説明

自由流動性ポリオキシメチレン

本発明は、A)少なくとも1種のポリオキシメチレンホモポリマーまたはコポリマー10〜98質量%、B)以下のB1)またはB2)0.01〜50質量%、B1)1〜600mgKOH/gポリカーボネート(DIN53240、2部による)のOH価を有する少なくとも1種の高度にまたは過剰に分枝したポリカーボネートまたはB2)少なくとも1種の高度にまたは過剰に分枝したタイプA(xは少なくとも1.1であり、yは少なくとも2.1である)のポリエステルまたはその混合物、C)他の添加剤0〜60質量%を含有し、成分A)〜C)の質量%の合計は100%である熱可塑性成形材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A)少なくとも1種のポリオキシメチレンホモポリマーまたはコポリマー10〜98質量%、
B)以下のB1)またはB2)0.01〜50質量%、
B1)1〜600mgKOH/gポリカーボネート(DIN53240、2部による)のOH価を有する少なくとも1種の高度にまたは過剰に分枝したポリカーボネート
または
B2)少なくとも1種の高度にまたは過剰に分枝したタイプA(xは少なくとも1.1であり、yは少なくとも2.1である)のポリエステルまたはその混合物、
C)他の添加剤0〜60質量%
を含有し、成分A)〜C)の質量%の合計は100%である熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
本発明は更に任意の種類の繊維、フィルムおよび成形体を製造するための本発明による成形材料の使用およびこの場合に得られる成形体に関する。
【0003】
ポリカーボネートは一般にアルコールとホスゲンの反応からまたはアルコールもしくはフェノールとジアルキルまたはジアリールカーボネートのエステル交換から得られる。例えばビスフェノールから製造される芳香族ポリカーボネートが技術的に重要であり、脂肪族ポリカーボネートは市場の量からみて従来から副次的な役割を果たしている。これに関しては、Becker/Braun、Kunststoff−Handbuch、Bd3/1、Polycarbonate、Polyacetale、Polyester、Celluloseester、Carl−Hanser−Verlag、Muenchen1992、118〜119頁を参照。
【0004】
前記脂肪族ポリカーボネートは一般に線状にまたは低い分枝度を有して形成される。例えば米国特許第3305605号はポリビニルポリマーの可塑剤としての15000ドルトンより大きい分子量を有する固体の線状ポリカーボネートの使用を記載する。
【0005】
流動性を改良するために、一般に熱可塑性樹脂に低分子量添加剤を添加する。しかしこの種の添加剤の作用は強く制限されるが、それは、例えば添加剤の添加量が高くなると機械的特性の低下がもはや許容できなくなるからである。
【0006】
前記の構成の高官能性ポリカーボネートは最近になってはじめて知られた。
【0007】
S.P.RannardおよびN.J.Davis、J.Am.Chem.Soc.2000、122、11729は、ホスゲン類似化合物としてカルボニルビスイミダゾールとビスヒドロキシエチルアミノ−2−プロパノールの反応による完全に分枝したデンドリマーポリカーボネートの製造を記載する。完全なデンドリマーの製造は多工程であり、従って費用がかかり、工業的規模に転用するために適さない。
【0008】
D.H.BoltonおよびK.L.Wooley、Macromolecules1997、30,1890は、1,1,1−トリス(4′−ヒドロキシ)フェニルエタンとカルボニルビスイミダゾールの反応による高分子の、きわめて硬い、過剰に分枝した芳香族ポリカーボネートを記載する。
【0009】
過剰に分枝したポリカーボネートはWO98/50453号により製造できる。ここに記載される方法により、トリオールを再びカルボニルビスイミダゾールと反応させる。まずイミダゾールが生成し、引き続きこれを分子内部で更に反応させてポリカーボネートを生じる。前記方法により無色または淡い黄色のゴム状生成物としてポリカーボネートが生じる。
【0010】
高度に分枝したまたは過剰に分枝したポリカーボネートを生じる前記合成は以下の欠点を有する。
a)過剰分枝生成物は融点が高いかまたはゴム状であり、これにより事後の処理能力が明らかに制限される。
b)反応中に遊離するイミダゾールを反応混合物から費用をかけて除去する
c)反応生成物は依然として末端イミダゾリド基を有する。この基は不安定であり、以下の工程により例えばヒドロキシル基に変換される。
d)カルボニルイミダゾールはかなり高価な化学物質であり、投入物質費用がかなり増加する。
【0011】
WO97/45474号からポリエステル中にAB分子としてデンドリマーポリエステルを含有する熱可塑性組成物が知られている。この場合に核分子として多官能性アルコールをAB分子としてジメチルプロピオン酸と反応させ、デンドリマーポリエステルを生成する。このポリエステルは鎖の末端にOH官能基を有する。この混合物の欠点は、デンドリマーポリエステルの高いガラス温度、かなり費用がかかる製造およびポリマーマトリックス中のデンドリマーの悪い溶解性である。
【0012】
ドイツ特許第10132928号により固体相にこの種の分枝剤を配合し、後縮合することにより導入して機械特性(分子量の増加)を改良する。前記方法の欠点は長い製造時間およびすでに記載された不利な特性である。
【0013】
ドイツ特許第102004005652.8号およびドイツ特許第102004005657.9号はすでに提案された新しいポリエステルの流動性を改良する添加剤を有する。
【0014】
POMの流動性改良剤として以下のものが知られている。シリコーン油、アミン、フタレート、エポキシ化合物、脂肪酸エステル、スルホネート等、例えばベルギー特許第720658号、カナダ特許第733567号、ドイツ特許第222868号、欧州特許第47529号、ソ連特許第519449号、特開平06/100758号、ドイツ特許第31511814号から知られている。
【0015】
従って、本発明の課題は、良好な流動性および同時に良好な機械的特性を有する熱可塑性ポリオキシメチレン成形材料を提供することである。
【0016】
これにより冒頭に記載された成形材料が見出された。有利な構成は従属請求項に記載される。
【0017】
本発明の成形材料は成分A)としてポリオキシメチレンホモポリマーまたはコポリマー10〜98質量%、有利に30〜98質量%、特に40〜98質量%を含有する。
【0018】
この種のポリマーは当業者に知られ、文献に記載されている。
【0019】
これらのポリマーは一般にポリマー主鎖に少なくとも50モル%の繰返し単位−CHO−を有する。
【0020】
ホモポリマーは一般にホルムアルデヒドまたはトリオキサンの重合により、有利に適当な触媒の存在で製造する。
【0021】
本発明の範囲で、成分A)としてポリオキシメチレンコポリマーが有利であり、特に繰返し単位−CHO−のほかに、なお50モル%まで、有利に0.1〜20モル%、特に0.3〜10モル%、特に有利に0.2〜2.5モル%の以下の繰返し単位:
【化1】

を有するものであり、式中、R〜Rは互いに独立に水素原子、C〜C−アルキル基または1〜4個の炭素原子を有するハロゲン置換されたアルキル基を表し、Rは−CH−、−CHO−、C〜C−アルキルまたはC〜C−ハロゲンアルキル置換メチレン基または相当するオキシメチレン基を表し、nは0〜3の範囲の値を表す。これらの基は有利に環状エーテルの開環によりコポリマーに導入することができる。有利な環状エーテルは、以下の式:
【化2】

のエーテルであり、
式中、R〜Rおよびnは前記のものを表す。例として示すにすぎないが、環状エーテルとして、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソランおよび1,3−ジオキセパンおよびコモノマーとしてポリジオキソランまたはポリジオキセパンを挙げることができる。
【0022】
成分A)として同様に、例えばトリオキサン、前記環状エーテルと、第3モノマー、有利に以下の式:
【化3】

(式中、Zは化学結合、−O−、−ORO−であり、RはC〜C−アルキレンまたはC〜C−シクロアルキレンである)の二官能性化合物の反応により製造されるオキシメチレンターポリマーが適している。
【0023】
この種の有利なモノマーは若干の例を記載すると、エチレンジグリシド、ジグリシジルエーテルおよびグリシジレンとホルムアルデヒド、ジオキサンまたはトリオキサンのモル比2:1のジエーテル、およびグリシジル化合物2モルと2〜8個の炭素原子を有する脂肪族ジオール1モルのジエーテル、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、シクロブタン−1,3−ジオール、1,2−プロパンジオール、およびシクロヘキサン−1,4−ジオールのジグリシジルエーテルである。
【0024】
前記ホモポリマーおよびコポリマーの製造方法は当業者に知られ、文献に記載されており、ここでの詳しい説明は不要である。
【0025】
有利なポリオキシメチレンポリマーは最低160〜170℃の融点(DSC、ISO3146)および5000〜300000、有利に7000〜250000の範囲の分子量(質量平均)Mw(GPC、標準PMMA)を有する。
【0026】
鎖末端にC−C結合を有する末端基安定化されたポリオキシメチレンポリマーが特に有利である。
【0027】
本発明の成形材料は成分B)として、1〜600mgKOH/gポリカーボネート、有利に10〜550mgKOH/gポリカーボネート、特に50〜550mgKOH/gポリカーボネートのOH価(DIN53240、2部による)を有する、少なくとも1個の、高度にまたは過剰に分枝したポリカーボネートB1)0.01〜50質量%、有利に0.5〜20質量%、特に0.7〜10質量%または成分B2)として少なくとも1個の過剰に分枝したポリエステルまたは以下に記載するその混合物を含有する。
【0028】
過剰に分枝したポリカーボネートB1)は本発明の範囲で、構造的におよび分子により不均一である、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有する未架橋マクロ分子であると理解される。前記分子は片方の面に中心分子から出発して同様に、しかし幹の不均一な鎖長を有してデンドリマーを形成することができる。前記分子は他方の面に、線状に官能性側基を有して形成されるかまたは両方の極大値の組合せとして線状および分枝状モノマーを有することができる。デンドリマーおよび過剰に分枝したポリマーの定義に関してはP.J.Flory、J.Am.Chem.Soc.1952、74、2718およびH.Frey等、Chem.Eur.J.2000、6、No14、2499に見出される。
【0029】
過剰に分枝した、の用語は、本発明に関して、分枝度(枝分かれの程度、DB)、すなわち分子1個当たりの樹枝状結合の平均値+末端基の平均値が10〜99.9%、有利に20〜99%、特に20〜95%であると理解すべきである。本発明に関してデンドリマーは分枝度が99.9〜100%であると理解すべきである、分枝度の定義に関してはH.Frey等、Acta Polyn.1997、48、30に記載される。
【0030】
有利に成分B1)は数平均分子量Mn100〜15000、有利に200〜12000、特に500〜10000(GPC、標準PMMA)を有する。
【0031】
ガラス転位温度Tgは特に−80℃〜−140℃、有利に−60℃〜120℃である(DSCによる、DIN53765)。
【0032】
23℃での粘度(mPas)(DIN53019による)は50〜200000、特に100〜150000、特に有利に200〜100000である。
【0033】
成分B1)は有利に以下の少なくとも1つの工程を有する方法により得られる。
a)一般式RO[(CO)]ORの少なくとも1つの有機カーボネート(A)と、少なくとも3個のOH基を有する少なくとも1種の脂肪族、脂肪族/芳香族または芳香族アルコール(B)とを反応させ、アルコールROHを除去して1個以上の縮合生成物を形成する、その際Rはそれぞれ互いに独立に1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝状脂肪族、芳香族/脂肪族、または芳香族炭化水素基であり、基Rは環を形成して互いに結合することができ、nは1〜5の整数であり、または
ab)ホスゲン、ジホスゲン、またはトリホスゲンと、前記アルコール(B)とを塩素を除去して反応させる、
b)縮合生成物(K)から高官能性、高度に分枝したまたは過剰に分枝したポリカーボネートを形成する分子内反応、
その際、反応混合物中のOH基とカーボネートの量比は、縮合生成物(K)が平均して1個のカーボネート基および2個以上のOH基または1個のOH基および2個以上のカーボネート基を有するように選択する。
【0034】
出発物質としてホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンを使用することができ、有機カーボネートが有利である。
【0035】
一般式RO(CO)ORを有する出発物質として使用される有機カーボネート(A)の基Rはそれぞれ互いに独立に1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝状脂肪族、芳香族/脂肪族または芳香族炭化水素基である。両方の基Rは環を形成して互いに結合することができる。有利に脂肪族炭化水素基、および特に1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝状アルキル基または置換されたまたは置換されていないフェニル基である。
【0036】
特に式RO(CO)ORの単純なカーボネートを使用し、nは有利に1〜3であり、特に1である。
【0037】
ジアルキルカーボネートまたはジアリールカーボネートは例えば脂肪族、脂環族または芳香族アルコール、有利にモノアルコールとホスゲンとの反応から製造することができる。更に貴金属、酸素、またはNOの存在でのCOを用いるアルコールまたはフェノールの酸化によるカルボニル化により製造できる。ジアリールまたはジアルキルカーボネートの製造方法に関してはUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版、2000、Electronic Release、Verlag Wiley−VCHを参照できる。
【0038】
適当なカーボネートの例は脂肪族、芳香族/脂肪族または芳香族カーボネート、例えばエチレンカーボネート、1,2−または1,3−プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネート、またはジドデシルカーボネートを含む。
【0039】
nが1より大きいカーボネートの例はジアルキルジカーボネート、例えばジ(−t−ブチル)ジカーボネート、またはジアルキルトリカーボネート、例えばジ(−t−ブチル)トリカーボネートを含む。
【0040】
脂肪族カーボネート、特に前記基が1〜5個の炭素原子を有するカーボネート、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートまたはジイソブチルカーボネートを有利に使用する。
【0041】
有機カーボネートは少なくとも3個のOH基を有する少なくとも1個の脂肪族アルコール(B)または種々のアルコールの2種以上の混合物と反応させる。
【0042】
少なくとも3個のOH基を有する化合物の例は、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリスリット、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ビス(トリメチロールプロパン)、トリス(ヒドロキシメチル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フロログルシノール、トリヒドロキシトルエン、トリヒドロキシジメチルベンゼン、フロログルシド、ヘキサヒドロキシベンゼン、1,3,5−ベンゼントリメタノール、1,1,1−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(トリメチロールプロパン)または糖類、例えばグルコース、三官能性または多官能性アルコールおよびエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドをベースとする三官能性または多官能性ポリエーテルオール、またはポリエステルオールを含む。その際グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリット、およびそのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドをベースとするポリエーテルオールが特に有利である。
【0043】
これらの多価アルコールは二価アルコール(B′)との混合物で使用することができるが、ただし使用されるすべてのアルコールの平均OH官能価は合わせて2より大きい。2個のOH基を有する適当な化合物の例はエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,2−、1.3−および1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、レゾルシン、ヒドロキノン、4,4′−ジヒドロキシフェニル、ビス−(4−ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)トルエン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ジヒドロキシベンゾフェノン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、またはその混合物をベースとする二官能性ポリエーテルポリオール、ポリテトラヒドロフラン、ポリカプロラクトン、またはジオールまたはジカルボン酸をベースとするポリエステルオールを含む。
【0044】
ジオールはポリカーボネートの特性を微調節するために使用する。二官能性アルコールを使用する場合は、二官能性アルコール(B′)と少なくとも三官能性アルコール(B)の比は当業者によりポリカーボネートの所望の特性に応じて決定する。通常の場合はアルコール(B′)の量はアルコール(B)および(B′)の全部の量に対して0〜39.9モル%である。前記量は有利に0〜35モル%、特に0〜25モル%、特に有利に0〜10モル%である。
【0045】
ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンとアルコールまたはアルコール混合物の反応は一般に塩化水素を除去して行い、カーボネートとアルコールまたはアルコール混合物から本発明の多官能性の高度に分枝したポリカーボネートを生じる反応はカーボネート分子から一官能性アルコールまたはフェノールを除去して行う。
【0046】
本発明の方法により形成される多官能性の高度に分枝したポリカーボネートは反応後に更に変性せずにヒドロキシル基および/またはカーボネート基により末端化する。前記ポリカーボネートは種々の溶剤、例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、アルコール/水混合物、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、メトキシエチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンカーボネート、またはプロピレンカーボネート中で良好な溶解性を有する。
【0047】
本発明の範囲で、多官能性ポリカーボネートはポリマー骨格を形成するカーボネート基のほかに、末端位または側位に更に少なくとも3個、有利に少なくとも6個、より有利に少なくとも10個の官能基を有する生成物であると理解される。官能基はカーボネート基および/またはOH基である。末端位または側位の官能基の数は前記のように原則的に限定されないが、きわめて高い数の官能基を有する生成物は好ましくない特性、例えば高い粘度または悪い溶解性を有することがある。本発明の高官能性ポリカーボネートは大部分500個以下、有利に100個以下の末端位または側位の官能基を有する。
【0048】
高官能性ポリカーボネートB1)を製造する場合に、OH基を含有する化合物とホスゲンまたはカーボネートの比を、得られる最も単純な縮合生成物(以下に縮合生成物(K)と記載する)が平均して1個のカーボネート基またはカルバモイル基および1個より多くのOH基または1個のOH基および1個より多いカーボネート基またはカルバモイル基を含有するように調節することが必要である。その際カーボネート(A)およびジアルコールまたはポリアルコール(B)からなる縮合生成物の最も単純な構造体は配置XYまたはYXを生じ、Xはカーボネート基であり、Yはヒドロキシル基であり、nは一般に1〜6、有利に1〜4、特に有利に1〜3の数である。その際1個の基として得られる反応性基は以下に中心基と呼ぶ。
【0049】
例えば1個のカーボネートと二価アルコールから最も単純な縮合生成物(K)を製造する際に、反応比が1:1である場合は、平均してタイプXYの1個の分子が得られ、一般式1により表される。
【0050】
【化4】

【0051】
1個のカーボネートと1個の三価アルコールから反応比1:1で縮合生成物(K)を製造する際に、平均して1個のタイプXYの分子が得られ、一般式2により表される。この場合に中心基はカーボネート基である。
【0052】
【化5】

【0053】
1個のカーボネートと1個の四価アルコールから同様に反応比1:1で縮合生成物(K)を製造する場合に、平均して1個のタイプXYの分子が得られ、一般式3により表される。この場合に中心基はカーボネート基である。
【0054】
【化6】

【0055】
式1〜3において、Rは冒頭に定義されたものを表し、Rは脂肪族または芳香族基を表す。
【0056】
更に例えば1個のカーボネートおよび1個の三価アルコールから縮合生成物(K)の製造を行うことができ、一般式4により表され、その際反応比は2:1モルである。この場合に平均して1個のタイプXYの分子が得られ、中心基はOH基である。式4において、RおよびRは式1〜3におけると同様に同じものを表わす。
【0057】
【化7】

【0058】
成分に付加的に二官能性化合物、例えばジカーボネートまたはジオールを添加する場合は、例えば一般式5に示されるように、鎖の延長が生じる。再び平均して1個のタイプXYの分子が得られ、中心基はカーボネート基である。
【0059】
【化8】

【0060】
式5において、Rは有機基、有利に脂肪族基を表し、RおよびRはすでに記載されたと同じものを表わす。
【0061】
複数の縮合生成物(K)を合成に使用できる。この場合に一方で複数のアルコールもしくは複数のカーボネートを使用できる。更に使用されるアルコールおよびカーボネートもしくはホスゲンの比の選択により種々の構造の種々の縮合生成物の混合物が得られる。これは1個のカーボネートと1個の三価アルコールの反応の例で例示される。(II)に示されるように、出発物質を1:1の比で使用する場合は、1個の分子XYが得られる。(IV)に示されるように、出発物質を2:1の比で使用する場合は、1個の分子XYが得られる。1:1〜2:1の比の場合に、分子XYおよびXYの混合物が得られる。
【0062】
例えば式1〜5に記載される単純な縮合生成物(K)を、本発明により、有利に分子内で反応させ、以下に重縮合生成物(P)と記載する高官能性重縮合生成物を形成する。縮合生成物(K)および重縮合生成物(P)を生じる反応は一般に0〜250℃、有利に60〜160℃の温度で、塊状でまたは溶液で行う。その際一般にそれぞれのエダクトに不活性であるすべての溶剤を使用できる。有利に有機溶剤、例えばデカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはソルベントナフサを使用する。
【0063】
1つの有利な構成において、縮合反応を塊状で行う。反応の際に遊離する一官能性アルコールROHまたはフェノールを、反応を促進するために、場合により減圧して蒸留により反応平衡から取り出すことができる。
【0064】
蒸留分離が用意される場合は、反応の際に140℃未満の沸点を有するアルコールROHを遊離するカーボネートを使用することが規則的に勧められる。
【0065】
反応を促進するために、触媒または触媒混合物を添加できる。適当な触媒はエステル化反応またはエステル交換反応に触媒作用する化合物、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、有利にナトリウム塩、カリウム塩、またはセシウム塩、第三級アミン、グアニジン、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、アルミニウム、錫、亜鉛、チタン、ジルコンまたはビスマスの有機化合物、更にいわゆる複合金属シアニド(DMC)触媒、例えばドイツ特許第10138216号、またはドイツ特許第10147712号に記載されるものである。
【0066】
有利に水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、イミダゾール、例えばイミダゾール、1−メチルイミダゾール、または1,2−ジメチルイミダゾール、チタンテトラブチレート、チタンテトライソプロピレート、ジブチル錫酸化物、ジブチル錫ジラウレート、錫ジオクトエート、ジルコンアセチルアセトネートまたはその混合物を使用する。
【0067】
触媒の添加は使用されるアルコールまたはアルコール混合物の量に対して一般に50〜10000質量ppm、有利に100〜5000質量ppmの量で行う。
【0068】
更に適当な触媒の添加により、および適当な温度の選択により、分子内重縮合反応を制御することが可能である。更に出発成分の組成によりおよび滞留時間により、ポリマー(P)の平均分子量を調節できる。
【0069】
高い温度で製造された縮合生成物(K)もしくは重縮合生成物(P)は室温で一般に長い時間にわたり安定である。
【0070】
縮合生成物(K)の性質により、縮合反応から、分枝を有するが架橋を有しない、種々の構造を有する重縮合生成物(P)を得ることが可能である。更に重縮合生成物(P)は理想的な場合は中心基として1個のカーボネート基および2個より多いOH基、または中心基として1個のOH基および2個より多いカーボネート基を有する。その際使用される縮合生成物(K)の性質および重縮合度から反応性基の数が得られる。
【0071】
例えば一般式2の縮合生成物(K)を、三回の分子内縮合により反応させ、一般式6および7に示される2つの異なる重縮合生成物(P)を製造することができる。
【0072】
【化9】

【0073】
式6および7においてRおよびRはすでに記載されたものである。
【0074】
分子内重縮合反応を中断するために、種々の可能性が存在する。例えば反応が停止し、生成物(K)または重縮合生成物(P)が貯蔵安定性である範囲に温度を低下することができる。
【0075】
更に例えばルイス酸またはプロトン酸の添加により塩基性で触媒を失活することができる。
【0076】
他の構成において、縮合生成物(K)の分子内反応により、重縮合生成物(P)が所望の重縮合度を有して存在するとすぐに、生成物(P)に、反応を中断するために、(P)の中心基に対して反応性の基を有する生成物を添加できる。例えば中心基としてカーボネート基の場合に、例えばモノアミン、ジアミンまたはポリアミンを添加できる。中心基としてヒドロキシル基の場合は、生成物(P)に、例えばモノイソシアネート、ジイソシアネートまたはポリイソシアネート、エポキシ基を含有する化合物、またはOH基と反応する酸誘導体を添加できる。
【0077】
本発明による多官能性ポリカーボネートの製造は多くの場合に0.1ミリバール〜20バール、有利に1ミリバール〜5バールの圧力範囲で、断続的に運転する、半連続的に運転するまたは連続的に運転する反応器または反応器カスケード中で行う。
【0078】
反応条件の前記調節によりおよび場合により適当な溶剤の選択により、本発明の生成物は製造後に更に精製せずに更に処理できる。
【0079】
他の有利な構成において、生成物を蒸留により、すなわち低分子揮発性化合物から取り出す。このために、所望の変換度に達した後に、触媒を任意に失活し、低分子揮発性成分、例えばモノアルコール、フェノール、カーボネート、塩化水素、または易揮発性オリゴマー化合物または環状化合物を蒸留により、場合によりガス、有利に窒素、二酸化炭素、または空気を導入して、場合により減圧で除去する。
【0080】
他の有利な構成において、本発明によるポリカーボネートはすでに反応により得られた官能基のほかに別の官能基を得ることができる。その際官能化は分子量の増加の間にまたは事後に、すなわち本来の重縮合の終了後に行うことができる。
【0081】
分子量の増加の前または間に、ヒドロキシル基またはカーボネート基のほかに別の官能基または官能性成分を有する成分を添加する場合は、ランダムに分配された、カーボネート基またはヒドロキシル基と異なる官能基を有するポリカーボネートポリマーが得られる。
【0082】
この種の作用は例えば重縮合の間に、ヒドロキシル基、カーボネート基、またはカルバモイル基のほかに別の官能基または官能性成分、例えばメルカプト基、第一級アミノ基、第二級アミノ基または第三級アミノ基、エーテル基、カルボン酸の誘導体、スルホン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、シラン基、シロキサン基、アリール基、または長鎖アルキル基を有する化合物の添加により達成できる。カルバメート基による変性のために、例えばエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、2−(ブチルアミノ)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−(2′−アミノエトキシ)エタノール、またはアンモニアの高級アルコキシル化生成物、4−ヒドロキシピペリジン、1−ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、またはイソホロンジアミンを使用できる。
【0083】
メルカプト基による変性のために、例えばメルカプトエタノールを使用できる。第三級アミノ基は例えばN−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、またはN,N−ジメチルエタノールアミンの導入により製造できる。エーテル基は例えば二官能性または多官能性ポリエーテルオールの縮合により生成できる。長鎖アルカンジオールとの反応により長鎖アルキル基を導入することができ、アルキルまたはアリールジイソシアネートとの反応はアルキル基、アリール基およびウレタン基または尿素基を有するポリカーボネートを生成する。
【0084】
ジカルボン酸、トリカルボン酸、例えばテレフタル酸ジメチルエステルまたはトリカルボン酸エステルの添加によりエステル基を製造できる。
【0085】
得られた多官能性の、高度にまたは過剰に分枝したポリカーボネートを、付加的な処理工程(工程c)で、ポリカーボネートのOH基および/またはカーボネート基またはカルバモイル基と反応できる適当な官能化試薬と反応することにより事後の官能化が得られる。
【0086】
ヒドロキシル基を含有する多官能性の、高度にまたは過剰に分枝したポリカーボネートは例えば酸基またはイソシアネート基を有する分子の添加により変性できる。例えば酸基を有するポリカーボネートは、無水物基を有する化合物との反応により得られる。
【0087】
更にヒドロキシル基を有する多官能性ポリカーボネートはアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたブチレンオキシドとの反応により多官能性ポリカーボネート−ポリエーテルポリオールに変換できる。
【0088】
前記方法の大きな利点はその経済性にある。縮合生成物(K)または重縮合生成物(P)を生じる反応および(K)または(P)から他の官能基または元素を有するポリカーボネートを生じる反応を反応容器中で行うことができ、これは技術的および経済的に有利である。
【0089】
本発明の成形材料は成分B2)として少なくとも1個のタイプAの過剰に分枝したポリエステルを含有し、その際
xは少なくとも1.1、有利に少なくとも1.3、特に少なくとも2であり、
yは少なくとも2.1、有利に少なくとも2.5、特に少なくとも3である。
【0090】
単位AもしくはBとしてもちろん混合物を使用できる。
【0091】
タイプAのポリエステルはx官能性分子Aおよびy官能性分子から形成される縮合物であると理解される。例えば分子A(x=2)としてアジピン酸および分子B(y=3)としてグリセリンからなるポリエステルが挙げられる。
【0092】
過剰に分枝したポリエステルB2)は本発明の範囲で構造的におよび分子的に不均一であるヒドロキシル基およびカルボキシル基を有する未架橋マクロ分子であると理解される。前記ポリエステルは一方の面に中心分子から出発してデンドリマーと同様に、しかし枝の不均一な鎖長を有して形成されていてもよい。前記ポリエステルは他方の面に線状に官能性側基を有して形成されていてもよいが、2つの極端の組合せとして直鎖状および分枝状分子を有してもよい。デンドリマーおよび過剰分枝ポリマーの定義に関してはP.J.Flory、J.Am.Chem.Soc.1952、74、2718およびH.Frey等、Chem.Eur.J.2000、6、No14、2499に記載される。
【0093】
本発明に関して、過剰分枝は分枝度(枝分かれの程度、DB)、すなわち樹枝状結合の平均値と分子当たりの末端基の平均値の和が10〜99.9%、有利に20〜99%、特に20〜95%であることであると理解される。デンドリマーは、本発明に関して、分枝度が99.9〜100%であることであると理解される。分枝の程度の定義に関してはH.Frey等、Acta Polym.1997、48、30を参照。
【0094】
成分B2)は、GPC、標準PMMA、溶離剤ジメチルアセトアミドにより決定された、有利にM300〜30000g/モル、特に400〜25000g/モル、特に有利に500〜20000g/モルを有する。
【0095】
B2)は有利にDIN53240による0〜600mgKOH/gポリエステル、有利に1〜500mgKOH/gポリエステル、特に20〜500mgKOH/gポリエステルのOH価および有利に0〜600mgKOH/gポリエステル、有利に1〜500mgKOH/gポリエステル、特に20〜500mgKOH/gポリエステルのCOOH価を有する。
【0096】
Tgは有利に−50℃〜140℃、特に−50℃〜100℃である(DSC、DIN53765による)。
【0097】
特にOH価もしくはCOOH価の少なくとも1個が0より大きく、有利に0.1よtり大きく、特に0.5より大きい成分2)が有利である。
【0098】
特に以下に記載する方法により、
(a)1個以上の少なくとも三官能性アルコールを有する1個以上のジカルボン酸またはその1個以上の誘導体、または
(b)1個以上のジオールを有する1個以上のトリカルボン酸または高級ポリカルボン酸または1個以上のこれらの誘導体
を、溶剤の存在で、場合により無機、金属有機触媒または低分子有機触媒または酵素の存在で反応させることにより、本発明による成分B2)が得られる。溶剤中の反応が有利な製造方法である。
【0099】
本発明の範囲で多官能性過剰分枝ポリエステルB2)は分子的におよび構造的に不均一である。前記ポリエステルはデンドリマーの分子の不均一性により異なり、従ってかなり低い費用で製造できる。
【0100】
変法(a)により反応できるジカルボン酸には例えば蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン−α、ω−ジカルボン酸、ドデカン−α、ω−ジカルボン酸、シス−およびトランスシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シス−およびトランスシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シス−およびトランスシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シス−およびトランスシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸およびシス−およびトランスシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸が属し、その際前記ジカルボン酸は、以下のものから選択される1個以上の基により置換されていてもよい。
〜C10−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、s−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、またはn−デシル、
〜C12−シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、有利にシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
アルキレン基、例えばメチレンまたはエチリデンまたは
〜C14−アリール基、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、および9−フェナントリル、有利にフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、特に有利にフェニル。
【0101】
置換されたジカルボン酸の例示される代表例として以下のものが挙げられる。2−メチルマロン酸、2−エチルマロン酸、2−フェニルマロン酸、2−メチルコハク酸、2−エチルコハク酸、2−フェニルコハク酸、イタコン酸、3,3−ジメチルグルタル酸。
【0102】
更に変法(a)により反応できるジカルボン酸にはエチレン不飽和酸、例えばマレイン酸、フマル酸および芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、またはテレフタル酸が挙げられる。
【0103】
更に前記代表例の2種以上の混合物も使用できる。
【0104】
ジカルボン酸はそのまままたは誘導体の形で使用できる。
【0105】
有利に誘導体は以下のものであると理解される。
モノマーまたはポリマーの形の該当する無水物、
モノ−またはジアルキルエステル、有利にモノ−またはジメチルエステル、または相当するモノ−またはジエチルエステル、高級アルコール、例えばn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールから誘導されるモノ−およびジアルキルエステル、
更にモノ−およびジビニルエステル、および
混合エステル、有利にメチルエチルエステル。
【0106】
有利な製造の範囲でジカルボン酸および1個以上のその誘導体からの混合物を使用することも可能である。同様に1個以上のジカルボン酸の複数の異なる誘導体の混合物を使用することも可能である。
【0107】
特に有利にコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、またはそのモノ−またはジメチルエステルを使用する。特に有利にアジピン酸を使用する。
【0108】
少なくとも三官能性アルコールとして、例えば以下のものを反応させる。グリセリン、ブタン−1,2,4−トリオール、n−ペンタン−1,2,5−トリオール、n−ペンタン−1,3,5−トリオール、n−ヘキサン−1,2,6−トリオール、n−ヘキサン−1,2,5−トリオール、n−ヘキサン−1,3,6−トリオール、トリメチロールブタン、トリメチロールプロパン、またはジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリットまたはジペンタエリトリット、糖アルコール、例えばメソエリトリット、トレイトール、ソルビット、マンニット、または前記の少なくとも三官能性アルコールの混合物。有利にグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンおよびペンタエリトリットを使用する。
【0109】
変法(b)により反応できるトリカルボン酸またはポリカルボン酸は例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸およびメリット酸である。
【0110】
トリカルボン酸またはポリカルボン酸は本発明による反応にそのまままたは誘導体の形で使用することができる。
【0111】
誘導体は有利に以下のものであると理解される。
モノマーまたはポリマーの形の該当する無水物、
モノ−またはジ−またはトリアルキルエステル、有利にモノ−、ジ−またはトリメチルエステル、または相当するモノ−、ジ−またはトリエチルエステル、高級アルコール、例えばn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールから誘導されるモノ−、ジ−およびトリエステル、
更にモノ−、ジ−およびトリビニルエステル、および
混合メチルエチルエステル。
【0112】
本発明の範囲でトリ−またはポリカルボン酸および1個以上のその誘導体からの混合物を使用することが可能である。同様に本発明の範囲で成分B2)を得るために、1個以上のトリ−またはポリカルボン酸の複数の種々の誘導体の混合物を使用することが可能である。
【0113】
本発明の変法(b)のジオールとして、例えばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ペンタン−1,2−ジオール、ペンタン−1,3−ジオール、ペンタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ペンタン−2,3−ジオール、ペンタン−2,4−ジオール、ヘキサン−1,2−ジオール、ヘキサン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、ヘプタン−1,2−ジオール、ヘプタン−1,7−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、イノシトールおよび誘導体、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールHO(CHCHO)−HまたはポリプロピレングリコールHO(CH[CH]CHO)−Hまたは前記化合物の2個以上の代表例を使用し、nは4〜25の整数である。その際前記ジオール中の一方または両方のヒドロキシル基はSH基により置換されていてもよい。有利にエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、およびジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびトリプロピレングリコールである。
【0114】
変法(a)および(b)においてAポリエステル中の分子Aと分子Bのモル比は4:1〜1:4、特に2:1〜1:2である。
【0115】
本発明の方法の変法(a)により反応した少なくとも三官能性アルコールはそれぞれ同じ反応性のヒドロキシル基を有することができる。この場合にOH基がまず同じ反応性であり、少なくとも1個の酸基との反応により、残りのOH基が引き起こす立体的作用または電気作用に起因して反応性が低下する少なくとも三官能性アルコールが有利である。これは例えばトリメチロールプロパンまたはペンタエリトリットを使用する場合である。
【0116】
変法(a)により反応した少なくとも三官能性アルコールは少なくとも2個の化学的に異なる反応性を有するヒドロキシル基を有することができる。
【0117】
その際官能基の異なる反応性は化学的原因(例えば第一級/第二級/第三級OH基)または立体的原因に起因する。
【0118】
例えばトリオールは、第一級および第二級ヒドロキシル基を有するトリオールであってもよく、有利な例はグリセリンである。
【0119】
変法(a)により本発明の反応を実施する場合に、有利にジオールおよび一官能性アルコールの不在で作業する。
【0120】
変法(b)により本発明の反応を実施する場合に、有利にモノ−またはジカルボン酸の不在で作業する。
【0121】
本発明の方法は溶剤の存在で実施する。例えばパラフィンまたは芳香族化合物のような炭化水素が適している。特に適したパラフィンはn−ヘプタンおよびシクロヘキサンである。特に適した芳香族化合物はトルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレン、異性体混合物としてのキシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、およびオルト−およびメタ−ジクロロベンゼンである。更に溶剤として酸性触媒の不在で以下の化合物が特に適している。エーテル、例えばジオキサンまたはテトラヒドロフラン、およびケトン、例えばメチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトン。
【0122】
添加される溶剤の量は、本発明により、使用される反応すべき出発物質の量に対して少なくとも0.1質量%、有利に少なくとも1質量%、特に少なくとも10質量%である。使用される反応すべき出発物質の質量に対して、過剰、例えば1.01倍〜10倍の溶剤を使用することができる。使用される反応すべき出発物質の量に対して100倍より多くの溶剤の量は有利でないが、それは反応成分の濃度が明らかに低い場合は、反応速度が明らかに低下し、好ましくない長い反応時間を生じるからである。
【0123】
本発明による有利な方法を実施するために、添加剤として脱水剤の存在で作業し、脱水剤を反応の開始時に添加する。例えばモレキュラーシーブ、特にモレキュラーシーブ4Å、MgSOおよびNaSOが適している。反応の間に他の脱水剤を添加するかまたは脱水剤を新しい脱水剤と交換することができる。反応の間に形成される水もしくはアルコールを蒸留し、例えば水分離器を使用することができる。
【0124】
本発明の方法を酸性触媒の不在で行うことができる。有利に酸性無機、金属有機または有機触媒または酸性無機、金属有機または有機触媒の混合物の存在で運転する。
【0125】
本発明の範囲で、酸性無機触媒として、例えば硫酸、燐酸、ホスホン酸、次亜燐酸、硫酸アルミニウム水和物、ミョウバン、酸性シリカゲル(pH=6、特に5)および酸性酸化アルミニウムが挙げられる。更に酸性無機触媒として、例えば一般式Al(OR)のアルミニウム化合物および一般式Ti(OR)のチタン酸塩を使用することができ、その際基Rはそれぞれ同じかまたは異なってもよく、互いに独立に以下のものから選択される。
〜C10−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、s−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、またはn−デシル、
〜C12−シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、有利にシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル。
【0126】
有利にAl(OR)もしくはTi(OR)中の基Rはそれぞれ同じであり、イソプロピルまたは2−エチルヘキシルから選択される。
【0127】
有利な酸性金属有機触媒は例えばジアルキル錫酸化物RSnOから選択され、Rは前記のものを表わす。酸性金属有機触媒の特に有利な代表例はいわゆるオキソ錫として市販されているジ−n−ブチル錫酸化物またはジ−n−ブチル錫ジラウレートである。
【0128】
有利な酸性有機触媒は例えばホスフェート基、スルホン酸基、スルフェート基、またはホスホン酸基を有する酸性有機化合物である。特に有利にスルホン酸、例えばパラ−トルエンスルホン酸である。酸性有機触媒として、酸性イオン交換体、例えばジビニルベンゼン約2モル%で架橋されるスルホン酸基含有ポリスチレン樹脂を使用できる。
【0129】
2個以上の前記触媒の組合せも使用できる。不連続分子の形で存在する有機または金属有機または無機触媒を固定された形で使用することが可能である。
【0130】
酸性無機、金属有機または有機触媒を使用することを所望する場合は、本発明により0.1〜10質量%、有利に0.2〜2質量%の触媒を使用する。
【0131】
本発明の方法は不活性ガス雰囲気、すなわち例えば二酸化炭素、窒素または希ガス下で実施し、特にアルゴンが挙げられる。
【0132】
本発明の方法は60〜200℃の温度で実施する。有利に130〜180℃、特に150℃以下の温度で作業する。145℃までの最高温度が特に有利であり、特に135℃までの温度である。
【0133】
本発明の方法の圧力条件はそれ自体重要でない。明らかに減少した圧力、例えば10〜500ミリバールで運転できる。本発明の方法は500ミリバールより高い圧力でも実施できる。簡単の理由から気圧での反応が有利であるが、わずかに高い圧力、例えば1200ミリバールまでの圧力で実施することが可能である。明らかに高い圧力下、例えば10バールまでの圧力で運転することができる。気圧での反応が有利である。
【0134】
本発明の方法の反応時間は一般に10分〜25時間、有利に30分〜10時間、特に8時間までである。
【0135】
反応が終了後、例えば触媒を濾過し、濃縮することにより多官能性過剰分枝ポリエステルを容易に分離することができ、その際濃縮は一般に減圧で行う。他の適当な処理方法は水の添加後の沈殿および引き続く洗浄および乾燥である。
【0136】
更に成分B2)を酵素または酵素の分解生成物の存在で製造できる(ドイツ特許第101063163号による)。本発明により反応したジカルボン酸は本発明の範囲の酸性有機触媒に属さない。
【0137】
リパーゼまたはエステラーゼの使用が有利である。好適なリパーゼおよびエステラーゼはカンジダ・シリンドラセア、カンジダ・リポリチカ、カンジダ・ルゴサ、カンジダ・アンタルクチカ、カンジダ・ウチリス、クロモバクテリウム・ビスコサム、ゲオルリクム・ビスコサム、ゲオトリクム・カンジダム、ムコール・ジャバニクス、ムコールミヘイ、ブタすい臓、シュードモナス種、シュードモナス/フルオレセンス、シュードモナス・セパシア、リゾプス・アルリザス、リゾプス・デレマール、リゾプス・ニベウス、リゾプス・オリザエ、アスペルギルス・ニゲル、ペニシリウム・ロケフォルチイ、ペニシリウム・カメンベルチイ、またはバシルス種のエステラーゼおよびバシルス・テルモグルコシダシウスである。カンジダ・アンタルクチカリパーゼBが特に有利である。記載された酵素は例えばNovozymes Biotech社、デンマークにより市販されている。
【0138】
有利に酵素を、例えばシリカゲルまたはレワチット(Lewatit)上に固定化された形で使用する。酵素の固定化法は、例えばKurt Faber Biotransformations in organic chemistry、第3版、1997、Springer Verlag、3.2章、Immobilization、345〜356頁から公知である。固定化された酵素は例えばNovozymes Biotech社、デンマークにより市販されている。
【0139】
固定化されて使用される酵素の量は全体として使用される反応すべき出発物質の質量に対して0.1〜20質量%、特に10〜15質量%である。
【0140】
本発明の方法は60℃より高い温度で実施する。有利に100℃またはそれより低い温度で運転する。80℃までの温度が有利であり、62〜75℃の温度が特に有利であり、65〜75℃の温度が更に有利である。
【0141】
本発明の方法は溶剤の存在で実施する。例えば炭化水素、例えばパラフィンまたは芳香族炭化水素が適している。特に適当なパラフィンはn−ヘプタンおよびシクロヘキサンである。特に適当な芳香族炭化水素はトルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、異性体混合物としてのキシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、およびオルトおよびメタジクロロベンゼンである。更に以下のものが特に適している。エーテル、例えばジオキサンまたはテトラヒドロフラン、およびケトン、例えばメチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン。
【0142】
添加される溶剤の量は使用される反応すべき出発物質の量に対して少なくとも5質量部、有利に少なくとも50質量部、特に有利に100質量部である。10000質量部より多くの溶剤の量は好ましくなく、それは明らかに低い濃度で反応速度が明らかに低下し、これにより不経済に長い反応時間を生じるからである。
【0143】
本発明の方法は500ミリバールより高い圧力で実施する。気圧またはわずかに高い圧力、例えば1200ミリバールまでの圧力での反応が有利である。明らかに高い圧力、例えば10バールまでの圧力で運転することもできる。気圧での反応が有利である。
【0144】
本発明の方法の反応時間は一般に4時間〜6日、有利に5時間〜5日、特に8時間〜4日である。
【0145】
反応が終了後、多官能性過剰分枝ポリマーを例えば酵素の濾別および濃縮により単離し、その際濃縮を一般に減圧下で実施する。他の好適な処理方法は水の添加後の沈殿、引き続く洗浄および乾燥である。
【0146】
本発明の方法により得られる多官能性過剰分枝ポリエステルは変色および樹脂化の割合が特に少ないことにより際立っている。過剰分枝ポリマーの定義に関してはP.J.Flory、J.Am.Chem.Soc.1952、74、2718およびA.Sunder等、Chem.Eur.J.2000、6、No1、1〜8に記載される。本発明に関して多官能性過剰分枝は枝分かれの程度、すなわち樹脂状結合の平均値+分子当たりの末端基の平均値が10〜99.9%、有利に20〜99%、特に30〜90%であることであると理解される(これに関してH.Frey等、Acta Polym.1997、48、30を参照)。
【0147】
本発明のポリエステルは分子量M500〜50000g/モル、有利に1000〜20000g/モル、特に1000〜19000g/モルを有する。多分散度は1.2〜50、有利に1.4〜40、特に1.5〜30、特に有利に1.5〜10である。本発明のポリエステルは一般に良好に溶解し、すなわちテトラヒドロフラン(THF)、n−ブチルアセテート、エタノールおよび多くのほかの溶剤中の本発明のポリエステル50質量%まで、若干の場合に80質量%までを有する透明な溶液を製造することができ、肉眼でゲル粒子が検出されない。
【0148】
本発明の多官能性過剰分枝ポリエステルはカルボキシ末端化され、カルボキシ基およびヒドロキシル基末端化され、有利にヒドロキシル基末端化される。
【0149】
成分B1)とB2)の比は、これらを混合物の形で使用する場合は、有利に1:20〜20:1であり、特に1:15〜15:1、特に有利に1:5〜5:1である。
【0150】
成分C)として、本発明の成形材料は他の添加剤0〜80質量%、有利に0〜50質量%、特に0〜40質量%を含有することができる。
【0151】
成分C)として、本発明の成形材料は、組成Mg[(OH)/Si10]または3MgO4SiO・HOの水和された珪酸マグネシウムであるタルク0.01〜2質量%、有利に0.02〜0.8質量%、特に0.03〜0.4質量%を含有することができる。このいわゆる三層フィロシリケートは板片状の外観を有する三斜晶系、単斜晶系または斜方晶系結晶構造を有する。他の微量元素Mn、Ti、Cr、Ni、NaおよびKが存在してもよく、その際OH基は部分的にフッ化物により置換されていてもよい。
【0152】
特に有利に20μm未満の粒度が100%であるタルクを使用する。粒度分布は一般に沈殿分析DIN6161−1により決定し、有利に以下のとおりである。
20μm未満 100質量%
10μm未満 99質量%
5μm未満 85質量%
3μm未満 60質量%
2μm未満 43質量%。
【0153】
この種の生成物はMicro TalcI.T.extra(Norwegian Talc Minerals)として販売されている。
【0154】
立体障害フェノールC)として、フェノール環に少なくとも1個の立体的に要求の高い基を有するフェノール構造を有する原則的にすべての化合物が適している。
【0155】
有利に例えば一般式
【化10】

の化合物が該当し、以下の意味を表す。
【0156】
およびRはアルキル基、置換されたアルキル基、または置換されたトリアゾール基を表し、基RおよびRは同じかまたは異なっていてもよく、Rはアルキル基、置換されたアルキル基、アルコキシ基、または置換されたアミノ基を表す。
【0157】
前記形式の酸化防止剤は例えばドイツ特許第2702661号(米国特許第4360617号)に記載されている。
【0158】
有利な立体障害フェノールの他の基は置換されたベンゼンカルボン酸、特に置換されたベンゼンプロピオン酸から誘導される。
【0159】
この種類からの特に有利な化合物は式:
【化11】

(式中、R、R、RおよびRは互いに独立にC〜C−アルキル基を表し、該アルキル基は更に置換されていてもよく、そのうちの少なくとも1個は立体的に要求の高い基であり、Rは1〜10個の炭素原子を有する二価の脂肪族基であり、該基は主鎖にCO結合を有してもよい)の化合物である。
【0160】
この式に相当する有利な化合物は、以下のものである。
【0161】
【化12】

立体障害フェノールとして例えば以下のものが挙げられる。
2,2′−メチレン−ビス−(4−ヒドロキシ−6−tーブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジスチアリール−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ−[2.2.2]オクト−4−イル−メチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリル−チオトリアジルアミン、2−(2′−ヒドロキシ−3′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルジメチルアミンおよびN,N′−ヘキサメチレン−ビス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド。
【0162】
2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox259)、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が特に有効であることが示され、従って有利に使用され、前記Irganox245、Ciba Geigyが特に適している。
【0163】
単独でまたは混合物で使用できる酸化防止剤(C)は成形材料A)〜C)の全質量に対して0.005〜2質量%、有利に0.1〜1.0質量%の量で使用できる。
【0164】
若干の場合にフェノールヒドロキシ基に対してオルト位に1個以下の立体障害基を有する立体障害フェノールが特に長い時間にわたり拡散する光に保存して色安定性を評価する場合に特に有利であることが示される。
【0165】
成分(C)として使用されるポリアミドは公知である。例えばEncyclopedia of Polymer Science and Engineering、11巻、315〜489頁、John Wiley and Sons、Inc、1988に記載される、半結晶質または非晶質樹脂を使用することができ、その際ポリアミドの融点は有利に225℃未満、有利に215℃未満である。
【0166】
このための例はポリヘキサメチレンアゼライン酸アミド、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミド、ポリヘキサメチレンドデカン二酸アミド、ポリ−11−アミノウンデカン酸アミドおよびビス−(p−アミノシクロヘキシル)−メタン−ドデカン酸ジアミドまたはラクタム、例えばポリラウリンラクタムの開環により得られる生成物である。酸成分としてテレフタル酸またはイソフタル酸および/またはジアミン成分としてトリメチルヘキサメチレンジアミンまたはビス−(p−アミノシクロヘキシル)プロパンをベースとするポリアミドおよび2種以上の前記ポリマーまたはその成分の共重合により製造されるポリアミドベース樹脂も適している。
【0167】
特に適当なポリアミドとしてカプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、p、p´−ジアミノジシクロヘキシルメタンおよびアジピン酸の基体上のコポリアミドが挙げられる。このための例は、商標名、Ultramid(登録商標)1C、BASF社から販売されている生成物である。
【0168】
他の適当なポリアミドはDuPont社から商標名Elvamide(登録商標)として販売されているものである。
【0169】
これらのポリアミドの製造は同様に前記文献に記載されている。末端位アミノ基と末端位酸基の比は出発化合物のモル比の変動により調節できる。
【0170】
本発明の成形材料中のポリアミドの割合は0.001〜2質量%、有利に0.005〜1.99質量%、有利に0.01〜0.08質量%である。
【0171】
2,2−ジ−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)およびエピクロロヒドリンからの重縮合生成物の併用は多くの場合に使用されるポリアミドの分散能力を改良できる。
【0172】
エピクロロヒドリンおよびビスフェノールAからなるこの種の重縮合生成物は市販されている。その製造方法は同様に知られている。重縮合生成物の商標名はPhenoxy(登録商標)(Union Carbide社)もしくはEpikote(登録商標)(Snell)である。重縮合物の分子量は広い範囲で変動することができ、市販されているタイプはすべて適している。
【0173】
本発明のポリオキシメチレン成形材料は成分C)として1種以上のアルカリ土類金属珪酸塩およびアルカリ土類金属グリセロ燐酸塩を成形材料の全質量に対して0.002〜2.0質量%、有利に0.005〜0.5質量%、特に0.01〜0.3質量%を含有することができる。珪酸塩およびグリセロ燐酸塩を形成するためのアルカリ土類金属として有利にカルシウム、特にマグネシウムが特に有利である。有利にグリセロ燐酸カルシウムおよびグリセロ燐酸マグネシウムおよび/または珪酸カルシウム、有利に珪酸マグネシウムを使用し、その際アルカリ土類金属珪酸塩として、特に、式:
Me・xSiO・nH
により記載されるものが有利であり、
上記式中、
Meはアルカリ土類金属、有利にカルシウム、特にマグネシウムであり、
xは1.4〜10、有利に1.4〜6であり、および
nは0以上の数、有利に0〜8である。
【0174】
化合物C)は有利に微粉砕された形で使用する。平均粒度100μm未満、有利に50μm未満を有する生成物が特に適している。
【0175】
有利に使用される珪酸カルシウムおよびマグネシウムおよび/またはグリセロ燐酸カルシウムおよびマグネシウムは例えば以下の特性値により詳しく特定できる。
珪酸カルシウムもしくはマグネシウム:
CaOもしくはMgO含量:4〜32質量%、有利に8〜30質量%、特に12〜25質量%、
SiO:CaOもしくはSiO:MgO比(モル/モル):1.4〜10、有利に1.4〜6、特に1.5〜4、
かさ密度:10〜80g/100ml、有利に10〜40g/100mlおよび平均粒度:100μm未満、有利に50μm未満、および
グリセロ燐酸カルシウムもしくはマグネシウム:
CaOもしくはMgO含量:70質量%より大、有利に80質量%より大、
灼熱残留物:45〜65質量%、
融点:300℃より高い、および
平均粒度:100μm未満、有利に50μm未満。
【0176】
本発明の成形材料は成分C)として10〜40個、有利に16〜22個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸と、2〜40個、有利に2〜6個の炭素原子を有するポリオールまたは脂肪族飽和アルコールまたはアミンまたはアルコールおよびエチレンオキシドから誘導されるエーテルとの少なくとも1種のエステルまたはアミド0.01〜5質量%、有利に0.09〜2質量%、特に0.1〜0.7質量%を含有することができる。
【0177】
カルボン酸は一価または二価であってもよい。例としてペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マーガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸、特に有利にステアリン酸、カプリン酸、およびモンタン酸(30〜40個の炭素原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0178】
脂肪族アルコールは一価から四価までであってもよい。アルコールの例はn−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトールであり、グリセリンおよびペンタエリスリトールが有利である。
【0179】
脂肪族アミンは一価から三価までであってもよい。このための例はステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6−アミノヘキシル)アミンであり、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンが特に有利である。有利なエステルまたはアミドは相当するグリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリントリラウレート、グリセリンモノベヘネートおよびペンタエリスリトールテトラステアレートである。
【0180】
種々のエステルまたはアミドの混合物またはエステルとアミドの組み合わせを使用することができ、その際混合比は任意である。
【0181】
更に一価または多価カルボン酸、有利に脂肪酸でエーテル化もしくはエステル化されたポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールが適している。適当な製品は例えばLoxiol(登録商標)EP728、Henkel社、として市販されている。
【0182】
アルコールおよびエチレンオキシドから誘導される有利なエーテルは、以下の式:
RO(CHCHO)
で示され、式中、Rは6〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1以上の整数である。
【0183】
Rに関して特に有利なものはnが50である飽和C16〜C18−脂肪アルコールであり、Lutensol(登録商標)AT50、BASF社として市販されている。
【0184】
本発明の成形材料は他の成分C)として他の核形成剤0.0001〜1質量%、有利に0.001〜0.8質量%、特に0.01〜0.3質量%を含有することができる。
【0185】
核形成剤として、すべての公知の化合物が該当し、例えばメラミンシアヌレート、ホウ素化合物、例えば窒化ホウ素、珪酸、顔料、例えばヘリオゲンブルー(登録商標)(銅フタロシアニン顔料、BASF社)である。
【0186】
充填剤として50質量%まで、有利に5〜40質量%の量で、例えばチタン酸カリウムホイスカー、炭素繊維および有利にガラス繊維が挙げられ、その際ガラス繊維は例えばガラス織物、ガラスマット、ガラスフリース、および/またはガラス絹糸ロービングまたは直径5〜200μm、有利に8〜50μmを有するアルカリの少ないEガラスからなる切断したガラス絹糸の形で使用することができ、その際繊維状充填剤は配合後に有利に平均長さ0.05〜1mm、特に0.1〜0.5μmを有する。
【0187】
他の適当な充填剤は例えば炭酸カルシウムまたはガラス球であり、有利に粉砕された形で、またはこれらの充填剤の混合物の形で使用する。
【0188】
他の添加剤として、50質量%まで、有利に0〜40質量%の量で耐衝撃性改質ポリマーが挙げられ、以下にゴム弾性ポリマーまたはエラストマーと記載する。
【0189】
この種のエラストマーの有利な種類はいわゆるエチレンプロピレン(EPM)ゴムもしくはエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムである。
【0190】
EPMゴムは一般にほとんど二重結合を有しないが、EPDMゴムは100個の炭素原子当たり1〜20個の二重結合を有することができる。
【0191】
EPDMゴムのジエンモノマーとして、例えば共役ジエン、例えばイソプレンおよびブタジエン、5〜25個の炭素原子を有する非共役ジエン、例えばペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエン、およびオクタ−1,4−ジエン、環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、およびジシクロペンタジエン、およびアルケニルノルボルネン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン、およびトリシクロジエン、例えば3−メチル−トリシクロ(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエン、またはその混合物が挙げられる。有利にヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデンノルボルネン、およびジシクロペンタジエンである。EPDMゴムのジエン含量はゴムの全質量に対して有利に0.5〜50質量%、特に1〜8質量%である。
【0192】
EPDMゴムは他のモノマー、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリルアミドでグラフトされていてもよい。
【0193】
有利なゴムの他の基はエチレンと(メタ)アクリル酸のエステルとのコポリマーである。ゴムは付加的になおエポキシ基含有モノマーを含有してもよい。これらのエポキシ基含有モノマーは有利にモノマー混合物に一般式IまたはIIのエポキシ基含有モノマーを添加することによりゴムに配合される。
【0194】
【化13】

式中、R〜R10は水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、mは0〜20の整数であり、gは0〜10の整数であり、pは0〜5の整数である。
【0195】
有利に基R〜Rは水素であり、その際mは0または1であり、gは1である。相当する化合物はアリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルである。
【0196】
式IIの有利な化合物はアクリル酸および/またはメタクリル酸のエポキシ基含有エステル、例えばグリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートである。
【0197】
コポリマーは有利にエチレン50〜98質量%、エポキシ基含有モノマー0〜20質量%および残りの量の(メタ)アクリル酸エステルからなる。
【0198】
エチレン50〜98質量%、特に55〜95質量%、
グリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸および/または無水マレイン酸0.1〜40質量%、特に0.3〜20質量%、および
n−ブチルアクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレート1〜50質量%、特に10〜40質量%
からなるコポリマーが特に有利である。
【0199】
アクリル酸および/またはメタクリル酸の他の有利なエステルはメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびイソブチルもしくはt−ブチルエステルである。
【0200】
そのほかにコモノマーとしてビニルエステルおよびビニルエーテルを使用できる。
【0201】
前記エチレンコポリマーは自体公知の方法、有利に高圧および高温下のランダム共重合により製造できる。相当する方法は一般に知られている。
【0202】
有利なエラストマーはエマルジョンポリマーであり、その製造は例えばBlackley in der Monographie、Emulsion Polymerizationに記載されている。使用できる乳化剤および触媒は自体公知である。
【0203】
原則的に均一に形成されたエラストマーまたは被覆構造を有するエラストマーを使用できる。被覆状構造は例えば個々のモノマーの添加順序により決定され、ポリマーの形状はこの添加順序に影響される。
【0204】
ここでエラストマーのゴムを製造するモノマーとして代わりにアクリレート、例えばn−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート、相当するメタクリレート、ブタジエンおよびイソプレンおよびこれらの混合物が挙げられる。これらのモノマーは他のモノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテル、および他のアクリレートまたはメタクリレート、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、およびプロピルアクリレートと共重合することができる。
【0205】
エラストマーの軟質相またはゴム相(ガラス転移温度0℃未満)はコア、外側被覆または中間被覆(2個より多い被覆構造を有するエラストマーの場合)を形成することができる。多層エラストマーの場合は多くの被覆層はゴム相からなってもよい。
【0206】
ゴム相のほかになお1個以上の硬質成分(20℃より高いガラス転移温度を有する)がエラストマーの構造に関係し、硬質成分は一般に主成分として、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、およびメチルメタクリレートの重合により製造する。このほかにここで少ない割合のコモノマーを使用できる。
【0207】
若干の場合に表面に反応性基を有するエマルジョンポリマーを使用することが有利であることが判明した。この種の基は例えばエポキシ基、アミノ基またはアミド基および一般式:
【化14】

のモノマーの併用により導入できる官能基であり、式中の置換基は以下のものを表す。
15は水素またはC〜C−アルキル基であり、
16は水素、C〜C−アルキル基またはアリール基、特にフェニルであり、
17は水素、C〜C10−アルキル基、C〜C12−アリール基またはOR18であり、
18はC〜C−アルキル基、またはC〜C12−アリール基であり、前記基は場合によりOまたはN含有基により置換されてもよく、
Xは化学結合、C〜C10−アルキレン基またはC〜C12−アリーレン基または
【化15】

であり、YはOZまたはNH−Zであり、ZはC〜C10−アルキレン基またはC〜C12−アリーレン基である。
【0208】
欧州特許第208187号に記載されるグラフトモノマーが表面上の反応性基の導入に適している。
【0209】
他の例としてなおアクリルアミド、メタクリルアミドおよびアクリル酸またはメタクリル酸の置換されたエステル、例えば(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)メチルアクリレートおよび(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレートが挙げられる。
【0210】
更にゴム相の粒子は架橋されていてもよい。架橋剤として作用するモノマーは例えばブタ−1,3−ジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ブタンジオールジアクリレート、およびジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレートおよび欧州特許第50265号に記載される化合物である。
【0211】
更にいわゆるグラフト架橋モノマー(グラフト結合モノマー)、すなわち2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーも使用することができ、前記モノマーは重合の際に異なる速度で反応する。有利に少なくとも1種の反応性基が残りのモノマーとほぼ同じ速度で重合するが、他の反応性基が例えば明らかに遅く重合する化合物を使用する。異なる重合速度はゴムに所定の割合の不飽和二重結合を生じる。引き続きこのゴム上に他の相をグラフトする場合は、ゴム中に存在する二重結合が少なくとも部分的にグラフトモノマーと化学結合を形成して反応し、すなわちグラフトされた相は少なくとも部分的に化学結合によりグラフト基体と結合する。
【0212】
このグラフト架橋モノマーの例は、アリル基含有モノマー、特にエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、または相当するこれらのカルボン酸のモノアリル化合物である。このほかに多くの他の適当なグラフト架橋モノマーが存在し、詳細は例えば米国特許第4118846号に示される。
【0213】
成分C)でのこれらの架橋モノマーの割合はC)に対して一般に5質量%まで、有利に3質量%以下である。
【0214】
以下に若干の有利なエマルジョンポリマーを記載する。ここでまず1つのコアおよび少なくとも1つの外側被覆を有するグラフトポリマーを記載することができ、ポリマーは以下の構造を有する。
【0215】
【表1】

多層被覆構造を有するグラフトポリマーの代わりに、ブタ−1,3−ジエン、イソプレンおよびn−ブチルアクリレートまたはそのコポリマーからなる均一な、すなわち単層被覆エラストマーも使用できる。これらの生成物は架橋モノマーまたは反応性基を有するモノマーの併用により製造できる。
【0216】
前記エラストマーC)は他の一般的な方法、例えば懸濁重合により製造できる。
【0217】
他の適当なエラストマーとして、例えば欧州特許第115846号、欧州特許第115847号および欧州特許第117664号に記載される熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。
【0218】
前記ゴムタイプの混合物ももちろん使用できる。
【0219】
本発明の成形材料はなお他の通常の添加剤および加工助剤を含有できる。ここで例としてホルムアルデヒドを捕捉する添加剤(ホルムアルデヒドスカベンジャー)、可塑剤、付着助剤、および顔料が挙げられる。これらの添加剤の割合は一般に0.001〜5質量%の範囲である。
【0220】
本発明の熱可塑性材料の製造は自体公知方法で成分を混合することにより行い、従ってここで詳細な説明は不要である。有利に成分の混合を押出し機上で行う。
【0221】
成分B)および場合により成分C)を有利な製造の形で、有利に室温でA)の顆粒上に被覆し、引き続き押出すことができる。
【0222】
成形材料からすべての種類の成形体(半製品、フィルム、ホイルおよびフォーム)を製造できる。成形材料はきわめて少ない残留ホルムアルデヒド含量および同時に良好な機械的および熱的安定性により優れている。
【0223】
個々の成分の加工(塊を形成しないまたは焼き付けない)は特に問題がなく、短いサイクル時間で可能であり、用途として特に薄い壁の部品が該当する。
【0224】
流動性が改良されたPOMの使用はほとんどすべての射出成形の使用に考慮される。流動性の改良は低い融点を可能にし、従って射出成形工程の全部のサイクル時間の明らかな減少(射出成形部品の製造費用の低下)を生じることができる。更に加工中に必要な注入圧力がより少なく、射出成形工具で必要な全密閉力がより少ない(射出成形機での投入費用が少ない)。
【0225】
融点の低下、注入圧力およびサイクル時間の減少は特に材料の温和な処理を可能にし、熱酸化による損傷が最小である。この場合に製造される生成物は特に大氣汚染が少なく、認識される臭いがほとんどない。同時に水垢を形成する分解生成物の排出が特に少ないことにより材料の耐久時間が高まる。
【0226】
注入圧力の減少は(例えば金属の)はめ込み部品の注入の場合にはめ込み部品の位置のずれを減少し、寸法安定性および使用特性を改良し、製造の廃物を減少する。
【0227】
射出成形工程の改良のほかに溶融粘度の低下は本来の部品の形成において明らかな利点を生じる。たとえば従来充填されたPOMタイプにより実現できなかった薄い壁の使用が射出成形により達成できる。これに類似して現在の適用において強化された、しかし容易に流れるPOMタイプの使用により壁厚の減少および部品の質量の減少が考慮される。
【0228】
これはそれぞれの形の繊維およびモノフィラメント、フィルムおよび成形体の製造に適しており、特に以下の種類の使用に適している。
止め具および固定部品
カーテン滑り部品および滑車
食品包装品およびおもちゃのばね部品
電動歯ブラシ用ブラシ嵌め具
WC洗浄器用弁体および弁箱
蛇口の栓、計器の機能部品、例えば1ハンドルミキサー、
シャワーヘッドおよび媒質を導く内装部品
給水および散水設備および自動車ライト洗浄装置用ノズル、軸受けおよび制御部品、
水濾過器用容器
コーヒー調製装置用煮沸装置
エアーゾル配量弁およびスプレー用機能部品
オーディオおよびビデオカセット用方向転換用滑車およびレバー
コンピュータ、電話のキーボード、
ドアおよび窓用取っ手および窓握り部分
引き出し案内用滑車および機能部品
ベルト、かばんおよび繊維製品用留め金および結合部品
ファスナー、
脱臭スティック、リップスティク、化粧品用容器、閉鎖用キャップおよび位置変更機構
機械および自動車構造用軸受け部品、案内および滑りライナー、
事務機器、監視カメラ、洗浄機器、椅子、椅子の枕、日よけ、
伝導、位置調節および切り換え運転用歯車、スピンドル、スクリューおよび他の部品、
自動車スライド屋根用案内部品
機械および自動車構造での接合部品用ベアリングの覆い
自動車構造での振り子の支持体
ペダルレバー
特に自動車構造での液体容器、ふたおよび液体用栓、
タンクふた、タンクフランジ、フィルター、フィルター用容器、管、せき止め容器、自動車構造での燃料装置の弁
自動車構造での安全ベルト留め金用押しボタン
安全ベルト用巻きつけ機構
拡声器格子
円板分離機、紡糸機および織り機の切れた糸の吸い込み管および糸案内装置
電気機械的切り替え工具用制御板および制御ローラー
機器および装置構造での伝導チェーンの輪
ガスメーター。
【0229】
台所および家庭の分野に関して、台所用器具、電気フライ器、アイロン、ボタンの部品を製造するためのおよび庭での余暇の分野に、例えば散水装置または園芸用具の部品に使用するための流動性が改良されたPOMの使用が可能である。
【0230】
医療技術の分野において、流動性が改良されたPOMにより吸入装置およびその部品がより簡単に実現できる。
【0231】
透過電子顕微鏡により選択される化合物の形状を調べた。粒子の良好な分散が示された。20〜500nmの粒度が観察された。
【0232】
実施例
成分A)
トリオキサン96.2質量%およびブタンジオールホルマール3.8質量%からなるポリオキシメチレンコポリマー。生成物はなお未反応トリオキサン約6〜8質量%および熱に不安定な成分5質量%を含有した。熱に不安定な成分を分解後、コポリマーは溶融体積速度7.5cm/10分(190℃/2.16kg、ISO1133による)を有した。
【0233】
成分C1)
【化16】

成分C2)
米国特許第3960984号の例5−4による、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸およびプロピオン酸(分子量調節剤として)から製造した分子量約3000g/モルを有するポリアミドオリゴマー。
【0234】
成分C3)
以下の特性を有する合成Mg珪酸塩(Ambosol(登録商標)Societe Nobel、Puteaux)
Mg含量 14.8質量%以上
SiO含量 59質量%以上
SiO:MgO比 2.7モル/モル
かさ密度 20〜30g/100m
灼熱損失 25質量%未満。
【0235】
成分C4)
Loxiol(登録商標)VP1206、Henkel社(グリセリンジステアレート)
成分C5)
メラミン−ホルムアルデヒド縮合物(MFK)、ドイツ特許第2540207号の例1による
表1の例
ポリカーボネートB1の製造工程
一般的作業工程
三官能性アルコール1モル、ジエチルカーボネート1モルおよび炭酸カリウム0.1gを、攪拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた三口フラスコに入れ、混合物を130℃に加熱し、この温度で2時間攪拌した。引き続く反応時間とともに遊離したエタノールの開始する沸騰冷却に起因して反応混合物の温度が低下した。還流冷却器を下降する冷却器と交換し、エタノールを蒸留分離し、反応混合物の温度を徐々に180℃まで高めた。
【0236】
反応生成物を引き続きゲル浸透クロマトグラフィーにより分析し、展開剤はジメチルアセトアミドであり、標準としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用した。ガラス転移温度もしくは融点の測定はASTM3418/82によりDSC法(示差走査熱分析)により行い、第2加熱曲線が評価された。
【0237】
【表2】

【0238】
【表3】

【0239】
成分B2/1
アジピン酸1645g(11.27モル)およびグリセリン(9.43モル)を攪拌機、内部温度計、ガス導入管、還流冷却器および冷却トラップを有する真空接続部を備えた5リットルガラスフラスコに入れた。Fascat(登録商標)4201として市販されているジ−n−ブチル錫オキシド2.5gを添加し、油浴を使用して内部温度140℃に加熱した。反応の際に形成される水を分離するために、250ミリバールの減圧をかけた。反応混合物を前記温度および前記圧力で4時間維持し、その後100ミリバールに低下し、140℃で更に6時間維持した。8.5時間後、グリセリン383g(4.16モル)を添加した。その後20ミリバールに低下し、140℃で更に5時間維持した。引き続き室温に冷却した。透明な粘性液体として過剰分枝ポリエステル2409gが得られた。分析データを以下に記載する。
【0240】
【表4】

【0241】
成形材料を製造するために、成分Aを表に記載された成分Bの量と乾燥混合機中で23℃の温度で混合した。こうして得られた混合物をガス抜き装置を有する二軸スクリュー押出し器(ZSK30 Werner and Pfleiderer)中に導入し、230℃で均一にし、ガス抜きし、均一化された混合物をノズルによりストランドとして押出し、造粒した。
【0242】
組成および測定結果(流動螺旋)を表1に記載する。
【0243】
【表5】

【0244】
成分A(Ultraform(登録商標)N2320003、BASF社の登録商標)はそれぞれ以下のものを有した。
C1 0.35
C2 0.04
C3 0.14
C4 0.14
C5 0.2。
【0245】
表2の例
成分A:表1の成分A参照。
【0246】
【表6】

【0247】
【表7】

【0248】
表3の例
成分B2/2
シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物1.2モル、トリメチロールプロパン0.66モルおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール0.33モルを、攪拌機、内部温度計、ガス導入管、還流冷却器および冷却トラップを有する真空接続部を備えた1リットルガラスフラスコに入れた。ジ−t−ブチル錫オキシド0.4gを添加し、油浴を使用して内部温度115℃に加熱した。反応の際に形成される水を分離するために、110ミリバールの減圧をかけた。反応混合物を前記温度および前記圧力で10時間維持した。冷却後に透明な固形物として生成物が生じた。分析データを以下に記載する。
【0249】
成分B2/3
シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物1.2モル、トリメチロールプロパン0.33モルおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール0.66モルを、攪拌機、内部温度計、ガス導入管、還流冷却器および冷却トラップを有する真空接続部を備えた1リットルガラスフラスコに入れた。ジ−t−ブチル錫オキシド0.4gを添加し、油浴を使用して内部温度115℃に加熱した。反応の際に形成される水を分離するために、110ミリバールの減圧をかけた。反応混合物を前記温度および前記圧力で10時間維持した。冷却後に透明な固形物として生成物が生じた。分析データを以下に記載する。
【0250】
成分B2/4
シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物(H−PSA)2000g(12.97モル)、トリスヒドロキシメチルプロパン380g(2.83モル)およびシクロヘキサンジメチロール(CHDM)817g(5.67モル)を、攪拌機、内部温度計、ガス導入管、還流冷却器および冷却トラップを有する真空接続部を備えた4リットル二重ジャケット反応容器に入れた。Fascat(登録商標)4201として市販されているジ−t−ブチル錫オキシド3.2gを添加し、油浴を使用して内部温度145〜150℃に加熱した。反応の際に形成される水を分離するために、60ミリバールの減圧をかけた。反応混合物を前記温度および前記圧力で6.5時間維持した。引き続きTMP1315gを添加し、反応混合物を、KOH86mg/gの酸価を達成するまで、もう一度前記温度および前記圧力で16.5時間維持した。
【0251】
透明な固形物の形の過剰分枝ポリエステルが得られた。
成分A:表1参照
成分B2/1:表1参照
【表8】

【0252】
本発明の生成物の分析
ポリエステルを検出器としてリフラクトメーターを有するゲル浸透クロマトグラフィーにより分析した。移動相としてテトラヒドロフランを使用し、分子量を測定するための標準としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用した。
【0253】
酸価およびOH価の測定をDIN53240、2部により行った。
【0254】
表3
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1種のポリオキシメチレンホモまたはコポリマー10〜98質量%、
B)以下のB1)またはB2)0.01〜50質量%
B1)1〜600mgKOH/gポリカーボネート(DIN53240、2部による)のOH価を有する少なくとも1種の高度にまたは過剰に分枝したポリカーボネート、または
B2)少なくとも1種の高度にまたは過剰に分枝したタイプA(xは少なくとも1.1であり、yは少なくとも2.1である)のポリエステルまたはその混合物、
C)他の添加剤0〜60質量%
を含有し、成分A)〜C)の質量%の合計が100%である熱可塑性成形材料。
【請求項2】
成分B1)が数平均分子量M100〜15000g/モルを有する請求項1記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
成分B1)が−80℃〜140℃のガラス転移温度Tを有する請求項1または2記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
成分B1)が23℃で50〜200000の粘度(mPas)(DIN53019による)を有する請求項1から3までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
成分B2)が数平均分子量M300〜30000g/モルを有する請求項1から4までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
成分B2)が−50℃〜140℃のガラス転位温度Tを有する請求項1から5までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項7】
成分B2)が0〜600mgKOH/gポリエステルのOH価(DIN53240による)を有する請求項1から6までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項8】
成分B2)が0〜600mgKOH/gポリエステルのCOOH価(DIN53240による)を有する請求項1から7までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項9】
成分B2)が0より大きいOH価またはCOOH価の少なくとも1種を有する請求項1から8までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項10】
成分B1):B2)の比が1:20〜20:1である請求項1から9までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項11】
任意の形式の繊維、フィルムおよび成形体を製造するための請求項1から10までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料から得られる任意の形式の繊維、フィルムおよび成形体。

【公表番号】特表2008−517114(P2008−517114A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537163(P2007−537163)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010954
【国際公開番号】WO2006/042673
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】