説明

自熔炉の水冷式三角天井構造

【課題】銅製錬を行う自熔炉の三角天井部を構成する煉瓦を熱損傷から保護し、三角天井部の熱負荷に対する耐久性を向上することのできる三角天井構造を提供すること。
【解決手段】自熔炉の三角天井部を構成する複数の煉瓦の間に、所定の間隔毎に、煉瓦側面に当着して挾持されるように、内部冷水路を有する水冷式の銅製ジャケットを配置する水冷式三角天井構造とする。これにより、最小限の銅製ジャケットで三角天井部を構成する全ての煉瓦を効率よく冷却することができるため、低コストで自溶炉の三角天井部の熱負荷に対する耐久性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅製錬の原料となる銅精鉱を熔解する自熔炉の水冷式三角天井構造及びそれを用いた三角天井部の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅製錬においては、自熔炉を用いた銅製錬方法が広く用いられている。この自熔炉を用いた製錬方法においては、前処理によって乾燥した銅精鉱を自熔炉に投入し、自熔炉内で溶融した銅精鉱を、比重差によって銅品位が高いマットと、主に鉄の酸化物からなるスラグとに分離する。マットは次工程の転炉、精製炉へ送られ、精製されたアノードとなり、更に銅電解工程で99.99%の電気銅となり、電線や銅製品の原料となる。
【0003】
自熔炉を形成する煉瓦やキャスタブル等の耐火物は、常に高熱に晒されるため、熱損傷が不可避であり、短期間で交換や補修が必要となる。そこで、これらの耐火物の寿命を伸ばすために、例えば、高温ガスと銅精鉱の反応設備であるリアクションシャフトの側壁や、溶融物を貯留して分離させるセトラーの側壁部等、特に熱負荷の高い部分には耐火物を冷却する為の冷却機構として例えば銅製の水冷式ジャケットが取り付けられている。
【0004】
ところで、自熔炉には、直立した円筒状のリアクションシャフトの下端部からセトラーの天井壁に接続される繋ぎ部分の四隅に三角天井部という部分が形成されている。円筒から方形に移行する複雑な構造を有するこの三角天井部には、従来、上記したような冷却機構が設けられていなかった。しかし、近年、自熔炉における精鉱熔解量の増加が進められており、その結果三角天井部への熱負荷が増加し、三角天井部を構成する煉瓦の熱損傷の問題が顕在化してきた。そこで、銅製錬における安全性の向上と操業の安定化のために、三角天井部の熱負荷に対する耐久性を高める手段が求められるようになった。
【0005】
三角天井部の熱損傷を軽減できる三角天井構造として、従来の煉瓦構造を廃止して、三角天井部を形成する不定形耐火物内にステンレスパイプを格子状に設置した三角天井部(特許文献1参照)や、或いは、銅製ジャケットを三角天井部全面に敷き詰めた三角天井部(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−189829号公報
【特許文献2】特開2008−202923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている三角天井部は、熱負荷によって不定形耐火物が脱落し、ステンレスパイプが炉内に剥き出しになる場合があり、パイプの腐食による漏水とそれに伴う炉内での水蒸気爆発の危険がある。又、この三角天井部は、既存の煉瓦構造を廃して新たに基本構造の全く異なる天井部を別途作り直すものであり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
又、特許文献2に記載されている三角天井部は、三角天井部に重量の大きい多数の銅製ジャケットを敷き詰めることによって、既存の煉瓦構造を保守することを目的とするものであるが、この構造によって充分な冷却効果を得るためには、三角天井部の略全面に銅製ジャケットを敷き詰める必要がある。しかし、構造上比較的脆弱な部分である三角天井部の略全面に多数の重量物を敷き詰めると、一方で三角天井部の耐荷重力を強化するための別途の補強手段、或いは銅製ジャケットを支持する膨大な支持手段等が必要となり、又、冷却効果の保持のために膨大な数の銅製ジャケットを必須とするため、製造コストが嵩むという問題があった。
【0009】
本発明は、銅製錬を行う自熔炉の三角天井部を熱損傷から保護し、三角天井部の熱負荷に対する耐久性を向上することのできる三角天井構造を、低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、自熔炉の三角天井部において、三角天井部を構成する複数の煉瓦の間に、所定の間隔毎に水冷式の銅製ジャケットを配置し、それらの銅製ジャケットが煉瓦の側面に当着して挾持される構造とすることにより、効率よく三角天井部全体を冷却することが可能であり、低コストで、三角天井部の熱負荷に対する耐久性を向上することができることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1) 自熔炉の三角天井部を構成する水冷式三角天井構造であって、リアクションシャフト下端外側の隅部の略同一平面上に配置された複数の煉瓦と、内部冷水路を有する銅製ジャケットと、によって構成され、前記銅製ジャケットは、一の前記煉瓦と他の前記煉瓦の間に配置され、各前記煉瓦の側面に当着して挾持されている水冷式三角天井構造。
【0012】
(2) 前記銅製ジャケットが、所定の距離毎に平行に配置されていて、前記所定の距離は、10cm以上40cm以下である(1)に記載の水冷式三角天井構造。
【0013】
(3) 前記銅製ジャケットの内部冷水路が、前記銅製ジャケット内の中心位置よりも前記三角天井部の天面寄りの位置に配置されている(1)又は(2)に記載の水冷式三角天井構造。
【0014】
(4) 前記銅製ジャケットが、前記銅製ジャケットの中心部よりも前記三角天井部の底面寄りの側面と前記三角天井部の底面寄りの底面において、耐磨耗合金による肉盛溶接が施された肉盛溶接部を備える(1)から(3)のいずれかに記載の自熔炉の水冷式三角天井構造。
【0015】
(5) 前記銅製ジャケットを構成する銅ブロックへの開孔処理によって前記内部冷水路が形成されていることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の水冷式三角天井構造。
【0016】
(6) 前記銅製ジャケットを構成する銅ブロックに金属製パイプが鋳込まれており、該金属性パイプによって前記銅製ジャケット内に前記内部冷水路が形成されていることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の水冷式三角天井構造。
【0017】
(7) 自熔炉の三角天井部であって、前記三角天井部の所定の範囲は、(5)に記載の水冷式三角天井構造によって構成されており、前記所定の範囲以外のその他の範囲は、(6)に記載の水冷式三角天井構造によって構成されている三角天井部。
【0018】
(8) (1)から(6)のいずれかに記載の自熔炉の水冷式三角天井構造の内部冷水路に注することによって、三角天井部を冷却する自熔炉の三角天井部の冷却方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自熔炉の三角天井部を、一定間隔毎に、煉瓦と他の煉瓦の間に、水冷式銅製ジャケットが当着して挾持されている構造とすることにより、最小限の銅製ジャケットで三角天井部を構成する全ての煉瓦を効率よく冷却することができる。それにより、三角天井部の熱負荷に対する耐久性は顕著に向上し、自熔炉を用いた銅製錬の安全性の向上と操業の安定化を低コストで達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】自熔炉の全体構造を示す断面模式図である。
【図2】自熔炉の三角天井部の平面図である。
【図3】水冷式三角天井構造の構造を示す模式図である。
【図4】水冷式三角天井構造の他の実施例の構造を示す模式図である。
【図5A】水冷式三角天井構造を構成する銅製ジャケットの一実施形態の斜視図である。
【図5B】水冷式三角天井構造を構成する銅製ジャケットの他の実施形態の斜視図である。
【図5C】水冷式三角天井構造を構成する銅製ジャケットの連接状態を示す模式図である。
【図6】自熔炉の三角天井部における水冷式三角天井構造の好ましい配置例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<自熔炉の全体構造と自熔炉を用いた銅製錬の全体プロセス>
まず、図1、図2を参照しながら、本発明の水冷式三角天井構造の実施形態である銅製錬を行う自熔炉の全体構造について説明する。図1に示す通り、自熔炉1は、リアクションシャフト20、セトラー30、アップテーク40を備える熔鉱炉である。又、図2に示す通り、円筒状のリアクションシャフト20の下端部とセトラー30の天井部の接続する部分の周囲の四隅には、略三角形状の三角天井部10が形成されている。この三角天井部10が、後に詳しく説明する水冷式三角天井構造100によって構成されていることが本発明の特徴である。尚、リアクションシャフト20の上部には、銅精鉱及び高温のガスを投入する搬入口21が、セトラー30には、スラグを排出するスラグホール31、自溶炉の側面に形成されマット302を回収するためのマットホール32が、アップテーク40には高温の亜硫酸ガス303を排出するための排出口41がそれぞれ形成されている。
【0022】
自熔炉1を用いた銅製錬においては、原料である銅精鉱を自熔炉1で熔解する為に、前処理として精鉱乾燥設備(図示せず)において水分を10%から1%以下にまで乾燥する。乾燥された銅精鉱は、スクリューコンベアー等の搬送設備(図示せず)によりリアクションシャフト20上部の搬入口21から自熔炉1に投入される。自熔炉1では、銅精鉱と同時にシリカ等の溶剤と高温の酸素富化空気を搬入口21から自熔炉1内に吹き込む。リアクションシャフト20内で銅精鉱は熔解し、鉄の酸化物と溶剤からなるスラグ301と、銅品位が65%程度のマット302と、亜硫酸ガス303が生成される。生成されたスラグ301とマット302はセトラー30で比重分離し、スラグ301はスラグホール31から排出されて、コンクリート骨材やケーソン中詰め材として再利用される。マット302はマットホール32から回収されて、次工程の転炉(図示せず)、精製炉(図示せず)へ送られ、精製されたアノードとなり、その次の銅電解工程で99.99%の電気銅となり、電線や銅製品の原料となる。亜硫酸ガス303はアップテーク40を通過して、排出口41から排出され、廃熱ボイラーで熱回収された後、硫酸製造工程へ送られて硫酸が製造される。
【0023】
<水冷式三角天井構造>
次に図2から図5を参照しながら、本発明に係る水冷式三角天井構造100について説明する。図2に示す通り、水冷式三角天井構造100は、三角天井部10を構成する構造物である。図3に示す通り、水冷式三角天井構造100は、略同一平面上に配置された複数の煉瓦11と、一の煉瓦11と他の煉瓦11との間に当着して挾持されている銅製ジャケット12とによって構成されている。銅製ジャケット12は、三角天井部10を構成する全ての煉瓦11に必ず1個以上の銅製ジャケット12が当着するために必要なだけの個数が、煉瓦の一の連接方向と平行な向きに併設して配置される。
【0024】
図3に示す通り、銅製ジャケット12は、略同一平面上において水冷式三角天井構造100を構成する複数の煉瓦11の間に、所定の距離W毎に、平行に配置されている。距離Wは、2つの銅製ジャケット12の間に配置される煉瓦11の大きさと個数によって決まる距離であるが、この距離Wを10cm以上40cm以下とすることにより、効率よく煉瓦11を冷却することができる。Wを10cm以上とすることで、銅製ジャケット12の数を減らしてコストを抑えることが可能であり、一方Wが40cm以下であれば煉瓦11を充分に冷却することができる。この距離Wが上記範囲にある限り、例えば、煉瓦11と銅製ジャケット12が交互に配置されていてもよいし、図3に示すように、二つの銅製ジャケット12の間に2個の煉瓦11が配置されていてもよい。
【0025】
煉瓦11は、従来公知の耐火煉瓦を適宜用いることができる。煉瓦11の両側面には、耐火モルタル等からなる当着補助層111を設けることにより、他の煉瓦11及び銅製ジャケット12との当着を強固に保持することができる。本明細書において、煉瓦の側面に当着した、という場合には、当着補助層111を介して銅製ジャケット12と当着している図3の態様が当然に含まれる。
【0026】
銅製ジャケット12は、その側面が煉瓦11の側面に当着して挾持されている。そのような状態で配置されていることにより、銅製ジャケット12の側面と煉瓦11の側面において接触面積が最大化し、冷却効率が高まる。よって、上記説明した通りの距離W毎の配置において、銅製ジャケット12が煉瓦11を充分に冷却することができる。
【0027】
水冷式三角天井構造100の製造方法は、従来公知の耐火煉瓦による耐火壁の製造工法を応用することができる。銅製ジャケット12の脱落を防ぐためには、例えば、銅製ジャケット12を外的な吊り構造によって望ましい位置に保持すればよい。尚、本発明の水冷式三角天井構造100によれば、個々の耐火煉瓦の形状や吊り構造部分等、既存の煉瓦構造による三角天井部の基本構造の一部を生かして、耐熱耐久性に優れた三角天井部10とすることができるため、コストの面においても従来の他の方法より好ましい。
【0028】
銅製ジャケット12は、冷却水を流すための内部冷水路121を備える銅製のブロック体である。形状は、必ずしも特定の形状に限定されないが、煉瓦11に当着して挾持された場合に互いの側面における接触面積が充分に大きくなることが求められる。そのため、少なくとも対向する一組の側面が、平坦なものであることが好ましい。例えば、図5A及び図5Bに示したような略直方体形状或いは四角柱状の銅製ジャケットを好ましく用いることができる。又、後に説明する他の実施形態(図4参照)においては、三角天井部の天面寄りとなる側の面が狭幅である逆テーパー形状である銅製ジャケットも好ましく用いることもできる。
【0029】
銅製ジャケット12の内部冷水路121は、銅製ジャケット12内の中心位置O、即ち、天面からの距離と底面からの距離がいずれも同じtとなる位置よりも天面寄りの位置に銅製ジャケット12を貫通して形成される。これにより、内部冷水路121と水冷式100の底面、即ち自熔炉1での使用状態における炉内側の面との距離を大きく保つことできる。内部冷水路121をこのような位置に形成することにより、仮に銅製ジャケット12の底面付近の一部が熱負荷によって熔損したとしても、内部冷水路121の熔損は回避することができる。
【0030】
銅製ジャケット12の内部冷水路121については、一例として、図5Aに示すように、銅製ジャケット12Aを構成する銅ブロックに機械加工による開孔処理を行うことによって形成することができる。このようにして形成した内部冷水路121aを備える銅製ジャケット12Aは、冷却水による冷却効果のロスがなく冷却効率が高い。
【0031】
銅製ジャケット12の内部冷水路121については、或いは、図5Bに示すように、予め所定の形状に形成しておいた銅製のパイプ材を銅製ジャケット12Bを形成する銅ブロックに鋳込むことによっても形成することができる。このようにして形成した内部冷水路121bを備える銅製ジャケット12Bは、銅製ジャケット12Bを構成する銅ブロックが熔損、磨耗しても尚、漏水を防止できる構造であるため安全性が高い。
【0032】
図3に示すように、銅製ジャケット12の底面の全面と側面には、耐熱耐磨耗合金を肉盛溶接した肉盛溶接部122が形成されていることが好ましい。又、肉盛溶接部122の範囲は、水冷式三角天井構造100が三角天井部10を構成する際に自熔炉の炉内側の面となる底面と、側面部のうち少なくとも中心部Oよりも底面寄りの底面の近傍部等、特に高い熱負荷のかかる部位のみとすることが好ましい。尚、耐熱耐摩耗合金としてはNi−Cr合金を好ましく用いることができるが、これに限らず、その他Ni基の耐熱合金にモリブデン等の他の耐熱耐摩耗性成分を添加した耐熱耐摩耗合金等、従来公知の耐熱耐摩耗合金を用いることができる。
【0033】
水冷式三角天井構造の他の実施形態として、図4に示す通り、前記三角天井部の天面寄りとなる側の面が狭幅であるテーパー形状の煉瓦11T及び三角天井部の底面寄りとなる側の面が狭幅である逆テーパー形状の銅製ジャケット12Tを組み合わせて水冷式三角天井構造100Tとすることもできる。従来の三角天井構造においては、図4に示す煉瓦11Tのようなテーパー形状の煉瓦を組み合わせて三角天井部を構成している場合があり、そのような三角天井部において、本発明の三角天井構造を適用する場合であっても、銅製ジャケットの形状を銅製ジャケット12Tのような逆テーパー形状とすることにより、既存の煉瓦の形態を生かして、水冷式三角天井構造100Tとすることができる。
【0034】
尚、複数の銅製ジャケット12を併設して配置するためには、図5Cに示すように、各銅製ジャケット12の内部冷水路121の末端の開孔部に、冷却水を注入或いは排出するための外部冷水路123を接続することにより、一連の冷水路を形成すればよい。外部冷水路123としては、例えば、公知の耐熱性樹脂からなるゴムホース、或いは金属製の水道管等を適宜用いることができる。
【0035】
<三角天井部及びその冷却方法>
自熔炉1の三角天井部10は、上記説明した水冷式三角天井構造100によって構成することにより、熱負荷に対する耐久性が高く、操業上の安定性、安全性に優れるものとすることができる。三角天井部10を形成するには、上記において説明した水冷式三角構造の複数のバリエーションのうちのいずれを用いてもよいが、銅製ジャケット12Aを備える水冷式三角天井構造100Aと銅製ジャケット12Bを備える水冷式三角天井構造100Bについては、三角天井部10内での、熱負荷の高さや磨耗の危険度の程度に応じて、所定の範囲毎に適宜使い分けることが好ましい。
【0036】
銅製ジャケット12Aを備える水冷式三角天井構造100Aは、熱伝導率が高く冷却能力に優れている。銅製ジャケット12Bを備える水冷式三角天井構造100Bは安全性に極めて優れる。
【0037】
一方、自熔炉1において三角天井部10は4箇所に形成されているが、リアクションシャフト20で発生した高温の亜硫酸ガス303はアップテーク40に向かって流れる為、図6に示す通り、4箇所に形成されている三角天井部10のうち、セトラー30側に位置する三角天井部10Bの方が、煉瓦11の熔損が激しくなる。一方、セトラー30と反対側に位置する三角天井部10Aは比較的煉瓦の熔損が少なく、漏水のリスクも低い。
【0038】
そこで、図6に示す通り、相対的に熱負荷の低いセトラー30と反対側の範囲においては、銅製ジャケット12Aを備える水冷式三角天井構造100Aによって三角天井部10Aを構成し、特に熱負荷の高いセトラー30側に位置する範囲においては、銅製ジャケット12Bを備える水冷式三角天井構造100Bによって三角天井部10Bを構成することが好ましい。三角天井部10をそのような構成とすることにより、安全性に優れ且つ冷却効率も高い三角天井部を構成することができる。尚、水冷式三角天井構造100A及び100Bの使い分けについては、上記した組み合わせに限定されるものではなく、それぞれの水冷式三角天井構造の特性を考慮した上で、設置範囲を限定して使い分けているものであれば、他の組み合わせの配置であっても本発明の範囲内である。
【0039】
本発明の水冷式三角天井構造100は、自熔炉1において、三角天井部10以外においても、例えばセトラー30の天井部やアップテーク40の天井部の構成にも適用することが可能である。
【0040】
本発明の水冷式三角天井構造100によって構成した三角天井部10は、内部冷水路121に冷却水を流通させることにより、煉瓦11を冷却することができる。煉瓦の熱負荷による熔損を防いで寿命を延ばすことができるため、自熔炉1の熱負荷に対する耐久性が高まり、自熔炉1において安全で安定的な銅製錬を操業することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 自熔炉
10 三角天井部
100 三角天井構造
11 煉瓦
111 当着補助層
12 銅製ジャケット
121 内部冷水路
122 肉盛溶接部
123 外部冷水路
20 リアクションシャフト
21 搬入口
30 セトラー
31 スラグホール
301 スラグ
302 マット
303 亜硫酸ガス
40 アップテーク
41 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自熔炉の三角天井部を構成する水冷式三角天井構造であって、
リアクションシャフト下端外側の隅部の略同一平面上に配置された複数の煉瓦と、
内部冷水路を有する銅製ジャケットと、によって構成され、
前記銅製ジャケットは、一の前記煉瓦と他の前記煉瓦の間に配置され、各前記煉瓦の側面に当着して挾持されている水冷式三角天井構造。
【請求項2】
前記銅製ジャケットが、所定の距離毎に平行に配置されていて、前記所定の距離は、10cm以上40cm以下である請求項1に記載の水冷式三角天井構造。
【請求項3】
前記銅製ジャケットの内部冷水路が、前記銅製ジャケット内の中心位置よりも前記三角天井部の天面寄りの位置に配置されている請求項1又は2に記載の水冷式三角天井構造。
【請求項4】
前記銅製ジャケットが、前記銅製ジャケットの中心部よりも前記三角天井部の底面寄りの側面と前記三角天井部の底面寄りの底面において、耐熱耐磨耗合金による肉盛溶接が施された肉盛溶接部を備える請求項1から3のいずれかに記載の自熔炉の水冷式三角天井構造。
【請求項5】
前記銅製ジャケットを構成する銅ブロックへの開孔処理によって、前記銅製ジャケット内に前記内部冷水路が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水冷式三角天井構造。
【請求項6】
前記銅製ジャケットを構成する銅ブロックに金属製パイプが鋳込まれており、該金属性パイプによって前記銅製ジャケット内に前記内部冷水路が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水冷式三角天井構造。
【請求項7】
自熔炉の三角天井部であって、前記三角天井部の所定の範囲は、請求項5に記載の水冷式三角天井構造によって構成されており、前記所定の範囲以外のその他の範囲は、請求項6に記載の水冷式三角天井構造によって構成されている自熔炉の三角天井部。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の自熔炉の水冷式三角天井構造の内部冷水路に注水することによって、三角天井部を冷却する自熔炉の三角天井部の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−23759(P2013−23759A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162489(P2011−162489)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】