説明

自己組織化ペプチド

【課題】種々の機械的特性を有する自己組織化ペプチドゲル及び該ゲルの機械的特性を制御する新たな方法を提供すること。
【解決手段】式:A * B * Cで表される構造を含んでなり、水系媒体中においてβ-シート構造を形成する自己組織化ペプチド(X)[式中、AがN末端側であり、A、B及びCは、それぞれ非極性アミノ酸残基と酸性アミノ酸残基と塩基性アミノ酸残基とを含有するドメインであり、ドメインA、B及びCの両末端は、それぞれ独立して酸性アミノ酸残基又は塩基性アミノ酸残基であり、ドメインA及びCにおいては、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基がβ−シート構造の一方の面(a)のみにそれぞれ独立して1個以上配置され、ドメインBにおいては、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基がβ−シート構造の他方の面(b)のみにそれぞれ独立して1個以上配置され、*及び*は、それぞれ独立してペプチド結合又は非極性アミノ酸残基のみを含有するドメインである]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化ペプチド、該自己組織化ペプチドを含有する組成物、及び該組成物がゲル化してなるゲル等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生体内で三次元的に増殖する細胞を三次元的に培養する際、該細胞の足場としては、例えば、コラーゲンゲルが知られている。しかしながら、前記コラーゲンゲルは、材料の供給源となる動物等により、用途が限定されるという欠点がある。
【0003】
これに対し、人工的に合成することが可能な細胞の足場として、自己組織化ペプチドゲルが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。自己組織化ペプチドは、ゲル形成能を有し、ゲルが破壊されても時間の経過と共に自発的にゲルを再形成すること等の特徴を有することから、細胞の三次元培養用マトリックスとして利用される他、再生医療分野等の様々な分野で利用され得る。
【特許文献1】米国特許第5,670,483号明細書
【特許文献2】米国特許第5,955,343号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自己組織化ペプチドゲルが様々な分野で利用される場合、その用途に応じて強度等の機械的特性において多様性を有するゲル、例えば、種々の貯蔵弾性率を有するゲルが求められる。従って、種々の機械的特性を有する自己組織化ペプチドゲル及び該ゲルの機械的特性を制御する方法の開発が強く求められている。
【0005】
これまでの研究ではペプチドの重合度を変えたり、ペプチドが有する電荷を調節することにより、ゲルの機械的特性を制御することが試みられてきたが、前者は用途に応じて異なったペプチドを合成する必要があり、後者は沈殿を生じてしまう可能性があるといった問題点を有しており、別の方法による機械的特性の制御方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、上記の課題に鑑みて鋭意検討した結果、自己組織化ペプチドからなる分岐化した繊維状分子集合体の作製法を見出し、さらに、分岐度を変えることにより繊維状分子集合体からなる網状構造を制御することでゲルの機械的特性を制御する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
[1] 式:A * B * Cで表される構造を含んでなり、水系媒体中においてβ-シート構造を形成する自己組織化ペプチド(X)、
[式中、AがN末端側であり、
A、B及びCは、それぞれ非極性アミノ酸残基と酸性アミノ酸残基と塩基性アミノ酸残基とを含有するドメインであり、
ドメインA、B及びCの両末端は、それぞれ独立して酸性アミノ酸残基又は塩基性アミノ酸残基であり、
ドメインA及びCにおいては、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基がβ−シート構造の一方の面(a)のみにそれぞれ独立して1個以上配置され、
ドメインBにおいては、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基がβ−シート構造の他方の面(b)のみにそれぞれ独立して1個以上配置され、
及び*は、それぞれ独立してペプチド結合又は非極性アミノ酸残基のみを含有するドメインである]
[2] 温度応答性を有する、前記[1]記載の自己組織化ペプチド(X)、
[3] 前記[1]又は[2]記載の自己組織化ペプチド(X)を含有する組成物、
[4] 温度応答性を有する、前記[3]記載の組成物、
[5] さらに他の自己組織化ペプチド(Y)を含有する、前記[3]又は[4]記載の組成物、
[6] 前記[3]又は[4]記載の組成物がゲル化してなる自己組織化ペプチドゲル、
[7] 前記[5]記載の組成物がゲル化してなる自己組織化ペプチドゲル、
[8] 前記[3]〜[5]いずれか記載の組成物をゲル化させる工程を有する自己組織化ペプチドゲルの製造方法、
[9] 組成物の温度、pH、及びイオン強度からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする、前記[3]又は[4]記載の組成物の機械的特性の制御方法、
[10] 組成物の温度、pH、イオン強度、及び組成物中における自己組織化ペプチド(X)に対する自己組織化ペプチド(Y)の含有量比(重量モル濃度比)からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする、前記[5]記載の組成物の機械的特性の制御方法、
[11] 自己組織化ペプチドゲルの温度、pH、及びイオン強度からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする、前記[6]記載の自己組織化ペプチドゲルの機械的特性の制御方法、並びに
[12] 自己組織化ペプチドゲルの温度、pH、イオン強度、及び自己組織化ペプチドゲル中における自己組織化ペプチド(X)に対する自己組織化ペプチド(Y)の含有量比(重量モル濃度比)からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする、前記[7]記載の自己組織化ペプチドゲルの機械的特性の制御方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、種々の機械的特性を有する自己組織化ペプチドゲル及び該ゲルの機械的特性を制御する新たな方法が提供され得る。
【0009】
また、本発明の別の側面では、自己組織化して所望の機械的特性を有するゲルを形成すること、他の自己組織化ペプチドと混合されて自己組織化することにより種々の機械的特性を有するゲルを形成すること、温度、pH、イオン強度等の変化に伴って機械的特性が変化するゲルを形成すること等の少なくとも1つを達成し得る自己組織化ペプチド、該自己組織化ペプチドを含有する組成物、前記自己組織化ペプチドゲルの製造方法及び該組成物の機械的特性の制御方法が提供され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書において、「自己組織化ペプチド」とは、媒体中において、水素結合、静電的相互作用、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等の相互作用を介して自発的に集合するペプチドをいう。具体的には、例えば、「水系媒体中において、自己組織化してナノファイバーを形成するペプチド」を、「自己組織化ペプチド」という。
【0011】
前記「ナノファイバー」とは、ナノメートルスケールの幅を有する繊維状の分子集合体をいう。かかるナノファイバーが、ファイバー間に働く静電的相互作用を主因として三次元網状構造を形成することにより、自己組織化ペプチドはゲルを形成し得ると推測される。
【0012】
ナノファイバーの形成は、例えば、後述の実施例に記載のように、原子間力顕微鏡を用いて確認することができる。具体的には、原子間力顕微鏡観察により、ピエゾ素子への印加電圧に基づく走査範囲から見積もったファイバーの幅や高さがナノメートルスケールである場合、ナノファイバーの形成が確認される。
【0013】
一般的に、一定の応力を加えてひずみを生じさせたときに、エネルギーが実質的に失われることなくひずみが回復する性質を弾性といい、エネルギーが失われるために実質的にひずみが回復しない性質を粘性という。本明細書において、「ゲル」とは、粘性的な性質と弾性的な性質とを併せ持つ粘弾性物質であり、具体的には、例えば、動的粘弾性測定を行なって、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を測定したときに、「G’>G’’」となるものをいう。なお、「自己組織化ペプチドゲル」とは、前記ゲルの中でも、自己組織化ペプチドが非共有結合性相互作用により自己組織化して形成されたナノファイバーからなるゲルをいう。
【0014】
ここで、前記貯蔵弾性率G’は、弾性的性質を示し、前記損失弾性率G’’は、粘性的性質を示す。一般的に、G'がG’’に対して相対的に大きい粘弾性物質は、ある一定のひずみが生じたときにエネルギーの損失が少ないため、生じたひずみの回復量が多い。逆に、G'がG’’に対して相対的に小さい粘弾性物質は、回復に必要なエネルギーが大量に失われてしまうため、生じたひずみの回復量が少ない。
【0015】
動的粘弾性は、後述の実施例に記載のように、動的粘弾性測定装置を用いて測定され得る。具体的には、鉄製プレート上にサンプルを置き、鉄製コーンをサンプルに押しつけ、鉄製コーンを回転させたときに該コーンを回転させるモーターにかかる力をモニターすることで動的粘弾性を測定することができる。
【0016】
1.自己組織化ペプチド(X)
本発明の自己組織化ペプチド(X)(以下、「ペプチドX」と称することがある)は、式:A * B *C[式中、AがN末端側であり、A、B及びCは、それぞれ非極性アミノ酸残基と酸性アミノ酸残基と塩基性アミノ酸残基とを含有するドメインであり、ドメインA、B及びCの両末端は、それぞれ独立して酸性アミノ酸残基又は塩基性アミノ酸残基であり、ドメインA及びCにおいては、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基がβ−シート構造の一方の面(a)のみにそれぞれ独立して1個以上配置され、ドメインBにおいては、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基がβ−シート構造の他方の面(b)のみにそれぞれ独立して1個以上配置され、*及び*は、それぞれ独立してペプチド結合又は非極性アミノ酸残基のみを含有するドメインである。]で表される構造を含んでなり、水系媒体中においてβ-シート構造を形成することを1つの特徴とする。かかる特徴を有することにより、ペプチドXは、水系媒体中において、静電的引力と静電的斥力とをバランスよく生じ得る。そのため、ペプチドXは、水系媒体中において過度の会合を実質的に生じずに、ナノファイバーからなる安定なゲルを形成し得るという優れた効果を発揮する。また、かかる特徴を有することにより、ペプチドXが自己組織化してナノファイバーを形成する際に分岐が促進され、網状構造が高度化されるという効果が得られ得る。
【0017】
なお、本発明において、ナノファイバーの分岐は、原子間力顕微鏡(AFM)により確認され得る。ナノファイバーの分岐点においては、少なくとも3分子の自己組織化ペプチドが相互作用しており、この点を起点として自己組織化ペプチドが少なくとも3方向に自己組織化的に生長していると推測される(図1参照)。
【0018】
ペプチド(X)は、式:A * B * Cで表される構造を含む。該式中、AがN末端側であり、A、B及びCは、それぞれ非極性アミノ酸残基と酸性アミノ酸残基と塩基性アミノ酸残基とを含有するドメインであり、*及び*は、それぞれ独立してペプチド結合又は非極性アミノ酸残基のみを含有するドメインである。
【0019】
本発明において使用されるアミノ酸残基は、天然型アミノ酸又は非天然型アミノ酸のいずれの残基でもよい。該アミノ酸残基としては、特に限定されるものではないが、容易にβ−シート構造を形成する観点から、好ましくは、以下の表1に示されるアミノ酸が挙げられる。
【0020】
【表1】

【0021】
本発明に用いられる非極性アミノ酸残基としては、βシートを形成しやすいアミノ酸残基が好ましい。かかる非極性アミノ酸残基としては、好ましくはバリン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、又はフェニルアラニン残基、より好ましくはバリン残基が望ましい。また、β−シート構造を容易に形成する観点から、用いられる非極性アミノ酸残基中、好ましくは60%(個数基準)以上、より好ましくは67%(個数基準)以上、さらに好ましくは75%(個数基準)以上が、バリン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、及びフェニルアラニン残基からなる群より選択される非極性アミノ酸残基であることが望ましい。中でも、β−シート構造をより容易に形成する観点から、用いられる非極性アミノ酸残基中、好ましくは60%(個数基準)以上、より好ましくは67%(個数基準)以上、さらに好ましくは75%(個数基準)以上がバリン残基であることがより望ましい。
【0022】
本発明に用いられる酸性アミノ酸残基としては、低価格で合成が容易であるという観点から、好ましくは天然の酸性アミノ酸、より好ましくは、アスパラギン酸残基又はグルタミン酸残基が望ましい。
【0023】
本発明に用いられる塩基性アミノ酸残基としては、中性領域における高い水溶性及び合成の容易さの観点から、好ましくはアルギニン残基、リジン残基又はヒスチジン残基、より好ましくはアルギニン残基又はリジン残基が望ましい。
【0024】
ペプチドXは、水系媒体中において、β−シート構造を形成することを1つの特徴とする。かかる特徴を有することで、ペプチド間に働く水素結合、静電的相互作用、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等の非共有結合性相互作用により、ペプチドの自己組織化が進み、β−シート構造からなるシートが伸長してナノファイバーが形成され得ると推測される。水系媒体としては、pH等の調整が可能な水溶液であればよく、特に限定はない。なお、β−シート構造形成の有無は、後述の実施例に記載のように、円二色性測定法により確認することができる。
【0025】
ペプチドXは、ドメインA及びCにおいて、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基がβ−シート構造の一方の面(a)のみにそれぞれ独立して1個以上配置され、ドメインBにおいては、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基がβ−シート構造の他方の面(b)のみにそれぞれ独立して1個以上配置されることを1つの特徴とする。かかる特徴を有することで、水素結合、静電的相互作用、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等の非共有結合性相互作用がβ−シート構造の両面に働くことから、ペプチドXは、容易に自己組織化してナノファイバーを形成し得ると推測される。また、かかる特徴を有することで、ファイバー間のドメインAとCとの間に非共有結合性相互作用が働き得ることから、ペプチドXが自己組織化して形成されるナノファイバーは、分岐が促進されると推測される(図1参照)。分岐点の多いナノファイバーが三次元網状構造を形成してなる自己組織化ペプチドゲルは架橋密度が高いため、分岐点が少ないナノファイバーにより形成されたゲルとは異なる機械的特性、例えば、粘弾性特性を有し得る。
【0026】
図2にペプチドXの具体的な態様が例示される。また、ペプチドXの一態様としては、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基を含有してなり、水系媒体中において酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基が両方の面に配置されたβ-シート構造を形成し、且つβ−シート構造の一方の面(a)の酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基はシートの両端(ドメインA又はC)に位置し、もう一方の面(b)の酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基はシートの中央(ドメインB)に位置するペプチドであり得る。
【0027】
ドメインA、B及びCに含有されるアミノ酸残基数としては、それぞれ独立して3個以上であり、合成の容易さの観点から、好ましくは3〜21個、より好ましくは3〜14個、さらに好ましくは3〜7個である。また、各ドメインに含有される酸性アミノ酸残基数と塩基性アミノ酸残基数は、同数であってもよく、異なる数であってもよいが、例えば、ペプチドXが12〜32個のアミノ酸残基からなる場合、適度な静電的相互作用の観点から、同数、又は1若しくは2個程度の違いであることが好ましい。
【0028】
ペプチドXが形成するβ−シート構造において、ドメインA若しくはCにおける面(a)又はドメインBの面(b)には、それぞれ非極性アミノ酸残基が配置されても良い。配置される非極性アミノ酸残基数としては、適度な静電的相互作用の観点から、ドメインA若しくはCにおける面(a)又はドメインBの面(b)に配置される全アミノ酸残基中、50%(個数基準)以下であることが好ましく、33%(個数基準)以下であることがより好ましく、25%(個数基準)以下であることがさらに好ましい。
【0029】
ドメインA、B及びCの両末端、即ち、N末端側とC末端側は、それぞれ独立して酸性アミノ酸残基又は塩基性アミノ酸残基である。
【0030】
及び*は、それぞれ独立してペプチド結合、又は、非極性アミノ酸残基のみを含有するドメインである。*及び*に含有される非極性アミノ酸残基としては、特に限定はないが、好ましくは表1記載の非極性アミノ酸残基が使用され、より好ましくはβシート構造を形成しやすいバリン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、又はフェニルアラニン残基、さらに好ましくはバリン残基が使用される。*及び*に含有される非極性アミノ酸残基の数としては、本発明の効果を奏する限り、特に制限はないが、好ましくは0または2である。
【0031】
また、ペプチドXは、本発明の効果を奏する範囲において、ドメインAのN末端側及び/又はドメインCのC末端側に、さらにアミノ酸残基を含有してもよい。該アミノ酸残基としては、特に限定はないが、好ましくは表1記載のアミノ酸残基が使用され、より好ましくは、βシート構造を形成しやすいバリン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、又はフェニルアラニン残基、さらに好ましくはバリン残基が使用される。
【0032】
ペプチドXは、9個以上のアミノ酸残基からなり、自己組織化のために十分な相互作用をペプチド分子間に働かせる観点から、好ましくは10個以上、より好ましくは12個以上のアミノ酸残基からなる。また、β−シート形成の容易化及び合成の簡易化の観点から、好ましくは200個以下、より好ましくは50個以下、さらに好ましくは32個以下、さらにより好ましくは24個以下、さらにより好ましくは16個以下のアミノ酸残基からなる。
【0033】
また、pH6〜8におけるペプチドXの電荷、即ち、該ペプチドに含まれるアミノ酸残基の電荷の総和は、ゲル形成に適した静電的引力及び斥力のバランスを保つ観点から、例えば、ペプチドXが12〜32個のアミノ酸残基からなる場合、好ましくは−3〜+3クーロン、より好ましくは−2〜+2クーロンである。該電荷の総和が上記範囲内である場合、ペプチド間に静電的引力に加えて静電的斥力が働き、これらの微妙なバランスが保たれることで過度の会合が実質的に生じないため、ペプチドXは安定なゲルを形成し得ると推測される。
【0034】
各pHにおけるペプチドXの電荷は、例えば、レーニンジャー(Lehninger)〔Biochimie、1979〕の方法に従って算出されうる。前記レーニンジャーの方法は、例えば、EMBL WWW Gateway to Isoelectric Point Serviceのウェブサイト(http://www.embl-heidelberg.de/cgi/pi-wrapper.pl)上で利用可能なプログラムにより行なわれ得る。
【0035】
上記のような特徴を有する本発明のペプチドXは、温度応答性を有し得る。水系媒体中において、ペプチドXは、温度変化に応じて異なる強さの非共有結合性相互作用を発揮し得るため、かかる性質を有し得ると推測される。
【0036】
温度応答性を有するペプチドXによれば、該ペプチドXを水系媒体中に溶解することにより、温度変化に応じて機械的特性が変化する組成物が調製され得る。具体的には、温度応答性を有するペプチドXによれば、一定の応力により生じたひずみの回復が、例えば、約37℃において約4℃より大きいという性質を示す組成物が調製され得る。
【0037】
具体例としては、該ペプチドXが1%(w/v)となるよう水系媒体中に溶解されることにより調製された組成物は、標準試験1において、例えば、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下のひずみの回復を示し、標準試験2において、例えば、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上のひずみの回復を示し得る。水系媒体としては、静電的引力及び斥力のバランスを保つ観点から、ペプチドXの水系媒体中における電荷が、−3〜+3クーロンである限り、特に制限はない。なお、標準試験1及び2の手順は後述の実施例に記載の通りである。
【0038】
また、温度応答性を有するペプチドXによれば、該ペプチドXを水系媒体中に溶解することにより、昇温に伴ってゾル-ゲル転移現象を生じる組成物が調製され得る。
【0039】
具体例としては、該ペプチドXが1%(w/v)となるよう水系媒体中に溶解されることにより調製された組成物は、例えば4〜37℃、好ましくは15〜25℃において、ゾル-ゲル転移現象を生じ得る。水系媒体としては、静電的引力及び斥力のバランスを保つ観点から、ペプチドXの水系媒体中における電荷が、−3〜+3クーロンである限り、特に制限はない。
【0040】
本発明において、ゾル‐ゲル転移現象とは、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’が「G’’>G’」である状態から「G’>G’’」である状態へ転移する現象をいい、該現象が生じる温度をゾル‐ゲル転移点という。ゾル‐ゲル転移点は「G’=G’’」となる点であり、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定することにより、得ることができる。
【0041】
ペプチドXは、当該分野で公知の方法により作製され得る。例えば、ペプチドXは、後述の実施例に記載されるようにFmoc法等の固相法又は液相法等の化学合成方法により合成されてもよく、遺伝子組換え発現等の分子生物学的方法により作製されてもよい。
【0042】
また、ペプチドXの安定性の観点から、ペプチドXのN末端及び/又はC末端は、当該分野で公知の方法により、アミド基、アセチル基等で置換されてもよい。
【0043】
ペプチドXの具体例としては、例えば、配列表の配列番号:1記載のペプチドが挙げられる。
【0044】
本発明のペプチドXは、後述の本発明の組成物又はゲルの調製に使用され得ることから、例えば、細胞の三次元培養、再生医療、骨充填美容形成用注入剤、止血剤、じょくそう製剤、化粧品又は製薬開発スクリーニング等に使用され得る。
本発明のペプチドXはまた、ナノメートルスケールの2次元ネットワークパターンの構築を可能とすることから、撥水性表面、撥油性表面の調製等に使用され得る。
【0045】
2.組成物
本発明はまた、ペプチドXを含有する組成物(以下、「ペプチドX含有組成物」と称することがある)に関する。
【0046】
本発明の組成物は、ペプチドXを含有するため、温度応答性を有し得る。具体的には、該組成物は、温度変化に応じて粘弾性特性等の機械的特性が変化し得るため、例えば、約37℃において約4℃よりも強い弾性的性質を示し得る。なお、組成物の弾性的性質は、後述の実施例に記載の通り、動的粘弾性測定を行うことにより、貯蔵弾性率G'として求めることができる。
【0047】
温度応答性を有する組成物に一定の応力を加えてひずみを生じさせた場合、例えば、約4℃よりも約37℃において、良好なひずみの回復を示し得る。該組成物が後述の標準試験1において示すひずみの回復としては、実用性の観点から、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましい。また、同様の観点から、該組成物が後述の標準試験2において示すひずみの回復としては、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。
【0048】
また、温度応答性を有する組成物は、昇温に伴ってゾル-ゲル転移現象を生じ得る。実用性の観点から、該組成物のゾル-ゲル転移点は、好ましくは約4〜約37℃、より好ましくは約15〜約25℃である。従って、該組成物は、約25〜約37℃において貯蔵弾性率G’が損失弾性率G’’より大きいゲルであり、約4〜約15℃においては貯蔵弾性率G’が損失弾性率G’’以下であるゾルであり得る。
【0049】
本発明の組成物中におけるペプチドXの含有量としては、特に制限は無いが、ペプチドXによるナノファイバーの分岐促進効果を発揮させる観点から、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上であり、ゲル形成の容易さ及び温度応答性を高める観点から、0.2重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量としては、溶解性の観点から、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましい。
【0050】
本発明の組成物は、さらに、媒体を含有し得る。媒体としては、特に限定はなく、例えば、水を使用することができる。また、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、Tris−HCl等の各種緩衝液、細胞培養用液体培地等を媒体として使用することもできる。組成物中における媒体の含有量としては、好ましくは90〜99.8重量%、より好ましくは95〜99.7重量%、さらに好ましくは98〜99.5重量%である。
【0051】
他のペプチドからなるナノファイバーの分岐を促す観点から、本発明の組成物はさらに、ペプチドX以外の自己組織化ペプチド(Y)(以下、「ペプチドY」と称することがある)を含有することができる。該ペプチドYとしては、水系媒体中で自己組織化してゲルを形成し得る自己組織化ペプチドであれば、特に限定されず、例えば、前記特許文献1若しくは2、又は特願2005−186573に開示されるものが使用され得る。該ペプチドYの具体例としては、例えば、配列表の配列番号:3〜12で表されるペプチドが挙げられる。
【0052】
本発明の組成物中におけるペプチドX及びYの合計含有量としては、ゲル形成の容易さの観点から、0.2重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましい。また、該合計含有量としては、溶解性の観点から、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましい。
【0053】
本発明の組成物中におけるペプチドXに対する自己組織化ペプチドYの含有量比[ペプチドY(重量モル濃度)/ペプチドX(重量モル濃度)]は、ゲル形成の容易さの観点から、好ましくは3/1〜300/1、より好ましくは5/1〜100/1、さらに好ましくは10/1〜50/1である。また、組成物の温度応答性を高める観点から、該含有量は、好ましくは1/3〜1/300、より好ましくは1/5〜1/100、さらに好ましくは1/10〜1/50である。
【0054】
本発明の組成物はさらに、本発明の目的を奏する範囲内で、無機塩、アミノ酸、糖、ビタミン、pH指示薬等の任意成分を含有し得る。従って、本発明の組成物は、例えば、D−MEM/F12(1:1)培地(インビトロジェン社製)等の細胞培養用培地を構成する成分を含有してもよい。
【0055】
本発明の組成物は、前記の各成分を公知の方法で混合することにより得られ得る。混合方法としては均一に混合する観点から、超音波照射による混合が好ましい。
【0056】
本発明の組成物は、後述の本発明のゲルの調製等に使用され得るため、例えば、細胞の三次元培養、再生医療、骨充填美容形成用注入剤、止血剤、じょくそう製剤、化粧品又は製薬開発スクリーニング等に使用され得る。例えば、本発明の組成物を細胞の三次元培養用培地として用いる場合、該組成物は、約4℃において、約37℃においてよりも貯蔵弾性率が低くなり得るため、約37℃にて培養した細胞及び培地を約4℃で静置することにより、容易に培地から剥離・回収することが可能となるという効果が奏される。また、例えば、低温に保持された前記の組成物は、注射器等で容易に被検体の患部に注入され得、次いで、注入された部位において体温まで温められることにより、貯蔵弾性率の高いゲルとなり得る。従って、本発明の組成物は、再生医療、骨充填美容形成用注入剤等に好適に用いられ得る。
【0057】
3.自己組織化ペプチドゲル
本発明はまた、前記の組成物がゲル化してなる自己組織化ペプチドゲル(以下、「ゲル」と称することがある)に関する。
【0058】
前記の組成物をゲル化させる方法としては、例えば、組成物中のペプチドX及びYの合計含有量が、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.3〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜2重量%になるように前記媒体等を用いて調整し、得られたペプチド溶液をしばらく静置する方法が挙げられる。静置する際の温度又は時間等の条件は、前記の組成物中のペプチドが自己組織化する限り、特に制限はなく、ゲルの使用目的及びペプチドの種類や濃度に応じて適宜調整すればよい。該条件としては、例えば、25〜37℃で、30分〜24時間の静置が挙げられる。
【0059】
前記の組成物をゲル化させる別の方法としては、例えば、組成物中のペプチドXの含有量が、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.3〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜2重量%になるように前記媒体等を用いて調整して得たペプチド溶液を、4℃程度に冷却した後に、37℃程度に温めて静置する方法が挙げられる。静置する時間等の条件は、前記の組成物中のペプチドが自己組織化する限り、特に制限はなく、ゲルの使用目的及びペプチドの種類や濃度に応じて適宜調整すればよい。該条件としては、例えば、30分〜24時間の静置が挙げられる。
【0060】
ゲル化させる際の組成物のpHとしては、特に限定されないが、ゲル形成に適した静電的引力及び斥力のバランスを保つ観点から、ペプチドX及びペプチドYの組成物中における電荷が、好ましくは−3〜+3クーロンになるpHであることが望ましく、より好ましくは−2〜+2クーロンになるpHであることが望ましい。従って、組成物をゲル化させる際には、必要に応じてTris-HCl緩衝液、リン酸緩衝化生理食塩水等の各種緩衝液、細胞培養用液体培地、又は公知のpH調整剤等を加えることにより、組成物のpHを調整することが好ましい。
【0061】
本発明の自己組織化ペプチドゲルは、ペプチドXを含有するため、温度変化に伴って機械的特性、例えば、粘弾性特性が変化し得る。例えば、本発明の自己組織化ペプチドゲルは、約37℃において、約4℃においてよりも強い弾性的性質を示し得る。なお、ゲルの弾性的性質は、後述の実施例に記載の通りに動的粘弾性測定を行うことにより、貯蔵弾性率G'として求めることができる。
【0062】
本発明の自己組織化ペプチドゲルは、例えば、細胞の三次元培養、再生医療、骨充填美容形成用注入剤、止血剤、じょくそう製剤、化粧品又は製薬開発スクリーニング等に使用され得る。
【0063】
本発明のゲルを、例えば、細胞の三次元培養の足場として用いる場合、ゲル形成時におけるペプチドX及びYの合計使用濃度は、ゲル形成の容易さの観点から、細胞培養用培地中、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、細胞との混合のしやすさの観点から、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下であることが望ましい。また、かかる場合、蛍光顕微鏡等による細胞観察の容易さの観点から、ゲルは透明であることが好ましい。例えば、合計0.5重量%の自己組織化ペプチドを含有してなるゲルにおいて、光路長10mmのセル中、380nm〜780nmの吸光度で測定した可視光透過率が、少なくとも50%/cmであることが望ましく、好ましくは、70%/cm以上、より好ましくは、90%/cm以上が望ましい。さらに、前記ゲルを、長期間、例えば2ヶ月間、室温で静置した後のゲルの可視光透過率は、ゲルの長期安定性の観点から、好ましくは、50%/cm以上、より好ましくは、70%/cm以上、さらに好ましくは90%/cm以上が望ましい。前記ゲルの透明度は、例えば、UV/VIS測定装置を用いて測定することができる。
【0064】
4.自己組織化ペプチドゲルの製造方法
本発明はまた、前記の組成物をゲル化させる工程を有する自己組織化ペプチドゲルの製造方法に関する。ゲル化させる工程としては、前述の組成物をゲル化させる方法と同様であればよい。
【0065】
また、本発明の製造方法においては、後述のペプチドX含有組成物の機械的特性の制御方法によって機械的特性を制御された組成物をゲル化させることにより、所望の機械的特性、例えば、貯蔵弾性率を有するゲルを製造することができる。具体的には、pH、イオン強度、組成物中におけるペプチドXに対するペプチドYの含有量比等が制御された組成物をゲル化させることにより、種々の機械的特性を有するゲルを製造することができる。
【0066】
5.ペプチドX含有組成物の機械的特性の制御方法
本発明はまた、組成物の温度、pH、及びイオン強度からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする前記の組成物の機械的特性の制御方法に関する。
【0067】
前記の組成物は、ペプチドXを含有するため、温度変化に伴って機械的特性、例えば、粘弾性特性が変化し得る。従って、前記の組成物の温度を制御因子とし、該温度を変化させることにより、所望の粘弾性特性の組成物を得ることができる。
【0068】
本発明の制御因子の一つである温度と組成物の機械的特性との関係は、自己組織化ペプチドの種類や、組成物中の自己組織化ペプチド濃度によって多少変化する場合があるが、前記の組成物の温度を、例えば、25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは37℃以上にすることにより、組成物の機械的特性を変化させて、それ未満の温度の組成物よりも貯蔵弾性率を高くすることができる。
【0069】
従って、本発明の組成物の機械的特性の制御方法によれば、前記の組成物の温度を、約37℃にすることにより、該組成物の貯蔵弾性率G’を上昇させ、約4℃にすることにより、貯蔵弾性率G’を低下させることができる。なお、該機械的特性の制御方法において、組成物の温度は公知の温度調節器等によって変化させ得る。
【0070】
また、自己組織化ペプチド間に働く非共有結合性相互作用は、組成物のpH及び/又はイオン強度によっても変化し得ることから、本発明の機械的特性の制御方法においては、温度変化の他に、前記の組成物のpH及び/又はイオン強度を所望により適宜組み合わせて、公知の方法で変化させることにより、その機械的特性に変化を与えることが可能である。
【0071】
さらに、前記組成物がペプチドYを含有する場合、組成物中におけるペプチドXに対するペプチドYの含有量比(重量モル濃度比)を変化させることにより、該組成物の機械的特性を制御し得る。
【0072】
組成物中におけるペプチドXに対するペプチドYの含有量比(重量モル濃度比)を変化させることによって、前記の組成物の機械的特性を制御し得るメカニズムとしては、これに限定するものではないが、例えば、以下のメカニズムが考えられる。即ち、前述の通り、ペプチドXが自己組織化する際、ドメインAとCとの間に非共有結合性相互作用が働き得ることから、分岐点を多く有するナノファイバーが形成され得ると推測される(図1参照)。分岐点を多く有するナノファイバーは三次元網状構造を形成し易いため、前記の組成物中におけるナノファイバーの架橋密度は高いと推測される。ここで、組成物の機械的特性は、ナノファイバーの長さと架橋密度に依存すると考えられることから、ナノファイバーの分岐を促進して架橋密度を高める効果に優れたペプチドXと、ナノファイバーを伸長させる効果に優れたペプチドYとの含有量比を変化させることにより、組成物の機械的特性が変化し、粘弾性特性が変化すると推測される。
【0073】
従って、組成物中におけるペプチドXに対するペプチドYの含有量比[ペプチドY(重量モル濃度)/ペプチドX(重量モル濃度)]を制御因子とし、該含有量比を変化させることにより、所望の機械的特性を有する組成物、例えば、所望の粘弾性特性を有する組成物を得ることができる。該含有量比と組成物の粘弾性特性との関係は、自己組織化ペプチドの種類や、組成物中の自己組織化ペプチド濃度によって多少変化する場合があるが、例えば、該含有量比を、好ましくは3/1〜300/1、より好ましくは5/1〜100/1、さらに好ましくは10/1〜50/1に調整してゲル化させることにより、ゲルの弾性的性質を強くし得る。
【0074】
本発明の組成物の機械的特性の制御方法によって、ペプチドX及びY含有組成物の機械的特性を制御する場合においては、ペプチドXに対するペプチドYの含有量比(重量モル濃度比)を変化させると共に、温度、pH、及びイオン強度からなる群より選択される少なくとも1つの制御因子を公知の方法で変化させてもよい。従って、本発明はまた、組成物の温度、pH、イオン強度、及び組成物中におけるペプチドXに対するペプチドYの含有量比(重量モル濃度比)からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする、ペプチドX及びY含有組成物の機械的特性の制御方法に関する。
【0075】
本発明の組成物の機械的特性の制御方法を用いることにより、所望の機械的特性を有する組成物を得ることができる。
【0076】
6.自己組織化ペプチドゲルの機械的特性の制御方法
本発明はまた、自己組織化ペプチドゲルの温度、pH、及びイオン強度からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする前記の自己組織化ペプチドゲルの機械的特性の制御方法に関する。
【0077】
前記の自己組織化ペプチドゲルは、ペプチドXを含有するため、温度変化に伴って機械的特性、例えば、粘弾性特性が変化し得る。従って、前記のゲルの温度を制御因子とし、該温度を変化させることにより、所望の粘弾性特性を有するゲルを得ることができる。また、自己組織化ペプチド間に働く非共有結合性相互作用は、ゲルのpH及び/又はイオン強度によっても変化し得ることから、本発明の機械的特性の制御方法においては、温度変化の他に、前記のゲルのpH及び/又はイオン強度を所望により適宜組み合わせて変化させることにより、その機械的特性に変化を与えることが可能である。
【0078】
本発明のゲルの機械的特性の制御方法において、ゲルの温度は、公知の温度調節器等によって変化させ得る。また、ゲルのpH及び/又はイオン強度を変化させる方法としては、例えば、水酸化ナトリウムや塩化水素、塩化ナトリウム等を媒体中に添加することで、ゲル化させる組成物のpH及び/又はイオン強度を変化させる方法が挙げられる。
【0079】
さらに、前記ゲルがペプチドYを含有する場合、ゲル中におけるペプチドXに対するペプチドYの含有量比(重量モル濃度比)を変化させることにより、該ゲルの機械的特性を制御し得る。
【0080】
本発明のゲルの機械的特性の制御方法によって、ペプチドX及びYを含有するゲルの機械的特性を制御する場合においては、ペプチドXに対するペプチドYの含有量比(重量モル濃度比)を変化させると共に、温度、pH、及びイオン強度からなる群より選択される少なくとも1つの制御因子を上記と同様の方法で変化させてもよい。従って、本発明はまた、ゲルの温度、pH、イオン強度、及びゲル中におけるペプチドXに対するペプチドYの含有量比(重量モル濃度比)からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする、ペプチドX及びYを含有するゲルの機械的特性の制御方法に関する。
【0081】
本発明のゲルの機械的特性の制御方法の具体例としては、前記の組成物の機械的特性の制御方法と同様の温度制御及び含有量比の制御が挙げられる。
【0082】
本発明のゲルの機械的特性の制御方法を用いることにより、所望の機械的特性を有する自己組織化ペプチドゲルを得ることができる。
【実施例】
【0083】
[1]ペプチドの合成
ペプチドの合成を、ペプチド合成機(商品名:Solid Organic Synthesizer CCS-150M、EYELA社製)を用いて、一般的なFmoc固相合成法により行なった。
縮合剤として、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)(渡辺化学(株)製)及びN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)(東京化成(株)製)を使用し、ペプチド研究所(株)から入手した樹脂及びFmoc-アミノ酸を合成に用いた。
また、用いたFmoc-アミノ酸の内、アルギニン残基の保護基としては、2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル基(Pdf基)を用い、アスパラギン酸残基及びセリン残基の保護基としては、tert-ブチル基(tBu基)を用いた。ペプチドのC末端をアミド化するための樹脂としては、4−(2,4−ジメトキシフェニル−フルオレニルメチルオキシカルボニル−アミノメチル)フェノキシアセチル−ノルロイシル−CLEAR Resin(PEPTIDES INSTITUTE製)を用いた。
【0084】
上記のペプチド合成機を用いて脱保護反応及び縮合反応を反復して樹脂からペプチド鎖を伸長していき、目的のペプチドを得た。具体的には、20体積%ピペリジン/ジメチルホルムアミド(DMF)(ペプチド合成用グレード、和光純薬(株)製)によって、樹脂のFmoc基を切断除去し、次いで該樹脂をDMFで洗浄し、次いで洗浄後の樹脂の活性末端に対して3.5当量のFmoc-アミノ酸を反応させ、反応の完了を2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試験(W.S.Hancock 及び J.E.Battersby, Anal.Biochem., 71, 260-264, 1976)により確認し、反応後の樹脂をDMFで洗浄する操作を反復した。ペプチド鎖の伸長反応が全て終了した後、20体積%ピペリジン/DMFにより、樹脂の末端のFmoc基を切断し、DMF、ジクロロメタン(和光純薬(株)製)の順に該樹脂を洗浄した。次いで、得られた樹脂の活性末端に対して0.1当量の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)及び5当量の無水酢酸をN−メチル-2−ピロリドン(NMP)5mlに溶解させた溶液と、該樹脂と、を反応させ、ペプチドのN末端をアセチル化した。反応の完了をTNBS試験により確認し、反応後の樹脂をDMAで洗浄した。
【0085】
得られた樹脂に溶液[95体積%トリフルオロ酢酸:1,2−エタンジオール(東京化成(株)製):チオアニソール(東京化成(株)製):イオン交換水=84:8:4:4] 5mlを加え、室温で6時間反応させることにより、側鎖の脱保護及びペプチドの樹脂からの切断を行った。反応液を濾過し、得られた濾液をジエチルエーテル 50ml中に滴下することによりペプチドを沈殿させた。沈殿を含む混合液を遠心分離(3000rpm、25℃、5分)し、エーテル層を除去した。ジエチルエーテル中での撹拌及び遠心分離を十数回繰り返すことにより、ペプチドを洗浄した後、生成物を風乾させ、さらに真空乾燥した。これにより、表2記載のペプチドを得た。
【0086】
なお、Voyager(登録商標)RP(Applied Biosystems社製)を用いたMALDI-TOF/MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型−質量分析)に基づいて、得られたペプチドの分子量を測定した結果、目的のペプチドが合成されていることが確認された。
【0087】
【表2】

【0088】
[2−1]β−シート構造の形成確認1
円二色性測定法により、pHの異なる水溶液中におけるペプチドの二次構造を評価した。具体的には、次の通りである。実施例1のペプチドを種々のpHの20μM Tris−HClに溶解し、必要に応じて0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、6×10−5M ペプチド溶液(pH3.1、4.1、7.5及び10.0)を調製した。得られたペプチド溶液をそれぞれ、光路長1mmの円筒型石英セル(日本分光(株)製、0.2ml容)に満たし、商品名:J-820K Spectropolarimeter(日本分光(株)製)に前記石英セルをセットして、190〜260nmのモル楕円率を測定した。結果を図3に示す。
【0089】
図3に示されるように、実施例1のペプチドは、各pHにおいて、190〜200nmに正のピーク、及び215nm付近に負のピークを示した。したがって、該ペプチドは、pHの異なる各水溶液中でβシート構造を形成することがわかった。
【0090】
[2−2]β−シート構造の形成確認2
円二色性測定法により、温度の異なる水溶液中におけるペプチドの二次構造を評価した。具体的には、次の通りである。実施例1のペプチドを20μM Tris−HClに溶解して、2×10−6M ペプチド溶液(約pH3)を調製した。得られたペプチド溶液を4℃、25℃及び37℃にした以外は[2−1]と同様にして、190〜260nmのモル楕円率を測定した。結果を図4に示す。
【0091】
図4に示されるように、実施例1のペプチドは、全ての温度において、190〜200nmに正のピーク、及び215nm付近に負のピークを示した。したがって、該ペプチドは、各温度の水溶液中でβシート構造を形成することがわかった。
【0092】
[2−3]β−シート構造の形成確認3
pHの異なる水溶液中における比較例1のペプチドの二次構造を、[2−1]と同様にして6×10−5M ペプチド溶液(pH3.1、4.4、7.4及び9.9)を調製し、測定することにより、評価した。その結果、図5に示されるように、比較例1のペプチドは、全てのpHにおいて、195nmに負のピークを示した。従って、該ペプチドは、各pHの水溶液中でランダムコイル構造を形成することがわかった。
【0093】
[3]ナノファイバー形成の確認
実施例1及び比較例2のペプチドを20μM Tris−HClに溶解して調製した5x10-4M ペプチド溶液(約pH3)を塩酸水溶液(pH3.0)で20倍希釈した溶液 1μLを、劈開させたマイカ基板上に滴下した。その後、前記マイカ基板上の余分なサンプルを、塩酸水溶液(pH3.0)で洗い流した。ついで、室温(25℃)で基板を真空乾燥させた。
【0094】
乾燥後のマイカ基板上のサンプルを、原子間力顕微鏡(商品名:NanoScope IV、デジタルインストゥルメンツ(Digital Instrument)製)を用いて、大気中、タッピングモードで観察した。なお、予めキャリブレーション用グリッドを観察することでピエゾ素子の校正を行い、プローブにはタッピングモード/ノンコンタクトモード用シリコン製カンチレバー(ナノワールド社製、型式NCH-10V、カンチレバー長125μm、バネ定数20-100N/m)を用いた。結果を図6に示す。
【0095】
図6に示される通り、実施例1のペプチドは、比較例2のペプチドに比べて分岐点が多く、繊維長の短いナノファイバーを形成していることが観察された。
【0096】
[4]自己組織化ペプチドゲルの調製
表3記載の組成を有する組成物1〜5を調製した。具体的には、1.5ml容のマイクロチューブに、各成分をそれぞれ加え、周波数20kHzの超音波を5秒照射することにより、これらを溶解した。その後ただちにサンプルに100mM Tris-HCl溶液を加え、試験管ミキサーで約10秒間撹拌し、組成物1〜5を得た。得られた組成物を25℃で24時間静置することにより、ゲル化させ、自己組織化ペプチドゲル1〜5を得た。
【0097】
【表3】

【0098】
[5−1]標準試験1(ひずみの回復測定)
表3記載の自己組織化ペプチドゲル1を試料として標準試験1に供した。標準試験1の具体的な手順は、以下の通りである。
工程1:試料0.75gを4℃で15分維持する。
工程2:4℃の条件下で、前記試料に1mN・mの負荷を15分間与え、その間の時間に対するひずみの変化を測定する。
工程3:4℃の条件下で、前記負荷を除き、その後20分間の時間に対するひずみの変化を測定する。
なお、ひずみの変化の測定条件を以下に示す。
・測定機器 商品名:AR1000 Rheometer(TA インストゥルメンツ ジャパン社製)
・ジオメトリー 直径40mmの鉄製パラレルプレート
・ギャップ 600μm
【0099】
上記の標準試験1において、負荷を除いた時点でのひずみの値Aから、負荷を除いて20分間が経過した時点でのひずみの値Bの差(A-B)をAの値で除して、100を乗じたものをひずみの回復(%)とした。その結果、Aが11.75、Bが11.50であり、ひずみの回復は2%であった。
【0100】
[5−2]標準試験2(ひずみの回復測定)
表3記載の自己組織化ペプチドゲル1を試料として標準試験2に供した。標準試験2は工程1〜3における温度を37℃に変更する以外は標準試験1と同様に行う。その結果、Aが9.9×10−3、Bが2.3×10−3であり、ひずみの回復は77%であった。
【0101】
[6]自己組織化ペプチドゲルの動的粘弾性測定
商品名:AR1000 Rheometer(TA インストゥルメンツ ジャパン社製)を用いて、4℃、25℃及び37℃で15分間維持した表3記載の自己組織化ペプチドゲル1〜5の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を、各温度下で速やかに測定した。測定条件としては、ジオメトリーとして、直径40mmの鉄製パラレルプレートを用い、ギャップ:600μm、トルク:1μNm、周波数:0.1〜10 rad/secであった。結果を表4及び図7に示す。
【0102】
【表4】

【0103】
表4に示される通り、自己組織化ペプチドゲル1の1 rad/secにおける貯蔵弾性率(G')は、37℃において6.3Paであり、4℃において0.5Paであった。即ち、該ゲルの37℃における弾性的性質は、4℃における弾性的性質の約13倍であり、昇温に伴ってゲルの弾性的性質が顕著に強まることがわかった。一方、自己組織化ペプチドゲル4の1 rad/secにおける貯蔵弾性率(G')は、37℃において240.2Paであり、4℃において359.7Paであった。即ち、該ゲルの37℃における弾性的性質は、4℃における弾性的性質の約0.67倍であり、昇温に伴って弾性的性質がやや弱まるものの、各温度条件において強い弾性的性質を維持することがわかった。
【0104】
また、1 rad/sec、25℃における貯蔵弾性率(G’)は、自己組織化ペプチドゲル2では113.4Pa、自己組織化ペプチドゲル3では60.2Pa、自己組織化ペプチドゲル5では19.9Paであった。このことから、ペプチドXとYとの含有量比を変化させることでペプチドXとYとを含有する組成物又はゲルの機械的特性を制御することが可能であり、機械的特性の異なる組成物又はゲルが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の自己組織化ペプチドを含有する組成物は、例えば、細胞の三次元培養、再生医療、骨充填美容形成用注入剤、止血剤、じょくそう製剤、化粧品又は製薬開発スクリーニング、二次元ナノパターニング等に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】(a)は、ペプチドXがとり得る一態様の概略図を表す。(a’)は、ペプチドXが自己組織化して形成されるナノファイバーであって、分岐点を有するナノファイバーの概略図を表す。(b)は、(a’)中、点線で示された分岐点におけるβシート構造の一方の面(a)を拡大した際に推測される概略図である。(c)は、(a’)中、点線で示された分岐点におけるβシート構造の他方の面(b)を拡大した際に推測される概略図である。図中、矢印はペプチドXが水系媒体中で形成するβ-シート構造を表し、四角は塩基性アミノ酸残基、三角は酸性アミノ酸残基を表す。
【図2】(a)〜(c)は、ペプチドXがとり得る一態様の概略図を表す。図中、矢印はペプチドXが水系媒体中で形成するβ-シート構造を表し、丸は非極性アミノ酸残基、四角は塩基性アミノ酸残基、三角は酸性アミノ酸残基を表し、点線はペプチド結合を表す。
【図3】6×10−5M 実施例1のペプチド溶液(20μM Tris-HCl)の190〜260nmにおけるモル楕円率を表す。図中、(1)はpH3.1、(2)はpH4.1、(3)はpH7.5、(4)はpH10.0のペプチド溶液におけるモル楕円率を表す。
【図4】2×10−6M 実施例1のペプチド溶液(20μM Tris-HCl、約pH3)の190〜260nmにおけるモル楕円率を表す。図中、(1)は4℃、(2)は25℃、(3)は37℃のペプチド溶液におけるモル楕円率を表す。
【図5】6×10−5M 比較例1のペプチド溶液(20μM Tris-HCl)の190〜260nmにおけるモル楕円率を表す。図中、(1)はpH3.1、(2)はpH4.4、(3)はpH7.4、(4)はpH9.9のペプチド溶液におけるモル楕円率を表す。
【図6】図6は、原子間力顕微鏡を用いて観察したペプチド水溶液中のナノファイバーの写真である。パネル(a-1)は実施例1、パネル(a-2)は比較例2の2.5x10-5M ペプチド溶液の写真を表す。また、パネル(b-1)及び(b-2)は、AFM像の高さの尺度を表し、図中、スケールバーは、500nmを表す。
【図7】図7は、自己組織化ペプチドゲル1〜5の動的粘弾性測定の結果を表すグラフである。
【配列表フリーテキスト】
【0107】
配列表の配列番号1は、自己組織化ペプチド(X)である。
配列表の配列番号2は、自己組織化ペプチドではないペプチドである。
配列表の配列番号3は、自己組織化ペプチド(Y)である。
配列表の配列番号4は、自己組織化ペプチド(Y)である。
配列表の配列番号5は、自己組織化ペプチド(Y)である。
配列表の配列番号6は、自己組織化ペプチド(Y)である。
配列表の配列番号7は、自己組織化ペプチド(Y)である。
配列表の配列番号8は、自己組織化ペプチド(Y)である。
配列表の配列番号9は、自己組織化ペプチド(Y)である。
配列表の配列番号10は、自己組織化ペプチド(Y)である。
配列表の配列番号11は、自己組織化ペプチド(Y)である。
配列表の配列番号12は、自己組織化ペプチド(Y)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:A * B * Cで表される構造を含んでなり、水系媒体中においてβ-シート構造を形成する自己組織化ペプチド(X)。
[式中、AがN末端側であり、
A、B及びCは、それぞれ非極性アミノ酸残基と酸性アミノ酸残基と塩基性アミノ酸残基とを含有するドメインであり、
ドメインA、B及びCの両末端は、それぞれ独立して酸性アミノ酸残基又は塩基性アミノ酸残基であり、
ドメインA及びCにおいては、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基がβ−シート構造の一方の面(a)のみにそれぞれ独立して1個以上配置され、
ドメインBにおいては、酸性アミノ酸残基及び塩基性アミノ酸残基がβ−シート構造の他方の面(b)のみにそれぞれ独立して1個以上配置され、
及び*は、それぞれ独立してペプチド結合又は非極性アミノ酸残基のみを含有するドメインである。]
【請求項2】
温度応答性を有する、請求項1記載の自己組織化ペプチド(X)。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自己組織化ペプチド(X)を含有する組成物。
【請求項4】
温度応答性を有する、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
さらに他の自己組織化ペプチド(Y)を含有する、請求項3又は4記載の組成物。
【請求項6】
請求項3又は4記載の組成物がゲル化してなる自己組織化ペプチドゲル。
【請求項7】
請求項5記載の組成物がゲル化してなる自己組織化ペプチドゲル。
【請求項8】
請求項3〜5いずれか記載の組成物をゲル化させる工程を有する自己組織化ペプチドゲルの製造方法。
【請求項9】
組成物の温度、pH、及びイオン強度からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする、請求項3又は4記載の組成物の機械的特性の制御方法。
【請求項10】
組成物の温度、pH、イオン強度、及び組成物中における自己組織化ペプチド(X)に対する自己組織化ペプチド(Y)の含有量比(重量モル濃度比)からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする、請求項5記載の組成物の機械的特性の制御方法。
【請求項11】
自己組織化ペプチドゲルの温度、pH、及びイオン強度からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする、請求項6記載の自己組織化ペプチドゲルの機械的特性の制御方法。
【請求項12】
自己組織化ペプチドゲルの温度、pH、イオン強度、及び自己組織化ペプチドゲル中における自己組織化ペプチド(X)に対する自己組織化ペプチド(Y)の含有量比(重量モル濃度比)からなる群より選択される少なくとも一つを制御因子とする、請求項7記載の自己組織化ペプチドゲルの機械的特性の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−217375(P2007−217375A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41628(P2006−41628)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】