自己発電型点検装置及び点検方法、並びにエスカレータシステム
【課題】簡素な構成で、踏段に備わるローラや案内レールの異常を検出でき、さらに振動、騒音を抑制可能な自己発電型点検装置、点検方法、及びエスカレータシステムを提供する。
【解決手段】ローラ120cに非接触にて電力を発生する給電及び信号発生部130を備え、さらに上記給電及び信号発生部が送出する交流電圧波形信号に基づいてエスカレータの診断を行う診断処理部140を備えたことで、従来に比べ簡素な構成で、踏段に備わるローラや案内レールの異常を検出することができる。
【解決手段】ローラ120cに非接触にて電力を発生する給電及び信号発生部130を備え、さらに上記給電及び信号発生部が送出する交流電圧波形信号に基づいてエスカレータの診断を行う診断処理部140を備えたことで、従来に比べ簡素な構成で、踏段に備わるローラや案内レールの異常を検出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ等のコンベアに使用され当該コンベアの点検を行い診断する自己発電型点検装置及び点検方法、並びにエスカレータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータやオートラインなどの乗客コンベアでは、無端状に連結された踏段あるいは踏板が、乗客コンベアの筐体フレームに取り付けられた案内レール上を巡回走行して乗客を搬送する。エスカレータの場合には、図11に示すように、各踏段1ごとに走行方向に向かって前後および左右に合計4個の、上記案内レール上を走行するローラ2a,2b,3a,3bが取り付けられている。この4個のローラ2a,2b,3a,3bは、左右2対、合計4本の案内レール4a,4b,5a,5b上を走行する。
【0003】
従って、例えば案内レール4a,4b,5a,5bの取り付け寸法にくるいが生じると、振動や騒音が発生したり、走行途中の踏段1がふらついたりという問題が発生する。例えば、4本のレール4a,4b,5a,5b間の相互の高さ寸法がくるっていると、踏段1がふらつく。また、レールの継目に段差や隙間が生じると、振動や騒音が発生するおそれがある。これらの寸法くるいは、踏段走行路の左右に設けたスカートガードや、乗降部に設けた櫛歯プレートと踏段との干渉を引起すこともある。よって、経年劣化や不測の外力によって案内レールの取り付け寸法が、経時的に変化していないかを定期的に点検する必要がある。
【0004】
上述のようなエスカレータの状態を判定するため、踏段に取り付けられてエスカレータの状態を点検する装置が既に提案されている(例えば、特許文献1)。一方、踏段は、エスカレータの筐体内を周回走行することから、ワイヤ等の固定物を介して上記点検装置へ電力供給するのは困難である。よって、上記点検装置は、自己発電した電力にて作動するように構成されている。即ち、上記点検装置は、発電部、充放電部、センサ部、信号処理回路等の構成を有し、図11に示すように、踏段1を形成する側面部材には、上記ローラ3aと接する車輪7を軸端部に設けた発電機6が取り付けられている。よって、踏段1が走行することで、ローラ3aが回転し、該ローラ3aに接する車輪7が転動し、発電機6は発電を行う。発電された電力は、上記点検装置に備わる上記充放電部、センサ部、信号処理回路等に供給され、上記点検装置が作動するように構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−76729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように従来の点検装置では、センサ部、信号処理回路等のエスカレータの点検に必要な構成部分に加え、さらに、センサ部、信号処理回路等に電力を供給するための発電部を別途設けていた。よって、点検装置としての構成が大きくなるという問題があった。
【0007】
さらに又、上述のように、上記点検装置に電力を供給する発電機6の車輪7は、踏段1のローラ3aと接触しており、車輪7とローラ3aとの間で接触摩擦が生じる。よって、大きな振動、騒音が発生するという問題がある。このため、上記点検装置に備わりエスカレータの状態検出を行うセンサ部として加速度センサを用いた場合や、音を用いて診断を行う場合、さらに点検装置を常時設置して乗客利用時にも異常診断を行う場合には、振動、騒音を抑制する必要があった。
又、踏段に備わるローラや上記案内レールの異常を、より高精度に検出するため、新たなセンサを付加する場合でも、点検装置を低コストで実現するためには、安価で効率的なセンサを実現する必要があった。
【0008】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、従来に比べ簡素な構成で、踏段に備わるローラや案内レールの異常を検出でき、さらに、振動、騒音を抑制可能な、自己発電型点検装置を提供すること、該自己発電型点検装置にて実行される点検方法及び上記自己発電型点検装置を備えたエスカレータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様における自己発電型点検装置は、無端状に連結された複数の踏段と、上記踏段の移動を案内する案内レールとを備えたコンベアの状態を点検する自己発電型点検装置であって、上記踏段は、
上記案内レールに接触して上記案内レール上を回転して走行し当該踏段に回転可能に取り付けられ、かつ互いに極性の異なる磁石を周方向に沿って交互に配置したローラと、
上記ローラに対向しかつ非接触で上記踏段に固定されて配置され、上記踏段の移動による上記ローラの回転に応じて交流電圧を発生するとともに交流電圧波形信号を送出する給電及び信号発生部と、
上記交流電圧及び上記交流電圧波形信号が供給され、該交流電圧波形信号を分析して当該コンベアの点検を行う診断処理部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1態様における自己発電型点検装置によれば、ローラに非接触にて電力を発生する給電及び信号発生部を備え、さらに上記給電及び信号発生部が送出する交流電圧波形信号に基づいてコンベアの診断を行う診断処理部を備えたことで、従来に比べ簡素な構成で、踏段に備わるローラや案内レールを点検、さらに異常を検出することができる。又、給電及び信号発生部は、ローラと非接触なことから、振動及び騒音の発生を抑えることもできる。よって、エスカレータの場合、乗客の乗り心地に影響を与えることも無いので、運転中での診断も可能であり、エスカレータの常時監視が可能になる。又、給電及び信号発生部から発生する上記交流電圧波形信号は、ローラの回転状態を反映するので、エスカレータの状態監視をするための、新たなセンサとなる。
又、ローラの回転運動から電力を発生するときに得られる電圧波形を信号として扱うことで、ローラ、レールの状態を効率的にセンシングする新たなセンサを安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態である、自己発電型点検装置、該自己発電型点検装置にて実行されるコンベアの点検方法、及び上記自己発電型点検装置を備えたエスカレータシステムについて、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
又、以下に記載する実施形態では、上記自己発電型点検装置を備えたエスカレータシステムを例に採るが、本発明は、これに限定されず、複数の踏段を無端状に連結したコンベアにも適用可能である。
【0012】
実施の形態1.
まず最初に図10を参照して、上記自己発電型点検装置を有する少なくとも一つの踏段を含めて複数の踏段201を無端状に連結してループ202を形成したエスカレータシステム200について説明する。尚、エスカレータシステム200において、自己発電型点検装置を有する踏段101は一台である。又、該エスカレータシステム200には、踏段101と交信する受信装置221、さらに必要に応じて遠隔管理装置222を有する。これらの受信装置221及び遠隔管理装置222は、監視装置220に含まれる。
【0013】
図10の右端に位置する、ループ202の最上部には、上部ターミナルギア203が設けられ、左端に位置する最下部には、下部ターミナルギア204が設けられ、上部ターミナルギア203及び下部ターミナルギア204にループ202は噛み合っている。上部ターミナルギア203には駆動装置205が設けられ、駆動装置205にて上部ターミナルギア203が駆動されることで、ループ202は周回駆動される。尚、踏段201、上部ターミナルギア203、下部ターミナルギア204、及び駆動装置205等は、筐体フレーム206に格納されている。
【0014】
各踏段201は、側部が扇形状に形成されており、扇の要の近傍に前ローラ2a,2bが取り付けられ、踏段201の搭載面側に反対側における、上記扇の円弧の角部には、後ローラ3a,3bが取り付けられている。尚、これら前ローラ2a,2b及び後ローラ3a,3bは、踏段201の進行方向の左右、前後に一対ずつ設けられている。
筐体フレーム206の内側には、前ローラ2a,2bがその上を走行可能なように、搭載部側に前ローラ用案内レール207a,207b(総称して「207」を符番する。又、以下前レールとも呼ぶ。)が、後ローラ3a,3bがその上を走行可能なように、搭載部側に後ローラ用案内レール208a,208b(総称して「208」を符番する。又、以下後レールとも呼ぶ。)が左右の幅方向位置を変えて配置されている。同様に、反搭載部側には、前ローラ2a,2bが走行する案内レール209及び後ローラ3a,3bが走行する案内レール210が配置されている。又、踏段101を含み各踏段201の搭載面が、乗客搭乗時には常に水平を維持するように、前ローラ用案内レール207及び後ローラ用案内レール208は、配置されている。
【0015】
このように構成されるエスカレータシステム200における、踏段101を含む各踏段201は以下のように動作する。即ち、乗客を搭載した踏段201の前ローラ2a,2b及び後ローラ3a,3bは、前ローラ用案内レール207及び後ローラ用案内レール208上を走行して上部ターミナルギア203部分に到達する。上記ターミナルギア203に到達した踏段201は、上記ターミナルギア203に沿って反転する。反転した踏段201の前ローラ2a,2b及び後ローラ3a,3bは、反搭載部側の案内レール209,210上を走行して下部ターミナルギア204部分まで駆動される。踏段201は、下部ターミナルギア204部分で再び反転し、乗客を搬送可能な状態になる。
【0016】
次に、自己発電型点検装置を有する上記踏段101について説明する。
図1に示すように、踏段101も上述の踏段201と同様に、乗客搭載面を形成する上面部材101cと、曲面に形成された後面部材101dと、左右両側面を形成する一対の側面部材101e,101fと、この側面部材101e,101fの前側下部に取り付けられた軸101gとを有する。上面部材101c及び後面部材101d、側面部材101e、101fは、その一部又は全てが一体的に形成されていてもよいし、別部材であってもよい。軸101gの両端部には、上述した前ローラ2a,2bに対応して、前ローラ120a,120bが回動可能に取り付けられている。側面部材101e,101fの後ろ側下部には、上述の後ローラ3a,3bに対応して、後ローラ120c、120dが回転可能に取り付けられている。
【0017】
このような形状にてなる踏段101に設けられる自己発電型点検装置110は、基本的に、上記前ローラ120a,120bと、上記後ローラ120c、120dと、給電及び信号発生部130と、診断処理部140とを備え、さらに送信部150と、充放電部160とを備えるのが好ましい。
【0018】
前ローラ120a,120b及び後ローラ120c、120dは、全て同じ構成を有するものであり、図2及び下記の説明では後ローラ120cを例に採り説明を行う。後ローラ120cは、側面部材101eに立設されたシャフト101hを回転中心としてシャフト101hに対して回転自在に取り付けられている。側面部材101eに対向する、後ローラ120cの内側面には、好ましくは円形状の凹部121が形成されており、該凹部121の底面には磁性体からなるリング状の円板122が取り付けられている。図4に示すように、円板122には、シャフト101hを中心とした円周に沿って全周にわたり複数の永久磁石123が一定の間隔にて配置されている。各磁石123は、同形状にてなるが、隣接する磁石123同士では、極性を異ならせている。このように、磁石123の背面を磁性体の円板122で繋げることで、磁束の洩れを低減することができる。
【0019】
尚、本実施形態では、踏段101に備わる4つのローラ120a〜120dについて、上述のように磁石123を設けている。これは、後述するように、各ローラ120a〜120dの回転に応じて得られる交流電圧波形信号に基づいて、各ローラ120a〜120dの状態、並びに、前ローラ用案内レール207、後ローラ用案内レール208、案内レール209、210の状態が点検、診断されることから、当該エスカレータシステム200の全てを点検、診断できる点で好ましい。しかしながら、この形態に限定されるものではなく、上記4つのローラ120a〜120dの少なくとも一つに上述のように磁石123を設けてもよい。
【0020】
上記給電及び信号発生部130は、図2及び図5に示すように、円板131と、コイル部132と、支持部材133とを有し、前ローラ120a,120b及び後ローラ120c、120dのそれぞれに対応して、4つ設けられる。各給電及び信号発生部130は、前ローラ120a,120b及び後ローラ120c、120dのそれぞれに設けられた磁石123に対向し、かつ非接触にてコイル部132が配置されるようにして、軸101gの両端部、側面部材101e、101fに設置される。尚、下記では、後ローラ120cに対向して配置されている給電及び信号発生部130を例に採り、説明する。
上記円板131は、磁性体からなるリング状の板であり、上記シャフト101hを中心にして、かつ後ローラ120cに設けた上記円板122と平行にして、側面部材101eに対して僅かな隙間を介して側面部材101eに支持部材133にて固定される。支持部材133は、例えばステンレス材のような非磁性体にてなり、シャフト101hを中心にして側面部材101eに固定される。上記円板131には、シャフト101hを中心とした円周方向に沿って全周にわたり、上記磁石123の配置間隔と同間隔にて、磁石123に対向しかつ非接触にて、複数のコイル部132が立設されている。各コイル部132は、同一形状にてなる。尚、コイル部132、及び後ローラ120cの磁石123とは、シャフト101hを中心とした同一半径の円に沿って設置されている。上記コイル部132は、円板131に立設され磁性体からなるコア132aと、該コア132aの外面に巻回された導体132bとを有する。コア132aを上記磁石123と反対側で繋げることでも、磁束の洩れを低減することができる。尚、本実施形態では、図示するように、コア132aは、矩形状の断面にてなるが、円形断面にて形成されてもよい。又、コイル部132は、一つであってもよい。
【0021】
上述したように構成される、後ローラ120c及び給電及び信号発生部130では、上述したように踏段101が駆動されることで後ローラ120cが回転し、つまり磁石123が回転する。それに伴い、給電及び信号発生部130の各コイル部132には、極性が交互に変化する交流磁界が作用する。又、上記磁界に垂直になるように導体132bがコア132aに巻回されていることから、各コイル部132は、交流電圧を発生するとともに、後ローラ120cの回転状況に応じて、図8に示すような交流電圧波形信号170を送出する。又、上述のように、各コイル部132の設置間隔は、後ローラ120cにおける磁石123の設置間隔と等しくすることで、コイル部132に発生する交流電圧波形の位相差が0°又は180°となり、コイル部132を直列又は並列に接続したときに、効果的に電力を取り出すことができる。
このように、前ローラ120a,120b及び後ローラ120c、120dのそれぞれに対応して設けられたそれぞれの給電及び信号発生部130は、各ローラ120a〜120dの回転に伴い交流電圧を発生しかつ交流電圧波形信号170を送出する。
【0022】
上記診断処理部140は、踏段101内に取り付けられ、給電及び信号発生部130と接続される。よって診断処理部140には、上記交流電圧及び上記交流電圧波形信号170が、それぞれの給電及び信号発生部130から供給され、診断処理部140は、詳細後述するように、各交流電圧波形信号170を分析して当該エスカレータシステム200の点検、診断を行う。
【0023】
診断処理部140は、例えば半導体装置にて構成され、図3に示すように、CPU(中央演算処理装置)141、上記分析、点検及び診断を実行する処理部142、及び上記分析、点検及び診断実行用のプログラム、並びに、分析、点検及び診断の結果、等を格納する記憶部143を備える。尚、処理部142は、上記分析、点検及び診断実行用のプログラムにより機能する部分に区分した場合、回転速度及び位相検出部1421、反転検出部1422、位置演算部1423、及び積算部1424に区分することができる。
【0024】
上記回転速度及び位相検出部1421は、各交流電圧波形信号170から、各ローラ120a〜120dの回転速度及び回転位相を求める。
上記反転検出部1422は、各交流電圧波形信号170から、各ローラ120a〜120dについて、回転が転換したことを検出する。即ち、上述したように、又、図10から分かるように、踏段201と同様に踏段101は、上記ターミナルギア203部分及び下部ターミナルギア204部分に移動してきたときには、その姿勢が反転することから、各ローラ120a〜120dの回転方向が逆転する。よって、各給電及び信号発生部130から送出されるそれぞれの交流電圧波形信号170も、それまでの信号とは変化する。反転検出部1422は、この変化を検出する。
上記位置演算部1423は、反転検出部1422にて検出された「反転」に基づき判断される反転部を基準として、上記回転速度及び位相検出部1421による各ローラ120a〜120dの回転数に基づき、各ローラ120a〜120dの現在位置を求める。
上記積算部1424は、上記反転部を基準として、上記回転速度及び位相検出部1421による各ローラ120a〜120dの回転数及び回転位相の積算を行う。
【0025】
上記送信部150は、踏段101内に取り付けられ、診断処理部140に接続される。本実施形態では、診断処理部140にて実行された点検、診断の結果が、診断処理部140から当該送信部150へ供給され、送信部150は、上記点検、診断の結果情報を、当該エスカレータシステム200に備わる上記受信装置221へ送信する。
送信部150を備えることで、点検、診断の結果情報は自動的に送信されることから、当該エスカレータの点検、診断を適切なタイミングにて、又、容易に実行することができる。
尚、例えば、当該エスカレータシステム200の定期点検時等に、診断処理部140に備わる上記記憶部143に格納している上記点検、診断の結果情報を作業者が読み込むような構成を採る場合には、送信部150及び受信装置221を設けない構成を採ることもできる。
【0026】
上記充放電部160は、踏段101内に取り付けられ、それぞれの給電及び信号発生部130に接続され、各給電及び信号発生部130にて発生した電力を充電するとともに、診断処理部140及び送信部150に接続され、充電した電力を診断処理部140及び送信部150に送る。
給電及び信号発生部130にて発生する電圧は交流であり、充電する場合には直流化する必要がある。よって、充放電部160は、図6に示すように、全波整流回路161と、直流昇圧及び安定化回路162と、過充電防止回路163とを通過させて、バッテリ164に蓄電し、一方、バッテリ164からの放電を行うときに逆流を防止する逆流防止回路165も備える。
充放電部160を備えることで、外部からの給電手段を有することなく、自己発電型点検装置110自身にて電力供給が可能となり、又、装置構成をコンパクト化することができる。
【0027】
以上のように構成された自己発電型点検装置110の動作、つまり自己発電型点検装置110を用いたエスカレータの点検方法について、以下に説明する。
自己発電型点検装置110を備えた踏段101、及び通常の踏段201を有するエスカレータシステム200の運用に合わせて、自己発電型点検装置110の運用を行う。その運用方法の一例を図7に示す。尚、本実施形態では、該運用方法は、上述したように診断処理部140の記憶部143に予め格納されている、上記分析、点検及び診断実行用のプログラムに従い実行されるが、例えば、上記遠隔管理装置222を介しての作業者による指示により、実行するように構成することもできる。
【0028】
エスカレータが運転を開始し、踏段101の各ローラ120a〜120dが回転することで、上述のように、各給電及び信号発生部130から交流電圧が発生し、充放電部160はその充電を開始する。充放電部160は、必要な電力量を充電すると、充電を終了する。
【0029】
一方、予定していたエスカレータの点検、診断の時刻になると、診断処理部140が起動し、充放電部160のバッテリ164は、電力供給を開始する。又、診断処理部140又はエスカレータは、当該エスカレータの状態が点検、診断に適した状態、例えば無人状態であるかを判断する。その後、エスカレータを作動させながら、診断処理部140は、各給電及び信号発生部130が送出する交流電圧波形信号170に基づいて、点検、診断用のデータを収集し、分析、判定し、さらに、送信部150に対してデータ送信などを行う。これらの完了後、診断処理部140は、スリープモードに移行し、電力消費を抑制する。そして、エスカレータの運転が終了するまで、充電動作が継続される。
【0030】
以下には、診断処理部140による、具体的な点検、診断方法について説明する。
各給電及び信号発生部130から送出され、図8に示す交流電圧波形信号170は、踏段101の各ローラ120a〜120dの回転状態を反映している。よって、前ローラ用案内レール207、後ローラ用案内レール208、及び、案内レール209、210の歪み、傷、すべり、各ローラ120a〜120dの磨耗、脱落、等があれば、対応する交流電圧波形信号170に特徴が現れるので、これをもとに、診断処理部140は、診断を行う。その処理例を以下に示す。
【0031】
回転速度・位相
交流電圧波形信号170の中で時間軸と交差する点(ゼロクロス点)は、コイル部132が磁石123に最も接近している状態である。つまりゼロクロス点の間隔は、コイル部132に対する磁石123の通過時間tに相当する。この間隔t(sec)を計ることで、各ローラ120a〜120dの回転速度(rad/sec)を算出できる。又、通過したゼロクロス点を積算することで、各ローラ120a〜120dの回転位相も算出できる。
あるローラの回転数が、r(sec-1)、該ローラ上に配置した磁石123の個数が2Nであったとすると、tは1/(2rN)となる。また、N個のゼロクロス点を通過したことで、位相がπrad進んだことがわかる。
ローラ120a〜120dの回転速度、位相を検出することで、以下に説明するローラの摩耗、脱落、偏心、傷の有無、レールの滑り、レールの傷、等の検出が可能となる。
尚、これらの動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421、及び積算部1424にて実行される。
【0032】
反転部の検出
上述したように、踏段201と同様に踏段101は、上記ターミナルギア203部分及び下部ターミナルギア204部分に移動してきたときには、その姿勢が反転することから、各ローラ120a〜120dの回転が逆になる。尚、上記ターミナルギア203部分及び下部ターミナルギア204部分において、案内レールが無い部分では、ローラ120a〜120dの回転は慣性によるものだけになる。よって、交流電圧波形信号170もこれらの特徴が反映される。この特徴を利用して、踏段101が上記ターミナルギア203部分及び下部ターミナルギア204部分を通過していることを検出し、この点を基準点とすることができる。例えば、踏段101が上記ターミナルギア203部分及び下部ターミナルギア204部分を通過するときの電気信号の電力を算出すると、図9に示すようなグラフになる。踏段101がレールの無い部分にあり、給電及び信号発生部130からの電力が減衰している状態から、踏段101のローラ120a〜120dが再びレール207〜210に乗り、給電及び信号発生部130から再び電力が立ち上がるのを判定することで、反転部の検出が可能である。
反転部を検出することで、以下に説明する、踏段の位置、つまり異常箇所の位置を特定するための基準点を得ることができる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の反転検出部1422にて実行される。
【0033】
踏段位置
踏段101の絶対的な位置は、上記反転部(例えば、電力の立ち上がり点)を基準として、ここからローラ120a〜120dが何回回転したか、つまり回転位相を積算することで算出できる。踏段の位置を求めることで、異常箇所の位置を特定することができる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の位置演算部1423、及び積算部1424にて実行される。
【0034】
ローラの磨耗
ローラ120a〜120dの少なくとも一つに磨耗がある場合、ローラ径が小さくなるので、回転数は常に速くなる。よって、回転速度の増大により、ローラの磨耗を監視することができる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421、及び積算部1424にて実行される。
【0035】
ローラの脱落
ローラ120a〜120dの少なくとも一つが脱落した場合、そのローラに対応する給電及び信号発生部130から交流電圧波形信号170が得られず、算出される回転速度はゼロとなる。よって回転速度がゼロとなった状態が継続していることによって、ローラが脱落などによって無くなっていることを検出することができる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421にて実行される。
【0036】
ローラの偏芯・傷
ローラ120a〜120dの少なくとも一つが偏芯している場合や、ローラに傷が生じた場合、ローラの回転速度において、ローラの回転に同期した変動成分が無いかを判定する。これにより、ローラ120a〜120dの少なくとも一つの偏芯や傷を検出することができる。例えば、ローラ120a〜120dの少なくとも一つに偏芯がある場合、回転角によって回転半径が変動する。この変動は、ローラの回転周期で生じるので、回転速度は、ローラの回転周期で変動する。よって、回転速度の時系列データ、又は回転速度時系列データの包絡成分の周波数解析をすることで、上述の回転半径に相当する成分の有無を確認できる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421にて実行される。
【0037】
レールの滑り
オイルの流出などで、レールに滑りが発生した場合、ローラ120a〜120dの少なくとも一つの回転が遅くなる。よって、ローラの回転速度の減少から、上記滑りの有無を監視することができる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421にて実行される。
【0038】
レールの傷
レールに傷がある場合、ここを通過するときに、ローラ120a〜120dの回転速度に変動が生じるので、回転速度の変動からレール上の傷を検出することができ、さらに、上述の踏段101の位置を特定する動作に基づき、上記傷の位置を特定することができる。尚、上記回転速度の変動が微小であり、雑音に埋れてしまう場合には、次のような方法で対処することが可能である。
i)規定した位置間を踏段101が通過するときの回転速度の時系列データを多数切り出す。
ii)上記切り出した時系列データをリサンプルし、それら全てを同じ長さLに変換する。
iii)上記長さLの時系列データ、又はこれらを包絡線処理したものを、加算する。
以上の処理によって、白色性のノイズに起因する変動は抑制され、同一の位置にて生じる、傷に起因する変動が強調される。強調処理された結果から傷の検出、傷位置の特定が可能である。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421、及び位置演算部1423にて実行される。
【0039】
上述したようにして診断処理部140にて点検、診断された当該エスカレータの点検診断結果情報は、診断処理部140から送信部150へ送出され、送信部150から、当該エスカレータシステム200に備わる受信装置221へ例えば無線にて送信される。受信装置221にて受信された上記点検診断結果情報は、作業者により読み取られたり、あるいは必要に応じて設けられる遠隔管理装置222にて作業者へ知らせられる。上記点検診断結果情報に基づいて、エスカレータに対して必要な修理等が実行される。
【0040】
以上説明したように、自己発電型点検装置110、該自己発電型点検装置110を用いた点検方法、及び自己発電型点検装置110を備えたエスカレータシステム200によれば、従来に比べ簡素な構成で、踏段に備わるローラや案内レールを点検、さらに異常を高精度にて検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態である自己発電型点検装置を備えた踏段を示す斜視図である。
【図2】図1に示す自己発電型点検装置の構成を示す図である。
【図3】図2に示す診断処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示す給電及び信号発生部に備わるローラに取り付けられる磁石の配置例を示す図である。
【図5】図2に示す給電及び信号発生部に備わるコイル部を示す平面図である。
【図6】図2に示す充放電部の構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示す自己発電型点検装置の動作を説明するための図である。
【図8】図2に示す給電及び信号発生部が送出する交流電圧波形信号を示すグラフである。
【図9】図2に示す診断処理部にてレールの欠落を検出するときのグラフである。
【図10】図1に示す自己発電型点検装置を備えたエスカレータシステムを示す図である。
【図11】従来のエスカレータに備わる踏段を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
101…踏段、110…自己発電型点検装置、120a、120b…前ローラ、
120c、120d…後ローラ、130…給電及び信号発生部、
140…診断処理部、150…送信部、160…充放電部、
200…エスカレータシステム、201…踏段、207…前ローラ用案内レール、
208…後ローラ用案内レール、220…監視装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ等のコンベアに使用され当該コンベアの点検を行い診断する自己発電型点検装置及び点検方法、並びにエスカレータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータやオートラインなどの乗客コンベアでは、無端状に連結された踏段あるいは踏板が、乗客コンベアの筐体フレームに取り付けられた案内レール上を巡回走行して乗客を搬送する。エスカレータの場合には、図11に示すように、各踏段1ごとに走行方向に向かって前後および左右に合計4個の、上記案内レール上を走行するローラ2a,2b,3a,3bが取り付けられている。この4個のローラ2a,2b,3a,3bは、左右2対、合計4本の案内レール4a,4b,5a,5b上を走行する。
【0003】
従って、例えば案内レール4a,4b,5a,5bの取り付け寸法にくるいが生じると、振動や騒音が発生したり、走行途中の踏段1がふらついたりという問題が発生する。例えば、4本のレール4a,4b,5a,5b間の相互の高さ寸法がくるっていると、踏段1がふらつく。また、レールの継目に段差や隙間が生じると、振動や騒音が発生するおそれがある。これらの寸法くるいは、踏段走行路の左右に設けたスカートガードや、乗降部に設けた櫛歯プレートと踏段との干渉を引起すこともある。よって、経年劣化や不測の外力によって案内レールの取り付け寸法が、経時的に変化していないかを定期的に点検する必要がある。
【0004】
上述のようなエスカレータの状態を判定するため、踏段に取り付けられてエスカレータの状態を点検する装置が既に提案されている(例えば、特許文献1)。一方、踏段は、エスカレータの筐体内を周回走行することから、ワイヤ等の固定物を介して上記点検装置へ電力供給するのは困難である。よって、上記点検装置は、自己発電した電力にて作動するように構成されている。即ち、上記点検装置は、発電部、充放電部、センサ部、信号処理回路等の構成を有し、図11に示すように、踏段1を形成する側面部材には、上記ローラ3aと接する車輪7を軸端部に設けた発電機6が取り付けられている。よって、踏段1が走行することで、ローラ3aが回転し、該ローラ3aに接する車輪7が転動し、発電機6は発電を行う。発電された電力は、上記点検装置に備わる上記充放電部、センサ部、信号処理回路等に供給され、上記点検装置が作動するように構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−76729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように従来の点検装置では、センサ部、信号処理回路等のエスカレータの点検に必要な構成部分に加え、さらに、センサ部、信号処理回路等に電力を供給するための発電部を別途設けていた。よって、点検装置としての構成が大きくなるという問題があった。
【0007】
さらに又、上述のように、上記点検装置に電力を供給する発電機6の車輪7は、踏段1のローラ3aと接触しており、車輪7とローラ3aとの間で接触摩擦が生じる。よって、大きな振動、騒音が発生するという問題がある。このため、上記点検装置に備わりエスカレータの状態検出を行うセンサ部として加速度センサを用いた場合や、音を用いて診断を行う場合、さらに点検装置を常時設置して乗客利用時にも異常診断を行う場合には、振動、騒音を抑制する必要があった。
又、踏段に備わるローラや上記案内レールの異常を、より高精度に検出するため、新たなセンサを付加する場合でも、点検装置を低コストで実現するためには、安価で効率的なセンサを実現する必要があった。
【0008】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、従来に比べ簡素な構成で、踏段に備わるローラや案内レールの異常を検出でき、さらに、振動、騒音を抑制可能な、自己発電型点検装置を提供すること、該自己発電型点検装置にて実行される点検方法及び上記自己発電型点検装置を備えたエスカレータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様における自己発電型点検装置は、無端状に連結された複数の踏段と、上記踏段の移動を案内する案内レールとを備えたコンベアの状態を点検する自己発電型点検装置であって、上記踏段は、
上記案内レールに接触して上記案内レール上を回転して走行し当該踏段に回転可能に取り付けられ、かつ互いに極性の異なる磁石を周方向に沿って交互に配置したローラと、
上記ローラに対向しかつ非接触で上記踏段に固定されて配置され、上記踏段の移動による上記ローラの回転に応じて交流電圧を発生するとともに交流電圧波形信号を送出する給電及び信号発生部と、
上記交流電圧及び上記交流電圧波形信号が供給され、該交流電圧波形信号を分析して当該コンベアの点検を行う診断処理部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1態様における自己発電型点検装置によれば、ローラに非接触にて電力を発生する給電及び信号発生部を備え、さらに上記給電及び信号発生部が送出する交流電圧波形信号に基づいてコンベアの診断を行う診断処理部を備えたことで、従来に比べ簡素な構成で、踏段に備わるローラや案内レールを点検、さらに異常を検出することができる。又、給電及び信号発生部は、ローラと非接触なことから、振動及び騒音の発生を抑えることもできる。よって、エスカレータの場合、乗客の乗り心地に影響を与えることも無いので、運転中での診断も可能であり、エスカレータの常時監視が可能になる。又、給電及び信号発生部から発生する上記交流電圧波形信号は、ローラの回転状態を反映するので、エスカレータの状態監視をするための、新たなセンサとなる。
又、ローラの回転運動から電力を発生するときに得られる電圧波形を信号として扱うことで、ローラ、レールの状態を効率的にセンシングする新たなセンサを安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態である、自己発電型点検装置、該自己発電型点検装置にて実行されるコンベアの点検方法、及び上記自己発電型点検装置を備えたエスカレータシステムについて、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
又、以下に記載する実施形態では、上記自己発電型点検装置を備えたエスカレータシステムを例に採るが、本発明は、これに限定されず、複数の踏段を無端状に連結したコンベアにも適用可能である。
【0012】
実施の形態1.
まず最初に図10を参照して、上記自己発電型点検装置を有する少なくとも一つの踏段を含めて複数の踏段201を無端状に連結してループ202を形成したエスカレータシステム200について説明する。尚、エスカレータシステム200において、自己発電型点検装置を有する踏段101は一台である。又、該エスカレータシステム200には、踏段101と交信する受信装置221、さらに必要に応じて遠隔管理装置222を有する。これらの受信装置221及び遠隔管理装置222は、監視装置220に含まれる。
【0013】
図10の右端に位置する、ループ202の最上部には、上部ターミナルギア203が設けられ、左端に位置する最下部には、下部ターミナルギア204が設けられ、上部ターミナルギア203及び下部ターミナルギア204にループ202は噛み合っている。上部ターミナルギア203には駆動装置205が設けられ、駆動装置205にて上部ターミナルギア203が駆動されることで、ループ202は周回駆動される。尚、踏段201、上部ターミナルギア203、下部ターミナルギア204、及び駆動装置205等は、筐体フレーム206に格納されている。
【0014】
各踏段201は、側部が扇形状に形成されており、扇の要の近傍に前ローラ2a,2bが取り付けられ、踏段201の搭載面側に反対側における、上記扇の円弧の角部には、後ローラ3a,3bが取り付けられている。尚、これら前ローラ2a,2b及び後ローラ3a,3bは、踏段201の進行方向の左右、前後に一対ずつ設けられている。
筐体フレーム206の内側には、前ローラ2a,2bがその上を走行可能なように、搭載部側に前ローラ用案内レール207a,207b(総称して「207」を符番する。又、以下前レールとも呼ぶ。)が、後ローラ3a,3bがその上を走行可能なように、搭載部側に後ローラ用案内レール208a,208b(総称して「208」を符番する。又、以下後レールとも呼ぶ。)が左右の幅方向位置を変えて配置されている。同様に、反搭載部側には、前ローラ2a,2bが走行する案内レール209及び後ローラ3a,3bが走行する案内レール210が配置されている。又、踏段101を含み各踏段201の搭載面が、乗客搭乗時には常に水平を維持するように、前ローラ用案内レール207及び後ローラ用案内レール208は、配置されている。
【0015】
このように構成されるエスカレータシステム200における、踏段101を含む各踏段201は以下のように動作する。即ち、乗客を搭載した踏段201の前ローラ2a,2b及び後ローラ3a,3bは、前ローラ用案内レール207及び後ローラ用案内レール208上を走行して上部ターミナルギア203部分に到達する。上記ターミナルギア203に到達した踏段201は、上記ターミナルギア203に沿って反転する。反転した踏段201の前ローラ2a,2b及び後ローラ3a,3bは、反搭載部側の案内レール209,210上を走行して下部ターミナルギア204部分まで駆動される。踏段201は、下部ターミナルギア204部分で再び反転し、乗客を搬送可能な状態になる。
【0016】
次に、自己発電型点検装置を有する上記踏段101について説明する。
図1に示すように、踏段101も上述の踏段201と同様に、乗客搭載面を形成する上面部材101cと、曲面に形成された後面部材101dと、左右両側面を形成する一対の側面部材101e,101fと、この側面部材101e,101fの前側下部に取り付けられた軸101gとを有する。上面部材101c及び後面部材101d、側面部材101e、101fは、その一部又は全てが一体的に形成されていてもよいし、別部材であってもよい。軸101gの両端部には、上述した前ローラ2a,2bに対応して、前ローラ120a,120bが回動可能に取り付けられている。側面部材101e,101fの後ろ側下部には、上述の後ローラ3a,3bに対応して、後ローラ120c、120dが回転可能に取り付けられている。
【0017】
このような形状にてなる踏段101に設けられる自己発電型点検装置110は、基本的に、上記前ローラ120a,120bと、上記後ローラ120c、120dと、給電及び信号発生部130と、診断処理部140とを備え、さらに送信部150と、充放電部160とを備えるのが好ましい。
【0018】
前ローラ120a,120b及び後ローラ120c、120dは、全て同じ構成を有するものであり、図2及び下記の説明では後ローラ120cを例に採り説明を行う。後ローラ120cは、側面部材101eに立設されたシャフト101hを回転中心としてシャフト101hに対して回転自在に取り付けられている。側面部材101eに対向する、後ローラ120cの内側面には、好ましくは円形状の凹部121が形成されており、該凹部121の底面には磁性体からなるリング状の円板122が取り付けられている。図4に示すように、円板122には、シャフト101hを中心とした円周に沿って全周にわたり複数の永久磁石123が一定の間隔にて配置されている。各磁石123は、同形状にてなるが、隣接する磁石123同士では、極性を異ならせている。このように、磁石123の背面を磁性体の円板122で繋げることで、磁束の洩れを低減することができる。
【0019】
尚、本実施形態では、踏段101に備わる4つのローラ120a〜120dについて、上述のように磁石123を設けている。これは、後述するように、各ローラ120a〜120dの回転に応じて得られる交流電圧波形信号に基づいて、各ローラ120a〜120dの状態、並びに、前ローラ用案内レール207、後ローラ用案内レール208、案内レール209、210の状態が点検、診断されることから、当該エスカレータシステム200の全てを点検、診断できる点で好ましい。しかしながら、この形態に限定されるものではなく、上記4つのローラ120a〜120dの少なくとも一つに上述のように磁石123を設けてもよい。
【0020】
上記給電及び信号発生部130は、図2及び図5に示すように、円板131と、コイル部132と、支持部材133とを有し、前ローラ120a,120b及び後ローラ120c、120dのそれぞれに対応して、4つ設けられる。各給電及び信号発生部130は、前ローラ120a,120b及び後ローラ120c、120dのそれぞれに設けられた磁石123に対向し、かつ非接触にてコイル部132が配置されるようにして、軸101gの両端部、側面部材101e、101fに設置される。尚、下記では、後ローラ120cに対向して配置されている給電及び信号発生部130を例に採り、説明する。
上記円板131は、磁性体からなるリング状の板であり、上記シャフト101hを中心にして、かつ後ローラ120cに設けた上記円板122と平行にして、側面部材101eに対して僅かな隙間を介して側面部材101eに支持部材133にて固定される。支持部材133は、例えばステンレス材のような非磁性体にてなり、シャフト101hを中心にして側面部材101eに固定される。上記円板131には、シャフト101hを中心とした円周方向に沿って全周にわたり、上記磁石123の配置間隔と同間隔にて、磁石123に対向しかつ非接触にて、複数のコイル部132が立設されている。各コイル部132は、同一形状にてなる。尚、コイル部132、及び後ローラ120cの磁石123とは、シャフト101hを中心とした同一半径の円に沿って設置されている。上記コイル部132は、円板131に立設され磁性体からなるコア132aと、該コア132aの外面に巻回された導体132bとを有する。コア132aを上記磁石123と反対側で繋げることでも、磁束の洩れを低減することができる。尚、本実施形態では、図示するように、コア132aは、矩形状の断面にてなるが、円形断面にて形成されてもよい。又、コイル部132は、一つであってもよい。
【0021】
上述したように構成される、後ローラ120c及び給電及び信号発生部130では、上述したように踏段101が駆動されることで後ローラ120cが回転し、つまり磁石123が回転する。それに伴い、給電及び信号発生部130の各コイル部132には、極性が交互に変化する交流磁界が作用する。又、上記磁界に垂直になるように導体132bがコア132aに巻回されていることから、各コイル部132は、交流電圧を発生するとともに、後ローラ120cの回転状況に応じて、図8に示すような交流電圧波形信号170を送出する。又、上述のように、各コイル部132の設置間隔は、後ローラ120cにおける磁石123の設置間隔と等しくすることで、コイル部132に発生する交流電圧波形の位相差が0°又は180°となり、コイル部132を直列又は並列に接続したときに、効果的に電力を取り出すことができる。
このように、前ローラ120a,120b及び後ローラ120c、120dのそれぞれに対応して設けられたそれぞれの給電及び信号発生部130は、各ローラ120a〜120dの回転に伴い交流電圧を発生しかつ交流電圧波形信号170を送出する。
【0022】
上記診断処理部140は、踏段101内に取り付けられ、給電及び信号発生部130と接続される。よって診断処理部140には、上記交流電圧及び上記交流電圧波形信号170が、それぞれの給電及び信号発生部130から供給され、診断処理部140は、詳細後述するように、各交流電圧波形信号170を分析して当該エスカレータシステム200の点検、診断を行う。
【0023】
診断処理部140は、例えば半導体装置にて構成され、図3に示すように、CPU(中央演算処理装置)141、上記分析、点検及び診断を実行する処理部142、及び上記分析、点検及び診断実行用のプログラム、並びに、分析、点検及び診断の結果、等を格納する記憶部143を備える。尚、処理部142は、上記分析、点検及び診断実行用のプログラムにより機能する部分に区分した場合、回転速度及び位相検出部1421、反転検出部1422、位置演算部1423、及び積算部1424に区分することができる。
【0024】
上記回転速度及び位相検出部1421は、各交流電圧波形信号170から、各ローラ120a〜120dの回転速度及び回転位相を求める。
上記反転検出部1422は、各交流電圧波形信号170から、各ローラ120a〜120dについて、回転が転換したことを検出する。即ち、上述したように、又、図10から分かるように、踏段201と同様に踏段101は、上記ターミナルギア203部分及び下部ターミナルギア204部分に移動してきたときには、その姿勢が反転することから、各ローラ120a〜120dの回転方向が逆転する。よって、各給電及び信号発生部130から送出されるそれぞれの交流電圧波形信号170も、それまでの信号とは変化する。反転検出部1422は、この変化を検出する。
上記位置演算部1423は、反転検出部1422にて検出された「反転」に基づき判断される反転部を基準として、上記回転速度及び位相検出部1421による各ローラ120a〜120dの回転数に基づき、各ローラ120a〜120dの現在位置を求める。
上記積算部1424は、上記反転部を基準として、上記回転速度及び位相検出部1421による各ローラ120a〜120dの回転数及び回転位相の積算を行う。
【0025】
上記送信部150は、踏段101内に取り付けられ、診断処理部140に接続される。本実施形態では、診断処理部140にて実行された点検、診断の結果が、診断処理部140から当該送信部150へ供給され、送信部150は、上記点検、診断の結果情報を、当該エスカレータシステム200に備わる上記受信装置221へ送信する。
送信部150を備えることで、点検、診断の結果情報は自動的に送信されることから、当該エスカレータの点検、診断を適切なタイミングにて、又、容易に実行することができる。
尚、例えば、当該エスカレータシステム200の定期点検時等に、診断処理部140に備わる上記記憶部143に格納している上記点検、診断の結果情報を作業者が読み込むような構成を採る場合には、送信部150及び受信装置221を設けない構成を採ることもできる。
【0026】
上記充放電部160は、踏段101内に取り付けられ、それぞれの給電及び信号発生部130に接続され、各給電及び信号発生部130にて発生した電力を充電するとともに、診断処理部140及び送信部150に接続され、充電した電力を診断処理部140及び送信部150に送る。
給電及び信号発生部130にて発生する電圧は交流であり、充電する場合には直流化する必要がある。よって、充放電部160は、図6に示すように、全波整流回路161と、直流昇圧及び安定化回路162と、過充電防止回路163とを通過させて、バッテリ164に蓄電し、一方、バッテリ164からの放電を行うときに逆流を防止する逆流防止回路165も備える。
充放電部160を備えることで、外部からの給電手段を有することなく、自己発電型点検装置110自身にて電力供給が可能となり、又、装置構成をコンパクト化することができる。
【0027】
以上のように構成された自己発電型点検装置110の動作、つまり自己発電型点検装置110を用いたエスカレータの点検方法について、以下に説明する。
自己発電型点検装置110を備えた踏段101、及び通常の踏段201を有するエスカレータシステム200の運用に合わせて、自己発電型点検装置110の運用を行う。その運用方法の一例を図7に示す。尚、本実施形態では、該運用方法は、上述したように診断処理部140の記憶部143に予め格納されている、上記分析、点検及び診断実行用のプログラムに従い実行されるが、例えば、上記遠隔管理装置222を介しての作業者による指示により、実行するように構成することもできる。
【0028】
エスカレータが運転を開始し、踏段101の各ローラ120a〜120dが回転することで、上述のように、各給電及び信号発生部130から交流電圧が発生し、充放電部160はその充電を開始する。充放電部160は、必要な電力量を充電すると、充電を終了する。
【0029】
一方、予定していたエスカレータの点検、診断の時刻になると、診断処理部140が起動し、充放電部160のバッテリ164は、電力供給を開始する。又、診断処理部140又はエスカレータは、当該エスカレータの状態が点検、診断に適した状態、例えば無人状態であるかを判断する。その後、エスカレータを作動させながら、診断処理部140は、各給電及び信号発生部130が送出する交流電圧波形信号170に基づいて、点検、診断用のデータを収集し、分析、判定し、さらに、送信部150に対してデータ送信などを行う。これらの完了後、診断処理部140は、スリープモードに移行し、電力消費を抑制する。そして、エスカレータの運転が終了するまで、充電動作が継続される。
【0030】
以下には、診断処理部140による、具体的な点検、診断方法について説明する。
各給電及び信号発生部130から送出され、図8に示す交流電圧波形信号170は、踏段101の各ローラ120a〜120dの回転状態を反映している。よって、前ローラ用案内レール207、後ローラ用案内レール208、及び、案内レール209、210の歪み、傷、すべり、各ローラ120a〜120dの磨耗、脱落、等があれば、対応する交流電圧波形信号170に特徴が現れるので、これをもとに、診断処理部140は、診断を行う。その処理例を以下に示す。
【0031】
回転速度・位相
交流電圧波形信号170の中で時間軸と交差する点(ゼロクロス点)は、コイル部132が磁石123に最も接近している状態である。つまりゼロクロス点の間隔は、コイル部132に対する磁石123の通過時間tに相当する。この間隔t(sec)を計ることで、各ローラ120a〜120dの回転速度(rad/sec)を算出できる。又、通過したゼロクロス点を積算することで、各ローラ120a〜120dの回転位相も算出できる。
あるローラの回転数が、r(sec-1)、該ローラ上に配置した磁石123の個数が2Nであったとすると、tは1/(2rN)となる。また、N個のゼロクロス点を通過したことで、位相がπrad進んだことがわかる。
ローラ120a〜120dの回転速度、位相を検出することで、以下に説明するローラの摩耗、脱落、偏心、傷の有無、レールの滑り、レールの傷、等の検出が可能となる。
尚、これらの動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421、及び積算部1424にて実行される。
【0032】
反転部の検出
上述したように、踏段201と同様に踏段101は、上記ターミナルギア203部分及び下部ターミナルギア204部分に移動してきたときには、その姿勢が反転することから、各ローラ120a〜120dの回転が逆になる。尚、上記ターミナルギア203部分及び下部ターミナルギア204部分において、案内レールが無い部分では、ローラ120a〜120dの回転は慣性によるものだけになる。よって、交流電圧波形信号170もこれらの特徴が反映される。この特徴を利用して、踏段101が上記ターミナルギア203部分及び下部ターミナルギア204部分を通過していることを検出し、この点を基準点とすることができる。例えば、踏段101が上記ターミナルギア203部分及び下部ターミナルギア204部分を通過するときの電気信号の電力を算出すると、図9に示すようなグラフになる。踏段101がレールの無い部分にあり、給電及び信号発生部130からの電力が減衰している状態から、踏段101のローラ120a〜120dが再びレール207〜210に乗り、給電及び信号発生部130から再び電力が立ち上がるのを判定することで、反転部の検出が可能である。
反転部を検出することで、以下に説明する、踏段の位置、つまり異常箇所の位置を特定するための基準点を得ることができる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の反転検出部1422にて実行される。
【0033】
踏段位置
踏段101の絶対的な位置は、上記反転部(例えば、電力の立ち上がり点)を基準として、ここからローラ120a〜120dが何回回転したか、つまり回転位相を積算することで算出できる。踏段の位置を求めることで、異常箇所の位置を特定することができる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の位置演算部1423、及び積算部1424にて実行される。
【0034】
ローラの磨耗
ローラ120a〜120dの少なくとも一つに磨耗がある場合、ローラ径が小さくなるので、回転数は常に速くなる。よって、回転速度の増大により、ローラの磨耗を監視することができる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421、及び積算部1424にて実行される。
【0035】
ローラの脱落
ローラ120a〜120dの少なくとも一つが脱落した場合、そのローラに対応する給電及び信号発生部130から交流電圧波形信号170が得られず、算出される回転速度はゼロとなる。よって回転速度がゼロとなった状態が継続していることによって、ローラが脱落などによって無くなっていることを検出することができる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421にて実行される。
【0036】
ローラの偏芯・傷
ローラ120a〜120dの少なくとも一つが偏芯している場合や、ローラに傷が生じた場合、ローラの回転速度において、ローラの回転に同期した変動成分が無いかを判定する。これにより、ローラ120a〜120dの少なくとも一つの偏芯や傷を検出することができる。例えば、ローラ120a〜120dの少なくとも一つに偏芯がある場合、回転角によって回転半径が変動する。この変動は、ローラの回転周期で生じるので、回転速度は、ローラの回転周期で変動する。よって、回転速度の時系列データ、又は回転速度時系列データの包絡成分の周波数解析をすることで、上述の回転半径に相当する成分の有無を確認できる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421にて実行される。
【0037】
レールの滑り
オイルの流出などで、レールに滑りが発生した場合、ローラ120a〜120dの少なくとも一つの回転が遅くなる。よって、ローラの回転速度の減少から、上記滑りの有無を監視することができる。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421にて実行される。
【0038】
レールの傷
レールに傷がある場合、ここを通過するときに、ローラ120a〜120dの回転速度に変動が生じるので、回転速度の変動からレール上の傷を検出することができ、さらに、上述の踏段101の位置を特定する動作に基づき、上記傷の位置を特定することができる。尚、上記回転速度の変動が微小であり、雑音に埋れてしまう場合には、次のような方法で対処することが可能である。
i)規定した位置間を踏段101が通過するときの回転速度の時系列データを多数切り出す。
ii)上記切り出した時系列データをリサンプルし、それら全てを同じ長さLに変換する。
iii)上記長さLの時系列データ、又はこれらを包絡線処理したものを、加算する。
以上の処理によって、白色性のノイズに起因する変動は抑制され、同一の位置にて生じる、傷に起因する変動が強調される。強調処理された結果から傷の検出、傷位置の特定が可能である。
尚、この動作は、診断処理部140内、処理部142の回転速度、位相検出部1421、及び位置演算部1423にて実行される。
【0039】
上述したようにして診断処理部140にて点検、診断された当該エスカレータの点検診断結果情報は、診断処理部140から送信部150へ送出され、送信部150から、当該エスカレータシステム200に備わる受信装置221へ例えば無線にて送信される。受信装置221にて受信された上記点検診断結果情報は、作業者により読み取られたり、あるいは必要に応じて設けられる遠隔管理装置222にて作業者へ知らせられる。上記点検診断結果情報に基づいて、エスカレータに対して必要な修理等が実行される。
【0040】
以上説明したように、自己発電型点検装置110、該自己発電型点検装置110を用いた点検方法、及び自己発電型点検装置110を備えたエスカレータシステム200によれば、従来に比べ簡素な構成で、踏段に備わるローラや案内レールを点検、さらに異常を高精度にて検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態である自己発電型点検装置を備えた踏段を示す斜視図である。
【図2】図1に示す自己発電型点検装置の構成を示す図である。
【図3】図2に示す診断処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示す給電及び信号発生部に備わるローラに取り付けられる磁石の配置例を示す図である。
【図5】図2に示す給電及び信号発生部に備わるコイル部を示す平面図である。
【図6】図2に示す充放電部の構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示す自己発電型点検装置の動作を説明するための図である。
【図8】図2に示す給電及び信号発生部が送出する交流電圧波形信号を示すグラフである。
【図9】図2に示す診断処理部にてレールの欠落を検出するときのグラフである。
【図10】図1に示す自己発電型点検装置を備えたエスカレータシステムを示す図である。
【図11】従来のエスカレータに備わる踏段を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
101…踏段、110…自己発電型点検装置、120a、120b…前ローラ、
120c、120d…後ローラ、130…給電及び信号発生部、
140…診断処理部、150…送信部、160…充放電部、
200…エスカレータシステム、201…踏段、207…前ローラ用案内レール、
208…後ローラ用案内レール、220…監視装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された複数の踏段と、上記踏段の移動を案内する案内レールとを備えたコンベアの状態を点検する自己発電型点検装置であって、上記踏段は、
上記案内レールに接触して上記案内レール上を回転して走行し当該踏段に回転可能に取り付けられ、かつ互いに極性の異なる磁石を周方向に沿って交互に配置したローラと、
上記ローラに対向しかつ非接触で上記踏段に固定されて配置され、上記踏段の移動による上記ローラの回転に応じて交流電圧を発生するとともに交流電圧波形信号を送出する給電及び信号発生部と、
上記交流電圧及び上記交流電圧波形信号が供給され、該交流電圧波形信号を分析して当該コンベアの点検を行う診断処理部と、
を備えたことを特徴とする自己発電型点検装置。
【請求項2】
上記診断処理部に接続され、上記診断処理部による当該コンベアの診断結果を当該自己発電型点検装置の外部へ送信する送信部をさらに備えた、請求項1記載の自己発電型点検装置。
【請求項3】
上記給電及び信号発生部、上記診断処理部、及び上記送信部と接続され、充電及び電力供給を行う充放電部をさらに備えた、請求項2記載の自己発電型点検装置。
【請求項4】
無端状に連結された複数の踏段と、各踏段に回転可能に取り付けられたローラと接触し上記踏段の移動を案内する案内レールとを備えたコンベアの状態を点検するコンベアの点検方法であって、
上記踏段の移動による上記ローラの回転により、上記ローラに非接触にて交流電圧及び交流電圧波形信号を発生させ、
上記交流電圧波形信号を分析することで当該コンベアの点検を行う、
ことを特徴とする点検方法。
【請求項5】
上記交流電圧波形信号から上記ローラの回転速度又は回転位相を求め、該回転速度又は回転位相から上記ローラ及び上記案内レールの状態を点検する、請求項4記載の点検方法。
【請求項6】
上記交流電圧波形信号の消失により上記ローラの脱落と判断する、請求項4記載の点検方法。
【請求項7】
上記回転位相を積算して基準点からの上記ローラの回転数を求め、該回転数から上記踏段の位置を求めて点検に供する、請求項5記載の点検方法。
【請求項8】
求めた上記ローラの回転数内の設定範囲における上記交流電圧波形信号を加算処理し、上記案内レールの特定位置における異常を強調処理して点検に供する、請求項7記載の点検方法。
【請求項9】
上記基準点は、上記ローラの回転方向が転換したことから判断する、請求項7記載の点検方法。
【請求項10】
請求項2又は3に記載する自己発電型点検装置と、
上記自己発電型点検装置とは別設され、上記自己発電型点検装置に備わる診断処理部による診断結果が供給されコンベアの状態を監視する監視装置と、
備えたことを特徴とするエスカレータシステム。
【請求項1】
無端状に連結された複数の踏段と、上記踏段の移動を案内する案内レールとを備えたコンベアの状態を点検する自己発電型点検装置であって、上記踏段は、
上記案内レールに接触して上記案内レール上を回転して走行し当該踏段に回転可能に取り付けられ、かつ互いに極性の異なる磁石を周方向に沿って交互に配置したローラと、
上記ローラに対向しかつ非接触で上記踏段に固定されて配置され、上記踏段の移動による上記ローラの回転に応じて交流電圧を発生するとともに交流電圧波形信号を送出する給電及び信号発生部と、
上記交流電圧及び上記交流電圧波形信号が供給され、該交流電圧波形信号を分析して当該コンベアの点検を行う診断処理部と、
を備えたことを特徴とする自己発電型点検装置。
【請求項2】
上記診断処理部に接続され、上記診断処理部による当該コンベアの診断結果を当該自己発電型点検装置の外部へ送信する送信部をさらに備えた、請求項1記載の自己発電型点検装置。
【請求項3】
上記給電及び信号発生部、上記診断処理部、及び上記送信部と接続され、充電及び電力供給を行う充放電部をさらに備えた、請求項2記載の自己発電型点検装置。
【請求項4】
無端状に連結された複数の踏段と、各踏段に回転可能に取り付けられたローラと接触し上記踏段の移動を案内する案内レールとを備えたコンベアの状態を点検するコンベアの点検方法であって、
上記踏段の移動による上記ローラの回転により、上記ローラに非接触にて交流電圧及び交流電圧波形信号を発生させ、
上記交流電圧波形信号を分析することで当該コンベアの点検を行う、
ことを特徴とする点検方法。
【請求項5】
上記交流電圧波形信号から上記ローラの回転速度又は回転位相を求め、該回転速度又は回転位相から上記ローラ及び上記案内レールの状態を点検する、請求項4記載の点検方法。
【請求項6】
上記交流電圧波形信号の消失により上記ローラの脱落と判断する、請求項4記載の点検方法。
【請求項7】
上記回転位相を積算して基準点からの上記ローラの回転数を求め、該回転数から上記踏段の位置を求めて点検に供する、請求項5記載の点検方法。
【請求項8】
求めた上記ローラの回転数内の設定範囲における上記交流電圧波形信号を加算処理し、上記案内レールの特定位置における異常を強調処理して点検に供する、請求項7記載の点検方法。
【請求項9】
上記基準点は、上記ローラの回転方向が転換したことから判断する、請求項7記載の点検方法。
【請求項10】
請求項2又は3に記載する自己発電型点検装置と、
上記自己発電型点検装置とは別設され、上記自己発電型点検装置に備わる診断処理部による診断結果が供給されコンベアの状態を監視する監視装置と、
備えたことを特徴とするエスカレータシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−201537(P2008−201537A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39602(P2007−39602)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
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