自己/アロ免疫疾患の治療のための抗−FCRN抗体
FcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターとして機能する、ヒトFcRnの重鎖に対する抗体が提供される。かかる抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体、またはその抗原結合フラグメントであってよい。こららの抗体は、個人における病原性のIgGsの濃度を低下させるのに有用であり、それゆえ、自己免疫およびアロ免疫疾患における治療ツールとして使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この仕事は、国立健康研究所(the National Institutes of Health)からの登録第HL067347およびAI60687により支持された。当該機関がこの発明の所定の権利を有する。
本発明は、概して、自己免疫およびアロ免疫疾患の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体液性自己免疫およびアロ免疫疾患は、病原性抗体により媒介される。自己免疫疾患の幾つかの例には、免疫性好中球減少症、重症筋無力症、多発性硬化症、狼瘡および免疫性血小板減少症(ITP)が含まれる。
ITPは、増加した末梢性血小板破壊の疾患であり、殆どの患者は、特定の血小板膜糖蛋白質に結合する抗体を発生する。抗血小板抗体は、血小板を効果的にオプソニン化し、細網内皮性システムの細胞(例えばマクロファージ)による迅速な血小板破壊を導く。試験により、殆どの患者が正常な血小板産生か、減少した血小板産生を有することが示されているので、相対的髄不全症(relative marrow failure)がこの疾患に関与する可能性がある。概して、ITPを治療するための試みには、免疫システムを抑制すること、および結果的に血小板レベルの増加を引き起こすことが含まれる。
【0003】
ITPは、男性よりも女性により頻繁に発症し、ITPは子供や大人に共通する自己免疫疾患であると考えられる。発症は、10,000人中1人である。合衆国では、大人におけるITPの発症は、1年当たり1,000,000人当たり約66症例である。子供における発症の推定平均は、1年当たり1,000,000人当たり50症例である。国際的には、小児期のITPは、1年当たり1,000,000人当たり約10〜40症例で生じる。
慢性ITPは、成人および子供の両方で主要な血液疾患の1つであるので、この問題は重大である。それは、米国におけるおよび世界中の、専門化された血液学部門の相当な入院および治療コストの原因である。毎年、約20,000例の新規な症例が米国に生じ、ITPおよび特別な治療のためのコストは極端に高い。
【0004】
殆どのITPを有する子供は、非常に低い血小板数を有し、これにより、突然の出血が引き起こされ、また、挫傷、皮膚における小赤斑、鼻血および歯茎の出血を含む典型的な症状が伴う。子供は時に、治療無しで回復し得るが、多くの医師は、注意深い観察と、出血の軽減、およびガンマグロブリンの静脈注射を用いる治療を推奨する。
ヒト免疫グロブリン(IVIG)の大量の静脈投与により、免疫性ITPで苦しめられる子供における血小板数が増すことが示されており、IVIGが、幾つかの他の自己免疫疾患のための治療として有益であることが示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの研究により、IVIGが自己免疫疾患の治療において効果を得るメカニズムが調べられてきた。ITPに関し、初期の調査により、IVIGの効果が、主として、抗体-オプソニン化血小板の食作用の原因であるFcレセプターの遮断によるとの結論が導かれた。後の研究により、Fc-枯渇IVIG調製物が、ITPを有する幾人かの患者において、血小板数を増加させることが示され、また、近年、IVIGの効果が、マクロファージ細胞におけるFcγRIIb発現の刺激によるものであり、血小板食作用の阻害に至ることが報告された。そのようなIVIG治療は、しかし、かなりの副作用を有し、また、開発および投与に非常にコストがかかる。さらに、IVIG以外の自己免疫/アロ免疫疾患の治療のために用いられる他の治療には、ポリクローナル抗-D免疫グロブリン、コルチコステロイド、免疫抑制剤(化学治療剤を含む)、サイトカイン、血漿交換、体外抗体吸着(例えば、Prosorbaカラムを用いるもの)、脾臓摘出術等の手術処置およびその他が含まれる。しかし、IVIG同様、これらの治療も、不完全な有効性と高いコストにより込み入っている。
【0006】
近年、FcRn遺伝子を欠いているノック-アウトマウス中で抗ヒトFcRn抗体を産生させることが提唱されている(Roopenian、2002、米国公開第2002/128863号)。筆者は、IgGと同じFcRnのエピトープに結合する高アフィニティ抗体が、病原性のIgGのFcRnへの結合を競合的に阻害し、それゆえ、クリアランスを増すと論じている。しかし、そのような抗体のいずれも実証されておらず、それゆえ、そのような抗体の効率は未だ疑問である。さらに、内在性のIgGのFcRnに対する高いアフィニティおよび、血液中の内在性のIgGの高い濃度のために、FcRnの競合的阻害は非常に高い投与量を必要とし、それゆえ、現在のIVIG治療と同様の副作用を伴う可能性があると考えられる。
【0007】
先行技術の記載に基づき、IVIGの低い効力および高いコストを有しない、自己免疫およびアロ免疫疾患のための新規な治療法の開発が、事実上必要とされている。自己免疫およびアロ免疫疾患の治療のためのIVIGよりも安全でより効果的な代替法を同定することがそれゆえ望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明により、自己免疫およびアロ免疫疾患の治療のための組成物および方法が提供される。本発明の組成物は、FcRnレセプターによるIgGの輸送を阻害するために非競合的に機能する剤を含む。非競合的レセプターインヒビターは、定義すれば、レセプターリガンド(例えばIgG)の濃度に依存しない阻害活性を示す。IgGのFcRn媒介性輸送に関して、非競合的阻害は、生理的なpHでの、FcRnに対するインンヒビターの非競合的結合、および、エンドソームでの選別および通過の時間経過中のインヒビター-FcRn複合体の不完全な解離により達成され得る。別法として、または追加的に、非競合的阻害は、リガンド結合部位から離れたおよび/またはこれと同一でない部位への結合により達成され得る。本発明の抗体はFcRnに結合し、結果、病原性抗体のFcRnへの結合が阻害され、それにより、個人の体からの病原性抗体のクリアランスが改善される。一態様では、FcRnに結合する剤は、FcRnの重鎖または軽鎖に対して指向されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。一態様では、本発明により、ヒトFcRnレセプターに対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体が提供される。他の態様では、前記抗体はキメラまたはヒト化されたものである。
【0009】
本発明により、自己免疫またはアロ免疫疾患を緩和するための方法であって、FcRnへ結合するためのIgGの非競合的インヒビターとして機能し、FcRnに結合して、病原性抗体のFcRnへの結合を阻害する剤を含む組成物を個人に投与することを含む方法も提供される。別の態様では、かかる剤は、FcRn、特にヒトのFcRnレセプターに対して指向された、ポリクローナル、モノクローナル、キメラまたはヒト化抗体である。別の態様では、前記抗体は、FcRnレセプターの重鎖に対して指向される。
本明細書中に用いられる「病原性抗体」なる文言は、病的な状態または疾患を生じる抗体を指す。そのような抗体には、抗血小板抗体が含まれる。
【0010】
本発明により、病原性抗体のクリアランスを増すための組成物および方法が提供される。これらの組成物および方法は、自己免疫およびアロ免疫疾患の治療に有用である。本発明の組成物および方法は、病原性抗体がFcRnに結合するのを妨げるのに十分な様式で、FcRn(新生児のFc-レセプター、FcRP、RcRBおよびブランベルレセプター(Brambell Receptor)としても公知である)を結合することに向けられる。
【0011】
本発明において、特異的な抗-FcRn治療が提供される。酵素またはレセプターのインヒビターの大部分は、基質またはリガンド結合の競合的インヒビターとして作用し、結果、当該インヒビターは、当該レセプター上の、リがンドと同じ部位に結合し、それゆえ、阻害の程度は、当該インヒビターおよびリガンドの相対的アフィニティおよび濃度の一次関数(direct function)である。Roopenianに対する米国特許出願第2002/0138863号は(段落0031をご参照)、FcRnに対する抗体は、IgGのFcに対する結合に重要な同じ部位でFcRnに結合し、結果、当該抗体がFcRnに結合すると、FcRnの当該部位へのIgGの結合が阻害されると力説する。この先行技術における力説は競合的インヒビターに対して向けられているが、驚くべきことに、本発明において、FnRnへの結合のためのIgGの非競合的インヒビターが治療的価値を有することが見出された。
【0012】
さらに、Roopenian等は、高い特異性の抗FcRn抗血清を作成することは困難であることを認める(段落0085をご参照)。この引用文献は、FcRnが体外分子として認識されるようなFcRn欠損マウスにおいて、抗-FcRn抗体の生成によりこの問題を克服することを課題とするものである。しかし、本発明では、我々は、ヒトFcRn軽鎖を用いて、および、スカシ貝ヘモシアニンに共有結合したヒトFcRn重鎖ペプチドフラグメントから成る新規な免疫結合物を用いて、動物を繰り返し免疫化することにより、FcRnの軽鎖および重鎖の両方に対する高アフィニティおよび特異的抗体を作成することができた。
【0013】
好ましい態様では、抗体またはそのフラグメントは、ヒトFcRnに対するIgG結合またはこれによる輸送の非競合的インヒビターである。抗体またはフラグメントは、いずれかのイソ型(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM等)から成り、かかる抗体は、いかなる種(例えば、マウス、ラット等)にて作成されてもよい。起源の種類に依存して (Ober等、2001、Int Immunol 13: 1551-9をご参照)、IgGイソ型の抗体は、ヒトFcRnに対するIgGの結合を競合的に阻害し得る。かかる抗体は、それらがFcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターとしても作用する限り、用いることができる。つまり、FcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターでもあり、また、競合的インヒビターでもある1つの抗体を用いてもよい。
【0014】
FcRnは、pH依存性アフィニティを有してそのリガンド(即ち、IgG)に結合する。それは、実質上、生理的pHではIgGに関してアフィニティを示さない。従って、生理的pH(7.0〜7.4)でFcRnに結合する抗-FcRn抗体が、非競合的インヒビターとして作用し得、結果、抗-FcRn抗体のFcRnに対する結合は、IgGの存在によっては影響されない。本発明の抗体の、pH6〜8の範囲でのpH-非依存的様式での、また、非競合的様式での、FcRnに結合する能力により、競合的インヒビターに必要とされるよりも少ない濃度でのIgGのFcRn媒介性輸送の機能的阻害が可能となる。いかなる特定の理論により拘束されることを意図せずに、pH6〜8の範囲でのpH非依存性により、そのようなインヒビターが細胞表面上の (生理的pH)FcRnに結合すること、および、細胞内輸送の経過中、FcRnに対して結合したままであること、それにより、酸性pH(〜6)のエンドソーム内でIgGへのFcRn結合を阻害すること、が可能となると仮定される。結合の非競合的様式は、これらのインヒビターを、競合的インヒビターよりもかなり低い濃度で用いることを可能にし、それらが治療目的のためにより魅力的になる。いかなる特定の理論により拘束されることを意図せずに、結果として、細胞内異化からのIgGのFcRn媒介性保護が阻害され、これにより、IgGのクリアランスが増すと考えられる。
【0015】
本明細書中に実施例に示すように、IVIGは、ITPの動物モデルにおいて、病原性抗体の排出の投与依存性の増加を媒介し、この効果は、FcRnとのIVIG相互作用により媒介される。しかし、部分的には、病原性抗体とのFcRn結合のIVIG阻害の推定機構(即ち競合的阻害)のために、また、部分的には、IgGが生理的pH(即ち、pH7.2-7.4)でFcRnに関して非常に低いアフィニティを示す事実のために、IVIGの非常に高い投与量が、病原性抗体のクリアランスの実質的な増加を生じるために必要とされる(即ち、IVIGの典型的な臨床投与量は2g/kgである)。
【0016】
本発明は、生理的pHでの病原性抗体に対するFcRn結合の非競合的阻害を提供し、かつ病原性抗体に対するFcRn結合の非競合的阻害を可能とする特異的抗-FcRn治療のためのものである。つまり、本発明により、自己免疫およびアロ免疫疾患のための治療として、病原性抗体がFcRnに結合するのを妨げる方法が提供される。本発明の方法はまた、病原性抗体がFcRnに結合するのを妨げるのに十分な方法で、特異的にFcRnを阻害するのに有用な組成物を提供する。本発明の組成物および方法は、前記治療を受け入れる者において、病原性抗体の排出率の増加と、病原性抗体により引き起こされる病的状態および疾患の緩和の両方にむしろ作用する。
【0017】
本発明の一態様では、抗FcRn(重鎖)抗体が提供される。これらの抗体は、全重鎖または当該重鎖の配列に対応するペプチドを用いることにより作成することができる。かかる抗体の例を、実施例12〜15に示す。抗体は、b2ミクログロブリンに結合しないことが観察された。しかし、それらはFcRn複合体(重鎖およびb2ミクログロブリンの両方を含む)に結合し、FcRnの重鎖の配列に対して作成されたので、これら抗体がヒトFcRnの重鎖に結合することが最も起こりえると考えられる。
【0018】
本発明の組成物および方法は、従って、限定するものでなく、免疫性血球減少症、免疫性好中球減少症、重症筋無力症、多発性硬化症、狼瘡および、抗体が病的状態や疾患を引き起こす他の疾患を含む自己免疫疾患での使用のために適している。ヒトに加えて、本発明の抗体は、他の種にも用いることができる。
【0019】
本発明の組成物は、FcRnが抗-血小板抗体等の病原性抗体に結合することを阻害し得る剤を含む。そのような組成物には、限定するものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびそのフラグメントが含まれる。抗体は、キメラまたはヒト化されたもの、抗体フラグメント、ペプチド、小分子または、病原性抗体がFcRnレセプタに結合するのを妨げ得るこれらの組合せであってよい。抗体結合部位を含む抗体フラグメントも用いてよい。そのようなフラグメントには、限定するものではないが、Fab、F(ab)’2、Fvおよび単鎖Fv(即ち、ScFv)が含まれる。そのようなフラグメントは、抗原結合部位の全てまたは部分を含み、そのようなフラグメントは、親抗体の特異的結合特性を保持する。
【0020】
本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体であってよい。「キメラ」抗体は、軽鎖および重鎖遺伝子が異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから成るように遺伝子操作された免疫グロブリン遺伝子によりコードされるものである。例えば、マウスのモノクローナル抗体からの遺伝子の可変(V)セグメントを、ヒトの定常(C)セグメントに結合してもよい。そのようなキメラ抗体は、マウスの定常領域とマウスの可変領域を有する抗体よりもヒトに対して抗原性が低いと考えられる。
【0021】
「ヒト化された」抗体は、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖または、非ヒト化免疫グロブリンから誘導された最小限度の配列を含むそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または、抗体の他の抗原結合配列等)である。ヒト化された抗体には、ヒト免疫グロブリンであって、相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、アフィニティおよびキャパシティを有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種のCDRからの残基により置き換えられているものが含まれる。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基で置き換える。ヒト化された抗体は、ヒト抗体にも、非ヒト導入性CDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含んでもよい。概して、ヒト化された抗体は、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、当該CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリのものに対応し、および、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。
【0022】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当該分野で周知である。概して、ヒト化抗体は、その中に、非ヒトの源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これら非-ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基と呼ばれ、典型的には、「インポート」可変ドメインから得られる。ヒト化は、ウインターおよび共働者の方法により(Jones等、Nature, 321: 522 525 (1986); Riechmann等、Nature, 332:323 327 (1988); Verhoeyen等、Science, 239: 1534 1536 (1988))、齧歯類CDRsまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列で置換することにより、本質的に行うことができる。実際には、ヒト化された抗体は、典型的には、幾つかのCDR残基、および潜在的には幾つかのFR残基が、齧歯類の抗体における類似部位からの残基により置換されているヒト抗体である。
【0023】
FcRnまたはそのフラグメント、軽鎖または重鎖等に対して指向されるポリクローナル抗体は、適当な対象をFcRnまたはその部分、軽鎖、重鎖、および当該分子内に含まれるペプチドセクションなどで免疫化することにより調製することができる。免疫化された対象における抗-FcRnまたはそのフラグメント抗体力価は、FcRnまたはそのフラグメントを用いるELISA等の標準的な方法により、徐々にモニターすることができる。所望の場合、FcRnまたはそのフラグメントに対して指向された抗体分子は、哺乳動物から(例えば、血液から)単離でき、周知の方法、IgGフラクションを得るための蛋白質Aクロマトグラフィー等によりさらに精製することができる。
【0024】
FcRnまたはそのフラグメントに対して指向されたモノクローナル抗体は、標準的な方法、KohlerおよびMilsteinにより最初に記載されたハイブリドーマ法(1975, Nature 256: 495-497)により製造することができる。簡単には、不死化した細胞系統(典型的には骨髄腫)を、FcRnまたはそのフラグメントで免疫化された哺乳動物からのリンパ球(典型的には脾細胞)に融合し、生じたハイブリドーマ細胞の培養上清を探索して、FcRnに結合するモノクローナル抗体を生じるハイブリドーマを同定する。典型的には、不死化細胞系統(例えば、骨髄腫細胞系統)を同じ哺乳動物種、リンパ球等から誘導する。本発明のモノクローナル抗体を産生しているハイブリドーマ細胞は、ハイブリドーマ培養上清を、FcRnを結合する抗体に関して、標準的なELISAアッセイを用いて探索することにより検出される。ヒトハイブリドーマを同様の方法で調製することができる。
【0025】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製することの別法は、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(抗体ファージディスプレイライブラリー)を、FcRnまたはそのフラグメントを用いて探索することにより、モノクローナル抗体を同定および単離することである。
本発明の組成物の投与は、当該分野の専門家に公知の方法により行うことができる。FcRnの特定のインヒビターが抗体を含む場合、投与は、例えば、静脈内、筋肉内または皮下注入、カニューレまたは当該分野の専門家に公知の他の方法により行うことができる。同様に、抗-血小板抗体のFcRnレセプターへの結合を妨げるのに有効な小分子の投与を、当該分野の専門家に周知の方法により行うことができる。
【0026】
自己免疫およびアロ免疫疾患の治療における病原性抗体の排出のために、本発明のインンヒビター抗体または抗体(複数)を投与することができる。特定の個人における病原性抗体の排出におけるインヒビター抗体の効果は、投与法、インヒビター抗体の薬物動態(即ち、インヒビター分布および排出の率および程度)、FcRnに関するインヒビター抗体のアフィニティ、FcRnの輸送能力、および潜在的には、FcRnレセプターのターンオーバーによる傾向があると認められる。本明細書中に示す動物試験により、モデルインヒビター抗体が、ラットにおけるIgG排出の投与量依存性の一時的な増加に帰着することが立証された。当該効果の一時的な性質により、FcRn遮断持続の制御が可能となり、FcRn遮断に関連するあらゆるリスク(例えば、感染のリスク)を最小に抑えることができると考えられる。
【0027】
本発明のpH6〜8非依存性のおよび非競合的なインヒビターは、内因性の病原性および非病原性IgG抗体の濃度の対応する低下を生じる。そのようなものとして、病原性抗体濃度における、FcRnの高アフィニティ、非競合的インヒビターの影響を、内在性IgGのトータル血清濃度における前記インヒビターの効果に基づき評価することができる。FcRnインヒビターは、単一および/または複数投与として投与されてよい。概して、1〜2000mg/lg、好ましくは1〜200mg/kgおよびより好ましくは1〜40mg/kgを、自己免疫またはアロ免疫疾患に冒されている患者に投与することができ、これらの治療法は、好ましくは、血清内在IgG濃度を処置前の値の75%未満に低下させるように設計される。断続的な、および/または慢性(継続的)投与法も適用してよい。
【0028】
本発明を以下の実施例により説明するが、実施例は、本発明の特定の態様を説明するためだけのものであり、いずれにしても、限定を意図するものではない。
[実施例1]
本実施例では、使用した一般的方法を記載する。200〜225gの雌の・スプラーグ
ドーリーラットをインビボ分析のために使用した。ラットに、処置の2日前に頚静脈カテーテルを装着した。7E3、ネズミ抗糖蛋白IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)モノクローナル抗体を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Manassas, Va)から入手したハイブリドーマ細胞から作成した。ハイブリドーマ細胞を血清-不含培地(Life Technologies(登録商標)、Rockville, MD)中で増殖させ、次いで、抗体を当該培地から、蛋白質Gクロマトグラフィーを用いて精製した。IVIG調製物を、Baxter Healthcare(登録商標)(Hyland Division, Glendale, CA)とBayer(登録商標)(Pharmaceutical Division, Elkhart, IN)から入手した。両IVIG調製物を、溶媒/界面活性剤-処理し、ヒト血漿の冷エタノール分別により、作成した。古びたヒト血小板を、アメリカン・レッド・クロス(Buffalo, NY and Salt Lake City, UT)から入手した。ネズミの抗メトトレキサートIgG1モノクローナル抗体(AMI)は我々の研究室で作成し、次いで精製した。ヤギ抗ヒトIgG(ヤギおよびマウス血清蛋白質に対して交差反応なし)およびアルカリホスファターゼ-結合ヤギ抗マウスIgG(ヤギおよびヒト血清蛋白質に対して交差反応なし)は、共に、Rockland(Gilbertsville, PA)から入手した。マウス抗ヒトIgG、蛍光イソチオシアネート(FITC)-標識抗マウスIgGおよびp-ニトロフェニルホスフェートはPierce(登録商標)(Rockford, Illinois)からのものであった。仔ウシ血清アルブミン(BSA)およびバッファー試薬はSigma(登録商標)(St Louis, MO)から入手した。バッファーはリン酸緩衝塩水(PBS, pH7.4)、0.02M Na2HPO4(PB)、およびPB+0.05%トウィーン-20(PB-トウィーン)であった。
【0029】
実施例2〜5により、抗血小板抗体におけるIVIGの効果を説明する。これらの実施例では、IVIGが、ITPのラットモデルにおいて、投与量依存式に抗血小板抗体の効果を弱め得ること、および、IVIGが、抗血小板抗体クリアランスにおいて、劇的な、明らかに非特異的な効果を有することを示す。
【0030】
[実施例2]
この実施例により、IVIGが、IPTのラットモデルにおいて抗-血小板抗体を除去することを示す。ラットに頚静脈カテーテル経由でIVIG(0.4、1、または2g/kg)を投与した。IVIG投与後、血液サンプル(0.15mL)を、血小板数のベースライン測定のために回収した。ラットに、次いで、抗血小板抗体、7E3、8mg/kgを投与し、次いで、血小板数を、Cellu-Dyne1700マルチパラメータ・ヘマトロジー・アナライザー(Abbott Laboratories(登録商標)、Abbott Park, IL)を用いて24時間かけて取得した。対照動物に、塩水、次いで7E3を投与した。各動物の血小板最下点(nadir)は、観察された最も少ない血小板数であった。血小板数データを、初期血小板数における大きな動物間変異性の理由で、初期血小板数により正規化した。データを正規化することにより、7E3およびIVIGの効果を動物間でより良好に比較することができる。血液サンプル(0.15mL)を、7E3の投与後、1、3、6、12、24、48、96および168時間で薬物動態分析のために採取した。7E3血漿濃度を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を以下のように用いて測定した。ヒトのGPIIB/IIIaをPB中で1:500に希釈し、Nunc Maxisorpプレート(0.25ml/ウェル)に添加した。プレートを一晩4℃でインキュベートした。標準およびサンプルを次いでプレートに添加し(0.25ml/ウェル)、45分間室温でインキュベートした。最終的に、p-ニトロフェニルを添加し(4mg/m、DEA中)、吸収対時間の変化をSpectraMax Microplateリーダーで記録した。プレートを3回PB-トウィーンで、アッセイの各ステップ間に洗浄した。標準は、1%のマウス血漿中0、1、2、2.5、5、10および20ng/mlの最終濃度に作成した。動物間アッセイ変動性は、標準範囲曲線内の量対照サンプルに関して<15%であった。
【0031】
8mg/kgの投与量で、7E3は、ラットにおいて、迅速で重特な血小板減少症を引き起こした。図1に認めることができるように、ラットのIVIGでの前処理により、7E3の投与後の血小板数時間経過が有意に変化した(P=.031)。対照からの統計学的に有意な差(P<.01)が、2-g/kgのIVIG群に関して1および3時間で、および1-g/kgIVIG群に関して3時間で、認められた。初期の絶対的な血小板数の変異性の程度が大きいために、このモデルでは、パーセント血小板数を用いて7E3の効果を評価した。しかし、各群は、対照、0.4-、1-、および2-g/kgIVIG群と比較し得る平均初期血小板数を有し、326±62、323±137、272±111および301±69×109血小板/Lの絶対初期数を各々有した。絶対血小板数は、出血のリスクを評価するのに重要であり得るので、我々はまた、血小板数最下点値を測定基準として測定し、このモデルにおけるIVIG効果を決定した。7E3処置のみの後、動物は、48±28×109血小板/Lの絶対血小板最下点を有し、これは、14%±8%の初期カウントの平均に対応した。IVIG前処理を用いて、当該最下点パーセント血小板数(対照と比較して)の121%〜279%増加を認め(P=.044)、0.4、1-、および2-g/kgIVIG投与各々に関して31%±26%、44%±24%、および53%±27%の値を有した。各IVIG処理群は、対照と有意に差があった(P<.05)。しかし、IVIGは、最も高い投与量ですら、血小板減少症を途絶するのに完全に有効ではなかった。血小板減少症の閾値に達しているラットの割合は(初期数の<30%)は、IVIGで前処理された動物に関して投与量と共に低下し、0.4-、1-、および2-g/kgのIVIG群のラットの75%、50%、および25%が、初期の30%未満の最下点血小板数を有した。
【0032】
これらの結果は、IVIGでのラットの前処理が、7E3-誘導性の血小板減少症を弱化したことを示す。IVIG前処理により、(最下点での平均パーセント血小板数により測定されるように)7E3処理後に達成される血小板減少症の平均程度が低下し、重篤な血小板減少症を示している動物のフラクションが低下した。
【0033】
[実施例3]
本実施例により、IVIGの7E3における効果の薬物動態を記載する。これを決定するために、IVIGを用いるラットの前処理後の7E3血漿濃度を測定した。図2および表1から認めることができるように、IVIGは7E3のクリアランスを増強することが観察された。ANOVAは、4つの治療群に関して算出されたクリアランス値の間の高程度に有意な差を明らかにした(P<.001)。7E3クリアランスにおける差は、0.4g/kgIVIGを受容した動物対1g/kgIVIGを受容した動物からのデータの比較を除き、処置群の全部分に関して統計学的に有意であることが示された(チューキー多重比較検定)。対照からの有意な差が、7E3濃度に関して、2-g/kgIVIG群に関して12時間およびそれより長い各時点で認められ、および0.4-および1-g/kgIVIG群に関して少なくとも48時間で、認められた。
【0034】
【表1】
【0035】
本実施例により立証されるように、IVIGは7E3の薬物動態を変更した。我々のデータにより、IVIG投与での7E3のターミナル半減期の低下への傾向が立証され(P=.06)、1g/kgのIVIGを受容した動物で認められるものに対する対照動物における半減期の比較において、統計学的有意性が達成された(P<.05)。より重要には、IVIGは、抗血小板抗体のクリアランスの劇的な増加を誘導することが見出された(P<.001)。排出率(および半減期)におけるIVIGの効果は、IVIG投与後の時間とともに低下することが予測され得るので、7E3排出の時間-および-濃度-平均測定としての要求を満たすクリアランスは、7E3排出におけるIVIG効果の評価のための優れた測定である。
【0036】
[実施例4]
本実施例により、IVIGが抗-FcRn抗体に結合しないことが立証される。ヤギ抗ヒト-IgG(PB中で1:500に希釈されたもの、0.25mL/ウェル)をNunc(登録商標)Maxisorp(登録商標)96ウェルマルチプレート(Nunc(登録商標)モデル第4-42404、Roskilde, Denmark)のウェルに添加し、次いでプレートを4℃で一晩インキュベートさせた。IVIG(25mg/mL)および7E3(0、0.01、0.05および0.10mg/mL)を試験チューブ中に合わせ、2時間37℃でインキュベートした。ポジティブ対照サンプルは、7E3に関して示される濃度と同じ濃度のマウス抗ヒトIgG(Pierce(登録商標))と共にインキュベートされたIVIGから成る。サンプルおよび対照を、PBS中1%のBSAに、1000まで希釈し、次いでミクロプレート(0.25mL/ウェル)に添加し、2時間室温でインキュベートした。アルカリホスファターゼ-標識抗マウスIgG(PB中に1:500で希釈したもの、0.25mL/ウェル)を次いでプレートに添加し、45分間、ここでも室温でインキュベートした。最終的にp-ニトロフェニルホスフェート(ジエタノールアミンバッファー中4mg/mL、pH9.8)を0.2mL/ウェルで添加し、プレートを、405nmで、プレートリーダー(Spectora Max(登録商標)340PC、Molecular Devices(登録商標)、Sunnyvale, CA)にて記録した。プレートを10分間かけて記録し、吸収対時間曲線の傾斜を用いてアッセイ反応(dA/dt)を評価した。各サンプルを3対アッセイした後、反応を平均±SDとして示す。アッセイの各ステップ間で、マイクロプレートのウェルを3回PB-トウィーンで洗浄した。
【0037】
7E3のIVIGに対するインビトロでの結合は、検出することができなかった。図3は、7E3-IVIG結合を検出するために設計された実験から得られた結果を示す。IVIGおよび7E3をインビトロで37℃で2時間インキュベートした。このインキュベーション後、サンプルを希釈し、抗ヒトIgGでコートしたマイクロプレートに添加した。つまり、7E3がIVIGに結合したら、二次抗マウスIgGが、7E3の存在を検出するであろう。7E3-含有サンプル対ネガティブ対照(IVIG単独)に関するアッセイ反応間に統計学的に有意な差はなく、P=.164を有した。しかし、ポジティブ対照抗体に関してはアッセイ反応(各濃度での)において有意な差が存在し、P<.001を有した。この実験における7E3/IVIGの濃度比は、インビボ実験において予想されるものと同じようになるように設計された。
【0038】
IVIGのこの効果が、抗血小板抗体、7E3に関して特異的であるかどうかを決定するために、我々は、二次モノクローナル抗体、AMIの、IVIGの存在および不在下での薬物動態を特定した。ラット(n=3/群)に、頚静脈カニューレにより、2g/kgのIVIG(または対照のための塩水)を投与した後、AMI(8mg/kg)を投与した。血液サンプルを1週間かけて採取し、血漿を、ELISAにより、AMI濃度に関して分析した。薬物動態分析を、7E3に関して前記のごとく行った。図4は、IVIGが、AMIのクリアランスをも増し、AMIクリアランスが、対照からIVIG処理群まで、0.44±0.05から1.17±0.05mL時間-1kg-1まで増加した(P<.001)ことを示す。さらに、IVIG処理により増加したクリアランスの相対程度は群間で同様であり、7E3に関して認められるクリアランスの2.37倍の増加と、AMI、次いで2-g/kgIVIG処理に関して認められるクリアランスの2.66倍の増加を伴った。
【0039】
[実施例5]
本実施例により、IVIGがヒト血小板への7E3の結合を阻害することができるかどうかを決定するための定性および定量試験を記載する。定量試験では、10μg/mLの7E3を1.5時間、ヒト血小板(1×107血小板/mL)と、IVIG(2.5mg/mL)の存在下または不在下でインキュベートした。対照マウスIgGはネガティブ対照であった。サンプルを4000rpmで6分間遠心分離し、PBSで洗浄し(2回)、次いで、45分間100μLの1:10希釈(PBS中)のFITC-標識抗マウスIgG溶液と共にインキュベートした。サンプルを再び洗浄し、PBS中に再懸濁し、次いでフローサイトメトリー(Flow Cytometry Core Facility, Huntsman Cancer Institute, Salt Lake City, UT)による分析に供した。定量阻害試験では、7E3血小板結合のIVIG阻害のポテンシャルをかなり詳細に研究した。ヒト血小板(8.2×108/mL)を7E3(4.8-72.5μg/mL)と共に、IVIG(25mg/mL)の存在下または不在下で2時間インキュベートした。サンプルを次いで約3000gで6分間遠心分離し、血小板ペレットを得た。各上清の一部を得、非結合7E3濃度に関してアッセイした。7E3の血小板に対する、7E3の存在下および不在下での結合を、以下の結合曲線に対してデータを適合させることにより分析した。:
【0040】
【化1】
【0041】
前記等式中、Ffは7E3の遊離フラクションであり、KAは、7E3血小板結合に関する見かけであり、[7E3]fは、非結合モル7E3濃度であり、およびRtは、トータルのレセプター濃度である。Micromath Scientist(登録商標)を用いて、データの非線形最小二元分析を作成し、パラメータ値と報告されたSDsはソフトウェアアウトプットからのものである。
【0042】
定性フローサイトメトリー分析の結果を図5に示す。蛍光ヒストグラムにて、IVIGの存在下で、シフトは認められなかった。定量試験からの結果を図6に示す。結合曲線は、IVIGの存在下と不在下でほぼ同一である。結合パラメータKAおよびRt-において有意な差は認められなかった。IVIGの存在なしでは、KAは4.9±0.7×108M-1であり、Rtは7.5±0.4×10-8M(55000±3000GP/血小板)であった。IVIGを用いて、KAは5.5±1.2×108M-1であり、Rtは7.6±0.7×10-8M(56000±5000GP/血小板)であった。
【0043】
[実施例6]
本実施例では、抗血小板抗体のクリアランスにおけるIVIGの効果を、FcRnノックアウトマウスにおいて試験した。β-2-ミクログロブリンノックアウトマウス(FcRn発現を欠いているもの)およびC57B1/6対照マウス、21-28gを、ジャクソン・ラボラトリー(Bar Horbor, ME)から入手した。群当たり3-5匹のマウスに、頚動脈カニューレ経由で、IVIG(1g/kg)または塩水を投与した後、8mg/kgの7E3を投与した。各時点で20μlの血液サンプルを、マウスの伏在静脈から、ノックアウトマウスについては4日間の経過をかけて、対照マウスについては30〜60日間の経過をかけて、採取した。血漿7E3濃度を、実施例2に記載されているようにELISAにより決定した。
【0044】
標準的な非コンパートメント薬物動態分析を行い、種々の処置群(11)に関する7E3のクリアランスおよびターミナル半減期を、WINNONLINソフトウェア(Pharsight Corp., Palo Alto, CA)を用いて決定した。非対t-検定を、GraphPad Instat(GraphPadソフトウェア、Inc., San Diego, CA)を用いて行った。
B-2-ミクログロブリンノックアウトおよび対照C57BL/6マウスにおける7E3薬物動態におけるIVIGの効果を図7に示す。IVIGが対照マウスにおいて7E3のクリアランスを増し(P<0.0001)、IVIG処置が、FcRn発現を欠くマウスにおいて7E3のクリアランスを増し損ねることが認められ(表2をご参照)、抗-血小板抗体クリアランスにおけるIVIGの効果がFcRnレセプターにより媒介されていることが確立される。
【0045】
【表2】
【0046】
[実施例7]
抗血小板抗体のFcRnレセプターへの結合を特異的に阻害するのに適した剤の例は、モノクローナル抗-FcRn抗体である。モノクローナル抗FcRn抗体を分泌しているハイブリドーマを、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ACTT#: CRL-2437、指定:4C9)から入手した。ハイブリドーマ細胞を、培地、1%の仔ウシ血清を補充した標準培地中で増殖させた。培養上清を収集し、遠心分離し、次いで、蛋白質-Gクロマトグラフィに供して、IgGを精製させた。図8に示すように、〜60mg/kgの特異的抗-FcRn抗体調製物の投与により、実施例1からの血小板減少動物モデルにおける抗-血小板抗体のクリアランス率の〜400%の増加が導かれた。これに対して、この同じモデルで、2g/kgのIVIGにより、抗血小板抗体クリアランスの〜100%の増加のみが導かれた。これにより、この実施例で7E3のクリアランスに影響を及ぼすために使用された当該剤、即ち、FcRnの特異的インヒビターが、IVIGよりもより強力でより効果的であることが立証され、これが、FcRnの非特異的インヒビターであると考えられる。
【0047】
[実施例8]
本実施例により、他の抗体AMIにおける4C9の効果を記載する。175〜275gの雌のスプラーグドーリーラットに、ケタミン/キシラジン麻酔薬(75/15mg/kg)下に頚静脈カニューレを装着した。手術の2日後に、動物に0、3、15および60mg/kgの4C9を、頚静脈カニューレを経由して注入して処置した(群当たり3〜4匹のラット)。4C9の投与の4時間後、AMI(8mg/kg)をカニューレより投与し、血液サンプル(150μl)を1、3、6、12、24、48、72および96時間で回収した。カニューレの開放性(patency)を、約200μlのヘパリン処理された塩水での洗浄のために保持した。血液を13,000gで3〜4分間遠心分離し、次いで血漿を単離し、4℃にて分析まで保存した。血漿AMI濃度はELISAにより決定した。
【0048】
図9に示すように、AMIのクリアランスは、4C9の投与後99%まで、対照動物における0.99±0.14ml/h/kgから、60mg/kgの4C9で前処理された動物における1.97±0.49ml/h/kgまで、増加した(p<0.05)。このように、これらデータにより、抗-FcRn抗体を、IgG抗体のクリアランスをインビボで増すために使用し得ることが立証される。
【0049】
[実施例9]
本実施例では、ヒトFcRnに対するモノクローナル抗体の生成を示す。フロイント不完全アジュバント(Sigma Chemical)中に乳化したヒトFcRnの軽鎖(即ち、ヒトベータ-2-ミクログロブリン、Sigma Chemical, St. Louis, Mo.)を用いて、6匹のBalb/cマウス(Harlan, Indianapolis, IN)を繰り返し免疫化した。動物を、免疫化の7〜10日後に、伏在静脈から出血させ、ヒトFcRn軽鎖に対して指向された抗体を、抗原捕捉酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて検出した。最も高いELISA反応を有する動物を、脾細胞ドナーとしての使用のために選択し、融合を、ネズミのSP20骨髄腫細胞(ATCC, Manassas, VA)を用いて行った。簡単には、マウスをケタミン(150mg/kg)およびキシラジン(30mg/kg)を用いて屠殺し、脾臓を迅速に、無菌法を用いて取り出した。脾細胞を脾臓組織から、無菌の22-ゲージの針を用いて取り出し、RPMI1640中に懸濁し、次いで、ポリエチレングリコールとの、標準的な方法(例えば、Harlow E and Lane D. 1988. 抗体:研究室マニュアル、ニューヨーク:コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー)を用いる遠心分離により、SP20細胞と融合させた。融合細胞を、HAT選択培地(Sigma Chemical)の適用により選択し、限定希釈の方法によりクローン化した。組織培養上清を、ヒトベータ-2-ミクログロブリンに対するELISA反応を評価することにより、抗-FcRn活性に関してアッセイした。
【0050】
91個の生存可能なハイブリドーマクローンを同定し、組織培養上清を、各クローンの培養物から得、抗ヒトFcRn軽鎖抗体の存在に関して探索した。簡単には、ヒトFcRn軽鎖を96ウェルのミクロプレート上に一晩4℃でコートした。プレートを次いで洗浄し、次いで、リン酸緩衝塩水(PBS、ネガティブ対照)、ハイブリドーマから得られた培養上清物、または、4C9ハイブリドーマ細胞−ラットFcRnの軽鎖に対して指向される抗体を分泌するもの(Raghavan等、Immunity 1(4): 303-315, 1994)−のいずれかと共にインキュベートした。室温で2時間インキュベート後、プレートを洗浄し、アルカリホスフェートと結合したヤギ抗-マウスFab特異的抗体を添加し、1時間インキュベートした。最終的に、プレートを洗浄し、次いでp-ニトロフェニルホスフェートを添加した。吸収の変化を時間とともに(10分間かけて)、ミクロプレートリーダーにより405nmにてモニターした。91個の生存能力のある潜在的な抗-ヒトFcRnクローンから、8個のポジティブなクローンを同定した。これらのクローンは、1H5、4B10、6D10、7C7、7C10、10E7、11E4および11F12であった。ヒトFcRnの軽鎖に対するその反応を図10に纏める(プロットしたものは、正味のアッセイ反応:例えば、生の反応マイナスPBS対照のアッセイ反応である)。一元配置ANOVAにより、アッセイ反応における有意な差が明らかになり(p<0.0001)、8個のポジティブクローンに関するアッセイ反応は、対照のものから有意に異なることが認められた(各クローンに関してp<0.01、Dunnet多重比較検定)。さらに、このアッセイにより、ラットのFcRn軽鎖に対して指向される4C9抗体が、ヒトFcRn軽鎖に対して有意な結合を示さないことが明らかにされた。
【0051】
[実施例10]
本実施例は、ヒトFcRnを発現する293細胞へのヒトIgGの結合における、抗-FcRn軽鎖抗体の効果を記載する。これを立証するために、ヒトFcRnを発現している293細胞を、Brandeis UniversityのDr.Neil Simisterから入手した。ヒトIgGを、標準的な方法により、FITCで標識した。組織培養上清を、ヒトFcRnの軽鎖に対して指向される抗体を分泌することが見出された4つのハイブリドーマ(11E4、11F12、1H5、10E7)(実施例9)の培養物から得た。
【0052】
293細胞をトリプシン:EDTAで処理し、培地中に懸濁した。細胞懸濁液を300gで5分間遠心分離し、緩衝塩水中に再懸濁し、次いで細胞を血球計算板により計測した。約3.6×106細胞/mlの293細胞を、各遠心チューブに、pH6または8の緩衝塩水内に添加した。細胞を緩衝塩水単独と共に、または、1μg/mlの濃度のFITC-IgGと共に、ハイブリドーマ細胞から得られた細胞培養上清の存在下または不在下でインキュベートした。反応混合物を室温で1.5時間インキュベートし、次いで細胞を洗浄し、緩衝塩水中に再懸濁した。細胞結合蛍光を、フルオロメーターで、各々494および520nmの励起および放射波長のセットを用いて分析した。
【0053】
ヒトIgGのヒトFcRnへの公知のpH依存性結合と矛盾無く、細胞結合蛍光は、1μg/mlのFITC-ヒト-IgGと共にpH6.0および8.0各々でインキュベートされた293細胞に関して、253000および10800であることが認められた。対称的に、FITC-IgGの不在下でインキュべートされた細胞に関しては、細胞結合蛍光は、pH6.0および8.0各々で、5220および5300であることが認められた。pH6.0でFITC-IgGおよび細胞上清−抗-FcRn抗体を分泌している細胞に関して得られたもの−と共にインキュべートされた細胞に関して、細胞結合蛍光は80〜84%まで低下した(下記の表3をご参照)。
【0054】
【表3】
【0055】
これらの結果は、ヒトIgGの、ヒトFcRnを発現している293細胞への結合が、pH依存性であり、pH8.0で認められるものに対して、pH6.0で、より強い結合が示されることを示す。ヒトFcRn軽鎖に対して指向される抗体を分泌しているハイブリドーマからの培養上清は、ヒトIgGのFcRnに対する結合を阻害することができる。
【0056】
[実施例11]
この実施例では、さらに、本発明の抗体が、FcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターであることを立証する。hFcRnを発現している293細胞に対するマウスIgGの結合を、抗-hFcRn抗体の存在下または不在下で、下記のように決定した。293細胞をPBSと共に、抗-ヒトFcRn軽鎖抗体を分泌していると同定された2つのハイブリドーマからの細胞培養上清と共に、および、モノクローナル抗メトトレキサートmIgG1(ネガティブコントロールとしてのAMI)を分泌している細胞から得られた細胞培養上清と共に、インキュべートした。このインキュべーションは、ヒトIgG(1mg/ml)との同時インキュべーションを用いてまたは用いずに、対で行った。このインキュべーションの後で、細胞を、FITCで標識された抗-マウスIgG抗体と共にインキュべートした(即ち、293細胞の表面上のヒトFcRnに対して結合したネズミ抗FcRn抗体の存在を検出するために)。細胞を洗浄し、次いで、細胞結合蛍光をフルオロメーターにより評価した。全インキュべーションはpH7.4で行った。
【0057】
結果(図11)は、ハイブリドーマ細胞からの培養上清との細胞のインキュべーションに続く、hFcRnを発現している293細胞へのマウスIgGの有意な結合を示す(実施例9からの11E4&1H5)。これらの結合データは、ヒトIgGとの同時インキュべーションが、アッセイ応答において有意な変化を導かなかったことを示し、これは、「非-競合的」結合と一致する(即ち、hFcRnに関する抗-FcRn抗体の見かけのアフィニティは、天然リガンド-ヒトIgGの存在により変化しなかった)。
【0058】
メトトレキサートに対して指向されるネズミモノクローナルIgG1抗体を分泌する細胞からの上清との293細胞のインキュべーション(即ち、ネガティブコントロールとしてのもの)からの結果も示す。抗-メトトレキサート抗体との293細胞のインキュべーションは、有意なアッセイ反応に至らなかった。これは(また)、特定の抗-hFcRn抗体が、11E4&1H5上清との細胞のインキュべーションに続いて観察される有意な結合の原因であるという仮定と一致する。
【0059】
[実施例12]
本実施例では、ヒトFcRnに関する特異性を有するモノクローナル抗体の作成を記載する。ヒトFcRn重鎖の一次配列から選択されるペプチド配列GEEFMNFDLKQGT (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)(Pierce Biotechnology Inc., Rockford, IL)と結合し、フロイント不完全アジュバント(Sigma Chemical)中に乳化し、次いで6匹のBalb/cマウス(Harlan, Indianapolis, IN)を繰り返し免疫化するために使用した。動物を、免疫化の7〜10日後に伏在静脈から採血し、抗血清を、ヒトFcRnを発現している細胞に対するヒトIgGの結合を阻害する活性に関して、細胞結合アッセイを用いて評価した。簡単には、動物からの血清サンプルを、ヒトFcRnを発現している293細胞と共に、および50μg/mlのFITC標識化ヒトIgGと共に、pH6、37℃で2時間インキュべートした。混合物を次いで250gで5分間遠心分離し、次いで細胞をpH6のPBSで洗浄した。遠心分離後、細胞をpH7.4のPBS中に再懸濁した。蛍光をフルオロメトリーにより評価した。励起および放射波長は各々494nmおよび520nmに設定した。蛍光シグナルの最大の阻害を示している抗-血清に関連づけられる動物を、脾細胞ドナーとしての使用のために選択した。脾臓細胞を採取し、ネズミのSP20骨髄腫細胞(ATCC, Manassas, VA)と融合させた。簡単には、マウスをケタミン(150mg/kg)およびキシラジン(30mg/kg)で屠殺し、次いで脾臓を無菌法を用いて迅速に取り出した。脾細胞を、無菌の22-ゲージの針を用いて脾臓組織から引き出し、RPMI1640中に懸濁し、ポリエチレングリコールを用いる遠心分離により、標準的な方法(Harlow E and Lane D. 1988. 抗体:研究室マニュアル、ニューヨーク:コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリーに記載されているようなもの)を用いて融合した。融合細胞を、HAT選択培地(Sigma Chemical)の適用により選択し、次いで限定希釈の方法によりクローン化した。組織培養上清を、ヒトIgGの、ヒトFcRnを発現している293細胞に対する結合の阻害に関して、前記のものから変更された手法を用いてアッセイした。32個の生育可能なハイブリドーマークローンを同定し、組織培養上清を各クローンの培養物から採取して、抗ヒトFcRn抗体の存在に関して探査した。簡単には、全生育可能なクローンからの組織培養上清をヒトFcRn-感染293細胞および30μg/mlのFITC-標識化ヒトIgGと共にpH6、37℃にて2時間インキュべートした。インキュべーション後、細胞を洗浄し、pH7.4のPBS中に再懸濁した。サンプルの蛍光をフルオロメトリーにより分析した。32個の生育可能な潜在的な抗-ヒトFcRnクローンから、2個のポジティブなクローンを同定した。これらのクローンは1D6と11C1であった(図13)。一元配置ANOVAは、アッセイ反応において有意な差を明らかにし(p<0.0001)、2個のポジティブなクローンに関するアッセイ反応は、対照のものから有意に異なっていることが見出された(各クローンに関してp<0.01、Dunnett多重比較検定)。さらに、このアッセイは、ネガティブ対照であるAMI抗体、メトトレキサートに関して高いアフィニティを有するネズミIgG1抗体が、ヒトFcRn-感染293細胞に対するヒトIgGの結合を阻害しないことを明らかにした。
【0060】
[実施例13]
1D6または11C1がヒトFcRn(hFcRn)に(即ち、ヒト免疫グロブリンに関して)非競合的に結合するかどうかを試験するために、W8(対照)、1D6および11C1からの培養上清をhFcRn-感染293細胞と共に、pH7.4および37℃で2時間、場合により1mg/mlのプールされたヒト免疫グロブリン(IVIG、Gamunex(登録商標)、Bayer)の存在下で、インキュべートした。洗浄および遠心分離後、293細胞を100μg/mlのFITC-標識化ヤギ抗-マウスIgGと共に、pH7.4および37℃で1.5時間インキュべートした。細胞を洗浄および遠心分離し、次いで細胞結合蛍光をフルオロメトリーにより分析した。結果を図12に示す(n=3)。
データは、高濃度のヒト免疫グロブリンが、1D6または11C1に対するhFcRn-感染細胞の結合を阻害しないことを示す。このように、これらデータは、1D6および11C1の両方が、hFcRnに、(プールされたヒトIgGに関して)非競合的様式で結合するという仮定を支持する。
【0061】
[実施例14]
本実施例は、1D6および11C1が、FcRnの重鎖に対して指向されることをさらに支持するための、ヒトベータ-2-ミクログロブリンに対する1D6および11C1結合の評価を記載する。これを評価するために、ヒトベータ-2-ミクログロブリン(b2m、リン酸バッファー中3μg/ml、250μl)を用いて、96ウェルのミクロプレートのウェルをコートした。プレートを4℃で一晩インキュべートした。プレートを次いでリン酸緩衝塩水およびDDWで洗浄した。11E4(抗-ヒトベータ-2-ミクログロブリン)、4C9(抗-ラットベータ-2-ミクログロブリン)、1D6および11C1からの細胞上清を当該プレートに添加し、室温で2時間インキュべートした。プレートをPBSおよびDDWで洗浄した。ヤギ-抗-マウスIgG-アルカリホスファターゼコンジュゲート(リン酸バッファー中1:500、250μl)をプレートに添加し、プレートを1時間室温でインキュべートした。プレートをリン酸緩衝塩水およびDDWで洗浄した。DEAバッファー中のパラニトロ-フェニル-ホスフェート(4mg/ml、200μl)をプレートに添加し、405nmでの吸収を10分間プレートリーダーにより測定した。
結果を下記の表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
[実施例15]
本実施例では、マウス/ヒトキメラ抗体の構築および発現を記載する。全RNAを、1D6および11C1モノクローナル抗体を発現するペレット化されたハイブリドーマ細胞から、SV全RNA単離システム(Promega)により調製した。cDNAをオリゴdTプライマーおよびリバーストランスクリプターゼ(Invitrogen)を用いて合成した。1D6重鎖および軽鎖の可変領域を、TaqDNAポリメラーゼを用いて、35サイクルのPCRを用いて(1サイクルは93℃で1分、45℃で30秒、および72℃で1分)、第一鎖cDNAから増幅した。11C1重鎖の可変領域を、TaqDNAポリメラーゼを用いて、35サイクルのPCRを用いて(1サイクルは、93℃で1分、56℃で30秒、および72℃で1分)、第一鎖cDNAから増幅した。11C1軽鎖の可変領域を、TaqDNAポリメラーゼを用いて、35サイクルのPCR(1サイクルは93℃で1分、60℃で30秒、および72℃で1分)を用いて、第一鎖cDNAから増幅した。全PCR産物を精製し、PCR2.1-TOPOベクターにクローン化した。
【0064】
1D6および11C1の可変領域を含んでいるPCR2.1-TOPOベクターを配列決定し、結果をアライメント分析により確認した。バキュロウイルスカセットベクター、pAC-K-CH3を用いて、可変領域の重鎖および軽鎖遺伝子をクローン化した。当該可変領域をpAC-K-CH3ベクターにクローン化するために、重鎖可変領域をXhoIおよびNheI切断部位を含むプライマーを用いるPCRにより増幅した。軽鎖可変領域は、SacIおよびHindIII切断部位を含むプライマーを用いるPCRにより増幅した。重鎖および軽鎖両方の可変領域を含むpAC-K-CH3を配列決定して、挿入を確認した。アライメント分析は、重鎖および軽鎖が全て、pAC-K-CH3ベクターに連結されることを示した。
【0065】
重鎖および軽鎖の両方の可変領域を含むpAC-K-CH3および一本鎖化されたバキュロウイルスDNAをSf9昆虫細胞に同時形質転換した。組換えバキュロウイルスを、BaculoGoldトランスフェクションキット(BD Biosciences)を製造業者の指示に従い用いて、相同組換えにより調製した。組換えバキュロウイルスを形質転換の7〜8日後に、SF9細胞培養培地の上清から回収した。続く2ラウンドの増幅を行い、高力価の組換えウイルスを得た。
Sf9細胞を、IgG抗体を発現している組換えウイルスで感染させ、次いで、血清不含培地(Orbigen)中で増殖させ、T75フラスコ中で、27℃で、約50〜60%の死亡細胞が観察されるまでインキュべートした。
【0066】
前記特定の態様の記載は、説明のためのものであり、限定を意図するものではない。本発明の教示から、当業者は、種々の修飾および変更を、本発明の精神から離れることなくなし得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】7E3誘導性血小板減少症の時間経過におけるIVIGの効果。ラットに、IVIG(または塩水)を受容させた後、8mg/kgの7E3を受容させた。パネルAは、塩水(1)、0.4g/kgのIVIG(2)、1g/kgのIVIG(3)または2g/kgのIVIG(4)を与えられた動物に関する、個々の未処置血小板数対時間データを示す。パネルBは、初期血小板数データの平均パーセントを示す。記号は、IVIG処置群(n=4ラット/群):塩水(●)、0.4g/kg(■)、1g/kg(▲)、および2g/kg(◆)を示す。IVIGおよび7E3は静脈に投与され、血小板数は、セルダイン1700マルチ-パラメータ血液アナライザーを用いて得られたものである。エラーバーは、平均についての標準偏差を示す。IVIGは、投与量依存式に、血小板減少症の経過を弱めた。処置の違いは統計学的に有意であった(p=0.031)。
【図2】IVIG処置に続く血漿7E3の薬物動態。ラット(群当たり3〜4匹)に、IVIG(0〜2g/kg)を、次いで7E3(8mg/kg)を静脈投与した。パネルAは、塩水(1)、0.4g/kgのIVIG(2)、1g/kgのIVIG(3)、または2g/kgのIVIG(4)を与えられた各動物に関する血漿7E3の薬物動態データを示す。パネルBは、7E3およびIVIGを受容している動物に関する平均血漿薬物動態データを示す。処置群を以下に示す:塩水(●)、0.4g/kg(■)、1g/kg(▲)および2g/kg(◆)。7E3の濃度をELISAにより決定した。エラーバーは、各時点での平均濃度についての標準偏差を示す。IVIG処置は、この図に示す濃度対時間特性から算出される、7E3のクリアランスを有意に増した(p<0.001)。
【図3】IVIGは7E3に直接的には結合しない。7E3(または対照IgG)およびIVIGをインビトロで、一定のIVIG濃度(25mg/m)で、および7E3濃度を変化させて(0〜0.1mg/ml)、合わせた。ポジティブ対照はマウス抗-ヒトIgGであった。サンプルを次いで、抗-ヒトIgGで覆ったミクロプレートに添加した。ネズミIgGの結合を二次抗-マウスIgG-アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いて視覚化した。p-ニトロフェニルホスフェートを添加し、プレートを405nmで読んだ(10分に渡る動力学的アッセイ)。7E3に対するアッセイ反応は、対照と異ならなかったが(p=0.164)、ポジティブ対照は、対照から有意に異なっていた(p<0.001)。
【図4】IVIG処置に続く血漿AMI薬物動態。ラット(1群当たり3匹)に、塩水(●)または2g/kg(◆)IVIGを静脈投与後、AMI(8mg/kg)を投与した。AMI濃度をELISAにより決定した。エラーバーは、各時点での平均濃度についての標準偏差を示す。IVIG処置は、この図に示す濃度対時間特性から算出されるAMIのクリアランスを有意に増した(p<0.001)。抗体の薬物動態におけるIVIGの効果は7E3に関して特異的ではない。
【図5】フローサイトメトリーにより決定される、7E3-血小板結合におけるIVIGの効果。7E3をヒト血小板と、IVIGの存在または不在下でインキュべートした。ヒストグラムは、血小板数対相対蛍光強度をプロットする。下のパネルは、血小板と共にインキュべートされた対照マウスIgGに関して得られた蛍光ヒストグラムを示す(メジアン蛍光強度(MFI)は1.3であった)。中のパネルは、血小板と共にインキュべートされた7E3を示し(MFI=246)、上のパネルは、IVIGの存在下で血小板と共にインキュべートされた7E3を示す(MFI=284)。IVIGの存在下で血小板に対し結合している7E3に関して、MFIの低下は全く観察されなかった。
【図6】7E3血小板結合曲線におけるIVIGの影響。7E3濃度は、IVIGの存在下(○)または不在下(▽)で増加したので、トータルの血小板濃度は一定に保たれた。遊離(即ち非結合)7E3濃度をELISAにより決定した。データはテキストに記載するように適合した。ラインは、データセットの最良の適合を示し(連続したライン=IVIG、破断ライン=IVIG無し)、本質的に重ね合わされる。フィットから得られたパラメータ(KAおよびRt)は、有意に異ならなかった。IVIGの存在無しに、KAは4.9±0.7×108M-1であり、Rtは7.5±0.4×10-8M(55000±3000GP/血小板)であった。IVIGを用いて、KAは5.5±1.2×108M-1であり、Rtは7.6±0.7×10-8M(56000±5000GP/血小板)であった。IVIGは7E3が血小板に結合するのを妨げない。
【図7】対照およびFcRn欠損マウスにおけるIVIG処置後の7E3薬物動態。マウス(群当たり3〜5匹)に、IVIG(1g/kg)を、次いで7E3(8mg/kg)を静脈投与した。処置群は以下のごとく指定される:対照マウスにおける7E3+塩水(●);対照マウスにおける7E3±IVIG(■);ノックアウトマウスにおける7E3+塩水(○);およびノックアウトマウスにおける7E3+IVIG(□)。7E3濃度はELISAにより決定した。エラーバーは、各時点での平均濃度についての標準偏差を示す。IVIG処置は、対照マウスにおいて7E3のクリアランスを有意に増したが(p<0.001)、FcRn欠損マウスにおいては増さなかった。
【図8】抗-FcRnモノクローナル抗体の投与に続く抗-血小板抗体薬物動態の変化。ラットに、モノクローナル抗-FcRn抗体(4C9、60mg/kg)を用いる前処置を行って、または行わずに、モノクローナル抗血小板抗体(7E3、8mg/kg)を静脈投与した。黒丸は、7E3のみを受容している動物(n=4)において観察される7E3血漿濃度を示し、赤三角は、モノクローナル抗-FcRn抗体で前処置された(7E3の投与の4.5時間前に静脈投与された)ラットにおいて観察された7E3血漿濃度を示す。示されるように、モノクローナル抗-FcRn抗体での前処置により、抗血小板抗体の排出の劇的な増加が導かれた(即ち、7E3クリアランスが〜400%まで増加した)。7E3濃度はELISAにより決定した。エラーバーは、各時点での平均濃度についての標準偏差を示す。
【図9】4C9の種々の投与に続く血漿AMIの薬物動態。ラット(群当たり3〜4匹)に、AMI(8mg/kg、静脈内)の投与の4時間前に4C9(0〜60mg/kg)を静脈投与した。血液サンプルを採取し、次いで血漿サンプルをAMI濃度に関してELISAにより分析した。処置群は次のように指定する。:塩水(●)、3mg/kg(■)、15mg/kg(▲)、60mg/kg(◆)。エラーバーは、各時点での平均AMI濃度についての標準偏差を示す。15および60mg/kgは、対象と比較してAMIのクリアランスが有意に増した(p<0.01)。
【図10】ヒトFcRnに対するハイブリドーマ上清の反応性。hFcRnの軽鎖に対する抗体を分泌するハイブリドーマを作成した。プレートをヒトFcRnの軽鎖でコートし、指定のハイブリドーマからの上清と共にインキュベートした。アルカリホスファターゼに結合したヤギ抗-マウスFabフラグメントを用いてポジティブクローンを同定した。ヒトFcRnの軽鎖に特異的な抗体を産生している8個のハイブリドーマを同定した。
【図11】FcRnに対する抗-hFcRnの反応性におけるIgGの存在の効果。hGcRnを発現している293細胞を、場合によりヒトIgGと共に抗-FcRn抗体とインキュベートした。結合を、FITCに結合した二次抗体により検出した。細胞の蛍光をフルオロメーターにより評価した。
【図12】FcRnに対する抗-hFcRn(重鎖)の反応性におけるIgGの存在の効果。hFcRnを発現している293細胞を、場合によりヒトIgGと共に抗-hFcRn(重鎖)抗体とインキュベートした。結合を、FITCに結合した二次抗体により検出した。細胞の蛍光をフルオロメーターにより評価した。
【図13】ヒトFcRnを発現している293細胞へのヒトIgGの結合は、(y-軸において示されるように)サンプル蛍光により反映される。ハイブリドーマクローン1D6および11C1から得られた組織培養上清は、pH6.0で293細胞に対するヒトIgG結合の高度に有意な阻害を示した。
【技術分野】
【0001】
この仕事は、国立健康研究所(the National Institutes of Health)からの登録第HL067347およびAI60687により支持された。当該機関がこの発明の所定の権利を有する。
本発明は、概して、自己免疫およびアロ免疫疾患の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体液性自己免疫およびアロ免疫疾患は、病原性抗体により媒介される。自己免疫疾患の幾つかの例には、免疫性好中球減少症、重症筋無力症、多発性硬化症、狼瘡および免疫性血小板減少症(ITP)が含まれる。
ITPは、増加した末梢性血小板破壊の疾患であり、殆どの患者は、特定の血小板膜糖蛋白質に結合する抗体を発生する。抗血小板抗体は、血小板を効果的にオプソニン化し、細網内皮性システムの細胞(例えばマクロファージ)による迅速な血小板破壊を導く。試験により、殆どの患者が正常な血小板産生か、減少した血小板産生を有することが示されているので、相対的髄不全症(relative marrow failure)がこの疾患に関与する可能性がある。概して、ITPを治療するための試みには、免疫システムを抑制すること、および結果的に血小板レベルの増加を引き起こすことが含まれる。
【0003】
ITPは、男性よりも女性により頻繁に発症し、ITPは子供や大人に共通する自己免疫疾患であると考えられる。発症は、10,000人中1人である。合衆国では、大人におけるITPの発症は、1年当たり1,000,000人当たり約66症例である。子供における発症の推定平均は、1年当たり1,000,000人当たり50症例である。国際的には、小児期のITPは、1年当たり1,000,000人当たり約10〜40症例で生じる。
慢性ITPは、成人および子供の両方で主要な血液疾患の1つであるので、この問題は重大である。それは、米国におけるおよび世界中の、専門化された血液学部門の相当な入院および治療コストの原因である。毎年、約20,000例の新規な症例が米国に生じ、ITPおよび特別な治療のためのコストは極端に高い。
【0004】
殆どのITPを有する子供は、非常に低い血小板数を有し、これにより、突然の出血が引き起こされ、また、挫傷、皮膚における小赤斑、鼻血および歯茎の出血を含む典型的な症状が伴う。子供は時に、治療無しで回復し得るが、多くの医師は、注意深い観察と、出血の軽減、およびガンマグロブリンの静脈注射を用いる治療を推奨する。
ヒト免疫グロブリン(IVIG)の大量の静脈投与により、免疫性ITPで苦しめられる子供における血小板数が増すことが示されており、IVIGが、幾つかの他の自己免疫疾患のための治療として有益であることが示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの研究により、IVIGが自己免疫疾患の治療において効果を得るメカニズムが調べられてきた。ITPに関し、初期の調査により、IVIGの効果が、主として、抗体-オプソニン化血小板の食作用の原因であるFcレセプターの遮断によるとの結論が導かれた。後の研究により、Fc-枯渇IVIG調製物が、ITPを有する幾人かの患者において、血小板数を増加させることが示され、また、近年、IVIGの効果が、マクロファージ細胞におけるFcγRIIb発現の刺激によるものであり、血小板食作用の阻害に至ることが報告された。そのようなIVIG治療は、しかし、かなりの副作用を有し、また、開発および投与に非常にコストがかかる。さらに、IVIG以外の自己免疫/アロ免疫疾患の治療のために用いられる他の治療には、ポリクローナル抗-D免疫グロブリン、コルチコステロイド、免疫抑制剤(化学治療剤を含む)、サイトカイン、血漿交換、体外抗体吸着(例えば、Prosorbaカラムを用いるもの)、脾臓摘出術等の手術処置およびその他が含まれる。しかし、IVIG同様、これらの治療も、不完全な有効性と高いコストにより込み入っている。
【0006】
近年、FcRn遺伝子を欠いているノック-アウトマウス中で抗ヒトFcRn抗体を産生させることが提唱されている(Roopenian、2002、米国公開第2002/128863号)。筆者は、IgGと同じFcRnのエピトープに結合する高アフィニティ抗体が、病原性のIgGのFcRnへの結合を競合的に阻害し、それゆえ、クリアランスを増すと論じている。しかし、そのような抗体のいずれも実証されておらず、それゆえ、そのような抗体の効率は未だ疑問である。さらに、内在性のIgGのFcRnに対する高いアフィニティおよび、血液中の内在性のIgGの高い濃度のために、FcRnの競合的阻害は非常に高い投与量を必要とし、それゆえ、現在のIVIG治療と同様の副作用を伴う可能性があると考えられる。
【0007】
先行技術の記載に基づき、IVIGの低い効力および高いコストを有しない、自己免疫およびアロ免疫疾患のための新規な治療法の開発が、事実上必要とされている。自己免疫およびアロ免疫疾患の治療のためのIVIGよりも安全でより効果的な代替法を同定することがそれゆえ望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明により、自己免疫およびアロ免疫疾患の治療のための組成物および方法が提供される。本発明の組成物は、FcRnレセプターによるIgGの輸送を阻害するために非競合的に機能する剤を含む。非競合的レセプターインヒビターは、定義すれば、レセプターリガンド(例えばIgG)の濃度に依存しない阻害活性を示す。IgGのFcRn媒介性輸送に関して、非競合的阻害は、生理的なpHでの、FcRnに対するインンヒビターの非競合的結合、および、エンドソームでの選別および通過の時間経過中のインヒビター-FcRn複合体の不完全な解離により達成され得る。別法として、または追加的に、非競合的阻害は、リガンド結合部位から離れたおよび/またはこれと同一でない部位への結合により達成され得る。本発明の抗体はFcRnに結合し、結果、病原性抗体のFcRnへの結合が阻害され、それにより、個人の体からの病原性抗体のクリアランスが改善される。一態様では、FcRnに結合する剤は、FcRnの重鎖または軽鎖に対して指向されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。一態様では、本発明により、ヒトFcRnレセプターに対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体が提供される。他の態様では、前記抗体はキメラまたはヒト化されたものである。
【0009】
本発明により、自己免疫またはアロ免疫疾患を緩和するための方法であって、FcRnへ結合するためのIgGの非競合的インヒビターとして機能し、FcRnに結合して、病原性抗体のFcRnへの結合を阻害する剤を含む組成物を個人に投与することを含む方法も提供される。別の態様では、かかる剤は、FcRn、特にヒトのFcRnレセプターに対して指向された、ポリクローナル、モノクローナル、キメラまたはヒト化抗体である。別の態様では、前記抗体は、FcRnレセプターの重鎖に対して指向される。
本明細書中に用いられる「病原性抗体」なる文言は、病的な状態または疾患を生じる抗体を指す。そのような抗体には、抗血小板抗体が含まれる。
【0010】
本発明により、病原性抗体のクリアランスを増すための組成物および方法が提供される。これらの組成物および方法は、自己免疫およびアロ免疫疾患の治療に有用である。本発明の組成物および方法は、病原性抗体がFcRnに結合するのを妨げるのに十分な様式で、FcRn(新生児のFc-レセプター、FcRP、RcRBおよびブランベルレセプター(Brambell Receptor)としても公知である)を結合することに向けられる。
【0011】
本発明において、特異的な抗-FcRn治療が提供される。酵素またはレセプターのインヒビターの大部分は、基質またはリガンド結合の競合的インヒビターとして作用し、結果、当該インヒビターは、当該レセプター上の、リがンドと同じ部位に結合し、それゆえ、阻害の程度は、当該インヒビターおよびリガンドの相対的アフィニティおよび濃度の一次関数(direct function)である。Roopenianに対する米国特許出願第2002/0138863号は(段落0031をご参照)、FcRnに対する抗体は、IgGのFcに対する結合に重要な同じ部位でFcRnに結合し、結果、当該抗体がFcRnに結合すると、FcRnの当該部位へのIgGの結合が阻害されると力説する。この先行技術における力説は競合的インヒビターに対して向けられているが、驚くべきことに、本発明において、FnRnへの結合のためのIgGの非競合的インヒビターが治療的価値を有することが見出された。
【0012】
さらに、Roopenian等は、高い特異性の抗FcRn抗血清を作成することは困難であることを認める(段落0085をご参照)。この引用文献は、FcRnが体外分子として認識されるようなFcRn欠損マウスにおいて、抗-FcRn抗体の生成によりこの問題を克服することを課題とするものである。しかし、本発明では、我々は、ヒトFcRn軽鎖を用いて、および、スカシ貝ヘモシアニンに共有結合したヒトFcRn重鎖ペプチドフラグメントから成る新規な免疫結合物を用いて、動物を繰り返し免疫化することにより、FcRnの軽鎖および重鎖の両方に対する高アフィニティおよび特異的抗体を作成することができた。
【0013】
好ましい態様では、抗体またはそのフラグメントは、ヒトFcRnに対するIgG結合またはこれによる輸送の非競合的インヒビターである。抗体またはフラグメントは、いずれかのイソ型(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM等)から成り、かかる抗体は、いかなる種(例えば、マウス、ラット等)にて作成されてもよい。起源の種類に依存して (Ober等、2001、Int Immunol 13: 1551-9をご参照)、IgGイソ型の抗体は、ヒトFcRnに対するIgGの結合を競合的に阻害し得る。かかる抗体は、それらがFcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターとしても作用する限り、用いることができる。つまり、FcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターでもあり、また、競合的インヒビターでもある1つの抗体を用いてもよい。
【0014】
FcRnは、pH依存性アフィニティを有してそのリガンド(即ち、IgG)に結合する。それは、実質上、生理的pHではIgGに関してアフィニティを示さない。従って、生理的pH(7.0〜7.4)でFcRnに結合する抗-FcRn抗体が、非競合的インヒビターとして作用し得、結果、抗-FcRn抗体のFcRnに対する結合は、IgGの存在によっては影響されない。本発明の抗体の、pH6〜8の範囲でのpH-非依存的様式での、また、非競合的様式での、FcRnに結合する能力により、競合的インヒビターに必要とされるよりも少ない濃度でのIgGのFcRn媒介性輸送の機能的阻害が可能となる。いかなる特定の理論により拘束されることを意図せずに、pH6〜8の範囲でのpH非依存性により、そのようなインヒビターが細胞表面上の (生理的pH)FcRnに結合すること、および、細胞内輸送の経過中、FcRnに対して結合したままであること、それにより、酸性pH(〜6)のエンドソーム内でIgGへのFcRn結合を阻害すること、が可能となると仮定される。結合の非競合的様式は、これらのインヒビターを、競合的インヒビターよりもかなり低い濃度で用いることを可能にし、それらが治療目的のためにより魅力的になる。いかなる特定の理論により拘束されることを意図せずに、結果として、細胞内異化からのIgGのFcRn媒介性保護が阻害され、これにより、IgGのクリアランスが増すと考えられる。
【0015】
本明細書中に実施例に示すように、IVIGは、ITPの動物モデルにおいて、病原性抗体の排出の投与依存性の増加を媒介し、この効果は、FcRnとのIVIG相互作用により媒介される。しかし、部分的には、病原性抗体とのFcRn結合のIVIG阻害の推定機構(即ち競合的阻害)のために、また、部分的には、IgGが生理的pH(即ち、pH7.2-7.4)でFcRnに関して非常に低いアフィニティを示す事実のために、IVIGの非常に高い投与量が、病原性抗体のクリアランスの実質的な増加を生じるために必要とされる(即ち、IVIGの典型的な臨床投与量は2g/kgである)。
【0016】
本発明は、生理的pHでの病原性抗体に対するFcRn結合の非競合的阻害を提供し、かつ病原性抗体に対するFcRn結合の非競合的阻害を可能とする特異的抗-FcRn治療のためのものである。つまり、本発明により、自己免疫およびアロ免疫疾患のための治療として、病原性抗体がFcRnに結合するのを妨げる方法が提供される。本発明の方法はまた、病原性抗体がFcRnに結合するのを妨げるのに十分な方法で、特異的にFcRnを阻害するのに有用な組成物を提供する。本発明の組成物および方法は、前記治療を受け入れる者において、病原性抗体の排出率の増加と、病原性抗体により引き起こされる病的状態および疾患の緩和の両方にむしろ作用する。
【0017】
本発明の一態様では、抗FcRn(重鎖)抗体が提供される。これらの抗体は、全重鎖または当該重鎖の配列に対応するペプチドを用いることにより作成することができる。かかる抗体の例を、実施例12〜15に示す。抗体は、b2ミクログロブリンに結合しないことが観察された。しかし、それらはFcRn複合体(重鎖およびb2ミクログロブリンの両方を含む)に結合し、FcRnの重鎖の配列に対して作成されたので、これら抗体がヒトFcRnの重鎖に結合することが最も起こりえると考えられる。
【0018】
本発明の組成物および方法は、従って、限定するものでなく、免疫性血球減少症、免疫性好中球減少症、重症筋無力症、多発性硬化症、狼瘡および、抗体が病的状態や疾患を引き起こす他の疾患を含む自己免疫疾患での使用のために適している。ヒトに加えて、本発明の抗体は、他の種にも用いることができる。
【0019】
本発明の組成物は、FcRnが抗-血小板抗体等の病原性抗体に結合することを阻害し得る剤を含む。そのような組成物には、限定するものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびそのフラグメントが含まれる。抗体は、キメラまたはヒト化されたもの、抗体フラグメント、ペプチド、小分子または、病原性抗体がFcRnレセプタに結合するのを妨げ得るこれらの組合せであってよい。抗体結合部位を含む抗体フラグメントも用いてよい。そのようなフラグメントには、限定するものではないが、Fab、F(ab)’2、Fvおよび単鎖Fv(即ち、ScFv)が含まれる。そのようなフラグメントは、抗原結合部位の全てまたは部分を含み、そのようなフラグメントは、親抗体の特異的結合特性を保持する。
【0020】
本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体であってよい。「キメラ」抗体は、軽鎖および重鎖遺伝子が異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから成るように遺伝子操作された免疫グロブリン遺伝子によりコードされるものである。例えば、マウスのモノクローナル抗体からの遺伝子の可変(V)セグメントを、ヒトの定常(C)セグメントに結合してもよい。そのようなキメラ抗体は、マウスの定常領域とマウスの可変領域を有する抗体よりもヒトに対して抗原性が低いと考えられる。
【0021】
「ヒト化された」抗体は、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖または、非ヒト化免疫グロブリンから誘導された最小限度の配列を含むそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または、抗体の他の抗原結合配列等)である。ヒト化された抗体には、ヒト免疫グロブリンであって、相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、アフィニティおよびキャパシティを有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種のCDRからの残基により置き換えられているものが含まれる。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基で置き換える。ヒト化された抗体は、ヒト抗体にも、非ヒト導入性CDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含んでもよい。概して、ヒト化された抗体は、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、当該CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリのものに対応し、および、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。
【0022】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当該分野で周知である。概して、ヒト化抗体は、その中に、非ヒトの源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これら非-ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基と呼ばれ、典型的には、「インポート」可変ドメインから得られる。ヒト化は、ウインターおよび共働者の方法により(Jones等、Nature, 321: 522 525 (1986); Riechmann等、Nature, 332:323 327 (1988); Verhoeyen等、Science, 239: 1534 1536 (1988))、齧歯類CDRsまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列で置換することにより、本質的に行うことができる。実際には、ヒト化された抗体は、典型的には、幾つかのCDR残基、および潜在的には幾つかのFR残基が、齧歯類の抗体における類似部位からの残基により置換されているヒト抗体である。
【0023】
FcRnまたはそのフラグメント、軽鎖または重鎖等に対して指向されるポリクローナル抗体は、適当な対象をFcRnまたはその部分、軽鎖、重鎖、および当該分子内に含まれるペプチドセクションなどで免疫化することにより調製することができる。免疫化された対象における抗-FcRnまたはそのフラグメント抗体力価は、FcRnまたはそのフラグメントを用いるELISA等の標準的な方法により、徐々にモニターすることができる。所望の場合、FcRnまたはそのフラグメントに対して指向された抗体分子は、哺乳動物から(例えば、血液から)単離でき、周知の方法、IgGフラクションを得るための蛋白質Aクロマトグラフィー等によりさらに精製することができる。
【0024】
FcRnまたはそのフラグメントに対して指向されたモノクローナル抗体は、標準的な方法、KohlerおよびMilsteinにより最初に記載されたハイブリドーマ法(1975, Nature 256: 495-497)により製造することができる。簡単には、不死化した細胞系統(典型的には骨髄腫)を、FcRnまたはそのフラグメントで免疫化された哺乳動物からのリンパ球(典型的には脾細胞)に融合し、生じたハイブリドーマ細胞の培養上清を探索して、FcRnに結合するモノクローナル抗体を生じるハイブリドーマを同定する。典型的には、不死化細胞系統(例えば、骨髄腫細胞系統)を同じ哺乳動物種、リンパ球等から誘導する。本発明のモノクローナル抗体を産生しているハイブリドーマ細胞は、ハイブリドーマ培養上清を、FcRnを結合する抗体に関して、標準的なELISAアッセイを用いて探索することにより検出される。ヒトハイブリドーマを同様の方法で調製することができる。
【0025】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製することの別法は、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(抗体ファージディスプレイライブラリー)を、FcRnまたはそのフラグメントを用いて探索することにより、モノクローナル抗体を同定および単離することである。
本発明の組成物の投与は、当該分野の専門家に公知の方法により行うことができる。FcRnの特定のインヒビターが抗体を含む場合、投与は、例えば、静脈内、筋肉内または皮下注入、カニューレまたは当該分野の専門家に公知の他の方法により行うことができる。同様に、抗-血小板抗体のFcRnレセプターへの結合を妨げるのに有効な小分子の投与を、当該分野の専門家に周知の方法により行うことができる。
【0026】
自己免疫およびアロ免疫疾患の治療における病原性抗体の排出のために、本発明のインンヒビター抗体または抗体(複数)を投与することができる。特定の個人における病原性抗体の排出におけるインヒビター抗体の効果は、投与法、インヒビター抗体の薬物動態(即ち、インヒビター分布および排出の率および程度)、FcRnに関するインヒビター抗体のアフィニティ、FcRnの輸送能力、および潜在的には、FcRnレセプターのターンオーバーによる傾向があると認められる。本明細書中に示す動物試験により、モデルインヒビター抗体が、ラットにおけるIgG排出の投与量依存性の一時的な増加に帰着することが立証された。当該効果の一時的な性質により、FcRn遮断持続の制御が可能となり、FcRn遮断に関連するあらゆるリスク(例えば、感染のリスク)を最小に抑えることができると考えられる。
【0027】
本発明のpH6〜8非依存性のおよび非競合的なインヒビターは、内因性の病原性および非病原性IgG抗体の濃度の対応する低下を生じる。そのようなものとして、病原性抗体濃度における、FcRnの高アフィニティ、非競合的インヒビターの影響を、内在性IgGのトータル血清濃度における前記インヒビターの効果に基づき評価することができる。FcRnインヒビターは、単一および/または複数投与として投与されてよい。概して、1〜2000mg/lg、好ましくは1〜200mg/kgおよびより好ましくは1〜40mg/kgを、自己免疫またはアロ免疫疾患に冒されている患者に投与することができ、これらの治療法は、好ましくは、血清内在IgG濃度を処置前の値の75%未満に低下させるように設計される。断続的な、および/または慢性(継続的)投与法も適用してよい。
【0028】
本発明を以下の実施例により説明するが、実施例は、本発明の特定の態様を説明するためだけのものであり、いずれにしても、限定を意図するものではない。
[実施例1]
本実施例では、使用した一般的方法を記載する。200〜225gの雌の・スプラーグ
ドーリーラットをインビボ分析のために使用した。ラットに、処置の2日前に頚静脈カテーテルを装着した。7E3、ネズミ抗糖蛋白IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)モノクローナル抗体を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Manassas, Va)から入手したハイブリドーマ細胞から作成した。ハイブリドーマ細胞を血清-不含培地(Life Technologies(登録商標)、Rockville, MD)中で増殖させ、次いで、抗体を当該培地から、蛋白質Gクロマトグラフィーを用いて精製した。IVIG調製物を、Baxter Healthcare(登録商標)(Hyland Division, Glendale, CA)とBayer(登録商標)(Pharmaceutical Division, Elkhart, IN)から入手した。両IVIG調製物を、溶媒/界面活性剤-処理し、ヒト血漿の冷エタノール分別により、作成した。古びたヒト血小板を、アメリカン・レッド・クロス(Buffalo, NY and Salt Lake City, UT)から入手した。ネズミの抗メトトレキサートIgG1モノクローナル抗体(AMI)は我々の研究室で作成し、次いで精製した。ヤギ抗ヒトIgG(ヤギおよびマウス血清蛋白質に対して交差反応なし)およびアルカリホスファターゼ-結合ヤギ抗マウスIgG(ヤギおよびヒト血清蛋白質に対して交差反応なし)は、共に、Rockland(Gilbertsville, PA)から入手した。マウス抗ヒトIgG、蛍光イソチオシアネート(FITC)-標識抗マウスIgGおよびp-ニトロフェニルホスフェートはPierce(登録商標)(Rockford, Illinois)からのものであった。仔ウシ血清アルブミン(BSA)およびバッファー試薬はSigma(登録商標)(St Louis, MO)から入手した。バッファーはリン酸緩衝塩水(PBS, pH7.4)、0.02M Na2HPO4(PB)、およびPB+0.05%トウィーン-20(PB-トウィーン)であった。
【0029】
実施例2〜5により、抗血小板抗体におけるIVIGの効果を説明する。これらの実施例では、IVIGが、ITPのラットモデルにおいて、投与量依存式に抗血小板抗体の効果を弱め得ること、および、IVIGが、抗血小板抗体クリアランスにおいて、劇的な、明らかに非特異的な効果を有することを示す。
【0030】
[実施例2]
この実施例により、IVIGが、IPTのラットモデルにおいて抗-血小板抗体を除去することを示す。ラットに頚静脈カテーテル経由でIVIG(0.4、1、または2g/kg)を投与した。IVIG投与後、血液サンプル(0.15mL)を、血小板数のベースライン測定のために回収した。ラットに、次いで、抗血小板抗体、7E3、8mg/kgを投与し、次いで、血小板数を、Cellu-Dyne1700マルチパラメータ・ヘマトロジー・アナライザー(Abbott Laboratories(登録商標)、Abbott Park, IL)を用いて24時間かけて取得した。対照動物に、塩水、次いで7E3を投与した。各動物の血小板最下点(nadir)は、観察された最も少ない血小板数であった。血小板数データを、初期血小板数における大きな動物間変異性の理由で、初期血小板数により正規化した。データを正規化することにより、7E3およびIVIGの効果を動物間でより良好に比較することができる。血液サンプル(0.15mL)を、7E3の投与後、1、3、6、12、24、48、96および168時間で薬物動態分析のために採取した。7E3血漿濃度を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を以下のように用いて測定した。ヒトのGPIIB/IIIaをPB中で1:500に希釈し、Nunc Maxisorpプレート(0.25ml/ウェル)に添加した。プレートを一晩4℃でインキュベートした。標準およびサンプルを次いでプレートに添加し(0.25ml/ウェル)、45分間室温でインキュベートした。最終的に、p-ニトロフェニルを添加し(4mg/m、DEA中)、吸収対時間の変化をSpectraMax Microplateリーダーで記録した。プレートを3回PB-トウィーンで、アッセイの各ステップ間に洗浄した。標準は、1%のマウス血漿中0、1、2、2.5、5、10および20ng/mlの最終濃度に作成した。動物間アッセイ変動性は、標準範囲曲線内の量対照サンプルに関して<15%であった。
【0031】
8mg/kgの投与量で、7E3は、ラットにおいて、迅速で重特な血小板減少症を引き起こした。図1に認めることができるように、ラットのIVIGでの前処理により、7E3の投与後の血小板数時間経過が有意に変化した(P=.031)。対照からの統計学的に有意な差(P<.01)が、2-g/kgのIVIG群に関して1および3時間で、および1-g/kgIVIG群に関して3時間で、認められた。初期の絶対的な血小板数の変異性の程度が大きいために、このモデルでは、パーセント血小板数を用いて7E3の効果を評価した。しかし、各群は、対照、0.4-、1-、および2-g/kgIVIG群と比較し得る平均初期血小板数を有し、326±62、323±137、272±111および301±69×109血小板/Lの絶対初期数を各々有した。絶対血小板数は、出血のリスクを評価するのに重要であり得るので、我々はまた、血小板数最下点値を測定基準として測定し、このモデルにおけるIVIG効果を決定した。7E3処置のみの後、動物は、48±28×109血小板/Lの絶対血小板最下点を有し、これは、14%±8%の初期カウントの平均に対応した。IVIG前処理を用いて、当該最下点パーセント血小板数(対照と比較して)の121%〜279%増加を認め(P=.044)、0.4、1-、および2-g/kgIVIG投与各々に関して31%±26%、44%±24%、および53%±27%の値を有した。各IVIG処理群は、対照と有意に差があった(P<.05)。しかし、IVIGは、最も高い投与量ですら、血小板減少症を途絶するのに完全に有効ではなかった。血小板減少症の閾値に達しているラットの割合は(初期数の<30%)は、IVIGで前処理された動物に関して投与量と共に低下し、0.4-、1-、および2-g/kgのIVIG群のラットの75%、50%、および25%が、初期の30%未満の最下点血小板数を有した。
【0032】
これらの結果は、IVIGでのラットの前処理が、7E3-誘導性の血小板減少症を弱化したことを示す。IVIG前処理により、(最下点での平均パーセント血小板数により測定されるように)7E3処理後に達成される血小板減少症の平均程度が低下し、重篤な血小板減少症を示している動物のフラクションが低下した。
【0033】
[実施例3]
本実施例により、IVIGの7E3における効果の薬物動態を記載する。これを決定するために、IVIGを用いるラットの前処理後の7E3血漿濃度を測定した。図2および表1から認めることができるように、IVIGは7E3のクリアランスを増強することが観察された。ANOVAは、4つの治療群に関して算出されたクリアランス値の間の高程度に有意な差を明らかにした(P<.001)。7E3クリアランスにおける差は、0.4g/kgIVIGを受容した動物対1g/kgIVIGを受容した動物からのデータの比較を除き、処置群の全部分に関して統計学的に有意であることが示された(チューキー多重比較検定)。対照からの有意な差が、7E3濃度に関して、2-g/kgIVIG群に関して12時間およびそれより長い各時点で認められ、および0.4-および1-g/kgIVIG群に関して少なくとも48時間で、認められた。
【0034】
【表1】
【0035】
本実施例により立証されるように、IVIGは7E3の薬物動態を変更した。我々のデータにより、IVIG投与での7E3のターミナル半減期の低下への傾向が立証され(P=.06)、1g/kgのIVIGを受容した動物で認められるものに対する対照動物における半減期の比較において、統計学的有意性が達成された(P<.05)。より重要には、IVIGは、抗血小板抗体のクリアランスの劇的な増加を誘導することが見出された(P<.001)。排出率(および半減期)におけるIVIGの効果は、IVIG投与後の時間とともに低下することが予測され得るので、7E3排出の時間-および-濃度-平均測定としての要求を満たすクリアランスは、7E3排出におけるIVIG効果の評価のための優れた測定である。
【0036】
[実施例4]
本実施例により、IVIGが抗-FcRn抗体に結合しないことが立証される。ヤギ抗ヒト-IgG(PB中で1:500に希釈されたもの、0.25mL/ウェル)をNunc(登録商標)Maxisorp(登録商標)96ウェルマルチプレート(Nunc(登録商標)モデル第4-42404、Roskilde, Denmark)のウェルに添加し、次いでプレートを4℃で一晩インキュベートさせた。IVIG(25mg/mL)および7E3(0、0.01、0.05および0.10mg/mL)を試験チューブ中に合わせ、2時間37℃でインキュベートした。ポジティブ対照サンプルは、7E3に関して示される濃度と同じ濃度のマウス抗ヒトIgG(Pierce(登録商標))と共にインキュベートされたIVIGから成る。サンプルおよび対照を、PBS中1%のBSAに、1000まで希釈し、次いでミクロプレート(0.25mL/ウェル)に添加し、2時間室温でインキュベートした。アルカリホスファターゼ-標識抗マウスIgG(PB中に1:500で希釈したもの、0.25mL/ウェル)を次いでプレートに添加し、45分間、ここでも室温でインキュベートした。最終的にp-ニトロフェニルホスフェート(ジエタノールアミンバッファー中4mg/mL、pH9.8)を0.2mL/ウェルで添加し、プレートを、405nmで、プレートリーダー(Spectora Max(登録商標)340PC、Molecular Devices(登録商標)、Sunnyvale, CA)にて記録した。プレートを10分間かけて記録し、吸収対時間曲線の傾斜を用いてアッセイ反応(dA/dt)を評価した。各サンプルを3対アッセイした後、反応を平均±SDとして示す。アッセイの各ステップ間で、マイクロプレートのウェルを3回PB-トウィーンで洗浄した。
【0037】
7E3のIVIGに対するインビトロでの結合は、検出することができなかった。図3は、7E3-IVIG結合を検出するために設計された実験から得られた結果を示す。IVIGおよび7E3をインビトロで37℃で2時間インキュベートした。このインキュベーション後、サンプルを希釈し、抗ヒトIgGでコートしたマイクロプレートに添加した。つまり、7E3がIVIGに結合したら、二次抗マウスIgGが、7E3の存在を検出するであろう。7E3-含有サンプル対ネガティブ対照(IVIG単独)に関するアッセイ反応間に統計学的に有意な差はなく、P=.164を有した。しかし、ポジティブ対照抗体に関してはアッセイ反応(各濃度での)において有意な差が存在し、P<.001を有した。この実験における7E3/IVIGの濃度比は、インビボ実験において予想されるものと同じようになるように設計された。
【0038】
IVIGのこの効果が、抗血小板抗体、7E3に関して特異的であるかどうかを決定するために、我々は、二次モノクローナル抗体、AMIの、IVIGの存在および不在下での薬物動態を特定した。ラット(n=3/群)に、頚静脈カニューレにより、2g/kgのIVIG(または対照のための塩水)を投与した後、AMI(8mg/kg)を投与した。血液サンプルを1週間かけて採取し、血漿を、ELISAにより、AMI濃度に関して分析した。薬物動態分析を、7E3に関して前記のごとく行った。図4は、IVIGが、AMIのクリアランスをも増し、AMIクリアランスが、対照からIVIG処理群まで、0.44±0.05から1.17±0.05mL時間-1kg-1まで増加した(P<.001)ことを示す。さらに、IVIG処理により増加したクリアランスの相対程度は群間で同様であり、7E3に関して認められるクリアランスの2.37倍の増加と、AMI、次いで2-g/kgIVIG処理に関して認められるクリアランスの2.66倍の増加を伴った。
【0039】
[実施例5]
本実施例により、IVIGがヒト血小板への7E3の結合を阻害することができるかどうかを決定するための定性および定量試験を記載する。定量試験では、10μg/mLの7E3を1.5時間、ヒト血小板(1×107血小板/mL)と、IVIG(2.5mg/mL)の存在下または不在下でインキュベートした。対照マウスIgGはネガティブ対照であった。サンプルを4000rpmで6分間遠心分離し、PBSで洗浄し(2回)、次いで、45分間100μLの1:10希釈(PBS中)のFITC-標識抗マウスIgG溶液と共にインキュベートした。サンプルを再び洗浄し、PBS中に再懸濁し、次いでフローサイトメトリー(Flow Cytometry Core Facility, Huntsman Cancer Institute, Salt Lake City, UT)による分析に供した。定量阻害試験では、7E3血小板結合のIVIG阻害のポテンシャルをかなり詳細に研究した。ヒト血小板(8.2×108/mL)を7E3(4.8-72.5μg/mL)と共に、IVIG(25mg/mL)の存在下または不在下で2時間インキュベートした。サンプルを次いで約3000gで6分間遠心分離し、血小板ペレットを得た。各上清の一部を得、非結合7E3濃度に関してアッセイした。7E3の血小板に対する、7E3の存在下および不在下での結合を、以下の結合曲線に対してデータを適合させることにより分析した。:
【0040】
【化1】
【0041】
前記等式中、Ffは7E3の遊離フラクションであり、KAは、7E3血小板結合に関する見かけであり、[7E3]fは、非結合モル7E3濃度であり、およびRtは、トータルのレセプター濃度である。Micromath Scientist(登録商標)を用いて、データの非線形最小二元分析を作成し、パラメータ値と報告されたSDsはソフトウェアアウトプットからのものである。
【0042】
定性フローサイトメトリー分析の結果を図5に示す。蛍光ヒストグラムにて、IVIGの存在下で、シフトは認められなかった。定量試験からの結果を図6に示す。結合曲線は、IVIGの存在下と不在下でほぼ同一である。結合パラメータKAおよびRt-において有意な差は認められなかった。IVIGの存在なしでは、KAは4.9±0.7×108M-1であり、Rtは7.5±0.4×10-8M(55000±3000GP/血小板)であった。IVIGを用いて、KAは5.5±1.2×108M-1であり、Rtは7.6±0.7×10-8M(56000±5000GP/血小板)であった。
【0043】
[実施例6]
本実施例では、抗血小板抗体のクリアランスにおけるIVIGの効果を、FcRnノックアウトマウスにおいて試験した。β-2-ミクログロブリンノックアウトマウス(FcRn発現を欠いているもの)およびC57B1/6対照マウス、21-28gを、ジャクソン・ラボラトリー(Bar Horbor, ME)から入手した。群当たり3-5匹のマウスに、頚動脈カニューレ経由で、IVIG(1g/kg)または塩水を投与した後、8mg/kgの7E3を投与した。各時点で20μlの血液サンプルを、マウスの伏在静脈から、ノックアウトマウスについては4日間の経過をかけて、対照マウスについては30〜60日間の経過をかけて、採取した。血漿7E3濃度を、実施例2に記載されているようにELISAにより決定した。
【0044】
標準的な非コンパートメント薬物動態分析を行い、種々の処置群(11)に関する7E3のクリアランスおよびターミナル半減期を、WINNONLINソフトウェア(Pharsight Corp., Palo Alto, CA)を用いて決定した。非対t-検定を、GraphPad Instat(GraphPadソフトウェア、Inc., San Diego, CA)を用いて行った。
B-2-ミクログロブリンノックアウトおよび対照C57BL/6マウスにおける7E3薬物動態におけるIVIGの効果を図7に示す。IVIGが対照マウスにおいて7E3のクリアランスを増し(P<0.0001)、IVIG処置が、FcRn発現を欠くマウスにおいて7E3のクリアランスを増し損ねることが認められ(表2をご参照)、抗-血小板抗体クリアランスにおけるIVIGの効果がFcRnレセプターにより媒介されていることが確立される。
【0045】
【表2】
【0046】
[実施例7]
抗血小板抗体のFcRnレセプターへの結合を特異的に阻害するのに適した剤の例は、モノクローナル抗-FcRn抗体である。モノクローナル抗FcRn抗体を分泌しているハイブリドーマを、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ACTT#: CRL-2437、指定:4C9)から入手した。ハイブリドーマ細胞を、培地、1%の仔ウシ血清を補充した標準培地中で増殖させた。培養上清を収集し、遠心分離し、次いで、蛋白質-Gクロマトグラフィに供して、IgGを精製させた。図8に示すように、〜60mg/kgの特異的抗-FcRn抗体調製物の投与により、実施例1からの血小板減少動物モデルにおける抗-血小板抗体のクリアランス率の〜400%の増加が導かれた。これに対して、この同じモデルで、2g/kgのIVIGにより、抗血小板抗体クリアランスの〜100%の増加のみが導かれた。これにより、この実施例で7E3のクリアランスに影響を及ぼすために使用された当該剤、即ち、FcRnの特異的インヒビターが、IVIGよりもより強力でより効果的であることが立証され、これが、FcRnの非特異的インヒビターであると考えられる。
【0047】
[実施例8]
本実施例により、他の抗体AMIにおける4C9の効果を記載する。175〜275gの雌のスプラーグドーリーラットに、ケタミン/キシラジン麻酔薬(75/15mg/kg)下に頚静脈カニューレを装着した。手術の2日後に、動物に0、3、15および60mg/kgの4C9を、頚静脈カニューレを経由して注入して処置した(群当たり3〜4匹のラット)。4C9の投与の4時間後、AMI(8mg/kg)をカニューレより投与し、血液サンプル(150μl)を1、3、6、12、24、48、72および96時間で回収した。カニューレの開放性(patency)を、約200μlのヘパリン処理された塩水での洗浄のために保持した。血液を13,000gで3〜4分間遠心分離し、次いで血漿を単離し、4℃にて分析まで保存した。血漿AMI濃度はELISAにより決定した。
【0048】
図9に示すように、AMIのクリアランスは、4C9の投与後99%まで、対照動物における0.99±0.14ml/h/kgから、60mg/kgの4C9で前処理された動物における1.97±0.49ml/h/kgまで、増加した(p<0.05)。このように、これらデータにより、抗-FcRn抗体を、IgG抗体のクリアランスをインビボで増すために使用し得ることが立証される。
【0049】
[実施例9]
本実施例では、ヒトFcRnに対するモノクローナル抗体の生成を示す。フロイント不完全アジュバント(Sigma Chemical)中に乳化したヒトFcRnの軽鎖(即ち、ヒトベータ-2-ミクログロブリン、Sigma Chemical, St. Louis, Mo.)を用いて、6匹のBalb/cマウス(Harlan, Indianapolis, IN)を繰り返し免疫化した。動物を、免疫化の7〜10日後に、伏在静脈から出血させ、ヒトFcRn軽鎖に対して指向された抗体を、抗原捕捉酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて検出した。最も高いELISA反応を有する動物を、脾細胞ドナーとしての使用のために選択し、融合を、ネズミのSP20骨髄腫細胞(ATCC, Manassas, VA)を用いて行った。簡単には、マウスをケタミン(150mg/kg)およびキシラジン(30mg/kg)を用いて屠殺し、脾臓を迅速に、無菌法を用いて取り出した。脾細胞を脾臓組織から、無菌の22-ゲージの針を用いて取り出し、RPMI1640中に懸濁し、次いで、ポリエチレングリコールとの、標準的な方法(例えば、Harlow E and Lane D. 1988. 抗体:研究室マニュアル、ニューヨーク:コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー)を用いる遠心分離により、SP20細胞と融合させた。融合細胞を、HAT選択培地(Sigma Chemical)の適用により選択し、限定希釈の方法によりクローン化した。組織培養上清を、ヒトベータ-2-ミクログロブリンに対するELISA反応を評価することにより、抗-FcRn活性に関してアッセイした。
【0050】
91個の生存可能なハイブリドーマクローンを同定し、組織培養上清を、各クローンの培養物から得、抗ヒトFcRn軽鎖抗体の存在に関して探索した。簡単には、ヒトFcRn軽鎖を96ウェルのミクロプレート上に一晩4℃でコートした。プレートを次いで洗浄し、次いで、リン酸緩衝塩水(PBS、ネガティブ対照)、ハイブリドーマから得られた培養上清物、または、4C9ハイブリドーマ細胞−ラットFcRnの軽鎖に対して指向される抗体を分泌するもの(Raghavan等、Immunity 1(4): 303-315, 1994)−のいずれかと共にインキュベートした。室温で2時間インキュベート後、プレートを洗浄し、アルカリホスフェートと結合したヤギ抗-マウスFab特異的抗体を添加し、1時間インキュベートした。最終的に、プレートを洗浄し、次いでp-ニトロフェニルホスフェートを添加した。吸収の変化を時間とともに(10分間かけて)、ミクロプレートリーダーにより405nmにてモニターした。91個の生存能力のある潜在的な抗-ヒトFcRnクローンから、8個のポジティブなクローンを同定した。これらのクローンは、1H5、4B10、6D10、7C7、7C10、10E7、11E4および11F12であった。ヒトFcRnの軽鎖に対するその反応を図10に纏める(プロットしたものは、正味のアッセイ反応:例えば、生の反応マイナスPBS対照のアッセイ反応である)。一元配置ANOVAにより、アッセイ反応における有意な差が明らかになり(p<0.0001)、8個のポジティブクローンに関するアッセイ反応は、対照のものから有意に異なることが認められた(各クローンに関してp<0.01、Dunnet多重比較検定)。さらに、このアッセイにより、ラットのFcRn軽鎖に対して指向される4C9抗体が、ヒトFcRn軽鎖に対して有意な結合を示さないことが明らかにされた。
【0051】
[実施例10]
本実施例は、ヒトFcRnを発現する293細胞へのヒトIgGの結合における、抗-FcRn軽鎖抗体の効果を記載する。これを立証するために、ヒトFcRnを発現している293細胞を、Brandeis UniversityのDr.Neil Simisterから入手した。ヒトIgGを、標準的な方法により、FITCで標識した。組織培養上清を、ヒトFcRnの軽鎖に対して指向される抗体を分泌することが見出された4つのハイブリドーマ(11E4、11F12、1H5、10E7)(実施例9)の培養物から得た。
【0052】
293細胞をトリプシン:EDTAで処理し、培地中に懸濁した。細胞懸濁液を300gで5分間遠心分離し、緩衝塩水中に再懸濁し、次いで細胞を血球計算板により計測した。約3.6×106細胞/mlの293細胞を、各遠心チューブに、pH6または8の緩衝塩水内に添加した。細胞を緩衝塩水単独と共に、または、1μg/mlの濃度のFITC-IgGと共に、ハイブリドーマ細胞から得られた細胞培養上清の存在下または不在下でインキュベートした。反応混合物を室温で1.5時間インキュベートし、次いで細胞を洗浄し、緩衝塩水中に再懸濁した。細胞結合蛍光を、フルオロメーターで、各々494および520nmの励起および放射波長のセットを用いて分析した。
【0053】
ヒトIgGのヒトFcRnへの公知のpH依存性結合と矛盾無く、細胞結合蛍光は、1μg/mlのFITC-ヒト-IgGと共にpH6.0および8.0各々でインキュベートされた293細胞に関して、253000および10800であることが認められた。対称的に、FITC-IgGの不在下でインキュべートされた細胞に関しては、細胞結合蛍光は、pH6.0および8.0各々で、5220および5300であることが認められた。pH6.0でFITC-IgGおよび細胞上清−抗-FcRn抗体を分泌している細胞に関して得られたもの−と共にインキュべートされた細胞に関して、細胞結合蛍光は80〜84%まで低下した(下記の表3をご参照)。
【0054】
【表3】
【0055】
これらの結果は、ヒトIgGの、ヒトFcRnを発現している293細胞への結合が、pH依存性であり、pH8.0で認められるものに対して、pH6.0で、より強い結合が示されることを示す。ヒトFcRn軽鎖に対して指向される抗体を分泌しているハイブリドーマからの培養上清は、ヒトIgGのFcRnに対する結合を阻害することができる。
【0056】
[実施例11]
この実施例では、さらに、本発明の抗体が、FcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターであることを立証する。hFcRnを発現している293細胞に対するマウスIgGの結合を、抗-hFcRn抗体の存在下または不在下で、下記のように決定した。293細胞をPBSと共に、抗-ヒトFcRn軽鎖抗体を分泌していると同定された2つのハイブリドーマからの細胞培養上清と共に、および、モノクローナル抗メトトレキサートmIgG1(ネガティブコントロールとしてのAMI)を分泌している細胞から得られた細胞培養上清と共に、インキュべートした。このインキュべーションは、ヒトIgG(1mg/ml)との同時インキュべーションを用いてまたは用いずに、対で行った。このインキュべーションの後で、細胞を、FITCで標識された抗-マウスIgG抗体と共にインキュべートした(即ち、293細胞の表面上のヒトFcRnに対して結合したネズミ抗FcRn抗体の存在を検出するために)。細胞を洗浄し、次いで、細胞結合蛍光をフルオロメーターにより評価した。全インキュべーションはpH7.4で行った。
【0057】
結果(図11)は、ハイブリドーマ細胞からの培養上清との細胞のインキュべーションに続く、hFcRnを発現している293細胞へのマウスIgGの有意な結合を示す(実施例9からの11E4&1H5)。これらの結合データは、ヒトIgGとの同時インキュべーションが、アッセイ応答において有意な変化を導かなかったことを示し、これは、「非-競合的」結合と一致する(即ち、hFcRnに関する抗-FcRn抗体の見かけのアフィニティは、天然リガンド-ヒトIgGの存在により変化しなかった)。
【0058】
メトトレキサートに対して指向されるネズミモノクローナルIgG1抗体を分泌する細胞からの上清との293細胞のインキュべーション(即ち、ネガティブコントロールとしてのもの)からの結果も示す。抗-メトトレキサート抗体との293細胞のインキュべーションは、有意なアッセイ反応に至らなかった。これは(また)、特定の抗-hFcRn抗体が、11E4&1H5上清との細胞のインキュべーションに続いて観察される有意な結合の原因であるという仮定と一致する。
【0059】
[実施例12]
本実施例では、ヒトFcRnに関する特異性を有するモノクローナル抗体の作成を記載する。ヒトFcRn重鎖の一次配列から選択されるペプチド配列GEEFMNFDLKQGT (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)(Pierce Biotechnology Inc., Rockford, IL)と結合し、フロイント不完全アジュバント(Sigma Chemical)中に乳化し、次いで6匹のBalb/cマウス(Harlan, Indianapolis, IN)を繰り返し免疫化するために使用した。動物を、免疫化の7〜10日後に伏在静脈から採血し、抗血清を、ヒトFcRnを発現している細胞に対するヒトIgGの結合を阻害する活性に関して、細胞結合アッセイを用いて評価した。簡単には、動物からの血清サンプルを、ヒトFcRnを発現している293細胞と共に、および50μg/mlのFITC標識化ヒトIgGと共に、pH6、37℃で2時間インキュべートした。混合物を次いで250gで5分間遠心分離し、次いで細胞をpH6のPBSで洗浄した。遠心分離後、細胞をpH7.4のPBS中に再懸濁した。蛍光をフルオロメトリーにより評価した。励起および放射波長は各々494nmおよび520nmに設定した。蛍光シグナルの最大の阻害を示している抗-血清に関連づけられる動物を、脾細胞ドナーとしての使用のために選択した。脾臓細胞を採取し、ネズミのSP20骨髄腫細胞(ATCC, Manassas, VA)と融合させた。簡単には、マウスをケタミン(150mg/kg)およびキシラジン(30mg/kg)で屠殺し、次いで脾臓を無菌法を用いて迅速に取り出した。脾細胞を、無菌の22-ゲージの針を用いて脾臓組織から引き出し、RPMI1640中に懸濁し、ポリエチレングリコールを用いる遠心分離により、標準的な方法(Harlow E and Lane D. 1988. 抗体:研究室マニュアル、ニューヨーク:コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリーに記載されているようなもの)を用いて融合した。融合細胞を、HAT選択培地(Sigma Chemical)の適用により選択し、次いで限定希釈の方法によりクローン化した。組織培養上清を、ヒトIgGの、ヒトFcRnを発現している293細胞に対する結合の阻害に関して、前記のものから変更された手法を用いてアッセイした。32個の生育可能なハイブリドーマークローンを同定し、組織培養上清を各クローンの培養物から採取して、抗ヒトFcRn抗体の存在に関して探査した。簡単には、全生育可能なクローンからの組織培養上清をヒトFcRn-感染293細胞および30μg/mlのFITC-標識化ヒトIgGと共にpH6、37℃にて2時間インキュべートした。インキュべーション後、細胞を洗浄し、pH7.4のPBS中に再懸濁した。サンプルの蛍光をフルオロメトリーにより分析した。32個の生育可能な潜在的な抗-ヒトFcRnクローンから、2個のポジティブなクローンを同定した。これらのクローンは1D6と11C1であった(図13)。一元配置ANOVAは、アッセイ反応において有意な差を明らかにし(p<0.0001)、2個のポジティブなクローンに関するアッセイ反応は、対照のものから有意に異なっていることが見出された(各クローンに関してp<0.01、Dunnett多重比較検定)。さらに、このアッセイは、ネガティブ対照であるAMI抗体、メトトレキサートに関して高いアフィニティを有するネズミIgG1抗体が、ヒトFcRn-感染293細胞に対するヒトIgGの結合を阻害しないことを明らかにした。
【0060】
[実施例13]
1D6または11C1がヒトFcRn(hFcRn)に(即ち、ヒト免疫グロブリンに関して)非競合的に結合するかどうかを試験するために、W8(対照)、1D6および11C1からの培養上清をhFcRn-感染293細胞と共に、pH7.4および37℃で2時間、場合により1mg/mlのプールされたヒト免疫グロブリン(IVIG、Gamunex(登録商標)、Bayer)の存在下で、インキュべートした。洗浄および遠心分離後、293細胞を100μg/mlのFITC-標識化ヤギ抗-マウスIgGと共に、pH7.4および37℃で1.5時間インキュべートした。細胞を洗浄および遠心分離し、次いで細胞結合蛍光をフルオロメトリーにより分析した。結果を図12に示す(n=3)。
データは、高濃度のヒト免疫グロブリンが、1D6または11C1に対するhFcRn-感染細胞の結合を阻害しないことを示す。このように、これらデータは、1D6および11C1の両方が、hFcRnに、(プールされたヒトIgGに関して)非競合的様式で結合するという仮定を支持する。
【0061】
[実施例14]
本実施例は、1D6および11C1が、FcRnの重鎖に対して指向されることをさらに支持するための、ヒトベータ-2-ミクログロブリンに対する1D6および11C1結合の評価を記載する。これを評価するために、ヒトベータ-2-ミクログロブリン(b2m、リン酸バッファー中3μg/ml、250μl)を用いて、96ウェルのミクロプレートのウェルをコートした。プレートを4℃で一晩インキュべートした。プレートを次いでリン酸緩衝塩水およびDDWで洗浄した。11E4(抗-ヒトベータ-2-ミクログロブリン)、4C9(抗-ラットベータ-2-ミクログロブリン)、1D6および11C1からの細胞上清を当該プレートに添加し、室温で2時間インキュべートした。プレートをPBSおよびDDWで洗浄した。ヤギ-抗-マウスIgG-アルカリホスファターゼコンジュゲート(リン酸バッファー中1:500、250μl)をプレートに添加し、プレートを1時間室温でインキュべートした。プレートをリン酸緩衝塩水およびDDWで洗浄した。DEAバッファー中のパラニトロ-フェニル-ホスフェート(4mg/ml、200μl)をプレートに添加し、405nmでの吸収を10分間プレートリーダーにより測定した。
結果を下記の表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
[実施例15]
本実施例では、マウス/ヒトキメラ抗体の構築および発現を記載する。全RNAを、1D6および11C1モノクローナル抗体を発現するペレット化されたハイブリドーマ細胞から、SV全RNA単離システム(Promega)により調製した。cDNAをオリゴdTプライマーおよびリバーストランスクリプターゼ(Invitrogen)を用いて合成した。1D6重鎖および軽鎖の可変領域を、TaqDNAポリメラーゼを用いて、35サイクルのPCRを用いて(1サイクルは93℃で1分、45℃で30秒、および72℃で1分)、第一鎖cDNAから増幅した。11C1重鎖の可変領域を、TaqDNAポリメラーゼを用いて、35サイクルのPCRを用いて(1サイクルは、93℃で1分、56℃で30秒、および72℃で1分)、第一鎖cDNAから増幅した。11C1軽鎖の可変領域を、TaqDNAポリメラーゼを用いて、35サイクルのPCR(1サイクルは93℃で1分、60℃で30秒、および72℃で1分)を用いて、第一鎖cDNAから増幅した。全PCR産物を精製し、PCR2.1-TOPOベクターにクローン化した。
【0064】
1D6および11C1の可変領域を含んでいるPCR2.1-TOPOベクターを配列決定し、結果をアライメント分析により確認した。バキュロウイルスカセットベクター、pAC-K-CH3を用いて、可変領域の重鎖および軽鎖遺伝子をクローン化した。当該可変領域をpAC-K-CH3ベクターにクローン化するために、重鎖可変領域をXhoIおよびNheI切断部位を含むプライマーを用いるPCRにより増幅した。軽鎖可変領域は、SacIおよびHindIII切断部位を含むプライマーを用いるPCRにより増幅した。重鎖および軽鎖両方の可変領域を含むpAC-K-CH3を配列決定して、挿入を確認した。アライメント分析は、重鎖および軽鎖が全て、pAC-K-CH3ベクターに連結されることを示した。
【0065】
重鎖および軽鎖の両方の可変領域を含むpAC-K-CH3および一本鎖化されたバキュロウイルスDNAをSf9昆虫細胞に同時形質転換した。組換えバキュロウイルスを、BaculoGoldトランスフェクションキット(BD Biosciences)を製造業者の指示に従い用いて、相同組換えにより調製した。組換えバキュロウイルスを形質転換の7〜8日後に、SF9細胞培養培地の上清から回収した。続く2ラウンドの増幅を行い、高力価の組換えウイルスを得た。
Sf9細胞を、IgG抗体を発現している組換えウイルスで感染させ、次いで、血清不含培地(Orbigen)中で増殖させ、T75フラスコ中で、27℃で、約50〜60%の死亡細胞が観察されるまでインキュべートした。
【0066】
前記特定の態様の記載は、説明のためのものであり、限定を意図するものではない。本発明の教示から、当業者は、種々の修飾および変更を、本発明の精神から離れることなくなし得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】7E3誘導性血小板減少症の時間経過におけるIVIGの効果。ラットに、IVIG(または塩水)を受容させた後、8mg/kgの7E3を受容させた。パネルAは、塩水(1)、0.4g/kgのIVIG(2)、1g/kgのIVIG(3)または2g/kgのIVIG(4)を与えられた動物に関する、個々の未処置血小板数対時間データを示す。パネルBは、初期血小板数データの平均パーセントを示す。記号は、IVIG処置群(n=4ラット/群):塩水(●)、0.4g/kg(■)、1g/kg(▲)、および2g/kg(◆)を示す。IVIGおよび7E3は静脈に投与され、血小板数は、セルダイン1700マルチ-パラメータ血液アナライザーを用いて得られたものである。エラーバーは、平均についての標準偏差を示す。IVIGは、投与量依存式に、血小板減少症の経過を弱めた。処置の違いは統計学的に有意であった(p=0.031)。
【図2】IVIG処置に続く血漿7E3の薬物動態。ラット(群当たり3〜4匹)に、IVIG(0〜2g/kg)を、次いで7E3(8mg/kg)を静脈投与した。パネルAは、塩水(1)、0.4g/kgのIVIG(2)、1g/kgのIVIG(3)、または2g/kgのIVIG(4)を与えられた各動物に関する血漿7E3の薬物動態データを示す。パネルBは、7E3およびIVIGを受容している動物に関する平均血漿薬物動態データを示す。処置群を以下に示す:塩水(●)、0.4g/kg(■)、1g/kg(▲)および2g/kg(◆)。7E3の濃度をELISAにより決定した。エラーバーは、各時点での平均濃度についての標準偏差を示す。IVIG処置は、この図に示す濃度対時間特性から算出される、7E3のクリアランスを有意に増した(p<0.001)。
【図3】IVIGは7E3に直接的には結合しない。7E3(または対照IgG)およびIVIGをインビトロで、一定のIVIG濃度(25mg/m)で、および7E3濃度を変化させて(0〜0.1mg/ml)、合わせた。ポジティブ対照はマウス抗-ヒトIgGであった。サンプルを次いで、抗-ヒトIgGで覆ったミクロプレートに添加した。ネズミIgGの結合を二次抗-マウスIgG-アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いて視覚化した。p-ニトロフェニルホスフェートを添加し、プレートを405nmで読んだ(10分に渡る動力学的アッセイ)。7E3に対するアッセイ反応は、対照と異ならなかったが(p=0.164)、ポジティブ対照は、対照から有意に異なっていた(p<0.001)。
【図4】IVIG処置に続く血漿AMI薬物動態。ラット(1群当たり3匹)に、塩水(●)または2g/kg(◆)IVIGを静脈投与後、AMI(8mg/kg)を投与した。AMI濃度をELISAにより決定した。エラーバーは、各時点での平均濃度についての標準偏差を示す。IVIG処置は、この図に示す濃度対時間特性から算出されるAMIのクリアランスを有意に増した(p<0.001)。抗体の薬物動態におけるIVIGの効果は7E3に関して特異的ではない。
【図5】フローサイトメトリーにより決定される、7E3-血小板結合におけるIVIGの効果。7E3をヒト血小板と、IVIGの存在または不在下でインキュべートした。ヒストグラムは、血小板数対相対蛍光強度をプロットする。下のパネルは、血小板と共にインキュべートされた対照マウスIgGに関して得られた蛍光ヒストグラムを示す(メジアン蛍光強度(MFI)は1.3であった)。中のパネルは、血小板と共にインキュべートされた7E3を示し(MFI=246)、上のパネルは、IVIGの存在下で血小板と共にインキュべートされた7E3を示す(MFI=284)。IVIGの存在下で血小板に対し結合している7E3に関して、MFIの低下は全く観察されなかった。
【図6】7E3血小板結合曲線におけるIVIGの影響。7E3濃度は、IVIGの存在下(○)または不在下(▽)で増加したので、トータルの血小板濃度は一定に保たれた。遊離(即ち非結合)7E3濃度をELISAにより決定した。データはテキストに記載するように適合した。ラインは、データセットの最良の適合を示し(連続したライン=IVIG、破断ライン=IVIG無し)、本質的に重ね合わされる。フィットから得られたパラメータ(KAおよびRt)は、有意に異ならなかった。IVIGの存在無しに、KAは4.9±0.7×108M-1であり、Rtは7.5±0.4×10-8M(55000±3000GP/血小板)であった。IVIGを用いて、KAは5.5±1.2×108M-1であり、Rtは7.6±0.7×10-8M(56000±5000GP/血小板)であった。IVIGは7E3が血小板に結合するのを妨げない。
【図7】対照およびFcRn欠損マウスにおけるIVIG処置後の7E3薬物動態。マウス(群当たり3〜5匹)に、IVIG(1g/kg)を、次いで7E3(8mg/kg)を静脈投与した。処置群は以下のごとく指定される:対照マウスにおける7E3+塩水(●);対照マウスにおける7E3±IVIG(■);ノックアウトマウスにおける7E3+塩水(○);およびノックアウトマウスにおける7E3+IVIG(□)。7E3濃度はELISAにより決定した。エラーバーは、各時点での平均濃度についての標準偏差を示す。IVIG処置は、対照マウスにおいて7E3のクリアランスを有意に増したが(p<0.001)、FcRn欠損マウスにおいては増さなかった。
【図8】抗-FcRnモノクローナル抗体の投与に続く抗-血小板抗体薬物動態の変化。ラットに、モノクローナル抗-FcRn抗体(4C9、60mg/kg)を用いる前処置を行って、または行わずに、モノクローナル抗血小板抗体(7E3、8mg/kg)を静脈投与した。黒丸は、7E3のみを受容している動物(n=4)において観察される7E3血漿濃度を示し、赤三角は、モノクローナル抗-FcRn抗体で前処置された(7E3の投与の4.5時間前に静脈投与された)ラットにおいて観察された7E3血漿濃度を示す。示されるように、モノクローナル抗-FcRn抗体での前処置により、抗血小板抗体の排出の劇的な増加が導かれた(即ち、7E3クリアランスが〜400%まで増加した)。7E3濃度はELISAにより決定した。エラーバーは、各時点での平均濃度についての標準偏差を示す。
【図9】4C9の種々の投与に続く血漿AMIの薬物動態。ラット(群当たり3〜4匹)に、AMI(8mg/kg、静脈内)の投与の4時間前に4C9(0〜60mg/kg)を静脈投与した。血液サンプルを採取し、次いで血漿サンプルをAMI濃度に関してELISAにより分析した。処置群は次のように指定する。:塩水(●)、3mg/kg(■)、15mg/kg(▲)、60mg/kg(◆)。エラーバーは、各時点での平均AMI濃度についての標準偏差を示す。15および60mg/kgは、対象と比較してAMIのクリアランスが有意に増した(p<0.01)。
【図10】ヒトFcRnに対するハイブリドーマ上清の反応性。hFcRnの軽鎖に対する抗体を分泌するハイブリドーマを作成した。プレートをヒトFcRnの軽鎖でコートし、指定のハイブリドーマからの上清と共にインキュベートした。アルカリホスファターゼに結合したヤギ抗-マウスFabフラグメントを用いてポジティブクローンを同定した。ヒトFcRnの軽鎖に特異的な抗体を産生している8個のハイブリドーマを同定した。
【図11】FcRnに対する抗-hFcRnの反応性におけるIgGの存在の効果。hGcRnを発現している293細胞を、場合によりヒトIgGと共に抗-FcRn抗体とインキュベートした。結合を、FITCに結合した二次抗体により検出した。細胞の蛍光をフルオロメーターにより評価した。
【図12】FcRnに対する抗-hFcRn(重鎖)の反応性におけるIgGの存在の効果。hFcRnを発現している293細胞を、場合によりヒトIgGと共に抗-hFcRn(重鎖)抗体とインキュベートした。結合を、FITCに結合した二次抗体により検出した。細胞の蛍光をフルオロメーターにより評価した。
【図13】ヒトFcRnを発現している293細胞へのヒトIgGの結合は、(y-軸において示されるように)サンプル蛍光により反映される。ハイブリドーマクローン1D6および11C1から得られた組織培養上清は、pH6.0で293細胞に対するヒトIgG結合の高度に有意な阻害を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトFcRnの重鎖またはそのフラグメントに対して作成されたものであり、ヒトFcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターとして機能し、かつ、b2-ミクログロブリンに結合しないことを特徴とする、ヒトFcRnに結合する抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
前記抗体がネズミ抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、ポリクローナルおよびモノクローナルから成る群から選択されるものである、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体がキメラまたはヒト化されたものである、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記フラグメントが、Fab、F(ab)’2、FvおよびScFvから成る群から選択されるものである、請求項1に記載のフラグメント。
【請求項6】
FcRnに対する結合が6.0〜8.0のpH範囲を通じてpHに非依存性であることを特徴とする請求項6に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項3に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、1DGおよび11C1から成る群から選択されるハイブリドーマにより作成されるモノクローナル抗体である、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
個人における病原性抗体の濃度を低下させる方法であって、当該個人に、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントの治療上有効な投与量を投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記抗体がポリクローナルまたはモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体の前記フラグメントが、Fab、F(ab)’2、FvおよびScFvから成る群から選択されるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体またはそのフラグメントを、医薬上許容されるキャリアにて投与することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記個人がヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体がアジュバントと共に投与されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
個人におけるFcRnに対するIgGの結合を低下させるための方法であって、
ヒトFcRnの重鎖またはそのフラグメントに対して作成され、ヒトFcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターであり、かつ、b2-ミクログロブリンに結合しない、ヒトFcRnに結合する抗体またはそのフラグメントを提供するステップ;および、
前記抗体またはそのフラグメントを個人に、当該個人においてFcRnに対するIgGの結合を阻害するのに十分な量で投与するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記個人が自己免疫またはアロ免疫疾患を有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記自己免疫疾患が免疫性血小板減少症である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記個人がヒトである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、1mg/kg〜2g/kgの投与量で投与されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、1mg/kg〜200mg/kgの投与量で投与されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項1】
ヒトFcRnの重鎖またはそのフラグメントに対して作成されたものであり、ヒトFcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターとして機能し、かつ、b2-ミクログロブリンに結合しないことを特徴とする、ヒトFcRnに結合する抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
前記抗体がネズミ抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、ポリクローナルおよびモノクローナルから成る群から選択されるものである、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体がキメラまたはヒト化されたものである、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記フラグメントが、Fab、F(ab)’2、FvおよびScFvから成る群から選択されるものである、請求項1に記載のフラグメント。
【請求項6】
FcRnに対する結合が6.0〜8.0のpH範囲を通じてpHに非依存性であることを特徴とする請求項6に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項3に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、1DGおよび11C1から成る群から選択されるハイブリドーマにより作成されるモノクローナル抗体である、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
個人における病原性抗体の濃度を低下させる方法であって、当該個人に、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントの治療上有効な投与量を投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記抗体がポリクローナルまたはモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体の前記フラグメントが、Fab、F(ab)’2、FvおよびScFvから成る群から選択されるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体またはそのフラグメントを、医薬上許容されるキャリアにて投与することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記個人がヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体がアジュバントと共に投与されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
個人におけるFcRnに対するIgGの結合を低下させるための方法であって、
ヒトFcRnの重鎖またはそのフラグメントに対して作成され、ヒトFcRnに対するIgG結合の非競合的インヒビターであり、かつ、b2-ミクログロブリンに結合しない、ヒトFcRnに結合する抗体またはそのフラグメントを提供するステップ;および、
前記抗体またはそのフラグメントを個人に、当該個人においてFcRnに対するIgGの結合を阻害するのに十分な量で投与するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記個人が自己免疫またはアロ免疫疾患を有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記自己免疫疾患が免疫性血小板減少症である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記個人がヒトである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、1mg/kg〜2g/kgの投与量で投与されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、1mg/kg〜200mg/kgの投与量で投与されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−524664(P2009−524664A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552358(P2008−552358)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/001742
【国際公開番号】WO2007/087289
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(506194117)ザ リサーチ ファウンデイション オブ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/001742
【国際公開番号】WO2007/087289
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(506194117)ザ リサーチ ファウンデイション オブ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク (11)
【Fターム(参考)】
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