説明

自転車のホイール保持装置

【課題】自転車のホイールを簡単な操作で確実にホイール保持装置に固定でき、更に、ホイール保持装置から取り外したホイールを自転車のフォークに装着する際にも、前記フォーク爪締め付け用ネジの調整を不要に構成する。
【解決手段】上方に延在する支持体20と、支持体20に対して伸縮方向への移動が可能に接続される保持体30と、支持体20に対する保持体30の伸方向の移動を制御する伸制御機構を有し、保持体30および支持体20には夫々、前方もしくは後方の何れかの側面に向かう開口部を有する溝部22,32が形成され、保持体30および支持体20の夫々の開口部の位置を一致させた状態で前記ホイール111の車輪軸112のフォーク爪保持部が夫々の開口部から溝部22,32内に進入可能に形成されると共に、支持体20に対する前記保持体30の伸縮方向への移動に伴い溝部22,32に対する車輪軸112の出し入れが制御可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に固定して使用する自転車のホイール保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車に固定して使用する自転車のホイール保持装置として、日本国特許公開2000−318538号には、図25に示す様に、自動車のルーフ上に固持されてなるベースキャリアのキャリアバー100に保持されるベース120と、前記ベース120に固定される車輪保持部材125を有し、前記ベース120に対して、前記車輪保持部材125は、拘束角度を略直立位置及び前記ルーフに略沿って伏せた位置に少なくとも移動可能なると共に該位置に保持可能なる角度制御手段130を配してなることを特徴とする自転車のホイール保持装置であり、前記車輪保持部材の自由端部には、自転車のホイールの車輪軸を保持可能なる支持溝126が開示されている。
【0003】
また、米国特許公開2006−0273124号には、図26に示す様に、車輪保持部材127の自由端部側に形成された自転車のホイールの車輪軸を保持可能な支持溝128が、上下方向に延在した形成された縦溝よりなり、ホイールの車輪軸の保持状態において、下方に形成された摩擦パッド129に自転車のタイヤ1が接触することによってホイールが回転することを防ぐ構造が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特許公開2000−318538号
【特許文献2】米国特許公開2006−0273124号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自転車用ホイールの車輪軸のナットを締めこむことで、ホイール保持装置にホイールを固定しているが、自転車の種類によっては自転車のフォーク部のツメの厚みに差があり、自転車のフォーク部の厚みが大きい自転車では、フォーク部からホイールを外す際に、前記車輪軸のナットを大きく緩める必要があり、前記日本国特許公開2000−318538号や、米国特許公開2006−0273124号では、ホイール固定部の支持部の厚みが一定であるため、車輪軸のナットの締込量が多くなってしまい、着脱作業が大変であった。
【0006】
また、車軸を係合保持可能な支持溝は、挿入部が開口した状態であるため、車輪軸のナットの締めこみが不十分だと、ホイール保持装置の支持溝から自転車用ホイールの車輪軸が離脱し、車輪が脱落の危険があった。
【0007】
本発明は前記の欠点を除くようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自動車に自転車のホイールを固定するためのホイール保持装置であり、自動車(自動車に固定されたベースキャリアを含む)との固定手段を有する固定基部と、下部が前記固定基部に接続され上方に延在する延在部を有する支持体と、前記支持体に対して伸縮方向への移動が可能に接続される保持体と、前記支持体に対する保持体の伸方向の移動を制御する伸制御機構を有し、前記保持体および支持体には夫々、前方もしくは後方の何れかの側面に向かう開口部を有する溝部が形成され、前記保持体および支持体の夫々の開口部の位置を一致させた状態で前記ホイールの車輪軸のフォーク爪保持部が前記夫々の開口部から溝部内に進入可能に構成され、その状態から前記保持体の前記支持体に対する縮方向への移動によって前記溝部に対する前記車輪軸の出し入れが制御可能に構成されることを特徴とする。
【0009】
更に、前記固定基部の上方位置には、前記ホイールのタイヤ部分と当接可能なタイヤ受部が配置され、前記支持体に形成される溝部は伸縮方向に伸びる長孔状に形成され、この溝部の上方位置に前記側面に向かう開口部が形成され、前記保持体および支持体の側方に向かう夫々の開口部の位置を一致させた状態で前記ホイールの車輪軸のフォーク爪保持部を前記夫々の開口部から溝部内に進入させ、前記支持体に対する前記保持体の縮方向への移動操作によって、前記保持体による前記ホイールの車軸部の保持部と前記タイヤ受部間に自転車のホイールが固定される様に構成すると良い。
【0010】
更に、前記保持体に形成される溝部は上記伸縮方向に伸びる長孔状に形成され、この溝部の下方位置に前記側面に向かう開口部が形成され、前記保持体の伸縮方向に伸びる溝部の周囲部分の左右幅は、下部位置においては自転車のフォーク爪の厚さよりも小さく形成されると共に、上方に向かって左右幅が広く成る部分を有し、前記溝部の上部位置における周囲部分の左右方向の幅は自転車のフォーク爪の厚さと同等もしくは自転車のフォーク爪の厚さよりも広く形成すると良い。
【0011】
更に、前記支持体に対する保持体の伸方向の移動を制御する伸制御機構を解除し、前記支持体に対して前記保持体を伸方向に移動させた際に、前記保持体および支持体の側方に向かう夫々の開口部の位置が一致した時点で、前記支持体に対する保持体の伸方向の移動を困難にすると同時に、前記保持体および支持体の側方に向かう夫々の開口部の位置が一致した状態を維持可能なロック機構を有すると良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自転車のホイール保持装置は、保持体および支持体の夫々の開口部の上下位置を一致させた状態でホイールの車輪軸を前記溝内に挿入させた後、支持体に対して保持体を伸縮方向に移動操作するだけで、前記溝部内から車軸部が放出されないようになり、ホイール保持装置からの前記ホイールの脱落を確実に防止する事ができる。
【0013】
前記保持体および支持体の側方に向かう夫々の開口部の位置を一致させた状態で前記ホイールの車輪軸のフォーク爪保持部を前記夫々の開口部から溝部内に進入させ、前記支持体に対する前記保持体の縮方向への移動操作によって、前記保持体による前記ホイールの車軸部の保持部と前記タイヤ受部間に自転車のホイールが固定されるため、自転車のホイールはタイヤ受部との当接部と車軸部の2点でしっかり挟持されるため、走行中の振動や衝撃等がホイールに作用しても、ホイールは上下方向のガタツキが無く、安定した保持状態を持続する事ができる。
【0014】
更に前記保持体の伸縮方向に伸びる溝部の周囲部分の左右幅は、下部位置においては市場に一般に流通している自転車のフォーク爪の厚さよりも小さく形成されると共に、上方に向かって左右幅が広く成る部分を有し、前記溝部の上部位置における周囲部分の左右方向の幅は市場に一般に流通している自転車のフォーク爪の厚さと同等もしくは自転車のフォーク爪の厚さよりも広く形成されることによって、前記溝内に前記ホイールの車輪軸のフォーク爪保持部を配置した状態で、前記保持体を前記固定基部方向(縮み方向)に移動させる事によって、前記ホイールの車輪軸のフォーク爪保持部が、前記溝部内の周囲部の肉厚が薄い位置から、前記溝部内の周囲部の肉厚が厚い位置の方向に移動し、前記ホイールの車輪軸のフォーク爪保持部の幅よりも前記溝部内の周囲部の肉厚が厚くなった位置もしくは、その直前の位置で、前記ホイールの車輪軸のフォーク爪保持部を、左右方向(軸方向)のガタツキが無く安定した保持状態を持続する事ができる。
【0015】
更に前記支持体に対する保持体の伸方向の移動を制御する伸制御機構を解除し、前記支持体に対して前記保持体を伸方向に移動させた際に、前記保持体および支持体の側方に向かう夫々の開口部の位置が一致した時点で、前記支持体に対する保持体の伸方向の移動を困難にすると同時に、前記保持体および支持体の側方に向かう夫々の開口部の位置が一致した状態を維持可能なロック機構を有するため、使用者の作業時に誤って前記保持体が支持体から外れてしまう事が無く、前記溝部に対するホイールの車輪軸の出し入れが可能な位置で前記保持体の移動が自動的に止まり、その固定状態が維持されるため、車輪軸の出し入れ作業を非常に簡単に行う事ができる。
【0016】
尚、本発明のホイール保持装置は、ホイールを固定に、車輪軸に形成されたフォーク爪締め付け用ネジによる締め付け操作を利用する必要がないため、本発明のホイール保持装置への固定が簡単であると同時に、このホイール保持装置から取り外したホイールを自転車のフォークに装着する際にも、前記フォーク爪締め付け用ネジの調整が容易である点について、従来のホイール保持装置には無い大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例に係わるホイールの保持状態を示す側面図である
【図2】本発明の第1実施例に係わるホイールの保持状態を示す正面図である
【図3】本発明の第1実施例に係わるホイールの保持状態を示す部分断面図である
【図4】本発明の第1実施例に係わるホイールの保持状態を示す斜視図である
【図5】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置を示す斜視図である
【図6】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の要部分解図である
【図7】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置から保持体を除いた参考斜視図である
【図8】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の伸制御機構の動作説明図である
【図9】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の伸制御機構の解除操作を示す説明図である
【図10】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の伸制御機構の変形例を示す参考図である
【図11】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の傾斜状態を示す側面図である
【図12】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の傾斜状態を示す斜視図である
【図13】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の使用工程(ホイールの車輪軸の挿入直前の状態)を示す参考斜視図である
【図14】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の使用工程(ホイールの車輪軸の挿入状態)を示す参考斜視図である
【図15】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置のホイールの保持動作を説明するための参考側面図である
【図16】本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置のホイールの保持動作を説明するための参考正面図である
【図17】本発明の第1実施例に係わる保持体の要部拡大図である
【図18】本発明の第1実施例に係わるホイール111の外径(タイヤ径)が大きく、車輪軸112のフォーク爪保持部113の幅も大きい場合のホイール111の保持状態を示す参考図である
【図19】本発明の第1実施例に係わるホイール111の外径(タイヤ径)が大きく、車輪軸112のフォーク爪保持部113の幅が小さい場合のホイール111の保持状態を示す参考図である
【図20】本発明の第1実施例に係わるホイール111の外径(タイヤ径)が小さく、車輪軸112のフォーク爪保持部113の幅が大きい場合のホイール111の保持状態を示す参考図である
【図21】本発明の第1実施例に係わるホイール111の外径(タイヤ径)が小さく、車輪軸112のフォー爪保持部113の幅も小さい場合のホイール111の保持状態を示す参考図である
【図22】本発明の第2実施例に係わる支持体の要部側面図である
【図23】本発明の第3実施例に係わる保持体の要部断面図である
【図24】本発明の第4実施例に係わるホイール保持装置を示す正面図である
【図25】従来技術を示す側面図である
【図26】従来技術を示す斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の第1実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の第1実施例に係わるホイールの保持状態を示す側面図、図2は本発明の第1実施例に係わるホイールの保持状態を示す正面図、図3は本発明の第1実施例に係わるホイールの保持状態を示す部分断面図、図4は本発明の第1実施例に係わるホイールの保持状態を示す斜視図、図5は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置を示す斜視図である
【0020】
本発明の第1実施例に記載する自転車のホイール保持装置1は、自動車に固定されたベースキャリアのキャリアバー100との固定手段11を有する固定基部10と、ボルト16とナット17よりなる軸部材15によってその下部が前記固定基部10に対して回動可能でかつ傾斜状態での固定が可能に軸支され上部には上方に延在する延在部を有する支持体20と、下面に開口部35が形成され、この開口部35から上方に向かって内部に前記支持体20の延在部を収容可能な空間部36が形成され、前記支持体20を前記空間部36内に挿入した状態で前記支持体20に対して伸縮方向(上下方向)の移動が可能に構成される保持体30と、前記支持体20に対する保持体30の伸方向(上方向)の移動を制御する伸制御機構40を有する。
【0021】
前記保持体30の空間部36の前後および左右方向の寸法は、前記保持体30の空間部36に挿入される前記支持体20の延在部の前後および左右方向の寸法よりも大きな寸法に設定されるが、その前記保持体30の空間部36の前後および左右方向の寸法と、記保持体30の空間部36に挿入される前記支持体20の延在部の前後および左右方向の寸法の差異は、製造工程における寸法精度や熱的要因による膨張率の差異を考慮した上で、量産性や経済性(不良率や部品コスト)に支障が無い範囲で少ない寸法差である事が望ましい。
【0022】
尚、本実施例において前記固定基部10のキャリアバー100との固定手段11は、前記固定基部10の下面と平板状の保持版12の間に前記キャリアバー100を挟み込み、ボルト13とナット14によって固定する構造であるいが、本発明におけるキャリアバー100との固定手段は既存のキャリアバーへの物品固定構造を参照して自由に設計する事が出来、また、キャリアバーを介さず、前記固定基部10を自動車の屋根や荷台等に直接、ボルト等で固定しても良い。(図示せず)
【0023】
尚、本発明において、上下方向、左右方向、前後方向は、共に前記固定基部10に対して前記支持体20を垂直に固定した場合を基準とした方向であり、本実施例の説明においては、図1における左側を前方、図1における右側を後方、図1における正面から奥の方向に向かう方向を左右方向として説明する。尚、本発明の権利範囲は本実施例に記載の前方と後方を逆に構成しても良く、更に前後方向と左右方向を入れ替えて構成しても良い。
【0024】
前記支持体20には前方に向かう開口部21を有する溝部22が形成され、前記保持体30には前方に向かう開口部31を有する溝部32が形成され、前記支持体20および保持体30の前方に向かう夫々の開口部21、31の位置を一致させた状態で、自転車のホイール111の車輪軸112のフォーク爪保持部113が前記夫々の開口部21、31から夫々の溝部内22、32に進入可能に形成されると共に、前記支持体20および保持体30の夫々の前記開口部21、31を含む溝部22、32は前記ホイール111の車輪軸112のフォーク爪保持部113が挿入可能な様に、前記車輪軸112のフォーク爪保持部113内の外径よりも大きな溝幅で形成される。尚、具体的な溝幅は現時点において9〜11mmの範囲が既存の自転車のホイールを運搬する場合に好適であるが、本発明は前述の溝幅サイズに限定されず特殊サイズの車輪軸に適合させる場合や将来異なる車輪軸の径が増加した場合など、適合させるホイールや、その時代の要請に応じて、適切な溝幅に形成する事が出来る。
【0025】
前記支持体20に形成される溝部22は、前記支持体20に対する前記保持体30の伸縮方向(上下方向)に伸び、その上方位置に、前記前方に向かう開口部21が形成される。
【0026】
前記保持体30に形成される溝部32は、前記支持体20に対する前記保持体30の伸縮方向(上下方向)に伸び、その下方位置に、前記前方に向かう開口部31が形成される。
【0027】
本実施において、前記支持体20に対する保持体30の伸方向(上方向)の移動を制御する伸制御機構40は前記保持体30が、前記支持体20に対して伸方向(上方向)に移動する方向の力が作用した際に、前記支持体20に対する前記保持体30の移動を制御する様に構成される。
【0028】
図6は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の要部分解図、図7は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置から保持体を除いた参考斜視図、図8は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の伸制御機構の動作説明図、図9は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の伸制御機構の解除操作説明図であり、この伸制御機構40は、前記保持体40の内部空間部36内に配置され、その内面に前記支持体20の挿通孔42を有するリング状部材41が配置される。
【0029】
前記保持体40の内部空間部36内の前記リング状部材41の配置位置の上方位置には、前記支持体20の延在方向に対して略垂直な角度で前記リング状部材41の上面が当接する前方上部当接面37aと後方上部当接面37bが形成され、更に前記空間部36内の前記リング状部材41の配置位置の下方位置における後方側端部にはリング状部材41の後方下部を下から支持する後方下面支持部38が形成され、前記内部空間部36内の前記リング状部材41の配置位置の下方位置における左右部および前記後方下面支持部38よりも前方側の位置には、前記リング状部材41の前方側の下方への傾斜を許容する逃げ部39が形成され、更に、前記後方下面支持部38を支点として前記リング状部材41の前方側を下方に傾斜する様に付勢する弾性体43が配置され、前記保持部材30の前方位置で前記リング状部材41の配置位置の下方位置には傾斜解除レバー45が配置され、前記傾斜解除レバー45は前記リング状部材41の前方側の下面との当接部46と前記リング状部材41の前方側が下方へ傾斜した状態から非傾斜状態への移動が可能な様に、上下方向の移動操作が可能な傾斜解除の操作部47が形成される。尚、前記弾性体43は、前記リング状部材41の前方側(傾斜解除レバー側)を下方に傾斜する様に付勢出来れば良く、本発明において、弾性体の配置位置、構造、形状等は本実施例に限定されず、既存の技術を用いて自由に設計する事が出来る。
【0030】
尚、前記リング状部材41は前記支持体20を挿通した状態で前記支持体20の延在方向に対して垂直に配置された状態から、前記後方下面支持部38を支点として前記リング状部材41の前方側を下方に5度程度(1度〜10度)傾斜可能な様に、前記支持体20の延在部の前後方向の距離よりも、前記リング状部材41の挿通孔42の前後方向の距離の方が長い寸法で形成される。
【0031】
そして、本実施例においては、前記保持体30を前記支持体20方向に移動させる際には、前記伸制御機構40のリング状部材41は、前記リング状部材41の内面に形成された支持体20の挿通孔42と、前記支持体間20の摩擦抵抗によって、前記リング状部材41が非傾斜方向に移動し、前記リング状部材41に対する前記支持体20の係合状態が自動的に解除されるため、前記保持体30を前記支持体方向20に押し付け操作するだけで、前記保持体30を前記支持体20方向に移動させる事ができる。
【0032】
図10は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の伸制御機構の変形例を示す参考図である。本発明の伸制御機構40は、本実施例に限定されず、図10に示す様に、支持体20と保持体30の相互の移動制御にラチェット歯90と係合片91と、前記係合片91のラチェット歯90への付勢手段(図示せず)と、前記係合片91のラチェット歯90との係合状態の解除操作部92を有する、ラチェット機構を用いても良く、更に他の既存の相互位置の調整機構を利用しても良い。
【0033】
更に本実施例においては第2の移動制御機構50を有する。前記第2の移動制御機構50は前記保持体30の内部空間部36内の後方側面に形成した凹部51と、前記凹部51内に一端側が配置され他端側が前記保持体30の内部空間部36に向かって突出するロックピン55と、前記保持体30の凹部51とロックピン間55に配置され前記ロックピン55を保持体30の内部空間方向36に付勢する弾性部材58(バネ)と、前記支持体20の後方側面に形成された前記ロックピン55の他端を受け入れ可能な凹状の受部25を有する。
【0034】
前記傾斜解除レバー45の操作によって前記支持体20に対する保持体30の伸方向(上方向)の移動を制御する伸制御機構40を解除し、前記支持体20に対して前記保持体30を伸方向(上方向)に移動させた際に、前記支持体20および保持体30の夫々の上記開口部21、31の上下位置が一致した時点で、前記第2の移動制御機構50が作動し、前記凹状の受部25内に前記ロックピン55の他端が進入すて前記支持体20に対する保持体30の移動が制御される。この状態で保持体30に支持体20方向(縮み方向)への力を設定値以上に付加した際には、前記保持体30が支持体20に対して縮み方向(下方向)にのみ移動可能に構成するために前記支持体20に形成された凹状の受部25は内面下部が傾斜面26で構成される。尚、前記ロックピン55が前記凹部51内で回転しない様に、前記ロックピン55および凹部51の断面形状を、角ピン、角穴等、真円形状以外の組み合わせによって形成すると共に前記ロックピン55の他端側の下面は傾斜面56で形成される。尚、傾斜面56以外の形状(例えば曲面)で形成しても良い(図示せず)、また凹状の受部25の形状と前記ロックピン55の他端形状は、本実施例の何れか一方のみを実施しても良い。
【0035】
上記構成により、前記支持体20に対して前記保持体30を伸方向(上方向)に移動させた際に、前記支持体20および保持体30の前面に向かう夫々の開口部21、31の位置が一致した時点で、前記支持体20に対する保持体30の伸び方向(上方向)の移動は困難となり、前記保持体30に縮み方向(下方向)への力が掛からない状態では前記夫々の開口部21、31の位置が一致した状態が維持される。そして前記保持体30に縮み方向(下方向)の力を付加した際には、前記ロックピン55を凹部51方向に移動させる力が、前記ロックピン55を保持体30の内部空間方向に付勢する弾性部材58(バネ)の付勢力を上回った段階で、前記ロックピン55の他端が前記凹部51方向に移動し、ロックピン55による、前記支持体20に対する保持体30のロック状態が解除され、前記保持体30の縮み方向(下方向)の移動が可能となる。
【0036】
図11は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の傾斜状態を示す側面図、図12は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の傾斜状態を示す斜視図であり、ホイール111のタイヤ114部分と当接可能なタイヤ受部60が、前記支持体20を前記固定基部10に軸支する前記軸部材15によって軸支され、前記支持体20の傾斜に連動して前記タイヤ受部60のタイヤ当接面61が傾斜する様にタイヤ受部60の一側部には前記支持体20と係合する係合部62が形成される。尚、前記タイヤ当接面61は太さの異なるタイヤ114をがたつき無く保持するために左右方向の断面が略V字形状に形成される。尚、本発明のタイヤ保持部は、本実施例の構成に限定されず、前記固定基部10の上面にタイヤ受部を形成しても良く(図示せず)、また上記軸部材15をタイヤ受部としても良い(図示せず)。また上記タイヤ受部60のタイヤ当接面61は必ずしも支持部材20の傾斜に連動して傾斜する必要は無く、タイヤ受部60が前記軸部材15を中心軸とした中央部の径が小さい円筒形状に形成しても良い(図示せず)。本発明の構成は前記ホイール111の固定状態で支持体20(保持体30を含む)を傾けても、前記ホイール111の車軸部112と前記タイヤ受部60間の距離は変わらないため固定状態が維持される。
【0037】
図13は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の使用工程(ホイールの車輪軸の挿入直前の状態)を示す参考斜視図、図14は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置の使用工程(ホイールの車輪軸の挿入状態)を示す参考斜視図、図15は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置のホイールの保持動作を説明するための参考側面図、図16は本発明の第1実施例に係わるホイール保持装置のホイールの保持動作を説明するための参考正面図、図17は本発明の第1実施例に係わる保持体の要部拡大図であり、本発明における使用時の操作方法は図13〜図17に示す様に、前記支持体20および保持体30の前面に向かう夫々の開口部21、31の上下位置を一致させ、前記第2の移動制御機構50が作動した状態で、前記ホイール111の車輪軸112のフォーク爪保持部113を前記夫々の開口部21、31から溝部22、32内に進入させた際に、図12に示す様に、前記ホイール111の車輪軸112のフォーク爪保持部113が、前記支持体20に形成された溝部22内を下方に移動し、前記タイヤ受部60にタイヤ114が当接した時点で、上記ホイール111の保持位置がほぼ決定される。(ホイール111を固定する際のタイヤ114の変形等を考慮する場合は、次段階の車輪軸112の固定段階で上記ホイール111の最終的な保持位置が決定される)
【0038】
次に、前記保持体30を縮み方向(下方向)に移動させる事によって、前記ホイール111の車軸部112に下方向の力が負荷され、前記保持体30とタイヤ受部60間に自転車100のホイール111が固定される様に構成される。図12に示す様に、この保持体30の上下方向に伸びる溝部32の周囲部分の左右方向の幅は、下部位置においては自転車100のフォーク爪101の厚さよりも小さい幅の部分48(8〜9mm程度)で形成されると共に、上方に向かって前記幅が大きく成る部分を有し、前記溝部32の上部位置における周囲部分の左右方向の幅は自転車のフォーク爪の厚さと同等もしくは自転車のフォーク爪の厚さよりも大きい幅の部分49(20〜25mm程度)で形成されることによって、前記支持体20および保持体30の溝部22、32内に前記ホイール111の車輪軸112のフォーク爪保持部113を配置した状態で、前記保持体30を縮み方向(下方向))に移動させる事によって、前記ホイール111の車輪軸112のフォーク爪保持部113は、前記保持体30の溝部32の周囲部の肉厚が薄い位置から、前記溝部32内の周囲部の肉厚が厚い位置の方向に移動し、前記ホイール111の車輪軸112のフォーク爪保持部113の幅よりも前記溝部32内の周囲部の幅が厚くなる直前の位置に固定されるため、前記ホイール111の車輪軸112のフォーク爪保持部113は、軸方向のガタツキが発生せず、しっかりと保持体30に固定することが出来る。
【0039】
図18はホイール111の外径(タイヤ径)が大きく、車輪軸112のフォーク爪保持部113の幅も大きい場合のホイール111の保持状態を示す参考図であり、支持体20の溝部22の上方位置となり、保持体30の溝部32においても上方位置となる。また、図19はホイール111の外径(タイヤ径)が大きく、車輪軸112のフォーク爪保持部113の幅が小さい場合のホイール111の保持状態を示す参考図であり、支持体20の溝部22の上方位置となり、保持体30の溝部32においては下方位置となる。また、図20はホイール111の外径(タイヤ径)が小さく、車輪軸112のフォーク爪保持部113の幅が大きい場合のホイール111の保持状態を示す参考図であり、支持体20の溝部22の下方位置となり、保持体30の溝部32においては上方位置となる。また、図21はホイール111の外径(タイヤ径)が小さく、車輪軸112のフォー爪保持部113の幅も小さい場合のホイール111の保持状態を示す参考図であり、支持体20の溝部22において下方位置となり、保持体30の溝部32においては下方位置となる。
【0040】
尚、前記の、上方に向かって肉厚が厚く成る部分を、前記保持体30に対して着脱自在に構成し、保持するホイール111の車輪軸112のフォーク爪保持部113の幅に応じて、選択可能としても良い。
【0041】
尚、前記支持体20および保持体30の前面に向かう夫々の開口部21、31の位置を一致させ、前記第2の移動制御機構50が作動した状態以外の位置では、前記支持体20および保持体30の構成部分によって、少なくとも前記開口部21、31の部分的に塞がれた状態になるため、前記ホイール111の車輪軸112の出し入れ不可能となる様に構成される。尚、前記開口部21、31の開閉機構は、本実施例に限定されず、既存のリンク機構を用いて前記支持体20に対する保持体30の移動に連動して動作するシャッター機構(図示せず)を設けても良い。
【0042】
以下に、本発明の第2実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例2】
【0043】
図22は本発明の第2実施例に係わるホイール保持装置1の支持体70の要部側面図であり、支持体70に形成する溝部72を、前方に向かう開口部71を有する横溝のみから形成し、他の構成は本実施例1に記載の構成とする事ができる。その場合、車輪軸112の上下調整機能は無いためタイヤ受部60は不要であるが、車輪軸112を支持体70と保持体30の夫々の溝部72、32内に挿入した後に、保持体30を縮み方向(下方向)に移動させる事によって、夫々の開口部71、31が塞がれ、更に車輪軸112の軸位置が固定されると同時に、前記保持体30の伸縮方向(上下方向)に伸びる溝部32の周囲部分の左右幅は、下部位置においては自転車110のフォーク爪の厚さよりも小さく形成されると共に、上方に向かって左右幅が広く成る部分を有し、前記溝部32の上部位置における周囲部分の左右方向の幅は自転車のフォーク爪の厚さと同等もしくは自転車110のフォーク爪の厚さよりも広く形成すれば、ホイールの左右方向の移動も制御する事ができる。
【0044】
以下に、本発明の第3実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例3】
【0045】
図23は本発明の第3実施例に係わるホイール保持装置1の保持体80の要部断面図であり、保持体80に形成する溝部82を、前方に向かう開口部81を有する横溝のみとし、他の構成は本実施例1に記載の構成とする事ができる。その場合、車輪軸112を支持体20と保持体80の夫々の溝部22、82内に挿入した後に、保持体80を縮み方向(下方向)に移動させる事によって、夫々の開口部21、81が塞がれると同時に、前記ホイール111の車軸部112がタイヤ受部60の方向に移動し、前記保持体80とタイヤ受部間60に自転車110のホイール111が固定される。
【0046】
以下に、本発明の第4実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例4】
【0047】
図24は本発明の第5実施例に係わるホイール保持装置1を示す正面図であり、上記第1実施例〜第3実施例の構成において、支持体20、70および保持体30、80と、その伸制御機構40および、第2の移動制御機構50を夫々、左右方向に一対に配置し、ホイール111の車輪軸112に左右一対で形成されるフォーク爪保持部113を、両方固定する様に構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、自動車で自転車のホイールを運搬する際の、ホイール保持装置として、産業上有効に利用する事が出来る。
【符号の説明】
【0049】
1:ホイール保持装置、10:固定基部、11:固定手段、12:保持版、13:ボルト、14:ナット、15:軸部材、16:ボルト、17:ナット、20:支持体、21開口部、22:溝部、25:受部、26:傾斜面、30:保持体、31:開口部、32:溝部、35:開口部、36:内部空間部、37a:前方上部当接面、37b:後方上部当接面、38:後方下面支持部、39:逃げ部:、40:伸制御機構、41:リング状部材、42:挿通孔、43:弾性体、45:傾斜解除レバー、46:当接部、47:操作部、48:小さい幅の部分、49:大きい幅の部分、50:第2の移動制御機構、51:凹部、55:ロックピン、56:傾斜面、58:弾性部材、60:タイヤ受部、61:タイヤ当接面、62:係合部、70:支持体、71:開口部、72:溝部、80:保持体、81:開口部、82;溝部、90:ラチェット歯、91:係合片、92:解除操作部、100:キャリアバー、110:自転車、111:ホイール、112:車輪軸、113:フォーク爪保持部、114:タイヤ、120:ベース、125:車輪保持部材、126:支持溝、127:車輪保持部材、128:支持溝、129:摩擦パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に自転車のホイールを固定するためのホイール保持装置であり、自動車(自動車に固定されたベースキャリアを含む)との固定手段を有する固定基部と、下部が前記固定基部に接続され上方に延在する延在部を有する支持体と、前記支持体に対して伸縮方向への移動が可能に接続される保持体と、前記支持体に対する保持体の伸方向の移動を制御する伸制御機構を有し、前記保持体および支持体には夫々、前方もしくは後方の何れかの側面に向かう開口部を有する溝部が形成され、前記保持体および支持体の夫々の開口部の位置を一致させた状態で前記ホイールの車輪軸のフォーク爪保持部が前記夫々の開口部から溝部内に進入可能に構成され、その状態から前記保持体の前記支持体に対する縮方向への移動によって前記溝部に対する前記車輪軸の出し入れが制御可能に構成されることを特徴とする自転車のホイール保持装置
【請求項2】
前記固定基部の上方位置には、前記ホイールのタイヤ部分と当接可能なタイヤ受部が配置され、前記支持体に形成される溝部は伸縮方向に伸びる長孔状に形成され、この溝部の上方位置に前記側面に向かう開口部が形成され、前記保持体および支持体の側方に向かう夫々の開口部の位置を一致させた状態で前記ホイールの車輪軸のフォーク爪保持部を前記夫々の開口部から溝部内に進入させ、前記支持体に対する前記保持体の縮方向への移動操作によって、前記保持体による前記ホイールの車軸部の保持部と前記タイヤ受部間に自転車のホイールが固定される様に構成されることを特徴とする請求項1記載の自転車のホイール保持装置
【請求項3】
前記保持体に形成される溝部は上記伸縮方向に伸びる長孔状に形成され、この溝部の下方位置に前記側面に向かう開口部が形成され、前記保持体の伸縮方向に伸びる溝部の周囲部分の左右幅は、下部位置においては自転車のフォーク爪の厚さよりも小さく形成されると共に、上方に向かって左右幅が広く成る部分を有し、前記溝部の上部位置における周囲部分の左右方向の幅は自転車のフォーク爪の厚さと同等もしくは自転車のフォーク爪の厚さよりも広く形成されることを特徴とする請求項1または2記載の自転車のホイール保持装置
【請求項4】
前記支持体に対する保持体の伸方向の移動を制御する伸制御機構を解除し、前記支持体に対して前記保持体を伸方向に移動させた際に、前記保持体および支持体の側方に向かう夫々の開口部の位置が一致した時点で、前記支持体に対する保持体の伸方向の移動を困難にすると同時に、前記保持体および支持体の側方に向かう夫々の開口部の位置が一致した状態を維持可能なロック機構を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の自転車のホイール保持装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−116281(P2012−116281A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266700(P2010−266700)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(391021226)株式会社カーメイト (100)
【Fターム(参考)】