト哺乳動物との交配によって生じる疾患モデル非ヒト哺乳動物。
[31]他の疾患モデル非ヒト哺乳動物が発癌モデル非ヒト哺乳動物又は自己免疫疾患モデル非ヒト哺乳動物である、[30]に記載の疾患モデル非ヒト哺乳動物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の検査方法は、被験者がNNS等の自己炎症疾患又は自己免疫疾患の保因者であるか否かを早期に診断することを可能にする。本発明の非ヒト哺乳動物は、NNS等の自己炎症疾患又は自己免疫疾患の病態を十分に再現し得るため、疾患の治療方法の開発等に有用である。本発明の非ヒト哺乳動物を使用するスクリーニング方法は、抗炎症薬の開発に有用である。また本発明の非ヒト哺乳動物を使用する薬効評価方法は、解熱剤等の既存の抗炎症薬や、抗炎症作用を有することが示唆されている候補化合物の薬効評価に有用である。更に本発明の非ヒト哺乳動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル哺乳動物を使用すれば、発癌や自己免疫疾患等の疾患における、プロテアソームの関与或いは炎症反応の影響を研究することが可能となり、新たな作用機序による疾患の予防薬及び/又は治療薬の開発につながる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】NNS患者及びその近親婚暦。患者1、2及び4の家族は、近親婚の子を含む。他の患者については、近親婚暦は確認されなかった。黒丸及び黒四角は、NNS患者を示す。矢印、二重線及び斜線は、それぞれ先祖(progenitors)、近親婚及び故人を示す。
【図2】SNPマイクロアレイベースのホモ接合マッピング及び変異探索。(a)患者及び罹患していない兄弟のホモ接合マッピング。ROH領域を、隠れマルコフモデルベースのアルゴリズムにより検出した。5人全ての患者において同定されたが3人の兄弟からは同定されなかった6p21.31-32内の唯一の候補領域を示す(NCBI Build 36.1)。(b)対照(control)、患者の父(father)及び患者(patient)からのクロマトグラム。塩基配列決定により特定したPSMB8エキソン5中の単一の非同義変異を強調している。(c)他種とのアミノ酸比較。変異部位のグリシン(囲み)は、脊椎動物の間で高度に保存されている。
【図3】PSMB8遺伝子の周囲のハプロタイプ。PSMB8エキソン5(NCBIアクセッション番号NM_148919を参照のこと)の周囲のSNPsを、7人の患者、1人の患者の父、及び9人の対照において遺伝子型解析した。全ての患者がこの領域内において同じハプロタイプを共有しており、このことは、この変異が単一の創始者から伝達されたことを示唆する。
【図4】β5iのG129V変異は、免疫プロテアソーム発現細胞におけるプロテアソーム活性を低下させる。(a)β5i内の変異部位(G129V;図中G201V)の拡大図。G129Vβ5i及び野生型β5iの構造モデルを、β5サブユニット構造(PDB IDコード1IRU)から作成した。β5iの二次構造要素にラベルを付した。Val129(図中、Val201)及びThr1(図中、Thr73)をスティックモデルで示す。(b)プロテアソームβ5iG129Vサブユニット及びβ5iサブユニットの触媒残基。(c)β4−β5i複合体のリボン図。矢印は、β5iとβ5iG129Vの間のαへリックスにおける違いを示す。矢頭は、β5iG129Vの突き出したS8−H3ループを示す。(d)NNS患者、ヘテロ接合体及び健常対照由来の不死化リンパ芽球様細胞株(LCL)のペプチダーゼ活性。抽出物をグリセロール勾配遠心により分画した(8−32%グリセロールでフラクション1〜32)。各フラクションからのアリコートを使用し、0.03%SDS存在下で蛍光標識基質を使用してキモトリプシン様活性及びカスパーゼ様活性をアッセイし、SDS非存在下でトリプシン様活性をアッセイした。矢頭は、20Sプロテアソーム及び26Sプロテアソームのピーク位置を示す。(e)フラクション1〜32中のプロテアソームサブユニットのウェスタンブロット分析。未成熟の20Sプロテアソーム、20Sプロテアソーム及び26Sプロテアソームの沈降位置を矢頭で示す。成熟β5iG129Vサブユニット及び不完全に切断されたβ5iG129Vサブユニットを矢印で示す。
【図5】NNS細胞におけるポリユビキチン化タンパク質の蓄積。(a、b)ポリユビキチン化タンパク質のウェスタンブロット分析。(a)健常対照及びNNS患者由来の不死化B細胞からの全細胞抽出物。(b)成人正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)及びNNS線維芽細胞からの全細胞抽出物。(c)CD68及びユビキチン化タンパク質の免疫蛍光染色。NNS患者及び筋膜炎患者由来の皮膚切片中のCD68(左パネル)及びユビキチン化タンパク質(中央パネル)を染色した。スケールバー=10μm。
【図6−1】健常対照、関節リウマチ患者及びNNS患者におけるサイトカインの測定。(a)患者の血清中のサイトカイン濃度。血清試料を、健常対照(N=16)、関節リウマチ患者(RA;N=10)及びNNS患者(N=4)から採取した。27種の異なるサイトカインの濃度をBioplex assay(BioRad)を使用して測定した。エラーバーは平均値の標準偏差を示す。P値はウェルチのt検定(両側)(two-tailed Welch's t test)を使用して計算した。*P<0.05。
【図6−2】健常対照、関節リウマチ患者及びNNS患者におけるサイトカインの測定。(b)NNS患者の血清中のIP-10濃度。IP-10を、ELISA Kit(R&D systems)を使用して測定した。*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;マンホイットニーU検定。(c)馴化培地(conditional media)中のIP-10濃度。TNF-α(0.1又は10 ng/mL)の非存在下及び存在下で培養した線維芽細胞からの馴化培地をELISAに供した。IP-10を二連のウェルで測定した。エラーバーは標準偏差を示し、P値はマンホイットニーU検定を使用して求めた。
【図7】線維芽細胞によるIL-6産生は、NNS患者由来の線維芽細胞における核p-p38と相関する。(a)NNS血清中のIL-6濃度。健常対照、関節リウマチ(RA)患者及びNNS患者由来の血清中のIL-6の量を、ELISAにより測定した。(b)培養線維芽細胞によるIL-6産生。TNF-α(0.1又は10 ng/mL)の非存在下又は存在下における、NNS線維芽細胞及びNHDFからの馴化培地中のIL-6の濃度を、ELISAにより測定した。測定は二連で行なった。(c)NF-κBについての電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)。NHDF、NNS線維芽細胞及びJurkat細胞由来の核抽出物を使用して、NF-κBコンセンサスプローブを用いたEMSAを行なった。TNF-α刺激の有無に関わらず、通常の培養条件下では、違いは観察されなかった。(d)NF-κB及びMAPKについてのウェスタンブロット分析。TNF-α(10 ng/mL)の存在下又は非存在下のNNS線維芽細胞及びNHDF由来の全細胞抽出物及び核抽出物を、IκBα、p- IκBα、p65、p-ERK、p-JNK、及びp-p38に対する抗体を使用してイムノブロットした。チューブリン及びヒストンH3を、それぞれ全細胞抽出物及び核抽出物についての対照として使用した。(e)NNS患者由来の末梢血リンパ球中のp-p38のウェスタンブロット分析。健常対照、ヘテロ接合性のファミリーメンバー及びNNS患者の末梢血リンパ球からの核抽出物を、抗p-p38を用いてイムノブロットした。エラーバーは、平均値の標準偏差を示す。*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;マンホイットニーU検定(a)及びウェルチのt検定(両側)(two-tailed Welch's t test)(b)。
【図8】NNS由来の線維芽細胞におけるNF-κB活性。TNF-α(10 ng/mL)での刺激後の、NHDF及びNNS線維芽細胞由来の核抽出物を使用して、特異的抗体を使用するEMSAを行った。p50/p65へテロ二量体由来のシグナルが、抗p50抗体及び抗p65抗体のいずれにおいてもスーパーシフトするシグナルとして確認された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、アミノ酸、ペプチド、タンパク質は下記に示すIUPAC−IUB生化学命名委員会(CBN)で採用された略語を用いて表される。また、特に断りがない限り、ペプチド及びタンパク質のアミノ酸残基の配列は、左端から右端に向かってN末端からC末端となるように記載される。
Ala又はA:アラニン
Val又はV:バリン
Leu又はL:ロイシン
Ile又はI:イソロイシン
Pro又はP:プロリン
Phe又はF:フェニルアラニン
Trp又はW:トリプトファン
Met又はM:メチオニン
Gly又はG:グリシン
Ser又はS:セリン
Thr又はT:トレオニン
Cys又はC:システイン
Gln又はQ:グルタミン
Asn又はN:アスパラギン
Tyr又はY:チロシン
Lys又はK:リジン
Arg又はR:アルギニン
His又はH:ヒスチジン
Asp又はD:アスパラギン酸
Glu又はE:グルタミン酸
【0013】
1.変異体プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチド
本発明は、プロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列(ただし、活性型の該β5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンがプロテアソーム活性を低下させるように他のアミノ酸に置換されている)、又は該129番目のアミノ酸を含む8アミノ酸以上の連続したその部分配列を含むポリペプチドを提供する。本発明のポリペプチドは、野生型プロテアソームβ5型サブユニットのS8βシートの端に存在するグリシン(活性型のプロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンに相当する)が、プロテアソーム活性を低下させるように他のアミノ酸、好ましくはバリンに置換されている。本明細書中において、このような置換を有する本発明のポリペプチドを、変異体プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドとも言う。
【0014】
本明細書中、プロテアソームとは、20Sプロテアソーム又は20Sプロテアソームと19S調節粒子とから構成される26Sプロテアソームを言う。また、20Sプロテアソームにα1〜7及びβ1〜7サブユニットが含まれるプロテアソームを標準のプロテアソームと呼び、β5サブユニットの代わりにβ5iサブユニットが含まれるプロテアソームを免疫プロテアソームと呼ぶことがある。免疫プロテアソームには、β1サブユニットの代わりにβ1iサブユニットが含まれていてもよく、β2サブユニットの代わりにβ2iサブユニットが含まれていてもよい。
【0015】
本明細書中、プロテアソームβ5型サブユニットには、β5iサブユニット及びβ5サブユニットの両方が含まれる。従って、β5iサブユニットに係る本発明のポリペプチドを、変異体プロテアソームβ5iサブユニットポリペプチドと呼ぶことがあり、β5サブユニットに係る本発明のポリペプチドを、変異体プロテアソームβ5サブユニットポリペプチドと呼ぶことがある。
【0016】
プロテアソームβ5iサブユニットは、免疫プロテアソームの公知のサブユニットである。ヒト及びマウスにおいては、それぞれPSMB8遺伝子及びPsmb8遺伝子にコードされている。野生型プロテアソームβ5iサブユニットは、キモトリプシン様活性を有する。プロテアソームβ5サブユニットは、標準のプロテアソームの公知のサブユニットである。ヒト及びマウスにおいては、それぞれPSMB5遺伝子及びPsmb5遺伝子にコードされている。野生型プロテアソームβ5サブユニットは、キモトリプシン様活性を有する。
【0017】
本明細書中、プロテアソーム活性とは、プロテアソームが有するタンパク質分解活性、即ちキモトリプシン様活性、トリプシン様活性及び/又はカスパーゼ様活性を言う。キモトリプシン様活性、トリプシン様活性及びカスパーゼ様活性は、公知の方法により測定することができ、例えば、Science 316(5829), 1349-1353 (2007)に記載の手順に従い、それぞれ蛍光ペプチド基質(succinyl-Leu-Leu-Val-Tyr-7-amino-4-methylcoumarin(Suc-LLVY-MCA)、butyloxycarbonyl-Leu-Arg-Arg-4-metylcoumarin(Boc-LRR-MCA)及びbenzyloxycarbonyl-Leu-Leu-Glu-methylcoumarylamine(Z-LLE-MCA))を使用して測定することができる。
【0018】
「プロテアソーム活性を低下させる」とは、プロテアソームのキモトリプシン様活性、カスパーゼ様活性、又はトリプシン様活性の少なくとも1つ活性を低下させることを言う。キモトリプシン様活性について「活性を低下させる」とは、例えば、同一モル量のプロテアソームについて活性を測定した場合に、野生型アミノ酸配列からなるβ5型サブユニットから生じる活性型β5型サブユニット(後述)を含むプロテアソームと比較して、プロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列(ただし、活性型の該β5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンがプロテアソーム活性を低下させるように他のアミノ酸に置換されている)からなるポリペプチドから生じる活性型β5型サブユニットを含むプロテアソームの活性が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、更により好ましくは50%以上、最も好ましくは60%以上低下することを意味する。カスパーゼ様活性又はトリプシン様活性について「活性を低下させる」とは、例えば、同一モル量のプロテアソームについて活性を測定した場合に、野生型アミノ酸配列からなるβ5型サブユニットから生じる活性型β5型サブユニットを含むプロテアソームと比較して、プロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列(ただし、活性型の該β5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンがプロテアソーム活性を低下させるように他のアミノ酸に置換されている)からなるポリペプチドから生じる活性型β5型サブユニットを含むプロテアソームの活性が10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上、最も好ましくは30%以上低下することを意味する。またプロテアソーム活性の低下は、20Sプロテアソーム又は26Sプロテアソームのいずれか一方について評価してもよく、両方の活性を合計した活性について評価してもよい。
【0019】
様々な脊椎動物のプロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列やヌクレオチド配列が公知である。脊椎動物としては、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫等を挙げることができる。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー等の霊長類等を挙げることが出来る。哺乳動物は、好ましくはげっ歯類(例えば、マウス)又は霊長類(例えば、ヒト)である。
【0020】
表1に、野生型プロテアソームβ5iサブユニットのアミノ酸配列のGenBankアクセッション番号を示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表2に、野生型プロテアソームβ5サブユニットのアミノ酸配列のGenBankアクセッション番号を示す。
【0023】
【表2】

【0024】
プロテアソームβ5iサブユニットは、ヒトにおいては72番目と73番目のアミノ酸残基の間で切断されることが知られている。本明細書においては、全長のプロテアソームβ5iサブユニットをプロペプチドと、72番目と73番目のアミノ酸残基の間(ヒトの場合;他の動物種の場合には、これらに相当する残基の間)で切断されたプロテアソームβ5iサブユニットのC末端側の断片を活性型β5iサブユニットとそれぞれ呼ぶことがある。
【0025】
プロテアソームβ5サブユニットは、ヒトにおいては59番目と60番目のアミノ酸残基の間で切断されることが知られている。本明細書においては、全長のプロテアソームβ5サブユニットをプロペプチドと、59番目と60番目のアミノ酸残基の間(ヒトの場合;他の動物種の場合には、これらに相当する残基の間)で切断されたプロテアソームβ5サブユニットのC末端側の断片を活性型β5サブユニットとそれぞれ呼ぶことがある。
【0026】
また活性型β5iサブユニットと活性型β5サブユニットとを合せて活性型のβ5型サブユニットと呼ぶことがある。
【0027】
活性型のプロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンは、プロテアソームβ5型サブユニットのS8βシートの端に存在し、脊椎動物において高度に保存されている。該グリシン残基は、ヒトのプロテアソームβ5iサブユニットのプロペプチドにおいては、N末端から201番目に位置し、活性型の該β5iサブユニットにおいては、N末端から129番目に位置する。また該グリシン残基は、ヒトのプロテアソームβ5サブユニットのプロペプチドにおいては、N末端から188番目に位置し、活性型の該β5サブユニットにおいては、N末端から129番目に位置する。従って、本明細書中において、プロテアソームβ5型サブユニットに関して、活性型の該β5型サブユニットにおける129番目のグリシンと言う場合、ヒト以外の動物においては、もしそれが129番目でない場合でも、ヒトの活性型β5型サブユニットにおいてN末端から129番目に位置するグリシン残基に相当するグリシン残基であって、S8βシートの端に存在し、脊椎動物において高度に保存されたグリシン残基を言うものとする。
【0028】
尚、本明細書中、プロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列中のアミノ酸残基は、活性型の該β5型サブユニットのアミノ酸配列における位置に基づき、例えばThr1、Asp17、Arg19、Lys33などと表記される。例えば、ヒトプロテアソームβ5iサブユニットについて、Thr1は、活性型の該β5iサブユニットの1番目のスレオニン(プロペプチドの73番目のスレオニン)を表す。
【0029】
本発明のポリペプチドにおいては、プロテアソーム活性を低下させるように、活性型のプロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンが他のアミノ酸に置換されている。他のアミノ酸としては、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、システイン、グルタミン、アスパラギン、チロシン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられ、好ましくはバリンである。
【0030】
プロテアソーム活性の低下のメカニズムは、いかなる理論にも拘束されないが、このグリシン残基は、ヒトプロテアソームβ5iサブユニットにおいてはS8βシートの端に存在し、触媒残基であるスレオニン(Thr1(プロペプチドの73番目のスレオニン))に構造上近接している。そのため前記置換は、Thr1並びに、Thr1、Asp17(プロペプチドの89番目のアスパラギン酸)及びArg19(プロペプチドの91番目のアルギニン)と共に触媒中心を形成するLys33(プロペプチドの105番目のリジン)における構造変化を引き起こし、キモトリプシン様活性の低下をもたらす可能性がある。
【0031】
更に前記置換は、β5型サブユニット内のαへリックス構造の一部を壊し得る。そしてこれが隣接するβ6サブユニットとの表面接触に影響し、20Sプロテアソームの構築に影響し得る。そのため前記置換は、β5型サブユニットのキモトリプシン様活性を低下させると共に、プロテアソーム構築の異常及び他のプロテアソーム活性(カスパーゼ様活性、トリプシン様活性)の低下をもたらす可能性がある。
【0032】
本発明のポリペプチドが、変異型プロテアソームβ5型サブユニットの部分アミノ酸配列を含むポリペプチドである場合、該部分アミノ酸配列が、活性型の該変異型プロテアソームβ5型サブユニットにおける129番目のアミノ酸を含む限り、その長さは限定されない。例えば、本発明のポリペプチドとして、長さが1000アミノ酸以下のもの、500アミノ酸以下のもの、400アミノ酸以下のもの、350アミノ酸以下のもの、300アミノ酸以下のもの、290アミノ酸以下のもの、280アミノ酸以下のもの、276アミノ酸以下のもの、204アミノ酸以下のもの等を適宜選択することが出来る。本発明のポリペプチドは、プロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列の、8アミノ酸以上、好ましくは10アミノ酸以上、15アミノ酸以上、20アミノ酸以上、50アミノ酸以上、100アミノ酸以上、150アミノ酸以上、又は200アミノ酸以上、より好ましくは204アミノ酸以上、最も好ましくは276アミノ酸以上の連続した部分配列を含む。
【0033】
本発明のポリペプチドに含まれる具体的なアミノ酸配列としては、配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において、プロテアソーム活性を低下させるように活性型のプロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシン(配列番号2又は4における201番目のグリシン)が他のアミノ酸、好ましくはバリンに置換されているアミノ酸配列を挙げることができる。また本発明のポリペプチドに含まれるプロテアソームβ5iサブユニットの部分アミノ酸配列の例としては、配列番号2又は4の73番目のアミノ酸から276番目のアミノ酸までのアミノ酸配列であって、プロテアソーム活性を低下させるように活性型プロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシン(配列番号2又は4における201番目のグリシン)が他のアミノ酸、好ましくはバリンに置換されているアミノ酸配列を挙げることができる。
【0034】
本発明の変異体プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドは、プロテアソームβ5型サブユニットに由来するアミノ酸配列に加え、1又は2個以上(例えば1〜500個、好ましくは1〜100個程度、より好ましくは1〜15個程度)の付加的なアミノ酸を含んでいてもよい。付加されるアミノ酸配列は、特に限定されないが、例えば、ポリペプチドの検出や精製等を容易にならしめるためのタグを挙げることが出来る。タグとしては、Flagタグ、ヒスチジンタグ、c-Mycタグ、HAタグ、AU1タグ、GSTタグ、MBPタグ、蛍光タンパク質タグ(例えばGFP、YFP、RFP、CFP、BFP等)、イムノグロブリンFcタグ等を例示することが出来る。アミノ酸配列が付加される位置は、好ましくは、ポリペプチドのN末端又はC末端である。
【0035】
本発明のポリペプチドは、好ましくは単離又は精製されている。「単離又は精製」とは、天然に存在する状態から目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された本発明のポリペプチドの純度(全ポリペプチド重量に対する、本発明のポリペプチドの重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。
【0036】
本発明のポリペプチドは修飾されていてもよい。該修飾としては、脂質鎖の付加(脂肪族アシル化(パルミトイル化、ミリストイル化等)、プレニル化(ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化等)等)、リン酸化(セリン残基、スレオニン残基、チロシン残基等におけるリン酸化)、アセチル化、糖鎖の付加(Nグリコシル化、Oグリコシル化)等を挙げることが出来る。
【0037】
また、本明細書において用語「本発明のポリペプチド」は、その塩をも含む意味として用いられる。ポリペプチドの塩としては生理学的に許容される酸(例:無機酸、有機酸)や塩基(例:アルカリ金属塩)等との塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩等が挙げられる。
【0038】
本発明のポリペプチドの製造方法については特に制限はなく、該ポリペプチドは公知のペプチド合成法に従って製造してもよく、また公知の遺伝子組み換え技術を用いて製造してもよい。ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明のポリペプチドを構成し得る部分ペプチド若しくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とするポリペプチドを製造することができる。
【0039】
遺伝子組み換え技術を用いて本発明のポリペプチドを製造する場合には、先ず後述するような本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得し、該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターで宿主を形質転換し、得られる形質転換体を培養することによって、該ポリペプチドを製造することができる。該ポリヌクレオチド、遺伝子組み換え技術を用いた本発明のポリペプチドの製造方法については本明細書中後述する。
【0040】
本発明の変異体プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドは、例えば、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無の検査において対照ポリペプチドとして有用である。また本発明のポリペプチドは、プロテアソームにおけるβ5型サブユニットの機能解析、変異体プロテアソームβ5型サブユニットに対する抗体の製造等にも有用である。
【0041】
2.変異体プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
本発明は上記本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供するものである。該ポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、該ポリヌクレオチドは二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNA又はDNA:RNAのハイブリッドでもよい。
【0042】
本発明のポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1又は配列番号3で表されるヌクレオチド配列であって、プロテアソーム活性を低下させる、活性型のプロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸、好ましくはバリンへの置換をもたらす変異を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを挙げることが出来る。配列番号1で表されるヌクレオチド配列は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、配列番号3で表されるヌクレオチド配列は配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、それぞれコードする。本発明のポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1の5’末端から645番目のグアニンがチミンに置換されたポリヌクレオチドが挙げられる。
【0043】
本発明のポリヌクレオチドは、公知の配列情報や本明細書の配列表に記載された配列情報を利用することにより適当なプライマーを設計し、変異体プロテアソームβ5iサブユニットをコードするDNAクローンやcDNA等を鋳型として用い、PCRによって直接増幅することができる。また、野生型プロテアソームβ5型サブユニットをコードするDNAクローンやcDNA等に、自体公知の方法により、活性型のプロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸、好ましくはバリンへの置換をもたらす変異を導入し、鋳型として用いてもよい。或いは、配列情報に基づいて、ポリヌクレオチド合成装置により変異体プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを合成してもよい。
【0044】
取得された本発明のポリヌクレオチドは、目的によりそのまま、又は所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該ポリヌクレオチドはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGA又はTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
【0045】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは単離又は精製されている。「単離又は精製」とは、天然に存在する状態から目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された本発明のポリヌクレオチドの純度(全ポリヌクレオチド重量に対する、本発明のポリヌクレオチドの重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドは、変異体プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの製造に有用である。また、変異体プロテアソームβ5iサブユニットポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドに含まれる変異を解析することにより、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無を判定することができる(下記に詳述)。
【0047】
3.発現ベクター及び形質転換体
本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含むベクター及び該発現ベクターを含む形質転換体を提供するものである。
【0048】
該発現ベクターは、宿主細胞中でプロモーターが本発明のポリヌクレオチドを発現し得るように、本発明のポリヌクレオチドを適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に機能可能に連結することにより製造することができる。ベクターの種類としては、プラスミドベクター、ウイルスベクター等を挙げることができ、用いる宿主に応じて適宜選択することができる。
【0049】
宿主細胞には、原核生物細胞及び真核生物細胞が含まれる。原核生物細胞としては、例えば、エシェリヒア属菌(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等)、バチルス属菌(バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)等)等が用いられる。真核生物細胞としては、酵母(サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等)、昆虫細胞(夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)等)、哺乳動物細胞(ヒト細胞(293等)、サル細胞(COS-7等)、チャイニーズハムスター細胞(CHO細胞等)等)等が用いられる。
【0050】
哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜;イヌ、ネコ等のペット;ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オラウータン、チンパンジー等の霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
【0051】
プラスミドベクターとしては、大腸菌由来のプラスミドベクター(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミドベクター(例、pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミドベクター(例、pSH19、pSH15)等を挙げることができ、用いる宿主の種類や使用目的に応じて適宜選択することが出来る。
【0052】
ウイルスベクターの種類は、用いる宿主の種類や使用目的に応じて適宜選択することが出来る。例えば、宿主として昆虫細胞を用いる場合には、バキュロウイルスベクター等を用いることが出来る。また、宿主として哺乳動物細胞を用いる場合には、モロニーマウス白血病ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター等のレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター等を用いることが出来る。
【0053】
また、プロモーターは、用いる宿主の種類に対応して、該宿主内で転写を開始可能なものを選択することが出来る。例えば、宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター等が好ましい。宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等が好ましい。宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター等が好ましい。宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター等が好ましい。宿主が哺乳動物細胞である場合、サブゲノミック(26S)プロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーター等が好ましい。
【0054】
本発明のベクターは、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)等を、それぞれ機能可能な態様で含有していてもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。
【0055】
本発明の発現ベクターは好ましくは単離又は精製されている。
【0056】
本発明の発現ベクターは、適切な宿主細胞内において、本発明のポリペプチドを発現し得るので、本発明のポリペプチドの製造に有用である。
【0057】
上記本発明のベクターを、自体公知の遺伝子導入法(例えば、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、プロプラスト融合法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、Gene Gunによる遺伝子導入法等)に従って上記宿主へ導入することにより、該ベクターが導入された形質転換体(本発明の形質転換体)を製造することができる。導入されるベクターとして発現ベクターを使用することにより、該形質転換体は本発明のポリペプチドを発現し得る。本発明の形質転換体は、本発明のポリペプチドの製造等に有用である。
【0058】
本発明の形質転換体を、宿主の種類に応じて、自体公知の方法で培養し、培養物から本発明のポリペプチドを単離することにより、本発明のポリペプチドを製造することが出来る。宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、LB培地やM9培地等の適切な培地中、通常約15〜43℃で、約3〜24時間行なわれる。宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、適切な培地中、通常約30〜40℃で、約6〜24時間行なわれる。宿主が酵母である形質転換体の培養は、バークホールダー培地等の適切な培地中、通常約20℃〜35℃で、約24〜72時間行なわれる。宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたGrace’s Insect medium等の適切な培地中、通常約27℃で、約3〜5日間行なわれる。宿主が動物細胞である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたMEM培地等の適切な培地中、通常約30℃〜40℃で、約15〜60時間行なわれる。いずれの培養においても、必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。培養物からの本発明のポリペプチドの単離・精製は、例えば、菌体溶解液や培養上清を、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等の複数のクロマトグラフィーに供することにより達成することができる。
【0059】
4.自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無を検査する方法
本発明は、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無を検査する方法を提供する。該方法は、被験者の生体試料中の、プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子における、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸、好ましくはバリンへの置換をもたらす変異を検出する工程を含む。
【0060】
後述の実施例において示すように、NNS患者は共通してプロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子における、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンのバリンへの置換をもたらす変異をホモ接合型で有していた。従って、被験者が上記変異をホモ接合型で有する場合、該被験者がNNS等の自己炎症疾患又は自己免疫疾患を既に発症しているか、発症する可能性が高いと判定することができる。また被験者が上記変異をヘテロ接合型で有する場合、該被験者が彼らの子孫において疾患を起こし得る対立遺伝子の保因者であると判定することができる。即ち、被験者が上記変異をホモ接合型又はヘテロ接合型で有する場合、該被験者がNNS等の自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因を有すると判定することができる。
【0061】
本発明において、自己炎症疾患とは、感染や自己免疫に基づかない炎症を反復する疾患群を意味する。自己炎症疾患としては、NNS、家族性地中海熱、Cryopyrin関連周期熱症候群(CAPS)(CINCA症候群/Muckle-Wells 症候群/家族性寒冷蕁麻疹)、TNF受容体関連周期熱症候群(TRAPS)、Mevalonate kinase関連周期熱症候群(MAPS)(別名高IgD症候群)、アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎をともなう周期熱(PFAPA)、Blau症候群(別名若年性サルコイドーシス)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明において、自己免疫疾患とは、自己の抗原に向かって免疫反応が起こることによって生じる疾患を意味する。自己免疫疾患としては、NNS、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、多発性硬化症、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性血球減少症、重症筋無力症、強皮症、多発性筋炎、続発性アディソン病、不妊症、自己免疫性糸球体腎炎、シェーグレン病、脈管炎、自己免疫性脊髄炎、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、クローン病等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明における自己炎症疾患又は自己免疫疾患は、好ましくはNNSである。
【0064】
本発明の方法の対象となる「被験者」は、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因を有することが疑われる哺乳動物である。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類及びウサギ等の実験動物、イヌ及びネコ等のペット、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ及びヒツジ等の家畜、サル、オランウータン及びチンパンジー等の霊長類並びにヒト等が挙げられ、特にヒトが好ましい。
【0065】
被験者がヒトである場合、年齢、性別、人種等は特に制限されない。好ましくは、被験者は、周期性発熱、部分的リポジストロフィー、関節拘縮、発疹及び大脳基底核の石灰化を含む症状の病歴を有する家系に属している。かかる家系出身の無症状個体を試験して、彼らが上記疾患を発症する可能性が高いか否か、あるいは彼らが彼らの子孫において疾患を起こし得る対立遺伝子の保因者であるか否かを調べることができる。また被験者は胎児であってもよく、胎児が生後、周期性発熱、部分的リポジストロフィー、関節拘縮、発疹及び大脳基底核の石灰化等の症状を示す傾向を調べることができる。被験者は、周期性発熱、部分的リポジストロフィー、関節拘縮、発疹及び大脳基底核の石灰化等の症状を既に示している患者であってもよい。本発明の方法は、かかる患者のために、より早期に及び/又はより明瞭な診断を提供することができ、その結果、より早期の適切な治療を提供ができる。
【0066】
被験者の生体試料としては、ゲノムDNA、RNA等の遺伝物質を含有する限り特に限定されないが、例えば、血液、精液、その他の体液、粘膜、皮膚、毛髪、生検試料、組織、細胞が挙げられる。また被験者由来の細胞を培養して使用することもできる。
【0067】
遺伝子の変異を検出する場合、対象となる遺伝物質は、ゲノムDNAやRNAであってもよく、RNAから公知の方法により調製されたcDNAであってもよい。上記試料からのDNAやRNAの抽出・精製等は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)等に記載の、自体公知の方法に従って行うことができる。
【0068】
本発明の検査方法で検出される変異は、プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子における、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸への置換をもたらす変異である。他のアミノ酸としては、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、システイン、グルタミン、アスパラギン、チロシン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられ、好ましくはバリンである。またこのような変異としては、例えば、ヒトにおいては、活性型のプロテアソームβ5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンをコードするコドンGGTの、バリンをコードするコドンGTTへの一塩基置換が挙げられる。かかる変異は、ホモ接合型であってもヘテロ接合型であってもよい。
【0069】
遺伝子の変異の検出は、任意の自体公知の方法を使用して行なうことができ、例えば、RFLP法、PCR-SSCP法、ASOハイブリダイゼーション、ダイレクトシークエンス法、ARMS法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法、RNaseA切断法、化学切断法、DOL法、TaqMan PCR法、インベーダー法、MALDI-TOF/MS法、TDI法、モレキュラー・ビーコン法、ダイナミック・アレルスペシフィック・ハイブリダイゼーション法、パドロック・プローブ法、UCAN法、DNAチップ又はDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法及びECA法(WO03/023063、第17頁第5行〜第28頁第20行を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、DNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法は、実施例に記載した方法で行なうことができる。
【0070】
本発明の好ましい態様において、本発明の検査方法は、被験者がヒトであり、且つ変異の検出が、該被験者より採取されたゲノムDNA含有試料において、配列番号5で表されるヌクレオチド配列中、3265番目の塩基における変異を検出することにより行われる検査方法である。
【0071】
配列番号5は、ヒト第6染色体上のPSMB8をコードする領域(4219bp)のヌクレオチド配列であり、GenBankアクセッション番号NC_000006.11(2009年6月10日更新)の32,808,494〜32,812,712のヌクレオチド配列の相補配列である。NNS患者では、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の5’末端から3265番目のグアニンがチミンに置換された変異が共通して見出される。従って、該変異を検出することにより、NNS等の自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無を検査することができる。
【0072】
本発明はまた、プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子における、プロテアソーム活性を低下させる、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸、好ましくはバリンへの置換をもたらす変異を検出するための試薬を含む、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無の診断剤を提供する。
【0073】
該試薬としては、
(1)プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子における、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸、好ましくはバリンへの置換をもたらす変異を特異的に検出し得る核酸プローブ、又は
(2)該変異を含む領域を特異的に増幅し得るプライマー
等を挙げることが出来る。
【0074】
本明細書において、「核酸プローブによる変異の特異的な検出」とは、核酸プローブがヒトゲノムDNA中の該変異を含む領域にハイブリダイズし、その他の領域にハイブリダイズしないことを意味する。このようなハイブリダイゼーションの条件は、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件として、例えば低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、5×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC、0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、0.1×SSC、0.1%SDSである。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては、温度や塩濃度等の複数の要素があり、当業者はこれらの要素を適宜選択することで、同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0075】
(1)のプローブとしては、例えば、配列番号5で表されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の5’末端から3265番目のグアニンがチミンに置換されたポリヌクレオチド、又は3265番目の置換されたチミンを含むその連続した部分配列を含むポリヌクレオチド、或いはそれらの相補配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0076】
上記(1)の核酸プローブであるポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよいが、好ましくは一本鎖である。
【0077】
該ポリヌクレオチドが、本発明のポリヌクレオチドの連続した部分配列の相補配列を含む場合、該相補配列が有する相補性は、好ましくは、100%である。
【0078】
該ポリヌクレオチドに含まれる、本発明のポリヌクレオチドの連続した部分配列又はその相補配列の長さは、12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上(例えば、25ヌクレオチド以上)である。また、該部分配列又はその相補配列の長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さや、SNPの検出感度を高くする観点から、該長さは、通常1000ヌクレオチド以下、好ましくは100ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以下、更に好ましくは30ヌクレオチド以下である。
【0079】
該ポリヌクレオチドの長さは、少なくとも12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上である。また、本発明のポリヌクレオチドの長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さの観点から、通常1000ヌクレオチド以下、好ましくは100ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以下、更に好ましくは30ヌクレオチド以下である。
【0080】
該ポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドの連続した部分配列又はその相補配列に加えて、任意の付加的配列を含んでいてもよい。
【0081】
また、該ポリヌクレオチドは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C、32P、33P等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)等で標識されていてもよい。
【0082】
本明細書において、「プライマーによる変異の特異的な増幅」とは、プライマーがヒトゲノムDNA中の該変異を含む領域をPCR増幅するが、他の領域はPCR増幅しないことを意味する。
【0083】
上記(2)のプライマーには、プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子における、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸、好ましくはバリンへの置換をもたらす変異を含むポリヌクレオチド(例えばゲノムDNA)を鋳型として、該変異部位に向かって相補鎖合成を開始することができるプライマーが含まれる。該プライマーは、好ましくは、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続する部分配列又はその相補配列を含むプライマーであって、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の5’末端から3265番目の塩基に向かって相補鎖合成を開始することができるプライマーである。該プライマーは、変異部位を含むポリヌクレオチドにおける、変異部位の3’側に複製開始点を与えるためのプライマーと表現することもできる。プライマーがハイブリダイズする領域と変異部位との間隔は任意である。両者の間隔は、変異部位の塩基の解析手法に応じて、好適な長さを選択することができる。たとえば、DNAチップやダイレクトシークエンシングによる解析のためのプライマーであれば、変異部位を含む領域として、通常25〜500、例えば50〜200ヌクレオチドの長さの増幅産物が得られるようにプライマーをデザインすることができる。当業者は、変異部位を含む周辺DNA領域についてのヌクレオチド配列情報を基に、各解析手法に適したプライマーをデザインすることができる。上記(2)のプライマーを構成するヌクレオチド配列は、野生型プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子のヌクレオチド配列の部分配列又はその相補配列に対して完全に相補的なヌクレオチド配列のみならず、適宜改変した配列であってもよい。
【0084】
上記(2)のプライマーは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよいが、好ましくは一本鎖である。
【0085】
上記(2)のプライマーが、プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子のヌクレオチド配列又はその相補配列からなる核酸にハイブリダイズし得る領域の長さは、12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上(例えば、25ヌクレオチド以上)である。また、該部分配列又はその相補配列の長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さの観点から、該長さは、通常100ヌクレオチド以下、好ましくは50ヌクレオチド以下、より好ましくは30ヌクレオチド以下である。
【0086】
上記(2)のプライマーの長さは、少なくとも12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上である。また、本発明のポリヌクレオチドの長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さの観点から、該長さは、通常100ヌクレオチド以下、好ましくは50ヌクレオチド以下、より好ましくは30ヌクレオチド以下である。
【0087】
上記(2)のプライマーは、プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子のヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列に加えて、任意の付加的配列を含んでいてもよい。
【0088】
また、該プライマーは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C、32P、33P等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)等で標識されていてもよい。
【0089】
本発明の診断剤には、変異の検出方法に応じて、各種の酵素、酵素基質、および緩衝液等を組み合わせることができる。酵素としては、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、あるいは制限酵素等の、上記のSNPsの検出方法として例示した各種の解析方法に必要な酵素を示すことができる。緩衝液は、これらの解析に用いる酵素の活性の維持に好適な緩衝液が、適宜選択される。更に、酵素基質としては、例えば、相補鎖合成用の基質等が用いられる。
【0090】
本発明の診断剤を用いると、上記本発明の判定方法により、容易にNNS等の自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無を検査することができる。
【0091】
5.本発明のポリペプチドを発現する非ヒト哺乳動物
本発明は、本発明のポリペプチドを発現する非ヒト哺乳動物を提供する。
【0092】
本発明の非ヒト哺乳動物は、例えば、非ヒト哺乳動物の染色体に、外因性の本発明のポリヌクレオチドを発現可能な形態で挿入することにより、又は野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型遺伝子発現制御領域の支配下で本発明のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子を改変することにより、作製することができる。本明細書中、前者の方法により作製した非ヒト哺乳動物をトランスジェニック動物と、後者の方法により作製した非ヒト哺乳動物をノックイン動物と呼ぶことがある。また両者を合せて遺伝子改変動物と呼ぶことがある。
【0093】
遺伝子改変動物の作製に用いられる非ヒト哺乳動物としては、ヒト以外の哺乳動物であれば特に限定されない。好適な非ヒト哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類及びウサギ等の実験動物、イヌ及びネコ等のペット、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ及びヒツジ等の家畜、並びにサル、オランウータン及びチンパンジー等の霊長類が挙げられるが、遺伝子工学的に利用が容易であることから、マウスがより好ましい。
【0094】
トランスジェニック動物を作製する場合、本発明のポリヌクレオチドを染色体に挿入して発現させるために、本発明のポリヌクレオチドが非ヒト哺乳動物内で発現するように構築された発現ベクターを非ヒト哺乳動物の受精卵に注入する方法が一例として挙げられる。このような非ヒト哺乳動物は、例えば下記の工程(a)〜(d)を含む方法により製造できる。
(a)本発明のポリヌクレオチドとその発現を制御する配列とを連結した発現ベクターを調製する工程;
(b)前記発現ベクターを受精卵に導入し、遺伝子導入受精卵を仮親非ヒト哺乳動物に移植する工程;
(c)前記非ヒト哺乳動物から出生した子孫から本発明のポリヌクレオチドが染色体に挿入された非ヒト哺乳動物を選別する工程;
(d)前記選別した非ヒト哺乳動物(ファウンダー)から系統を樹立する工程。
【0095】
前記工程(a)において、本発明のポリヌクレオチドの発現を制御する配列としては、投与対象である非ヒト哺乳動物細胞内で機能し得るものであれば特に制限はないが、例えば、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR、ラウス肉腫ウイルスLTR、MoMuLV由来LTR、アデノウイルス由来初期プロモーター等のウイルスプロモーター、並びにβ−アクチン遺伝子プロモーター、PGK遺伝子プロモーター、トランスフェリン遺伝子プロモーター、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ−IIαサブユニット(CaMKIIα)遺伝子プロモーター、ドーパミン受容体D1A遺伝子プロモーター、グリアフィラメント酸性タンパク質遺伝子プロモーター、ホメオボックスEmx1遺伝子プロモーター、プリオンプロモーター、Thy-1プロモーター、血小板由来成長因子(PDGF)プロモーター等の哺乳動物の構成タンパク質遺伝子のプロモーター等が挙げられる。
【0096】
発現ベクターの作製は、前記プロモーターを含む公知のベクターを用いて、自体公知の方法により行うことができる。得られた発現ベクターは、制限酵素等により線状化して工程(b)に供することが好ましい。
【0097】
前記工程(b)において、前記発現ベクターを受精卵に導入する方法は、例えば、交配後の雌の卵管を洗浄して受精卵を採取し、精子又は卵子由来の前核にマイクロインジェクション法により前記発現ベクターを直接注入する方法が挙げられる。この受精卵を偽妊娠させた仮親の輸卵管に移植し、子宮内で発生を続けさせる。
【0098】
前記工程(c)において、工程(b)で移植した非ヒト哺乳動物が出生した子孫から本発明のポリヌクレオチドが染色体に挿入された動物を選別する方法としては、例えば、注入した発現ベクターが染色体DNAに組み込まれているか否かについて、産仔の尾部より分離抽出した染色体DNAをサザンブロット法又はPCR法によりスクリーニングする方法が挙げられる。
【0099】
前記工程(d)において、工程(c)で選別した非ヒト哺乳動物(ファウンダー)から遺伝的背景の均一な系統を樹立する方法としては、発現ベクターが組み込まれた非ヒト哺乳動物とC57BL/6、FVB等の近交系の野生型動物とを戻し交配をする方法が挙げられる。
【0100】
このようにして得られる本発明のトランスジェニック動物は、変異体プロテアソームβ5型サブユニットの機能解析、本発明の動物細胞の製造に有用である。
【0101】
本発明のノックイン動物は、野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で本発明のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子が改変されている。それにより非ヒト哺乳動物の染色体上に元々存在しているプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子領域から、本発明のポリペプチドを発現させることができる。
【0102】
本発明のノックイン動物には、前記遺伝子の変異が対立遺伝子の両方に導入されたホモ接合哺乳動物、前記遺伝子の変異が対立遺伝子の片方に導入されたヘテロ接合哺乳動物及びそれらの出生前の胎仔も含まれる。前記ホモ接合哺乳動物は、前記ヘテロ接合哺乳動物を交配することにより得ることができる。
【0103】
前記遺伝子の変異は、好ましくは、該変異がホモ接合型で導入されている。前記遺伝子の変異がβ5iサブユニットをコードする遺伝子における変異である場合、このような個体では、恒常的な炎症反応が惹起される。本発明において「炎症反応」とは、任意の全身性又は局所性の炎症反応を意味し、例えば、周期性発熱、結節性紅斑様皮疹等の皮疹が挙げられる。従って、β5iサブユニットをコードする遺伝子に変異を有する本発明のノックイン動物は、NNS等の自己炎症疾患又は自己免疫疾患のモデルとして有用であり得る。
【0104】
炎症反応は、自体公知の方法により検出し、評価することができる。炎症反応は、例えば、血中CRP(C-reactive protein)値や血清中の炎症性サイトカイン(例えばIL-6、IP-10(interferon inducible protein-10)等)濃度を測定することにより検出することができる。
【0105】
本発明のノックイン動物は、自体公知の方法により作製することができ、例えば下記の工程(a’)〜(d’)を含む方法により作製できる:
(a’)野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で本発明のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子が改変されている胚性幹細胞を提供する工程;
(b’)前記胚性幹細胞を胚に導入し、キメラ胚を得る工程;
(c’)前記キメラ胚を動物に移植し、キメラ動物を得る工程;
(d’)前記キメラ動物を交配させ、野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で本発明のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子が改変されているヘテロ接合体を得る工程。
【0106】
前記工程(a’)において、野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で本発明のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子が改変されている胚性幹細胞(ES細胞)は、例えば、該遺伝子の相同組換えを誘導し得るターゲティングベクターを胚性幹細胞に導入して得られる。
【0107】
ターゲティングベクターを胚性幹細胞に導入する方法としては、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法/リポソーム法、電気穿孔法等が挙げられる。ターゲティングベクターが胚性幹細胞中に導入されると、当該細胞中でプロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子を含むゲノムDNAの相同組換えが生じる。
【0108】
ターゲティングベクターが導入される胚性幹細胞としては、任意の動物の胚盤胞から分離した内部細胞塊をフィーダー細胞上で培養することにより樹立してもよいが、市販又は所定の機関より既存の胚性幹細胞を入手できる。既存のマウス胚性幹細胞としては、例えば、ES−D3細胞、ES−E14TG2a細胞、SCC−PSA1細胞、TT2細胞、AB−1細胞、J1細胞、R1細胞、E14細胞、RW−4細胞等があげられる。また、胚性幹細胞としては、現時点で、マウス胚性幹細胞以外に、ヒト、ミンク、ハムスター、ブタ、ウシ、マーモセット、アカゲザル等の哺乳動物由来のもの等が樹立されているので、これらを用いることもできる。
【0109】
プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子を含むゲノムDNAで相同組換えが生じた動物細胞を選別するため、ターゲティングベクター導入後の動物細胞がスクリーニングされる。例えば、ポジティブ選別、ネガティブ選別等により選別を行った後に、遺伝子型に基づくスクリーニング(例えば、PCR法、サザンブロット法)を行う。
【0110】
胚性幹細胞を用いる場合には、好ましくは、組換え胚性幹細胞の核型分析がさらに行なわれる。核型分析では、選別された組換え胚性幹細胞において染色体異常がないことが確認される。核型分析は、自体公知の方法により行うことができる。なお、胚性幹細胞の核型は、ターゲティングベクターの導入前に予め確認しておくことが好ましい。
【0111】
ターゲティングベクターが後述のリコンビナーゼ標的配列を含む場合、相同組換えES細胞を、例えばリコンビナーゼ遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターで感染させることにより、リコンビナーゼ標的配列に挟まれた領域を除去することができる。上記領域の除去は、PCR法、サザンブロット法等の自体公知の方法により確認することができる。
【0112】
好ましいターゲティングベクターの例としては、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に相同な第一及び第二のポリヌクレオチド、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びに選択マーカーを含むターゲティングベクターが挙げられる。
【0113】
第一及び第二のポリヌクレオチドは、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子を含むゲノムDNAに対して、相同組換えを生じるのに十分な程度の配列同一性および長さを有するポリヌクレオチドである。第一および第二のポリヌクレオチドはそれぞれ、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子を含むゲノムDNAの異なる領域に対応する。第一及び第二のポリヌクレオチドとして、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子を含むゲノムDNAのいずれの領域を選択するかは、当業者であれば適宜決定できる。第一のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドを発現させるように、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域、即ち開始コドンよりも上流の領域を含むことが好ましい。
【0114】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、第一のポリヌクレオチドに含まれるβ5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で本発明のポリペプチドを発現するよう、第一のポリヌクレオチドと連結される。
【0115】
選択マーカーは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に相同な第二のポリヌクレオチドとの間(換言すれば、内側)に含まれる。この場合、選択マーカーとしては、ポジティブ選択マーカーが好ましい。ポジティブ選択マーカーは、その遺伝子を有する細胞のみを所定の条件下で生存および/又は増殖可能にする産物をコードする遺伝子であり、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(BPH)遺伝子、ブラスティシジンSデアミナーゼ遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0116】
別の好ましいターゲティングベクターの例としては、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に相同な第一のポリヌクレオチドおよび第二のポリヌクレオチド、ならびに選択マーカーを含むターゲティングベクターが挙げられる。
【0117】
第一及び第二のポリヌクレオチドは、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子を含むゲノムDNAに対して、相同組換えを生じるのに十分な程度の配列同一性および長さを有するポリヌクレオチドである。第一及び第二のポリヌクレオチドはそれぞれ、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子を含むゲノムDNAの異なる領域に対応する。
【0118】
また、第一及び第二のポリヌクレオチドは、相同組換えにより、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子領域に所望の変異を引き起こすように選択される。即ち、第一又は第二のポリヌクレオチドは、活性型サブユニットにおける129番目のグリシンの他のアミノ酸、好ましくはバリンへの置換をもたらす変異を含み、相同組換え後の該遺伝子領域からは本発明のポリヌクレオチドが発現し得る。このようなポリヌクレオチドは、DNA断片を試験管内において遺伝子操作することにより作製することができる。第一及び第二のポリヌクレオチドとして、プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子を含むゲノムDNAのいずれの領域を選択するかは、当業者であれば適宜決定できる。
【0119】
選択マーカーは、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に相同な第一のポリヌクレオチドと、第二のポリヌクレオチドとの間(換言すれば、内側)に含まれる。この場合、選択マーカーとしては、ポジティブ選択マーカーが好ましい。ポジティブ選択マーカーは、その遺伝子を有する細胞のみを所定の条件下で生存および/又は増殖可能にする産物をコードする遺伝子であり、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(BPH)遺伝子、ブラスティシジンSデアミナーゼ遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0120】
第一及び第二のポリヌクレオチドの長さは、ゲノムDNAの相同組換えが生じる長さである限り特に限定されない。一般論として、ターゲティングベクターによってゲノムDNAの相同組換えが効率よく起こるためには、相同領域が長いほどよい。一方、ターゲティングベクターの種類によって、挿入可能なDNAの長さは一定に制限される。従って、これらを考慮すると、第一及び第二のポリヌクレオチドの長さは、例えば0.5kb〜20kb、好ましくは1kb〜10kbであり得る。
【0121】
本発明で用いられるターゲティングベクターはまた、2以上のリコンビナーゼ標的配列を含んでいてもよい。2以上のリコンビナーゼ標的配列は、同一または反対の方向で配置できる。2以上のリコンビナーゼ標的配列は、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に相同な第一のポリヌクレオチドと第二のポリヌクレオチドとの間(換言すれば、内側)に配置される。
【0122】
リコンビナーゼ標的配列としては、当該分野で公知の配列、例えば、バクテリオファージP1由来のCre/loxPシステムで用いられるloxP配列、酵母由来のFLP/FRTシステムで用いられるFRT配列を使用できる。
【0123】
またプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に相同な第一のポリヌクレオチドと、第二のポリヌクレオチドとの外側に選択マーカーが含まれてもよい。この場合、選択マーカーとしては、ネガティブ選択マーカーが好ましい。ネガティブ選択マーカーは、非ターゲティング染色体部位に組み込まれたDNA挿入物を有する細胞に対して毒性に作用する遺伝子であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)のチミジンキナーゼ(tk)遺伝子、ジフテリア毒素Aフラグメント(DTA)遺伝子等が挙げられる。
【0124】
本発明で用いられるターゲティングベクターは、ポジティブ選択マーカー、ネガティブ選択マーカーのいずれか一方、好ましくは両方を含むことができる。
【0125】
ターゲティングベクターの基本骨格となるベクターは特に限定されず、形質転換を行う細胞(例えば、大腸菌)中で自己複製可能なものであればよい。例えば、市販のpBluscript(Stratagene社製)、pZErO 1.1(Invitrogen社)、pGEM−1(Promega社)等が使用可能である。
【0126】
本発明のターゲティングベクターは、自体公知の方法により製造できる。例えば、本発明のターゲティングベクターは、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に相同な第一のポリヌクレオチドおよび第二のポリヌクレオチドならびに該選択マーカーをベクターに挿入することにより製造できる。なお、このようなターゲティングベクターを作製するにあたっては、最初に、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子を含むゲノムDNA断片を単離する必要があるが、ゲノムDNA断片は、相同組換えの際に効率良く組換えが生じるよう、作製しようとするES細胞が由来する動物種と同一の動物種から単離することが好ましい。また、相同組換えの効率をさらに上げるために、ES細胞が由来する同一種の動物のうち同じ系統の動物から、ゲノムDNAを単離することがより好ましい。
【0127】
前記工程(b’)において、胚が由来する動物種は、本発明の非ヒト哺乳動物種と同様であり得、また、導入される胚性幹細胞が由来する動物種と同一であることが好ましい。胚としては、例えば胚盤胞、8細胞期胚等があげられる。胚はホルモン剤(例えばFSH様作用を有するPMSGおよびLH作用を有するhCGを使用)等により過排卵処理を施した雌動物を、雄動物と交配させること等により得ることができる。胚性幹細胞を胚に導入する方法としては、マイクロマニピュレーション法、凝集法等があげられる。
【0128】
前記工程(c’)において、キメラ胚が動物の子宮に移入され得る。キメラ胚が移植される動物は好ましくは偽妊娠動物である。偽妊娠動物は、正常性周期の雌動物を、精管結紮等により去勢した雄動物と交配することにより得ることができる。キメラ胚が導入された動物は、妊娠し、キメラ動物を出産する。
【0129】
次いで、出生した動物がキメラ動物か否かが確認される。出生した動物がキメラ動物であるか否かは自体公知の方法により確認でき、例えば、体色や被毛色で判別できる。また、判別のために、体の一部からDNAを抽出し、サザンブロット法やPCR法を行ってもよい。
【0130】
前記工程(d’)において、工程(c’)で得られたキメラ動物を成熟した後に交配させる。交配は好ましくは、野生型動物とキメラ動物との間で、又はキメラ動物同士で行われ得る。キメラ動物の生殖系列細胞において、野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で本発明のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子が改変され、該改変のヘテロ接合体子孫が得られたか否かは、自体公知の方法により種々の形質を指標として確認でき、例えば、子孫動物の体色や被毛色により判別できる。また、判別の方法としては、体の一部からDNAを抽出し、サザンブロット法またはPCR法によりスクリーニングする方法があげられる。さらに、このようにして得られたプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子の変異のヘテロ接合体同士を交配させることにより、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子の変異のホモ接合体を作出することができる。
【0131】
一般に、遺伝子改変動物の作出の過程では、胚性幹細胞に由来する遺伝子と、交配に用いた動物に由来する遺伝子とが交雑した遺伝子型を有する子孫動物が得られるため、結果としてプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子の改変のみによる特有の効果を調べることが困難となってしまう場合がある。そこで、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子の変異に特有の効果のみをより適切に抽出するために、得られた遺伝子改変動物(ヘテロ接合体またはホモ接合体)を純系の動物系統と、5世代〜8世代程度にわたり戻し交配することが好ましい。また、自然交配のみにより戻し交配を行うと長い年月がかかる場合があるので、世代交代を早めたい場合には体外受精技術を適宜用いることもできる。
【0132】
本発明の非ヒト哺乳動物、胚性幹細胞、ターゲティングベクターの作製の詳細については、例えば、下記文献を参照のこと。
1.別冊 実験医学 ザ・プロトコールシリーズ 「ジーンターデティングの最新技術」(2000年、羊土社)コンディショナルターゲティング法p.115-120
2.バイオマニュアルシリーズ8 「ジーンターゲティング」−ES細胞を用いた変異マウスの作製(1995年、羊土社)p.71-77
3.Sambrookら, Molecular Cloning: A LABORATORY MANUAL, 第3版, COLD SPRING HARBOR LABORATORY PRESS, 2001年, 4.82-4.85
4.Robertson E. J. in Teratocarcinomas and embryonic stem cells-a practical approach, ed. Robertson, E. J. (IRL Press, Oxford), 1987: pp.108-112
5.Dynecki, S. M.ら, Gene Targeting -a practical approach, 2nd edition, ed. Joyner, A.L. (Oxford Univ. Press), 2000: pp.68-73
6.Dynecki, S. M. ら, Gene Targeting -a practical approach, 2nd edition, ed. Joyner, A. L. (Oxford Univ. Press), 2000: pp.75-81
【0133】
このようにして得られた本発明の非ヒト哺乳動物を更に交配して得られる子孫動物、これら動物に由来する臓器、組織又は細胞も本発明に含まれる。前記臓器としては、肝臓、肺、腎臓、心臓、膵臓、胃、小腸、大腸、生殖器等の臓器が挙げられるが、これらに限定されない。前記組織としては、脳組織、神経組織、皮膚、皮下組織、上皮組織、骨、筋肉、毛、爪、骨髄、血管、血液、リンパ組織、リンパ液等の組織が挙げられるが、これらに限定されない。前記細胞としては、本発明の非ヒト哺乳動物から直接単離した細胞又は前記臓器若しくは組織から得られる全ての細胞が挙げられる。またそれらの細胞から得られる細胞株も本発明に含まれる。
【0134】
また本発明は、本発明の非ヒト哺乳動物を、同種の他の疾患モデル非ヒト哺乳動物と交配して得られる疾患モデル非ヒト哺乳動物を提供する。このような非ヒト哺乳動物は、例えば前記他の疾患へのプロテアソームの関与に関する研究に用いられる。他の疾患モデル非ヒト哺乳動物は、所望の非ヒト哺乳動物を選択することができるが、好ましくは、発癌モデル非ヒト哺乳動物又は自己免疫疾患モデル非ヒト哺乳動物である。これらの非ヒト哺乳動物は、市販のものを利用することができる。
【0135】
6.本発明のポリペプチドを発現する動物細胞
本発明は、本発明のポリペプチドを発現する動物細胞を提供する。
【0136】
本発明の動物細胞は、例えば、動物細胞の染色体に、外因性の本発明のポリヌクレオチドを発現可能な形態で挿入することにより、又は野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で本発明のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子を改変することにより、作製することができる。
【0137】
本発明の動物細胞が由来する種としては、ヒトを含む哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫等を挙げることができるが、哺乳動物が好ましい。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜;イヌ、ネコ等のペット;ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー等の霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。好ましい哺乳動物は、ヒト又はマウスである。
【0138】
本発明の動物細胞はまた、任意の組織に由来する細胞であり得、例えば、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子が発現している体細胞(例えばリンパ芽球、単球、マクロファージ等)、精原細胞、精子、卵子、受精卵等の生殖系列細胞、胚性細胞、並びに胚性幹細胞等が挙げられる。また、本発明の動物細胞は、初代培養細胞、細胞株のいずれであってもよい。なお、胚性細胞とは、胚から採取された細胞とその分裂によって生じた細胞で、胚でないものをいう。
【0139】
本発明の動物細胞は、ゲノムDNAの改変を伴う細胞である。本発明の動物細胞が染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に変異を有する場合、該変異についてホモ接合体、又はヘテロ接合体であり得る。
【0140】
本発明の動物細胞は、自体公知の方法により製造できる。例えば、本発明の動物細胞は、上記本発明の非ヒト哺乳動物を作製する方法における工程(a)及び(b)又は(a’)と同様の方法により作製することができる。
【0141】
ターゲティングベクターが導入される動物細胞としては、自体公知の方法で作製したもの、あるいは市販のもの、又は所定の機関より入手可能なものを使用できる。動物細胞の種類は、上述の通りである。
【0142】
また、ターゲティングベクターが導入される動物細胞として腎臓細胞等の体細胞を使用する場合、ターゲティングベクターが導入される体細胞は、初代培養細胞、細胞株のいずれでもよい。初代培養細胞及び細胞株は、自体公知の方法により作製できる(例えば、Current Protocols in Cell Biology, John Wiley & Sons, Inc.(2001))。
【0143】
本発明の動物細胞はまた、本発明の非ヒト哺乳動物から単離できる。また、本発明の非ヒト哺乳動物から単離された細胞を、遺伝子工学的手法等の方法により改変してもよい。細胞の単離及び改変は、自体公知の方法により行うことができる(例えば、Current Protocols in Cell Biology, John Wiley & Sons, Inc.(2001))。
【0144】
本発明の動物細胞は、プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子の解析、並びに本発明の非ヒト哺乳動物の製造等に有用である。また変異体プロテアソームβ5iサブユニットポリペプチドを発現する本発明の動物細胞は、炎症反応の解析に有用である。
【0145】
7.抗炎症薬の候補物質のスクリーニング方法
本発明は、変異体プロテアソームβ5iサブユニットポリペプチドを発現する本発明の非ヒト哺乳動物を使用し、以下の工程を含む、抗炎症薬の候補物質のスクリーニング方法を提供する:(a)本発明の非ヒト哺乳動物に被験物質を投与する工程、及び(b)炎症の改善効果を検定する工程。
【0146】
前記(a)において、被験物質とは、公知物質であっても、新規物質であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、或いは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。また、これらの化合物の2種以上の混合物を試料として供することもできる。
【0147】
前記被験物質を本発明の哺乳動物に投与する方法は、特に限定されないが、経口的又は非経口的に投与され得る。非経口的投与経路としては、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、気道内等の全身投与、或いは標的細胞付近への局所投与等が挙げられる。
【0148】
前記被験物質の投与量は、有効成分の種類、分子の大きさ、投与経路、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって適宜設定することができる。
【0149】
前記工程(b)において、炎症の改善効果とは、本発明の非ヒト哺乳動物が示す炎症反応の少なくとも1つを軽減する効果を言う。被験物質を投与した哺乳動物における炎症反応は、自体公知の方法により検出し、評価することができる。炎症反応は、例えば、血中CRP(C-reactive protein)値や血清中の炎症性サイトカイン(例えばIL-6、IP-10(interferon inducible protein-10)等)濃度を測定することにより検出することができる。
【0150】
炎症の改善効果を検定する場合、被験物質を投与しない本発明の非ヒト哺乳動物における炎症反応も同時に又は別途調べ、投与した哺乳動物の結果と非投与哺乳動物の結果とを比較することができる。投与した哺乳動物における炎症反応が、非投与哺乳動物のものよりも軽減していれば、被験物質が炎症の改善効果を有すると判定することができる。或いは、被験物質を投与する前の炎症反応も測定しておき、その結果を投与後の結果と比較してもよい。投与後の炎症反応が、投与前のものと比較して軽減していれば、被験物質が炎症の改善効果を有すると判定することができる。
【0151】
また前記工程(b)においては、陽性対照として、公知の抗炎症薬(例えば、ステロイド系抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬等)を被験物質と同様に投与し、炎症の改善効果を検定しておいてもよい。
【0152】
このようにして炎症の改善効果を有すると判定された被験物質は、有害な副作用を引き起こすことなく炎症を抑制する候補薬となり得る。
【0153】
一実施形態において、前記工程(a)における抗炎症薬は、炎症を抑制する効果を有することが知られている物質、又は炎症を抑制する効果が示唆されている候補化合物であり得る。この場合、本発明のスクリーニング方法を、抗炎症薬(炎症を抑制する効果が示唆されている候補化合物を含む)の薬効評価方法として使用することができる。即ち、本発明は、本発明の非ヒト哺乳動物を使用し、以下の工程を含む、抗炎症薬の薬効評価方法を提供する:(a)本発明の非ヒト哺乳動物に被験物質を投与する工程、及び(b)炎症の改善効果を検定する工程。ここで、工程(a)及び(b)は、本発明のスクリーニング方法と同様に行なうことができる。
【0154】
本発明の薬効評価方法を用いれば、抗炎症薬(炎症を抑制する効果が示唆されている候補化合物を含む)が実際に生体に投与された場合の炎症を抑制する効果を評価することができる。
【実施例】
【0155】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例等に何ら制約されるものではない。また本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。
【0156】
(DNA及び細胞試料)
ゲノムDNA試料は、通常のフェノール−クロロホルム法を透析精製と組み合わせて使用して、末梢血から単離した。患者の末梢血から得たB細胞は、エプスタイン・バーウイルスを使用して形質転換した。
【0157】
(SNP遺伝子型解析)
DNA試料は、GeneChip Human Mapping 500K array set(Nspアレイ及びStyアレイ)を製造者のプロトコール(Affymetrix)に従って使用して分析した。発明者らが調製した8つの試料及びInternational HapMap Project phase II JPT試料(45人)の生のアレイ強度データ(CELファイル)を、BRLMM遺伝子型解析ソフトウェアを使用して、同時に遺伝子型解析した。
【0158】
(SNPマイクロアレイベースのホモ接合マッピング)
ROHのゲノム規模の構造を検出するために、SNP遺伝子型ファイル(CHPファイル)を、Partek Genomics Suite(Partek GS)の「unpaired LOH detection」機能を使用して分析した。ROH検出のための最大の分解能を得るために、SNPへテロ接合ベースラインファイルは使用しなかった。ROHについては以下の閾値を採用した:いとこ同士の結婚で生まれた子(患者2及び4)については1.0 Mb、その他の近親婚で生まれた子(患者1及び3)については750 kb、及び非近親婚で生まれた子(患者5)については500 kb。患者4の罹患していない兄弟についてはフィルトレーションを使用しなかった。ゲノム規模のROH重複パターンは、組織内のRubyスクリプト(請求により利用可能)を使用して検出し、Partek GSを使用して視覚化した。全ての患者においてROHを示すが罹患していない兄弟においては示さない領域を、候補領域とみなした。
【0159】
(変異サーチ及び塩基配列決定)
全てのPCR反応は、ゲノムDNAを使用して、KOD FX(Toyobo)又はExTaq DNAポリメラーゼHS(Takara)を用いて、適切なアニーリング温度で行なった。PCR産物は、Exonuclease I(Epicentre)及びShrimp alkaline phosphatase(GE Healthcare Ltd.)を使用する直接塩基配列決定のために精製した。シークエンス反応はBigDyeTMTerminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を使用して行い、電気泳動はAutosequencer Model 3130xlを使用して行なった。
【0160】
(構造モデリング)
変異免疫プロテアソーム及び非変異免疫プロテアソームの構造モデルは、構成的サブユニット(Structure 10, 609-628 (2002))の残基を、誘導性サブユニットのものと置き換えることにより構築した。生成した、最小エネルギーを有するモデルのいくつかを、クリスタログラフィー&NMRシステム(Acta Crystallogr. Sect. D-Biol. Crystallogr. 54(Pt5), 905-921 (1998))を使用する、実験データフリーのエネルギー最小化プロセス(experimental data free energy minimization process)に更に供した。
【0161】
(細胞培養)
EB形質転換B細胞株は、患者同意の下に末梢血を採取しEBウイルスをB細胞へ感染させ、細胞株として分離した。皮膚線維芽細胞は、患者同意の下に和歌山県立医科大学にてバイオプシーを行い、トリプシン・コラゲナーゼ等で細胞をバラバラにほぐした後に、培養皿で培養し初代培養線維芽細胞として分離した。EB形質転換B細胞株及び皮膚線維芽細胞は、それぞれRPMI1640及びダルベッコ改変イーグル培地(10%ウシ胎仔血清(FBS)、100 IU/mlペニシリンG、及び100 mg/ml ストレプトマイシンを添加した)中で培養した。
【0162】
(タンパク質抽出物、免疫学的分析、及び抗体)
細胞を、氷冷溶解バッファー(lysis buffer)(50 mM Tris-HCl [pH 7.5]、0.5% [v/v]ノニデットP40、1 mM ジチオスレイトール、2 mM ATP及び5 mM MgCl2)中で溶解し、抽出物を、4℃にて10分間20,000×gで遠心することにより清澄化した。上清を、SDS-PAGE(プロテアソームサブユニットについては12.5%、ポリユビキチン化タンパク質については7.5%)に供するか、又はグリセロール勾配遠心により分析した。分離したタンパク質を、ポリビニリデンジフルオライドメンブレン上に移し、表示の抗体とインキュベートした。メンブレンは、ECL Plus Western Blotting Detection System(GE Healthcare Ltd.)を使用して現像した。
プロテアソームβ1i、β2i、及びβ5iサブユニット、並びにhUmp-1に対する抗体は、組換えタンパク質(EMBO J. 27(16), 2204-2213 (2008))を使用してウサギで産生させた。抗α6サブユニットモノクローナル抗体(MCP20)は、ENZOから購入した。抗ユビキチン抗体(Dako)並びに西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ウサギ抗マウスIgG及びヤギ抗ウサギIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)をウェスタンブロット分析に使用した。
【0163】
(グリセロール勾配分析)
細胞抽出物由来のタンパク質(600 μg)を、公知の手順(Methods in Enzymology 399, 227-240 (2005))に従い、8-32%(v/v)直線勾配での遠心(22時間、100,000×g)により、32フラクションに分離した。
【0164】
(プロテアソーム活性のアッセイ)
キモトリプシン様活性、トリプシン様活性及びカスパーゼ様活性は、公知の手順(Science 316(5829), 1349-1353 (2007))に従い、蛍光ペプチド基質(succinyl-Leu-Leu-Val-Tyr-7-amino-4-methylcoumarin(Suc-LLVY-MCA)、butyloxycarbonyl-Leu-Arg-Arg-4-metylcoumarin(Boc-LRR-MCA)及びbenzyloxycarbonyl-Leu-Leu-Glu-methylcoumarylamine(Z-LLE-MCA))を使用して測定した。なお、キモトリプシン様活性及びカスパーゼ様活性のアッセイは、0.03%SDS(潜在性(latent)20Sプロテアソームの強力な人工的活性化剤である)の存在下で行なった。
【0165】
(免疫組織化学)
免疫組織化学は、標準の間接免疫蛍光法を使用して行なった。ホルマリン固定し、パラフィンに包埋した組織の切片を、パラフィン除去し、10 mMクエン酸緩衝液(pH 6.0)中で30分間80℃で前処理した後、マイクロ波エピトープ修復(microwave epitope retrieval)を行なった。エピトープ修復の後、内因性ペルオキシダーゼを、3% H2O2溶液中で不活性化した。5%正常ウマ血清を含むPBS中でブロッキングした後、スライドを、ウサギポリクローナル抗ユビキチン抗体(Dako)又はマウスモノクローナル抗ヒトCD68抗体(ProSci Inc.)と共に、室温で60分間インキュベートした。
次いで、切片を、5%正常ウマ血清を含むPBS中で、FITC結合ロバ抗マウスIgG抗体又はテトラメチルローダミンイソチオシアネート結合ロバ抗ウサギIgG抗体(Jackson ImmunoResearch)と共に、室温で30-45分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、スライドをVectashield封入剤(Vector Laboratories Inc.)中に封入し、共焦点顕微鏡(LSM5、PASCAL;Carl Zeiss)によりスキャンした。対照実験を行ない、使用した各二次抗体のアイソタイプ特異性を確認した。陰性対照実験は、種特異的IgGを一次抗体として使用して行なった。
【0166】
(NF-κBコンセンサスオリゴヌクレオチドを使用する電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA))
核タンパク質を、Nuclear Extract Kit(Active Motif)を使用して抽出した。核抽出物(4 μg)を、EMSA Kit(Pierce)を使用するEMSAアッセイのために使用した。NF-κB結合モチーフに対するコンセンサスオリゴヌクレオチド配列は以下の通りである:5'-AGT TGA GGG GAC TTT CCC AGG C-3'(センス;配列番号16)及び5'-GCCTGGGAAAGTCCCCTCAACT-3'(アンチセンス;配列番号17)。競合アッセイについては、核抽出物を非標識オリゴヌクレオチドとプレインキュベーションした後、[γ-32P]-ATP標識NF-κBプローブを添加した。試料を0.5×TBE中で4%ポリアクリルアミドゲル(38:1)にロードし、室温にて1ワットで泳動した。ゲルを乾燥させ、Storage Phosphor Screen BAS-IP(GE Healthcare)に露光させた。NF-κB結合の完全性を確認するために、スーパーシフトアッセイに、抗p65抗体及び抗p50抗体(Santa Cruz Biotechnology)を使用した。
【0167】
実施例1:中條−西村症候群(NNS)の原因遺伝子の探索
本発明者らは、5人のNNS患者、及び3人の罹患していない兄弟から採取したゲノムDNA試料を調べた(図1に患者1、2及び4の近親婚暦を示す)。全ての患者によって共有されたホモ接合連続領域(runs of homozygosity、ROH)は、疾患に関与する遺伝子を含む候補領域であることが期待されるため、試料間で重複するROH領域を探索し、上記(SNPマイクロアレイベースのホモ接合マッピング)の基準を満たす9つの領域を見出した。罹患していない兄弟のいずれかと共有される全てのROH領域を除外した後、染色体6p21.31-32上の1.1 bにわたる領域(32,798,004から33,903,106; NCBI Build 36.1)を、NNSに関与する唯一の候補領域として同定した(図2a)。この1.1 Mbの領域内のエキソン(スプライシング部位を含む)を直接塩基配列決定し、PSMB8(NM_148919)(LMP7又はRING10としても知られ、免疫プロテアソームのLMP7タンパク質(β5iサブユニット)をコードする)のエキソン5において、単一の非同義変異(dbSNPデータベースには登録されていない)を見出した。該変異は、PSMB8(NM_148919)のヌクレオチド配列の開始コドンの1番目の塩基から数えて602番目におけるグアニンからチミンへのトランスバージョンであり(602G>T)、PSMB8遺伝子産物であるβ5iサブユニットにおいて、プロペプチドのアミノ酸配列における201番目のグリシンのバリンへのアミノ酸置換をもたらす。β5iサブユニットのプロペプチドのアミノ酸配列における201番目のグリシンは脊椎動物の間で高度に保存されていることから、これは重大な置換である(図2b、c)。β5iは、72番目と73番目の残基の間で切断され、その活性型が産生される(Nature 382(6590), 468-471 (1996))ことから、該変異を、活性型の免疫プロテアソームサブユニットβ5iにおいてはG129Vと呼ぶ。該変異は、その周囲のハプロタイプが全ての患者の間で共有されていることから、単一の創始者(founder)から伝達されたことが示唆される(図3)。
【0168】
実施例2:β5iのG129V変異の、免疫プロテアソーム発現細胞におけるプロテアソーム活性への影響
本発明者らは、変異体β5i(β5iG129V)サブユニットのin silicoモデリングを用い、この変異の立体構造への影響を推測した。この変異残基はβ5iのS8βシートの端に位置し、その触媒残基であるスレオニン(Thr1;図4a中、Thr73)に構造上近接していた。G129V(図4b中、G201V)の置換は、触媒中心内で、Thr1(図4b中、Thr73)だけでなくLys33(図4b中、Lys105)における構造変化を引き起こした(図4b)。該変異は、β4とβ5iの界面に位置するS8−H3ループにおける更なる構造変化をもたらし、このことは隣接するβ4サブユニットとβ5iとの表面接触に影響した(図4c、矢印)。これらの結果は、この変異がβ5iの触媒活性と20Sプロテアソームの構築の両方に影響する可能性を提起した。
【0169】
プロテアソームの活性へのβ5i変異の影響を調べるために、不死化リンパ芽球様細胞株(標準のプロテアソームの代わりに免疫プロテアソームを構成的に発現する)からの抽出物を、NNS患者、ヘテロ接合体及び健常対照から採取し、グリセロール勾配遠心により分離した。次いで各フラクションを、キモトリプシン様活性(主にβ5iによってもたらされる)、並びにトリプシン様活性及びカスパーゼ様活性(20S/26Sプロテアソームによってもたらされる)について測定した。その結果、NNS細胞において、3つの活性全てが顕著に低下することが示された(図4d)。
【0170】
変異細胞においてプロテアソーム活性に影響する分子メカニズムについての更なる洞察を得るために、各フラクションをウェスタンブロット分析に供した(図4e)。哺乳動物の20Sプロテアソームの構築は、αリングの形成から始まる(これは専用の構築シャペロン、PAC1-4により補助される)。次いで、別のシャペロン、hUmp1の助けにより、αリング上にβリングが形成され、その結果半分のサイズの未成熟のプロテアソームが形成される。次いで、未成熟のプロテアソームが二量体化し、βサブユニットのプロペプチドの切断及びhUmp1の分解を伴いながら20Sプロテアソームが形成される(Nat. Rev. Mol. Cell Bio. 10(2), 104-115 (2009))。最も注目すべき知見は、NNS細胞において、二量体化前の未成熟の20Sプロテアソームが蓄積することであり、このことはプロ型のβ1i及びβ2i並びにhUmp1の存在により示される(図4e、フラクション10〜14)。そのため、NNS細胞は、より少ない20S及び26Sプロテアソームを含んだが、このことは3つ全てのペプチダーゼ活性の低下が観察されたことの原因であり得る(図4e、20Sについてはフラクション18−20、26Sについては24−28)。
【0171】
別の興味深い観察結果は、成熟プロテアソームに取り込まれたβ5iG129Vサブユニットの一部がより遅い移動度のバンドとして現れたことであり、このことは、不完全に切断された形のβ5iG129V(触媒残基であるスレオニンを露出させないかもしれない)の存在を示唆する(図4e、矢印)(Nature 382(6590), 468-471 (1996))。このことは、NNS細胞において、他の2つのペプチダーゼ活性と比較して、キモトリプシン様活性における顕著な低下がみられたこと(図4d)の一因であり得る。結果として、ポリユビキチン化タンパク質がリンパ芽球様細胞に蓄積する(図5a)。また、β5iサブユニットを発現するNNS線維芽細胞も、対照の線維芽細胞と比較した場合、ポリユビキチン化タンパク質の蓄積を示した(図5b)。総合すると、これらの結果から、β5i内のG129V置換が免疫プロテアソームの構築を深刻に損ない、プロテアソームレベル及び活性の低下をもたらすことが示された。
【0172】
実施例3:NNS細胞におけるポリユビキチン化タンパク質の蓄積
次いで、このプロテアソーム活性の欠損が、NNS患者においてin situで見られるか否かを調べた。NNS患者から採取した皮膚生検切片を染色した。対照として、単球性筋膜炎(monocytic fasciitis)患者由来の切片を使用した。CD65は、単球/マクロファージ(これらは、標準のプロテアソームよりもむしろ免疫プロテアソームを主に発現することが知られている細胞種である)のマーカーである(Proteomics 5(5), 2351-2363 (2010))。炎症反応(大量のCD68陽性細胞による皮膚への浸潤によって特徴付けられる)は、NNS試料及び筋膜炎試料の両方において観察された。しかしながら、NNS切片中のCD68陽性細胞は、ユビキチンについても強度に陽性であったのに対し、筋膜炎切片においてはユビキチンはかすかに検出されたのみであった(図5c)。これらの結果は、NNS患者では、免疫プロテアソーム発現細胞においてプロテアソーム活性が低下すること、及びこの低下がNNSの表現型の主な原因であり、炎症の結果ではないことを示唆する。
【0173】
実施例4:NNS患者における炎症反応の測定
次いで、炎症反応を同定するためのサスペンションアレイ上でのマルチプレックスビーズベースの酵素結合免疫吸着法(ELISA)を用いて、NNS患者の血清中の炎症性サイトカインの産生について探索した。その結果、IL-6レベル及びinterferon inducible protein-10(IP-10)レベルの顕著な増加が示された(図6a)。このことは標準的なELISAでも確認した(図7a及び図6b)。IL-6は、炎症反応において重要な役割を果たし(Adv. Immunol. 54, 1-78 (1993); Annu. Rev. Immunol. 23, 1-21 (2005); Nat. Clin. Pract. Rheumatol. 2(11), 619-626 (2006))、線維芽細胞により産生される。実際、IL-6産生は、TFN-αの存在下と非存在下のいずれにおいても、健常対照の線維芽細胞よりも、NNS患者の線維芽細胞において顕著に高かった(図7b)。
【0174】
次に、NNS線維芽細胞によるIL-6過剰産生に関与し得る種々のシグナル伝達系を調べた。Nuclear factor (NF)-κB及びAP-1は、IL-6を含む炎症性サイトカインを誘導する、2つの主要な転写因子である(Nat. Rev. Cancer. 10(8), 561-74 (2010); Nat. Rev. Immunol. 9(11), 778-788 (2009))。TNF-αで処理した細胞におけるNF-κBの活性化を検出するために、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を使用した;しかしながら、NNS線維芽細胞と健常対照の線維芽細胞の核抽出物中のp65/p50へテロ二量体の量には違いはみられなかった(図7c及び図8)。これと一致して、IκBαの分解及びNF-κBの核移行は、NNS線維芽細胞においては促進されなかった(図7d)。NF-κBの活性化は、ユビキチン−プロテアソーム系に大きく依存するにもかかわらず、これらの結果は、プロテアソーム活性の低下が、NNS細胞におけるNF-κBシグナル伝達の制御を妨げないことを示唆する。
【0175】
次に、ウェスタンブロット分析を用いて、AP-1を活性化する分子(例えばJNK1/2/3、ERK1/2及びp38等(Rheumatology 47(4), 409-414 (2008); Nat. Rev. Drug Discov. 2(9), 717-726 (2003)))を測定した。TNF-α刺激の有無に関わらず、NNS線維芽細胞由来の核抽出物中のリン酸化p38(p-p38)の量は増加した;しかしながら、JNK1/2/3及びERK1/2のレベルには明らかな違いはなかった(図7d)。NNS末梢血リンパ球由来の核抽出物中のp-p38レベルの増加も観察された(図7e)。プロテアソーム活性の減衰が核内のp-p38の蓄積をどのように引き起こすかは依然不明であるが、NNS患者においては、核内のp-p38が蓄積することによりIL-6過剰産生が誘導され、恒常的な炎症反応が引き起こされると考えられる。
【0176】
実施例5:遺伝子改変マウスの作出
プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子(Psmb8)のゲノムDNAクローンはマウスBACクローン(RP23-178C19)から単離した。
ターゲティングベクターは、以下の方法で作製した:defective λ prophage systemを用いて、NNS患者で同定された変異をマウスBACクローンのPsmb8遺伝子のエキソン5に導入した。また、Psmb8遺伝子のpoly Aシグナルの3’側に、ポジティブ選択マーカーとしてloxP配列で挟まれたネオマイシン耐性遺伝子(floxed-Neo)とネガティブ選択マーカー(ジフテリア毒素遺伝子、DT-A)を挿入しターゲティングベクターを構築した。
ES細胞として、C57/B16マウス由来のES細胞を使用し、上記ターゲティングベクターを電気穿孔法により導入した。相同組換えによりPsmb8に変異が導入されたES細胞をネオマイシン耐性を指標にスクリーニングした。得られた相同組換えES細胞をBalb/cマウスの胚胞へ注入し、キメラマウスを作製した。得られたキメラマウスをC57/B16マウスと交配し、Psmb8に変異を有するヘテロ接合マウス及びホモ接合マウスを作製した。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明によれば、NNS等の自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無を検査する手段が提供される。本発明の非ヒト哺乳動物を用いるスクリーニング方法は、新規機序に基づく抗炎症薬の候補物質の開発に貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアソームβ5型サブユニットのアミノ酸配列(ただし、活性型の該β5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンがプロテアソーム活性を低下させるように他のアミノ酸に置換されている)、又は該129番目のアミノ酸を含む8アミノ酸以上の連続したその部分配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
プロテアソームβ5型サブユニットがプロテアソームβ5iサブユニットである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
他のアミノ酸がバリンである、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
プロテアソームβ5iサブユニットのアミノ酸配列が、配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列である、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の発現ベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項8】
被験者の生体試料中の、プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子における、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸への置換をもたらす変異を検出する工程を含む、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無を検査する方法。
【請求項9】
他のアミノ酸がバリンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
被験者がヒトであり、且つ変異の検出が、該被験者より採取されたゲノムDNA含有試料において、配列番号5で表されるヌクレオチド配列中、3265番目の塩基における変異を検出することにより行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
自己炎症疾患又は自己免疫疾患が、中條−西村症候群である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
プロテアソームβ5iサブユニットをコードする遺伝子の変異であって、プロテアソーム活性を低下させる、活性型の該β5iサブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸への置換をもたらす変異を特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該変異を含む領域を特異的に増幅し得るプライマーを含む、自己炎症疾患又は自己免疫疾患の素因の有無の診断剤。
【請求項13】
他のアミノ酸がバリンである、請求項12に記載の診断剤。
【請求項14】
該核酸プローブ又はプライマーが、配列番号5で表されるヌクレオチド配列中、3265番目の塩基における変異を検出し得る核酸プローブ、又は該変異を含む領域を特異的に増幅し得るプライマーである、請求項12に記載の診断剤。
【請求項15】
配列番号5で表されるヌクレオチド配列(ただし、3265番目の塩基がチミンである)、又は3265番目の塩基を含む12ヌクレオチド以上の連続したその部分配列、或いは該ヌクレオチド配列又は該部分配列の相補配列を含む核酸。
【請求項16】
請求項1のポリペプチドを発現する、非ヒト哺乳動物。
【請求項17】
プロテアソームβ5型サブユニットがプロテアソームβ5iサブユニットである、請求項16に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項18】
野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で請求項1のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子が改変されている、請求項16又は17に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項19】
プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に、プロテアソーム活性を低下させる、活性型の該β5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸への置換をもたらす変異を有する、請求項18に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項20】
他のアミノ酸がバリンである、請求項19に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項21】
変異がホモ接合型の変異である、請求項18〜20のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項22】
恒常的に炎症反応が惹起されている、請求項21に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項23】
非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項16〜22のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項24】
請求項1のポリペプチドを発現する動物細胞。
【請求項25】
野生型プロテアソームβ5型サブユニットポリペプチドの代わりに、β5型サブユニットをコードする遺伝子の発現制御領域の支配下で請求項1のポリペプチドが発現するように、その染色体上のプロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子が改変されている、請求項24に記載の動物細胞。
【請求項26】
プロテアソームβ5型サブユニットをコードする遺伝子に、活性型の該β5型サブユニットのアミノ酸配列における129番目のグリシンの他のアミノ酸への置換をもたらす変異を有する、請求項25に記載の動物細胞。
【請求項27】
他のアミノ酸がバリンである、請求項26に記載の動物細胞。
【請求項28】
変異がホモ接合型の変異である、請求項25〜27のいずれか1項に記載の動物細胞。
【請求項29】
請求項17に記載の非ヒト哺乳動物に被験物質を投与する工程、及び炎症の改善効果を検定する工程、を含む、抗炎症薬の候補物質のスクリーニング方法。
【請求項30】
請求項16〜23のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物と他の疾患モデル非ヒト哺乳動物との交配によって生じる疾患モデル非ヒト哺乳動物。
【請求項31】
他の疾患モデル非ヒト哺乳動物が発癌モデル非ヒト哺乳動物又は自己免疫疾患モデル非ヒト哺乳動物である、請求項30に記載の疾患モデル非ヒト哺乳動物。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−39065(P2013−39065A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177269(P2011−177269)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【出願人】(599045903)学校法人 久留米大学 (72)
【出願人】(308038613)公立大学法人和歌山県立医科大学 (4)
【Fターム(参考)】