説明

自己集合コーティングからの薬物の局所送達

本発明は、オリゴフッ素化コーティング及び薬物送達におけるそれらの使用に関する。オリゴフッ素化コーティングは、式(XVII)を含む組成物である。それらのコーティングは、生理活性物質を哺乳動物組織の組織表面に送達する方法に使用される。この方法は、その表面を、オリゴフッ素化オリゴマーと生理活性物質とを含むコーティングと接触させることにより実施され、そのコーティングは、組織表面上に存在し、生理活性物質を組織表面に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己集合コーティング及び製剤としてのフッ素化オリゴマーと治療剤との合体物、並びに薬物送達におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の開放経路内への組織の増殖又は成長を抑制する治療を含む、局所的治療剤送達は、薬物溶出ステント(DES)等の埋込型デバイスにより達成されている。しかしながら、それらのデバイスは不完全であり、頻繁に副作用を生じる可能性がある。残存異物の存在は、有害な炎症反応を引き起こし、凝固を誘導する可能性がある。埋込型デバイスの表面を修飾して、生体適合性及び凝血抵抗性を改善し、また、デバイス材料のものと異なる特性、例えば感染抵抗性(すなわち、生理活性物質の送達による)、放射線不透過性、伝導性等を付与するために様々な技術が使用できる。DESの分野において、それらの技術は成功が限定されている。
【0003】
一時的医療デバイス、すなわち(挿入され、除去される)非常に短期間体内に存在するデバイスもまた、局所治療剤送達媒体として使用され得る。一時的医療デバイス(例えば、バルーンカテーテル、ガイドワイヤ、シリンジニードル、又はプローブ)の使用は、生体適合性に関する問題がないため、恒久的な埋込型医療デバイスより有益である。
【0004】
DESに関連する問題の結果として、動脈疾患の部位にパクリタキセル等の抗再狭窄薬物を局所送達するために薬物溶出バルーン(DEB)カテーテルを用いる概念は、現在、DESに関連する多くの懸念を回避する代替治療を提供する機会と見られている。DEBカテーテルは、限られた時間、内腔壁と接触している間の膨張時に治療量の薬物を効果的に送達する。
【0005】
DEBカテーテルアプローチは、2006年以来いくつかの臨床試験の対象となっている。しかしながら、わずかに配合を変更した物質を用いて同じ会社により繰り返されたいくつかのものを含む、これらの試験の多くの結果は、薬物のための担体分子の固有の限界に起因して、限定された成功の中の一つでしかない。一般的ストラテジーは、確立された規制上の履歴を有する確立された色素剤又は薬学的乳化材料でバルーンカテーテルをコーティングすることである(特許文献1を参照のこと)。その結果は、腔内送達の間のバルーン上の保持に関して最適性能を満たさない(例えば、標的組織に到達する前でさえ、バルーン内に一部吸収されて、薬物の90%が失われることがあり、6%未満が罹患組織に運ばれるだけである)(非特許文献1を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0020243号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Axel De Labriolle et al., Catheterization and Cardiovascular Interventions 73:643(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの結果は、薬物を局所的組織内へ効果的且つ優先的に移動させながら、薬物保持の制限に対処する合成モジュラーアプローチの必要性を示している。これらの制限に対処するために、標的部位にバルーンが到着した後、少ない担体系の局所的送達により血中活性化が低くなるように担体分子を設計することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法及び組成物は、分枝オリゴマー化合物(例えば、オリゴフッ素化コーティング及び製剤)、及び薬物送達におけるそれらの使用を特徴とする。
【0010】
第1の態様において、本発明は、以下の式の組成物
【化1】

【0011】
(式中、
m及びnは、両方とも0であるか、又はm及びnは、両方とも1であり、
各々のA及びA2は、50〜3,500Daの間の分子量を有する三官能性モノマーであり、
各々のL及びLAは、独立して、リンカーであり、
各々のRX1A、RX1B、RX2A、及びRX2Bは、独立して、200〜3,500Daの間の分子量を有する水不溶性セグメントであり、
RY1は、200〜3,500Daの間の分子量を有する非ハロゲン化有機セグメントであり、
m及びnが、両方とも1である場合、RZ1及びRZ2の各々は、独立して、50〜3,500Daの間の分子量を有する二官能性水不溶性セグメントであるか、又は
m及びnが、両方とも0である場合、RZ1及びRZ2の各々は、独立して、200〜3,500Daの間の分子量を有する水不溶性セグメントである)
を特徴とする。
【0012】
一部の実施形態において、組成物は、以下の式
【化2】

【0013】
(式中、
Aは、50〜3500Daの間の分子量を有する三官能性モノマーであり、各々のLは、独立して、リンカーであり、
RZ1及びRZ2は、各々独立して、200〜3,500Daの間の分子量を有する水不溶性セグメント(例えば、有機ハロゲン化物セグメント)であり、
RY1は、100〜3,500Daの間の分子量を有する非ハロゲン化有機セグメントである)
を有する。
【0014】
一部の実施形態において、Aは、50〜1000Daの間の分子量を有する三官能性モノマーであり、各々のLは、独立して、リンカーであり、RZ1及びRZ2は、各々独立して、200〜3,500Daの間の分子量を有する有機ハロゲン化物セグメント等の水不溶性セグメントであり、RY1は、100〜3,500Daの間の分子量を有する非ハロゲン化有機セグメントである。
【0015】
他の実施形態において、組成物は、以下の式(XV-B)により表される:
他の実施形態において、組成物は、以下の式:
【化3】

【0016】
(式中、
各々のA及びA2は、50〜3500Daの間の分子量を有する三官能性モノマーであり、各々のL及びLAは、独立して、リンカーであり、各々のRX1A、RX1B、RX2A及びRX2Bは、各々独立して、200〜3,500Daの間の分子量を有する水不溶性セグメントであり、RY1は、100〜3,500Daの間の分子量を有する非ハロゲン化有機セグメントであり、各々のRZ1は、独立して、100〜3,500Daの間の分子量を有する二官能性水不溶性セグメントである)
を有する。一部の実施形態において、RZ1は、フッ素化ジオールである。分枝をさらに生成するためにR様分枝を増加し得ることは当業者により理解されるだろう。同様に、RY1部分もまた、所望の場合、分枝セグメントを有し得ることは当業者により理解されるだろう。一部の実施形態において、Aはトリオールを含む。
【0017】
他の実施形態において、Aは、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン(TME)、トリメシン酸(TMA)、又はトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)を含む。
【0018】
上記の式のいずれかにおいて、RY1は、分枝であってもよく、又は分枝でなくてもよい。
【0019】
特定の実施形態において、RY1は、直鎖又は分枝ポリエチレングリコール、両性イオン(両性イオン界面活性剤部分、例えば、アルキルアミドプロピルベタイン、スルホベタイン及びアルキルスルテイン等のアルキルベタイン、アルキルエーテルヒドロキシルプロピルスルテイン、並びにアルキルアミドプロピルヒドロキシスルテインを含む)、又はポリビニルピロリドンである。
【0020】
他の実施形態において、RZ1及びRZ2は、各々独立して、ポリフルオロ有機基、ポリシロキサン基、若しくはポリオレフィン基であるか、又はRX1A、RX1B、RX2A、RX2Bの各々は、各々独立して、ポリフルオロ有機基、ポリシロキサン基、又はポリオレフィン基である。
【0021】
さらに他の実施形態において、RZ1及びRZ2は、各々独立して、シリコーン基であるか、又はRX1A、RX1B、RX2A、RX2Bの各々は、各々独立して、シリコーン基である。
【0022】
他の実施形態において、組成物は、以下の式
【化4】

【0023】
(式中、
FTは、ポリフルオロ有機基であり、Lは、リンカーであり、X1は、H、CH3、又はCH2CH3であり、
X2は、H、CH3、又はCH2CH3であり、nは、5〜50の整数である)
により表される。
【0024】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、リンカーは、式(XVI):
G1-(Z1)o-(Y1)u-(Z2)s-(R10)-(Z3)t-(Y2)v-(Z4)p-G2 (XVI)
(式中、
G1は、前記ポリフルオロ有機基と前記リンカーとの間の結合であり、
G2は、前記リンカーと酸素原子との間の結合であり、
Z1、Z2、Z3、及びZ4は、各々独立して、O、S、及びNR11から選択され、
R11は、水素又はC1〜10アルキル基であり、
Y1及びY2は、各々独立して、カルボニル、チオカルボニル、スルホニル、又はホスホリルから選択され、
o、p、s、t、u及びvは、各々独立して、0又は1であり、
R10は、置換又は非置換C1〜10アルキル、1〜10個の原子のヘテロアルキル、C2〜10アルケン、C2〜10アルキン、C5〜10アリール、3〜10個の原子の環状系、-(CH2CH2O)qCH2CH2-(ここで、qは1〜10の整数である)、又はG1-(Z1)o-(Y1)u-(Z2)s-と-(Z3)t-(Y2)v-(Z4)p-G2とを連結する化学結合である)
により表される。
【0025】
一部の実施形態において、リンカーは共有結合又は-(C=O)-基である。
【0026】
一部の実施形態において、組成物は、式(XVII):
【化5】

【0027】
(式中、
FTは、ポリフルオロ有機基であり、L2は、置換又は非置換C1〜10アルキル、1〜10個の原子のヘテロアルキル、C2〜10アルケン、C2〜10アルキン、C5〜10アリール、3〜10個の原子の環状系、-(CH2CH2O)qCH2CH2-(ここで、qは1〜10の整数である)、X1は、H、CH3、又はCH2CH3であり、X2は、H、CH3、又はCH2CH3であり、nは、5〜50の整数である)により表される。
【0028】
一部の実施形態において、ポリフルオロ有機基は、100〜1,500Daの間の分子量を有するポリフルオロアルキルである。
【0029】
他の実施形態において、ポリフルオロ有機基は、一般式CF3(CF2)rCH2CH2-又はCF3(CF2)s(CH2CH2O)x-(式中、rは2〜20の整数であり、xは1〜10の整数であり、sは1〜20の整数である)のラジカルである。
【0030】
さらに他の実施形態において、ポリフルオロ有機基は、一般式CHmF(3〜m)(CF2)rCH2CH2-又はCHmF(3〜m)(CF2)s(CH2CH2O)x-(式中、mは0、1、2又は3であり、xは1〜10の間の整数であり、rは2〜20の間の整数であり、sは1〜20の間の整数である)のラジカルである。
【0031】
特定の実施形態において、ポリフルオロ有機基は、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、(CF3)(CF2)7CH2CH2O-、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、CHF2(CF2)3CH2O-、及び(CF3)(CF2)2CH2O-、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-デカノール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノール、1H,1H,5H-パーフルオロ-1-ペンタノール及び1H,1H,パーフルオロ-1-ブタノール、並びにそれらの混合物から選択される。
【0032】
一部の実施形態において、組成物は、(i)本明細書に記載される組成物のいずれか(例えば、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物)と、(ii)薬物との混合物を含む。一部の実施形態において、薬物は疎水性薬物である(例えば、薬物は抗増殖剤及びラパマイシンマクロライドから選択される)。一部の実施形態において、疎水性薬物は、メトトレキサート、トリメトレキサート、ゲムシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビンシン、ブレオマイシン、及びタモキシフェンから選択される抗増殖剤である。他の実施形態において、疎水性薬物は、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス、及びABT-578から選択されるラパマイシンマクロライドである。他の実施形態において、疎水性薬物は、パクリタキセルである。一部の実施形態において、(i):(ii)は、20:1〜1:20の比である。
【0033】
特定の実施形態において、コーティングはオリゴフッ素化オリゴマーを含む。オリゴフッ素化オリゴマーは、任意選択で2kDa〜50KDa(例えば2kDa〜5KDa、4kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、3kDa〜20KDa、又は10kDa〜50KDa)の平均分子量を有する、式(I)〜(VIII)のいずれかの化合物であってもよい。特定の実施形態において、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(I)、(III)、(IV)、(V)、又は(VI)の化合物である。オリゴフッ素化オリゴマーは、式(IX)の移植ポリマーであってもよい。代替として、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(X)-(XIV)のいずれかの架橋ポリマーであってもよい。他の実施形態において、コーティングは、水不溶性セグメントを含む分枝化合物を含む。分枝化合物は、任意選択で1kDa〜50KDa(例えば1kDa〜5KDa、3kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、12kDa〜40KDa、又は15kDa〜50KDa)の平均分子量を有する式(XV)、(XV-A)、(XV-B)、(XV-C)、又は(XVII)のいずれかの化合物であってもよい。
【0034】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、組成物は水をさらに含む。一部の実施形態において、組成物は水分散液(例えば単一又は2相分散液)である。
【0035】
他の実施形態において、組成物は、固体分散液である。
【0036】
さらに他の実施形態において、組成物は、全身注射に適している。
【0037】
一部の実施形態において、組成物は、液剤、錠剤、カプセル剤、粉剤、注射剤、及び坐剤の形態である。
【0038】
一部の実施形態において、疎水性薬物の溶解度は、増加する。
【0039】
本明細書に記載される組成物のいずれかは、本明細書に記載される方法又は一時的医療デバイスのいずれかに使用され得る。
【0040】
別の態様において、本発明は、表面を、(i)水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物と(ii)生理活性物質とを含む自己集合コーティングと接触させることによって、生理活性物質を哺乳動物組織の組織表面に送達する方法であって、その自己集合コーティングは、接触させた後、埋込型医療デバイスの非存在下で組織表面上に存在し、生理活性物質を組織表面に放出する、方法を特徴とする。
【0041】
特定の実施形態において、コーティングはオリゴフッ素化オリゴマーを含む。オリゴフッ素化オリゴマーは、任意選択で2kDa〜50KDa(例えば2kDa〜5KDa、4kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、3kDa〜20KDa、又は10kDa〜50KDaの平均分子量を有する、式(I)〜(VIII)のいずれかの化合物であってもよい。特定の実施形態において、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(I)、(III)、(IV)、(V)、又は(VI)の化合物である。オリゴフッ素化オリゴマーは、式(IX)の移植ポリマーであってもよい。代替として、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(X)-(XIV)のいずれかの架橋ポリマーであってもよい。他の実施形態において、コーティングは、水不溶性セグメントを含む分枝化合物を含む。水不溶性セグメントを含む分枝化合物は、任意選択で1kDa〜50KDa(例えば1kDa〜5KDa、3kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、12kDa〜40KDa、又は15kDa〜50KDaの平均分子量を有する式(XV)、(XV-A)、(XV-B)、(XV-C)、又は(XVII)のいずれかの化合物であってもよい。
【0042】
本発明はまた、表面を、自己集合コーティングでコーティングされた一時的医療デバイスと接触させることによって、生理活性物質を哺乳動物組織の組織表面に送達する方法であって、その自己集合コーティングは、(i)水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物と(ii)生理活性物質とを含み、その一時的医療デバイスは、接触させた後、生理活性物質を組織表面に放出する、方法を特徴とする。特定の実施形態において、一時的医療デバイスは、自己集合コーティングを破壊でき、破壊後、生理活性物質を組織表面に放出する。例えば、一時的医療デバイスは、変形した構成に展開された後、自己集合コーティングを機械的に破壊し、生理活性物質を組織表面に放出する、変形可能な一時的医療デバイスであってもよい。代替として、一時的医療デバイスは、自己集合コーティングをエネルギー源に向けて、エネルギー(例えば、超音波、熱、電磁、又は振動エネルギー)に応答して自己集合コーティングを破壊するように構成されてもよい。自己集合コーティングは、固体析出、噴霧コーティング、プリンティング、又は浸漬コーティングによって一時的医療デバイスの表面に適用され得る。例えば、自己集合コーティングは、デバイスが、第1に水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物でコーティングされ、第2に生理活性物質でコーティングされる2ステップアプローチにおいて、デバイスの表面に適用され得る。一部の実施形態において、自己集合コーティングのオリゴフッ素化オリゴマーは、一時的医療デバイス上に自己集合層を形成する。コーティングは、0.01〜250ミクロン(例えば、0.01〜5ミクロン、0.1〜5ミクロン、1〜5ミクロン、1〜25ミクロン、2〜25ミクロン、5〜50ミクロン、5〜100ミクロン、10〜250ミクロン、15〜50ミクロン、又は25〜125ミクロン)の厚さを有してもよい。特定の実施形態において、5〜55%(w/w)の生理活性物質が、一時的医療デバイスから哺乳動物組織に送達されてもよい(例えば、5〜35%、15〜85%、20〜95%、25〜65%、25〜85%、35〜65%、35〜95%、40〜95%、又は55〜95%(w/w)の生理活性物質が送達される)。特定の実施形態において、組織表面は血管内にあり、自己集合コーティングは一時的医療デバイスの表面をコーティングし、組織表面に送達される前に、生理活性物質の25〜85%(w/w)が医療デバイス上に保持される(例えば、生理活性物質の25〜75%、25〜65%、35〜95%、35〜75%、45〜95%、45〜75%、55〜95%、又は55 75%(w/w)が保持される)。さらに他の実施形態において、一時的医療デバイスは、それ自体の上で折り畳まれて、折り畳まれた構成から折り畳まれていない構成に一時的医療デバイスが展開した後、生理活性物質の25〜85%(w/w)が医療デバイス上に保持される(例えば、生理活性物質の25〜75%、25〜65%、35〜95%、35〜75%、45〜95%、45〜75%、55〜95%、又は55〜75%(w/w)が保持される)。
【0043】
上記の態様の特定の実施形態において、組織表面は、哺乳動物組織の内腔系(例えば、血管、静脈グラフト、合成移植、又は呼吸器系、泌尿器系、生殖器系、神経系若しくは消化器系における内腔)である。例えば、自己集合コーティングは、哺乳動物組織の内腔系内に挿入され、伸長した構成に展開される、バルーンカテーテルの表面に適用されることができ、バルーンカテーテルの表面から内腔系の組織表面に生理活性物質を移動させる。
【0044】
上記の態様のいずれかにおいて、自己集合コーティングの水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物は再吸収可能であってもよく、又は再吸収可能でなくてもよい。特定の実施形態において、コーティングはオリゴフッ素化オリゴマーを含む。オリゴフッ素化オリゴマーは、任意選択で2kDa〜50KDa(例えば2kDa〜5KDa、4kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、3kDa〜20KDa、又は10kDa〜50KDaの平均分子量を有する、式(I)〜(VIII)のいずれかの化合物であってもよい。特定の実施形態において、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(I)、(III)、(IV)、(V)、又は(VI)の化合物である。オリゴフッ素化オリゴマーは、式(IX)の移植ポリマーであってもよい。代替として、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(X)-(XIV)のいずれかの架橋ポリマーであってもよい。他の実施形態において、コーティングは、水不溶性セグメントを含む分枝化合物を含む。分枝化合物は、任意選択で1kDa〜50KDa(例えば1kDa〜5KDa、3kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、12kDa〜40KDa、又は15kDa〜50KDaの平均分子量を有する式(XV)、(XV-A)、(XV-B)、(XV-C)、又は(XVII)のいずれかの化合物であってもよい。
【0045】
上記の態様の特定の実施形態において、自己集合コーティングは、1kDa〜60kDa(例えば1kDa〜40kDa、2kDa〜60kDa、2kDa〜40kDa、3kDa〜60kDa、3kDa〜40kDa、5kDa〜60kDa、5kDa〜40kDa、10kDa〜60kDa、又は15kDa〜60kDa)の分子量を有する成分からなる。
【0046】
上記の態様のさらに他の実施形態において、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物は、1kDa〜30kDa(例えば1kDa〜60kDa、2kDa〜60kDa、2kDa〜30kDa、3kDa〜60kDa、3kDa〜30kDa、5kDa〜60kDa、5kDa〜30kDa、10kDa〜60kDa、又は10kDa〜30kDa)の理論的分子量を有する。
【0047】
上記の態様の特定の実施形態において、オリゴフッ素化オリゴマーは、ハードセグメント、ソフトセグメント、及びポリフルオロ有機基を含み、オリゴフッ素化オリゴマーは、5〜80%(w/w)のハードセグメント、10〜90%(w/w)のソフトセグメント、及び5〜80%(w/w)のポリフルオロ有機基を含む。
【0048】
上記の態様のいずれかにおいて、生理活性物質は、自己集合コーティング全体にわたって均一に分配されていてもよい。特定の実施形態において、コーティングはオリゴフッ素化オリゴマーを含む。オリゴフッ素化オリゴマーは、任意選択で2kDa〜50KDa(例えば2kDa〜5KDa、4kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、3kDa〜20KDa、又は10kDa〜50KDaの平均分子量を有する、式(I)〜(VIII)のいずれかの化合物であってもよい。特定の実施形態において、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(I)、(III)、(IV)、(V)、又は(VI)の化合物である。オリゴフッ素化オリゴマーは、式(IX)の移植ポリマーであってもよい。代替として、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(X)〜(XIV)のいずれかの架橋ポリマーであってもよい。他の実施形態において、コーティングは、水不溶性セグメントを含む分枝化合物を含む。分枝化合物は、任意選択で1kDa〜50KDa(例えば1kDa〜5KDa、3kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、12kDa〜40KDa、又は15kDa〜50KDaの平均分子量を有する式(XV)、(XV-A)、(XV-B)、(XV-C)、又は(XVII)のいずれかの化合物であってもよい。
【0049】
上記の態様のいずれかにおいて、自己集合コーティングは、1〜30%(w/w)のフッ素原子(例えば、2〜30%、3〜30%、4〜30%、5〜30%、2〜10%、3〜15%、又は4〜20%(w/w)のフッ素原子)を含んでもよい。
【0050】
上記の態様のいずれかにおいて、自己集合コーティングは、0.1〜50%(w/w)の生理活性物質(例えば0.1〜10%、0.5〜30%、1〜50%、2〜50%、2〜30%、3〜50%、0.5〜5%、0.5〜10%、1〜10%、2〜15%、2〜25%、3〜15%、又は3〜25%(w/w)の生理活性物質)を含む。
【0051】
上記の態様のいずれかにおいて、自己集合コーティングは、20:1〜1:20(例えば1:1〜1:20、20:1〜1:1、10:1〜1:10、1:1〜1:10、10:1〜1:1、5:1〜1:5、1:1〜1:5、又は5:1〜1:1)のモル比の水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物:生理活性物質を含んでもよい。特定の実施形態において、コーティングはオリゴフッ素化オリゴマーを含む。オリゴフッ素化オリゴマーは、任意選択で2kDa〜50KDa(例えば2kDa〜5KDa、4kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、3kDa〜20KDa、又は10kDa〜50KDaの平均分子量を有する、式(I)〜(VIII)のいずれかの化合物であってもよい。特定の実施形態において、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(I)、(III)、(IV)、(V)、又は(VI)の化合物である。オリゴフッ素化オリゴマーは、式(IX)の移植ポリマーであってもよい。代替として、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(X)〜(XIV)のいずれかの架橋ポリマーであってもよい。他の実施形態において、コーティングは、水不溶性セグメントを含む分枝化合物を含む。分枝化合物は、任意選択で1kDa〜50KDa(例えば1kDa〜5KDa、3kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、12kDa〜40KDa、又は15kDa〜50KDaの平均分子量を有する式(XV)、(XV-A)、(XV-B)、(XV-C)、又は(XVII)のいずれかの化合物であってもよい。
【0052】
上記の態様のいずれかにおいて、自己集合コーティングは、-80〜40℃(例えば-80〜5℃、-60〜5℃、-50〜20℃、-40〜30℃、-30〜40℃、-20〜40℃、又は-15〜25℃)のガラス転移を有してもよい。
【0053】
上記の態様のいずれかにおいて、自己集合コーティングは、1.0〜200g(例えば1.0〜100g、1.0〜50g、2.0〜200g、2.0〜100g、2.0〜50g、1.0〜25g、2.0〜25g、3.0〜75g、3.0〜50g、3.0〜25g、又は1.0〜20g)の粘着度を有してもよい。
【0054】
上記の態様のいずれかにおいて、自己集合コーティングは、0.04〜130cps(例えば20〜130cps、50〜130cps、75〜130cps、0.04〜30cps、0.04〜70cps、0.5〜130cps、0.5〜13cps、0.5〜30cps、0.5〜70cps、1〜130cps、1〜20cps、1〜50cps、5〜25cps、又は5〜75cps)の粘度を有してもよい。
【0055】
上記の態様のいずれかにおいて、自己集合コーティングは、20〜120°(例えば20〜60°、30〜70°、40〜80°、60〜90°、70〜100°、80〜110°、90〜120°、60〜120°、又は35〜90°)の表面の接触角ヒステリシスを有してもよい。
【0056】
上記の態様のいずれかにおいて、コーティング内の生理活性物質は、1%〜99%(例えば、1%〜85%、5%〜99%、5%〜85%、10%〜99%、10%〜85%、20%〜99%、20%〜85%、30%〜99%、30%〜85%、40%〜99%、又は50%〜99%)のリン酸緩衝生理食塩水中の解離定数を有してもよい。
【0057】
上記の態様のいずれかにおいて、生理活性物質は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド、鎮痛剤、麻酔剤、血管新生阻害剤、抗血栓剤、血管作用剤、抗凝固剤、免疫調製剤、細胞毒性剤、抗ウイルス剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、ビタミン、脂質、及びそれらのプロドラッグから選択されてもよい。特定の実施形態において、生理活性物質は、抗増殖剤(例えば、メトトレキサート、トリメトレキサート、ゲムシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビンシン、ブレオマイシン、及びタモキシフェン)及びラパマイシンマクロライド(例えば、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス、及びABT-578)から選択される。これらの薬剤は、例えば、組織表面が血管壁であり、血管の再狭窄を阻害するために治療剤が送達される場合、有用であり得る。
【0058】
上記の態様のいずれかにおいて、自己集合コーティングは排出可能であり得る。
【0059】
上記の態様のいずれかにおいて、哺乳動物組織は対象内にあり得る。
【0060】
関連する態様において、本発明は、表面上に堆積された自己集合コーティングを有する表面を有する一時的医療デバイスであって、自己集合コーティングは、(i)水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物と(ii)生理活性物質とを含み、一時的医療デバイスは、エネルギー生成要素を備え、エネルギー生成要素は、活動化すると、自己集合コーティングを破壊することができる、一時的医療デバイスを特徴とする。例えば、エネルギー生成要素は、超音波、熱、電磁、又は振動エネルギーを生成してもよい。
【0061】
特定の実施形態において、コーティングはオリゴフッ素化オリゴマーを含む。オリゴフッ素化オリゴマーは、任意選択で2kDa〜50KDa(例えば2kDa〜5KDa、4kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、3kDa〜20KDa、又は10kDa〜50KDaの平均分子量を有する、式(I)〜(VIII)のいずれかの化合物であってもよい。特定の実施形態において、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(I)、(III)、(IV)、(V)、又は(VI)の化合物である。オリゴフッ素化オリゴマーは、式(IX)の移植ポリマーであってもよい。代替として、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(X)〜(XIV)のいずれかの架橋ポリマーであってもよい。他の実施形態において、コーティングは、水不溶性セグメントを含む分枝化合物を含む。分枝化合物は、任意選択で1kDa〜50KDa(例えば1kDa〜5KDa、3kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、12kDa〜40KDa、又は15kDa〜50KDaの平均分子量を有する式(XV)、(XV-A)、(XV-B)、(XV-C)、又は(XVII)のいずれかの化合物であってもよい。
【0062】
本発明はさらに、表面上に堆積された自己集合コーティングを有する表面を有する一時的医療デバイスであって、自己集合コーティングは、(i)水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物と(ii)生理活性物質とを含み、一時的医療デバイスは、変形可能な一時的医療デバイスであり、変形した構成に展開された後、自己集合コーティングを機械的に破壊する、一時的医療デバイスを特徴とする。例えば、変形可能な一時的医療デバイスは、バルーンカテーテルであってもよい。
【0063】
特定の実施形態において、コーティングはオリゴフッ素化オリゴマーを含む。オリゴフッ素化オリゴマーは、任意選択で2kDa〜50KDa(例えば2kDa〜5KDa、4kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、3kDa〜20KDa、又は10kDa〜50KDaの平均分子量を有する、式(I)〜(VIII)のいずれかの化合物であってもよい。特定の実施形態において、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(I)、(III)、(IV)、(V)、又は(VI)の化合物である。オリゴフッ素化オリゴマーは、式(IX)の移植ポリマーであってもよい。代替として、オリゴフッ素化オリゴマーは、式(X)〜(XIV)のいずれかの架橋ポリマーであってもよい。他の実施形態において、コーティングは、水不溶性セグメントを含む分枝化合物を含む。分枝化合物は、任意選択で1kDa〜50KDa(例えば1kDa〜5KDa、3kDa〜12KDa、6kDa〜15KDa、5kDa〜25KDa、12kDa〜40KDa、又は15kDa〜50KDaの平均分子量を有する式(XV)、(XV-A)、(XV-B)、(XV-C)、又は(XVII)のいずれかの化合物であってもよい。
【0064】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、コーティングは、0.01〜250ミクロン(例えば、0.01〜5ミクロン、0.1〜5ミクロン、1〜5ミクロン、1〜25ミクロン、2〜25ミクロン、5〜50ミクロン、5〜100ミクロン、10〜250ミクロン、15〜50ミクロン、又は20〜125ミクロン)の厚さを有してもよい。
【0065】
上記の一時的医療デバイスの特定の実施形態において、自己集合コーティングは、1kDa〜60kDa(例えば1kDa〜40kDa、2kDa〜60kDa、2kDa〜40kDa、3kDa〜60kDa、3kDa〜40kDa、5kDa〜60kDa、5kDa〜40kDa、10kDa〜60kDa、又は15kDa〜60kDa)の分子量を有する成分からなる。
【0066】
上記の一時的医療デバイスのさらに他の実施形態において、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物は、1kDa〜30kDa(例えば1kDa〜60kDa、2kDa〜60kDa、2kDa〜30kDa、3kDa〜60kDa、3kDa〜30kDa、5kDa〜60kDa、5kDa〜30kDa、10kDa〜60kDa、又は10kDa〜30kDa)の理論的分子量を有する。
【0067】
上記の一時的医療デバイスの特定の実施形態において、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物は、ハードセグメント、ソフトセグメント、及びポリフルオロ有機基を含み、オリゴフッ素化オリゴマーは、5〜80%(w/w)のハードセグメント、10〜90%(w/w)のソフトセグメント、及び5〜80%(w/w)のポリフルオロ有機基を含む。
【0068】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、生理活性物質は、自己集合コーティング全体にわたって均一に分配され得る。
【0069】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、生理活性物質は、固体析出法によって自己集合コーティング内に組み込まれ得る。
【0070】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、自己集合コーティングは、1〜30%(w/w)のフッ素原子(例えば2〜30%、3〜30%、4〜30%、5〜30%、2〜10%、3〜15%、又は4〜20%(w/w)のフッ素原子)を含んでもよい。
【0071】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、自己集合コーティングは、0.1〜50%(w/w)の生理活性物質(例えば0.1〜10%、0.5〜30%、1〜50%、2〜50%、2〜30%、3〜50%、0.5〜5%、0.5〜10%、1〜10%、2〜15%、2〜25%、3〜15%、又は3〜25%(w/w)の生理活性物質)を含む。
【0072】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、自己集合コーティングは、20:1〜1:20(例えば1:1〜1:20、20:1〜1:1、10:1〜1:10、1:1〜1:10、10:1〜1:1、5:1〜1:5、1:1〜1:5、又は5:1〜1:1)のモル比の水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物:生理活性物質を含んでもよい。
【0073】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、自己集合コーティングは、-80〜40℃(例えば-80〜5℃、-60〜5℃、-50〜20℃、-40〜30℃、-30〜40℃、-20〜40℃、又は-15〜25℃)のガラス転移を有してもよい。
【0074】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、自己集合コーティングは、1.0〜200g(例えば1.0〜100g、1.0〜50g、2.0〜200g、2.0〜100g、2.0〜50g、1.0〜25g、2.0〜25g、3.0〜75g、3.0〜50g、3.0〜25g、又は1.0〜20g)の粘着度を有してもよい。
【0075】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、自己集合コーティングは、0.04〜130cps(例えば20〜130cps、50〜130cps、75〜130cps、0.04〜30cps、0.04〜70cps、0.5〜130cps、0.5〜13cps、0.5〜30cps、0.5〜70cps、1〜130cps、1〜20cps、1〜50cps、5〜25cps、又は5〜75cps)の粘度を有してもよい。
【0076】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、自己集合コーティングは、20〜120°(例えば、20〜60°、30〜70°、40〜80°、60〜90°、70〜100°、80〜110°、90〜120°、60〜120°、又は35〜90°)の表面の接触角ヒステリシスを有してもよい。
【0077】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、生理活性物質は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド、鎮痛剤、麻酔剤、血管新生阻害剤、抗血栓剤、血管作用剤、抗凝固剤、免疫調製剤、細胞毒性剤、抗ウイルス剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、ビタミン、脂質、及びそれらのプロドラッグから選択されてもよい。特定の実施形態において、生理活性物質は、抗増殖剤(例えば、メトトレキサート、トリメトレキサート、ゲムシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビンシン、ブレオマイシン、及びタモキシフェン)及びラパマイシンマクロライド(例えば、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス、及びABT-578)から選択される。
【0078】
上記の一時的医療デバイスのいずれかにおいて、自己集合コーティングは排出可能であり得る。
【0079】
本発明はさらに、本発明の一時的医療デバイスを血管内に挿入するステップと、一時的医療デバイスをその血管内の部位付近に配置するステップと、一時的医療デバイス上のコーティングを破壊して、生理活性物質をその部位に送達するステップとを含むことによる生理活性物質を血管内の部位に送達する方法を特徴とする。
【0080】
本発明は、エネルギー生成要素を備える一時的医療デバイスを血管内に挿入するステップと、エネルギー生成要素を活動化するステップとによる血管内の部位における再狭窄を阻害する方法であって、生理活性物質が、抗増殖剤及びラパマイシンマクロライドから選択される、方法を特徴とする。
【0081】
本発明はまた、本発明の変形可能な一時的医療デバイスを血管内に挿入するステップと、変形可能な一時的医療デバイスを変形した構成に展開するステップとによる血管内の部位における再狭窄を阻害する方法であって、生理活性物質は、抗増殖剤及びラパマイシンマクロライドから選択される、方法を特徴とする。特定の実施形態において、変形可能な一時的医療デバイスはカテーテルバルーンである。その方法はさらに、疾患部位にステントを配置するステップを含んでもよい(例えば、ステントは、カテーテルバルーンの展開前に配置されてもよいか、又はカテーテルバルーンの展開後に配置されてもよい)。カテーテルバルーンはステント内再狭窄の治療のために展開されてもよい。
【0082】
血管を治療する上記の方法のいずれかにおいて、その血管は分岐血管であってもよい。
【0083】
本発明のコーティングの粘着度は、例えば、「グラム重」で粘着度を測定する、TA.XTPlus Texture Analyser(Stable Micro Systems;Texture Technologies Corp;Scarsdale,N.Yにより販売されている)を用いて測定できる。
【0084】
「C1〜10アルキル」とは、1〜10個(両端を含む)の炭素原子を有する、分枝又は非分枝飽和炭化水素基を意味する。アルキルは、任意選択で、単環、二環又は三環を含んでもよく、各々の環は望ましくは3〜6員を有する。アルキル基は置換されてもよく、又は非置換であってもよい。例示的な置換基には、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオルアルキル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、第4級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、及びカルボキシル基が含まれる。
【0085】
「C2〜10アルケン」とは、望ましくは2〜10個の炭素原子を有する、一つ又は複数の二重結合を含有する分枝又は非分枝炭化水素基を意味する。C2〜10アルケンは、任意選択で、単環、二環又は三環を含んでもよく、各々の環は望ましくは5又は6員を有する。C2〜10アルケン基は置換されてもよく、又は非置換であってもよい。例示的な置換基には、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオルアルキル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、第4級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、及びカルボキシル基が含まれる。
【0086】
「C2〜10アルキン」とは、望ましくは2〜10個の炭素原子を有する、一つ又は複数の三重結合を含有する分枝又は非分枝炭化水素基を意味する。C2〜10アルキンは、任意選択で、単環、二環又は三環を含んでもよく、各々の環は望ましくは5又は6員を有する。C2〜10アルキン基は置換されてもよく、又は非置換であってもよい。例示的な置換基には、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオルアルキル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、第4級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、及びカルボキシル基が含まれる。
【0087】
「C5〜10アリール」又は「アリール」とは、共役したπ電子を有する環系を有する芳香族基(例えば、フェニル、又はイミダゾール)を意味する。アリール基の環は好ましくは5〜10個の原子である。芳香族環は炭素原子のみからなり得るか、又は炭素原子とヘテロ原子との混合物からなり得る。好ましいヘテロ原子には、窒素、酸素、硫黄、及びリンが含まれる。アリール基には、任意選択で、単環、二環、又は三環が含まれてもよく、各々の環は好ましくは5又は6員を有する。アリール基は、置換されてもよく、又は非置換であってもよい。例示的な置換基には、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、フルオロアルキル、カルボキシル、カルボキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、一置換アミノ、二置換アミノ、及び第4級アミノ基が含まれる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「C」は鎖末端基を指す。例示的な鎖末端基には、アミン、アルコール、又はカルボン酸官能基を含有する単官能基が含まれる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「複合体形成している」又は「複合体形成」は、本発明の自己集合コーティング内に含まれる水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物中の複合体形成部分と、生理活性物質との間の非共有又は金属中心への配位を介する相互作用を指す。本発明に従って使用され得る非共有結合相互作用の例には、非限定的に、水素結合、イオン性相互作用(例えば、双極子-双極子相互作用、イオン対生成及び塩形成)、包接複合体、キレート化、ファンデルワールス相互作用(例えば、π-πスタッキング)及びそれらの組合せが含まれる。相互作用はまた、複合体形成部分及び生理活性物質の両方による金属中心への配位も介し得る。一部の場合には、生理活性物質は複合体形成部分に配位している金属中心を含む。
【0090】
本明細書で使用される場合、「複合体形成部分」は、ポリマー複合体を形成すべく非共有相互作用又は金属中心への配位により生理活性物質と複合体形成する本発明の自己集合コーティング内に含まれる水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物の一部を含む本発明の特定の実施形態を指す。複合体形成部分は帯電部分、例えば生理学的pHでプロトンを失って負に帯電されるようになる部分(例えば、カルボキシレート又はホスホジエステル)、生理学的pHでプロトンを獲得して正に帯電されるようになる部分(例えば、アンモニウム、グアニジニウム又はアミジニウム)、プロトン化なしに正味形式(net formal)正電荷を含む部分(例えば、第4級アンモニウム)、又はプロトンを失うことなく正味形式負電荷を含む部分(例えば、ボレート、BR4-)であり得る。例示的な帯電複合体形成部分には、非限定的に、カルボキシレート、ホスホジエステル、ホスホルアミデート、ボレート、ホスフェート、ホスホネート、ホスホネートエステル、スルホネート、スルフェート、チオレート、フェノレート、アンモニウム、アミジニウム、グアニジニウム、第4級アンモニウム及びイミダゾリウム官能基が含まれる。複合体形成部分は、全体的又は部分的に生理活性物質(例えば、シクロデキストリン)を生理的にカプセル化するように設計され得る。複合体形成部分は、生理活性物質中に存在する相補的オリゴヌクレオチド及び/又はペプチド配列を連結するように設計され得る。複合体形成部分は、リガンド単独として又は金属中心を含めて、生理活性物質を含む金属中心を配位するように設計され得る。複合体形成部分の作製方法及び生理活性物質との複合体形成方法の詳細は参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0037891号明細書に記載されている。
【0091】
本明細書で使用される場合、「共有結合している」は、一つ又は複数の共有結合により分離されている部分を指す。例えば、オリゴフルオロ基がオリゴフッ素化オリゴマーを形成するためにオリゴマーに共有結合している場合、結合しているとは単結合により分離されている部分、及び例えばいずれの部分もが共有結合しているリンクBセグメントにより分離されている両方の部分を含む。
【0092】
「環状系」なる用語は、一つ又は複数の共有結合した閉鎖環構造を含有する化合物であって、環の骨格を形成する原子が以下:炭素、酸素、窒素、硫黄、及びリンのうちのいずれかの組合せからなる、化合物を指す。環状系は、置換されてもよく、又は非置換であってもよい。例示的な置換基には、非限定的に、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、フルオロアルキル、カルボキシル、カルボキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、一置換アミノ、二置換アミノ、及び第4級アミノ基が含まれる。
【0093】
本明細書で使用される場合、「リン酸緩衝生理食塩水中の解離定数」は、25℃における本発明のコーティングとリン酸緩衝生理食塩水(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM第二リン酸ナトリウム、2mM第一リン酸カリウム及びpH7.4)との間の生理活性物質の平衡分布を指す。リン酸緩衝生理食塩水中の解離定数は、平衡にてリン酸緩衝生理食塩水溶液中に存在する生理活性物質の割合として表し、リン酸緩衝生理食塩水中に本発明のコーティングを入れ、水溶液中に存在する生理活性物質の平衡量を求めることによって測定される。
【0094】
本明細書で使用される場合、「排出可能」は、本発明の自己集合コーティングでコーティングされた一時的医療デバイスの表面又は組織表面由来の水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物の拡散を指す。本発明の自己集合コーティングから解離される場合、排出可能なコーティングは、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物を加水分解せずに、腎臓又は肝胆汁排出が可能な比較的少量のモノマーのみを生じるものである。
【0095】
「ヘテロアルキル」とは、一つ又は複数のメチレン(-CH2-)が窒素、酸素、硫黄、カルボニル、チオカルボニル、ホスホリル、又はスルホニル部分で置換されている分枝又は非分枝アルキル基を意味する。一部の例には、第3級アミン、エーテル、チオエーテル、アミド、チオアミド、カルバメート、チオカルバメート、ホスホロアミダート、スルホンアミド、及びジスルフィドが含まれる。ヘテロアルキルには、任意選択で、単環、二環、又は三環が含まれてもよく、各々の環は望ましくは3〜6員を有する。ヘテロアルキル基は置換されてもよく、又は非置換であってもよい。例示的な置換基には、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオルアルキル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、第4級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、及びカルボキシル基が含まれる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「リンクB」は、オリゴマー、生理活性物質、及び/又はオリゴフルオロ基に共有結合により連結することができるか、又は複合体形成できる結合セグメントを指す。典型的には、リンクB分子は40〜700の範囲の分子量を有する。好ましくは、リンクB分子は、官能基を有するジアミン、ジイソシアネート、ジスルホン酸、ジカルボン酸、二酸塩化物及びジアルデヒドの群より選択され、官能基を有する構成要素はオリゴフルオロ基との化学結合のために利用される第2の官能性化学物質を有する。そのような第2の基には、例えば、エステル、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、チオール、ビニル及び第2級アミンが含まれる。オリゴ中間物質上の末端ヒドロキシル、アミン又はカルボン酸は、ジアミンと反応してオリゴアミドを形成し、ジイソシアネートと反応してオリゴウレタン、オリゴウレア、オリゴアミドを形成し、ジスルホン酸と反応してオリゴスルホネート、オリゴスルホンアミドを形成し、ジカルボン酸と反応してオリゴエステル、オリゴアミドを形成し、二酸塩化物と反応してオリゴエステル、オリゴアミドを形成し、ジアルデヒドと反応してオリゴアセタール、オリゴイミンを形成する。
【0097】
本明細書で使用される場合、「再狭窄を阻害する」は、再狭窄の危険性を扱う任意の更なる治療法がない場合の閉塞を除去する治療後に発生する再狭窄と比べて、本発明の治療法を用いて血管形成等の閉塞を除去する治療後の動脈の再狭窄を減少させることを指す。
【0098】
本明細書で使用される場合、「非ハロゲン化有機セグメント」なる用語は、ハロゲン基(すなわち、F、Cl、Br又はI)を一つも含まない有機オリゴマー(例えば、100〜3,500Daの間の分子量を有する)を指す。非ハロゲン有機セグメントは好ましくは水溶性(例えば、ポリエチレングリコール)である。
【0099】
本明細書で使用される場合、「オリゴフッ素化オリゴマー」なる用語は、オリゴフルオロ基に共有結合したオリゴマーを指す。オリゴフッ素化オリゴマーには、例えば、本明細書に記載される式I〜XIVのいずれかのものが含まれる。
【0100】
「オリゴ」又は「オリゴマー」とは、比較的短い長さの一つ又は複数の反復単位、通常、約50未満の単量体単位及び10,000ダルトン未満であるが好ましくは5,000ダルトン未満の分子量を意味する。好ましくは、オリゴは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリペプチド、多糖、並びにそれらのエーテル及びアミン結合セグメントからなる群より選択される。
【0101】
「再吸収可能」とは、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物の部分が、哺乳動物組織内へ組み込まれると再吸収されるように設計されることを意味する。例えば、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物のオリゴマー部分は、哺乳動物組織内で分解及び同化され得る、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、及びそれらの混合物)等の再吸収可能ポリマーから選択され得る。
【0102】
本明細書で使用される場合、「三官能性モノマー」なる用語は、別の化合物(例えば、本明細書に記載されるリンカーのいずれか)に対して共有結合を形成できる3つの官能基を含む低分子(例えば、50〜3500Daの間の分子量を有する)を指す。例示的な三官能性モノマーには、トリオール、トリカルボン酸及び酸誘導体、並びにトリイソシアネートが含まれる。本明細書に記載される組成物、方法、及び一時的医療デバイスに使用され得る三官能性モノマーには、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン(TME)、トリメシン酸(TMA)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、ペンタエリスリトール、ピロメリット酸、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、トリアミノピリミジン、又はメラミンが含まれる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「一時的医療デバイス」なる用語は、身体又は哺乳動物組織内に一時的にのみ(例えば、医療処置の実施及び/又は生理活性物質の標的組織への送達の間のみ)存在するように設計されるデバイスを指す。一時的医療デバイスは、生理活性物質が治療される組織に送達された後、30分以内に除去される。
【0104】
本明細書に使用される場合、「水不溶性セグメント」なる用語は、水と混和しない有機オリゴマーセグメント(例えば、200〜3,500又は100〜1,500Daの間の分子量を有する)を指す。例示的な水不溶性セグメントには、本明細書に記載されるポリフルオロ有機セグメント、及びポリシロキサン又はポリオレフィン及び本明細書に記載される他のオリゴマーが含まれる。
【0105】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】フッ素化薬物送達組成物及び血管形成術用バルーンコーティングを示す図である。フルオロ領域は、罹患組織への医薬複合体(共有結合及び非共有結合)の送達の間、(その固有の撥水性のために)溶解度を制限するシールドを与える。非フッ素化セグメントの化学物質は、罹患組織への移動の間、バルーン表面に対する十分な結合を生じるように選択され得る。
【図2】閉塞血管内のコーティングされたバルーンの展開を示す図である。2番目の図のフレームにおいて、送達分子は、罹患組織部位において、バルーン膨張のため、連続フィルムを形成するそれらの能力を失っているので、ここで薬物結合部位において水和し始めるオリゴフッ素化分子からの薬物の分離が生じる。3番目の図のフレームにおいて、送達分子は、腎臓系を介して除去され得る血流内に溶解されているため、もはや観察されない。
【図3】BSAとインキュベートしたナイロンフィルム単独より少ないタンパク質吸着(暗青色の堆積)を示す化合物1でコーティングされたBSAとインキュベートしたナイロンフィルムの写真である。BSAはクマシーブリリアントブルーR染料で染色した。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本発明の方法及び組成物は、オリゴマー化合物(例えば、オリゴフッ素化オリゴマー、例えば水不溶性セグメントを含む分枝若しくは直鎖オリゴフッ素化オリゴマー、又は分枝化合物)、好ましくは分枝化合物と、生理活性物質とを含む自己集合コーティング又は製剤を特徴とする。生理活性物質は、(例えばリンクB、オリゴ、又はFT内へ組み込まれた)複合体形成部分を保有するオリゴフッ素化オリゴマーとの非共有複合体形成による、物理的封入として、オリゴフッ素化オリゴマーに対する共有結合によることを含む、様々な方法でコーティング又は製剤内に組み込まれ得る。
【0108】
本発明のコーティング及び製剤は、オリゴマー化合物(例えば、オリゴフッ素化オリゴマー、例えば、水不溶性セグメントを含む分枝若しくは直鎖オリゴフッ素化オリゴマー、又は分枝化合物)、好ましくはコアオリゴマー、水不溶性セグメント(例えば、フッ素化セグメント)、及び任意選択で生理活性物質のための共局在化部位を含む、分枝化合物の自己集合によって都合良く形成される。コーティング及び製剤は、十分な血液適合性(低い血中活性化)を有することができ、排出可能であり得る(身体から容易に除去され、局在化せず、それにより慢性局所炎症の減少をもたらし得る)。中心コアにより、送達プラットフォームが、ポリマー又は金属製介入デバイスに結合することが可能となる。罹患組織部位に送達されるまで、及び生理活性物質を含有するための自己集合コーティング内でのオリゴマー化合物(例えば、オリゴフッ素化オリゴマー)、好ましくは分枝の自己集合のために、水不溶性セグメント(例えば、フッ素化セグメント)は、環境チャレンジ(例えば、治療部位へ到達する前の溶解、又は送達の間の折り畳まれた、折り畳まれていない、若しくは変化した形状のデバイスの粘着性に起因する損失の結果としての薬剤の分解及び早期放出)から生理活性物質を保護するために、血流環境において血中活性化を最小化するのに不可欠である。任意選択の生理活性物質結合部位は、送達系と多種多様の異なる治療剤との相溶性を可能にする。自己集合コーティング及び製剤の排出可能な特徴は、その場での分解産物の保持又は放出よりむしろ、特定の薬物溶出ステントの炎症性イベント特徴をもたらす担体分子の簡単な溶解及び除去を可能にするストラテジーの一部である(Virmani R,Semin Interv Cardiol 3(3-4):163(1998);Rossら,Adv Exp Med Biol 102:135(1978);及びBarker SG,Atherosclerosis 105(2):131(1994)を参照のこと)。
【0109】
水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー及び分枝化合物
オリゴフッ素化オリゴマー及びポリフルオロ有機基
オリゴフッ素化オリゴマーは、オリゴフルオロ基に共有結合したオリゴを含み、非限定的に、式I〜XIVのいずれかによって表され得る。
【0110】
オリゴフッ素化オリゴマーは、式(I):
FT-(オリゴ)-FT (I)
(式中、FTはポリフルオロ有機基であり、オリゴはオリゴマーセグメントである)
によって表されるポリマーであり得る。
【0111】
オリゴフッ素化オリゴマーは、式(II):
【化6】

【0112】
(式中、(i)FTはリンクBに共有結合したポリフルオロ有機基であり、(ii)Cは鎖末端基であり、(iii)オリゴはオリゴマーセグメントであり、(iv)リンクBは結合セグメントであり、(v)aは0より大きい整数(例えば、1〜50、1〜20、又は1〜10の整数)である)
によって表されるポリマーであり得る。
【0113】
オリゴフッ素化オリゴマーは、式(III):
FT-[B-(オリゴ)]n-B-FT(III)
(式中、Bはウレタンを含み、オリゴは有機セグメントであり、FTはポリフルオロ有機基であり、nは1〜10の整数である)
によって表されるポリマーであり得る。
【0114】
式(I)、(II)、及び(III)において、オリゴは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド(ポリペプチドを含む)、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル誘導体、ポリペプチド、多糖、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン-ブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレンオキシド(ネオペンチルグリコール、とりわけポリプロピレンオキシド誘導体を含む)、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、又はポリエチレンブチレンセグメントを含むオリゴマーセグメント等の1〜50個の反復単位の分枝又は非分枝オリゴマーセグメントであり得る。特定の実施形態において、オリゴには、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、又はポリテトラメチレンオキシドが含まれる。
【0115】
オリゴフッ素化オリゴマーは、式(IV):
FT-[B-A]n-B-FT (IV)
(式中、(i)Aは、水素化ポリブタジエン、ポリ(2,2ジメチル-1-3-プロピルカーボネート)、ポリブタジエン、ポリ(ジエチレングリコール)アジペート、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(エチレン-co-ブチレン)、ネオペンチルグリコール-無水オルトフタル酸ポリエステル、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステル、1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステル、又はビスフェノールAエトキシレートを含むソフトセグメントであり、(ii)Bはウレタンを含むハードセグメントであり、(iii)FTはポリフルオロ有機基であり、(iv)nは1〜10の整数である)
によって表されるポリマーであり得る。例えば、ハードセグメントは、3-イソシアネートメチル、3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、4,4'-メチレンビス(フェニル)イソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートから選択されるジイソシアネートから形成されてもよく、nは1又は2であってもよい。
【0116】
オリゴフッ素化オリゴマーは、式(V)又は(VI):
【化7】

【0117】
(式中、(i)Aはソフトセグメントであり、(ii)Bはイソシアヌレート三量体又はビウレット三量体を含むハードセグメントであり、(iii)B'はウレタンを含むハードセグメントであり、(iv)各々のFTはポリフルオロ有機基であり、(v)nは0〜10の間の整数である)
によって表されるポリマーであり得る。ソフトセグメントは、500〜3,500ダルトンの数平均分子量(Mn)を有することができ、水素化ポリブタジエン(HLBH)、ポリ(2,2ジメチル-1-3-プロピルカーボネート)(PCN)、ポリブタジエン(LBHP)、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ジエチレングリコール-オルトフタリカンヒドライド(orthophthalicanhydride)ポリエステル(PDP)、水素化ポリイソプレン(HHTPI)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピルカーボネート)、又はヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー(C22)を含む。ハードセグメントは、トリイソシアネートと、ソフトセグメントを含むジオールとを反応させることによって形成でき、ここで、トリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ビウレット三量体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)三量体、又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)三量体から選択される。
【0118】
代替として、本発明のコーティングは、オリゴフッ素化オリゴマーに共有結合しているか又は複合体形成している生理活性物質を含む。そのようなオリゴフッ素化オリゴマーは、式(VII):
【化8】

【0119】
(式中、オリゴはオリゴマーセグメントであり、Bioは生理活性物質であり、FTはオリゴフルオロ基であり、各々のリンクBは独立してオリゴ、FT、又はBioに共有結合した有機部分であり、aは0より大きい整数(例えば、1〜50、1〜20、1〜10、又は1〜5)であり、b及びcは各々独立して0より大きいか又は0に等しい整数(例えば、1〜20、1〜10、1〜5、2〜20、2〜10、又は2〜5)であり、dは0又は1である)
によって表され得る。オリゴマーには、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリペプチド、多糖、又はそれらの組合せが含まれてもよい。
【0120】
特定のコーティングにおいて、自己集合コーティングは、式(VIII):
C-(リンクB)-[FT-(リンクB)]a-C (VIII)
(式中、(i)FTはリンクBに両端で共有結合した二官能性ポリフルオロ有機基、(ii)Cは鎖末端基であり、(iii)リンクBは結合セグメントであり、(iv)aは0より大きい整数(例えば、1〜50、1〜20、1〜20、1〜5、2〜20、2〜10、又は3〜20)である)
のもの等の非末端ポリフルオロ有機基を含むオリゴフッ素化オリゴマーから形成される。
【0121】
自己集合コーティングは、式(IX):
【化9】

【0122】
(式中、[オリゴ]はオリゴマーポリマーセグメントであり、[リンクA]は、少なくとも2つの[オリゴ]基に連結して、15,000Da未満の理論的分子量を有する(([オリゴ]-[リンクA])a)-[オリゴ]))を形成する第1の結合セグメントであり、Tは末端基であり、FTはポリフルオロ有機基であり、[MRF]はポリオレフィンであり、[INI]は、ATRP、原子移動ラジカル付加(ATRA)、又は原子移動ラジカル環化(ATRC)を開始する能力を有する官能基であり、[リンクB]は、(([オリゴ]-[リンクA])a)-[オリゴ]))をFT、T、及び/又は[リンクC]に連結する第2の結合セグメントであり、[リンクC]は、[リンクB]を[INI]に連結する第3の結合セグメントであるか、又は[INI]が存在しない場合、[リンクC]はn世代のデンドロンであり、[活性物質]は、[リンクC]又は[MRF]に複合体形成しているか又は共有結合している一つ又は複数の生理活性物質であり、a及びdの各々は独立して0より大きい整数(例えば、1〜20、1〜10、又は1〜5)であり、nは1〜150の整数(例えば、1〜50、1〜20、1〜10、又は1〜5)であり、pは1〜20の整数(例えば、1〜10、1〜5、又は2〜10)であり、m、p、y、及びwの各々は独立して0又は1〜20の整数(例えば、1〜10、1〜5、又は2〜10)である(ただし、m≦n、w≦yであり、m、p、y、及びwが0の場合、nは2〜150の整数であり、z≧1の場合、m=0であり、m≧1の場合、z=0である))
によって表される移植ポリマーから形成され得る。部分(([オリゴ]-[リンクA])a)-[オリゴ]))には、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリペプチド、多糖、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、及びそれらの組合せから選択される重縮合体が含まれてもよい。部分[MRF]は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(メチルアルキルスルホキシドメタクリレート)、ポリ(メチルアルキルスルホキシドアクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピル-アクリルアミド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、及びそれらのコポリマーから選択されてもよい。部分オリゴ又はオリゴマーには、非限定的に、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル誘導体、ポリペプチド、多糖、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン-ブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、ポリエチレンブチレン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリジエチレングリコールフタレート、ポリジエチレングリコールアジペート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシオクタノエート、ポリヒドロキシバレレート、biOH(商標)大豆油誘導体(Cargill)、並びにそれらの組合せ及び混合物が含まれてもよい。
【0123】
自己集合コーティングは、(i)2つ以上の架橋ドメインと、(ii)第1の架橋ドメインに共有結合している第1の末端及び第2の架橋ドメインに共有結合している第2の末端を有するオリゴマーセグメントとを含むモノマーから形成され、ここで、該架橋ドメインの少なくとも一つはオリゴフッ素化架橋ドメインである、重合コーティングであり得る。モノマーはさらに、式(I):
(D)-[(オリゴ)-(D)]n (X)
(式中、オリゴはオリゴマーセグメントであり、各々のDは架橋ドメインであり、nは1〜20、1〜15、1〜10、1〜8、又は1〜5の整数であり、ここで、少なくとも一つのDはオリゴフッ素化架橋ドメインである)
によって表され得る。代替として、モノマーはさらに、式(XI):
(D)-[(オリゴ)-(リンクA-FT)]m-[(オリゴ)-(D)]n (XI)
(式中、オリゴはオリゴマーセグメントであり、各々のDは架橋ドメインであり、FTはオリゴフルオロ基であり、各々のリンクA-FTは、第1のオリゴ、第2のオリゴ、及びFTに共有結合した有機部分であり、nは1〜20の整数(例えば、1〜10、1〜5、又は2〜10)であり、mは1〜20の整数(例えば、1〜10、1〜5、又は2〜10)の整数であり、ここで、少なくとも一つのDはオリゴフッ素化架橋ドメインである)
によって表され得る。本発明のコーティングの調製に利用され得る架橋ドメインは、非限定的に、ビニル、エポキシド、アジリジン、及びオキサゾリン等の連鎖成長重合を可能にする反応部分を含む。例えば、架橋ドメインは、
【化10】

【0124】
から選択される。
【0125】
モノマーはさらに、式(XII):
(オリゴ)n(ビニル)m(FT)O (XII)
(式中、オリゴはオリゴマーセグメントであり、ビニルはラジカル開始重合を受けることが可能な不飽和部分を含む架橋ドメインであり、FTはビニル及び/又はオリゴに共有結合しているオリゴフルオロ基であり、n、m、及びoの各々は、独立して、1〜5の整数であり、ここで、モノマーは少なくとも一つのオリゴフッ素化架橋ドメインを含む)
によって表され得る。モノマーはさらに、式(XIII):
【化11】

【0126】
(式中、オリゴはオリゴマーセグメントであり、ビニルはラジカル開始重合を受けることが可能な不飽和部分を含む架橋ドメインであり、FTはオリゴフルオロ基であり、各々のリンクAは独立してオリゴ、FT、及びビニルに共有結合した有機部分であり、a、b、及びcの各々は独立して0より大きい整数(例えば、1〜20、1〜10、1〜5、2〜10、又は2〜5)である)
によって表され得る。重合コーティングは、架橋ドメインを保有するモノマーを、非フッ素化ビニル化合物、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ビニル、アクリル酸アリル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-アミノエチルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、クロトンアミド、アリルアルコール、又は1,1,1-トリメチルプロパンモノアリルエーテルと混合することによって調製され得る。
【0127】
自己集合コーティングは、(i)m≧2である場合、m求核基で置換されたコアを有する第1の成分、並びにn≧2及びm+n>4である場合、n求核基で置換されたコアを有する第2の成分を含むモノマーから形成される重合コーティングであって、ここで、組成物が少なくとも一つのオリゴフッ素化求核基又は一つのオリゴフッ素化求電子基を含み、第1の成分及び第2の成分が反応して、オリゴフッ素化架橋ポリマーを形成する、重合コーティングであり得る。モノマーはさらに、式(XIV):
【化12】

【0128】
(式中、オリゴはオリゴマーセグメントであり、Gは求核基又は求電子基のいずれかであり、FTはオリゴフルオロ基であり、各々のリンクAは独立してオリゴ、FT、及びGに共有結合した有機部分であり、a、b及びcの各々は独立して0より大きい整数(例えば、1〜20、1〜10、1〜5、2〜10、又は2〜5)である)
によって表され得る。重合コーティングを形成するために、求核基及び求電子基は、混合時に求核置換反応、求核付加反応、又はその両方を受ける。求核基は、非限定的に、第1級アミン、第2級アミン、チオール、アルコール、及びフェノールから選択され得る。求電子基は、非限定的に、カルボン酸エステル、酸塩化物基、無水物、イソシアネート、チオイソシアネート、エポキシド、活性化ヒドロキシル基、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、マレイミド、及びエタンスルホニルから選択され得る。望ましくは、混合物中の求核基の数は混合物中の求電子基の数とほぼ等しい(すなわち、求核基のモル:求電子基のモルの比は約2:1〜1:2、又はさらに約1:1である)。
【0129】
上記の式のいずれかにおいて、オリゴフルオロ基、FTは、100〜1,500Daの間の分子量を有するポリフルオロアルキルであり得る。例えば、FTは、一般式CF3(CF2)rCH2CH2(式中、rは2〜20である)、及びCF3(CF2)S(CH2CH2O)x(式中、xは1〜10であり、sは1〜20である)のラジカルからなる群より選択され得るか、又はFTは、一般式CHmF(3〜m)(CF2)rCH2CH2-及びCHmF(3〜m)(CF2)s(CH2CH2O)x-(式中、mは0、1、2、又は3であり、xは1〜10の間の整数であり、rは2〜20の間の整数であり、sは1〜20の間の整数である)のラジカルからなる群より選択され得る。上記の式のいずれかにおいて、FTは、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、(CF3)(CF2)7CH2CH2O-、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、CHF2(CF2)3CH2O-、及び(CF3)(CF2)2CH2O-、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-デカノール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノール、1H,1H,5H-パーフルオロ-1-ペンタノール、及び1H,1H,パーフルオロ-1-ブタノール、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0130】
コーティング内に負荷される生理活性物質の量は、所望の放出プロファイルと組み合わせたオリゴマーの設計に依存するだろう。オリゴマーは送達される特定の薬剤に合わせて、且つ特定の用途に必要な生体適合性を提供するように設計され得る。
【0131】
通常、本発明の方法及び組成物に使用されるオリゴフッ素化オリゴマー、及び式I〜XIVによって表されるものは、米国特許第6,127,507号明細書、及び米国特許第6,770,725号明細書、PCT国際公開第2007/004067号、国際公開第2007/148230号、国際公開第2008/076345号、及び国際公開第2009/043174号、並びに2009年8月28日に出願されたPCT国際公開PCT/US/2009/55418(これらの各々は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されているように調製され得る。
【0132】
水不溶性セグメントを含む分枝化合物
水不溶性セグメントを含む分枝化合物には、式(XV)、(XV-A)、(XV-B)、(XV-C)、及び(XVII)のいずれかによって表される化合物が含まれる。
【0133】
分枝化合物は式(XV):
【化13】

【0134】
(式中、m及びnは、両方とも0であるか、又はm及びnは、両方とも1であり、各々のA及びA2は、50〜300Daの間の分子量を有する三官能性モノマーであり、各々のL及びLAは、独立して、リンカーであり、各々のRX1A、RX1B、RX2A、及びRX2Bは、独立して、100〜1,500Daの間の分子量を有する水不溶性セグメントであり、RY1は、100〜1,500Daの間の分子量を有する非ハロゲン化有機セグメントであり、m及びnが、両方とも1である場合、RZ1及びRZ2の各々は、独立して、50〜800Daの間の分子量を有する二官能性水不溶性セグメントであるか、又はm及びnが、両方とも0である場合、RZ1及びRZ2の各々は、独立して、100〜1,500Daの間の分子量を有する水不溶性セグメントである)
の化合物であり得る。
【0135】
分枝化合物は、以下の式(XV-A)
【化14】

【0136】
(式中、Aは、50〜300Daの間の分子量を有する三官能性モノマーであり、各々のLは、独立して、リンカーであり、RX1及びRX2は、各々独立して、100〜1,500Daの間の分子量を有する有機ハロゲン化物セグメントであり、RY1は、100〜1,500Daの間の分子量を有する非ハロゲン化有機セグメントである)
の化合物であり得る。一部の実施形態において、RZ1及びRZ2はフッ素化ジオールである。
【0137】
分枝化合物は、式(XV-B):
【化15】

【0138】
(式中、A、A2、L、LA、RX1A、RX1B、RX2A、RX2B、RY1、RZ1、及びRZ2の各々は、式(XV)に表されるように定義される)
の化合物であり得る。
【0139】
例えば、式(XV)、(XV-A)、又は(XV-B)、又は(XV-B)のいずれかにおいて、Aは、トリオール、又は例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン(TME)、トリメシン酸(TMA)、若しくはトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)から選択される三官能性部分に由来し得る。特定の実施形態において、RY1は、直鎖又は分枝ポリエチレングリコール、両性イオン(両性イオン性界面活性剤部分、例えば、アルキルアミドプロピルベタイン、スルホベタイン及びアルキルスルテイン等のアルキルベタイン、アルキルエーテルヒドロキシルプロピルスルテイン、及びアルキルアミドプロピルヒドロキシスルテインを含む)、又はポリビニルピロリドンである。他の実施形態において、RZ1及びRZ2は各々独立してポリフルオロ有機基であるか、又はRX1A、RX1B、RX2A、RX2Bの各々は、各々独立してポリフルオロ有機基である。さらに他の実施形態において、RZ1及びRZ2は各々独立してシリコーン基であるか、又はRX1A、RX1B、RX2A、RX2Bの各々は、各々独立してシリコーン基である。
【0140】
水不溶性セグメントを含む分枝化合物は、式(XV-C):
【化16】

【0141】
(式中、FTはポリフルオロ有機基であり、Lはリンカーであり、X1はH、CH3、又はCH2CH3であり、X2はH、CH3、又はCH2CH3であり、nは5〜50の整数である)
の化合物であり得る。
【0142】
水不溶性セグメントを含む分枝化合物のリンカーは式(XVI):
G1-(Z1)o-(Y1)u-(Z2)s-(R10)-(Z3)t-(Y2)v-(Z4)p-G2 (XVI)
(式中、G1は、前記ポリフルオロ有機基と前記リンカーとの間の結合であり、G2は、前記リンカーと酸素原子との間の結合であり、Z1、Z2、Z3、及びZ4は、各々独立して、O、S、及びNR11から選択され、R11は、水素又はC1〜10アルキル基であり、Y1及びY2は、各々独立して、カルボニル、チオカルボニル、スルホニル、又はホスホリルから選択され、o、p、s、t、u及びvは、各々独立して、0又は1であり、R10は、置換又は非置換C1〜10アルキル、1〜10個の原子のヘテロアルキル、C2〜10アルケン、C2〜10アルキン、C5〜10アリール、3〜10個の原子の環状系、-(CH2CH2O)qCH2CH2-(ここで、qは1〜10の整数である)、又はG1-(Z1)o-(Y1)u-(Z2)s-と-(Z3)t-(Y2)v-(Z4)p-G2とを連結する化学結合である)
によって表され得る。特定の実施形態において、リンカーは共有結合又は-(C=O)-基である。
【0143】
水不溶性セグメントを含む分枝化合物は、式(XVII):
【化17】

【0144】
(式中、FTは、ポリフルオロ有機基であり、L2は、置換又は非置換C1〜10アルキル、1〜10個の原子のヘテロアルキル、C2〜10アルケン、C2〜10アルキン、C5〜10アリール、3〜10個の原子の環状系、-(CH2CH2O)qCH2CH2-(ここで、qは1〜10の整数である)、X1は、H、CH3、又はCH2CH3であり、X2は、H、CH3、又はCH2CH3であり、nは、5〜50の整数である)
の化合物であり得る。特定の実施形態において、ポリフルオロ有機基は、100〜1,500Daの間の分子量を有するポリフルオロアルキルである。他の実施形態において、ポリフルオロ有機基は、一般式CF3(CF2)rCH2CH2-又はCF3(CF2)s(CH2CH2O)x-(式中、rは2〜20の整数であり、xは1〜10の整数であり、sは1〜20の整数である)のラジカルである。さらに他の実施形態において、ポリフルオロ有機基は、一般式CHmF(3〜m)(CF2)rCH2CH2-又はCHmF(3〜m)(CF2)s(CH2CH2O)x-(式中、mは0、1、2又は3であり、xは1〜10の間の整数であり、rは2〜20の間の整数であり、sは1〜20の間の整数である)のラジカルである。特定の実施形態において、ポリフルオロ有機基は、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、(CF3)(CF2)7CH2CH2O-、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、CHF2(CF2)3CH2O-、及び(CF3)(CF2)2CH2O-、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-デカノール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノール、1H,1H,5H-パーフルオロ-1-ペンタノール及び1H,1H,パーフルオロ-1-ブタノール、並びにそれらの混合物から選択される。
【0145】
水不溶性セグメント
本明細書に記載される分枝化合物(例えば、式(XV)、(XV-A)、(XV-B)、(XV-C)、及び(XVII)の組成物)は水不溶性セグメントを含む。例示的な水不溶性セグメントには、ポリフルオロ有機基(例えば、本明細書に記載されるFT基)、ポリスルホン、芳香族ポリイミド、及びアミドが含まれる。他のものには、ポリシロキサン、C10、C12等のポリオレフィン、及び他の飽和又は不飽和炭化水素が含まれる。
【0146】
リンカー
本明細書に記載される水不溶性セグメントを含む分枝化合物(例えば、式(XV)、(XV-A)、(XV-B)、(XV-C)、及び(XVII)の組成物)はリンカーを含む。本発明のリンカー成分は、その最も簡単なものとしては、三官能性モノマーと有機ハロゲン化物セグメント(例えば、ポリフルオロ有機基)又は非ハロゲン化有機セグメントとの間の結合である。リンカーは、ペンダント基を任意選択で有する、直鎖、環状、又は分枝分子骨格であってもよい。
【0147】
したがって、三官能性モノマーと有機ハロゲン化物セグメント(例えば、ポリフルオロ有機基)又は非ハロゲン化有機セグメントとの連結は、各々の基に位置する一つ又は複数の官能基との結合生成を含む、共有結合手段により達成される。この目的のために利用され得る化学的反応性官能基の例としては、非限定的に、アミノ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、カルボニル、炭水化物基、隣接ジオール、チオエーテル、2-アミノアルコール、2-アミノチオール、グアニジニル、イミダゾリル、及びフェノール基が挙げられる。
【0148】
三官能性モノマーと有機ハロゲン化物セグメント(例えば、ポリフルオロ有機基)又は非ハロゲン化有機セグメントとの共有結合は、三官能性モノマー及び有機ハロゲン化物セグメント又は非ハロゲン化有機セグメントに存在するそのような官能基と反応できる反応性部分を含有するリンカーを用いて達成され得る。例えば、三官能性モノマーのヒドロキシル基は、リンカーのカルボキシル基、又はその活性化誘導体と反応でき、その2つを連結するエステルの生成を生じる。
【0149】
スルフヒドリル基と反応できる部分の例には、XCH2CO-型(式中、X=Br、Cl又はI)のα-ハロアセチル化合物が含まれ、それは、スルフヒドリル基に対して特定の反応性を示すが、Gurd,Methods Enzymol.11:532(1967)に記載されているように、イミダゾリル、チオエーテル、フェノール、及びアミノ基を修飾するためにも使用できる。N-マレイミド誘導体もまた、スルフヒドリル基に対して選択的であるとみなされるが、さらに、特定の条件下でアミノ基に対する結合に有用であり得る。アミノ基の変換を介してチオール基を導入する、2-イミノチオラン(Trautら,Biochemistry 12:3266(1973))等の試薬は、ジスルフィド架橋の生成を介して連結が生じる場合、スルフヒドリル試薬とみなされ得る。
【0150】
アミノ基と反応できる反応性部分の例には、例えば、アルキル化剤及びアシル化剤が含まれる。代表的なアルキル化剤には、(i)反応性チオール基の非存在下でアミノ基に対して特異性を示し、例えば、Wong Biochemistry 24:5337(1979)に記載されているように、XCH2CO-型(式中、X=Cl、Br又はI)である、α-ハロアセチル化合物、(ii)マイケル型反応を介して、又は例えば、Smythら,J.Am.Chem.Soc.82:4600(1960)及びBiochem.J.91:589(1964)に記載されているように、環状カルボニル基への付加によるアシル化を介してのいずれかでアミノ基と反応できる、N-マレイミド誘導体、(iii)反応性ニトロハロ芳香族化合物等のハロゲン化アリール、(iv)例えば、McKenzieら,J.Protein Chem.7:581(1988)に記載されているようなハロゲン化アルキル、(v)形成される付加物は、通常、還元により安定化されて、安定なアミンが得られる、アミノ基とシッフ塩基を形成することができるアルデヒド及びケトン、(vi)アミノ、スルフヒドリル、又はフェノール性水酸基と反応できる、エピクロロヒドリン及びビスオキシラン等のエポキシド誘導体、(vii)アミノ、スルフヒドリル、及びヒドロキシル基等の求核試薬に対して非常に反応性がある、s-トリアジンの塩素含有誘導体、(viii)開環によりアミノ基等の求核試薬と反応する、例えば、Ross,J.Adv.Cancer Res.2:1(1954)に記載されているような、上記に詳述したs-トリアジン化合物に基づいたアジリジン、(ix)Tietze,Chem.Ber.124:1215(1991)に記載されているようなスクアリン酸ジエチルエステル、及び(x)Bennecheら,Eur.J.Med.Chem.28:463(1993)に記載されているように、エーテル酸素原子によって生じる活性化のために、通常のハロゲン化アルキルよりも反応性のアルキル化剤である、α-ハロアルキルエーテル、が含まれる。
【0151】
代表的なアミノ反応性アシル化剤には、(i)安定な尿素及びチオ尿素誘導体をそれぞれ形成する、イソシアネート及びイソチオシアネート、特に芳香族誘導体、(ii)Herzigら,Biopolymers 2:349(1964)に記載されている、塩化スルホニル、(iii)酸ハロゲン化物、(iv)ニトロフェニルエステル又はN-ヒドロキシスクシンイミジルエステル等の活性エステル、(v)混合型、対称性、又はN-カルボキシ無水物等の酸無水物、(vi)例えば、M.Bodansky,Principles of Peptide Synthesis,Springer-Verlag,1984に記載されているようなアミド結合を形成する他の有用な試薬、(vii)例えば、Wetzら,Anal.Biochem.58:347(1974)に記載されているような、アジド基が亜硝酸ナトリウムを使用してプレフォームしたヒドラジド誘導体から生成されている、アシルアジド、及び(viii)例えば、Hunter及びLudwig,J.Am.Chem.Soc.84:3491(1962)に記載されているような、アミノ基と反応すると安定なアミジンを形成する、イミドエステル、が含まれる。アルデヒド及びケトンはアミンと反応して、シッフ塩基を形成でき、このシッフ塩基は還元的アミノ化を介して有利に安定化させることができる。例えば、Webbら、Bioconjugate Chem.1:96(1990)に記載されているように、アルコキシルアミノ部分は、ケトン及びアルデヒドと容易に反応して、安定なアルコキサミンを生成する。
【0152】
カルボキシル基と反応できる反応性部分の例には、ジアゾ酢酸エステル及びジアゾアセトアミド等のジアゾ化合物が含まれ、これらは、例えば、Herriot,Adv.Protein Chem.3:169(1947)に記載されているように、高い特異性で反応して、エステル基を生成する。O-アシル尿素形成を介して反応し、続いてアミド結合を形成する、カルボジイミド等のカルボキシル修飾試薬も利用してもよい。
【0153】
必要に応じて、三官能性モノマー及び有機ハロゲン化物セグメント又は非ハロゲン化有機セグメントにおける官能基は、例えば、追加の反応性又は選択性を与えるために、反応前に他の官能基に変換されてもよいことが理解されよう。この目的のために有用な方法の例には、ジカルボン酸無水物等の試薬を使用するアミンのカルボキシルへの変換、N-アセチルホモシステインチオラクトン、S-アセチルメルカプト無水コハク酸、2-イミノチオラン、又はチオール含有スクシンイミジル誘導体等の試薬を使用するアミンのチオールへの変換、α-ハロアセテート等の試薬を使用するチオールのカルボキシルへの変換、エチレンイミン又は2-ブロモエチルアミン等の試薬を使用するチオールのアミンへの変換、カルボジイミド、続いてジアミン等の試薬を使用するカルボキシルのアミンへの変換、及び塩化トシル等の試薬を使用するアルコールのチオールへの変換、続いてチオ酢酸によりエステル交換し、酢酸ナトリウムによるチオールへの加水分解が含まれる。
【0154】
追加の連結物質を導入しない、三官能性モノマー及び有機ハロゲン化物セグメント又は非ハロゲン化有機セグメントの反応性化学基の直接共有結合を含む、いわゆるゼロ長リンカーを、必要に応じて、本発明に従って使用してもよい。しかし、最も一般的には上記のように、リンカーは、スペーサー要素によって結合された2つ以上の反応性部分を含む。このようなスペーサーの存在によって、二官能性リンカーが、コルチコステロイド及び大きい又は荷電した基内の特異的官能基と反応できるようになり、結果としてその2つの間に共有結合がもたらされる。リンカーの反応性部分は、同じであっても(ホモ二官能性リンカー)又は異なっても(ヘテロ二官能性リンカー、又は数個の異なる反応性部分が存在するヘテロ多官能性リンカー)よく、三官能性モノマーと非ハロゲン化有機セグメント又は水不溶性セグメントとの間に共有結合をもたらすことができる様々な潜在的試薬が提供される。
【0155】
典型的には、リンカー中のスペーサー要素は、直鎖又は分枝鎖からなり、C1〜10アルキル、1〜10個の原子のヘテロアルキル、C2〜10アルケン、C2〜10アルキン、C5〜10アリール、3〜10個の原子の環状系、又は-(CH2CH2O)nCH2CH2-(式中、nは1〜4である)を含んでもよい。
【0156】
生理活性物質
本発明のコーティングは一つ又は複数の生理活性物質を含む。その導入は、自己集合コーティング成分(例えば、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物)及び生理活性物質を一緒に混合し、この混合物を移植する前の物品の表面に適用することにより達成され得る。いくつかの場合には、生理活性物質は自己集合コーティング中のオリゴマー化合物(例えば、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物)、好ましくは分枝化合物に共有結合又は複合体形成している。生理活性物質がどのようにオリゴフッ素化オリゴマーに共有結合又は複合体形成し得るかの詳細な説明はいずれも参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,770,725号明細書及び米国特許出願公開第2007/0037891号明細書に記載されている。本発明の方法及び組成物において使用され得る生理活性物質には、治療薬、診断薬及び予防薬が含まれる。これらは天然に存在する化合物、合成有機化合物又は無機化合物であってもよい。本発明の方法及び組成物において使用され得る生理活性物質には、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド、鎮痛薬、麻酔薬、抗血管新生薬、血管作用薬、抗凝血薬、免疫調節薬、細胞傷害性物質、抗ウイルス薬、抗血栓薬(例えば、テルブログレル及びラマトロバン)、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、タンパク質、脂質及び本明細書中に記載されている任意の生理活性物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
例示的な治療薬には、成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン)、カルシトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、毛様体神経栄養因子及び副甲状腺ホルモンが含まれる。他の具体的な治療薬には、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、ソマトスタチン、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、ニコチン、フェンタニル、ノルエチステロン、クロニジン、スコポラミン、サリチラート、サルメテロール、ホルモテロール、アルブテロール、バリウム、ヘパリン、デルマタン、フェロクロムA、エリスロポエチン、ジエチルスチルベストロール、ルプロン、エストロゲンエストラジオール、アンドロゲンハロテスティン、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン、ゾロデックス(zolodex)、タキソール、リシノプリル/ゼストリル、ストレプトキナーゼ、アミノ酪酸、止血性アミノカプロン酸、パーロデル、タクリン、ポタバ、アジペックス、メンボラール、フェノバルビタール、インスリン、γグロブリン、アザチオプリン、パパイン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、アセチルサリチル酸、エピネフリン、フルクロロニド、オキシコドンパーコセット、ダルガン、フレニリンブタビタル、プロカイン、ノボカイン、モルヒネ、オキシコドン、アロキシプリン、ブロムフェナク、ケトプロフェン、ケトロラック、ヘミン、ビタミンB-12、葉酸、マグネシウム塩、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンU、ビタミンL、ビタミンK、パントテン酸、アミノフェニル酪酸、ペニシリン、アシクロビル、オフロキサシン、アモキシシリン、トブラマイシン、レトロビル、エピビル、ネビラピン、ゲンタマイシン、デュラセフ、アベルセット、ブトキシカイン、ベノキシナート、トロペンジル、ジポニウム塩、ブタベリン、アポアトロピン、フェクレミン、レイオピロール、オクタミルアミン、オキシブチニン、アルブテロール、メタプロテレノール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセタミド、ブデソニドアセトニド、臭化イプラトロピウム、フルニソリド、クロモリンナトリウム、酒石酸エルゴタミン、及びタンパク質又はペプチド薬(例えば、TNFアンタゴニスト又はインターロイキンアンタゴニスト)が含まれる。例えば、生理活性物質は抗炎症剤、例えばNSAID、コルチコステロイド、又はCOX-2阻害剤(例えば、ロフェコキシブ、セレコシキブ、バルデコキシブ又はルミラコキシブ)であってもよい。
【0158】
例示的な診断薬には、造影剤、例えばポジトロン断層撮影法(PET)、コンピューター支援断層撮影法(CAT)、単光子放射型コンピューター断層撮影法、X線、透視診断法及び磁気共鳴画像法(MRI)において使用されるものが含まれる。MRIにおいて造影剤として使用するのに適した材料にはガドリニウムキレート、並びに鉄、マグネシウム、マンガン、銅及びクロムキレートが含まれる。CAT及びX線に有用な材料の例にはヨウ素を主成分とする材料が含まれる。
【0159】
好ましい生理活性物質は実質的に精製されているペプチド又はタンパク質である。タンパク質は通常100個以上のアミノ酸残基から構成されると定義され、ペプチドは100個未満のアミノ酸残基である。別段の言及がない限り、本明細書中で使用されている用語、タンパク質はタンパク質及びペプチドの両方を指す。タンパク質は、例えば天然源から単離することにより、組換えにより、又はペプチド合成により産生され得る。その例には、成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン)、酵素(例えば、DNアーゼ、プロテアーゼ、尿酸オキシダーゼ、アルロニダーゼ(alronidase)、αガラクトシダーゼ及びαグルコシダーゼ)、抗生物質(例えば、トラスツズマブ)が含まれる。
【0160】
ラパマイシンマクロライド
ラパマイシン(シロリムス)は、ストレプトミセスハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)により産生される免疫抑制性ラクタムマクロライドである。例えば、参照により本明細書に組み込まれるMcAlpine,J.B.ら,J.Antibiotics 44:688(1991);Schreiber,S.L.ら,J.Am.Chem.Soc.113:7433(1991);及び米国特許第3,929,992号を参照のこと。本発明の方法及び組成物において使用され得る例示的なラパマイシンマクロライドは、非限定的に、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス(RAD001としても公知)、及びABT-578が含まれる。CCI-779は米国特許第5,362,718号に開示されているラパマイシンのエステル(3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-メチルプロピオン酸との42-エステル)である。エベロリムスは米国特許第5,665,772号に開示されているアルキル化ラパマイシン(40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシンである。
【0161】
抗増殖剤
本発明の方法及び組成物において使用され得る例示的な抗増殖剤には、非限定的に、メクロレタミン、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ウラシルマスタード、エストラムスチン、マイトマイシンC、AZQ、チオテパ、ブスルファン、ヘプスルファム、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、メトトレキサート、トリメトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、フルダラビン、カペシタビン、アザシチジン、チオグアニン、メルカプトプリン、アロプリン、クラドリビン、ゲムシタビン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、アムサクリン、ブレオマイシン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、フィナステリド、ケトコナゾール、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、Gleevec(商標)(Novartis)、レフルノミド(Pharmacia)、SU5416(Pharmacia)、SU6668(Pharmacia)、PTK787(Novartis)、Iressa(商標)(AstraZeneca)、Tarceva(商標)(Oncogene Science)、トラスツズマブ(Genentech)、Erbitux(商標)(ImClone)、PKI166(Novartis)、GW2016(GlaxoSmithKline)、EKB-509(Wyeth)、EKB-569(Wyeth)、MDX-H210(Medarex)、2C4(Genentech)、MDX-447(Medarex)、ABX-EGF(Abgenix)、CI-1033(Pfizer)、Avastin(商標)(Genentech)、IMC-1C11(ImClone)、ZD4190(AstraZeneca)、ZD6474(AstraZeneca)、CEP-701(Cephalon)、CEP-751(Cephalon)、MLN518(Millenium)、PKC412(Novartis)、13-シス-レチノイン酸、イソトレチノイン、パルミチン酸レチニル、4-(ヒドロキシカルボフェニル)レチンアミド、ミソニダゾール、ニトラクリン、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、L-アスパラギナーゼ、インターフェロンα、AP23573、セリバスタチン、トログリタゾン、CRx-026DHA-パクリタキセル、タクサオプレキシン、TPI-287、スフィンゴシンを主成分とする脂質及びミトタンが含まれる。
【0162】
コルチコステロイド
本発明の方法及び組成物において使用され得る例示的なコルチコステロイドには、非限定的に、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタソール、プロピオン酸クロベタソール、クロベタゾン、酪酸クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デルフラザコン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタソン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド、フルメタゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロシノロンアセトニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、ヘキサン酸フルオロコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタマート、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン21-ナトリウムスクシネート、ヒドロコルチゾンテブテート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニコロン、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタソン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、21-ジエドリルアミノ酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、21-m-スルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウム、21-ステアログリコール酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、21-トリメチル酢酸プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、21-ジエチルアミノ酢酸プレドニリデン、チクソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド及びトリアムシノロンヘキソアセトニドが含まれる。類似の抗炎症性を有する構造的に関連するコルチコステロイドもこの群に包含されることが意図される。
【0163】
NSAID
本発明の方法及び組成物において使用され得る例示的な非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)には、非限定的に、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、アスピリン、スリンダク、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナブメトン、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸ナトリウム、サリチルサリチル酸(サルサラート)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メロキシカム、オキサプロジン、スリンダク及びトルメチンが含まれる。
【0164】
鎮痛薬
本発明の方法及び組成物において使用され得る例示的な鎮痛薬には、非限定的に、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、エチルモルヒネ、O-カルボキシメチルモルヒネ、O-アセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、テバイン、メトポン、エトルフィン、アセトルフィン、ジプレノルフィン、ブプレノルフィン、フェノモルファン、レボルファノール、エトヘプタジン、ケトベミドン、ジヒドロエトルフィン及びジヒドロアセトルフィンが含まれる。
【0165】
抗微生物薬
本発明の方法及び組成物において使用され得る例示的な抗微生物薬には、非限定的に、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メゾロシリン、ピペラシリン、アズロシリン、テモシリン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファロリジン、セファゾリン、セファマンドール、セフロキシム、セファレキシン、セフプロジル、セファクロール、ロラカルベフ、セフォキシチン、セフメタゾール、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン、セフジニル、セフピロム、セフェピム、BAL5788、BAL9141、イミペネム、エルタペネム、メロペネム、アズトレオナム、クラブラン酸塩、スルバクタム、タゾバクタム、ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、パロマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、シソマイシン、ダイベカリン、イセパマイシン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、ABT-773、リンコマイシン、クリンダマイシン、バンコマイシン、オリタバンシン、ダルババンシン、テイコプラニン、キヌプリスチン及びダルホプリスチン、スルファニルアミド、パラ-アミノ安息香酸、スルファジアジン、スルフィゾキサゾール、スルファメトキサゾール、スルファサリジン、リネゾリド、ナリジクス酸、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ペルフロキサシン、エノキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、テマフロキサシン、ロメフロキサシン、フレロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン、クリナフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、ゲミフロキサシン、シタフロキサシン、メトロニダゾール、ダプトマイシン、ガレノキサシン、ラモプラニン、ファロペネム、ポリミキシン、チゲサイクリン、AZD2563及びトリメトプリムが含まれる。
【0166】
局所麻酔薬
本発明の方法及び組成物において使用され得る例示的な局所麻酔薬には、非限定的に、コカイン、プロカイン、リドカイン、プリロカイン、メピビカイン、ブピビカイン、アルチカイン、テトラカイン、クロロプロカイン、エチドカイン及びロピバカインが含まれる。
【0167】
鎮痛薬
本発明の方法及び組成物において使用され得る例示的な鎮痙薬には、非限定的に、アトロピン、ベラドンナ、ベントチル、シストスパズ、デトロール(トルテロジン)、ジサイクロミン、ジトロパン、ドナタル、ドンナジム、ファスジル、フレクセリル、グリコピロレート、ホマトロピン、ヒヨスチアミン、レブシン、レブシネクス、リブラックス、マルコトラン、ノバルチン、オキシフェンサイクリミン、オキシブチニン、パミン、トルテロジン、チキジウム、プロザピン及びピナベリウムが含まれる。
【0168】
コーティング
本発明のコーティングは、オリゴマーの大きさ、それらの生理学的媒体への溶解度を変化させることにより、及び/又はコーティングを載置させる表面と有利に相互作用するオリゴマーを利用することにより表面への接着が変化するように設計され得る。そのような有利な相互作用には、例えば、配位(すなわち、金属表面に配位するカルボキシレート基)及び/又はオリゴマーとデバイス表面との間の水素結合が含まれ得る。特定の実施形態において、自己集合コーティングを埋込型医療デバイスの表面に適用して、薄いコーティング(すなわち、0.5〜50.0ミクロンの厚さ)を形成する。本発明のコーティングはベースポリマーの特性を有していないので、それらは、デバイスの物理的操作(例えば、ステントのクリンプ加工及び配置)中に剥離又は亀裂が起きにくい。本発明のコーティングは、(例えば、コーティングの変形により、又はコーティングをエネルギー源に曝露することにより)コーティングを破壊する前に、自己集合コーティングからの薬剤の拡散速度を制限することにより、自己集合コーティング内に導入されている生理活性物質の放出を制御することができる。
【0169】
このようなコーティングの主な機能は、規定した期間の間、生理活性物質の局所的送達を効果的に増加させることができる。任意選択で、自己集合コーティングを生理活性物質と複合体形成させても、共有結合させても、若しくは物理的に組み合わせても、又は生理活性物質を含む混合物中に適用させてもよい。自己集合コーティング中に充填される生理活性物質の量は、所望の局所濃度及び自己集合コーティングからの放出プロファイルに依存する。
【0170】
一部の実施形態において、本発明のコーティングは、所望の表面フッ素因子を提供する水不溶性セグメント(例えば、フッ素化セグメント)を含有する。フッ素化部分は、生理学的媒体(例えば、流体及び血液成分)との望ましくない相互作用から、自己集合コーティング内に導入される生物学的因子に対する保護として機能する。これにより、送達プラットフォームの制限された移動を用いて標的部位への活性物質の効果的な用量移動が可能となる。生理活性物質は、加水分解性リンカーを介して、自己集合コーティング中の、本明細書に記載されるような、オリゴマー化合物(例えば、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物)、好ましくは分枝化合物に共有結合し得る。これらの実施形態において、リンカーの加水分解は、自己集合コーティング内で、又はデバイス表面からの生理活性物質の拡散後のいずれかで起こり得ることは理解される。pHの局所変化及び炎症性副産物の生成を回避するために移植部位付近で加水分解を制限することが望まれる。
【0171】
本発明のコーティングは、限定されないが、電着、浸漬、噴霧、ブラッシング、プリンティング、又は溶液若しくは懸濁液からの自己集合コーティング材料のスピンコーティング、続いて必要な場合、溶媒除去ステップを含む、あらゆる方法で、医療デバイスの表面に適用され得る。コーティングを作製し、適用し得る方法の更なる詳細は実施例に見出される。
【0172】
自己集合コーティングは、その成分である、一つ又は複数のオリゴマー化合物(例えば、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物)、好ましくは分枝化合物と、生理活性物質とを、固体又は懸濁液として溶液中で混合することによって形成され得る。自己集合コーティングは、医療デバイスの表面上に適用でき、続いて必要な場合、溶媒を除去される。代替として、コーティングの成分は層状形式で適用され得る(例えば、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝若しくは直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)若しくは分枝化合物は、基層として医療デバイスの表面上に適用でき、続いて上層として生理活性物質を適用できるか(例えば、生理活性物質(複数も可)は、オリゴフッ素化オリゴマー等の分枝オリゴマー化合物と組み合わされてもよい)、又は水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝若しくは直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)若しくは分枝化合物、好ましくは分枝オリゴマー化合物は、生理活性物質(複数も可)の基層を覆う、上部コーティングとして医療デバイス表面に適用できる(例えば、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝若しくは直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)若しくは分枝化合物と組み合わされてもよい))。必要な場合、複数の交互層が適用されてもよい。任意選択で、本発明の自己集合コーティングは、デバイス表面又は自己集合コーティングの成分組成物への自己集合コーティングの結合を改良するために補因子結合剤を含んでもよい。コーティングは、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物と、補因子結合剤と、生理活性物質(複数も可)とを混合することによって形成でき、医療デバイスの表面に適用できる。そのようなコーティングは、基礎コーティングとして水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物、続いて中間に補因子結合層を有して上部コーティングとして生理活性物質(又はその逆)を適用することによって形成できる。本発明のコーティングに使用され得る補因子結合剤には、限定されないが、カーボワックス、ゼラチン、アルブミンゲル、デキストロース、ヨード塩、多糖、脂質、核酸、PEG、クエン酸ナトリウム、第二リン酸カルシウム、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ケイ酸、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、アカシア、グリセロール、寒天、パラフィン、プルロニックゲル、グリセロールモノステアレート、カオリン、ステアリン酸カルシウム/ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びプロピレングリコールが含まれる。
【0173】
本発明の自己集合コーティングはまた、治療される組織表面に直接適用され得る。直接適用される場合、コーティングの成分は、治療される表面上で混合され、適用され得る。このアプローチを用いて、自己集合コーティング中に、排出可能なオリゴマー化合物(例えば、水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物)、好ましくは分枝化合物を利用することが望ましい。
【0174】
コーティングした医療デバイス
各種の埋込型医療デバイスは、それらの生体適合性を改善するため、及び生理活性物質を治療の望まれる部位に送達するために、本発明の組成物及び方法を用いてコーティングされ得る。医療デバイスには、一時的医療デバイス、非埋込型血管デバイス、非血管デバイス、経皮デバイス、及び皮膚デバイスが含まれてもよい。経皮デバイスは、皮膚を貫通するので、身体の外側から身体の内側に延びる物品を含む。皮膚デバイスは表面上に使用される。皮膚デバイスは、皮膚を貫通するので、身体の外側から身体の内側に延びる種類のものを含み、非限定的に、種々の種類のカテーテル、バルーンカテーテル、ニューロンガイドカテーテル、ニューロンマイクロカテーテル、ニューロンマイクロワイヤ、ニューロンバルーン、冠動脈ワイヤ、冠動脈ガイドカテーテル、ステントグラフト、ステント送達システム、冠動脈ワイヤ、冠動脈ガイドカテーテル、誘導針シース、拡張器、ガイドワイヤ、シリンジニードル、透析シースカニューレ、フィルター、胸腔チューブ等のドレナージチューブ、鉗子等の手術器具、開創器、ニードル、及びカテーテルカフスが含まれる。
【0175】
本発明の一時的医療デバイスは、自己集合コーティングを破壊し、生理活性剤を放出するために、超音波、熱、電磁、及び/又は振動エネルギー源を含むエネルギー源を含んでもよい。例えば、20kHz〜100MHzの範囲、好ましくは0.1MHz〜20MHzの範囲の周波数、及び0.05w/cm2〜10W/cm2の範囲、好ましくは0.5W/cm2〜5W/cm2の範囲の強度レベルを有する超音波外部エネルギー源が使用され得る。超音波エネルギーは自己集合コーティングに向けられ、5秒〜30分の範囲、好ましくは1分〜15分の範囲の時間、連続適用されるか、又はパルスされる。代替として、一時的医療デバイスの表面の温度が加熱され(例えば、36℃〜48℃の範囲)、振動され、又は電磁エネルギーに供されて、所望の場所及び時間において生理活性物質の放出を促進し得る。
【0176】
別のアプローチにおいて、自己集合コーティングは、デバイスの表面の変形(例えば、デバイスの伸長)後、機械的に破壊される。例えば、本発明の一時的医療デバイスは、小口径構成から、拡張可能な構造が所望の標的部位に配置されると達成される、半径方向に拡張された(通常、円筒形)構成に変換され得る半径方向に拡張可能なセグメントを含んでもよい。拡張可能な構造は、最小限の弾性(例えば展性)があってもよく、それ故、拡張し、それを標的部位に配置するために内力の適用を必要とする。典型的に、拡張力は、バルーン、又は別の自己拡張構造によって提供され得る。本発明に使用するための拡張可能な一時的医療デバイスは、鍛ステンレス鋼等の弾力材、又はNitinol(商標)合金等の超弾性合金を利用でき、本体セグメントが形成されるので、拘束されなくなると、その所望される半径方向に拡張した直径を有する。すなわち、シースの半径方向に拘束された力から解放される。自己拡張する拡張可能な構造は、例えば、拡張可能な構造を送達シース又は管内に配置し、標的部位においてシースを除去することによって、その半径方向に拘束された構成において追跡され、送達され得る。拡張可能な構造の寸法はその意図される使用部位に依存する。典型的に、拡張可能な構造は、血管適用のために、約5mm〜約100mm、通常、約8mm〜約50mmの範囲の長さを有する。血管適用のための円筒形状の拡張可能な構造の直径は、拡張されていない構成において、通常、約0.5mm〜約10mm、より通常、約0.8mm〜約8mmの範囲であり、拡張された構成において直径は、約1.0mm〜約100mm、好ましくは約2.0mm〜約30mmの範囲である。拡張可能な構造は、通常、約0.025mm〜2.0mm、好ましくは約0.05mm〜約0.5mmの範囲の厚さを有する。
【0177】
薬物溶出バルーン(DEB)
血管の閉塞性疾患は、脂肪性沈着物又はプラークに由来する血管内膜の肥厚を生じる、血管系の病態生理生物学(pathophysiobiology)の変化により主に引き起こされる。血管の閉塞性疾患の最も一般的な治療方法は外科的バイパス手術である。しかし、血管内介入が代替且つ実行可能な治療方法として認識され、実施されている。バルーン血管形成術は、罹患組織の灌流を可能にする、バルーン膨張、及びプラークの圧縮に基づいて閉塞血管を拡張するように設計される。ほとんどの血管内介入において、ガイドカテーテルは、そのガイドカテーテルの遠位先端が標的位置の近くに位置するまで、患者の血管系内に進入する。ガイドワイヤは、そのガイドワイヤの遠位端が拡張される病変を交差するまで、患者の血管内のガイドカテーテルの遠位端から進入する。遠位部上に膨張バルーンを有する拡張カテーテルは、その拡張カテーテルのバルーンが病変を横切る適切な位置に配置されるまで、以前に導入されたガイドワイヤ上で患者の血管内に進入する。血管内介入の成功は通常高いが、血管開通は多くの場合、血管の再閉塞を引き起こす元の病変付近の再狭窄に起因して減少する。バルーン表面から薬剤を局所送達する能力は、再狭窄を抑制するアプローチを提供する。外部バルーン表面の全体又は一部は、所望の薬剤でコーティングされてもよく、バルーン膨張の時間又は膨張の多重度も制御されてもよく、「薬物溶出バルーン」を局所的薬物送達のための適合可能且つ強力な道具にする。
【0178】
本発明の組成物及び方法は、経皮的血管形成術(PTA)、冠動脈血管形成術(PTCA)、神経血管形成術(PTNA)、バルーン大動脈弁形成術(balloon aortic valvuplasty)(BAV)等の薬物溶出バルーン技術の様々な適用において使用され得る。さらに、本発明の組成物は、薬物溶出バルーンの適用に応じて種々の生物学的因子の導入を可能にする。
【0179】
一つの適用において、DEBはまた、カルシウム蓄積に由来して硬くなる狭窄大動脈弁を修復するためにバルーン大動脈弁形成術として使用されてもよい。弁の開口サイズを増加させ、血流を改善するために、バルーンは大動脈弁に挿入され、膨張する。従来のバルーン大動脈弁形成術は、患者の再狭窄を防ぐことに何度も失敗している。この場合の薬物溶出バルーンは、治療後に再狭窄を防止するために、導入される抗再狭窄薬物(antirestenotic drug)が拡張した大動脈弁内に溶出することを可能にする。
【0180】
別の適用において、DEBは、ステント挿入法によって治療できない末梢疾患を治療するために使用されてもよい。これは特に、血管が小さく、ステント支柱がトルク以下で壊れる、膝より下の血管に当てはまる。
【0181】
薬物溶出バルーンの一つの可能な非血管適用は局所的化学療法である。バルーンカテーテルは、抗癌剤でコーティングされ、癌組織に導入さてもよい。
【0182】
血管形成術のためのバルーンは高圧バルーンとして分類される。標準的なバルーンは、円筒形本体、2つの円錐テーパー部、及び2つの首部から構成される。バルーンの特定の角度及び形状は、生理学の適用及び特殊性に応じてカスタマイズされてもよい。高圧バルーンはまた、食道、胆管、尿道、ファローピウス管、心臓弁、涙管及び手根管拡張等の他の領域における収縮及び閉塞を拡張するために使用される。高圧バルーンについての他の適用には、位置調整、閉塞、光線療法、伝熱及び血管内移植送達が含まれる。
【0183】
高圧バルーンは、制御可能な大きさ及び形状を有する非柔軟性又は低柔軟性材料(5〜10%のみ拡張する)から作製される。薄壁のこれらのバルーンは、比較的低い伸張で高い引張り強さを示す。現在、ほとんどの高圧バルーンはPET又はナイロンから作製される。PETは最大圧力定格で高い引張り強度を有する。それは0.5〜50mmの直径で超薄壁(5〜50mm)を有するように成形され得る。ナイロンはより軟性であり、ガイドカテーテル内に容易に引き抜くために容易に折り直され得る。両方の材料は、いくつかある特徴の中で、潤滑性、摩耗及び穿刺抵抗、伝導性、血栓形成、薬物放出、及び反射性を提供するコーティングに対する適合性が実証されている。
【0184】
血管形成術についての定格圧力は2〜20atmである。より大きな直径のバルーンは、公称直径まで膨張する場合、バルーン壁内のストレスが増加するにつれて、より低い定格圧力を有する。PTCAバルーンカテーテルは通常、2〜4mmの直径、10〜40mmの長さであり、10〜20atmの定格圧力を有する。PTAバルーンカテーテルは通常、4〜14mmの直径及び20〜200mmの長さを有し、8〜20atmの定格圧力を有する。
【0185】
製剤
本発明の水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物、好ましくは分枝化合物、及び生理活性物質は、均質な固体又は溶液、溶液分散(単一又は多相)として製剤化され得る。生理活性物質及び水不溶性セグメントを含むオリゴフッ素化オリゴマー(例えば、分枝又は直鎖オリゴフッ素化オリゴマー)又は分枝化合物の立体配座の配置及び適合性は、放出プロファイル、及び溶解度向上作用に基づいた製剤の効果を導く。
【0186】
以下の実施例は、本明細書中で特許請求された方法及び化合物をどのように実施、作製、及び評価するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されており、本発明を単に例示することを意図したものであって、本発明者らが自らの発明とみなす範囲を限定することを意図したものではない。
【0187】
略語
以下の略語は記載されている化合物を示す。
【0188】
BAL ポリ(ジフルオロメチレン),α-フルオロ-ω-(2-ヒドロキシエチル)
CDCl3 重水素化クロロホルム
DBDL ジラウリン酸ジブチル錫
DCM ジクロロメタン
DIC ジイソプロピルカルボジイミド
DMAc ジメチルアセトアミド
DMAP 4-(ジメチルアミノ)ピリジン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtO エチレンオキシド
HCl 塩酸
KBr 臭化カリウム
KD ダンシル標識リシン
LDI リシンジイソシアネート
MeOH メタノール
NaOH 水酸化ナトリウム
N2 窒素ガス
PBS リン酸緩衝溶液
PCL ポリカプロラクトン
PTMO ポリテトラメチレンオキシド
PTX パクリタキセル
SA サリチル酸
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
TMX m-テトラメチルキシレンジイソシアネート
【実施例】
【0189】
(実施例1)
化合物1(オリゴフルオロ-エステル)の合成及び特性評価
PTMO(15.0g、14mmol)をN2下70℃でDMAc(80mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(5.9g、28mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(13.15g、31mmol)をDMAc(25mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物(化合物1)を溶媒抽出及びカチオン性SPEにより精製した。GPC(ジオキサン移動相):25分の保持時間。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)4.24-4.46(-CH2-O,BAL),3.94-4.13(-CH2-O-CO,PTMO),3.74(CH3,LDI),3.28-3.50(CH2-O,PTMO),2.98-3.28(CH2-NH,LDI),2.29-2.60(-CH2-CF2-,BAL),1.16-1.96(PTMO及びLDI CH2)。IR分析は化学構造に一致した:3318cm-1(N-H)H-結合,2930cm-1(C-H),2848cm-1(C-H),1712cm-1(C=O)ウレタンアミド,1524cm-1(C-N),1438cm-1(C-N),1356cm-1(C-O),1400-1000cm-1(C-F)。元素分析:20%F。DSC分析:Tg=-69℃。化合物1をMeOH中に溶解し、1000MWCO再生セルロース膜を用いて3日間透析することによりさらに精製した。
【0190】
(実施例2)
化合物2(オリゴフルオロ-酸)の合成及び特性評価
化合物1をMeOH中に溶解し、1N NaOHで処理した。生成物(化合物2)を1N HClで中和し、水中で沈殿させ、乾燥させた。GPC(ジオキサン移動相):25分の保持時間。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)4.26-4.48(-CH2-O,BAL),3.96-4.23(-CH2-O-CO,PTMO),3.30-3.52(CH2-O,PTMO),3.07-3.22(CH2-NH,LDI),2.36-2.55(-CH2-CF2-,BAL),1.14-1.94(PTMO及びLDICH2)。IR分析は化学構造に一致した:3318cm-1(N-H)H-結合,2930cm-1(C-H),2848cm-1(C-H),1712 cm-1(C=O)ウレタンアミド,1524cm-1(C-N),1438cm-1(C-N),1356cm-1(C-O),1400-1000cm-1(C-F)。化合物2をMeOH中に溶解し、1000MWCO再生セルロース膜を用いて3日間透析することによりさらに精製した。
【0191】
(実施例3)
化合物3(ダンシルオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
化合物2(2.0g、1.71mmol酸)を無水DMF(25mL)中に溶解した。溶液を冷やし、DIC(0.215g、1.71mmol)を添加し、その溶液をN2下、室温で2時間攪拌した。無水DMF(9mL)中のTEA(0.345g、3.41mmol)及びダンシル標識リシン(KD)(0.718g、1.71mmol)を活性化化合物2に添加し、溶液をN2下、室温で12時間十分に攪拌し続けた。生成物(化合物3)をカチオン性及びフルオラスSPEにより精製し、回転蒸発により回収した。GPC(ジオキサン移動相):遊離KDは検出されず、ポリマーピークは強いUV吸収を有していた。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)7.14-8.59(芳香族H,KD)4.46-4.66(CH2-N,KD),4.28-4.48(-CH2-O,BAL),3.90-4.17(-CH2-O-CO,PTMO),3.31-3.54(CH2-O,PTMO),3.06-3.26(CH2-NH,LDI),2.81-3.00(CH3,KD)2.32-2.58(-CH2-CF2-,BAL),1.08-1.94(CH2,PTMO,LDI及びKD)。化合物3の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析:MeOH中0.0005〜50mg/mLの範囲の濃度のサンプルを注入し、MeOH/pH9バッファー移動相を用いて分析した。遊離KD(標準溶液)は21分に溶離し、化合物3は35分に遊離KD汚染の証拠なしに溶離した。
【0192】
(実施例4)
化合物4(シリコーンオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
ヒドロキシ末端PDMS(10g、13.8mmol)をN2下70℃でDMAc(80mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(5.848g、28mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(12.745g、30mmol)をDMAc(32mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。GPC(THF移動相):25.5分の保持時間。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)4.26-4.48(-CH2-O,BAL),3.93-4.09(-CH2-O-CO,PDMS),3.74(CH3,LDI),3.08-3.26(CH2-NH,LDI),2.33-2.60(-CH2-CF2-,BAL),1.61-1.76(-Si-O-CH2,PDMS),1.13-1.93(CH2,LDI),0.49-0.60(CH2-CH2-CH2,PDMS),0.025-0.36(CH3,PDMS)。DSC分析:Tg=-40℃。元素分析:21.2%F。
【0193】
(実施例5)
化合物5(BPHオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
ネオペンチルグリコール無水フタル酸をベースとするポリエステルジオール(BPH、10.0g、10mmol)をN2下70℃で無水DMAc(70mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(4.24g、20mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(9.24g、22mmol)を無水DMAc(25mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物(化合物5)を溶媒抽出及びカチオン性SPEにより精製した。GPC(THF移動相):25.4分の保持時間。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)7.41-7.79(芳香族H,BPH),4.25-4.44(-CH2-O,BAL),4.05-4.21(-CH2-O,BPH),3.67-3.79(-CH3,LDI),3.06-3.25(CH2-NH,LDI),2.32-2.56(-CH2-CF2-,BAL),1.26-1.90(CH2,LDI),0.86-1.11(-CH3,BPH)。表面分析(XPS):31.4%F。元素分析:15.64%F。DSC分析:Tg=25℃。接触角(水送給):106°。テクスチャ分析:1.8g。化合物5をアセトン中に溶解し、1000MWCO再生セルロース膜を用いて3日間透析することによりさらに精製した。
【0194】
(実施例6)
化合物6(PEGオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
PEG(7.65g、7.65mmol)をN2下70℃で無水THF(54mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(3.25g、15.3mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(7.07g、16.8mmol)を無水THF(18mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物(化合物6)を沈殿及びカチオン性SPEにより精製した。GPC(THF移動相):24分の保持時間。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)4.25-4.44(-CH2-O,BAL),4.08-4.15(-CH2-O-CO,PEG),3.70-3.75(-CH3,LDI),3.55-3.77(-CH2,PEG),3.10-3.30(CH2-NH,LDI),2.32-2.60(-CH2-CF2-,BAL),1.20-1.90(CH2,LDI)。DSC分析:Tg =-45.5℃、Tm=21.7℃。接触角分析(水送給):108.7°。化合物6をアセトン中に溶解し、1000MWCO再生セルロース膜を用いて3日間透析することによりさらに精製した。
【0195】
(実施例7)
化合物7(NPG542オリゴフルオロ)の合成及び特性評価
ネオペンチルグリコール(NPG、3.0g、28.8mmol)をN2下70℃で無水THF(133mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(7.63g、36mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(6.65g、15.8mmol)を無水THF(83mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物(化合物7)を沈殿及びカチオン性SPEにより精製した。GPC(THF移動相):26分の保持時間。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)4.23-4.48(-CH2-O,BAL),3.85-4.10(-CH2-O-CO,NPG),3.70-3.73(-CH3,LDI),3.10-3.20(CH2-NH,LDI),2.30-2.58(-CH2-CF2-,BAL),1.25-1.85(CH2,LDI),0.80-1.05(CH3,NPG)。表面分析(XPS):18.75%F。元素分析:14.46%F。DSC分析:Tg =-3℃,Tm=161℃。接触角分析(水送給):106.9℃。テクスチャ分析:1g。化合物7をアセトン中に溶解し、1000MWCO再生セルロース膜を用いて3日間透析することによりさらに精製した。
【0196】
(実施例8)
化合物8(PEGAオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
ポリ(ジエチレンアジペート)(PEGA、7.45g、2.98mmol)をN2下70℃で無水DMAc(43.5mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(1.26g、5.96mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(2.75g、6.55mmol)を無水DMAc(7mL)中に溶解し、反応物に添加し、n2下、室温で一晩攪拌した。生成物(化合物8)を沈殿及びカチオン性SPEにより精製した。GPC(THF移動相):22.5分の保持時間。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)4.30-4.40(-CH2-O,BAL),4.20-4.30(-CH2-O-CO,PTMO;-NH-OCO-O-CH2-CH2-,PEGA),3.75(CH3,LDI),3.58-3.72(-O-CH2-CH2-O-,PEGA),3.12-3.24(CH2-NH,LDI),2.30-2.70(-CH2-CF2-,BAL;-OCO-O-CH2-,PEGA),1.25-2.0(CH2LDI;-CH2CH2CH2-,PEGA)。表面分析(XPS):41.06%F。元素分析:25.76%F。接触角分析(水送給):118.5°。DSC分析:Tg=-43°及び156°。粘度分析(37℃):144Pa.s。テクスチャ分析:66g。化合物8をアセトン中に溶解し、1000MWCO再生セルロース膜を用いて3日間透析することによりさらに精製した。
【0197】
(実施例9)
化合物9(HPCN TMXオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
ヘキサメチレンポリカーボネートジオール(HPCN、25.0g、12.5mmol)をN2下70℃で無水DMAc(150mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(6.10g、25mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(11.55g、27.5mmol)を無水DMAc(29mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物(化合物9)を溶媒抽出及びカチオン性SPEにより精製した。GPC(ジオキサン移動相):22.6分の保持時間。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)7.2-7.45(-CH,TMX),4.30-4.43(-CH2-O,BAL),4.04-4.20(-CH2-CH2-O-CO,HPCN),3.90-4.03(-CH2-O-CO-NH,HPCN),2.25-2.55(-CH2-CF2-,BAL),1.13-1.80(CH2,HPCN;CH3,TMX)。元素分析:10.5%F。DSC分析:Tg=-32.2℃、Tm=147℃。表面分析(XPS):33.17%F。粘度分析(37℃):360Pa.s。テクスチャ分析:170g。化合物9をアセトン中に溶解し、1000MWCO再生セルロース膜を用いて3日間透析することによりさらに精製した。
【0198】
(実施例10)
化合物10(EGオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
エチレングリコール(EG,1.5g、24.2mmol)をN2下70℃で無水THF(60mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(10.3g、48.4mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(22.4g、53.2mmol)を無水THF(56mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物(化合物10)を沈殿及びカチオン性SPEにより精製した。GPC(THF移動相):27分の保持時間。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)4.23-4.48(-CH2-O,BAL),4.10-4.25(-CH2-O-CO,EG),3.75(-CH3,LDI),3.10-3.28(CH2-NH,LDI),2.36-2.60(-CH2-CF2-,BAL),1.25-1.85(CH2,LDI)。表面分析(XPS):36.87%F。元素分析:27.51%F。DSC分析:Tg=-3℃。接触角分析(水送給):130.7°。粘度分析(37°):2397Pa.s。テクスチャ分析:29.1g。
【0199】
(実施例11)
化合物11(HPHオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
1,6-ヘキサンジオール-無水フタル酸をベースとするポリエステルジオール(HPH,20.0g、10mmol)をN2下70℃で無水THF(122mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(4.24g、20mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(9.24g、22mmol)を無水THF(23mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物(化合物11)を沈殿及びカチオン性SPEにより精製した。GPC(THF移動相):23.8分の保持時間。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)7.52-7.68(-CH,芳香族環HPH),4.30-4.40(-CH2-O,BAL),4.10-4.22(-CH2-O-CO,HPH), 4.0-4.08(-CH2-COO-NH-,HPH),3.70-3.75(-CH3,LDI),3.10-3.21(CH2-NH,LDI),2.32-2.52(CH2-CF2-,BAL),1.24-1.85(CH2,LDI及びHPH)。DSC分析:Tg =-13℃。接触角分析(水送給):119.1°。表面分析(XPS):40.74%F。元素分析:9.18%F。粘度分析(37℃):896Pa.s。テクスチャ分析:113.9g。化合物11をアセトン中に溶解し、1000MWCO再生セルロース膜を用いて3日間透析することによりさらに精製した。
【0200】
(実施例12)
化合物12(P3611オリゴマー)の合成及び特性評価
ポリアルコキシル化ポリオール(P3611)(1g、3.8mmol)をN2下70℃でDMAc(17mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(2.391g、11.28mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(5.211g、12.4mmol)をDMAc(13mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。GPC(THF移動相):23分の保持時間。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)4.25-4.51(-CH2-O,BAL),3.93-4.07(-CH2-O-CO,P3611),3.73(CH3,LDI),3.05-3.25(CH2-NH,LDI),2.31-2.57(-CH2-CF2-,BAL),1.21-1.93(CH3-CH2-,P3611,及びCH2,LDI),0.79-0.95(CH3,P3611)。元素分析:33%F。
【0201】
(実施例13)
化合物13(ヘキサフルオロペンタンジオールオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,5-ペンタンジオール(HPD、1.04g、4.9mmol)をN2下70℃で無水DMAc(20mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(2.07g、9.75mmol)と2時間反応させた。メタノール(417μL)を反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去し、生成物(化合物12)をカチオン性SPEにより精製した。GPC分析:生成物をジオキサン中に溶解し、ポリスチレンカラム及びUV検出器を用いてGPCシステムを実施した。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)4.53-4.75(-CH2-CF2,HPD),4.30-4.40(-CH,LDI),3.70(-CH3,LDI),3.60-3.65(CH3-O,MeOH),3.10-3.25(CH2-NH,LDI),1.25-1.85(CH2,LDI)。化合物12をCarbothane 85A基本ポリマーに5wt%添加剤として混合し、DMAc溶媒を用いて0.1g/mL溶液を作製した。混合物のフィルムをテフロン(登録商標)型中に流し込み、50℃で24時間乾燥させ、次に、真空下、50℃で24時間乾燥させた。フィルム混合物の表面分析(XPS):1.78%F。
【0202】
(実施例14)
化合物14(パーフルオロドデカンジオールオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
1H,1H,12H,12H-パーフルオロ-1,12-ドデカンジオール(PDD、1.02g、1.81mmol)をN2下70℃で無水DMAc(20mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(0.77g、3.63mmol)と2時間反応させた。メタノール(158μL)を反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去し、生成物(化合物14)をカチオン性SPEにより精製した。GPC分析:生成物をジオキサン中に溶解し、ポリスチレンカラム及びUV検出器を用いてGPCシステムを実施した。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)4.53-4.75(-CH2-CF2,PDD),4.30-4.40(-CH,LDI),3.70(-CH3,LDI),3.60-3.65(CH3-O,MeOH),3.10-3.25(CH2-NH,LDI),1.25-1.85(CH2,LDI)。化合物14をCarbothane 85A基本ポリマーに5wt%添加剤として混合し、DMAc溶媒を用いて0.1g/mL溶液を作製した。混合物のフィルムをテフロン(登録商標)型中に流し込み、50℃で24時間乾燥させ、次に、真空下、50℃で24時間乾燥させた。フィルム混合物の表面分析(XPS):35.63%F。
【0203】
(実施例15)
化合物15(ビス-ヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン)の合成及び特性評価
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BHP、1.08g、3.21mmol)をN2下70℃で無水DMAc(20mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(1.37g、6.44mmol)と4時間反応させた。メタノール(290μL)を反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去することにより、生成物(化合物15)を単離した。GPC分析:生成物をジオキサン中に溶解し、ポリスチレンカラム及びUV検出器を用いてGPCシステムを実施した。1H NMR(400MHz,DMSO)δ(ppm)6.98-7.03(-CH-CCF3,BHP),6.75-6.83(-CH-CO,BHP),4.53-4.75(NH,LDI),4.30-4.40(-CH,LDI),3.65(-CH3,LDI),3.45-3.51(CH3-O,MeOH),3.10-3.25(CH2-NH,LDI),1.25-1.85(CH2,LDI)。化合物15をCarbothane 85A基本ポリマーに5wt%添加剤として混合し、DMAc溶媒を用いて0.1g/mL溶液を作製した。混合物のフィルムをテフロン(登録商標)型中に流し込み、50℃で24時間乾燥させ、次に、真空下、50℃で24時間乾燥させた。フィルム混合物の表面分析(XPS):3.82%F。
【0204】
(実施例16)
化合物16(HEMAがコンジュゲートしたオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
化合物2(10.0グラム、約8mmol酸)、DMAP(0.488グラム、4mmol)、HEMA(6.247グラム、48mmol)、及びDCM(50mL)を250mLフラスコに添加し、全ての化合物が溶解するまで攪拌した。EDC(4.600グラム、24mmol)をDCM溶液に添加し、一旦EDCを溶解してから、溶液をN2下、室温で24時間攪拌し、光から保護した。反応混合物を回転蒸発(25℃)により粘稠液まで減少させ、水で3回(3×400mL)洗浄した。洗浄した生成物をジエチルエーテル(100mL、100ppm BHT)中に溶解し、溶液をMgSO4と1時間混合することにより水を除去した。溶液を250mLフラスコ内での重力濾過により浄化し、溶媒を回転蒸発(25℃)により除去した。生成物(化合物16)をDMF中に再溶解し、フルオラスSPE(F-SPE)を用いて精製し、回転蒸発により回収した。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)6.09-6.15(HEMAビニルH),5.58-5.63(ビニルH,HEMA),4.83-5.78(-CH2),4.27-4.49(CH2-O,BAL;CH2,HEMA),4.01-4.15(CH2-OCO-,PTMO),3.75(小さなCH3シグナル),3.31-3.50(CH2-O-,PTMO),3.07-3.23(CH2-NH,PTMO),2.36-2.56(CH2-CF2-,BAL),1.91-1.96(CH3,HEMA)1.27-1.74(CH2,PTMO及びLDI)。GPC分析(ジオキサン移動相):26.5分の保持時間。遊離HEMAモノマーはこの分析において検出されなかった。IR分析:1634cm-1(C=C)。
【0205】
(実施例17)
化合物17(FEO1オリゴフルオロ)の合成及び特性評価
PTMO(10g、0.0097mol、脱気)を無水DMAc(50mL)中に溶解した。リシンジイソシアネート(4.11g、0.020mol、蒸留)及びDBDL触媒を無水DMAc(25mL)中に溶解し、PTMO溶液に滴下した。プレポリマー反応液を60〜70℃で窒素雰囲気下に2時間維持した。パーフルオロアクリレート(4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11ヘプタデカフルオロ-2-ヒドロキシウンデシルアクリレート)(FEO1、12.058g、0.022mol)を、DBDLを含むDMAc(25mL)中に溶解し、プレポリマー溶液に滴下し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物を水(2L)中で沈殿させ、ジエチルエーテル(100mL、100ppm BHT)中に再溶解し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。エーテル溶液をヘキサン(400mL)に滴下して生成物を沈殿させ、未反応試薬を抽出した。ヘキサンを傾斜法で除去し、その溶媒抽出手順を2回繰り返した。精製した生成物(化合物17)をジエチルエーテル(50mL)中に溶解し、溶媒を回転蒸発によって室温で除去した。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)6.40-6.52(ビニルH,FEO1),6.09-6.23(ビニルH,FEO1),5.80-5.95(ビニルH,FEO1),4.15-4.53(C-H,FEO1;-O-CH2-,FEO1)4.00-4.15(-CH2-O-CO,PTMO),3.75(CH3,LDI),3.31-3.50(CH2-O,PTMO),3.05-3.25(CH2-NH,LDI),2.35-2.61(-CH2-CF2-,FEO1),1.25-1.73(CH2,PTMO及びLDI)。GPC分析(ジオキサン移動相):26分の保持時間。遊離FEO1モノマーは、この分析では検出されなかった。IR分析:1634cm-1(C=C)。
【0206】
(実施例18)
化合物18(FEO3オリゴフルオロ)の合成及び特性評価
PTMO(10g、0.0097mol、脱気)を無水DMAc(50mL)中に溶解した。リシンジイソシアネート(4.241g、0.02mol、蒸留)及びジラウリン酸ジブチル錫触媒を無水DMAc(22mL)中に溶解し、PTMO溶液に滴下した。プレポリマー反応液を60〜70℃でN2下に2時間維持した。パーフルオロアクリレート(3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)(FEO3、9.068g、0.022mol)を、ジラウリン酸ジブチル錫を含むDMAc(23mL)中に溶解し、プレポリマー溶液に滴下した。リアクターを室温でN2下に一晩攪拌した。生成物を水(2L)中で沈殿させ、ジエチルエーテル(100mL、100ppm BHT)中に再溶解し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。エーテル溶液をヘキサン(400mL)に滴下して生成物を沈殿させ、未反応試薬を抽出した。ヘキサンを傾斜法で除去し、その溶媒抽出手順を2回繰り返した。精製した生成物(化合物18)をジエチルエーテル(50mL)中に溶解し、溶媒をフローフード中での蒸発によって室温で除去した。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)6.10-6.16(ビニルH,FEO3),5.66-5.89(ビニルH,FEO3),4.27-4.41(-O-CH2-,FEO3),4.15-4.27(-O-CH2-,FEO3)4.00-4.14(-CH2-O-CO,PTMO),3.75(CH3,LDI),3.27-3.52(CH2-O,PTMO),3.05-3.21(CH2-NH,LDI),2.34-2.61(-CH2-CF2-,FEO3),1.90-1.99(CH3,FEO3),1.22-1.90(CH2,LDI及びPTMO)。GPC分析(ジオキサン移動相):26.5分の保持時間。遊離FEO3モノマーは、この分析では検出されなかった。IR分析:1634cm-1(C=C)。
【0207】
(実施例19)
化合物19(トリスオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
方法A:トリスのEDCコンジュゲーション
化合物2(10g、4.4mmol)、EDC、及びDMAP(酸基:EDC:DMAPのモル比1:6:0.5)を無水DMF(200mL)中に溶解した。トリス(トリス:酸基のモル比1.1:1)を反応混合物に添加した。この溶液をN2下、室温で24時間反応させた。DMF溶媒を40℃で蒸発させた。粘性のある残渣を、ジエチルエーテル(3×100mL)で室温にて抽出した。EDC及びトリスは冷エーテルに不溶である。この透明なエーテル溶液を蒸発させた。白色の粘性生成物(化合物19-a)を真空下40℃で一晩乾燥させた。元素分析:25.57%F。IR分析:3330cm-1(O-H),1110 cm-1(C-OH),1160cm-1(C-F),1220cm-1(C-O-C)。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)2.38(CトリスCH2OH),1.73(Cトリス-NH)。OH数の決定:化合物19-aのヒドロキシル含有量(付属トリスに固有である)を、ピリジン中で化合物19-aを過剰の無水酢酸と反応させ、次に、指示薬としてフェノールフタレインを用いて水酸化カリウム塩基で逆滴定を行うことにより決定した。結果:OH数 2.4113mmol/g。
【0208】
方法B:トリスのK2CO3コンジュゲーション
化合物1(3.05g、約2.6mmol)を無水メタノール(100mL)中に溶解した。トリスヒドロキシメチルアミノエタン(トリス、0.63g、5.2mmol)と無水炭酸カリウム(0.72g、5.2mmol)の混合物を添加した。この反応混合物を45℃で7日間還流した。反応混合物を冷却し、その溶液を陽イオン交換及びフルオラス固相反応を用いて精製した。最終生成物(化合物19-b)を真空下で48時間(50℃)乾燥させた。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)4.25-4.50(-CH2-O,BAL),3.95-4.20(-CH2-OCO-,PTMO),3.75(減少したCH3シグナル,LDI),3.57-3.83(CH2,トリス),3.30-3.56(-CH2O,PTMO),3.04-3.28(-CH2NH-,PTMO),2.29-2.59(CH2CF2-,BAL),1.17-1.97(-CH2-,PTMO及びLDI)。HPLC分析(逆相HPLC、C18カラム、メタノール及びpH9 PBS移動相(グラジエント)):34.6分の溶離時間。化合物19-bをCarbothane 85A基本ポリマーに5wt%添加物として混合し、DMAc溶媒を用いて0.1g/mL溶液を作製した。混合物のフィルムをテフロン(登録商標)型中に流し込み、50℃で24時間硬化させ、次に、真空下、50℃で24時間乾燥させた。フィルムの空気に接触している表面をXPSにより90°出射角を用いて分析した。元素分析:Carbothane 0%F;Carbothane+5wt%化合物19-b 36.3%F。接触角分析:化合物19-bを、Carbothane 85A及びエチレン-コ-酢酸ビニル(EVA)をベースとするポリマーに、5wt%混合物として溶媒キャスト法を用いて混合した。接触角分析を水を用いて行った。EVA.105°+/-2°(疎水性)、EVA+化合物19-b:15°+/-2°(親水性)。Carbothane 85A:102°+/-4°(疎水性)、Carbothane+化合物19-b:18°+/-5°(親水性)。
【0209】
(実施例20)
化合物20(トリス-Brオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
化合物19(トリスオリゴフルオロ)(10g、4.0mmol)(以前に乾燥させた)及びTEA(TEA:OH基のモル比1.2:1)をN2下で無水CH2Cl2(50mL)中に溶解した。その溶液を氷水浴中で冷却した。化学量論的量の10% BIBB/CH2Cl2溶液を窒素雰囲気下で化合物19/CH2Cl2溶液に滴下した。その混合物を室温で24時間攪拌し、次いで濾過してTEA-HBr塩を除去した。濾液を水(10mL)で3回洗浄した。CH2Cl2を室温で蒸発させた。薄茶色の粘性固体生成物(化合物20)を得た。元素分析:17.42%,13.65% Br。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)2.05(C(CH3)2Br)。
【0210】
(実施例21)
化合物21(トリス-PHEMA-Brオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
化合物20(トリス-Brオリゴフルオロ)(2.5g、1mmol)をDMF(10mL)中に溶解した。CuBr(0.143g、1mmol)及びHMTETA(0.253g、1.1mmol)をその溶液に添加した。フラスコを真空ラインに接続し、液体窒素で3回凍結融解した。フラスコに超高純度窒素を充填し、新しく蒸留したHEMA(2.86g、22mmol)を添加した。フラスコを油浴中で50℃で20時間加熱した。フラスコを氷水で冷却することによって重合を停止した。DMFを40℃で溶液から蒸発させた。粘性固体をTHF中に溶解し、シリカゲルカラムで濾過して触媒を除去した。THFを室温で濾液から蒸発させた後、固体生成物(化合物21)を真空下40℃で一晩乾燥させた。元素分析:10.21%F;0.28%Br。1H NMR(300MHz,DMSO)δ(ppm)4.80(CH2OH,HEMA),3.92(COOCH2,HEMA),3.60(CH2OH,HEMA),1.79(CH2CCH3,HEMA),0.80(CH2CCH3,HEMA)。平均(ポリスチレン当量)分子量を1.65の多分散性で9.01×104g/molと記録した。最終生成物の重量平均MWは化合物20より実質的に大きかった。このデータは最終生成物の重合が成功したことを示した。OH滴定に基づいて、平均重合度は分子のPHEMA部分について測定できる。理論的OH数は6.366mmol/gであり、滴定値は6.386mmol/gであった。OH数に基づいて、HEMAを定量的に組み込み、PHEMA分枝についての平均重合度は21.7であった。
【0211】
(実施例22)
化合物22(トリス-PMAA-Brオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
Tert-ブチルメタクリレート(tBMA、2.10g、15mmol)、CuBr(0.149g、1mmol)、及びキシレン(4mL)をフラスコに添加した。そのフラスコをゴム隔膜で密閉し、氷水中で冷却した。超高純度窒素を15分間混合物に通してパージした。次いで、HMTETA(以前に窒素でパージした;0.46g、2.0mmol)をシリンジにより添加した。溶液が透明、及び薄緑色になった後、アセトン(5mL)中の化合物20(0.5858g、1mmolのBr基)溶液を添加した。フラスコを油浴中で70℃で一晩加熱した。そのフラスコを氷水中で冷却することによって重合を停止した。その溶液をTHF(20mL)で希釈し、シリコンゲルカラムで濾過して触媒を除去した。濾液を水中で沈殿させ、固体ポリマーを真空下30℃で一晩乾燥させた。固体ポリマー(1g)をCHCl3(9mL)及びCF3COOH(1mL)の溶液中に溶解した。その溶液を室温で20時間攪拌した。ポリマーは溶液中でゲル状半固体になった。溶媒を濾過により除去し、固体をCHCl3で2回洗浄し、濾過した。全ての液体残渣を真空下、室温で除去した。固体生成物(化合物22)を真空下40℃で一晩乾燥させた。滴定したCOOHの数は8.8592mmol/gであった。滴定結果及び化学量論に基づいて、tBMA変換は96.7%と測定し、計算したPMAA分枝の平均重合度は14.6であった。
【0212】
(実施例23)
化合物23(トリス-PVP-Brオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
1-ビニル-2-ピロリドン(VP、3.33g、30mmol)、化合物20(1mmol)、及びCuBr(0.143g、1mmol)をフラスコに添加した。そのフラスコをゴム隔膜で密閉し、氷水中で冷却した。その混合物をN2で30分間パージした。2,2'-ジピリジル(BPY、以前にN2でパージした、0.156g、1mmol)をその混合物に添加した。フラスコを油浴中で100℃で20時間加熱した。そのフラスコを氷水中で冷却することによって重合を停止した。その溶液をCH2Cl2(200mL)で希釈し、アルミニウムカラムで濾過して触媒を除去した。室温で濾液からCH2Cl2を蒸発させた後、固体生成物を真空下40℃で一晩乾燥させた。元素分析:0.67%F;1.10%Br。F及びBr含有量に基づいて、VP変換は78.6%に達し、60のPVP分枝についての平均重合度に置き換えた。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)7.00(CH2CH,PVP),4.92(CH2CH,PVP),3.48(NCH2,PVP),3.40(CH2OCH2,ポリウレタン),2.47(COCH2,PVP),2.10(CH2CH2CH2,PVP),1.62(CH2CH2CH2CH2,ポリウレタン)。
【0213】
(実施例24)
化合物24(Accmerオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
Accmer(7.0g、7.0mmol)をN2下70℃で無水DMAc(50mL)中、DBDL触媒の存在下でLDI(2.97g、14mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(6.45g、15.4mmol)を無水DMAc(16.2mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物(化合物24)をカチオン性SPEにより精製した。GPC(THF移動相):保持時間25.5分。1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)4.24-4.46(-CH2-O,BAL),3.94-4.13(-CH2-O-CO,Accmer),3.75(CH3,LDI),3.38-3.64(CH2-O-,Accmer),3.16(CH2-NH,LDI),2.29-2.60(-CH2-CF2-,BAL),1.16-1.96(CH2,Accmer及びLDI),0.8(CH2,Accmer)。DSC分析:Tg=-47℃、Tm=23℃。元素分析:17%F。化合物24をアセトン中に溶解し、1000MWCO再生セルロース膜を用いて3日間透析することによりさらに精製した。元素分析:13.3%F。化合物24を表面分析(XPS)のためにナイロン上に滴下して流し込んだ:45%C、29%F、5%N、21%O。
【0214】
(実施例25)
化合物25(Accmer TMXオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
Accmer(3.0g、3.0mmol)をN2下70℃で無水DMAc(25mL)中、DBDL触媒の存在下でTMX(1.466g、6.0mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(2.778g、6.0mmol)を無水DMAc(25mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物は27分のGPC(THF移動相)保持時間を有した。生成物をカチオン性SPEにより精製した。1HNMR分析は予想される化学構造に一致した。1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)7.1-7.6(芳香族-CH2,TMX),4.3-4.4(-CH2-O,BAL;-NH-ウレタン),3.9-4.0(-CH2-O-CO,Accmer),3.4-3.8(-CH2-O-,Accmer),3.38(-CH2-,Accmer),2.3-2.5(-CH2-CF2-,BAL),1.5-2.0(-CH3,TMX),1.2(-CH3,Accmer),0.9(-CH3,Accmer)。元素分析:17%F。化合物25を表面分析(XPS)のためにナイロン上に滴下して流し込んだ:54%C、27%F、3%N、15%O。
【0215】
(実施例26)
化合物26(Accmer HDIオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
Accmer(3.0g、3.0mmol)をN2下70℃で無水DMAc(25mL)中、DBDL触媒の存在下でHDI(1.009g、6.0mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(2.778g、6.0mmol)を無水DMAc(25mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物は25分のGPC(THF移動相)保持時間を有した。生成物をカチオン性SPEにより精製した。1HNMR分析は予想される化学構造に一致した。1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)4.3-4.4(-CH2-O,BAL;-NH-ウレタン),3.9-4.0(-CH2-O-CO,Accmer),3.5-3.7(-CH2-O-,Accmer;NH-COO-,HDI-Accmerウレタン),3.38(-CH2-,Accmer),3.1-3.25(NH-CH2-,HDI),2.3-2.5(-CH2-CF2-,BAL),1.3-1.6(-CH2-HDI),0.9(-CH3,Accmer)。化合物26を表面分析(XPS)のためにナイロン上に滴下して流し込んだ:44%C、46%F、3%N、7%O。
【0216】
(実施例27)
化合物27(Accmer THDIオリゴフルオロ)の合成及び特性評価
Accmer(3.0g、3.0mmol)をN2下70℃で無水DMAc(25mL)中、DBDL触媒の存在下でTHDI(1.045g、6.0mmol)と2時間反応させた。パーフルオロアルコール(2.778g、6.0mmol)を無水DMAc(25mL)中に溶解し、反応物に添加し、N2下、室温で一晩攪拌した。生成物は25分のGPC(THF移動相)保持時間を有した。生成物をカチオン性SPEにより精製した。1HNMR分析は予想される化学構造に一致した。1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)4.3-4.4(-CH2-O,BAL;-NH-ウレタン),3.9-4.0(-CH2-O-CO,Accmer),3.4-3.8(-CH2-O-,Accmer),3.38(-CH2-,Accmer),2.3-2.5(-CH2-CF2-,BAL),1.2(-CH3,Accmer),0.9(-CH3,Accmer)。元素分析:12%F。化合物27を表面分析(XPS)のためにナイロン上に滴下して流し込んだ:55%C、25%F、3%N、17%O。
【0217】
(実施例28)
選択した化合物及びバルーンカテーテルの滅菌
実施例1〜27からの選択した化合物を、滅菌ポーチに入れた、繊維非放出性薄織物(lint-free tissue)で覆ったポリプロピレン円錐管内に秤量し、EtOにより滅菌した。滅菌した化合物をGPCにより分析し、それらの結果を滅菌前プロファイルと比較した。滅菌前と滅菌後のサンプルについて変化は観察されなかった。
【0218】
化合物24及びPTX複合体を確立されたプロトコルに従って調製し、滅菌ポーチに入れた、繊維非放出性薄織物で覆ったポリプロピレン円錐管中で秤量し、EtOにより滅菌した。滅菌した複合体をGPC及びHPLCにより分析し、滅菌前のそのプロファイルと比較した。滅菌後の化合物24とPTXの両方に変化は観察されなかった。
【0219】
化合物1、化合物24、及び化合物24+PTXでコーティングしたバルーンカテーテルもまた、EtOにより滅菌した。滅菌した及び滅菌していないバルーンカテーテルをGPCにより分析し、滅菌前及び滅菌後の分子量プロファイルを比較した。滅菌前のMW:化合物1:8655、化合物24:4212、化合物24+PTX:4212。滅菌後のMW:化合物1:8960、化合物24:4841、化合物24+PTX:4849。PTX HPLC保持時間(分):滅菌前:12.202、滅菌後:12.192。
【0220】
(実施例29)
インビボモデルにおける生体内分布及びクリアランスの評価
化合物3(15mg)をDMSO(25μL、0.6g/mL)中に溶解し、オスのSprague-Dawleyラットに注入した。全血サンプルを24時間にわたって定期的に採取した。全血サンプル中の化合物3の蛍光シグナルをマイクロプレート分析(励起:320nm及び発光:540nm)によって測定した。尿サンプルもまた、化合物3の蛍光シグナルについて分析した。Ke=0.044hr-1,T1/2(e),T1/2(合計)=15.7時間。
【0221】
(実施例30)
バルーンカテーテル上のコーティング被覆率の可視化
わずかに展開し、巻かれていない状態で受け取ったPTCAバルーンカテーテルを、90:10のトルエン:THF中の化合物3の溶液中で浸漬コーティングし、噴霧し、一晩にわたって50℃フロー中で乾燥させた。そのバルーンカテーテルをガラスシリンジ及び18Gチュービングを用いてわずかに展開した。噴霧したバルーンを、化合物3に特有の設定を用いてEFD噴霧システムでコーティングした。短波UVランプを用いてコーティングを評価した。巻かれていないバルーンカテーテルは最も連続したコーティングを有し、次にわずかに膨張し、巻かれたバルーンであった。
【0222】
(実施例31)
バルーンカテーテル上の化合物1のコーティング並びに空気中での展開前及び後のコーティングの評価
化合物1(1.0g)をTHF中に溶解し、使用するまで室温で維持した。その溶液を、化合物1に特有の設定でEFD噴霧システムを用いて、わずかに展開したPTCAバルーンカテーテル上に噴霧し、一晩にわたって50℃フロー中で乾燥させた。SEM分析により、空気中での展開前及び後、薄い均一なコーティングが示唆された。
【0223】
(実施例32)
化合物1+PTXの調製、及びコーティングされたバルーンカテーテルのPTX充填
化合物1(0.4g)及びPTX(0.04g〜1.6g)をTHFに溶解し、直ちに使用した。バルーンカテーテル(3.0mm×17mm)を噴霧又は浸漬コーティングした。噴霧したバルーンを、化合物1に対して特有の展開した設定を用いてEFD噴霧システムでコーティングした。浸漬コーティングに関して、浸漬溶液をシザーリフトテーブルを用いて特定の高さまで持ち上げながら、バルーンカテーテルを小さなクランプを用いて所定の位置に固定した。コーティングされたバルーンを適切な溶媒中で一晩ストリッピングした。PTX充填を、内部標準としてベンゾニトリを用いるRP-HPLCを使用して測定した。浸漬又は噴霧の数を変化させることによって充填を制御した(μg/mm2):0.2-6.0。
【0224】
(実施例33)
化合物1、2、5〜11、16〜18、24に対する炎症性細胞応答の評価
化合物1、2、5〜11、24をTHF又はトルエン中に溶解し、96ウェルポリプロピレンプレート中に流し込んだ。溶媒を室温で24時間蒸発させ、次いで60℃フローオーブン中に24時間置き、最後に真空下で一晩乾燥させた。化合物16〜18をBPO開始剤(1wt%の化合物16〜18塊)を含有するトルエン中に溶解した。トルエン溶液を96ウェルポリプロピレンプレート中に流し込み、室温で1日間半閉鎖チャンバに置いた。次いで化合物16〜18フィルムをN2パージした60℃オーブン中で12時間硬化させ、真空乾燥させた。比較目的のために、プレートにSIBSのフィルム及び316ステンレス鋼インサートを添加した。プレートをUVランプ下で1時間滅菌した後、各サンプルウェルをPBSで水和した。U937単球様細胞(2.5×105細胞)をPMAの存在下で各ウェルに接種し、プレートを湿潤インキュベータにおいて37℃で3日間インキュベートした。非接着細胞を除去し、接着U937マクロファージをCyQuantアッセイを用いて数えた。
【0225】
(実施例34)
選択した化合物及び10wt% PTXでコーティングした膜を介するHCAECの移動
化合物1(0.1g)をMeOH(0.5、1、2及び4mL)中に溶解し、これらの溶液(0.05mL)をピペットでBD 8μm PET膜インサートに移し、このインサートを介して吸い上げた。また、化合物1をPTXと混合して1及び10wt%溶液を生成し、これらを膜にコーティングした。対照として、適当な濃度のSIBSポリマーの溶液を膜にコーティングした。生じたコーティング膜をSEMにより試験し、水を膜に通すことにより多孔度を確認した。さらに、同一の方法を用いて化合物3をコーティングし、蛍光(Ex 320、Em 540nm)を測定してコーティングの存在を確認した:(非コーティング膜)=3.5、(化合物1)=0.6、(化合物3)=28.2。HCAECを培地及びLonzaから供給された補足物を用いて第3代まで培養し、無血清培地において一晩飢餓状態にした。細胞を引き上げ、0.5% FBS培地中に再懸濁させ、HCAECを接種した(80000個/膜インサート)。下部ウェルに20% FBS培地を充填した。陰性対照は下部ウェル中に0.5% FBS培地と共に非コーティング膜から構成した。陽性対照は下部ウェル中に20% FBS培地と共に非コーティング膜から構成した。4時間インキュベートした後、ウェルを引き上げ、内部膜から細胞をこすげ落とし、下部膜表面を固定し、DiffQuikで染色した。膜の画像を顕微鏡検査により集め、細胞形態特徴及び集団を記録した。
【0226】
HCAECについて記載した移動アッセイを、実施例1、5、7〜11に記載した全ての化合物について他の種由来の細胞株で繰り返した。
【0227】
(実施例35)
血小板及びフィブリノゲンと化合物1、16及び17のフィルムとの相互作用の評価
化合物1をトルエン中に溶解し、室温で24時間攪拌した。その溶液を化合物1に特有の設定でEFD噴霧システムを用いて4cm×4cm 316Lステンレス鋼試験片に噴霧した。試験片を50℃フローオーブン中で20〜24時間乾燥させた。化合物16及び17を、BPO開示剤(1wt%の化合物16及び17塊)を含有するトルエン中に溶解し、その溶液を4cm×4cm PTFEウェル(6mL/ウェル)に流し込み、PTFEを流し込んだプレートを室温で1日間、半閉鎖チャンバに置いた。次いで化合物16及び17フィルムをN2パージした60℃オーブン中で12時間硬化させた。薬物を服用していない健常ボランティアからヒト全血を得、クエン酸デキストロース抗凝固剤(6部のACD対1部の血液)又は低分子量ヘパリンのいずれかを含む遠心管に0.2U/mLの最終濃度まで集めた。ACDを用いて集めた血液から血小板を遠心分離により単離し、0.5mCi/mL Na51Crで標識した。ACD全血から赤血球も単離し、洗浄した。Na51Cr標識血小板及び洗浄した赤血球を250,000血小板/μLの最終血小板濃度及び40%ヘマクリットとなるように貧血小板血漿と合わせた。最後に、フィブリノゲンの全量の約2%となるように125I-フィブリノゲンを全血懸濁液に添加した。血小板接着を層流及び均一の剪断速度を与える円錐平板デバイスにおいて流動全血液から測定した。コーティングされた試験片及びフィルムを円錐平板デバイスのウェルにNa51Cr血小板を含有する1.2mLの全血懸濁液と一緒に入れ、アッセイを15分間実施した。次いで、試験片及びフィルムを新鮮なバッファーで濯ぎ、放射線をγカウンターを用いて測定し、元の全血懸濁液の放射線に基づいて接着血小板(Na51Cr血小板)及び吸着したフィブリノゲン(125I-フィブリノゲン)の数と相関させた。非コーティングステンレス鋼試験片と比較して、化合物1、16及び17は血小板接着及びフィブリノゲン吸着を有意に低下させた。
【0228】
(実施例36)
化合物1のフィルムとのタンパク質接着の評価
実施例35において使用した化合物1のフィルムもまた、タンパク質接着を評価するために処理した。表面を等張トリス緩衝液で濯ぎ、次いでタンパク質を溶離するために2%ドデシル硫酸ナトリウムに24時間曝露した。次いでSDS-PAGEゲルを実施した。タンパク質バンドは見えず、最低限のタンパク質接着を示唆する。
【0229】
(実施例37)
MEM溶離アッセイ-化合物1、2、5〜11、17及び18の細胞毒性評価
化合物1、2、及び5〜11を秤量し、MEM培地中で4g:20mLの比で37℃で24時間インキュベートした。化合物17及び18のフィルムを同じ様式で処理した。L-929マウス線維芽細胞を接種し、細胞のサブコンフルエント単層を得るために37℃、5% CO2中でインキュベートした。3つの培養物中の増殖培地をMEM抽出物(2mL)と交換した。3つの培養物をまた、陽性及び陰性対照として調製した。24時間後、細胞特性及び溶解%を評価するために細胞培養物を顕微鏡下で試験した。この試験の条件下で、MEM抽出物は細胞溶解又は毒性を引き起こす証拠を示さなかった。
【0230】
(実施例38)
化合物1の直接接触アッセイ
化合物1の潜在的細胞毒性を評価するために試験材料と直接接触しているヒーラ上皮細胞の生存度を使用した。化合物1のサンプルを寒天支持したSuporフィルター上に溶媒を流し込んだ。その後、ヒーラ細胞の単層をMEM培地の存在下でフィルター上で直接培養した。24時間インキュベートした後、Suporフィルターを濯ぎ、コハク酸デヒドロゲナーゼで染色した。生存可能な細胞をポジティブパープル染色により同定し、細胞毒性を、流し込み材料の周りの細胞排除ゾーンについての着色フィルター、又は低い細胞密度を調べることにより測定した。各細胞毒性アッセイは陽性及び陰性対照を含んでいた。
【0231】
(実施例39)
化合物24及び18の用量依存性細胞毒性
化合物24及び18をDMSO中に溶解し、種々の濃度でMEM培地に添加した。L-929マウス線維芽細胞を接種し、細胞のサブコンフルエント単層を得るために、37℃、5% CO2中でインキュベートした。3つの培養物中の増殖培地を、化合物24及び18を含有するMEM培地と交換した。3つの培養物をまた、陽性及び陰性対照として調製した。24時間インキュベートした後、1mg/mlにてWST-1アッセイによって細胞の生存度を試験し、対照と比較して生存%として報告した。化合物24=99.8%及び化合物18=96%。
【0232】
(実施例40)
種々の治療剤との化合物1、5、8、9、11及び24の適合性
化合物1、5、8、9、及び11を、種々の濃度で適切な溶媒中でトログリタゾン、C6-セラミド、セリバスタチン、プロスタグランジンE1、VEGF、パクリタキセル、ラパマイシン及びデキサメタゾンと混合した。化合物24もまた、パクリタキセル、C6-セラミド、ラパマイシン、及びイブプロフェンと混合した。溶液をステンレス鋼試験片又はナイロンフィルムにドロップキャスト(drop-casted)し、相分離及び結晶化について肉眼及び顕微鏡で視覚的に検査した。化合物1、5、8、9、11及び24は種々の治療剤と適合性があった。
【0233】
(実施例41)
コーティングされたナイロンフィルムから心筋へのPTX移動
THF中に溶解した化合物2、6、及び24(500mg)+PTX(214mg)をナイロン12フィルム上にドロップキャストし、50℃フローオーブン中で一晩乾燥させた。ブタ心筋の薄片をブタ全血に浸した。次いでコーティングされたナイロン12フィルムを5分まで心筋の上部に置いた。移動したPTXをTHF中の心筋の抽出により定量し、内部標準としてベンゾニトリルを用いるRP-HPLCにより上清を分析した。30秒、1分、及び5分のそれぞれで移動したPTX:化合物2:38.53ng、209.09ng、508.94ng;化合物6:133.23ng、262.39ng、1041.07ng;化合物24:1574.86ng、3398.16ng、11890.32ng。
【0234】
(実施例42)
バルーン展開後のPTX投薬のエキソビボモデル
地方の商品生産農家の供給業者から供給されたブタの心臓を集め、生理食塩水で灌流した。薬物溶出バルーンカテーテルを所定の位置に進入させ、そのシステムを展開させた。その位置を印し、バルーンを引き抜き、そのセグメントを心筋から完全に切断した。薬物含有量の分析には、組織均質化、薬剤の固相抽出(Waters HLB SPE)、及びHPLC分析が含まれた。バルーンに残存している薬剤はHPLCにより抽出され、分析された溶媒であった。
【0235】
(実施例43)
血液への曝露後のバルーン上のPTXの保持
バルーンカテーテルを化合物24+PTXでコーティングし、室温で4日間乾燥させた。次いでコーティングされたバルーンカテーテルをブタの抗凝固処理血液に5分間曝露した。バルーンカテーテル上の残存コーティングをアセトニトリルで抽出し、内部標準としてベンゾニトリルを用いるRP-HPLCによりPTXを定量した。バルーン上に保持されたPTX%:72.8%。
【0236】
(実施例44)
血液中での展開の間のPTX放出
バルーンカテーテルを化合物24+PTXでコーティングし、室温で4日間乾燥させた。次いでコーティングされたバルーンカテーテルをブタの抗凝固処理血液に4分間曝露し、次いで膨張させ、1分間保持した。バルーンカテーテル上の残存コーティングをアセトニトリルで抽出し、内部標準としてベンゾニトリルを用いるRP-HPLCによりPTXを定量した。放出されたPTX%:67.4%。
【0237】
(実施例45)
ウサギモデルにおける動物研究
コーティングされた及びコーティングされていないバルーンをこの研究に含んだ。手短に述べると、頸動脈切開を実施した。右総頸動脈を単離し、5F誘導針を入れ、進入させ、対照の大動脈腸骨大腿(aortoiliofemoral)の血管造影を、大動脈分岐の上に配置した4F血管造影用カテーテルにより実施した。ヘパリン及びリドカインを経動脈的に注入した。コーティングされたバルーン及びコーティングされていないバルーンを透視下で導入し、研究プロトコルに従って膨張させた。研究設計に基づいて、処置した血管を薬物摂取の定量分析のために外植した。薬物抽出及び定量のための方法を開発し、確立した。
【0238】
(実施例46)
ブタモデルにおける動物研究
化合物24でコーティングされたバルーンカテーテルを、1分間まで、ブタの冠動脈(去勢したオスの飼育場のブタ(Sus scrofa domestica))中で膨張させたか、又は巻いて膨張部位に置いた。治療前に各動物にASA(0.081g)及びクロピドグレル(0.075g)を3日間毎日経口により与え、処置前に一晩絶食させた。外科処置のために、鎮静状態の後、静脈内輸液及び薬剤を注入するために辺縁耳静脈(marginal ear vein)にカニューレを挿入した。麻酔ガスを投与するために動物に挿管し、カテーテルテーブルに置いた。滅菌状態下で、血管導入針シースを外科的切断によって右頸動脈に置いた。連続血行動態モニタリング及び心電図モニタリングを処置の間中、維持した。検定標準としてガイドカテーテルを用いて、意図する埋込部位に近接する及び遠位の参照部位における血管の直径、並びに標的部位の直径を測定した。処置後、バルーンカテーテル上の残存コーティングをアセトニトリルで抽出し、内部標準としてベンゾニトリルを用いてRP-HPLCによりPTXを定量した。放出されたPTX%:巻かれた:60.2;膨張した:98.8。
【0239】
(実施例47)
炎症マーカー(CRP、MCP-1及びIL-6)の全身レベルの評価
研究プロトコルに従ってEDTA及び乾燥チューブ中に静脈穿刺静脈切開術により血液を回収した。EDTAチューブ中の血液を3000rpmで15分間遠心分離し、血漿を回収し、-20℃で保存した。乾燥チューブ中の回収した血液を室温で15分間凝固させて置いておき、3000rpmで10分間遠心分離した。次いで血清を分離し、保存した。CRPの定量を免疫凝集を用いて血清サンプルで実施した。MCP-1及びIL-6をELISA比色分析によって血漿から測定した。MCP-1及びIL-6についての標準曲線を450nm波長で測定した吸光度で調製した。スチューデントのt検定を用いて平均CRP、MCP-1、及びIL-6の結果を各時点で統計的に比較した。
【0240】
(実施例48)
流動条件(血液ループモデル)下でのバルーンコーティングの治療保持力の評価
37℃にてブタの抗凝固処理した全血を、シリコーンチューブ接続を介して蠕動ポンプにより汲み上げた。ポンプ流速は冠動脈を通過する血液速度と同様に設定した(71.4mL/分)。化合物1又は24でコーティングされたバルーンカテーテルを1分間の血流の中間に置いた。バルーンカテーテル上の残存しているPTXを、コーティングをストリッピングすることによって測定し、内部標準としてベンゾニトリルを用いるRP-HPLCを使用して定量した。残存PTX%:化合物1:94.4%、化合物24:52.2%。
【0241】
(実施例49)
バルーンコーティングの防汚性の評価
化合物1(125mg)をTHF(1mL)中に溶解し、ナイロンフィルム上にドロップキャストした。ナイロンフィルム及び化合物1でコーティングされたナイロンフィルムを、1mLの500mg/mL BSA中で40分間インキュベートした後、クマシーブリリアントブルーR色素(CBB)を用いてタンパク質吸着について定性的に評価した。陰性対照(BSAインキュベートしていない)も評価した。接着していないタンパク質を除去するために、蒸留水で濯いだ後、1mLの0.25% CBB試薬を全てのサンプルに添加し、40分間インキュベートした。全てのサンプルを蒸留水で濯いで乾燥させた。BSAとインキュベートした化合物1でコーティングされたナイロンフィルムは、BSAとインキュベートしたナイロンフィルム単独より少ないタンパク質吸着(暗青色堆積)を示したことが示された(図3)。
【0242】
(実施例50)
薬物シールディング効果及びナイロン12フィルムシート上の接着の評価
化合物1、7、及び14(200mg/mL)をTHF中に溶解した。PTXを各溶液に添加して、25mg/mL溶液を作製した。ナイロン12フィルムシートを1×1cmサイズに切断し、混合溶液をフィルムシート上にドロップキャストし、50℃フローオーブン中で1日間乾燥させた。PTX単独を同じ方法で調製し、対照として使用した。PBS pH7.4を37℃に予熱した。被験物質及び対照物質を37℃で培地(4mL)中で10、30、60及び120分間インキュベートした。各時点の終わりに、培地を交換し、研究の終わりに、フィルムを有機溶媒でストリッピングし、遠心分離し、上清を回収し、溶媒を60℃で一晩乾燥させた。内部標準物としてベンゾニトリルを用いてRP-HPLCによって薬物シールディング効果の評価を分析した。PBS中の10分のPTX放出(ng/mL):化合物1:107.6、化合物7:79.7、化合物14:15.4、PTX単独:651。フィルム表面上へのオリゴフルオロ接着の評価をNMRにより行った。各化合物についての検量線をNMRにより生成した。ストリッピングしたコーティングをCDCl3(1mL)中に再懸濁し、NMRを実施した。残存物質の量をNMR積分面積から逆算した。PBS中の120分インキュベーション後の残存物質の割合:化合物1:82.1、化合物7:85.5。フィルム上の薬物シールディングの同様の評価をブタの全血で行った。血液中の10分のPTX放出(%):化合物1:28.8、化合物7:34.0、化合物14:57.4、PTX単独:75.6。
【0243】
(実施例51)
ウサギモデルにおけるバルーンコーティングの治療保持力の評価
コーティングされたバルーンカテーテルを用いて実施例42のように血管形成術を通常通りに実施した。治療部位に到達した後、バルーンカテーテルを展開せずに引っ込めた。研究の終わりにSEMを用いてコーティングの完全性を試験した。コーティングに残存しているPTX濃度を、コーティングをストリッピングすることにより測定し、以下の分析法:高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて定量した。
【0244】
(実施例52)
可溶化剤としてのオリゴフルオロ
いくつかの水不溶性ドラッグである、パクリタキセル(PTX)、ラパマイシン、及びイブプロフェンを4wt%で化合物24と複合体形成した。ドロップキャスト法によりコーティングをナイロンフィルム上に作製した。薬物のみをコーティングした対照フィルムもまた、同じ方法で調製した。コーティングされたナイロンフィルムを水中で24時間インキュベートして薬物放出を測定した。水中に放出された薬物の割合:化合物24+PTX=94、PTX対照=11;化合物24+ラパマイシン=79、ラパマイシン対照=4;化合物24+イブプロフェン=80、イブプロフェン対照=40。
【0245】
バルーンカテーテルを化合物24+PTX及び非フッ素化ジオール+PTXでコーティングした。バルーンカテーテルを水中で剥がして、水溶液中のコーティング溶解度を評価した。水中でストリッピングしたコーティングからのPTX測定は以下の通りである:化合物24+PTX=680μg;非フッ素化ジオール+PTX=26μg。
【0246】
(実施例53)
バルーンカテーテルの表面上のコーティング特性評価
バルーンカテーテルを確立したプロトコル(化合物24+PTX)に従ってコーティングした。巻かれたコーティングされたバルーン、展開されたコーティングされたバルーン、及び対照として巻かれたコーティングされていないバルーンについてのコーティング特性評価をXPSにより行った。表面特性評価を、各バルーンについての単一ラインと共に4つの異なる点で行った。表面フッ素の割合、コーティングされていないバルーンについて:0.44、0.26、0.36、0.52;コーティングされたバルーン(巻かれていない)について:31.39、30.62、30.71、33.78;コーティングされたバルーン(展開された)について:36.61、32.71、32.93、31.21。表面特性評価により、バルーンの表面全体にわたる連続コーティングが示唆される。
【0247】
(実施例54)
バルーンコーティング上の高いPTX充填
化合物1及び24並びに非フッ素化ジオールをPTXと混合した。確立した方法に従ってバルーンカテーテルをこれらの溶液とコーティングし、乾燥させた。コーティングを有機溶媒で剥がし、HPLCによりPTXを測定した。化合物1、化合物24、及び非フッ素化ジオールにおけるPTX測定はそれぞれ961μg、713μg、466μgであった。
【0248】
(実施例55)
粒径分析
バルーンカテーテルを化合物24でコーティングし、室温で4日間乾燥させた。コーティングされたバルーンカテーテルをPBSに1分間曝露し、次いで膨張させ、1分間保持した。コーティングされていないバルーンカテーテルを対照として使用した。USP33-NF28を備えるHIAC Royco Particle Counter、一般的指針として付録1、<789><788>を用いて粒子についてPBS溶液を分析した。全てのサンプルはSVI(≦100mL)についてのUSP<788>限界を通過した。異なる粒子数の合計%(5μm、10μm、25μm):対照:79.8、14.36、0.11;化合物24:81.2、13.1、0.32。
【0249】
(実施例56)
急性全身毒性
PBS(12mg/mL)中の化合物24の単回投与全身注射を5匹のAlbino Swissマウスに与え、72時間にわたって毒性を観察した。約0.1mL/秒の注入速度でマウスに50mL/kgを投薬した。死亡率並びに薬理学及び/又は毒物学的影響の兆候についての観察を注射直後、並びに注射4、24、48及び72時間後に行った。試験期間の間、毒性の臨床的兆候は観察されなかった。
【0250】
(実施例57)
二重コーティング
ナイロン12フィルムを選択した化合物で最初に処理し、次いでPTXを含有する化合物でコーティングした。60分間のTween緩衝液中のPTX放出(放出%):化合物1単独:0.7%、化合物11及び化合物1:76%。
【0251】
(実施例58)
薬物シールディング効果及びバルーンカテーテルへの接着の評価
バルーンカテーテルを化合物1(12.5mg化合物1、50mg PTX、1mL THF)又は尿素製剤(16mg尿素、52mg PTX、936μl THF、104μL水)のいずれかでコーティングした。バルーンカテーテルをPBS中で5分間インキュベートした。PTX放出%:化合物1:0.35、尿素:58.02。
【0252】
(実施例59)
薬物放出に対する温度依存性(室温及び37℃でのPTX放出)
化合物1、6、10を適切な溶媒中で50wt%でPTXと混合した。PTX含有溶液をナイロンフィルム上でドロップキャストし、乾燥させた。フィルムを4mL PBS中で室温(RT)及び37℃で1分間インキュベートした。コーティングされた対照フィルムを調製し、4mLの有機溶媒中でストリッピングした。HPLCによりPTX放出を測定した。化合物1、6、及び10についてのRT及び37℃でのPTX放出:それぞれ4ng及び417ng、39ng及び543ng、59ng及び188ng。
【0253】
(実施例60)
化合物24+PTXの溶媒を含まない系
いくつかの化合物を種々の溶媒を用いて以前の実施例においてPTXと組み合わせた。化合物24もまた、これらの方法を用いてPTXと組み合わせ、及び溶媒を含まない系中で組み合わせた。化合物24(75mg)を60℃フローオーブン中で加温し、PTX(3mg)に添加し、混合した。室温で24時間後、相分離は肉眼で又は顕微鏡で見られなかった。
【0254】
他の実施形態
本明細書中に挙げられている全ての刊行物、特許明細書及び特許出願明細書は、各々独立の刊行物又は特許文出願が具体的に且つ個々に参照により組み入れると記載されているのと同程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0255】
本発明をその具体的実施形態に関連して記載してきたが、さらに修飾することができ、本出願は本発明が属する業界で公知又は一般的なプラクティスの範囲に入り、上記されており、特許請求の範囲に入る必須要件に適用され得る本発明の開示から逸脱するものを含めて通常本発明の原則に従って本発明の変化、使用又は改変を含むと意図されると理解される。
【0256】
他の実施形態は特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(XV)の組成物:
【化1】

(式中、
m及びnは、両方とも0であるか、又はm及びnは、両方とも1であり、
各々のA及びA2は、50〜3,500Daの間の分子量を有する三官能性モノマーであり、
各々のL及びLAは、独立して、リンカーであり、
各々のRX1A、RX1B、RX2A、及びRX2Bは、独立して、200〜3,500Daの間の分子量を有する水不溶性セグメントであり、
RY1は、100〜3,500Daの間の分子量を有する非ハロゲン化有機セグメントであり、
m及びnが、両方とも1である場合、RZ1及びRZ2の各々は、独立して、50〜3500Daの間の分子量を有する二官能性水不溶性セグメントであるか、又は
m及びnが、両方とも0である場合、RZ1及びRZ2の各々は、独立して、200〜3,500Daの間の分子量を有する水不溶性セグメントである)。
【請求項2】
前記組成物が、以下の式(XV-A)
【化2】

により表され、
Aは、50〜3500Daの間の分子量を有する三官能性モノマーであり、
各々のLは、独立して、リンカーであり、
RX1及びRX2は、各々独立して、200〜3,500Daの間の分子量を有する有機ハロゲン化物セグメントであり、
RY1は、100〜3,500Daの間の分子量を有する非ハロゲン化有機セグメントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、以下の式(XV-B):
【化3】

(式中、
各々のA及びA2は、50〜3500Daの間の分子量を有する三官能性モノマーであり、
各々のL及びLAは、独立して、リンカーであり、
各々のRX1A、RX1B、RX2A及びRX2Bは、各々独立して、200〜3,500Daの間の分子量を有する水不溶性セグメントであり、
RY1は、100〜3,500Daの間の分子量を有する非ハロゲン化有機セグメントであり、
各々のRZ1は、独立して、50〜3500Daの間の分子量を有する二官能性水不溶性セグメントである)により表される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
RZ1が、フッ素化ジオールである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
Aが、トリオールを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
Aが、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン(TME)、トリメシン酸(TMA)、又はトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
RY1が、直鎖又は分枝ポリエチレングリコール、両性イオン、又はポリビニルピロリドンである、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
RZ1及びRZ2が、各々独立して、ポリフルオロ有機基であるか、又はRX1A、RX1B、RX2A、RX2Bの各々は、各々独立して、ポリフルオロ有機基である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
RZ1及びRZ2が、各々独立して、ポリシロキサン基であるか、又はRX1A、RX1B、RX2A、RX2Bの各々は、各々独立して、ポリシロキサン基である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
RZ1及びRZ2が、各々独立して、ポリオレフィン基であるか、又はRX1A、RX1B、RX2A、RX2Bの各々は、各々独立して、ポリオレフィン基である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、以下の式
【化4】

(式中、
FTは、ポリフルオロ有機基であり、
Lは、リンカーであり、
X1は、H、CH3、又はCH2CH3であり、
X2は、H、CH3、又はCH2CH3であり、
nは、5〜50の整数である)
により表される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記リンカーが、式(XVI):
G1-(Z1)o-(Y1)u-(Z2)s-(R10)-(Z3)t-(Y2)v-(Z4)p-G2 (XVI)
(式中、
G1は、前記ポリフルオロ有機基と前記リンカーとの間の結合であり、
G2は、前記リンカーと酸素原子との間の結合であり、
Z1、Z2、Z3、及びZ4は、各々独立して、O、S、及びNR11から選択され、
R11は、水素又はC1〜10アルキル基であり、
Y1及びY2は、各々独立して、カルボニル、チオカルボニル、スルホニル、又はホスホリルから選択され、
o、p、s、t、u及びvは、各々独立して、0又は1であり、
R10は、置換又は非置換C1〜10アルキル、1〜10個の原子のヘテロアルキル、C2〜10アルケン、C2〜10アルキン、C5〜10アリール、3〜10個の原子の環状系、-(CH2CH2O)qCH2CH2-(ここで、qは1〜10の整数である)、又はG1-(Z1)o-(Y1)u-(Z2)s-と-(Z3)t-(Y2)v-(Z4)p-G2とを連結する化学結合である)
により表される、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、式(XVII):
【化5】

(式中、
FTは、ポリフルオロ有機基であり、
L2は、置換又は非置換C1〜10アルキル、1〜10個の原子のヘテロアルキル、C2〜10アルケン、C2〜10アルキン、C5〜10アリール、3〜10個の原子の環状系、-(CH2CH2O)qCH2CH2-(ここで、qは1〜10の整数である)であり、
X1は、H、CH3、又はCH2CH3であり、
X2は、H、CH3、又はCH2CH3であり、
nは、5〜50の整数である)
により表される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリフルオロ有機基が、100〜1,500Daの間の分子量を有するポリフルオロアルキルである、請求項8又は11〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリフルオロ有機基が、一般式CF3(CF2)rCH2CH2-又はCF3(CF2)s(CH2CH2O)x-(式中、rは2〜20の整数であり、xは1〜10の整数であり、sは1〜20の整数である)のラジカルである、請求項8又は11〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリフルオロ有機基が、一般式CHmF(3〜m)(CF2)rCH2CH2-又はCHmF(3〜m)(CF2)s(CH2CH2O)x-(式中、mは0、1、2又は3であり、xは1〜10の間の整数であり、rは2〜20の間の整数であり、sは1〜20の間の整数である)のラジカルである、請求項8又は11〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリフルオロ有機基が、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、(CF3)(CF2)7CH2CH2O-、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、CHF2(CF2)3CH2O-、及び(CF3)(CF2)2CH2O-、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-デカノール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノール、1H,1H,5H-パーフルオロ-1-ペンタノール及び1H,1H,パーフルオロ-1-ブタノール、並びにそれらの混合物から選択される、請求項8又は11〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
(i)請求項1〜17のいずれかに記載の組成物と、(ii)薬物との混合物を含む、組成物。
【請求項19】
前記薬物が、疎水性薬物である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記疎水性薬物が、抗増殖剤及びラパマイシンマクロライドから選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記疎水性薬物が、メトトレキサート、トリメトレキサート、ゲムシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビンシン、ブレオマイシン、及びタモキシフェンから選択される抗増殖剤である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記疎水性薬物が、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス、及びABT-578から選択されるラパマイシンマクロライドである、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記疎水性薬物が、パクリタキセルである、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
(i):(ii)が、20:1〜1:20の比である、請求項18〜23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
水をさらに含む、請求項1〜24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、水分散液である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記水分散液が、単相又は2相分散液である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、固体分散液である、請求項1〜24のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
全身注射に適している、請求項1〜28のいずれかに記載の組成物。
【請求項30】
液剤、錠剤、カプセル剤、粉剤、注射剤、及び坐剤の形態である、請求項1〜29のいずれかに記載の組成物。
【請求項31】
疎水性薬物の溶解度が、増加する、請求項1〜30のいずれかに記載の組成物。
【請求項32】
生理活性物質を哺乳動物組織の組織表面に送達する方法であって、前記方法は、前記表面を、(i)オリゴフッ素化オリゴマーと(ii)生理活性物質とを含む自己集合コーティングと接触させるステップを含み、前記自己集合コーティングは、前記接触させるステップの後、埋込医療デバイスの非存在下で前記組織表面上に存在し、前記生理活性物質を前記組織表面に放出する、方法。
【請求項33】
生理活性物質を哺乳動物組織の組織表面に送達する方法であって、前記方法は、前記表面を、自己集合コーティングでコーティングされた一時的医療デバイスと接触させるステップを含み、前記自己集合コーティングは、(i)オリゴフッ素化オリゴマーと(ii)生理活性物質とを含み、前記一時的医療デバイスは、前記接触させるステップの後、前記生理活性物質を前記組織表面に放出する、方法。
【請求項34】
前記一時的医療デバイスが、前記自己集合コーティングを破壊でき、前記破壊の後、前記生理活性物質を前記組織表面に放出する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記一時的医療デバイスが、変形可能な一時的医療デバイスであって、変形した構成に展開された後、前記自己集合コーティングを機械的に破壊し、前記生理活性物質を前記組織表面に放出する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記一時的医療デバイスが、エネルギー源を前記自己集合コーティングに向けて、前記エネルギーに応答して前記自己集合コーティングを破壊するように構成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記エネルギーが、超音波、熱、電磁、又は振動エネルギーである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記一時的医療デバイスに前記自己集合コーティングを固体析出、噴霧コーティング、プリンティング、又は浸漬コーティングすることにより、前記自己集合コーティングが、前記一時的医療デバイスの表面に適用される、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記デバイスが、第1にオリゴフッ素化オリゴマーでコーティングされ、第2に前記生理活性物質でコーティングされる2ステップアプローチにおいて、前記自己集合コーティングが前記デバイスの表面に適用される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記自己集合コーティングのオリゴフッ素化オリゴマーが、前記一時的医療デバイス上に自己集合層を形成する、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記コーティングが、0.01〜250ミクロンの厚さを有する、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記生理活性物質の5〜55%(w/w)が、前記一時的医療デバイスから前記哺乳動物組織に送達される、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記組織表面が、血管内にあり、前記自己集合コーティングが、一時的医療デバイスの表面をコーティングし、前記生理活性物質の25〜85%(w/w)が、前記組織表面に送達される前に前記医療デバイス上に保持される、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記一時的医療デバイスが、それ自体の上で折り畳まれ、折り畳まれた構成から折り畳まれていない構成に前記一時的医療デバイスが展開した後に、前記生理活性物質の25〜85%(w/w)が、前記医療デバイス上に保持される、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記組織表面が、前記哺乳動物組織の管腔系である、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記管腔系が、呼吸器系、泌尿器系、生殖器系、神経系又は消化器系内の血管、静脈グラフト、合成血管、又は内腔である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記自己集合コーティングが、前記哺乳動物組織の管腔系内に挿入され、伸長した構成に展開される、バルーンカテーテルの表面に適用されて、前記生理活性物質を前記バルーンカテーテルの前記表面から前記管腔系の組織表面に移動させる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記自己集合コーティングのオリゴフッ素化オリゴマーの成分が、再吸収可能である、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記自己集合コーティングのオリゴフッ素化オリゴマーが、再吸収可能ではない、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記自己集合コーティングが、1kDa〜60kDaの分子量を有する成分からなる、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記オリゴフッ素化オリゴマーが、1kDa〜30kDaの理論的分子量を有する、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記オリゴフッ素化オリゴマーが、ハードセグメント、ソフトセグメント、及びポリフルオロ有機基を含み、前記オリゴフッ素化オリゴマーが、5〜80%(w/w)の前記ハードセグメント、10〜90%(w/w)の前記ソフトセグメント、及び5〜80%(w/w)の前記ポリフルオロ有機基を含む、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記生理活性物質が、前記自己集合コーティング全体にわたって均一に分配されている、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記自己集合コーティングが、1〜30%(w/w)のフッ素原子を含む、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記自己集合コーティングが、0.1〜50%(w/w)の生理活性物質を含む、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記自己集合コーティングが、20:1〜1:20のモル比のオリゴフッ素化オリゴマー:生理活性物質を含む、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記自己集合コーティングが、-80〜40℃のガラス転移を有する、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記自己集合コーティングが、1.0〜200gの粘着度を有する、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記自己集合コーティングが、0.04〜130cpsの粘度を有する、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記自己集合コーティングが、20〜120°の表面の接触角ヒステリシスを有する、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記コーティング内の前記生理活性物質が、1%〜99%のリン酸緩衝生理食塩水中の解離定数を有する、請求項32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記生理活性物質が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド、鎮痛剤、麻酔剤、血管新生阻害剤、抗血栓剤、血管作用剤、抗凝固剤、免疫調製剤、細胞毒性剤、抗ウイルス剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、ビタミン、脂質、及びそれらのプロドラッグから選択される、請求項32〜61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記生理活性物質が、抗増殖剤及びラパマイシンマクロライドから選択され、前記組織表面が血管壁である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記生理活性物質が、メトトレキサート、トリメトレキサート、ゲムシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビンシン、ブレオマイシン、及びタモキシフェンから選択される抗増殖剤である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記抗増殖剤が、パクリタキセルである、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記生理活性物質が、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス、及びABT-578から選択されるラパマイシンマクロライドである、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記自己集合コーティングが、排出可能である、請求項32〜66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
前記哺乳動物組織が、対象内に存在する、請求項32〜66のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
前記自己集合コーティングが、請求項1〜31のいずれかに記載の組成物を含む、請求項32〜66のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
表面上に堆積された自己集合コーティングを有する表面を有する一時的医療デバイスであって、前記自己集合コーティングは、(i)オリゴフッ素化オリゴマーと(ii)生理活性物質とを含み、前記一時的医療デバイスは、エネルギー生成要素を備え、前記エネルギー生成要素は、活動化すると、前記自己集合コーティングを破壊することができる、一時的医療デバイス。
【請求項71】
前記エネルギー生成要素が、超音波、熱、電磁、又は振動エネルギーを生成する、請求項70に記載の一時的医療デバイス。
【請求項72】
表面上に堆積された自己集合コーティングを有する表面を有する一時的医療デバイスであって、前記自己集合コーティングは、(i)オリゴフッ素化オリゴマーと(ii)生理活性物質とを含み、前記一時的医療デバイスは、変形可能な一時的医療デバイスであり、変形した構成に展開された後、前記自己集合コーティングを機械的に破壊する、一時的医療デバイス。
【請求項73】
前記変形可能な一時的医療デバイスが、バルーンカテーテルである、請求項72に記載の一時的医療デバイス。
【請求項74】
前記一時的医療デバイスの表面上の前記自己集合コーティングが、0.01〜250ミクロンの厚さを有する、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項75】
前記自己集合コーティングが、1kDa〜60kDaの分子量を有する成分からなる、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項76】
前記オリゴフッ素化オリゴマーが、1kDa〜30kDaの理論的分子量を有する、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項77】
前記オリゴフッ素化オリゴマーが、ハードセグメント、ソフトセグメント、及びポリフルオロ有機基を含み、前記オリゴフッ素化オリゴマーが、5〜80%(w/w)の前記ハードセグメント、10〜90%(w/w)の前記ソフトセグメント、及び5〜80%(w/w)の前記ポリフルオロ有機基を含む、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項78】
前記生理活性物質が、前記自己集合コーティング全体にわたって均一に分配される、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項79】
前記生理活性物質が、前記堆積方法によって前記自己集合コーティング内に組み込まれる、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項80】
前記自己集合コーティングが、1〜30%(w/w)のフッ素原子を含む、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項81】
前記自己集合コーティングが、0.5〜50%(w/w)の生理活性物質を含む、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項82】
前記自己集合コーティングが、20:1〜1:20のモル比のオリゴフッ素化オリゴマー:生理活性物質を含む、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項83】
前記自己集合コーティングが、-80〜40℃のガラス転移を有する、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項84】
前記自己集合コーティングが、1.0〜200gの粘着度を有する、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項85】
前記自己集合コーティングが、0.04〜130cpsの粘度を有する、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項86】
前記自己集合コーティングが、20〜120°の表面の接触角ヒステリシスを有する、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項87】
前記生理活性物質が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド、鎮痛剤、麻酔剤、血管新生阻害剤、抗血栓剤、血管作用剤、抗凝固剤、免疫調製剤、細胞毒性剤、抗ウイルス剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、ビタミン、脂質、及びそれらのプロドラッグから選択される、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項88】
前記生理活性物質が、抗増殖剤及びラパマイシンマクロライドから選択される、請求項87に記載の一時的医療デバイス。
【請求項89】
前記生理活性物質が、メトトレキサート、トリメトレキサート、ゲムシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビンシン、ブレオマイシン、及びタモキシフェンから選択される抗増殖剤である、請求項88に記載の一時的医療デバイス。
【請求項90】
前記抗増殖剤が、パクリタキセルである、請求項89に記載の一時的医療デバイス。
【請求項91】
前記生理活性物質が、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス、及びABT-578から選択されるラパマイシンマクロライドである、請求項88に記載の一時的医療デバイス。
【請求項92】
前記自己集合コーティングが、排出可能である、請求項70〜73のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項93】
前記自己集合コーティングが、請求項1〜31のいずれかに記載の組成物を含む、請求項70〜92のいずれかに記載の一時的医療デバイス。
【請求項94】
生理活性物質を血管内の部位に送達する方法であって、請求項70〜93のいずれかに記載の一時的医療デバイスを前記血管内に挿入するステップと、前記一時的医療デバイスを前記部位付近に配置するステップと、前記一時的医療デバイス上のコーティングを破壊して、前記生理活性物質を前記部位に送達するステップとを含む、方法。
【請求項95】
血管内の部位における再狭窄を阻害する方法であって、前記方法は、請求項87又は88に記載の一時的医療デバイスを前記血管内に挿入するステップと、前記エネルギー生成要素を活動化するステップとを含み、前記生理活性物質が、抗増殖剤及びラパマイシンマクロライドから選択される、方法。
【請求項96】
血管内の部位における再狭窄を阻害する方法であって、前記方法は、請求項87又は88に記載の変形可能な一時的医療デバイスを前記血管内に挿入するステップと、前記変形可能な一時的医療デバイスを変形した構成に展開するステップとを含み、前記生理活性物質が、抗増殖剤及びラパマイシンマクロライドから選択される、方法。
【請求項97】
前記血管が、分岐血管である、請求項94〜96のいずれかに記載の方法。
【請求項98】
前記変形可能な一時的医療デバイスが、カテーテルバルーンである、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
疾患部位にステントを配置するステップをさらに含む、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記ステントが、前記カテーテルバルーンの展開前に配置される、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記ステントが、前記カテーテルバルーンの展開後に配置される、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記カテーテルバルーンが、ステント内再狭窄の治療のために展開される、請求項99に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−514278(P2013−514278A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543429(P2012−543429)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/CA2010/002036
【国際公開番号】WO2011/072398
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508215131)インターフェース バイオロジクス,インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】