自己集合性ワクチンを使用する免疫療法
本発明は、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を含む自己集合性医薬組成物(このビオチン結合タンパク質は、4個のビオチン化成分と非共有結合させられ、この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つは同一ではない。)を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、米国仮出願第61/046,195号(2008年4月18日提出)(その全体的内容は参照により本明細書中に明確に組み込まれる。)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンによる免疫付与は、今も疾患及び感染の脅威に対する防御の要である。ワクチン開発における重要な問題点は、ワクチン又は抗毒素を具体的な脅威に迅速に適合させることである。現在のワクチン開発ストラテジーは、感染又は疾患の撲滅を成功させるために標的とすることができる抗原の同定及び特性評価に依存する。現在のワクチン開発ストラテジーは、時間及び労働集約的であり、脅威が出現しないとこの開発ストラテジーを開始できない。このようなストラテジーはまた、標的抗原が個体間で変動する疾患を治療するための個人用ワクチンを作製するためには実際的でない。従って、最新のワクチン開発ストラテジーは、新しい重大な脅威が現れた場合には不十分であり、新しい重大な脅威に対して、このような脅威が含有され得る前に標的抗原を同定し特性評価するための十分な時間をとることはできない。現在のワクチン開発ストラテジーはまた、一般集団に対する個人用ワクチンを作製するためにも不十分である。
【0003】
このように、個人用ワクチンを作製するための、及び急に現れ、急速に作用し及び/又は感染性が強い重大な脅威となるものを含有するための、技術プラットフォームが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある態様において、本発明は、関心のある抗原に対する免疫反応を誘導するために対象に投与することができる医薬組成物に関する。ある実施形態において、本組成物は、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を含む。別の実施形態において、本組成物は、ビオチン結合タンパク質に融合させられ、少なくとも1、2、3又は4個のビオチン化成分に非共有結合させられた熱ショックタンパク質を含む。ある一定の実施形態において、本ビオチン化成分は、同じであるか又は異なる分子である。ビオチン化成分の非限定例には、ビオチン化タンパク質、細胞及びウイルスが含まれる。ビオチン化タンパク質の非限定例には、ビオチン化抗原、抗体及び共刺激分子が含まれる。
【0005】
関心のある抗原を発現し示すか又はその一部を提示する対象において、ウイルス又は細胞の確立及び増殖を阻止する、関心のある抗原に対する免疫を生成させるために、予防的に本発明の組成物を使用することができる。このようにして、関心のある抗原を発現する腫瘍又は外来細胞の確立及び増殖の阻止が達成され得る。本明細書中で提供される組成物はまた、さらなるウイルス又は細胞増殖を阻止するために又は関心のある抗原を発現し示すか又は抗原の一部を提示する腫瘍細胞を含め、増殖する対象の細胞を排除するために、以前にウイルスに感染したか又はこのような細胞を保有する対象において治療的に使用することもできる。
【0006】
別の実施形態において、組成物は、本明細書中で提供されるような、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び/又はビオチン化されるべきタンパク質の発現を指示することができる発現ベクターを含む。
【0007】
またさらなる実施形態において、本発明は、熱ショックタンパク質及びこの4個のビオチン化成分の非共有結合性複合体を形成させるために十分に、4個のビオチン化成分と、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を接触させることを含み、この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つが同一ではない、自己集合性医薬組成物を作製するための方法を提供する。本発明はまた、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分を対象に投与することを含む(この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つは同一ではない。)、対象において免疫反応を誘導するための方法も提供する。本発明は、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分を対象に投与することを含む(この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つは同一ではない。)、対象において治療の効力を高めるための方法をさらに提供する。
【0008】
ビオチン化モノクローナル抗体及びビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質の投与は、免疫の有効性及び利用可能なモノクローナル抗体の効力を劇的に促進し得、これは、もしそうでなければ、弱いワクチン免疫原として働く。さらに、関心のある抗原に対する抗体の産生及び細胞毒性T細胞の刺激を刺激し得る免疫刺激性複合体を産生させるためには、特異的な標的抗原に対するモノクローナル抗体又は免疫血清が利用可能であるだけで十分であり得る。最後に、本明細書中に記載の医薬組成物によって、各抗原に特異的なscFv及び又は抗体に対してscFv特異的な熱ショック融合タンパク質を作製する必要がなくなる。
【0009】
このようにして、本発明は、1)未同定の、特徴不明の抗原に対するワクチンの調製;2)個人用ワクチンの調製;3)医薬組成物(例えばワクチン)の迅速な作製(これにより、同様に、このような医薬組成物の作製能力を向上させることが可能になる。);及び4)モノクローナル抗体などの既存の治療薬を「強化する」ことを可能にする、既存の技術を上回る明確な長所を提供する。本明細書中に記載の技術により、様々な異なる抗原、ペプチド又は抗原標的分子(1本鎖抗体の腫瘍抗原特異的モノクローナル抗体を含む。)との、固定化及び強力なアジュバントの自己集合が可能になる。
【0010】
さらなる特性及び長所は「発明を実施するための形態」及び「特許請求の範囲」で記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、pET−45b(+)発現ベクターの改変を示す。A)SfiI制限部位の挿入物の概略図。B)改変pET−45b(+)ベクターの最終的な多重クローニング部位。
【図2】図2は、MTBhsp70へのNotI及びXhoI制限部位の導入を示す。MTBhsp70のN及びC末端に重複するプライマーを用いて、NotI部位及びXhoI部位をPCRにより導入した。得られたPCR産物をレーン1で示す。
【図3】図3は、ゲルの写真で示されるような2つのバンドを生ずるNotI及びXhoIでの増幅MTBhsp70の消化を示す。配列決定分析により、内部NotI及びSfiI部位の存在が証明された。
【図4】図4は、PCRに基づく部位特異的突然変異誘発を用いることによる、NotI及びSfiI部位の除去を示す。所望の突然変異を含有する改変プライマーを用いて、2つの重複PCR産物を作製した。プライマーなしでPCRを行い、その後特異的プライマーを添加することによりこれらを伸長させた。
【図5】図5は、MTBhsp70のN末端でのオボアルブミンペプチド(残基254−264)の導入を示す。発明者らは、オボアルブミンペプチドSIINFEKLをコードする合成リンカーを設計し、SfiI及びNotIで消化した。同様に、発明者らは、SfiI及びNotIでpET−45b(+)MTBhsp70プラスミドを切断した。両成分を結合させ(ライゲーション)、コンピーテント細菌を形質変換するために結合(ライゲーション)産物を使用した。アンピシリン耐性コロニーを採取し、配列決定によりスクリーニングした。
【図6】図6は、Ova257−264−MTBhsp70のN末端領域の部分的配列決定を示す。
【図7】図7は、自己集合性医薬組成物の熱ショックタンパク質融合の構造の概略図である。ビオチン結合タンパク質としてアビジンに個別にそれぞれ融合される、熱ショックタンパク質MTB−HSP−70及びヒトHSP−70を示す。
【図8】図8は、野生型及び単量体アビジンの集合に対するストラテジーを示す。
【図9】図9は、野生型と単量体アビジンとの間のアミノ酸及びヌクレオチド比較を示す。
【図10】図10は、PCRに基づく突然変異誘発により補正される配列エラーを示す。
【図11】図11は、部分的MTBhsp70配列が示される、単量体/野生型アビジン−リンカー−MTBhsp70配列を示す。
【図12】図12は、封入体中で見られるアビジン−リンカー−MTBhsp70タンパク質の再折り畳みを示す。
【図13】図13は、多価自己集合性ワクチンを形成するための、熱ショックタンパク質融合物(MTb HSP70及びアビジンの融合タンパク質として示される。)及び4個のビオチン化成分(ビオチン化ペプチド1−4として示される。)の多価自己集合の概略図である。
【図14】図14は、それぞれマイコバクテリウム・ツベルキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)HSP70及びマイコバクテリウム・ボブス(Mycobacterium bovus)HSP70由来のHSP70の全長タンパク質配列を示す。
【図15】図15は、熱ショック融合タンパク質及びビオチン化成分の自己集合性ワクチンの説明である。熱ショック融合タンパク質はここでHSP−アビジン融合物として示され、ビオチン化成分はビオチン化モノクローナル抗体(ビオチン化mAb)として示される。
【図16】図16は、インターフェロン−γ産生のフローサイトメトリー分析を示す。
【図17】図17は、ビオチンと結合するように集合する場合の、4個の四量体化アビジンメンバーの周囲で四量体として組み立てられた、4個の単量体HSP−アビジン融合物が結合した、MTb HSP70−アビジン融合物の2−D分子モデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
便宜上、本発明のさらなる説明の前に、明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲において使用されるある一定の用語をここで定義する。
【0013】
文脈から別段の明らかな指示がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」には、複数形の対象が含まれる。
【0014】
「投与する(administer)」又は「投与していること(administering)」という用語は、全身性又は局所投与を含む、本発明の医薬組成物の送達の何らかの方法を含む。「非経口」とは、通常、注射による、腸及び局所投与以外の投与方式を意味し、これには、限定されないが、静脈内、筋肉内、病巣内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下(subcutaneous)、皮下(subcuticular)、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内注射、経口、硬膜外、鼻内及び点滴が含まれる。
【0015】
「アミノ酸」という用語は、天然であれ合成であれ、アミノ官能基及び酸性官能基の両方を含み、天然アミノ酸のポリマーに含まれ得る、全ての分子を含むものとする。代表的アミノ酸としては、天然のアミノ酸;その類似体、誘導体及びコンジナー;変異側鎖を有するアミノ酸類似体;及び前出のものの何れかの全ての立体異性体が挙げられる。天然アミノ酸の名称は、本明細書中でIUPAC−IUBの推奨に従い略称する。
【0016】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン又はその誘導体を指し、これらは、特異的な結合能及び免疫グロブリン結合ドメインに対して相同であるか又は相同性が大きい結合ドメインを有するタンパク質を維持する。「抗体」という用語は、全抗体又はその抗原結合断片を包含するものとする。これらのタンパク質は、天然源由来であるか又は部分的もしくは完全に合成により作製され得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。この抗体は、ヒトクラス:IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEの何れかを含む、何らかの種からの何らかの免疫グロブリンクラスのメンバーであり得る。代表的実施形態において、本明細書中に記載の方法及び組成物とともに使用される抗体は、IgGクラスの誘導体である。抗体は、改変又は天然抗体であり得る。
【0017】
「抗体断片」という用語は、全長未満の抗体の何らかの誘導体を指す。代表的実施形態において、この抗体断片は、全長抗体の特異的な結合能の少なくとも重要な部分を保持する。抗体断片の例としては、以下に限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、scFv、Fv、dsFvダイアボディ及びFd断片が挙げられる。この抗体断片は、何らかの手段により産生され得る。例えば、この抗体断片は、無傷抗体の断片化により酵素的又は化学的に作製され得、これは、部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組み換え産生され得るか又は完全にもしくは部分的に合成により作製され得る。この抗体断片は、場合によっては1本鎖抗体断片であり得る。あるいは、この断片は、例えばジスルフィド結合により一緒に連結される複数の鎖を含み得る。この断片はまた、場合によっては多分子複合体でもあり得る。機能的抗体断片は、一般的に、少なくとも約50個のアミノ酸を含み、より一般的には、少なくとも約200個のアミノ酸を含む。
【0018】
「抗原」は、本明細書中に記載の組成物により誘導される免疫反応の標的を指す。抗原は、タンパク質抗原であり得、対象の、ウイルス又は感染細胞、外来細胞もしくは腫瘍細胞の表面で示される完全タンパク質、タンパク質の断片ならびに、タンパク質のプロセシング及び提示の結果、例えば典型的なMHCクラスI又はII経路を通じて、感染細胞、外来細胞又は腫瘍細胞により露呈されるペプチドを含むと理解されたい。このような外来細胞の例としては、細菌、真菌及び原生動物が挙げられる。細菌抗原の例としては、プロテインA(PrA)、プロテインG(PrG)及びプロテインL(PrL)が挙げられる。
【0019】
「抗原結合部位」という用語は、抗原上のエピトープに特異的に結合する抗体の領域を指す。
【0020】
「ビオチン結合タンパク質」という用語は、ビオチンに非共有結合するタンパク質を指す。ビオチン結合タンパク質は、単量体、二量体又は四量体であり得、本明細書中に記載のように、それぞれ1価、2価又は4価の医薬組成物を形成可能であり得る。非限定例としては、抗ビオチン抗体、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンが挙げられる。アビジンは、成熟アビジン又は、NCBI受入番号NP_990651により識別される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%同一である配列を含み得る。ストレプトアビジンは、例えば、NCBI受入番号AAU48617により識別される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%同一である配列を含み得る。「ビオチン結合タンパク質」という用語は、単量体、二量体又は四量体を形成する、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンの野生型及び誘導体を包含するものとする。このような誘導体の例を下記で示し、またLaitinen、O.H.(2007)、「Brave New(strept)avidins in Biotechnology」、Trends in Biotechnology 25(6):269−277及びNordlund、H.R.(2003)、「Introduction of histidine residues into avidin subunit interfaces allows pH−depenndent regulation of quaternary structure and biotin binding」、FEBS Letters 555:449−454(これら両方の内容は参照により本明細書中に明確に組み込まれる。)でも示す。
【0021】
抗原含有ビオチン化成分としてこの文脈で使用される場合、「細胞」という用語は、細胞全体又はその一部を包含するものとするが、ただし、この一部とは、ビオチン化「細胞」を含む医薬組成物が対象に投与される場合、免疫系による認識のために接近可能な表面上の関心のある抗原を含有する。
【0022】
「含む(comprise)」及び「含むこと(comprising)」という用語は、さらなる要素が含まれ得る、包括的なオープンセンスの意味で使用される。
【0023】
「共刺激分子」という用語は、本明細書中で使用される場合、抗原特異的な一次T細胞刺激物の刺激効果を促進するか又は細胞活性化に必要とされる閾値レベルを超えるその活性を惹起する(その結果、ナイーブT細胞の活性化が起こる。)かの何れかが可能であるあらゆる分子を含む。このような共刺激分子は、膜上にある受容体タンパク質であり得る。
【0024】
「有効量」という用語は、所望の結果をもたらすのに十分である医薬組成物の量を指す。医薬組成物の有効量は、1以上の投与で投与され得る。
【0025】
「改変抗体」という用語は、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメイン由来の抗原結合部位を含む少なくとも1つの抗体断片を含み、場合によっては、Igクラス(例えばIgA、IgD、IgE、IgG、IgM及びIgY)の何れかからの抗体の可変及び/又は定常ドメインの全体又は一部を含み得る、組み換え分子を指す。改変抗体の例としては、強化された1本鎖モノクローナル抗体及び強化されたモノクローナル抗体が挙げられる。改変抗体の例は、PCT/US2007/061554にさらに記載されている(その全体の内容が参照により本明細書中に組み込まれる。)。
【0026】
「エピトープ」という用語は、抗体が選択的及び特異的に結合する抗原の領域を指す。モノクローナル抗体は、分子的に定義され得る分子の単一の特異的なエピトープに選択的に結合する。本発明において、多特異性抗体によって複数のエピトープが認識され得る。
【0027】
「融合タンパク質」とは、少なくとも2つの異なるタンパク質からの配列を含むハイブリッドタンパク質を指す。この配列は、同種又は異種生物のタンパク質由来であり得る。様々な実施形態において、この融合タンパク質は、第一のタンパク質に連結された1以上のアミノ酸配列を含み得る。複数のアミノ酸配列が第一のタンパク質に融合される場合、この融合配列は、同じ配列の複数コピーであり得るか又はあるいは異なるアミノ酸配列であり得る。第一のタンパク質を第二のタンパク質の、N末端、C末端又はN及びC末端に融合させ得る。
【0028】
「Fab断片」という用語は、酵素パパイン(これは、インターH−鎖ジスルフィド結合に対してN末端側でヒンジ領域で切断し、1つの抗体分子から2つのFab断片を生じさせる。)による抗体の切断により作製された抗原結合部位を含む抗体の断片を指す。
【0029】
「F(ab’)2断片」という用語は、酵素ペプシン(これは、インターH−鎖ジスルフィド結合に対してC末端側でヒンジ領域で切断する。)での抗体分子の切断により作製される、2つの抗原結合部位を含有する抗体の断片を指す。
【0030】
「Fc断片」という用語は、その重鎖の定常ドメインを含む抗体の断片を指す。
【0031】
「Fv断片」という用語は、その重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含む抗体の断片を指す。「遺伝子コンストラクト」とは、ポリペプチドに対する「コード配列」を含むか又は生物学的に活性のあるRNA(例えば、アンチセンス、デコイ、リボザイムなど)に転写可能である、ベクター、プラスミド、ウイルスゲノムなどの核酸を指し、細胞に、例えばある一定の実施形態においては哺乳動物細胞に、遺伝子移入され得、そのコンストラクトで遺伝子移入された細胞においてコード配列の発現を引き起こし得る。この遺伝子コンストラクトは、コード配列ならびにイントロン配列、ポリアデニル化部位、複製起点、マーカー遺伝子などに操作可能に連結される1以上の制御エレメントを含み得る。
【0032】
「宿主細胞」は、指定された移入ベクターで形質導入され得る細胞を指す。この細胞は、場合によっては、細胞培養物由来のものなどのインビトロ細胞、生物由来のものなどのエクスビボ細胞及び生物におけるものなどのインビボ細胞から選択される。このような用語が、特定の対象細胞を指すだけでなく、このような細胞の子孫又は潜在的な子孫も指すことを理解されたい。突然変異又は環境的影響の何れかにより続く世代である一定の修飾が起こり得るので、このような子孫は、実際、親細胞と同一ではない場合があるが、これも、本明細書中で使用される場合、この用語の範囲内に含まれる。
【0033】
「免疫原性」という用語は、物質の、免疫反応誘発能を指す。「免疫原性組成物」又は「免疫原」は、免疫反応を誘発する組成物又は物質である。「免疫反応」とは、抗原の存在に対する対象の反応を指し、これには、次のもの:抗体の産生、免疫の発現、抗原に対する過敏性の発現及び耐性の発現のうち少なくとも1つが含まれ得る。
【0034】
「含むこと(including)」という用語は、本明細書中で、「含むが、限定されない」ことを意味するために使用される。「含む」及び「含むが、限定されない」は交換可能に使用される。
【0035】
「リンカー」は、当技術分野で認識されており、熱ショックタンパク質及びビオチン結合タンパク質など、2つの共有結合性部分を連結する分子又は分子の群を指す。このリンカーは、1つの連結分子からなり得るか又は連結分子及びスペーサー分子(特異的な距離により連結分子及び連結される部分を分離するため)を含み得る。
【0036】
「多価抗体」という用語は、複数の抗原認識部位を含む、抗体又は改変抗体を指す。例えば、「2価」抗体は2つの抗原認識部位を有し、一方で「4価」抗体は4個の抗原認識部位を有する。「単一特異性」、「二特異性」、「三特異性」、「四特異性」などという用語は、多価抗体において存在する異なる抗原認識部位特異性の数を指す(抗原認識部位の数ではない。)。例えば、「単一特異性」抗体の抗原認識部位は全て同じエピトープに結合する。「二特異性」抗体は、第一のエピトープに結合する少なくとも1つの抗原認識部位及び第一のエピトープとは異なる第二のエピトープに結合する少なくとも1つの抗原認識部位を有する。「多価単一特異性」抗体は、全て同じエピトープに結合する複数の抗原認識部位を有する。「多価二特異性」抗体は、複数の抗原認識部位を有し、このうちいくつかは第一のエピトープに結合し、いくつかは、第一のエピトープとは異なる第二のエピトープに結合する。
【0037】
「多価」という用語は、本明細書中に記載の自己集合性医薬組成物に関する場合、複数のビオチン化成分に非共有結合する熱ショック融合タンパク質を指す。「2価」という用語は、本明細書中に記載の自己集合性医薬組成物に関する場合、2つのビオチン化成分に非共有結合する熱ショック融合タンパク質を指す。「4価」という用語は、本明細書中に記載の自己集合性医薬組成物に関する場合、4個のビオチン化成分に非共有結合する熱ショック融合タンパク質を指す。多価医薬組成物のビオチン化成分は同一であるか又は異なり得る。
【0038】
「核酸」という用語は、ヌクレオチド、リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドの何れか又はヌクレオチドの何れかのタイプの修飾形態、のポリマー形態を指す。この用語はまた、同等物として、ヌクレオチド類似体から構成されるRNA又はDNAの何れかの類似体及び、記載されている実施形態に適用可能である場合、1本鎖(センス又はアンチセンスなど)及び2本鎖ポリヌクレオチドを含むことも理解されたい。
【0039】
「患者」又は「対象」又は「宿主」は交換可能に使用され、それぞれ、ヒト又は非ヒト動物の何れかを指す。
【0040】
「医薬的に許容可能な」という句は、健全な医学的判断の範囲内で、妥当なリスク対効果比にふさわしい、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又はその他の問題又は合併症がない、ヒト及び動物の組織との接触における使用に適切である医薬組成物を指すために本明細書中で使用される。
【0041】
「医薬的に許容可能な担体」とは、本明細書中で使用される場合、本医薬組成物をある器官又は身体の一部から別の器官又は身体の一部に運搬又は輸送することに関与する、液体又は固形の充填剤、希釈剤、賦形剤又は溶媒封入物質など、医薬的に許容可能な物質、組成物又はビヒクルを意味する。各担体は、処方物のその他の成分と適合し、患者に対して有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。医薬的に許容可能な担体として役立ち得る物質の一部の例として、(1)糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばコーンスターチ及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えばカカオバター及び坐薬用ワックス;(9)油、例えばピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質不含水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;及び(22)製剤処方で使用されるその他の無毒性の適合物質が挙げられる。
【0042】
文脈により明確に指示されない限り、「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、例えば、コード配列によりコードされるようなアミノ酸配列など、遺伝子発現産物を指す場合、本明細書中で交換可能に使用される。「タンパク質」はまた、抗体などの1以上のタンパク質の会合物も指し得る。「タンパク質」は、タンパク質断片も指し得る。タンパク質は、グリコシル化タンパク質などの翻訳後修飾されたタンパク質であり得る。「遺伝子発現産物」は、遺伝子の全体又は一部の転写の結果として産生される分子を意味する。遺伝子産物には、遺伝子から転写されたRNA分子ならびにこのような転写産物から翻訳されたタンパク質が含まれる。
【0043】
タンパク質は、天然の単離タンパク質であり得るか又は組み換え又は化学合成の産物であり得る。「タンパク質断片」という用語は、参照タンパク質それ自身と比較した場合にアミノ酸残基が欠失しているが、参照タンパク質のものと残りのアミノ酸配列が通常は同一であるタンパク質を指す。このような欠失は、参照タンパク質のアミノ末端もしくはカルボキシ末端又はあるいは両方で起こり得る。断片は、一般に、少なくとも約5、6、8又は10アミノ酸長、少なくとも約14アミノ酸長、少なくとも約20、30、40又は50アミノ酸長、少なくとも約75アミノ酸長又は少なくとも約100、150、200、300、500以上のアミノ酸長である。より大きなタンパク質を断片化するために、プロテイナーゼを使用して、又は、タンパク質コードヌクレオチド配列(単独又は別のタンパク質コード核酸配列と融合しているかの何れか)の一部のみの発現など、組み換え法により、断片を得ることができる。様々な実施形態において、断片は、例えば細胞受容体に対する、参照タンパク質の、酵素活性及び/又は相互作用部位を含み得る。別の実施形態において、断片は免疫原性特性を有し得る。このタンパク質は、様々な公知の技術により特定の遺伝子座に導入される突然変異を含み得、これは、悪影響を与えないが、本明細書中で提供される方法でのそれらの使用を促進し得る。断片は、参照タンパク質の生物学的活性の1以上を保持し得る。
【0044】
「自己集合性」という用語は、本明細書中で使用される場合、本明細書中に記載のような、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質の、ビオチン化成分との非共有結合性複合体形成能を指す。このような能力は、ビオチン結合タンパク質とのビオチンの非共有結合により付与される。
【0045】
「1本鎖可変断片」又は「scFv」という用語は、重鎖ドメイン及び軽鎖ドメインが連結されるFv断片を指す。1以上のscFv断片は、1以上の抗原認識部位を有する抗体コンストラクトを形成するために、その他の抗体断片(重鎖又は軽鎖の定常ドメインなど)に連結され得る。
【0046】
対象における疾患を「治療する」又は疾患に罹患している対象を「治療する」とは、対象に、医薬品治療、例えば、その疾患の程度が軽減されるか又は予防されるよう、薬物の投与を行うことを指す。治療は、(以下に限定されないが)、医薬組成物などの組成物の投与を含み、予防的に行い得るか、又は病理学的事象の発生後に行い得る。
【0047】
「ワクチン」という用語は、関心のある抗原に対する免疫反応を誘発する医薬組成物を指す。このワクチンはまた、さらに対象に防御的免疫も付与し得る。
【0048】
「ベクター」とは、それが連結されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。好ましいベクターのあるタイプは、エピソーム、即ち、染色体外複製可能な核酸である。好ましいベクターは、それらが連結される核酸の自律的複製及び/又は発現の可能なものである。それらが操作可能に連結される遺伝子の発現を指示することが可能なベクターは、本明細書中で「発現ベクター」と呼ばれる。一般に、組み換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合、一般に、ベクター形態において、染色体に結合されない、環状の2本鎖DNAループを指す「プラスミド」の形態である。本明細書において、プラスミドは、ベクターの最も一般的に使用される形態であるため、「プラスミド」及び「ベクター」は、交換可能に使用される。しかし、当業者にとって当然のことながら、本発明は、同等の機能を果たし、その後当技術分野で知られるようになる、発現ベクターのこのようなその他の形態を含むものとする。
【0049】
「ウイルス」という用語は、抗原含有ビオチン化成分として文脈中で使用される場合、ビオチン化「ウイルス」を含む医薬組成物が対象に投与されるとき、その部分が、免疫系による認識のために接近可能な表面上に関心のある抗原を含有するならば、ウイルス粒子全体又はその一部を包含するものとする。
【0050】
一般的事項
本発明は、対象に投与される際に、非常に強力な免疫反応を生じさせるために複数の免疫成分を組み合わせる新規ワクチンプラットフォームを特色とする。新しいワクチンの迅速な組み立てのために複数のサブユニットを連結させる組成物及び方法も提供される。
【0051】
本発明は、少なくとも部分的に、非共有結合での抗体又は抗原のビオチン化成分との熱ショックタンパク質融合の結果、細胞性、特に細胞介在性細胞溶解、非共有結合タンパク質抗原に対する反応(この反応は抗原を提示する細胞を殺滅し得る。)を強く刺激する組成物が得られるという発見に基づく。
【0052】
熱ショックタンパク質融合物
「熱ショックタンパク質」は、「熱ショック遺伝子」又はストレス遺伝子によりコードされ、(遺伝子を含有する)生物の、ストレス因子、例えば、熱ショック、低酸素、グルコース欠乏、重金属塩、エネルギー代謝及び電子伝達の阻害剤及びタンパク質変性因子に対するか又はある種のベンゾキノンアンサマイシンに対する接触又は曝露に起因して、活性化又は検出可能に上方制御される遺伝子を指す。Nover、L.、Heat Shock Response、CRC Press、Inc.、Broca Raton、FL(1991)。「熱ショックタンパク質」にはまた、公知のストレス遺伝子ファミリー内の遺伝子によりコードされる相同タンパク質も、このような相同遺伝子がそれ自身ストレス因子により誘発されないとしても、含まれる。
【0053】
「熱ショックタンパク質融合物」は、ビオチン結合タンパク質に連結される熱ショックタンパク質を指す。例えば、熱ショックタンパク質は、熱ショックタンパク質融合物を作製するために、ビオチン結合タンパク質にC又はN末端で連結され得る。本明細書中で提供されるビオチン化成分と組み合わせて投与される場合、熱ショックタンパク質融合物は、関心のある抗原に対するCD8細胞毒性T細胞(CTL)反応を含む、液性及び/又は細胞性免疫反応を刺激又は促進することができる。
【0054】
例えば、限定ではないが、本発明に従い使用され得る熱ショックタンパク質には、BiP(grp78とも呼ばれる。)、Hsp10、Hsp20−30、Hsp60、hsp70、hsc70、gp96(grp94)、hsp60、hsp40及びHsp100−200、Hsp100、Hsp90及びそのファミリーのメンバーが含まれる。特に好ましい熱ショックタンパク質は、下記で例示されるように、BiP、gp96及びhsp70である。熱ショックタンパク質の特定の群には、Hsp90、Hsp70、Hsp60、Hsp20−30、さらに好ましくはHsp70及びHsp60が含まれる。hsp70ファミリーのメンバーが最も好ましい。
【0055】
Hsp10の例には、GroES及びCpn10が含まれる。Hsp10は、通常、E.コリで及び真核細胞のミトコンドリア及び葉緑体で見られる。Hsp10は、Hsp60オリゴマーと会合する7員環を形成する。Hsp10はまた、タンパク質フォールディングにも関与する。
【0056】
Hsp60の例には、マイコバクテリウム由来のHsp65が含まれる。細菌Hsp60は、一般に、E.コリ由来のGroELなど、GroELという名称でも知られる。Hsp60は、大型のホモオリゴマー複合体を形成し、タンパク質のフォールディングにおいて重要な役割を果たすと思われる。Hsp60相同体は、真核細胞ミトコンドリア及び葉緑体に存在する。
【0057】
Hsp70の例には、哺乳動物細胞由来のHsp72及びHsc73、細菌、特にマイコバクテリウム、例えば、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・ツベルキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)及びマイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)(カルメットゲラン桿菌など;本明細書ではHsp71と呼ぶ。)由来のDnaK、エスケリキア・コリ(大腸菌、Escherichia coli)、酵母及びその他の原核生物由来のDnaK及びBip及びGrp78が含まれる。Hsp70は、ATPのならびに、フォールディングされていないタンパク質に特異的に結合することが可能であり、それにより、タンパク質フォールディング及び解除ならびにタンパク質複合体の集合及び分散に関与し得る。好ましい実施形態において、熱ショックタンパク質は、MTb HSP70であるか又はそれ由来である。マイコバクテリウム・ツベルキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)HSP70及びマイコバクテリウム・ボブス(Mycobacterium bovus)HSP70の全長タンパク質配列は、それぞれ配列番号1及び2として図2で示す。本明細書中に記載の方法と組み合わせて使用されるべき熱ショックタンパク質融合物は、配列番号1又は2と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%同一である配列を含み得る。
【0058】
Hsp90の例には、大腸菌のHtpG、酵母のHsp83及びHsc83及びヒトのHsp90アルファ、Hsp90ベータ及びGrp94が含まれる。Hsp90は、タンパク質群に結合するが、そのタンパク質は、通常、細胞の調節分子、例えば、ステロイドホルモン受容体(例えば、グルココルチコイド、エストロゲン、プロゲステロン及びテストステロン受容体)、転写因子及びシグナル伝達機構に関与するタンパク質キナーゼである。Hsp90タンパク質はまた、その他の熱ショックタンパク質を含む、大型で、豊富なタンパク質複合体の形成にも関与する。
【0059】
Hsp100の例としては、哺乳動物Hsp110、酵母Hsp104、ClpA、ClpB、ClpC、ClpX及びClpYが挙げられる。酵母Hsp104及びE.コリClpAは、六量体粒子を形成し、E.コリClpBは四量体粒子で、その集合にはアデニンヌクレオチド結合が必要であると思われる。Clpプロテアーゼは、ClpP(タンパク質分解サブユニット)及びClpAから構成される750kDaヘテロオリゴマーを提供する。ClpB−Yは、ClpAと構造的に関連するが、ClpAとは異なり、それらはClpPと複合体を形成しないと思われる。
【0060】
Hsp100−200の例には、(グルコース制御タンパク質に対する)Grp170が含まれる。Grp170は、ER内腔、プレゴルジ区画の中に存在し、免疫グロブリンのフォールディング及び集合に関与し得る。
【0061】
本発明に従い、熱ショックタンパク質の天然又は組み換え由来突然変異が使用され得る。例えば、限定ではないが、本発明は、細胞からのそれらの分泌を促進するように突然変異が行われた熱ショックタンパク質の使用を提供する(例えば、KDEL(配列番号266)又はその相同体など、小胞体回復を促進するエレメントの突然変異又は欠失がある;このような突然変異は、参照により本明細書中に組み込まれるPCT出願第PCT/US96/13233(WO97/06685)に記載されている。)。
【0062】
特定の実施形態において、本発明の熱ショックタンパク質は、腸内細菌、マイコバクテリウム(特に、M.レプレ、M.ツベルキュロシス、M.ヴァケエ、M.スメグマチス及びM.ボビス)、E.コリ、酵母、ショウジョウバエ、脊椎動物、鳥類、ニワトリ、哺乳動物、ラット、マウス、霊長類又はヒトから得られる。
【0063】
本明細書中で提供される医薬組成物は、酸化又は還元により修飾される個々のアミノ酸残基を有し得る。さらに、様々な置換、欠失又は付加は、アミノ酸又は核酸配列に対して為され得、その全体的効果は、熱ショックタンパク質の生物学的活性の向上を維持するか又はさらにそれを促進することである。コード縮重ゆえに、例えば、同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列のかなりの変異が存在し得る。「熱ショックタンパク質」という用語は、熱ショックタンパク質から得られる熱ショックタンパク質の断片を包含するものとし、提供されるこのような断片は、関心のある抗原に対する免疫反応を促進することに関与するエピトープを含む。熱ショックタンパク質の断片は、プロテイナーゼを用いて又はストレスタンパク質コードヌクレオチド配列の一部のみの発現(単独又は別のタンパク質コード核酸配列と融合させて、の何れか)などの組み換え法により、得られ得る。本熱ショックタンパク質は、免疫系におけるその影響を促進するための様々な公知の技術により、特定の遺伝子座に導入される突然変異を含み得る。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Drinkwater及びKlinedinst Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3402−3406(1986);Liao及びWise、Gene 88:107−111(1990);Horwitzら、Genome 3:112−117(1989)を参照のこと。
【0064】
特定の実施形態において、例えば、熱ショックタンパク質とビオチン結合タンパク質との間の化学結合を含む熱ショックタンパク質融合において、本発明で使用される熱ショックタンパク質は、単離熱ショックタンパク質であり、これは、熱ショックタンパク質が、それらが産生される宿主細胞から選択され、分離されたことを意味する。ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質の融合物として熱ショック物が組み換え発現されるある実施形態において、本発明で使用される熱ショックタンパク質融合物は、単離熱ショックタンパク質融合物であり、これは、熱ショックタンパク質が、それらが産生される宿主細胞から選択され、分離されたことを意味する。本明細書中に記載のように、及び当技術分野で公知のタンパク質単離の通常の方法を用いて、このような単離を行い得る。Maniatisら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1982);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Deutscher、M.、Guide to Protein Purification Methods Enzymology、vol.182.Academic Press、Inc.、San Diego、CA(1990)。
【0065】
ビオチン化成分
「ビオチン化成分」という用語は、本明細書中で使用される場合、ビオチン化された、タンパク質、細胞又はウイルスを指す。ビオチン化タンパク質の非限定例には、ビオチン化された、抗原、抗体及び共刺激分子が含まれる。このビオチン化成分は、本明細書中に記載のように、熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて投与されるべきものである。
【0066】
i)抗原含有ビオチン化成分
ある実施形態において、このビオチン化成分は、対象由来であり、これは、医薬組成物が投与されるべき者と同一又は異なる者であり得る。例えば、免疫反応が所望されるタンパク質、細胞及び/又はウイルスは、対象から単離され得、場合によっては、インビトロで増幅又はクローニングされ得る。次に、このタンパク質、細胞及び/又はウイルスは、当技術分野で公知の方法を用いてインビトロでビオチン化され得る。次に、タンパク質、細胞及び/又はウイルスが単離された同一の対象に、本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて、このビオチン化成分が投与され得、このようにして、個人用ワクチンの開発が可能になる。あるいは、このビオチン化成分は、タンパク質、細胞及び/又はウイルスが単離された者とは異なる対象に、本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて投与され得る。後者のアプローチによって、一般集団に投与される場合、疾患又は感染因子に対する一般集団用のワクチンの開発が可能になる。
【0067】
これらのアプローチの両者とも、現在の技術を上回る独特の長所を与え、即ち、この成分は、特定の疾患又は感染に対するその相互関連を可能にし、対象からのその単離を可能にする程度まで識別されれば十分である。これは、配列が未知であり得るか又は構造も同定され得ない抗原を標的とするための新規アプローチである。従って、本発明は、既知であるか又は識別されていない、特徴が分からない抗原に対する免疫反応を誘導するための医薬組成物の調製を可能にする。細胞又は抗体などのタンパク質は、例えば、ビオチン化成分が投与されるべき同一宿主由来であるので、個人用ワクチンは、HLA拘束性(HLA restriction)が問題とならないということにおいて、従来のワクチンを上回るさらなる長所を提供する。
【0068】
ワクチンを作製するために熱ショックタンパク質に合成抗原ペプチドを直接連結するかわりに、scFvは、例えば、代わりにビオチンに結合され得、本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合部分と組み合わせて投与され得、このようにして、液性及びCD−8反応の両方を惹起するためにAPCに抗原を提示するための新規融合タンパク質ワクチンを使用する。scFv1は、例えば、結合実験による特徴の分からない抗原へ又は特徴の分かっている抗原へのそれらの結合によって、選択され得る。この例において、scFvは、ビオチン化され、例えば熱ショックタンパク質融合部分と組み合わせて投与されるべきものである。
【0069】
同様に、本明細書中に記載の熱ショック融合タンパク質と組み合わせて投与される場合、ビオチン化タンパク質、細胞及び/又はウイルスが、関心のある抗原に対する免疫反応を標的とするように、何らかのタンパク質、細胞及び/又はウイルスがビオチン化され、本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合部分と組み合わせられて対象に投与され得る。
【0070】
このような細胞の例は、対象から単離された腫瘍細胞であり、これが、ビオチン化され、本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合物と組み合わせられて投与される。この腫瘍細胞は、本発明における対象への導入又は再導入前に、この細胞が、再生せず、投与される対象に対して害を及ぼさないように処理されるべきである。これは、ビオチン化の前又は後に、腫瘍細胞を亜致死線量で放射線照射することにより達成され得る。この腫瘍細胞は、その表面上で抗原を発現し、その独自性は既知であっても又は未知であっても又は特徴が分かっていても又は特徴が分かっていなくてもよい。熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて対象に投与される場合、非共有結合性複合体は、腫瘍抗原に対する免疫反応を誘導する。この結果は、抗原を発現する細胞に対する「キラーT細胞」反応であり、それにより、破壊に対する疾患のある細胞型を標的化する。
【0071】
腫瘍細胞は、本発明の方法により治療されるか又は予防されるべき癌の型の細胞である。このような細胞には、以下に限定されないが、例えば、ヒト肉腫細胞又は癌細胞、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺腫、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、悪性黒色腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫;白血病、例えば、急性リンパ性白血病及び急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤血白血病);慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ性白血病);及び真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症又は重鎖疾患細胞が含まれる。
【0072】
上述のように同じ方式でビオチン化され得、熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて投与され得るその他の細胞には、「キラーT細胞」反応が所望される、対象におけるあらゆる細胞が含まれる。このような細胞の例には、その表面上で抗原を発現するその他の疾患及び/又はウイルス感染細胞が含まれる。腫瘍細胞に対して上述されるように、これらの細胞は、好ましくは、本発明における対象への導入又は再導入前に、それらの細胞が再生しないか又は対象に害を及ぼさないように処置される。これは、ビオチン化の前又は後に、細胞を亜致死線量で放射線照射することにより達成され得る。このような細胞は、非感染性となるように又は、毒素分泌細胞である場合は、毒素をもはや分泌しないように処置され得る。
【0073】
本発明の方法により治療又は予防され得る感染疾患は、感染性因子により引き起こされる。ビオチン化され、本発明と組み合わせて投与され得るこのような感染性因子又はそれ由来の抗原には、以下に限定されないが、ウイルス、細菌、真菌及び原生動物が含まれる。本発明は、細胞内病原体により引き起こされる感染疾患を治療又は予防することに限定されないが、同様に細胞外病原体を含むものとする。多くの医学関連微生物は文献で詳述されていおり、例えば、C.G.A Thomas、Medical Microbiology、Bailliere Tindall、Great Britain 1983(その内容全体が参照により本明細書中に組み込まれる。)を参照のこと。
【0074】
ある実施形態において、抗原又はウイルス抗原を発現するウイルスは、上述のものと同様にして、ビオチン化され、熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて投与され得る。
【0075】
ヒト及び非ヒト脊椎動物両方の感染性ウイルスには、抗原を発現する、レトロウイルス、RNAウイルス及びDNAウイルスが含まれる。ウイルスの例としては、以下に限定されないが:レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、HIV−1など(HTLV−III、LAV又はHTLV−III/LAV又はHIV−IIIとも呼ばれる。);及びその他の分離株、HIV−LPなど;ピコマウイルス科(Picomaviridae)(例えばポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(例えば胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えばウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラウイルス(Flaviridae)科(例えばデング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えばコロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えばエボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えばパラインフルエンザウイルス、おたふくかぜウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器多核体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(例えばハンタウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス及びナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えばレオウイルス、オルビウイルス及びロタウイルス);ビマウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(殆どのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1及び2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);及びイリドウイルス科(例えばアフリカブタコレラウイルス);及び未分類ウイルス(例えば海綿状脳症の原因物質、デルタ肝炎の原因物質(B型肝炎ウイルスの欠陥ウイルスと思われる。)、非A非B型肝炎の原因物質(クラス1=内部感染(internally transmitted);クラス2=非経口感染(即ちC型肝炎);ノーウォーク及び関連ウイルス及びアストロウイルス)が含まれる。
【0076】
もくろまれるレトロウイルスには、単純型レトロウイルス及び複雑型レトロウイルスの両方が含まれる。単純型レトロウイルスには、B型レトロウイルス、C型レトロウイルス及びD型レトロウイルスのサブグループが含まれる。B型レトロウイルスの例は、マウス乳癌ウイルス(MMTV)である。C型レトロウイルスには、サブグループC型A群(ラウス肉腫ウイルス(RSV)、トリ白血病ウイルス(ALV)及びトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)が含まれる。)及びC型B群(マウス白血病ウイルス(MLV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、マウス肉腫ウイルス(MSV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、脾臓壊死ウイルス(SNV)、細網内皮症ウイルス(RV)及びサル肉腫ウイルス(SSV)が含まれる。)が含まれる。D型レトロウイルスには、アカゲザルウイルス(MPMV)及びサルレトロウイルス1型(SV−I)が含まれる。複雑型レトロウイルスには、レンチウイルス、T細胞白血病ウイルス及び泡沫状ウイルスのサブグループが含まれる。レンチウイルスには、HIV−Iだけでなく、HIV−2、SIV、ビスナウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)及びウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)も含まれる。T細胞白血病ウイルスには、HTLV−I、HTLV−II、サルT細胞白血病ウイルス(STLV)及びウシ白血病ウイルス(BLV)が含まれる。泡沫状ウイルスには、ヒト泡沫状ウイルス(HFV)、サル泡沫状ウイルス(SFV)及びウシ泡沫状ウイルス(BFV)が含まれる。
【0077】
脊椎動物における抗原であるRNAウイルスの例には、限定されないが、次のものが含まれる:次のものを含むレオウイルス科のメンバー、オルトレオウイルス属(哺乳動物及びトリレトロウイルス両方の複数の血清型)、オルビウイルス属(ブルータングウイルス、ユーギナンギーウイルス、ケメロボウイルス、アフリカ馬疫ウイルス及びコロラドダニ熱ウイルス)、ロタウイルス属(ヒトロタウイルス、ネブラスカウシ下痢ウイルス、マウスロタウイルス、サルロタウイルス、ウシ又はヒツジロタウイルス、トリロタウイルス);次のものを含むピコマウイルス科、エンテロウイルス属(ポリオウイルス、コクサッキーウイルスA及びB、腸細胞壊死性ヒトオーファン(enteric cytopathic human orphan)(ECHO)ウイルス、A型肝炎ウイルス、サルエンテロウイルス、マウス脳脊髄炎(ME)ウイルス、ネズミポリオウイルス、ウシエンテロウイルス、ブタエンテロウイルス)、カルディオウイルス属(脳心筋炎ウイルス(EMC)、メンゴウイルス)、ライノウイルス属(少なくとも113サブタイプを含むヒトライノウイルス;その他のライノウイルス)、アプトウイルス属(口蹄疫(FMDV));次のものを含むカリシウイルス科、ブタ水疱疹ウイルス、サンミゲルアシカウイルス、ネコピコルナウイルス及びノーウォークウイルス;次のものを含むトガウイルス科、アルファウイルス属(東部ウマ脳炎ウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、チクングンヤウイルス、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス)、フラビウイルス属(蚊媒介性黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、中欧ダニ媒介ウイルス、極東ダニ媒介ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス、オムスク出血熱ウイルス)、ルビウイルス属(風疹ウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス、ブタコレラウイルス、ボーダー病ウイルス);次のものを含むブニヤウイルス科、ブニウイルス属(ブニヤムウェラ及び関連ウイルス、カリフォルニア脳炎群ウイルス)、フレボウイルス属(サシチョウバエ熱シチリア型ウイルス、リフトバレー熱ウイルス)、ナイロウイルス属(クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ナイロビ羊病疾患ウイルス)及びウクウイルス属(ウクニエミ及び関連ウイルス);次のものを含むオルトミクソウイルス科、インフルエンザウイルス属(インフルエンザウイルスA型、多くのヒトサブタイプ);ブタインフルエンザウイルス及びトリ及びウマインフルエンザウイルス;インフルエンザB型(多くのヒトサブタイプ)及びインフルエンザC型(個別の属の可能性あり);次のものを含むパラミクソウイルス科、パラミクソウイルス属(パラインフルエンザウイルス1型、センダイウイルス、血球吸着ウイルス、パラインフルエンザウイルス2型から5型、ニューキャッスル病ウイルス、おたふくかぜウイルス)、モルビリウイルス属(麻疹ウイルス、亜急性硬化性全脳炎脳炎ウイルス、ジステンパーウイルス、牛疫ウイルス)、肺炎ウイルス属(呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸器多核体ウイルス及びマウスの肺炎ウイルス);森林ウイルス、シンドビスウイルス、チクングニヤウイルス、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス)、フラビウイルス属(蚊媒介黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、中欧ダニ媒介ウイルス、極東ダニ媒介ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス、オムスク出血熱ウイルス)、ルビウイルス属(風疹ウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス、ブタコレラウイルス、ボーダー病ウイルス);次のものを含むブニヤウイルス科、ブニウイルス属(ブニヤムウェラ及び関連ウイルス、カリフォルニア脳炎群ウイルス)、フレボウイルス属(サシチョウバエ熱シチリア型ウイルス、リフトバレー熱ウイルス)、ナイロウイルス属(クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ナイロビ羊病疾患ウイルス)及びウクウイルス属(ウクニエミ及び関連ウイルス);次のものを含むオルトミクソウイルス科、インフルエンザウイルス属(インフルエンザウイルスA型、多くのヒトサブタイプ);ブタインフルエンザウイルス及びトリ及びウマインフルエンザウイルス;インフルエンザB型(多くのヒトサブタイプ)及びインフルエンザC型(個別の属の可能性あり);次のものを含むパラミクソウイルス科、パラミクソウイルス属(パラインフルエンザウイルス1型、センダイウイルス、血球吸着ウイルス、パラインフルエンザウイルス2型から5型、ニューキャッスル病ウイルス、おたふくかぜウイルス)、モルビリウイルス属(麻疹ウイルス、亜急性硬化性全脳炎脳炎ウイルス、ジステンパーウイルス、牛疫ウイルス)、肺炎ウイルス属(呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸器多核体ウイルス及びマウスの肺炎ウイルス);次のものを含むラブドウイルス科、ベシクロウイルス属(VSV)、チャンビプラ(ChanBipura)ウイルス、フランダース・ハート・パークウイルス)、リサウイルス属(狂犬病ウイルス)、魚類ラブドウイルス及び2種類の可能性のあるラブドウイルス(マルブルグウイルス及びエボラウイルス);次のものを含むアレナウイルス科、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCM)、タカリベウイルス複合体及びラッサウイルス;次のものを含むコロナウイルス科(Coronoaviridae)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、マウス肝炎ウイルス、ヒト腸コロナウイルス及びネコ伝染性腹膜炎(ネココロナウイルス)。
【0078】
脊椎動物における抗原である実例となるDNAウイルスには、以下に限定されないが、次のものが含まれる:次のものを含むポックスウイルス科、オルトポックスウイルス属(大痘瘡、小痘瘡、サルポックスワクシニア、牛痘、スイギュウポックス、ウサギポックス、エクロトメリア)、レポリポックスウイルス属(粘液腫、線維腫)、トリポックスウイルス属(家禽ポックス、その他のトリポックスウイルス)、カプリポックスウイルス属(ヒツジポックス、ヤギポックス)、スイポックスウイルス属(ブタポックス)、パラポックスウイルス属(伝染性膿胞性皮膚炎ウイルス、偽牛痘、ウシ丘疹性口炎ウイルス);イリドウイルス科(アフリカブタコレラウイルス、カエルウイルス2及び3、魚類のリンホシスチス病ウイルス);次のものを含むヘルペスウイルス科、アルファ−ヘルペスウイルス(単純ヘルペス1型及び2型、水痘帯状疱疹、ウマ流産ウイルス、ウマヘルペスウイルス2型及び3型、仮性狂犬病ウイルス、伝染性ウシ角結膜炎ウイルス、伝染性ウシ鼻気管炎ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス)、β−ヘルペスウイルス(ヒトサイトメガロウイルス及びブタ、サル及びげっ歯類のサイトメガロウイルス);γ−ヘルペスウイルス(エプスタインバーウイルス(EBV)、マレック病ウイルス、リスザルヘルペス、クモザルヘルペスウイルス、ウサギヘルペスウイルス、モルモットヘルペスウイルス、ルッケ腫瘍(Lucke tumor)ウイルス);次のものを含むアデノウイルス科、マストアデノウイルス属(ヒトサブグループA、B、C、D、E及び未分類;サルアデノウイルス(少なくとも23種の血清型)、伝染性イヌ肝炎及びウシ、ブタ、ヒツジ、カエル及び多くのその他の種のアデノウイルス、トリアデノウイルス属(トリアデノウイルス);及び培養不可能なアデノウイルス;次のものを含むパポウイルス科、パピローマウイルス属(ヒトパピローマウイルス、ウシパピローマウイルス、ショープウサギパピローマウイルス及びその他の種の様々な病原性パピローマウイルス)、ポリオーマウイルス属(ポリオーマウイルス、サル空胞形成因子(SV−40)、ウサギ空胞形成因子(RKV)、Kウイルス、BKウイルス、JCウイルス及びその他の霊長類ポリオーマウイルス、例えばリンパ球向性パピローマウイルスなど);次のものを含むパルボウイルス科、アデノ関連ウイルス属、パルボウイルス属(ネコ汎血球減少症ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、アリューシャンミンク病ウイルスなど)。最後に、DNAウイルスには、クル及びクロイツフェルト・ヤコブ病ウイルス及び慢性伝染性神経障害因子などの上記科に合致しないウイルスが含まれ得る。
【0079】
ii)抗体含有ビオチン化成分
別の実施形態において、抗体などの免疫治療薬は、ビオチン化され、本明細書中に記載のような熱ショックタンパク質融合物と組み合わされて投与され得る。天然抗体はそれ自身二量体であり、従って2価である。異なる抗体を産生する2種類のハイブリドーマ細胞を人工的に融合させた場合、このハイブリッドハイブリドーマにより産生される抗体のうちあるものは、異なる特異性を有する2つの単量体から構成される。このような二重特異性抗体はまた、2種類の抗体を化学的に結合させることによって作製することもできる。天然抗体及びその二重特異性誘導体は、比較的大きく、産生のための費用が嵩む。マウス抗体の定常ドメインもまた、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応の主要原因となり、このため、治療薬としてこのようなマウス抗体は広く使用できない。マウス抗体はまた、それらがFc受容体に結合するために不必要な作用を引き起こし得る。これらの理由のために、分子免疫学者らは、微生物におけるはるかに小さいFab−及びFv−断片の作製に努力を傾けている。これらのより小さな断片は、作製がはるかに簡単であるだけでなく、免疫原性もより小さく、エフェクター機能がなく、比較的小型であるために、組織及び腫瘍へより良好に浸透可能である。Fab断片の場合、可変ドメインに近接する定常ドメインが、重鎖及び軽鎖二量体の安定に大きく関与する。従って、本発明と組み合わせて使用されるべき抗体が全長又はほぼ全長の改変抗体を含み得る一方で、より小さい、単一ドメインの改変抗体(多価及び多重特異性であり得る。)が好ましいものであり得る。
【0080】
Fv断片は、はるかに安定性が劣り、従って、安定性を向上させるために、重鎖と軽鎖可変ドメインとの間にペプチドリンカーが挿入され得る。このコンストラクトは、単鎖Fv(scFv)断片として知られている。さらなる安定性のために、この3つのドメイン間にジスルフィド結合が導入されることがある。
【0081】
抗体の可変ドメインだけを用いて、2価、二重特異性抗体を構築することができる。非常に効率的で比較的単純な方法は、VHドメインとVLドメインとの間のリンカー配列を、それらのドメインが折り重なって、互いに結合できなくなるほど短くすることである。このリンカー長を3−12残基に短縮することによって、scFv分子の単量体形態が阻止され、VH−VL分子間対形成が有利になり、60kDaの、非共有結合性scFv二量体「ダイアボディ」が形成される(Holligerら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90、6444−6448)。このダイアボディ形式は、組み換えの二重特異性抗体の作製に対しても使用され得、このような抗体は、ある抗体からのVHドメインが、別の抗体のVLドメインに短いリンカーによって連結されるという、2本の1本鎖融合産物の非共有結合によって得られる。リンカー長をさらに3残基未満に短縮することによって、その結果、三量体(「トリアボディ」、約90kDa)又は四量体(「テトラボディ」、約120kDa)が形成され得る(Le Gallら、1999、FEBS Letters 453、164−168)。改変抗体、特に単一ドメイン断片に関する概要については、Holliger及びHudson、2005、Nature Biotechnology、23:1126−1136を参照のこと。このような改変抗体は全て、ビオチンと結合させられ、本明細書で提供される方法において使用され得る。
【0082】
本実施形態と組み合わせて使用され得るその他の多価改変抗体は、Luら、2003、J.Immunol.Meth.279:219−232(ダイ−ダイアボディ又は4価二重特異性抗体);米国出願公開第20050079170(多量体Fv分子又は「フレキシボディ」)及びWO第99/57150及びKipriyanovら、1999、J.Mol.Biol.293:41−56(タンデムダイアボディ又は「タンダブ」)に記載されている。
【0083】
上述の多価改変抗体の何れも、通常の組み換えDNA技術、例えば、国際出願PCT/US86/02269;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;PCT国際公開第86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Betterら(1988)Science 240:1041−1043;Liuら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liuら(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sunら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimuraら(1987)Cancer Res.47:999−1005;Woodら(1985)Nature 314:446−449;Shawら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559);Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oiら(1986)Bio Techniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesら(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyanら(1988)Science 239:1534;Beidlerら(1988)J.Immunol.141:4053−4060;及びWinter及びMilstein、Nature、349、pp.293−99(1991))に記載のようなDNA技術を用いて、当業者により開発され得る。好ましくは、非ヒト抗体は、この非ヒト抗原結合ドメインを、ヒトの定常ドメインと連結することによって「ヒト化」される(例えばCabillyら、米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81、pp.6851−55(1984))。
【0084】
本改変抗体の抗原認識部位又は可変領域全体は、何らかの関心のある抗原に対する1以上の親抗体由来であり得る。この親抗体は、天然抗体、天然抗体から改変された抗体又は抗体の配列を用いてデノボ構築されたか又は関心のある抗原に特異的であることが知られる抗体を含み得る。親抗体由来であり得る配列としては、重鎖及び/又は軽鎖可変領域及び/又はCDR、フレームワーク領域又はそれらのその他の部分が挙げられる。
【0085】
多価、多重特異性抗体は、2以上の可変領域を含む重鎖及び/又は1以上の可変領域を含む軽鎖を含有し得、これらの可変領域のうち少なくとも2つは、同じ抗原上の異なるエピトープを認識する。
【0086】
様々な公知のアッセイを用いて、ビオチン化しようとする候補抗体を活性についてスクリーニングし得る。例えば、結合特異性を決定するスクリーニングアッセイは周知であり、当技術分野で日常的に実施されている。このようなアッセイの総括的考察については、Harlowら(編)ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor、N.Y.、1988、第6章を参照のこと。
【0087】
ある実施形態において、本抗体は、モノクローナル抗体であり及び/又は癌に対して、インビボ治療及び/又は予防的用途を有する。ある実施形態において、本抗体は、感染疾患の治療及び/又は予防のために使用され得る。治療用及び予防用抗体の例としては、以下に限定されないが、次のものが挙げられる:ERBITUX(R)(セツキシマブ)(ImClone System)、MDX−010(Medarex、NJ)(現在のところ臨床にある前立腺癌の治療のためのヒト化抗CTLA−4抗体である。);SYNAGIS(R)(MedImmune、MD)(呼吸器多核体ウイルス(RSV)感染の患者の治療のためのヒト化抗RSVモノクローナル抗体である。);HERCEPTIN(R)(トラスツズマブ)(Genentech、CA)(転移性乳癌の患者の治療のためのヒト化抗HER2モノクローナル抗体である。)。その他の例は、ヒト化抗CD18F(ab’)2(Genentech);CDP860(ヒト化抗CD18F(ab’)2(Celltech、UK)である。);PRO542(CD4と融合させられた抗HIVgp120抗体(Progenics/Genzyme Transgenics)である。);Ostavir(ヒト抗B型肝炎ウイルス抗体である(Protein Design Lab/Novartis)。);PROTOVIRTM(ヒト化抗CMV IgG1抗体である(Protein Design Lab/Novartis)。);MAK−195(SEGARD)(マウス抗TNF−αF(ab’)2(Knoll Pharma/BASF)である。);IC14(抗CD14抗体である(ICOS Pharm)。);ヒト化抗VEGF IgG1抗体(Genentech);OVAREXTM(マウス抗CA125抗体(Altarex)である。);PANOREXTM(マウス抗17−IA細胞表面抗原IgG2a抗体である(Glaxo Wellcome/Centocor)。);BEC2(マウス抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体である(ImClone System)。);IMC−C225(キメラ抗EGFR IgG抗体である(ImClone System)。);VITAXINTM(ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体である(Applied Molecular Evolution/MedImmune)。);Campath 1H/LDP−03(ヒト化抗CD52 IGGI抗体である(Leukosite)。);SmartM195(ヒト化抗CD33IgG抗体である(Protein Design Lab/Kanebo)。);RITUXANTM(キメラ抗CD20 IgG1抗体である(IDEC Pharm/Genentech、Roche/Zettyaku)。);LYPHOCIDETM(ヒト化抗CD22IgG抗体である(Immunomedics)。);Smart ID10(ヒト化抗HLA抗体である(Protein Design Lab)。)であり;ONCOLYMTM(Lym−1)は放射性標識マウス抗HLA診断試薬抗体であり(Techniclone);ABX−IL8は、ヒト抗IL8抗体であり(Abgenix);抗CD11aはヒト化IgG1抗体であり(Genentech/Xoma);ICM3はヒト化抗ICAM3抗体であり(ICOS Pharm);IDEC−114は霊長類化抗CD80抗体であり(IDEC Pharm/Mitsubishi);ZEVALINTMは放射性標識マウス抗CD20抗体であり(IDEC/Schering AG);IDEC−131はヒト化抗CD40L抗体であ(IDEC/エーザイ)り;IDEC−151は霊長類化抗CD4抗体であり(IDEC);IDEC−152は霊長類化抗CD23抗体であり(IDEC/Seikagaku);SMART抗CD3はヒト化抗CD3IgGであり(Protein Design Lab);5G1.1はヒト化抗補体因子5(C5)抗体であり(Alexion Pharm);D2E7はヒト化抗TNF−α抗体であり(CAT/BASF);CDP870はヒト化抗TNF−αFab断片であり(Celltech);IDEC−151は霊長類化抗CD4IgG1抗体であり(IDEC Pharm/SmithKline Beecham);MDX−CD4はヒト抗CD4 IgG抗体であり(Medarex/エーザイ/Genmab);CDP571はヒト化抗TNF−α IgG4抗体であり(Celltech);LDP−02はヒト化抗α4B7抗体であり(LeukoSite/Genentech);OrthoClone OKT4Aはヒト化抗CD4IgG抗体であり(Ortho Biotech);ANTOVATMはヒト化抗CD40L IgG抗体であり(Biogen);ANTEGRENTMはヒト化抗VLA−4 IgG抗体であり(Elan);MDX−33はヒト抗CD64(FcγR)抗体であり(Medarex/Centeon);SCH55700はヒト化抗IL−5 IgG4抗体であり(Celltech/Schering);SB−240563及びSB−240683はそれぞれヒト化抗IL−5及びIL−4抗体であり(SmithKline Beecham);rhuMab−E25はヒト化抗IgE IgG1抗体であり(Genentech/Novartis/Tan−ox Biosystems);ABX−CBLはマウス抗CD−147IgM抗体(Abgenix);BTI−322はラット抗CD2IgG抗体(Medimmune/Bio Transplant)であり;OrthoClone/OKT3はマウス抗CD3IgG2a抗体であり(Ortho Biotech);SIMULECTTMはキメラ抗CD25IgG1抗体であり(Novartis Pharm);LDP−01はヒト化抗β2−インテグリンIgG抗体であり(LeukoSite);抗LFA−1はマウス抗CD18F(ab’)2であり(Pasteur−Merieux/Immunotech−);CAT−152はヒト抗TGF−β2抗体であり(Cambridge Ab Tech);Corsevin Mはキメラ抗第VII因子抗体である(Centocor)。
【0088】
自己集合性ワクチン
さらに記載されるように、熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて、複数のビオチン化成分が投与され得る。このようにして、多価医薬組成物が作製され、対象に投与され得る。多価医薬組成物の作製により、「強化された」又はより強力なワクチン及び治療薬の作製が可能になる。ビオチン化成分が抗体を含む場合、このようなワクチンは、市販抗体よりも活性が向上している。
【0089】
医薬組成物が多価である場合、投与しようとするビオチン化成分は、本明細書中に記載のビオチン化成分の何らかの組み合わせであり得る。例えば、同じ又は異なるビオチン化成分は、本明細書中で提供されるような熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて投与され得るが、ただし、ビオチン結合タンパク質及び同様に熱ショックタンパク質融合物は、多価であるか又は複数のビオチン化成分に結合可能である。例として、野生型ビオチン結合タンパク質アビジンは、4個のビオチン−結合部位を有し、従って、4個のビオチン化成分に結合可能である。この例において、この4個の部位は4個のビオチン化成分により結合されるべきものであり、ビオチン結合成分は、本明細書中に記載の、1、2、3、4又は4個の同一ビオチン化成分の何れかの可能な配列での独自性に基づき、混合され得、組み合わせられ得る。4個のビオチン結合部位に、4個の同一ビオチン化成分を結合させ得る。
【0090】
従って、第一の独自性を有するビオチン化成分の有効量は、4部の第一の独自性のビオチン化成分及びビオチン結合タンパク質に融合させられた1部の熱ショックタンパク質を含む医薬組成物を形成するために十分である、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と組み合わせて対象に投与され得る。あるいは、第一及び第二の独自性を有するビオチン化成分の有効量は、3部の第一の独自性のビオチン化成分及び1部の第二の独自性のビオチン化成分及び1部の熱ショックタンパク質融合物を含む医薬組成物を形成するために十分である、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と組み合わせて対象に投与され得る。別の実施形態において、第一及び第二の独自性を有するビオチン化成分の有効量は、2部の第一の独自性のビオチン化成分、2部の第二の独自性のビオチン化成分及び1部の熱ショックタンパク質融合物を含む医薬組成物を形成するために十分である、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と組み合わせて対象に投与され得る。
【0091】
自己集合性医薬組成物が2価である場合、第一の独自性のビオチン化成分の有効量は、2部の第一の独自性のビオチン化成分及び1部の熱ショックタンパク質融合物を含む医薬組成物を形成させるために十分である、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と組み合わせて、対象に投与され得る。あるいは、第一及び第二の独自性を有するビオチン化成分の有効量は、1部の第一の独自性のビオチン化成分、1部の第二の独自性のビオチン化成分及び1部の熱ショックタンパク質融合物を含む医薬組成物を形成させるために十分である、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と組み合わせて、対象に投与され得る。
【0092】
多価医薬組成物のビオチン化成分は、共刺激分子又は封鎖基(即ち、ビオチン単独又は非機能分子に結合したビオチン)を含み得る。本発明と組み合わせて投与され得る共刺激分子の例としては、B7−1(CD80)及びB7−2(CD86)を含むB7分子、CD28、CD58、LFA−3、CD40、B7−H3、CD137(4−1BB)及びインターロイキン(例えば、IL−1、IL−2又はIL−12)が含まれる。例として、共刺激分子を含む1部のビオチン化成分は、i)タンパク質、細胞又はウイルスを含む別のビオチン化成分3部;及びii)ビオチン結合タンパク質に融合させられた1部の熱ショックタンパク質と組み合わせて投与され得る。別の例において、共刺激分子を含む2部のビオチン化成分は、i)タンパク質、細胞又はウイルスを含む別のビオチン化成分2部;及びii)ビオチン結合タンパク質に融合させられた1部の熱ショックタンパク質と組み合わせて投与され得る。別の例において、共刺激分子を含む3部のビオチン化成分は、i)タンパク質、細胞又はウイルスを含む別のビオチン化成分1部;及びii)ビオチン結合タンパク質に融合させられた1部の熱ショックタンパク質と組み合わせて投与され得る。
【0093】
アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンのpH感受性突然変異は、例えば、ビオチンに対する、アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンの非共有結合を調節し、それにより、本明細書中に記載のように、ビオチン化成分の様々な入れ替え及び組み合わせがある熱ショックタンパク質融合物の所望の化学量論を達成するために使用され得る。アビジンなどのビオチン結合タンパク質の野生型又は特定の突然変異体の選択は、医薬組成物(例えば、アビジンの、単量体、二量体又は四量体)の所望の価数を調節するために使用され得る。1価又は2価ワクチンは、1価又は2価の形態以外でビオチンに結合する、その他のアビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジン突然変異タンパク質を含む熱ショック融合タンパク質を使用することによって、同様に作製され得る。アビジン突然変異の例は、下記の実施例セクションに記載する。pH調整可能なビオチン結合をもたらすアビジンのpH感受性点突然変異の例はY33Hである。別の突然変異は、Met96、Val115及びIle117に対するヒスチジンの置換(場合によってはTrp110でのヒスチジン置換を伴う。)である。ビオチン−ストレプトアビジン結合を調節するためのこのようなアプローチは、Laitinen、O.H.(2007)、「Brave New(Strept)Avidins in Biotechnology」、Trends in Biotechnology 25(6):269−277及びNordlund、H.R.(2003)、「Introduction of histidine residues into avidin subunit interfaces allows pH−dependent regulation of quaternary structure and biotin binding」、FEBS Letters 555:449−454(これらの両者の内容は、参照により本明細書中に組み込まれる。)に記載されている。
【0094】
自己集合性医薬組成物を作製する方法
本発明のある実施形態において、組成物は、2つの部分:ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と、免疫反応が所望される抗原に対する免疫反応を標的とするビオチン化成分と、から構成される。本発明は、ビオチン化抗原又は抗体の作製は周知であり迅速であるので、大量の医薬組成物(例えばワクチン)の迅速で簡便な作製を可能とし、同様に、ワクチン産生能の向上を可能とする。単一独自性の熱ショックタンパク質融合物は、本明細書中に記載のように多くの様々なビオチン化成分の何れかと組み合わせて投与され得るので、新しい関心のある標的抗原が同定される毎に、熱ショック融合タンパク質をデノボ合成する必要はない。従ってこのような作製方法は、投与しようとする熱ショックタンパク質融合物が一旦確立され、作製されると、特に迅速である。
【0095】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を作製するための方法が提供される。この熱ショックタンパク質は、標準的技術を用いて、天然源、例えばFlynnら、Science 245:385−390(1989)に記載のものなどから、又は細菌、酵母又は哺乳動物細胞などの適切な宿主細胞での熱ショックコード遺伝子コンストラクトの発現など、組み換え技術を用いて、調製され得る。熱ショックタンパク質及びビオチン結合タンパク質を含む融合タンパク質は、組み換え手段により作製され得る。例えば、熱ショックタンパク質をコードする核酸は、2個のタンパク質コード配列が共通の翻訳リーディングフレームを有し、ビオチン結合タンパク質及び熱ショックタンパク質を含む融合タンパク質として発現され得るように、ビオチン結合タンパク質をコードする核酸配列の何れかの末端に連結され得る。組み合せ配列は、所望の発現特性及び宿主細胞の性質に基づき選択される適切なベクターに挿入される。後述の実施例において、核酸配列は、細菌E.コリにおけるタンパク質発現に適切なベクターにおいて集合させられる。選択された宿主細胞における発現後、融合タンパク質は、通常の生化学的分離技術により、又は融合タンパク質のある部分又はその他の部分に対する抗体を用いる免疫アフィニティー法によって、精製することができる。あるいは、選択されたベクターは、この融合タンパク質配列にタグを付加することができ、例えば、後述の実施例に記載されるようなオリゴヒスチジンタグを付加でき、これにより、タグ付加融合タンパク質の発現が可能となり、このタンパク質を、タグに対して適切に高い親和性を有する抗体又はその他の物質を用いて、アフィニティー法により精製することができる。Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Deutscher、M.、Guide to Protein Purification Methods Enzymology、vol.182.Academic Press、Inc.、San Diego、CA(1990)。哺乳動物細胞での発現に適切なベクター、例えば、後述のベクターの1つが使用される場合、熱ショックタンパク質融合物は、哺乳動物細胞において発現され、精製され得る。あるいは、(融合タンパク質コード配列を含む)哺乳動物発現ベクターは、対象に、この対象の細胞において熱ショックタンパク質融合タンパク質の直接的発現のために投与することもできる。熱ショックタンパク質をコードする核酸はまた、化学的に生成され、次いで、融合タンパク質作製及び精製又は対象への投与に適切なベクターに挿入することができる。最後に、融合タンパク質を化学的に調製することもできる。
【0096】
融合遺伝子を作製するための技術は当技術分野で周知である。基本的に、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNA断片の連結は、当技術分野に従い、結合(ライゲーション)のための平滑末端又は付着末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じて粘着末端の充填、不要の連結を回避するためのアルカリフォスファターゼ処理及び酵素的結合(ライゲーション)を用いて行われる。別の実施形態において、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む当技術分野により合成され得る。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、アンカープライマーを用いて行い得るが、このアンカープライマーは、2つの連続遺伝子断片の間に相補的突出部を生じさせ、次にこれらがアニーリングされ、キメラ遺伝子配列を生じさせる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992参照)。従って、ビオチン結合タンパク質をコードする遺伝子に融合させられた熱ショックタンパク質をコードする遺伝子の融合遺伝子を含む単離核酸が提供される。
【0097】
この核酸は、熱ショックタンパク質融合物をコードし、少なくとも1つの調節配列に操作可能に連結されるヌクレオチド配列を含むベクターにおいて提供され得る。発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択及び/又は発現されることが所望されるタンパク質のタイプなどの要因に依存し得ることを理解されたい。ベクターのコピー数、そのコピー数を調節する能力及びベクターによってコードされる何らかのその他のタンパク質、例えば抗生物質マーカーの発現を考慮すべきである。このようなベクターは、何らかの生物学的に有効な担体、例えば、キメラポリペプチドをコードする遺伝物質により、エクスビボ又はインビボの何れかで、細胞に効果的に遺伝子移入することが可能な何らかの処方物又は組成物において、投与され得る。方法には、組み換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス及び単純ヘルペスウイルス−1を含むウイルスベクター又は組み換え細菌又は真核細胞プラスミドでの核酸の挿入が含まれる。ウイルスベクターは、直接細胞に遺伝子移入するために使用され得、プラスミドDNAは、単独で、例えば、陽イオン性リポソーム(リポフェクチン)又は誘導体化(例えば、抗体結合された)ポリリジン結合体、グラミシジンS、人工ウイルスエンベロープ又はその他のこのような細胞内担体を用いて、送達され得る。核酸はまた、直接注入され得る。あるいは、核酸の細胞への進入を促進するために、リン酸カルシウム沈殿を行い得る。
【0098】
培養において増殖させられる細胞において、例えば、融合タンパク質を生産させるために、熱ショックタンパク質融合タンパク質の発現及び過剰発現を引き起こすために、本核酸が使用され得る。
【0099】
熱ショックタンパク質融合物を発現させるために、組み換え遺伝子によって遺伝子移入される宿主細胞もまた提供される。宿主細胞は何らかの原核細胞又は真核細胞であり得る。
【0100】
例えば、熱ショックタンパク質融合物は、大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス)、酵母、昆虫、植物又は哺乳動物細胞において発現され得る。宿主細胞がヒト細胞である場合、それは、生きている対象の中にあっても又はそうでなくてもよい。その他の適切な宿主細胞は当業者にとって公知である。さらに、宿主細胞には、ポリペプチドの発現を最適化するために、宿主では通常見られないtRNA分子を補充し得る。融合ポリペプチドの発現を最大にするために適切なその他の方法は、当業者にとって公知である。
【0101】
細胞培養は、宿主細胞、培地及びその他の副産物を含む。細胞培養に適切な培地は当技術分野で周知である。融合ポリペプチドは分泌され、細胞及び、ポリペプチドを含む培地の混合物から単離され得る。あるいは、融合ポリペプチドは、細胞質で維持されており、細胞を回収し、溶解し、そのタンパク質を単離し得る。融合ポリペプチドは、タンパク質を生成するための当技術分野で既知の技術(イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、限外ろ過、電気泳動及び融合体の特定エピトープに特異的な抗体での免疫アフィニティー精製を含む。)により、細胞培養液、宿主細胞又はその両者から単離され得る。
【0102】
従って、微生物又は真核細胞のプロセスを介してタンパク質の組み換え体を産生させるために、熱ショックタンパク質融合物の全て又は一部をコードするヌクレオチド配列を使用し得る。発現ベクターなどのポリヌクレオチドコンストラクトに配列を連結し、真核細胞(酵母、鳥類、昆虫又は哺乳動物)又は原核細胞(細菌細胞)の何れかの宿主に形質転換又は遺伝子移入することは、標準的手順である。本発明に従い、微生物手段又は組織培養技術によって組み換え融合ポリペプチドを調製するために、同様の手順又はその変法を使用し得る。
【0103】
組み換えタンパク質産生のための発現ビヒクルとしては、プラスミド及びその他のベクターが挙げられる。例えば、融合ポリペプチドの発現に適切なベクターとしては、次のタイプのプラスミド:E.コリなどの原核細胞における発現のための、pBR322由来プラスミド、pEMBL−由来プラスミド、pEX−由来プラスミド、pBTac−由来プラスミド及びpUC−由来プラスミドが挙げられる。
【0104】
別の実施形態において、熱タンパク質融合ポリペプチドをコードする核酸は、細菌プロモーター、例えば、嫌気性E.コリ、NirBプロモーター又はE.コリリポタンパク質llpプロモーター(例えばInouyeら(1985)Nucl.Acids Res.13:3101に記載);サルモネラpagCプロモーター(Millerら前出)、シゲラentプロモーター(Schmitt及びPayne、J.Bacteriol.173:816(1991))、Tn10におけるtetプロモーター(Millerら、前出)又はビブリオ・コレラ(Vibrio cholera)のctxプロモーターに、操作可能に連結される。あらゆるその他のプロモーターを使用し得る。細菌プロモーターは、構成的プロモーター又は誘発性プロモーターであり得る。実例となる誘発性プロモーターは、鉄又は鉄制限状態によって誘発可能なプロモーターである。実際に、ある種の細菌、例えば、細胞内微生物は、宿主の細胞質において鉄制限状態に遭遇すると考えられる。FepA及びTonBの鉄調節プロモーターの例は、当技術分野で公知であり、例えば下記の参考文献に記載される:Headley、V.ら(1997)Infection & Immunity 65:818;Ochsner、U.A.ら(1995)Journal of Bacteriology 177:7194;Hunt、M.D.ら(1994)Journal of Bacteriology 176:3944;Svinarich、D.M.及びS.Palchaudhuri.(1992)Journal of Diarrhoeal Diseases Research 10:139;Prince、R.W.ら(1991)Molecular Microbiology 5:2823;Goldberg、M.B.ら(1990)Journal of Bacteriology 172:6863;de Lorenzo、V.ら(1987)Journal of Bacteriology 169:2624;及びHantke、K.(1981)Molecular & General Genetics 182:288。
【0105】
プラスミドは、好ましくは、細菌における核酸の適切な転写に必要な配列、例えば転写終結シグナルを含む。ベクターはさらに、関心のある核酸、例えば、抗生物質に対する耐性、核酸増幅に必要な配列、例えば、細菌の複製起点をもたらすタンパク質をコードする遺伝子を含む細菌の選択を可能とする因子をコードする配列を含み得る。
【0106】
別の実施形態において、融合ポリペプチドが細胞から分泌されるように、シグナルペプチド配列がコンストラクトに付加される。このようなシグナルペプチドは当技術分野において周知である。
【0107】
ある実施形態において、E.コリにおける組み換えタンパク質の、厳密に制御された、高レベル発現をもたらすために、E.コリRNAポリメラーゼにより認識される強力なファージT5プロモーターが、lacオペレーター抑制モジュールと共に使用される。この系では、タンパク質発現は、高レベルのlacリプレッサーの存在下で阻止される。
【0108】
ある実施形態において、DNAは、第1のプロモーターに操作可能に連結され、細菌はさらに、第1のプロモーターからの転写を媒介可能である第1ポリメラーゼをコードする第2のDNAを含み、この場合、第1のポリメラーゼをコードするDNAは、第2のプロモーターに操作可能に連結される。好ましい実施形態において、第2のプロモーターは、上に表示したものなどの、細菌プロモーターである。さらにより好ましい実施形態において、ポリメラーゼは、バクテリオファージポリメラーゼ、例えば、SP6、T3又はT7ポリメラーゼであり、第1のプロモーターは、バクテリオファージプロモーター、それぞれ、例えば、SP6、T3又はT7プロモーターである。バクテリオファージプロモーターを含むプラスミド及びバクテリオファージポリメラーゼをコードするプラスミドは、例えば、Promega Corp.(Madison、Wis.)及びInVitrogen(San Diego、Calif.)から市販されているものを入手することができるか又は標準的組み換えDNA技術を用いてバクテリオファージから直接入手することができる(J.Sambrook、E.Fritsch、T.Maniatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Laboratory Press、1989)。バクテリオファージポリメラーゼ及びプロモーターは、さらに、例えば、下記の参考文献に記載されている:Sagawa、H.ら(1996)Gene 168:37;Cheng、X.ら(1994)PNAS USA 91:4034;Dudendorff、J.W.及びF.W.Studier(1991)Journal of Molecular Biology 219:45;Bujarski、J.J.及びP.Kaesberg(1987)Nucleic Acids Research 15:1337;及びStudier、F.W.ら(1990)Methods in Enzymology 185:60)。このようなプラスミドは、発現させようとする熱ショックタンパク質融合物の具体的実施形態に従ってさらに修飾され得る。
【0109】
別の実施形態において、細菌はさらに、第2のプロモーターからの転写を媒介することができる第2のポリメラーゼをコードするDNAを含み、この場合、第2のポリメラーゼをコードするDNAは、第3のプロモーターに操作可能に連結される。この第3のプロモーターは細菌プロモーターであり得る。しかし、高レベルの転写を得るために、細菌に3以上の異なるポリメラーゼ及びプロモーターを導入することができる。細菌における転写を媒介するために1以上のポリメラーゼを使用することにより、DNAが直接細菌プロモーターの調節下にある細菌と比べて、細菌中のポリペプチド量を顕著に増加させることができる。採用すべき系の選択は、具体的な使用、例えば、産生させたいタンパク質の量に応じて変動する。
【0110】
一般に、融合タンパク質をコードする核酸は、遺伝子移入などによって宿主細胞中に導入され、宿主細胞は、この融合タンパク質の発現を可能にする条件下で培養される。原核細胞及び真核細胞に核酸を導入する方法は当技術分野で周知である。哺乳動物及び原核宿主細胞培養に適切な培地は当技術分野で周知である。一般に、本融合ポリペプチドをコードする核酸は、誘導可能なプロモーターの調節下にあり、この核酸を含む宿主細胞がある一定回数分裂すると誘導される。例えば、核酸が、β−ガラクトースオペレーター及びリプレッサーの調節下にある場合、細菌宿主細胞が、約0.45−0.60のOD600の密度に到達したとき、イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養物に添加する。次に、もうしばらくこの培養物を増殖させ、宿主細胞に、タンパク質を合成する時間を与える。次に、通常、培養物を凍結し、タンパク質の単離及び精製前に、しばらくの間凍結保存し得る。
【0111】
原核宿主細胞を使用する場合、宿主細胞は、例えば、プラスミドpLysSLから発現される内部T7リゾチームを発現するプラスミドを含み得る(実施例参照)。このような宿主細胞の溶解により、リゾチームが放出され、これが次に細菌の膜を分解する。
【0112】
細菌又はその他の原核細胞における発現用ベクターに含まれ得る、その他の配列としては、合成リボソーム結合部位;強力な転写終結因子、例えば転写読み過ごしを阻止し、発現タンパク質の安定性を確保するための、ファージλ由来のt0及びE.コリのrrnBオペロン由来のt4;複製起点、例えばColE1;及びアンピシリン耐性を付与するβ−ラクタマーゼ遺伝子が挙げられる。
【0113】
その他の宿主細胞としては、原核宿主細胞が挙げられる。さらにより好ましい宿主細胞は、細菌、例えば、E.コリである。使用することができるその他の細菌としては、シゲラ(Shigella)種、サルモネラ(Salmonella)種、リステリア(Listeria)種、リケッチア(Rickettsia)種、エルシニア(Yersinia)種、エスケリキア(Escherichia)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、ボルデテラ(Bordetella)種、ネイセリア(Neisseria)種、エアロモナス(Aeromonas)種、フランシセラ(Franciesella)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、シトロバクター(Citrobacter)種、クラミジア(Chlamydia)種、ヘモフィルス(Hemophilus)種、ブルセラ(Brucella)種、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、レジオネラ(Legionella)種、ロドコッカス(Rhodococcus)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、ヘリコバクター(Helicobacter)種、ビブリオ(Vibrio)種、バチルス(Bacillus)種及びエリシペロスリクス(Erysipelothrix)種が挙げられる。これらの細菌の多くは、American Type Culture Collection(ATCC;10801 University Blvd.、Manassas、VA20110−2209)から入手され得る。
【0114】
酵母における組み換えタンパク質の発現のために多くのベクターが存在する。例えば、YEP24、YIP5、YEP51、YEP52、pYES2及びYRP17は、S.セレビシエへの遺伝子コンストラクトの導入に有用なクローニング及び発現ビヒクルである(例えば、Broachら(1983)Experimental Manipulation of Gene Expression、M.Inouye編 Academic Press、p.83参照)。これらのベクターは、pBR322oriが存在することによりE.コリにおいて及び酵母2ミクロンプラスミドの複製決定基のためにS.セレビシエにおいて、複製され得る。さらに、アンピシリンなどの薬剤耐性マーカーを使用し得る。
【0115】
ある一定の実施形態において、哺乳動物発現ベクターは、細菌におけるベクターの増殖を促進するための原核配列及び、真核細胞において発現される1以上の真核細胞転写単位の両方を含有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neo及びpHyg由来ベクターは、真核細胞の転写に適切な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのうちあるものは、原核細胞及び真核細胞両方における複製及び薬剤耐性選択を促進するために、pBR322などの細菌プラスミド由来の配列により修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)又はエプスタインバーウイルス(pHEBo、pREP由来及びp205)などのウイルス誘導体が、真核細胞におけるタンパク質の一過性発現のために使用され得る。プラスミドの調製及び宿主生物の形質転換で使用される様々な方法が当技術分野で周知である。原核細胞及び真核細胞の両方のためのその他の適切な発現系ならびに一般的組み換え法については、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版、Sambrook、Fritsch及びManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)第16及び17章を参照のこと。場合により、バキュロウイルス発現系を用いて組み換えタンパク質を発現することが望ましい場合がある。このようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL−由来ベクター(pVL1392、pVL1393及びpVL941など)、pAcUW−由来ベクター(pAcUW1など)及びpBlueBac−由来ベクター(β−galを含むpBlueBacIIIなど)が挙げられる。
【0116】
別の変法において、タンパク質産生は、インビトロ翻訳系を用いて達成され得る。インビトロ翻訳系は、一般に、RNA分子をタンパク質に翻訳するのに必要な、少なくとも最小要素を含む、細胞不含抽出物である翻訳系である。インビトロ翻訳系は、通常、少なくともリボソーム、tRNA、開始因子メチオニル−tRNAMet、翻訳に関与するタンパク質又は複合体、例えば、eIF2、eIF3、キャップ結合(CB)複合体(これらは、キャップ結合タンパク質(CBP)及び真核細胞開始因子4F(eIF4F)を含む。)を含む。様々のインビトロ翻訳系が当技術分野において周知であり、これには市販のキットも含まれる。インビトロ翻訳系の例としては、真核細胞溶解物、例えばウサギ網状赤血球溶解物、ウサギ卵細胞溶解物、ヒト細胞溶解物、昆虫細胞溶解物及び小麦麦芽抽出物などが挙げられる。溶解物は、Promega Corp.、Madison,Wis.;Stratagen、La Jolla、Calif.;Amersham、Arlington Heights、Ill.;及びGIBCO/BRL、Grand Island、N.Y.などの製造者から市販されている。インビトロ翻訳系は、通常、巨大分子、例えば、酵素、翻訳、開始及び伸長因子、化学的試薬及びリボソームを含む。さらに、インビトロ転写系が使用され得る。このような系は、通常、少なくとも、RNAポリメラーゼホロ酵素、リボヌクレオチド及び何らかの必要な、転写開始、伸長及び終結因子を含む。インビトロ翻訳のためのRNAヌクレオチドは、当技術分野で公知の方法を用いて産生され得る。インビトロ転写及び翻訳は、1以上の単離DNAからタンパク質を産生させるためにワンポット反応中で結合され得る。
【0117】
タンパク質のカルボキシ末端断片、即ち、短縮型突然変異の発現が望ましい場合、発現させようとする所望配列を含むオリゴヌクレオチド断片に対し開始コドン(ATG)を付加することが必要である場合がある。酵素メチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)を用いてN−末端位置のメチオニンが酵素的に切断され得ることは当技術分野で周知である。MAPは、E.コリ(Ben−Bassatら(1987)J.Bacteriol.169:751−757)及びサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)からクローンニングされており、そのインビトロ活性は、組み換えタンパク質において明らかにされている(Millerら(1987)PNAS USA 84:2718−1722)。従って、必要に応じて、N−末端メチオニンの除去は、MAPを産生する宿主において(例えば、E.コリ又はCM89又はS.セレビシエ)このような組み換えタンパク質を発現させることによりインビボで又は精製MAP(例えば、Millerらの手順)を用いてインビトロで、の何れかで、達成され得る。
【0118】
植物発現ベクターが使用される場合、熱ショックタンパク質融合物の発現は、いくつかのプロモーターの何れかにより駆動され得る。例えば、ウイルスプロモーター、例えばCaMVの35SRNA及び19SRNAプロモーター(Brissonら、1984、Nature、310:511−514)又はTMVのコートタンパク質プロモーター(Takamatsuら、1987、EMBO J.、6:307−311)などが使用され得、あるいは、植物プロモーター、例えば、RUBISCOの小ユニット(Coruzziら、1994、EMBO J.、3:1671−1680;Broglieら、1984、Science、224:838−843)など;又は熱ショックプロモーター、例えば、ダイズHsp17.5−E又はHsp17.3−B(Gurleyら、1986、Mol.Cell.Biol.、6:559−565)などが使用され得る。これらのコンストラクトは、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター;直接的DNA形質転換;マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを用いて植物細胞に導入することができる。このような技術の総説については、例えば、Weissbach及びWeissbach、1988、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、New York、Section VIII、pp.421−463;及びGrierson及びCorey、1988、Plant Molecular Biology、第2版、Blackie、London、Ch.7−9を参照のこと。
【0119】
タンパク質タグ又はタンパク質タグを含む融合タンパク質を発現させるために使用され得る代替的発現系は昆虫系である。あるこのような系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用される。このウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞において増殖する。PGHS−2配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の調節下に置かれ得る。コード配列の挿入が成功すると、その結果、ポリヘドリン遺伝子の不活性化、及び非被覆組み換えウイルス(即ち、ポリヘドリン遺伝子によってコードされるタンパク質様コートを欠くウイルス)が作製される。次に、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞(その中で挿入遺伝子が発現される。)を感染させるために、これらの組み換えウイルスが使用される(例えば、Smithら、1983、J.Virol.、46:584、Smith、米国特許第4,215,051号参照)。
【0120】
昆虫系の具体的な実施形態において、組み換えウイルスを作製するために、熱ショックタンパク質融合タンパク質をコードするDNAは、ポリヘドリンプロモーターの下流でpBlueBacIII組み換えトランスファーベクター(Invitrogen、San Diego、Calif.)にクローンニングされ、Sf9昆虫細胞(スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)卵巣細胞由来、Invitrogen、San Diego,Calif.から入手可能)に遺伝子移入される。適切に翻訳後修飾を受けた修飾タンパク質を大量に産生させるために、組み換えウイルスのプラーク精製後、高力価ウイルス保存物を調製し、次に、これを使用して、Sf9又はHigh FiveTM(トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)卵細胞ホモジェネート由来のBTI−TN−5B1−4細胞;Invitrogen、San Diego,Calif.から入手可能)昆虫細胞に感染させる。
【0121】
その他の実施形態において、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン結合タンパク質は、別個に産生され、次に互いに例えば共有結合で連結される。例えば、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン結合タンパク質は、インビトロで別個に産生され、精製され、タグが関心のあるタンパク質に連結可能となる条件下で一緒に混合される。例えば、熱ショックタンパク質及び/又はビオチン結合タンパク質は、それが出現することが知られている源から得る(単離する)ことができるか、細胞培養で産生させ、回収することができるか、所望の熱ショックタンパク質融合物をコードする遺伝子をクローニングし発現することによって産生させることができるか又は化学合成することができる。さらに、所望の熱ショックタンパク質融合物をコードする核酸配列は化学合成することができる。結合タンパク質のこのような混合物は、単一融合タンパク質とは異なる特性を有し得る。
【0122】
熱ショックタンパク質及びビオチン結合タンパク質を結合させるために、リンカー(「リンカー分子」又は「クロスリンカー」とも呼ばれる)を使用し得る。リンカーは、いくつかの、通常は2つの分子の、定められた化学基と反応し、従ってそれらを結合することが可能な化学薬品を含む。既知のクロスリンカーの大多数は、アミン、カルボキシル及びスルフヒドリル基と反応する。標的化学基の選択は、結合させようとするタンパク質の生物学的活性にこの基が関与し得る場合、非常に重要である。例えば、スルフヒドリル基と反応するマレイミドは標的にCysが結合することを必要とするCys含有タンパク質を不活性化し得る。リンカーは、ホモ官能性(同じタイプの反応基を含む。)、ヘテロ官能性(異なる反応基を含む。)又は光反応性(照射時に反応性となる基を含む。)であり得る。
【0123】
リンカー分子は、結合組成物の様々な特性に関与し得る。リンカーの長さは、結合段階中の分子の柔軟性及び、結合分子のその標的(細胞表面分子など)に対する利用可能性の点から考慮しなければならない。従って、より長いリンカーは、本発明の組成物の生物学的活性ならびにそれらの調製し易さを向上させ得る。リンカーの形状は、標的との最適反応のために分子を方向付けるために使用され得る。柔軟な形状のリンカーによって、架橋されたタンパク質がその他のタンパク質に結合する際、この架橋されたタンパク質が立体配座的に適応できるようになり得る。リンカーの性質は、その他の様々な目的のために変更され得る。例えば、MBuSのアリール構造は、MBSの芳香族スペーサよりも免疫原性が低いことが分かった。さらに、リンカー分子の疎水性及び官能性は、成分分子の物理的特性によって調節され得る。例えば、ポリマーリンカーの疎水性は、ポリマー、例えば、疎水性単量体ブロックの間に親水性単量体ブロックが散在するブロックポリマーに沿った単量体単位の順序によって調節され得る。
【0124】
多様な分子リンカーを調製し、利用する化学は、当技術分野で周知であり、分子を結合させるために多くの既製リンカーが、Pierce Chemical Co.、Roche Molecular Biochemicals、United States Biologicalなどの販売業者から市販されている。
【0125】
調製され及び/又は単離された、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質は、ビオチン結合タンパク質とのビオチン部分の非共有結合を形成するために十分である、所望のビオチン化成分と組み合わせて対象に投与すべきである。本熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分は、同時に又は連続的に投与され得る。同時に投与される場合、本熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分は、混合物として又は非共有結合性複合体として投与され得る。非共有結合性複合体として投与される場合、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質は、調製及び/又は単離されると、インビトロ又はインビボの何れかで所望のビオチン化成分に非共有結合され得る。
【0126】
非共有結合性複合体は、ビオチン結合タンパク質のビオチンとの結合を促進するために十分な条件下(これらの条件は当技術分野で公知である。)で、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質をビオチン化成分と接触させることにより作製され得る。
【0127】
様々な熱ショックタンパク質に対する遺伝子が、クローニングされ、配列決定されており、これらは、以下に限定されないが、gp96(ヒト:Genebank受入番号X15187;Makiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:5658−5562(1990);マウス:Genebank受入番号M16370;Srivastavaら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:3807−3811(1987))、BiP(マウス:Genebank受入番号U16277;Haasら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2250−2254(1988);ヒト:Genebank受入番号M19645;Tingら、DNA 7:275−286(1988))、hsp70(マウス:Genebank受入番号M35021;Huntら、Gene 87:199−204(1990);ヒト:Genebank受入番号M24743;Huntら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:6455−6489(1995))及びhsp40(ヒト:Genebank受入番号D49547;Ohtsuka K.、Biochem.Biophys.Res.Commun.197:235−240(1993))を含む、熱ショックタンパク質融合物を得るために使用され得る。
【0128】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質は、ビオチン化成分に非共有結合され得る。
【0129】
タンパク質、細胞又はウイルスを含む熱ショックタンパク質と組み合わせて投与されるべき成分は、当技術分野で公知のようなものなどの手段により、ビオチンに結合され得る。ビオチンへの結合前に、当技術分野で公知の方法を用いて、タンパク質、細胞又はウイルスが産生され及び/又は単離され得る。組み換え技術は、熱ショックタンパク質融合物に対して、本明細書中に記載のものと殆ど同じように使用され得る。この成分が産生され及び/又は単離されると、ビオチン分子は、タンパク質、細胞又はウイルスと直接結合され得る。ビオチンもまた、リンカーを通じて間接的にこのタンパク質、細胞又はウイルスに結合され得る。ビオチンは、ビオチン結合タンパク質とのビオチンの相互作用を立体的に可能にする領域に結合され得る。ビオチン化キット及び試薬は、Pierce(Rockford、IL)から購入され得、本明細書中に記載のビオチン化成分を作製するために使用され得る。
【0130】
多くの様々な抗原の配列は、クローニングされ、DNA配列分析により特性評価され得、本明細書中で提供される組成物中に含まれ得る。完全又は部分的細胞性又はウイルスゲノム又は抗原を含有する細菌ベクターは、例えば、American Tissue Culture Collection(ATCC)を含む様々な源から得られ得る。使用され得るさらなる抗原は、この目的のために以前に確立された方法により単離され、タイプ分けされ得る(これらの方法は当技術分野で周知である。)。
【0131】
熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分を使用する方法
本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分は、ビオチン化成分が向けられる抗原を発現する細胞に対して、対象の免疫反応、特に、細胞介在性細胞溶解性反応を誘導又は促進するために、対象に投与することができる。この融合タンパク質は、単純に免疫反応を促進し得るか(従って、免疫原性組成物として作用)又は防御的免疫を付与(従ってワクチンとして作用)し得る。
【0132】
従って、前述のように作製される、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分は、医薬組成物としての使用のために適切な純度に精製され得る。一般に、精製組成物は、組成物中に存在する全ての種の約85%を超えて、存在する全ての種の約85%、90%、95%を超え、99%以上を構成する1つの分子を有する。目的の種は、本質的に均一となるまで(混入する種は、従来の検出法により組成物中で検出できない。)精製され得、この場合、本組成物は、実質的に単一の種からなる。当業者は、本明細書の教示に照らして、精製のための標準技術、例えば、免疫アフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどを用いて、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分又はそれらの非共有結合性複合体を精製し得る。タンパク質の純度は、例えば、アミノ末端アミノ酸配列分析、ゲル電気泳動及び質量分析を含む当業者にとって公知のいくつかの方法を用いて決定され得る。
【0133】
従って、上述の熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分及びこれらの非共有結合性複合体を含む医薬組成物が提供される。ある態様において、1以上の医薬的に許容可能な担体(添加剤)及び/又は希釈剤と共に処方される、医薬組成物の1以上の治療的有効量を含む、医薬的に許容可能な組成物が提供される。別の態様において、ある実施形態で、本医薬組成物は、そのまま又は、医薬的に許容可能な担体と混合されて投与され得、また、その他の薬剤と組み合わせても投与され得る。従って、連結(併用)療法は、最初に投与されたものの治療効果が、次のものが投与される際に完全には消失していないように行われる、逐次、同時(simultaneous)及び個別の又は同時(co−administration)投与を含む。
【0134】
本明細書に記載されるような、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分又はこれらの非共有結合性複合体は、様々な方法で対象に投与され得る。投与経路としては、全身性、末梢、非経口、腸内、局所及び経皮(例えば徐放性ポリマー)が挙げられる。何らかのその他の従来の投与経路は、例えば、点滴もしくはボーラス注入又は上皮もしくは粘膜を通じた吸収を使用することができる。さらに、本明細書中に記載の組成物は、生物学的活性物質(例えばミョウバンなどのアジュバント)、界面活性剤(例えばグリセリド)、賦形剤(例えばラクトース)、担体、希釈剤及びビヒクルなどのその他の医薬的に許容可能な成分を含有し得、これらとともに又はこれらなしで投与され得る。さらに、本組成物は、インビトロで抗原特異的免疫細胞を惹起し、拡大し、増殖させ、その後、対象に再導入させるために、エクスビボで対象から得られた白血球を刺激する手段として、使用され得る。
【0135】
さらに、熱ショックタンパク質融合タンパク質は、このようなタンパク質配列をコードする核酸をヒト対象においてインビボ発現させることによって投与され得る。このような核酸の発現及びビオチン化成分との接触はまた、インビトロで抗原特異的免疫細胞を惹起し、拡大し、増殖させ、続いて、対象に再導入するために、対象から得られた白血球を刺激する手段として、エクスビボで行うこともできる。熱ショックタンパク質融合タンパク質の発現を指示するために適切な発現ベクターは、現在当技術分野で使用される多数の様々なベクターから選択することができる。高レベル発現をもたらすことができ、関心のある遺伝子を変換するために効果的であるベクターが好ましい。例えば、組み換えアデノウィルスベクターpJM17(Allら、Gene Therapy 1:367−84(1994);Berkner K.L.、Biotechniques 6:616−24 1988)、第2世代アデノウィルスベクターDE1/DE4(Wang及びFiner、Nature Medicine 2:714−6(1996))又はアデノ関連ウィルスベクターAAV/Neo(Muro−Cachoら、J.Immunotherapy 11:231−7(1992))を使用することができる。さらに、組み換えレトロウィルスベクターMFG(Jaffeeら、Cancer Res.53:2221−6(1993))又はLN、LNSX、LNCX、LXSN(Miller及びRosman、Biotechniques 7:980−9(1989))も使用し得る。pHSV1(Gellerら、Proc.Nat’l Acad.Sci.87:8950−4(1990)などの単純ヘルペスウィルスに基づくベクター又はMVA(Sutter及びMoss、Proc.Nat’l Acad.Sci.89:10847−51(1992))などのワクシニアウィルスベクターを代替物として使用し得る。
【0136】
プロモーター及び3’配列を含む、使用頻度の高い特異的発現単位は、プラスミドCDNA3(Invitrogen)、プラスミドAH5、pRC/CMV(Invitrogen)、pCMU II(Paaboら、EMBO J.5:1921−1927(1986))、pZip−Neo SV(Cepkoら、Cell 37:1053−1062(1984))及びpSRa(DNAX、Palo Alto、Ca)で見出されるものである。発現単位及び/又はベクターへの遺伝子導入は、Molecular Cloning and Current Protocols in Molecular Biology(Sambrook、J.ら、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Press(1989);Ausubel、F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(1989))のようなマニュアルに記載されるような遺伝子工学技術を用いて遂行され得る。得られた発現可能な核酸は、この核酸を発現可能な形態で細胞に置くことが可能な何らかの方法によって、例えば、前述のものなどウィルスベクターの一部として、裸のプラスミド又はその他のDNAとして又は標的とされるリポソームもしくは赤血球ゴーストに封入して、ヒト対象の細胞に導入することができる(Friedman、T.、Science、244:1275−1281(1989);Rabinovich、N.R.ら、Science.265:1401−1404(1994))。形質導入法としては、組織及び腫瘍への直接注入、リポソーム遺伝子移入(Fraleyら、Nature 370:111−117(1980))、受容体介在エンドサイトーシス(Zatloukalら、Ann.N.Y.Acad.Sci.660:136−153(1992))及び粒子ボンバードメント介在性遺伝子導入(Eisenbraumら、DNA & Cell.Biol.12:791−797(1993))が挙げられる。
【0137】
本発明の組成物における、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分又はこれらの非共有結合性複合体の量は、対象において有効な免疫刺激反応を生ずる量である。有効量とは、投与されると、それが免疫反応を誘発するような量である。さらに、対象に投与される、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分又はこれらの非共有結合性複合体の量は、用いられる熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分、対象の体格、年齢、体重、全身的健康状態、性別及び食餌を含む様々な因子ならびにその全身的免疫反応性に依存して変動する。確立された用量範囲の調整及び操作は、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、熱ショックタンパク質融合物、ビオチン化成分又はこれらの非共有結合性複合体の量は、約1μgから約1g、好ましくは約100μgから約1g及び約1mgから約1gであり得る。発現ベクターを含む組成物の有効量は、投与された場合に、医薬組成物が向けられる抗原に対してそれが免疫反応を誘発するような量である。さらに、対象に投与される発現ベクターの量は、発現される熱ショックタンパク質融合物、対象の体格、年齢、体重、全身的健康状態、性別、及び食餌を含む様々な因子ならびにその全般的な免疫学的反応性に依存して変動する。考慮する必要のあるさらなる因は、投与経路及び使用されるベクターのタイプである。例えば、熱ショックタンパク質融合物をコードする核酸を含むウィルスベクターを用いて予防的又は治療的処置が行われる場合、有効量は、体重1kg当たり104から1012の範囲の、ヘルパー不含複製欠損ウィルスであり、好ましくは体重1kg当たり105から1011の範囲のウィルス、最も好ましくは体重1kg当たり106から1010の範囲ウィルスである。
【0138】
対象において免疫反応を誘発するための融合タンパク質及びビオチン化成分又はこれらの非共有結合性複合体の有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0139】
有効用量は、最初にインビトロアッセイから推定され得る。当技術分野で周知の技術を用いて、例えば、動物モデルにおいて免疫反応の誘発を達成するための用量を処方し得る。当業者は、動物データに基づき、ヒトへの投与を容易に最適化することができる。投与量及び間隔は個別に調整し得る。例えば、ワクチンとして使用される場合、本発明のタンパク質及び/又はろ過物(strain)は、1−36週間にわたり、約1から3回の投薬で投与され得る。好ましくは、約3−4ヶ月の間隔で3回の投薬を行い、その後定期的に免疫促進ワクチン接種物が投与され得る。代替的プロトコールが個々の患者に適切であり得る。適切な用量とは、上述のように投与される場合、少なくとも1−2年間にわたり症状又は感染から患者を保護するために十分に、免疫付与された患者において免疫反応を惹起することが可能である、タンパク質又はろ過物(strain)の量である。
【0140】
本組成物はまた、免疫反応を促進するアジュバントも含み得る。さらに、このようなタンパク質は、注射時に、インビボでタンパク質のより遅い放出を引き起こすために、油状乳液中でさらに縣濁され得る。処方における各成分の最適比は、当業者にとって周知の技術によって決定され得る。
【0141】
各種アジュバントの何れも、免疫反応を促進するために本発明のワクチンの中で使用され得る。殆どのアジュバントは、水酸化アルミニウム又は鉱油などの急速な代謝から抗原を保護するために設計された物質及び脂質A又は百日咳菌(ボルタデラ・ペルトゥシス、Bortadella pertussis)などの免疫反応の特異的又は非特異的刺激因子を含有する。適切なアジュバントは市販されており、これには、例えば、フロインドの不完全アジュバント及びフロインドの完全アジュバント(Difco Laboratories)及びMerckアジュバント65(Merck and Company、Inc.、Rahway、N.J.)が含まれる。その他の適切なアジュバントとしては、ミョウバン、生物分解性ミクロスフェア、モノホスホリル脂質A、クウィルA(quil A)、SBAS1c、SBAS2(Lingら、1997、Vaccine 15:1562−1567)、SBAS7、Al(OH)3及びCpGオリゴヌクレオチド(WO96/02555)が挙げられる。
【0142】
本発明のワクチンにおいて、アジュバントは、Th1型免疫反応を誘発し得る。適切なアジュバント系としては、例えば、モノホスホリル脂質A、好ましくは3−de−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)と、アルミニウム塩との組み合わせが挙げられる。促進系には、モノホスホリル脂質Aとサポニン誘導体との組み合わせ、特にWO94/00153に開示される、3D−MLPとサポニンQS21との組み合わせ、又は、WO96/33739に開示される、QS21がコレステローによって不活性化される、より反応性の低い組成物が含まれる。以前の実験から、液性及びTh1型細胞性免疫反応両方の誘発における、3D−MLP及びQS21の併用の、明確な相乗効果が証明された。水中油型エマルジョンにおいてQS21、3D−MLP及びトコフェロールを含む、特に強力なアジュバント形成がWO95/17210に記載されており、これは処方物を含み得る。
【0143】
キット
本発明は、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を発現させるか又は投与するためのキットを提供する。このようなキットは、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質をコードする核酸から構成され得る。この核酸は、プラスミド又はベクター、例えば、細菌プラスミド又はウィルスベクター中に含まれ得る。その他のキットは、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を含む。さらに、本発明は、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を産生させ及び/又は精製するためのキットを提供する。このようなキットは、場合によっては、本明細書中に記載のようなビオチン化成分又はビオチン化試薬を含み得る。
【0144】
本発明は、患者における感染性又は悪性疾患を予防又は治療するためのキットを提供する。例えば、キットは、上述の1以上の医薬組成物及び場合によってはそれらの使用のための説明書を含み得る。またその他の実施形態において、本発明は、1以上の医薬組成物及びこのような組成物の投与を遂行するための1以上の装置を含むキットを提供する。
【0145】
キットの構成要素は、先述の方法の、手動での又は部分的もしくは完全自動化による実施の何れかのために包装され得る。キットに関与するその他の実施形態において、それらの使用のための説明書が提供され得る。
【0146】
(実施例)
本発明をここで全体的に説明してきたが、単に本発明のある態様及び実施形態の説明のために含まれるものであり、本発明を何ら限定するものではない、次の実施例を参照することによって、本発明はより容易に理解されよう。
【0147】
本発明の実施は、別段の断りがない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組み換えDNA及び免疫学の従来技術を使用し、これらは、当技術分野の技術の範囲内である。このような技術は文献に記載されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版、Sambrook、Fritsch及びManiatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA Cloning、Volumes I及びII(D.N.Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames及びS.J.Higgins編、1984);Transcription And Translation(B.D.Hames及びS.J.Higgins編、1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney、Alan R.Liss、Inc.、1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1986);B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise、Methods In Enzymology(Academic Press、Inc.、N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller及びM.P.Calos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology、Vols.154及び155(Wuら編)、Immunochemical Methods In Cell and Molecular Biology(Mayer and Walker編、Academic Press、London、1987);Handbook Of Experimental Immunology、Volumes I−IV(D.M.Weir及びC.C.Blackwell編、1986);Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)を参照のこと。
【実施例1】
【0148】
i)MTBhsp70の作製
所望の制限部位SfiIを導入するために最初にベクターを修飾することによって、発現ベクターpET45b(+)にMTBhsp70をサブクローニングした。この修飾によって、NotI/XhoI部位でMTBhsp70タンパク質の、及びSfiI/NotI部位でscFv、抗原、アビジンなどのその他のタンパク質の導入が可能となる(図1)。この特定のアプローチは、MTBhsp70のC末端で所望のタンパク質を導入するために修正され得る。Richard Young博士より提供されたMTBhsp70プラスミドを使用して、図2に記載のように、それぞれ5’及び3’末端に制限部位NotI及びXhoIを導入した。
【0149】
制限酵素NotI及びXhoIでの図2のレーン1で示される増幅されたMTBhsp70断片の消化から、予想外に2つのバンドが見られた(図3)。配列決定分析から、MTBhsp70が内部NotI及びSfiI制限部位を含有することが明らかになった。これらは、図4で示されるストラテジーを用いて除去した。次に、コンピーテントBL21(DE3)細菌を形質転換するために、結果的に得られるMTBhsp70pET−45b(+)コンストラクトを使用した。1mM IPTGを添加することにより、MTBhsp70の発現を誘導した。0.5のOD600になるまで37℃でLB培地中で細胞を増殖させた。細胞を遠心して沈降させ、1mM IPTGを含有するLB培地中で縣濁し、指示温度で4時間増殖を継続した。細胞を分画化し、アリコートをSDS−PAGE上で流し、タンパク質をクーマシーブルーで染色した。誘導細胞を37℃で増殖させたとき、MTBhsp70タンパク質の大部分が不溶性封入体中で見られた。誘導後の増殖温度を30℃まで低下させることにより、大量の可溶性MTBhsp70が産生された。コバルトスピンカラムを用いて、金属アフィニティークロマトグラフィー(MAC)によって、30℃で増殖させたBL21(DE3)の可溶性及びペリプラズム分画中で見出されるMTBhsp70タンパク質の精製に成功した。0.5のOD600まで37℃で細胞を増殖させ、遠心沈降させた。1mM IPTGを含有する増殖培地中で細胞を縣濁し、30℃で4時間増殖させた。PierceからのB−PER試薬での可溶化からなる標準的方法に従い、細胞を分画化した。
【0150】
ii)MTBhsp70−融合タンパク質の作製
MTBhsp70−融合タンパク質の免疫刺激性特性を明らかにするために、オボアルブミンペプチド−MTBhsp70及び2つのscFv−MTBhsp70融合産物を構築した。
【0151】
a.Ova−257−264−MTBhsp70融合タンパク質。Young博士のグループは、オボアルブミンの免疫優性ペプチドが残基257−264(SIINFEKL)からなることを証明した。SfiI及びNotIでMTBhsp70pET−45b(+)プラスミドを消化し、SfiI及びNotIでも消化される免疫優性ペプチドをコードするリンカーを導入することによって、MTBhsp70のN−末端領域にこのペプチドを融合させた(図5)。結合(ライゲーション)時に、多くのコロニーが得られ、配列決定によってそれらの独自性を確認した(図6)。MTBhsp70で観察されるように、Ova−257−264−MTBhsp70の誘導は、増殖温度が、IPTG誘導後、30℃で維持される場合、最適である。BL21(DE3)の可溶性分画において、Ova254−264−MTBhsp70の良好な発現が得られた。
【0152】
b.scFv−MTBhsp70融合タンパク質。MTBhsp70のN−末端にscFvを融合させた。ヒトコンビナトリアルscFvファージディスプレイライブラリを構築し、オボアルブミン特異的なscFvを選択するためにそれを使用した。その他のscFv、MOV18は、卵巣癌細胞で発現される高親和性葉酸受容体に対して特異的である。クローニング法は、MTBhsp70のN末端でのOva254−264ペプチドの導入に対して使用されるアプローチと同様である。このSfiI/NotI scFv部分は、それらの個々のプラスミドから単離し、続いてSfiI/NotI消化した発現ベクターMTBhsp70 pET−45b(+)に結合(ライゲーション)させた。抗オボアルブミンscFvは、部位特異的突然変異誘発により除去されなければならないいくつかのナンセンス突然変異を有した。しかし、両コンストラクトを運ぶ細菌の誘導時に、IPTGでの誘導の結果、本融合タンパク質が封入体中で発現されることが分かった。
【0153】
iii)アビジン−リンカー−MTBhsp70の作製
リンカーエレメントへの及びMTBhsp70へのアビジンの融合は、自己集合性ワクチンの作製のために使用され得る。これは、図7(リンカー部分がアビジンと熱ショックタンパク質との間の線として示される。)で説明される。アビジンは、68,000の分子量(従って各サブユニットは17,000ダルトン)のホモ四量体グリコシル化タンパク質である。Markku S.Kulomaa博士により記載される野生型(四量体)又は単量体は、本明細書中で提供されるように作製され、使用され得る。これらの分子は、図8のスキームに従い述べられる。アビジンの単量体は、5ヶ所のアミノ酸位置で野生型とは異なる。これは図9で示される。各アビジンコンストラクトを組み立てるために、一連のプライマー及びリンカーを使用した。
【0154】
PCRに基づく突然変異誘発により、小さな突然変異を補正した。これは、単量体アビジン(クローンM1)に対して為された2つの変化を示す図10で示される。図11で示されるように、単量体及び野生型両方のアビジン−リンカー−MTBhsp70コンストラクトを得ることに成功した。両コンストラクトにより、E.コリBL21(DE3)において、IPTGで誘導した際に、タンパク質が大量に産生されるようになる。しかし、誘導されるアビジン−リンカー−MTBhsp70タンパク質は、殆ど封入体中で見られ、これは、可溶化、変性され、再び折り畳まれ得る。
【0155】
グアニジン塩酸塩及びDTTでの変性後、過剰のDTTを不活性化するシステインを含有する4種類の異なる再折り畳み緩衝液(1)Tween40、システイン;2)Tween60、システイン;3)CTAB、システイン;4)SB3−14、システイン)中でタンパク質を希釈する。3%CA溶液を添加した後、タンパク質を室温で一晩、再折り畳み処理する。再折り畳みのレベルを評価するために、再折り畳みタンパク質アリコートをビオチン被覆ウェルに添加した。このようにして、正しく再び折り畳まれたアビジン−リンカー−MTBhsp70タンパク質はそれらのウェルの底部に強く結合する。MTBhsp70に対するモノクローナル抗体を使用し、続いて、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識したヤギ抗マウス(H+L)抗体を用いて結合抗MTBhsp70を検出することによって、プレート結合タンパク質の量を測定した。450nmで光学密度を記録し、%最大シグナルとして結果を表した。この結果は図12で示される。各タンパク質の適正な再折り畳みは、異なる条件に対する対象となる各タンパク質を含み得る。これらのタンパク質の再折り畳みMTBhsp70部分の生物学的活性を評価するために、それらのATP加水分解能を測定し得る。さらに、THP−1細胞でのMTBhsp70の化学走性効果が測定され得る。
【実施例2】
【0156】
m/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70タンパク質の自己集合性及び生物学的活性は次のように測定され得る:
1)ATPase活性の測定。MTBhsp70のN末端部分は、ある種のアッセイ条件下でATPを加水分解することが知られている。発明者らのm/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70タンパク質の適正な再折り畳みは、市販の調製物及び発明者ら自身のMTBhsp70のATPase活性とそれらのATPase活性を比較することにより評価され得る。
【0157】
2)化学走性アッセイ/ケモカイン産生の誘導の測定
発明者らのm/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70タンパク質のMTBhsp70部分の適正な再折り畳みの別のアッセイは、細胞株THP−1からのCCケモカインをそれらが首尾よく誘導することである。単球細胞株THP−1のMTBHhsp70への曝露は、RANTES、MIP−1α及びMIP−1βの産生を誘導することが知られている。同様に、これらのケモカインは、化学走性活性を刺激するはずである。
【0158】
3)自己集合性。再び折り畳まれたm/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70タンパク質はビオチンに結合する。自己集合性を明らかにするために、これらのタンパク質の、ビオチン化分子との安定な複合体の形成能が明らかにされ得る。ビオチン化オボアルブミン及びビオチン化eGFPへの結合が明らかにされ得る。抗MTBhsp70及び抗ビオチン化抗原との免疫沈降によって首尾よく集合したことが評価される。
【0159】
4)免疫のインビボ誘導。ビオチン化オボアルブミン−m/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70及びビオチン化Ova257−264−m/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70でのC57BL/6マウスの免疫付与時に、CD8T細胞の活性化を測定することによって、自己集合性ワクチンの免疫刺激活性が明らかにされ得る。
【実施例3】
【0160】
ビオチン化HRP及びビオチン化抗OVA抗体と自己集合したアビジンとのMTBHSP70コンストラクト
方法
i)プラスミドコンストラクト
発現ベクターpET45b(+)にMTBHSP70をサブクローニングし、次にN末端にCD8特異的なオボアルブミンペプチド(ova257−264)を連結させた。公開配列に基づくアビジン及び単量体アビジンを集合させ、MTBHSP70のN−末端で、発現ベクターpET45b(+)に連結させた。
【0161】
ii)タンパク質発現及び精製
様々なコンストラクトでE.コリBL21(DE3)を形質転換し、IPTGの添加により発現を誘導した。エンドトキシンを除去するために、TritonX−114(Sigma)の存在下でIMACによりタンパク質を精製した。
【0162】
iii)免疫付与
オボアルブミン又はOva257−264−L−MTBHSP70を用いて皮下経由でC57BL/6雄マウスに免疫付与し、第30日に屠殺した。
【0163】
iv)結果判定
a.インターフェロン−γ。2回の皮下免疫付与後、マウスを第30日に屠殺し、脾臓細胞を調製した。ブレフェルジンA(golgi plug)及びOva257−264ペプチド又は無関係のペプチドの存在下で、脾臓細胞(2x106個/ウェル)を37℃で4時間温置した。PBS中の5%FBSで細胞を洗浄することによって温置を停止し、次いで、細胞をBDのCytofix/Cytoperm溶液で透過処理した後、CD3、CD4、CD8及びインターフェロン−γに対して染色を行った。フローサイトメトリーにより細胞染色を評価し、Flow Joを用いて分析した。
【0164】
b.五量体染色。上述のように細胞を処理し、さらに最初にR−PE結合組み換えマウスMHC五量体H−2Kb SIINFEKL(PROIMMUNEより)で細胞を処理した。
【0165】
c.自己集合。ELISAに基づくアッセイを使用した。ビオチン化ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)の様々な濃度と、精製され再折り畳まれたアビジン−MTBHSP70と、を混合した。この混合物をHis−Grabプレート(Thermo Scientific)に添加し、PBS0.1%Tween20で洗浄することによって未結合ビオチン化HRPを除去し、次いでTMBを添加した。20分後に反応を停止させ、450nmで結果を読み取った。
【0166】
結果
6xHis−MTBHSP70及び6xHis−Ova(257−264)−MTBHSP70融合タンパク質をE.コリBL21(DE3)細胞で発現させた。何れの場合も、融合コンストラクトにおいてNotI-XhoI MTBHsp70断片を使用した。IPTGを添加することによってタンパク質発現を誘導した。細胞を溶解し、可溶性(#1及び#4)、ペリプラズム(#2及び#5)及び封入体分画に分画化した。各分画からのアリコートを4−12%Bis−Tris NUPAGEゲル(Invitrogen)上での変性SDS−PAGEに供した。
【0167】
i)E.コリにおいてMTBHSP70に連結されたアビジン及び単量体アビジンの発現
野生型アビジン(wアビジン)及び単量体アビジンを集合させ、pET45b(+)にクローニングした。MTBHSP70のN末端に連結された6xHis−アビジンからなる融合コンストラクトを調製した。E.コリBL21(DE3)を形質転換するために各プラスミドコンストラクトを使用し、IPTGにより発現を誘導した。
【0168】
ii)免疫付与#1
次のように、第1及び17日にC57BL/6雄マウスに皮下経路で免疫付与し、第30日に屠殺した。
【0169】
・オボアルブミン+CFA
・オボアルブミン
・オボアルブミン+MTBhsp70
・Ovapeptide−MTBhsp70
【0170】
iii)結果判定
CD8ペプチドSIINFEKL(Ova257−264)で脾臓細胞を刺激した際のインターフェロンγ産生を測定し、結果を図16及び下記の表1で示す。
【0171】
【表1】
【0172】
iv)免疫付与#2
免疫付与#1に対して記載されたように、C57BL/6マウス(雄)に皮下経路でに免疫付与した。免疫付与群は次のとおりであった。
【0173】
・群A CFA+オボアルブミン(3匹のマウス)
・群B CFA+Ovaペプチド(257−264)(3匹のマウス)
・群C Ovaペプチド−MTBhsp70融合物(3匹のマウス)
・群D Ovaペプチド+MTBhsp70(3匹のマウス)
・群E MTBhsp70(3匹のマウス)
・群F 食塩水 1匹のマウス
v)結果判定
脾臓細胞を回収し、CD3、CD4、CD8及びH−2Kb/SIINFEKL(OVA)五量体(ProImmuneより)で染色した。
【0174】
vi)結論
HSP融合タンパク質コンストラクトを開発し、E.コリで発現させた。MTBHSP70のN末端へのOvaペプチド257−264の融合の結果、インターフェロン−γ産生及びH−2Kb/SIINFEKL(OVA)染色により測定した場合、抗原特異的なT細胞を拡張することに成功した。
【実施例4】
【0175】
MTBHSP70のN又はC末端にアビジンを含むための修飾コンストラクト
i)自己集合性の測定
His−GrabプレートELISAを用いて、ビオチン化ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)との融合タンパク質アビジン−MTBHSP70の自己集合性を評価した。グアニジン塩酸塩で封入体を可溶化し、グアニジンの漸減濃度を含有する緩衝液に対してゆっくりと透析した。His−Grabプレートに添加する前に、部分的に再び折り畳まれたタンパク質をビオチン化HRPの様々な量と温置した。450nmでプレートの読み取りを行った。
【0176】
ii)自己集合性ワクチンの標的化の評価
フローサイトメトリーにより自己集合性ワクチンの標的化を評価した。部分的に再び折り畳まれたアビジンMTBHSP70タンパク質をビオチン化抗オボアルブミン抗体と温置し、複合体を磁性Hisタグ特異的ビーズ上で捕捉した。過剰抗体の除去後、Alexa Fluor555標識オボアルブミンを添加した。R−PEチャンネルでのフローサイトメトリーにより、試料を分析した。ビーズ単独と比較した場合、非常に弱い差異が観察された。統計学的分析により、標的化された自己集合が確認された。
【0177】
iii)結論
MTBHSP70のN末端でのペプチド抗原又はアビジンの何れかからなる融合タンパク質が首尾よく発現された。MTBHSP70のN末端にインフレームで融合されたOvaペプチド(257−264)での免疫付与によって、インターフェロンγ産生及びCD8+T細胞(五量体染色)の拡張により測定した場合、抗原特異的な免疫反応が誘導された。MTBHSP70のN又はC末端でアビジンを発現するコンストラクトもまた設計し、このようにして、ビオチン化された臨床的に関連のある抗体とのこのコンストラクトの自己集合が可能となった。E.コリにおいてアビジン融合タンパク質が首尾よく発現されたが、封入体では見られなかった。これらのタンパク質の再折り畳みはある程度成功し、現在最適化されている。予備実験において、ビオチン化モノクローナル抗体とのTBHSP70−アビジンの低効率自己集合が明らかとなった。
【0178】
【表2】
【0179】
同等物
本発明の具体的な実施形態を考察してきたが、上記明細書は、例示であり、限定するものではない。本願を見直せば、本発明の多くの変更が当業者にとって明らかとなろう。添付の特許請求の範囲は、全てのかかる実施形態及び変更を主張するものであり、本発明の範囲全体は、同等物及び明細書のそれらの範囲全体とともに、かかる変更とともに、特許請求の範囲に対する参照により定められるべきである。
【0180】
参考文献
関連法は、発明者らによりPCT/US2007/061554で開示され、全体の内容が参照により本明細書中に組み込まれる。ncbi.nlm.nih.gov.のワールドワイドウェブ上でのNational Center for Biotechnology Information(NCBI)の公開データベースにおけるエントリーに関連する受入番号を参照する何らかのポリヌクレオチド及びタンパク質配列もまた、それらの全体において参照により組み込まれる。本願を通じて引用されるような、参考文献、交付済み特許、公開又は非公開の特許出願を含む全ての引用参考文献の内容もまた、参照により本明細書により明らかに組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、米国仮出願第61/046,195号(2008年4月18日提出)(その全体的内容は参照により本明細書中に明確に組み込まれる。)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンによる免疫付与は、今も疾患及び感染の脅威に対する防御の要である。ワクチン開発における重要な問題点は、ワクチン又は抗毒素を具体的な脅威に迅速に適合させることである。現在のワクチン開発ストラテジーは、感染又は疾患の撲滅を成功させるために標的とすることができる抗原の同定及び特性評価に依存する。現在のワクチン開発ストラテジーは、時間及び労働集約的であり、脅威が出現しないとこの開発ストラテジーを開始できない。このようなストラテジーはまた、標的抗原が個体間で変動する疾患を治療するための個人用ワクチンを作製するためには実際的でない。従って、最新のワクチン開発ストラテジーは、新しい重大な脅威が現れた場合には不十分であり、新しい重大な脅威に対して、このような脅威が含有され得る前に標的抗原を同定し特性評価するための十分な時間をとることはできない。現在のワクチン開発ストラテジーはまた、一般集団に対する個人用ワクチンを作製するためにも不十分である。
【0003】
このように、個人用ワクチンを作製するための、及び急に現れ、急速に作用し及び/又は感染性が強い重大な脅威となるものを含有するための、技術プラットフォームが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある態様において、本発明は、関心のある抗原に対する免疫反応を誘導するために対象に投与することができる医薬組成物に関する。ある実施形態において、本組成物は、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を含む。別の実施形態において、本組成物は、ビオチン結合タンパク質に融合させられ、少なくとも1、2、3又は4個のビオチン化成分に非共有結合させられた熱ショックタンパク質を含む。ある一定の実施形態において、本ビオチン化成分は、同じであるか又は異なる分子である。ビオチン化成分の非限定例には、ビオチン化タンパク質、細胞及びウイルスが含まれる。ビオチン化タンパク質の非限定例には、ビオチン化抗原、抗体及び共刺激分子が含まれる。
【0005】
関心のある抗原を発現し示すか又はその一部を提示する対象において、ウイルス又は細胞の確立及び増殖を阻止する、関心のある抗原に対する免疫を生成させるために、予防的に本発明の組成物を使用することができる。このようにして、関心のある抗原を発現する腫瘍又は外来細胞の確立及び増殖の阻止が達成され得る。本明細書中で提供される組成物はまた、さらなるウイルス又は細胞増殖を阻止するために又は関心のある抗原を発現し示すか又は抗原の一部を提示する腫瘍細胞を含め、増殖する対象の細胞を排除するために、以前にウイルスに感染したか又はこのような細胞を保有する対象において治療的に使用することもできる。
【0006】
別の実施形態において、組成物は、本明細書中で提供されるような、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び/又はビオチン化されるべきタンパク質の発現を指示することができる発現ベクターを含む。
【0007】
またさらなる実施形態において、本発明は、熱ショックタンパク質及びこの4個のビオチン化成分の非共有結合性複合体を形成させるために十分に、4個のビオチン化成分と、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を接触させることを含み、この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つが同一ではない、自己集合性医薬組成物を作製するための方法を提供する。本発明はまた、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分を対象に投与することを含む(この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つは同一ではない。)、対象において免疫反応を誘導するための方法も提供する。本発明は、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分を対象に投与することを含む(この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つは同一ではない。)、対象において治療の効力を高めるための方法をさらに提供する。
【0008】
ビオチン化モノクローナル抗体及びビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質の投与は、免疫の有効性及び利用可能なモノクローナル抗体の効力を劇的に促進し得、これは、もしそうでなければ、弱いワクチン免疫原として働く。さらに、関心のある抗原に対する抗体の産生及び細胞毒性T細胞の刺激を刺激し得る免疫刺激性複合体を産生させるためには、特異的な標的抗原に対するモノクローナル抗体又は免疫血清が利用可能であるだけで十分であり得る。最後に、本明細書中に記載の医薬組成物によって、各抗原に特異的なscFv及び又は抗体に対してscFv特異的な熱ショック融合タンパク質を作製する必要がなくなる。
【0009】
このようにして、本発明は、1)未同定の、特徴不明の抗原に対するワクチンの調製;2)個人用ワクチンの調製;3)医薬組成物(例えばワクチン)の迅速な作製(これにより、同様に、このような医薬組成物の作製能力を向上させることが可能になる。);及び4)モノクローナル抗体などの既存の治療薬を「強化する」ことを可能にする、既存の技術を上回る明確な長所を提供する。本明細書中に記載の技術により、様々な異なる抗原、ペプチド又は抗原標的分子(1本鎖抗体の腫瘍抗原特異的モノクローナル抗体を含む。)との、固定化及び強力なアジュバントの自己集合が可能になる。
【0010】
さらなる特性及び長所は「発明を実施するための形態」及び「特許請求の範囲」で記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、pET−45b(+)発現ベクターの改変を示す。A)SfiI制限部位の挿入物の概略図。B)改変pET−45b(+)ベクターの最終的な多重クローニング部位。
【図2】図2は、MTBhsp70へのNotI及びXhoI制限部位の導入を示す。MTBhsp70のN及びC末端に重複するプライマーを用いて、NotI部位及びXhoI部位をPCRにより導入した。得られたPCR産物をレーン1で示す。
【図3】図3は、ゲルの写真で示されるような2つのバンドを生ずるNotI及びXhoIでの増幅MTBhsp70の消化を示す。配列決定分析により、内部NotI及びSfiI部位の存在が証明された。
【図4】図4は、PCRに基づく部位特異的突然変異誘発を用いることによる、NotI及びSfiI部位の除去を示す。所望の突然変異を含有する改変プライマーを用いて、2つの重複PCR産物を作製した。プライマーなしでPCRを行い、その後特異的プライマーを添加することによりこれらを伸長させた。
【図5】図5は、MTBhsp70のN末端でのオボアルブミンペプチド(残基254−264)の導入を示す。発明者らは、オボアルブミンペプチドSIINFEKLをコードする合成リンカーを設計し、SfiI及びNotIで消化した。同様に、発明者らは、SfiI及びNotIでpET−45b(+)MTBhsp70プラスミドを切断した。両成分を結合させ(ライゲーション)、コンピーテント細菌を形質変換するために結合(ライゲーション)産物を使用した。アンピシリン耐性コロニーを採取し、配列決定によりスクリーニングした。
【図6】図6は、Ova257−264−MTBhsp70のN末端領域の部分的配列決定を示す。
【図7】図7は、自己集合性医薬組成物の熱ショックタンパク質融合の構造の概略図である。ビオチン結合タンパク質としてアビジンに個別にそれぞれ融合される、熱ショックタンパク質MTB−HSP−70及びヒトHSP−70を示す。
【図8】図8は、野生型及び単量体アビジンの集合に対するストラテジーを示す。
【図9】図9は、野生型と単量体アビジンとの間のアミノ酸及びヌクレオチド比較を示す。
【図10】図10は、PCRに基づく突然変異誘発により補正される配列エラーを示す。
【図11】図11は、部分的MTBhsp70配列が示される、単量体/野生型アビジン−リンカー−MTBhsp70配列を示す。
【図12】図12は、封入体中で見られるアビジン−リンカー−MTBhsp70タンパク質の再折り畳みを示す。
【図13】図13は、多価自己集合性ワクチンを形成するための、熱ショックタンパク質融合物(MTb HSP70及びアビジンの融合タンパク質として示される。)及び4個のビオチン化成分(ビオチン化ペプチド1−4として示される。)の多価自己集合の概略図である。
【図14】図14は、それぞれマイコバクテリウム・ツベルキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)HSP70及びマイコバクテリウム・ボブス(Mycobacterium bovus)HSP70由来のHSP70の全長タンパク質配列を示す。
【図15】図15は、熱ショック融合タンパク質及びビオチン化成分の自己集合性ワクチンの説明である。熱ショック融合タンパク質はここでHSP−アビジン融合物として示され、ビオチン化成分はビオチン化モノクローナル抗体(ビオチン化mAb)として示される。
【図16】図16は、インターフェロン−γ産生のフローサイトメトリー分析を示す。
【図17】図17は、ビオチンと結合するように集合する場合の、4個の四量体化アビジンメンバーの周囲で四量体として組み立てられた、4個の単量体HSP−アビジン融合物が結合した、MTb HSP70−アビジン融合物の2−D分子モデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
便宜上、本発明のさらなる説明の前に、明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲において使用されるある一定の用語をここで定義する。
【0013】
文脈から別段の明らかな指示がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」には、複数形の対象が含まれる。
【0014】
「投与する(administer)」又は「投与していること(administering)」という用語は、全身性又は局所投与を含む、本発明の医薬組成物の送達の何らかの方法を含む。「非経口」とは、通常、注射による、腸及び局所投与以外の投与方式を意味し、これには、限定されないが、静脈内、筋肉内、病巣内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下(subcutaneous)、皮下(subcuticular)、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内注射、経口、硬膜外、鼻内及び点滴が含まれる。
【0015】
「アミノ酸」という用語は、天然であれ合成であれ、アミノ官能基及び酸性官能基の両方を含み、天然アミノ酸のポリマーに含まれ得る、全ての分子を含むものとする。代表的アミノ酸としては、天然のアミノ酸;その類似体、誘導体及びコンジナー;変異側鎖を有するアミノ酸類似体;及び前出のものの何れかの全ての立体異性体が挙げられる。天然アミノ酸の名称は、本明細書中でIUPAC−IUBの推奨に従い略称する。
【0016】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン又はその誘導体を指し、これらは、特異的な結合能及び免疫グロブリン結合ドメインに対して相同であるか又は相同性が大きい結合ドメインを有するタンパク質を維持する。「抗体」という用語は、全抗体又はその抗原結合断片を包含するものとする。これらのタンパク質は、天然源由来であるか又は部分的もしくは完全に合成により作製され得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。この抗体は、ヒトクラス:IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEの何れかを含む、何らかの種からの何らかの免疫グロブリンクラスのメンバーであり得る。代表的実施形態において、本明細書中に記載の方法及び組成物とともに使用される抗体は、IgGクラスの誘導体である。抗体は、改変又は天然抗体であり得る。
【0017】
「抗体断片」という用語は、全長未満の抗体の何らかの誘導体を指す。代表的実施形態において、この抗体断片は、全長抗体の特異的な結合能の少なくとも重要な部分を保持する。抗体断片の例としては、以下に限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、scFv、Fv、dsFvダイアボディ及びFd断片が挙げられる。この抗体断片は、何らかの手段により産生され得る。例えば、この抗体断片は、無傷抗体の断片化により酵素的又は化学的に作製され得、これは、部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組み換え産生され得るか又は完全にもしくは部分的に合成により作製され得る。この抗体断片は、場合によっては1本鎖抗体断片であり得る。あるいは、この断片は、例えばジスルフィド結合により一緒に連結される複数の鎖を含み得る。この断片はまた、場合によっては多分子複合体でもあり得る。機能的抗体断片は、一般的に、少なくとも約50個のアミノ酸を含み、より一般的には、少なくとも約200個のアミノ酸を含む。
【0018】
「抗原」は、本明細書中に記載の組成物により誘導される免疫反応の標的を指す。抗原は、タンパク質抗原であり得、対象の、ウイルス又は感染細胞、外来細胞もしくは腫瘍細胞の表面で示される完全タンパク質、タンパク質の断片ならびに、タンパク質のプロセシング及び提示の結果、例えば典型的なMHCクラスI又はII経路を通じて、感染細胞、外来細胞又は腫瘍細胞により露呈されるペプチドを含むと理解されたい。このような外来細胞の例としては、細菌、真菌及び原生動物が挙げられる。細菌抗原の例としては、プロテインA(PrA)、プロテインG(PrG)及びプロテインL(PrL)が挙げられる。
【0019】
「抗原結合部位」という用語は、抗原上のエピトープに特異的に結合する抗体の領域を指す。
【0020】
「ビオチン結合タンパク質」という用語は、ビオチンに非共有結合するタンパク質を指す。ビオチン結合タンパク質は、単量体、二量体又は四量体であり得、本明細書中に記載のように、それぞれ1価、2価又は4価の医薬組成物を形成可能であり得る。非限定例としては、抗ビオチン抗体、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンが挙げられる。アビジンは、成熟アビジン又は、NCBI受入番号NP_990651により識別される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%同一である配列を含み得る。ストレプトアビジンは、例えば、NCBI受入番号AAU48617により識別される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%同一である配列を含み得る。「ビオチン結合タンパク質」という用語は、単量体、二量体又は四量体を形成する、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンの野生型及び誘導体を包含するものとする。このような誘導体の例を下記で示し、またLaitinen、O.H.(2007)、「Brave New(strept)avidins in Biotechnology」、Trends in Biotechnology 25(6):269−277及びNordlund、H.R.(2003)、「Introduction of histidine residues into avidin subunit interfaces allows pH−depenndent regulation of quaternary structure and biotin binding」、FEBS Letters 555:449−454(これら両方の内容は参照により本明細書中に明確に組み込まれる。)でも示す。
【0021】
抗原含有ビオチン化成分としてこの文脈で使用される場合、「細胞」という用語は、細胞全体又はその一部を包含するものとするが、ただし、この一部とは、ビオチン化「細胞」を含む医薬組成物が対象に投与される場合、免疫系による認識のために接近可能な表面上の関心のある抗原を含有する。
【0022】
「含む(comprise)」及び「含むこと(comprising)」という用語は、さらなる要素が含まれ得る、包括的なオープンセンスの意味で使用される。
【0023】
「共刺激分子」という用語は、本明細書中で使用される場合、抗原特異的な一次T細胞刺激物の刺激効果を促進するか又は細胞活性化に必要とされる閾値レベルを超えるその活性を惹起する(その結果、ナイーブT細胞の活性化が起こる。)かの何れかが可能であるあらゆる分子を含む。このような共刺激分子は、膜上にある受容体タンパク質であり得る。
【0024】
「有効量」という用語は、所望の結果をもたらすのに十分である医薬組成物の量を指す。医薬組成物の有効量は、1以上の投与で投与され得る。
【0025】
「改変抗体」という用語は、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメイン由来の抗原結合部位を含む少なくとも1つの抗体断片を含み、場合によっては、Igクラス(例えばIgA、IgD、IgE、IgG、IgM及びIgY)の何れかからの抗体の可変及び/又は定常ドメインの全体又は一部を含み得る、組み換え分子を指す。改変抗体の例としては、強化された1本鎖モノクローナル抗体及び強化されたモノクローナル抗体が挙げられる。改変抗体の例は、PCT/US2007/061554にさらに記載されている(その全体の内容が参照により本明細書中に組み込まれる。)。
【0026】
「エピトープ」という用語は、抗体が選択的及び特異的に結合する抗原の領域を指す。モノクローナル抗体は、分子的に定義され得る分子の単一の特異的なエピトープに選択的に結合する。本発明において、多特異性抗体によって複数のエピトープが認識され得る。
【0027】
「融合タンパク質」とは、少なくとも2つの異なるタンパク質からの配列を含むハイブリッドタンパク質を指す。この配列は、同種又は異種生物のタンパク質由来であり得る。様々な実施形態において、この融合タンパク質は、第一のタンパク質に連結された1以上のアミノ酸配列を含み得る。複数のアミノ酸配列が第一のタンパク質に融合される場合、この融合配列は、同じ配列の複数コピーであり得るか又はあるいは異なるアミノ酸配列であり得る。第一のタンパク質を第二のタンパク質の、N末端、C末端又はN及びC末端に融合させ得る。
【0028】
「Fab断片」という用語は、酵素パパイン(これは、インターH−鎖ジスルフィド結合に対してN末端側でヒンジ領域で切断し、1つの抗体分子から2つのFab断片を生じさせる。)による抗体の切断により作製された抗原結合部位を含む抗体の断片を指す。
【0029】
「F(ab’)2断片」という用語は、酵素ペプシン(これは、インターH−鎖ジスルフィド結合に対してC末端側でヒンジ領域で切断する。)での抗体分子の切断により作製される、2つの抗原結合部位を含有する抗体の断片を指す。
【0030】
「Fc断片」という用語は、その重鎖の定常ドメインを含む抗体の断片を指す。
【0031】
「Fv断片」という用語は、その重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含む抗体の断片を指す。「遺伝子コンストラクト」とは、ポリペプチドに対する「コード配列」を含むか又は生物学的に活性のあるRNA(例えば、アンチセンス、デコイ、リボザイムなど)に転写可能である、ベクター、プラスミド、ウイルスゲノムなどの核酸を指し、細胞に、例えばある一定の実施形態においては哺乳動物細胞に、遺伝子移入され得、そのコンストラクトで遺伝子移入された細胞においてコード配列の発現を引き起こし得る。この遺伝子コンストラクトは、コード配列ならびにイントロン配列、ポリアデニル化部位、複製起点、マーカー遺伝子などに操作可能に連結される1以上の制御エレメントを含み得る。
【0032】
「宿主細胞」は、指定された移入ベクターで形質導入され得る細胞を指す。この細胞は、場合によっては、細胞培養物由来のものなどのインビトロ細胞、生物由来のものなどのエクスビボ細胞及び生物におけるものなどのインビボ細胞から選択される。このような用語が、特定の対象細胞を指すだけでなく、このような細胞の子孫又は潜在的な子孫も指すことを理解されたい。突然変異又は環境的影響の何れかにより続く世代である一定の修飾が起こり得るので、このような子孫は、実際、親細胞と同一ではない場合があるが、これも、本明細書中で使用される場合、この用語の範囲内に含まれる。
【0033】
「免疫原性」という用語は、物質の、免疫反応誘発能を指す。「免疫原性組成物」又は「免疫原」は、免疫反応を誘発する組成物又は物質である。「免疫反応」とは、抗原の存在に対する対象の反応を指し、これには、次のもの:抗体の産生、免疫の発現、抗原に対する過敏性の発現及び耐性の発現のうち少なくとも1つが含まれ得る。
【0034】
「含むこと(including)」という用語は、本明細書中で、「含むが、限定されない」ことを意味するために使用される。「含む」及び「含むが、限定されない」は交換可能に使用される。
【0035】
「リンカー」は、当技術分野で認識されており、熱ショックタンパク質及びビオチン結合タンパク質など、2つの共有結合性部分を連結する分子又は分子の群を指す。このリンカーは、1つの連結分子からなり得るか又は連結分子及びスペーサー分子(特異的な距離により連結分子及び連結される部分を分離するため)を含み得る。
【0036】
「多価抗体」という用語は、複数の抗原認識部位を含む、抗体又は改変抗体を指す。例えば、「2価」抗体は2つの抗原認識部位を有し、一方で「4価」抗体は4個の抗原認識部位を有する。「単一特異性」、「二特異性」、「三特異性」、「四特異性」などという用語は、多価抗体において存在する異なる抗原認識部位特異性の数を指す(抗原認識部位の数ではない。)。例えば、「単一特異性」抗体の抗原認識部位は全て同じエピトープに結合する。「二特異性」抗体は、第一のエピトープに結合する少なくとも1つの抗原認識部位及び第一のエピトープとは異なる第二のエピトープに結合する少なくとも1つの抗原認識部位を有する。「多価単一特異性」抗体は、全て同じエピトープに結合する複数の抗原認識部位を有する。「多価二特異性」抗体は、複数の抗原認識部位を有し、このうちいくつかは第一のエピトープに結合し、いくつかは、第一のエピトープとは異なる第二のエピトープに結合する。
【0037】
「多価」という用語は、本明細書中に記載の自己集合性医薬組成物に関する場合、複数のビオチン化成分に非共有結合する熱ショック融合タンパク質を指す。「2価」という用語は、本明細書中に記載の自己集合性医薬組成物に関する場合、2つのビオチン化成分に非共有結合する熱ショック融合タンパク質を指す。「4価」という用語は、本明細書中に記載の自己集合性医薬組成物に関する場合、4個のビオチン化成分に非共有結合する熱ショック融合タンパク質を指す。多価医薬組成物のビオチン化成分は同一であるか又は異なり得る。
【0038】
「核酸」という用語は、ヌクレオチド、リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドの何れか又はヌクレオチドの何れかのタイプの修飾形態、のポリマー形態を指す。この用語はまた、同等物として、ヌクレオチド類似体から構成されるRNA又はDNAの何れかの類似体及び、記載されている実施形態に適用可能である場合、1本鎖(センス又はアンチセンスなど)及び2本鎖ポリヌクレオチドを含むことも理解されたい。
【0039】
「患者」又は「対象」又は「宿主」は交換可能に使用され、それぞれ、ヒト又は非ヒト動物の何れかを指す。
【0040】
「医薬的に許容可能な」という句は、健全な医学的判断の範囲内で、妥当なリスク対効果比にふさわしい、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又はその他の問題又は合併症がない、ヒト及び動物の組織との接触における使用に適切である医薬組成物を指すために本明細書中で使用される。
【0041】
「医薬的に許容可能な担体」とは、本明細書中で使用される場合、本医薬組成物をある器官又は身体の一部から別の器官又は身体の一部に運搬又は輸送することに関与する、液体又は固形の充填剤、希釈剤、賦形剤又は溶媒封入物質など、医薬的に許容可能な物質、組成物又はビヒクルを意味する。各担体は、処方物のその他の成分と適合し、患者に対して有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。医薬的に許容可能な担体として役立ち得る物質の一部の例として、(1)糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばコーンスターチ及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えばカカオバター及び坐薬用ワックス;(9)油、例えばピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質不含水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;及び(22)製剤処方で使用されるその他の無毒性の適合物質が挙げられる。
【0042】
文脈により明確に指示されない限り、「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、例えば、コード配列によりコードされるようなアミノ酸配列など、遺伝子発現産物を指す場合、本明細書中で交換可能に使用される。「タンパク質」はまた、抗体などの1以上のタンパク質の会合物も指し得る。「タンパク質」は、タンパク質断片も指し得る。タンパク質は、グリコシル化タンパク質などの翻訳後修飾されたタンパク質であり得る。「遺伝子発現産物」は、遺伝子の全体又は一部の転写の結果として産生される分子を意味する。遺伝子産物には、遺伝子から転写されたRNA分子ならびにこのような転写産物から翻訳されたタンパク質が含まれる。
【0043】
タンパク質は、天然の単離タンパク質であり得るか又は組み換え又は化学合成の産物であり得る。「タンパク質断片」という用語は、参照タンパク質それ自身と比較した場合にアミノ酸残基が欠失しているが、参照タンパク質のものと残りのアミノ酸配列が通常は同一であるタンパク質を指す。このような欠失は、参照タンパク質のアミノ末端もしくはカルボキシ末端又はあるいは両方で起こり得る。断片は、一般に、少なくとも約5、6、8又は10アミノ酸長、少なくとも約14アミノ酸長、少なくとも約20、30、40又は50アミノ酸長、少なくとも約75アミノ酸長又は少なくとも約100、150、200、300、500以上のアミノ酸長である。より大きなタンパク質を断片化するために、プロテイナーゼを使用して、又は、タンパク質コードヌクレオチド配列(単独又は別のタンパク質コード核酸配列と融合しているかの何れか)の一部のみの発現など、組み換え法により、断片を得ることができる。様々な実施形態において、断片は、例えば細胞受容体に対する、参照タンパク質の、酵素活性及び/又は相互作用部位を含み得る。別の実施形態において、断片は免疫原性特性を有し得る。このタンパク質は、様々な公知の技術により特定の遺伝子座に導入される突然変異を含み得、これは、悪影響を与えないが、本明細書中で提供される方法でのそれらの使用を促進し得る。断片は、参照タンパク質の生物学的活性の1以上を保持し得る。
【0044】
「自己集合性」という用語は、本明細書中で使用される場合、本明細書中に記載のような、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質の、ビオチン化成分との非共有結合性複合体形成能を指す。このような能力は、ビオチン結合タンパク質とのビオチンの非共有結合により付与される。
【0045】
「1本鎖可変断片」又は「scFv」という用語は、重鎖ドメイン及び軽鎖ドメインが連結されるFv断片を指す。1以上のscFv断片は、1以上の抗原認識部位を有する抗体コンストラクトを形成するために、その他の抗体断片(重鎖又は軽鎖の定常ドメインなど)に連結され得る。
【0046】
対象における疾患を「治療する」又は疾患に罹患している対象を「治療する」とは、対象に、医薬品治療、例えば、その疾患の程度が軽減されるか又は予防されるよう、薬物の投与を行うことを指す。治療は、(以下に限定されないが)、医薬組成物などの組成物の投与を含み、予防的に行い得るか、又は病理学的事象の発生後に行い得る。
【0047】
「ワクチン」という用語は、関心のある抗原に対する免疫反応を誘発する医薬組成物を指す。このワクチンはまた、さらに対象に防御的免疫も付与し得る。
【0048】
「ベクター」とは、それが連結されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。好ましいベクターのあるタイプは、エピソーム、即ち、染色体外複製可能な核酸である。好ましいベクターは、それらが連結される核酸の自律的複製及び/又は発現の可能なものである。それらが操作可能に連結される遺伝子の発現を指示することが可能なベクターは、本明細書中で「発現ベクター」と呼ばれる。一般に、組み換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合、一般に、ベクター形態において、染色体に結合されない、環状の2本鎖DNAループを指す「プラスミド」の形態である。本明細書において、プラスミドは、ベクターの最も一般的に使用される形態であるため、「プラスミド」及び「ベクター」は、交換可能に使用される。しかし、当業者にとって当然のことながら、本発明は、同等の機能を果たし、その後当技術分野で知られるようになる、発現ベクターのこのようなその他の形態を含むものとする。
【0049】
「ウイルス」という用語は、抗原含有ビオチン化成分として文脈中で使用される場合、ビオチン化「ウイルス」を含む医薬組成物が対象に投与されるとき、その部分が、免疫系による認識のために接近可能な表面上に関心のある抗原を含有するならば、ウイルス粒子全体又はその一部を包含するものとする。
【0050】
一般的事項
本発明は、対象に投与される際に、非常に強力な免疫反応を生じさせるために複数の免疫成分を組み合わせる新規ワクチンプラットフォームを特色とする。新しいワクチンの迅速な組み立てのために複数のサブユニットを連結させる組成物及び方法も提供される。
【0051】
本発明は、少なくとも部分的に、非共有結合での抗体又は抗原のビオチン化成分との熱ショックタンパク質融合の結果、細胞性、特に細胞介在性細胞溶解、非共有結合タンパク質抗原に対する反応(この反応は抗原を提示する細胞を殺滅し得る。)を強く刺激する組成物が得られるという発見に基づく。
【0052】
熱ショックタンパク質融合物
「熱ショックタンパク質」は、「熱ショック遺伝子」又はストレス遺伝子によりコードされ、(遺伝子を含有する)生物の、ストレス因子、例えば、熱ショック、低酸素、グルコース欠乏、重金属塩、エネルギー代謝及び電子伝達の阻害剤及びタンパク質変性因子に対するか又はある種のベンゾキノンアンサマイシンに対する接触又は曝露に起因して、活性化又は検出可能に上方制御される遺伝子を指す。Nover、L.、Heat Shock Response、CRC Press、Inc.、Broca Raton、FL(1991)。「熱ショックタンパク質」にはまた、公知のストレス遺伝子ファミリー内の遺伝子によりコードされる相同タンパク質も、このような相同遺伝子がそれ自身ストレス因子により誘発されないとしても、含まれる。
【0053】
「熱ショックタンパク質融合物」は、ビオチン結合タンパク質に連結される熱ショックタンパク質を指す。例えば、熱ショックタンパク質は、熱ショックタンパク質融合物を作製するために、ビオチン結合タンパク質にC又はN末端で連結され得る。本明細書中で提供されるビオチン化成分と組み合わせて投与される場合、熱ショックタンパク質融合物は、関心のある抗原に対するCD8細胞毒性T細胞(CTL)反応を含む、液性及び/又は細胞性免疫反応を刺激又は促進することができる。
【0054】
例えば、限定ではないが、本発明に従い使用され得る熱ショックタンパク質には、BiP(grp78とも呼ばれる。)、Hsp10、Hsp20−30、Hsp60、hsp70、hsc70、gp96(grp94)、hsp60、hsp40及びHsp100−200、Hsp100、Hsp90及びそのファミリーのメンバーが含まれる。特に好ましい熱ショックタンパク質は、下記で例示されるように、BiP、gp96及びhsp70である。熱ショックタンパク質の特定の群には、Hsp90、Hsp70、Hsp60、Hsp20−30、さらに好ましくはHsp70及びHsp60が含まれる。hsp70ファミリーのメンバーが最も好ましい。
【0055】
Hsp10の例には、GroES及びCpn10が含まれる。Hsp10は、通常、E.コリで及び真核細胞のミトコンドリア及び葉緑体で見られる。Hsp10は、Hsp60オリゴマーと会合する7員環を形成する。Hsp10はまた、タンパク質フォールディングにも関与する。
【0056】
Hsp60の例には、マイコバクテリウム由来のHsp65が含まれる。細菌Hsp60は、一般に、E.コリ由来のGroELなど、GroELという名称でも知られる。Hsp60は、大型のホモオリゴマー複合体を形成し、タンパク質のフォールディングにおいて重要な役割を果たすと思われる。Hsp60相同体は、真核細胞ミトコンドリア及び葉緑体に存在する。
【0057】
Hsp70の例には、哺乳動物細胞由来のHsp72及びHsc73、細菌、特にマイコバクテリウム、例えば、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・ツベルキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)及びマイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)(カルメットゲラン桿菌など;本明細書ではHsp71と呼ぶ。)由来のDnaK、エスケリキア・コリ(大腸菌、Escherichia coli)、酵母及びその他の原核生物由来のDnaK及びBip及びGrp78が含まれる。Hsp70は、ATPのならびに、フォールディングされていないタンパク質に特異的に結合することが可能であり、それにより、タンパク質フォールディング及び解除ならびにタンパク質複合体の集合及び分散に関与し得る。好ましい実施形態において、熱ショックタンパク質は、MTb HSP70であるか又はそれ由来である。マイコバクテリウム・ツベルキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)HSP70及びマイコバクテリウム・ボブス(Mycobacterium bovus)HSP70の全長タンパク質配列は、それぞれ配列番号1及び2として図2で示す。本明細書中に記載の方法と組み合わせて使用されるべき熱ショックタンパク質融合物は、配列番号1又は2と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%同一である配列を含み得る。
【0058】
Hsp90の例には、大腸菌のHtpG、酵母のHsp83及びHsc83及びヒトのHsp90アルファ、Hsp90ベータ及びGrp94が含まれる。Hsp90は、タンパク質群に結合するが、そのタンパク質は、通常、細胞の調節分子、例えば、ステロイドホルモン受容体(例えば、グルココルチコイド、エストロゲン、プロゲステロン及びテストステロン受容体)、転写因子及びシグナル伝達機構に関与するタンパク質キナーゼである。Hsp90タンパク質はまた、その他の熱ショックタンパク質を含む、大型で、豊富なタンパク質複合体の形成にも関与する。
【0059】
Hsp100の例としては、哺乳動物Hsp110、酵母Hsp104、ClpA、ClpB、ClpC、ClpX及びClpYが挙げられる。酵母Hsp104及びE.コリClpAは、六量体粒子を形成し、E.コリClpBは四量体粒子で、その集合にはアデニンヌクレオチド結合が必要であると思われる。Clpプロテアーゼは、ClpP(タンパク質分解サブユニット)及びClpAから構成される750kDaヘテロオリゴマーを提供する。ClpB−Yは、ClpAと構造的に関連するが、ClpAとは異なり、それらはClpPと複合体を形成しないと思われる。
【0060】
Hsp100−200の例には、(グルコース制御タンパク質に対する)Grp170が含まれる。Grp170は、ER内腔、プレゴルジ区画の中に存在し、免疫グロブリンのフォールディング及び集合に関与し得る。
【0061】
本発明に従い、熱ショックタンパク質の天然又は組み換え由来突然変異が使用され得る。例えば、限定ではないが、本発明は、細胞からのそれらの分泌を促進するように突然変異が行われた熱ショックタンパク質の使用を提供する(例えば、KDEL(配列番号266)又はその相同体など、小胞体回復を促進するエレメントの突然変異又は欠失がある;このような突然変異は、参照により本明細書中に組み込まれるPCT出願第PCT/US96/13233(WO97/06685)に記載されている。)。
【0062】
特定の実施形態において、本発明の熱ショックタンパク質は、腸内細菌、マイコバクテリウム(特に、M.レプレ、M.ツベルキュロシス、M.ヴァケエ、M.スメグマチス及びM.ボビス)、E.コリ、酵母、ショウジョウバエ、脊椎動物、鳥類、ニワトリ、哺乳動物、ラット、マウス、霊長類又はヒトから得られる。
【0063】
本明細書中で提供される医薬組成物は、酸化又は還元により修飾される個々のアミノ酸残基を有し得る。さらに、様々な置換、欠失又は付加は、アミノ酸又は核酸配列に対して為され得、その全体的効果は、熱ショックタンパク質の生物学的活性の向上を維持するか又はさらにそれを促進することである。コード縮重ゆえに、例えば、同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列のかなりの変異が存在し得る。「熱ショックタンパク質」という用語は、熱ショックタンパク質から得られる熱ショックタンパク質の断片を包含するものとし、提供されるこのような断片は、関心のある抗原に対する免疫反応を促進することに関与するエピトープを含む。熱ショックタンパク質の断片は、プロテイナーゼを用いて又はストレスタンパク質コードヌクレオチド配列の一部のみの発現(単独又は別のタンパク質コード核酸配列と融合させて、の何れか)などの組み換え法により、得られ得る。本熱ショックタンパク質は、免疫系におけるその影響を促進するための様々な公知の技術により、特定の遺伝子座に導入される突然変異を含み得る。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Drinkwater及びKlinedinst Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3402−3406(1986);Liao及びWise、Gene 88:107−111(1990);Horwitzら、Genome 3:112−117(1989)を参照のこと。
【0064】
特定の実施形態において、例えば、熱ショックタンパク質とビオチン結合タンパク質との間の化学結合を含む熱ショックタンパク質融合において、本発明で使用される熱ショックタンパク質は、単離熱ショックタンパク質であり、これは、熱ショックタンパク質が、それらが産生される宿主細胞から選択され、分離されたことを意味する。ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質の融合物として熱ショック物が組み換え発現されるある実施形態において、本発明で使用される熱ショックタンパク質融合物は、単離熱ショックタンパク質融合物であり、これは、熱ショックタンパク質が、それらが産生される宿主細胞から選択され、分離されたことを意味する。本明細書中に記載のように、及び当技術分野で公知のタンパク質単離の通常の方法を用いて、このような単離を行い得る。Maniatisら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1982);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Deutscher、M.、Guide to Protein Purification Methods Enzymology、vol.182.Academic Press、Inc.、San Diego、CA(1990)。
【0065】
ビオチン化成分
「ビオチン化成分」という用語は、本明細書中で使用される場合、ビオチン化された、タンパク質、細胞又はウイルスを指す。ビオチン化タンパク質の非限定例には、ビオチン化された、抗原、抗体及び共刺激分子が含まれる。このビオチン化成分は、本明細書中に記載のように、熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて投与されるべきものである。
【0066】
i)抗原含有ビオチン化成分
ある実施形態において、このビオチン化成分は、対象由来であり、これは、医薬組成物が投与されるべき者と同一又は異なる者であり得る。例えば、免疫反応が所望されるタンパク質、細胞及び/又はウイルスは、対象から単離され得、場合によっては、インビトロで増幅又はクローニングされ得る。次に、このタンパク質、細胞及び/又はウイルスは、当技術分野で公知の方法を用いてインビトロでビオチン化され得る。次に、タンパク質、細胞及び/又はウイルスが単離された同一の対象に、本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて、このビオチン化成分が投与され得、このようにして、個人用ワクチンの開発が可能になる。あるいは、このビオチン化成分は、タンパク質、細胞及び/又はウイルスが単離された者とは異なる対象に、本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて投与され得る。後者のアプローチによって、一般集団に投与される場合、疾患又は感染因子に対する一般集団用のワクチンの開発が可能になる。
【0067】
これらのアプローチの両者とも、現在の技術を上回る独特の長所を与え、即ち、この成分は、特定の疾患又は感染に対するその相互関連を可能にし、対象からのその単離を可能にする程度まで識別されれば十分である。これは、配列が未知であり得るか又は構造も同定され得ない抗原を標的とするための新規アプローチである。従って、本発明は、既知であるか又は識別されていない、特徴が分からない抗原に対する免疫反応を誘導するための医薬組成物の調製を可能にする。細胞又は抗体などのタンパク質は、例えば、ビオチン化成分が投与されるべき同一宿主由来であるので、個人用ワクチンは、HLA拘束性(HLA restriction)が問題とならないということにおいて、従来のワクチンを上回るさらなる長所を提供する。
【0068】
ワクチンを作製するために熱ショックタンパク質に合成抗原ペプチドを直接連結するかわりに、scFvは、例えば、代わりにビオチンに結合され得、本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合部分と組み合わせて投与され得、このようにして、液性及びCD−8反応の両方を惹起するためにAPCに抗原を提示するための新規融合タンパク質ワクチンを使用する。scFv1は、例えば、結合実験による特徴の分からない抗原へ又は特徴の分かっている抗原へのそれらの結合によって、選択され得る。この例において、scFvは、ビオチン化され、例えば熱ショックタンパク質融合部分と組み合わせて投与されるべきものである。
【0069】
同様に、本明細書中に記載の熱ショック融合タンパク質と組み合わせて投与される場合、ビオチン化タンパク質、細胞及び/又はウイルスが、関心のある抗原に対する免疫反応を標的とするように、何らかのタンパク質、細胞及び/又はウイルスがビオチン化され、本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合部分と組み合わせられて対象に投与され得る。
【0070】
このような細胞の例は、対象から単離された腫瘍細胞であり、これが、ビオチン化され、本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合物と組み合わせられて投与される。この腫瘍細胞は、本発明における対象への導入又は再導入前に、この細胞が、再生せず、投与される対象に対して害を及ぼさないように処理されるべきである。これは、ビオチン化の前又は後に、腫瘍細胞を亜致死線量で放射線照射することにより達成され得る。この腫瘍細胞は、その表面上で抗原を発現し、その独自性は既知であっても又は未知であっても又は特徴が分かっていても又は特徴が分かっていなくてもよい。熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて対象に投与される場合、非共有結合性複合体は、腫瘍抗原に対する免疫反応を誘導する。この結果は、抗原を発現する細胞に対する「キラーT細胞」反応であり、それにより、破壊に対する疾患のある細胞型を標的化する。
【0071】
腫瘍細胞は、本発明の方法により治療されるか又は予防されるべき癌の型の細胞である。このような細胞には、以下に限定されないが、例えば、ヒト肉腫細胞又は癌細胞、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺腫、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、悪性黒色腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫;白血病、例えば、急性リンパ性白血病及び急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤血白血病);慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ性白血病);及び真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症又は重鎖疾患細胞が含まれる。
【0072】
上述のように同じ方式でビオチン化され得、熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて投与され得るその他の細胞には、「キラーT細胞」反応が所望される、対象におけるあらゆる細胞が含まれる。このような細胞の例には、その表面上で抗原を発現するその他の疾患及び/又はウイルス感染細胞が含まれる。腫瘍細胞に対して上述されるように、これらの細胞は、好ましくは、本発明における対象への導入又は再導入前に、それらの細胞が再生しないか又は対象に害を及ぼさないように処置される。これは、ビオチン化の前又は後に、細胞を亜致死線量で放射線照射することにより達成され得る。このような細胞は、非感染性となるように又は、毒素分泌細胞である場合は、毒素をもはや分泌しないように処置され得る。
【0073】
本発明の方法により治療又は予防され得る感染疾患は、感染性因子により引き起こされる。ビオチン化され、本発明と組み合わせて投与され得るこのような感染性因子又はそれ由来の抗原には、以下に限定されないが、ウイルス、細菌、真菌及び原生動物が含まれる。本発明は、細胞内病原体により引き起こされる感染疾患を治療又は予防することに限定されないが、同様に細胞外病原体を含むものとする。多くの医学関連微生物は文献で詳述されていおり、例えば、C.G.A Thomas、Medical Microbiology、Bailliere Tindall、Great Britain 1983(その内容全体が参照により本明細書中に組み込まれる。)を参照のこと。
【0074】
ある実施形態において、抗原又はウイルス抗原を発現するウイルスは、上述のものと同様にして、ビオチン化され、熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて投与され得る。
【0075】
ヒト及び非ヒト脊椎動物両方の感染性ウイルスには、抗原を発現する、レトロウイルス、RNAウイルス及びDNAウイルスが含まれる。ウイルスの例としては、以下に限定されないが:レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、HIV−1など(HTLV−III、LAV又はHTLV−III/LAV又はHIV−IIIとも呼ばれる。);及びその他の分離株、HIV−LPなど;ピコマウイルス科(Picomaviridae)(例えばポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(例えば胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えばウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラウイルス(Flaviridae)科(例えばデング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えばコロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えばエボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えばパラインフルエンザウイルス、おたふくかぜウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器多核体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(例えばハンタウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス及びナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えばレオウイルス、オルビウイルス及びロタウイルス);ビマウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(殆どのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1及び2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);及びイリドウイルス科(例えばアフリカブタコレラウイルス);及び未分類ウイルス(例えば海綿状脳症の原因物質、デルタ肝炎の原因物質(B型肝炎ウイルスの欠陥ウイルスと思われる。)、非A非B型肝炎の原因物質(クラス1=内部感染(internally transmitted);クラス2=非経口感染(即ちC型肝炎);ノーウォーク及び関連ウイルス及びアストロウイルス)が含まれる。
【0076】
もくろまれるレトロウイルスには、単純型レトロウイルス及び複雑型レトロウイルスの両方が含まれる。単純型レトロウイルスには、B型レトロウイルス、C型レトロウイルス及びD型レトロウイルスのサブグループが含まれる。B型レトロウイルスの例は、マウス乳癌ウイルス(MMTV)である。C型レトロウイルスには、サブグループC型A群(ラウス肉腫ウイルス(RSV)、トリ白血病ウイルス(ALV)及びトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)が含まれる。)及びC型B群(マウス白血病ウイルス(MLV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、マウス肉腫ウイルス(MSV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、脾臓壊死ウイルス(SNV)、細網内皮症ウイルス(RV)及びサル肉腫ウイルス(SSV)が含まれる。)が含まれる。D型レトロウイルスには、アカゲザルウイルス(MPMV)及びサルレトロウイルス1型(SV−I)が含まれる。複雑型レトロウイルスには、レンチウイルス、T細胞白血病ウイルス及び泡沫状ウイルスのサブグループが含まれる。レンチウイルスには、HIV−Iだけでなく、HIV−2、SIV、ビスナウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)及びウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)も含まれる。T細胞白血病ウイルスには、HTLV−I、HTLV−II、サルT細胞白血病ウイルス(STLV)及びウシ白血病ウイルス(BLV)が含まれる。泡沫状ウイルスには、ヒト泡沫状ウイルス(HFV)、サル泡沫状ウイルス(SFV)及びウシ泡沫状ウイルス(BFV)が含まれる。
【0077】
脊椎動物における抗原であるRNAウイルスの例には、限定されないが、次のものが含まれる:次のものを含むレオウイルス科のメンバー、オルトレオウイルス属(哺乳動物及びトリレトロウイルス両方の複数の血清型)、オルビウイルス属(ブルータングウイルス、ユーギナンギーウイルス、ケメロボウイルス、アフリカ馬疫ウイルス及びコロラドダニ熱ウイルス)、ロタウイルス属(ヒトロタウイルス、ネブラスカウシ下痢ウイルス、マウスロタウイルス、サルロタウイルス、ウシ又はヒツジロタウイルス、トリロタウイルス);次のものを含むピコマウイルス科、エンテロウイルス属(ポリオウイルス、コクサッキーウイルスA及びB、腸細胞壊死性ヒトオーファン(enteric cytopathic human orphan)(ECHO)ウイルス、A型肝炎ウイルス、サルエンテロウイルス、マウス脳脊髄炎(ME)ウイルス、ネズミポリオウイルス、ウシエンテロウイルス、ブタエンテロウイルス)、カルディオウイルス属(脳心筋炎ウイルス(EMC)、メンゴウイルス)、ライノウイルス属(少なくとも113サブタイプを含むヒトライノウイルス;その他のライノウイルス)、アプトウイルス属(口蹄疫(FMDV));次のものを含むカリシウイルス科、ブタ水疱疹ウイルス、サンミゲルアシカウイルス、ネコピコルナウイルス及びノーウォークウイルス;次のものを含むトガウイルス科、アルファウイルス属(東部ウマ脳炎ウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、チクングンヤウイルス、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス)、フラビウイルス属(蚊媒介性黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、中欧ダニ媒介ウイルス、極東ダニ媒介ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス、オムスク出血熱ウイルス)、ルビウイルス属(風疹ウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス、ブタコレラウイルス、ボーダー病ウイルス);次のものを含むブニヤウイルス科、ブニウイルス属(ブニヤムウェラ及び関連ウイルス、カリフォルニア脳炎群ウイルス)、フレボウイルス属(サシチョウバエ熱シチリア型ウイルス、リフトバレー熱ウイルス)、ナイロウイルス属(クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ナイロビ羊病疾患ウイルス)及びウクウイルス属(ウクニエミ及び関連ウイルス);次のものを含むオルトミクソウイルス科、インフルエンザウイルス属(インフルエンザウイルスA型、多くのヒトサブタイプ);ブタインフルエンザウイルス及びトリ及びウマインフルエンザウイルス;インフルエンザB型(多くのヒトサブタイプ)及びインフルエンザC型(個別の属の可能性あり);次のものを含むパラミクソウイルス科、パラミクソウイルス属(パラインフルエンザウイルス1型、センダイウイルス、血球吸着ウイルス、パラインフルエンザウイルス2型から5型、ニューキャッスル病ウイルス、おたふくかぜウイルス)、モルビリウイルス属(麻疹ウイルス、亜急性硬化性全脳炎脳炎ウイルス、ジステンパーウイルス、牛疫ウイルス)、肺炎ウイルス属(呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸器多核体ウイルス及びマウスの肺炎ウイルス);森林ウイルス、シンドビスウイルス、チクングニヤウイルス、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス)、フラビウイルス属(蚊媒介黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、中欧ダニ媒介ウイルス、極東ダニ媒介ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス、オムスク出血熱ウイルス)、ルビウイルス属(風疹ウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス、ブタコレラウイルス、ボーダー病ウイルス);次のものを含むブニヤウイルス科、ブニウイルス属(ブニヤムウェラ及び関連ウイルス、カリフォルニア脳炎群ウイルス)、フレボウイルス属(サシチョウバエ熱シチリア型ウイルス、リフトバレー熱ウイルス)、ナイロウイルス属(クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ナイロビ羊病疾患ウイルス)及びウクウイルス属(ウクニエミ及び関連ウイルス);次のものを含むオルトミクソウイルス科、インフルエンザウイルス属(インフルエンザウイルスA型、多くのヒトサブタイプ);ブタインフルエンザウイルス及びトリ及びウマインフルエンザウイルス;インフルエンザB型(多くのヒトサブタイプ)及びインフルエンザC型(個別の属の可能性あり);次のものを含むパラミクソウイルス科、パラミクソウイルス属(パラインフルエンザウイルス1型、センダイウイルス、血球吸着ウイルス、パラインフルエンザウイルス2型から5型、ニューキャッスル病ウイルス、おたふくかぜウイルス)、モルビリウイルス属(麻疹ウイルス、亜急性硬化性全脳炎脳炎ウイルス、ジステンパーウイルス、牛疫ウイルス)、肺炎ウイルス属(呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸器多核体ウイルス及びマウスの肺炎ウイルス);次のものを含むラブドウイルス科、ベシクロウイルス属(VSV)、チャンビプラ(ChanBipura)ウイルス、フランダース・ハート・パークウイルス)、リサウイルス属(狂犬病ウイルス)、魚類ラブドウイルス及び2種類の可能性のあるラブドウイルス(マルブルグウイルス及びエボラウイルス);次のものを含むアレナウイルス科、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCM)、タカリベウイルス複合体及びラッサウイルス;次のものを含むコロナウイルス科(Coronoaviridae)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、マウス肝炎ウイルス、ヒト腸コロナウイルス及びネコ伝染性腹膜炎(ネココロナウイルス)。
【0078】
脊椎動物における抗原である実例となるDNAウイルスには、以下に限定されないが、次のものが含まれる:次のものを含むポックスウイルス科、オルトポックスウイルス属(大痘瘡、小痘瘡、サルポックスワクシニア、牛痘、スイギュウポックス、ウサギポックス、エクロトメリア)、レポリポックスウイルス属(粘液腫、線維腫)、トリポックスウイルス属(家禽ポックス、その他のトリポックスウイルス)、カプリポックスウイルス属(ヒツジポックス、ヤギポックス)、スイポックスウイルス属(ブタポックス)、パラポックスウイルス属(伝染性膿胞性皮膚炎ウイルス、偽牛痘、ウシ丘疹性口炎ウイルス);イリドウイルス科(アフリカブタコレラウイルス、カエルウイルス2及び3、魚類のリンホシスチス病ウイルス);次のものを含むヘルペスウイルス科、アルファ−ヘルペスウイルス(単純ヘルペス1型及び2型、水痘帯状疱疹、ウマ流産ウイルス、ウマヘルペスウイルス2型及び3型、仮性狂犬病ウイルス、伝染性ウシ角結膜炎ウイルス、伝染性ウシ鼻気管炎ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス)、β−ヘルペスウイルス(ヒトサイトメガロウイルス及びブタ、サル及びげっ歯類のサイトメガロウイルス);γ−ヘルペスウイルス(エプスタインバーウイルス(EBV)、マレック病ウイルス、リスザルヘルペス、クモザルヘルペスウイルス、ウサギヘルペスウイルス、モルモットヘルペスウイルス、ルッケ腫瘍(Lucke tumor)ウイルス);次のものを含むアデノウイルス科、マストアデノウイルス属(ヒトサブグループA、B、C、D、E及び未分類;サルアデノウイルス(少なくとも23種の血清型)、伝染性イヌ肝炎及びウシ、ブタ、ヒツジ、カエル及び多くのその他の種のアデノウイルス、トリアデノウイルス属(トリアデノウイルス);及び培養不可能なアデノウイルス;次のものを含むパポウイルス科、パピローマウイルス属(ヒトパピローマウイルス、ウシパピローマウイルス、ショープウサギパピローマウイルス及びその他の種の様々な病原性パピローマウイルス)、ポリオーマウイルス属(ポリオーマウイルス、サル空胞形成因子(SV−40)、ウサギ空胞形成因子(RKV)、Kウイルス、BKウイルス、JCウイルス及びその他の霊長類ポリオーマウイルス、例えばリンパ球向性パピローマウイルスなど);次のものを含むパルボウイルス科、アデノ関連ウイルス属、パルボウイルス属(ネコ汎血球減少症ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、アリューシャンミンク病ウイルスなど)。最後に、DNAウイルスには、クル及びクロイツフェルト・ヤコブ病ウイルス及び慢性伝染性神経障害因子などの上記科に合致しないウイルスが含まれ得る。
【0079】
ii)抗体含有ビオチン化成分
別の実施形態において、抗体などの免疫治療薬は、ビオチン化され、本明細書中に記載のような熱ショックタンパク質融合物と組み合わされて投与され得る。天然抗体はそれ自身二量体であり、従って2価である。異なる抗体を産生する2種類のハイブリドーマ細胞を人工的に融合させた場合、このハイブリッドハイブリドーマにより産生される抗体のうちあるものは、異なる特異性を有する2つの単量体から構成される。このような二重特異性抗体はまた、2種類の抗体を化学的に結合させることによって作製することもできる。天然抗体及びその二重特異性誘導体は、比較的大きく、産生のための費用が嵩む。マウス抗体の定常ドメインもまた、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応の主要原因となり、このため、治療薬としてこのようなマウス抗体は広く使用できない。マウス抗体はまた、それらがFc受容体に結合するために不必要な作用を引き起こし得る。これらの理由のために、分子免疫学者らは、微生物におけるはるかに小さいFab−及びFv−断片の作製に努力を傾けている。これらのより小さな断片は、作製がはるかに簡単であるだけでなく、免疫原性もより小さく、エフェクター機能がなく、比較的小型であるために、組織及び腫瘍へより良好に浸透可能である。Fab断片の場合、可変ドメインに近接する定常ドメインが、重鎖及び軽鎖二量体の安定に大きく関与する。従って、本発明と組み合わせて使用されるべき抗体が全長又はほぼ全長の改変抗体を含み得る一方で、より小さい、単一ドメインの改変抗体(多価及び多重特異性であり得る。)が好ましいものであり得る。
【0080】
Fv断片は、はるかに安定性が劣り、従って、安定性を向上させるために、重鎖と軽鎖可変ドメインとの間にペプチドリンカーが挿入され得る。このコンストラクトは、単鎖Fv(scFv)断片として知られている。さらなる安定性のために、この3つのドメイン間にジスルフィド結合が導入されることがある。
【0081】
抗体の可変ドメインだけを用いて、2価、二重特異性抗体を構築することができる。非常に効率的で比較的単純な方法は、VHドメインとVLドメインとの間のリンカー配列を、それらのドメインが折り重なって、互いに結合できなくなるほど短くすることである。このリンカー長を3−12残基に短縮することによって、scFv分子の単量体形態が阻止され、VH−VL分子間対形成が有利になり、60kDaの、非共有結合性scFv二量体「ダイアボディ」が形成される(Holligerら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90、6444−6448)。このダイアボディ形式は、組み換えの二重特異性抗体の作製に対しても使用され得、このような抗体は、ある抗体からのVHドメインが、別の抗体のVLドメインに短いリンカーによって連結されるという、2本の1本鎖融合産物の非共有結合によって得られる。リンカー長をさらに3残基未満に短縮することによって、その結果、三量体(「トリアボディ」、約90kDa)又は四量体(「テトラボディ」、約120kDa)が形成され得る(Le Gallら、1999、FEBS Letters 453、164−168)。改変抗体、特に単一ドメイン断片に関する概要については、Holliger及びHudson、2005、Nature Biotechnology、23:1126−1136を参照のこと。このような改変抗体は全て、ビオチンと結合させられ、本明細書で提供される方法において使用され得る。
【0082】
本実施形態と組み合わせて使用され得るその他の多価改変抗体は、Luら、2003、J.Immunol.Meth.279:219−232(ダイ−ダイアボディ又は4価二重特異性抗体);米国出願公開第20050079170(多量体Fv分子又は「フレキシボディ」)及びWO第99/57150及びKipriyanovら、1999、J.Mol.Biol.293:41−56(タンデムダイアボディ又は「タンダブ」)に記載されている。
【0083】
上述の多価改変抗体の何れも、通常の組み換えDNA技術、例えば、国際出願PCT/US86/02269;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;PCT国際公開第86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Betterら(1988)Science 240:1041−1043;Liuら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liuら(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sunら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimuraら(1987)Cancer Res.47:999−1005;Woodら(1985)Nature 314:446−449;Shawら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559);Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oiら(1986)Bio Techniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesら(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyanら(1988)Science 239:1534;Beidlerら(1988)J.Immunol.141:4053−4060;及びWinter及びMilstein、Nature、349、pp.293−99(1991))に記載のようなDNA技術を用いて、当業者により開発され得る。好ましくは、非ヒト抗体は、この非ヒト抗原結合ドメインを、ヒトの定常ドメインと連結することによって「ヒト化」される(例えばCabillyら、米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81、pp.6851−55(1984))。
【0084】
本改変抗体の抗原認識部位又は可変領域全体は、何らかの関心のある抗原に対する1以上の親抗体由来であり得る。この親抗体は、天然抗体、天然抗体から改変された抗体又は抗体の配列を用いてデノボ構築されたか又は関心のある抗原に特異的であることが知られる抗体を含み得る。親抗体由来であり得る配列としては、重鎖及び/又は軽鎖可変領域及び/又はCDR、フレームワーク領域又はそれらのその他の部分が挙げられる。
【0085】
多価、多重特異性抗体は、2以上の可変領域を含む重鎖及び/又は1以上の可変領域を含む軽鎖を含有し得、これらの可変領域のうち少なくとも2つは、同じ抗原上の異なるエピトープを認識する。
【0086】
様々な公知のアッセイを用いて、ビオチン化しようとする候補抗体を活性についてスクリーニングし得る。例えば、結合特異性を決定するスクリーニングアッセイは周知であり、当技術分野で日常的に実施されている。このようなアッセイの総括的考察については、Harlowら(編)ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor、N.Y.、1988、第6章を参照のこと。
【0087】
ある実施形態において、本抗体は、モノクローナル抗体であり及び/又は癌に対して、インビボ治療及び/又は予防的用途を有する。ある実施形態において、本抗体は、感染疾患の治療及び/又は予防のために使用され得る。治療用及び予防用抗体の例としては、以下に限定されないが、次のものが挙げられる:ERBITUX(R)(セツキシマブ)(ImClone System)、MDX−010(Medarex、NJ)(現在のところ臨床にある前立腺癌の治療のためのヒト化抗CTLA−4抗体である。);SYNAGIS(R)(MedImmune、MD)(呼吸器多核体ウイルス(RSV)感染の患者の治療のためのヒト化抗RSVモノクローナル抗体である。);HERCEPTIN(R)(トラスツズマブ)(Genentech、CA)(転移性乳癌の患者の治療のためのヒト化抗HER2モノクローナル抗体である。)。その他の例は、ヒト化抗CD18F(ab’)2(Genentech);CDP860(ヒト化抗CD18F(ab’)2(Celltech、UK)である。);PRO542(CD4と融合させられた抗HIVgp120抗体(Progenics/Genzyme Transgenics)である。);Ostavir(ヒト抗B型肝炎ウイルス抗体である(Protein Design Lab/Novartis)。);PROTOVIRTM(ヒト化抗CMV IgG1抗体である(Protein Design Lab/Novartis)。);MAK−195(SEGARD)(マウス抗TNF−αF(ab’)2(Knoll Pharma/BASF)である。);IC14(抗CD14抗体である(ICOS Pharm)。);ヒト化抗VEGF IgG1抗体(Genentech);OVAREXTM(マウス抗CA125抗体(Altarex)である。);PANOREXTM(マウス抗17−IA細胞表面抗原IgG2a抗体である(Glaxo Wellcome/Centocor)。);BEC2(マウス抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体である(ImClone System)。);IMC−C225(キメラ抗EGFR IgG抗体である(ImClone System)。);VITAXINTM(ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体である(Applied Molecular Evolution/MedImmune)。);Campath 1H/LDP−03(ヒト化抗CD52 IGGI抗体である(Leukosite)。);SmartM195(ヒト化抗CD33IgG抗体である(Protein Design Lab/Kanebo)。);RITUXANTM(キメラ抗CD20 IgG1抗体である(IDEC Pharm/Genentech、Roche/Zettyaku)。);LYPHOCIDETM(ヒト化抗CD22IgG抗体である(Immunomedics)。);Smart ID10(ヒト化抗HLA抗体である(Protein Design Lab)。)であり;ONCOLYMTM(Lym−1)は放射性標識マウス抗HLA診断試薬抗体であり(Techniclone);ABX−IL8は、ヒト抗IL8抗体であり(Abgenix);抗CD11aはヒト化IgG1抗体であり(Genentech/Xoma);ICM3はヒト化抗ICAM3抗体であり(ICOS Pharm);IDEC−114は霊長類化抗CD80抗体であり(IDEC Pharm/Mitsubishi);ZEVALINTMは放射性標識マウス抗CD20抗体であり(IDEC/Schering AG);IDEC−131はヒト化抗CD40L抗体であ(IDEC/エーザイ)り;IDEC−151は霊長類化抗CD4抗体であり(IDEC);IDEC−152は霊長類化抗CD23抗体であり(IDEC/Seikagaku);SMART抗CD3はヒト化抗CD3IgGであり(Protein Design Lab);5G1.1はヒト化抗補体因子5(C5)抗体であり(Alexion Pharm);D2E7はヒト化抗TNF−α抗体であり(CAT/BASF);CDP870はヒト化抗TNF−αFab断片であり(Celltech);IDEC−151は霊長類化抗CD4IgG1抗体であり(IDEC Pharm/SmithKline Beecham);MDX−CD4はヒト抗CD4 IgG抗体であり(Medarex/エーザイ/Genmab);CDP571はヒト化抗TNF−α IgG4抗体であり(Celltech);LDP−02はヒト化抗α4B7抗体であり(LeukoSite/Genentech);OrthoClone OKT4Aはヒト化抗CD4IgG抗体であり(Ortho Biotech);ANTOVATMはヒト化抗CD40L IgG抗体であり(Biogen);ANTEGRENTMはヒト化抗VLA−4 IgG抗体であり(Elan);MDX−33はヒト抗CD64(FcγR)抗体であり(Medarex/Centeon);SCH55700はヒト化抗IL−5 IgG4抗体であり(Celltech/Schering);SB−240563及びSB−240683はそれぞれヒト化抗IL−5及びIL−4抗体であり(SmithKline Beecham);rhuMab−E25はヒト化抗IgE IgG1抗体であり(Genentech/Novartis/Tan−ox Biosystems);ABX−CBLはマウス抗CD−147IgM抗体(Abgenix);BTI−322はラット抗CD2IgG抗体(Medimmune/Bio Transplant)であり;OrthoClone/OKT3はマウス抗CD3IgG2a抗体であり(Ortho Biotech);SIMULECTTMはキメラ抗CD25IgG1抗体であり(Novartis Pharm);LDP−01はヒト化抗β2−インテグリンIgG抗体であり(LeukoSite);抗LFA−1はマウス抗CD18F(ab’)2であり(Pasteur−Merieux/Immunotech−);CAT−152はヒト抗TGF−β2抗体であり(Cambridge Ab Tech);Corsevin Mはキメラ抗第VII因子抗体である(Centocor)。
【0088】
自己集合性ワクチン
さらに記載されるように、熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて、複数のビオチン化成分が投与され得る。このようにして、多価医薬組成物が作製され、対象に投与され得る。多価医薬組成物の作製により、「強化された」又はより強力なワクチン及び治療薬の作製が可能になる。ビオチン化成分が抗体を含む場合、このようなワクチンは、市販抗体よりも活性が向上している。
【0089】
医薬組成物が多価である場合、投与しようとするビオチン化成分は、本明細書中に記載のビオチン化成分の何らかの組み合わせであり得る。例えば、同じ又は異なるビオチン化成分は、本明細書中で提供されるような熱ショックタンパク質融合物と組み合わせて投与され得るが、ただし、ビオチン結合タンパク質及び同様に熱ショックタンパク質融合物は、多価であるか又は複数のビオチン化成分に結合可能である。例として、野生型ビオチン結合タンパク質アビジンは、4個のビオチン−結合部位を有し、従って、4個のビオチン化成分に結合可能である。この例において、この4個の部位は4個のビオチン化成分により結合されるべきものであり、ビオチン結合成分は、本明細書中に記載の、1、2、3、4又は4個の同一ビオチン化成分の何れかの可能な配列での独自性に基づき、混合され得、組み合わせられ得る。4個のビオチン結合部位に、4個の同一ビオチン化成分を結合させ得る。
【0090】
従って、第一の独自性を有するビオチン化成分の有効量は、4部の第一の独自性のビオチン化成分及びビオチン結合タンパク質に融合させられた1部の熱ショックタンパク質を含む医薬組成物を形成するために十分である、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と組み合わせて対象に投与され得る。あるいは、第一及び第二の独自性を有するビオチン化成分の有効量は、3部の第一の独自性のビオチン化成分及び1部の第二の独自性のビオチン化成分及び1部の熱ショックタンパク質融合物を含む医薬組成物を形成するために十分である、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と組み合わせて対象に投与され得る。別の実施形態において、第一及び第二の独自性を有するビオチン化成分の有効量は、2部の第一の独自性のビオチン化成分、2部の第二の独自性のビオチン化成分及び1部の熱ショックタンパク質融合物を含む医薬組成物を形成するために十分である、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と組み合わせて対象に投与され得る。
【0091】
自己集合性医薬組成物が2価である場合、第一の独自性のビオチン化成分の有効量は、2部の第一の独自性のビオチン化成分及び1部の熱ショックタンパク質融合物を含む医薬組成物を形成させるために十分である、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と組み合わせて、対象に投与され得る。あるいは、第一及び第二の独自性を有するビオチン化成分の有効量は、1部の第一の独自性のビオチン化成分、1部の第二の独自性のビオチン化成分及び1部の熱ショックタンパク質融合物を含む医薬組成物を形成させるために十分である、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と組み合わせて、対象に投与され得る。
【0092】
多価医薬組成物のビオチン化成分は、共刺激分子又は封鎖基(即ち、ビオチン単独又は非機能分子に結合したビオチン)を含み得る。本発明と組み合わせて投与され得る共刺激分子の例としては、B7−1(CD80)及びB7−2(CD86)を含むB7分子、CD28、CD58、LFA−3、CD40、B7−H3、CD137(4−1BB)及びインターロイキン(例えば、IL−1、IL−2又はIL−12)が含まれる。例として、共刺激分子を含む1部のビオチン化成分は、i)タンパク質、細胞又はウイルスを含む別のビオチン化成分3部;及びii)ビオチン結合タンパク質に融合させられた1部の熱ショックタンパク質と組み合わせて投与され得る。別の例において、共刺激分子を含む2部のビオチン化成分は、i)タンパク質、細胞又はウイルスを含む別のビオチン化成分2部;及びii)ビオチン結合タンパク質に融合させられた1部の熱ショックタンパク質と組み合わせて投与され得る。別の例において、共刺激分子を含む3部のビオチン化成分は、i)タンパク質、細胞又はウイルスを含む別のビオチン化成分1部;及びii)ビオチン結合タンパク質に融合させられた1部の熱ショックタンパク質と組み合わせて投与され得る。
【0093】
アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンのpH感受性突然変異は、例えば、ビオチンに対する、アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンの非共有結合を調節し、それにより、本明細書中に記載のように、ビオチン化成分の様々な入れ替え及び組み合わせがある熱ショックタンパク質融合物の所望の化学量論を達成するために使用され得る。アビジンなどのビオチン結合タンパク質の野生型又は特定の突然変異体の選択は、医薬組成物(例えば、アビジンの、単量体、二量体又は四量体)の所望の価数を調節するために使用され得る。1価又は2価ワクチンは、1価又は2価の形態以外でビオチンに結合する、その他のアビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジン突然変異タンパク質を含む熱ショック融合タンパク質を使用することによって、同様に作製され得る。アビジン突然変異の例は、下記の実施例セクションに記載する。pH調整可能なビオチン結合をもたらすアビジンのpH感受性点突然変異の例はY33Hである。別の突然変異は、Met96、Val115及びIle117に対するヒスチジンの置換(場合によってはTrp110でのヒスチジン置換を伴う。)である。ビオチン−ストレプトアビジン結合を調節するためのこのようなアプローチは、Laitinen、O.H.(2007)、「Brave New(Strept)Avidins in Biotechnology」、Trends in Biotechnology 25(6):269−277及びNordlund、H.R.(2003)、「Introduction of histidine residues into avidin subunit interfaces allows pH−dependent regulation of quaternary structure and biotin binding」、FEBS Letters 555:449−454(これらの両者の内容は、参照により本明細書中に組み込まれる。)に記載されている。
【0094】
自己集合性医薬組成物を作製する方法
本発明のある実施形態において、組成物は、2つの部分:ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質と、免疫反応が所望される抗原に対する免疫反応を標的とするビオチン化成分と、から構成される。本発明は、ビオチン化抗原又は抗体の作製は周知であり迅速であるので、大量の医薬組成物(例えばワクチン)の迅速で簡便な作製を可能とし、同様に、ワクチン産生能の向上を可能とする。単一独自性の熱ショックタンパク質融合物は、本明細書中に記載のように多くの様々なビオチン化成分の何れかと組み合わせて投与され得るので、新しい関心のある標的抗原が同定される毎に、熱ショック融合タンパク質をデノボ合成する必要はない。従ってこのような作製方法は、投与しようとする熱ショックタンパク質融合物が一旦確立され、作製されると、特に迅速である。
【0095】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を作製するための方法が提供される。この熱ショックタンパク質は、標準的技術を用いて、天然源、例えばFlynnら、Science 245:385−390(1989)に記載のものなどから、又は細菌、酵母又は哺乳動物細胞などの適切な宿主細胞での熱ショックコード遺伝子コンストラクトの発現など、組み換え技術を用いて、調製され得る。熱ショックタンパク質及びビオチン結合タンパク質を含む融合タンパク質は、組み換え手段により作製され得る。例えば、熱ショックタンパク質をコードする核酸は、2個のタンパク質コード配列が共通の翻訳リーディングフレームを有し、ビオチン結合タンパク質及び熱ショックタンパク質を含む融合タンパク質として発現され得るように、ビオチン結合タンパク質をコードする核酸配列の何れかの末端に連結され得る。組み合せ配列は、所望の発現特性及び宿主細胞の性質に基づき選択される適切なベクターに挿入される。後述の実施例において、核酸配列は、細菌E.コリにおけるタンパク質発現に適切なベクターにおいて集合させられる。選択された宿主細胞における発現後、融合タンパク質は、通常の生化学的分離技術により、又は融合タンパク質のある部分又はその他の部分に対する抗体を用いる免疫アフィニティー法によって、精製することができる。あるいは、選択されたベクターは、この融合タンパク質配列にタグを付加することができ、例えば、後述の実施例に記載されるようなオリゴヒスチジンタグを付加でき、これにより、タグ付加融合タンパク質の発現が可能となり、このタンパク質を、タグに対して適切に高い親和性を有する抗体又はその他の物質を用いて、アフィニティー法により精製することができる。Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Deutscher、M.、Guide to Protein Purification Methods Enzymology、vol.182.Academic Press、Inc.、San Diego、CA(1990)。哺乳動物細胞での発現に適切なベクター、例えば、後述のベクターの1つが使用される場合、熱ショックタンパク質融合物は、哺乳動物細胞において発現され、精製され得る。あるいは、(融合タンパク質コード配列を含む)哺乳動物発現ベクターは、対象に、この対象の細胞において熱ショックタンパク質融合タンパク質の直接的発現のために投与することもできる。熱ショックタンパク質をコードする核酸はまた、化学的に生成され、次いで、融合タンパク質作製及び精製又は対象への投与に適切なベクターに挿入することができる。最後に、融合タンパク質を化学的に調製することもできる。
【0096】
融合遺伝子を作製するための技術は当技術分野で周知である。基本的に、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNA断片の連結は、当技術分野に従い、結合(ライゲーション)のための平滑末端又は付着末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じて粘着末端の充填、不要の連結を回避するためのアルカリフォスファターゼ処理及び酵素的結合(ライゲーション)を用いて行われる。別の実施形態において、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む当技術分野により合成され得る。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、アンカープライマーを用いて行い得るが、このアンカープライマーは、2つの連続遺伝子断片の間に相補的突出部を生じさせ、次にこれらがアニーリングされ、キメラ遺伝子配列を生じさせる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992参照)。従って、ビオチン結合タンパク質をコードする遺伝子に融合させられた熱ショックタンパク質をコードする遺伝子の融合遺伝子を含む単離核酸が提供される。
【0097】
この核酸は、熱ショックタンパク質融合物をコードし、少なくとも1つの調節配列に操作可能に連結されるヌクレオチド配列を含むベクターにおいて提供され得る。発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択及び/又は発現されることが所望されるタンパク質のタイプなどの要因に依存し得ることを理解されたい。ベクターのコピー数、そのコピー数を調節する能力及びベクターによってコードされる何らかのその他のタンパク質、例えば抗生物質マーカーの発現を考慮すべきである。このようなベクターは、何らかの生物学的に有効な担体、例えば、キメラポリペプチドをコードする遺伝物質により、エクスビボ又はインビボの何れかで、細胞に効果的に遺伝子移入することが可能な何らかの処方物又は組成物において、投与され得る。方法には、組み換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス及び単純ヘルペスウイルス−1を含むウイルスベクター又は組み換え細菌又は真核細胞プラスミドでの核酸の挿入が含まれる。ウイルスベクターは、直接細胞に遺伝子移入するために使用され得、プラスミドDNAは、単独で、例えば、陽イオン性リポソーム(リポフェクチン)又は誘導体化(例えば、抗体結合された)ポリリジン結合体、グラミシジンS、人工ウイルスエンベロープ又はその他のこのような細胞内担体を用いて、送達され得る。核酸はまた、直接注入され得る。あるいは、核酸の細胞への進入を促進するために、リン酸カルシウム沈殿を行い得る。
【0098】
培養において増殖させられる細胞において、例えば、融合タンパク質を生産させるために、熱ショックタンパク質融合タンパク質の発現及び過剰発現を引き起こすために、本核酸が使用され得る。
【0099】
熱ショックタンパク質融合物を発現させるために、組み換え遺伝子によって遺伝子移入される宿主細胞もまた提供される。宿主細胞は何らかの原核細胞又は真核細胞であり得る。
【0100】
例えば、熱ショックタンパク質融合物は、大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス)、酵母、昆虫、植物又は哺乳動物細胞において発現され得る。宿主細胞がヒト細胞である場合、それは、生きている対象の中にあっても又はそうでなくてもよい。その他の適切な宿主細胞は当業者にとって公知である。さらに、宿主細胞には、ポリペプチドの発現を最適化するために、宿主では通常見られないtRNA分子を補充し得る。融合ポリペプチドの発現を最大にするために適切なその他の方法は、当業者にとって公知である。
【0101】
細胞培養は、宿主細胞、培地及びその他の副産物を含む。細胞培養に適切な培地は当技術分野で周知である。融合ポリペプチドは分泌され、細胞及び、ポリペプチドを含む培地の混合物から単離され得る。あるいは、融合ポリペプチドは、細胞質で維持されており、細胞を回収し、溶解し、そのタンパク質を単離し得る。融合ポリペプチドは、タンパク質を生成するための当技術分野で既知の技術(イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、限外ろ過、電気泳動及び融合体の特定エピトープに特異的な抗体での免疫アフィニティー精製を含む。)により、細胞培養液、宿主細胞又はその両者から単離され得る。
【0102】
従って、微生物又は真核細胞のプロセスを介してタンパク質の組み換え体を産生させるために、熱ショックタンパク質融合物の全て又は一部をコードするヌクレオチド配列を使用し得る。発現ベクターなどのポリヌクレオチドコンストラクトに配列を連結し、真核細胞(酵母、鳥類、昆虫又は哺乳動物)又は原核細胞(細菌細胞)の何れかの宿主に形質転換又は遺伝子移入することは、標準的手順である。本発明に従い、微生物手段又は組織培養技術によって組み換え融合ポリペプチドを調製するために、同様の手順又はその変法を使用し得る。
【0103】
組み換えタンパク質産生のための発現ビヒクルとしては、プラスミド及びその他のベクターが挙げられる。例えば、融合ポリペプチドの発現に適切なベクターとしては、次のタイプのプラスミド:E.コリなどの原核細胞における発現のための、pBR322由来プラスミド、pEMBL−由来プラスミド、pEX−由来プラスミド、pBTac−由来プラスミド及びpUC−由来プラスミドが挙げられる。
【0104】
別の実施形態において、熱タンパク質融合ポリペプチドをコードする核酸は、細菌プロモーター、例えば、嫌気性E.コリ、NirBプロモーター又はE.コリリポタンパク質llpプロモーター(例えばInouyeら(1985)Nucl.Acids Res.13:3101に記載);サルモネラpagCプロモーター(Millerら前出)、シゲラentプロモーター(Schmitt及びPayne、J.Bacteriol.173:816(1991))、Tn10におけるtetプロモーター(Millerら、前出)又はビブリオ・コレラ(Vibrio cholera)のctxプロモーターに、操作可能に連結される。あらゆるその他のプロモーターを使用し得る。細菌プロモーターは、構成的プロモーター又は誘発性プロモーターであり得る。実例となる誘発性プロモーターは、鉄又は鉄制限状態によって誘発可能なプロモーターである。実際に、ある種の細菌、例えば、細胞内微生物は、宿主の細胞質において鉄制限状態に遭遇すると考えられる。FepA及びTonBの鉄調節プロモーターの例は、当技術分野で公知であり、例えば下記の参考文献に記載される:Headley、V.ら(1997)Infection & Immunity 65:818;Ochsner、U.A.ら(1995)Journal of Bacteriology 177:7194;Hunt、M.D.ら(1994)Journal of Bacteriology 176:3944;Svinarich、D.M.及びS.Palchaudhuri.(1992)Journal of Diarrhoeal Diseases Research 10:139;Prince、R.W.ら(1991)Molecular Microbiology 5:2823;Goldberg、M.B.ら(1990)Journal of Bacteriology 172:6863;de Lorenzo、V.ら(1987)Journal of Bacteriology 169:2624;及びHantke、K.(1981)Molecular & General Genetics 182:288。
【0105】
プラスミドは、好ましくは、細菌における核酸の適切な転写に必要な配列、例えば転写終結シグナルを含む。ベクターはさらに、関心のある核酸、例えば、抗生物質に対する耐性、核酸増幅に必要な配列、例えば、細菌の複製起点をもたらすタンパク質をコードする遺伝子を含む細菌の選択を可能とする因子をコードする配列を含み得る。
【0106】
別の実施形態において、融合ポリペプチドが細胞から分泌されるように、シグナルペプチド配列がコンストラクトに付加される。このようなシグナルペプチドは当技術分野において周知である。
【0107】
ある実施形態において、E.コリにおける組み換えタンパク質の、厳密に制御された、高レベル発現をもたらすために、E.コリRNAポリメラーゼにより認識される強力なファージT5プロモーターが、lacオペレーター抑制モジュールと共に使用される。この系では、タンパク質発現は、高レベルのlacリプレッサーの存在下で阻止される。
【0108】
ある実施形態において、DNAは、第1のプロモーターに操作可能に連結され、細菌はさらに、第1のプロモーターからの転写を媒介可能である第1ポリメラーゼをコードする第2のDNAを含み、この場合、第1のポリメラーゼをコードするDNAは、第2のプロモーターに操作可能に連結される。好ましい実施形態において、第2のプロモーターは、上に表示したものなどの、細菌プロモーターである。さらにより好ましい実施形態において、ポリメラーゼは、バクテリオファージポリメラーゼ、例えば、SP6、T3又はT7ポリメラーゼであり、第1のプロモーターは、バクテリオファージプロモーター、それぞれ、例えば、SP6、T3又はT7プロモーターである。バクテリオファージプロモーターを含むプラスミド及びバクテリオファージポリメラーゼをコードするプラスミドは、例えば、Promega Corp.(Madison、Wis.)及びInVitrogen(San Diego、Calif.)から市販されているものを入手することができるか又は標準的組み換えDNA技術を用いてバクテリオファージから直接入手することができる(J.Sambrook、E.Fritsch、T.Maniatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Laboratory Press、1989)。バクテリオファージポリメラーゼ及びプロモーターは、さらに、例えば、下記の参考文献に記載されている:Sagawa、H.ら(1996)Gene 168:37;Cheng、X.ら(1994)PNAS USA 91:4034;Dudendorff、J.W.及びF.W.Studier(1991)Journal of Molecular Biology 219:45;Bujarski、J.J.及びP.Kaesberg(1987)Nucleic Acids Research 15:1337;及びStudier、F.W.ら(1990)Methods in Enzymology 185:60)。このようなプラスミドは、発現させようとする熱ショックタンパク質融合物の具体的実施形態に従ってさらに修飾され得る。
【0109】
別の実施形態において、細菌はさらに、第2のプロモーターからの転写を媒介することができる第2のポリメラーゼをコードするDNAを含み、この場合、第2のポリメラーゼをコードするDNAは、第3のプロモーターに操作可能に連結される。この第3のプロモーターは細菌プロモーターであり得る。しかし、高レベルの転写を得るために、細菌に3以上の異なるポリメラーゼ及びプロモーターを導入することができる。細菌における転写を媒介するために1以上のポリメラーゼを使用することにより、DNAが直接細菌プロモーターの調節下にある細菌と比べて、細菌中のポリペプチド量を顕著に増加させることができる。採用すべき系の選択は、具体的な使用、例えば、産生させたいタンパク質の量に応じて変動する。
【0110】
一般に、融合タンパク質をコードする核酸は、遺伝子移入などによって宿主細胞中に導入され、宿主細胞は、この融合タンパク質の発現を可能にする条件下で培養される。原核細胞及び真核細胞に核酸を導入する方法は当技術分野で周知である。哺乳動物及び原核宿主細胞培養に適切な培地は当技術分野で周知である。一般に、本融合ポリペプチドをコードする核酸は、誘導可能なプロモーターの調節下にあり、この核酸を含む宿主細胞がある一定回数分裂すると誘導される。例えば、核酸が、β−ガラクトースオペレーター及びリプレッサーの調節下にある場合、細菌宿主細胞が、約0.45−0.60のOD600の密度に到達したとき、イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養物に添加する。次に、もうしばらくこの培養物を増殖させ、宿主細胞に、タンパク質を合成する時間を与える。次に、通常、培養物を凍結し、タンパク質の単離及び精製前に、しばらくの間凍結保存し得る。
【0111】
原核宿主細胞を使用する場合、宿主細胞は、例えば、プラスミドpLysSLから発現される内部T7リゾチームを発現するプラスミドを含み得る(実施例参照)。このような宿主細胞の溶解により、リゾチームが放出され、これが次に細菌の膜を分解する。
【0112】
細菌又はその他の原核細胞における発現用ベクターに含まれ得る、その他の配列としては、合成リボソーム結合部位;強力な転写終結因子、例えば転写読み過ごしを阻止し、発現タンパク質の安定性を確保するための、ファージλ由来のt0及びE.コリのrrnBオペロン由来のt4;複製起点、例えばColE1;及びアンピシリン耐性を付与するβ−ラクタマーゼ遺伝子が挙げられる。
【0113】
その他の宿主細胞としては、原核宿主細胞が挙げられる。さらにより好ましい宿主細胞は、細菌、例えば、E.コリである。使用することができるその他の細菌としては、シゲラ(Shigella)種、サルモネラ(Salmonella)種、リステリア(Listeria)種、リケッチア(Rickettsia)種、エルシニア(Yersinia)種、エスケリキア(Escherichia)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、ボルデテラ(Bordetella)種、ネイセリア(Neisseria)種、エアロモナス(Aeromonas)種、フランシセラ(Franciesella)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、シトロバクター(Citrobacter)種、クラミジア(Chlamydia)種、ヘモフィルス(Hemophilus)種、ブルセラ(Brucella)種、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、レジオネラ(Legionella)種、ロドコッカス(Rhodococcus)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、ヘリコバクター(Helicobacter)種、ビブリオ(Vibrio)種、バチルス(Bacillus)種及びエリシペロスリクス(Erysipelothrix)種が挙げられる。これらの細菌の多くは、American Type Culture Collection(ATCC;10801 University Blvd.、Manassas、VA20110−2209)から入手され得る。
【0114】
酵母における組み換えタンパク質の発現のために多くのベクターが存在する。例えば、YEP24、YIP5、YEP51、YEP52、pYES2及びYRP17は、S.セレビシエへの遺伝子コンストラクトの導入に有用なクローニング及び発現ビヒクルである(例えば、Broachら(1983)Experimental Manipulation of Gene Expression、M.Inouye編 Academic Press、p.83参照)。これらのベクターは、pBR322oriが存在することによりE.コリにおいて及び酵母2ミクロンプラスミドの複製決定基のためにS.セレビシエにおいて、複製され得る。さらに、アンピシリンなどの薬剤耐性マーカーを使用し得る。
【0115】
ある一定の実施形態において、哺乳動物発現ベクターは、細菌におけるベクターの増殖を促進するための原核配列及び、真核細胞において発現される1以上の真核細胞転写単位の両方を含有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neo及びpHyg由来ベクターは、真核細胞の転写に適切な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのうちあるものは、原核細胞及び真核細胞両方における複製及び薬剤耐性選択を促進するために、pBR322などの細菌プラスミド由来の配列により修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)又はエプスタインバーウイルス(pHEBo、pREP由来及びp205)などのウイルス誘導体が、真核細胞におけるタンパク質の一過性発現のために使用され得る。プラスミドの調製及び宿主生物の形質転換で使用される様々な方法が当技術分野で周知である。原核細胞及び真核細胞の両方のためのその他の適切な発現系ならびに一般的組み換え法については、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版、Sambrook、Fritsch及びManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)第16及び17章を参照のこと。場合により、バキュロウイルス発現系を用いて組み換えタンパク質を発現することが望ましい場合がある。このようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL−由来ベクター(pVL1392、pVL1393及びpVL941など)、pAcUW−由来ベクター(pAcUW1など)及びpBlueBac−由来ベクター(β−galを含むpBlueBacIIIなど)が挙げられる。
【0116】
別の変法において、タンパク質産生は、インビトロ翻訳系を用いて達成され得る。インビトロ翻訳系は、一般に、RNA分子をタンパク質に翻訳するのに必要な、少なくとも最小要素を含む、細胞不含抽出物である翻訳系である。インビトロ翻訳系は、通常、少なくともリボソーム、tRNA、開始因子メチオニル−tRNAMet、翻訳に関与するタンパク質又は複合体、例えば、eIF2、eIF3、キャップ結合(CB)複合体(これらは、キャップ結合タンパク質(CBP)及び真核細胞開始因子4F(eIF4F)を含む。)を含む。様々のインビトロ翻訳系が当技術分野において周知であり、これには市販のキットも含まれる。インビトロ翻訳系の例としては、真核細胞溶解物、例えばウサギ網状赤血球溶解物、ウサギ卵細胞溶解物、ヒト細胞溶解物、昆虫細胞溶解物及び小麦麦芽抽出物などが挙げられる。溶解物は、Promega Corp.、Madison,Wis.;Stratagen、La Jolla、Calif.;Amersham、Arlington Heights、Ill.;及びGIBCO/BRL、Grand Island、N.Y.などの製造者から市販されている。インビトロ翻訳系は、通常、巨大分子、例えば、酵素、翻訳、開始及び伸長因子、化学的試薬及びリボソームを含む。さらに、インビトロ転写系が使用され得る。このような系は、通常、少なくとも、RNAポリメラーゼホロ酵素、リボヌクレオチド及び何らかの必要な、転写開始、伸長及び終結因子を含む。インビトロ翻訳のためのRNAヌクレオチドは、当技術分野で公知の方法を用いて産生され得る。インビトロ転写及び翻訳は、1以上の単離DNAからタンパク質を産生させるためにワンポット反応中で結合され得る。
【0117】
タンパク質のカルボキシ末端断片、即ち、短縮型突然変異の発現が望ましい場合、発現させようとする所望配列を含むオリゴヌクレオチド断片に対し開始コドン(ATG)を付加することが必要である場合がある。酵素メチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)を用いてN−末端位置のメチオニンが酵素的に切断され得ることは当技術分野で周知である。MAPは、E.コリ(Ben−Bassatら(1987)J.Bacteriol.169:751−757)及びサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)からクローンニングされており、そのインビトロ活性は、組み換えタンパク質において明らかにされている(Millerら(1987)PNAS USA 84:2718−1722)。従って、必要に応じて、N−末端メチオニンの除去は、MAPを産生する宿主において(例えば、E.コリ又はCM89又はS.セレビシエ)このような組み換えタンパク質を発現させることによりインビボで又は精製MAP(例えば、Millerらの手順)を用いてインビトロで、の何れかで、達成され得る。
【0118】
植物発現ベクターが使用される場合、熱ショックタンパク質融合物の発現は、いくつかのプロモーターの何れかにより駆動され得る。例えば、ウイルスプロモーター、例えばCaMVの35SRNA及び19SRNAプロモーター(Brissonら、1984、Nature、310:511−514)又はTMVのコートタンパク質プロモーター(Takamatsuら、1987、EMBO J.、6:307−311)などが使用され得、あるいは、植物プロモーター、例えば、RUBISCOの小ユニット(Coruzziら、1994、EMBO J.、3:1671−1680;Broglieら、1984、Science、224:838−843)など;又は熱ショックプロモーター、例えば、ダイズHsp17.5−E又はHsp17.3−B(Gurleyら、1986、Mol.Cell.Biol.、6:559−565)などが使用され得る。これらのコンストラクトは、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター;直接的DNA形質転換;マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを用いて植物細胞に導入することができる。このような技術の総説については、例えば、Weissbach及びWeissbach、1988、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、New York、Section VIII、pp.421−463;及びGrierson及びCorey、1988、Plant Molecular Biology、第2版、Blackie、London、Ch.7−9を参照のこと。
【0119】
タンパク質タグ又はタンパク質タグを含む融合タンパク質を発現させるために使用され得る代替的発現系は昆虫系である。あるこのような系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用される。このウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞において増殖する。PGHS−2配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の調節下に置かれ得る。コード配列の挿入が成功すると、その結果、ポリヘドリン遺伝子の不活性化、及び非被覆組み換えウイルス(即ち、ポリヘドリン遺伝子によってコードされるタンパク質様コートを欠くウイルス)が作製される。次に、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞(その中で挿入遺伝子が発現される。)を感染させるために、これらの組み換えウイルスが使用される(例えば、Smithら、1983、J.Virol.、46:584、Smith、米国特許第4,215,051号参照)。
【0120】
昆虫系の具体的な実施形態において、組み換えウイルスを作製するために、熱ショックタンパク質融合タンパク質をコードするDNAは、ポリヘドリンプロモーターの下流でpBlueBacIII組み換えトランスファーベクター(Invitrogen、San Diego、Calif.)にクローンニングされ、Sf9昆虫細胞(スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)卵巣細胞由来、Invitrogen、San Diego,Calif.から入手可能)に遺伝子移入される。適切に翻訳後修飾を受けた修飾タンパク質を大量に産生させるために、組み換えウイルスのプラーク精製後、高力価ウイルス保存物を調製し、次に、これを使用して、Sf9又はHigh FiveTM(トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)卵細胞ホモジェネート由来のBTI−TN−5B1−4細胞;Invitrogen、San Diego,Calif.から入手可能)昆虫細胞に感染させる。
【0121】
その他の実施形態において、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン結合タンパク質は、別個に産生され、次に互いに例えば共有結合で連結される。例えば、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン結合タンパク質は、インビトロで別個に産生され、精製され、タグが関心のあるタンパク質に連結可能となる条件下で一緒に混合される。例えば、熱ショックタンパク質及び/又はビオチン結合タンパク質は、それが出現することが知られている源から得る(単離する)ことができるか、細胞培養で産生させ、回収することができるか、所望の熱ショックタンパク質融合物をコードする遺伝子をクローニングし発現することによって産生させることができるか又は化学合成することができる。さらに、所望の熱ショックタンパク質融合物をコードする核酸配列は化学合成することができる。結合タンパク質のこのような混合物は、単一融合タンパク質とは異なる特性を有し得る。
【0122】
熱ショックタンパク質及びビオチン結合タンパク質を結合させるために、リンカー(「リンカー分子」又は「クロスリンカー」とも呼ばれる)を使用し得る。リンカーは、いくつかの、通常は2つの分子の、定められた化学基と反応し、従ってそれらを結合することが可能な化学薬品を含む。既知のクロスリンカーの大多数は、アミン、カルボキシル及びスルフヒドリル基と反応する。標的化学基の選択は、結合させようとするタンパク質の生物学的活性にこの基が関与し得る場合、非常に重要である。例えば、スルフヒドリル基と反応するマレイミドは標的にCysが結合することを必要とするCys含有タンパク質を不活性化し得る。リンカーは、ホモ官能性(同じタイプの反応基を含む。)、ヘテロ官能性(異なる反応基を含む。)又は光反応性(照射時に反応性となる基を含む。)であり得る。
【0123】
リンカー分子は、結合組成物の様々な特性に関与し得る。リンカーの長さは、結合段階中の分子の柔軟性及び、結合分子のその標的(細胞表面分子など)に対する利用可能性の点から考慮しなければならない。従って、より長いリンカーは、本発明の組成物の生物学的活性ならびにそれらの調製し易さを向上させ得る。リンカーの形状は、標的との最適反応のために分子を方向付けるために使用され得る。柔軟な形状のリンカーによって、架橋されたタンパク質がその他のタンパク質に結合する際、この架橋されたタンパク質が立体配座的に適応できるようになり得る。リンカーの性質は、その他の様々な目的のために変更され得る。例えば、MBuSのアリール構造は、MBSの芳香族スペーサよりも免疫原性が低いことが分かった。さらに、リンカー分子の疎水性及び官能性は、成分分子の物理的特性によって調節され得る。例えば、ポリマーリンカーの疎水性は、ポリマー、例えば、疎水性単量体ブロックの間に親水性単量体ブロックが散在するブロックポリマーに沿った単量体単位の順序によって調節され得る。
【0124】
多様な分子リンカーを調製し、利用する化学は、当技術分野で周知であり、分子を結合させるために多くの既製リンカーが、Pierce Chemical Co.、Roche Molecular Biochemicals、United States Biologicalなどの販売業者から市販されている。
【0125】
調製され及び/又は単離された、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質は、ビオチン結合タンパク質とのビオチン部分の非共有結合を形成するために十分である、所望のビオチン化成分と組み合わせて対象に投与すべきである。本熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分は、同時に又は連続的に投与され得る。同時に投与される場合、本熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分は、混合物として又は非共有結合性複合体として投与され得る。非共有結合性複合体として投与される場合、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質は、調製及び/又は単離されると、インビトロ又はインビボの何れかで所望のビオチン化成分に非共有結合され得る。
【0126】
非共有結合性複合体は、ビオチン結合タンパク質のビオチンとの結合を促進するために十分な条件下(これらの条件は当技術分野で公知である。)で、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質をビオチン化成分と接触させることにより作製され得る。
【0127】
様々な熱ショックタンパク質に対する遺伝子が、クローニングされ、配列決定されており、これらは、以下に限定されないが、gp96(ヒト:Genebank受入番号X15187;Makiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:5658−5562(1990);マウス:Genebank受入番号M16370;Srivastavaら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:3807−3811(1987))、BiP(マウス:Genebank受入番号U16277;Haasら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2250−2254(1988);ヒト:Genebank受入番号M19645;Tingら、DNA 7:275−286(1988))、hsp70(マウス:Genebank受入番号M35021;Huntら、Gene 87:199−204(1990);ヒト:Genebank受入番号M24743;Huntら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:6455−6489(1995))及びhsp40(ヒト:Genebank受入番号D49547;Ohtsuka K.、Biochem.Biophys.Res.Commun.197:235−240(1993))を含む、熱ショックタンパク質融合物を得るために使用され得る。
【0128】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質は、ビオチン化成分に非共有結合され得る。
【0129】
タンパク質、細胞又はウイルスを含む熱ショックタンパク質と組み合わせて投与されるべき成分は、当技術分野で公知のようなものなどの手段により、ビオチンに結合され得る。ビオチンへの結合前に、当技術分野で公知の方法を用いて、タンパク質、細胞又はウイルスが産生され及び/又は単離され得る。組み換え技術は、熱ショックタンパク質融合物に対して、本明細書中に記載のものと殆ど同じように使用され得る。この成分が産生され及び/又は単離されると、ビオチン分子は、タンパク質、細胞又はウイルスと直接結合され得る。ビオチンもまた、リンカーを通じて間接的にこのタンパク質、細胞又はウイルスに結合され得る。ビオチンは、ビオチン結合タンパク質とのビオチンの相互作用を立体的に可能にする領域に結合され得る。ビオチン化キット及び試薬は、Pierce(Rockford、IL)から購入され得、本明細書中に記載のビオチン化成分を作製するために使用され得る。
【0130】
多くの様々な抗原の配列は、クローニングされ、DNA配列分析により特性評価され得、本明細書中で提供される組成物中に含まれ得る。完全又は部分的細胞性又はウイルスゲノム又は抗原を含有する細菌ベクターは、例えば、American Tissue Culture Collection(ATCC)を含む様々な源から得られ得る。使用され得るさらなる抗原は、この目的のために以前に確立された方法により単離され、タイプ分けされ得る(これらの方法は当技術分野で周知である。)。
【0131】
熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分を使用する方法
本明細書中に記載の熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分は、ビオチン化成分が向けられる抗原を発現する細胞に対して、対象の免疫反応、特に、細胞介在性細胞溶解性反応を誘導又は促進するために、対象に投与することができる。この融合タンパク質は、単純に免疫反応を促進し得るか(従って、免疫原性組成物として作用)又は防御的免疫を付与(従ってワクチンとして作用)し得る。
【0132】
従って、前述のように作製される、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分は、医薬組成物としての使用のために適切な純度に精製され得る。一般に、精製組成物は、組成物中に存在する全ての種の約85%を超えて、存在する全ての種の約85%、90%、95%を超え、99%以上を構成する1つの分子を有する。目的の種は、本質的に均一となるまで(混入する種は、従来の検出法により組成物中で検出できない。)精製され得、この場合、本組成物は、実質的に単一の種からなる。当業者は、本明細書の教示に照らして、精製のための標準技術、例えば、免疫アフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどを用いて、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分又はそれらの非共有結合性複合体を精製し得る。タンパク質の純度は、例えば、アミノ末端アミノ酸配列分析、ゲル電気泳動及び質量分析を含む当業者にとって公知のいくつかの方法を用いて決定され得る。
【0133】
従って、上述の熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分及びこれらの非共有結合性複合体を含む医薬組成物が提供される。ある態様において、1以上の医薬的に許容可能な担体(添加剤)及び/又は希釈剤と共に処方される、医薬組成物の1以上の治療的有効量を含む、医薬的に許容可能な組成物が提供される。別の態様において、ある実施形態で、本医薬組成物は、そのまま又は、医薬的に許容可能な担体と混合されて投与され得、また、その他の薬剤と組み合わせても投与され得る。従って、連結(併用)療法は、最初に投与されたものの治療効果が、次のものが投与される際に完全には消失していないように行われる、逐次、同時(simultaneous)及び個別の又は同時(co−administration)投与を含む。
【0134】
本明細書に記載されるような、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分又はこれらの非共有結合性複合体は、様々な方法で対象に投与され得る。投与経路としては、全身性、末梢、非経口、腸内、局所及び経皮(例えば徐放性ポリマー)が挙げられる。何らかのその他の従来の投与経路は、例えば、点滴もしくはボーラス注入又は上皮もしくは粘膜を通じた吸収を使用することができる。さらに、本明細書中に記載の組成物は、生物学的活性物質(例えばミョウバンなどのアジュバント)、界面活性剤(例えばグリセリド)、賦形剤(例えばラクトース)、担体、希釈剤及びビヒクルなどのその他の医薬的に許容可能な成分を含有し得、これらとともに又はこれらなしで投与され得る。さらに、本組成物は、インビトロで抗原特異的免疫細胞を惹起し、拡大し、増殖させ、その後、対象に再導入させるために、エクスビボで対象から得られた白血球を刺激する手段として、使用され得る。
【0135】
さらに、熱ショックタンパク質融合タンパク質は、このようなタンパク質配列をコードする核酸をヒト対象においてインビボ発現させることによって投与され得る。このような核酸の発現及びビオチン化成分との接触はまた、インビトロで抗原特異的免疫細胞を惹起し、拡大し、増殖させ、続いて、対象に再導入するために、対象から得られた白血球を刺激する手段として、エクスビボで行うこともできる。熱ショックタンパク質融合タンパク質の発現を指示するために適切な発現ベクターは、現在当技術分野で使用される多数の様々なベクターから選択することができる。高レベル発現をもたらすことができ、関心のある遺伝子を変換するために効果的であるベクターが好ましい。例えば、組み換えアデノウィルスベクターpJM17(Allら、Gene Therapy 1:367−84(1994);Berkner K.L.、Biotechniques 6:616−24 1988)、第2世代アデノウィルスベクターDE1/DE4(Wang及びFiner、Nature Medicine 2:714−6(1996))又はアデノ関連ウィルスベクターAAV/Neo(Muro−Cachoら、J.Immunotherapy 11:231−7(1992))を使用することができる。さらに、組み換えレトロウィルスベクターMFG(Jaffeeら、Cancer Res.53:2221−6(1993))又はLN、LNSX、LNCX、LXSN(Miller及びRosman、Biotechniques 7:980−9(1989))も使用し得る。pHSV1(Gellerら、Proc.Nat’l Acad.Sci.87:8950−4(1990)などの単純ヘルペスウィルスに基づくベクター又はMVA(Sutter及びMoss、Proc.Nat’l Acad.Sci.89:10847−51(1992))などのワクシニアウィルスベクターを代替物として使用し得る。
【0136】
プロモーター及び3’配列を含む、使用頻度の高い特異的発現単位は、プラスミドCDNA3(Invitrogen)、プラスミドAH5、pRC/CMV(Invitrogen)、pCMU II(Paaboら、EMBO J.5:1921−1927(1986))、pZip−Neo SV(Cepkoら、Cell 37:1053−1062(1984))及びpSRa(DNAX、Palo Alto、Ca)で見出されるものである。発現単位及び/又はベクターへの遺伝子導入は、Molecular Cloning and Current Protocols in Molecular Biology(Sambrook、J.ら、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Press(1989);Ausubel、F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(1989))のようなマニュアルに記載されるような遺伝子工学技術を用いて遂行され得る。得られた発現可能な核酸は、この核酸を発現可能な形態で細胞に置くことが可能な何らかの方法によって、例えば、前述のものなどウィルスベクターの一部として、裸のプラスミド又はその他のDNAとして又は標的とされるリポソームもしくは赤血球ゴーストに封入して、ヒト対象の細胞に導入することができる(Friedman、T.、Science、244:1275−1281(1989);Rabinovich、N.R.ら、Science.265:1401−1404(1994))。形質導入法としては、組織及び腫瘍への直接注入、リポソーム遺伝子移入(Fraleyら、Nature 370:111−117(1980))、受容体介在エンドサイトーシス(Zatloukalら、Ann.N.Y.Acad.Sci.660:136−153(1992))及び粒子ボンバードメント介在性遺伝子導入(Eisenbraumら、DNA & Cell.Biol.12:791−797(1993))が挙げられる。
【0137】
本発明の組成物における、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分又はこれらの非共有結合性複合体の量は、対象において有効な免疫刺激反応を生ずる量である。有効量とは、投与されると、それが免疫反応を誘発するような量である。さらに、対象に投与される、熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分又はこれらの非共有結合性複合体の量は、用いられる熱ショックタンパク質融合物及びビオチン化成分、対象の体格、年齢、体重、全身的健康状態、性別及び食餌を含む様々な因子ならびにその全身的免疫反応性に依存して変動する。確立された用量範囲の調整及び操作は、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、熱ショックタンパク質融合物、ビオチン化成分又はこれらの非共有結合性複合体の量は、約1μgから約1g、好ましくは約100μgから約1g及び約1mgから約1gであり得る。発現ベクターを含む組成物の有効量は、投与された場合に、医薬組成物が向けられる抗原に対してそれが免疫反応を誘発するような量である。さらに、対象に投与される発現ベクターの量は、発現される熱ショックタンパク質融合物、対象の体格、年齢、体重、全身的健康状態、性別、及び食餌を含む様々な因子ならびにその全般的な免疫学的反応性に依存して変動する。考慮する必要のあるさらなる因は、投与経路及び使用されるベクターのタイプである。例えば、熱ショックタンパク質融合物をコードする核酸を含むウィルスベクターを用いて予防的又は治療的処置が行われる場合、有効量は、体重1kg当たり104から1012の範囲の、ヘルパー不含複製欠損ウィルスであり、好ましくは体重1kg当たり105から1011の範囲のウィルス、最も好ましくは体重1kg当たり106から1010の範囲ウィルスである。
【0138】
対象において免疫反応を誘発するための融合タンパク質及びビオチン化成分又はこれらの非共有結合性複合体の有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0139】
有効用量は、最初にインビトロアッセイから推定され得る。当技術分野で周知の技術を用いて、例えば、動物モデルにおいて免疫反応の誘発を達成するための用量を処方し得る。当業者は、動物データに基づき、ヒトへの投与を容易に最適化することができる。投与量及び間隔は個別に調整し得る。例えば、ワクチンとして使用される場合、本発明のタンパク質及び/又はろ過物(strain)は、1−36週間にわたり、約1から3回の投薬で投与され得る。好ましくは、約3−4ヶ月の間隔で3回の投薬を行い、その後定期的に免疫促進ワクチン接種物が投与され得る。代替的プロトコールが個々の患者に適切であり得る。適切な用量とは、上述のように投与される場合、少なくとも1−2年間にわたり症状又は感染から患者を保護するために十分に、免疫付与された患者において免疫反応を惹起することが可能である、タンパク質又はろ過物(strain)の量である。
【0140】
本組成物はまた、免疫反応を促進するアジュバントも含み得る。さらに、このようなタンパク質は、注射時に、インビボでタンパク質のより遅い放出を引き起こすために、油状乳液中でさらに縣濁され得る。処方における各成分の最適比は、当業者にとって周知の技術によって決定され得る。
【0141】
各種アジュバントの何れも、免疫反応を促進するために本発明のワクチンの中で使用され得る。殆どのアジュバントは、水酸化アルミニウム又は鉱油などの急速な代謝から抗原を保護するために設計された物質及び脂質A又は百日咳菌(ボルタデラ・ペルトゥシス、Bortadella pertussis)などの免疫反応の特異的又は非特異的刺激因子を含有する。適切なアジュバントは市販されており、これには、例えば、フロインドの不完全アジュバント及びフロインドの完全アジュバント(Difco Laboratories)及びMerckアジュバント65(Merck and Company、Inc.、Rahway、N.J.)が含まれる。その他の適切なアジュバントとしては、ミョウバン、生物分解性ミクロスフェア、モノホスホリル脂質A、クウィルA(quil A)、SBAS1c、SBAS2(Lingら、1997、Vaccine 15:1562−1567)、SBAS7、Al(OH)3及びCpGオリゴヌクレオチド(WO96/02555)が挙げられる。
【0142】
本発明のワクチンにおいて、アジュバントは、Th1型免疫反応を誘発し得る。適切なアジュバント系としては、例えば、モノホスホリル脂質A、好ましくは3−de−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)と、アルミニウム塩との組み合わせが挙げられる。促進系には、モノホスホリル脂質Aとサポニン誘導体との組み合わせ、特にWO94/00153に開示される、3D−MLPとサポニンQS21との組み合わせ、又は、WO96/33739に開示される、QS21がコレステローによって不活性化される、より反応性の低い組成物が含まれる。以前の実験から、液性及びTh1型細胞性免疫反応両方の誘発における、3D−MLP及びQS21の併用の、明確な相乗効果が証明された。水中油型エマルジョンにおいてQS21、3D−MLP及びトコフェロールを含む、特に強力なアジュバント形成がWO95/17210に記載されており、これは処方物を含み得る。
【0143】
キット
本発明は、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を発現させるか又は投与するためのキットを提供する。このようなキットは、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質をコードする核酸から構成され得る。この核酸は、プラスミド又はベクター、例えば、細菌プラスミド又はウィルスベクター中に含まれ得る。その他のキットは、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を含む。さらに、本発明は、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を産生させ及び/又は精製するためのキットを提供する。このようなキットは、場合によっては、本明細書中に記載のようなビオチン化成分又はビオチン化試薬を含み得る。
【0144】
本発明は、患者における感染性又は悪性疾患を予防又は治療するためのキットを提供する。例えば、キットは、上述の1以上の医薬組成物及び場合によってはそれらの使用のための説明書を含み得る。またその他の実施形態において、本発明は、1以上の医薬組成物及びこのような組成物の投与を遂行するための1以上の装置を含むキットを提供する。
【0145】
キットの構成要素は、先述の方法の、手動での又は部分的もしくは完全自動化による実施の何れかのために包装され得る。キットに関与するその他の実施形態において、それらの使用のための説明書が提供され得る。
【0146】
(実施例)
本発明をここで全体的に説明してきたが、単に本発明のある態様及び実施形態の説明のために含まれるものであり、本発明を何ら限定するものではない、次の実施例を参照することによって、本発明はより容易に理解されよう。
【0147】
本発明の実施は、別段の断りがない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組み換えDNA及び免疫学の従来技術を使用し、これらは、当技術分野の技術の範囲内である。このような技術は文献に記載されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版、Sambrook、Fritsch及びManiatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA Cloning、Volumes I及びII(D.N.Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames及びS.J.Higgins編、1984);Transcription And Translation(B.D.Hames及びS.J.Higgins編、1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney、Alan R.Liss、Inc.、1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1986);B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise、Methods In Enzymology(Academic Press、Inc.、N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller及びM.P.Calos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology、Vols.154及び155(Wuら編)、Immunochemical Methods In Cell and Molecular Biology(Mayer and Walker編、Academic Press、London、1987);Handbook Of Experimental Immunology、Volumes I−IV(D.M.Weir及びC.C.Blackwell編、1986);Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)を参照のこと。
【実施例1】
【0148】
i)MTBhsp70の作製
所望の制限部位SfiIを導入するために最初にベクターを修飾することによって、発現ベクターpET45b(+)にMTBhsp70をサブクローニングした。この修飾によって、NotI/XhoI部位でMTBhsp70タンパク質の、及びSfiI/NotI部位でscFv、抗原、アビジンなどのその他のタンパク質の導入が可能となる(図1)。この特定のアプローチは、MTBhsp70のC末端で所望のタンパク質を導入するために修正され得る。Richard Young博士より提供されたMTBhsp70プラスミドを使用して、図2に記載のように、それぞれ5’及び3’末端に制限部位NotI及びXhoIを導入した。
【0149】
制限酵素NotI及びXhoIでの図2のレーン1で示される増幅されたMTBhsp70断片の消化から、予想外に2つのバンドが見られた(図3)。配列決定分析から、MTBhsp70が内部NotI及びSfiI制限部位を含有することが明らかになった。これらは、図4で示されるストラテジーを用いて除去した。次に、コンピーテントBL21(DE3)細菌を形質転換するために、結果的に得られるMTBhsp70pET−45b(+)コンストラクトを使用した。1mM IPTGを添加することにより、MTBhsp70の発現を誘導した。0.5のOD600になるまで37℃でLB培地中で細胞を増殖させた。細胞を遠心して沈降させ、1mM IPTGを含有するLB培地中で縣濁し、指示温度で4時間増殖を継続した。細胞を分画化し、アリコートをSDS−PAGE上で流し、タンパク質をクーマシーブルーで染色した。誘導細胞を37℃で増殖させたとき、MTBhsp70タンパク質の大部分が不溶性封入体中で見られた。誘導後の増殖温度を30℃まで低下させることにより、大量の可溶性MTBhsp70が産生された。コバルトスピンカラムを用いて、金属アフィニティークロマトグラフィー(MAC)によって、30℃で増殖させたBL21(DE3)の可溶性及びペリプラズム分画中で見出されるMTBhsp70タンパク質の精製に成功した。0.5のOD600まで37℃で細胞を増殖させ、遠心沈降させた。1mM IPTGを含有する増殖培地中で細胞を縣濁し、30℃で4時間増殖させた。PierceからのB−PER試薬での可溶化からなる標準的方法に従い、細胞を分画化した。
【0150】
ii)MTBhsp70−融合タンパク質の作製
MTBhsp70−融合タンパク質の免疫刺激性特性を明らかにするために、オボアルブミンペプチド−MTBhsp70及び2つのscFv−MTBhsp70融合産物を構築した。
【0151】
a.Ova−257−264−MTBhsp70融合タンパク質。Young博士のグループは、オボアルブミンの免疫優性ペプチドが残基257−264(SIINFEKL)からなることを証明した。SfiI及びNotIでMTBhsp70pET−45b(+)プラスミドを消化し、SfiI及びNotIでも消化される免疫優性ペプチドをコードするリンカーを導入することによって、MTBhsp70のN−末端領域にこのペプチドを融合させた(図5)。結合(ライゲーション)時に、多くのコロニーが得られ、配列決定によってそれらの独自性を確認した(図6)。MTBhsp70で観察されるように、Ova−257−264−MTBhsp70の誘導は、増殖温度が、IPTG誘導後、30℃で維持される場合、最適である。BL21(DE3)の可溶性分画において、Ova254−264−MTBhsp70の良好な発現が得られた。
【0152】
b.scFv−MTBhsp70融合タンパク質。MTBhsp70のN−末端にscFvを融合させた。ヒトコンビナトリアルscFvファージディスプレイライブラリを構築し、オボアルブミン特異的なscFvを選択するためにそれを使用した。その他のscFv、MOV18は、卵巣癌細胞で発現される高親和性葉酸受容体に対して特異的である。クローニング法は、MTBhsp70のN末端でのOva254−264ペプチドの導入に対して使用されるアプローチと同様である。このSfiI/NotI scFv部分は、それらの個々のプラスミドから単離し、続いてSfiI/NotI消化した発現ベクターMTBhsp70 pET−45b(+)に結合(ライゲーション)させた。抗オボアルブミンscFvは、部位特異的突然変異誘発により除去されなければならないいくつかのナンセンス突然変異を有した。しかし、両コンストラクトを運ぶ細菌の誘導時に、IPTGでの誘導の結果、本融合タンパク質が封入体中で発現されることが分かった。
【0153】
iii)アビジン−リンカー−MTBhsp70の作製
リンカーエレメントへの及びMTBhsp70へのアビジンの融合は、自己集合性ワクチンの作製のために使用され得る。これは、図7(リンカー部分がアビジンと熱ショックタンパク質との間の線として示される。)で説明される。アビジンは、68,000の分子量(従って各サブユニットは17,000ダルトン)のホモ四量体グリコシル化タンパク質である。Markku S.Kulomaa博士により記載される野生型(四量体)又は単量体は、本明細書中で提供されるように作製され、使用され得る。これらの分子は、図8のスキームに従い述べられる。アビジンの単量体は、5ヶ所のアミノ酸位置で野生型とは異なる。これは図9で示される。各アビジンコンストラクトを組み立てるために、一連のプライマー及びリンカーを使用した。
【0154】
PCRに基づく突然変異誘発により、小さな突然変異を補正した。これは、単量体アビジン(クローンM1)に対して為された2つの変化を示す図10で示される。図11で示されるように、単量体及び野生型両方のアビジン−リンカー−MTBhsp70コンストラクトを得ることに成功した。両コンストラクトにより、E.コリBL21(DE3)において、IPTGで誘導した際に、タンパク質が大量に産生されるようになる。しかし、誘導されるアビジン−リンカー−MTBhsp70タンパク質は、殆ど封入体中で見られ、これは、可溶化、変性され、再び折り畳まれ得る。
【0155】
グアニジン塩酸塩及びDTTでの変性後、過剰のDTTを不活性化するシステインを含有する4種類の異なる再折り畳み緩衝液(1)Tween40、システイン;2)Tween60、システイン;3)CTAB、システイン;4)SB3−14、システイン)中でタンパク質を希釈する。3%CA溶液を添加した後、タンパク質を室温で一晩、再折り畳み処理する。再折り畳みのレベルを評価するために、再折り畳みタンパク質アリコートをビオチン被覆ウェルに添加した。このようにして、正しく再び折り畳まれたアビジン−リンカー−MTBhsp70タンパク質はそれらのウェルの底部に強く結合する。MTBhsp70に対するモノクローナル抗体を使用し、続いて、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識したヤギ抗マウス(H+L)抗体を用いて結合抗MTBhsp70を検出することによって、プレート結合タンパク質の量を測定した。450nmで光学密度を記録し、%最大シグナルとして結果を表した。この結果は図12で示される。各タンパク質の適正な再折り畳みは、異なる条件に対する対象となる各タンパク質を含み得る。これらのタンパク質の再折り畳みMTBhsp70部分の生物学的活性を評価するために、それらのATP加水分解能を測定し得る。さらに、THP−1細胞でのMTBhsp70の化学走性効果が測定され得る。
【実施例2】
【0156】
m/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70タンパク質の自己集合性及び生物学的活性は次のように測定され得る:
1)ATPase活性の測定。MTBhsp70のN末端部分は、ある種のアッセイ条件下でATPを加水分解することが知られている。発明者らのm/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70タンパク質の適正な再折り畳みは、市販の調製物及び発明者ら自身のMTBhsp70のATPase活性とそれらのATPase活性を比較することにより評価され得る。
【0157】
2)化学走性アッセイ/ケモカイン産生の誘導の測定
発明者らのm/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70タンパク質のMTBhsp70部分の適正な再折り畳みの別のアッセイは、細胞株THP−1からのCCケモカインをそれらが首尾よく誘導することである。単球細胞株THP−1のMTBHhsp70への曝露は、RANTES、MIP−1α及びMIP−1βの産生を誘導することが知られている。同様に、これらのケモカインは、化学走性活性を刺激するはずである。
【0158】
3)自己集合性。再び折り畳まれたm/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70タンパク質はビオチンに結合する。自己集合性を明らかにするために、これらのタンパク質の、ビオチン化分子との安定な複合体の形成能が明らかにされ得る。ビオチン化オボアルブミン及びビオチン化eGFPへの結合が明らかにされ得る。抗MTBhsp70及び抗ビオチン化抗原との免疫沈降によって首尾よく集合したことが評価される。
【0159】
4)免疫のインビボ誘導。ビオチン化オボアルブミン−m/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70及びビオチン化Ova257−264−m/wアビジン−リンカー−N−MTBhsp70でのC57BL/6マウスの免疫付与時に、CD8T細胞の活性化を測定することによって、自己集合性ワクチンの免疫刺激活性が明らかにされ得る。
【実施例3】
【0160】
ビオチン化HRP及びビオチン化抗OVA抗体と自己集合したアビジンとのMTBHSP70コンストラクト
方法
i)プラスミドコンストラクト
発現ベクターpET45b(+)にMTBHSP70をサブクローニングし、次にN末端にCD8特異的なオボアルブミンペプチド(ova257−264)を連結させた。公開配列に基づくアビジン及び単量体アビジンを集合させ、MTBHSP70のN−末端で、発現ベクターpET45b(+)に連結させた。
【0161】
ii)タンパク質発現及び精製
様々なコンストラクトでE.コリBL21(DE3)を形質転換し、IPTGの添加により発現を誘導した。エンドトキシンを除去するために、TritonX−114(Sigma)の存在下でIMACによりタンパク質を精製した。
【0162】
iii)免疫付与
オボアルブミン又はOva257−264−L−MTBHSP70を用いて皮下経由でC57BL/6雄マウスに免疫付与し、第30日に屠殺した。
【0163】
iv)結果判定
a.インターフェロン−γ。2回の皮下免疫付与後、マウスを第30日に屠殺し、脾臓細胞を調製した。ブレフェルジンA(golgi plug)及びOva257−264ペプチド又は無関係のペプチドの存在下で、脾臓細胞(2x106個/ウェル)を37℃で4時間温置した。PBS中の5%FBSで細胞を洗浄することによって温置を停止し、次いで、細胞をBDのCytofix/Cytoperm溶液で透過処理した後、CD3、CD4、CD8及びインターフェロン−γに対して染色を行った。フローサイトメトリーにより細胞染色を評価し、Flow Joを用いて分析した。
【0164】
b.五量体染色。上述のように細胞を処理し、さらに最初にR−PE結合組み換えマウスMHC五量体H−2Kb SIINFEKL(PROIMMUNEより)で細胞を処理した。
【0165】
c.自己集合。ELISAに基づくアッセイを使用した。ビオチン化ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)の様々な濃度と、精製され再折り畳まれたアビジン−MTBHSP70と、を混合した。この混合物をHis−Grabプレート(Thermo Scientific)に添加し、PBS0.1%Tween20で洗浄することによって未結合ビオチン化HRPを除去し、次いでTMBを添加した。20分後に反応を停止させ、450nmで結果を読み取った。
【0166】
結果
6xHis−MTBHSP70及び6xHis−Ova(257−264)−MTBHSP70融合タンパク質をE.コリBL21(DE3)細胞で発現させた。何れの場合も、融合コンストラクトにおいてNotI-XhoI MTBHsp70断片を使用した。IPTGを添加することによってタンパク質発現を誘導した。細胞を溶解し、可溶性(#1及び#4)、ペリプラズム(#2及び#5)及び封入体分画に分画化した。各分画からのアリコートを4−12%Bis−Tris NUPAGEゲル(Invitrogen)上での変性SDS−PAGEに供した。
【0167】
i)E.コリにおいてMTBHSP70に連結されたアビジン及び単量体アビジンの発現
野生型アビジン(wアビジン)及び単量体アビジンを集合させ、pET45b(+)にクローニングした。MTBHSP70のN末端に連結された6xHis−アビジンからなる融合コンストラクトを調製した。E.コリBL21(DE3)を形質転換するために各プラスミドコンストラクトを使用し、IPTGにより発現を誘導した。
【0168】
ii)免疫付与#1
次のように、第1及び17日にC57BL/6雄マウスに皮下経路で免疫付与し、第30日に屠殺した。
【0169】
・オボアルブミン+CFA
・オボアルブミン
・オボアルブミン+MTBhsp70
・Ovapeptide−MTBhsp70
【0170】
iii)結果判定
CD8ペプチドSIINFEKL(Ova257−264)で脾臓細胞を刺激した際のインターフェロンγ産生を測定し、結果を図16及び下記の表1で示す。
【0171】
【表1】
【0172】
iv)免疫付与#2
免疫付与#1に対して記載されたように、C57BL/6マウス(雄)に皮下経路でに免疫付与した。免疫付与群は次のとおりであった。
【0173】
・群A CFA+オボアルブミン(3匹のマウス)
・群B CFA+Ovaペプチド(257−264)(3匹のマウス)
・群C Ovaペプチド−MTBhsp70融合物(3匹のマウス)
・群D Ovaペプチド+MTBhsp70(3匹のマウス)
・群E MTBhsp70(3匹のマウス)
・群F 食塩水 1匹のマウス
v)結果判定
脾臓細胞を回収し、CD3、CD4、CD8及びH−2Kb/SIINFEKL(OVA)五量体(ProImmuneより)で染色した。
【0174】
vi)結論
HSP融合タンパク質コンストラクトを開発し、E.コリで発現させた。MTBHSP70のN末端へのOvaペプチド257−264の融合の結果、インターフェロン−γ産生及びH−2Kb/SIINFEKL(OVA)染色により測定した場合、抗原特異的なT細胞を拡張することに成功した。
【実施例4】
【0175】
MTBHSP70のN又はC末端にアビジンを含むための修飾コンストラクト
i)自己集合性の測定
His−GrabプレートELISAを用いて、ビオチン化ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)との融合タンパク質アビジン−MTBHSP70の自己集合性を評価した。グアニジン塩酸塩で封入体を可溶化し、グアニジンの漸減濃度を含有する緩衝液に対してゆっくりと透析した。His−Grabプレートに添加する前に、部分的に再び折り畳まれたタンパク質をビオチン化HRPの様々な量と温置した。450nmでプレートの読み取りを行った。
【0176】
ii)自己集合性ワクチンの標的化の評価
フローサイトメトリーにより自己集合性ワクチンの標的化を評価した。部分的に再び折り畳まれたアビジンMTBHSP70タンパク質をビオチン化抗オボアルブミン抗体と温置し、複合体を磁性Hisタグ特異的ビーズ上で捕捉した。過剰抗体の除去後、Alexa Fluor555標識オボアルブミンを添加した。R−PEチャンネルでのフローサイトメトリーにより、試料を分析した。ビーズ単独と比較した場合、非常に弱い差異が観察された。統計学的分析により、標的化された自己集合が確認された。
【0177】
iii)結論
MTBHSP70のN末端でのペプチド抗原又はアビジンの何れかからなる融合タンパク質が首尾よく発現された。MTBHSP70のN末端にインフレームで融合されたOvaペプチド(257−264)での免疫付与によって、インターフェロンγ産生及びCD8+T細胞(五量体染色)の拡張により測定した場合、抗原特異的な免疫反応が誘導された。MTBHSP70のN又はC末端でアビジンを発現するコンストラクトもまた設計し、このようにして、ビオチン化された臨床的に関連のある抗体とのこのコンストラクトの自己集合が可能となった。E.コリにおいてアビジン融合タンパク質が首尾よく発現されたが、封入体では見られなかった。これらのタンパク質の再折り畳みはある程度成功し、現在最適化されている。予備実験において、ビオチン化モノクローナル抗体とのTBHSP70−アビジンの低効率自己集合が明らかとなった。
【0178】
【表2】
【0179】
同等物
本発明の具体的な実施形態を考察してきたが、上記明細書は、例示であり、限定するものではない。本願を見直せば、本発明の多くの変更が当業者にとって明らかとなろう。添付の特許請求の範囲は、全てのかかる実施形態及び変更を主張するものであり、本発明の範囲全体は、同等物及び明細書のそれらの範囲全体とともに、かかる変更とともに、特許請求の範囲に対する参照により定められるべきである。
【0180】
参考文献
関連法は、発明者らによりPCT/US2007/061554で開示され、全体の内容が参照により本明細書中に組み込まれる。ncbi.nlm.nih.gov.のワールドワイドウェブ上でのNational Center for Biotechnology Information(NCBI)の公開データベースにおけるエントリーに関連する受入番号を参照する何らかのポリヌクレオチド及びタンパク質配列もまた、それらの全体において参照により組み込まれる。本願を通じて引用されるような、参考文献、交付済み特許、公開又は非公開の特許出願を含む全ての引用参考文献の内容もまた、参照により本明細書により明らかに組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビオチン結合タンパク質と融合させられた熱ショックタンパク質を含み、このビオチン結合タンパク質が4個のビオチン化成分と非共有結合し、さらに、この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つが同一ではない、医薬組成物。
【請求項2】
4個のビオチン化成分のうち少なくとも1つが、タンパク質、細胞又はウイルスを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
細胞が、亜致死的照射を受けた、腫瘍細胞、細菌細胞、真菌細胞及び原生動物細胞からなる群から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
タンパク質が、抗原、抗体及び共刺激分子からなる群から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
熱ショックタンパク質が、MTBhsp70熱ショックタンパク質及びヒト熱ショックタンパク質からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ワクチンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分の非共有結合性複合体を形成させるために十分に、4個のビオチン化成分と、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を接触させることを含み、この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つが同一ではない、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の自己集合性医薬組成物を作製するための方法。
【請求項10】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分(この4個のビオチン化成分うち少なくとも2つは同一ではない。)を対象に投与することを含む、対象において免疫反応を誘導するための方法。
【請求項11】
4個のビオチン化成分のうち少なくとも1つが、タンパク質、細胞又はウイルスを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞が、亜致死的照射を受けた、腫瘍細胞、細菌細胞、真菌細胞及び原生動物細胞からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍細胞が前記対象から取り出された、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
熱ショックタンパク質が、MTBhsp70熱ショックタンパク質及びヒト熱ショックタンパク質からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分が、非共有結合性複合体として対象に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分を対象に投与することを含み、この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つが同一ではない、対象において治療の効力を高めるための方法。
【請求項19】
4個のビオチン化成分のうち少なくとも1つが、タンパク質、細胞及びウイルスからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
細胞が、亜致死的照射を受けた、腫瘍細胞、細菌細胞、真菌細胞及び原生動物細胞からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
熱ショックタンパク質が、MTBhsp70熱ショックタンパク質及びヒト熱ショックタンパク質からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分が非共有結合性複合体として対象に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
タンパク質が、抗原、抗体及び共刺激分子からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
4個のビオチン化成分うち少なくとも1つが共刺激分子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項1】
ビオチン結合タンパク質と融合させられた熱ショックタンパク質を含み、このビオチン結合タンパク質が4個のビオチン化成分と非共有結合し、さらに、この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つが同一ではない、医薬組成物。
【請求項2】
4個のビオチン化成分のうち少なくとも1つが、タンパク質、細胞又はウイルスを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
細胞が、亜致死的照射を受けた、腫瘍細胞、細菌細胞、真菌細胞及び原生動物細胞からなる群から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
タンパク質が、抗原、抗体及び共刺激分子からなる群から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
熱ショックタンパク質が、MTBhsp70熱ショックタンパク質及びヒト熱ショックタンパク質からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ワクチンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分の非共有結合性複合体を形成させるために十分に、4個のビオチン化成分と、ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質を接触させることを含み、この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つが同一ではない、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の自己集合性医薬組成物を作製するための方法。
【請求項10】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分(この4個のビオチン化成分うち少なくとも2つは同一ではない。)を対象に投与することを含む、対象において免疫反応を誘導するための方法。
【請求項11】
4個のビオチン化成分のうち少なくとも1つが、タンパク質、細胞又はウイルスを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞が、亜致死的照射を受けた、腫瘍細胞、細菌細胞、真菌細胞及び原生動物細胞からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍細胞が前記対象から取り出された、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
熱ショックタンパク質が、MTBhsp70熱ショックタンパク質及びヒト熱ショックタンパク質からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分が、非共有結合性複合体として対象に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分を対象に投与することを含み、この4個のビオチン化成分のうち少なくとも2つが同一ではない、対象において治療の効力を高めるための方法。
【請求項19】
4個のビオチン化成分のうち少なくとも1つが、タンパク質、細胞及びウイルスからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
細胞が、亜致死的照射を受けた、腫瘍細胞、細菌細胞、真菌細胞及び原生動物細胞からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
熱ショックタンパク質が、MTBhsp70熱ショックタンパク質及びヒト熱ショックタンパク質からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
ビオチン結合タンパク質に融合させられた熱ショックタンパク質及び4個のビオチン化成分が非共有結合性複合体として対象に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
タンパク質が、抗原、抗体及び共刺激分子からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
4個のビオチン化成分うち少なくとも1つが共刺激分子を含む、請求項10に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2011−518186(P2011−518186A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505242(P2011−505242)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/041029
【国際公開番号】WO2009/129502
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/041029
【国際公開番号】WO2009/129502
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]