説明

自己誘導物質類似物質、自己誘導物質アゴニストおよびアンタゴニストのコンビナトリアル・ライブラリー、ならびにその使用方法

本発明は、自己誘導物質類似物質の固相または液相コンビナトリアル・ライブラリーに関する。本発明は同様に、自己誘導物質アゴニストおよびアンタゴニストに関する。さらに、本発明は、自己誘導物質アゴニストおよびアンタゴニストの同定方法のほか、本発明の自己誘導物質類似物質を使用する、自己誘導物質受容体の活性の調節方法、バイオフィルム形成の調節方法、被検体中の生物の増殖または毒性の調節方法、生物の定足数感知機構の阻害方法、および定足数感知機構を持つ生物により引き起こされた、被検体における感染症の治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2002年8月15日付けで出願した米国特許仮出願第60/403,791号の恩典を主張するものであり、その出願はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、自己誘導物質類似物質のコンビナトリアル・ライブラリー、そのようなコンビナトリアル・ライブラリーの使用方法、自己誘導物質アゴニストおよびアンタゴニスト、ならびにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
シュードモナス・アエルギノーザは、さまざまな動物、植物、および昆虫に感染できる遍在性のグラム陰性細菌である(Rahmeら、Science 268:1899〜1902 (1995))。P.アエルギノーザは、健常人には病気を引き起こすことがめったにないが、その一方で嚢胞性繊維症(CF)、がん、AIDS、糖尿病、激しい火傷、および外傷を含む、宿主防御系が損なわれた人に実際に感染するので、日和見病原体に分類される(Van Deldenら、Emerg. Infect. Dis. 4:551〜560 (1998)。感染の間、P.アエルギノーザは、組織傷害を引き起こす多数の毒性因子を産生する。CFの場合、P.アエルギノーザは、患者の90%以上で慢性的な、致死性の肺感染を引き起こす(Hoiby, Acta. Path. Microbiol. Scand. Sect. B 82:551 (1974); Mahenthiralingamら、Infect Immun. 62:596〜605 (1994); Smithら、Cell 85:229〜236 (1996))。いくつかの抗シュードモナス抗生物質、例えば、β-ラクタム、アミノグリコシドおよびキノロンが、臨床の投薬計画で使用されている(Kovacsら、Infect. Med. 15:467〜472 (1998))ものの、P.アエルギノーザは高い頻度で、これらの治療に対する抵抗性を発現する(Oliverら、Science 288:1251〜1253 (2000))。感染をなくすうえで問題を悪化させているのが、バイオフィルムを生み出すP.アエルギノーザの本質的能力である(Costertonら、Science 284:1318〜1322 (1999))。バイオフィルムは、抗生物質ならびに宿主の体液性および細胞媒介性反応の双方から細菌を保護する、複雑で、ポリサッカライドが沈着した微小なニッチである。
【0004】
P.アエルギノーザにおける毒性因子の産生およびバイオフィルムの発生の調節は、定足数感知(QS)として知られる、細胞集団の密度に応答する高度な細胞間シグナル伝達機構により制御される(de Kievitら、Sci. Med. Nov/Dec:42〜50 (1999); Passadorら、Science 260:1127〜1130 (1993); Passadorら、J. Bacteriol 178:5995〜6000 (1996); Hastingsら、J. Bacteriol. 181:2667〜2668 (1999); Pesciら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:11229〜11234 (1999); Parsekら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 97:8789〜8793 (2000); Whiteleyら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:13904〜13909 (1999))。この調節回路は、最初、海洋細菌ビブリオ・フィッシェリで発見されたが(Dunlapら、J. Bacteriol 164:45〜50 (1985))、しかし後に、P.アエルギノーザおよび多くの他の細菌に見出された(Hastingsら、J. Bacteriol. 181:2667〜2668 (1999); de Kievitら、Infect. Immun. 68:4839〜5862 (2000))。QSシステムは一般に、二つのファミリーのタンパク質、つまりR(調節因子)およびI(自己誘導物質シンターゼ)タンパク質からなる。Rタンパク質は、これらのタンパク質ファミリーをコードするRおよびI遺伝子双方の転写だけでなく、毒性因子およびバイオフィルム遺伝子を含む多くの下流の標的を活性化することが知られている。対照的に、Iタンパク質は、自己誘導物質シグナル分子のシンターゼ(合成酵素)である(以下を参照されたい)。Rタンパク質は、それぞれのIタンパク質により合成されるその同系の自己誘導物質との結合によってのみ、DNA結合および転写活性化に向けて「活性化される」(Gambelloら、J. Bacteriol. 173:3000〜3009 (1991))ことが重要である。それ故、より多くの自己誘導物質がIタンパク質により産生されるほど、いっそう活性化されたRタンパク質がシステムに存在することとなり、これが結果的にIタンパク質の量の増加につながる。従って、そのシグナル伝達分子がQSで果たすフィードバック役により、これらが自己誘導物質と呼ばれるのは偶然ではない。P.アエルギノーザでは、LasRおよびRhlRとして知られる二つのRタンパク質、ならびにLasIおよびRhlIとして知られる二つのIタンパク質が同定されている(Passadorら、Science 260:1127〜1130 (1993); Gambelloら、J. Bacteriol. 173:3000〜3009 (1991); Ochsnerら、J. Bacteriol. 176:2044〜2054 (1994); Ochsnerら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 92:6424〜6428 (1995))。それぞれのRタンパク質に結合する二つの自己誘導物質が同定されており、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン(3-オキソ-C12-HSL) (Pearsonら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 91:197〜201 (1994); Seedら、J. Bacteriol. 177:654〜659 (1995))およびN-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン(C4-HSL) (Pearsonら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 92:1490〜1494 (1995); Winsonら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 92:9427〜9431 (1995))として知られている。簡素化のため、以後、3-オキソ-C12-HSLおよびC4-HSLをそれぞれ、AI1およびAI2と呼ぶ。これらの拡散性自己誘導物質により、細菌細胞は、その周辺の細胞密度を監視することができ、従って、遺伝子発現を調節することができる。
【0005】
lasおよびrhlによるQSシステムは、二つの別個のレギュロンからなるが、その機能は明らかに独立していない。AI1-LasRもAI2-RhlRもlasB(これはエラスターゼ(LasB)毒性因子をコードする)の転写を活性化できるにもかかわらず、lasによるQSシステムは、rhlによるQSシステムを転写段階(Pearsonら、J. Bacteriol. 179:5756〜5767 (1997))と翻訳後段階(Pesciら、J. Bacteriol. 179:3127〜3132 (1997))の双方で制御することが明らかにされている。例えば、細胞密度が増加するにつれて、AI1が臨界濃度に達し、その時点でAI1はLasRと相互作用する(Passadorら、Science 260:1127〜1130 (1993))。その後、このAI1-LasR複合体が多くの遺伝子、例えば、lasB、toxA、rhlR、およびlasIの転写を活性化する(Whiteleyら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:13904〜13909 (1999); Gambelloら、J. Bacteriol. 173:3000〜3009 (1991); Pesciら、J. Bacteriol. 179:3127〜3132 (1997); Storeyら、Infect. Immun. 66:2521〜2528 (1998); Toderら、Infect. Immun. 62:1320〜1327 (1994); Gambelloら、Infect. Immun. 61:1320〜1327 (1993))。このことから、二つのシステムは、lasによるQSシステムがrhlによるQSシステムに対して優性であるような階層で配置されていることが示唆される。AI1-LasR複合体によるlas遺伝子の活性化により、本質的にカスケードの第一段階の引き金が引かれるので、LasRは、P.アエルギノーザのQSの主調節因子であると考えられる。
【0006】
最近になって、lasによるQSネットワークとrhlによるQSネットワークとの間に有り得るさらなる関連性を示すような、第三のシグナル分子、つまり2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロン(シュードモナス・キノロン・シグナル(Pseudomonas quinolone signal)、PQS)が見出されている(Pesciら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:11229〜11234 (1999); McKnightら、J. Bacteriol. 182:2702〜2708 (2000))。これらの研究から、PQSは、lasRおよびrhlRの転写に対してプラスの効果が小さいものの、rhlIを強力に誘導することが示された。それでもなお、PQSがlasおよびrhlによるQSネットワークに影響を及ぼす機構ならびにPQS生合成に関与するタンパク質は、不明である。
【0007】
QSシステムは、細菌の病原性と直接的に関連していることが明らかにされている。特に、多くの報告により、QSとP.アエルギノーザの毒性との間の正の相関関係が明らかにされている(Costertonら、Science 284:1318〜1322 (1999); de Kievitら、Sci. Med. Nov/Dec:42〜50 (1999); Passadorら、Science 260:1127〜1130 (1993); de Kievitら、Infect. Immun. 68:4839〜5862 (2000); Storeyら、Infect. Immun. 66:2521〜2528 (1998); Hassettら、Mol. Microbiol. 34: 1082〜1093 (1999); Pearsonら、Infect. Immun. 68:4331〜4334 (2000); Singhら、Nature 407:762〜764 (2000); Rumbaughら、Infect. Immun. 67:5854〜5862 (1999); Tangら、Infect. Immun. 64:37〜43 (1996); Daviesら、Science 280:295〜298 (1998); Tanら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:715〜720 (1998); Tanら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:2408〜2413 (1999); Sawaら、Infect. Immun. 66:3242〜3249 (1998); Telfordら、Infect. Immun. 66:36〜42 (1998); Salehら、Infect. Immun. 67:5076〜5082 (1999); Wuら、Microbiol. 147:1105〜1113 (2001) ; Silo-Suhら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 99:15699〜15704 (2002); Lespritら、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine epub (2003))、概説としては(Rumbaughら、Microbes and Infection 2:1721〜1731 (2000)を参照されたい)。QS遺伝子の破壊により、マウス、植物、線虫、ショウジョウバエ(Drosophila)、およびハチノスツヅリガ(wax moth)の病原性の研究において結果的に毒性が減少した。例えば、Hamoodらにより、熱傷したマウスモデル(よく利用される哺乳類の病原性モデル)においてlasI、lasR、およびrhlI変異株のインビボ毒性が、完全なQSカスケードを有する野生型菌株と比べて顕著に減少することが明らかにされた(Rumbaughら、Infect. Immun. 67:5854〜5862 (1999))。野生型菌株は感染マウスの94%を殺傷したが、lasR変異株は28%しか殺傷できず、lasIrhlI二重変異株は7%を殺傷しただけであった。lasIrhlI変異株において、構成的に活性なlasIおよびrhlI遺伝子のイントランス(in trans)での発現により、(i) 微生物が熱傷組織内におよび全身的に広がる能力、ならびに(ii) ほぼ野生型の水準(93%)で死をもたらす能力が回復した。Ausubelらは、C.エレガンス(C. elegans)-P.アエルギノーザ病原系を利用して、毒性関連遺伝子を同定し、そしてlasR変異株は、この代理モデル系で顕著に毒性が弱いことを証明した(Tanら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:715〜720 (1998); Tanら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:2408〜2413 (1999); Mahajan-Miklosら、Cell 96:47〜56 (2003))。興味深いことに、QS変異株は、重要な毒性因子の遺伝子が遺伝子破壊された変異株と同じようにふるまう。もし実際にQSが疾患過程に必要とされる毒性因子の発現を制御するならば、これは予測される結果である。興味深いのは、PQS産生の阻害により、LasBエラスターゼ毒性因子の発現低下につながったことであり、QSシステムの破壊により、毒性低下につながることをさらに証明している(Calfeeら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 98:11633〜11637 (2001))。
【0008】
別の重要な発見は、異なる門に及ぶ毒性因子の重複的な役割であった(Rahmeら、Science 268:1899〜1902 (1995); Tanら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:2408〜2413 (1999); Mahajan-Miklosら、Cell 96:47〜56 (2003); Rahmeら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 94:13245〜13250 (1997); Plotnikovaら、Plant Physiol. 124:1766〜1774 (2000))。寄生虫のC.エレガンスで毒性が低下していた同じP.アエルギノーザ変異株は、植物および熱傷したマウスモデルでも毒性が低かった。そのような実験に基づくと、細菌は、全ての宿主の感染症に対し同じ毒性因子、QSに依存的な方法を利用すると推論された。
【0009】
QSが破壊される場合に毒性が低下することについて考えられる説明は、QSの転写活性化因子、つまりLasRおよびRhIRが直接的に、重要な酵素(LasBエラスターゼ、LasAプロテアーゼ、エキソエンザイムS、アルカリプロテアーゼ、およびホスホリパーゼC)をコードする遺伝子の発現および疾患過程の一因となる毒素(ラムノ脂質、外毒素A、シアン化物、およびピオシアニン)を活性化するということである(Rumbaughら、Microbes and Infection 2:1721〜1731 (2000); de Kievitら、Sci. Med. Nov/Dec:42〜50 (1999); Whiteleyら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:13904〜13909 (1999))。QSは同様に、MexAB-OprM多剤排出ポンプの成分(Evansら、J. Bacteriol. 180:5443〜5447 (1998))および活性酸素中間体に対する抵抗性に関与する遺伝子(sodA、sodB、およびkatA) (Hassettら、Mol. Microbiol. 34:1082〜1093 (1999))も調節する。興味深いことに、P.アエルギノーザが複雑で、高度に発達したバイオフィルムを形成する能力は同様に、QSにより制御される。バイオフィルムを形成できない菌株は、感染性が低い。Daviesらにより、lasI変異株は、界面活性剤処理に耐性がない異常な(薄くて、はるかに均一な)バイオフィルムを産生することが示された。しかしながら、外来性AI1が存在する場合には、この変異株は、野生型バイオフィルムのものに類似した平均的な厚さおよび細胞密度の、界面活性剤耐性のバイオフィルを形成する(Daviesら、Science 280:295〜298 (1998))。Singhらは、最近、CF患者の唾液中のP.アエルギノーザが、バイオフィルムの増殖様式で生存していることを証明した。インビトロのバイオフィルムとCFの唾液が、AI1の量に比べてAI2を3倍有する(Singhら、Nature 407:762〜764 (2000))ことを示す直接的な相関関係が得られたことは、rhlシステムが、バイオフィルムの増殖様式で重要な役割を果たすことを関連付けるものであった。Wuらにより、アシル-HCL分子が、マウス肺組織に感染するP.アエルギノーザにより発現されるだけでなく、肺におけるその存在が病理変化の発生と一致することが示され、これらの結果が確認された(Wuら、Microbiol. 146:2481〜2493 (2000))。このことから、バイオフィルムが、CFの肺におけるP.アエルギノーザ感染の慢性かつ難治性の性質の一因となること、およびバイオフィルムの形成がQS依存的であることが強く示唆される。とりわけ注目すべきは、lasRのmRNA量とLasBエラスターゼ、LasAプロテアーゼ、エキソトキシンA、およびおそらくalgD(アルギン酸塩の合成に関与する遺伝子、バイオフィルムマトリックスの主要な成分)のmRNA量との間の直接的な相関関係を見出した、StoreyらによるCF患者の肺から得た唾液の研究である(Storeyら、Infect. Immun. 66:2521〜2528 (1998))。これらの研究から、QSが実際に、ヒト肺の感染症において能動的であるという最初の直接証拠が得られる。しかしながら、QS経路に基づいて、P.アエルギノーザおよびQS病原体に対抗するように設計された薬剤は、同定されていない。
【0010】
ここ数年の間に、P.アエルギノーザ(Passadorら、J. Bacteriol. 178:5995〜6000 (1996); Klineら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:3447〜3452 (1999))、V.フィッシェリ(Schaeferら、J. Bacteriol. 178:2897〜2901 (1996))、およびA.ツメファシエンス(Zhuら、J. Bacteriol. 180:5398〜5405 (1998))のQSシステムのアゴニストおよびアンタゴニスト活性に関連した、合成自己誘導物質類似物質の研究が報告されている。これらの研究では、脂肪族側鎖の長さを変えることにまたは自己誘導物質の3-オキソ官能基を修飾する(3-オキソ基を3-ヒドロキシルまたはメチレン基で置換する)ことに大きな努力が払われた。同系の自己誘導物質の構造に、その構造が密接に関連する類似分子は、弱度から中等度の遺伝子活性化(アゴニスト活性)を示した。場合によっては、類似物質は、標的遺伝子の誘導を弱く阻害した(アンタゴニスト活性)。しかしながら、これらの研究では、有力な合成アンタゴニストを同定できなかった。
【0011】
興味深いことに、オーストラリアの紅藻タマイタダキ(Delisea pulchra)から単離された二次代謝産物は、セラチア・リクファシエンス(Serratia liquefaciens)、V.フィッシェリ、およびエルウィニア・カロトボラ、グラム陰性細菌であってP.アエルギノーザのものに類似のQSシステムを有する全ての細菌において、QSにより制御される遺伝子発現に対して中等度のアンタゴニスト活性を示した(Givskovら、J. Bacteriol. 178:6618〜6622 (1996); Manefieldら、Microbiol. 145:283〜291 (1999); Rasmussenら、Microbiol. 146:3237〜3244 (2000); Manefieldら、FEMS Microbiol. Lett. 205:131〜138 (2001))。これらの天然産物は、S.リクファシエンスのAI2様自己誘導物質のアンタゴニストおよびV.フィッシェリとE.カロトボラの双方の3-オキソ-C6-HSLのアンタゴニストとして作用できる、高ハロゲン化フラノン誘導体である。その構造は、電気的および立体的特徴の点で、HSL自己誘導物質のものとは著しく異なるが、それでもなおHSL自己誘導物質が持つ脂肪族側鎖および5員のラクトン環(しかし完全に共役している)の特徴を共有する。上記の天然に存在するフラノンは、野生型のP.アエルギノーザPAO1ではほとんど不活性であった。2002年、Hentzerらは、PAO-JP2 mini-Tn5-PlasB-gfp(ASV)レポーターシステムを用いて、天然産物のアルキル側鎖がないフラノンがアンタゴニスト活性を示すことを報告した(Hentzerら、Microbiol. 148:87〜102 (2002))。320 μMフラノンを0.1μM AI1と競合させた場合に、およそ50%の阻害が観測された。注目すべきは、Whiteleyらが、AI1対AI2に対するその応答性、およびその応答の度合いおよびタイミングに基づいて、QSプロモーターを4つのクラスに分類したことである(Whiteleyら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:13904〜13909 (1999))。Hentzerの研究で使用されたlasBプロモーターは、十分な誘導には、AI1とAI2の双方を必要とし、AI1単独ではほとんど応答しないクラスIVプロモーターである。さらに、彼らは、低いAI1濃度を使った。
【0012】
本発明は、当技術分野におけるこれらのおよび他の欠陥を克服することに向けられる。
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本発明は、下述の自己誘導物質類似物質のコンビナトリアル・ライブラリーに関する。コンビナトリアル・ライブラリーには、固相(すなわち、ライブラリーのメンバーが固相支持体に結合されている)および液相(すなわち、ライブラリーのメンバーが溶液中に存在している)ライブラリーが含まれる。
【0014】
本発明の他の局面は、以下の構造を有する、自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニストに関する。

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキルならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。
【0015】
本発明の自己誘導物質類似物質を含む組成物も同様に開示され、そしてその組成物は同様に、抗生物質を含むこともできる。
【0016】
本発明の他の局面は、自己誘導物質アゴニストの同定方法に関する。この方法には、以下の構造を有する自己誘導物質類似物質を提供する段階が含まれる

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。自己誘導物質類似物質を自己誘導物質受容体と接触させて、受容体の活性を自己誘導物質類似物質の存在下で測定する。
【0017】
本発明のさらなる局面は、自己誘導物質アンタゴニストの同定方法に関する。この方法には、以下の構造を有する自己誘導物質類似物質を提供する段階が含まれる

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。自己誘導物質類似物質を自己誘導物質受容体および自己誘導物質と接触させ、それにより、自己誘導物質受容体に対する自己誘導物質類似物質と自己誘導物質との競合を起こさせる。その後、自己誘導物質類似物質および自己誘導物質の存在下で、受容体の活性を測定し、そして自己誘導物質のみの存在下での受容体の活性と比較する。
【0018】
本発明の他の局面は、自己誘導物質受容体の活性を調節するための方法に関する。この方法には、自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニストである自己誘導物質類似物質と、自己誘導物質受容体を接触させる段階が含まれる。一つの態様として、自己誘導物質類似物質は、以下の構造を有し、それにより、自己誘導物質受容体の活性が調節される

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。
【0019】
本発明のさらなる局面は、バイオフィルム形成の調節方法に関する。この方法には、生物の細胞を、本明細書に記述される自己誘導物質類似物質と接触させる段階が含まれ、それにより、細胞のバイオフィルム形成が調節される。本発明によれば、自己誘導物質類似物質との接触により、バイオフィルムの形成が阻害され得る、またはバイオフィルムの構造が改変され得る。
【0020】
本発明は同様に、被検体中の生物の増殖または毒性を調節するための方法に関する。この方法には、生物の細胞を、本明細書に記述される自己誘導物質類似物質と接触させる段階が含まれ、それにより、被検体中の生物の増殖または毒性が調節される。
【0021】
本発明の他の局面は、生物の定足数感知機構の阻害方法に関する。この方法には、定足数感知機構を持つ生物の細胞を、本明細書に記述される自己誘導物質類似物質と接触させる段階が含まれ、それにより、生物の定足数感知機構が阻害される。
【0022】
本発明の他の局面は、定足数感知機構を持つ生物により引き起こされた、被検体における感染症の治療方法に関する。この方法には、本明細書に記述される自己誘導物質類似物質および薬学的に許容される担体または希釈剤を含有する組成物の有効量を、被検体に投与する段階が含まれる。
【0023】
本発明によれば、自己誘導物質類似物質のコンビナトリアル・ライブラリーを調製することができる。そのようなライブラリーを使用して、野生型の自己誘導物質分子とその同系の転写調節タンパク質(そのどちらも定足数感知機構の調節に重要な役割を果たしている)との間の相互作用を阻害すると思われる、アンタゴニストを同定することができる。そのアンタゴニストをP.アエルギノーザならびに定足数感知システムを利用する他の生物による感染症に対抗するための、新たな治療法のなかで使用して、多数の毒性因子の産生を調節することおよび保護バイオフィルムを形成することができる。
【0024】
本発明の詳細な説明
本発明は、以下の構造の二つまたはそれ以上の異なる自己誘導物質類似物質を含む、自己誘導物質類似物質のコンビナトリアル・ライブラリーに関する

式中、X1は独立してHおよびOHからなる群より選択され、X2は独立してHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、●は固相支持体であり、ならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、●は固相支持体であり、ならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびに●は固相支持体である; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびに●は固相支持体であり、および式中、Rは、CmH2m(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。R基の側鎖(CmH2m、C(p)、またはC(q))は、飽和および不飽和結合を含んでいてもよく、ならびに置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。適当な置換は、アルキル基に関して以下に全般に記述されている。本発明のこの態様の場合、コンビナトリアル・ライブラリーは固相ライブラリーである。
【0025】
本明細書では、アルキルという用語は、飽和脂肪族炭化水素を指し、直鎖および分枝鎖基を含む。アルキル基は、炭素原子1〜12個を有することが好ましい。アルキル基は、置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。適当な置換基には、以下に限定されることはないが、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリロキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリロキシ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、ニトロ、シリル、およびアミノが含まれる。シクロアルキル基とは、環の一つまたは複数が完全に共役したパイ(pi)-電子系を持たない、炭素の単環基または融合環(すなわち、隣接の原子対を共有する環)基の全てを指す。適当なシクロアルキル基には、以下に限定されることはないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、およびシクロヘプタトリエンが含まれる。シクロアルキル基は、置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。適当な置換基には、上記のアルキル基で述べたものが含まれる。
【0026】
本明細書では、アリール基とは、完全に共役したパイ(pi)-電子系を有する、炭素の単環基または多環式融合環基の全てを指す。アリール基の適当な例には、以下に限定されることはないが、フェニル、ベンジル、ベンゾイル、ナフタレニル、およびアントラセニルが含まれる。アリール基は、置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。適当な置換基には、以下に限定されることはないが、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリロキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリロキシ、シアノ、ニトロ、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、スルフィニル、スルホニル、アミノ、ハロゲン、およびトリハロメチル(triohalomethyl)が含まれる。
【0027】
本明細書では、ヘテロアリール基とは、環/環(複数)の中に一つまたは複数のヘテロ原子、例えば、硫黄、窒素、および酸素を有し、さらに、完全に共役したパイ(pi)-電子系を有する、単環基または融合環基を指す。適当なヘテロアリール基には、以下に限定されることはないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、プリン、およびカルバゾールが含まれる。ヘテロアリール基は、置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。適当な置換基には、以下に限定されることはないが、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリロキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリロキシ、シアノ、ニトロ、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、スルフィニル、スルホニル、アミノ、ハロゲン、およびトリハロメチル(triohalomethyl)が含まれる。
【0028】
本明細書では、ヘテロ脂環式基(またはヘテロシクロアルキル)とは、環/環(複数)の中に一つまたは複数のヘテロ原子、例えば、硫黄、窒素、および酸素を有する、単環基または融合環基を指す。環には一つまたは複数の二重結合があってもよい。しかしながら、環には完全に共役したパイ(pi)-電子系がない。ヘテロ脂環式基は、置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。適当な置換基には、以下に限定されることはないが、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリロキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリロキシ、シアノ、ニトロ、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、スルフィニル、スルホニル、アミノ、ハロゲン、およびトリハロメチル(triohalomethyl)が含まれる。
【0029】
本発明の第二の態様は、以下の構造の二つまたはそれ以上の異なる自己誘導物質類似物質を含む、コンビナトリアル・ライブラリーに関する

式中、X1は独立してHおよびOHからなる群より選択され、X2は独立してHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、nは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、nは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。従って、本発明のこの態様の場合、コンビナトリアル・ライブラリーは液相ライブラリーである。
【0030】
本明細書では、自己誘導物質は、生物の定足数感知経路の自己誘導物質シンターゼ遺伝子(例えば、I遺伝子)によりコードされる分子である。図1A〜Bは、P.アエルギノーザの定足数感知経路ならびにI遺伝子LasIおよびRhlIによる、2つの自己誘導物質分子、つまりAI1およびAI2の産生を示す。本明細書では、「コンビナトリアル・ライブラリー」とは、意図的に作製された異なる分子の集団であって、これは、下記の技術またはその他の方法により作製可能とされ、さまざまな形式(例えば、可溶性分子のライブラリーまたは固相支持体に付着された化合物のライブラリー)で活性のスクリーニングが可能とされる。「コンビナトリアル・ライブラリー」には、共通の開始構造に基づいた、連続および/または同時並行ラウンドの化学合成が含まれる。コンビナトリアル・ライブラリーは、さまざまなアッセイ、例えば、下述のアッセイのほか生物または化学活性を評価するのに有用な他のアッセイでスクリーニングすることができる。コンビナトリアル・ライブラリーは、一般に少なくとも一つの活性化合物を有するものと思われ、そして一般に各化合物が等モル量となるように調製される。従って、本発明の一つの態様として、コンビナトリアル・ライブラリーには、自己誘導物質アゴニストまたは自己誘導物質アンタゴニストとして活性な化合物が少なくとも一つ含まれる。意図的に作製された集団にはない、先行技術で開示されている化合物は、本発明の「コンビナトリアル・ライブラリー」の一部ではない。さらに、意図的でないまたは好ましくない混合物の一部である化合物は、本発明の「コンビナトリアル・ライブラリー」の一部ではない。
【0031】
本発明によるコンビナトリアル・ライブラリーには、かなり多くの異なる自己誘導物質類似物質が含まれ得る。本明細書では、ある自己誘導物質類似物質に、他の自己誘導物質類似物質に存在しないR基、X1基、X2基、もしくはX3基または他の自己誘導物質類似物質と異なるn値が含まれる場合、自己誘導物質類似物質は異なる。一つの態様として、コンビナトリアル・ライブラリーには、少なくとも約1,000〜10,000個の異なる自己誘導物質類似物質が含まれる。
【0032】
本発明の自己誘導物質類似物質のコンビナトリアル・ライブラリーには、定足数感知経路を有する任意の生物に対する自己誘導物質類似物質が含まれる。そのような生物には、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌が含まれる。適当な例には、以下に限定されることはないが、シュードモナス・アエルギノーザ、エロモナス・ハイドロフィリア、エロモナス・サルモニシダ、エルシニア・シュードツベロクローシス、ヘリコバクター・ピロリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ビブリオ・フィッシェリ、ビブリオ・ハーベイ、エルウィニア・カロトボラ、リゾビウム・レグミノサルム、ロドバクター・スフェロイデス、および大腸菌が含まれる。一つの態様として、本発明のコンビナトリアル・ライブラリーには、シュードモナス・アエルギノーザに対する自己誘導物質類似物質が含まれる。
【0033】
本発明によれば、コンビナトリアル・ライブラリーの合成は、手動でまたは自動工程の利用により行うことができる。手動合成の場合、化学操作は、科学者または技術者により行われるものと思われる。自動合成の場合、化学操作は通常、ロボット的に行われる。そのような技術の選択および遂行は、コンビナトリアル・ライブラリーに関する当業者の技術の範囲内であり、本明細書で詳細に論じられることはない。
【0034】
本明細書で詳細に記述されるように、本発明の自己誘導物質類似物質のコンビナトリアル・ライブラリーの合成は、固体支持体で行うことができる。本明細書では、固体支持体は、化学分子が標準的な化学的手法を介して担体の表面に付着され得るように適当に誘導体化された不溶性の担体である。適当な固体支持体には、以下に限定されることはないが、ビーズおよび粒子が含まれる。固体支持体は、合成法を通じて官能化され得る多くの異なる素材を含むことができる、または初めから適当な官能基を含むことができる。そのような素材の例には、以下に限定されることはないが、ポリマー、プラスチック、樹脂、ポリサッカライド、シリコンまたはシリカベースの素材、カーボン、金属、無機ガラス、および膜が含まれる。一つの態様として、固体支持体は、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-2-イルメトキシメチルポリスチレン(DHP樹脂)である。その他の好ましい固体支持体には、ヒドロキシル基の結合を可能とするものが含まれる。
【0035】
前述のように、固体支持体は、既に存在する適当な官能性を有する状態で提供され得る、または固体支持体は、所望の化学分子が固体表面に結合するように化学的に修飾され得る。化学分子を固体支持体に結合させるのに利用される官能性の選択は、結合される分子の性質および固体支持体の種類に依存するものと思われる。化学分子を固体支持体に結合させるのに利用される固体支持体の適当な官能性の例には、以下に限定されることはないが、アルキルまたはアリールハライド、アルデヒド、アルコール、ケトン、アミン、硫化物、カルボキシル基、アルデヒド基、およびスルホニル基が含まれる。本発明における固体支持体の官能基は、アルコールであることが好ましい。
【0036】
固体支持体にある種の分子を結合させる場合、結合工程に関与しない官能性のマスキングが必要となる可能性がある。マスキングまたは保護基の利用戦略は、当技術分野においてよく知られており、本明細書では詳細に記述しない。
【0037】
本発明による自己誘導物質類似物質のコンビナトリアル・ライブラリーを構築するための大まかな合成戦略は、図2および3に示されている。当然のことながら、本明細書に記述される化合物は単なる例示に過ぎず、他の基を使用することができる(例えば、合成法を変えることなく、異なる長さのアルキル側鎖を使用することができる)。特に、図2に関して、上に記載のR基(この場合、3-オキソ-C12側鎖)を固相上に固定化して、各種のアミンおよびアルコールとのカップリングを並行して行った。より具体的には、3,3-エチレンジオキソ-13-ヒドロキシ-トリデカン酸エチル(2)を3段階手順により液相で合成した。その後、DHP樹脂へのこの分子の結合(3)およびエステル部分のオン・レジン(on-resin)加水分解(4)を行った。異なる構造特性を有するアミンおよびアルコールの同時カップリングを、96ウェル反応ブロックにて行った。適当なアミンおよびアルコールが図4に記載されているが、しかしながら、このリストは単なる代表例に過ぎない。上述のコンビナトリアル・ライブラリーを作製するのに適した任意の分子を使用することができる。95% TFAで処理して、生成物を樹脂から切り出し、これによって同時にケタール保護基を取り除く。その後、個々の生成物を、例えば、96ディープウェルプレートの中に回収し、乾燥させ、その後、第3級アルキルアミン樹脂に通して、残るTFAを除去する。
【0038】
図3に関して、別の合成スキームが記載されている。図2に記載の手順の場合、3-ケト保護基(環状ケタール)の保護および脱保護ステップが含まれる。
対照的に、図3に示される手順の場合、そのようなステップは必要とされず、従って、合成法が短縮される。
【0039】
3-オキソ基がない分子の合成は、異なる出発物質(さらなる炭素原子を有する)を用い、図3のステップ(d)および(e)の方法および試薬を図2の(f)のものと置き換えて、図3に示されるような類似方法で行うことができる。残りの手順は、図3の手順と同じである。
【0040】
従って、本発明の一つの態様として、自己誘導物質類似物質のライブラリーは、固体支持体に結合される。本発明の別の態様として、自己誘導物質類似物質のライブラリーは、固体支持体から切り出される。可溶性化学ライブラリーをもたらす固体支持体からの化合物の切り出しは、上述の、加水分解を含む種々の方法、ならびに植物溶解性(phytolytic)切断、求核攻撃、およびルイス酸触媒による加水分解を利用して行うことができる。または、当技術分野において知られているように、コンビナトリアル・ライブラリーの液相合成のための方法を利用することができる(Edwardsら、Curr. Opin. Drug Discov. Devel. 5(4):594〜605 (2002)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。本発明の固体支持体によるライブラリーおよび液相ライブラリーは、例えば、自己誘導物質アゴニストおよびアンタゴニストを同定するための下記のアッセイで使用することができる。
【0041】
本発明の別の態様として、位置スキャニング・コンビナトリアル法を利用して、本発明のコンビナトリアル・ライブラリーを作製する。そのような方法は一般に、当技術分野において知られている。特に、この態様において、例えば、図2または3の合成スキームを用いて作製されたライブラリーを用いて同定された構造モチーフ(例えば、アミンまたはアルコール基)が、所望の活性(例えば、アゴニストまたはアンタゴニスト活性)を有することが確認されたら、この情報に基づいて、第二世代のライブラリーを構築する。この第二世代のライブラリーでは、所望の活性を示すことが前に確認された構造モチーフ(アミン基またはアルコール基)を保持したまま、類似分子の異なる部分(例えば、図2の構造(6)に示されるアルキル側鎖および/または3-オキソアミド基)を幅広く、異なる構造要素に変化させる。その後、新たなライブラリー(およびさらなるライブラリー)を、活性の増加を目的にスクリーニングすることができる。試験する化合物の数は、作製した全てのライブラリーのなかで、変化させた構造要素の数の生成物である。
【0042】
本発明により生成された自己誘導物質類似物質は、野生型自己誘導物質と合わせてまたはその代わりに作用させることにより、細菌増殖を促進させるようにして使用することができる(すなわち、自己誘導物質アゴニスト)。または、自己誘導物質類似物質は、定足数感知経路の野生型自己誘導物質と競合させることにより、野生型自己誘導物質を阻害することができる(すなわち、自己誘導物質アンタゴニスト)。
【0043】
従って、本発明は同様に、以下の構造を有する自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニストに関する

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、nは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。一つの態様として、nは1〜4である。
【0044】
本発明の好ましい自己誘導物質アゴニストは、図5Bに示されており、以下の実施例で詳細に記述される。本発明の好ましい自己誘導物質アンタゴニストは、図6に示されており、以下の実施例で詳細に記述される。以下に詳細に記述されるように、本発明の自己誘導物質アンタゴニストを使用して、定足数感知機構を有する生物の病原性を弱めることができる(図7も参照されたい)。さらに好ましい自己誘導物質アゴニストおよびアンタゴニストは、図18に記載されており、以下の実施例11で記述される。本明細書に記述されるように、一つの態様として、アゴニストおよびアンタゴニストは、R側鎖に連結するアミノ基に隣接した水素結合のドナーまたはアクセプターを有する。
【0045】
本発明により同定された自己誘導物質類似物質(例えば、自己誘導物質アゴニストおよびアンタゴニスト)は、一つまたは複数の自己誘導物質類似物質を含む組成物として使用することができる。一つの態様として、組成物にはまた、抗生物質も含まれる。適当な抗生物質には、サルファ剤、抗尿路薬、β-ラクタム抗生物質、キノロン、セファロスポリン、クラブラン酸誘導体、アミノグリコシド、カルバペネム、テトラサイクリンおよび関連する抗菌剤、マクロライド、抗結核薬、抗トリ結核菌薬、抗ハンセン病薬、抗真菌薬および抗ウイルス薬のような細菌薬および静菌剤(bacteristatic agent)が含まれる。この態様の場合、自己誘導物質類似物質は、自己誘導物質アンタゴニストであることが好ましい。自己誘導物質アンタゴニストは、約10 ng/L〜約10 mg/Lの量で組成物中に存在していてもよく、抗生物質は、約10 ng/L〜約10 mg/Lの量で組成物中に存在していてもよいが、しかし、任意の所望の量の自己誘導物質アンタゴニストまたは抗生物質を使用することができる。
【0046】
そのような組成物は、定足数感知経路を有する生物の増殖阻害に有用である。その用途の一例は、経皮的および患者体内への埋め込みの双方で使用される医療機器中である。そのような医療機器は、一般に細菌感染に対し中心的な役割を果たす。従って、非侵襲的なまたは侵襲的な医療処置に使われる医療機器にて、本発明の自己誘導物質類似物質および組成物を使用して、定足数感知経路を有する生物の増殖を阻害することができる。そのような医療機器には、以下に限定されることはないが、カテーテル、ペースメーカー、代用血管、血管ステント、透析膜、心臓バルブ、手術器具、血液バッグ、縫合糸、人工器官、歯科機器、および人工臓器が含まれる。
【0047】
自己誘導物質類似物質および組成物は、医療機器の構造内部に組み入れる(例えば、医療機器の外層内に化学的に組み入れる)ことができる、または医療機器表面のコーティングとして供与することができる。本発明の自己誘導物質類似物質および組成物を医療機器の内部に組み入れるのに適した方法は、使用する特定の自己誘導物質類似物質/組成物および使用する医療機器に依存する。医療機器の素地表面にコーティングを施すのに適した方法は、当技術分野においてよく知られており、本明細書で詳細に論じられることはない。
【0048】
医療機器には、その他の所望の化合物、例えば、抗生物質、鎮痛剤、抗凝固剤、抗炎症性化合物、抗菌剤組成物、ビタミン、ミネラル、および同様のものがさらに補充されてもよい。
【0049】
ヒト(または他の哺乳類)組織と接触する任意の製品または機器、例えば、歯ブラシまたは糸ようじにて、自己誘導物質類似物質および組成物を同様に使用して、定足数感知経路を有する生物の増殖を阻害することができる。
【0050】
さらに、本発明の自己誘導物質類似物質および組成物を同様に、免疫抑制剤として使用することもできる(Telfordら、Infect. Immun. 66(1):36〜42 (1998)を参照されたい、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
【0051】
本発明の他の局面は、自己誘導物質アゴニストの同定方法に関する。この方法には、以下の構造を有する、自己誘導物質類似物質を提供する段階が含まれる

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。一つの態様として、nは1〜4である。自己誘導物質類似物質を自己誘導物質受容体と接触させて、受容体の活性を自己誘導物質類似物質の存在下で測定する。自己誘導物質類似物質は、上述の、コンビナトリアル・ライブラリーの一部として提供され得る。
【0052】
好ましい態様として、自己誘導物質類似物質は、いずれかの自己誘導物質シンターゼ遺伝子の破壊により、一つまたは複数の天然型自己誘導物質を産生する能力がない微生物菌株を用いて同定される。従って、そのような菌株での自己誘導物質受容体の活性化は、外来性自己誘導物質の添加に依存する。そのような菌株には、以下に限定されることはないが、P.アエルギノーザPAO-JP2および大腸菌MG4 (pKDT37)が含まれる。
【0053】
受容体の活性は、いずれかの適当なレポーターアッセイにより測定することができる。特に、レポーターを、当技術分野において知られるような上記の菌株に組み込むことができ、その結果、その菌株は自己誘導物質または自己誘導物質アゴニストの存在下でシグナル(例えば、発光または酵素活性)を与えることができる。適当なレポーターには、以下に限定されることはないが、gfpおよびlacZ(遺伝子)が含まれる。自己誘導物質類似物質の存在下での受容体の活性を、他の自己誘導物質アゴニストまたは自己誘導物質それ自体の周知の活性と比較することができる。
【0054】
本発明のさらなる局面は、自己誘導物質アンタゴニストの同定方法に関する。この方法には、以下の構造を有する、自己誘導物質類似物質を提供する段階が含まれる

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。一つの態様として、nは1〜4である。自己誘導物質類似物質を自己誘導物質受容体および自己誘導物質と接触させ、それにより、自己誘導物質受容体に対する自己誘導物質類似物質と自己誘導物質との競合を起こさせる。その後、自己誘導物質類似物質および自己誘導物質の存在下で、受容体の活性を測定し、そして自己誘導物質のみの存在下での受容体の活性と比較する。本発明のこの方法で利用するのに適したレポーターアッセイは、上に記述されている。自己誘導物質類似物質は、上述の、コンビナトリアル・ライブラリーの一部として提供され得る。
【0055】
本発明の他の局面は、自己誘導物質受容体の活性を調節するための方法に関する。この方法には、自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニストである自己誘導物質類似物質と、自己誘導物質受容体を接触させる段階が含まれる。一つの態様として、自己誘導物質類似物質は、自己誘導物質-1(AI1)アゴニストまたはアンタゴニスト化合物である。他の態様として、自己誘導物質類似物質は、自己誘導物質-2(AI2)アゴニストまたはアンタゴニスト化合物である。さらなる態様として、自己誘導物質類似物質は、以下の構造を有し、それにより、受容体の活性が調節される

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。一つの態様として、nは1〜4である。
【0056】
本発明の一つの態様として、自己誘導物質受容体は、前述のように、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌(これは、宿主体内に存在してもまたは存在していなくてもよい)に見出される。本発明の別の態様として、自己誘導物質受容体は、P.アエルギノーザのLasR、LasI、RhlR、またはRhlIである。しかしながら、他の適当な受容体には、以下に限定されることはないが、LuxRおよびLuxI(V.フィッシェリの)、ならびに全てのLuxRおよびLuxI相同体(例えば、LuxPおよびLuxQ) (例えば、Millerら、Annu. Rev. Microbiol. 55:165〜199 (2001); Dunnyら、「Cell-to Cell Signaling in Bacteria」、American Society for Microbiology, Washington D.C. (1999)を参照されたい、これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)が含まれる。本明細書では、調節には、受容体の活性化または受容体の阻害が含まれ得る。
【0057】
本発明のさらなる局面は、バイオフィルム形成の調節方法に関する。この方法には、生物の細胞を、自己誘導物質受容体の調節方法に関して上述した自己誘導物質類似物質と接触させる段階が含まれ、それにより、細胞のバイオフィルム形成が調節される。本発明の一つの態様として、バイオフィルム形成が阻害される。本発明の別の態様として、バイオフィルムの構造が自己誘導物質類似物質との接触により改変される。前述のように、バイオフィルムは、抗生物質ならびに宿主の体液性および細胞媒介性反応の双方から細菌を保護する、複雑で、ポリサッカライドが沈着した微小なニッチである。従って、バイオフィルム形成の阻害またはバイオフィルムの変質により、結果的に感染性が低い細菌種とすることができ、その細菌種は、抗生物質および宿主防御にとって、たやすい標的になるものと思われる。
【0058】
本発明は同様に、被検体中の生物の増殖または毒性を調節するための方法に関する。この方法には、生物の細胞を、自己誘導物質受容体の調節方法に関して上述した自己誘導物質類似物質と接触させる段階が含まれ、それにより、生物の増殖または毒性が調節される。前述のように、本発明の自己誘導物質類似物質を、野生型自己誘導物質と合わせてまたはその代わりに作用させることにより、生物(例えば、細菌)の増殖を促進させるようにして(すなわち、自己誘導物質アゴニスト)、または野生型自己誘導物質と競合させることにより、生物(例えば、細菌)の増殖を阻害させるようにして(すなわち、自己誘導物質アンタゴニスト)使用することができる。さらに、本発明の自己誘導物質類似物質は、生物が分泌した定足数感知分子(自己誘導物質)とその同系の転写調節タンパク質との間の相互作用の阻害を介して病原体を抑制することができ、それにより、毒性因子の産生を阻害することができる(図1および以下の実施例の記述を参照されたい)。
【0059】
本発明の別の局面は、生物の定足数感知機構の阻害方法に関する。この方法には、定足数感知機構を持つ生物の細胞を、自己誘導物質受容体の調節方法に関して上述した自己誘導物質類似物質と接触させる段階が含まれ、それにより、生物の定足数感知機構が阻害される。
【0060】
前述の自己誘導物質類似物質および組成物は同様に、自己誘導物質類似物質または自己誘導物質類似物質を含有する組成物の有効量を被検体に投与することにより、定足数感知機構を持つ生物により引き起こされた、被検体の感染症を治療する際にも有用である。自己誘導物質類似物質または組成物は、例えば、毒性因子、例えば、エラスターゼA、エラスターゼB、外毒素A、ピオベルジン、ピオシアニン、およびPCT国際公開公報第01/85664号(これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)に記述されているもののような他の毒性因子の転写活性化を抑制することができる。さらに、自己誘導物質類似物質または組成物は、例えば、定足数感知機構を持つ生物に対し、バイオフィルム形成を阻害するもしくはバイオフィルムの構造を改変することができる、および/または定足数感知機構を持つ生物を、例えば、NOによる自殺機構により殺傷することができる。従って、本発明のこの方法は、定足数感知機構を持つ生物により感染され得る任意の被検体、例えば、哺乳類および植物、特に、ヒトを治療するのに有用である。自己誘導物質類似物質は、単独で、または適当な薬学的担体もしくは希釈剤と組み合わせて投与することができる。希釈剤または担体成分は、自己誘導物質類似物質または組成物の治療効果を低下させないように選択する必要がある。適当な薬学的組成物には、薬学的担体および、例えば、本明細書に記載の、一つまたは複数の自己誘導物質類似物質を含有するものが含まれる。
【0061】
本明細書の自己誘導物質類似物質および組成物は、所望の用途; 例えば、経口、非経口、または局所投与に適したいずれかの適当な形とすることができる。非経口投与の例は、脳室内、大脳内、筋肉内、静脈内、腹腔内、直腸、および皮下投与である。好ましい投与経路は、静脈内である。自己誘導物質類似物質または組成物が局所的にまたは非経口的に投与される場合、それらは予め加水分解されることが好ましい。
【0062】
経口使用に適した剤形には、錠剤、分散性粉剤、粒剤、カプセル剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。錠剤用の不活性の希釈剤および担体には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、およびタルクが含まれる。錠剤には同様に、造粒剤および崩壊剤、例えば、澱粉およびアルギン酸; 結合剤、例えば、澱粉、ゼラチン、およびアカシア; ならびに平滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルクを含むことができる。錠剤は、コーティングされていなくとも、または崩壊および吸収を遅らせるように周知の方法によりコーティングされていてもよい。カプセル剤で使用できる不活性の希釈剤および担体には、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、およびカオリンが含まれる。懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤には、従来の賦形剤、例えば、メチルセルロース、トラガカント、アルギン酸ナトリウム; 湿潤剤、例えば、レシチンおよびステアリン酸ポリオキシエチレン; ならびに保存剤、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチルを含むことができる。非経口投与に適した剤形には、溶剤、懸濁剤、分散剤、乳剤および同様のものが含まれる。これらは同様に、 使用直前に無菌注射媒体に溶解または懸濁され得る、無菌の固体組成物の形で製造することもできる。これらは、当技術分野において周知の懸濁化剤または分散剤を含むことができる。
【0063】
経口投与の場合、固体または液体単位の剤形を調製することができる。固体組成物、例えば、錠剤を調製する場合、上記に開示されるような、適当な自己誘導物質類似物質または組成物を、従来の成分、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、硫酸カルシウム、澱粉、乳糖、アカシア、メチルセルロース、および薬学的希釈剤または担体として機能的に類似の材料と混合する。カプセル剤は、開示の自己誘導物質類似物質または組成物を、不活性な薬学的希釈剤と混合して、この混合液を適当なサイズの硬質ゼラチンカプセル剤の中に注入することにより調製される。軟質ゼラチンカプセル剤は、自己誘導物質類似物質または組成物の懸濁液を、許容される植物油、軽流動パラフィン、または他の不活性油で機械的にカプセル封入して調製される。
【0064】
経口投与用の液体単位の剤形、例えば、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁剤を調製することができる。水溶性剤を水性媒体に、砂糖、芳香性着香料、および保存剤とともに溶解させて、シロップ剤を形成させることができる。エリキシル剤は、芳香性着香料とともに、砂糖およびサッカリンのような適当な甘味料を加えた水性アルコール(エタノール)媒体を用いて調製される。懸濁剤は、アカシア、トラガカント、メチルセルロースなどのような懸濁化剤を活用してシロップ媒体で調製することができる。
【0065】
非経口投与の場合、液体単位の剤形は、前述の自己誘導物質類似物質または組成物および無菌媒体(水が好ましい)を用いて調製される。自己誘導物質類似物質または組成物は、使用する媒体および濃度に応じて、媒体に懸濁させるかまたは溶解させることができる。溶液を調製する際、自己誘導物質類似物質または組成物は、適当なバイアルまたはアンプルに注入して、密閉する前に、注射用蒸留水に溶解させて、ろ過滅菌することができる。アジュバント、例えば、局部麻酔薬、保存剤、および緩衝剤を媒体に溶解させることが有利である。安定性を高めるため、液体単位の剤形は、バイアルへ注入した後に凍結させることができ、そして水を真空下で除去することができる。その後、バイアル中の凍結乾燥粉末を密閉し、そして使用前に、添付バイアルの注射用蒸留水を供給して、再構成する。非経口懸濁剤は、自己誘導物質類似物質または組成物を媒体に、溶解させる代わりに懸濁させるので、滅菌をろ過により行えないこと以外は、実質的に同じ方法で調製される。自己誘導物質類似物質または組成物は、無菌媒体に懸濁させる前に、エチレンオキシドにさらすことで滅菌することができる。界面活性剤または湿潤剤を非経口懸濁剤のなかに含有させて、自己誘導物質類似物質または組成物の均等分布を促すことが有利である。
【0066】
適当な1日の投与量は、抗生物質(例えば、カルバペネム)の適当な用量を基礎とすることができる。通常、適当な日用量は、自己誘導物質類似物質または組成物およそ10 ng/mL〜およそ10 mg/mLである(例えば、ヒトの場合には総量およそ300 mg)。または、自己誘導物質類似物質または組成物は、食料品に入れて経口投与することができる。
【0067】
あるいは、自己誘導物質類似物質または組成物は、徐放性製剤の中に組み入れる、および従来法により外科的に埋め込むことができる。適当な徐放性マトリックスには、エチレン酢酸ビニルおよび他の生体適合性ポリマーで作られたものが含まれる。
【0068】
局所投与の場合、前述の自己誘導物質類似物質または組成物を含有する、リン脂質媒体のような担体は、皮膚を通して取り込みを促進させることができる。
【0069】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。
【0070】
実施例
実施例1--ライブラリー合成
以前に報告されている研究の場合、自己誘導物質類似物質は、個別に合成され、主にAI1のアルコール側鎖で修飾されていた(Passadorら、J. Bacteriol. 178 :5995〜6000 (1996); Klineら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:3447〜3452 (1999)、これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。これらの試みにより、活性に対する側鎖の重要性が明らかとされたが、有力なアンタゴニストは発見されなかった。いっぽう、HSL部分を改変する研究はほとんどなされなかった。唯一重要な発見は、ホモシステインチオラクトンとのHSLの置換がAI1と同程度に活性であるのに対し、対応するラクタムがQS活性をほとんど持たないことであった(Passadorら、J. Bacteriol. 178:5995〜6000 (1996)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。同様に、有力なアンタゴニストは発見されなかった。
【0071】
このため、HSL部位に種々の置換基を有する96種の異なる自己誘導物質類似物質が、図2に示されるようにおよび下記のように合成された。
【0072】
一般合成法
3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-2-イルメトキシメチルポリスチレン(DHP樹脂)は、Novabiochem (Laufelfingen, SWI)から購入した。その他全ての化学物質は、Sigma-Aldrich (Milwaukee, WI)またはAcrosから購入した。溶媒は全て無水グレードとするか、または使用前に蒸留した。反応は全て、水を含む反応以外は、オーブンで乾燥したガラス製品中で、アルゴン雰囲気下にて行った。全ての生成物に対し、無水MgS04を乾燥剤として使用した。分析用薄層クロマトグラフィーは、EM試薬の0.25 mmシリカゲル60Fプレートにて行った。フラッシュクロマトグラフィーは、EMシリカゲル60(230〜400メッシュ)を用いて行った。パラレル合成は、Robbins Scientific社(Sunnyvale, CA)の反応ブロックを用いて行った。マススペクトルは、Finnigan MAT95 XL分光計(San Jose, CA)にて記録した。NMRスペクトルは、Varian Gemini 300、Inova 400、またはInova 500 MHz分光計(Palo Alto, CA)にてとった。1H化学シフトは、テトラメチルシラン(0.00 ppm)を基準とした。13C化学シフトは、CDCl3 (77.0 ppm)を基準とした。IRスペクトルは、Perkin-Elmer 1760赤外分光計(Shelton, CT)にて記録した。AI1(Pearsonら、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 91:197〜201 (1994)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)およびAI2(Eberhardら、Arch. Microbiol. 146:35〜40 (1986)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)は、文献の手順に従って合成した。
【0073】
鋳型分子の合成: 3-オキソ-12-トリデセン酸エチル(1)
10-ウンデセン酸(undecenoic acid)(5.055 mL、25 mmol)のCH2Cl2(50 mL)撹拌溶液に(COCl)2 (4.364 mL、50 mmol)をゆっくり加えた。この混合液を室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、10-ウンデセノイルクロリド(undecenoyl chloride)(25 mmol)を得た。この生成物をさらに精製することなく次の反応に使用した。

【0074】
マロン酸モノエチル(5.3 g、40 mmol)の無水THF(150 mL)撹拌溶液をアルゴン雰囲気下で-78℃まで冷却し、n-BuLi(2.5 M、32 mL、80 mmol)を気密性の注射器により滴下した。添加後、温度を0℃まで上昇させて、撹拌を1時間継続して行った。その後、反応混合液を-78℃まで再冷却し、10-ウンデセノイルクロリド(25 mmol)を気密性の注射器により滴下した。この混合液を-78℃で1時間、0℃で30分間、および室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル50 mLに再溶解した。この溶液を1 M HCl(100 mL)、飽和NaHCO3水溶液(50 mL)、および塩水(50 mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、そして濃縮して、(1) (6.270 g)を得た。この粗生成物をさらに精製することなく次の反応に使用した。

【0075】
3,3-エチレンジオキソ-13-ヒドロキシ-トリデカン酸エチル(2)
(1) (6.270 g、約24.7 mmol)、エチレングリコール(13.67 mL、247 mmol)および触媒量のパラ-トルエンスルホン酸(p-TsOH) (475 mg、2.5 mmol)のベンゼン(120 mL)混合液をアルゴン雰囲気下、110℃で一晩還流した。溶媒を除去し、残留物を酢酸エチル50 mLで希釈した。この溶液を飽和NaHCO3水溶液(50 mL)および塩水(50 mL)で洗浄し、有機層を乾燥し(MgSO4)そして濃縮して、3,3-エチレンジオキソ-12-トリデセン酸(tridecenoate)エチル(6.973 g)を得た。この粗生成物をさらに精製することなく次の反応に使用した。

【0076】
3,3-エチレンジオキソ-12-トリデセン酸エチル(6.973 g、約23.4 mmol)の無水THF(100 mL)撹拌溶液をアルゴン雰囲気下で0℃まで冷却した。BH3・THF(1 M、117 mL、117 mmol)を気密性の注射器により滴下した。この混合液を0℃で3時間撹拌した。その後、NaHCO3水溶液(2M、70 mL、140 mmol)および30% H2O2(4.375 mL、140 mmol)を反応液にゆっくりと加え、混合液を室温で1.5時間撹拌した。有機溶媒を減圧下で蒸発させて、残留物を酢酸エチル(2×100 mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、次いでMgSO4で乾燥しそして濃縮した。この残留物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製(ヘキサン/EtOAc 2:1、Rf=0.21)し、無色の液体として(2) (3.00 g、9.5 mmol)を得た。

上記3ステップの全収率は38%であった。全分子の1H NMRデータは、アシル鎖の末端に新たに導入された官能性(オレフィンまたはヒドロキシル基)を除いて、文献データ(Pearsonら、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 91:197〜201 (1994)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)と一致していた。
【0077】
固相反応
DHP樹脂(0.98 mmol/g、5.1 g、5 mmol)をCH2Cl2 50 mLに1時間浸した。その後、(2) (2.3 g、7.28 mmol)およびピリジニウムパラ-トルエンスルホン酸(PPTS) (1.83 g、7.29 mmol)を加えた。混合液を室温で27時間穏やかに撹拌した。この樹脂を過剰量のCH2Cl2で洗浄し、真空下で乾燥して、(3)を得た。
【0078】
(3) (約5 mmol)およびLiOH・H2O(21 g、500 mmol)のTHF/H2O (1:1) 100 mL混合液を穏やかに撹拌し、75℃で20時間加熱した。樹脂を過剰量の水、THF、およびCH2Cl2で連続的に洗浄し、真空下で乾燥して、(4)を得た。
【0079】
分子96種(図4)との(4)の同時カップリングは、96ウェル反応ブロックにて、以下の化合物を各ウェルに混合することにより行った: (4) (約0.05 mmol)、アミン/アルコール(0.5 mmol)、EDC(0.5 mmol)、DMAP(0.5 mmol)、iPr2NEt(0.5 mmol)、DMF(1.5 mL)。反応ブロックを組み立て、端から端まで室温で70時間回転させて、カップリング生成物(5)を得た。
【0080】
DHP樹脂、中間体(3)および(4)、ならびに一部の代表的なカップリング生成物(5a〜d)をオン・レジン(on-resin) FT-IRにより特徴付けた(図8)。いずれの場合にも、少量の乾燥樹脂(1〜2 mg)を無水KBr(75 mg)と混合して、固形試料を調製し、FT-IR分光を記録した。
DHP樹脂。

(樹脂結合)3,3-エチレンジオキソ-13-(テトラヒドロピラニル)オキシ-トリデカン酸エチル(3)。

(樹脂結合)3,3-エチレンジオキソ-13-(テトラヒドロピラニル)オキシ-トリデカン酸リチウム(4)。

(樹脂結合)N-(13-テトラヒドロピラニルオキシ-3,3-エチレンジオキソ-トリデカノイル)-L-ホモセリンラクトン(5a)。

(樹脂結合)2-(13-テトラヒドロピラニルオキシ-3,3-エチレンジオキソ-トリデカノイル)-1,3,4-チアジアゾール(5b)。

(樹脂結合)2-(13-テトラヒドロピラニルオキシ-3,3-エチレンジオキソ-トリデカノイル)-フェノール(5c)。

(樹脂結合)3-(13-テトラヒドロピラニルオキシ-3,3-エチレンジオキソ-トリデカノイル)-2,6-ジメトキシピリジン(5d)。

【0081】
カップリング反応後、反応ブロックを取り外して、真空ラインに連結した。樹脂を大量のDMFおよびCH2Cl2で洗浄し、過剰な反応物質、カップリング試薬、および望ましくない副生成物を除去した。一晩真空にして、樹脂を乾燥させた。TFA/H2O (95:5) 1 mLを各ウェルに加え、そして反応ブロックを組み立て、室温で30分間回転させた。切断生成物(6)を96ディープウェルプレートに回収した。CH2Cl2 1 mLを各樹脂に加えて、生成物を回収プレートに洗い落とした。溶媒を送水ポンプで脱水し、生成物を真空下で乾燥させた。4種の生成物(6a〜d、下記を参照されたい)を任意に選択し、1H NMRおよびFABマススペクトルにより特徴付けて、所望の生成物の形成を確認した。
N-(13-トリフルオロアセトキシ-3-オキソ-トリデカノイル)-L-ホモセリンラクトン(6a)。収率51%で9.9 mgが得られた。

2-(13-トリフルオロアセトキシ-3-オキソ-トリデカンアミド)-1,3,4-チアジアゾール(6b)。収率67%で13.1 mgが得られた。

2-(13-トリフルオロアセトキシ-3-オキソ-トリデカンアミド)-フェノール(6c)。収率52%で10.4 mgが得られた。

3-(13-トリフルオロアセトキシ-3-オキソ-トリデカンアミド)-2,6-ジメトキシピリジン(6d)。収率49%で10.8 mgが得られた。

【0082】
3-オキソ-C12-HSLおよび3-オキソ-C12-D12の合成
3,3-エチレンジオキシドデカン酸
マロン酸モノエチル(1.26 g、9.6 mmol)の25 mL 無水THF撹拌溶液をアルゴン雰囲気下で-78℃まで冷却し、n-BuLi(2.5 M、8 mL、20 mmol)を気密性の注射器により滴下した。添加後、温度を0℃まで上昇させて、撹拌を1時間継続して行った。その後、混合液を-78℃まで再冷却し、デカノイルクロリド(1.044 mL、5 mmol)を気密性の注射器により滴下した。この混合液を-78℃で1時間、0℃で30分間および室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル50 mLに再溶解した。この溶液を1 M HCl(100 mL)、飽和NaHCO3水溶液(50 mL)、および塩水(50 mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、そして濃縮して、3-オキソドデカン酸エチル(1.456 g)を得た。その粗生成物を次の反応に使用した。

【0083】
3-オキソドデカン酸エチル(1.456 g、約5 mmol)、エチレングリコール(2.78 mL、50 mmol)および触媒量のp-TsOH(95 mg、0.5 mmol)のベンゼン(50 mL)混合液を一晩、アルゴン雰囲気下で110℃まで加熱した。溶媒を除去し、残留物を酢酸エチル50 mLで希釈した。この溶液を飽和NaHCO3水溶液(50 mL)および塩水(50 mL)で洗浄し、有機層をMgSO4で乾燥し、そして濃縮した。この残留物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製(ヘキサン/EtOAc 8:1、Rf=0.21)し、上記の2ステップに対する全収率79%で3,3-エチレンジオキシドデカン酸エチル(1.131 g、3.95 mmol)を得た。

【0084】
25 mLフラスコに3,3-エチレンジオキシドデカン酸エチル(1.131 g、3.95 mmol)、LiOH・H2O(840 mg、20 mmol)、THF(5 mL)、および水(5 mL)を加えた。この混合液を室温で一晩撹拌した。この溶液を1 M HCl(50 mL)の添加により酸性にし、酢酸エチル(3×50 mL)で抽出した。有機層を合わせて、塩水で1回洗浄した。有機層を乾燥(MgSO4)し、そして濃縮して、収率81%で3,3-エチレンジオキシドデカン酸(0.824 g、3.19 mmol)を得た。

【0085】
上記のデータは全て、以前に報告されている文献データ(Wierengaら、J. Org. Chem. 44:310〜311 (1979); Eberhardら、J. Biochem. 20: 2444〜2449 (1981)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)と一致する。
【0086】
N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン(3-オキソ-C12-HSL、AI-1)
25 mLフラスコに3,3-エチレンジオキシドデカン酸(824 mg、3.2 mmol)、臭化水素酸L-ホモセリンラクトン(1.135 g、6.2 mmol)、EDC(1.198 g、6.2 mmol)、DMAP(0.756 g、6.2 mmol)、i-Pr2NEt(1.1 mL、6.3 mmol)およびDMF(5 mL)を加えた。反応液を室温で一晩撹拌した。DMFを減圧下で除去し、残留物を1 M HCl(25 mL)に溶解した。水溶液を酢酸エチル(3×25 mL)で抽出し、合わせた抽出液を飽和NaHCO3水溶液および塩水で連続的に洗浄した。有機層を乾燥(MgSO4)し、そして濃縮して、粗精製の中間体およそ1 gを得た。
【0087】
上記の中間体(1 g、約2.93 mmol)をアセトン(48 mL)および水(4 mL)に溶解し、p-TsOH(0.285 g、1.5 mmol)を加えた。この混合液を65℃で20時間、還流した。アセトンを減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル25 mLに溶解した。有機層を飽和NaHCO3水溶液および塩水で連続的に洗浄した後、乾燥(MgSO4)し、そして濃縮して、収率86%で純粋な生成物(741 mg、2.49 mmol)を得た。

【0088】
N-(トランス-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-オキソドデカンアミド(3-オキソ-C12-HSL-D12)
AI-1の調製には、同じ手順を用いた。粗生成物38 mgを塩酸トランス-2-アミノシクロヘキサノールから得た。フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc)により、3-オキソ-C12-HSL-D12をケトン形(23 mg、0.074 mmol、Rf=0.29)およびエノール形(11 mg、0.035 mmol、Rf=0.17)で得た。
ケトン形:

エノール形:

【0089】
実施例2--アゴニストのライブラリースクリーニング
個々の分子がLasRを活性化する能力のスクリーニングは、プラスミドplasI-LVAgfpを持つシュードモナス・アエルギノーザPAO-JP2 (lasI, rhlI) (ロチェスター大学のBarbara Iglewski博士からの贈呈)を用いて行った(de Kievitら、Appl. Environ. Microbiol. 67:865〜1873 (2001)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。この菌株は両方のAIシンターゼ遺伝子の破壊により、天然AIを産生する能力が欠けているため、LasRの活性化は、外来性AI1の添加に依存する。gfp(緑色蛍光タンパク質をコードする)の発現は、LasR-AI1誘導性lasIプロモーターの制御下にあり、このため、LasRアゴニストの迅速なスクリーニングは、その存在下でGFP発現のレベルを測定することにより可能である。
【0090】
GFPレポーターアッセイ
スクリーニングおよび生物学的検定法の手順は、Klineら(Klineら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 9:3447〜3452 (1999)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)により報告されている手順と同様とした。その代表的な工程が本明細書に記述されている。plasI-LVAgfp(Pearsonら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 91:197〜201 (1994)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)を持つシュードモナス・アエルギノーザ菌株PAO-JP2 (lasI, rhlI) (Rahmeら、Science 268:1899〜1902 (1995)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)は、300 μg/mlカルベニシリンを添加したLB中で37℃にて増殖させた。アゴニストアッセイの場合、終夜培養液をOD600 0.1まで希釈し、そして試験化合物を予め加え、乾燥させてある96ウェルプレートのウェルに移した。試験する各類似物質の終濃度は、およそ400 μMとしたが、純度の問題のため、これは過剰評価である。その後、細胞を、激しく振盪しながら37℃で6時間インキュベートした。GFP発現は、Molecular Imager (BioRad) (励起フィルタ488 nmおよび帯域通過フィルタ695 nm)で検出し、ImageQuantソフトウェアで定量化した。培養液のOD600を測定し、GFP発現を細胞密度に対して標準化した。
【0091】
lacZレポーターアッセイ
大腸菌(E. coli)株MG4(pKDT37)を100 μg/mlアンピシリンを添加したA培地中で30℃にて一晩増殖させ、同じ培地で1:100に希釈した。この培養液1 mLを、AI1または3-オキソ-C12-Dl2を予め分注して、乾燥させてある試験管に加えた。30℃で6時間インキュベーション後、β-ガラクトシダーゼ活性を標準的な方法を用いて測定した(Plattら、Assays of the lac operon Enzymes In: Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, pp. 352〜355(1972)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
【0092】
結果
スクリーニングの結果は図5に示されている。3つの強力なアゴニスト(D11, D12, H3)および2つの弱いアゴニスト(C11, E11)がライブラリーに存在していた。対応する非結合型アミンを測定して、アゴニスト活性が観測されなかったことから、側鎖が活性に不可欠であることが示唆された。同定された3つの強力なアゴニストのなかには、内部対照としてライブラリーに含まれていた、ホモシステインチオラクトン(D11)がある。このことから、アッセイ系の信頼性、ならびにアシル側鎖の末端でのOH修飾がアゴニスト活性を阻害しないという想定が確認された。興味深いことに、D11に極めてよく似た化合物であるB11およびG12は、活性ではなかった。B11は、γ-ラクタム環構造(これはほとんど不活性であることが知られている(Passadorら、J. Bacteriol. 178:5995〜6000 (1996)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる))および酸素置換がインデューサーとLasRとの間の疎水性相互作用を阻害することが原因で、不活性である可能性が高い。G12は、HSLのアミド結合がエステルで置換されており、同様にして不活性である。このことから、シュードモナス・アエルギノーザでの活性には、アミノ基が必要とされることが示唆される。このデータは、HSLのアミノ基との水素(H)結合に関わるAsp70(LasRで保存された残基)を示した、最近のTraR-3-オキソ-C8-HSLの結晶構造により支持される。この想定されるH結合は、化合物G12では維持できない。
【0093】
ライブラリーから同定された新たなアゴニスト構造の一つ、D12は、2-アミノシクロヘキサノール(図5B)である。D12においてアミノ基に隣接するヒドロキシル基は、この位置のOH基がない類似分子、例えば、A12およびB12が活性を示さなかったことから、明らかに活性に重要である。興味深いことに、D12は、AI1と二つの構造特性を共有する: (1) OH基は、TraR結晶構造において、高度に保存された残基Trp57との水素結合に関与するHSLのカルボニル基を模倣する; および(2) シクロヘキサン環は、LasRに対し適当な疎水性の接触を与えていると推定される、HSLの飽和環構造を模倣する。天然型側鎖を含む3-オキソ-C12-D12を、液相で合成し、大腸菌(E.coli)株においてlasI-gfpレポーターならびにlasB-lacZレポーターの両方で試験した。プラスミドpKDT37を持つ大腸菌株MG4は、lasRを発現し、LasR-AI1誘導性lasBプロモーターにより制御されるlacZレポーター遺伝子を含んでいる(Passadorら、J. Bacteriol. 178:5995〜6000 (1996)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。これらのレポーター遺伝子の両方が対照AI1または3-オキソ-C12-D12の存在下で活性化されたことから(図9)、このアゴニストが天然型AI1に匹敵するLasR誘導活性を有することが示された。このことから同様に、シュードモナス・アエルギノーザにおけるアゴニスト活性はLasR依存的であるという有力な証拠が得られる。
【0094】
第二のの強力なアゴニストH3(図5A)は、キノリン誘導体である(図5B)。A2、B2、およびG3のようなライブラリーの他のキノリン誘導体とのH3の比較から、N2の位置およびキノリン環の5-エキソ-アミンが活性に影響することが示唆される。H3は、シュードモナス・キノロン・シグナル(PQS、図1)と呼ばれる他の自己誘導物質とある種の構造特性を共有するため、PQS経路を介してそのアゴニスト活性を及ぼすものと思われる。PQSは、rhlIを強力に誘導すること、およびlasRとrhlRの両方をわずかに誘導することが示されているが、しかしlasIを誘導しないことが示されている(Pesciら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:11229〜11234 (1999)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。しかしながら、これらの研究は、lasRなしの基礎環境で行われており、LasRが存在する場合には大きく異なる可能性があると思われる。実験で発見されたPQS類似物質により、菌株PAO-JP2(plasI-LVAgfp)においてlasI-gfpレポーターが活性化されたことから、PQSはLasRの存在下でlasIプロモーターを誘導できる可能性が示唆される。PQSシグナル伝達に関与する他のタンパク質は、未だ同定されていない。2つの弱いアゴニストC11およびE11も同様に同定された。どちらの化合物も検出可能なレベルのアゴニスト活性を示したが、その活性は、ライブラリーで見出された他の3つのアゴニストよりも顕著に低かった。注目すべきは、3-オキソ-C6-C11がV.フィッシェリでのレポーター遺伝子アッセイで活性ではなかったことである(Schaeferら、J. Bacteriol. 178 :2897〜2901 (1996)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
【0095】
実施例3--アンタゴニストのライブラリースクリーニング
AI1に対して競合でき且つGFP発現を低下できる化合物を見出すため、同じレポーター株PAO-JP2(plasI-LVAgfp) (de Kievitら、Appl. Environ. Microbiol. 67:865〜1873 (2001)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)を用いて、ライブラリーの各化合物をアンタゴニスト活性について試験した。その方法は、1 μM AI1を各ウェルにライブラリー化合物とともに加えたことを除いては、実施例2(GFPレポーターアッセイ)に記述の方法と同じとした。AI1と競合している各化合物の蛍光/ OD600を、AI1のみの陽性対照の蛍光/OD600(これを1に設定した)に対して記録した。菌株PAO-JP2(prhlI-LVAgfp)を使用した場合、陽性対照は、1 μM AI1および10 μM AI2とした。50%を超えるまでにレポーター遺伝子発現を阻害した、8つの化合物が同定された(例えば、図6を参照されたい)。
【0096】
これらのアンタゴニストのなかで、D10、H10、C10、F10およびG9は、アニリン誘導体である。この一連の分子には同様に、ヒドロキシ、カルボキシアミド、またはピリジル基のオルト-またはメタ-置換基があり、これらはH結合受容基として機能し得る。これらの置換基の位置は重要であるように思われ、そして特定の置換基に依存する(すなわち、ヒドロキシまたはピリジルの場合にはオルト位およびカルボキシアミドの場合にはオルト/メタ位)。これらの置換基の位置だけが異なった構造的に類似の化合物E10およびG10(図6)は、不活性であった。このことから、D10およびH10のヒドロキシル基、G9のピリジル基、ならびにC10およびF10のカルボニル基は、H結合受容基として機能することにより、TraRのTrp57とA.ツメファシエンスのAIとの間で観測された、推定上のH結合による相互作用(Zhangら、Nature 417:971〜974 (2002)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)を保持することが示唆される。推定上のH結合の重要性は、アゴニストD11、D12、C11、およびE11(図5B)が全て、アミノ基に隣接した潜在的なH結合受容基を有するという観測結果と一致する。従って、アニリン構造とH結合受容基の組み合わせが、この一連の分子のアンタゴニスト活性に影響すると結論付けられた。
【0097】
実施例4--3-オキソ-C12-(2-アミノフェノール)およびC4-(2-アミノ-フェノール)分析
D10(2-アミノフェノール)は、アニリンをベースとするアンタゴニストのなかで最も単純な分子であって、最も興味深いことには、強力なアゴニストのD12とは不飽和環が異なるだけであるため、D10をさらなる研究に使用した。3-オキソ-C12-D10は液相で合成し、液相で、その天然側鎖をD10とカップリングさせて、クロマトグラフィーにより精製した。同じ構造モチーフをRhlR-AI2相互作用の阻害に適用することができるかどうかを決定するため、C4-D10を同様に合成した。アッセイは、lasI-gfpレポーターのPAO-JP2 (plasI-LVAgfp)と、RhlR-AI2により制御されるrhlI-gfpレポーターのPAO-JP2 (prhlI-LVAgfp)の両方で行った(図10A〜C) (de Kievitら、Appl. Environ. Microbiol. 67:865〜1873 (2001)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。lasI-gfpレポーターアッセイから明らかに、1 μM 3-オキソ-C12-D10によるGFP発現の濃度依存的な阻害が示され、結果的に10および100 μM 3-オキソ-C12-D10の添加により、それぞれ、GFP発現が60および90%低下した(図10B)。3-オキソ-C12-D10によるGFP発現の激しい低下が、rhlI-gfpレポーターでも観測された(図10C)。1 μM AI1および10 μM AI2により誘導された発現は、50 μM 3-オキソ-C12-D10の存在下では80%を超えるまでに阻害された。これらの結果から、3-オキソ-C12-D10がQSの強力かつ特異的な阻害剤であることが示唆された。このため、以下に論じられるように、QSにより制御される特定の毒性因子のアッセイを続けて行った。C4-D10により、rhlI-gfp発現が阻害されなかったことから、C4-D10はRhlR-AI2相互作用に拮抗しないことが示唆される(図10C)。この化合物を同様に毒性因子アッセイで試験したが、しかし一貫して、その発現に対する効果を示さなかった。
【0098】
QSにより制御される遺伝子発現を特異的に阻害する3-オキソ-C12-D10の能力をさらに確認するため、QSにより制御されるP.アエルギノーザの3つの毒性因子であるエラスターゼ、ピオシアニン、およびバイオフィルムの発現を低下させるその能力を試験した(de Kievitら、Sci. Med. Nov/Dec:42〜50 (1999)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。ピオシアニン、エラスターゼ、およびバイオフィルムは、以前に報告されているようにアッセイした(Smithら、Chem. Biol. 10:81〜89 (2003)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。AIおよび競合する3-オキソ-C12-D10の存在下で、P.アエルギノーザにより引き起こされたエラスターゼ活性は、基質のエラスチンコンゴレッド(Elastin Congo Red)の分解を測定することにより決定した。lasI rhlIノックアウト菌株のPAO-JP2を用いた場合、10〜100 μM 3-オキソ-C12-D10は、外来的に供給した5 μM AI1および10 μM AI2と競合させたとき、エラスターゼ活性を約50%まで低下させた(図11A)。このアンタゴニストは同様に、野生型P.アエルギノーザ菌株のPAO1により引き起こされたエラスターゼ活性も低下させた(図11B)。これらの結果は、3-オキソ-C12-D10が、P.アエルギノーザによるエラスターゼ産生を阻害することを示唆し、そしてこの化合物がlas QSにより制御される遺伝子発現を特異的に阻害することのさらなる証拠となる。
【0099】
ピオシアニン産生に対する3-オキソ-C12-D10のその効果に関するさらなる試験が、図11CおよびDに示されている。この化合物は、PAO-JP2(図11C)またはPAO1(図11D)によるピオシアニン産生を阻害することができなかった。このことから、ピオシアニン産生を有意に阻害するには、LasRとRhlR機能の両方を阻害することが必要であることが示唆される。
【0100】
固定的バイオフィルムアッセイを同様に、3-オキソ-C12-D10で行った(図12A〜E)。PAO-JP2の場合、バイオフィルム形成は、外来性AIの存在に依存していた(図12AおよびB)。3-オキソ-C12-D10をPAO-JP2に、AIとともに加えた場合(図12C)、バイオフィルム形成は、阻害されるよりはむしろわずかに促進された。同様に、3-オキソ-C12-D10は、野生型PAO1細胞によるバイオフィルム形成を阻害しなかった(図12DおよびE)。しかしながら、この分子は明らかに、バイオフィルムの形態に影響を及ぼし、結果的に「ふんわり」して見えるバイオフィルムをもたらした。従って、バイオフィルム形成の阻害は観測されなかったが、この分子は、バイオフィルムの構造に何らかの影響を及ぼした。
【0101】
実施例5--考察
AI1類似物質のライブラリーを作製するのに効果的な合成手順が開発された。上記の記述に基づき、さらなる類似物質のライブラリーを容易かつ迅速に合成し、活性をスクリーニングすることができる。冒頭のライブラリーのスクリーニングにより、以前に発見された構造と同じ傾向に追随する新たなアゴニストが同定され、結果的にHSLのケト基および環上の飽和炭素が、インデューサーとLasRとの間の相互作用に関与するという結論を可能とした。この結果は、TraRと、HSLのオキソ基との間のH結合による相互作用が同定された、LasR相同体のTraRのX線構造(Zhangら、Nature 417:971〜974 (2002); Vanniniら、EMBO J. 21:4393〜4401 (2002)、これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)と一致する。QSシステムの新たなアンタゴニストもいくつか同定された。アンタゴニストに対する共通の構造特性が、オルトまたはメタ位に適当なH結合受容基を有するアニリン環であることが明らかとなった。注目すべきは、アゴニストの3-オキソ-C12-D12(2-アミノシクロヘキサノール)とアンタゴニストの3-オキソ-C12-D10(2-アミノフェノール)との間の唯一の相違は、芳香環だということである。芳香環は何らかの形で、アンタゴニストがRタンパク質をDNA結合に向けて活性化する能力を阻害するように思われる。
【0102】
アンタゴニストの3-オキソ-C12-D10は、レポーター遺伝子アッセイで強力な阻害活性を示し、エラスターゼ活性および通常のバイオフィルム形成を阻害する。プロモーター特異的な阻害活性の相違は、P.アエルギノーザのQSシグナル伝達ネットワークの複雑性に起因する。
【0103】
QSを制御する潜在的利益は、医学的にも経済的にも極めて大きい。QSを活性化するかまたは阻害するいくつかの新たな類似物質の発見を可能とする、AI類似物質の同時合成により、LasR-AI1相互作用の理解の大きな進展が得られる。これにより、慢性のP.アエルギノーザ感染症および他の細菌感染症の治療を目的とした別の治療法の選択肢がもたらされる。
【0104】
実施例6--アゴニストに基づいたフォーカストライブラリーから見出されたアンタゴニスト
ホモセリンラクトン(HSL)部分を標的とした改変を有するP.アエルギノーザの自己誘導物質類似物質のライブラリーを合成し(実施例1〜5を参照されたい)、LasRを転写因子として活性化できる、新たなアゴニスト3-オキソ-C12-(2-アミノシクロヘキサノール)が発見された。定足数感知の転写因子LasRおよびRhlR、それぞれに対する2組のフォーカストライブラリーを構築した。両タンパク質はHSLに対して同じ結合部位を有するはずであるという予測とは反対に、これら2つの関連タンパク質は異なる構造モチーフに反応することが分かった。このことから、HSL結合部位がこれらのタンパク質で異なることが示唆された。アゴニストに対するわずかな構造改変により、アンタゴニスト活性を有する化合物が生じた。一連のアッセイを行って、これらのアンタゴニストによる定足数感知の阻害により、毒性因子の産生およびバイオフィルム形成が著しく低下することを示した。
【0105】
HSLの位置での新たな構造要素2-アミノシクロヘキサノールは、ほとんど野生型のQS活性を示すことが認められた(実施例1〜4)。この分子中のアミノおよびヒドロキシル基の、HSL中のアミノおよびケト基との重ね合わせにより、構造の類似性が示唆された。従って、アミンに隣接するケトまたはヒドロキシル基(または他の水素結合受容基)を有する5員環または6員環は、LasRの結合と活性化の両方に十分であるとの仮説が立てられた。この仮説について調べるため、図13に示される一連の分子(化合物1〜4)を合成した。あるRタンパク質に結合する類似物質が、その同族の側鎖を単純に置換することにより他のRタンパク質に結合することができるかどうかを決定するため、C4側鎖を有する第2の一連の分子(図13、5〜8)を合成し、rhlI-gfpレポーター株PAO-JP2(prhlI-LVAgfp)を用いて、RhlRを活性化するその能力について試験した(de Kievitら、Appl. Environ. Microbiol. 67:865〜1873 (2001)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
【0106】
N-(トランス-2-ヒドロキシシクロペンチル)-3-オキソドデカンアミド(2)
3,3-エチレンジオキシドデカン酸(55 mg、0.213 mmol) (Pearsonら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 91:197〜201 (1994); Buら、Synthetic agonists of a Pseudomonas aeruginosa quorum sensing molecule. 投稿中、これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)およびトランス-2-アミノ-シクロペンタノール塩酸塩(35 mg、0.256 mmol、Aldrichから購入、52,586-3)の無水DMF(2 mL)に、室温で、EDC(49 mg、0.256 mmol)、DMAP(32 mg、0.256 mmol)、およびi-Pr2NEt(45 μL、 0.256 mmol)を連続的に加えた。この混合液を18時間撹拌した。減圧してDFMを除去後、残留物を酢酸エチル(20 mL)に溶解し、NaClで飽和した0.1 M HCl(20 mL)で洗浄した。水層を酢酸エチル(3×40 mL)で抽出した。合わせた有機抽出液をMgSO4で乾燥し、そして濃縮して、粗精製の中間体(57 mg、79%)を得た。3,3-エチレンジオキシ保護基は、CH2Cl2 1 mLに溶解した中間体を室温で2時間、95% TFA 1 mLで処理することにより脱保護した。有機溶媒を減圧下で手短に除去し、残留物を飽和NaHCO3水溶液と混合し、その後、酢酸エチル(3×40 mL)で抽出した。有機層を合わせて、塩水で1回洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。濃縮後、残留物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、N-(トランス-2-ヒドロキシシクロペンチル)-3-オキソドデカンアミドをケトン形(14.8 mg、0.050 mmol、Rf=0.42)およびエノール形(19.2 mg、0.065 mmol、Rf=0.15)で、全収率54%にて得た。
ケトン形:

エノール形:

【0107】
N-(2-オキソシクロペンチル)-3-オキソドデカンアミド(1)
塩化オキサリル(42.5 μL、0.486 mmol)の1mL無水CH2Cl2溶液をアルゴン雰囲気下で-78℃まで冷却し、無水DMSO(69 μL、0.974 mmol)を注射器により加えた。この混合液を2分間撹拌した。2-オキソ位に3,3-エチレンジオキシ保護基の付いた2 (83 mg、0.243 mmol)の1mL CH2Cl2溶液を注射器により加えて、この混合液を15分間撹拌した。得られた溶液にトリエチルアミン(169 μL、1.215 mmol)を加えて、撹拌を5分間継続して行った。室温に戻した後、0.1 M HCl 20 mLを加えて反応をクエンチした。得られた混合液を酢酸エチル(3×30 mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液および塩水で連続的に洗浄した。全抽出液を合わせ、乾燥し(MgSO4)、そして濃縮して、保護基の付いた粗精製の中間体1(57 mg)を得た。この分子を2の合成と同じように95% TFAで処理し、シリカゲルでのそのクロマトグラフィー精製により、収率85%で1(42 mg、0.14 mmol)が得られた。

【0108】
N-(トランス-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-オキソドデカンアミド(4)
トランス-2-アミノ-シクロヘキサノール塩酸塩をトランス-2-アミノ-シクロペンタノール塩酸塩の代わりに使用したことを除いては、1の合成と同じ手順を行った。粗生成物のカラムクロマトグラフィーにより、4をケトン形(23 mg、0.074 mmol、Rf=0.29)およびエノール形(11 mg、0.035 mmol、Rf=0.17)で、全収率51%にて得た。
ケトン形:

エノール形:

【0109】
N-(2-オキソシクロヘキシル)-3-オキソドデカンアミド(3)
出発物質を2-オキソ位に3,3-エチレンジオキシ保護基の付いた4(117 mg、0.38 mmol)としたことを除いては、1の調製と同じ手順を使用した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製(ヘキサン/EtOAc 1:2、Rf=0.38)し、収率73%で3(87 mg、0.28 mmol)を得た。

【0110】
N-(トランス-2-ヒドロキシ)シクロペンチルブタンアミド(6)およびN-(トランス-2-ヒドロキシ)シクロヘキシルブタンアミド(8)
C4-HSLの調製手順をこの一連の分子に使用した。酪酸およびトランス-2-アミノ-シクロペンタノールまたはトランス-2-アミノ-シクロヘキサノールのEDCによるカップリングから、収率66%で6または収率82%で8が得られた。

【0111】
N-2-オキソシクロペンチルブタンアミド(5)およびN-2-オキソシクロヘキシルブタンアミド(7)
1の合成に類似の、Swern酸化を行い、収率60%で5および収率48%で7を得た。

【0112】
実施例7--レポーター遺伝子アッセイ
レポーター株は、300 μg/mlカルベニシリンを添加したLB中で37℃にて一晩増殖させ、OD600 0.1に希釈した。1時間のインキュベーション後、細胞培養液200 μlを、適当量の試験化合物を含有する96ウェルプレートの各ウェルに加えた。プレートを6時間インキュベートし、その後、Molecular Imager (励起フィルタ488 nmおよび帯域通過フィルタ695 nm)で蛍光発光をスキャンした。蛍光をImageQuantソフトウェアで定量化した。
【0113】
PAO-JP2 (plasI-LVAgfp)レポーター株を用い、3-オキソ-C12分子、AI1、および1〜4の活性を試験した。AI1わずか1 μMで観測された強いGFPシグナルから、AI1による強力なQS誘導が明らかであった(図14AおよびB、AI1)。以前に同定されたアゴニスト3-オキソ-C12(2-アミノシクロヘキサノール) 4は、強力なアゴニスト活性を示し、GFP誘導は1 μMでAI1のわずかに半分未満、より高濃度ではAI1に匹敵していた(図14AおよびB、4)。3-オキソ-C12-(2-アミノシクロペンタノン) 1は、4よりもAI1に構造的に類似している。1の場合、HSLの酸素を炭素と置換しただけであったためである。それ故、1は強力なアゴニスト活性を有するものと期待された。この予測に反して、1はレポーターを非常に高濃度でのみ誘導することができた(図14AおよびB、1)。さらに驚くべきことには、化合物2および3は、高濃度でさえも、レポーターをほとんど誘導することができなかった(図14AおよびB、2および3)。
【0114】
PAO-JP2 (prhlI-LVAgfp)を用い、C4化合物 (AI2および5〜8)をアゴニスト活性について分析した(図14CおよびD)。このレポーターでのGFP発現の誘導には、AI1とAI2の両方の添加が必要とされる。従って、AI2対照とアゴニストのアッセイは、1 μM AI1の存在下で、AI2または類似物質の濃度を増加させながら行った(図14CおよびD)。ケトン誘導体5および7はどちらも、強力なアゴニスト活性を示し、レポーターをわずか10 μMで誘導した(図14CおよびD、5および7)。対照的に、2-アミノシクロペンタノール誘導体6には、アゴニスト活性がなかった。さらに、2-アミノシクロヘキサノール誘導体8には、AI2アゴニスト活性がほとんどなかった; この誘導体は、400 μMで中等度のGFP発現のみ誘導することができた(図14CおよびD、カラム8)。
【0115】
上記のように、2-アミノシクロペンタノン(1および5)および2-アミノシクロヘキサノン(3および7)は、ケト基を有するので、これらは、2-アミノシクロペンタノール(2および6)および2-アミノシクロヘキサノール(4および8)よりもHSL構造をよりよく模倣しているものと最初は思われた。実際には、rhl回路の場合、ケトン誘導体はアルコール誘導体よりも良好なAI2のアゴニストであった。このことは同様に、ケトンがH結合に関与することを示すTraR-3-オキソ-C8HSL複合体の結晶構造とも一致する。恐らく、アルコール置換は、H結合を保持することができるが、但し結合の効率は低下するものと予測される。しかしながら、AI1類似物質に対する結果は、このパターンに適合しない。las回路の場合、2-アミノシクロヘキサノール 4は最も強力なアゴニストであって、2-アミノシクロペンタノン 1は弱いアゴニストであって、2-アミノシクロヘキサノン 3にはアゴニスト活性がなかった。従って、これらの結果からすると、タンパク質-HSL結合界面の微小環境が、LasR、RhlR、およびTraRの間で異なることが提唱される。
【0116】
興味深い観測結果は、シクロヘキサン環のヒドロキシル基からケト基(4→3)への、またはシクロペンタン環のケト基からヒドロキシル基(1→2または5→6)へのわずかな構造変化により、アゴニスト活性が劇的に低下したことであった。そのような小さな構造的相違により、それぞれのRタンパク質との結合が完全になくなる可能性は低い。可能性が高い、別の説明は、シクロペンタノール(2)およびシクロヘキサノン(3)化合物は、依然として同じ親和性でLasRに結合できるが、但しそれを活性化できないということである。従って、化合物2および3は、AI1アンタゴニストとして機能できるものと思われる。同様に、化合物6は、RhlRに結合する能力を保持しているはずであり、従って、AI2アンタゴニストとして機能するはずである。
【0117】
実施例8--アンタゴニストアッセイ
上記の仮説に基づき、菌株PAO-JP2(plasI-LVAgfp)を用いて、AI1に対する2および3の競合アッセイを行った。予測通り、化合物2はAI1に対して100倍過剰濃度で、GFP発現を約70%阻害し(図15A)、化合物3は同じ条件の下で、阻害効果(35%低下)が低かった。注目すべきは、この阻害実験が1 μM、つまり野生型P.アエルギノーザにより通常産生される濃度のAI1(Pearsonら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 92:1490〜1494 (1995)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)に対する競合として行われたことである。これらの結果から、どちらの分子もLasRに結合して、AI1によりLasRが活性化されるのを抑制することが示唆される。この見解は、その化合物が、菌株PAO-JP2 (pTdK-GFP) (de Kievitら、Appl. Environ. Microbiol. 67:1865〜1873 (2001)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)において、lasIプロモーターをlacプロモーターと置換するとGFP発現を阻害できないことにより支持される。同様に注目すべきは、2または3を最大で400 μMまでの濃度で添加しても、細胞増殖が影響を受けなかったことである。従って、化合物2および3は、QSにより制御されるプロモーターの特異的阻害剤として機能すると思われる。化合物6を同様に、AI2と競合するその能力について試験したが、しかしrhlI-gfpレポーターの阻害は認められなかった。
【0118】
次に、2および3がrhlI-gfpレポーター株PAO-JP2 (prhlI-LVAgfp)を阻害する能力について試験した。この発現が同様に、AI1依存的であるためである。Iglewskiのグループにより、rhlIプロモーターは主に、LasR-AI1複合体により誘導される(de Kievitら、FEMS Microbiol. Lett. 212:101〜106 (2002)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)が、しかしこのプロモーターの誘導は、AI1のみの添加では見られなかったということが最近になって報告された。それらの研究で使用されたrhlI-lacZレポーターは、本研究で使用したrhlI-gfpコンストラクトよりも感度が高く、AI1により誘導される少量のGFPは、本検出限界を下回る可能性がある。しかしながら、AI1とAI2の両方がPAO-JP2(prhlI-LVAgfp)レポーターからGFPを誘導するのに必要とされるので、そのデータは、RhlR-AI2によるrhlIプロモーターの活性化を顕著に示した、初期の実験(Latifiら、Mol. Microbiol. 21:1137〜1146 (1996)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)との関連で解釈される。意外にも、化合物2はこのアッセイで、アンタゴニスト活性を示さなかった(図15B)。有望な結果は、化合物3のアッセイから得られ、この場合、rhlI-gfpレポーターのGFP発現は、1 μM AI1および10 μM AI2と競合させたとき、50 μMで60%を超えるまで阻害された(図15B)。
【0119】
化合物3によるrhlI-gfpレポーターの阻害は、lasI-gfpレポーターで見られた阻害よりも大きかった。lasI-gfpアッセイの結果から、3がLasR-AI1依存的な転写活性化を阻害することが示唆される(図15A)。rhlRプロモーターは同様に、LasR-AI1により活性化されるので、3の存在下でのrhlI-gfpの阻害は、LasR-AI1依存的なrhlR発現の活性化の阻害による可能性が高い。これが次に、RhlR-AI2依存的なrhlI-gfp発現の活性低下になる。しかしながら、3はRhlRと直接的に相互作用して、AI2結合を阻害することも可能である。AI1がRhlRに対するアンタゴニストとして機能して、AI2による結合を阻害できるためである(Pesciら、J. Bacteriol. 179:3127〜3132 (1997)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。化合物3と同じ環構造を有するAI2類似物質(化合物7、2-アミノシクロヘキサノン)は、RhlRの強力なアゴニストである。このことから、3がRhlRのAI結合部位に入り、RhlR-AI2相互作用に拮抗し得るという推測が支持される。RhlR自己誘導物質の鎖長は、RhlR活性化を調節する決定的要因であるように思われる。それはC4HSLがRhlRを活性化するが、しかし3-オキソ-C12HSLはRhlRに拮抗し、そしてRhlRに拮抗できるC4類似物質が同定されていないためである。化合物3による阻害機構にかかわらず、rhlIの標的は、LasRシグナル伝達経路においてlasIよりもさらに下流にあるので、lasIよりもrhlIの強力な阻害が期待されるものと思われる。
【0120】
実施例9--毒性因子アッセイ
化合物2および3がQSを妨害しているというさらなる証拠を得るため、AIシンターゼのノックアウト(PAO-JP2)と野生型(PAO1)両方のP.アエルギノーザ菌株において毒性因子の発現を低下させるその能力を調べた。シュードモナス感染で重要な2つの毒性因子をアッセイのために選択した。1つ目は、ピオシアニン色素であり、これはアラビドプシス・サリアナ(シロイヌナズナ)(Arabidopsis thaliana) (Rahmeら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 94:13245〜13250 (1997)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)、カエノラブディティス・エレガンス(線虫)(Caenorhabditis elegans) (Mahajan-Miklosら、Cell 96:47〜56 (1999)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)、およびハチノスツヅリガ(Galleria mellonella) (Janderら、J. Bacteriol. 182:3843〜3845 (2000)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)の感染モデルで疾患に必要とされ、そして慢性肺感染症で重篤な組織傷害を引き起こす(Wilsonら、Infect. Immun. 56:2515〜2517 (1988)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。2つ目は、メタロプロテアーゼのエラスターゼBであり、これは免疫成分を分解し、そして組織傷害を引き起こす(Konら、FEMS Immunol. Med. Microbiol. 25:313〜321 (1999)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
【0121】
ピオシアニン・アッセイの場合、細胞をLB中で一晩増殖させた後、新鮮な培地で洗浄し、OD600 0.05に希釈した。この培養液を対数増殖中期(OD600 0.3〜0.5)まで3〜4時間増殖させた後、OD600 0.05に希釈して、適当量の試験化合物を含有する試験管に分注した。18時間の増殖後、ろ過した培養上清から、ピオシアニンを抽出して、標準的な方法(Essarら、J. Bacteriol. 172:884〜900 (1990)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)により定量化した。
【0122】
P.アエルギノーザPAO-JP2でのピオシアニンの強力な誘導には、AI1とAI2の両方の添加が必要とされる(図16Aおよび4B)。化合物3を外来性AIとともに加えた場合、ピオシアニンの発現がほぼ完全に阻害された(図16AおよびB)。3による極めて類似した阻害効果が、野生型P.アエルギノーザ(PAO1)をアッセイした際に観測された(図16C)。3の濃度依存的な阻害効果から、本発明者らは、3がAIによるピオシアニン発現の活性化と特異的に競合していると考えるに至った。いっぽう、化合物2は、PAO-JP2でピオシアニンの発現を50%まで低下させた(図16AおよびB)が、しかしこの阻害は、試験した範囲にわたって濃度依存的ではなかった。さらに、2は、PAO1に対し有意な効果がなかった(図16C)。従って、ピオシアニン発現に対する2の阻害効果は、3のそれほどには顕著でない。
【0123】
エラスターゼBアッセイの場合、細胞(PAO-JP2)をPTSB培地(5%ペプトン、0.1%トリプティックソイブイヨン(Tryptic Soy Broth))中で37℃にて一晩増殖させ、洗浄して、OD600 0.05に希釈し、対数増殖中期まで増殖させ、再び洗浄し、そしてOD600 0.05となるように再懸濁した。次いで、試験化合物を含有する試験管に培養液を加えて、6時間増殖させた。エラスターゼB活性は、ろ過した培養上清100 μlをエラスチンコンゴレッド(Elastin Congo Red)基質 5 mgおよび10 mM Tris pH 7.2、1 mM CaCl2 1 mlとともに振盪しながら37℃で6時間インキュベーションすることにより定量化した。エラスターゼB活性は、EDTAによる反応停止および未反応の基質を除去する遠心後の酵素反応液のOD495を、細胞培養液のOD600で割ることで表される。同じアッセイを菌株PAO-1で行ったが、但し外来性自己誘導物質を加えなかった。このように、エラスチンコンゴレッド(Elastin Congo Red)基質を用いて、比色アッセイを行ったので、観測されたプロテアーゼ活性は主に、エラスターゼBに起因し、培養上清に存在する可能性がある他のプロテアーゼには起因しない(図16DおよびE) (Caballeroら、Analytical Biochem. 290:330〜337 (2001)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。対照実験から、5 μM AI1と10 μM AI2が、PAO-JP2でのエラスターゼB活性の一貫した誘導に必要とされることが示された。50 μM 3で、エラスターゼB活性は、陽性対照レベルの60%にまで低下した(図16D)。同じアッセイを野生型P.アエルギノーザで行った場合には、エラスターゼB活性が、100 μM 3の存在下で、対照レベルの30%にまで低下した(図16E)。これらの結果から、この阻害はピオシアニン発現に対して観測されたものほど強力ではなかったものの、3によりエラスターゼB発現は、阻害される可能性が高いことが示唆される。いっぽう、化合物2は、どちらの菌株で引き起こされたエラスターゼ活性に対しても有意な効果がなかった(図16DおよびE)。2は3よりもピオシアニンおよびエラスターゼ産生の阻害が弱かったので、この後の研究は3にのみ重点を置いた。
【0124】
実施例10--固定的バイオフィルムアッセイ
P.アエルギノーザ感染症の慢性的な性質は、部分的にはバイオフィルムの増殖に起因するという証拠がある(Singhら、Nature 407:762〜764 (2000); Drenkardら、Nature 416:740〜743 (2002)、これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。バイオフィルムは、分泌性ポリサッカライドマトリックスにより、殺生物性処理および宿主免疫応答から保護された細菌の付着コロニーである(O'Tooleら、Annu. Rev. Microbiol. 54:49〜79 (2000)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。P.アエルギノーザにおけるその発生はQSにより制御され、QSの阻害によりバイオフィルムの発生がなくなるかまたは低下することが示されている(Daviesら、Science 280:295〜298 (1998); Wuら、Microbiol. 147:1105〜1113 (2001); Shirtliffら、Chem. & Biol. 9:859〜871 (2002)、これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。バイオフィルムの増殖抑制は、常に課題となっている。バイオフィルムコロニーの処理は、極めて困難なことが証明されているためである。
【0125】
バイオフィルム形成の初期段階を調べる24時間アッセイで、化合物3を、バイオフィルムの発生に対するその効果について試験した。固定的バイオフィルムアッセイは、QSにより制御されるバイオフィルム形成段階を監視するのに、簡単だが信頼できる方法である(de Kevitら、Appl. Environ. Microbiol. 67:1865〜1873 (2001)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。細胞(走査型共焦点レーザー顕微鏡による視覚化を目的として構成的に発現されるGFPコンストラクトを含む、菌株PAO-JP2(pTdK-GFP) (de Kevitら、Appl. Environ. Microbiol. 67:1865〜1873 (2001)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる))を、カルベニシリン(300 μg/ml)を添加したM9培地(47.7 mM Na2HP4・7H20、21.7 mM KH2PO4、8.6 mM NaCl、18.7 mM NH4Cl、0.5%カザミノ酸、11.1 mMグルコース、1 mM MgSO4)中で一晩増殖させ、洗浄し、そしてOD600 0.05となるように再懸濁し、対数増殖中期まで増殖させ、その後、OD600 0.05に希釈し、そして試験化合物を塗布してあるガラスカバースリップ(ViroMed Laboratories, Minneapolis, Minn.)を含む無菌シェルバイアルに加えた。培養物を振盪させながら37℃で30分間増殖させ、その後、37℃でさらに23.5時間静置させた。次いで、カバースリップを洗浄し、そしてNikon Fluor-60X油浸対物レンズ(NA=1.4)、488 nmアルゴンレーザーおよびOG515フィルタの付いたMRC1024 走査型レーザー顕微鏡(Laser Scanning Microscope) (BioRad)による視覚化を目的として、スライド上にセットした。
【0126】
PAO-JP2自己誘導物質シンターゼ・ノックアウト菌株は、AIを加えなければ、バイオフィルムを形成しなかった(図17A)。この菌株を、3を添加したAIの存在下で増殖させた場合、バイオフィルムの形成が完全に阻害された(図17A、右パネル)。同じアッセイを菌株PAO-1 (pTdK-GFP)で行い、そして外来性自己誘導物質を加えなかった。野生型菌株PAO1(pTdK-GFP) (図17B)におけるバイオフィルム形成の阻害は、あまり明瞭ではなかったが、しかし3の存在下で増殖させた場合、バイオフィルムの形態にはっきりとした差異が認められた。上記の結果は、化合物3がQSシグナル伝達を阻害し、重要な毒性因子の産生を低下させるというさらなる証拠となる。
【0127】
実施例11--考察
実施例1〜10に記述した研究により、P.アエルギノーザのQS回路を作動するかまたはそれに拮抗する新たな化合物がいくつか得られた。興味深いことに、これらの分子は相互に構造的に類似している: 全ての化合物は、3-オキソ-C12側鎖に連結するアミノ基に隣接したヒドロキシルまたはケト基を有し、同様に6員環または5員環構造を有する。とりわけ興味深い発見は、アゴニスト4をほんのわずかに変化させると; そのヒドロキシル基をケトン(3)に、飽和環を不飽和ベンゼン環(3-オキソ-C12-D10)に、および6員環を5員環(2)に変化させると、それがアンタゴニストになるというものであった。
【0128】
アンタゴニストの構造類似性にもかかわらず、観測された活性は異なっていた。3-オキソ-C12-(2-アミノシクロヘキサノン) 3(図18)は、ピオシアニンおよびバイオフィルムをほぼ完全に阻害し、両方のレポーター遺伝子を強力に阻害し、そしてエラスターゼ活性を中等度に阻害した。しかしながら、ライブラリースクリーニングから見出された3-オキソ-C12-D10(図18)は、レポーター遺伝子の極めて良好な(3よりも強力な)阻害およびエラスターゼの中等度の阻害を示したが、しかしピオシアニンまたはバイオフィルムの阻害を示さなかった。類似の結果が2で認められ、これはPAO-JP2のlasレポーターおよびピオシアニン発現を阻害したが、しかしrhlレポーターまたはエラスターゼを阻害することができなかった。
【0129】
QS転写因子の効果は、LasRおよびRhlR、ならびに各遺伝子の活性化レベルに影響を及ぼす他の調節タンパク質のいずれかのメンバーに対するプロモーター配列の親和性により、個々のプロモーターに依存していることは明らかである。これにより、特定のプロモーターが阻害の影響を受けやすいかまたは受けにくい理由が説明されるものと思われる。しかしながら、特定の毒性因子を阻害する各化合物の能力の差異は、明らかではない。それはLasR-AI1とRhlR-AI2の両方に拮抗する3の能力によるものであると提唱される。対照的に、3-オキソ-C12-D10および2は、LasR-AI1相互作用を阻害できるのみである。従って、las調節が著しく阻害されても、rhl調節が依然として活性化される可能性があり、結果的に毒性因子の誘導が引き起こされる。この仮説を支持する証拠は、類似の環構造を有するAI2類似物質のアゴニストアッセイにより得られる。AI2、つまりC4-HSLは、RhlRの活性化物質である。AI1、つまり3-オキソ-C12-HSLは、大腸菌でRhlRへのAI2結合を競合的に阻害することができた。AI1は、わずか4倍過剰で存在させた場合、RhlRへのAI2の結合を86%まで低下させた(Klineら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:3447〜3452 (1999)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。明らかに、長鎖-HSLは、短鎖HSLと同じ部位に結合するが、しかしRhlRを活性化しない。2-アミノシクロヘキサノン類似物質は同様に、LasRとRhlRの両方のHSL結合部位に適合する。これは、C4-(2-アミノシクロヘキサノン)がAI2の強力なアゴニストであり、3がAI1の強力なアンタゴニストであるという発見(Smithら、Chemistry & Biology 10:81〜89 (2003)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)により支持される。3は同様に、RhlR-AI2相互作用に拮抗できると思われる。これはもっともらしい仮説である。この化合物が、試験した毒性因子の全てを阻害したためである。エラスターゼをコードする遺伝子、ピオシアニン、およびバイオフィルムは、LasR-AI1とRhlR-AI2の両方により制御されるので、3の存在下で観測された強力な阻害を見るには、両方のRタンパク質に効果を及ぼす必要がある可能性が高い。
【0130】
対照的に、3-オキソ-C12-D10と2の両方は、レポーター遺伝子を阻害したが、しかし毒性因子の阻害には効果が低かった。これらの2つの化合物は、LasRのみによりその効果を誘発し、RhlRと相互作用しないとみられる。このことは、C4-(2-アミノシクロペンタノール) (Smithら、Chemistry & Biology 10:81〜89 (2003)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)もC4-D10もrhlI-gfpレポーターを活性化できないという観測結果により支持される。これらの特定のHSL類似物質がRhlRを活性化することができなかったので、3-オキソ-C12側鎖を有する同じ類似物質がRhlR HSL結合部位に入り得る可能性は低いように思われる。
【0131】
化合物3-オキソ-C12-D10がLasRを阻害できるがしかしRhlRの機能を阻害できないというこの仮説に対するさらなる支持は、P.アエルギノーザのlasI欠失株のバイオフェルム研究により得られる。DaviesらおよびSauerらにより、P.アエルギノーザのlasI変異株は依然としてバイオフィルムを形成できるが、しかし本来のバイオフィルム形態への成熟性が変化することが示されている(Wilsonら、Infect. Immun. 56:2515〜2517 (1988); Sauerら、J. Bacteriol. 184:1140〜1154 (2002)、これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。化合物D10は同様に、通常のバイオフィルムの発生を阻害するものの、バイオフィルムの形成を完全には阻害できないものと考えられる。
【0132】
実施例12--A1および化合物2〜4の対掌性の決定
アゴニスト4ならびにアンタゴニスト2および3(図18)は、ラセミ混合物として合成した。AI1のHSLは、その生合成機構の考慮に基づき、天然にはL-型であることが知られているが、D-型が不活性であることを述べた報告はないように思われる。さらに、必ずしも、合成アゴニストおよびアンタゴニストがAI1と同じ対掌性を持つとは、またはどちらかの対掌性がいっそう高い活性を有するとは限らない。このことは、アンタゴニストの場合、とりわけ興味深い問題である。従って、各分子のL-型とD-型(2-アミノ炭素中心のS-配置およびR-配置)の両方を合成した。さらに、2および4の場合、アミノアルコールの立体化学のシスおよびトランス配置が存在する。従って、そのシス分子を同様に合成した。
【0133】
その化学反応は、極めて単純明快であった。Jacobsenにより開発された高度にエナンチオ選択性のエポキシ化触媒を使用した(図19)。残りの手順は、文献(Jacobsen, Acc. Chem. Res. 33(6):421〜431 (2000)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)で知られているかまたは上述されている。D-HSLは、D-ホモセリンから合成し、そして3-オキソ-C12-側鎖とカップリングさせた。lasレポーター、つまりPAO-JP2(plasI-LVAgfp)を用いたレポーターアッセイを上述のように行い、各化合物のアゴニストまたはアンタゴニスト活性を測定することができる。
【0134】
実施例13--シクロヘキサンおよびシクロペンタン骨格に基づいたlasアンタゴニストのフォーカストライブラリーの拡張
本実施例では、lasアンタゴニストのライブラリーが2および3の構造に基づいて拡張される。ライブラリーの合成は、図2に記述されている、以前に開発された固相法に基づいて行う。3-オキソ-C12-側鎖に連結するアミノ基に隣接したヒドロキシルまたはケト基は、完全なまま維持して、環上の置換基を修飾する。
【0135】
3に基づいて、ライブラリーの分子構造を多様化するため、3-アミノアシルヘキセン(3-aminoacyclohexene)を、樹脂に固定化された3-オキソ-C13-側鎖とカップリングさせる(図20A)。3-アミノアシルヘキセンは、R型とS型の両方で市販されており、従って、分子の選択には、実施例12で得られた結果を考慮することができる。または、ラセミ体を使用して、アンタゴニスト構造をスクリーニングすることが可能であり、その後、鏡像異性的に純粋な物質だけを液相化学反応により再合成することができる。オレフィンをエポキシドに酸化して、分枝点を物質に与える。種々の有機金属アルキルおよびアリール基の求核置換反応、またはルイス酸を使った種々の求核試薬の置換により、ライブライーの種々の分子が得られる。得られた分子をデス-マーチン(Dess-Martin)試薬により酸化して、対応するケトンに変換する。個々の分子はまた、液相で合成することができる。そのような合成は、いっそう面倒ではあるが、それでも分子のわずかな回収には適している。同様に、同じライブラリー構築を、3-アミノ-シクロペンテンから始めて、シクロペンタン誘導体について行うことができる。
【0136】
個々の分子をlasレポーターにより試験して、las回路に対するアゴニストまたはアンタゴニスト活性を決定する(アンタゴニストアッセイの場合、1 μM AI1を競合のために使用する)。当たりが同定されたら、これらの分子を次に、さらなる評価を目的に液相で再合成することができる。分子を同様に、rhlレポーターを用いて、rhl回路の阻害について試験する。有力なアンタゴニストを見出したら、それらを毒性因子およびバイオフィルム産生に対するその効果について試験する。
【0137】
上述の競合的阻害剤に加えて、自殺型阻害剤の発見が興味深い。従って、エポキシド分子ならびに塩素置換ケトン(図20B)を同様に試験する。
【0138】
実施例14--2-アミノフェノールまたは他のアニリン誘導体に基づいた3-オキソ-C12ライブラリーの拡張
las回路の阻害の場合、3-オキソ-C12-D10は3よりも強力であることが分かった。ライブラリースクリーニングから、他の置換アニリン化合物が、場合によってはlas回路に拮抗することも分かった。従って、ライブラリーは、種々のアニリン、とりわけオルト-およびメタ-置換アニリンで拡張する(図21A)。同様に、環サイズの拡張についても検討する(図21B)。
【0139】
多数のアニリンが市販されているので、ライブラリーを最初は、市販の分子から構築することができる。この場合も先と同様に、図2にあるような固相または固形物に固定化された、カップリングを行うためのジカルボジイミド試薬を用いた液相を利用することができる。残りの手順は、上記に同じである。
【0140】
実施例15--rhl定足数感知回路に対するライブラリーの合成およびスクリーニング
las回路はQSの主要な調節システムであるが、前記の結果から、遺伝子ノックアウトQS株と同じ効果を見込むには、両回路の阻害が全QSシステムを停止させるのに重要である可能性が示唆される。この作業仮説により、rhl回路に対するライブラリー、すなわちC4-側鎖のライブラリーを構築するに至った。
【0141】
残念ながら、図13で構築されたC4-フォーカストライブラリーの分子は、rhlのQS回路に拮抗しなかった。しかしながら、図14に示される研究により、LasRおよびRhlRの自己誘導物質結合部位における微小環境がわずかに異なることが示唆された。この所見は、言い換えれば、LasRに拮抗する構造要素は、RhlRに強く拮抗できない可能性を示唆するものである。従って、C4-ライブラリーを構築して、rhlアンタゴニストをスクリーニングすることが必要である。このため、最初の3-オキソ-C12-ライブラリー(図4)に類似したC4-ライブラリーを構築した。そのようなライブラリーの合成は、塩基水溶液条件または無水DMAP-Et3N条件の下で、種々のアミンを酪酸クロリドとカップリングさせることにより遂行される。
【0142】
高処理スクリーニングは、rhlレポーターを用い、アゴニストおよびアンタゴニストを目的として行うことができる。アンタゴニストアッセイの場合、1 μM AI1および10 μM AI2を使用して、rhlにより制御されるGFP発現に対して競合させることができる。この濃度が野生型の状況をよく模倣している可能性が高いためである。
【0143】
ライブラリーからアンタゴニスト活性に対する当たりが同定されたら、AI1およびAI2の存在下で、3-オキソ-C12-D10とC4-アンタゴニストによるダブルアンタゴニスト競合条件を利用することができる。病原性およびバイオフィルム形成を弱める能力を、両回路のアンタゴニストを組み合わせてさらに評価する。
【0144】
好ましい態様を本明細書のなかで詳細に描写し且つ記述してきたが、種々の変形、付加、置換などを本発明の精神から逸脱することなく為すことが可能であり、および従って、これらは、続く特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると見なされることは当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】図1A〜1Bは、シュードモナス・アエルギノーザの定足数感知(QS)を示す。図1Aは、バイオフィルムの発生(左)、および2つのQS回路、つまりlasおよびrhl(右)の機構に対する、低細胞密度から高細胞密度へのQSの活性化の略図を示す。薄灰色の線および矢印は、同族の自己誘導物質(AI)とのRタンパク質の複合体による特異的活性化を示す。濃い灰色の矢印は、細胞間情報伝達または宿主攻撃を開始させるAIまたは毒性因子の分泌を示す。図1Bは、シュードモナス・アエルギノーザのQS回路で見出された自己誘導物質の化学構造を示す。AI1はlas回路を活性化する一方で、AI2はrhl回路を活性化する。
【図2】本発明の固相ライブラリーの合成スキームを示す。試薬および条件: (a) n-BuLi、THF、-78℃; ウンデセノイルクロリド。(b) HOCH2CH2OH、p-TsOH、ベンゼン、還流。(c) BH3・THF、THF; H2O2、NaHCO3水溶液、3ステップ(a〜c)に対し38%。(d) DHP樹脂、PPTS、CH2Cl2、室温、27時間。(e) LiOHのTHF/水溶液、75℃、20時間。(f) アミン94種とアルコール(X)2種との同時カップリング、EDC、DMAP、DIPEA、DMF、室温、72時間。(g) 95% TFA、室温、30分、R = CF3COまたはH。
【図3】本発明の固相ライブラリーの合成スキームを示す。試薬および条件: (a) BH3・THF、THF; H2O2、NaHCO3水溶液; (b) DHP樹脂、PPTS、CH2Cl2、室温、27時間; (c) LiOHのTHF/H2O溶液、75℃、20時間; (d) メルドラム酸、DCC、DMAP、CH2Cl2; (e) アミンまたはアルコール(X)との同時カップリング、Et3N、CH3CN、還流; (f) 95% TFA、室温、30分、R = CF3COまたはH。
【図4】本発明による同時合成に使用された96分子の構造を示す。Aldrich/Sigmaカタログ番号が分子の下に掲載されている。
【図5】図5A〜5Bは、アゴニストのスクリーニングを示す。図5Aは、ライブラリー化合物の存在下でのPAO-JP2 (plasI-LVAgfp)の96ウェルプレートアッセイである。陰性対照は未処理である。陽性対照は1 μM AI1である。プレートの各ウェルには、およそ400 μMの1種類のライブラリー化合物が含まれる。図5Bは、GFP発現のあるウェル中の化合物およびアゴニスト活性のない関連化合物の構造を示す。
【図6】アンタゴニスト、およびアゴニスト活性を有するまたは活性のない類似化合物の構造を示す。
【図7】病原性を弱毒化する、定足数感知の阻害を示す概略図である。Antaは、アンタゴニストの省略形である。
【図8】固相反応の典型的なオン・レジン(on-resin) FT-IRスペクトルを示す。1000 cm-1〜2000 cm-1の領域のみがここに示されている。
【図9】図9A〜9Bは、レポーター遺伝子アッセイを示す。図9Aは、指定化合物の量を増加させた場合のPAO-JP2 (plasI-LVAgfp)のGFP発現を示す。図9Bは、指定化合物の量を増加させた場合のMG4 (pKDT37)のβ-ガラクトシダーゼ活性を示す。
【図10】図10A〜10Cは、アンタゴニストの化学構造およびアンタゴニストアッセイを示す。図10Bの場合、PAO-JP2 (plasI-LVAgfp)を1 μM AI1のみ(白)または競合物質3-オキソ-C12-D10(濃い灰色)を加えた1 μM AI1の存在下で6時間増殖させた。図10Cの場合、PAO-JP2 (prhlI-LVAgfp)を1 μM AI1および10 μM AI2のみ(白)または3-オキソ-C12-D10(濃い灰色)もしくはC4-D10(灰色)を加えた1 μM AI1および10 μM AI2の存在下で6時間増殖させた。蛍光強度を細胞培養液のOD600で割った。対照を1に設定したので、その他全ての値は相対値である。
【図11】図11A〜11Dは、毒性因子アッセイを示す。図11Aの場合、PAO-JP2を5 μM AI1および10 μM AI2の非存在下(陰性対照、白)でもしくは存在下(陽性対照、灰色)でまたは3-オキソ-C12-D10(濃い灰色)と組み合わせて6時間増殖させ、エラスターゼ活性を測定した。図11Bの場合、野生型PAO1株をアンタゴニストなしで(灰色)またはアンタゴニストを加えて(濃い灰色)増殖させた。図11Cの場合、PAO-JP2を25 μM AI1および25 μM AI2の非存在下(陰性対照、白)でもしくは存在下(陽性対照、灰色)でまたは3-オキソ-C12-D10(濃い灰色)と組み合わせて18時間増殖させた後、ピオシアニン産生を測定した。図11Dの場合、PAO1をアンタゴニストなしで(灰色)またはアンタゴニストを加えて(濃い灰色)増殖させた後、ピオシアニン産生を測定した。
【図12】図12A〜12Eは、固定的バイオフィルムアッセイを示す。図12A〜Cは、指定化合物の存在下でのPAO-JP2 (pTdK-GFP) (de Kievitら、Appl. Environ. Microbiol. 67:865〜1873 (2001)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)によるバイオフィルムの発生を示す。図12AおよびBは、陰性および陽性対照を示す。図12DおよびEはそれぞれ、アンタゴニスト無し(陰性対照)または有りを示す。
【図13】自己誘導物質および類似物質の化学構造を示す。AI1、3-オキソ-C12HSL; AI2、C4HSL; 1、3-オキソ-C12-(2-アミノシクロペンタノン); 2、3-オキソ-C12-(2-アミノシクロペンタノール); 3、3-オキソ-C12-(2-アミノシクロヘキサノン); 4 (図5で3-オキソ-C12-D12と前に呼んでいた)、3-オキソ-C12-(2-アミノシクロヘキサノール); 5、C4-(2-アミノシクロペンタノン)、6、C4-(2-アミノシクロペンタノール); 7、C4-(2-アミノシクロヘキサノン); 8、C4-(2-アミノシクロヘキサノール)。
【図14】図14A〜14Dは、自己誘導物質およびその類似物質によるレポーター遺伝子の誘導を示す。図14Aは、1、100、および400 μMの指定の3-オキソ-C12化合物の存在下でPAO-JP2 (plasI-LVAgfp)を含む96ウェルプレートのMolecular Imagerスキャンを示す。図14Bは、3-オキソ-C13化合物の結果の定量化を示す。Contは、未処理細胞の陰性対照である(図14Aには示されていない)。4重ウェルの平均蛍光を、細胞培養液のOD600で割ることにより細胞密度に対して補正した。標準偏差は、図14Aに示される3回の独立した実験から算出した。図14Cは、1 μM AI2ならびに10、100、および400 μMの指定のC4化合物の存在下でPAO-JP2 (prhlI-LVAgfp)を含む96ウェルプレートのMolecular Imagerスキャンを示す。図14Dは、C4化合物の結果の定量化を示す。データ解析は、図14Bに同じとした。
【図15】図15A〜15Bは、アンタゴニストアッセイを示す。図15Aは、1 μM AI1のみ(対照、黒棒)または1 μM AI1に加えて2もしくは3の存在下でのPAO-JP2 (plasI-LVAgfp)によるGFP発現を示す。図15Bは、1 μM AI1および10 μM AI2(対照、黒棒)または1 μM AI1および10 μM AI2に加えて2もしくは3の存在下でのPAO-JP2 (prhlI-LVAgfp)によるGFP発現を示す。
【図16】図16A〜16Eは、毒性因子アッセイを示す。図16Aは、PAO-JP2によるピオシアニン発現を示す。-、陰性対照; +、陽性対照、各25 μM AI1およびAI2; 2、100 μM 2の存在下で各25 μM AI1およびAI2; 3、100 μM 3の存在下で各25 μM AI1およびAI2。図16Bは、種々の濃度の2または3の存在下でのPAO-JP2によるピオシアニン発現の定量化を示す。-、AIを含まない陰性対照; +、各25 μM AI1およびAI2を含む陽性対照; 2、2の存在下で各25 μM AI1およびAI2; 3、3の存在下で各25 μM AI1およびAI2。図16Cは、野生型PAO1株のピオシアニン発現の定量化を示す。条件は、AIを加えなかった対照を除いては、図16Bと同じとした。図16Dは、5 μM AI1および10 μM AI2の非存在下(-対照)もしくは存在下(+対照)でまたは5 μM AI1および10 μM AI2に加えて2もしくは3の存在下で、PAO-JP2により引き起こされたエラスターゼB活性を示す。図16Eは、PAO1対照によりまたは2もしくは3の存在下で産生されたエラスターゼB活性を示す。
【図17】図17A〜17Bは、固定的バイオフィルムアッセイを示す。図17Aは、指定化合物の存在下でのPAO-JP2 (pTdK-GFP)によるバイオフィルムの発生を示す。図17Bは、50 μM 3の非存在下(陰性対照)または存在下でのPAO-1 (pTdK-GFP)によるバイオフィルムの発生を示す。
【図18】図18は、本発明により見出された、シュードモナス・アエルギノーザのQS回路のアゴニストおよびアンタゴニストを示す。
【図19】対掌性アミノアルコールの合成を示す。試薬および条件: (a) (i) 2 mol% ヤコブセン(Jacobsen)触媒、TMSN3; (ii) MeOH、触媒TFA; (iii) 2 mol% PtO2、H0; (b) (i) Ac2O; (ii) SOCl2; (iii) HCl、加熱。
【図20】図20Aは、lasアンタゴニストのフォーカストライブラリーの合成を示す。図20Aは、3-アミノシクロヘキセンに基づくライブラリーの固相合成を示す。試薬および条件: (a) (i) PPTS; (ii) mCPBA; (b) X-M+またはルイス酸(TMS-Xを用い); (c) (i) TFA; (ii) デス-マーチン(Dess-Martin)試薬。図20Bは、エポキシおよび塩素置換自殺型化合物を示す。
【図21】図21A〜21Bは、アニリン誘導体を示す。図21Aの場合、X1、X2、およびX3は、任意の官能基とすることができる。図21Bは、環が拡張されたアニリン誘導体を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造の二つまたはそれ以上の異なる自己誘導物質類似物質を含む、自己誘導物質類似物質のコンビナトリアル・ライブラリー:

式中、X1は独立してHおよびOHからなる群より選択され、X2は独立してHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、●は固相支持体であり、ならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、●は固相支持体であり、ならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびに●は固相支持体である; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびに●は固相支持体であり、および式中、Rは、CmH2m(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOHである)、からなる群より選択される。
【請求項2】
以下からなる群より選択される化合物を少なくとも一つ含む、請求項1記載のコンビナトリアル・ライブラリー:


【請求項3】
ライブラリーの少なくとも一つのメンバーが、自己誘導物質アゴニストまたは自己誘導物質アンタゴニストである、請求項1記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項4】
自己誘導物質が、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、エロモナス・ハイドロフィリア(Aeromonas hydrophilia)、エロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)、エルシニア・シュードツベロクローシス(Yersinia pseudotuberculosis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、ビブリオ・フィッシェリ(Vibrio fischeri)、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)、エルウィニア・カロトボラ(Erwinia carotovora)、リゾビウム・レグミノサルム(Rhizobium leguminosarum)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、およびエスケリッチャ・コリ(大腸菌)(Escherichia coli)からなる群より選択される生物により産生される、請求項3記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項5】
ライブラリーの少なくとも一つのメンバーが、シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質アゴニストまたは自己誘導物質アンタゴニストである、請求項4記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項6】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン、N-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン、および2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロンからなる群より選択される、請求項5記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項7】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトンである、請求項6記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項8】
固相支持体が、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-2-イルメトキシメチルポリスチレンである、請求項1記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項9】
以下の構造の二つまたはそれ以上の異なる自己誘導物質類似物質を含む、自己誘導物質類似物質のコンビナトリアル・ライブラリー:

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。
【請求項10】
以下からなる群より選択される化合物を少なくとも一つ含む、請求項9記載のコンビナトリアル・ライブラリー:



【請求項11】
ライブラリーの少なくとも一つのメンバーが、自己誘導物質アゴニストまたは自己誘導物質アンタゴニストである、請求項9記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項12】
自己誘導物質が、シュードモナス・アエルギノーザ、エロモナス・ハイドロフィリア、エロモナス・サルモニシダ、エルシニア・シュードツベロクローシス、ヘリコバクター・ピロリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ビブリオ・フィッシェリ、ビブリオ・ハーベイ、エルウィニア・カロトボラ、リゾビウム・レグミノサルム、ロドバクター・スフェロイデス、およびエスケリッチャ・コリ(大腸菌)からなる群より選択される生物により産生される、請求項9記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項13】
ライブラリーの少なくとも一つのメンバーが、シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質アゴニストまたは自己誘導物質アンタゴニストである、請求項12記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項14】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン、N-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン、および2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロンからなる群より選択される、請求項13記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項15】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトンである、請求項14記載のコンビナトリアル・ライブラリー。
【請求項16】
以下の構造を有する自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される。
【請求項17】
以下の構造を有する自己誘導物質アゴニストを含む、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

【請求項18】
以下の構造を有する自己誘導物質アゴニストを含む、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

【請求項19】
以下の構造を有する自己誘導物質アンタゴニストを含む、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

【請求項20】
以下の構造を有する自己誘導物質アンタゴニストを含む、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

【請求項21】
以下の構造を有する自己誘導物質アンタゴニストを含む、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

【請求項22】
以下の構造を有する自己誘導物質アンタゴニストを含む、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

【請求項23】
以下の構造を有する自己誘導物質アンタゴニストを含む、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

【請求項24】
以下の構造を有する自己誘導物質アンタゴニストを含む、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

【請求項25】
以下の構造を有する自己誘導物質アンタゴニストを含む、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

【請求項26】
以下の構造を有する自己誘導物質アンタゴニストを含む、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト:

【請求項27】
自己誘導物質が、シュードモナス・アエルギノーザ、エロモナス・ハイドロフィリア、エロモナス・サルモニシダ、エルシニア・シュードツベロクローシス、ヘリコバクター・ピロリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ビブリオ・フィッシェリ、ビブリオ・ハーベイ、エルウィニア・カロトボラ、リゾビウム・レグミノサルム、ロドバクター・スフェロイデス、およびエスケリッチャ・コリ(大腸菌)からなる群より選択される生物により産生される、請求項16記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト。
【請求項28】
自己誘導物質が、シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質である、請求項27記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト。
【請求項29】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン、N-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン、および2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロンからなる群より選択される、請求項28記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト。
【請求項30】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトンである、請求項29記載の自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニスト。
【請求項31】
以下の段階を含む、自己誘導物質アゴニストの同定方法:
以下の構造を有する自己誘導物質類似物質を提供する段階

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、ならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される;
自己誘導物質類似物質を自己誘導物質受容体と接触させる段階; および
自己誘導物質受容体の活性を自己誘導物質類似物質の存在下で測定する段階。
【請求項32】
自己誘導物質類似物質は、自己誘導物質アゴニストである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
自己誘導物質受容体が、シュードモナス・アエルギノーザ、エロモナス・ハイドロフィリア、エロモナス・サルモニシダ、エルシニア・シュードツベロクローシス、ヘリコバクター・ピロリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ビブリオ・フィッシェリ、ビブリオ・ハーベイ、エルウィニア・カロトボラ、リゾビウム・レグミノサルム、ロドバクター・スフェロイデス、およびエスケリッチャ・コリ(大腸菌)からなる群より選択される生物に存在する、請求項31記載の方法。
【請求項34】
自己誘導物質受容体が、シュードモナス・アエルギノーザのLasR、LasI、RhlR、またはRhlIである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
以下の段階を含む、自己誘導物質アンタゴニストの同定方法:
以下の構造を有する自己誘導物質類似物質を提供する段階

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される;
自己誘導物質類似物質を自己誘導物質受容体および自己誘導物質と接触させる段階であって、それにより、自己誘導物質受容体に対する自己誘導物質類似物質と自己誘導物質との競合を起こさせる;
自己誘導物質類似物質および自己誘導物質の存在下で、受容体の活性を測定する段階; および
測定した活性を自己誘導物質のみの存在下での受容体の活性と比較する段階。
【請求項36】
自己誘導物質類似物質が、自己誘導物質アンタゴニストである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
自己誘導物質受容体が、シュードモナス・アエルギノーザ、エロモナス・ハイドロフィリア、エロモナス・サルモニシダ、エルシニア・シュードツベロクローシス、ヘリコバクター・ピロリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ビブリオ・フィッシェリ、ビブリオ・ハーベイ、エルウィニア・カロトボラ、リゾビウム・レグミノサルム、ロドバクター・スフェロイデス、およびエスケリッチャ・コリ(大腸菌)からなる群より選択される生物に存在する、請求項35記載の方法。
【請求項38】
自己誘導物質受容体が、シュードモナス・アエルギノーザのLasR、LasI、RhlR、またはRh1Iである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
自己誘導物質が、シュードモナス・アエルギノーザ、エロモナス・ハイドロフィリア、エロモナス・サルモニシダ、エルシニア・シュードツベロクローシス、ヘリコバクター・ピロリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ビブリオ・フィッシェリ、ビブリオ・ハーベイ、エルウィニア・カロトボラ、リゾビウム・レグミノサルム、ロドバクター・スフェロイデス、およびエスケリッチャ・コリ(大腸菌)からなる群より選択される生物により産生される、請求項35記載の方法。
【請求項40】
自己誘導物質が、シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン、N-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン、および2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロンからなる群より選択される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトンである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
以下の構造

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される
を有する自己誘導物質類似物質、および薬学的担体または希釈剤を含有する組成物。
【請求項44】
自己誘導物質類似物質が、自己誘導物質アンタゴニストである、請求項43記載の組成物。
【請求項45】
自己誘導物質が、シュードモナス・アエルギノーザ、エロモナス・ハイドロフィリア、エロモナス・サルモニシダ、エルシニア・シュードツベロクローシス、ヘリコバクター・ピロリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ビブリオ・フィッシェリ、ビブリオ・ハーベイ、エルウィニア・カロトボラ、リゾビウム・レグミノサルム、ロドバクター・スフェロイデス、およびエスケリッチャ・コリ(大腸菌)からなる群より選択される生物により産生される、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
自己誘導物質類似物質が、シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質アンタゴニストである、請求項45記載の組成物。
【請求項47】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン、N-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン、および2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロンからなる群より選択される、請求項46記載の組成物。
【請求項48】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトンである、請求項47記載の組成物。
【請求項49】
抗生物質をさらに含む、請求項43記載の組成物。
【請求項50】
抗生物質が、カルバペネムおよびアミノグリコシドからなる群より選択される、請求項49記載の組成物。
【請求項51】
自己誘導物質受容体の活性を調節するための方法であって、自己誘導物質受容体を、以下の構造

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される
を有する自己誘導物質類似物質と接触させる段階を含み、それにより、自己誘導物質受容体の活性が調節される方法。
【請求項52】
自己誘導物質類似物質が、自己誘導物質アゴニストまたは自己誘導物質アンタゴニストである、請求項51記載の方法。
【請求項53】
自己誘導物質類似物質が、シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質アゴニストまたは自己誘導物質アンタゴニストである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン、N-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン、および2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロンからなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトンである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
自己誘導物質受容体が細菌細胞に見出される、請求項51記載の方法。
【請求項57】
細菌細胞が宿主生物内に存在する、請求項56記載の方法。
【請求項58】
自己誘導物質受容体が、シュードモナス・アエルギノーザ、エロモナス・ハイドロフィリア、エロモナス・サルモニシダ、エルシニア・シュードツベロクローシス、ヘリコバクター・ピロリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ビブリオ・フィッシェリ、ビブリオ・ハーベイ、エルウィニア・カロトボラ、リゾビウム・レグミノサルム、ロドバクター・スフェロイデス、およびエスケリッチャ・コリ(大腸菌)からなる群より選択される生物に存在する、請求項51記載の方法。
【請求項59】
自己誘導物質受容体が、シュードモナス・アエルギノーザのLasR、LasI、RhlR、またはRh1Iである、請求項58記載の方法。
【請求項60】
バイオフィルム形成の調節方法であって、生物の細胞を、以下の構造

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される
を有する自己誘導物質類似物質と接触させる段階を含み、それにより、細胞のバイオフィルム形成が調節される方法。
【請求項61】
バイオフィルム形成が阻害される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
バイオフィルムの構造が自己誘導物質類似物質との接触により改変される、請求項60記載の方法。
【請求項63】
自己誘導物質類似物質が、自己誘導物質アンタゴニストである、請求項60記載の方法。
【請求項64】
自己誘導物質類似物質が、シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質アンタゴニストである、請求項63記載の方法。
【請求項65】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン、N-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン、および2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロンからなる群より選択される、請求項64記載の方法。
【請求項66】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質は、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトンである、請求項65記載の方法。
【請求項67】
被検体中の生物の増殖または毒性を調節するための方法であって、生物の細胞を、以下の構造

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される
を有する自己誘導物質類似物質と接触させる段階を含み、それにより、被検体中の生物の増殖または毒性が調節される方法。
【請求項68】
自己誘導物質類似物質が自己誘導物質アゴニストであって、生物の増殖が促進される、請求項67記載の方法。
【請求項69】
自己誘導物質類似物質は自己誘導物質アンタゴニストであって、生物の増殖が阻害される、請求項67記載の方法。
【請求項70】
自己誘導物質類似物質が自己誘導物質アンタゴニストであって、毒性が阻害される、請求項67記載の方法。
【請求項71】
自己誘導物質類似物質が、シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質アゴニストまたはアンタゴニストである、請求項67記載の方法。
【請求項72】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン、N-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン、および2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロンからなる群より選択される、請求項71記載の方法。
【請求項73】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトンである、請求項72記載の方法。
【請求項74】
生物の定足数感知機構の阻害方法であって、定足数感知機構を持つ生物の細胞を、以下の構造

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される
を有する自己誘導物質類似物質と接触させる段階を含み、それにより、生物の定足数感知機構が阻害される方法。
【請求項75】
自己誘導物質類似物質が、自己誘導物質アンタゴニストである、請求項74記載の方法。
【請求項76】
自己誘導物質類似物質が、シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質アンタゴニストである、請求項75記載の方法。
【請求項77】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン、N-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン、および2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロンからなる群より選択される、請求項76記載の方法。
【請求項78】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトンである、請求項77記載の方法。
【請求項79】
生物は、シュードモナス・アエルギノーザ、エロモナス・ハイドロフィリア、エロモナス・サルモニシダ、エルシニア・シュードツベロクローシス、ヘリコバクター・ピロリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ビブリオ・フィッシェリ、ビブリオ・ハーベイ、エルウィニア・カロトボラ、リゾビウム・レグミノサルム、ロドバクター・スフェロイデス、およびエスケリッチャ・コリ(大腸菌)からなる群より選択される、請求項74記載の方法。
【請求項80】
定足数感知機構を持つ生物により引き起こされた、被検体における感染症の治療方法であって、以下の構造

式中、X1はHおよびOHからなる群より選択され、X2はHおよびOHからなる群より選択され、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択されならびにnは0〜4である; または

式中、X1、X2、およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX1、X2、およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択される; または

式中、X2およびX3は独立してH、OH、SH、OR1、SR1、NH2、NHR1、NR1R2、COOR1、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アシル基、カルボニル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、および、隣接のX2およびX3置換基が結合したもの、炭素原子3〜8個のシクロアルキル、炭素原子とN、S、およびOからなる群より選択されるヘテロ原子1〜6個とを含む3〜8員のヘテロシクロアルキル、ならびに3〜8員のアリールまたはヘテロアリール環からなる群より選択され、その際にR1およびR2は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、およびスルホニルからなる群より選択され、および式中、Rは、CmH2m+1(式中、mは1〜14である)、

(式中、pは1〜14である)、および

(式中、qは1〜14であり、X4はOH、NH2、もしくはSHであり且つX5はHであり、またはX4はHであり且つX5はOH、NH2、もしくはSHである)、からなる群より選択される
を有する自己誘導物質類似物質、および薬学的担体または希釈剤を含有する組成物の有効量を、被検体に投与する段階を含む方法。
【請求項81】
自己誘導物質類似物質が、自己誘導物質アンタゴニストである、請求項80記載の方法。
【請求項82】
自己誘導物質類似物質が、シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質アンタゴニストである、請求項81記載の方法。
【請求項83】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン、N-ブチロイル-L-ホモセリンラクトン、および2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノロンからなる群より選択される、請求項82記載の方法。
【請求項84】
シュードモナス・アエルギノーザの自己誘導物質が、N-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトンである、請求項83記載の方法。
【請求項85】
生物が、シュードモナス・アエルギノーザ、エロモナス・ハイドロフィリア、エロモナス・サルモニシダ、エルシニア・シュードツベロクローシス、ヘリコバクター・ピロリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ビブリオ・フィッシェリ、ビブリオ・ハーベイ、エルウィニア・カロトボラ、リゾビウム・レグミノサルム、ロドバクター・スフェロイデス、およびエスケリッチャ・コリ(大腸菌)からなる群より選択される、請求項80記載の方法。
【請求項86】
被検体が哺乳類である、請求項80記載の方法。
【請求項87】
哺乳類がヒトである、請求項86記載の方法。
【請求項88】
組成物に抗生物質がさらに含まれる、請求項80記載の方法。
【請求項89】
抗生物質が、カルバペネムおよびアミノグリコシドからなる群より選択される、請求項88記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公表番号】特表2006−512290(P2006−512290A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−529302(P2004−529302)
【出願日】平成15年8月11日(2003.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/025102
【国際公開番号】WO2004/016213
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(398064899)ザ・リサーチ・ファウンデーション・オブ・ステイト・ユニバーシティ・オブ・ニューヨーク (5)
【氏名又は名称原語表記】THE RESEARCH FOUNDATION OF STATE UNIVERSITY OF NEW YORK
【Fターム(参考)】