説明

自転車用のブレーキパッド

【課題】ブレーキパッドがリムを摩擦することによって発生する熱を起因とする、リムの層間剥離、リムの破損、ブレーキの効率の低下およびブレーキの破損を防ぎ、あらゆる制動状態において車輪の優れた信頼性および強度を確保し、一定の制動性能を確実に提供する。
【解決手段】本発明のブレーキパッド(5,105)は、制動時に自転車(1)の車輪(2)のリム(3)の側面(8)に圧接するブレーキ面(9,109)を備えており、ブレーキ面(9,109)から熱を効率よく逃す熱伝達手段(11,111)を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用のブレーキパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
競走用自転車の分野では、現在、例えば高分子材料のマトリックス(母材)内に炭素繊維を含ませたような複合材料からなる部品が幅広く使用されている。これらの材料からなる部品の中でも、自転車の車輪に用いられるリムは、強度、弾性および軽さの間で優れた組み合わせを達成できるので、高く評価されている。
【0003】
しかしながら、本発明の発明者は、このようにして製作されたリムが、強力な制動の後に大きな問題に達しかねないことに気付いた。実際、ブレーキパッドがリムを摩擦することによって熱が生じ、200℃の温度に達することも珍しくないことに気付いた。この熱が、炭素繊維が挿入される高分子材料の機械的特性を変化させ、詳細には、剛性および機械抵抗を3桁(すなわち、1000未満の数字で)低下させ、マトリックスとその他の構成材との間の結合を弱くする。このようにして、リムの層間剥離が生じることがある。極端な場合には、リムが壊れることさえある。
【0004】
金属材料からなるリムの場合には、この問題はそれほど極端ではないが、リムの加熱により、ブレーキ効率が低下することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基本的な課題は、前述の問題を克服し、あらゆる制動状態において車輪の優れた信頼性および強度を確保し、一定の制動性能を確実に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって第1の構成において本発明は、請求項1に記載のブレーキパッドに関し、第2の構成において、請求項25に記載の車輪‐ブレーキ装置に関し、第3の構成において、請求項30に記載の、ブレーキパッドを製作するための混合物に関する。
【0007】
より詳細には、本発明のブレーキパッドは、制動時に自転車の車輪のリムの側面に圧接するブレーキ面を備えており、前記ブレーキ面から熱を効率よく逃す熱伝達手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
あらゆる材料が熱伝導によって熱を伝達できること、さらに、あらゆるシステムにおいて熱を対流および放射によって伝達できることは明白である。したがって、あらゆる車輪‐ブレーキ装置において、ブレーキパッドのブレーキ面で発生する熱が、この領域に留まらずに、さまざまな場合に応じて異なる時間にわたっておよび異なる方法によって、他の低温の領域に向かって自然に移動していくことは明白である。本発明の記載において、「熱伝達手段」という用語は、ブレーキパッドに特に設けられる要素または材料の集合のことをいい、ブレーキパッドが含むその他の要素または材料よりも、明らかに良好に熱を伝達できる。
【0009】
このような熱伝達手段が設けられていることにより、制動の際にブレーキ面で発生する熱が、この領域から逃され、ブレーキパッドの他の領域に伝達される。このようにして、リムに伝達される熱量が減少し、これにより、リムの過熱の恐れが軽減される。
【0010】
詳細には、従来のブレーキパッドでは、ブレーキ面で発生した熱はこの面に留まり、制動の終了後に、周囲の空気との接触によって発散されることが認められている。有利なことに、本発明の熱伝達手段は、さらに、制動時に熱をブレーキ面から逃すので、制動が長時間にわたる場合であっても、リムが過剰に加熱される恐れがない。
【0011】
好ましくは、ブレーキパッドが、ブレーキパッドの外部に向いた熱交換面を、ブレーキ面とは別個に備えており、熱伝達手段が、ブレーキ面からこの熱交換面に熱を伝達させる。このようにして、制動によって生じた熱をブレーキパッドの外部に優先的に伝達させる優先経路が確立される。これによりブレーキパッドの過熱は小さくなり、ブレーキ面から熱を逃す能力はより大きくなる。
【0012】
好ましくは、熱交換面は、パッド保持のための支持体または空気に接触する。第1の場合には、好ましくは、熱交換面は、接触による熱の伝達を促すために平坦かつ規則的であり、パッド保持のための支持体は、高い熱伝導率を有する材料からなる。第2の場合には、熱交換面は、空気との接触面積を最大にするために、可能な限り面積を広くしてあり、好ましくは、フィンを備えている。有利なことに、このようにして、ブレーキパッドが既に備えている面を熱交換面として利用できるので、従来の寸法を変更させる必要なく、制動時にもブレーキパッドを冷却することができる。
【0013】
好ましい一実施形態によると、ブレーキパッドは、高摩擦の材料のマトリックスを含んでおり、熱伝達手段は、マトリックス内に組み込まれた、マトリックスの材料よりも高い熱伝導率を有する材料のフィラメントを有している。好ましくは、前記フィラメントは、ブレーキ面の近傍にあるが、ブレーキ面上にはなく、ブレーキパッドとリムの側面との間の接触状態を妨げず、結果として制動性能を妨げない。好ましくは、前記フィラメントは、50W/m・K超、さらに好ましくは150W/m・K超の熱伝導率を有する材料からなり、このような材料は金属であり、好ましくは、亜鉛、鉄、鋼、アルミニウム、銅、または銀である。
【0014】
他の好ましい実施形態によると、ブレーキパッドは、高摩擦の材料のマトリックスを含んでおり、熱伝達手段は、マトリックス内に組み込まれた、マトリックスの材料よりも高い熱伝導率を有する材料の顆粒を有している。この顆粒の構造は、ブレーキパッドとリムの側面との間の接触状態を許容できないほどに妨げることがないので、好ましくは、前記顆粒は、ブレーキ面を含むマトリックスの全体にわたって分布している。顆粒がブレーキ面にもあることにより、熱発散効率が最大化される。さらに、このようなブレーキパッドの製作は、簡単かつ安価であり、マトリックスを形成する混合物に顆粒を添加するだけで十分である。好ましくは、前記顆粒は、50W/m・K超、さらに好ましくは150W/m・K超の熱伝導率を有する材料からなる。
【0015】
好ましくは、前記顆粒は、500マイクロメートル(μm)未満、さらに好ましくは200マイクロメートル(μm)未満の平均粒径を有している。この粒径であれば、ゴムをマトリックスとする場合において満足のいく熱発散が得られ、リムの摩耗が防止され、同時にゴム粒子間の集合が妨げられることがない。
【0016】
好ましくは、マトリックスは、ゴムからなり、顆粒は、黒鉛、好ましくは膨張天然黒鉛からなる。実際、これらのような顆粒を使用することによって、他の種類の顆粒と比較してゴム分子間の集合がより良好になり、リムの摩耗がより小さくなることが明らかになっている。この場合において顆粒は、10マイクロメートル(μm)から100マイクロメートル(μm)の間の平均粒径を有する。実際に、これらの顆粒は、より小さい粒径の顆粒に比べて揮発性が小さく、ブレーキパッドを製作するプロセスの管理を容易にし、他方、より大きい粒径の顆粒に比べて、混合物内においてより一様に分布することができる。
【0017】
変形例として、マトリックスは、ゴムからなり、顆粒は、二硫化モリブデンからなる。この場合において、好ましくは、顆粒は、ゴムのマトリックスと最良に混合するよう20マイクロメートル(μm)未満の平均粒径を有している。
【0018】
さらなる変形例として、顆粒は、金属材料、好ましくは、亜鉛、鉄、鋼、アルミニウム、銅、または銀からなる。この場合において顆粒は、リムの摩耗を防ぐために、1マイクロメートル(μm)未満の平均粒径を有している。
【0019】
好ましくは、ブレーキパッドは、30〜60重量%のゴムと4〜50重量%の顆粒とを含む混合物からなる。多量の顆粒では、制動性能を損なう可能性がある一方、少量では、所望の熱発散を確保するのに十分でなくなる。
【0020】
より好ましくは、混合物は、30〜40重量%のゴム、40〜60重量%のコルク、および4〜20重量%の顆粒を含んでおり、さらに好ましくは、コルクおよび顆粒の重量パーセントの合計は65%以下である。混合物内にコルクがあることによって、制動力を低下させることなく、リムの摩耗、詳細には、繊維質のリムの摩耗、およびブレーキパッドの摩耗が特に効果的に減少することが明らかになっている。さらに、この混合物は、制動時に騒音を減少させ、湿潤時および乾燥時の両方において良好な制動性能をもたらすことが証明されている。上述の量であれば、ゴムの集合が困難になることはない。
【0021】
好ましくは、コルクは、顆粒状であり、0.3〜1ミリメートル(mm)、好ましくは0.5〜0.7ミリメートル(mm)の平均粒径を有している。この場合、高い熱伝導率を有する材料の顆粒は、コルクの顆粒よりも小さい粒径であるのが好ましく、コルクの顆粒の間の隙間に挿入することができ、集合を促す。
【0022】
好ましくは、前記顆粒は、膨張天然黒鉛からなり、4〜15重量%に等しい量である。
【0023】
第2の構成において本発明は、より詳細には、自転車の車輪‐ブレーキ装置に関するものであり、2つの対向する側面を有するリムを備える車輪と、制動時に作動され、各々のブレーキ面をリムの側面に圧接させる2つのブレーキパッドを備えるブレーキとを含み、各々のブレーキパッドが、ブレーキ面から熱を効率よく逃す熱伝達手段を備えていることを特徴とする。
【0024】
好ましくは、リムは、複合材料からなり、この種類のリムこそ、本発明の利点を最も評価できるリムである。
【0025】
好ましくは、各々のブレーキパッドは、パッド保持のための支持体によって、該当のブレーキに取り付けられている。さらに好ましくは、各々のブレーキパッドは、該当のパッド保持のための支持体に接触し、ブレーキパッドの外部に向いた熱交換面を有しており、熱伝達手段は、熱を、ブレーキ面から熱交換面に伝達させ、熱交換面からパッド保持のための支持体に伝達させる。
【0026】
好ましくは、パッド保持のための各々の支持体に、熱発散を促すフィンが設けられている。
【0027】
第3の構成において本発明は、より詳細には、自転車の制動に用いられるブレーキパッドを製作するための混合物に関するものであり、ゴムと、架橋剤と、ゴムよりも高い熱伝導率を有する材料の顆粒とを含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を用いて行う本発明の好ましい実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【0029】
図1には自転車1が示されており、リム3をそれぞれ有する一対の車輪2を備えている。ブレーキ4が、各々の車輪2に設けられ、少なくとも1つのブレーキパッド、より好ましくは、一対のブレーキパッド5を有しており、これらのブレーキパッドは、ブレーキ制御システム(従来からのものであり図示されてない)によって与えられる指令によりリム3の側面8を摩擦することによって、車輪を制動する。
【0030】
リム3は、複合材料、例えば、高分子材料内に構造繊維を含ませた種類の複合材料からなる。一般的にこの構造繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、ボロン繊維、およびこれらを組み合わせたもので構成されるグループから選択される。炭素繊維が特に好ましい。
【0031】
高分子材料内における前記構造繊維の配置は、構造繊維の小片もしくはシートの無作為配置、繊維のほぼ一方向の整列配置、繊維のほぼ二方向の整列配置、または上記を組み合わせたものであってもよい。
【0032】
好ましくは、高分子材料は、熱硬化性であり、好ましくは、エポキシ樹脂を含んでいる。しかしながら、これは、熱可塑性材料を用いる可能性を排除しない。
【0033】
リム3は、一般的に、共通の樹脂によって互いに密着する複合材料の一連のシートを重ね合わせることによって製作される。
【0034】
リム3およびブレーキパッド5は、自転車1の車輪‐ブレーキ装置6の基本的な構成要素である。
【0035】
図2には、ブレーキ4がより詳細に示されており、このブレーキ4は、各々のブレーキパッド5をブレーキ4に取り付けるパッド保持のための支持体7を備えている。
【0036】
図3には、休止状態、すなわちブレーキパッド5がリム3の側面8に作用していないときにおける、ブレーキ4と自転車1の車輪2との相互組み付け位置が概略的に示されている。
【0037】
図4には、本発明に従って製作されたブレーキパッド5がより詳細に示されている。ブレーキパッド5は、制動時にリム3の側面8に接触するブレーキ面9と、側面8に接触しない複数の他の面10とを有している。ブレーキ面9およびその他の面10は、ブレーキパッド5の本体12を形成しており、詳細には、他の面10は、ブレーキ面9を除くブレーキパッド5の全ての外面を含み、ブレーキ面9からブレーキパッド5の内部に向かってくぼんだ複数の凹部を有する面と、場合によりパッド保持のための支持体7に接触する面とを有している。
【0038】
ブレーキパッド5の本体12は、高摩擦の材料のマトリックス(母材)13を含んでおり、このマトリックス13には、熱をブレーキ面9からその他の面10に伝達させる熱伝達手段が組み込まれている。
【0039】
より詳細には、本体12が、ゴムと、架橋剤と、ゴムよりも高い熱伝導率を有する材料の粉末とを含む混合物からなり、この混合物が熱伝達手段を形成している。
【0040】
この粉末は、顆粒11からなり、好ましくは、これら顆粒11は、ブレーキパッド5の本体12の全体にわたって一様に分布し、必須ではないが好ましくは、少なくともいくつかの隣接する顆粒11の間の接触を可能にし、ブレーキ面9からブレーキパッド5の内部を通りその他の面10に向かう無作為な熱伝達経路を構成することを可能にするような量で分布している。図4は単なる概略図であり、顆粒11の分布について意味するものでないことに留意すべきである。
【0041】
他の面10は、ブレーキパッド5の外部に向いた熱交換面である。熱交換面10は、パッド保持のための支持体7に接触していてもよく、または空気に直接接触していてもよい。有利なことに、顆粒11の無作為な分布により、ブレーキ面9を除くブレーキパッド5の全ての面が、空気またはパッド保持のための支持体などの他の物との熱交換面10、すなわち冷却面に確実になっている。熱交換の効率は、従来のブレーキパッドに比べて大幅に向上されている。実際、ブレーキパッド5の全熱交換面は他の面10の全ての合計であり、熱が発生するブレーキ面9よりもはるかに大きい。
【0042】
また、熱交換面をさらに増加させるために、パッド保持のための支持体7に冷却フィン20(図3)を備えてもよい。
【0043】
図4における矢印は、ブレーキパッドの内部および外部の熱伝達の流れを概略的に示している。熱流量を最大化させるためには、50W/m・K超、さらに好ましくは150W/m・K超の熱伝導率を有する材料の顆粒11を使用することが好ましい。
【0044】
比較の対象として、従来のブレーキパッドに使用されているマトリックスは、熱伝導率が0.5W/m・K未満であるのが好ましいと考えられており、したがって熱絶縁材料であると考えるべきである。
【0045】
好ましくは、顆粒11は、500マイクロメートル(μm)未満、さらに好ましくは200マイクロメートル(μm)未満の平均粒径を有している。顆粒11が、黒鉛、詳細には膨張天然黒鉛からなり、特定の軽量であることによってブレーキパッド5の重量を増加させない場合、好ましくは、これら顆粒11の粒径は、10マイクロメートル(μm)〜100マイクロメートル(μm)の間になるように選択される。
【0046】
実行可能な一変形例によると、顆粒11は、二硫化モリブデンからなり、20マイクロメートル(μm)未満の平均粒径を有していてもよい。
【0047】
さらなる一変形例によると、顆粒11は、金属材料、例えば亜鉛、鉄または鋼からなるものであってもよい。より好ましくは、アルミニウム、さらに好ましくは銀または銅からなるものであってもよい。実際、これらの材料はきわめて高い熱伝導率を有している。したがって、これらの場合における顆粒11の粒径は、1マイクロメートル(μm)未満である。
【0048】
一般に、ブレーキパッド5を製作するための混合物は、成分の重量パーセントで示される以下の調合に従わなければならない。すなわち、30重量%〜60重量%のゴム、および4重量%〜50重量%の顆粒11である。
【0049】
この一般的な調合に基づく第1の好ましい混合物は、30重量%〜40重量%のゴム、40重量%〜60重量%のコルク、および4重量%〜20重量%の顆粒11によって与えられる。この場合、コルクが共存することによる集合の問題を回避するために、顆粒11の受容可能な割合を減少させたことを留意すべきである。詳細には、コルクは、0.3〜1ミリメートル(mm)、より好ましくは0.5〜0.7ミリメートル(mm)の間の平均粒径の顆粒状で組み込まれてもよい。高い熱伝導率を有する材料の顆粒11は、コルクよりも小さい粒径であるのが好ましく、というのも、コルクの顆粒の間の隙間に挿入できるからである。
【0050】
前記一般的な調合に基づく第2の好ましい混合物は、30重量%〜40重量%のゴム、40重量%〜60重量%のコルク、および4重量%〜15重量%の膨張天然黒鉛の顆粒11を含んでいる。黒鉛およびコルクは、ゴムにとって異質な要素であるので、たとえ膨張天然黒鉛が前述の種類のあらゆる顆粒11の中で最も影響が小さいとはいえ、ゴムの集合を悪化させる。この影響を抑えるために、コルクが例えば45重量%〜55重量%などといった高い割合で存在する場合、黒鉛の割合を、例えば4重量%〜10重量%など、上記範囲の下方にするのが好ましい。
【0051】
いずれにせよ、好ましくは、コルクおよび顆粒11の量の合計は、重量%において65%未満である。
【0052】
さらに、全ての混合物は、ゴムの架橋剤を含んでおり、好ましくは、これら架橋剤は、アクリロニトリル・ブタジエン、水素化アクリロニトリル・ブタジエン、スチレン・ブタジエン、エチレン−プロピレン、クロロプレン、またはこれらを組み合わせたものから選択されるポリマーで構成されている。
【0053】
図5には、本発明の他の一実施形態のブレーキパッド105が示されており、熱が、ブレーキパッド105の本体112のマトリックス113に含まれた伝熱性のフィラメント111によって、ブレーキ面109からブレーキパッド105の内部を通り熱交換面110に向かって伝達される。銅フィラメントが特に好ましく、ブレーキ面109のすぐ下、例えば、ブレーキ面109から約3ミリメートル(mm)の距離に設けられる。この距離により、銅フィラメントは、ブレーキ面109からの熱を収集する優れた能力を保持しながら、ブレーキパッド105が摩耗した場合には、ブレーキ面109に達して制動時にリム3の側面8を摩耗することがないようにされている。
【0054】
さらに、当然ながら上述のブレーキパッドは、冷却効果は明白でなくなるが、アルミニウム合金などの金属材料からなるリムと組み合わせて使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】前側の車輪‐ブレーキ装置および後側の車輪‐ブレーキ装置を備える自転車を示す図である。
【図2】図1の自転車のブレーキを示す斜視図である。
【図3】図1の自転車の車輪‐ブレーキ装置を休止形態で示す図である。
【図4】本発明の1つの実施形態である、自転車用のブレーキに用いられるブレーキパッドを示す概略図である。
【図5】本発明の他の実施形態である、自転車用のブレーキに用いられるブレーキパッドを示す概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1 自転車
2 車輪
3 リム
4 ブレーキ
5,105 ブレーキパッド
6 車輪‐ブレーキ装置
8 リムの側面
9,109 ブレーキ面
11,111 熱伝達手段、顆粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動時に自転車(1)の車輪(2)のリム(3)の側面(8)に圧接するブレーキ面(9,109)を備える、自転車(1)のブレーキ(4)用のブレーキパッド(5,105)において、
前記ブレーキ面(9,109)から熱を効率よく逃す熱伝達手段(11,111)を備えていることを特徴とするブレーキパッド(5,105)。
【請求項2】
請求項1において、当該ブレーキパッド(5,105)の外部に向いた熱交換面(10,110)を、前記ブレーキ面(9,109)とは別個に備えており、
前記熱伝達手段(11,111)が、前記ブレーキ面(9,109)からこの熱交換面(10,110)に熱を伝達させるブレーキパッド(5,105)。
【請求項3】
請求項2において、前記熱交換面(10,110)が、パッド保持のための支持体(7)または空気に接触するブレーキパッド(5,105)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、高摩擦の材料のマトリックス(113)を含んでおり、
前記熱伝達手段が、前記マトリックス(113)内に組み込まれた、前記マトリックス(113)の材料よりも高い熱伝導率を有する材料のフィラメント(111)を有しているブレーキパッド(105)。
【請求項5】
請求項4において、前記フィラメント(111)が、前記ブレーキ面(109)の近傍にあるが前記ブレーキ面(109)上にはないブレーキパッド(105)。
【請求項6】
請求項4または5において、前記フィラメント(111)が、50W/m・K超、好ましくは150W/m・K超の熱伝導率を有する材料からなるブレーキパッド(105)。
【請求項7】
請求項6において、前記フィラメント(111)が、金属材料、好ましくは、亜鉛、鉄、鋼、アルミニウム、銅、または銀からなるブレーキパッド(105)。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか一項において、高摩擦の材料のマトリックス(13)を含んでおり、
前記熱伝達手段が、前記マトリックス(13)内に組み込まれた、前記マトリックス(13)の材料よりも高い熱伝導率を有する材料の顆粒(11)を有しているブレーキパッド(5)。
【請求項9】
請求項8において、前記顆粒(11)が、前記ブレーキ面(9)を含む前記マトリックス(13)の全体にわたって分布しているブレーキパッド(5)。
【請求項10】
請求項8または9において、前記顆粒(11)が、50W/m・K超の熱伝導率を有する材料からなるブレーキパッド(5)。
【請求項11】
請求項10において、前記顆粒(11)が、150W/m・K超の熱伝導率を有する材料からなるブレーキパッド。
【請求項12】
請求項8において、前記顆粒(11)が、500マイクロメートル未満の平均粒径を有しているブレーキパッド(5)。
【請求項13】
請求項12において、前記顆粒(11)が、200マイクロメートル未満の平均粒径を有しているブレーキパッド(5)。
【請求項14】
請求項8において、前記マトリックス(13)がゴムからなり、
前記顆粒(11)が、黒鉛、好ましくは膨張天然黒鉛からなるブレーキパッド(5)。
【請求項15】
請求項14において、前記顆粒(11)が、10マイクロメートルから100マイクロメートルの間の平均粒径を有するブレーキパッド(5)。
【請求項16】
請求項8において、前記マトリックス(13)がゴムからなり、
前記顆粒(11)が、二硫化モリブデンからなるブレーキパッド(5)。
【請求項17】
請求項16において、前記顆粒(11)が、20マイクロメートル未満の平均粒径を有しているブレーキパッド(5)。
【請求項18】
請求項8において、前記顆粒(11)が、金属材料、好ましくは、亜鉛、鉄、鋼、アルミニウム、銅、または銀からなるブレーキパッド(5)。
【請求項19】
請求項18において、前記顆粒(11)が、1マイクロメートル未満の平均粒径を有しているブレーキパッド(5)。
【請求項20】
請求項8において、30〜60重量%のゴムと4〜50重量%の前記顆粒(11)とを含む混合物からなるブレーキパッド(5)。
【請求項21】
請求項20において、前記混合物が、30〜40重量%の前記ゴム、40〜60重量%のコルク、および4〜20重量%の前記顆粒(11)を含んでいるブレーキパッド(5)。
【請求項22】
請求項21において、前記コルクおよび前記顆粒(11)の重量パーセントの合計が65%以下であるブレーキパッド(5)。
【請求項23】
請求項21において、前記コルクが顆粒状であり、0.3〜1ミリメートル、好ましくは0.5〜0.7ミリメートルの平均粒径を有しているブレーキパッド(5)。
【請求項24】
請求項21において、前記顆粒(11)が、膨張天然黒鉛からなり、4〜15重量%に等しい量であるブレーキパッド(5)。
【請求項25】
2つの対向する側面(8)を有するリム(3)を備える車輪(2)と、
制動時に作動され、各々のブレーキ面(9,109)を前記リム(3)の前記側面(8)に圧接させる2つのブレーキパッド(5,105)を備えるブレーキ(4)と、
を含む自転車の車輪‐ブレーキ装置において、
各々の前記ブレーキパッド(5,105)が、前記ブレーキ面(9,109)から熱を効率よく逃す熱伝達手段(11,111)を備えていることを特徴とする自転車(1)の車輪‐ブレーキ装置(6)。
【請求項26】
請求項25において、前記リム(3)が複合材料からなる車輪‐ブレーキ装置(6)。
【請求項27】
請求項25において、各々の前記ブレーキパッド(5,105)が、パッド保持のための支持体(7)によって、該当の前記ブレーキ(4)に取り付けられている車輪‐ブレーキ装置(6)。
【請求項28】
請求項27において、各々の前記ブレーキパッド(5,105)が、該当の前記パッド保持のための支持体(7)に接触し、前記ブレーキパッド(5,105)の外部に向いた熱交換面(10,110)を有しており、
前記熱伝達手段(11,111)が、熱を、前記ブレーキ面(9,109)から前記熱交換面(10,110)に伝達させ、前記熱交換面(10,110)から前記パッド保持のための支持体(7)に伝達させる車輪‐ブレーキ装置(6)。
【請求項29】
請求項28において、前記パッド保持のための各々の支持体(7)に、熱発散を促すフィン(20)が設けられている車輪‐ブレーキ装置(6)。
【請求項30】
ゴムと、架橋剤と、前記ゴムよりも高い熱伝導率を有する材料の顆粒(11)とを含んだ、自転車(1)用のブレーキ(4)に用いられるブレーキパッド(5,105)を製作するための混合物。
【請求項31】
請求項30において、前記顆粒(11)が、50W/m・K超、好ましくは150W/m・K超の熱伝導率を有する材料からなる混合物。
【請求項32】
請求項31において、前記顆粒(11)が、500マイクロメートル未満、好ましくは200マイクロメートル未満の平均粒径を有している混合物。
【請求項33】
請求項32において、前記顆粒(11)が、10マイクロメートルから100マイクロメートルの間の平均粒径の黒鉛、好ましくは膨張天然黒鉛の顆粒からなる混合物。
【請求項34】
請求項32において、前記顆粒(11)が、20マイクロメートル未満の平均粒径の二硫化モリブデンからなる混合物。
【請求項35】
請求項32において、前記顆粒(11)が、1マイクロメートル未満の平均粒径の金属材料、好ましくは亜鉛、鉄、鋼、アルミニウム、銅、または銀からなる混合物。
【請求項36】
請求項30〜35のいずれか一項において、30〜60重量%の前記ゴムおよび4〜50重量%の前記顆粒(11)を含んでいる混合物。
【請求項37】
請求項36において、30〜40重量%の前記ゴム、40〜60重量%のコルク、および4〜20重量%の前記顆粒(11)を含んでいる混合物。
【請求項38】
請求項37において、前記コルクおよび前記顆粒(11)の重量パーセントの合計が、65%以下である混合物。
【請求項39】
請求項37において、前記コルクが顆粒状であり、0.3〜1ミリメートル、好ましくは0.5〜0.7ミリメートルの平均粒径を有している混合物。
【請求項40】
請求項37において、前記顆粒(11)が、膨張天然黒鉛からなり、4〜15重量%に等しい量である混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−58127(P2009−58127A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216226(P2008−216226)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(592072182)カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (94)
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
【Fターム(参考)】