説明

自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤

【課題】日常的に連用可能で、安全かつ十分な効果を示す自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤を提供する。
【解決手段】マカの抽出物及びローヤルゼリーを含有することを特徴とする、自律神経失調症に伴う疲労感、倦怠感、ふるえ、顔のほてり、頭痛、めまい、憂鬱感、イライラ、息切れ、動悸、不眠、食欲不振、下痢、発汗、肩こり、手足の冷感、手足の痛み、吐き気等の不定愁訴の改善剤である。錠剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、内服液剤及び飲料等の形態で提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マカの抽出物及びローヤルゼリーを含有することを特徴とする自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自律神経は、交感神経と副交感神経から成り、その中枢は脳の視床下部及び脊髄に存在する。この交換神経と副交感神経のバランスが崩れると自律神経失調症を発症する。具体的には、疲労感、倦怠感、ふるえ、顔のほてり、頭痛、めまい、憂鬱感、イライラ、息切れ、動悸、不眠、食欲不振、下痢、発汗、肩こり、手足の冷感、手足の痛み、吐き気など様々な不定愁訴と呼ばれる症状を引き起こすものであり、これら症状の発症は日常的な生活に支障をきたすことから、大変深刻な問題となっている。
【0003】
自律神経失調症を改善するには、心理的・社会的ストレスの回避及びホルモンバランスの調節が有効とされているが、これらを日常生活の中で制御することは困難である。一方、薬物により治療する方法もあるが、安全性が問題となり、日常的に使用するのは好ましくない。ベンゾジアゼピン系自律神経調整剤トフィソサムは眠気、嘔吐、口渇等の副作用があり、β−アドレナリン受容体遮断剤プロプラノロールは、うっ血性心不全、血小板減少症、呼吸困難等の副作用を有する。そこで、日常的に連用可能で安全かつ十分な効果を示す自律神経失調症の改善剤が求められており、各方面で開発が行われてきた。
【0004】
例えば、米や小麦の胚芽に含まれるγ−オリザノールは自律神経賦活作用があるとされ食品や医薬品において既に使用されている。その他、セスキテルペンアルコール類を含有する自律神経調整剤(特許文献1参照)、生薬エキスおよびビタミンEを含有する組成物(特許文献2参照)、フェルラ酸、クロロゲン酸及びカフェ酸からなる自律神経機能向上剤(特許文献3参照)、カルノシンを含む自律神経調整作用を有する組成物(特許文献4参照)などがある。しかし、これらに自律神経失調症に伴う不定愁訴を改善する十分な効果はない。
【0005】
マカの抽出物は活力再生、滋養強壮作用(非特許文献1)、低血糖抑制作用、抗炎症作用(非特許文献2)が報告されているが、自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善効果については報告されていない。また、ローヤルゼリーはアミノ酸、ビタミン、ミネラルを含み栄養に富んだ物質であり、従来より滋養強壮作用があるといわれてきたが、自律神経失調症に伴う不定愁訴を改善するにはその効果は十分なものではない。
【0006】
【特許文献1】国際公開WO01/058435号
【特許文献2】特開2004−26780号公報
【特許文献3】特開2002−145765号公報
【特許文献4】国際公開WO2002/076455号
【非特許文献1】Food Chemistry,49,347−349(1994)
【非特許文献2】FOOD Style 21,Vol.4,No.8(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような事情に鑑み、本発明者らはさらに優れた自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤を得るべく鋭意検討を行った結果、マカの抽出物及びローヤルゼリーを組み合わせることが、顕著な改善効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、マカの抽出物及びローヤルゼリーを含有することを特徴とする自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤である。
【0009】
本発明のマカ(Lepidium meyenii)は、南米ペルーで海抜4000〜5000mの高地で植生するアブラナ科の植物で、その球根は滋養食材としてだけでなく、民間薬としても用いられている。アンデスでの食経験は長く、極めて安全性の高い食物であり、別名マカマカとも呼ばれる。有効成分はグルコシノレート類と考えられている。
【0010】
本発明におけるマカの抽出物は、マカの球根を水もしくはメタノール、エタノール、プロパノール、アセトン等の親水性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒で抽出することにより抽出液として得ることができる。又、当該抽出液を濃縮した濃縮液或いは乾燥した粉末の形態でも得ることができる。
【0011】
本発明のローヤルゼリーは、ミツバチが女王蜂を育成するために、その咽頭腺と大顎腺を通じて王台中に分泌したものである。王台から採集し、ゴミなどを除去したものを生ローヤルゼリーという。
本発明のローヤルゼリーは、上記生ローヤルゼリーの他に、生ローヤルゼリーの濃縮物、生または濃縮ローヤルゼリーに乳糖、澱粉などを加えた希釈物、生または濃縮ローヤルゼリーから抽出したエキスあるいはその濃縮物、並びに生または濃縮ローヤルゼリーから脱タンパクしたもの或はその濃縮物などのいずれも用いることができる。
本発明のローヤルゼリーの量は、生ローヤルゼリーに換算したものを基準とする。例えば、10部の生ローヤルゼリーから水分を除去して得た4部の濃縮ローヤルゼリー、並びに10部の生ローヤルゼリーを脱タンパク後、濃縮して得た1部の脱タンパクローヤルゼリー濃縮物は、いずれも10部の生ローヤルゼリーとして取り扱う。
【0012】
本発明におけるマカの抽出物及びローヤルゼリーの投与量或いは摂取量は、形態、症状、年齢、体重等によって異なるが、マカの抽出物は乾燥マカに換算して0.01〜10g/日、好ましくは0.1〜7g/日、より好ましくは0.5〜5g/日、ローヤルゼリーは0.01〜10g/日、好ましくは0.1〜7g/日、より好ましくは0.5〜5g/日である。
【0013】
本発明の自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤は、医薬品又は食品として用いることができる。医薬品の形態としては、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、内服液剤、懸濁剤、シロップ剤等が挙げられる。食品の形態としては、上述の医薬品的な形態に加え、ビスケット、クッキー、キャンディー、チョコレート等の菓子、食酢、醤油、ドレッシング等の調味料、ハム、ベーコン、ソーセージ等の食肉製品、かまぼこ、はんぺい等の魚肉練り製品、果汁飲料、清涼飲料、アルコール飲料等の飲料、パン、麺、ジャム等にすることができる。これらの医薬品及び食品は、何れもマカの抽出物を乾燥マカに換算して0.01〜10g/日及びローヤルゼリーを0.01〜10g/日摂取できる形態であるが、摂取量を調整しやすい錠剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、内服液剤及び飲料がより好ましい。又、医薬品及び食品の製造にあたっては、必要に応じて賦形剤、結合剤、滑沢剤、矯味剤、安定剤、ビタミン、ミネラル、香料等の医薬品及び食品の技術分野で通常使用されている補助剤を用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマカの抽出物及びローヤルゼリーを含有することを特徴とする自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤には、著しい不定愁訴の改善効果が認められた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態として実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に示す(%)は重量(%)を示す。
【実施例1】
【0016】
錠剤
<処方> 配合量(%)
1.マカの乾燥水抽出物(10倍量の乾燥マカに相当) 1.0
2.ローヤルゼリー 40.0
(生ローヤルゼリー10部を凍結乾燥して得た4部の濃縮ローヤルゼリーに乳糖を6部加えた希釈物)
3.馬鈴薯澱粉 21.0
4.還元麦芽糖水飴 35.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
<製造方法>
成分1〜4に70%エタノールを適量加えて練和し、押出し造粒した後に乾燥して顆粒を得る。成分5を加えて打錠成形し、0.5gの錠剤を得る。当該錠剤を1日6錠摂取することで、乾燥マカ0.3g/日に相当するマカの抽出物、ローヤルゼリーを1.2g/日を摂取できる。
【実施例2】
【0017】
トローチ剤
<処方> 配合量(%)
1.マカの乾燥水抽出物(デキストリンで等量の乾燥マカに調製) 50.0
2.ローヤルゼリー 20.0
(生ローヤルゼリー10部を凍結乾燥して得た4部の濃縮ローヤルゼリーを使用)
3.コーンスターチ 27.0
4.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
<製造方法>
成分1〜3に70%エタノールを適量加えて練和して押出し造粒し、乾燥して顆粒を得る。成分4を加えて打錠成形し、1gのトローチ剤を得る。当該トローチ剤は、1日3個摂取することで、乾燥マカ1.5g/日に相当するマカの抽出物、ローヤルゼリーを1.5g/日を摂取できる。
【実施例3】
【0018】
顆粒剤
<処方> 配合量(%)
1.マカの乾燥水抽出物(3倍量の乾燥マカに相当) 10.0
2.ローヤルゼリー 10.0
(生ローヤルゼリー10部を脱タンパク後、濃縮して得た1部の脱タンパクローヤルゼリー濃縮物)
3.還元麦芽糖水飴 32.0
4.セルロース 48.0
<製造方法>
成分1〜4に70%エタノールを適量加えて練和して押出し造粒し、乾燥して顆粒剤を得る。当該顆粒剤は、1回2gずつ1日3回摂取することで、乾燥マカ1.8g/日に相当するマカの抽出物、ローヤルゼリーを6g/日を摂取できる。
【実施例4】
【0019】
カプセル剤
<処方> 配合量(%)
1.マカの乾燥エタノール抽出物(5倍量の乾燥マカに相当) 40.0
2.ローヤルゼリー 10.0
(生ローヤルゼリー10部を脱タンパク後、濃縮して得た2部の脱タンパクローヤルゼリー濃縮物)
3.ビタミンE 0.2
4.セルロース 49.8
<製造方法>
成分1〜4を混合し、2号硬カプセルに250mg充填してカプセル剤を得る。当該カプセル剤は、1日6カプセル摂取することで、乾燥マカ3g/日に相当するマカの抽出物、ローヤルゼリーを0.75g/日を摂取できる。
【実施例5】
【0020】
飲料
<処方> 配合量(%)
1.マカの30%エタノール抽出液(等量の乾燥マカに相当) 10.0
2.ローヤルゼリー(生ローヤルゼリーを10%含む乳化組成物) 30.0
3.ビタミンE水溶液製剤 1.0
4.ショ糖 10.0
5.クエン酸 0.7
6.香料 適量
7.精製水で全量を100とする。
<製造方法>
成分7に成分1〜6を加え、撹拌溶解して濾過し、加熱殺菌して30mLガラス瓶に充填する。当該飲料は、1日1本摂取することで乾燥マカ3g/日に相当するマカの抽出物、ローヤルゼリーを0.9g/日を摂取できる。
【比較例】
【0021】
飲料
配合量(%)
<処方> 比較例1 比較例2 比較例3
1.マカの30%エタノール抽出液 0.0 0.0 10.0
(等量の乾燥マカに相当)
2.ローヤルゼリー 0.0 30.0 0.0
(生ローヤルゼリーを10%含む乳化組成物)
3.ビタミンE水溶液製剤 1.0 1.0 1.0
4.ショ糖 10.0 10.0 10.0
5.クエン酸 0.7 0.7 0.7
6.香料 適量 適量 適量
7.精製水で全量を100とする。
<製造方法>
成分7に成分1〜6を加え、撹拌溶解して濾過し、加熱殺菌して30mLガラス瓶に充填する。
【実施例6】
【0022】
試験例<方法>
自律神経失調症により不定愁訴の症状を訴えている女性80名を対象に、本発明に係る実施例5の飲料による改善効果の検討を行った。女性は20名ずつ4つのグループに分け、第1グループには比較例1、第2グループには比較例2、第3グループには比較例3、第4グループには実施例5の飲料を1日当たり1本2ヶ月間摂取し、試験開始時及び終了時における各症状をアンケート調査した。アンケートは、下記の指数表(簡略更年期指数 日本医師会雑誌109号)を引用し、不定愁訴の各症状に対して症状がない場合は「なし」、症状の自覚はあるが日常生活にはほとんど影響しない場合は「弱」、症状がひどく、がまんできないことがある場合は「中」、症状が大変ひどく、日常生活に支障をきたす場合は「強」とし、その症状を点数化し、合計の平均値で試験開始時と終了時を比較した。

【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
比較例1では指数に変化は見られなかった。比較例2、3及び実施例5の試験終了時の指数はいずれも試験開始時より減少したが、実施例5がより優れており、マカの抽出物及びローヤルゼリーを併用することにより効果の向上がみられた。
実施例1、2、3及び4についても、試験例1と同様に試験したところ、優れた不定愁訴改善効果が認められた。
【0026】
表2の結果より、本発明の自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤を摂取すると、不定愁訴が顕著に改善していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係るマカの抽出物及びローヤルゼリーを含有する自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤は、上記のように顕著な効果を有する。よって、自律神経失調症の治療・改善を目的とする医薬品及び食品に広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マカの抽出物及びローヤルゼリーを含有することを特徴とする自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤。
【請求項2】
マカの抽出物を乾燥マカに換算して0.01〜10g/日及びローヤルゼリーを0.01〜10g/日摂取できる形態である請求項1記載の自律神経失調症に伴う不定愁訴の改善剤。

【公開番号】特開2006−143664(P2006−143664A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336853(P2004−336853)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】