説明

自然換気窓の施錠装置

【課題】 傾斜開放を常態とする障子を有する高所設置の自然換気窓を手の届く位置に設置したオペレーターの操作によって施開錠できるようにする。
【解決手段】 障子2の縦框23に室内側に向けて突設した突出体40を縦枠13に設置したベース部材42の昇降ピン44の上昇によって押上げ回動して障子2を引寄せ閉鎖する障子引寄せ手段と,窓枠1の下枠12に長手方向スライド自在に設置したスライドバー51のスライドによって該スライドバー51と障子2の下框23に対をなすように設置したフック53と係止ピン54を相互に係止して障子2のロックを行なう障子ロック手段とを,自然換気窓Aに配置し,オペレーター55の操作によってこれらを連動して作動して施開錠をなし得るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,窓枠に傾斜開放を状態とする障子を開閉自在に装着することによって窓において室内外の換気をなし得るようにした自然換気窓に使用するに好適な自然換気窓の施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種自然換気窓として,例えば窓枠の左右縦枠と障子の左右縦框間に,これらをそれぞれ四節連鎖機構によって相互に連結するように,その上方において短寸のアームを,下方に長寸アームを配置して障子を窓枠に支持し,障子の重心位置,四節連鎖機構のアームの長さや軸支位置等を勘案することによって障子を窓枠からせり出し状に開閉するとともに風圧状態によって障子の開閉動作を制御するようにしたものが知られており,この場合,その施錠装置は,例えば下枠にレバーハンドルを設置し,その操作によって下枠と縦框間の水平アームを介して障子を引寄せるとともにそのロックを行なうようにした,例えばすべり出し窓用のもの等が使用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−247371号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合自然換気窓として風圧状態に応じて障子の開閉動作を制御することが可能となり,その自然換気を行なう窓とすることができるが,自然換気窓を,例えば天井近くの上方位置やロビー上方位置のように高所に設置した場合,その施錠装置は該高所設置の窓枠の下枠高さに存在することによって,例えば施開錠の都度脚立や梯子を用い高所での施開錠操作を行なう必要が生じて,施開錠が著しく煩雑となるという問題点が残されている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,手の届く位置に設置したオペレーター又はスイッチの操作による確実な施開錠を可能とし,高所に設置した場合を含めて施開錠操作を可及的容易になし得るようにするとともにその構造を可及的に簡易にすることによって長期に亘って安定した施開錠作動を行なうようにした自然換気窓の施錠装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に添って本発明は,窓枠の縦枠と障子の縦框間に障子引寄せ手段を,窓枠の下枠と障子の下框間に障子ロック装置をそれぞれ配置し,これら障子引寄手段と障子ロック装置を連動することによってオペレーター又はスイッチの操作によって傾斜開放を常態とする障子の閉鎖及び開放と障子ロックとその解除を同時に可能として自然換気窓の施開錠をなし得るようにするとともに障子引寄せ手段を,障子の縦框から室内側に向けて突設した突出体を,窓枠の縦枠からその下位に向けて突設した昇降ピンを上昇することによって押上げ回動(跳ね上げ回動といってもよい)して障子を引寄せ閉鎖し,回動解除によって障子をその常態の傾斜開放状態に戻すように,突出体と昇降ピンとを用いた簡易な構造のものとして構成し,また障子ロック手段を,窓枠の下枠に設置したスライドバーを横方向にスライドすることによって該スライドバーと障子の下框に対をなすように設置したフックと係止ピンを相互に係脱自在としてそのロックと解除を行うように,スライドバーと対をなすフック及び係止ピンとを用いた簡易な構造のものとして構成したものであって,即ち請求項1に記載の発明を,窓枠に傾斜開放を常態とする障子を開閉自在に装着し風圧状態によって障子の開閉動作を制御自在とした自然換気窓に設置使用する施錠装置であって,障子の縦框に室内側に向けて突設した突出体及び窓枠の縦枠に上記突出体下位に向けて昇降自在に突設した昇降ピンを具備し,該昇降ピンの昇降によりその上昇時に突出体を押上げ回動し降下時に該回動を解除して障子の引寄せ閉鎖と傾斜開放を行なうように縦枠と縦框間に配置した障子引寄せ手段と,窓枠の下枠に長手方向スライド自在に設置したスライドバー及び該スライドバー及び下框に対をなすように設置した相互に係脱自在のフックと係止ピンを具備し上記スライドバーのスライドによってフックと係止ピンを係止して障子をロック自在とするように下枠と下框間に配置した障子ロック手段と,上記障子引寄せ機構における昇降ピンの昇降と障子ロック機構におけるスライドバーのスライドとをオペレーター操作又はスイッチ操作によって連動して作動するように配置した連動手段とを備えてなることを特徴とする自然換気窓の施錠装置としたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,上記障子引寄せ手段による障子の引寄せを,障子を窓枠内に確実に引き込んで気密性を高度に確保する納まりのよいものとするように,これを,上記障子引寄せ手段の突出体を,その縦框側の端部に昇降ピンを受入係止自在とする受孔を備えたラッチによるものとしてなることを特徴とする請求項1に記載の自然換気窓の施錠装置。
【0008】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,例えば昇降ピンの急激な上昇や降下の不良等によって招く障子開閉のトラブルを解消し,昇降ピンがその昇降を確実に行なうようにして障子引寄せ手段の安定且つ確実な作動を簡易に確保し得るものとするように,これを,上記昇降ピンをベース部材に設置し,該ベース部材を滑車装置によって縦枠に昇降自在に設置することによって昇降ピンの昇降を可能とするとともに上記縦枠に対するベース部材の設置を常時下向きにバネ付勢して行なうことによって上記昇降ピンをバネ付勢力に抗して上昇しバネ付勢力によって降下自在としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の自然換気窓の施錠装置としたものである。
【0009】
請求項4及び5に記載の発明は,同じく上記に加えて,それぞれ障子引寄せ手段と障子ロック手段の連動を可及的簡易且つ確実になし得るものとするように,請求項4に記載の発明を,上記障子引寄せ手段における昇降ピン昇降と障子ロック手段におけるスライドバースライドの連動を,オペレーター操作又はスイッチ操作によって回転する巻取りプーリーとスライドバー又はその付属部材間に引張スライド用ワイヤーを介設し且つ該スライドバー又はその付属部材と昇降ピン間に引張昇降用ワイヤーを介設することによって行なってなることを特徴とする請求項1又は2に記載の自然換気窓の施錠装置とし,請求項請求項5に記載の発明を,上記引張昇降用ワイヤーを,上記昇降ピンに代えて,スライドバー又はその付属部材と昇降ピンを設置したベース部材間に介設してなることを特徴とする請求項4に記載の自然換気窓の施錠装置としたものである。
【0010】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【0011】
なお本発明において窓枠における縦枠とは,窓枠の幅方向中間に設置することによって障子装着開口を画する方立を含む意味に用いる(なお発明を実施するための最良の形態欄で方立と表現することがある)。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,窓枠の縦枠と障子の縦框間に障子引寄せ手段を,窓枠の下枠と障子の下框間に障子ロック装置を配置して,これら障子引寄手段と障子ロック装置を連動することによって,手の届く位置に設置したオペレーター又はスイッチの操作による確実な施開錠を可能とし,高所に設置した場合を含めて施開錠操作を可及的容易になし得るようにするとともにその障子引寄せ手段及び障子ロック手段の構造を可及的に簡易にすることによって長期に亘って安定した施開錠作動を行なうようにした自然換気窓の施錠装置を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,上記障子引寄せ手段による障子の引寄せを,障子を窓枠内に確実に引き込んで気密性を高度に確保する納まりのよいものとすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,例えば昇降ピンの急激な上昇や降下の不良等によって招く障子開閉のトラブルを解消し,昇降ピンがその昇降を確実に行なうようにして障子引寄せ手段の安定且つ確実な作動を簡易に確保し得るものとすることができる。
【0015】
請求項4及び5に記載の発明は,同じく上記に加えて,それぞれ障子引寄せ手段と障子ロック手段の連動を可及的簡易且つ確実になし得るものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,Aは,例えば高所設置用とした自然換気窓,1はその窓枠,2は本例にあって方立を仕切縦枠として左右に2面に区画した空間にそれぞれ配置して2枚の連窓状とした障子であり,自然換気窓Aは,傾斜開放を常態とするように窓枠1に障子2を開閉自在に装着し風圧状態によって障子2の開閉動作を制御自在とすることによって,無風や,例えば風速2〜3m/sec程度の微風時に障子2を傾斜開放し,それ以上の数m/sec程度,例えば風速4〜5m/sec程度以上の強風時に障子2が風圧を受けることによって該障子2を窓枠1内に閉鎖し,また無風乃至微風に戻ると障子2を再び傾斜開放するようにしてある。
【0017】
障子2は,窓枠1の上枠11と上框21間にヒンジ24を介設してこれを上枠11に対して回動自在に吊り支持してその装着を行ってあり,本例における該障子2のヒンジ24による回動自在の吊り支持は,これを,上框21上面の室外側先端乃至その近傍,本例にあっては室外側先端にヒンジ24の軸支位置を配置して行なったものとし,これによって上記常法による障子2が上枠11への吊り支持の状態で室外側に,例えば20度内外の角度をなして傾斜開放を常態とするようにし,また閉鎖した際に窓枠1内に密に嵌合するように納まって常法に従った気密手段によってその気密性を良好に確保し得るようにしてある。このときヒンジ24はヒンジ金物を用い又は上枠11と上框21に一体成形した軸と軸受を対とするアルミ前面ヒンジを用いることができる。
【0018】
上記上框21の室外側先端を吊り支持して傾斜開放を常態とした障子2は,その受ける風圧によって開閉を制御する制御機構を備えており,該制御機構は,これを,窓枠1の縦枠13にその案内によって上下方向スライド昇降自在とした風圧調整用のバランサー25を配置するとともに該バランサー25と障子2の縦框23に回動自在に軸支してこれらの間に連結アーム33を配置したものとし,これによって上記風圧状態による障子2の開閉動作を制御したものとしてある。このとき本例にあっては,制御機構を左右に対とするように,上記バランサー25を窓枠1の左右縦枠13に一対配置し且つ連結アーム33を該一対のバランサー25と障子2の左右縦框23間に配置したものとし,これによってバランサー25による障子2の開閉制御を安定且つ確実になし得るようにしてある。
【0019】
即ちバランサー25は窓枠1の縦枠13と障子2の縦框23の間に配置したスペースに,縦枠13によって支持されるように配置してあり,このとき縦枠13にガイドを設置し,該縦枠13のガイドによってバランサー25を案内してそのスライド昇降を自在としてあり,このとき縦枠13のガイドによるバランサー25の案内は,その一方に配置した倒T字状のガイドピン乃至ガイドローラー26と,他方に配置した該ガイドピン乃至ガイドローラー26に上下方向摺動自在に係合したガイド溝27とによるものとし又は縦枠13に配置したガイド面32と,バランサー25に配置した該ガイド面32に上下方向転動自在のガイドローラー31とによるものとしてあり,本例にあっては,その双方を用いることによって縦枠13に対して複数ヶ所,特に3ヶ所でバランサー25を係合支持してそのスライド自在の安定した昇降案内を行なうようにしてある。
【0020】
本例の昇降案内は,先ず上記倒T字状とすることによって先端に抜止めを有する単一のガイドピン26を左右縦枠13対向面の長手方向中間の同一高さ位置に配置し,左右のバランサー25の長手方向中間位置に上下方向にスリットをなすように透設したガイド溝27を配置し,障子2の傾斜開放の常態でガイドピン26がガイド溝27の上端に,閉鎖状態でガイドピン26がガイド溝27の下端乃至その近傍に位置するように係合することによって,上記3ヶ所のうちの第1の昇降案内を行なうようにしてあり,またバランサー25の長手方向両端の上下位置背面側に上下を対とし,前後方向に向けて転動自在とした一対のガイドローラー31を配置し,縦枠13の面内方向に突出したフィンを縦枠13側のガイド面32とし,上記一対のガイドローラー31を該縦枠13のガイド面32に転動自在に対接するように係合することによって,上記3ヶ所のうち上下における第2の昇降案内を行なうようにしてある。
【0021】
本例のバランサー25は,その重量を調整自在としてあり,これによって,例えば障子2の広狭に対応し,また上記風圧による開閉動作の開始や閉鎖速度等に対応してそのバランサー25として適宜に重量調整をなし得るようにしてあり,本例の重量調整は,該バランサー25を多数枚の鋼製プレートによって構成し,その枚数を増減することによってこれを行なうようにし,また,例えば短尺多数の鋼製プレートを積層状とした重量調整用の調整バランサー28をバランサー25,例えばその上端に追加配置し,該鋼製プレートの枚数を増減することによってその微調整を行なうようにし,更に本例にあっては上記バランサー25の下端とその縦枠13下方位置に配置したブラケット30間に引張バネ29を介設するとともにバランサー25又はブラケット30への引張バネ29のフック固定位置を上下方向調整自在とし,上記バランサー25及び調整バランサー28による重量調整とともに,バランサー25下端と縦枠13間にその引張り強さを調整してその微調整をなし得るようにしてある。
【0022】
連結アーム33は,左右バランサー25の,例えば長手方向中間位置のガイド溝27近傍の下方位置にその一端を回動自在に軸支し,左右縦框23の下端に設置したブラケット34に他端を回動自在に軸支することによって,縦枠13と縦框23間に該バランサー25と障子2の縦框23とをそれぞれ連結するように配置した厚肉平板にして長寸の鋼製プレートによるものとしてあり,該連結アーム33は障子2が上記常態の傾斜開放のときにその縦框23の軸支位置と,該障子2が傾斜開放することによってその負荷がなく降下状態にあるバランサー25の軸支位置との間を連結する長さのものとしてある。
【0023】
本例の自然換気窓Aはこのように構成してあり,該構成によって2枚の各障子2が,その上框21の室外側先端を上枠11にヒンジ24連結したことによって傾斜開放を常態となって,常時室内外の空気が流通することによって換気を行なう一方,障子2が風圧を受けることによって上記上枠11にヒンジ24連結した障子2が閉鎖方向に回動すると,その閉鎖方向の外力によって連結アーム33が,該障子2側の軸支した連結位置で回動しながら他端を軸支した連結位置でバランサー25を縦枠13のガイドの案内によってスライド上昇させ,連結アーム33を介したバランサー25の重量が風圧による障子2の閉鎖方向に向けた外力とバランスすることによって,その風力に応じた部分閉鎖乃至完全閉鎖を行なうようにその制御がなされるようにすることができ,また逆に障子2に対する風圧がなくなると障子2はその自重によって傾斜開放して再度換気を行なうことができる。このとき上記バランサー25の重量を調整し,またその調整バランサー28乃至引張バネ29の引張強さの微調整を行なうことによって,障子2が受ける風圧とその開閉の関係を調整し,例えば微風時にも障子2が部分閉鎖したり,強風時にも障子2が僅かに開いた状態としたりすることも可能となる。またヒンジ24連結して上枠11に対して直接に吊り支持した障子2とバランサー25とを連結アーム33で連結し,該バランサー25を縦枠13の案内で上下方向にスライド昇降自在とする構造によるものとしてあるから,その構造が可及的に簡易であり,またヒンジ24による障子2開閉及び縦枠13と障子2と片側において単一箇所の軸支による連結アーム33の回動を行い,その縦枠13と障子2の軸支位置が少なく,これが開閉障害となる可能性を可及的に解消して,開閉の安定性と耐久性を確保するとともにし,風圧に対してスムーズな開閉をなし得るようにし,更に障子2の吊り支持を上枠11によって行うことによって障子2荷重を上枠11が支えることによって障子2の幅の広狭を問わずに設置することができる。
【0024】
このように構成した本例の自然換気窓はその施開錠のために施錠装置を備えてあり,該施錠装置は,窓枠1の縦枠13と障子2の縦框23間に配置した障子引寄せ手段と,窓枠1の下枠12と障子2の下框23間に配置した障子ロック手段とを備えたものしてあり,障子引寄せ手段は,障子2の縦框23に室内側に向けて突設した突出体40及び窓枠1の縦枠13に上記突出体40下位に向けて昇降自在に突設した昇降ピン44を具備し,該昇降ピン44の昇降によりその上昇時に突出体40を押上げ回動し降下時に該回動を解除して障子2の引寄せ閉鎖と傾斜開放を行なうようにしたものとしてあり,障子ロック手段は,窓枠1の下枠12に長手方向スライド自在に設置したスライドバー51及び該スライドバー51及び下框23に対をなすように設置した相互に係脱自在のフック53と係止ピン54を具備し上記スライドバー51のスライドによってフック53と係止ピン54を係止して障子2をロック自在とするようにしたものとしてあり,このとき上記障子引寄せ手段における昇降ピン44の昇降と障子ロック手段におけるスライドバー51のスライドとをオペレーター55操作によって連動して作動自在としてある。
【0025】
障子引寄せ手段は,障子2の片側に障子2毎に設置してあり,本例における突出体40は,これを,その縦框23側の端部に昇降ピン44を受入係止自在とする受孔41を備えたラッチによるものとしてあり,該ラッチを上記昇降ピン44によって押上げ回動し,該ラッチをその縦框23に設置した障子2の側部において窓枠1側に引寄せて該障子2の閉鎖を行なうようにしてあり,このとき障子2の閉鎖位置で昇降ピン44をラッチの受孔41に受入係止することによって昇降ピン44とラッチの位置関係を障子2の閉鎖状態を維持するようにしてある。
【0026】
本例における上記昇降ピン44は,これをベース部材42に設置し,該ベース部材42を滑車装置45によって縦枠13に昇降自在に設置することによって昇降ピン44の昇降を可能とするとともに上記縦枠13に対するベース部材42の設置を常時下向きにバネ付勢して行なうことによって上記昇降ピン44をバネ付勢力に抗して上昇しバネ付勢力によって降下自在としたものとしてある。
【0027】
即ち本例にあってベース部材42は,上記2枚の障子2を装着した窓枠1の2面の開口の仕切用の方立,即ち仕切用の縦枠13に設置し,その左右両側に昇降ピン44を設置することによって傾斜開放を常態とする2枚の障子2を同時に開閉し得るようにしてあり,このときベース部材42は,これを厚肉鋼製のプレート状にしてその両側に縦枠13に沿って室外側に向けて折曲し該縦枠13を抱持するように配置した折曲片43を備え,該折曲片43にそれぞれ障子2側に向けて左右で同一位置にして同一突出長さとするようにそれぞれ昇降ピン44を起立固定したものとし,該ベース部材42を昇降することによって上記昇降ピン44の昇降を自在としてあり,また昇降ピン44,本例にあっては左右一対の昇降ピン44は先端外周を張出し状とすることによって断面倒T字状とし,またその突出軸にはこれに回転自在に被嵌した空転用のローラーを配置し,上記ラッチの押上げ回動時に昇降ピン44が該ローラーを介してラッチに係合して押上げ回動に伴う摩擦抵抗を可及的に減少するようにしてある。
【0028】
本例のベース部材42は上記滑車装置45によって縦枠13に常時下向きにバネ付勢してその設置を行ってあり,本例にあって該縦枠13への設置は,ベース部材42に動滑車46を,縦枠13に定滑車47をそれぞれ固定し,縦枠13に長手方向一端を固定したワイヤー,本例にあっては後述の引張昇降用のワイヤー58を動滑車46と定滑車47によって方向転換してワイヤー支持することによる2つ単滑車の滑車装置45を用いて,該ベース部材42を上記方立の仕切用縦枠13の室内面に吊り支持するとともに該縦枠13に室内側に向けて定位置固定した昇降ガイド48によりベース部材42を案内し,また本例にあってはこれに加えて上記両側の折曲片43による縦枠13抱持による案内と相俟って,該ベース部材42の昇降を縦枠13に沿って垂直方向に行い得るようにしてある。
【0029】
このとき本例の昇降ガイド48は,これを縦枠13のべース部材42の背面側の定位置に起立固定した,同じく断面T字状としたガイドピンによるものとし,該ガイドピンをベース部材42に透設したガイド孔49に挿通して上記滑車装置45によるベース部材42の昇降に際してその昇降案内を行なうようにしてある。ベース部材42に透設したガイド孔49は,その下端位置を,該昇降ピン44が上記ラッチの下位にあってこれに非係合の状態に降下した状態の昇降ガイド48位置とし,その上端位置を該下端位置から昇降ピン44がラッチの押上げ回動を完了する昇降長さ分上方に離隔した昇降ガイド48位置とするように上下垂直方向に透設した長孔によるものとしてある。
【0030】
本例の該ベース部材42のバネ付勢は,下端を縦枠13の定位置に固定し,上端をベース部材42に固定し,ベース部材42の上昇を該バネ付勢力に抗して行い,ベース部材42の降下を該バネ付勢力を用いてなし得るように,縦枠13とベース部材42間に配置したバネ50によって行ったものとしてあり,本例にあって該バネ50の付勢は,上記ガイドピンの昇降ガイド48を縦枠13側の下端の定位置とするように該ガイドピンに下部フックを固定し,必要且つ充分な付勢力を確保し得るベース部材42のガイド孔49上方を上端位置とするように上部フックを固定してこれらの間に介設したコイルスプリングを用いたバネ付勢としてある。
【0031】
本例における障子ロック手段は,障子2毎のスライドバー51を,下枠13に一体成形し又は後付したガイド溝に下枠12長手方向にスライド案内自在に嵌挿するとともに上記方立の縦枠13位置で障子毎のスライドバー51をその付属部材の連結バー52で相互に連結し,双方のスライドバー51が同時に同一方向に向けてスライド自在に配置し,該スライドバー51のスライドによって傾斜開放を常態とする2枚の障子2を同時にロックし得るようにしてある。
【0032】
このとき対をなすフック53と係止ピン54は,係止ピン54を上記スライドバー51に,フック53を障子2の下框22にそれぞれ配置してスライドバー51をスライドすることによって相互に係止するようにしてあり,本例にあって該フック53と係止ピン54はスライドバー51長手方向にそれぞれ複数箇所に設置して相互の係止によるロックを複数箇所でなし得るようにしてあり,本例の該フック53と係止ピン54は,各障子2の長手方向に2箇所としてある。
【0033】
本例にあってスライドバー51に設置した係止ピン54は,これをその軸にローラーを被嵌してその摩擦抵抗を可及的に減少したローラーボルトを用いてあり,また下框22に設置したフック53はその係止孔の開口を室内側に傾斜した傾斜開口としてあり,これによってスライドバー51の係止ピン54がフック53位置に至って係止ピン54がフック53の傾斜開口に係合するとともにスライドバー51のスライドによって係止ピン54がなお幅方向に直進移動し該係止ピン54がその係止孔の係止位置に至る間に該フック53をスライドバー51側,即ち室内側に引寄せて障子2の下部における引寄せ閉鎖を行なってそのロックをなし得るようにしてある。
【0034】
障子引寄せ手段における昇降ピン44の昇降と障子ロック手段のスライドバー51は,上記のとおりオペレーター55操作によって連動して作動するようにしてあり,このとき該昇降ピン44とスライドバー51とはその連動を,該オペレーター55操作によって回転する巻取りプーリー56とスライドバー51間に引張スライド用ワイヤー57を介設し且つ該スライドバー51又はその付属部材と昇降ピン44を設置したベース部材42間に引張昇降用ワイヤー58を介設することによって行なったものとしてある。
【0035】
即ち本例にあってオペレーター55は,人の手の届く壁面等に設置し,巻取りプーリー56を内蔵しハンドルの回転操作によって該巻取りプーリー56を双方向に回転することによってワイヤーを巻取り巻戻し自在としたハンドル回転用のものとしてあり,引張スライド用ワイヤー57を,例えば左右一方の縦枠13に室内側に突出するように設置したワイヤーガイド59を介してスライドバー51に連結し,該スライドバー51を引張スライド自在としてあり,このとき本例の引張スライド用ワイヤー57のスライドバー51への連結は,これを2枚の障子2を同時にロックし得るように上記スライドバー51を相互に連結した付属部材の連結バー52に対して行い,これによって該相互に連結したスライドバー51同時の引張スライドをなし得るようにしてあり,本例の連結は,例えば連結バー52の室内側に向けて突出した固定ピン60の透孔に該ワイヤー57を挿通しその透孔両端にカシメ固定金具61を配置し該位置を固定部位としてその連結を行なったものとしてある。
【0036】
また本例の引張昇降用ワイヤー58は,該スライドバー51の付属部材たる連結バー52と昇降ピン44のベース部材42間に介設してあり,該連結バー52への連結は,上記引張スライド用ワイヤー57をその上記連結バー52における上記固定部位から連結バー52の中間位置に向けて延長するように該固定部位から仕切縦枠13下端位置乃至下枠12位置に設置した方向転換用のプーリー63を介してその上方,即ち方立上方に向けて配置し,上記縦枠13の2つ単滑車の滑車装置45を介してその先端を縦枠13の定滑車47位置と近傍の水平位置に固定して該位置を昇降ピン44側の固定部位とすることによって,その連結をベース部材42に対してこれを吊持ち状にして間接的に行ったものとしてある。
【0037】
以上のように構成した本例の施錠装置によれば,ハンドルのワイヤー巻き上げ方向の回転操作によってオペレーター55操作を行なえば,引張スライド用ワイヤー57と引張昇降用ワイヤー58を巻取りプーリー56側へ引寄せ,引張スライド用ワイヤー57によりスライドバー51をスライドしてフック53と係止ピン54の係止と,引張昇降用ワイヤー58によりベース部材42を上昇してこれに伴う昇降ピン44の上昇と突出体40の押上げ回動による障子2の引寄せ閉鎖とを連動して行い,これら障子引寄せ手段と障子ロック手段の同時的な作動による安定且つ確実な施錠を行なうことができ,またハンドルのワイヤー巻戻し方向の回転操作を行なえば,障子引寄せ手段と障子ロック手段の作動を逆にして同じく同時的な作動によって安定且つ確実な開錠を行なうことができ,高所に設置した自然換気窓Aの施開錠を容易に行なうものとし得る。
【0038】
図中62は下枠12又は仕切縦枠13の方立に固定配置した上記方向転換用プーリー63の設置基板を示す。
【0039】
図示した例は以上のとおりとしたが,上記四節連鎖機構によって相互に連結するように配置したアームを用いた上記従来例の制御装置を用いた自然換気窓を含めて,その制御手段を上記と異にする各種自然換気窓に上記施錠装置を適用すること,上記施錠装置における引張昇降用ワイヤーを,スライドバー又はその付属部材と昇降ピン間に介設するようにすること,このとき昇降ピンを,例えば縦枠の障子側の側面に透設した長孔の案内によって昇降するように構成し,該縦枠に設置したプーリーによって方向転換した引張昇降用ワイヤーに該昇降ピンの上端を固定してその昇降をなし得るようにすること,この場合に同じく下向きのバネ付勢すること,施錠装置をオペレーター操作に代えてスイッチ操作によって作動するように,例えば電動のものとして構成すること,突出体を昇降ピンによって押上げ回動し得る限り適宜にプレート状乃至バー状のものとして構成すること等を含めて,本発明の実施に当って自然換気窓,その開閉動作を制御する制御装置,施錠装置,障子引寄せ手段,その縦框の突出体,縦枠の昇降ピン,障子ロック手段,そのスライドバー,対をなすフック及び係止ピン,障子引寄せ手段と障子ロック手段の連動手段,必要に応じて用いるラッチ,ベース部材,滑車装置,バネ付勢,引張スライド用及び引張昇降用ワイヤー等の各具体的構造,形状,材質,これらの関係,これらに対する付加等は,上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】自然換気窓の縦断面図である。
【図2】自然換気窓の室内側の内観図である。
【図3】自然換気窓の障子を閉鎖した状態の縦断面図である。
【図4】自然換気窓の障子を傾斜開放した常態の縦断面図である。
【図5】障子を傾斜開放した常態のラッチと昇降ピンの関係を示す拡大断面図である。
【図6】障子を閉鎖した状態のラッチと昇降ピンの関係を示す拡大断面図である。
【図7】障子を傾斜開放した常態の引寄せ手段の拡大正面図である。
【図8】障子を閉鎖した状態の引寄せ手段の拡大正面図である。
【図9】障子ロック手段の平面図である。
【図10】障子ロック手段の室内側正面図である。
【図11】障子ロック手段の縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
A 自然換気窓
1 窓枠
2 障子
12 下枠
13 縦枠
22 下框
23 縦框
40 突出体
42 ベース部材
44 昇降ピン
45 滑車装置
51 スライドバー
52 連結バー
53 フック
54 係止ピン
55 オペレーター
57 引張スライド用ワイヤー
58 引張昇降用のワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠に傾斜開放を常態とする障子を開閉自在に装着し風圧状態によって障子の開閉動作を制御自在とした自然換気窓に設置使用する施錠装置であって,障子の縦框に室内側に向けて突設した突出体及び窓枠の縦枠に上記突出体下位に向けて昇降自在に突設した昇降ピンを具備し,該昇降ピンの昇降によりその上昇時に突出体を押上げ回動し降下時に該回動を解除して障子の引寄せ閉鎖と傾斜開放を行なうように縦枠と縦框間に配置した障子引寄せ手段と,窓枠の下枠に長手方向スライド自在に設置したスライドバー及び該スライドバー及び下框に対をなすように設置した相互に係脱自在のフックと係止ピンを具備し上記スライドバーのスライドによってフックと係止ピンを係止して障子をロック自在とするように下枠と下框間に配置した障子ロック手段とを備えるとともに上記障子引寄せ手段における昇降ピンの昇降と障子ロック手段におけるスライドバーのスライドとをオペレーター操作又はスイッチ操作によって連動して作動自在としてなることを特徴とする自然換気窓の施錠装置。
【請求項2】
上記障子引寄せ手段の突出体を,その縦框側の端部に昇降ピンを受入係止自在とする受孔を備えたラッチによるものとしてなることを特徴とする請求項1に記載の自然換気窓の施錠装置。
【請求項3】
上記昇降ピンをベース部材に設置し,該ベース部材を滑車装置によって縦枠に昇降自在に設置することによって昇降ピンの昇降を可能とするとともに上記縦枠に対するベース部材の設置を常時下向きにバネ付勢して行なうことによって上記昇降ピンをバネ付勢力に抗して上昇しバネ付勢力によって降下自在としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の自然換気窓の施錠装置。
【請求項4】
上記障子引寄せ手段における昇降ピン昇降と障子ロック手段におけるスライドバースライドの連動を,オペレーター操作又はスイッチ操作によって回転する巻取りプーリーとスライドバー又はその付属部材間に引張スライド用ワイヤーを介設し且つ該スライドバー又はその付属部材と昇降ピン間に引張昇降用ワイヤーを介設することによって行なってなることを特徴とする請求項1又は2に記載の自然換気窓の施錠装置。
【請求項5】
上記引張昇降用ワイヤーを,上記昇降ピンに代えて,スライドバー又はその付属部材と昇降ピンを設置したベース部材間に介設してなることを特徴とする請求項4に記載の自然換気窓の施錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−45905(P2006−45905A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228187(P2004−228187)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】