説明

自浄式乾式塀

【課題】表面に汚染物質が付着しても速やかに洗い流されて表面を清浄に保つことができる自浄式乾式塀を提供。
【解決手段】板状体1の上に形成された光触媒含有層2に、光触媒機能を備えた光触媒性結晶が含有され、その光触媒性結晶に光が照射されることで、光触媒が活性化されて壁板の表面に高い親水性が発現されて自浄性が具備されるが、光触媒含有層2に親水化剤が含有されていることで、発現された光触媒の親水性を維持できると共に、光触媒含有層2の形成時に表面付近の光触媒性結晶の量を増やして高度な自浄性を備えさせることができる。また光触媒性結晶を直接塗料ビヒクル樹脂に配合しているので、板状体の上への光触媒含有層の形成は容易なものとなり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、民地と駐車場等の敷地境界、住宅の外構、住宅や店舗、オフィス等において使用される屋外機の周辺などに設置され、汚れが付着しにくくなされた自浄式乾式塀に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、防音性を備え空間の仕切りを行う防音仕切壁としては、例えば互いに一定寸法離間して配置されて、間仕切壁の壁面を形成する一対の壁板間に、吸音材と、上下方向に延在する間柱とが、前記間仕切壁の連続する方向に沿って交互に配設された構成とされ、前記間柱が、前記一方の壁板側の間柱部材と、前記他方の壁板側の間柱部材と、これら間柱部材間に介装された弾性体とから構成されている間仕切壁構造が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−226181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の乾式塀では、表面に汚染物質が付着すると、降雨等によって表面に水が流れた際に雨筋汚れが発生し、美観が損なわれる恐れがあるものであった。とりわけ壁板にパンチング加工や曲げ加工がなされている場合には、パンチング孔や凸状部分などに水の流れが集中し、その部分に容易に雨筋汚れが発生する恐れがあった。
【0005】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、表面に汚染物質が付着しても速やかに洗い流されて表面を清浄に保つことができる自浄式乾式塀を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる自浄式乾式塀は、板状体の上に光触媒機能を備えた光触媒含有層が形成されて該光触媒含有層を外面とした壁板を備え、該光触媒含有層は水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂を主成分とし、光触媒性結晶と親水化剤とが含有されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係わる自浄式乾式塀によれば、板状体の上に形成された光触媒含有層に、光触媒機能を備えた光触媒性結晶が含有され、その光触媒性結晶に光が照射されることで、光触媒が活性化されて壁板の表面に高い親水性が発現されて自浄性が具備されるが、光触媒含有層に親水化剤が含有されていることで、発現された光触媒の親水性を維持できると共に、光触媒含有層の形成時に表面付近の光触媒性結晶の量を増やして高度な自浄性を備えさせることができる。また光触媒性結晶を直接塗料ビヒクル樹脂に配合しているので、板状体の上への光触媒含有層の形成は容易なものとなり得る。
【0008】
光触媒性結晶が表面付近に配向される原因は完全に明らかではないが、親水性である親水化剤は、光触媒含有層が流動状態の場合に水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂の水酸基と反発して光触媒含有層表面に浮上する。その親水化剤が浮上する際に、親水化剤と共に光触媒性結晶が光触媒含有層表面付近に浮上されることと、また流動状態において塗料マトリックス中で光触媒性結晶がブリード現象のように表面付近に浮上していることが考えられる。
【0009】
また前記光触媒性結晶は、表面の一部が前記光触媒機能に対して不活性な保護物質により被覆されたものであれば、光触媒性結晶が塗料ビヒクル樹脂に直接接触しなくなるか、または接触する面積を小さくでき、光触媒性結晶の光触媒機能による酸化作用によって塗料ビヒクル樹脂が分解されて光触媒含有層が劣化するのを防止することができ好ましい。
【0010】
また前記壁板は、開口部が設けられたものであれば、壁板に開口部が設けられると壁板表面を流下する雨水等は開口部付近に流れが集中し、そのため開口部から下方に雨筋が生じやすくなるが、光触媒含有層の高度な親水性により雨筋汚れの発生を防止でき、本発明を適用することによる利点が極めて大きいものとでき好ましい。
【0011】
また前記壁板の周囲に枠体が設けられて形成された壁体ユニットを備え、前記枠体上面及び/又は下面と前記壁板表面とが鈍角をなすように接せられていれば、壁体ユニットにより構造が堅牢な乾式塀の形成が容易となるが、壁板表面と枠体上面及び/又は下面とが鈍角をなすように接せられていることで、壁板表面を伝ってきた汚染物質を含む雨水が壁板表面と枠体との間に滞留せずに円滑に下方に流れ落とされ、枠体上面及び/又は下面に汚れが生じるのを防ぐことができ好ましい。
【0012】
また前記板状体は、合成樹脂を基体として該基体両面に金属板が貼り合わされて形成された金属樹脂積層板であれば、金属による強度及び遮音性の向上と、合成樹脂による軽量化を両立でき、また壁板の表面が平滑で美麗なものとなって、汚れが目立ちやすくなることから、本発明を適用する利点が極めて大きくでき好ましい。
【0013】
また前記板状体は、透明又は半透明の合成樹脂板であって、前記光触媒含有層が透光性となされていれば、汚染物質の付着による透光性の低下を防ぐことができ、長期に亘って透光性を保持して採光を図る等することができ、本発明を適用する利点が極めて大きくなり好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係わる自浄式乾式塀によれば、板状体の上に形成された光触媒含有層に、光触媒機能を備えた光触媒性結晶が含有され、その光触媒性結晶に光が照射されることで、光触媒が活性化されて壁板の表面に高い親水性が発現されて自浄性が具備されるが、光触媒含有層に親水化剤が含有されていることで、発現された光触媒の親水性を維持できると共に、光触媒含有層の形成時に表面付近の光触媒性結晶の量を増やして高度な自浄性を備えさせることができる。また光触媒性結晶を直接塗料ビヒクル樹脂に配合しているので、板状体の上への光触媒含有層の形成は容易なものとなり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係わる自浄式乾式塀の、第一の実施形態を示すもので、(a)は正面図、(b)は壁板の詳細を表す横断面図である。まず(a)において自浄式乾式塀Wは、壁板10の周囲に枠体20が形成されて壁体ユニット100が形成され、この壁体ユニット10が地表面から立設された支柱Sに取り付けられて形成されたものである。次に(b)において、壁板10は板状体1の両面の外面に、水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂を主成分とし、更に光触媒性結晶と親水化剤とを含有する塗膜層である光触媒含有層2が外面として形成されているものである。光触媒含有層2に含まれる光触媒性結晶に太陽光等の光が照射されると、光触媒性結晶は活性化され、光触媒含有層2の外面が水との接触角にして1〜20゜程度と高度に親水化される。この親水化が親水化剤によって保持されることで、長期に亘って親水性が維持されて自浄性を保持することができるようになされている。
【0017】
壁板10を形成する板状体1は金属樹脂積層体であり、ポリエチレン等の合成樹脂を基体11とし、基体11の両面に金属板12が貼着されて形成されている。この金属板12の表面に直接光触媒含有層2が形成されている。かかる光触媒含有層2の形成においては、塗料ビヒクル樹脂が溶剤に分散された形成用塗料に、光触媒性結晶及び親水化剤を配合し、金属板12の表面に塗布して焼き付け等によって硬化させる。この塗布及び焼き付けは、金属板12が基体11に貼着された状態で行ってもよいが、光触媒含有層2を塗布後に高温で焼き付けることが必要であれば、金属板12に光触媒含有層2を形成した後、金属板12を基体11に貼着すれば、基体11が焼き付け時の熱により溶融や軟化して不具合が生じるのを防止でき好ましい。
【0018】
光触媒含有層2に含有される光触媒性結晶としては、光触媒機能を発現して親水化が図られるものであれば特に限定されるものではなくFe、CuO、In、WO、FeTiO、PbO、V、FeTiO、Bi、Nb、SrTiO、ZnO、BaTiO、CaTiO、KTaO、SnO、ZrOなどの金属酸化物半導体材料を用いてよいが、比較的低廉で扱いが簡便である酸化チタンが好適に用いられる。また酸化チタンの中でも活性の高いアナターゼ型の二酸化チタンが好適である。光触媒性結晶は、粒径が大きすぎると流動状態の塗膜層1中で移動しにくくなることから、0.1μm〜5μm程度の粒径のものを用いるのが好ましい。
【0019】
また光触媒性結晶は、表面の一部が前記光触媒機能に対して不活性な保護物質により被覆されたものを用いるのが好ましい。表面の一部が前記光触媒機能に対して不活性な保護物質により光触媒性結晶が被覆された光触媒微粒子を含有させることで、光触媒微粒子を直接塗料ビヒクル樹脂に配合することができ、水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂の水酸基と反発する親水化剤による光触媒性結晶の、光触媒含有層2の形成時における表面付近への浮上による配向が他に種々の手段を講じることなく円滑に行わせることができる。また有色塗料の表面にクリヤーの光触媒含有層を別途設けるといった繁雑な工程が必要でなくなり、光触媒による親水化を得るのが容易なものとなり得る。
【0020】
光触媒性結晶の表面の一部を被覆する保護物質としては、モンモリロナイト、タルク、シリカゲル、シリカゾル、ケイ酸塩、炭化ケイ素、アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、セラミックス、アパタイト、チタンアパタイト、マグネシア、コーディライト、セピオライト、水酸化カルシウム等又はこれらの複合体が挙げられるが、これらの内、光触媒性結晶への付着を容易に行うことができ、且つ水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂に含有される水酸基と反発させて光触媒微粒子の塗膜層1表面への浮上を促進させることができる多孔質シリカを好適に用いることができる。これらの物質を光触媒性結晶とミキサーにより混練したり、水等の溶媒に分散させてその溶液中に光触媒性結晶を適宜の時間浸漬したりして、光触媒性結晶の表面に保護物質を点在する結晶状に析出させたり、マスクメロンのネット構造状に析出させたりすること等で形成することができる。
【0021】
また光触媒性結晶としては、チタン原子又は酸素原子の一部を窒素原子及び/又は硫黄原子に置換した酸化チタンを用いれば、紫外光のみならず、可視光をも活用して高い光触媒機能を発現させることができる。更にはこれら窒素ドープ及び/又は硫黄ドープ型の酸化チタン微粒子に、鉄、銅等の金属イオンを導入して更に光触媒機能を高めたものも好適に用いることができる。また金属樹脂積層板が屋内で用いられる場合には、かかる可視光に対して高い光触媒機能を発現する光触媒性結晶を用いることで、紫外光の照射されない環境下においても光触媒機能を発現させて防汚性能を発揮することが可能となり得る。
【0022】
親水化剤は、親水性を発揮し、且つ水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂の水酸基と反発し、光触媒含有層表面に浮上可能なものであれば特に限定されるものではなく、アルコキシル基がメトキシ基、エトキシ基等の炭素数が4以下となされたテトラアルコキシシランや、その部分加水分解によって得られるオリゴマーなどを好適に用いることができる。
【0023】
水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂は、光触媒微粒子や親水化剤を含有して表面に親水性を備えた塗膜層の主成分となるものであって、例えば水酸基含有の合成樹脂材料をベースとするもので、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル変性アクリル系樹脂等を用いることができる。この塗料ビヒクル樹脂に、光触媒性結晶、親水化剤の他に、通常の塗料に配合される無機系の顔料、紫外線吸収剤等を適宜配合して溶剤に分散して形成した塗料を塗布することで、光触媒含有層を容易に形成することができる。
【0024】
また光触媒微粒子の保護物質の表面を、アルコキシル基により置換しておいてもよい。アルコキシル基により置換することで、水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂に含有される水酸基と光触媒微粒子との間に高い反発力が生じて、光触媒微粒子の塗膜層1表面付近への浮上を促進させることができる。アルコキシル基はメトキシ基、エトキシ基等、炭素数が4以下のものが保護物質への結合効率を高めることができ好ましい。保護物質の表面をアルコキシル基に置換するには、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類を保護物質の表面に結合されたヒドロキシル基と脱水縮合させる等して行うことができる。
【0025】
また、光触媒微粒子の表面をアルコキシシリル基により置換してもよい。光触媒微粒子の表面をアルコキシシリル基により置換することで、水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂に含有される水酸基と光触媒微粒子の保護物質や光触媒性結晶に結合されたアルコキシシリル基のアルコキシル基が加水分解されて生じる水酸基との間に高い反発力が生じて、光触媒微粒子の塗膜層1表面付近への浮上が促進されると共に、その水酸基により親水化剤と同様の親水性効果を得ることができる。光触媒性結晶の表面をアルコキシシリル基により置換するには、テトラアルコキシシランを加水分解してアルコキシル基の一部をヒドロキシル基に変換した状態で、光触媒性結晶の表面に結合しているヒドロキシル基と脱水縮合させる等して行うことができる。
【0026】
図2は、本発明に係わる自浄式乾式塀の、第一の実施形態における変形の一例を示す縦断面図である。二体の壁板10A及び10Bが枠体20に間隔をおいて支持されると共に、壁板10Aと壁板10Bとの間には吸音材Pが挿入されているものである。かかる壁板10A及び10Bを形成する板状体1は、両面に光触媒含有層2を設けておいてもよいが、自浄性が必要となるのは外側に位置する面のみであり、吸音材Pが配置された内側の面に光触媒含有層を設けずに形成の工程及び材料の低減を図ってもよい。吸音材Pは適宜のものを用いてもよいが、グラスウールやロックウール等の吸音材を好適に用いることができる。
【0027】
図3は、本発明に係わる自浄式乾式塀の、第二の実施形態を示すもので、(a)は全体を示す正面図、(b)は壁板に設けられた開口部周辺の詳細を示す正面図である。自浄式乾式塀Wの、支柱Sに取り付けられた壁体ユニット100を形成する壁板10は、丸パンチング孔である開口部3が全面に設けられたものであり、開口部3により壁板10に通風性と意匠性が備えられているものである。壁板10の表面に雨水等の水が流下した場合、(b)に示す如く開口部3の周辺を流下する水の流れNは開口部3の周囲を回って開口部3の下端31に集中し、更に下端31から垂直に流下することから、雨水の流れが下端31直下の面上に集中することでその部分に雨筋が生じやすくなる。壁板10の外面に光触媒含有層2が形成され、その外面が含有された光触媒性結晶の活性化により1〜20゜と高度に親水化されることで、壁板10の外面に水が拡散されて雨筋が生じにくくなり、且つ汚染物質が付着しても雨水等がかかれば容易に洗い流されることから、壁板10外面は汚れの付着が防止されて清浄な状態が保持されるようになされる。
【0028】
図4は、本発明に係わる自浄式乾式塀の、第二の実施形態における変形の一例を示す説明図である。本図は壁板10の横方向の途中を縦に切断し端面を表したもので、本例における壁板10は金属薄板が折り曲げられ、水平面F1と上向きの傾斜面F2とが形成されると共に、傾斜面F2の上端と水平面F1の下端とが垂直面F3により接続されることで、前面側αに向かって鋸歯状の突起が断続的に形成された形状となされたものである。この壁板10の水平面F1に、間隔をおいて長孔形状の開口部3が設けられることで、開口部3によって前面側αから背面側βが見えない状態での通風が図られると共に、一体の金属薄板における開口部3の穴明け及び折り曲げのみによって簡便に形成が可能となされたものである。
【0029】
かかる壁板10に雨水等の水が当たった場合、とりわけ壁板10の背面側βに当たった水は壁板10表面を伝って下方に流れ、開口部3から前面側αに流出することから、水と共に背面側βの汚染物質をも前面側αに導出させる状態となる。かかる開口部3から流出した水は、垂直面F3の表面を伝うか、又は直接傾斜面F2の上面に落ちることで、前面側αの汚染物質を含む水と相俟って雨筋汚れが極めて発生しやすくなるものである。かかる壁板10を用いた乾式塀について、本発明に係わる自浄式乾式塀を適用することで、その外面が含有された光触媒性結晶の活性化により1〜20゜と高度に親水化されることで、壁板10の外面に水が拡散されて雨筋が生じにくくなり、且つ汚染物質が付着しても雨水等がかかれば容易に洗い流されることから、壁板10外面は汚れの付着が防止されて清浄な状態が保持されるようになされる。
【0030】
図5は、本発明に係わる自浄式乾式塀の、第三の実施形態を示す縦断面図である。本実施形態における自浄式乾式塀Wは、壁板10の周囲に枠体20が設けられた壁体ユニット100を備え、壁体ユニット100が支柱(図示せず)に取り付けられて形成されている点は第一の実施形態と変わりないが、枠体20の断面形状がホームベース形状となされ、その上面41と下面42の先端が壁板10の表面に当接されるようになされることで、壁板10表面と上面41、及び壁板10表面と下面42とが接点101において鈍角θをなして接せられている。かかる構成により、壁板10表面を下方に伝ってきた汚染物質を含む雨水等の水が、壁板10表面と枠体20との間の接点101付近に滞留せずに円滑に下方に流れ落とされるようになり、枠体20の上面41及び下面42に汚れが生じるのを防ぐことができる。また上面41及び下面42を含めた枠体20外面にも光触媒含有層等の低汚染性表面処理を施しておいてもよい。壁板10が清浄であっても、枠体20の外面が汚れていると、却ってコントラストにより汚れが目立つようになることから枠体20の外面について汚れ防止を図ることの意義は大きいものとなされる。鈍角θは、90゜を超える角度であれば効果は得られるが、より好ましくは120〜150゜程度であり、また上面41及び下面42は、接点101が鈍角θであれば、途中が屈曲した面や、弯曲した面としておいてもよい。
【0031】
図6は、図5に示した壁体ユニット100を積み重ねた状態を示す枠体付近の縦断面図である。上側の壁体ユニット100Aの下枠体20Aと、下側の壁体ユニット100Bの上枠体20Bとは、幅が同じとなされ、下枠体20Aと上枠体20Bとの側面の面位置が前面側α及び背面側β共に合致されていることで、壁体ユニット100Aから壁体ユニット100Bへ汚染物質を含んだ水の流れNが滞留することなく円滑に流下されて汚れの発生を防止することができる。こちらの下枠体20A及び上枠体20Bの外面にも光触媒含有層等の低汚染性表面処理を施しておけば、更に汚れの発生を防止することができ好ましい。
【0032】
図7は、本発明に係わる自浄式乾式塀の、第四の実施形態を示す縦断面図である。壁板10を形成する板状体1は、ポリカーボネート樹脂製の透明板であり、この透明な板状体1の両面に光触媒含有層2が形成されている。ここで光触媒含有層2を形成する塗料ビヒクル樹脂に透光性のものが用いられていることで、壁板10は光Lを透過するものとなされ、自浄式乾式塀が設けられていても壁体10を透過する光Lにより採光等を図ることができる。採光を目的とする場合において、板状体1は透明なものに限定されず、半透明なものを用いることができる。また透明な板状体1に、僅かに濁りが生じている光触媒含有層2を形成して半透明な状態とし、採光と目隠しとを両立させるようにしてもよい。透光性の塗料ビヒクル樹脂としては、上述の塗料ビヒクル樹脂の内、透明又は半透明の透光性のものを適宜用いるようにしてよい。
【0033】
本発明に係わる自浄式乾式塀の、壁板に形成された光触媒含有層の性能について、以下に実施例を示して説明する。
【0034】
(実施例1)
塗料として、ルミフロン系のフッ素樹脂を水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂としたフッ素樹脂塗料「フロンコート」(川上塗料株式会社社製)を用い、塗料ビヒクル樹脂61重量部に対して、アナターゼ型二酸化チタン光触媒性結晶を多孔質シリカにより表面の一部(14%)を被覆した「マスクメロン型光触媒・超微粒」(太平化学産業株式会社社製。平均粒径3μm)を3重量部、基本構造をSin−1(OEt)2n+2(但しn≒10)とする親水化剤「エチルシリケート48」(コルコート株式会社社製)を3重量部配合し、十分に攪拌して塗布用組成物を得た。この塗布用組成物を、表面がクロメート処理された厚み0.2mmのアルミニウム箔にローラーコート法により塗布して表面に20μmの厚みの光触媒含有層を形成した。光触媒含有層が形成されたアルミニウム箔を、一液ウレタン系接着剤を用いてポリエチレン樹脂製のシートに貼り付け、実施例1の本発明に係わる自浄式乾式塀に用いられる壁板を得た。
【0035】
(実施例2)
「マスクメロン型光触媒・超微粒」10gを予めモレキュラーシーブスにより水分を除去したエチルアルコール240ml中に分散させ、還流装置を用いて80℃で加熱しながら18時間攪拌して、多孔質シリカの表面をエトキシ基に置換した(IRスペクトルの測定において、2982、2937、2904cm−1の波長での吸収が見られ、エトキシ基への置換が確認されている)ものを光触媒性結晶として用いた以外は実施例1と同じにして、実施例2の本発明に係わる自浄式乾式塀に用いられる壁板を得た。
【0036】
(比較例1)
塗料として、ルミフロン系のフッ素樹脂を水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂としたフッ素樹脂塗料「フロンコート」(川上塗料株式会社社製)を用い、塗料ビヒクル樹脂61重量部に対して、アナターゼ型二酸化チタンであるST−01(石原産業株式会社社製)を3重量部配合し、十分に攪拌して塗布用組成物を得た。この塗布用組成物を、表面がクロメート処理された厚み0.2mmのアルミニウム箔にローラーコート法により塗布して表面に20μmの厚みの光触媒含有層を形成した。光触媒含有層が形成されたアルミニウム箔を、一液ウレタン系接着剤を用いてポリエチレン樹脂製のシートに貼り付け、比較例1の壁板を得た。
【0037】
(比較例2)
フッ素樹脂塗料「フロンコート」のみを用いてアルミニウム箔上に光触媒を含有しない塗膜層を形成した以外は実施例1と同じにして、比較例2の壁板を得た。
【0038】
実施例1及び2、比較例1及び2の壁板について、光触媒含有層表面の親水性の評価を行った。親水性の評価は、サンシャインウエザーメータを用いて100時間の試験を行った後と、暗所にて50時間放置した後の水に対する接触角の測定により行った。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
一般に、水との接触角が10゜以下であれば超親水性の表面として高度な汚れ防止の性能が発現すると言われているが、実施例1及び2はサンシャインウエザーメータ100時間後に2゜前後と極めて高度な親水化が発現されており、また暗所における放置後でも10゜以下を維持していることから、高い汚れ防止の性能が発現されることが示されている。また実施例2は、多孔質シリカの表面がアルコキシル基であるエトキシ基により置換されていることで、暗所での放置後には実施例1や比較例1より低い水に対する接触角が発現されており、より高い汚れ防止の性能が発揮されることが示されている。また親水化剤が含有されていない比較例1は、サンシャインウエザーメータ試験後の直後でこそ水との接触角が約2゜の親水性を発現しているが、暗所放置後には14.9゜と10゜を上回っており、実施例1及び2程の親水性の持続性能を備えていないことが顕わされている。
【0041】
更に実施例1及び2、比較例1及び2の壁板について、屋外で用いた場合の紫外線に対する耐久性の評価を行っている。紫外線に対する耐久性の評価は、サンシャインウエザーメータによる試験を行い、試験時間で250時間おきに1000時間までの色差と光沢保持率を測定している。色差は、JIS−K8730に基づくLab系の測定に基づいてΔEを算出することで行った。また光沢保持率は、JIS−K8741に基づく60゜鏡面光沢度を測定し、その初期値との割合(%)を算出したものである。その結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
多孔質シリカによって被覆されている実施例1及び2は、サインシャインウエザーメータにより1000時間の試験を行った後も色差及び光沢保持率は誤差程度の変化しか見られず、保護物質により塗料ビヒクル樹脂と光触媒性結晶との直接の接触が防止されていることで高い紫外線に対する耐久性が備えられていることが示されている。しかし比較例1については、色差、光沢保持率共に実施例1及び2と較べて明らかな低下が見られており、紫外線の照射によって光触媒性結晶が活性化させることで塗料ビヒクル樹脂の劣化が起こり、紫外線に対する耐久性が不十分であることが明りょうに示されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係わる自浄式乾式塀の、第一の実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係わる自浄式乾式塀の、第一の実施形態における変形の一例を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係わる自浄式乾式塀の、第二の実施形態を示す正面図である。
【図4】本発明に係わる自浄式乾式塀の、第二の実施形態における変形の一例を示す説明図である。
【図5】本発明に係わる自浄式乾式塀の、第三の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】図5に示した壁体ユニットを積み重ねた状態を示す枠体付近の縦断面図である。
【図7】本発明に係わる自浄式乾式塀の、第四の実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 板状体
2 光触媒含有層
3 開口部
41 (枠体の)上面
42 (枠体の)下面
10 壁板
20 枠体
100 壁体ユニット
W 自浄式乾式塀


【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体の上に光触媒機能を備えた光触媒含有層が形成されて該光触媒含有層を外面とした壁板を備え、該光触媒含有層は水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂を主成分とし、光触媒性結晶と親水化剤とが含有されていることを特徴とする自浄式乾式塀。
【請求項2】
前記光触媒性結晶は、表面の一部が前記光触媒機能に対して不活性な保護物質により被覆されたものであることを特徴とする請求項1に記載の自浄式乾式塀。
【請求項3】
前記壁板は、開口部が設けられたものであることを特徴とする請求項1又は2自浄式乾式塀。
【請求項4】
前記壁板の周囲に枠体が設けられて形成された壁体ユニットを備え、前記枠体上面及び/又は下面と前記壁板表面とが鈍角をなすように接せられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自浄式乾式塀。
【請求項5】
前記板状体は、合成樹脂を基体として該基体両面に金属板が貼り合わされて形成された金属樹脂積層板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自浄式乾式塀。
【請求項6】
前記板状体は、透明又は半透明の合成樹脂板であって、前記光触媒含有層が透光性となされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自浄式乾式塀。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−321016(P2007−321016A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150932(P2006−150932)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】