説明

自己貼着性積層体フィルム

【課題】
経時後においても基材フィルムとシリコーン層が強固に接着し、積層体の透明性が高く、リワーク性に優れているのみならず、目付け加工をすることなく、シリコーン層の塗膜表面が極めて平滑にすることができ、被着体への貼着時に該シリコーン層と被着体の界面において気泡跡が発生し難くい自己貼着性積層体フィルムを提供すること。
【解決手段】
基材フィルム/アンカー層/更に少なくとも10μm以上のシリコーン層、よりなる自己貼着性積層体フィルムにおいて、前記シリコーン層が付加反応型シリコーン樹脂を塗布、熱架橋したシリコーン層からなり、前記アンカー層が酸価7〜100mgKOH/gの範囲にあるポリエステル系樹脂100重量部に対して解離性層状ケイ酸塩30〜200重量部含有する水性塗液を塗工することにより設けられている層よりなる自己貼着性積層体フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平滑面を有する被着体に貼ったり剥がしたりするリワーク性が可能な、基材フィルム上にシリコーン層を設けた自己貼着性積層体フィルムに関するもので、その用途は、電子部品や液晶等の表示画面の保護フィルム、ウインドウ用保護フィルム、その他産業上広い分野で使用されるシール材、クッション材等である。
【背景技術】
【0002】
平滑面を有する被着体に貼ったり剥がしたりするリワーク性が可能な、基材フィルム上にシリコーン層を設けた自己貼着性積層体フィルムは、それ自体のみならず、該自己貼着性積層体フィルムに、耐スクラッチ性、紫外線遮断性、電磁波遮断性、導電性、消臭性、脱臭性、抗菌性、親水性、防曇性、撥水性、熱伝導性、インク受容性等の機能を更に付与することにより産業上広い分野で使用される。
【0003】
例えば、液晶等の表示画面用保護フィルムとして、基材フィルム上にシリコーン層を設けた自己貼着性積層体フィルムを使用する場合には、該積層体フィルムには、
(1)視認性確保のため積層体フィルムの透明性が高いこと。(2)一般に基材フィルムとして汎用して用いられるポリエステルフィルムやポリカーボネートフィルム等の基材フィルムと架橋後のシリコーン層は接着し難いので、基材フィルムとシリコーン層が強固に接着されていること。(3)シリコーン層の性状としては、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体への貼着時に被着体の表面に追従して、被着体に対するシリコーン層の密着面方向の剪断力を確保することが求められ、このためには、シリコーン層の厚みが少なくとも10μm以上であること。そして、その状態で被着体への貼着時に該シリコーン層と被着体の界面において気泡跡を発生し難くするために、該シリコーン層表面が極めて平滑であること。(4)被着体への該積層体フィルムの貼着後、該積層体フィルムを剥離する際に、経時により被着体面とシリコーンゴム層面の密着力が上昇せずスムーズに剥離できかつ被着体上にシリコーン残りが発生しないこと。等の機能が発現されていることが要求される。
【0004】
前記(1)、(2)、(3)の課題を解決する手段として特許文献1には、基材フィルムに特定の接着性改良剤をミラブルタイプのシリコーンゴムに配合した厚み10〜500μmの自己接着性シリコーンゴムフィルムを未加硫の状態で重ね、その上に平滑なカバーシートを積層し電子線照射により架橋処理を行いその後カバーシートを剥離することにより、基材フィルムと該シリコーンゴムフィルムの層間剥離力が4N/20mm以上の接着力を有し、かついわゆる目付け加工による表示画面に貼着されるシリコーンゴムフィルムの平均表面粗度Raが0.12μm以下の平滑面に形成されてなる自己粘着力で貼着可能な高透明性表示画面用保護フィルムが記載されている。
しかしながら、この方法は、電子線照射装置という非常に高価な装置が必要となり、更に真空系が必要になるため、積層体のロールtoロール処理が難しく、経済的にもコスト高となる。
【0005】
一方、前記接着性改良剤をシリコーンゴムに配合した自己接着性シリコーン樹脂を用いることなく、通常の縮合反応型や付加反応型の硬化性シリコーン樹脂とポリエステルフィルム等の基材フィルムとの接着性を改善する方法として、特許文献2には、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に芳香族ジカルボン酸を60モル%以上含むジカルボン酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂を含む水性塗液を塗工しアンカー層を設け、該アンカー層上に、前記硬化性シリコーン樹脂を0.05〜数μm塗布し硬化をさせ離型層を設けた離型フィルムが記載されている。
この方法は、シリコーン樹脂の硬化反応に際して、低温短時間で深部まで架橋し、透明で耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れかつ低粘度で液状タイプである、白金触媒等のもと、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンと架橋剤としてSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとのヒドロキシル反応により熱架橋する付加型液状シリコーン樹脂の使用が可能であり、自己接着性シリコーンゴムや電子線架橋による目付け加工を使用せずにシリコーン層と基材フィルムとの接着力を上げることが出来る点で優れている。
【0006】
一方、前記表示画面の保護フィルムやウインドウ用保護フィルムとして自己貼着性積層体フィルムを使用する場合、シリコーン層の膜厚は、被着体に対するシリコーン層の密着面方向の剪断力を確保するために少なくとも10μm以上、通常は20〜50μmが必要となる。このようなに中、ポリエステル基材フィルムに前記特許文献2記載のアンカー層を設け、その上に、シリコーン層がビニル基とSiH基とのヒドロキシル反応により熱架橋する付加反応型シリコーン樹脂を塗布、熱処理したシリコーン層を特に膜厚10μm以上設けた場合には、シリコーン層の表面が梨地模様等の塗布ムラが発生しやすく、塗工面に多数の凹凸が生じ、シリコーン層の表面が平滑でなく、被着体への貼着時に該シリコーン層と被着体の界面において気泡跡を発生し易いという欠点を有している実験結果が生じた。前記離型フィルムの用途のように硬化シリコーン樹脂層の厚みが0.05〜0.5μmの場合は塗布ムラも大きくは目立たないが、自己貼着性積層体フィルムを特に前記表示画面用保護フィルムやウィンドウ保護フィルムとして用いる場合には、前記表面凹凸は大きな欠点となる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−056694号公報
【特許文献2】特開平09−141806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電子線照射を利用した自己接着性シリコーンゴムや目付け加工を用いることなく、基材フィルム上に少なくとも10μm以上のシリコーン層を設けた自己貼着性積層体フィルムにおいて、シリコーン樹脂塗液を塗工し、熱処理する工程だけで、経時後においても基材フィルムとシリコーン層が強固に接着し、積層体の透明性が高く、被着体への該積層体フィルムの貼着後、該積層体フィルムを剥離する際に、経時により被着体面とシリコーン層面の密着力が上昇せずスムーズに剥離できかつ被着体上にシリコーン残りが発生せず、リワーク性に優れているのみならず、目付け加工をすることなく、シリコーン層の塗膜表面が極めて平滑にすることができ、被着体への貼着時に該シリコーン層と被着体の界面において気泡跡が発生し難くい自己貼着性積層体フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、この梨地模様等の塗布ムラが発生しやすい原因を鋭意検討した結果、
該塗布ムラは前記付加型液状シリコーン樹脂自体および必要に応じて粘度調整剤として用いるトルエン等の溶剤が帯電され易いことによるものであることを見出した。
しかしながら、前記付加型シリコーン樹脂は、架橋反応に際して触媒毒の影響を受けやすいという欠点があり、前記付加型シリコーン樹脂や前記アンカー層中に、通常の4級塩よりなる界面活性剤などの帯電防止剤や有機伝導性のポリチオフェンなどを含有させることが難しい。また、該自己貼着性積層体フィルムは高い透明性を要求される場合が多いので、カーボン系等の帯電防止剤を用いることも好ましくない。このような中、本発明者等は、上記課題を解決する手段として以下の発明を見出した。
【0010】
第1発明は、基材フィルムの少なくとも片面にアンカー層、更に少なくとも10μm以上のシリコーン層を積層した自己貼着性積層体フィルムにおいて、前記シリコーン層がビニル基とSiH基とのヒドロキシル反応により熱架橋する付加反応型シリコーン樹脂を塗布、熱架橋したシリコーン層からなり、前記アンカー層が酸価7〜100mgKOH/gポリマーの範囲にあるポリエステル系樹脂100重量部に対して解離性層状ケイ酸塩30〜200重量部を含有する水性塗液を塗工することにより設けられている層よりなることを特徴とする自己貼着性積層体フィルムである。
第2発明は、前記ポリエステル系樹脂がアクリル変性ポリエステル系樹脂であることを特徴とする第1発明記載の自己貼着性積層体フィルムである。
第3発明は、前記解離性層状ケイ酸塩が、スメクタイト系粘度鉱物、膨潤性マイカから選ばれた1種以上であること特徴とする第1発明および第2発明記載の自己貼着性積層体フィルムである。
第4発明は、前記スメクタイト系粘度鉱物が、下記一般式することを特徴とする第3発明記載の自己貼着性積層体フィルムである。
[Si(MgLi)O20OH4−c−XNa+X
(0<a≦6、0<b≦6、4<a+b<8、0≦c<4、X=12−2a−b、ここでa、b、cおよびXはそれぞれ上記の関係を満たす整数を表す。)
第5発明は被着体に貼着される前記シリコーンゴム層表面の平均表面粗度Raが0.12μm以下の平滑面に形成されていることを特徴とする第1発明〜第4発明記載の自己貼着性積層体フィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自己貼着性積層体フィルムは、シリコーン層がビニル基とSiH基とのヒドロキシル反応により熱架橋する付加反応型シリコーン樹脂を塗布、熱処理したポリオルガノシロキサンからなるため、膜厚が数十μmであっても150℃以下の低温短時間で深部まで架橋し、透明で耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れている。
またアンカー層が、酸価7〜100mgKOH/gの水分散性あるいは水溶性ポリエステル系樹脂100重量部に対して解離性層状ケイ酸塩30〜200重量部含有する水性塗液を塗工することにより設けられている層であるため、貼られた場所が室内外を問わず、経時後であっても基材フィルムとシリコーン層との接着力が強く、該自己貼着性積層体フィルムを被着体から剥がしてもシリコーンゴム層のみが被着体に残るという問題が発生しない。また貼着後の被着体表面、特にガラス面とシリコーンオリゴマーとの反応による密着力の上昇を防ぐことができる。
さらに、アンカー層は特定の酸価を有するポリエステル系樹脂と解離性層状ケイ酸塩からなる水性塗液であるので、塗液の分散安定性に優れ、かつ透明性を維持した上で帯電防止機能が極めて高く、帯電の影響を受けやすい付加反応型シリコーン樹脂塗液を厚膜の状態で塗布しても塗布ムラが発生せず表面平滑な膜が得られる。これにより、被着体への貼着時に該シリコーン層と被着体の界面において気泡跡が発生し難い自己貼着性積層体フィルムを提供することができる。また、ビニル基とSiH基とのヒドロキシル反応により熱架橋する付加反応型シリコーン樹脂の場合には、アンカー層の素材により、硬化阻害を受けやすい傾向があるが、本発明のアンカー層中の解離性層状ケイ酸塩はそのようなことが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る自己貼着性積層体フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面にアンカー層を設け、その上に更に少なくとも10μm以上のシリコーン層を積層した自己貼着性積層体フィルムにおいて、前記アンカー層が酸価7〜100mgKOH/gポリマーの範囲にあるポリエステル系樹脂100重量部に対して解離性合成層状ケイ酸塩30〜200重量部含有する水性塗液を塗工することにより設けられている層よりなることを特徴とする。
以下に本発明の自己貼着性積層体フィルムを構成する順に説明する。
【0013】
(基材フィルム)
本発明で使用する基材フィルムは、各種のプラスチックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等よりなるフィルムが例示されるが、これらに限定されるものではない。シリコーンゴムの熱架橋時の取り扱性、コストの面からポリエステルフィルムやポリカーボネートフィルムが特に好ましい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常4〜400μmの範囲のものを用いる。
【0014】
基材フィルムは、その表面をコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、火炎処理したり、必要に応じて易接着層等を設けてもよい。易接着層等を積層する方法としては、製膜時に積層するいわゆるインライン法、または製膜したフィルムに積層するいわゆるオフライン法のいずれでもよい。
【0015】
(アンカー層)
本発明に係るアンカー層は、2つの目的を有し、第1の目的は、基材フィルムとシリコーン層と接着力の向上および被着体への該積層体フィルムの貼着後該積層体フィルムを剥離する際に、経時により被着体面とシリコーン層面の密着力が上昇せずスムーズに剥離できかつ被着体上にシリコーン残りが発生しないことであり、第2の目的は、第1の目的を達成しつつ、被着体への貼着時に該シリコーン層と被着体の界面において気泡跡を発生し難くするために、前記シリコーン層塗工面を極めて平滑にすることである。
【0016】
第1の目的は、アンカー層に用いる樹脂として、酸価7〜100mgKOH/gポリマーの範囲にあるポリエステル系樹脂を用いることにより達成される。酸価が7mgKOH/gポリマー未満であるとアンカー層とシリコーンゴム層の接着力が弱くシリコーンゴム層が、特に経時等により基材フィルムから離脱しやすくなる。また被着体への該積層体フィルムの貼着後該積層体フィルムを剥離する際に、経時により被着体面とシリコーン層面の密着力が上昇しスムーズに剥離できずかつ被着体上にシリコーン残りが発生しやすくなる。また酸価が100mgKOH/gポリマーを超えると樹脂皮膜の耐水性が不足する。
第2の目的は、前記酸価7〜100mgKOH/gポリマーの範囲にあるポリエステル系樹脂を水分散性あるいは水溶性の水性塗液として使用し、該樹脂100重量部に対して解離性層状ケイ酸塩を30〜200重量部含有する水性塗液を塗工することにより設けられている層により達成される。前記酸価のポリエステル系樹脂を水分散性あるいは水溶性の水性塗液として使用することにより、前記解離性層状ケイ酸塩を高濃度均一に安定に分散することが可能となり、また優れた帯電防止機能を発現できると同時に透明でかつシリコーンの硬化に際して硬化阻害のないアンカー層が実現可能となる。特に水分散型が好ましい。
【0017】
(ポリエステル系樹脂)
本発明において使用される酸価10〜100mgKOH/gポリマーの範囲にあるポリエステル系樹脂は、常法により、例えば多価カルボン酸成分と多価ヒドロキシ化合物成分とのエステル化反応から作られたポリエステル系樹脂である。
【0018】
該多価カルボン酸成分は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物で、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、5−ソジオスルホイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ドデカンジカルボン酸などを挙げることができる。
【0019】
また、多価ヒドロキシ化合物成分は、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物で、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の三価以上のポリオール;2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸などを挙げることができる。
【0020】
また、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステルなどのモノエポキシ化合物を、ポリエステル樹脂中のカルボキシル基と反応させることにより、ポリエステル樹脂に導入しても良い。
【0021】
該ポリエステル系樹脂は酸価が7〜100mgKOH/gポリマーの範囲にあることが必要である。酸価が7mgKOH/gポリマー未満の場合は、アンカー層とシリコーンゴム層の接着力が弱く、シリコーンゴム層が基材フィルムから離脱しやすくなる。また、該自己貼着性積層体フィルムを被着体に貼着後、経時により該自己貼着性積層体フィルムを剥がす際に、被着体表面とシリコーンゴム層の密着力が上昇し、シリコーンゴム層のみが被着体に残るという問題が発生し易くなる。酸価が100mgKOH/gポリマーを超えると樹脂皮膜の耐水性が不足する。
また、該酸価が7〜100mgKOH/gポリマーのポリエステル系樹脂は、水酸基が導入されていてもよい。水酸基が導入されていると、架橋反応剤等を樹脂中に添加することによりアンカー層の改質がしやすくなる。また、樹脂のガラス転移温度は0〜75℃であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃未満の場合は皮膜がブロッキングし易くかつ皮膜強度が得られ難く、ガラス転移点が75℃を超えると基材フィルムとの密着性が落ちる場合がある。尚、該樹脂の平均分子量は1,000〜50,000であることが好ましい。
【0022】
本発明において使用される酸価7〜100mgKOH/gポリマーの範囲にあるポリエステル系樹脂は、アクリル変性やウレタン変性したポリエステル樹脂であっても良い。特に、アクリル変性ポリエステル樹脂は皮膜特性の観点から好ましい。
【0023】
アクリル変性ポリエステル樹脂は、例えば、常法により、不飽和ポリエステル樹脂とカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含む重合性(メタ)アクリルモノマーとをグラフト重合したり、水酸基含有ポリエステル樹脂にアクリル変性脂肪酸などを反応させることにより得られる。
【0024】
一方、本発明に使用される酸価7〜100mgKOH/gポリマーのポリエステル系樹脂の乾膜の表面抵抗は、23℃、60%RHの環境で、通常1013Ω/□を超えている。このような塗膜上に、非常に帯電しやすい前記付加型液状シリコーン樹脂自体および必要に応じて粘度調整剤として用いるトルエン等の溶剤などが塗布、120〜150℃程度の熱架橋されると、特にシリコーン層が乾膜10μm以上の場合には、シリコーン層の表面が梨地模様等の塗布ムラが発生しやすく、シリコーン層の表面が平滑でなく、被着体への貼着時に該シリコーン層と被着体の界面において気泡跡が発生し易くなる。
【0025】
上記問題点を解決するためには、付加型液状シリコーン樹脂塗液自体を帯電しにくいものにするか該アンカー層に表面抵抗を下げる帯電防止剤を添加させる通常の方法が考えられる。しかしながら、一般的な帯電防止剤である4級塩の界面活性剤などを前記アンカー層やシリコーン樹脂塗布液に入れた場合は、添加量が多くないと帯電防止の効果を発揮せず、その場合シリコーン樹脂の硬化の際に4級塩等が触媒毒となりシリコーンゴムの硬化不良を生じる。また帯電防止効果に際しても大気中の湿度の影響を受けやすい。またATO等の高価な金属酸化物系の帯電防止剤は添加量が多くないと帯電防止機能が十分に発揮されず、コストアップの要因となり、また透明性の点においても劣る。また、カーボンナノチューブ等をアンカー層に含有させたものは、帯電防止効果はあるものの、高い透明性が要求される自己貼着性積層体フィルムには透明性を低下させてしまうため好ましくない。
一方、解離性層状ケイ酸塩は、コスト的に安価であり、前記酸価7〜100mgKOH/gポリマーのポリエステル系樹脂の水性液中に高濃度で安定に分散でき、付加反応型シリコーン樹脂の硬化に際して、触媒毒とならず硬化阻害を犯さない。かつ透明性を維持した上で帯電防止機能が極めて高く、帯電の影響を受けやすいシリコーン樹脂塗液を厚膜の状態で塗布しても塗布ムラが発生せず表面平滑なシリコーン層膜が得られる。
【0026】
(解離性層状ケイ酸塩)
本発明に使用される解離性層状ケイ酸塩としては、水等の極性溶媒で膨潤する特性を有する親水性のスメクタイト系粘度鉱物、膨潤性マイカ、バーミキュライトから選ばれた1種以上である。スメクタイト系粘度鉱物としては、下記一般式を有するスメクタイト系粘度鉱物が、
[Si(MgLi)O20OH4−c−xNa+x
(0<a≦6、0<b≦6、4<a+b<8、0≦c<4、X=12−2a−b、ここでa、b、cおよびXはそれぞれ上記の関係を満たす整数を表す。)
膨潤性マイカとしては、例えばNa型テトラシリシックフッ素マイカ、Li型テトラシリシックフッ素マイカ、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等が挙げられる。
バーミキュライトとしては、一般式:(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+1/2)x・nH2O(式中、MはNa及びMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)があげられる。
【0027】
前記ポリエステル系樹脂に良好な帯電防止機能を発現するために前記解離性層状ケイ酸塩を多量に含有させた場合であっても、自己貼着性積層体フィルムの透明性を確保する観点から、該解離性層状ケイ酸塩の平均一次粒子径は、3〜500nmの範囲が好ましく、特に5〜50nmの範囲が特に好ましい。この観点から、特に前記一般式を有するスメクタイト系粘度鉱物が特に好ましく、例えば、ロックウッド・アディティブ社製ラポナイトS、JS等の商品名で入手して本発明に用いることができる。
また前記平均一次粒子径が500nmを超えると、前記アンカー層の透明性のみならず、前記ポリエステル樹脂水性溶液中において均一な分散性が低下し、結果として帯電防止機能が低下する。
【0028】
前記ポリエステル樹脂水性溶液中への解離性層状ケイ酸塩の高濃度塗液を作製するために、解離性層状ケイ酸塩にピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩等の解膠剤を使用することができる。前記解膠剤の含有量は、解離性層状ケイ酸塩に対して1.0〜10重量%、より好ましくは3.0〜8.0重量%である。
【0029】
(アンカー層)
また前記のごとく、帯電防止性はアンカー層中の解離性層状ケイ酸塩の濃度が高いほどその効果を発揮する。被着体への貼着時に該シリコーン層と被着体の界面において気泡跡を発生し難くするために、前記シリコーン層塗工面を確実に極めて平滑にするためには、アンカー層の表面抵抗は23℃、60%RHの環境下で、5.0×1012Ω/□以下にする必要がある。このためには解離性層状ケイ酸塩の添加量は前記ポリエステル樹脂100重量部に対して30〜200重量部が好ましい。前記範囲未満であると、10μm以上の前記シリコーン樹脂を塗布し熱架橋させたシリコーン層の表面平滑性が平均表面粗度Raが0.12μm以下の平滑面が達成し難く、また前記範囲以上であると、コスト的に無駄であると同時に、アンカー層塗膜の柔軟性が欠けると共に塗液の安定性が欠けてくる。
【0030】
アンカー層の厚みは0.1〜5μmの範囲、より好ましくは0.15〜3μmの範囲である。アンカー層の厚みが、前記範囲以下であると熱架橋されたシリコーン層が基材フィルムより離脱し易くなる。さらに帯電防止性能が安定しない。一方前記範囲を超えるとアンカー層の柔軟性が無くなり硬い層となり、基材フィルムへの密着性が悪くなる。
【0031】
本発明のアンカー層用塗液には、前記の成分の他、基材フィルムへの濡れ性を改善するために、樹脂や解離性層状ケイ酸塩の分散性を壊さない範囲内において水と混和性のアルコール等の有機溶媒を添加してもよい。また、その他の方法として、前記付加反応型シリコーン樹脂の架橋反応に対して触媒毒にならない範囲で濡れ性改善剤を添加することができる。また、必要に応じて、加硫剤、加硫促進剤など、この種の組成物に通常添加されるものを本発明の効果が低下しない範囲で加ええることができる。
【0032】
(シリコーン樹脂)
本発明のシリコーン層に用いるシリコーンの性状としては、透明性が高く、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体の表面に対しても、シリコーン層の面が被着体表面に沿うことがもとめられる。さらに剥離の際には、小さい剥離力で、容易に剥離できることが求められる。また、少なくとも厚み10μm以上で、目付け加工の方法を用いることなく、塗布及び加熱処理だけで架橋シリコーンゴム層を設けるためには、シリコーンとしては、シリコーン樹脂の硬化反応に際して、150℃以下の低温短時間で深部まで架橋し、透明で耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れかつ低粘度で液状タイプである、白金触媒等のもと、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンと架橋剤としてSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとのヒドロキシル反応により熱架橋する付加型液状シリコーン樹脂の使用が好ましい。
【0033】
このような性状のシリコーンとして、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端にのみビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものを用いると良い。
【0034】
これらのシリコーンの1形態としては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンとは下記一般式(化1)で表せられる化合物である。
【0035】
【化1】

【0036】
(式中Rは下記有機基、nは整数を表す)
【0037】
【化2】

【0038】
(式中Rは下記有機基、mは整数を表す)
【0039】
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種又は異種の非置換又は置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0040】
両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基である化合物である。末端にのみビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンは上記一般式(化2)で表せられる化合物である。末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン上記一般式(化2)中のRの一部がビニル基である化合物である。
【0041】
ここで架橋反応に用いる架橋剤は公知のものでよい。架橋剤の例として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。
【0042】
架橋反応に用いる白金系触媒は公知のものでよく、これには塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物あるいは塩化白金酸と各種オレフィンとの鎖塩などがあげられる。架橋反応したシリコーン層は、シリコーンゴムのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体との密着を容易にさせるものである。
【0043】
本発明に係るシリコーンの市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。なかでも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点がある。但し、無溶剤型であっても、所望の膜厚を得るために粘度調節のために、必要に応じてトルエン等の有機溶剤を添加することができる。
【0044】
前述のごとく、シリコーン層の性状としては、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体への貼着時に被着体の表面の凹凸に追従して密着力を確保することが求められる。
そして、例えば前記表示画面の保護フィルムやウインドウ用保護フィルムとして自己貼着性積層体フィルムを使用する場合、シリコーン層の膜厚は、被着体に対するシリコーンゴム層の密着面方向の剪断力を確保するために少なくとも10μm以上、通常は20〜50μmが必要となる。またシール材やクッション材として使用する場合には、場合により数100μmの膜厚が要求される場合がある。10μm以下であると被着体に対する機能性フィルムの密着面方向の剪断力が確保できず、特に長期貼りつけ時には、自己貼着性積層体フィルムが被着体から剥がれ易い。
【0045】
シリコーン層の表面の汚れや異物付着を防いだり、自己貼着性積層体フィルムのハンドリングを向上させるために樹脂フィルム製のセパレータをシリコーン層面に張り合わせることができる。
【0046】
アンカー層塗工液、シリコーン層塗工液の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等公知の方法が適宜使用される。
【0047】
被着体の材質は、一般的にガラス、樹脂、金属、金属酸化物等であり、被着体の表面
はできるだけ平滑であることが必要である。表面の凹凸が大きいとシリコーンゴム層が凹凸に追重することが難しくなり、密着することができなくなる。
【0048】
本発明の自己貼着性積層体フィルムの前記シリコーンゴム層の反対側の基材フィルム面には、耐スクラッチ性、紫外線遮断性、電磁波遮断性、導電性、消臭性、脱臭性、抗菌性、親水性、防曇性、撥水性、熱伝導性等を有する機能層を更に設けることが出来る。
【実施例】
【0049】
以下本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例および参考例で使用されるポリエステル系樹脂の製造例を示すが、樹脂の酸価の測定は、酸価ポリマーの水性液を1/10規定のKOH水溶液により、指示薬としてとしてフェノールフタレンを用いて滴定し、ポリマー1gを中和するのに要したKOHのmg数を求めた。
【0051】
<ポリエステル系樹脂の製造例P1>
多価カルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)36.0モル部、アジピン酸(ADA)4.0モル部、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)36.0モル部、ネオペンチルグリコ−ル(NPG)11.5モル部、ビスフェノールA・エチレンオキシド付加体6.0モル部を原料成分として反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、圧力0.3MPaG、温度260℃で、3.5時間エステル化反応を行った。得られたエステル化物に、三酸化アンチモンを2.5×10−4モル/多価カルボン酸成分1モル添加し、0・5hPaに減圧し、280℃で3時間重縮合反応を行いポリエステル樹脂を得た。次いで、解重合剤として、無水トリメリット酸(TMA)5.5モル部、イソフタル酸(IPA)1.0モル部を添加し、常圧下、250℃で2時間解重合剤を行い、
テレフタル酸(TPA)/アジピン酸(ADA)/無水トリメリット酸(TMA)/イソフタル酸(IPA)/エチレングリコール(EG)/ネオペンチルグリコ−ル(NPG)/ビスフェノールA・エチレンオキシド付加体=36.0/4/5.5/1.0/36.0/11.5/6.0(モル比)のポリエステル樹脂を得た。
上記のポリエステル樹脂をその酸価と当量のアンモニア水及びブチルセロソルブ5%を含む水に溶解して、ポリエステル樹脂20%濃度の水溶液を調製し、回転速度7,000rpmで撹拌した。次いで、撹拌機のジャケットに熱水を通して加熱し、系内温度を73〜75℃に保って、60分間撹拌した。その後、ジャケット内に冷水を流し、撹拌翼の回転速度を5,000rpmに下げて撹拌しつつ、室温(約25℃)まで冷却し、ポリエステル樹脂水性液を得た。
該ポリエステル樹脂の酸価は100mgKOH/gであった。
【0052】
<ポリエステル系樹脂の製造例P2>
製造例1と同様にして、テレフタル酸(TPA)/アジピン酸(ADA)/無水トリメリット酸(TMA)/イソフタル酸(IPA)/エチレングリコール(EG)/ネオペンチルグリコ−ル(NPG)/ビスフェノールA・エチレンオキシド付加体=34.5/6.0/2.0/2.0/29.5/18.5/7.5(モル比)のポリエステル樹脂水性液を得た。該ポリエステル樹脂の酸価は49mgKOH/gであった。
【0053】
<ポリエステル系樹脂の製造例P3>
製造例1と同様にして、テレフタル酸(TPA)/アジピン酸(ADA)/無水トリメリット酸(TMA)/イソフタル酸(IPA)/エチレングリコール(EG)/ネオペンチルグリコ−ル(NPG)/ビスフェノールA・エチレンオキシド付加体=36.5/4.0/0.2/2.3/36.5/14.5/6.0(モル比)のポリエステル樹脂水性液を得た。該ポリエステル樹脂の酸価は17mgKOH/gであった。
【0054】
<ポリエステル系樹脂の製造例P4>
製造例1と同様にして、テレフタル酸(TPA)/アジピン酸(ADA)/無水トリメリット酸(TMA)/イソフタル酸(IPA)/エチレングリコール(EG)/ネオペンチルグリコ−ル(NPG)/ビスフェノールA・エチレンオキシド付加体=36.0/4.5/0.1/2.4/36.0/15.0/6.0(モル比)のポリエステル樹脂水性液を得た。該ポリエステル樹脂の酸価は12mgKOH/gであった。
【0055】
<ポリエステル系樹脂の製造例P5>
解重合剤として、イソフタル酸2.5モル部を用いる以外は製造例1と同様にして、テレフタル酸(TPA)/アジピン酸(ADA)/イソフタル酸(IPA)/エチレングリコール(EG)/ネオペンチルグリコ−ル(NPG)/ビスフェノールA・エチレンオキシド付加体=36.0/4.5/2.5/36.0/15.0/6.0(モル比)のポリエステル樹脂水性液を得た。該ポリエステル樹脂の酸価は7.5mgKOH/gであった。
【0056】
<ポリエステル系樹脂の製造例P6>
解重合剤として、イソフタル酸1.0モル部、5−ソジオスルフホイソフタル酸3.5モル部を用いる以外は製造例1と同様にして、テレフタル酸(TPA)/アジピン酸(ADA)/イソフタル酸(IPA)/5−ソジオスルフホイソフタル酸(IPA)/エチレングリコール(EG)/ネオペンチルグリコ−ル(NPG)/ビスフェノールA・エチレンオキシド付加体=35.0/4.5/1.0/3.5/35.0/15.0/6.0(モル比)のポリエステル樹脂水性液を得た。該ポリエステル樹脂の酸価は5mgKOH/gであった。
【0057】
<ポリエステル系樹脂の製造例P7>
解重合剤として、5−ソジオスルフホイソフタル酸7.0モル部を用いる以外は製造例1と同様にして、テレフタル酸(TPA)/アジピン酸(ADA)/5−ソジオスルフホイソフタル酸(IPA)/エチレングリコール(EG)/ネオペンチルグリコ−ル(NPG)/ビスフェノールA・エチレンオキシド付加体=37.0/4.0/7.0/37.0/15.0/0(モル比)のポリエステル樹脂水性液を得た。該ポリエステル樹脂の酸価は3mgKOH/gであった。
【0058】
<アクリル変性ポリエステル系樹脂の製造例P8>
解重合剤として、無水トリメリット酸1.1モル部およびをネオペンチルグリコ−ル3.8モル部用いる以外は製造例1と同様にして、テレフタル酸(TPA)/イソフタル酸(IPA)/無水トリメリット酸(TMA)/エチレングリコール(EG)/ネオペンチルグリコ−ル(NPG)=31/13.3/1.1/37/16.6(モル比)のポリエステル樹脂水性液を得た。固形分10重量%の水性溶液90重量部に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1重量部を溶解し、さらにメタクリル酸メチル7重量部、メタクリル酸エチル1重量部、メタクリル酸グリシジル2重量部を添加し窒素パージした後70〜80℃で3時間重合反応を行い固形分濃度20重量%のアクリル変性ポリエステル水性液を得た。該ポリエステル樹脂の酸価は16mgKOH/gであった。
【0059】
(実施例1)
プラズマ処理された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、下記ハードコート塗工液をグラビアコーターで塗工後,80℃で乾燥した後、積算光量500mj/cmの紫外線を照射して硬化させ、厚み3μmのハードコート層を形成した。
<ハードコート塗工液>
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(アクリルモノマー) 29重量部
ダロキュア1173(光開始剤、チバスペシャリティケミカル社製)1重量部
メチルエチルケトン 70重量部
【0060】
前記基材のハードコート層の反対面に、水90重量部、ラポナイトJS(合成スメクタイト、ロックウッドアディティブ社製)10重量部よりなる合成スメクタイト分散溶液に、前記製造例P4の樹脂溶液(固形分20重量部)を40重量部を加え、ハイスピードミキサーにより充分に攪拌混合した後、攪拌しながらメタノール50重量部を徐々に添加しアンカー層塗工液とした。該塗工液を塗布、乾燥して、帯電防止剤100重量部/ポリエステル樹脂100重量部よりなる厚み0.3μmのアンカー層を形成した。
【0061】
前記アンカー層上に、下記のシリコーン塗工液を塗布し、150℃、100秒加熱して、シリコーンを架橋させて厚み25μシリコーン層を形成してハードコート層付き保護フィルムを作製した。
両末端のみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサン 100重量部
(無溶剤型)(商品名X−62−1347,信越化学工業(株)製)
白金触媒(商品名CAT−PL−56,信越化学工業(株)製) 2重量部
【0062】
実施例1において帯電防止剤/P4樹脂=100重量部/100重量部に代えて、帯電防止剤/P4樹脂=30重量部/100重量部、200重量部/100重量部のアンカー層を作製し、実施例2、3とした。
【0063】
実施例1において、ポリエステル樹脂P4に代えて、P5、P3、P2、P1、P8の樹脂を用いてアンカー層を作製し、実施例4、5、6、7、8とした。
【0064】
実施例1において帯電防止剤としてラポナイトJSに代えて、ラポナイトS(合成スメクタイト、ロックウッドアディティブ社製)、ソマシフME−100(膨潤性マイカ,コープケミカル(株)製)を用いてアンカー層を作製し、実施例9、10とした。
【0065】
実施例1においてシリコーン層の膜厚25μmに代えて、50μmのシリコーン層を作製し、実施例11とした。
【0066】
(比較例1)
実施例1において、アンカー層として、帯電防止剤を含まずポリエステル樹脂P4のみよりなる0.3μm膜厚のアンカー層を作製し、比較例1とした。
【0067】
比較例1においてポリエステル樹脂P4に代えて、ポリエステル樹脂P5、P2、P1を用いて比較例2、3、4とした。
【0068】
実施例1においてポリエステル樹脂P4に代えて、ポリエステル樹脂P6、P7
を用いて比較例5、6とした。
【0069】
実施例1において帯電防止剤/P4樹脂=100重量部/100重量部に代えて、帯電防止剤/P4樹脂=300重量部/100重量部、20重量部/100重量部のアンカー層を作製し、比較例7、8とした。
【0070】
各実施例、比較例の評価結果を表1および表2に、各評価方法を下記に示す。
【0071】
<評価方法>
<アンカー層塗工液の安定性>
各実施例、比較例のアンカー層塗工液をスクリュー管にいれ、10分間静置した後、各塗工液の状態を下記の基準で目視にて評価した。また調整後2週間経過した各塗工液を上記と同様に評価した。
○: 均一に分散されている。
△: 一部ゲル化が観られ、流動性が低下している。
×: ゲルが発生しており、塗工に適さない状態である。
【0072】
<表面抵抗>
各実施例、比較例においてアンカー層までを形成したフィルムを適宜の大きさにカットしたサンプルを準備する。これらのサンプルを、JIS K 6911に準拠し、2重リングプローブ法にて測定した。 測定機器として、(株)三菱アナリテック製、型番:ハイレスターIPを用いた。
【0073】
<シリコーン層の塗布ムラ>
各実施例、比較例においてシリコーン層塗工後のサンプルのシリコーン層の塗工部の表面状態を下記の基準で目視にて評価した。
○:塗工面が均一で、凹凸が見られない。
△:一部に帯電ムラに起因する塗工ムラや塗工面の凹凸が見られる。
×:塗工ムラや塗工面の凹凸が多数見られる。
【0074】
<平均表面粗さ Ra>
シリコーン層塗工後の平均表面粗さRaは、JIS B0633に準じ、(株)小坂研究所製の触針式表面粗さ計(サーフコーダーSE3500)を用いて測定を行った。測定は4回行い、その平均値で表した。
【0075】
<基材フィルム(アンカー層)とシリコーン層との接着性評価>
各実施例、比較例においてシリコーン層まで塗工したフィルムを適宜の大きさにカットしたサンプルのシリコーン層面を透明ガラスに貼着する。このガラス面に対して、カーボンアークを照射。カーボンアーク100時間照射の耐光試験後のガラスに貼着したカットサンプルを用意した。次に、カットサンプルのエッジ部を指で擦りシリコーン層の剥がれ度合いを下記の基準で評価した。
○: 全く剥がれが生じない。
△: 基材から部分的に剥がれる。
×: 完全に剥がれる。
【0076】
<ガラス貼着時のシリコーン層の剥離性評価>
上記と同じく耐光試験後のガラスに貼着したカットサンプルを用意した。次に、該カットサンプルのポリエチレンテレフタレートフィルムを180°ピールにより剥がした。
ガラスに対するシリコーン層の剥離度合いを下記の基準で評価した。
○: ガラスからシリコーン層が全てきれいに剥離された。
△: 部分的にシリコーン層の凝集破壊によるガラスへの移行が発生した。
×: 貼着部全面でシリコーン層の凝集破壊によるガラスへの移行が発生した。
【0077】
<光学特性評価>
各実施例、比較例においてシリコーン層まで塗工したフィルムを適宜の大きさにカットしたサンプルを準備し、全光線透過率に関しては、JIS K 7136に準拠し、測定機器として(株)日本電色工業社製ヘイズメーターNDH−2000を用いて測定した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面にアンカー層、更に少なくとも10μm以上のシリコーン層を積層した自己貼着性積層体フィルムにおいて、前記シリコーン層がビニル基とSiH基とのヒドロキシル反応により熱架橋する付加反応型シリコーン樹脂を塗布、熱架橋したシリコーン層からなり、前記アンカー層が酸価7〜100mgKOH/gポリマーの範囲にあるポリエステル系樹脂100重量部に対して解離性層状ケイ酸塩30〜200重量部含有する水性塗液を塗工することにより設けられている層よりなることを特徴とする自己貼着性積層体フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂がアクリル変性ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の自己貼着性積層体フィルム。
【請求項3】
前記解離性層状ケイ酸塩が、スメクタイト系粘度鉱物、膨潤性マイカ、バーミキュライトから選ばれた1種以上であること特徴とする請求項1および請求項2記載の自己貼着性積層体フィルム。
【請求項4】
前記スメクタイト系粘度鉱物が、下記一般式有することを特徴とする請求項3記載の自己貼着性積層体フィルム。
[Si(MgLi)O20OH4−c−xNa+x
(0<a≦6、0<b≦6、4<a+b<8、0≦c<4、X=12−2a−b、ここでa、b、cおよびXはそれぞれ上記の関係を満たす整数を表す。)
【請求項5】
被着体に貼着される前記シリコーンゴム層表面の平均表面粗度Raが0.12μm以下の平滑面に形成されていることを特徴とする請求項1〜4記載の自己貼着性積層体フィルム。

【公開番号】特開2013−95807(P2013−95807A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238150(P2011−238150)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】