説明

自立型乾式終端接続部

【課題】軽量で設置作業が容易であり、組み立ての作業性を向上させることが可能な自立型乾式終端接続部を提供する。
【解決手段】絶縁被覆した被覆層13を剥ぎ取り内部導体11を露出させたケーブルの一端側が挿入される挿入穴部9を設けたゴム弾性を有する絶縁部材3と、絶縁部材3の一端に一体化され、挿入穴部9の底部から絶縁部材3の一端を越えて突出した内部導体11と接続する端子19と、絶縁部材3の一端側から他端側に延在し、挿入穴部9を囲むように絶縁部材3に埋め込まれ、絶縁部材3の一端側から他端側に延在する電気的絶縁性及び剛性を有する樹脂からなる補強部材25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電用の自立型乾式終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配電用の乾式終端接続部には、磁器製の碍管を有するものと、ゴム製のものとがある。碍管を用いた終端接続部は重く、電柱への設置作業や組み立て作業が容易でない。一方、ゴム被覆を用いた終端接続部は軽量であり、設置作業や組み立て作業は容易であるが、ゴム被覆が可撓性であるため自立固定することができない。
【0003】
上記の問題に対して、ゴム製の円筒形状の絶縁層中に芯材として剛性を有する樹脂管を埋め込んだ自立型乾式終端接続部が提案されている(特許文献1参照)。軽量なゴム製の絶縁層及び樹脂管を用いることにより終端接続部を軽量化することができる。また、樹脂管を芯材として用いることにより終端接続部を自立させることができる。そのため、電柱への設置作業が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−220009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案された自立型乾式終端接続部では、芯材として剛性を有する樹脂管を用いるため、絶縁部材の差込み穴部を拡径しながらケーブルを挿入する際に大きな挿入力が必要となり、作業性が良くない。適用可能なケーブルサイズが限定されてしまうので、使用するケーブルのサイズに合わせた直径の差込み穴を有する自立型乾式終端接続部を複数準備しなければならない。
【0006】
上記問題点を鑑み、本発明の目的は、軽量で設置作業が容易であり、組み立ての作業性を向上させることが可能な自立型乾式終端接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、絶縁被覆した被覆層を剥ぎ取り内部導体を露出させたケーブルの一端側が挿入される挿入穴部を設けたゴム弾性を有する絶縁部材と、絶縁部材の一端に一体化され、挿入穴部の底部から絶縁部材の一端を越えて突出した内部導体と接続する端子と、挿入穴部を囲むように絶縁部材に埋め込まれ、それぞれが前記絶縁部材の一端側から他端側に延在する電気的絶縁性及び剛性を有する樹脂からなる補強部材とを備える自立型乾式終端接続部が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軽量で設置作業が容易であり、組み立ての作業性を向上させることが可能な自立型乾式終端接続部を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る自立型乾式終端接続部の一例を示す要部断面を含む正面図である。
【図2】図1に示した自立型乾式終端接続部のA−A断面を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る自立型乾式終端接続部の樹脂管の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
又、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
本発明の実施の形態に係る自立型乾式終端接続部1は、図1に示すように、ゴム弾性を有する絶縁ゴム製の絶縁部材3、金属製の端子19、電気的絶縁性及び剛性を有する樹脂からなる補強部材25、ゴム弾性を有する高誘電ゴム製の高誘電層23、及び導電性を有する固定部材35を備える。絶縁部材3の外周には、一端側の領域に雨等による電気的特性の劣化を防ぐため、複数の傘部5が設けられる。絶縁部材3の内部には、他端から一端側に向かって開口された挿入穴部9が設けられる。端子19は、架空電線に接続される端子部18a及びケーブル7に接続される接続部18bを有する。接続部18bには、一端から端子部18aに向かって開口された接続穴部21が設けられる。挿入穴部9と接続穴部21が連結するように、接続部18bの一一端が、絶縁部材3の一端に埋め込まれる。
【0013】
補強部材25は、絶縁部材3の端側から他端側に延在し、接続部18bの一端部分及び挿入穴部9を囲むように絶縁部材3に埋め込まれる。補強部材25は、図2に示すように、絶縁部材3の一端側から他端側に向かう方向に沿って2分割された樹脂管である。2分割された補強部材25を連結するため、樹脂管25の外周にゴム弾性を有するモールド部材27が設けられる。
【0014】
高誘電層23は、円筒形状を有し、その内周面が、挿入穴部9の他端側において露出するように設けられる。固定部材35は、絶縁部材3の他端側の外周に設けられる。固定部材35には、乾式終端接続部1を電柱等に固定する固定用金具(図示省略)が取り付けられる。
【0015】
絶縁部材3として、エチレンプロピレン(EP)ゴム、シリコーンゴム等の絶縁性を有するゴム等が用いられる。高誘電層23として、EPゴム、シリコーンゴム等で高誘電性を有するゴム等が用いられる。補強部材25として、ポリフェニレンオキサイド(PPO)樹脂や耐熱性を有するエンプラ等が用いられる。モールド部材27として、EPゴム、シリコーンゴム等の絶縁性を有するゴム等が用いられる。
【0016】
次に、図1に示した自立型乾式終端接続部1の製造方法について説明する。まず、金属製の端子19、2分割されたPPO樹脂管からなる補強部材25、及び高誘電ゴム製の高誘電層23を準備する。
【0017】
図3に示すように、2分割された補強部材25の外周にモールド部材27を成形する。その後、成形された補強部材25と端子19を成形金型の主型に設置する。また、挿入穴部9に対応する中子の所定の位置に高誘電層23を取り付け、中子を主型に設置する。次いで、絶縁部材3のゴム原料を主型の空洞部に注入する。このようにして、端子19、補強部材25、及び高誘電層23が一体化されて形成される。その後、固定部材35が絶縁部材3の所定の位置に取付けられて、乾式終端接続部1が製造される。
【0018】
乾式終端接続部1に接続されるケーブル7は、図1に示すように、内部導体11、内部導体11を絶縁被覆する被覆層13、被覆層13の外周に設けられた半導電層14、半導電層14の外周に設けられた銅テープ等の遮蔽層15、及び遮蔽層15の外周に設けられたポリ塩化ビニル(PVC)等のシース17を備える。ケーブル7の一端側において、シース17、遮蔽層15、半導電層14、及び被覆層13をそれぞれ順次剥離して、内部導体11、被覆層13、半導電層14、及び遮蔽層15が、それぞれ露出している。
【0019】
ケーブル7は、加工された一端側を乾式終端接続部1の他端側に開口した挿入穴部9にシース17が差し込まれるように挿入される。内部導体11は、挿入穴部9の底部から絶縁部材3の一端を越えて突出し、接続穴部21に挿入される。接続穴部21に挿入された内部導体11は、圧着等により接続部18bに電気的に接続される。ケーブル7の被覆層13が露出した部分は、挿入穴部9の一端側で絶縁部材3の内周面に接触し、他端側で高誘電層23の内周面に接触する位置に配置される。半導電層14及び遮蔽層15が露出した部分は、固定部材35により挟持される位置に配置される。なお、遮蔽層15の外周に巻きつけた導電部材16を乾式終端接続部1の外部に取り出してアース線として用いてもよい。
【0020】
被覆層13の外径が挿入穴部9の内径より大きなケーブル7を絶縁部材3の挿入穴部9に挿入する際、絶縁部材3に拡径する力が生じる。実施の形態に係る乾式終端接続部1では、補強部材25は2分割された樹脂管である。したがって、拡径する力により、補強部材25が2分割部で開きながらゴム弾性を有する絶縁部材3及び高誘電層23が拡がるので、ケーブル7の挿入の尤度を大きくすることができる。その結果、ケーブル7を乾式終端接続部1に挿入する組み立ての作業性を向上させることができる。
【0021】
挿入穴部9に挿入されたケーブル7は、被覆層13において絶縁部材3及び高誘電層23と接触する。絶縁部材3及び高誘電層23には、ゴム弾性を有する材料が用いられ、応力緩和作用を有する。したがって、被覆層13は、応力緩和作用を有する絶縁部材3及び高誘電層23で覆われている。その結果、被覆層13に作用する応力を軽減することができる。
【0022】
また、実施の形態に係る乾式終端接続部では、碍管より軽量なゴム製の絶縁部材3が用いられるので、軽量化でき電柱等への設置作業を容易にすることができる。その結果、自立型乾式終端接続部1の接続作業時間を短縮することができる。
【0023】
また、剛性を有する補強部材25が、金属製の端子19の接続部18bの一端部分を囲むように絶縁部材3に埋め込まれている。更に、挿入穴部9に差込まれたケーブル7の周りに剛性のある補強部材25が配置されている。そのため、絶縁部材3の外側から把持して固定することにより乾式終端接続部1を自立させることができる。
【0024】
また、自立型乾式終端接続部1は主に屋外で使用されるために、風や地震などの外力を受ける。例えば、風圧荷重が7.84×10-4N/mm2(80kgf/m2)のとき、最大で21.8MPa、地震の強さは0.3Gのときで、7.69MPa(0.78kgf/mm2)の外力にも耐えて自立を保っていることが求められる。したがって、乾式終端接続部1には、最大応力21.8MPaに耐える強度が要求される。絶縁部材3に用いられるEPゴムの引張強度は約5MPaであり、シリコーンゴムの引張強度は約4MPaである。一方、補強部材25に用いられるPPO樹脂の引張強度は約68MPaであるので、EPゴムやシリコーンゴムに対して約17倍〜約18倍も強度が高くなる。また、架空電線と引き込むケーブルにより接続される端子19には曲げ応力が働く。EPゴムやシリコーンゴムでは、可撓性があって曲げ強度を計れないが、PPO樹脂の曲げ強度は92MPaである。
【0025】
このように、実施の形態では、ゴム弾性を有する絶縁部材3に剛性を有する補強部材25が埋め込まれている。そのため、乾式終端接続部1の引張り強度及び曲げ強度を向上させることができ、乾式終端接続部1の自立性を向上させることが可能となる。
【0026】
また、実施の形態に係る自立型乾式終端接続部1は屋外高圧配電線の装柱において自立可能であることから、端子19に接続される架空電線からの引込みケーブルの固定が不要である。そのため、従来の乾式終端接続部で必要とされた腕金や碍子が不要となり、装柱を外観上すっきりした構成とすることができる。
【0027】
なお、上述したように、2分割の樹脂管からなる補強部材25を用いて説明しているが、補強部材25は2分割の樹脂管に限定されない。例えば、複数の補強部材25として、それぞれが樹脂管を3分割以上に分割した複数の部材を用いてもよい。更に、複数の補強部材25として、それぞれが絶縁部材3の一端側から他端側に延在する樹脂製の部材を用いてもよい。複数の補強部材25それぞれの形状は限定されないが、製造上の観点から、絶縁部材3の一端側から他端側に延在する方向に垂直な方向に切った断面において、複数の補強部材のそれぞれが円弧状であることが望ましい。
【0028】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、配電用の自立型乾式終端接続部に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…自立型乾式終端接続部
3…絶縁部材
7…ケーブル
9…挿入穴部
11…内部導体
13…被覆層
19…端子
21…接続穴部
23…高誘電層
25…補強部材
27…モールド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆した被覆層を剥ぎ取り内部導体を露出させたケーブルの一端側が挿入される挿入穴部を設けたゴム弾性を有する絶縁部材と、
前記絶縁部材の一端に一体化され、前記挿入穴部の底部から前記絶縁部材の一端を越えて突出した前記内部導体と接続する端子と、
前記挿入穴部を囲むように前記絶縁部材に埋め込まれ、それぞれが前記絶縁部材の一端側から他端側に延在する電気的絶縁性及び剛性を有する樹脂からなる複数の補強部材
とを備えることを特徴とする自立型乾式終端接続部。
【請求項2】
前記複数の補強部材は、前記絶縁部材の一端側から前記他端側に向かう方向に沿って樹脂管を複数に分割した複数の部材であることを特徴とする請求項1に記載の自立型乾式終端接続部。
【請求項3】
前記補強部材が、ポリフェニレンオキサイド樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の自立型乾式終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−135637(P2011−135637A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290426(P2009−290426)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】