説明

自立性可撓袋

【課題】 自立性可撓袋の起立性を良くすること。
【解決手段】 自立性可撓袋10において、袋体10A内で気体を発生させる物質を該袋体10Aへの内容物の充填時に該袋体10Aに装填してなるもの。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体洗剤等の内容物を充填した自立性可撓袋に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、可撓性のシートからなる袋体に内容物を充填した状態で封止してなる自立性可撓袋が、内容物をボトル等へ詰め替えるための詰め替え用容器等として用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】自立性可撓袋では、袋体に内容物を充填した後の封止時に、袋体の上部でその開口部を挟んで相対する可撓性のシートの胴部のシールされた両端部を反対方向に引っ張リ、それら両シートを平面状に重ね合せてその開口部を融着する等により封止することとしている。即ち、袋体はその開口部の融着のために相対するシートの平面状の重ね合せを該袋体の上部の一定範囲に渡って形成する結果、袋体の上部に内容物も空気も入らないデッドスペースを生ずる。
【0004】液体洗剤等を内容物とする自立性可撓袋では、袋体の開口部の融着時に相対するシートの平面状の重ね合せ部に内容物の界面活性剤が表面張力で侵入すると、この重ね合せ部での融着が不能になる。そこで、これを回避するため、重ね合せ部を内容物の充填レベルから確実に乖離する必要があり、袋体の上部には例えば袋体全高の 1/3にも及ぶ大きなデッドスペースを生ずるものとなる。
【0005】自立性可撓袋において、袋体の上部に存在するデッドスペースは、袋体の起立性を悪くし、店頭での陳列性を損なう。
【0006】本発明の課題は、自立性可撓袋の起立性を良くすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、可撓性のシートからなる袋体に内容物を充填した状態で封止してなる自立性可撓袋であって、袋体内で気体を発生させる物質を該袋体に装填してなることを特徴とする自立性可撓袋である。
【0008】
【作用】例えば、加熱あるいはアルカリ溶液中で気体を発生しやすい過酸化物、pH調整剤と併せて気体を発生させる炭酸塩等の気体発生物質あるいは、ドライアイス等、固体の気体発生物質を該袋体に装填し、該袋体を封止する。ここで気体を発生させる物質としては、袋体内容物に影響を与えない物質である。この袋体の封止段階では、その開口部の封着のために相対するシートの平面状の重ね合せを該袋体の上部の一定範囲に渡って形成する結果、袋体の上部にデッドスペースを有する。袋体の封止後、一定時間経過すると、上述の気体を発生させる物質が反応して袋体内のデッドスペースに広がり、袋体を膨らませてその起立性を良くし、ひいては店頭での陳列性を向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】自立性可撓袋10は、図1に示す如く、一対の胴部シート11の下部に2つ折り状の底部シート12を融着し(この融着部をボトム封着部13Aと称する)、両胴部シート11の両サイド部を互いに融着し(この融着部をサイド封着部13Bと称する)、両胴部シート11の上端部に開口部14を形成した袋体10Aとする(図1(A))。そして、袋体10Aの開口部14から、胴部シート11、底部シート12に囲まれた袋内空間に液体洗剤等の内容物を充填した後、開口部14を挟んで相対する胴部シート11の両端部を反対方向に引っ張り、それら両胴部シート11を平面状に重ね合せてその開口部14を融着して封止する(この融着部をトップ封着部13Cと称する)(図1(B))。ここで、液体洗剤とは、例えば、アニオン、カチオン、ノニオン、両性等の界面活性剤、エタノール、モノエタノールアミン等のアルカリ剤等が含まれる水溶液である。
【0010】この自立性可撓袋10では、2つ折り状の底部シート12を展開せしめることにより、袋体10Aを自立せしめるように構成されている。
【0011】尚、自立性可撓袋10は、使用段階で、トップ封着部13Cを切断開封することによって注出口を形成し、この注出口から内容物を注出可能としている。
【0012】また、自立性可撓袋10は、胴部シート11、底部シート12をラミネートシートから構成し、例えば、熱融着性を備えたリニア低密度ポリエチレン等を内層材とし、方向性ナイロン等を外層材としている。また、胴部シート11、底部シート12は、上述の内層材と外層材の間に、袋の引裂性を高める等のために方向性ポリプロピレン等の中間層材を介装しても良い。更に、袋体はガスバリア性を有する。例えば、アルミラミネート等の材質を用いると好ましい。
【0013】しかるに、自立性可撓袋10にあっては、袋体10A内で気体を発生させる液体もしくはドライアイス等の固体の気体発生物質を、袋体10Aへの内容物の充填時に、該袋体10Aに装填することとしている。気体発生物質は、袋体10Aへの装填後、一定時間経過後に気体となり、袋体10Aの上部空間に広がって袋体10Aを膨らませ、袋体10Aの起立性を良くするものである。気体発生物質が気体となる上述の一定時間とは、最も短時間で袋体10Aの封止完了までの数分間、最も長時間で袋体10Aが店頭にて陳列せしめられるまでの数日間である。
【0014】ここで、気体発生物質としては、袋体10Aの内容物に影響を与えない物質であり、固体、液体からその気化した後に非可逆的であることを必要とし、例えば、ドライアイス、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過硼酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、又は炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム等の炭酸塩を採用できる。そして、気体発生物質としては、袋体10Aの内容物のpHに応じてそのpHで気体を生じ易い物質を選定できる。また、気体発生物質は、袋体10Aの封止後、加熱されてその気化を促進せしめられるものであって良い。
【0015】また、袋体10Aに装填すべき気体発生物質の装填量は、袋体10Aの内容物充填後のデッドスペースの容積を占有するだけの気体量を発生させ得る量である。ここでデッドスペースの容積とは、袋体満量の約1/3 である。前記の気体発生量は、好ましくは、デッドスペース占有容積の50〜110 %がよい。より好ましくは、70〜110 %がよい。50%より少ないと袋体の起立性が悪くなり、110 %を越えると気体発生量が多くなり、袋体が破裂する危険がある。例えば、気体発生物質として過酸化水素水を用いる場合の袋体10Aへのその装填量は以下の如く定められる。反応式は以下の通りとなる。
【0016】
【数1】


即ち、 1モルのH22 (34g )から、 1/2モルのO2 (11.2 L)が得られる。袋体10Aの内容物充填後のデッドスペースの容積を 190mLであるとすると、H22 の装填量は34×( 190/11.2×103 =0.58g )となる。
【0017】従って、自立性可撓袋10の製造手順は以下の如くになる。
(1) 袋体10Aの開口部14から所定充填量の内容物を袋体10Aに充填する。
【0018】(2) 上記(1) と同時に、又は充填前あるいは充填後、予め定めてある所定装填量の気体発生物質を袋体10Aに装填する。
【0019】(3) 袋体10Aの開口部14を封止する。このとき、開口部14を挟んで相対する胴部シート11の両端部を反対方向に引っ張り、それら両胴部シート11を平面状に重ね合せてその開口部14を融着するものとし、袋体10Aの上部には内容物も空気もないデッドスペースを生ずるものとなる。
【0020】(4) 上記(3) の一定時間経過後に、気体を発生させる物質が袋体10A内で反応し、袋体10Aの上部デッドスペースに広がって袋体10Aを膨らませ、袋体10Aに一定の起立性を具備せしめる。
【0021】従って、本実施形態によれば以下の作用がある。尚、図2は袋体10Aの上部にデッドスペースが存在する自立性可撓袋10であり、袋体10Aの起立性が悪い。
【0022】以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、自立性可撓袋10におけるトップ封着部13Cの形状は、袋体10Aの封止性を保つことができるものであれば、いかなる形状であっても良い。
【0023】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、自立性可撓袋の起立性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明が適用された自立性可撓袋を示す模式図である。
【図2】図2は従来例を示す模式図である。
【符号の説明】
10 自立性可撓袋
11 胴部シート
12 底部シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 可撓性のシートからなる袋体に内容物を充填した状態で封止してなる自立性可撓袋であって、袋体内で気体を発生させる物質を該袋体に装填してなることを特徴とする自立性可撓袋。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開平11−227793
【公開日】平成11年(1999)8月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−44215
【出願日】平成10年(1998)2月12日
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)