説明

自己較正温度プローブ

【課題】基板処理チャンバ中の基板の温度を測定するためのプローブを正確に較正する。
【解決手段】本発明に係るプローブは、一方の端部が処理チャンバ中に挿入されている光導体を含む。光導体の他の端部は、二またの光ファイバに結合されている。光源は、光ファイバの1つの支線に光学的に結合され、高温計は他の支線に光学的に結合されている。プローブを自己較正するために、安定した反射率の物体、たとえば金メッキされたウェハがチャンバ中に挿入され、光源が起動され、物体から反射した光の強度が高温計によって測定される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
本発明は、熱的処理プロセスにおいて使用される自己較正温度プローブ(probe)に関する。
【0002】
高速熱的処理(RTP)において、基板はアニーリング、清浄、化学的気相堆積、酸化、あるいはニトロ化のような加工工程を実施するために、400℃から1200℃のような高温まで急速にかつ均一に加熱される。たとえば、「Centura」という商品名でアプライド・マテリアルズから入手できるRTP設備のような熱的処理システムは、400℃から500℃の温度における金属アニーリング、約650℃の温度におけるチタニウム珪化物形成、又は約1000℃の温度における酸化あるいはインプラント(implant)・アニーリングを実施するために使用することができる。
【0003】
基板の温度は、特に現在のデバイスのサブミクロン・ディメンションに求められる高い収率とプロセスの信頼性を得るためにこれら熱的処理工程の間正確にコントロールされなければならない。たとえば、±2Åの均質性で60−80Åの厚さの誘電体層を製作するために(現在のデバイス構造における典型的要求)、連続する処理運転における温度は、目標温度を越えて数℃まで変えることが許されない。この温度コントロールのレベルを達成するために、基板の温度はリアルタイムでかつ現場で測定される。
【0004】
光高温測定法は、RTPシステムにおける基板温度を測定するために使用される技術である。光高温測定法において、温度プローブの光導体(light pipe)は基板から放出された発光(radiation)をサンプリングし、高温計はサンプリングされた発光の強度、基板のスペクトル放射率、及び理想的黒体放射(blackbodyradiation)−温度関係に基づいて基板の温度を計算する。
【0005】
温度プローブが正確な温度読みを示すために最初に較正されることを想定してみると、繰り返し使用はプローブによって検知された温度が時間に対して変化することを引き起こす。たとえば、光導体は汚れたり欠けたりし、高温計における電子部品が「ドリフト(drift)」したり、光導体から高温計への光学距離に沿った連結が緩むことがある。したがって、訂正操作が行えるように、プローブを再較正すること、又は少なくとも起こった変化を検出することが必要となる。
【0006】
温度プローブが較正されたままであっても、処理チャンバ(processing chamber)は変化して基板の測定される温度にエラーを導入することがある。処理チャンバの1つの共通の構成要素は、基板の真下に配置された反射板であり、その間に反射空洞(reflectingcavity)を形成する。この反射板は、基板からの発光を基板に戻るように反射させることを引き起こす。反射板が理想的な反射材である場合、基板により放出される全発光は基板に戻るように反射され、反射空洞は理想黒体のように働く。すなわち、反射板は、基板の有効放射率に影響する。
【0007】
処理操作の結果として、反射板は汚れあるいは腐食されるようになり、このため反射が減少する。反射板の反射率が変化すると、基板の有効放射率もまた変化する。基板の有効放射率における変化は、温度プローブによってサンプリングされた発光の強度を変化させ、測定された温度におけるエラーを発生する。反射板における変化を検知する1つの方法は、視覚での検査(人間の目によるものであれ顕微鏡の下でのものであれ)である。反射板の視覚での検査のためのアクセスを与えるため、処理チャンバが開かれる。
【0008】
基板の温度の正確な測定に対する他の障害は、基板間の粗さにおける相違である。基板の粗さは、温度プローブによってサンプリングされた光の強度に影響を及ぼし得る。基板の粗さの現場での測定は、今までのところ実際的でなかったため、高温計は各基板が同一の粗さを有するものとして基板の温度を計算する。
【0009】
[発明の要約]
一般的に1つの側面において、本発明は基板処理システムを較正するための装置を特色にする。本発明において、プローブの入力端部は、処理チャンバからの光をサンプリングするように構成される。プローブの出力端部は、スプリットファイバ光学ガイドの幹線に接続される。光源はガイドの1つの支線に光学的に接続され、センサは他の支線に光学的に接続されている。
【0010】
本発明の実施は、以下のことを特色とする。処理チャンバは反射板を含むことができ、プローブは反射板中の通路を通って拡張することができる。既知の反射率を有する物体は処理チャンバ中に収容するように構成され、反射板の上に設置されているか又は上方に吊されている。
【0011】
一般に他の側面において、本発明は基板処理システムを較正する方法を特色とする。本発明において、光源からの光がスプリット光学ファイバの第1支線中に照射し、その幹線がプローブに光学的に接続されている。光はプローブを通って処理チャンバ中に入射され、処理チャンバ中で反射物体から反射される。反射光はプローブでサンプリングされ、サンプリングされた光の強度はスプリット光学ファイバの第2支線に光学的に結合されたセンサで測定される。
【0012】
本発明の利点は、以下の通りである。温度プローブは正確に較正することができる。すなわち、光導体中において、光導体から高温計へのライトパス(light path)中において、及び高温計中において、変化を容易に検出することができる。較正は、埋め込み熱電対をもつウェハを使用することなく、及びチャンバから光導体を取り除くことなく迅速に実行することができる。反射板中の変化は、処理チャンバを開くことなく容易に検出することができ、視覚での検査より正確に検出することができる。基板の放射率及び粗さの両方とも測定することができ、基板温度の計算において使用することができる。
【0013】
[好適な具体例の記述]
図1によれば、RTPシステム10は、8インチ直径のディスク形状のシリコン(珪素)基板14の処理用の処理チャンバ12を含む。チャンバ12の内部で、基板14は高い温度(たとえば約1000℃)まで迅速にかつ均質に加熱され、アニーリング、清浄、化学的気相堆積、エッチング、酸化、あるいはニトロ化などのような種々の処理工程に供される。
【0014】
基板14は、反射板20の上方約1/2インチのところで回転支持リング16によって支持されている。反射板20は、薄くて高い反射性の層(たとえば金)でコーティングされたアルミニウム物体を含む。反射板20は、ステンレス・スティール基礎20上に設置されている。冷却剤液体は、基礎と反射板の温度を制御するために基礎22中の通路24を通って循環する。
【0015】
基板14は、タングステン−ハロゲン・ランプの水冷アレイ(array)のような加熱要素30によって加熱される。加熱要素30の放射エネルギは、基板の約1インチ直接の上方に配置されている石英ウインド32を通過し、高い温度まで基板を迅速にかつ均質に加熱する。加熱要素は、その全体が本明細書中に参考として組み入れられる米国特許第5,155,336号中に記述されているように構成することができる。
【0016】
複数の自己較正温度プローブ40(図1には3つのみが示されているが、たとえば8個)が基板の下に配置され、処理操作の間異なった基板半径における基板の温度を正確に測定する。各自己較正温度プローブ40(その1つが図1中の破線によって囲まれている)は、直径約0.05から0.125インチのサファイヤ光導体42を含み、基礎22の裏面から反射板20の頂部までコンジット44を通って拡張する。サファイヤ光導体は、温度検知システムの入力として働き、またプローブ40が自己較正を行っているときには光源の出力として働く。光導体42の一方の端部は、反射板20の頂部の付近に、たとえば同じ高さに配置され、チャンバ12からの発光をサンプリングし、又はチャンバ12へ光を入射する。光導体の他の端部は、スプリット・ファイバ光学ガイド46に、たとえば密接な接触に保たれ、光学的に結合されている。スプリット・ファイバ光学ガイドは、光源支線50である「幹線」部分とサンプリング支線52を有する。スプリット・ファイバ光学ガイド46の幹線は、ミネソタ州ミネアポリスの3Mインクから入手することができる分岐コネクタのようなコネクタ48によって光導体42に結合されている。スプリット・ファイバ光学ガイド46は、個別にコネクタ中に挿入される2つの分離した光ファイバから構成することができる。代わりに、スプリット・ファイバ光学ガイド46は、2つの支線に分割された商業的に入手可能なファイバ束であってもよい。
【0017】
極度に安定した強度をもつ光源54は光源支線50に結合され、温度検知システム56はサンプリング支線52に結合されている。光源54は、フォトダイオードによってその出力強度を制御させる100ミリワット・レーザーであってもよい。光源は、温度検知システムによって検出されるスペクトル範囲内で発光を発生する。温度検知システム56は、ラクストロン・アキュファイバ・モデル(Luxtron Accufiber Model)#100のような高温計であってもよい。プログラムされたディジタル・コンピュータのようなコントローラ58は、光源54を起動させ、高温計56による測定値を記憶する。1つの具体例において、全ての光源及びセンサは、単一のコントローラ58に結合されている(図5参照)。
【0018】
光源54が起動されるとき、光は光導体42により処理チャンバ12中に入射される。処理チャンバ中に、たとえば水などの反射性物体があると、入射された光の一部は光導体42中に反射して戻される。反射光の一部はコネクタ48で光源支線50を通って戻るが、反射光の残部、たとえば半分は、サンプリング支線52に入る。高温計56は、サンプリング支線52中の反射光の強度を測定し、測定された強度を等価の黒体温度に変換する。
【0019】
一方、処理チャンバ中にいかなる物体もない場合、入射された光は光導体42中に直接的に反射して戻されない。それよりも入射された光は、その中の非反射表面によって吸収されるまでチャンバの周りを跳飛する。この跳飛した光の一部は光導体42によってサンプリングされ得る。したがって、処理チャンバ中にいかなる物体もない場合、高温計56は光源54が起動されるとき殆どゼロの光強度を測定する。
【0020】
RTPシステム10は、処理に先立ち支持リング16上に基板を下げ、処理後に支持リングから基板を引き上げるためのリフト機構を含む。リフト機構は、基礎22と反射板20中の垂直リフト・ピン・ホール62を通過して基板に接触する3又はそれ以上のリフト・ピン60を含む(断面図のために1つのリフト・ピンのみが図1中に示されている)。リフト・ピン60は、垂直に移動し支持リング16をすぎて延び、又は反射板20と同じ高さに縮む。
【0021】
典型的な高速熱的処理操作において、基板14はブレード(図示せず)によってチャンバ12中に運ばれ、基板はリフト・ピン60によってブレードから引き上げられ、ブレードは縮み、基板は支持リング16上にリフト・ピンによって下げられる。基板14が支持リング16上に設置されると、基板の下面と反射板20の頂部は反射空洞66を形成し、基板をより理想的黒体に類似させる。換言すれば、これにより黒体がエネルギを放射するスペクトル範囲内で基板に関して増大した有効放射率を示す。
【0022】
RTPシステムの自己較正温度プローブは、処理操作の間、すなわち加熱要素30が起動され基板14が高い温度になっている一方、基板の温度を測定するために使用される。高温基板は、発光たとえば赤外線を発生し、各自己較正温度プローブの光導体によってサンプリングされる。光導体42によってサンプリングされた一部の光は、スプリット・ファイバ光学ガイド46を通過して高温計56中に入る。高温計は、光導体42によってサンプリングされた発光の強度から基板の温度を計算する。いかにして反射空洞66が仮想黒体を示すように働くかの説明に加えて、RTPシステムのさらに完全な説明は、1994年12月19日に出願された米国特許出願番号第08/359,302中に見いだすことができ、本明細書中に参考として組み入れられる。光源54は、基板の温度を測定するために起動されない。
【0023】
自己較正温度プローブ40が正確な温度測定値を示すことを確実にするために、最初の絶対的較正は、1995年7月26日に出願され、本明細書中に参考として組み入れられる米国特許出願番号第08/506,902中に記述された様に実行される。簡単に言えば、安定した光源を有する較正計器は、光導体42中に既知の量の発光を入射し、これによって予め測定した温度の黒体をシミュレートする。光導体42中に入射された光の一部、たとえば半分は、スプリット・ファイバ光学ガイド46のサンプリング支線52を通過して、高温計56に入る。その後高温計56は、較正計器の予め測定されシミュレートされた温度に合うよう一致させられる。
【0024】
自己較正温度プローブはまた、それ自身をも較正する。すなわち、上述した最初の絶対的較正に続いて、たとえば高温計56、スプリット・ファイバ光学ガイド46、及び光導体42のシステム部品における変化を検出する。図2によれば、プローブ40が自己較正する各時間、たとえば月に1あるいは2回、又は所望であれば更に頻繁に、安定した反射率の反射性物体80、たとえば金メッキされた(gold plated)ウェハは、チャンバ12中に設置される。反射性物体80は、部分的に散乱する、すなわち一部の入射光を拡散する。リフト・ピン60は、反射物体が反射板上に直接的に載るように、縮む。光源54が起動され、光が光源支線50を通過して光導体42中に入る。しかし、チャンバ12中に入れる代わりに、光は反射性物体80から反射されて直接光導体42中に戻される。その後光の一部は、サンプリング支線52を通過して高温計56中に入る。
【0025】
高温計56による強度測定値は、コントローラ58中に記憶されている先の測定値と比較される。反射性物体80が安定で光源54が安定であるため、反射光の強度におけるいかなる変化も光導体42、スプリット・ファイバ光学ガイド46、あるいは高温計56中の変化の結果でなければならない。変化が検出されると、訂正操作がとられる。たとえば、光導体が清浄され、光導体とスプリット・ファイバ光学ガイドの間の結合が強化されたり、又は高温計56が再較正される。較正は手で行われるが、コントローラ58は、先の測定値を記憶し、変化を検出するために新しい測定値を記憶された測定値と比較するようプログラムされている。
【0026】
上述のように、自己較正は、反射性物体80から反射された光の量における変化の検出及び測定を必要とする。無関係の光、すなわち反射性物体80からの反射以外の光源から高温計50に入る光は、高温計56による反射光の量における小さい変化の検出と干渉する。たとえば、無関係な光は、反射光を「消し去る」(wash out)。すなわち、無関係な光は、反射光中の小さい変化の検出を困難にするほど、あるいは不可能にするほど強力であり得る。
【0027】
無関係な光の1つの光源は、信号カップリングである。光源54からの光は、コネクタ48において光源支線50から直接サンプリング支線52中に反射され得る。たとえば、スプリット・ファイバ光学ガイド46と光導体42との間に小さい空気のギャップがある場合、その後スプリット・ファイバ光学ガイドから通過して出てくる光は空気−ガラス界面においてガイド中に反射されて戻る。空気−ガラス界面において反射された光の一部は、サンプリング支線52を通過して高温計56中に入る。信号カップリングは、高温計56に入る無関係な光を増大させ、このため自己較正温度プローブ40の較正をより信頼性のないものにする。コネクタ48における信号カップリングを低減するために、光源支線50とサンプリング支線の光ファイバは、光導体と平行となるように注意深く位置を調整される必要があり、コネクタ48における物理的な分離を維持する必要がある。このような、あるいは同様な予防措置で、空気ーガラス界面において反射される光は光源支線50中に反射されるのみで、サンプリング支線52中には反射されない。
【0028】
自己較正温度プローブはまた、反射板を「調べる」こと、すなわちそれからの光を受けることによって、反射板20を較正する、すなわちその中の変化を検出することができる。図3によれば、自己較正温度プローブ40が較正された後、リフト・ピンは反射物体80を、基板が処理の間支持リング16によって保持される同じ高さまで引き上げられる。光源54が起動され、光が光導体42からチャンバ12中に入射される。反射物体80が反射板20の上方に引き上げられるため、光の一部(たとえば光線82によって示される)は反射され光導体42に戻され、残りの光(たとえば光線83によって示される)は光導体を囲む環状領域84に反射して戻る。前述のように、反射物体は部分的に散乱する、すなわち光を拡散する。反射板の領域84によって反射された光の一部(たとえば図3中の光線85によって示される)は、反射物体80によって拡散されて光導体中に戻る。したがって、高温計56によって測定される全光強度は、光導体42を囲む反射板の領域の反射率に依存する。領域84によって反射され光導体42中に拡散されて戻る光は、反射板中の変化を検出するために測定される。
【0029】
反射板20を較正するために、高温計56による強度測定値は先の測定値と比較される。光源、反射物体、及び温度プローブは安定であることが知られているため、測定された信号中のいかなる変化も反射板20中の変化のせいでなければならない。反射板の反射率における変化が検出されると、訂正操作がとられる。すなわち、反射板は清浄され、磨かれ、あるいは取り替えられ得る。
【0030】
自己及び反射板を較正することに加え、自己較正温度プローブは、処理の間未知の基板の放射率及び粗さを測定するために使用することができる。放射率及び粗さの測定値は、基板と完全な黒体発光源との間の相違によって引き起こされる温度測定値中の間違いを正すために使用することができる。
【0031】
図4によれば、光源54aと54bを休止して、2つの隣接した自己較正温度プローブ40aと40bは、十分近接している場合、基板14の同一領域の温度の独立した測定値をとるために使用される。前述の米国特許出願番号第08/359,302号中に記述されているように、光導体42aを囲む反射板20の表面は平坦であり、光導体42bは凹部90の底部に配置することができる。異なった物理的構造は、光導体42aと42bに基板14からの異なった光の量の受け取りを引き起こす。したがって、光導体42aと42bが基板の同一領域からの光を集めるが、自己較正温度プローブ40bの高温計56bは温度測定値T2を得、自己較正温度プローブ40aの高温計56aは異なった温度測定値T1を得る。T1とT2の間の差、すなわち△Tprobeは、基板の正確な放射率を計算するために使用され、これによって基板と黒体の間の放射率における差に関して訂正する。特に、訂正された基板の温度Tcorrは、以下の式で与えられる。
corr=T+Kcorr・△Tprobe (1)
ここで、Tは高温計40aと同一の構成を有する任意の高温計によって測定された温度であり、Kcorrは米国特許出願番号第08/359,302中に記述されたように計算された訂正係数である。訂正係数Kcorrの計算に関してその中に記述された手法は、基板間の放射率における差に関して訂正するものであるが、全ての基板が同一の粗さを有すると仮定するものである。
【0032】
しかし、実際問題として、同一の放射率を有するが異なる粗さを有する基板がある。光導体を囲む反射板20中の物理的構造によって引き起こされる有効放射率における差は、基板の粗さに依存する。特に、鏡のような、すなわち平滑な基板よりも、拡散する粗い基板から、多くの光が凹部中に配置された光導体たとえば光導体42bに入る。したがって、鏡のような基板に関して測定された△Tprobeは、拡散する基板に関して測定された△Tprobeより大である。基板の粗さが既知でない場合、僅かの不確実性が△Tprobe中に導入され、このため基板の測定された温度中に導入される。しかし、以下に記述するように、RTPシステム10中の自己較正温度プローブは、基板の粗さを測定し、この不確実性を除去するために使用することができる。
【0033】
図5によれば、自己較正温度プローブ40cの光源54cは、放射する光導体42cからの光を反射空洞66中に入射するために起動される。入射された一部の光(たとえば光線94によって示される)は、放射する光導体42c中に反射して戻る。光導体42cによってサンプリングされた光の一部は、サンプリング支線52cを通過して、高温計56cによって測定される。
【0034】
しかし、一部の入射光(たとえば光線96によって示される)は、自己較正温度プローブ40dの光導体42dに到達するまで基板と反射板との間を前後して反射される。光導体42dによってサンプリングされた光の一部は、スプリット・ファイバ光学ガイド46dのサンプリング支線52dを通過して、高温計56dに入る。高温計56cと56dは、それぞれ強度の測定値I1とI2をもたらす。自己較正温度プローブ40dの光源54dはオフのままである。光導体42aと42b(図5中に示される)は、基板の同一領域からの発光をサンプリングするため互いに近接して配置される必要があり、光導体42cと42dは分離される。したがって、自己較正温度プローブ40cと40dの内の両方ではなくその1つは、上述したように△Tprobeを測定するために自己較正温度プローブ40aあるいは40bとして使用することもできる。
【0035】
基板14の粗さの測定が高速熱的処理操作の間に起きるため、基板は高い温度であり、エネルギを放射している。したがって、十分に強力な光源54cは、光源から光導体42dに到達する発光が基板からの発光によって消し去られないように選択される。上記のように、光源54cは100ミリワットのレーザーであってもよい。
【0036】
コントローラ58は、高温計56cと56dが採る測定値における時間を光源54cが起動されるときに時間と比較する。光源が起動されているときに採取される測定値は、基板の粗さを計算するために使用され、光源が休止しているときに採取される測定値は基板の温度を計算するために使用される。高温計が基板14の温度を測定しているときに光源54cが起動されないことは重要なことであり、さもないと高温計は基板と光源からの組み合わされた総計をサンプリングし不正確な温度測定値を生み出すことになる。
【0037】
基板の放射率と粗さを計算するために光強度測定値I1とI2を使用することは可能である。放射光導体42cによってサンプリングされた光強度I1は、基板14の放射率により多く依存し、非放射光導体42dによってサンプリングされた光強度I2は基板の粗さにより多く依存する。したがって、基板の放射率と粗さの両方を以下の式から決定することが可能である。
放射率(E)=f1(I1,I2) (2)
粗さ(R)=f2(I1,I2) (3)
関数f1とf2は特定のチャンバ形状と高温計の配置に依存し、実験的に決定しなければならない。
【0038】
関数f1とf2は、いずれも二次元のマトリックスによって表現することができるが、測定された強度I1とI2を放射率E又は粗さRに変換する。これらの関数は、既知の放射率E’と粗さR’で基板の強度I’1とI’2を測定することによって実験的に決定される。各基板は、放射率と粗さの異なった組み合わせを有する。各基板に関する値I’1、I’2、E’及びR’は、たとえばコンピュータ・メモリ中に記憶される。処理操作の間、未知の値、たとえば粗さRが補間(interpolation)によって発生する。すなわち、Rは、1組の測定された強度I1とI2に最も近接した3あるいは4対のI’1とI’2におけるR’値の加重平均として計算される。
【0039】
測定された粗さと放射率を使用してマッピング機能を得て△Tprobeを訂正し、△Tprobeの訂正された値を式1に使用して基板温度の正確な測定値を得ることができる。図6によれば、基板の粗さRの関数として△Tprobeを示すグラフ(実線98によって示される)がある。このグラフは、同一の放射率を有し異なった粗さを有する3つの基板に関して△Tprobeを測定することによって経験的に決定されたもので、△Tprobeに関して訂正値を計算するために使用することができる。特に、△Tprobeは訂正値Vcを掛けられ、「通常の」粗さ、すなわち訂正係数Kcorrを計算するときに仮定された粗さの基板であれば得られる△Tprobeと合致する。訂正値Vcは、「通常の」粗さの基板の経験的に測定された△Tprobeを測定された粗さRを有する基板の経験的に測定された△Tprobeで割り算をすることによって得られる。線形スケーリング関数(linearscaling function)は、中間の粗さの基板に関する訂正値Vcを近似させるために使用することができる。したがって、基板の訂正された温度Tcorrは、以下の式によって与えられる。
corr=T+Kcorr・△Tprobe・Vc (4)
【0040】
たとえば、基板14が通常より粗い場合、測定された△Tprobeは通常より小さいものとなり、このため測定された△Tprobeは正確な△Tprobeを得るために増大されなければならない。特に、基板14の粗さが「高い」場合、△Tprobeは、訂正された温度Tcorrを計算するときに使用する適切な△Tprobeを決定するために25/17の訂正値Vcで掛けられる。
【0041】
コントローラ58は、基板の粗さを考慮に入れる基板の温度の正確な測定値を得るために使用される。図5を参照すると、コントローラ58は中央処理ユニット(CPU)70とメモリ72をもつ一般目的のプログラム可能なディジタル・コンピュータである。コントローラ58のプログラムは、図5中に、あるいは特定用途用集積回路(application-specific integrated circuit, ASIC)のようなハードウェア構造中に、あるいはハイブリッド構造中に示されるようなメモリ72からCPU70によって実行されるコンピュータ・プログラムのように実行される。
【0042】
一般的に、各プローブ40に関して、コントローラ58は、光源56を起動したり休止したり、センサ56からの温度指示値を受け取り記憶したり、訂正温度測定値を計算することができる。コントローラ58は、プローブ40aと40bからの温度指示値T1とT2を受領することによって開始する。コントローラ58は△Tprobeを計算しメモリ72中にT1、T2及び△Tprobeを記憶する。その後コントローラ58は、光源59cを起動し、プローブ40cと40dからの強度測定値I1とI2を記憶する。コントローラ58は、訂正測定値I1とI2かた基板の粗さRを計算し、基板の粗さRと予め測定したマッピング関数98からコントローラ58は訂正値Vcを計算する。その後コントローラ58は、光源54cを休止し温度測定値Tを引き出す。温度測定値Tは、プローブ40aからの温度指示値T1であってもよく、他のプローブからの温度指示値であってもよい。最後に、コントローラ58は、式4に従って訂正温度Tcorrを計算するためにT、△Tprobe、Kcorr、及びVcを使用する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】高速熱的処理システムを示す概略構成図である。
【図2】自己較正温度検出装置を示す概略構成図である。
【図3】高速熱的処理チャンバ中における変化を検出する装置を示す概略構成図である。
【図4】基板の放射率を測定するための装置を示す概略構成図である。
【図5】基板の放射率及び粗さの両方を測定するための装置を示す概略構成図である。
【図6】基板の粗さの機能として2つの温度プローブによる温度測定における相違のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理システムを較正するための装置であって、
入力端部と出力端部を備え、前記入力端部が処理チャンバからの光をサンプリングするように構成されている光学ガイドであって、反射板を含み、前記光学ガイドが前記反射板中の通路を通って延びる、前記光学ガイドと、
前記処理チャンバ内の反射体であって、前記入力端部から送出された光を用いて所定温度で放射をシミュレーションする為に動作可能な前記反射体と、
幹線と第1及び第2支線を有し、前記幹線がプローブの出力端部と光学的に結合しているスプリット光ファイバと、
前記第1支線と光学的に結合した光源と、
前記第2支線と光学的に結合したセンサと、
を含む装置。
【請求項2】
前記反射体は、前記処理システムのチャンバ中に収容するために構成された既知の反射率を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記反射体は、前記反射板上に設置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記反射体は、前記反射板の上方に吊り下げられる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記センサから温度測定値を引き出すためにプログラムされたコントローラをさらに含む、請求項1の装置。
【請求項6】
前記光源を起動し、前記光源が起動されるときに前記センサからの温度測定値を引き出すようにプログラムされたコントローラをさらに含む、請求項5の装置。
【請求項7】
前記コントローラが、前記装置を較正するために、引き出された温度測定値を、記憶された温度測定値と比較するようにさらにプログラムされた、請求項6の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−108183(P2007−108183A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286597(P2006−286597)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【分割の表示】特願平9−89590の分割
【原出願日】平成9年4月8日(1997.4.8)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】