説明

自己管理式ECG検査用の装置及び方法

【課題】自己管理式心電図(ECG)検査用のECG記録装置を提供する。
【解決手段】ECG記録装置(10)は、郵送可能な基板(18)と、被検者からECG信号を受け取るために基板と係合可能である電極アセンブリとを含む。使い捨ての又は限定的な使用のECG記録装置では、基板が使い捨て又は再使用可能又はリサイクル可能である。更に装置は、内蔵型で電池作動式で可搬型で使い捨て型で郵送可能とし、フィードバックを供給し、図形的指示を含む使用方法を示し、ECG信号を受け取る指用測定バンド(70)やセンサ・パッド(34,34)を含み、更にはメモリ(78)を含み得る。基板は、様々な身体形状や大きさに順応するように可撓性や半可撓性の材料で作り、また封止可能な血液溜めのような受容器(86)を含み得る。装置は、ECG検査から遠隔のECG処理システムへECG信号を無線で伝送することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明技術は、一般的に云えば、診断用心臓学に関し、より具体的には、伝統的な診療地点から離れた場所での自己管理式心電図(ECG)検査に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例示的、模範的、代表的及び非限定的な目的のため、本発明技術の好ましい実施形態を心臓の監視に関して記述する。とはいえ、本発明技術はこのことに限定されない。
【0003】
ところで、心臓内の電気的不安定から生じる失神(すなわち、突然の意識喪失)及び不整脈(すなわち、拍動の異常)は心臓病専門医にとって観察するのが特に難しい。これらの事象は持続時間が短く且つ突発的であり、またそれらは発生頻度が稀であることが多い。しかしながら、不整脈の早期診断は重要であり、その理由は、特定の不整脈がどれくらい長く検出されず及び/又は処置されずにいたかに依存して、患者が心不全、心臓発作、永久的損傷、及び/又は心臓死を起こす可能性が大きくなるからである。幾つかの不整脈関連の病気、例えば、遺伝的QT延長症候群(LQTS)、ウォルフ−パーキンソン−ホワイト症候群及びブルガダ(Brugada) 症候群は遺伝的であり、また薬剤誘発性LQTSのような他の不整脈関連の病気は特定の薬剤を用いたことにより罹ることがある。
【0004】
不整脈関連の問題等を診断するための1つの効果的な方法は、被検者の心臓内の電気的活動を監視するために心電図(ECG)を使用することである。典型的には、電気リードを被検者の身体上の指定の場所に設置し、次いで、心臓の分極及び脱分極から生じる電気的活動を各リードによって記録する。例えば、典型的な心臓サイクル中に、ECGは特徴のある波形を生じ、これは、多くの場合、P波、QRS波群及びT波を含み、これらは、例えば、特定の薬物治療のような処置の効果を診断及び/又は評価するために分析することができる。
【0005】
多くの場合、最初に医師の診察室、診療所及び/又は他の医療施設等々でその場所にある伝統的な非24時間携帯型(non-ambulatory)のECG記録装置を使用してECGを取った後、患者からECGデータを収集するために可搬型(portable)のECG記録装置が使用されている。このような可搬型装置からのECG記録は、例えば、患者の日常的な活動及び/又は高ぶった感情的及び/又は物理的状態によって引き起こされることのある患者の心臓の電気的活動の異常を検出するために使用することができる。
【0006】
一般に、このような可搬型ECG記録装置には2つのタイプがある。第1のタイプは、収集段階を完了した後で収集データを分析できる時間遅延型システムである。第2のタイプは、記録したときに実時間又はほぼ実時間でデータを分析できる実時間システムである。
【0007】
いずれのタイプでも、ECG信号は、典型的には、複数の電極の間に取り付けられて患者の身体上の様々な点の間に延在する複数のリード、及び/又は患者の首、腰、手首などの周りに装着された関連ユニットから受け取る。しかしながら、残念なことに、一般的な可搬型で非24時間携帯型の装置の(全てではなくても)殆どが嵩張っていて、患者の通常の生活を妨げている。結果として、ECG記録装置の適切な使用を確保するために患者の用法順守を当てにすることはできない。
【0008】
身体装着型でリード・タイプの監視装置による他の問題には、それらの装置が付随する皮膚のかぶれを防止する能力を持たないことが含まれる。また、このような監視装置から得られる結果は、様々な電極が設置された患者の身体上の場所に依存して変わる虞がある。更に、シャワー、入浴、及び/又はその他の水への露出、並びに他の活動を行う前に、殆どのリードを取り除く必要がある。
【0009】
最近では、リード及び/又は電極を全て患者の身体の上に設置することを必要とせずに、患者の指及び/又は親指及び/又は手から接触検知することのできる可搬型で非24時間携帯型のECG記録装置が利用可能になっている。このような装置は、多くの場合、特に、実時間表示を行うことができ及び/又はその後で時間遅延型分析のために収集したデータを遠隔の場所へ転送することのできる連続使用監視装置及び/又は記録装置として、長期間にわたって患者によって保持することができるように設計されている。
【0010】
いずれにせよ、多くの現在の可搬型設計は、従来技術に比べて様々な利点を有しているが、製造し且つ保守するのに費用が掛かり、またそれらは一般的に大規模使用を目的としていない。そこで、手ごろな価格であり、内蔵型であり、可搬型であり、使い捨て型であり、限定的な使用及び/又は大規模使用のために設計され、並びに/又は収集されたECGデータの分析のために中央施設へ返送可能である新規なECG装置を検討するのは妥当なことである。
【0011】
改良された可搬型で非24時間携帯型の接触検知式ECG記録装置についてのこの要求を体現する1つのシナリオは、新しい医薬品を製造販売することに通じる。例えば、周知のように、新薬は化合物の発見から最終的な承認までに膨大な評価プロセスの制約を受け、これは数年にわたる試験と莫大な資金を必要とすることがある。典型的には、新薬は、いわゆる第一相、第二相及び第三相臨床試験を通じての漸進的スクリーニングにより評価される。しかしながら、薬品について第三相承認を受けた後でさえ、しばしば、いわゆる第四相試験(これは、市販後調査としても知られている)を行うことへの追加の要望及び/又は要求がある。このような第四相試験は、薬品についてその第二相及び第三相試験中に生じた合併症が殆ど無い場合でも、特に薬品を施す患者の数が次第により多くなるとき、考慮すべきことである。このことから、特に第二相乃至第四相試験中に、医師の診察室及び/又は他の医療施設へ返送する必要性及び負担を生じさせることなく、再検討のためにより多数のECGを取得できるようにする新規な技術が望ましい。
【0012】
この薬品の追加試験の1つの重要な部分は、主に薬剤誘発性LQTS及び/又は類似症状の存在を探すために、ECG信号を記録することを含む。前にも述べたように、LQTSは心臓の電気系統の異常を記述しているもので、羅患者に突然の意識喪失及び/又は突然死を招く虞のある危険な心拍リズム、例えば、トルサード・ド・ポワント (Torsade de Pointes) を生じさせる素因である。しかしながら、公知のように、ECG記録装置はQT間隔を測定し且つLQTSについてスクリーニングを行うために使用することができる。
【0013】
一般的なシナリオでは、患者は特定の期間の間に特定の薬物治療を受け、次いで、大きな独立型のECG記録装置を持つ患者担当の医師の診察室、診療所及び/又は他の医療施設等々へ戻る。残念なことに、このような施設へ繰返し戻ることは、費用が掛かり、時間が掛かり、また特に薬物監視される患者の数が数万及び数十万を超えたとき、実行不可能である虞がある。
【0014】
薬剤誘発性LQTS以外にも、致命的な不整脈を招く虞のある遺伝子及び/又は遺伝性疾患である先天性LQTSについて監視することも考慮すべきことである。残念なことに、これらの種類の不整脈の多くは身体運動中(例えば、体操を行い、エアロビクス・スポーツを行い、及び/又は同様な運動を行っている間)の低年齢児に生じることがあり、またそれらは屡々致命的である。従って、改良された可搬型ECG記録装置では、学生、運動選手などについて費用の安いスクリーニングを行って、心臓の障害を若年齢時に、特に現在では一般に利用可能でないような態様で探し出すことができよう。
【0015】
更に、病院では感染を起こしやすい。例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のような深刻な感染症を持つ患者は、ECG信号を監視することを必要とすることがある。しかしながら、MRSA・ECG記録活動の後、ECG記録装置は、多くの場合、再度使用できるようにする前に消毒しなければならない。多くの場合、この消毒には、強力な洗浄剤を使用して細部にわたる洗浄を行わなければならないが、洗浄剤がECGリードを損傷し、最終的には破壊することがある。従って、感染症の抑制に関連した問題を最少にすることのできる新規なECG記録技術を検討することもまた重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のことから、安価に大量に製造することができ且つ伝統的なECG施設の外部で大規模使用するのに適応することのできる改良された使用し易い、可搬型で非24時間携帯型の接触検知式ECG記録装置を提供することが望ましい。このような装置は、特定の処方を要求する特定の患者に合わせてカスタマイズすることができると共に、集団の及び/又は他の一般化したスクリーニングのためにカスタマイズすることができる。また、ECGデータ収集動作後に再検討及び分析のために中央施設へ返送することのできるECG記録装置を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一実施形態では、心電図(ECG)記録装置は、郵送可能な基板と、自己管理式ECG検査中にECG信号を受け取るために前記基板と係合可能である電極アセンブリと、を有する。
【0018】
別の実施形態では、ECG記録装置は、郵送可能な基板と、ECG信号を受け取るための、前記基板と係合可能である手段と、を有する。
【0019】
また別の実施形態では、ECG記録方法が、郵送可能な基板及び電極アセンブリを設ける段階を有する。
【0020】
更に別の実施形態では、ECG記録方法は、郵送可能な基板と、ECG信号を受け取るための、前記基板と係合可能である手段とを設ける段階を有する。
【0021】
別の実施形態では、使い捨ての又は限定的な使用のECG記録装置は、使い捨ての又は再使用可能な又はリサイクル可能な基板と、電極アセンブリと、を有する。
【0022】
更に別の実施形態では、ECG方法は、使い捨ての又は再使用可能な又はリサイクル可能な基板と電極アセンブリとを設ける段階を有する。
【0023】
本発明技術を構成する利点及び特徴、並びに本発明技術によって与えられる典型的な機構の様々な構成及び動作についての明瞭な概念が、本明細書の一体の部分を形成する添付の例示的、模範的且つ代表的であって、限定的でない図面を参照することによって容易に明らかになろう。図面においては、同様な参照数字は一般的に幾つかの図で同じ要素を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に図面を参照して、心臓監視設備に関連して本発明技術の好ましい実施形態を説明する。しかしながら、本発明技術はこの場合に制限されない。例えば、記述する様々な実施形態は患者監視の分野における自己管理式ECG検査を提供するが、様々な他の消費者用、工業用、放射線及び検査システムなどを含む他の分野にも適用される。
【0025】
先ず図1を参照すると、図1は、可搬型で非24時間携帯型で非侵襲性の心電図(ECG)記録装置10を示し、これは、好ましくは患者の担当医師の診察室、診療所及び/又はたの伝統的なECG装置を備えた施設から離れた場所で、患者(図示せず)からのECG波形を監視及び/又は記録するために使用することができる。好ましくは、ECG記録装置10は、例えば、薬局や他の販売店などで、返送用郵便封筒12と共に販売される。図1に示される実施形態では、返送用郵便封筒12は郵送先住所14及び/又は郵便切手16を含むことが好ましい。また好ましくは、返送用郵便封筒12はバーコード17及び/又は他の同様な追跡機構を含み、これは、ECG記録装置10が返送用郵便封筒12上の郵送先住所14へ返送されたときにECG記録装置10を識別するために使用することができる。
【0026】
ところで、図1〜図2はECG記録装置10の第1の実施形態を示している。このような実施形態では、ECG記録装置10は基板18を含み、基板18は、例えば、マイラーから形成されるような可撓性及び/又は半可撓性基板であって、その中央に配置された制御ユニット19の両側に延在する。
【0027】
好ましくは、基板18の少なくとも一部分は、後で詳しく説明するように、特に被検者の腹部に押し付けるように保持されるとき、身体の形状及び/又は大きさに順応するように充分に可撓性である。
【0028】
好ましくは、制御ユニット19は、内部の制御回路20を取り囲む外側ハウジング48を含む。図2に示されているように、制御回路20は、中央処理ユニット(CPU)24及び/又は同様な手段に接続された、周囲光受容器及び/又は電池のような電源22を含むことが好ましい。好ましくは、CPU24は一対の第1のリード26及び一対の第2のリード28と電気的に連通しており、これらのリードの各々は1つ以上のそれぞれの接触パッド30,31で終端する。好ましくは、接触パッド30,31の各々は基板18の上面32に取り付けられる。
【0029】
好ましくは、基板18は更に、基板18の下面39に形成された第1のセンサ・パッド34及び第2のセンサ・パッド36を含む。好ましくは、第1のセンサ・パッド34及び第2のセンサ・パッド36はそれぞれのリード40,42によって制御回路20に電気接続される。好ましくは、制御回路20は更に、表示装置44を含み、及び/又は表示装置44に接続されており、表示装置44は制御回路20が患者へメッセージを伝えることができるようにする。好ましくは、制御回路20は更に、患者が制御回路20と通信するための入力及び/又は出力を供給する押しボタン46及び/又は同様な手段を含む。
【0030】
好ましくは、制御回路20は外側ハウジング48内に収容されており、外側ハウジング48は更に上部部分50及び対向する下部部分52を含む。好ましくは、上部部分50及び下部部分52は共にモールド成形したプラスチックで形成されており、またそれらは、基板18に形成された1つ以上の開口55を通って延在して、上部部分50及び下部部分52を互いに対して固定することができる1つ以上のインターロック54又は同様な手段を含むことができる。好ましくは、上部部分50は、スピーカ用開口56、押しボタン用開口58及び/又は表示装置用窓60を、好ましくは制御回路20と対応して整合するように含む。
【0031】
好適な実施形態では、ECG記録装置10は、基板18の上面32に形成された制御回路20並びにリード26、28、40及び42を保護するために基板18にそれぞれ取り付けることのできる第1(例えば、右側)のオーバーレイ62及び第2(例えば、左側)のオーバーレイ64を含む。好ましくは、第1のオーバーレイ62及び第2のオーバーレイ64は共に、接着剤のような通常の技術手段を使用して基板18に固着することができる。
【0032】
好ましくは、第1のオーバーレイ62は患者の右手の描写図形66を含み、また第2のオーバーレイ64患者の左手の別の描写図形68を含む。好ましくは、これらの描写図形66,68は、ECG記録装置10上に患者の手を位置決めするためのガイドとして作用する。
【0033】
好ましくは、第1のオーバーレイ62及び第2のオーバーレイ64の各々は弾性の指用測定バンド(finger cuff) 70を含み、指用測定バンド70は、ECG信号を記録している間、患者のそれぞれの右及び左手の人差し指又は他の指の一部分に係合する。好ましくは、各々の指用測定バンド70は、患者の人差し指の対向する両側部に接触する一対の電極を含む。好ましくは、各々の指用測定バンド70の少なくとも一部分は適当な電気伝導性材料で作られる。
【0034】
使用する際、第1のオーバーレイ62及び第2のオーバーレイ64が基板18に固着されているとき、指用測定バンド70内の電極対が、基板18上に形成された接触パッド30,31の一方に接触する。このようにして、患者の皮膚上に存在する電気信号を検出して、第1のリード26及び第2のリード28を介してCPU24へ転送することができる。
【0035】
第1のオーバーレイ62及び第2のオーバーレイ64の各々が指用測定バンド70を含むものとして図示されているが、指用測定バンド70は、各々のオーバーレイ62,64の上面65に形成される接触検知用乾式電極(図示せず)と置換できると考えられる。このような実施形態では、ECG読取りの際、電極には患者の左及び右手の指で接触することができよう。従って、第1のリード26及び第2のリード28はこのような検知用電極に結合されて、検知された電気信号をCPU24へ伝送する。
【0036】
図1〜図2に示された第1の実施形態に加えて、図3ではECG記録装置10の第2の実施形態を示す。より詳しく述べると、図3に示されている実施形態では、ECG記録装置10は環境に優しいパッケージ及び構成部品を使用する。例えば、図3に示されている実施形態では、基板18は、図1〜図2について前に述べたマイラーの基板18と比べて、可撓性、半可撓性、折り畳み可能、丸め可能、及び/又は同様な綿繊維及びセルロース紙で形成することができる。図3に示されている実施形態では、リード26、28、40及び42は、基板18の上面32に設けた電気伝導性大豆インク及び/又はその類似物により基板18上に印刷することができる。好ましくは、同様に電気伝導性大豆インク及び/又はその類似物を使用して、第1のセンサ・パッド34及び第2のセンサ・パッド36の少なくとも一方又は両方を基板18の下面39に印刷することができる。
【0037】
好ましくは、図3の第2の実施形態では、外側ハウジング48は厚紙の上部層72及び厚紙の下部層74を含み、これにより制御回路20を保護する。好ましくは、厚紙のスペーサ76を基板18の上面32に取り付けて、制御回路20のための所要の間隔を設けることもできる。
【0038】
この第2の実施形態では、第1のオーバーレイ62及び第2のオーバーレイ64は好ましくは紙で形成され、またこれらは指用測定バンド70を含み、指用測定バンド70は電極リードを埋め込んだ弾性材料で形成することができる。第1の実施形態と同様に、各々の指用測定バンド70の中の電極リードは、基板18の上面32に形成された接触パッド30,31の一方に接触して、検知された信号を制御回路20へ中継する。図3のこの説明から直ぐに理解されるように、図示した第2の実施形態は、好ましくは、その他の層の殆ど又は全てを、セルロース(例えば、紙及び/又は厚紙及び/又は他のリサイクル可能な材料及び/又はその類似物)で形成し、他方、回路は電気伝導性大豆インク及び/又はその類似物を使用して接続される。従って、図3の環境に優しいECG記録装置10をリサイクルする際、制御回路20以外のECG記録装置10全体を再使用及び/又はリサイクルすることができるように、可溶性のセルロース材料を電子部品から分離することができる。
【0039】
ここで図1を再び参照して説明すると、使用中でのECG読取りの際、対の指用測定バンド70の中の電極は患者の左及び右手の人差し指に接触する。従って、表示装置44は、ECGセッションが必要とされる時点、ECGセッションを開始及び/又は停止する時点、特定のECGセッションを行うべき長さ、ECG記録装置10を使用してECGセッションを開始することができる回数、及び/又は受け取ったECG信号の強度又は品質の質的尺度のような、特定のECG読取りの状態について、患者又は他の人へ視覚的に認識可能な表示を提供するように動作することが好ましい。
【0040】
例えば、ECG記録装置10の動作中、表示装置44は、信号品質が充分であること及び/又はECG読取りが対応して進行していることを表すために使用することができる。代替の実施形態では、表示装置44は、ECGセッションの状態を知らせるためにLCD表示装置又は一連の例えば赤黄緑の表示灯とすることも可能である。このような実施形態では、表示装置44はECG読取りの際にその状態を表示するために変化することができる。
【0041】
本発明技術の意図した実施形態では、ECG読取りを記録した後、CPU24はカウンタ(図示せず)を導入することができ、該カウンタは、ECG記録装置10を使用して首尾よくECG記録を取り及び/又は記録した後に変化することができる。例えば、減数計数カウンタでは、カウンタはゼロ(又は同様な閾値)まで減数計数し、その値に達したときに、これ以上のECG読取りが必要でないこと又はECG記録装置10のその特定の構成を使用して得ることができないことを患者に対して知らせることができる。カウンタが指定された閾値に達した時点で、ECG記録装置10は、このECG記録装置10を医療施設及び/又は同様な所へ返送すべきであることを患者に対して合図することができる。典型的には、所望の数の読取りが為された時点で、ECG記録装置10は図1の返送用郵便封筒12の中に入れられて、ECG記録装置10によって得られた記録を検討及び/又は分析することのできる中央施設へ郵便又はその他の方法で送られる。この代わりに、ECG記録装置10は、このような処理及び/又は他の取扱いのためにそれを受け取る薬局及び/又は他の医療施設へ返送することも可能である。
【0042】
次に図8について説明すると、図8は制御回路20の高レベル・ブロック図を示す。制御回路20は、好ましくは、その内部構成部品(接続は図示していない)に給電することのできる周囲光受容器及び/又は電池のような内部又は内蔵型電源22を含む。図示の実施形態では、CPU24は、基板18と一体化することができ又は基板18から取外し可能であるメモリ78と相互作用する。メモリ78が基板18から取外し可能である実施形態では、収集されたECGデータを処理するためにECG記録装置10と一緒に又はECG記録装置10の代わりにメモリを中央施設へ返送することができる。
【0043】
いずれにしろ、CPU24はまた、好ましくは、触知性開始ボタン又は他の押しボタン46のようなユーザ・インターフェース80と、並びに取得インターフェース82と相互作用する。例えば、各々1つの指用測定バンド70に接続されている接触パッド30,31は、好ましくは、取得インターフェース82と連通しており、取得インターフェース82は、それぞれのリード26,28を介して受け取ったアナログ情報を、メモリ78に記憶させることのできるディジタル情報に変換する。接触パッド30,31から受け取る情報に加えて、取得インターフェース82はまた第1のセンサ・パッド34及び第2のセンサ・パッド36からそれぞれのリード40,42を介してアナログ情報を受け取ることができ、この情報は、適当なディジタル形式に変換した後に、メモリ78に記憶することができる。
【0044】
図8に示される実施形態では、制御回路20はまた、ECG記録装置10が指定された分析場所へ返送されたときに、外部のECG処理システムをECG記録装置10に接続できるようにする内部コネクタ84を含む。また、コネクタ84は、返送する前にECG記録装置10によって行うべき所望のECG読取りの数をプログラムし、或いは患者についての個人情報及び/又は追跡情報及び/又は同様な情報のような追加の情報をECG記録装置10にダウンロードするために利用することもできる。好ましくは、コネクタ84は「近距離音場」又は無線又は赤外線通信のような技術を導入して、ECG記録装置10への実際の物理的接続を必要としないようにすることができる。代わりに、収集されたECGデータはECG処理システムへ無線で伝送することができる。感染の抑制のために、例えば、収集されたECGデータを持つECG記録装置10を消毒したプラスチックの袋の中に密封し、次いで適当な無線技術を使用して該保護されたECG記録装置10を走査することによって安全に読出しを行うことができる。
【0045】
再び図1を参照して説明すると、その意図した実施形態では、ECG記録装置10はまた、患者の指から血液を採るために使用される小さなピン(図示せず)と共に、封止可能な血液溜めのための窪み86のような受容器を含むことができる。このような特徴は遺伝子検査を可能にし、これは、例えば、不整脈の異常を診断するのに有効なことがある。更に、別の入力コネクタ88を外側ハウジング48内に設けて、制御回路20に対する追加の接続点を提供することができ、この場合、例えば、追加の使い捨てのリード(図示せず)を持つケーブル(図示せず)を患者から追加の情報を得るために取り付けることができる。これらの追加のリードは、例えば、誘導V1、V2及びV3を必要とするブルガダ症候群のような追加の種類の不整脈状態のスクリーニングを可能にすることができる。更に、追加のリードは、例えば、12誘導測定データが得られる場合、急性心筋梗塞を検出するために利用することもできる。これらの追加のリードは、標準的なECGリード・ワイヤ、或いはいわゆるV1〜V6の胸部誘導を取得するためにユーザがその胸囲にぴったり合わせることのできるベルト型装置、及び/又は15誘導ECGのために右側部のものを含む他のリードとすることができる。
【0046】
他の実施形態では、ECG記録装置10は、例えば、ECG読取りを行うべき時間であるときにビープ音などを発するように予めプログラムすることもできる。このためには、制御ユニット19内に、好ましくはスピーカ用開口56と関連して動作可能な、例えば、圧電スピーカ又はブザーのようなオーディオ装置(図示せず)を設けることが必要になる。
【0047】
本発明技術は更に、ECG記録装置10を郵便で返送することを必要とせずに、記録されたECGデータを中央受信施設へ伝送することも意図している。従って、オプションとしての更なる考慮事項としては、例えば、音響駆動による伝送を可能にするために制御ユニット19内にスピーカを設けることが含まれる。この形態では、ユーザが電話を掛けて電話機の送話口にスピーカを当てると、記録されたデータを通常の音声周波数で変調して、中央受信施設で復調することができるようになる。別の実施形態では、制御ユニット19に電話用ジャック(図示せず)を追加して、ECG記録装置10が該ジャックに差し込まれたときに、ECG記録装置10が予めプログラムされていた電話番号をダイヤルして中央施設へ伝送できるようにすることが考えられる。この代わりに、ネットワーク接続を追加することにより、インターネットのような、プライベート又はパブリック・ネットワークを介して、ECGデータを中央施設へ転送できるようにすることも可能である。また更に、オプションとして、データ伝送などのためにECG記録装置10及び/又は他の手段によってデータを暗号化することも可能である。
【0048】
ECG記録装置10の一使用方法では、薬局などから処方薬を受け取る患者に可搬型ECG記録装置10を与えることができ、この装置は、例えば、患者の薬物治療法に基づいて規定された間隔で患者から所定の一組のECG読取りを要求するように予めプログラムすることができる。この実施形態では、ECG記録装置は家庭で及び/又は伝統的な診療場所から離れた他の場所で患者が使用することを意図したものである。
【0049】
患者がECG読取りを行う準備ができたとき、図示のECG記録装置10の実施形態では、患者は先ずECG記録装置10内に含まれているピンで自身の指を刺して、図4などの図に示されている窪み86の中に血液サンプルを落し入れる。窪み86の中に血液サンプルを入れた後、窪み86は封止して血液溜めを生成して、その後に該溜め内の血液サンプルについて遺伝子検査及び/又は他の種類の血液検査を実施できるようにすることができる。複数の及び/又は他の体液を受容することもできる。
【0050】
血液サンプルを採って、ECG読取りを行う準備ができたとき、患者は、第1のセンサ・パッド34及び第2のセンサ・パッド36の各々が患者の腹部の皮膚に直接接触するように、患者の腹部92の皮膚の上に直に基板18の下面39を位置決めすることができ(例えば、図6参照)、及び/又は患者の右及び左手の一方又は両方の人差し指90を指用測定バンド70の中に入れることができる(例えば、図5及び図6参照)。前に述べたように、各々の指用測定バンド70は、好ましくは、ECG記録装置10内に収容されている制御回路20と接続される一対の電極を含む。
【0051】
ところで、患者がECG記録装置10を自身の腹部92の上に適切に位置決めし及び/又は自身の人差し指を指用測定バンド70の中に適切に挿入した場合、表示装置44及び/又は同様な手段は、ECG記録装置10がECG信号を記録する準備ができていること及び/又は記録するように動作していることの状態表示を患者に対して提供することができる。ECG記録装置10がECG読取りを完了したとき、表示装置44は読取りが終了したことを表示して、指を指用測定バンド70から外し及び/又はECG記録装置10を患者の腹部92から外すように患者に催促することができる。前に示したように、首尾よくECG読取りが完了したとき、制御回路20内のカウンタは、そのカウンタが所定の閾値に達して、何ら追加のECG読取りが必要でないことを指示するまで、変化することができる。例えば、図7に例示されているように、ECG記録装置10は、表示装置44を介して、或いは制御ユニット19内に収容されているスピーカによって送られる可聴信号94を介して、患者に連絡することができる。
【0052】
ECG記録装置10が所望の数のECG読取りを記録したとき、更なる分析及び/又は処理のために返送用郵便封筒12を使用してECG記録装置10を国内郵便及び/又は国際郵便及び/又は同様な手段によって中央施設へ返送するように患者に催促することが好ましい。希望される場合、中央施設が患者のECG記録装置10を受け取ったときに患者に通知を送ることができる。
【0053】
中央施設では、制御回路20(例えば、メモリ78)に記憶されたECGデータを読み出し、分析し、及び/又は別に処理することができ、また患者及び/又は患者の担当医師及び/又は関係者にECGの結果を知らせることができる。ECGデータが読み出された後、ECG記録装置10全体を廃棄し、さもなければリサイクルすることができる。図3に示されている実施形態の場合、例えば、制御回路20以外のECG記録装置10全体を再使用し及び/又はリサイクルすることもできる。
【0054】
代替として、又は付加的に、ECGデータを読み出し及び/又はECG記録装置10をプログラムするシステムもまた、患者にECG記録を行うことを思い出させるために適切な日にちに患者に電話するようにプログラムすることもできる。この実施形態では、患者は、例えば、安全なウェブサイトに登録することが必要なことがある。ウェブサイトの登録はまた、患者が患者についての個人情報及び/又は他の健康情報と共に、他の質問に対する任意の応答を入力し、及び/又は他のフィードバックを供給することを可能にすることができる。
【0055】
ECG記録装置10は処方された薬物治療により使用することができるが、個々の消費者がECGデータを取得することができるように小売店で提供することもでき、そのECGデータは臨床医が心臓障害についてスクリーニングするために使用することができる。例えば、ECG記録装置10は、ECGスクリーニングができるように学校及び/又は他の共同施設などで提供することもでき、また保険の評価及び/又は他の用途にも有用なことがある。
【0056】
本発明技術の様々な実施形態は、処方された薬物治療を受ける患者によって簡単にカスタマイズし動作させることが可能な、可搬型で非24時間携帯型で非侵襲性で使い捨て型のECG記録装置10を提供する。装置はまた、低コストで大規模使用のために多量に製造し及び/又は時間遅延型データを遡及的に送ることを目的とするように設計することができ、またその様々な構成部品を、必要に応じ及び/又は所望どおりに、商標設定し及び/又は無商標のままにすることができる。好ましくは、ECG記録装置10のパッケージは、ECG記録を分析し及び/又は患者や臨床医に報告すること等を行うために中央施設へ輸送するために統一することができる。更に、ECG記録装置10はまた、感染の危険性の高い環境内で、例えば使用した後に毎回洗浄及び消毒を行うことを必要とせずに、使用することができる。
【0057】
従って、本明細書が本発明技術の例示的、模範的、代表的及び非限定的な実施形態を記述していることが容易に理解できよう。従って、本発明技術の範囲はこれらの実施形態いずれにも制限されない。むしろ、これらの実施形態の様々な詳細及び特徴を必要なときに説明した。従って、当業者には容易に明らかであるように、多くの変更及び修正は本発明技術の精神から逸脱せずに本発明技術の範囲内にあり、本発明技術はそれらを含むものである。それ故、特許請求の範囲は本発明技術の精神及び範囲を公に表すために作られている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ECG記録装置と該ECG記録装置を処理施設へ送り返すための返送用郵便封筒との斜視図である。
【図2】図1のECG記録装置の分解斜視図である。
【図3】代替例のECG記録装置の分解斜視図である。
【図4】ECG記録装置による流体サンプルの収集を示す概略図である。
【図5】ECG記録装置内に被検者の手を位置決めする様子を例示する概略図である。
【図6】被検者の腹部上にECG記録装置を位置決めする様子を例示する概略図である。
【図7】ECG記録装置の制御ユニットの通信の様子を例示する概略図である。
【図8】ECG記録装置の一部として含まれた制御回路の高レベル・ブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
10 心電図(ECG)記録装置
12 返送用郵便封筒
14 郵送先住所
16 郵便切手
17 バーコード
18 基板
19 制御ユニット
20 制御回路
22 電源
24 中央処理ユニット(CPU)
26 第1のリード
28 第2のリード
30、31 接触パッド
32 基板の上面
34 第1のセンサ・パッド
36 第2のセンサ・パッド
39 基板の下面
40、42 リード
44 表示装置
46 押しボタン
48 外側ハウジング
50 上部部分
52 下部部分
54 インターロック
55 開口
56 スピーカ用開口
58 押しボタン用開口
60 表示装置用窓
62 第1のオーバーレイ
64 第2のオーバーレイ
65 オーバーレイの上面
66 右手の描写図形
68 左手の描写図形
70 指用測定バンド
72 上部層
74 下部層
76 スペーサ
80 ユーザ・インターフェース
84 取得インターフェース
86 窪み
88 入力コネクタ
90 人差し指
92 腹部
94 可聴信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
郵送可能な基板(18)と、
少なくとも1つ以上の自己管理式ECG検査中に被検者から少なくとも1つ以上のECG信号を受け取るために前記基板(18)と係合可能である電極アセンブリと、
を有する心電図(ECG)記録装置(10)。
【請求項2】
前記装置(10)はフィードバックを供給するように構成されている、請求項1記載のECG記録装置。
【請求項3】
前記装置(10)はその使用方法を指示するように構成されている、請求項1記載のECG記録装置。
【請求項4】
前記電極アセンブリは、前記被検者から前記ECG信号を受け取るように構成されている指用測定バンド(70)及び前記被検者から前記ECG信号を受け取るように構成されているセンサ・パッド(34,36)の内の少なくとも一方又は両方を有している、請求項1記載のECG記録装置。
【請求項5】
前記指用測定バンド(70)は前記被検者の指(90)から前記ECG信号を受け取るように構成されており、また前記センサ・パッド(34,36)は前記被検者の腹部(92)から前記ECG信号を受け取るように構成されている、請求項4記載のECG記録装置。
【請求項6】
前記基板(18)は受容器(86)を含んでいる、請求項1記載のECG記録装置。
【請求項7】
更に、前記ECG信号を記憶するように構成されているメモリ(78)を有している請求項1記載のECG記録装置。
【請求項8】
前記装置(10)は、前記ECG検査の少なくとも1つの場所から離れているECG処理システムへ前記ECG信号を伝送するように構成されている、請求項1記載のECG記録装置。
【請求項9】
前記装置(10)は、前記ECG信号を前記ECG処理システムへ無線で伝送するように構成されている、請求項8記載のECG記録装置。
【請求項10】
郵送可能な基板(18)と、少なくとも1つ以上の自己管理式ECG検査中に被検者から少なくとも1つ以上のECG信号を受け取るために、前記基板(18)と係合可能である電極アセンブリとを設ける段階を有している、心電図(ECG)記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−149127(P2008−149127A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−311850(P2007−311850)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】