説明

自転車用の補助電源システム

【課題】自転車の電装品に電力を安定的に供給することができるシステムを提供することにある。
【解決手段】本補助電源システム100は、補助電源部200を備えている。補助電源部200は、自転車に設けられる発電部10aからの電力で動作する。この補助電源部200は、自転車に搭載された電源14からの電力の供給状態に応じて、自転車に搭載可能な電装品20に対して、発電部10aによって生成される電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用の補助電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車において、人力による駆動力を電動モータにより補助するアシスト自転車が従来知られている。従来のアシスト自転車には、車輪に設けられている電動モータをコントローラによって回生制御しているものがある(たとえば、特許文献1参照)。このような従来のアシスト自転車では、電動モータから得られる電力を、バッテリに供給することによって、バッテリが回生充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−304283
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアシスト自転車では、バッテリの電池残量がなくなると、発電・充電機能であるモータによる回生制御が実行できなくなってしまい、アシスト自転車に搭載された全ての電動コンポーネントが、使用できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、自転車の電装品に電力を安定的に供給することができるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る自転車用の補助電源システムは、補助電源部を備えている。補助電源部は、自転車に設けられる発電部からの電力で動作する。この補助電源部は、自転車に搭載された電源からの電力の供給状態に応じて、自転車に搭載可能な電装品に対して、発電部によって生成される電力を供給する。
【0007】
この補助電源システムでは、補助電源部は、自転車に設けられる発電部からの電力で動作し、たとえば、自転車に搭載された電源から電装品に対する電力の供給が低下又は停止した場合に、補助電源部は電装品に対して電力を供給する。このように、本発明1では、自転車に搭載された電源からの電力の供給状態に応じて、自転車の電装品に電力を安定的に供給することができる。すなわち、本発明では、特別に他の電力供給手段を用意しなくても、自転車の電装品に電力を安定的に供給することができる。
【0008】
発明2に係る自転車用の補助電源システムでは、発明1に記載のシステムにおいて、補助電源部が、発電部によって生成される電力を、電装品が動作可能な電圧又は電流に変換して出力する。
【0009】
この場合、補助電源部が、発電部によって生成される電力を、電装品が動作可能な電圧又は電流に変換して出力するので、発電部から出力された電力が、如何なる値であっても、電装品を動作させることができる。
【0010】
発明3に係る自転車用の補助電源システムでは、発明1又は2に記載のシステムにおいて、補助電源部が、発電部からの電圧を整流する整流部と、整流後の電圧を第1電圧に変圧する電圧変換部とを備えている。
【0011】
この場合、補助電源部では、整流部が発電部からの電圧を整流し、電圧変換部が整流後の電圧を所定の第1電圧に変圧するので、発電部から出力された電力の電圧が変動していたとしても、この電圧を、安定した状態で変圧することができる。
【0012】
発明4に係る自転車用の補助電源システムでは、発明3に記載のシステムにおいて、第1電圧が、電装品が動作可能な第2電圧以上、且つ電源から出力可能な最低電圧未満に設定される。
【0013】
この場合、第1電圧が、電装品が動作可能な第2電圧以上、且つ電源から出力可能な最低電圧未満に設定されているので、自転車に搭載された電源からの電力が供給されている間は、電装品が動作可能な電圧を維持しながら、補助電源部から電装品に対する電力供給が、規制される。これにより、自転車に搭載された電源からの電力が供給されている間は、電源からの電力を用いて、電装品を安定的に動作させることができる。
【0014】
発明5に係る自転車用の補助電源システムは、発明3又は4に記載のシステムにおいて、電源から出力される電圧が、第1電圧未満になった場合に、補助電源部から電装品へと第1電圧で電力を供給する。
【0015】
この場合、電源から出力される電圧が、第1電圧未満になった場合、すなわち電源から出力される電圧が、電力供給を待機している補助電源部の第1電圧未満になった場合に、補助電源部から電装品へと第1電圧で電力が供給される。これにより、自転車に搭載された電源からの電力が低下又は停止した場合に、電力の供給手段を、電源から補助電源部へとスムーズに切り換えることができる。
【0016】
発明6に係る自転車用の補助電源システムでは、発明1から5のいずれか1つに記載のシステムにおいて、発電部が、自転車の車輪の回転をアシストする電動機になっている。
【0017】
この場合、発電部が、自転車の車輪の回転をアシストする電動機になっているので、補助電源部を動作させるための発電部を、特別に用意しなくても、自転車の車輪の回転をアシストする電動機を用いて、補助電源部を動作させることができる。これにより、自転車の構成を大きく変更することなく、補助電源システムを構築することができる。
【0018】
発明7に係る自転車用の補助電源システムは、発明1から6のいずれか1つに記載のシステムにおいて、ダイオードをさらに備えている。ダイオードのアノードが補助電源部に電気的に接続され、ダイオードのカソードが電装品に電気的に接続される。
【0019】
この場合、ダイオードが、補助電源部と電装品との間に配置されているので、電源から出力される電圧と、補助電源部から出力される電圧との間に、電圧差が生じても、電源から出力される電流が、補助電源部へと逆流しないように、規制することができる。これにより、自転車に搭載された電源からの電力が低下又は停止した場合に、補助電源部から電装品に対して電力を供給することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、自転車の電装品に電力を安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態が採用された自転車の右側面図。
【図2】モータ内蔵ハブの分解斜視図。
【図3】駆動回路の回路ブロック図
【図4】補助電源回路の回路ブロック図
【図5】補助電源回路の回路ブロック図(他の実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0022】
<自転車の全体構成>
図1において、本発明の一実施形態を採用した自転車は人力よる駆動をモータ内蔵ハブ10により補助するアシスト自転車である。自転車は、フレーム体102及びフロントフォーク103を有するフレーム101と、ハンドル部104と、駆動部105と、前輪106fと、後輪106rと、フロントブレーキ装置107f及びリアブレーキ装置107rと、前照灯23と、尾灯24と、を備えている。フロントフォーク103は、フレーム体102の前部に斜めの軸回りに揺動自在に装着されている。フロントブレーキ装置107f及びリアブレーキ装置107rは、前輪106f及び後輪106rのリム121f及び121rにそれぞれ接触して制動する。
【0023】
フレーム101には、サドル111やハンドル部104を含む各部が取り付けられている。駆動部105は、フレーム体102のハンガー部に回転自在に支持されたクランク軸116と、クランク軸116の両端に固定されたギアクランク118a及び左クランク(図示せず)と、ギアクランク118aに掛け渡されたチェーン119と、後輪106rのリアハブ110に装着されたギア109と、フロントディレーラ108fと、リアディレーラ108rと、を有している。
【0024】
フロントディレーラ108fは、ギアクランク118aに装着された、たとえば3枚のスプロケットのいずれかにチェーン119を架け渡すものである。リアディレーラ108rは、リアハブ110に取り付けられた、ギア109のたとえば9枚のスプロケットのいずれかにチェーン119を架け渡すものである。フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rは、いずれも電動駆動されるものであり、図示しない電動アクチュエータと、現在の変速段を検出する段数センサと、これらを制御するディレーラ制御部と、をそれぞれ有している。ハンドルバー115には、変速を指示する変速スイッチが設けられ、変速スイッチの操作に応じて、前記ディレーラ制御部が電動アクチュエータを制御する。本実施の形態では、フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rは電動駆動されるが、フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rは変速レバーにワイヤーで連結され、変速レバーによってワイヤーを引っ張ることによって変速駆動される構成であってもよい。
【0025】
フレーム体102の後上部には、リアキャリア112が取り付けられている。リアキャリア112には、自転車全体の電装品20を制御する全体制御部12を含むリアキャリアユニット13が装着されている。リアキャリアユニット13は、モータ内蔵ハブ10、全体制御部12及び前照灯23等の電装品20(電装品20については図3を参照)の電源となる蓄電部14を着脱可能に搭載している。蓄電部14は、蓄電池を含んでいる。蓄電池は、たとえばニッケル水素電池またはリチウムイオン電池等を、含んでいる。蓄電部14に尾灯24が一体で取り付けられている。
【0026】
ハンドル部104は、フロントフォーク103の上部に固定されたハンドルステム114と、ハンドルステム114に固定されたバーハンドル型のハンドルバー115とを有している。ハンドルバー115の両端には、左ブレーキレバー16f及び右ブレーキレバー16rと、が装着されている。また、ハンドルバー115の中央部には、表示ユニット18と、前照灯23とが装着されている。表示ユニット18は、たとえばアシストモード及び回生制動モードなどの動作モードを表示可能である。
【0027】
<モータ内蔵ハブ>
モータ内蔵ハブ10は、自転車の前輪106fのハブを構成するものである。モータ内蔵ハブ10は、フロントフォーク103の先端に装着されており、人力補助用のものである。モータ内蔵ハブ10は、たとえば3相のブラシレスDCモータを含んでいる。モータ内蔵ハブ10は、図2に示すように、ハブ軸15と、ハブ軸15に装着されるモータケース17と、モータケース17内に配置された電気回路部19とを、有している。また、モータ内蔵ハブ10は、図2には図示しないモータ本体10a(図3を参照)を有している。モータ本体10aは、ハブ軸15に回転自在に支持される回転子と、回転子の径方向外周側においてモータケース17の後述する第1円筒部36cの内周面に固定される固定子と、回転子の回転をモータケース17の後述する第2ケース部材34に伝達する回転伝達機構と、を有している。
【0028】
回転子は、たとえば周方向に複数の磁極を有する図示しない磁石と磁石を保持する磁石保持部とを有している。磁石保持部は、ハブ軸方向に間隔を隔てて配置された2つの軸受を介してハブ軸15に回転自在に支持されている。固定子は、第1円筒部36cの内周面において周方向に間隔を隔てて配置された、図示しない複数のコイルを、有している。複数のコイルは、電気回路部19の電界効果トランジスタ44によりスイッチングされた交流により順次励磁され、回転子を進行方向に回転させる。回転伝達機構は、回転子の回転をモータケース17の第2ケース部材34に伝達して、前輪106fを進行方向に回転させる。回転伝達機構は、図示しない遊星歯車機構を有しており、この遊星歯車機構によって回転子の回転が減速されモータケース17の第2ケース部材34に伝達される。モータ本体の機械的な構成は、上記構成に限定されない。たとえば、上記の構成は、インナーロータのモータであるが、アウターロータのモータであってもよく、また回転伝達機構として遊星歯車機構を用いず、ロータが第2ケース部材34に直接接続される構成であってもよい。
【0029】
<ハブ軸>
ハブ軸15は、たとえば、鋼鉄製であり、フロントフォーク103の先端の前爪部103aに両端部が回転不能に装着可能である。ハブ軸15の両端外周面には、フロントフォーク103に固定するためのナット部材が螺合する左右1対の雄ねじ部15bが形成されている。また、雄ねじ部15bの外周面には、平行な二面を有する係止部15dが形成されている。係止部15dのハブ軸方向内方において、モータケース17の後述する第1ケース部材32がハブ軸15に回転不能に連結される。一方の雄ねじ部15bには、図示しないナット部材とロックナットとが、螺合している。他方の雄ねじ部15bには、図示しないナット部材と、第1ケース部材32を固定するナット部材52とが、螺合している。ナット部材の軸方向内方には、係止部15dに各別に回転不能に係合し、かつフロントフォーク103の装着溝103bに係合してハブ軸15を回り止めするための回り止めワッシャ(図示しない)が装着されている。
【0030】
<モータケース>
モータケース17は、図2に示すように、ハブ軸15に回転不能に連結される第1ケース部材32と、軸方向の第1端が第1ケース部材32に、軸方向の第2端がハブ軸15にそれぞれ回転自在に支持される第2ケース部材34と、を有している。第2ケース部材34は、たとえばアルミニウム合金によって形成される。
【0031】
第1ケース部材32は、外側面に形成されフロントフォーク103の先端部を受け入れ可能な凹部32aと、凹部32aを形成し、ハブ軸方向外方に膨出する膨出部32bと、を有している。膨出部32bの内部には空間が形成され、この空間に電気回路部19が収納される。第1ケース部材32と第2ケース部材34とで形成される空間には、前述したモータ本体10aおよび回転伝達機構などの各種機構が収納される。
【0032】
第1ケース部材32は、ハブ軸15に回転不能に装着されるケース本体36と、ケース本体36の外側面に複数本(たとえば、5本)の取付ボルト37により固定されるカバー部材38と、有している。これらカバー部材38とケース本体36との間に、電気回路部19が収納される。ケース本体36およびカバー部材38は、たとえばアルミニウム合金によって形成される。
【0033】
ケース本体36は、ハブ軸15に回転不能に連結される第1ボス部36aと、第1ボス部36aと一体形成される第1円板部36bと、第1円板部36bの外周部から第2ケース部材34に向かって延びる筒状の第1円筒部36cと、を有している。第1ボス部36aの内周面には、ハブ軸15に回転不能に連結される非円形の連結孔(図示しない)が形成されている。
【0034】
第1円板部36bの外側面は概ね平坦面である。この外側面にハブ軸15方向外方に突出して形成される複数の取付ボス36eが形成される。前記取付けボス36eに取付ボルト53によって電気回路部19の回路基板42が固定されている。第1円筒部36cの外周面には、第2ケース部材34の第1端を回転自在に支持する、たとえば玉軸受の形態の第1軸受30の内輪(図示しない)が装着されている。
【0035】
カバー部材38は、外側面に前述した凹部32a及び膨出部32bを有している。カバー部材38の内側面において、カバー部材38とケース本体36との間には、電気回路部19が配置される空間への液体の浸入を抑制するシール部材62が配置されている。シール部材62は、防水性および弾発性を有するゴムなどによって形成される。シール部材62は、図2に示すように、ケース本体36の第1円板部36bの外側面に形成されるシール溝36fに装着されている。
【0036】
凹部32aは、様々な形状のフロントフォークを受け入れ可能にするために、通常のフロントフォークの先端の形状より僅かに幅広に形成されている。膨出部32bの内部には、第1円板部36bに固定される電気回路部19が配置されている。膨出部32bの内側面には、複数の半導体素子(特に、後述する電界効果トランジスタ44)を一括して冷却するための放熱シート(図示しない)が、装着されている。
【0037】
凹部32aの一方の縁部には、配線接続部38aがケース本体36の周方向外方に突出して形成されている。配線接続部38aは膨出部32bよりもハブ軸方向に僅かに凹んで形成されている。配線接続部38aは、電気回路部19と全体制御部12及び蓄電部14とを接続する2芯の電力線を外部に取り出すために設けられている。配線接続部38aは、図1に示すように、フロントフォーク103の後部に近接してフロントフォーク103に沿って配置されるように形成されている。なお、この実施形態では、電力線70(図3を参照)は、PLC(Power Line Communications)により、電源の供給と信号の通信とを行えるように構成されている。
【0038】
第2ケース部材34は、通常の自転車用ハブのハブシェルに類似する構造であり、有底筒状部の部材である。第2ケース部材34は、ハブ軸15に対して回転自在に装着されている。第2ケース部材34は、軸受を介してハブ軸15に回転自在に連結される第2ボス部(図示しない)と、第2ボス部と一体に形成される図示しない第2円板部と、第2円板部の外周部からハブ軸方向内方に筒状に延びる第2円筒部34dと、を有している。第2円筒部34dは、第1円筒部36cの外周側に配置されている。第2円筒部34dの第1端側内周面に第1軸受30の外輪(図示しない)が装着されている。第2円筒部34dの外周面には、前輪106fのリム121fとモータ内蔵ハブ10とをスポーク122により連結するための第1ハブフランジ40a及び第2ハブフランジ40bがハブ軸方向の両端部に間隔を隔てて形成されている。
【0039】
<電気回路部>
電気回路部19は、モータ内蔵ハブ10を駆動制御し、電装品20に供給する電力を補助的に制御する。電気回路部19は、蓄電部14から供給された直流をスイッチングして交流に変換するDC−ACインバータの機能を有している。また、電気回路部19は、前記スイッチングの周波数からモータ内蔵ハブ10の回転および回転速度の少なくともいずれかを検出する回転センサ機能を有している。また、電気回路部19は、モータ内蔵ハブ10を発電機として使用して制動する回生制動の際は、回生制動の比率を全体制御部12の制御により変化させる回生駆動機能も有している。さらに電気回路部19は、モータ内蔵ハブ10内に配置されるモータ本体10a(発電部)を発電機として使用して、電装品20が動作可能な電力を、電装品20に供給するダイナモ機能も有している。また電気回路部19は、電力線通信を行う電力線通信部(図示せず)を有している。電力線通信部は、電力線70を介して、電装品20である全体制御部12と通信を行い、全体制御部12からの指令を電気回路部19に与える。
【0040】
電気回路部19は、図3に示すように、モータ駆動回路41と補助電源回路200とを、備えている。モータ駆動回路41は、図2に示すように、ケース本体36の外側面に固定される回路基板42に搭載された複数(たとえば6つ)の電界効果トランジスタ(FET)44と、モータ用の制御素子46を含むその他の電子部品とを、備えている。モータ駆動回路41には、電力線70から電圧が入力される。また、複数の電界効果トランジスタ44は、前述したように放熱シートに接触して配置されており、主に前記電界効果トランジスタ44で発生する熱は、カバー部材38を介して外部に放出可能である。
【0041】
補助電源回路200は、電装品20に供給する電力を補助的に制御する。補助電源回路200は、回路基板42に搭載されている。たとえば、補助電源回路200は、図2に示した回路基板42の裏面(図2では破線で表示)に、搭載されている。補助電源回路200の詳細については、後述する補助電源システム100において説明する。
【0042】
<補助電源システム>
補助電源システム100は、自転車に搭載される電源からの電力の供給状態に応じて、自転車に搭載可能な電装品20に電力を供給する。補助電源システム100は、図3に示すように、モータ内蔵ハブ10内に配置されるモータ本体10aと、電源からの電力供給が停止したときに電装品20に電力を供給するための補助電源回路200(補助電源部)と、第1ダイオード47と、備えている。
【0043】
モータ本体10aを駆動するために必要な電力を供給する蓄電部14は、蓄電状態で出力が変化する。たとえば、この蓄電部14では、満充電の状態において最高電圧を出力する。そして、蓄電部14の充電量が減るにつれて、最高電圧から最低電圧へと出力電圧が低下する。たとえば、蓄電部14の充電量が減るにつれて、24V(最高電圧)から18V(最低電圧)へと出力電圧が低下する。そして、この蓄電部14の蓄電がなくなるか、または蓄電量が所定量以下となると、この蓄電部14からの出力は停止される。
【0044】
モータ本体10aは、図3に示すように、モータ本体10aを駆動し制御するための配線たとえば3本のパワー線を介して、モータ駆動回路41に連結されている。また、モータ本体10aとモータ駆動回路41とを連結する3本のパワー線それぞれは、補助電源回路200に連結されている。
【0045】
補助電源回路200は、自転車に設けられるモータ本体10aからの電力で動作する。補助電源回路200は、自転車に搭載された蓄電部14からの電力の出力状態に応じて、モータ本体10aによって生成される電力を、電装品20に供給する。詳細には、補助電源回路200は、モータ本体10aによって生成される電力を、電装品20が動作可能な電圧又は電流に変換して出力する。
【0046】
補助電源回路200は、図3および図4に示すように、モータ本体10aからの電圧を整流する第1整流回路201(整流部)と、整流後の電圧を変圧する昇降圧回路210(電圧変換部)とを、備えている。
【0047】
第1整流回路201は、モータ本体10aからの電圧を整流し平滑化する回路である。たとえば、第1整流回路201は、モータ本体10aからの交流電圧を整流し平滑化する。第1整流回路201は、第2ダイオード202とコンデンサ203とを有している。第2ダイオード202は、各パワー線に接続されており、各パワー線から入力された交流電圧を、半波整流する。また、この半波整流された電圧はコンデンサ203へと入力され、コンデンサ203によって平滑化される。
【0048】
昇降圧回路210は、第1整流回路201によって整流された直流電圧を、所定の電圧(第1電圧)に調節するための回路である。昇降圧回路210は、第1整流回路201において整流された直流電圧を用いて動作する。昇降圧回路210は、変圧回路211と、第1スイッチ回路212と、変圧用のDC−DCコンバータ213と、変圧用の制御回路214と、第2整流回路215とを有している。
【0049】
変圧回路211は、第1整流回路201によって整流された直流電圧を、所定の電圧に調節する。所定の電圧は、電装品20が動作可能な電圧以上(第2電圧)、且つ蓄電部14から出力可能な最低電圧未満に設定される。ここでは、電装品20が動作可能な電圧がたとえば6Vであり、蓄電部14から出力可能な最低電圧がたとえば18Vである場合の例を示す。そして、所定の電圧が、たとえば10Vに設定される場合の例を示す。
【0050】
変圧回路211には、第1スイッチ回路212が接続されており、この第1スイッチ回路212のオンオフ動作によって、第1整流回路201によって整流された直流電圧が、10Vに調節される。
【0051】
第1スイッチ回路212は、変圧回路211と変圧用の制御回路214との間に配置されている。第1スイッチ回路212は、たとえば、FET(Field Effect Transistor、電界効果トランジスタ)である。FETは、スイッチとして動作する。この第1スイッチ回路212のオンオフ状態は、変圧用の制御回路214によって制御される。たとえば、入力電圧とオンオフ時間の割合(デューティー比)が変圧用の制御回路214によって制御され、出力電圧が、たとえば10Vに調整される。
【0052】
第2整流回路215は、変圧回路211から出力された電圧を整流し平滑化する。たとえば、第2整流回路215は、第3ダイオード215aとコンデンサ215bとを有している。第3ダイオード215aは、変圧回路211において調節された電圧を、整流する。また、この電圧はコンデンサ215bへと印加され、この電圧はコンデンサ215bによって平滑化される。
【0053】
変圧用のDC−DCコンバータ213は、第1整流回路201において整流された電圧を、変圧用の制御回路214を動作可能な電圧に調節する。ここでは、第1整流回路201によって整流された電圧が、所定の電圧たとえば6Vに調節される。
【0054】
変圧用の制御回路214は、変圧用のDC−DCコンバータ213によって調節された電圧によって起動し動作する。変圧用の制御回路214は、第2整流回路215において整流された電圧を、監視している。そして、変圧用の制御回路214は、第2整流回路215において整流された電圧が所定の電圧たとえば10Vになるように、第1スイッチ回路212を制御する。これにより、昇降圧回路210から出力される電圧を、常に所定の電圧たとえば10Vに調節することができる。
【0055】
この変圧用の制御回路214は、上記の変圧用のDC−DCコンバータ213からの電力供給を受けて起動し動作する。このため、蓄電部14からの電力供給が停止しても、モータ本体10aが回転していれば、このモータ本体10aから出力される電力によって、起動し動作する。
【0056】
昇降圧回路210において調節された直流電力は、第1ダイオード47を介して電装品20に供給される。第1ダイオード47では、アノードが補助電源回路200に電気的に接続され、カソードが電装品20に電気的に接続される。詳細には、第1ダイオード47では、アノードが補助電源回路200に電気的に接続され、カソードが電装品用のDC−DCコンバータ48を介して電装品20に電気的に接続される。
【0057】
第1ダイオード47は、蓄電部14にも電気的に接続されている補助電源回路200に、蓄電部14からの電圧が印加されることを防止する。第1ダイオード47を、補助電源回路200の出力口すなわち昇降圧回路210の出力口に連結することによって、蓄電部14から出力される電圧が、第1電圧たとえば10Vより大きくても、蓄電部14から、補助電源回路に電流が逆流しないように規制することができる(図3を参照)。言い換えると、蓄電部14から出力される電圧が、第1電圧未満たとえば10V未満になった場合に、昇降圧回路210において第1電圧に調節された電圧が、電装品20に印加され電力が供給される。
【0058】
電装品用のDC−DCコンバータ48は、図3に示すように、ダイオードと電装品20との間に配置されている。電装品用のDC−DCコンバータ48は、補助電源回路200から出力された電圧たとえば10Vの電圧(第1電圧)を、電装品20が動作可能な電圧たとえば6V(第2電圧)に調節する。そして、ここで調節された6Vの電圧が電装品20へと入力され、電装品20が起動し動作する。
【0059】
上記のように、本実施形態では、蓄電部14からの電力の供給状態に応じて、自転車の電装品20に電力を安定的に供給することができる。具体的には、モータ内蔵ハブ10内に配置されたモータ本体10aを発電機として使用し、このモータ本体10aから出力された電力を、補助電源システム100によって、電装品20にとって最適な電圧に調整することができる。これにより、モータ本体10aの回転に依存することなく、電装品20に対して安定的に電力を供給することができる。また、特別に他の電力供給手段を用意しなくても、既存の装備だけで、自転車の電装品に電力を安定的に供給することができる。
【0060】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(a)前記実施形態では、昇降圧回路210から第1ダイオード47に向けて電流が出力される場合の例を示したが、出力回路220を介して昇降圧回路210から第1ダイオード47に向けて電流が出力されるようにしても良い。
【0061】
この場合、補助電源回路200’は、図5に示すように、第1整流回路201と、昇降圧回路210と、出力回路220とを、備えている。この補助電源回路200’の構成は、出力回路220を除いて、前記実施形態と同じである。このため、ここでは、前記実施形態と同じ構成については説明を省略し、前記実施形態とは構成が異なる出力回路220についての説明を詳細に行う。なお、前記実施形態と同じ構成については、同じ番号を付している。
【0062】
出力回路220は、昇降圧回路210において調節された電圧を、電装品20に出力するか否かを選択する回路である。出力回路220は、出力用のスイッチ回路221と、出力用のスイッチ回路221をオンオフ制御するための制御用のスイッチ回路222と、制御用のスイッチ回路222を制御する出力用の制御回路223とを、有している。
【0063】
出力用のスイッチ回路221は、昇降圧回路210において調節された電圧を、補助電源回路200’から外部に出力する出力口となっている。出力用のスイッチ回路221は、主に、たとえばFETから構成されており、スイッチとして動作する。このスイッチ回路がオン状態になったときに、昇降圧回路210において調節された直流電力が、補助電源回路200’から外部へと出力される。
【0064】
制御用のスイッチ回路222は、主に、たとえばトランジスタから構成されている。このトランジスタは、出力用のスイッチ回路221たとえばFETに対して、オンオフ信号を送信する。このオンオフ信号の送信タイミングは、出力用の制御回路223によって制御される。
【0065】
出力用の制御回路223は、制御用のスイッチ回路222を介して、出力用のスイッチ回路221をオンオフする。出力用の制御回路223は、制御用のスイッチ回路222に対するオン信号の送信タイミングを、指示する。たとえば、出力用の制御回路223は、モータ本体10aが発電部として機能する場合に、制御用のスイッチ回路222にオン信号を出力させる。そして、このオン信号に基づいて、出力用のスイッチ回路221がオン状態になり、昇降圧回路210において調節された電流が、補助電源回路200’から外部へと出力される。
【0066】
これにより、昇降圧回路210において調節された直流電力が、補助電源回路200’から外部へと出力される。すると、この電圧は、電装品用のDC−DCコンバータにおいて、電装品20が動作可能な電圧たとえば6V(第2電圧)に調節され、電装品20へと入力される。これにより、電装品20が起動し動作する。
【0067】
この場合、補助電源回路200’は出力回路220を有しているので、モータ本体10aから出力された電力を、補助電源回路200’から電装品20へ供給するタイミングを選択することができる。また、前記実施形態と同様の効果も、同時に得ることができる。
【0068】
(b)前記実施形態では、電装品20として、全体制御部12及び前照灯23等が例示されているが、電装品20は前述のものに限定されない。電装品20には、自転車に搭載可能な全ての電装品20が含まれ、たとえば表示装置、サイクルコンピュータ、電動変速機または尾灯なども含まれる。
【0069】
(c)前記実施形態では、電装品20が動作可能な電圧が6Vであり、蓄電部14から出力可能な最低電圧が18Vであり、変圧回路211における調節後の電圧が10Vである場合の例を示したが、変圧回路211における調節後の電圧が、電装品20が動作可能な電圧以上、且つ蓄電部14から出力可能な最低電圧未満であれば、どのように設定しても良い。
【0070】
(d)前記実施形態では、モータ本体10aが回転動作している間は、補助電源システム100は機能するが、モータ本体10aの回転が停止した場合は、このコンデンサ203または215に蓄積された電力を消費した時点で補助電源システム100は機能を停止する。このため、補助電源システム100が、蓄電部たとえば充電池をさらに備えるように構成しても良い。この場合は、モータ本体10aの回転中に補助電源システム100に入力された電力を、充電池に蓄えることができるので、モータ本体10aの回転が停止し、前記コンデンサ203および215に蓄えられた電力が無くなっても、この充電池に蓄えられた電力によって、電装品20を動作させることができる。
(f)補助電源システム100の回路構成は、モータ本体10aから得られる電力から、所定の電圧または電流を出力することができる構成であれば、前述の構成に限らない。
(g)前記実施形態では、補助電源回路200は、回路基板42に設けられているが、補助電源回路は、回路基板42とは異なる部分に設けられてもよい。
(h)前記実施形態では、アシスト自転車は外装変速機を有する構成であるが、内装変速機を有する構成であってもよく、変速機を備えない構成であってもよく、本システムはあらゆるアシスト自転車に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 モータ内蔵ハブ
10a モータ本体
14 蓄電部
19 電気回路部
20 電装品
47 第1ダイオード
48 電装品用のDC−DCコンバータ
100 補助電源システム
200 補助電源回路
200’ 補助電源回路(他の実施形態)
201 第1整流回路
210 昇降圧回路
220 出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車用の補助電源システムであって、
前記自転車に設けられる発電部からの電力で動作し、自転車に搭載される電源からの電力の供給状態に応じて、自転車に搭載可能な電装品に前記発電部によって生成される電力を供給する補助電源部、
を備える自転車用の補助電源システム.
【請求項2】
前記補助電源部は、前記発電部によって生成される電力を、前記電装品が動作可能な電圧又は電流に変換して出力する、
請求項1に記載の自転車用の補助電源システム。
【請求項3】
前記補助電源部は、前記発電部からの電圧を整流する整流部と、整流後の電圧を第1電圧に変圧する電圧変換部とを備える、
請求項1又は2に記載の自転車用の補助電源システム。
【請求項4】
前記第1電圧は、前記電装品が動作可能な第2電圧以上、且つ前記電源から出力可能な最低電圧未満に設定される、
請求項3に記載の自転車用の補助電源システム。
【請求項5】
前記電源から出力される電圧が、前記第1電圧未満になった場合に、前記補助電源部から前記電装品へと前記第1電圧で電力を供給する、
請求項3又は4に記載の自転車用の補助電源システム。
【請求項6】
前記発電部は、前記自転車の車輪の回転をアシストする電動機である、
請求項1から5のいずれか1つに記載の自転車用の補助電源システム。
【請求項7】
ダイオード、
をさらに備え、
前記ダイオードのアノードが前記補助電源部に電気的に接続され、前記ダイオードのカソードが前記電装品に電気的に接続される、
請求項1から6のいずれか1つに記載の自転車用の補助電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−255841(P2011−255841A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133828(P2010−133828)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)