説明

自脱型コンバインの防塵構造

【課題】防塵機能を充分に発揮させることが可能となる自脱型コンバインの防塵構造を提供する。
【解決手段】刈取部3と仕切り壁6にて仕切られる状態で搭乗運転部7が備えられ、且つ、その下方側に原動部8が備えられ、仕切り壁6と刈取部3との間に形成される隙間を塞ぐ防塵カバーKが、天井壁部70と、この天井壁部70の前部側縁部から下方に向けて縦向き姿勢で延設される前側縦壁部72と、後部側縁部から下方に向けて縦向き姿勢で延設される後側縦壁部74の夫々を硬質材にて形成する状態で備えて構成され、穀稈搬送装置38の搬送終端部から刈取穀稈の穂先部を案内する可撓性シート体65が、前側縦壁部72に接する状態で設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植立穀稈を刈り取る刈取装置及びその刈取装置にて刈り取った穀稈を脱穀装置に搬送する穀稈搬送装置を有する刈取部が備えられ、前記走行機体の前部の横一側箇所に、前記刈取部と仕切り壁にて仕切られる状態で搭乗運転部が備えられ、且つ、その搭乗運転部の下方側に原動部が備えられ、前記脱穀装置の前部側箇所に、前記穀稈搬送装置から受け渡されてフィードチェーンにて株元側が挟持されて搬送される刈取穀稈の穂先側を受止めて扱室に流下案内する入口プレートが備えられ、前記仕切り壁と前記刈取部との間に形成される隙間を塞ぐ防塵カバーが備えられている自脱型コンバインの防塵構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記防塵カバーは、上記した仕切り壁と刈取部との間の隙間からワラ屑等が原動部に入り込んで、原動部に悪影響を与えたりすることがないように前記隙間を閉塞させるようにしたものであるが、従来では、前記防塵カバーが、仕切り壁に固定状態で取り付けられて刈取部側に向かって延びる平面視で長方形状に形成された可撓性を有する樹脂シートにて構成され、この可撓性を有する防塵カバーが脱穀装置の入口プレートに載置している状態で受止められる構成となっていた(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−193908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、可撓性を有する樹脂シートにて防塵カバーが構成されていることから、刈取作業時や刈取部のメンテナンス作業時等に、防塵カバーが変形し易く、脱穀装置の入口プレートから外れてしまうことがあった。このように脱穀装置の入口プレートから外れた状態のままで刈取作業を行うと、刈取部と仕切り壁との間に隙間ができてしまい、ワラ屑がその隙間から原動部等の機体内部に入り込むおそれがある。
【0005】
さらに説明を加えると、上記したような防塵カバーは、前記仕切り壁と刈取部との間に形成される隙間、言い換えると、搭乗運転部や原動部が備えられる箇所と刈取部との間に形成される隙間を塞ぐものであるが、この防塵カバーが設けられる箇所は、機体横幅方向の中央側に位置するものであり、走行機体の横外側に位置する作業者が目視し難いものとなり、脱穀装置の入口プレートから外れたままの状態になっていることを作業者が認識できないまま刈取作業を行うおそれがある。
【0006】
又、上記従来構成では、可撓性を有する樹脂シートにて構成される防塵カバーは、平面視で長方形状に形成されており、一端部が仕切り壁に固定状態で取り付けられて、刈取部側に向かって延びる状態で装着され、他端側が入口プレートに載置されるものであり、防塵カバーの機体前部側の箇所は開放された状態となっており、この開放された箇所からワラ屑等が侵入するおそれがあり、この点からも防塵機能が充分であるとは言えないものとなっていた。
【0007】
本発明の目的は、防塵機能を充分に発揮させることが可能となる自脱型コンバインの防塵構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る自脱型コンバインの防塵構造は、植立穀稈を刈り取る刈取装置及びその刈取装置にて刈り取った穀稈を脱穀装置に搬送する穀稈搬送装置を有する刈取部が備えられ、走行機体の前部の横一側箇所に、前記刈取部と仕切り壁にて仕切られる状態で搭乗運転部が備えられ、且つ、その搭乗運転部の下方側に原動部が備えられ、前記脱穀装置の前部側箇所に、前記穀稈搬送装置から受け渡されてフィードチェーンにて株元側が挟持されて搬送される刈取穀稈の穂先側を受止めて扱室に流下案内する入口プレートが備えられ、前記仕切り壁と前記刈取部との間に形成される隙間を塞ぐ防塵カバーが備えられているものであって、その第1特徴構成は、前記防塵カバーが、前記仕切り壁から前記刈取部側に向かって突出する状態で前記隙間の上部を覆う天井壁部、この天井壁部の前記刈取部側の縁部のうちで機体前部側に位置して機体後方側ほど前記仕切り壁から離れるように斜め姿勢となる前部側縁部から下方に向けて連なる状態で縦向き姿勢で延設される前側縦壁部、及び、前記天井壁部の前記刈取部側の縁部のうちで前記前部側縁部よりも機体後方側に位置する後部側縁部から下方に向けて連なる状態で縦向き姿勢で延設されてその下端部が前記入口プレートに接続される後側縦壁部の夫々を硬質材にて形成する状態で備えて構成され、前記穀稈搬送装置の搬送終端部から前記入口プレートに向けて刈取穀稈の穂先部を案内する可撓性シート体が、前記防塵カバーにおける前記前側縦壁部に接するとともに前記入口プレートに上下に重なり合う状態で設けられている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、前記防塵カバーが、前記天井壁部、前記前側縦壁部、及び、前記後側縦壁部の夫々を硬質材にて形成する状態で備えて構成されるものであるから、刈取作業時や刈取部のメンテナンス作業時に防塵カバーの形状が変形し難くなる。防塵カバーは適切な防塵作用を発揮できる状態を維持できるので、塵埃が原動部等の機体内部に侵入することを適切に回避できる。
【0010】
そして、防塵カバーにおける後側縦壁部が入口プレートに接続されるから、防塵カバーと入口プレートとの間に隙間が発生することを防止できる。又、穀稈搬送装置の搬送終端部から入口プレートに向けて刈取穀稈の穂先部を案内する可撓性シート体が、防塵カバーにおける前側縦壁部に接する状態で設けられるので、防塵カバーと穀稈搬送装置との間に隙間が発生することを防止できる。しかも、可撓性シート体は、入口プレートに上下に重なり合うので、穀稈搬送装置と入口プレートとの間に隙間が発生することを防止できる。
【0011】
つまり、防塵カバーと入口プレートとの間、防塵カバーと穀稈搬送装置との間、及び、穀稈搬送装置と入口プレートとの間に隙間が発生することを防止できるので、塵埃が原動部等の機体内部に侵入することを適切に回避できる。
【0012】
又、防塵カバーにおいて、前部側に位置する前側縦壁部は、機体後方側ほど仕切り壁から離れるように斜め姿勢となる状態で設けられるから、刈取穀稈の穂先側が接当することがあっても、搬送の妨げになることがなく傾斜姿勢に沿って滑らかに案内することができ、又、刈取部が走行機体に対して昇降操作されるものであっても、可撓性シート体が斜め姿勢の前側縦壁部に沿ってなじむように案内されて、隙間が発生しない状態でそれらが接する状態が維持できるものとなる。
【0013】
従って、防塵機能を充分に発揮させることが可能となる自脱型コンバインの防塵構造を提供できるに至った。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記天井壁部が、前記刈取部側に位置するほど下方に位置する傾斜姿勢に形成されている点にある。
【0015】
第2特徴構成によれば、防塵カバーにおいて、前記天井壁部が、刈取部側に位置するほど下方に位置する傾斜姿勢に形成されているから、刈取部にて発生した塵埃がこの天井壁部の上部に乗ることがあっても、刈取作業に伴う走行機体や刈取部の振動に伴って、天井壁部の上部の傾斜面に沿って刈取部側に移動案内されて脱穀装置内に送り込まれることになる。
【0016】
従って、刈取部において発生するワラ屑等の塵埃が原動部等の機体内部に侵入することを一層適切に回避できる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記原動部に、前記刈取部とは反対側箇所から冷却用空気を吸引し、前記刈取部側に向けて吹き出すように冷却風が通過するように通風する通風手段が備えられ、前記前側縦壁部が、冷却風の通過を許容し且つ塵埃の通過を阻止する小径の通気孔を備えた多孔状体にて形成されている点にある。
【0018】
第3特徴構成によれば、原動部では、通風手段の通風作用により、刈取部とは反対側箇所から冷却用空気が吸引され、刈取部側に向けて吹き出されるように冷却風が通過することになる。そして、原動部の刈取部側の箇所には、多孔状体にて形成される前側縦壁部が備えられるので、通風手段により通風される冷却風がこの前側縦壁部に形成された通気孔を通して外部に排気されることになる。
【0019】
その結果、穀稈搬送装置により搬送される途中の刈取穀稈から発生するワラ屑等の塵埃が前側縦壁部に形成された通気孔を通して外部に排気される冷却風によって、刈取部にて発生したワラ屑等の塵埃が搭乗運転部に降りかかることを回避し易いものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】自脱型コンバインの全体左側面図である。
【図2】自脱型コンバインの全体平面図である。
【図3】自脱型コンバインの全体右側面図である。
【図4】防塵カバー配設部の側面図である。
【図5】防塵カバー配設部の平面図である。
【図6】防塵カバー配設部の正面図である。
【図7】防塵カバー配設部の斜視図である。
【図8】原動部の縦断正面図である。
【図9】原動部カバーを横倒れ開放状態に切り換えるときに要部の縦断正面図である。
【図10】防塵網の斜視図である。
【図11】原動部カバーを横倒れ開放状態に切り換えたときの原動部カバーの平面図である。
【図12】排気管の配置構成を示す側面図である。
【図13】伝動系統図である。
【図14】ワンウェイクラッチ配設部の断面図である。
【図15】刈取部をメンテナンス用退避状態に切り換えた状態の自脱型コンバインの前部の平面図である。
【図16】別実施形態の防塵カバー配設部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、自脱型コンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1を備えた走行機体2の前部に横軸芯P周りで昇降操作自在に刈取部3が連結され、走行機体2の後部側箇所に機体横幅方向に並べる状態で脱穀装置4と穀粒タンク5とを備えて、圃場を走行しながら、稲、麦などの穀稈を刈取り、その刈取穀稈を脱穀処理するように構成されている。
【0022】
走行機体2の前部の横一側箇所には、刈取部3と仕切り壁6にて仕切られる状態で搭乗運転部7が備えられ、且つ、その搭乗運転部7の下方側に原動部8が備えられている。
図2に示すように、搭乗運転部7は、運転座席9の前方に操縦レバー10などを備えたフロントパネル11を備え、運転座席9の左側に主変速レバー12や副変速レバー13などを備えたサイドパネル14を備えて構成され、サイドパネル14の刈取部3側の端部に、搭乗運転部7と刈取部3との間を仕切るための仕切り壁6が設けられている。
【0023】
原動部8は、図8に示すように、エンジン15、冷却用のラジエータ16、通風手段としての冷却風生起用のファン17、冷却風として吸気される外気の塵埃を除去するための防塵網18、冷却風を利用して作動油を冷却するオイルクーラ19等を備えて構成されている。
【0024】
運転座席9を支持する支持台20は、開放部が下向きになる側面視略コの字状で、その右側端部に右側壁21が連設され、この右側壁21は、冷却風として外気を取り入れるために広い面積の多孔状の空気取り入れ部22が形成された吸気用ダクトとして機能するように構成され、この右側壁21には、オイルクーラ19が一体的に固定する状態で備えられている。
前記ファン17の作動により右側壁21に形成された空気取り入れ部22から吸気した空気がラジエータ16を通過したのち、原動部8内を通過して刈取部3側に向けて流動して排出されるように構成されている。
【0025】
前記支持台20及び前記右側壁21が一体的に連結されており、これらにより原動部8を囲う原動部カバー23が構成され、この原動部カバー23は、適正装着状態(図8参照)と横倒れ開放状態(図9参照、但し図9は倒れ状態の途中を表している)とにわたり、下端の前後向き軸心X周りで回動自在に走行機体2に支持される構成となっている。ちなみに、図示はしないが、原動部カバー23は、適正装着状態において適宜箇所が走行機体2側のフレーム(図示せず)にネジにより固定されることになる。
この原動部カバー23を横倒れ開放状態に切り換えると、原動部8が外方に開放された状態となり、原動部8のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0026】
図8及び図10に示すように、ファン17の作用により吸気される空気に作用する防塵網18は、周囲が金属製の枠体25にて支持され、枠体25の上部の左右両側に設けられた係止部材26をラジエータ16の上部の被係止部27に係止して適正装着位置に位置決めした状態でラジエータ16に対して位置保持することができるようになっている。
【0027】
図8に示すように、原動部カバー23における防塵網18の周囲に対向する箇所にはゴム製の接当部材28が備えられており、原動部カバー23を適正装着状態にして固定すると、この接当部材28が防塵網18の周囲に接当して隙間が発生しないように構成されている。又、図10に示すように、防塵網18の周囲のうちで隙間が発生し易い機体前後方向両側部には、ラジエータ16の周縁部との間の隙間から塵埃が侵入するのを防止するスポンジ材からなる防塵部材29が備えられている。
この防塵部材29は、防塵網18の周囲の全域に亘って設けるようにしてもよい。
【0028】
原動部カバー23を横倒れ開放状態に切り換えると、防塵網18が外方に臨む状態で露出することになり、防塵網18を上方に持ち上げて係止部材26の被係止部27に対する係止を解除することで容易に取り外すことができ、付着している塵埃を除去する作業等を行うことができる。
【0029】
図12に示すように、エンジン15の排ガスが通過するマフラー30は原動部8の上部に設けられ、このマフラー30から排ガスを機外に排出すべく案内する排気管31は、エンジン15からの排ガスを原動部8の下方側に案内する縦向き案内部31Aと、排ガスを機体後方側に案内する前後向き案内部31Bと、それらの途中部の円弧状案内部31Cとで構成されている。そして、縦向き案内部31Aと前後向き案内部31Bとは、それらの外部を断熱用の空気層を介装させた状態で覆う円筒状の外筒カバー32を備えており、又、円弧状案内部31Cには、板体を略U字状に屈曲させたカバー体33で覆う形態としており、排気管31を覆う部材の外表面の温度が極力低い温度になるようにしてある。
【0030】
排気管31の外周を覆う部材としては、このように円弧状案内部31Cをカバー体33で覆う形態に代えて、排気管31の略全長にわたって断熱用の空気層を介装させた状態で且つ排気管31に沿って湾曲する状態で外筒(図示せず)を備える二重筒構造にて構成するものでもよい。
【0031】
図1に示すように、刈取部3は、昇降用の油圧シリンダ34によって横軸芯P周りで上下に揺動操作されることにより昇降自在に走行機体2に連結され、この刈取部3は、刈り取り対象の複数の植付け条に位置する植立穀稈を分草する複数の分草具35、刈り取り対象の植立穀稈を引起す複数の引起し装置36、引起された植立穀稈の株元を切断して刈り取るバリカン形の刈取装置37、刈取穀稈を後方の脱穀装置4に搬送する穀稈搬送装置38とを備えて構成されている。
【0032】
穀稈搬送装置38は、刈取穀稈の株元を挟持しながら搬送する株元挟持搬送機構39と、刈取穀稈の穂先側箇所を係止搬送する穂先係止搬送機構40と、刈取穀稈の穂先部を載置した状態で案内する穂先案内板41とを備えて構成され、株元挟持搬送機構39は搬送終端部から脱穀装置4のフィードチェーン42に刈取穀稈の株元側を受け渡すように構成されている。
【0033】
脱穀装置4は、フィードチェーン42によって刈取穀稈の株元側を挟持して後方に搬送しながら穂先側を扱室4Aに供給し、刈取穀稈を回動する扱胴4Bによって脱穀処理するように構成されている。
【0034】
図2、図5、図7に示すように、脱穀装置4の機体前部側箇所には、穀稈搬送装置38から受け渡されてフィードチェーン42にて株元側が挟持されて搬送される刈取穀稈の穂先側を受止めて供給口44に流下案内する入口プレート43が備えられ、刈取穀稈の穂先側をこの入口プレート43にて受止めて案内しながら脱穀装置4の供給口44から扱室内部に供給するように構成されている。
【0035】
脱穀装置4は、扱室4A内で穂先側が扱胴4Bによって脱穀処理されて、その脱穀処理で得られた処理物を受網(図示せず)などから漏下させ、漏下した処理物に、揺動選別機構(図示せず)による篩い選別や唐箕(図示せず)からの選別風による風力選別などを施して、処理物を、1番物としての単粒化穀粒、2番物としての枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物、及び、3番物としての切れワラやワラ屑などに選別し、単粒化穀粒を回収して穀粒タンク5に供給するように構成されている。又、脱穀処理されたあとの排ワラはフィードチェーン42及び排ワラ搬送装置45により機体後方に搬送されて排ワラ処理装置46にて細断処理されるように構成されている。
【0036】
伝動系について説明を加えると、図13に示すように、エンジン15の出力がベルトテンション式の脱穀クラッチ49を介して脱穀装置4に伝達される一方、エンジン15の出力がベルト伝動装置50を介してミッションケース51の入力軸52に伝達され、ミッションケース51に備えられた静油圧式の無段変速装置(HST)53にて変速された後に左右の走行装置1,1に伝達されるように構成されている。又、無段変速装置53の出力が、変速出力軸54、ワンウェイクラッチ55、ベルトテンション式の刈取クラッチ56を介して刈取部3に伝達されるように構成されている。
【0037】
前記ワンウェイクラッチ55は、無段変速装置53により正転方向並びに逆転方向の夫々に変速出力が変化しても、刈取部3を常に正転方向の回転により駆動することができるようにするものであるが、このワンウェイクラッチ55は、変速出力軸54と刈取クラッチ55のプーリ57との間に介装されている。
【0038】
ワンウェイクラッチ55が故障した場合には、ワンウェイクラッチ55だけを交換して他の部品は共用することが可能な構成となっている。すなわち、図14に示すように、変速出力軸54の外周部にワンウェイクラッチ55が作用する幅狭の大径部58とベアリング59が備えられる小径部60とを備えた回転体61を一体回転自在に外嵌してあり、この回転体61とプーリ57との間に、一対のベアリング59、ワンウェイクラッチ55、抜け止め用サークリップ62等を各別に組み付ける構成となっており、ワンウェイクラッチ55が故障した場合には、前記各部品を取り外して、ワンウェイクラッチ55だけを交換して他の部品はそのまま使用して再度組み付けることができる。
【0039】
図2及び図15に示すように、穀稈搬送装置38の搬送終端部には、後方に向けて延出して入口プレート43に上方から重なる状態でゴムシート65(可撓性シート体の一例)が取り付けられている。このようにゴムシート64を入口プレート43によって受け止め支持された状態となるように重ね合わさせることで、刈取部3を昇降揺動させても、穀稈搬送装置38と入口プレート43との間に隙間が発生することなく、刈取穀稈の穂先側を円滑に案内できるように構成されている。
【0040】
刈取部3は、走行機体2の前部側に位置して植立穀稈の刈り取り及び刈取穀稈の搬送を実行可能な刈取作業状態と、走行機体2の前方側を開放するメンテナンス用退避状態とに切り換え自在に備えられている。
このような刈取部3を刈取作業状態とメンテナンス用退避状態とに切り換える構成は、周知の技術であるから、具体的な取り外し構成については詳述はしないが、刈取部3が、搭乗運転部7側とは反対側に位置する縦向き軸芯Y周りで揺動自在に走行機体2に支持されており、油圧シリンダ34との連結箇所や昇降揺動自在に支持される連結箇所等の刈取部3と走行機体2との間の各部連結箇所の連結を解除して、図15に示すように、刈取部3を縦向き軸芯Y周りで揺動操作させて走行機体2の前方側を開放するメンテナンス用退避状態に切り換えることができるように構成されている。
【0041】
図2、図4〜図7に示すように、仕切り壁6と刈取部3(穀稈搬送装置38)との間に形成される隙間を塞ぐことで、脱穀処理の際に刈取作業に伴って発生するワラ屑などの塵埃が、その隙間から下方に向けて落下することを阻止する防塵カバーKが備えられている。
【0042】
この防塵カバーKは、仕切り壁6から刈取部3(穀稈搬送装置38)側に向かって突出する状態で隙間の上部を覆う天井壁部70と、天井壁部70の前部側縁部71から下方に向けて連なる状態で縦向き姿勢で延設される前側縦壁部72と、天井壁部70の後部側縁部73から下方に向けて連なる状態で縦向き姿勢で延設されてその下端部が入口プレート43に接続される後側縦壁部74とを備える構成となっている。
そして、この防塵カバーKは、上記した天井壁部70、前側縦壁部72、後側縦壁部74の夫々が硬質材の一例としての板金材にて形成されている。
【0043】
このように防塵カバーKが硬質材(板金材)にて形成されているから、刈取部をメンテナンス用退避状態に切り換えることがあっても防塵カバーKの形状が変化することがない。その結果、刈取作業を行ったのち又は刈取作業の途中において、刈取部をメンテナンス用退避状態に切り換えてメンテナンス作業を行った後に、刈取部を再度、刈取作業状態に切り換えた場合にも、防塵カバーKは適切な防塵作用を発揮できる状態を維持できるので、塵埃が原動部等の機体内部に侵入することを適切に回避できる。
【0044】
説明を加えると、図4〜図7に示すように、天井壁部70は、通気性の無い板体を用いて平面視で略三角形状に形成されており、仕切り壁6側の縁部75には取り付け用のフランジ部76が一体的に形成されており、天井壁部70の脱穀装置4側の縁部77には、仕切り壁6に接続された壁部78との隙間から載置している塵埃が落下することを防止するための縦面部79が一体的に形成されている。
【0045】
図4及び図5に示すように、天井壁部70の刈取部3(穀稈搬送装置38)側の縁部は、機体前部側に位置して機体後方側ほど仕切り壁6から離れるように斜め姿勢となる前部側縁部71と、その前部側縁部71よりも後方側に位置する後部側縁部73とからなり、前部側縁部71及び後部側縁部73には、下方に向けて折り曲げ形成される状態で縦面部80,81が形成され、前部側縁部71の縦面部80の内面側にはネジ締結箇所に予めナットを溶接してあり、縦向き姿勢の前側縦壁部72を縦面部80の外面側から当て付けてネジを締め付けて固定できるように構成されている。又、後部側縁部73の縦面部81に沿って縦向き姿勢の後側縦壁部74が近接する状態で設けられる。
【0046】
図4、図6及び図7に示すように、前側縦壁部72は小径の通気孔82を多数形成した多孔状体にて形成されており、この前側縦壁部72は、仕切り壁6の下端部よりも下方側では、仕切り壁6の下方側を通して搭乗運転部7側に向けて延びる横方向延設部72aが形成されている。そして、その延設方向先端には固定用の取り付け部72bが形成され、この取り付け部72bがレバー支持用の支持フレーム90にネジ止め固定するように構成されている。
【0047】
このように前側縦壁部72を多孔状体に形成することにより、ファン17の作動により原動部8における刈取部3とは反対側に位置する右側壁21の空気取り入れ部22から吸気されて原動部8内を通過した空気が刈取部3側に向けて通過することを許容し且つ塵埃の通過を阻止するように構成されている。
【0048】
その結果、仕切り壁6と刈取部3との間に形成される隙間の機体前部側箇所を覆うことにより、刈取部3から発生するワラ屑等の塵埃が仕切り壁6の下方側の開口を通して原動部8に侵入することを適切に防止することができ、しかも、多孔状体からなる前側縦壁部72を通して刈取部3(穀稈搬送装置38)側に向けて空気が通過することにより、刈取部3にて発生したワラ屑等の塵埃が搭乗運転部7に向けて入ることを回避させ易いものとなる。
【0049】
図7に示すように、後側縦壁部74は、前後方向に沿う前後方向壁部分74Aと、機体後方側ほど仕切り壁6から離れるように斜め姿勢となる斜め方向壁部分74Bと、それらの下端部同士にわたって連結される受止め用底板部分74Cとが一体的に形成され、且つ、機体後方側端部には取り付け用の縦面部分74Dが一体的に形成されている。
そして、縦面部分74Dが仕切り壁6に接続された壁部78にネジ止め固定され、斜め方向壁部分74Bの下端部及び受止め用底板部分74Cが入口プレート43にネジ止め固定されている。
【0050】
斜め方向壁部分74Bは、その上端縁が後方側ほど高くなる形態で斜め後方上方向きに傾斜しており、その下端縁が後方側ほど低くなる形態で斜め後方下方側向きに傾斜している。又、受止め用底板部分74Cは、天井壁部70から落下した塵埃を受け止めて供給口44に流下案内するように入口プレート43に連なるように斜め姿勢となるように設けられている。
【0051】
前側縦壁部72の下端縁と前後方向壁部分74Aの下端縁との間に段差が形成されるように、前後方向壁部分74Aの下端縁よりも低い位置まで前側縦壁部72が延長されている。又、図4に示すように、前側縦壁部72の下端縁がマフラー30の下端部と略同じ高さ又はマフラー30の下端部よりも低い高さに位置するように前側縦壁部72が配備されている。
【0052】
図4及び図6に示すように、天井壁部70は、刈取部3(穀稈搬送装置38)側に位置するほど下方に位置する傾斜姿勢に形成されている。このように構成することで、刈取作業に伴ってワラ屑等の塵埃が天井壁部70の上部に飛散することがあっても、走行機体2や刈取部3の振動に伴って徐々に刈取部3側に移動して落下するようになっている。
そして、天井壁部70における後部側縁部73の縦面部81と後側縦壁部74との間、及び、天井壁部70の縦面部79と壁部78との間には、それらの隙間から塵埃が落下することを防止するためにスポンジ材からなる防塵部材92が備えられている。
【0053】
但し、脱穀装置4の供給口44に近い箇所においては、供給口44を通して扱室の内部から吹き出すワラ屑等が天井壁部70の飛散することがないように、上端縁が脱穀装置4の供給口44に近づくほど高い位置となる斜め状態となる形態で、後側縦壁部74が天井壁部70の上面よりも上方に突出する状態で設けられている。
【0054】
図2に示すように、入口プレート43に上下に重なり合うように穀稈搬送装置38に取り付けられているゴムシート65が、防塵カバーKにおける前側縦壁部72及び後側縦壁部74に接する状態となるように構成されている。このようにゴムシート65が防塵カバーKと接する状態で設けられることから、刈取部3を昇降操作してもゴムシート65が防塵カバーKに接する状態を維持して隙間を形成することがなく、塵埃が原動部8に落下することを防止できる。
【0055】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、天井壁部70が、刈取部3側に位置するほど下方に位置する傾斜姿勢に形成されているものを示したが、天井壁部70を水平姿勢に形成するものでもよい。
【0056】
(2)上記実施形態では、前側縦壁部72が多孔状体にて形成され、後側縦壁部74が通気性の無い板体で形成されるものを示したが、前側縦壁部72と後側縦壁部74の夫々を通気性の無い板体で構成してもよく、又、前側縦壁部72と後側縦壁部74の夫々を多孔状体にて形成してもよい。
【0057】
(3)上記実施形態では、可撓性シート体としてのゴムシート65が、防塵カバーKにおける前側縦壁部72及び後側縦壁部74の夫々に接する状態となるように構成されるものを示したが、ゴムシート65が防塵カバーKにおける前側縦壁部72にのみ接する状態として、後側縦壁部74とゴムシート65との間に隙間が生じているように構成されるものでもよい。
【0058】
(4)上記実施形態では、後側縦壁部74が、脱穀装置4の供給口44に近い箇所においては、天井壁部70の上面よりも上方に突出する状態で設けられる構成としたが、図16に示すように、後側縦壁部74が、天井壁部70の後部側縁部73の全域にわたって、その上縁部が天井壁部70の上面と同じ高さになり、天井壁部70の上面よりも上方に突出しない形態で設けられる構成としてもよい。
【0059】
(5)上記実施形態では、防塵カバーKが硬質材の一例として板金材にて構成するものを示したが、硬質の合成樹脂材等にて構成してもよい。
【0060】
(6)上記実施形態では、刈取部3が、搭乗運転部7側とは反対側に位置する縦向き軸芯Y周りで揺動自在に走行機体2に支持され、刈取部3を縦向き軸芯Y周りで揺動操作させて走行機体2の前方側を開放するメンテナンス用退避状態とに切り換えることができるように構成したが、このような構成に代えて、刈取部3を着脱自在に走行機体2に連結する構成として、刈取部3を走行機体2から取り外して外方側に分離することで走行機体2の前方側を開放するメンテナンス用退避状態とに切り換える構成としてもよく、刈取部3がメンテナンス作用退避状態に切り換え不能な構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、刈取部にて刈り取った穀稈を株元を挟持して搬送しながら脱穀処理するようにした自脱型コンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0062】
2 走行機体
3 刈取部
4 脱穀装置
6 仕切り壁
7 搭乗運転部
8 原動部
17 通風手段
37 刈取装置
38 穀稈搬送装置
42 フィードチェーン
43 入口プレート
44 供給口
65 可撓性シート体
70 天井壁部
71 前部側縁部
72 前側縦壁部
73 後部側縁部
74 後側縦壁部
82 通気孔
K 防塵カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植立穀稈を刈り取る刈取装置及びその刈取装置にて刈り取った穀稈を脱穀装置に搬送する穀稈搬送装置を有する刈取部が備えられ、
走行機体の前部の横一側箇所に、前記刈取部と仕切り壁にて仕切られる状態で搭乗運転部が備えられ、且つ、その搭乗運転部の下方側に原動部が備えられ、
前記脱穀装置の前部側箇所に、前記穀稈搬送装置から受け渡されてフィードチェーンにて株元側が挟持されて搬送される刈取穀稈の穂先側を受止めて扱室に流下案内する入口プレートが備えられ、
前記仕切り壁と前記刈取部との間に形成される隙間を塞ぐ防塵カバーが備えられている自脱型コンバインの防塵構造であって、
前記防塵カバーが、前記仕切り壁から前記刈取部側に向かって突出する状態で前記隙間の上部を覆う天井壁部、この天井壁部の前記刈取部側の縁部のうちで機体前部側に位置して機体後方側ほど前記仕切り壁から離れるように斜め姿勢となる前部側縁部から下方に向けて連なる状態で縦向き姿勢で延設される前側縦壁部、及び、前記天井壁部の前記刈取部側の縁部のうちで前記前部側縁部よりも機体後方側に位置する後部側縁部から下方に向けて連なる状態で縦向き姿勢で延設されてその下端部が前記入口プレートに接続される後側縦壁部の夫々を硬質材にて形成する状態で備えて構成され、
前記穀稈搬送装置の搬送終端部から前記入口プレートに向けて刈取穀稈の穂先部を案内する可撓性シート体が、前記防塵カバーにおける前記前側縦壁部に接するとともに前記入口プレートに上下に重なり合う状態で設けられている自脱型コンバインの防塵構造。
【請求項2】
前記天井壁部が、前記刈取部側に位置するほど下方に位置する傾斜姿勢に形成されている請求項1記載の自脱型コンバインの防塵構造。
【請求項3】
前記原動部に、前記刈取部とは反対側箇所から冷却用空気を吸引し、前記刈取部側に向けて吹き出すように冷却風が通過するように通風する通風手段が備えられ、
前記前側縦壁部が、冷却風の通過を許容し且つ塵埃の通過を阻止する小径の通気孔を備えた多孔状体にて形成されている請求項1又は2記載の自脱型コンバインの防塵構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−244785(P2011−244785A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124065(P2010−124065)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】