説明

自由空間共振器を備える光ジャイロおよび慣性回転速度を感知する方法

【課題】従来型光ファイバに基づくファイバ共振器ジャイロに関連する非線形カー効果、誘導ブリリュアン散乱、偏光誤差、および曲げ損失による不正確さを最小限に抑える低コスト、回転速度の測定精度を低下させる誤差機構の効果を低減する、光ジャイロの回転速度を感知する方法および装置を提供する。
【解決手段】空気または真空の自由空間光経路を有する共振器を使用して、軸の周りのリング共振器の回転速度を感知する。リング共振器は、基板30と、基板上に形成または配置された反射器20、22、24、26とを備える。反射器は閉光路39を有し、第1および第2の光ビームのそれぞれを閉光路の相異なる逆伝播方向に向けるように構成される。第1および第2の光ビーム周波数のそれぞれが、光ビームが閉光路内を循環している伝播方向の共振器の共振周波数に同調される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にジャイロシステムに関し、より詳細には、ナビゲーションシステムおよび姿勢制御で使用される回転センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ジャイロは、回転軸の周りの回転速度または角速度の変化を測定するのに使用されている。基本的な従来型光ファイバジャイロ(FOG)は、光源と、ビーム生成装置と、エリアを取り囲む、ビーム生成装置に結合された光ファイバのコイルとを含む。ビーム生成装置は、光ビームをコイルに伝送し、光ビームは、光ファイバのコアに沿って時計回り(CW)方向および反時計回り(CCW)方向に伝播する。多くのFOGは、ファイバの固体ガラスコアに沿って光を伝達するガラスベースの光ファイバを使用する。この2つの逆伝播(例えばCWとCCW)ビームは、回転閉光路の周りを伝播する間の経路長が異なり、この2つの経路長の差は回転速度に比例する。
【0003】
共振器光ファイバジャイロ(RFOG)では、望ましくは、各逆伝播光ビームは単色(例えば、単一周波数)であり、光ファイバコイルの複数のターンを循環し、ファイバカップラなどの、コイルを通過した光を再びコイルに戻す(すなわち光を循環させる)装置を使用して、コイルを複数回通過する。ビーム生成装置は、共振コイルの共振周波数を観測できるように、各逆伝播光ビームの周波数を変調および/またはシフトする。コイルを通るCW経路およびCCW経路のそれぞれについての共振周波数は、コイルを異なる回数だけ通過したすべての光波がコイル内の任意の地点で強め合う干渉を行うような、ビームの強め合う干渉条件に基づく。この強め合う干渉の結果として、ラウンドトリップ共振器経路長が波長の整数倍に等しいとき、波長λを有する光波が「共振中」であると呼ばれる。コイルの回転により、時計回りの伝播と反時計回りの伝播に対して異なる波長が生み出され、したがって共振器のそれぞれの共振周波数間のシフトが生み出され、回転による閉光路の共振周波数偏移と整合するようにCWビームおよびCCWビーム周波数を同調させることによって測定することができるような周波数差は、回転速度を示す。
【0004】
RFOGでは、光ファイバのガラス材料が、CWおよびCCW経路の共振周波数をシフトさせる可能性があり、したがって誤った回転の表示が生成され、または回転速度の測定が不正確となる。反射ミラーを使用してコイル中の逆伝播光ビームを複数回循環させることができるが、これは通常、ミラーからコイルへの遷移時に生成される損失により、信号対雑音比を低下させる。非線形カー効果、誘導ブリリュアン散乱、および偏光誤差により、回転速度の測定精度を低下させる追加の異常が生成される可能性がある。これらの誤差機構はまた、環境の影響を受けやすく、例えば望ましくない温度感度を引き起こす。
【0005】
非線形カー効果は、RFOG内部の高単色光出力が光ファイバ内のガラスの屈折率を変化させるときに生じる。CWおよびCCWビームの強度の不整合は、観測される周波数偏移に関する数度/時程度の偏りを誘発する可能性がある。誘導ブリリュアン散乱(SBS)は、ファイバ共振器での高フィネスに関連する高強度がガラス繊維でレイジングまたは誘導放射を引き起こすときに生じ、これが一般に、共振周波数の測定における大きな不安定性を促進する。偏光誘導誤差は、ある光ファイバから隣接する光ファイバに、または同一のファイバ内で、光を偶然に第2の偏光モードに結合させるファイバカップラから生じる可能性がある。第2の偏光モードは、回転を測定するのに使用される偏光モードの共振線形中の非対称性を生み出すように共振する可能性がある。第2の偏光モードの周波数がCWビームとCCWビームについて同一であったとしても、振幅が異なる可能性があり、したがって、回転の効果以上の、異なるCWおよびCCWビームの共振周波数の観測を引き起こす。CWおよびCCWビームの各共振周波数についての共振中心の決定は回転速度測定に直接影響を及ぼすので、偏光誘導誤差はRFOGの精度を極度に制限し得る。
【0006】
精度に影響を及ぼす可能性のある誤差機構に直面することに加えて、従来型RFOGは、小規模のRFOGでは特に、大量生産に対してはコストが非常に高い可能性がある。従来型RFOGは複数の構成要素(例えば、光源、ビームジェネレータ、コイルなど)のアセンブリであり、それは、各構成要素についての関連するコストと、そのような構成要素を組み立てるための関連するコストとを有する。小規模応用例では、RFOGを組み立てることに関連するコストは一般に、各構成要素を小型化し、小型化した光構成要素を位置合せするコストの上昇と共に上昇する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、コストが低く、大量生産に適したハイグレード光ジャイロを提供することが望ましい。より具体的には、従来型光ファイバに基づくファイバ共振器ジャイロに関連する非線形カー効果、誘導ブリリュアン散乱、偏光誤差、および曲げ損失による不正確さを最小限に抑える低コスト光ジャイロを提供することが望ましい。さらに、回転速度の測定精度を低下させる誤差機構の効果を低減する、光ジャイロの回転速度を感知する方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
空気または真空の自由空間光経路を有する共振器を使用して、軸の周りのリング共振器の回転速度を感知する方法および装置が提供される。例示的実施形態では、リング共振器は、基板と、基板上の閉光路を有する1組の反射面とを有する。1組の反射面は、第1および第2の光ビームのそれぞれを閉光路の相異なる逆伝播方向に向けるように構成される。第1および第2の光ビームのそれぞれは、閉光路で循環するときに共振周波数を有する。
【0009】
別の例示的実施形態では、光ジャイロが、少なくとも1つの基板と、基板上の、第1および第2の光ビームを生成するように構成されたビームジェネレータと、基板上の、閉光路を有する1組の反射面と、基板上の、第1の逆伝播方向の第1の共振周波数および第2の逆伝播方向の第2の共振周波数を検出するように構成されたセンサと、センサに結合され、第1の共振周波数と第2の共振周波数との間の差に基づいて光ジャイロの回転速度を求めるように構成されたプロセッサとを備える。1組の反射面は、第1および第2の光ビームのそれぞれの一部を閉光路の相異なる逆伝播方向で循環させるように構成される。第1および第2の光ビームのその一部のそれぞれは、閉光路で循環するときに共振周波数を有する。
【0010】
別の例示的実施形態では、基板上に形成されたリング共振器の回転速度を感知する方法が提供される。この方法は、基板上の反射器の組で、自由空間を通じて閉光路に沿って第1および第2の逆伝播光ビームを循環させるステップと、リング共振器で光伝播の第1の逆伝播方向の第1の共振周波数を生成するステップと、リング共振器で光伝播の第2の逆伝播方向の第2の共振周波数を生成するステップと、第1の共振周波数と第2の共振周波数との間の周波数偏移を測定するステップとを含む。周波数偏移は回転速度を示す。 さらに、添付の図面およびこの発明の背景と共に行われる後続の発明の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から、本発明のその他の望ましい機能および特徴が明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の図面と共に本発明を以下で説明する。図面では、同様の番号は同様の要素を示す。
【0012】
以下の本発明の詳細な説明は、例示的な性質のものに過ぎず、本発明または本発明の応用例および用途を限定するものではない。さらに、前述の発明の背景または以下の発明の詳細な説明で提示されるどんな理論にも制約されるものではない。
【0013】
ここで図面を参照すると、図1は、本発明の例示的実施形態による光ジャイロ10の分解組立図である。光ジャイロ10は、第1の基板30と、第1の基板30上に形成され、閉光路39を有する共振器14と、第1の基板30上に形成された信号処理電子回路34(例えば信号プロセッサ)と、信号処理電子回路に結合された第2の基板32とを備える。第1の基板30、共振器14、および信号処理電子34を第1の光ベンチ29と総称する。基板30、32はシリコン、シリコンオンインシュレータなどでよい。ミニチュア光ベンチ技法を使用して、基板30、32と一体化すべき様々な精密光学構造を基板30、32の表面上にエッチングまたは形成することができる。さらに、外部光学構成要素を基板30、32の表面上に正確に取り付けることができ、あるいは基板30、32または基板30、32のベース層の上の追加の材料層上に形成することができる。光ジャイロ10の各構成要素は、(例えば基板30、32上にエッチングまたは形成することによって)基板30、32の中または上に一体化することができ、あるいは基板30、32上に形成し、または取り付けることができる。議論を簡単にするために、基板という用語は、基板のベース層の上に形成することのできる追加の材料層を含む。
【0014】
第2の光ベンチ31は第2の基板32上に基づき、必ずしも限定はされないが、第2の基板32と、光ビームを生成するレーザ38と、レーザ38から受け取った光ビームから2つの光ビームを生成し、その2つの光ビームを共振器14および光センサ35に向けるミニチュア光学素子36、37(例えばミラー反射器)とを含む。第2の光ベンチ31は、例えば、限定ではないが、共振器14と第2の光ベンチ31の構成要素(例えば光センサ35)との間に光ビームをさらに向ける光学素子を含む他の光学素子および導波路を含むことができる。代替実施形態では、第2の光ベンチ31上に組み込まれた機能の一部またはすべてを直接第1の基板20上に取り付け、または形成することができ、したがって第1および第2の光ベンチが単一基板上で組み合わされる。
【0015】
ミニチュア光学素子36、37から光ビームを受けた後、以下でより詳細に説明するように、共振器14は、エリアを取り囲むように閉光路39に沿って2つの光ビームを各逆伝播方向(例えば時計回り(CW)方向と反時計回り(CCW)方向)に向ける。サニャック効果の適用により、光ジャイロ10は、光ジャイロ10の軸の周りの回転速度を感知する。例えば、光センサ35は、CWおよびCCW光ビームに関する共振線形の共振中心を検出し、信号処理電子回路プラットフォーム34上のプロセッサが、検出した共振中心間の周波数偏移に基づいて、共振器14の各逆伝播方向に関連する共振周波数を求め、光ジャイロ10の回転速度を求める。
【0016】
例示的実施形態では、共振器14は、エリアを取り囲む矩形構成として基板30にエッチングされ、または基板30上に配置された4つの反射器20、22、24および26を備える。反射器20、22、24および26間の光ビームの経路は、真空または空気または気体である自由空間であり、それによって反射器20、22、24、および26間で光が受ける屈折率がほぼ1となる。4つの反射器を備える共振器14を図示し、説明するが、共振器14は、閉光路39に沿って各逆伝播光ビームを向ける3つ以上の反射器を備えることができる。各反射器20、22、24および26は、閉光経路39に沿って光ビームを向ける高反射性被覆を有する。例えば、共振器14は、第1の光ビームを受け、第1の光ビームを反射器24から反射器20、反射器26、反射器22、そして反射器24に戻るように向けることにより、閉光路39に沿って第1の光ビームをCCW方向に向ける。共振器14はまた、第2の光ビームを受け、第2の光ビームを反射器24から反射器22、反射器26、反射器20に、そして反射器24に戻るように向けることにより、閉光路39に沿って第2の光ビームをCW方向に向ける。反射器20、22、24、および26のそれぞれの間では、閉光路39に沿って、光ビームが自由空間を伝播し、したがって共振器14は自由空間で閉光路39に沿って各逆伝播光ビームを向ける。
【0017】
反射器20、22、24および26、ならびに反射器20、22、24、および26間のビーム経路をエッチングし、形成し、または配置し、第1の基板30の表面上に共振器14を形成し、第2の光ベンチ31上にレーザ38およびミニチュア光学素子36、37を取り込み、第1の基板30に信号処理電子回路34を取り込むことにより、大量生産に理想的な、かなり小型で低コストのシリコン光ジャイロを製造することができる。基板および材料系はシリコンであることが好ましいが、適した特性を有するその他の材料(例えばアルミナ、窒化物、III−V族元素、その他の耐火性材料など)を基板用に使用することができる。
【0018】
図2は、本発明の例示的実施形態による光ジャイロ10のブロック図である。光ジャイロ10は、図1に示す共振器14を備え、ビームジェネレータ12、光センサ16、および光センサ16に結合された(例えば、第1の基板30にあることができ、または図1に示す第1の基板30上に取り付けられた別々の基板にあることのできる信号処理電子回路プラットフォーム34上にある)プロセッサ18をさらに備える。ビームジェネレータ12は、閉光路39に沿って各逆伝播方向(例えばCW方向およびCCW方向)に伝播する光ビームを生成する。例示的実施形態では、ビームジェネレータ12は、周波数fを有する光ビームを生成する同調可能光源11(例えばレーザ)と、光源11から光ビームを受け、光源からの光ビームを第1および第2の光ビーム(例えばCCW伝播光ビームおよびCW伝播光ビーム)に分割するビームスプリッタ13と、ビームスプリッタ13から第1の光ビームを受け、第1の光ビームを変調する第1の波形変調器15と、ビームスプリッタ13から第2の光ビームを受け、第2の光ビームを変調する第2の波形変調器19と、第1の波形変調器15から第1の被変調光ビームを受け、第1の被変調光ビームの周波数をシフトする周波数シフタ17とを備える。光源11は、周波数安定性を有し、線幅がかなり狭く、出力能力が比較的高い単一周波数可同調レーザである。波形変調器15、19は、正弦波形を光ビームに導入することなどによって第1および第2の光ビームを周波数変調し、本明細書の以下により詳細に説明するように、検出した周波数偏移(Δf)に対する光ジャイロ10の感度を向上するように特定の変調を選択することができる。第1の被変調光ビームおよび第2の被変調光ビームは、それぞれCCW方向およびCW方向に伝播するように共振器14に導入される。
【0019】
別の例示的実施形態では、ビームジェネレータ12は、CCWおよびCW光ビームをそれぞれ合成し、光ビームを共振器14に導入する第1および第2の可同調レーザを含む。この例示的実施形態では、第1のレーザで生成された光ビームが周波数fに同調され、第2のレーザで生成された光ビームが周波数f+Δfに同調され、それによって周波数シフタ17が置き換えられる。この例では、2つのレーザ周波数間の相対周波数ドリフトおよびジッタは、周波数偏移、すなわち回転速度の測定値の精度および安定性を最小限に抑え、またはそれらに影響を及ぼさないレベルにまで実質上最小限に抑えられるべきである。このことは、電子サーボを使用してうなり周波数を可同調安定オフセット(回転速度に比例)にロックするようなレーザ周波数安定化技法によって実施することができる。ビームジェネレータ12は、2つのレーザのそれぞれにそれぞれの周波数で正弦波周波数変調させるような直接ソース変調を有することが好ましく、それによって波形変調器15、19が置き換えられる。
【0020】
回転感知のために、CCWビームの周波数fは、(例えば、レーザ11の周波数を同調することによって)CCW方向の共振器14の共振振動に同調される。周波数シフタ17は周波数Δfを同調し、CCWビーム周波数をCCW方向の共振器14の共振周波数に対する共振中心に整合させる。回転感知中、周波数シフタ17は、光の光周波数をレーザ11の光周波数からΔfだけ周波数偏移し、周波数偏移後の光をCW方向で共振器14に向ける。周波数偏移を実施する2つの方法には、音響光学周波数シフタの使用と、セロダイン変調波形を有する位相変調器の使用が含まれる。前者の方法では、音響光学周波数シフタは、第1の基板30上に形成または配置された音響光学デバイスでよい。後者の方法では、レーザ11からのビームが基板上に形成された導波路に導入され、セロダイン信号で位相変調される。セロダイン波形は鋸波形である。比較的純粋な周波数偏移を適用するために、以下でより詳細に説明する鋸波形の位相のずれの振幅が、2πの整数倍に設定され、鋸波形は、その周期と比較したときにかなり高速なフライバック時間を有する。
【0021】
閉光路39の共振中心周波数をCW方向またはCCW方向で測定するために、標準同期検出技法が使用される。各入力光ビーム(例えばCWビームおよびCCWビーム)が正弦波位相変調され、したがってそれぞれ周波数fおよびfで周波数変調され、光センサ16で測定されたときに、共振線形にわたって各入力ビーム周波数がディザリングされる。例えば、光センサ16に結合された追加の回路が、それぞれ周波数fおよびfの光センサ16の出力を復調し、CWおよびCCWビームの光出力で示される共振中心を測定することができる。共振線形の線中心、すなわち共振中心では、光センサ16は、それぞれ基本周波数fmおよびfnで最小出力を検出する。入力ビーム周波数(例えばf+Δfまたはf)が共振外れであるとき、それぞれ周波数fおよびfの誤差信号が、光センサ16で感知され、それぞれのビーム周波数を共振器14のそれぞれの共振周波数に同調するのに使用される。CCWビームの周波数が、レーザの周波数fを変更することによって同調され、CWビームの周波数が、周波数シフタの周波数偏移Δfを変更するフィードバックループを介して調節され、その結果、f+Δが、共振器14のCW共振周波数に整合する。
【0022】
+ΔがCW方向で共振器14の共振周波数から離れて同調されるとき、CWビームからのエネルギーは光センサ16で最大強度を生成しない。f+ΔがCW方向で共振器14の共振周波数に同調されるとき、CWビームは最小出力すなわち共振ディップを有し、それによって共振中心を示す。CCW光ビームについて同様に、CCWビームがCCW方向の共振器14の共振周波数に同調されるとき、CCWビームのエネルギーが閉光路39に進入する。
【0023】
回転がない場合、共振器14内部のCWおよびCCWビームのそれぞれCWおよびCCW方向でのラウンドトリップ経路長はほぼ等しい。したがって、Δfは周波数シフタ17によってゼロに同調される。回転がある場合、ラウンドトリップ経路長は、CW方向とCCW方向の間で異なり、回転速度に比例するその2方向間の共振周波数差が生成される。CCW共振を追跡するように周波数fを同調し、CW共振中心を追跡するように周波数Δfを同調することにより、回転速度が求められる。例示的実施形態では、プロセッサ18は、共振器14の閉光路39のその2方向間の共振周波数差に基づいて回転速度を求める。
【0024】
光ジャイロ10の好ましい例示的実施形態では、セロダイン方法を使用して周波数シフティングが得られ、それによって位相ランプが入力光ビーム(例えばCWおよびCCWビーム)に加えられる。波形変調器15、19などの位相変調器を連続的かつ線形の位相ランプで駆動することにより、位相ランプの傾きに比例する周波数偏移を得ることができる。2πの位相高さおよび周波数Δfを有する鋸波形は、連続的ランプとほぼ同等の結果を生成し、回転の存在下でCW共振を追跡するように鋸波周波数(Δf)が調節される。前述のように、鋸波形フライバック時間が波形周期と比べてかなり高速であるとき、周波数シフタ17は、比較的純粋な周波数偏移を適用することができる。
【0025】
共振器14に導入された光は自由空間(例えば空気または真空)を通過する。光エネルギーは共振器14の閉光路に沿って自由空間を通過し、反射器20、22、24、および26に関して高反射率レーザミラーを使用することができるので、共振器14内で光を循環させるのに、低損失かつ魅力的な偏光特性が得られる。共振器14は、従来型光ファイバのコア内のガラス媒体の特性に一般に関連する回転測定誤差を著しく減衰させ、または完全に除去するのに適している。
【0026】
図3は、本発明の例示的一実施形態による、有効エリア(A)を取り囲む共振器40の略図である。共振器40は、ビームジェネレータ12(図2)から閉光路41に沿って有効エリアを囲むように共に入力光ビーム(例えばCW光ビームまたはCCW光ビーム)を向ける複数の反射要素42、44、46、48、50、52、54、56を備える。第1の組の反射器46、50、54、および56は光ビームを第1のループに向け、第2の組の反射器44、48、52、および42は、光ビームを第2のループに向け、したがって同等のエリアAを2度周回する。好ましくは、閉光路41は、2以上のループを含み、ジャイロ10がサニャック効果を介して回転に対して敏感となるようにエリアを取り囲む。さらに、ループという用語は、逆伝播光ビームのポインティングベクトルが絶対値で180度より大きい角度でその方向を変えるように逆伝播光ビームがたどる経路を指す。例えば、第1のループは、反射器42から反射器46、反射器50、反射器54、そして反射器56への光ビームの伝播を含み、第2のループは、反射器56から反射器44、反射器48、反射器52、そして反射器42への光ビームの伝播を含む。
【0027】
この例示的実施形態では、図2に示す共振器14と比較して、閉光路41に沿った単一の探査中に有効エリアAを取り囲む共振器40の反射器の数が増加し、それによって共振器経路長が増大し、したがって光ジャイロの信号対雑音比が向上する。閉光路のパス長が増大すると共に、図2に示すような反射器が少ない場合に、光ビームで取り囲まれるエリアAが実質上保持される。追加の反射器または反射面を追加して、共振器40の閉光路の経路長をさらに増大させることができる。
【0028】
図4は、本発明の例示的実施形態によるリング共振器の回転速度を感知する方法の流れ図である。この方法はステップ100で始まる。図1および4を参照すると、ステップ105で、CWおよびCCW光ビームが共振器14の閉光路39の周りを循環する。共振器14は、ある反射器から次の反射器に自由空間を通じて閉光路39に沿って逆伝播光ビームを循環させる。共振器14のCW方向に対応する第1の共振線形が、ステップ110でCW光ビームを共振器に導入することによって生成され、光センサ37で検出される。共振器14のCCW方向に対応する第2の共振線形が、ステップ115でCCW光ビームを共振器に導入することによって生成され、光センサ37で検出される。ステップ120で、信号処理電子回路34は、共振器14内の光伝播のCWおよびCCW方向に関する共振周波数を求め、共振器14内の光伝播のCW方向の共振周波数と、共振器14内の光伝播のCCW方向の共振周波数との間の周波数偏移を求め、この周波数偏移がリング共振器の回転速度を示す。
【0029】
光ジャイロ10の利点には、限定はしないが、低コスト小型パッケージで約1deg/hrのバイアスおよび約0.1deg/root−hrの角度ランダムウォーク(ARW)を提供できること、非常に低損失である共振器、導波路を使用してリング共振器内で光を循環させる光カップラではなく、高反射率ミラーを使用すること、異なる基板材料を使用してシリコン光ベンチまたは光ベンチ上に取り付けることのできる、コンパクトで安定したレーザ構成要素、ソースから共振器に光を結合することが容易であること、光学系と同一のプラットフォームの信号処理電子回路とのインターフェースが容易であること、または電子回路を同一のプラットフォームに統合することが容易であること、ジャイロ誤差を促進する可能性のあるシリカファイバまたはその他の導波路材料中の非線形効果が除去されること、共振器14への遷移地点での光損失が大幅に低減されること、光透過特性をほとんど、または全く変化させずに、光ビームを非常に密な(例えば鉛筆の直径)ループで循環できることが含まれる。
【0030】
例示的一実施形態では、光ジャイロ10が、シリコンベースの微小光ベンチ上に構成され、または電子回路と光学系を一体化し、両者の間の効率的で適切で自己整合され機械的に安定なインターフェースを提供するシリコンオンインシュレータ電気光学回路と共に構成される。スプリッタ13および波形変調器15、19に関連するような光学的機能を、光ベンチの表面付近に位置する導波路に組み込むことができ、またはシリコンフィルム内に形成することができる。そのようなシリコンフィルムの光学的特性および電気的特性は互換であるので、信号処理回路および光検出素子もシリコン層に一体化することができ、共振器経路自体などの導波路ではなく自由空間を移動するのに光波が必要でああったとしても、わずか10ミクロンほどのフィーチャサイズのミニチュア光学構成要素をシリコン面上に取り付けて、大型のバルク光学系をなくすことができる。レーザダイオードおよびその周波数を安定化させる外部要素をシリコン光ベンチの頂面に取り付けることもできる。この例示的実施形態では、レーザおよび関連する周波数同調構成要素を光ベンチ上に取り付けることができ、周波数シフティングのためにセロダイン方法を使用することにより、周波数シフタ用のシリコン導波路で一体化光位相変調器の使用が可能となる。マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)光学プリズムを、レーザまたは自由空間光学系からシリコン導波路内およびシリコン導波路外に光を向けることのできる高反射レーザプリズムとして使用することができる。断熱的に光を導波路に結合するテーパー構造または屈折率分布型構造の使用、または格子の使用など、自由空間光学系から導波路に光を結合するその他の方式を組み込むことができる。こうした技法の使用は、シリコンプラットフォームでの光学系の製造を可能にし、したがって電子回路との一体化を可能にする。
【0031】
光ジャイロ10は、限定はしないが、例えば、航空機、ランドビークル、潜水艦、衛星、水上艦船のナビゲーションなどの慣性誘導を必要とする応用例を含む様々な応用例に適している。さらに、光ジャイロ10に対して想定されるサイズが比較的小さいことにより、限定はしないが、例えば、小型ロボット、個々の兵士の履物、小規模衛星を含む非常に小型のプラットフォーム上での実際的な使用が可能となる。
【0032】
少なくとも1つの例示的実施形態を上記の発明の詳細な説明で提示したが、膨大な数の変形形態が存在することを理解されたい。例示的実施形態は例に過ぎず、本発明の範囲、適用可能性、または構成をどんな形でも限定するものではないことも理解されたい。むしろ、上記の詳細な説明は、本発明の例示的実施形態を実装するのに好都合なロードマップを当業者に与えるものとなる。添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、例示的実施形態で述べた要素の機能および構成に様々な変更を行えることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の例示的実施形態による光ジャイロの分解組立図である。
【図2】本発明の例示的実施形態による光ジャイロのブロック図である。
【図3】本発明の例示的一実施形態による共振器の略図である。
【図4】本発明の例示的実施形態によるリング共振器の回転速度を感知する方法の流れ図である。
【符号の説明】
【0034】
10 光ジャイロ
11 光源
12 ビームジェネレータ
13 ビームスプリッタ
14 共振器
15 第1の波形変調器
16 光センサ
17 周波数シフタ
18 プロセッサ
19 第2の波形変調器
20、22、24、26 反射器
29 第1の光ベンチ
30 第1の基板
31 第2の光ベンチ
32 第2の基板
34 信号処理電子回路
35 光センサ
36、37 ミニチュア光学素子
38 レーザ
39 閉光路
40 共振器
42、44、46、48、50、52、54、56 反射要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(30)と、
前記基板上の、閉光路(39)を有し、第1および第2の光ビームのそれぞれを前記閉光路の異なる逆伝播方向に向けるように構成され、前記第1および第2の光ビームのそれぞれが、前記閉光路で循環したときに共振周波数を有する1組の反射面(20、22、24、26)と、
を備える第1および第2の光ビームを循環させるリング共振器。
【請求項2】
前記1組の反射面は、前記基板上の複数のミラー反射器を備え、前記複数のミラー反射器のそれぞれは、自由空間を通じて前記閉光路に沿うように第1および第2の光ビームを向けるように構成される、請求項1に記載のリング共振器。
【請求項3】
前記閉光路は表面エリアを取り囲み、少なくとも2つのループを有し、前記1組の反射面は、
前記第1の光ビームを前記閉光路に沿って第1の逆伝播方向に向け、
前記第2の光ビームを前記閉光路に沿って第2の逆伝播方向に向けるように構成される、請求項1に記載のリング共振器。
【請求項4】
前記1組の反射面は前記基板上の複数のミラー反射器を有し、前記複数のミラー反射器の第1のサブセットは、前記第1および第2の光ビームのそれぞれを前記閉光路に沿って第1のループに向けるように構成され、前記複数のミラー反射器の第2のサブセットは、前記第1および第2の光ビームのそれぞれを前記閉光路に沿って第2のループに向けるように構成される、請求項3に記載のリング共振器。
【請求項5】
前記第1の光ビームの前記共振周波数は第1の逆伝播方向の共振周波数を示し、前記第2の光ビームの前記共振周波数は第2の逆伝播方向の共振周波数を示し、前記第1の逆伝播方向の前記共振周波数と前記第2の逆伝播方向の前記共振周波数の差は、リング共振器の回転速度に比例する、請求項1に記載のリング共振器。
【請求項6】
前記基板は、シリコン基板とシリコンオンインシュレータ基板の少なくとも一方から選択される、請求項1に記載のリング共振器。
【請求項7】
前記反射器の組は、前記基板に対するエッチングプロセスで形成され、前記反射器の組が高反射率被覆を有する、請求項1に記載のリング共振器。
【請求項8】
少なくとも1つの基板(30、32)と、
第1および第2の光ビームを生成するように構成された、前記少なくとも1つの基板上のビームジェネレータ(12)と、
前記少なくとも1つの基板上の閉光路(39)を有し、前記第1および第2の光ビームのそれぞれの一部を前記閉光路の異なる逆伝播方向に循環するように構成され、前記第1および第2の光ビームの前記一部のそれぞれが、前記閉光路で循環したときに共振周波数を有する、1組の反射面と、
前記第1の逆伝播方向の第1の共振周波数および前記第2の逆伝播方向の第2の共振周波数を検出するように構成された、前記少なくとも1つの基板上のセンサ(16)と、
前記センサに結合され、前記第1の共振周波数と前記第2の共振周波数との間の差に基づいて光ジャイロの回転速度を求めるように構成された、プロセッサ(18)と、
を備える光ジャイロ。
【請求項9】
前記基板上の1組の反射面により、自由空間を通じて閉光路に沿って第1および第2の逆伝播光ビームを循環させるステップ(105)と、
前記リング共振器の光伝播の第1の逆伝播方向の第1の共振周波数を生成するステップ(110)と、
前記リング共振器の光伝播の第2の逆伝播方向の第2の共振周波数を生成するステップ(115)と、
前記第1の共振周波数と前記第2の共振周波数との間の回転速度を示す周波数偏移を測定するステップ(120)と、
を含む基板上に形成されたリング共振器の回転速度を感知する方法。
【請求項10】
前記循環させるステップは、
前記第1および第2の逆伝播光ビームのそれぞれを、第1の組のミラー反射器により前記閉光路に沿って第1のループに向けるステップと、
前記第1および第2の逆伝播光ビームのそれぞれを、第2の組のミラー反射器により前記閉光路に沿って第2のループに向けるステップと
を含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−139780(P2007−139780A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−311227(P2006−311227)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】