説明

自発中性子放出核燃料を装荷せる原子炉

【課題】核爆弾にもなり得る自発中性子を放出するPu240やPu242を低コストで消滅させたい。
【解決手段】従来のBWRでの冷却方式を水のニ相流から気体の水蒸気にし、自発中性子入り拡散方程式の簡略式に基づいた設計の自発中性子型核燃料集合体を装荷せる炉心にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発中性子放出核燃料を装荷せる原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
制御された核分裂連鎖反応を長期間持続することのできるようにウラニウム(U)やネプツニウム(Np)やプルトニウム(Pu)といった核燃料と冷却材とその他を配置した装置を原子炉という。
原子炉の種類には色々あるが微濃縮ウランまたは微濃縮ウランにプルトニウムを混合した核燃料を発熱源とし軽水を冷却材とした軽水型原子炉(加圧水型原子炉(PWR)と沸騰水型原子炉(BWR))が主流である。
図1はBWRの従来の核燃料棒(31)の概観図である。ジルカロイ製の被覆管(41)と、この被覆管(41)の上下開口端を気密閉塞する上部端栓(42)及び下部端栓(43)と、被覆管(41)内に長さ約370cmに装填される多数個の核燃料ペレット(44)と、気体の核分裂生成物を蓄積する上部プレナム(48)の中のスプリング(45)とから構成されている。核燃料ペレット(44)は核分裂し易いウラン235を濃縮した濃縮ウラニウムの酸化物からなる。
図2はBWRに装荷せる核燃料物質を内包する従来の核燃料集合体(30)の概略斜視図である(特許文献1)。核燃料集合体(30)は、多数本正方格子状に配列された核燃料物質を内封している円柱形状の核燃料棒(31)と、それ等の上端及び下端を夫々支持する上側結合板(32)及び下側結合板(33)と、前記核燃料棒(31)の高さ途中に位置して核燃料棒(31)間の間隔を規制する数個のスペーサ(34)と、これ等を4面で覆う断面の1辺が約14cmのチャンネルボックス(35)とから構成される。
スペーサ(34)が位置していない高さでの核燃料集合体(30)の断面図を図3に示した。核燃料棒(31)同士は上述のスペーサ(34)により間隙が確保されている。出力運転中は大半の制御棒(36)は原子炉下部に引き抜かれているため、図4に示すように隣接する核燃料集合体(30)の間は漏洩水通路(51)となっている。図5に核燃料集合体(30)の炉心配置例を示す。1は初装荷で未燃焼の核燃料集合体(30)、2は1が約1年燃焼した核燃料集合体(30)、3は2が約1年燃焼した核燃料集合体(30)、4は3が約1年燃焼した核燃料集合体(30)である。十字型点線は制御棒(36)の配置を示す。
図6は従来の沸騰水型原子炉(1)の圧力容器(60)内の概観図を示す(非特許文献1)。タービンで仕事を終えた水は、給水配管(67)を通って圧力容器(60)壁とシュラウド(39)との間のシュラウド外水(66)に混じり込む。水はポンプモータ(38)により回転する冷却材循環ポンプ(37)で加速されてシュラウド(39)の下端から矢印方向に核燃料物質を内包する核燃料棒を束ねた従来の核燃料集合体(30)に未飽和水が流入し、熱を吸収して液体の水の一部が飽和蒸気になる。液体である水と気体である飽和蒸気が共存して流れている二相流となって上部に流れる。二相流断面において飽和蒸気が占める割合をボイド率と呼んでいる。ボイド率は核燃料集合体(30)の下部ではゼロであり、中程では約40%の中ボイド率になっており、上部では約70%の高ボイド率になっている。
核燃料集合体(30)の上部からの飽和蒸気を非常に多く含有した点線矢印方向の二相流と漏洩材通路(51)からの矢印方向の水とが混合した二相流は気水分離器(65)の中に入り旋回させられることにより、開き矢印方向に上昇する飽和蒸気と矢印方向に下に落ちる水に分離される。上昇した飽和蒸気は水分を若干含んでいるため蒸気乾燥器(62)により、開き矢印方向に上昇する乾燥した飽和蒸気と矢印方向に下に落ちる水に分離される。乾燥した飽和蒸気は蒸気ドーム(61)から、圧力容器(60)壁と蒸気乾燥器胴部(63)の間を通って飽和蒸気配管(64)からタービンへ蒸気が出て行く。
蒸気乾燥器(62)内での飽和蒸気は破線で示した。なお、二相流から分離した飽和蒸気の飽和蒸気温度は、運転圧力約70気圧での飽和蒸気温度で約摂氏286度である。
原子炉出力の制御は、制御棒駆動機構により上下に動く制御棒(36)により達成する。
【特許文献1】:昭61-37591、「核燃料集合体」。
【非特許文献1】:コロナ社、著者都甲「原子動力」117、120頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
軽水型原子炉からの使用済みとなった核燃料にはプルトニウム(Pu)が含まれている。Puは長期間に亘って放射線を放出するため廃棄や保管が難しい。中でもプルトニウム240(Pu240)とプルトニウム242(Pu242)は発生量も多く、自発中性子を多く発生させるため出力予測がし難いため扱えず蓄積されていく一方である。テロリストに奪われた場合には、核爆弾にもなり得る。70kg 程度のPu242や20kg 程度のPu240は核爆弾になり得る。
従来の軽水型原子炉を若干改良して、減速材でもある冷却材の水の割合を減らしてPuを効率よく燃焼させる低減速原子炉ならPu242の発生を若干抑制できそうであるが既にあるPu242を燃焼消滅させるのは微々たるものである。
従来の原子炉は厳密には自発中性子入りだった。即ち、ウラン238(U238)は弱いながらも自発中性子を発生する。核燃料が燃焼すればPu242が生成されるため自発中性子が存在していた。ただ、Pu242が少なかったから自発中性子が無視できた。実効増倍係数は約0.99999というような実効増倍係数が1.0の臨界に近いが1.0以下の値で運転していた。設計等での予測は外部中性子源無しの固有値問題として拡散方程式を解いていた。しかし、本発明のように自発中性子を外部中性子源として積極的に大量に導入する場合には、外部中性子源問題として拡散方程式を解かねばならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、従来の軽水炉の取り出し燃料でのPuまたはこれに比べてPu242とPu240の割合が多い劣化プルトニウム(DPu)に、天然ウラン(NU)またはNUよりもウラン235(U235)の含有量が少ない劣化ウラン(DU)またはU235を濃縮した微濃縮ウラン(SEU)を混合して無限増倍係数を調節した核燃料と、水蒸気またはヘリウムまたは炭酸ガスの冷却材からなる炉心において、制御棒操作により実効増倍係数を1.0以下で運転する。液体金属を冷却材とする原子炉でも本核燃料を採用すればPu242等の有効燃焼消滅が可能である。
Pu242では核分裂エネルギー閾値が1Mev以上である。したがって、外部中性子源のエネルギーは1Mev以上であれば効果が高い。Pu242の自発中性子エネルギーは1Mev以上であるから効果が期待できる。熱中性子炉ではPu242は中性子吸収体となって核分裂連鎖反応を抑制してしまう。したがって、減速作用の小さい液体ナトリウムや気体であるヘリウムまたは水蒸気を冷却材とした原子炉なら核分裂連鎖反応を持続できる。
【発明の効果】
【0005】
冷却材が水蒸気またはヘリウムまたは炭酸ガスは中性子減速作用が弱いため核分裂エネルギー閾値が高いPu242またはPu240でも高速中性子により充分核分裂を継続できる。U238混合により核反応に制限を設定すれば自発中性子を大量に放出する核燃料を装荷せる原子炉でも、制御棒操作により安定した出力を得ることができる。U238の存在によりドップラー反応度係数が小さな負に保たれるため安全性を損なうことが無い。ガス冷却であるならボイド反応度係数も小さな負に保たれるため安全性を損なうことが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
安全性を損なうことなく発電コストを大幅に上げることなく自発中性子を放出するPu242やPu240を燃焼消滅させる原子炉が提供できた。
【実施例1】
【0007】
従来の原子炉も自発中性子入りだった。U238は少ないながらも自発中性子を放出する。少なかったから実効増倍係数は約0.99999と臨界に近い値で運転できた。外部中性子源無しの固有値問題として拡散方程式により予測が可能であり設計ができた。本発明のように多量の自発中性子を原子炉内に満遍なく有する原子炉では外部中性子源無しの固有値問題として拡散方程式を使うことでは予測精度が悪いと考えられる。外部中性子源有りの場合での原子炉内出力分布を適切に予測する簡略手法を発明した。
X0、Y0、Z0を一辺の長さとする3次元体系での高速群と低速群からなる外部中性子源を考慮した2群拡散方程式の近似解を以下に詳述する。「*」は掛け算、「/」は割り算、「≒」は近似的に等しいをあらわす。
g=1は高速群(核分裂中性子と自発中性子スペクトルS(E)を含む)。
g=2は低速群。
Φgはg群の中性子束。
S1は単位体積当たりの高速群の自発中性子数(S(E)の和)。
Σn2nは一個の中性子を吸収して2個中性子を放出する巨視的核断面積。
Σsl1は巨視的減速核断面積。
Σcgはg群の巨視的捕獲核断面積。
Σfgはg群の巨視的核分裂核断面積。
νgはg群の核分裂による中性子発生数。
Dgはg群の巨視的拡散係数。
qは核分裂による発生エネルギー。
Σsl1,Σc1,ν1,Σf1,Σn2n,D1,ν2,Σf2,Σa2,D2は、外部中性子源入り問題を解いた詳細群中性子束で平均化した値である。上記核断面積は、外部中性子源問題として輸送方程式を解かねばならないが臨界近傍の場合には外部中性子源無し固有値計算問題として輸送方程式を解いた値でも良い近似であるし実用的でもある。
ΣR1 = ( Σsl1+Σc1+Σf1+Σn2n )
Σa2 = Σc2 +Σf2
ke1 = ( ν1*Σf1+2 *Σn2n ) /ΣR1
ke2 =( ν2*Σf2 / Σa2 ) * (Σsl1 /ΣR1 )
kinf = ke1 + ke2
とすると、中性子の二群拡散方程式は下記の数式1、数式2の様にあらわされることは一般に知られている[非特許文献2]。数式1は核分裂で発生した中性子と外部中性子源から放出される中性子にかかわる高速群での拡散方程式であり、数式2は高速群から減速して来た中性子にかかわる低速群での拡散方程式である。kinfを自発中性子有りの無限増倍係数と呼ぶことにする。
[数式1]
-D1 * ∇2Φ1 +ΣR1 *Φ1 = ( ν1*Σf1+2 *Σn2n ) *Φ1 +ν2*Σf2 *Φ2 + S1
[数式2]
-D2 * ∇2Φ2 +Σa2 *Φ2 =Σsl1*Φ1
次に、B12 = B22 = ( 3.1416/X0) 2+(3.1416/Y0) 2+(3.1416/Z0) 2
として
( D1/ΣR1 ) = M12
-∇2Φ1 = B12 * Φ1
( D2/Σa2 ) = M22
-∇2Φ2 = B22 * Φ2
L1 = 1 / ( 1 + M12 * B12 )
L2 = 1 / ( 1 + M22 * B22 )
keff = ( ke1+ ke2 * L2 ) * L1 = ( ( ke1/L2 ) + ke2 ) * L1 * L2
Lgをg群の炉心からの中性子漏洩割合、keffを炉心からの中性子漏洩を考慮した自発中性子有りの実効増倍率とすると、数式1、数式2より炉心の単位体積当たり平均のg群の中性子束aveΦgの近似解は数式3、数式4であらわされる。炉心の単位体積当たり平均の出力avePWの近似解は数式5であらわされる。
[数式3]
aveΦ1 = S1* L1 / ( ( 1 keff ) *ΣR1 )
[数式4]
aveΦ2 = (Σsl1/Σa2 ) * L1 * L2 * S1 / ( ( 1 keff ) *ΣR1 )
[数式5]
avePW = q* ( Σf1*aveΦ1 + Σf2*aveΦ2 )
= q * (Σf1 + Σf2 *(Σsl1/Σa2 ) * L2 ) * S1* L1 / ( ( 1 keff ) *ΣR1 )
Σa2の大きい物質で構成される制御棒操作でΣa2とkeffを制御して出力レベルを決めることができる。
L2≒1.0かつ、Σsl1<<Σa2、かつΣn2n<<ΣR1の場合には、近似的には数式6のようにあらせる。
[数式6]
avePW = q*( ke1 /ν1 ) * S1* L1 / ( 1 keff )
keffは炉心のどこでも一定であるから、「(i)」を領域iでの値とすると中心からの位置(x,y,z) での出力PW(i)は、-X0≦x≦X0 、-Y0≦y≦Y0 、-Z0≦z≦Z0 の範囲で領域境界に行く程漏洩が大きくなる近似を余弦(cos)で近似すると、π=3.1416として数式7のようにあらわせる。
[数式7]
PW(i) = (π/2)3 * q(i) * (Σf1(i) + Σf2(i) *(Σsl1(i)/Σa2(i) ) * L2 ) *
S1(i)* L1 *cos(π*x/X0) * cos(π*y/Y0) * cos(π*z/Z0) / ( ( 1 keff ) *ΣR1(i) )
以下に、外部中性子源のある場合keff < 1.0でのkinf(i)のおおよその上限を求めてみる。
keff = ( ( ke1(i)/L2 ) + ke2(i) ) * L1 * L2
であったから、L2≒1.0 とするとkeff ≒ kinf(i) * L1* L2である。したがって、
kinf(i) ≒ keff / ( L1* L2 )
keffは1.0以下であれば自発中性子があってもPW(i)は極端に大きな値にならないから、
[数式8]
kinf(i) < 1 / ( L1* L2 )
なお、中性子が漏洩しやすい炉心境界に近い端部或いは周辺部のkinf(j)が小さければ数式8よりも大きいkinf(i)が可能である。
1.0に近いkinfの値は自発中性子を考慮しないで固有値問題として輸送方程式を解いて求め、1.0に近いkeffは自発中性子を考慮しないで固有値問題として拡散方程式を解いて求めた値を使っても良い近似である。
【非特許文献3】:現代工学社、1983年、著三神「核燃料管理の方法と解析」
【実施例2】
【0008】
図7は自発中性子有りの無限増倍係数(kinf)が数式8の範囲内になるようにPu242またはPu240を多量に含有するDPuにDUまたはNUまたはSEUを混合させた本発明の自発中性子型核燃料棒(131)である。Puには半減期の比較的短いプルトニウム241(Pu241)が含まれている関係上DPuは時間と共に組成が変化するためkinfの調節が難しい。本発明では原子炉への初装荷核燃料におけるDPuの組成は同一のものを使い原子炉内での自発中性子放出数を一定にし、DUまたはNUまたはSEUにおけるU235の割合によりkinfの調節を行うことにより数式7に基づいて出力分布平坦化を実施することを特徴とする。上部と下部にはDPu とNUからなる混合酸化物を核燃料としたNU含有自発中性子放出核燃料ペレット(145)を装荷し中央部にはDPu とDUからなる混合酸化物を核燃料としたDU含有自発中性子放出核燃料ペレット(144)を装荷した。ペレットの中心には冷却材が過度に高温になり密度が減少し中性子減速作用が極端に低下しても核反応が過度に活発にならないように固体減速材ペレット(101)例えば炭素や炭化珪素や硼素11を濃縮した炭化硼素を配している。被覆管は高温に強いステンレス被覆管(141)である。ステンレスの代わりにジルカロイであっても可能である。
図8は自発中性子型核燃料棒(131)からなる本発明の自発中性子型核燃料集合体(130)である。チャンネルボックス(35)はステンレス製にする。自発中性子型核燃料棒(131)同士の間の気体冷却材通路(149)には気体冷却材が流れる。チャンネルボックス(35)同士の間の漏洩気体通路(52)には気体冷却材が流れる。
図9は本発明の自発中性子型核燃料集合体(130)を装荷せる自発中性子型原子炉の炉心である。21はDPuとU235の割合が少ないDUとNUによりkinfを小さくした自発中性子型核燃料集合体(130)である。22は21が1年燃焼した自発中性子型核燃料集合体(130)である。23は22が1年燃焼した自発中性子型核燃料集合体(130)である。24は23が1年燃焼した自発中性子型核燃料集合体(130)である。11は出力分布を平坦化するために数式7に基づき自発中性子型核燃料集合体(130)のDUをNUにしNUをSEUにしてU235の割合を多くしてkinfを大きくした大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)である。12は11が1年燃焼した大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)である。13は12が1年燃焼した大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)である。14は13が1年燃焼した大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)である。kinfを大きくした大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)を炉心周辺部に装荷することにより出力分布の平坦化が図れた。
図10はBWRを改良した本発明の自発中性子型原子炉の概観図を示す。シュラウド(39)は密封シュラウド(54)とした。核燃料棒の冷却は二相流に変わって水蒸気にした。タービンで仕事を終えた低温の水蒸気は、給気管(81)を通って給気吸い込みノズル(83)に放出され低温気体ドーム(86)から自発中性子放出型核燃料集合体(130)に入り加熱され高温気体ドーム(55)に出てから、高温気体管(56)を通ってタービンへ出て行く。給気管(81)の出口は給気吸い込みノズル(83)の中ほどであり、給気吸い込みノズル(83)の吸い込み口は給気管スカート(82)で覆われている。給気管(81)からの給気が途絶えてもシュラウド外気体冷却材(53)の気体が自発中性子放出型核燃料集合体(130)に入っていき、更には、底部冷却フィン(84)で常時冷却されている底部低温冷却材(85)が自発中性子放出型核燃料集合体(130)を冷却する。
事故時での緊急冷却のためには緊急時注水管(87)から液体が注入される。緊急時スプレー管(88)からも液体が漏洩気体通路(52)に注入されチャンネルボックス(35)を介して自発中性子放出型核燃料集合体(130)を冷却する。液体の水は高速中性子を減速させるためPu242の核分裂は抑制される。
原子炉出力は制御棒(36)操作により自発中性子有りの実効増倍係数(keff)が1.0を上回らない範囲で調節することにより調節する。
気体冷却材は水蒸気の他にヘリウムや炭酸ガスでも可能である。
DUとしてNpや超ウラン元素やウラン234(U234)やウラン236(U236)を多く含有する再処理ウランを利用すれば、Npや超ウラン元素やU234やU236の消滅処理に役立つ。
従来のBWRでも本発明の自発中性子型核燃料集合体を装荷し、水をできるだけ排除しかつ、高ボイド率で運転すればPu242を燃焼消滅しつつ出力を得ることができる。例えば、軽水炉からの使用済みMOX燃料を再処理して得られたDPuとUの混合核燃料はNU含有自発中性子放出核燃料ペレット(145)相当であるからこれを中央から上に装荷し下部にはSEUからなる核燃料ペレット(44)とした自発中性子型核燃料棒を束ねた自発中性子型核燃料集合体で炉心を構築することが可能である。本発明による自発中性子入り拡散方程式の簡略式に基づいた設計の核燃料集合体を装荷せる炉心にすれば早期に実現できる。従来のBWRでの冷却方式を水のニ相流から気体の水蒸気にすればより一層の効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明により、使用済み核燃料の処分において扱い難かったDPuやNpや超ウラン元素やU234やU236を有効に利用消滅できるようになる。最終処分地の問題も軽減される。強いては発電コスト低減になる。
現存するガス冷却炉やナトリウム冷却炉やPWRにも応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】はBWRの従来の核燃料棒(31)の概観図である。
【図2】はBWRに装荷せる核燃料物質を内包する従来の核燃料集合体(30)の概略斜視図である。
【図3】はスペーサ(34)が位置していない高さでの核燃料集合体(30)の断面図である。
【図4】は出力運転中で制御棒(36)が引き抜かれている時の炉心部分図である。
【図5】は核燃料集合体(30)の炉心配置例を示す。
【図6】は従来の沸騰水型原子炉の圧力容器(60)内の概観図である。
【図7】は本発明のDPuにDUとNUを混合した自発中性子型核燃料棒(131)の概観図である。
【図8】は自発中性子型核燃料棒(131)からなる本発明の自発中性子型核燃料集合体(130)の断面図である。
【図9】は本発明の自発中性子型核燃料集合体(130)とkinfを大きくした大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)を装荷せる炉心である。
【図10】は本発明の自発中性子型原子炉の概観図である。
【符号の説明】
【0011】
1は従来の初装荷で未燃焼の核燃料集合体(30)。
2は1が1年燃焼した核燃料集合体(30)。
3は2が1年燃焼した核燃料集合体(30)。
4は3が1年燃焼した核燃料集合体(30)。
11は初装荷で未燃焼のkinfの大きい大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)。
12は11が1年燃焼した大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)。
13は12が1年燃焼した大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)。
14は13が1年燃焼した大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)。
21は初装荷で未燃焼のkinfの小さい自発中性子型核燃料集合体(130)。
22は21が1年燃焼した自発中性子型核燃料集合体(130)。
23は22が1年燃焼した自発中性子型核燃料集合体(130)。
24は23が1年燃焼した自発中性子型核燃料集合体(130)。
30は従来の核燃料集合体。
31は従来の核燃料棒。
32は上側結合板。
33は下側結合板。
34はスペーサ。
35はチャンネルボックス。
36は制御棒。
37は冷却材循環ポンプ。
38はポンプモータ。
39はシュラウド。
41は被覆管。
42は上部端栓。
43は下部端栓。
44は核燃料ペレット。
45はスプリング。
48は上部プレナム。
49は冷却水通路
51は漏洩水通路。
52は漏洩気体通路。
53はシュラウド外気体冷却材。
54は密封シュラウド。
55は高温気体ドーム。
56は高温気体管。
60は圧力容器。
61は蒸気ドーム。
62は蒸気乾燥機。
63は蒸気乾燥機胴部。
64は飽和蒸気配管。
65は気水分離器。
66はシュラウド外水。
67は給水配管。
81は給気管。
82は給気管スカート。
83は給気吸い込みノズル。
84は底部冷却フィン。
85は底部低温冷却材。
86は低温気体ドーム。
87は緊急時注水管。
88は緊急時スプレー管。
101は固体減速材ペレット。
130は自発中性子型核燃料集合体。
131は自発中性子型核燃料棒。
141はステンレス被覆管。
144はDU添加自発中性子放出核燃料ペレット。
145はNU添加自発中性子放出核燃料ペレット。
149は気体冷却材通路。
232はkinfを大きくした大kinf自発中性子型核燃料集合体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体減速材(101)を芯にして多量の自発中性子を放出するDPuにDUを混合した混合酸化物核燃料からなるDU含有自発中性子放出核燃料ペレット(144)をステンレス被覆管(141)の中央部に装荷し、固体減速材(101)を芯にして前記DPuと同一の組成のDPuにNUを混合した混合酸化物核燃料からなるNU含有自発中性子放出核燃料ペレット(145)をステンレス被覆管(141)の上部と下部に装荷して高さ方向出力分布を平坦化したことを特徴とする自発中性子型核燃料棒(131)を多数本装荷してなる自発中性子型核燃料集合体(130)。
【請求項2】
上記核燃料集合体においてDPuは同一組成であるがDUをNUとし、NUをSEUに置き換えたことを特徴とする大kinf自発中性子型核燃料集合体(232)を炉心周辺部に装荷し、自発中性子型核燃料集合体(130)を炉心中心部に装荷して出力分布を平坦化したことを特徴とする炉心。
【請求項3】
数式7
PW(i) = (π/2)3 * q(i) * (Σf1(i) + Σf2(i) *(Σsl1(i)/Σa2(i) ) * L2 ) *
S1(i)* L1 *cos(π*x/X0) * cos(π*y/Y0) * cos(π*z/Z0) / ( ( 1 keff ) *ΣR1(i) )
および数式8
kinf(i) < 1 / ( L1* L2 )
により出力分布を平坦化した請求項1の核燃料棒および核燃料集合体および請求項2の炉心。
【請求項4】
請求項2における炉心においてBWRを改造し水蒸気を冷却材としたことを特徴とする自発中性子型原子炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−163245(P2007−163245A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358572(P2005−358572)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(303002055)
【Fターム(参考)】