説明

自己集合によるナノ構造含有材料のパターン化された堆積のための方法と装置およびそれに関連する物品

自己集合によるナノ構造含有材料のパターン化された堆積のための方法と装置およびそれに関連する物品が記載されている。実施例の自己集合方法によると、ナノ構造含有材料を堆積させるための方法は、ナノ構造含有材料を形成する工程を含んでいる。ナノ構造含有材料は、懸濁液を形成するために化学的に官能化され液体媒体中に分散される。官能化したナノ構造含有材料を引き付け得る表面を持つ基板の少なくとも一部は、懸濁液と接触させられる。基板は懸濁液から分離される。ナノ構造含有材料は、懸濁液から分離すると、基板の一部に付着する。別の実施例によると、基板を懸濁液と接触させる前に、基板の表面に親水性領域と疎水性領域とが形成される。官能化したナノ構造含有材料は親水性であり、懸濁液と分離すると、基板の親水性領域に付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府の資金援助による研究または開発に関する供述)
本発明の少なくとも一部の態様は、契約番号N00014−98−1−0597およびNAG−1−01061の下での政府援助によってなされた。政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0002】
[背景技術]
次の本発明の背景技術の記載において、ある構造や方法に対する参照がなされるが、そのような参照は、これらの構造と方法が適切な法律の条文の下での従来技術としての資格を有することの認可として、必ずしも解釈されるべきではない。出願人は、参照された要旨のいずれもが本発明に関して従来技術を構成しないことを示す権利を留保する。
【0003】
用語「ナノ構造」材料(“nanostructure”material)は、C60フラ−レン、フラ−レンタイプの同心状の黒鉛粒子、金属、CdSeやInPのような化合物半導体などのナノ微粒子、シリコン、ゲルマニウム、SiOx、GeOxなどのナノワイヤ/ナノロッド、または、カーボン、Bxy、Cxyz、MoS2、およびWS2などの単一の、または、複数の元素で構成された単一壁ナノチューブまたは多壁ナノチューブを含む材料を指定するために、この技術に精通した人によって使用されている。「ナノ構造」材料の共通の特徴の1つは、それらの基本の基礎単位(building block)である。単一のナノ微粒子またはカーボンナノチューブは、少なくとも一方向で500nm未満である寸法を持っている。これらの種類の材料は、さまざまなアプリケ−ションおよびプロセスへのかなりの関心をもたらす一定の特性を現すことが示されてきた。
【0004】
ゾウらの米国特許第6,280,697号および米国特許第6,422,450号(どちらも「ナノチューブ基の高エネルギー材料とその製造方法」の名称)の開示は、カーボン基ナノチューブ材料の製造とバッテリー電極材料としてのその利用を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる。
【0005】
米国特許第 号(米国特許出願番号09/296,572号「カーボンナノチューブ電界エミッター構造を有するデバイスとそのデバイスの製造方法」の名称)の開示は、カーボンナノチューブ基の電子エミッター構造を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる。
【0006】
米国特許第 号(米国特許出願番号09/351,537号「薄膜カーボンナノチューブ電界エミッター構造を有するデバイス」の名称)の開示は、高放出電流密度を有するカーボンナノチューブ電界エミッター構造を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる。
【0007】
ボーワーらの米国特許第6,277,318号(「パターン化されたカーボンナノチューブ薄膜の製造方法」の名称)の開示は、基板上に、粘着性のパターン化されたカーボンナノチューブの製造方法を開示する、その全体が参照文献としてここで組み込まれる。
【0008】
米国特許第6,334,939号(「ナノチューブ基の高エネルギー材料とその製造方法」の名称)の開示は、その構成要素の1つとしてアルカリ金属とのナノ構造合金を開示する、その全体が参照文献としてここで組み込まれる。そのような材料は、あるバッテリーアプリケ−ションにおいて役に立つものであると記載されている。
【0009】
米国特許第 号(米国特許出願番号09/679,303号、「電界放出カソードを用いるX線発生のメカニズム」の名称)の開示は、ナノ構造含有材料を組み込むX線発生デバイスを開示する、その全体が参照文献としてここで組み込まれる。
【0010】
米国特許公表番号2002/0140336号(「高められた電界放出と着火の特徴とを有するコーティングされた電極」の名称)の開示は、第1の電極物質と、付着促進層と、すくなくともその付着促進層の一部の上に配列されたカーボンナノチューブ含有材料とを含む電極と、そのような電極を組み込んだ予想されるデバイスを開示する、その全体が参照文献として組み込まれる。
【0011】
米国特許第 号(米国特許出願番号09/881,684号、「高められた電界放出を有するナノチューブ基材料の製造方法」の名称)の開示は、その電界放出特性を改善するためにナノチューブ基材料中に外来種(foreign species)を導入するための技術を開示する、その全体が参照文献として組み込まれる。
【0012】
米国特許第 号(米国特許出願番号10/051,183号、「大きな領域を個々にアドレス可能な多ビームのX線システムおよび同じ物を形成する方法」の名称)の開示は、複数の固定された個々に電気的にアドレス可能な電界放出電資源、例えばカーボンナノチューブを有するX線を発生するための構造を開示する、その全体が参照文献として組み込まれる。
【0013】
米国特許第 号(米国特許出願番号10/103,803号、「ナノ物体を集める方法」の名称)の開示は、所望のアスペクト比と化学的な官能性を付与するために処理された前形成されたナノ物体でマクロ構造の自己集合体を形成する技術を開示する、その全体が参照文献として組み込まれる。
【0014】
米国特許第 号(代理人抄本番号032566−043号、「ナノ構造含有材料を集める方法及び関連する物品」の名称)の開示は、種々の物体にナノ構造含有材料を集めて付着するための種々の電気泳動タイプの方法を記載する、その全体が参照文献として組み込まれる。
【0015】
上記で証明されるように、ナノ構造、特に、大きなアスペクト比(すなわち、長さがその直径よりも実質的に大きい)を有するカーボンナノチューブおよび他のナノ物体は、光源エレメント、電界放出フラットパネル・ディスプレイなどの電界放出デバイス、過電圧保護用のガス放出管、X線発生装置、小さな導電性ワイヤ、センサ、アクチュエーターおよび走査電子顕微鏡で使用されるような高解像度のプローブなどの種々のアプリケーションに対して、それらを魅力的なものとする約束されている特性を保有している。
【0016】
デバイスへのナノ構造材料の効果的な組み込みは、材料の処理で遭遇する困難さによって妨げられていた。例えば、ナノ構造材料は、レーザアブレーション、アーク放電方法、溶液合成、化学的エッチング、分子線エピタキシ(MBE)、化学蒸着(CVD)などを含む技術によって形成し得る。上記ナノ構造材料を集めるためのこれらの各技術は、それら自身の課題を示している。
【0017】
スクリーン印刷と吹きつけとを含む後形成方法(post-forming method)は、基板上にカーボンナノチューブなどの前形成されたナノ物体を堆積するために利用されてきた。これらの技術も同様に欠点を引き起こす。例えば、スクリーン印刷は、活性化工程と同様にバインダー材料の使用を必要とするが、かなり低い解像度で材料の堆積をもたらし得る。吹きつけは効率が悪い場合があり、大規模な製造にはしばしば実用的ではない。そのうえ、スクリーン印刷と吹きつけとは、基板上にナノ構造材料がランダムに分配され得る。
【0018】
CVD技術を使用するとカーボンナノチューブは直接的に基板上に成長する。例えば、J.Hafner et al.,Nature,Vol.398,pg.761,1999および米国特許第6,401, 526号を参照して下さい。この技術の1つの潜在的な応用は、カーボンナノチューブから成る電気回路などのナノ構造材料から作られた伝導性ワイヤの形成である。CVDプロセスは、次に伝導性ワイヤを形成するためにCVD技術を使用して特定の位置で電極に取り付けることができるカーボンナノチューブを形成するために使用される場合がある。これらの技術は、比較的高い温度(例えば、約600℃〜1,000℃)で、反応性の環境と、ナノチューブを効果的に成長させるための触媒の使用を必要とし得る。このような厳しい環境条件は、利用し得る基板材料の種類を厳しく制限する。さらに、CVD技術は、しばしば多壁カーボンナノチューブをもたらす。これらの多壁カーボンナノチューブは、一般に、単一壁ナノチューブのように同じレベルの構造的な完全性を有しないので、その結果、単一壁カーボンナノチューブと比べると電子放出特性が劣り得る。
【0019】
ナノ構造材料を含む他の製造技術は、鋭い先端あるいは突起物を形成するために基板上にカーボンナノチューブなどのナノ物体の個々のあるいは小集団の堆積を正確に制御する工程を含む。例えば、Dai,Nature、Vol.384,pgs.147-150(1996)およびR.Stevens et al.,Appl.Phys.Lett.,Vol.77,pg.3453,2000を参照してください。これらの技術は、大規模な生産あるいはバッチプロセスで実行するための課題となり得る。
【0020】
[要約]
従って、自己集合によるナノ構造含有材料のパターン化した堆積および関連する物品を製造する方法及び装置が記載される。実施例によれば、ナノ構造含有材料を堆積するための自己集合方法は、ナノ構造含有材料を形成する工程を含む。ナノ構造含有材料は、懸濁液を形成するために化学的に官能化され、液体媒体中で分散される。官能化されたナノ構造含有材料を引き付け得る表面を持つ基板の少なくとも一部は、懸濁液と接触される。この基板は懸濁液と分離される。ナノ構造含有材料は懸濁液と分離されると、基板の一部に付着する。
【0021】
別の実施例によると、カーボンナノチューブを含む材料が形成される。このカーボンナノチューブは、化学的に官能化されて液体媒体中に分散され、懸濁液を形成する。親水性領域と疎水性領域は、官能化されたカーボンナノチューブを引き付け得る基板の表面に形成される。少なくとも基板の一部は懸濁液と接触される。基板は懸濁液から分離される。懸濁液から分離されると、カーボンナノチューブは基板の親水性領域に付着する。
【0022】
さらに別の実施例によると、基板上にナノ構造含有材料を堆積するために、ナノ構造含有材料を形成するための手段を有する装置が記載される。この装置はナノ構造含有材料を化学的に官能化させるための手段を有する。懸濁液を形成するために液体媒体中に官能化したナノ構造含有材料を分散するための追加の手段を有する。この装置は、官能化したナノ構造含有材料を引き付け得る表面を持っている基板の少なくとも一部を懸濁液と接触させるための手段を有する。この装置は懸濁液から基板を分離する手段を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
添付の図は、ここで開示された代表的な実施例をより完全に記載するために使用され得る視覚的な表現を提供し、その技術に精通している人によってそれらおよびそれらの先天的な利点をよりよく理解するために使用され得る。図において、参照数字と対応する要素とは同一である。本発明の原理と一致して成し遂げられた方法、および、好ましい実施例に従い、対応する構造とデバイスに協力する方法は、以下のように記載される。
【0024】
一般に、好適な実施例に基づくナノ構造含有材料の低温製造のための技術は、以下の工程の少なくともいくつかあるいはすべてを含み得る。(1)単一壁カーボンナノチューブを含む材料のようなナノ構造含有材料を形成する工程、(2)ナノ構造含有材料を化学的に官能化する(functionalizing)工程、(3)懸濁液を形成するために液体媒体中に官能化したナノ構造含有材料を分散する工程、(4)官能化したナノ構造含有材料を引き付け得る表面を持っている基板の少なくとも一部を懸濁液と接触させる工程、(5)懸濁液から基板を分離する工程、(6)基板を懸濁液と接触させる前に、基板の表面に親水性領域と疎水性領域とを形成する工程と、(7)ナノ構造含有材料を精製する工程、(8)ナノ構造含有材料をアニーリングする工程、および(9)基板から疎水性領域を除去する工程。
【0025】
好適な製造方法は、前形成された未精製のナノ構造含有材料、好ましくは高いアスペクト比を有する材料、あるいは、カーボンナノチューブ含有材料などのナノチューブ含有材料、を用いて始まる。この未精製材料は、単一壁のカーボンナノチューブ、多壁のカーボンナノチューブ、シリコン、酸化ケイ素、ゲルマニウム、酸化ゲルマニウム、窒化カーボン、ホウ素、ホウ化窒素、ジカルゴゲナイド(dichalcogenide)、銀、金、鉄、酸化チタン、酸化ガリウム、リン化インジウム、および、ナノ構造で囲まれた少なくともFe、Co、およびNiのうちの1つを含む磁気粒子、のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましい実施例によると、未精製のカーボンナノチューブ含有材料は、単一壁カーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブは、レーザアブレーションを実行する装置、アーク放電装置及び方法、溶液合成装置、化学的エッチング装置、分子線エピタキシー(MBE)装置、化学蒸着装置(CVD)などによってを形成し得る。
【0026】
未精製のナノ構造含有材料は、Bxyz(B=ホウ素、C=カーボン、N=窒素)の組成を有するナノチューブの構造の形態であり得る、あるいは、MoS2(M=タングステン、モリブデン、またはバナジウム酸化物)の組成をもつナノチューブあるいは同心状のフラーレン構造が利用し得る。さらにまた、これらの未精製原料は、上記説明したアーク放電技術などのいかなる適切な技術によっても形成し得る。
【0027】
未精製のナノ構造含有材料は、形成後に精製し得る。この未精製原料を精製するために多くの技術がある。1つの好ましい実施例によると、未精製原料は、過酸化物(H22)と水の組み合わせなどの適切な溶剤中での環流反応を使用して精製し得る。H22濃度は、1〜40容積%、好ましくは約20容積H22%であり、その後にCS2中でのすすぎ、次にメタノール中でのすすぎ、濾過が続く。好適な技術によると、媒体中のナノチューブの毎1〜10mgに対して約10〜100mlのH22が媒体中に導入され、環流反応が20℃〜100℃の温度で実行される(例えば、米国特許第 号(米国特許出願番号第09/679、303号)を参照してください)。
【0028】
別の好適な模範的な実施例によると、未精製のナノ構造含有材料は、酸性媒体、有機溶剤、または、アルコール、好ましくはメタノール、などの適切な液体媒体中にこの材料を懸濁させることによって精製し得る。未精製材料は、高出力の超音波洗浄器を使用して数時間、液体媒体中で懸濁液中に保持され、その後、懸濁液は多孔性膜を通過(ろ過)し得る。別の実施例では、未精製材料は、約200℃〜700℃の温度で、空気中あるいは酸素環境において精製し得る。未精製材料中の不純物は、そのような環境下において、ナノチューブより速い速度で酸化し得る。さらに別の好適な実施例では、未精製材料は液体クロマトグラフィーによってこの材料中の不純物からナノチューブ(または、ナノワイヤ)を分離して精製し得る。
【0029】
ナノ構造含有材料がナノチューブを含むとき、基板上に堆積させる前にナノチューブとナノチューブ束との長さを短くする処理を更に実行し得る。例えば、化学的エッチングあるいは粉砕技術を使用してナノチューブを短くし得る。
【0030】
未精製のナノ構造含有材料は、材料に親水性を付与するためにさらに処理される。例えば、ナノ構造含有材料は、酸でナノ構造含有材料を部分的に酸化させるために構成された反応器などの手段を使用して化学的に官能化し得る。
【0031】
別の好適な実施例によると、精製された未精製ナノ構造含有材料は、適切な温度、例えば、約100℃〜1200℃の温度で、アニーリングし得る。1つの好適な実施例によると、アニーリング温度は、約100℃〜600℃である。この材料は適切な期間、例えば、約1〜60分間アニーリングし得る。別の実施例によると、この材料は、約1時間アニーリンし得る。この材料は、約10-2Torrの真空環境下でアニーリングし得る、あるいは、さらに高い真空圧下でアニーリングし得る。1つの実施例によると、真空圧は約5×10-7Torrであり得る。
【0032】
上記記載された工程のそれぞれの工程に従って処理された単一壁カーボンナノチューブ束の代表的な透過電子顕微鏡(TEM)像は、図1Aに示される。図から明らかなように、材料に親水性を付与するために化学的処理に材料をさらす工程を含む処理工程は、ナノチューブの基本的な構造を変更しない。さらに、図1Bは、ナノチューブのラマン活性なブリージングおよびタンジェンシャル・モード(breathing and tangential mode)の振動周波数が処理後に変化しないで残っていることを示している。フーリエ変換赤外線(FTIR)分光学によれば、処理されたナノチューブ含有材料中に欠陥が生成され、かつ、ダングリングボンドの末端がCOOH基であることを示唆する1727cm-1に強いC=Oの伸縮モードを示している。
【0033】
上記記載された前形成されかつ官能化されたナノ構造含有材料は、ここで、懸濁液を形成するために液体媒体中に分散し得る。この懸濁液は、物体あるいは基板上にこの材料を堆積させるために、及び/または、伝導性ワイヤおよび以下に詳細を記載するような電界放出カソードのような物品を形成するために使用し得る。
【0034】
例えば、未精製のナノ構造含有材料の安定した懸濁液の形成を可能にする適切な液体媒体が選ばれる。好ましい実施例によれば、液体媒体は水を含む。未精製材料を液体媒体に加えたときに、混合物は、安定した懸濁液の形成を容易にするために、任意に、超音波エネルギーあるいは、例えば、磁気製撹拌バーを使用する撹拌にさらされる。超音波エネルギーが印加される時間は変えることができるが、約2時間、室温での撹拌は許容できる結果を生むことがわかった。安定した懸濁液を維持し得る限り、液体媒体中の未精製材料の濃度を変えることができる。例えば、懸濁液中に含まれるカーボンナノチューブの濃度は、水1リットルあたり約0.0001〜1グラムの範囲にし得る。
【0035】
いったん形成されると、懸濁液は、適切な基板上にナノ構造含有材料の堆積を容易にするために使用される。図2は、基板上にナノ構造含有材料を堆積させるための低温製造プロセスを示している。好ましくは、基板の少なくとも一部は、親水性の特性を有している。基板は、シリコン、ガラス、インジウム−スズ−酸化物(ITO)でコーティングされたガラス、アルミニウムやクロムなどの金属、金属でコーティングされたガラス、プラスチック、またはセラミックを含み得る。工程(1)では、親水性基板(例えば、ガラス基板)は、疎水性の高分子で、例えば、シップリー(Shipley)1813などのフォトレジストで、パターン化される。フォトレジストは、フォトリソグラフィ技術およびこの技術に精通した人によって知られている他の方法を使用してパターン化される。好適な実施例によると、ナノ構造含有材料、例えば、単一壁カーボンナノチューブは、工程2aに示される自己集合工程を使用して、基板の親水性領域(例えば、露出したガラスの表面)に堆積する。疎水性の高分子コーティングは、好ましくは、3a工程中で、例えば、アセトンでコーティングされた基板を洗浄することによって除去される。
【0036】
別の実施例では、パターン化された基板は、2b工程で、例えば、クロム、アルミニウムなどの金属を熱による蒸発、および、フォトレジストの「はく離(lift-off)」工程によって、メタライズされ得る。工程3bでは、オクタデシルトリクロロシラン(octadecyltrichlorosilane OTS)分子は、ガラス基板の親水性(終端が水酸基)表面上に形成され、その表面のこの一部を疎水性にし得る。次に、ナノ構造含有材料は、工程4で示されるように基板表面のメタライズされた一部の上に堆積し得る。
【0037】
図2に示されるように、基板は、ナノ構造含有材料が堆積する基板の一部を定義するために疎水性領域および親水性領域でパターン化され得る。これらの領域は、アプリケーション条件に従って長さおよび/または幅を変えることができる。例えば、10μm〜100μmの間で変更可能な制御された線幅を作られるが、必要な場合、他の寸法も成し得る。異なった種類の基板は、図で示される好適な実施例で示される。工程2aで示される第1の実施例では、パターンは、例えば、フォトマスクとして印刷された高分子ホイルを使用し、標準のフォトリソグラフィ法を使用して、ガラスなどの親水性基板上に生成される。
【0038】
工程2bで示される第2の実施例では、親水性ガラス基板は、熱蒸着とナノ構造含有材料の堆積の前にフォトレジストの「はく離」工程とを用いて、メタライズされる。メタライズされた基板は、次に、以下で詳細に記載する紫外線(UV)のオゾン洗浄を使用して洗浄される。洗浄後、ガラス基板の露出した一部は、工程3bで、ドライボックス中で、ヘキサデカンとテトラクロロカーボンの混合溶剤溶液の約1mM OTSを用いて、ガラス基板の露出した一部をシラン化(silanized)し得る。ガラス基板の露出された部分のシラン化は、この部分を疎水性にする。調整された基板は、ナノ構造含有材料の堆積前に、例えば、クロロホルムとエチルアルコール中で超音波洗浄され得る。
【0039】
上記記載されたように、例えば、単一壁カーボンナノチューブを含むナノ構造含有材料の均質な懸濁液は、約1.0g/lまでのナノチューブ濃度で、脱イオン水などの液体媒体中で安定化され得る。官能化したナノ構造含有材料を引き付け得る表面を持つ基板の少なくとも一部は、懸濁液と接触させられる。例えば、懸濁液中に垂直にパターン化された基板を浸せきし得る装置などの手段は、室温で基板の一部を懸濁液と接触させるために使用し得る。
【0040】
基板の一部を、例えば、浸せきにより懸濁液と接触させた後で、基板は懸濁液と分離され、基板の親水性領域上の水/基板/空気の三重線(triple-line)(図4参照)に沿ってナノチューブを集める(assemble)ことができる。懸濁液から基板を分離する手段には、所定の速度で懸濁液から基板を引き下がらせる装置、および、基板が懸濁液と接触して残っている間に、液体を蒸発させる装置、例えば、ホットプレートを含むことができる。ナノチューブが基板の疎水性領域上に集まることは見出されなかった。三重線は、例えば、基板を水から引き下がる、あるいは、水が徐々に蒸発すると、下向きに移動するので、連続した単一壁カーボンナノチューブ膜は基板の親水性領域中に形成される。
【0041】
ナノチューブは強く親水性の基板に付着し、メタノール、エタノールなどの溶剤および緩衝フッ化水素酸中の洗浄によって除去することができない。したがって、堆積後にこれらの溶剤を使用してフォトレジストを除去し得る。基板と単一壁カーボンナノチューブとの結合は、ガラス基板上に存在するOH基と、ナノチューブの欠陥サイトの終わりにくる官能基との間の相互作用に起因し得る。
【0042】
図3Aと3Bは、上記記載されたプロセスを使用して堆積された、よく定義された単一壁カーボンナノチューブパターンの光学顕微鏡像を示している。10μmと同程度の小さな線幅を示す像は、上記説明された「ディップコーティング」工程を用いて得ることができる。図3Aで示される単一壁カーボンナノチューブの縞の線幅は、それぞれ100μm、40μm、および10μmである。図3Aで示される影は、像が得られる間にガラス基板の下の表面からの反射の結果であり得る。単一壁カーボンナノチューブ膜は、約1cm/日の堆積速度で得られる。現在のところ、線幅は、堆積方法によってよりはむしろ印刷された高分子フォトマスクの分解能によって限定されると信じられている。単一壁カーボンナノチューブの縞は、界面で段階のような鋭いエッジを示し、そして、滑らかで、連続している。絶縁物表面に堆積した自己集合膜の電気伝導率は、室温で0.2S/cmであると測定された。比較として、匹敵する「自立する(free standing)」単一壁カーボンナノチューブ膜の伝導率は約0.3S/cmであることが示された。
【0043】
膜の厚みと均質性は、懸濁液濃度と、基板が懸濁液から引き下けられる速度または懸濁液の蒸発速度に依存し得る。比較的厚い膜は、高濃度の懸濁液(例えば、約1.0g/l)と低い引き離しまたは蒸発速度を使用して得られる。懸濁液が水を含むとき、単一壁カーボンナノチューブ膜の厚みは、温度上昇と共に減少し得る。温度が約40℃以上に上がると、膜は不連続になり得る。同様の不連続さは、懸濁液中の水がでエチルアルコールなどの速く蒸発する溶剤に取り替えられるときに観測され得る。堆積中の温度変動もまた、溶剤の蒸発速度における変化の結果であると信じられる膜厚みの変化をもたし得る。さらに、短くされた単一壁カーボンナノチューブを含む膜は、長いナノチューブを含む膜よりも一層均一であり、これは、懸濁液の品質/安定性の違いに関連すると信じられている。ある場合には、堆積方向に平行に走る縞は、堆積された膜上に観測し得る。この縞は三重の界面での後退する流体の不安定性に起因すると信じられている。
【0044】
以前に報告された化学的に均質な構造上に集められたカーボンナノチューブ膜と同様に、それぞれの帯内に堆積した単一壁カーボンナノチューブ束は、水/基板/空気の三重線の方向に沿って「平面内(in-plane)」に配列される。パターン化された基板に対して、三重線は、図4で示されるように、疎水性領域と親水性領域との界面で、堆積方向に平行から各帯の親水性領域の中央で堆積方向に垂直に変化し得る。その結果、単一壁カーボンナノチューブ束の配向は、各しまの端部と中点の間で、徐々に堆積方向に平行から垂直に変化し得る。このことは、基板から除去された単一壁カーボンナノチューブ膜のTEM像を得ることによって確認し得る。単一壁カーボンナノチューブの総合的な配向は、しまの幅に依存し得る。比較的大きいしま、例えば、約100μmのしまにおいて、好ましい方向は堆積方向に垂直である。
【0045】
上記記載された自己集合方法は、種々のアプリケーション、例えば、照明源、フラットパネルディスプレイのような電界デバイス、過電圧保護用のガス放出管、X線発生装置、小さな伝導性ワイヤ、センサ、アクチュエイタ−、および電子性顕微鏡で使用されるようの高分解能のプローブで用いる電界放出カソードに使用し得る。本明細書で記載された自己集合技術を使用して製造されたナノ構造含有放出材料は、スクリーン印刷や電気泳動などの他の方法によって生産されたデバイスを超えた利点を生む出す。例えば、スクリーン印刷技術を使用して電界放出デバイスを生産するために使用されるペーストは、デバイス中のエミッタ密度を制限して性能を下げる不純物を含み得る。さらに、スクリーン印刷で製造された放出構造の特徴サイズは、本明細書で記載された自己集合技術を使用して製造されたサイズよりもはるかに大きい場合がある。さらに、電気泳動によって製造された電界放出デバイスは、電気伝導性の基板上で製造されなければならない。本明細書で記載される自己集合技術で使用される基板は、アプリケーション条件に依存して電気伝導性あるいは絶縁性であり得る。
【0046】
このような自己集合単一壁カーボンナノチューブ膜の電子電界放出特性は、真空チャンバー中で、例えば、5×10-7Torrの基準圧で測定し得る。単一壁カーボンナノチューブと電気的に接触するために、2つのクロム帯は、単一壁カーボンナノチューブ帯の端部上に蒸着され得る。図5は、5μm長さの単一壁カーボンナノチューブ束で堆積されたパターン化された膜(幅100μm線幅、300μmピッチ)の放出電流−電圧(I−V)特性を示す。挿入された図は、同じデータのファウラウ−ノードハイム(Fowler-Nordheim)プロットである。このデータは、アノードとして半球面チップ(例えば、5mm径)を使用し、カソード−アノード間隔を168μmを用いて集められた。示された最初の測定において、10mA/cm2電流密度を生成するために必要な閾値電界は、約11V/μmmであり得る。
【0047】
閾値電場は、電気的な調整処理を使用してさらに実質的に減少し得る。例えば、閾値電界は、この処理後に約6V/μmまで低減し得る(図の実線を参照)。そのような閾値電場値は、長い単一壁カーボンナノチューブ束の自立膜(self standing)を用いて、10A/cm2に対して以前報告された4〜7V/μmの閾値に匹敵するものである。
【0048】
上記記載された方法を使用して作られた自己集合カソードにおいて、基板の表面に面内で単一壁カーボンナノチューブを整列し得る。孤立している単一壁カーボンナノチューブの電界で誘発された整列と同様に、印加された電界が十分大きいと、単一壁カーボンナノチューブ束は最初に電界の方向に沿って曲がりそして突き出て、次に、その先端から電子を放出すると信じられている。結果として、閾値電界はカーボンナノチューブと基板との間の相互作用とナノチューブのアスペクト比との両方に依存し得る。活性化処理は、カソード上のいわゆる「ホット」スポットを除去して、ナノチューブが閾値電界を減少させるために電界方向に沿って突き出るのをより簡単にすると信じられている。活性化工程は、例えば、超音波粉砕および/または機械的除去技術を使用して、基板の表面から堆積の後に余分な材料を除去する工程を含み得る。
【0049】
上記記載された方法によって作られた自己集合構造の電子電界放出の特性は、CVD成長のカーボンナノチューブを用いて作られた構造、および、スクリーン印刷方法を使用して製造されたカナノチューブを用いて製造されたカソードと好ましくは比べることができる。かなり高画素の解像度を持つ放出カソードは、いわゆる「厚膜」製造技術を使用して得られるものよりも、本明細書で記載されたように、自己集合プロセスを用いて入手し得る。そのうえ、自己集合工程は、シリコン、ガラス、ITOコーティングガラス、アルミニウム、およびクロムを含む種々の基板上に、単一壁および多壁カーボンナノチューブの両方を堆積させることから同様の結果を得るために使用され得る。電界放出ディスプレイを含むデバイスのアプリケーションに対してナノ構造化された材料の集合(assembly)と統合(integration)は、上記記載された自己集合方法を使用して達成し得る。
【0050】
上記記載された自己集合工程を使用するナノ構造含有材料の堆積の後に、コーティングされた基板は、更に、アニーリングなどの処理にかけることができる。例えば、コーティングされた基板は、ナノ構造含有材料の電気的および熱的特性を改善するために、および、材料層と基板との間の結合を改良するために、懸濁液の蒸発または懸濁液から基板の引き離しをした後に液体媒体の残部を除去するためにアニーリングし得る。代表的な実施例によると、コーティングされた基板は、約1時間、約100℃〜120℃の温度まで加熱され、次に、更に、約2時間、約800℃の温度でアニーリングされ得る。両方のアニーリングは、真空圧、約 5×10-7Torrで行われる。
【0051】
本発明の原理と一致した多くの特定の例示的な実施例がこれより記載される。これらの実施例は、例示として意図されており、いかなる方法でも限定的なものとして考えるべきでない。
【0052】
例1:ガラス上にカーボンナノチューブ膜の堆積
種々のサイズと厚みのガラスを有する基板は、最初に、有機的なゴミを排除し、ガラス表面の親水性特性を復活させるために洗浄され得る。洗浄方法の1つの例は、アセトン、アルコール、または脱イオン水などの溶剤を使用して、ガラス基板を超音波浴槽で超音波洗浄し得る。超音波洗浄後に、ガラス基板は、精製された窒素ガスを吹きつけて乾燥し得る。基板は、たとえば、「ピラニア」溶液洗浄法、濃硫酸と30%H22との比率が約4:1で約30分間さらす方法、のような他の方法を使用してさらに洗浄し得る。さらに、基板は、UV−オゾンクリーニング法、基板を約30分間酸素環境下にてUV光にさらす方法を使用してクリーニングし得る。完全に洗浄(クリーニング)されたガラス表面は、カーボンナノチューブに付着されたカルボキシル基と化学的な結合を形成し得る水酸基(−OH)が末端となり得る。
【0053】
カーボンナノチューブをガラス表面に移す1つの方法は、洗浄された基板を室温でカーボンナノチューブと水の懸濁液に浸すことである。カーボンナノチューブ/水の懸濁物の濃度は、水1リットルあたりナノチューブ約0.0001グラムの範囲であり得る。安定した懸濁液を維持し得る限り、液体媒体中の未精製材料の濃度を変更し得る。ナノチューブはガラスの親水性表面に集めることができる。水が基板の表面から徐々に蒸発するにつれて、あるいは、基板が懸濁液から徐々に引き離されるにつれて三重の線(triple-line)が下向きに動くときに、連続したカーボンナノチューブ膜が基板表面を形成する。上記と一致する工程は、図6に示される。
【0054】
膜の厚みは、基板が液体から取り除かれる速度、あるいは水が基板表面から蒸発する速度、および懸濁液の濃度を含む種々の工程ファクターによって制御し得る。膜は、カーボンナノチューブの単層膜と同じくらい薄い膜であり得る、または、数ミクロンと同程度に厚い単一壁カーボンナノチューブ束を含み得る。堆積後に、懸濁液に含まれる溶剤を除去するために膜をアニーリングし得る。ある堆積条件のもとでは、基板に堆積させたカーボンナノチューブは、三重の線(triple-line)方向に平行に部分的に整列し得る。
【0055】
カーボンナノチューブを懸濁液と接触させてカーボンナノチューブをガラス基板上に堆積する他の方法は、スピンコーティングおよび噴霧装置、電気泳動装置、印刷、鋳込み、投下装置などの手段を含むことができる。印刷工程の1つの例が、最初に基板表面の片端上にカーボンナノチューブを含む懸濁液を配置する工程を含む。次に、基板表面を横切って懸濁液を移動し得る。懸濁液が基板表面を横切って移動されるときに、カーボンナノチューブは懸濁液から基板表面上に沈殿して堆積する。
【0056】
例2:パターン化されたカーボンナノチューブ構造のガラス上への堆積
洗浄されたガラス基板は、疎水性膜で被覆し得る。適切な疎水性膜の例は、フォトレジスト(シップリー(Shipley)1813)などの光でパターンを形成可能な粘着性の高分子、および疎水性の末端基の末端を有する有機シラン、例えば、OTSなどのエチル基の末端を有する有機シランなどの自己集合した単層膜を含む。次の工程において、疎水性膜は、カーボンナノチューブ膜が堆積するガラス表面の領域から除去し得る。パターンが形成されたテンプレートを生成するのに利用される方法は、紫外線フォトリソグラフィ、電子線リソグラフィー、紫外線ーオゾン処理(上記実施例1で記載)を含む。
【0057】
カーボンナノチューブは、上記記載された自己集合法、スピンーコーティング、噴霧法、電気泳動法、印刷法、鋳込み法、および滴下法などの適切な技術によってパターン化された疎水性膜を含むガラス基板の表面に堆積し得る。1つの特別な例によると、この堆積は、室温で少なくともガラス基板の一部をカーボンナノチューブと水との懸濁液に浸すことによって実行し得る。ナノチューブは、好ましくはガラスの親水性領域上に集合する。水が徐々に蒸発するときに、あるいは、基板が懸濁液から徐々に引き離されるときに、三重の線(triple-line)は下向きに移動するので、連続したカーボンナノチューブ膜はパターン形成された基板の親水性領域上に形成される。
【0058】
堆積後に、疎水性コーティングは除去し得る。疎水性コーティングがフォトレジストの場合、フォトレジストは、最初には、基板に残っている湿気を除去するために約2分間、比較的低い温度、例えば約100℃で、最初にコーティングされた基板をアニーリングすることによって、除去し得る。次に、フォトレジストは、侵されないアセトンを適用することによって、および/または約5分間アセトンの超音波浴槽中に基板を配置することによって、除去し得る。カーボンナノチューブの基板への強い付着のために、カーボンナノチューブ膜は、基板の親水性領域に付着して残る。
【0059】
上記工程と一致して実行される工程は、図7と8に示される。
【0060】
例3:ITOまたはガラス基板上へのパターン化されたカーボンナノチューブ構造の堆積
ガラス基板は、整列マークを用いるITOコーティングでパターン化され得る。ITOーパターン化基板は、アセトン、アルコールおよび脱イオン水の連続的な超音波浴槽と、それに続く紫外線ーオゾン処理(上記の実施例1と結合して記載される)を使用して、洗浄(クリーニング)し得る。次に、洗浄されたITOガラスの表面に光でパターン形成可能な疎水性膜を加えることができる。例えば、フォトレジスト(シップリー(Shipley)1813)あるいは有機シランの自己集合単層膜は、上記説明したようにその表面に加えることができる。ガラス表面上のITOのパターンは、次に、疎水性膜をパターン形成するために、フォトマスクを整列するために使用し得る。紫外線フォトリソグラフィは通常の方法で実行し得るし、疎水性膜は、基板のITO領域からは除去し得る。カーボンナノチューブは液体媒体中に懸濁することができ、実施例1と2で開示した方法のいずれか1つを使用して基板上に堆積し得る。疎水性のコーティングは、実施例2で開示した工程によって除去し得る。
【0061】
上記と一致する工程は、図9に示される。
【0062】
例4:カーボンナノチューブのパターン化された堆積用のテンプレートとしてフォトレジストの使用
粘着性の液体タイプ(例えば、シップリー1813フォトレジスト)の感光性高分子は、ガラス基板あるいは、ITOでコーティングされたガラス基板の清浄表面に適用し得る。基板は、次に、フォトツール上に含まれたパターンをコーティングされたフォトレジスト膜に移すために標準のフォトリソグラフィ手順にかけられ得る。使用されるフォトツールは、ソーダ石灰ガラスプレート上のクロムフォトマスクを含み得る、あるいは、高画質プリンタを使用して基板上に印刷された高分子膜であり得る。
【0063】
パターン化されたフォトレジスト膜を有する基板は、次に、カーボンナノチューブで堆積され得る。好適な実施例によると、基板は室温でカーボンナノチューブと水との懸濁液中に浸せきされ得る。ナノチューブは、水/基板/空気の三重の線(triple-line)に沿って、好ましくは、フォトレジストで覆われなかったガラスの親水性領域に沿って集合する。水が徐々に蒸発するとき、あるいは、基板が懸濁液から徐々に引き離されるときに、三重の線が下向きに移動するので、連続的にパターン形成されたカーボンナノチューブ膜は、基板の親水性領域中に形成される。
【0064】
堆積後、基板は、残っている湿気を除去するために、約2分間、約100℃の温度で、ホットプレート上に置いてアニーリングし得る。次に、フォトレジストコーティングは、アセトンを適用して、および/または、約5分間、基板をアセトンの超音波浴槽に配置することによって、除去し得る。さらにまた、カーボンナノチューブの基板への強い付着(adherence)のために、カーボンナノチューブ膜は、基板に付着して残り、続いてレジストが除去される。
【0065】
例5:カーボンナノチューブのパターン化された堆積のためのテンプレートとしての自己集合単一層の使用
疎水性の機能基を有するシラン分子の自己集合単層膜は、清浄なガラスの表面またはITOにコーティングされた基板上に溶液相または蒸気相(シラニゼーションと呼ばれる工程)によって形成し得る。溶液相シラニゼーション工程の1つの例は、乾燥条件(例えば、約30分、精製された窒素で洗い流された乾燥箱は、約5%あるいはそれ未満の湿度環境になる)で、実質的に一定で撹拌しながら、希釈OTS溶液(例えば、ヘキサデカンとテトラクロロカーボンを約4:1の比率で混合された溶剤中に約1mMの OTS)中に、清浄なガラスまたはITOでコーティングされたガラス基板を浸せきする工程を含み得る。蒸気相シラニゼーション工程の1つの例は、清浄なガラスまたはITOでコーティングされたガラス基板をガラス容器(例えば、ガラスデシケータ)中で約12時間、高濃度のOTSの1mLとともに密閉する工程を含み得る。その後、基板は、乾燥前にそれぞれ約5分間クロロホルムとエチルアルコールの超音波浴槽中で洗浄され得る。シラン化されたガラスあるいはITOでコーティングされたガラス基板は、例えば、クロムフォトマスク(ソーダ石灰ガラスプレート上にパターン化されたクロム膜)、あるいは、物理的なマスク(レーザカットステンシルマスク)を通して大気中で紫外光にさらされると、基板の露出した部分は、酸化して親水性が付与される。
【0066】
代わりに、清浄なガラスまたはITOでコーティングされたガラス基板は、フォトレジストでコーティングして、逆さのパターンを有するフォトマスクを使用して紫外線光のフォトリソグラフィにかけられ得る(あるいは、ネガティヴフォトレジストを使用し得る)。フォトレジストでパターン化された基板は、約12時間、ガラスデシケータ中で1mM濃度のOTSとともに密閉され得る。次に、基板は、フォトレジストコーティングを溶かすために、エチルアルコールあるいはアセトンですすがれ得る。基板は、次に、約5分間、エチルアルコールと脱イオン水の超音波浴槽でそれぞれ洗浄し得る。フォトレジストが取り除かれた領域は、カーボンナノチューブの堆積に適した基板の親水性領域を形成する。
【0067】
カーボンナノチューブは、次に、実施例1と2と関連して開示された堆積方法のいずれかを使用して、有機シランのパターン化された自己集合単層膜を有するガラスあるいはITOにコーティングされたガラス基板上に室温で堆積し得る。
【0068】
例6:カーボンナノチューブと基板の間で界面結合を増加させるためにアミンあるいは他の機能的基を堆積
清浄なガラスまたはITOでコーティングされたガラス基板は、基板表面に水酸基末端を形成するために洗浄(クリーニング)し得る。例えば、基板は、有機溶剤の超音波浴槽にかけられ、続いて、上記気説明したように、紫外線−オゾン処理および/又はピラニア溶液洗浄にかけられ得る。次に、基板は、アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミン端基の末端を有する有機シランを使用して官能化し得る。アミン基の官能化の1つの例は、約5分間、約60℃で、無水トルエン中で約1wt%のアミノプロピルトリエトキシシラン溶液中に基板を維持する工程を含む。基板は、次に、トルエンとエチルアルコールによってすすがれて、次に、約5分間、エチルアルコールの超音波浴槽中に配置される。
【0069】
カーボンナノチューブは、次に、室温で、実施例1と2で開示された堆積方法のいずれかを使用して有機シランのパターン化された自己集合単層膜を有するガラスあるいはITOコーティングされたガラス基板上に堆積し得る。
【0070】
本明細書で記載された概念と技術は、それの本質的な特性から離れなることなしに、様々な特定の形態で具体的に表現され得ることが、本技術における通常の技能をもった人々によって理解されるだろう。ここで開示された実施例は、あらゆる点において、例示的であるが制限するものではないと考えられる。本発明の範囲は、前述の記載よりはむしろ付属の請求の範囲において示され、その範囲と等価な意味と範囲内のすべての変化が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1A】図1Aは、約1〜2μmの平均束長さを有する、処理された単一壁カーボンナノチューブの透過電子顕微鏡像を示す写真である。
【図1B】図1Bは、 特性的なブリージングモードとタンジェンシャルモードを示す処理された単一壁カーボンナノチューブのラマンスペクトルを示す図である。
【図2】図2は、好適な実施例に基づく低温製造プロセスを説明する図である。
【図3】図3は、好適な実施例に基づいて(A) ガラスおよび(B) アルミニウム表面上に堆積した単一壁カーボンナノチューブの光学顕微鏡像を示す写真である。
【図4】図4は、好適な実施例に基づいてパターン化された基板上に堆積したカーボンナノチューブの配向におけるゆるやかな変化を示す図である。
【図5】図5は、好適な実施例に基づいて堆積したカーボンナノチューブを有する膜の電界放出特性を示す図である。
【図6】図6は、第1の実施例に基づいて、ガラス基板またはインジウム・スズ・酸化物コーティング(ITOコーティング)ガラス基板上に、カーボンナノチューブなどのナノ構造含有材料の膜を堆積させるための方法を示す図である。
【図7】図7は、第2の実施例に基づいて、ガラス基板またはインジウム・スズ・酸化物コーティング(ITOコーティング)ガラス基板上に、カーボンナノチューブなどのナノ構造含有材料の膜を堆積させるための方法を示す図である。
【図8】図8は、第3の実施例に基づいて、ガラス基板またはインジウム・スズ・酸化物コーティング(ITOコーティング)ガラス基板上に、カーボンナノチューブなどのナノ構造含有材料の膜を堆積させるための方法を示す図である。
【図9】図9は、実施例に基づいて、ガラス基板またはインジウム・スズ・酸化物コーティング(ITOコーティング)ガラス基板上に、カーボンナノチューブなどのナノ構造含有材料の膜を堆積させるための方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造含有材料(nanostructure-containing material)を堆積するための自己集合(self-assembly)方法であって、
ナノ構造含有材料を形成する工程と、
前記ナノ構造含有材料を化学的に官能化する(functionalizing)工程と、
懸濁液を形成するために液体媒体中に前記官能化したナノ構造含有材料を分散する工程と、
前記官能化したナノ構造含有材料を引き付け得る表面を有する基板の少なくとも一部を前記懸濁液と接触させる工程と、
前記懸濁液から前記基板を分離して、前記ナノ構造含有材料が前記懸濁液から分離されるときに前記ナノ構造含有材料が前記基板の一部に付着する(adhere)工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記基板を前記懸濁液と接触させる前に、前記基板の表面に親水性および疎水性領域を形成して、前記官能化したナノ構造含有材料は親水性であり、該ナノ構造含有材料が前記懸濁液から分離されるときに前記基板の親水性領域に付着する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記親水性および疎水性領域を形成する工程は、
疎水性の末端基の終端を有する単層膜であって有機シランの自己集合した単層膜(self-assembled monolayer)を、前記基板の表面上に形成する工程と、
前記自己集合した単層膜の一部を酸素環境中、紫外光(UV)にさらして、前記さらされた自己集合した単層膜の一部が前記基板の親水性領域を形成し、前記自己集合した単層膜の残りの一部が前記基板の疎水性領域を形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記親水性および疎水性領域を形成する工程は、
前記基板の表面に疎水性のフォトレジストを堆積する工程と、
前記フォトレジストの一部を紫外線(UV)の光にさらす工程と、
前記基板の親水性領域を露出するために前記フォトレジストの一部を除去して、残っている前記フォトレジストが前記基板の疎水性領域を形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁液から前記基板を分離した後で前記疎水性のフォトレジストを除去するために溶媒に前記基板を加えて、前記溶媒に加えられた後で前記ナノ構造含有材料が前記基板に付着して残る工程を有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記疎水性のフォトレジストを除去する前に前記基板をアニーリングする工程を有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板はガラスであり、
前記方法は、アミノ末端基の終端を有する有機シランで前記ガラスの親水性領域に対応する前記ガラスの基板表面の一部を官能化する工程を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記懸濁液から分離した後で前記基板をアニーリングする工程を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記懸濁液から分離した後で前記基板から余分なナノ構造含有材料を除去する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基板の少なくとも一部を前記懸濁液と接触させる前に前記基板をクリーニングする工程を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基板はガラスであり、
前記基板をクリーニングする工程は、
溶剤を有する超音波粉砕槽に前記基板を配置する工程と、
硫酸と過酸化水素の混合物に前記基板をさらす工程と、
酸素環境中で紫外(UV)光に前記基板をさらす工程と、
のうちの少なくとも1つの工程を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板の少なくとも一部を前記懸濁液と接触させる工程は、
前記ナノ構造を含む懸濁液に前記基板を浸せきする工程を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記懸濁液から前記基板を分離する工程は、
前記懸濁液から前記浸せきした基板を引きあげる工程と、
前記基板が浸せきしている間に前記懸濁液を蒸発する工程と、
のうちの少なくとも1つの工程を有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基板を前記懸濁液と接触する工程は、
前記基板の表面の一部に前記懸濁液を配置する工程と、
前記基板の表面を横切って前記懸濁液を動かして、前記懸濁液中に分散した前記ナノ構造含有材料が前記官能化したナノ構造含有材料を引き付け得る表面に付着する工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記基板を前記懸濁液と接触する工程は、前記基板上に前記ナノ構造を含む懸濁液をスピンコーティングする工程とスプレーする工程とのうちの少なくとも1つの工程を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記液体媒体は、水性のナノ構造を含む懸濁液を形成するために水を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記懸濁液に含まれる材料の濃度は、液体媒体の1リットルあたりナノ構造含有材料が約0.0001から1グラムの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ構造含有材料は、単一壁のカーボンナノチューブ、多壁のカーボンナノチューブ、シリコン、酸化ケイ素、ゲルマニウム、酸化ゲルマニウム、窒化カーボン、ホウ素、ホウ化窒素、ジカルゴゲナイド(dichalcogenide)、銀、金、鉄、酸化チタン、酸化ガリウム、リン化インジウム、および、ナノ構造で囲まれた少なくともFe、Co、およびNiのうちの1つを含む磁気粒子、のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ構造含有材料を化学的に官能化する工程は、酸との反応で前記ナノ構造含有材料を部分的に酸化させる工程を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記基板は、シリコン、ガラス、インジウム−スズ−酸化物(ITO)でコーティングされたガラス、金属、金属コーティングでされたガラス、プラスチック、およびセラミックのうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記基板に付着した前記ナノ構造含有材料は、実質的に一方向に配列することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
自己集合によって、パターン化されたカーボンナノチューブによる電界放出カソードを製造する方法であって、
カーボンナノチューブを含む材料を形成する工程と、
前記カーボンナノチューブを化学的に官能化する工程と、
懸濁液を形成するために液体媒体中に前記官能化したカーボンナノチューブを含む材料を分散する工程と、
前記官能化したカーボンナノチューブを引き付け得る基板の表面に親水性領域と疎水性領域を形成する工程と、
少なくとも前記基板の一部を前記懸濁液と接触させる工程と、
前記懸濁液から前記基板を分離して、前記カーボンナノチューブが前記懸濁液から分離されるときに前記カーボンナノチューブが前記基板の前記親水性領域に付着する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項23】
前記懸濁液から前記基板を分離した後に前記基板をアニーリングする工程と、
前記懸濁液から前記基板を分離した後に前記基板から余分なカーボンナノチューブを除去する工程と、
を更に有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記カーボンナノチューブを化学的に官能化する工程は、酸との反応で前記カーボンナノチューブを部分的に酸化する工程を有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
請求項1の方法に従って製造されたことを特徴とする電界放出カソード。
【請求項26】
請求項22の方法に従って製造されたことを特徴とする電界放出カソード。
【請求項27】
基板上にナノ構造含有材料を堆積するための装置であって、
ナノ構造含有材料を形成する手段と、
前記ナノ構造含有材料を化学的に官能化する手段と、
懸濁液を形成するために液体媒体中に前記官能化したナノ構造含有材料を分散する手段と、
前記官能化したナノ構造含有材料を引き付け得る表面を有する前記基板の少なくとも一部を前記懸濁液と接触させる手段と、
前記懸濁液から前記基板を分離して、前記ナノ構造含有材料が前記懸濁液から分離されるときに前記ナノ構造含有材料が前記基板の一部に付着する手段と、
を有することを特徴とする装置。
【請求項28】
前記基板を前記懸濁液と接触する前に、前記基板表面に親水性および疎水性領域を形成して、前記官能化したナノ構造含有材料は親水性であり、前記ナノ構造含有材料が前記懸濁液から分離されるときに前記ナノ構造含有材料が前記基板の親水性領域に付着する手段を有することを特徴とする請求項27に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−525129(P2006−525129A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507351(P2006−507351)
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/008400
【国際公開番号】WO2004/083490
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【Fターム(参考)】