説明

自走型作業機械の組立て用治具装置

【課題】 自走型作業機械におけるフレーム体を組立てる際の治具の取り替えや管理を簡単に行うことができるとともに、治具の保管スペースの削減に有効となる管理をも容易に行える組立て用治具装置を提供する。
【解決手段】 バックホウなどの自走型作業機械の組立て用治具装置であって、仮組み溶接された旋回フレーム4をワークWとして支持する作業台32に、一対の可動枠45を水平方向に並列配備するとともに、各可動枠45を可動枠並列方向に駆動手段47によって移動調節可能に構成し、各可動枠45のそれぞれに、ワークWを係止するクランプ金具34を、可動枠45の移動方向と直交する水平方向に移動可能に配備するとともに、各クランプ金具34を可動枠45の移動方向と直交する水平方向に駆動手段50によって移動調節可能に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホウやログローダなどの自走型作業機械におけるフレーム体を組立てる際に利用する治具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バックホウにおいては、フレーム体として、走行装置を支持するトラックフレームと、フロント作業装置、エンジン、および、搭乗運転部を搭載する旋回フレームが備えられており、これらフレーム体は、各構成部品を部分的に溶接して仮組みした後に、溶接ロボットによって自動溶接加工されて組立てられる。また、必要に応じて、自動溶接加工後に孔開け加工などの機械加工が施される。
【0003】
この場合、フレーム体の自動溶接行程では、仮組み溶接したワークを治具を用いて位置決め固定することになり、ワークの仕様が異なるつど、そのワークに対する治具の取り替えを行っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、仕様の異なる各ワークごとに治具を準備していたので、ワークが変更される度の治具の取り替え、および、その管理に手数が掛かるとともに、治具の保管のために多くのスペースを必要とするものであった。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、自走型作業機械におけるフレーム体を組立てる際の治具の取り替えや管理を簡単に行うことができるとともに、治具の保管スペースの削減に有効となる管理をも容易に行える組立て用治具装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1に係る発明の構成、作用および効果〕
【0007】
(構成) 請求項1に係る発明は、仮組み溶接された旋回フレームをワークとして支持する作業台に、一対の可動枠を水平方向に並列配備するとともに、各可動枠を可動枠並列方向に駆動手段によって移動調節可能に構成し、各可動枠のそれぞれに、ワークを係止する一対のクランプ金具を、可動枠の移動方向と直交する水平方向に移動可能に間隔をもって対向配備するとともに、各クランプ金具を可動枠の移動方向と直交する水平方向に駆動手段によって移動調節可能に構成してあることを特徴とする。
【0008】
(作用) 上記構成によると、仕様の異なるワークを処理する場合に、作業枠、および、各作業枠に備えたクランプ金具を駆動手段によって移動させることで、クランプ金具の二次元的な移動範囲内に収まる寸法仕様のワークを一台の作業枠上に適正に位置決め固定することができる。
【0009】
(効果) 従って、請求項1に係る発明によると、ワークの仕様が異なるつど治具を交換するような必要がなくなり、簡単迅速に段取り替えを行うことができ、多くの機種を少数台づつ製作する際の組立て作業能率を向上する上で有効となる。
【0010】
〔請求項2に係る発明の構成、作用および効果〕
【0011】
(構成) 請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、ワーク情報を入力することで、各可動枠およびクランプ金具をワーク情報が入力されたワークに対応して予め設定された位置に自動的に移動させる制御手段を備えてある。
【0012】
(作用・効果) 上記構成によると、ワークの情報をキー操作やバーコードの読取り、等によって入力することで、自動的に各クランプ金具をワークに対応した位置に移動させることができるので、極めて短時間に治具の段取り替えを行うことができ、段取り替えのための時間を節減して作業能率を更に向上することができ、請求項1の発明の上記効果を助長する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に、自走型作業機械の一例であるバックホウが示されている。このバックホウは、左右一対のクローラ型走行装置1およびドーザ装置2を備えたトラックフレーム3の上に、旋回フレーム4を全旋回可能に搭載し、旋回フレーム4に、ブーム5、アー6ム、おおよび、バケット7を順次連結してなるフロント装置8を装備するとともに、図示しないエンジンを収容した原動部9および搭乗運転部10を搭載した構造となっている。
【0014】
前記トラックフレーム3および旋回フレーム4は、鋳鋼あるいは鋼板からなる構成部品を溶接して組立てられた構造体であり、本発明は、これらを組立てる工程で利用する治具装置に改良を加えたものであり、その一例を以下に説明する。
【0015】
(第1例)
【0016】
図2〜図7に、前記トラックフレーム3を自動溶接する工程において利用される治具装置A1が例示されている。なお、以下の説明において、トラックフレーム3をワークWと呼称する。
【0017】
この治具装置A1は、溶接ロボットBの前部の床面に据付け固定された支持台11の上に脱着自在に装着されており、支持台11に搭載連結される作業台12と、この作業台12上に突出して配備された左右一対のクランプユニット13とで構成されている。
【0018】
各クランプユニット13は、作業台12の下面に配備されたレール14に沿って左右移動可能な可動枠15に、位置決めピン16、クランプ金具17、および、ワーク支持台18を装備して構成されており、作業台12に形成された左右に長い開口19から両クランプユニット13が左右移動可能に露出されている。また、作業台12の下側には、各クランプユニット13を左右に移動させる駆動手段として、可動枠15をねじ送りするネジ軸20と、これを正逆回転駆動する電動モータ21が備えられるとともに、これを制御するコントローラ22が備えられている。
【0019】
クランプユニット13における位置決めピン16は、ワークWに形成された一対のノック孔23に挿入されることでワークWの位置決めを行うものであり、エアーシリンダ24によって出退操作される。また、クランプ金具17は、a支点周りに上下に揺動されることで、ワークWの中心開口の縁を押さえ付け固定するものであり、エアーシリンダ25によって揺動操作されるようになっている。
【0020】
ここで、前記コントローラ22は据付け固定された制御装置26に接続されるとともに、溶接ロボットBのコントローラ27もこの制御装置26に接続されており、制御装置26に備えた入力部26aを人為操作して、このワークWを特定する情報を入力すると、予め入力設定された情報に基づいて電動モータ21が作動制御され、対象とするワークWを適切に位置決め固定するために設定された所定位置にクランプユニット13が自動的に移動される。また、入力されたワーク情報に基づいて、溶接ロボットBが予め設定されたプログラムに基づいて作動し、位置決め固定されたワークWに対応した自動溶接が行われる。
【0021】
また、この治具装置A1を支持台11から取り外して、別の溶接ロボットの支持台に付け替えることもでき、この時、作業台12に装備したコントローラ22を、別の溶接ロボットのコントローラが接続された制御装置に接続することで、この溶接ロボットにおいても、先の場合と同様にワーク情報を制御装置に入力することで、クランプユニット13の自動位置変更制御と溶接プログラムの設定が行われる。
【0022】
(第2例)
【0023】
図8〜図14に、前記旋回フレーム4を自動溶接する工程において利用される治具装置A2が例示されている。なお、以下の説明において、旋回フレーム4をワークWと呼称する。
【0024】
この治具装置A2は、溶接ロボット(第1例で用いた溶接ロボットBと同一仕様)Bの前部の床面に据付け固定された支持台11の上に脱着自在に装着されており、支持台11に搭載連結される作業台32と、この作業台32の中央に配備された左右一対の位置決めピン33と、作業台32の前後左右に配備された4組のクランプ金具34と中央奥側(ロボット側)に配備されたクランプ金具34cとで構成されている。
【0025】
図10,13に示すように作業台32の中央部に位置する左右の固定中枠35には、支持枠36が立設されるとともに、この支持枠36の上部に、ワークWを底面から受け止める左右一対のフリーボール37が配備されている。また、支持枠36の間には、左右のガイド軸38を介して昇降可能、かつ、エアーシリンダ39によって駆動昇降される可動板40が配備され、この可動板40に前記位置決めピン33が備えられて、一対の位置決めピン33が一体に出退するよう構成されている。ここで、ワークWの底面には、図14に示す位置決め用のリング部材41が所定の姿勢でボルト締め連結され、このリング部材41の左右に備えた下向きのボス42に各位置決めピン33が挿入されることで、ワークWの位置決めが行われる。
【0026】
作業台32の左右には前後に向かうレール44が配備され、このレール44に案内されて平行に前後移動可能に横長の可動枠45が備えられるとともに、この可動枠45を前後にねじ送り移動させるネジ軸46が、作業フレーム32の左右方向中央付近に装備されており、ネジ軸46を電動モータ47によって正逆駆動することで、可動枠45を任意に平行前後移動させることが可能となっている。そして、各可動枠45にそれぞれ左右一対づつ前記クランプ金具34が装備されるとともに、奥側の可動枠45に中央のクランプ金具34cが装備されている。
【0027】
前記クランプ金具34は、位置決めピン33によって位置決めされたワークWの外周縁を係止して下方に押し付け固定するよう機能するものであり、エアーシリンダ48によって支点b周りに上下揺動可能に構成されている。そして、このクランプ金具34およびエアーシリンダ48は、可動枠45の上面のレール52に沿って左右移動可能な可動台49に取付けられており、この可動台49をエアーシリンダ50によって任意に左右移動させることで、各クランプ金具34を左右に位置変更することが可能となっている。また、中央のクランプ金具34cも、位置決めされたワークWの外周縁の奥側中央部位を係止して下方に押し付け固定するよう機能するものであり、エアーシリンダ53によって支点c周りに上下揺動可能に構成されている。そして、このクランプ金具34cおよびエアーシリンダ53は、奥側の可動枠45の上面のレール54に沿って左右移動可能な可動台55に取付けられており、この可動台55をエアーシリンダ56によって任意に前後移動させることで、クランプ金具34cの作用位置を前後に変更することが可能となっている。
【0028】
つまり、両可動枠45の前後移動と可動台49の左右移動、および、可動台55の前後移動とを組み合わせることによって、5組みのクランプ金具34、34cを水平面に沿って二次元的に任意に位置変更することが可能となっている。
【0029】
ここで、作業台32には、エアーシリンダ48,50,56を制御してクランプ金具34,34cを二次元的に位置変更するコントローラ51が装着されており、このコントローラ51も、据付け固定された制御装置26に接続されるとともに、溶接ロボットBのコントローラ27もこの制御装置26に接続されており、制御装置26の入力部26aにワークW2を特定する情報を入力すると、予め入力設定された情報に基づいてエアーシリンダ48,50,56が作動し、対象とするワークWを適切に位置決め固定するために設定された所定位置にクランプ金具34,34cが移動される。また、入力されたワーク情報に基づいて、溶接ロボットBが予め設定されたプログラムに基づいて作動し、このワークWに対応した自動溶接が行われる。
【0030】
そして、前記治具装置A1と同様に、この治具装置A2もコントローラ51ごと別の溶接ロボットBの支持台11に付け替えて、上記と同様の作業を行わせることができる。
【0031】
つまり、同一仕様の溶接ロボットBを複数台据え付けてある作業場においては、治具装置A1とA2を任意に移動させたり、入れ替えたりして作業することができるとともに、使用しない治具装置A1,A2は取り外して保管しておくことができるのである。
【0032】
(第3例)
【0033】
図15〜図20に、前記旋回フレーム4に各種のドリル加工やエンドミル加工を行う工程において利用される治具装置A3が例示されている。
【0034】
この治具装置A3は、ワークWとしての旋回フレーム4を起立させた姿勢で、作業台60に支持して、工作機械の一例であるマシニング・センタ(MC)61に搬入出するよう構成されている。マシニング・センタ61は、加工機本体62の前方に、シャッタ63によって開閉されるワーク出入り口64を備えた加工室65が配備された構造となっており、治具装置A3が加工室65内の加工処理位置と、加工室の外側に位置するワーク脱着位置との間に亘って前後進移動するように構成されている。
【0035】
また、ワーク脱着位置には、2台の作業台60を搭載可能なターンテーブル66が配備されており、1台の作業台60がワークWを加工室内に搬入している間に、他方の作業台60に次のワークWを装着しておき、加工を終えて加工室から出てきた一方の作業台60をターンテーブル66に載せて反転させ、ワークWが装填された作業台60を加工室に送り込むとともに、搬出されてきた作業台では、加工済みのワークWと次の新しいワークWとの取り替えを行う。
【0036】
次に、作業台60の詳細な構造について説明する。図17,18に示すように、作業台60は、正面視で中抜きの枠状に構成されており、ネジ軸67の正逆回転によって左右に独立的にねじ送りされる左右一対の可動縦枠68がレール69に沿って左右に平行移動可能に装着されている。また、各可動縦枠68には、ネジ軸70の正逆回転によって上下に独立的にねじ送りされる上下一対のクランプ機構71がレール72に沿って上下移動可能に装着されている。
【0037】
可動縦枠68を横移動させるネジ軸67は、作業台60の上部に水平横架され、それぞれ作業台60の横外側面にその一端が臨設されている。また、クランプ機構71を上下移動させるネジ軸70は可動縦枠68に鉛直に支持されるとともに、各ネジ軸70の上端が、作業台60の上部に水平横架した操作軸73にベベルギヤ74,75を介して連動連結されている。ここで、操作軸73のベベルギヤ74は、可動縦枠68に対しては横移動不能、操作軸73に対しては横スライド可能、かつ、回転伝達可能に操作軸73に外嵌装着されており、可動縦枠68の横移を許しながら、各操作軸73の回転操作で4個のクランプ機構71を独立して上下にねじ送り移動することができるように構成されている。
【0038】
クランプ機構71は、上下にねじ送り移動される可動台76にエアーシリンダ77によって出退される短軸状のクランプ部材78を装着して構成されたものであり、図19,20に示すように、クランプ部材78の先端に形成した係止段部78aを、ワークWの底板に形成された開口79にクランプ部材78を下方から挿通した後、クランプ部材78を上方または下方に移動させて、係止段部78aを開口79の縁に係止させた後、クランプ部材78を退入させることで、ワークWを位置決め状態で締付け固定するように構成されている。
【0039】
図15,16に示すように、ワーク脱着位置の左右には、作業台60の左右側面から前記ネジ軸67および操作軸73を回転操作して、クランプ機構71を外部から左右および上下に位置調節するための操作台80が立設されている。各操作台80の上下にはエアーシリンダ81によって進退可能な可動枠82が配備され、この可動枠82にモータ83によって正逆転される駆動側爪クラッチ部材84が設けられている。この駆動側爪クラッチ部材84は、作業台60が左右の操作台80の間の所定位置に在る時に、前記ネジ軸67および操作軸73の外端部に備えた従動側爪クラッチ部材67a,73aに突き合わせ対向されるように設置されている。
【0040】
従って、作業台60が左右の操作台80の間の所定位置に在る時に、各可動枠82を進出移動させることで、各駆動側爪クラッチ部材84を対向する従動側爪クラッチ部材67a,73aに咬合連結することができ、各モータ83を作動させてネジ軸67および操作軸73を回転操作することで、4個のクランプ機構71を独立して任意に上下にねじ送り移動することができる。
【0041】
そして、一方の作業台60に備えたコントローラ85において、加工対象のワークWについてのワーク情報を入力しておくことで、各クランプ機構71は対象とするワークWを適切に位置決め固定するために設定された所定位置に移動されて、ワークWの固定あるいは固定解除を行う。
【0042】
〔別実施形態〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0043】
(1) 第1例において、一対のクランプユニット13のうちの一方を基準クランプユニットとして位置固定状態で設置し、他方のクランプユニット13のみを移動させるように構成することもできる。
【0044】
(2) 第2例において、可動枠45に装着するクランプ金具34の数は任意である。
【0045】
(3) 上記した各例において制御装置26にワーク情報を入力する手段は、キー入力、バーコード入力、磁気カード入力、など周知の入力手段を適宜選択すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】バックホウの全体側面図
【図2】第1例の治具装置を利用した自動溶接設備の側面図
【図3】第1例の治具装置を利用した自動溶接設備の平面図
【図4】第1例の治具装置を示す平面図
【図5】第1例の治具装置における縦断側面図
【図6】第1例の治具装置におけるワーク搭載前の状態を示す縦断正面図
【図7】第1例の治具装置におけるワーク固定状態を示す縦断正面図
【図8】第2例の治具装置を利用した自動溶接設備の平面図
【図9】第2例の治具装置におけるワーク固定状態を示す平面図
【図10】第2例の治具装置におけるワーク搭載前の状態を示す平面図
【図11】第2例の治具装置におけるワーク固定状態を示す縦断正面図
【図12】第2例の治具装置におけるワーク固定前の状態を示す縦断正面図
【図13】(イ)第2例の治具装置におけるワーク位置決め前の状態を示す要部の縦断正面図 (ロ)第2例の治具装置におけるワーク位置決め状態を示す要部の縦断正面図
【図14】第2例の治具装置に用いる補助部材の斜視図
【図15】第3例の治具装置を利用した機械加工設備の平面図
【図16】第3例の治具装置におけるワーク保持状態を示す正面図
【図17】第3例の治具装置を示す正面図
【図18】第3例の治具装置の縦断側面図
【図19】第3例の治具装置の要部を縦断した側面図
【図20】第3例の治具装置におけるクランプ箇所を示す正面図
【符号の説明】
【0047】
3 トラックフレーム
4 旋回フレーム
26 制御装置(制御手段)
32 作業台
34 クランプ金具
45 可動枠
47 電動モータ(駆動手段)
50 エアーシリンダ(駆動手段)
W ワーク
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホウやログローダなどの自走型作業機械におけるフレーム体を組立てる際に利用する治具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バックホウにおいては、フレーム体として、走行装置を支持するトラックフレームと、フロント作業装置、エンジン、および、搭乗運転部を搭載する旋回フレームが備えられており、これらフレーム体は、各構成部品を部分的に溶接して仮組みした後に、溶接ロボットによって自動溶接加工されて組立てられる。また、必要に応じて、自動溶接加工後に孔開け加工などの機械加工が施される。
【0003】
この場合、フレーム体の自動溶接行程では、仮組み溶接したワークを治具を用いて位置決め固定することになり、ワークの仕様が異なるつど、そのワークに対する治具の取り替えを行っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、仕様の異なる各ワークごとに治具を準備していたので、ワークが変更される度の治具の取り替え、および、その管理に手数が掛かるとともに、治具の保管のために多くのスペースを必要とするものであった。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、自走型作業機械におけるフレーム体を組立てる際の治具の取り替えや管理を簡単に行うことができるとともに、治具の保管スペースの削減に有効となる管理をも容易に行える組立て用治具装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1に係る発明の構成、作用および効果〕
【0007】
(構成) 請求項1に係る発明は、自走型作業機械の構成部品を仮組み溶接されたフレーム体をワークとして支持する作業台に、一対の可動枠を水平方向に並列配備するとともに、各可動枠を可動枠並列方向に駆動手段によって移動調節可能に構成し、各可動枠のそれぞれに、一対の可動台を可動枠の移動方向と直交する水平方向に対向配備するとともに対をなす可動台ごとにワークを係止するクランプ金具をそれぞれ対向配置し、対をなす各可動台をクランプ金具どうしが遠近する方向に駆動手段によって移動調節可能に構成してあることを特徴とする。
【0008】
(作用) 上記構成によると、仕様の異なるワークを処理する場合に、可動枠、および、各可動枠に備えた一対の可動台を駆動手段によって移動させることで、可動台に取付けたクランプ金具の二次元的な移動範囲内に収まる寸法仕様のワークを一台の作業台上に適正に位置決め固定することができる。
【0009】
(効果) 従って、請求項1に係る発明によると、ワークの仕様が異なるつど治具を交換するような必要がなくなり、簡単迅速に段取り替えを行うことができ、多くの機種を少数台づつ製作する際の組立て作業能率を向上する上で有効となる。
【0010】
〔請求項2に係る発明の構成、作用および効果〕
【0011】
(構成) 請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、ワーク情報を入力することで、各可動枠およびクランプ金具をワーク情報が入力されたワークに対応して予め設定された位置に自動的に移動させる制御手段を備えてある。
【0012】
(作用・効果) 上記構成によると、ワークの情報をキー操作やバーコードの読取り、等によって入力することで、自動的に各クランプ金具をワークに対応した位置に移動させることができるので、極めて短時間に治具の段取り替えを行うことができ、段取り替えのための時間を節減して作業能率を更に向上することができ、請求項1の発明の上記効果を助長する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に、自走型作業機械の一例であるバックホウが示されている。このバックホウは、左右一対のクローラ型走行装置1およびドーザ装置2を備えたトラックフレーム3の上に、旋回フレーム4を全旋回可能に搭載し、旋回フレーム4に、ブーム5、アー6ム、おおよび、バケット7を順次連結してなるフロント装置8を装備するとともに、図示しないエンジンを収容した原動部9および搭乗運転部10を搭載した構造となっている。
【0014】
前記トラックフレーム3および旋回フレーム4は、鋳鋼あるいは鋼板からなる構成部品を溶接して組立てられた構造体であり、本発明は、これらを組立てる工程で利用する治具装置に改良を加えたものであり、その一例を以下に説明する。
【0015】
図2〜図9に、前記旋回フレーム4を自動溶接する工程において利用される治具装置A2が例示されている。なお、以下の説明において、フレーム体としての旋回フレーム4をワークWと呼称する。
【0016】
この治具装置A2は、溶接ロボットBの前部の床面に据付け固定された支持台11の上に脱着自在に装着されており、支持台11に搭載連結される作業台32と、この作業台32の中央に配備された左右一対の位置決めピン33と、作業台32の前後左右に配備された4組のクランプ金具34と中央奥側(ロボット側)に配備されたクランプ金具34cとで構成されている。
【0017】
図5,図8に示すように作業台32の中央部に位置する左右の固定中枠35には、支持枠36が立設されるとともに、この支持枠36の上部に、ワークWを底面から受け止める左右一対のフリーボール37が配備されている。また、支持枠36の間には、左右のガイド軸38を介して昇降可能、かつ、エアーシリンダ39によって駆動昇降される可動板40が配備され、この可動板40に前記位置決めピン33が備えられて、一対の位置決めピン33が一体に出退するよう構成されている。ここで、ワークWの底面には、図9に示す位置決め用のリング部材41が所定の姿勢でボルト締め連結され、このリング部材41の左右に備えた下向きのボス42に各位置決めピン33が挿入されることで、ワークWの位置決めが行われる。
【0018】
作業台32の左右には前後に向かうレール44が配備され、このレール44に案内されて平行に前後移動可能に横長の可動枠45が備えられるとともに、この可動枠45を前後にねじ送り移動させるネジ軸46が、作業フレーム32の左右方向中央付近に装備されており、ネジ軸46を電動モータ47によって正逆駆動することで、可動枠45を任意に平行前後移動させることが可能となっている。そして、各可動枠45にそれぞれ左右一対づつ前記クランプ金具34が装備されるとともに、奥側の可動枠45に中央のクランプ金具34cが装備されている。
【0019】
前記クランプ金具34は、位置決めピン33によって位置決めされたワークWの外周縁を係止して下方に押し付け固定するよう機能するものであり、エアーシリンダ48によって支点b周りに上下揺動可能に構成されている。そして、このクランプ金具34およびエアーシリンダ48は、可動枠45の上面のレール52に沿って左右移動可能な可動台49に取付けられており、この可動台49をエアーシリンダ50によって任意に左右移動させることで、各クランプ金具34を左右に位置変更することが可能となっている。また、中央のクランプ金具34cも、位置決めされたワークWの外周縁の奥側中央部位を係止して下方に押し付け固定するよう機能するものであり、エアーシリンダ53によって支点c周りに上下揺動可能に構成されている。そして、このクランプ金具34cおよびエアーシリンダ53は、奥側の可動枠45の上面のレール54に沿って左右移動可能な可動台55に取付けられており、この可動台55をエアーシリンダ56によって任意に前後移動させることで、クランプ金具34cの作用位置を前後に変更することが可能となっている。
【0020】
つまり、両可動枠45の前後移動と可動台49の左右移動、および、可動台55の前後移動とを組み合わせることによって、5組みのクランプ金具34、34cを水平面に沿って二次元的に任意に位置変更することが可能となっている。
【0021】
ここで、作業台32には、エアーシリンダ48,50,56を制御してクランプ金具34,34cを二次元的に位置変更するコントローラ51が装着されており、このコントローラ51も、据付け固定された制御装置26に接続されるとともに、溶接ロボットBのコントローラ27もこの制御装置26に接続されており、制御装置26の入力部26aにワークW2を特定する情報を入力すると、予め入力設定された情報に基づいてエアーシリンダ48,50,56が作動し、対象とするワークWを適切に位置決め固定するために設定された所定位置にクランプ金具34,34cが移動される。また、入力されたワーク情報に基づいて、溶接ロボットBが予め設定されたプログラムに基づいて作動し、このワークWに対応した自動溶接が行われる。
【0022】
また、治具装置A2を支持台11から取り外して、コントローラ51ごと別の溶接ロボットの支持台に付け替えることもでき、この時、作業台32に装備したコントローラ51を、別の溶接ロボットのコントローラが接続された制御装置に接続することで、この溶接ロボットにおいても、上記の場合と同様にワーク情報を制御装置に入力することで、クランプユニット3の自動位置変更制御と溶接プログラムの設定が行われる。
【0023】
つまり、同一仕様の溶接ロボットBを複数台据え付けてある作業場においては、治具装置A2を任意に移動させたり、入れ替えたりして作業することができるとともに、使用しない治具装置A2は取り外して保管しておくことができるのである。
【0024】
〔別実施形態〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0025】
(1) 可動枠45に装着するクランプ金具34の数は任意である。
【0026】
(2) 上記した制御装置26にワーク情報を入力する手段は、キー入力、バーコード入力、磁気カード入力、など周知の入力手段を適宜選択すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】バックホウの全体側面図
【図2】治具装置を利用した自動溶接設備の側面図
【図3】治具装置を利用した自動溶接設備の平面図
【図4】治具装置におけるワーク固定状態を示す平面図
【図5】治具装置におけるワーク搭載前の状態を示す平面図
【図6】治具装置におけるワーク固定状態を示す縦断正面図
【図7】治具装置におけるワーク固定前の状態を示す縦断正面図
【図8】(イ)治具装置におけるワーク位置決め前の状態を示す要部の縦断正面図 (ロ)治具装置におけるワーク位置決め状態を示す要部の縦断正面図
【図9】治具装置に用いる補助部材の斜視図
【符号の説明】
【0028】
3 トラックフレーム
4 旋回フレーム(フレーム体)
26 制御装置(制御手段)
32 作業台
34 クランプ金具
45 可動枠
47 電動モータ(駆動手段)
50 エアーシリンダ(駆動手段)
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮組み溶接された旋回フレームをワークとして支持する作業台に、一対の可動枠を水平方向に並列配備するとともに、各可動枠を可動枠並列方向に駆動手段によって移動調節可能に構成し、各可動枠のそれぞれに、ワークを係止するクランプ金具を、可動枠の移動方向と直交する水平方向に移動可能に配備するとともに、各クランプ金具を可動枠の移動方向と直交する水平方向に駆動手段によって移動調節可能に構成してあることを特徴とする自走型作業機械の組立て用治具装置。
【請求項2】
ワーク情報を入力することで、各可動枠およびクランプ金具をワーク情報が入力されたワークに対応して予め設定された位置に自動的に移動させる制御手段を備えてある請求項1記載の自走型作業機械の組立て用治具装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走型作業機械の構成部品を仮組み溶接されたフレーム体をワークとして支持する作業台に、一対の可動枠を水平方向に並列配備するとともに、各可動枠を可動枠並列方向に駆動手段によって移動調節可能に構成し、各可動枠のそれぞれに、一対の可動台を可動枠の移動方向と直交する水平方向に対向配備するとともに対をなす可動台ごとにワークを係止するクランプ金具をそれぞれ対向配置し、対をなす各可動台をクランプ金具どうしが遠近する方向に駆動手段によって移動調節可能に構成してあることを特徴とする自走型作業機械の組立て用治具装置。
【請求項2】
ワーク情報を入力することで、各可動枠およびクランプ金具をワーク情報が入力されたワークに対応して予め設定された位置に自動的に移動させる制御手段を備えてある請求項3記載の自走型作業機械の組立て用治具装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2006−248522(P2006−248522A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148542(P2006−148542)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【分割の表示】特願2001−14727(P2001−14727)の分割
【原出願日】平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】