説明

自転車用照明装置

【課題】本発明は、自転車発進時であっても直ちに発光ダイオードを発光させることができ、また、自転車走行途中の停車時であっても、十分な点灯時間を確保できる容量の大きいEDLCを備えた自転車用照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の自転車照明用装置は、極性方向が同一となるようにループ状に直列接続された第1ないし第3の発光ダイオードと、第1の発光ダイオードと第2の発光ダイオードとの間に設けられた第1接続端子と、極性方向が同一となるように2個のセルが直列接続されたEDLCと、前記2個のセル間に設けられた第2の接続端子とを備える。このとき第1の発光ダイオードのアノードは第2の発光ダイオードのカソードに接続される。また、EDLCの正極は第1の発光ダイオードと第3の発光ダイオードとの間に接続され、EDLCの負極は第2の発光ダイオードと第3の発光ダイオードとの間に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のダイナモなどの交流発電機を電力源とし、発光ダイオードを光源とする自転車用照明装置に関し、特に交流発電機が非駆動時にあっても、常時点灯させることが可能なEDLC(電気二重層キャパシタ)を備えた自転車用照明装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
自転車用照明装置には、自転車の運転者の安全性を確保するため、運転時に限らず停車時であっても常時点灯する事が求められている。この様な自転車用照明装置として、例えば、特許文献1や特許文献2の様な装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、自転車の運転によりダイナモで発電された電力を蓄える為のコンデンサを備え、そのコンデンサに蓄えた電力で、自転車の停車時も発光ダイオード(LED)素子を発光させる自転車用照明装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、交流発電機の発電した電力を蓄える事が出来るEDLC(電気二重層キャパシタ)を組み込み、自転車の停車時も発光ダイオード素子を発光させ視認性を向上させることができる自転車用ダイナモライトシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−120107号公報
【特許文献2】特開2002−127962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の自転車用照明装置では、自転車のダイナモで発電された電力よって蓄電用のコンデンサやEDLCを充電して発光ダイオードの発光電圧まで昇圧させるため、自転車の発進時には発光ダイオードを点灯させることができないという問題があった。特に、自転車走行途中の停車時の点灯時間を長くするため、蓄電容量の大きい蓄電素子を照明装置に組み込んだ場合、自転車発進時における蓄電素子の充電時間は一層長くなり、発光ダイオードの非発光時間も一段と長くなるという問題があった。
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、自転車発進時であっても直ちに発光ダイオードを点灯させることができ、また、自転車走行途中の停車時であっても、十分な点灯時間を確保できる容量の大きいEDLCを備えた自転車用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の自転車用照明装置は、極性方向が同一となるようにループ状に直列接続された第1ないし第3の発光ダイオードと、前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードとの間に設けられた第1接続端子と、極性方向が同一となるように2個のセルが直列接続されたEDLCと、前記2個のセル間に設けられた第2の接続端子と、を備え、前記第1の発光ダイオードのアノードは、前記第2の発光ダイオードのカソードに接続され、前記EDLCの正極は前記第1の発光ダイオードと前記第3の発光ダイオードとの間に接続され、前記EDLCの負極は前記第2の発光ダイオードと前記第3の発光ダイオードとの間に接続され、前記第1および第2の接続端子から交流電力が入力されることを特徴とする。
【0009】
上記の構成により、自転車の発進時おいては、交流発電機により発電された交流の電力が、第1および第2の発光ダイオードで半波ごとに交互に整流される。EDLCを構成する2個のセルは、この整流された交流電力によって交互に充電される。発電された交流の電力は、EDLCに充電される一方、同時に交流の半波ごとに第1および第2の発光ダイオードに交互に流れる。これによって、EDLCの容量に拘わらず、自転車の発進時に直ちに第1および第2の発光ダイオードを交互に発光させることができる。
【0010】
自転車の走行により、第1および第2の発光ダイオードを発光させている間、同時に交流発電機によって発電された電力はEDLCに蓄電される。この蓄電された電力によって、自転車走行途中の停車時においても第3の発光ダイオードを発光させることができる。
【0011】
以上により、EDLCの容量に拘わらず、自転車の発進時から自転車走行途中の停車時に至るまで、常に点灯させることができる自転車用照明装置となる。
【0012】
本発明の自転車用照明装置は、第1ないし第3の発光ダイオードの定格電力の合計は、入力される交流電力より大きく、第1の発光ダイオードの逆耐圧は、第2の発光ダイオードの順方向電圧とEDLCの電圧との和よりも大きく、第2の発光ダイオードの逆耐圧は、第1の発光ダイオードの順方向電圧とEDLCの電圧の和よりも大きいことが好ましい。
【0013】
上記の構成にすることにより、自転車の速度が増すにつれ発電電力が大きくなった場合であっても、常に発光ダイオードは規定された許容特性を上回ることなく、発光ダイオードの特性の劣化を抑えることができる。
【0014】
本発明の自転車用照明装置は、第1の発光ダイオードと直列に抵抗が接続されていることが好ましい。
【0015】
上記の構成にすることによって、EDLCから第1の発光ダイオードに流れる電力量が制限され、EDLCの蓄電された電力量の消費が抑えられ、停車時の連続点灯時間をより長くすることができる。
【0016】
本発明の自転車用照明装置は、第1ないし第3の発光ダイオードのうち、少なくともいずれか1つに発光ダイオードが並列に接続されていることが好ましい。
【0017】
上記の構成にすることによって、全ての発光ダイオードの定格電力の合計が大きくなり、許容される発電電力が大きくなるとともに、発光ダイオードの発光量自体も大きくなり、より明るい照明が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自転車発進時であっても直ちに発光ダイオードを発光させることができ、また、自転車走行途中の停車時であっても、十分な点灯時間を確保できる容量の大きいEDLCを備えた自転車用照明装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係る自転車用照明装置の説明図である。
【図2】実施形態2に係る自転車用照明装置の図である。
【図3】実施形態3に係る自転車用照明装置の図である。
【図4】交流発電による電圧波形の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る自転車用照明装置の説明図である。第1の発光ダイオード1ないし第3の発光ダイオード3は、極性方向を同一してループ状に接続されている。第1の発光ダイオード1のアノード12は第2の発光ダイオード2のカソード13に接続され、第1の発光ダイオード1と第2の発光ダイオード2との間には、第1の接続端子10が設けられている。2個のセルを直列接続したEDLC4は、正極が第1の発光ダイオード1と第3の発光ダイオード3との間に接続され、負極が第2の発光ダイオード2と第3の発光ダイオード3との間に接続される。また、EDLC4は2つのセル間に、第2の接続端子11を備えている。接続端子10と接続端子11には、自転車に設けられた交流発電機などから交流電力6が入力される。
【0021】
交流電力は、自転車の前輪のハブ軸に配備されたハブダイナモや、自転車の車輪の回転により発電するダイナモなどから供給されるが、交流電力を発電する発電機であればその形態は種々変更が可能である。
【0022】
本実施形態の自転車用照明装置の動作を図1に基づき説明する。運転者が自転車の運転を開始すると、自転車の車輪の回転により交流発電機で電力が発電されると図4に示す様に電圧の上昇を伴う。
【0023】
上昇した電圧によって、交流発電機から流れる電流は、図4で示されるように正極性と逆極性に半波ずつ流れる。正極性の半波は、第1の発光ダイオード1を介してEDLCのセル4aに流れる。逆極性の半波は、第2の発光ダイオード2を介してEDLCのセル4bに流れる。交流発電機から流れる電流が、第1の発光ダイオード1と第2の発光ダイオード2とに半波毎に交互に流れるため、第1の発光ダイオード1と第2の発光ダイオード2は交互に発光し、同時にEDLC4が充電される。
【0024】
自転車が運転開始時の発電電圧が低い場合であっても、発電電圧が第1および第2の発光ダイオードの順方向電圧以上であれば、EDLC4の容量の大きさに影響されることなく、第1および第2の発光ダイオードを発光させることができる。
【0025】
交流発電機から発電された電力は、第1の発光ダイオード1と第2の発光ダイオード2とを交互に発光させると同時にEDLC4に充電される。自転車の速度が上がり交流発電機の発電電力が増加すると、EDLC4に充電される電力量も徐々に増加する。これに伴い、EDLC4の電圧も上昇し直列接続されたEDLC4の両端の電圧が第3の発光ダイオード3の順方向電圧より高くなる。このとき、第3の発光ダイオード3も発光し、第1ないし第3の発光ダイオードの全てが発光する。
【0026】
自転車が走行途中に停車した場合は、第1および第2の発光ダイオードは交流発電機から電力が供給されなくなるため消灯する。しかしながら、EDLC4には十分な電力が充電されているため、この電力によって第3の発光ダイオード3を発光させ続けることができる。EDLC4の容量が大きければ大きいほど、停車時の発光時間は長くなる。
【0027】
以上により自転車の発進時においてもまた走行途中の停車時であっても、常に自転車用照明装置を点灯させることが可能となる。
【0028】
さらに、自転車の運転速度が上がり交流発電機の発電電力が増えると、第1および第2の発光ダイオードに流れる順電流が増加し、それに伴い、第1および第2の発光ダイオードの順方向電圧は上昇し、またEDLC4への充電電力も増えることでEDLC4の電圧が上昇し、第3の発光ダイオード3の順方向電圧も上昇する。よって、第1ないし第3の発光ダイオードの消費電力も増加する。
【0029】
この時、第1ないし第3の発光ダイオードの消費電力が、規定された許容損失を上回ると、これらの発光ダイオードに著しく負荷を掛けることになり、発光ダイオードの特性を劣化させる場合がある。
【0030】
これを防止する為に、第1ないし第3の発光ダイオードの定格電力の合計が、交流発電機で発電される最大電力よりも大きくなるようにすることが望ましい。
【0031】
また、交流発電機で発電された電力の交流の信号が、第1の発光ダイオード1と第2の発光ダイオード2を介して、交流の半波毎に交互にEDLCのセル4aと4bに充電される際、EDLCに逆電圧が印加され、発光ダイオードの特性を劣化させる場合がある。
【0032】
これを防止する為に、第1の発光ダイオード1の逆耐圧を第2の発光ダイオード2の順方向電圧とEDLC4の電圧との和よりも大きくし、第2の発光ダイオード2の逆耐圧を第1の発光ダイオード1の順方向電圧とEDLC4の電圧の和よりも大きくなるようにすることが望ましい。
【0033】
以上のように、第1ないし第3の発光ダイオードとEDLCとの関係を満たすようにすれば、自転車用照明装置として照明の効果が安定して発揮される。
【0034】
(実施形態2)
図2は実施形態2に係る自転車用照明装置の説明図である。実施形態1では、自転車が停止すると交流発電機の発電も停止するため、第1および第2の発光ダイオードが消灯するとともに、EDLC4への充電も行われなくなる。このため、第3の発光ダイオード3は自転車停車前に充電された電力により発光する。
【0035】
EDLC4に蓄電された電力は自転車停止後から第3の発光ダイオード3で徐々に放電されるため、EDLC4の電圧は徐々に低下する。それに伴い第3の発光ダイオード3の発光量も次第に低下し、一定時間経過後には発光させることができなくなる。
【0036】
先に述べたとおり、発光時間を長くするためにはEDLC4の容量を大きくすればよいが、自転車用照明装置として実装することを考慮すれば、無制限に大きくすることは難しい。
【0037】
EDLCの容量を一定の大きさに抑え、自転車用照明装置として、発光量の低下を防ぎながら自転車停車時の点灯時間をできるだけ長くするためには、EDLC側の電圧低下速度を抑えればよい。
【0038】
そこで、第3の発光ダイオード3に直列に抵抗素子を接続するとよい。第3の発光ダイオード3に、直列に抵抗素子5が接続されることで、第3の発光ダイオード3を介して放電されるEDLC4の充電量を制限することが可能となり、第3の発光ダイオード3の発光時間を長くすることができる。
【0039】
抵抗素子5の抵抗値を変化させ第3の発光ダイオード3の放電量を制御すれば、EDLC4の電圧低下時間を変えることになり、発光時間の調整が可能な自転車用照明装置となる。
【0040】
(実施形態3)
図3は実施形態3に係る自転車用照明装置の説明図である。この実施形態においては、第1ないし第3の発光ダイオードのそれぞれに並列にダイオード9が接続されている。このように複数の発光ダイオードを並列に接続することで、より明るい照明が可能となる。
【0041】
第1ないし第3の発光ダイオードのそれぞれに複数の発光ダイオードを並列に接続しても、実施形態1と同様に自転車の発進時から直ちに発光させることが可能である。
【0042】
また、実施形態1において、発光ダイオードの特性の劣化を抑えるため、発光ダイオードの定格電力の合計を、発電される電力よりも大きくすることが望ましいことを説明したが、本形態のように第1ないし第3の発光ダイオードの少なくともいずれかに別の発光ダイオード9を並列に接続することにより、発光ダイオードの定格電力の合計が発電される電力を大きく上回ることとなり、発光ダイオードの特性の劣化を一段と抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、自転車発進時であっても直ちに発光ダイオードを発光させることができ、また、自転車走行途中の停車時であっても、十分な点灯時間を確保できる容量の大きいEDLCを備えた自転車用照明装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1.第1の発光ダイオード
2.第2の発光ダイオード
3.第3の発光ダイオード
4.EDLC
5.抵抗
6.交流電力
7.セル4a
8.セル4b
9.発光ダイオード
10.第1の接続端子
11.第2の接続端子
12. 第1の発光ダイオードのアノード
13. 第2の発光ダイオードのカソード
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性方向が同一となるようにループ状に直列接続された第1ないし第3の発光ダイオードと、
前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードとの間に設けられた第1接続端子と、
極性方向が同一となるように2個のセルが直列接続されたEDLCと、
前記2個のセル間に設けられた第2の接続端子と、を備え、
前記第1の発光ダイオードのアノードは前記第2の発光ダイオードのカソードに接続され、
前記EDLCの正極は前記第1の発光ダイオードと前記第3の発光ダイオードとの間に接続され、
前記EDLCの負極は前記第2の発光ダイオードと前記第3の発光ダイオードとの間に接続され、
前記第1および第2の接続端子から交流電力が入力されることを特徴とする自転車用照明装置。
【請求項2】
前記第1ないし第3の発光ダイオードの定格電力の合計は、前記交流電力より大きく、前記第1の発光ダイオードの逆耐圧は、前記第2の発光ダイオードの順方向電圧と前記EDLCの電圧との和よりも大きく、
前記第2の発光ダイオードの逆耐圧は、前記第1の発光ダイオードの順方向電圧と前記EDLCの電圧の和よりも大きいことを特徴とする請求項1の自転車用照明装置。
【請求項3】
前記第3の発光ダイオードと直列に、前記EDLCと前記第3の発光ダイオードとの間に抵抗が接続されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自転車用照明装置。
【請求項4】
前記第1ないし第3の発光ダイオードのうち、少なくともいずれか1つに、並列に発光ダイオードが接続されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自転車用照明装置。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107435(P2013−107435A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252516(P2011−252516)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)