説明

自転車用発電機

【課題】 磁束の漏洩を防止して、発電出力の低下を抑えることのできる自転車用発電機を提供する。
【解決手段】 上端よりローラ15を突出するダイナモケース1内に、ローラと共に回転するマグネット12と、鉄芯42と、一端を鉄芯に且つ他端を出力端子38に接続するコイル20とを設け、ダイナモケースを起倒自在に支持して前記ローラを自転車のタイヤに接離させるダイナモホルダー39と前記ダイナモケース1とを連結板27にて連結し、連結板と鉄芯とを電気的に接続して、コイルの前記一端側を車体へ電気的に接地する自転車用発電機において、連結板27と鉄芯42との間にコイルスプリング50を介在させ、コイルスプリングを介して連結板と鉄芯とを電気的に接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自転車のホーク等に取り付けられて、タイヤの回転により発電する自転車用発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車用発電機は、ダイナモケースの上端よりローラを突出させ、ダイナモケース内に、ローラと共に回転するロータとしてのマグネットと、ステータとしての鉄芯及びコイルとを設け、このコイルの一端側を鉄芯に連結し且つ他端側を出力端子に接続する一方、ダイナモケースを起倒自在に支持して前記ローラを自転車のタイヤに接離させるダイナモホルダーと前記ダイナモケースとを連結板にて連結し、この連結板を前記鉄芯に接触させてコイルの前記一端側を、鉄芯、連結板及びダイナモホルダーを介して車体へ電気的に接地したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この自転車用発電機は、コイルの一端を容易に車体へ接地を行うことができ、また連結板を鉄製でなく、銅やステンレスなどの非磁性体で構成しているので、鉄芯を通る磁束が連結板へ漏洩せず、発電出力の低下を抑えることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−182183号公報(国際特許分類:B62J6/08、H02K3/46、H02K5/22、H02K5/26)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自転車用発電機は、連結板を銅やステンレス等の非磁性体で構成しているので、発電出力の低下を抑えることができるが、鉄製に比べて材料費が嵩み、また加工性にも問題があった。
【0006】
本発明の目的は、コストや加工性に有利な鉄製の連結板を用いても、連結板への磁束の漏洩を防止して、発電出力の低下を抑えることのできる自転車用発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の自転車用発電機は、上端よりローラを突出するダイナモケース内に、前記ローラと共に回転するマグネットと、鉄芯と、一端を鉄芯に且つ他端を出力端子に接続するコイルとを設け、前記ダイナモケースを起倒自在に支持して前記ローラを自転車のタイヤに接離させるダイナモホルダーと前記ダイナモケースとを連結板にて連結し、該連結板と前記鉄芯とを電気的に接続して、前記コイルの前記一端側を車体へ電気的に接地する自転車用発電機において、前記連結板と前記鉄芯との間にコイルスプリングを介在させ、コイルスプリングを介して連結板と鉄芯とを電気的に接続したものである。
【0008】
具体的には、前記連結板の基端には、前記ダイナモホルダーに回転自在に枢支されたホルダー軸を連結すると共に、先端には、前記鉄芯の下方に位置するスプリング受片を一体に形成し、該スプリング受片と前記鉄芯の下面との間に、前記コイルスプリングを介在させたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、連結板と鉄芯とは、コイルスプリングを介して接触しているので、鉄芯から連結板への磁束の漏洩を抑えることができ、安価で加工の容易な鉄製の連結板を用いても、発電出力の低下を抑えることができる。
【0010】
また、連結板と鉄芯とは、コイルスプリングを介して電気的に接続されているので、鉄芯や連結板の寸法にバラツキがあっても、コイルスプリングで吸収でき、電気的接続を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の自転車用発電機の正面縦断面図である。
【図2】同自転車用発電機の平面図である。
【図3】同自転車用発電機の底面図で、ケースキャップを取り外した状態を示す。
【図4】同自転車用発電機の連結板装着前のダイナモケースの底面図で、ケースキャップを取り外した状態である。
【図5】同自転車用発電機の連結板を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は水平断面図である。
【図6】同自転車用発電機の分解斜視図である。
【図7】同自転車用発電機を自転車へ取り付けた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図1乃至図7に基づいて説明する。1は下方を開放したダイナモケース(ここでは合成樹脂製でアルミ等他の材料で形成しても良い)で、上部に筒状部2が形成され、側面に下方を開放した中空の突出部3が一体に形成されている。突出部3の側面には後述するホルダー軸28を突出させるためにU字状の開口4が形成されている。そして、突出部3の対向する内側壁には一対の縦溝5が形成され、上部内壁よりボス6が垂設されている。
【0013】
7は鍔部8が形成された一対の軸受で、一方の軸受7が鍔部8を筒状部2の下端に、他方の軸受7の鍔部8が筒状部2の上端に当接するまで挿入される。
【0014】
10は下部にマグネット12が固着されたスピンドルで、その上部にネジ部13が形成されている。このスピンドル10は、ダイナモケース1の下方からマグネット12の上端が下部の軸受7に当接するまで挿入され、ネジ部13が筒状部2から突出する。
【0015】
この突出したネジ部13にはワッシャ14を介してローラ15が挿入される。そして、ネジ部13にナット16を螺合することで、ローラ15とマグネット12間にワッシャ14を介して上下の軸受7が挟持され、スピンドル10がダイナモケース1に回転自在に取り付けられる。
【0016】
17はダイナモケース1内に配設されるステータで、第1鉄芯18と第2鉄芯22とからなる鉄芯42と、発電コイル20を巻回したコイルボビン21とで構成される。
【0017】
第1鉄芯18は、円筒状の基部19から外方に屈曲された第1磁極片23が形成されており、この第1磁極片23がマグネット12の周囲に位置する状態でダイナモケース1の内壁に圧入嵌合される。
【0018】
第2鉄芯22は、上部に形成された第2磁極片24が第1磁極片23と交互に位置する状態でダイナモケース1の内壁に圧入嵌合され、その下部が第1鉄芯18の基部19に嵌合され、両鉄芯18、22は電気的に接続される。
【0019】
コイルボビン21は第1鉄芯18の基部19へ挿入され、前記第1鉄芯18と第2鉄芯22との間に挟持される。この際、コイル20の一端側はコイルボビン21と第1鉄芯18との間に挟持され、第1鉄芯18に電気的に接続される。また、コイルボビン21にはU字状に折り返される帯状部25が一体に形成されている。この帯状部25には後述する出力端子38に接続される金属製のリベット26が取り付けられ、帯状部25の端部が第1鉄芯18の基部19に係着される。そして、リベット26にコイル20の他端側が接続される。
【0020】
27はダイナモケース1と後述するダイナモホルダー39とを連結するための連結板で、鉄板にて形成され、錆防止の表面処理が施されている。この連結板27の基端側は、ホルダー軸28がかしめにより固着される垂直部29となっており、垂直部29の下端からは水平部30が折曲形成されている。
【0021】
水平部30には、ボス6に対応して取付穴34が形成されていると共に、その先端側には、スプリング受片31が一体に折曲形成されている。スプリング受片31は、水平部30より一段低くなった受面32と、受面32の先端から上方向けて折曲されたガイド片33から構成される。
【0022】
この連結板27は、突出部3の開口4からホルダー軸28を突出するようにして、突出部3の下方開口より挿入される。この際、垂直部29の左右両側部が突出部3の縦溝5に挿入されてガイドされる。そしてボス6に水平部30の上面が当接した際に、スプリング受片31が、鉄芯42の下方(第2鉄芯22の下方)に位置する。連結板27の突出部3内への挿入は、ボス6の下端にて受け止められると共に、ボス6と一体に突出部3の内面に形成された段部3a(図4参照)によっても受け止められる。
【0023】
第2鉄芯22とスプリング受片31との間には、導電性のコイルスプリング50が介在されている。コイルスプリング50は、ガイド片33の周囲に嵌挿されて水平方向にずれないように保持されており、その下端は受面32で受け止められ、上端は第2鉄芯22の下面に当接している。そして、コイルスプリング50によって、鉄芯42と連結板27とが電気的に接続される。
【0024】
35はダイナモケース1の下端開放部を塞ぐケースキャップで、ボス6に対応して形成された取付穴36からネジ37を挿入し、連結板27の取付穴34を介してボス6にねじ込むことで、ケースキャップ35は、ダイナモケース1に連結板27と共に取り付けられる。
【0025】
この時ダイナモケース1の下端とケースキャップ35の関係は、図1ではケースキャップ35が外側になるようにダイナモケース1の下端に嵌合しているが、ケースキャップ35が内側になるようにダイナモケース1の下端に嵌合して、ケースキャップ35の嵌合部分より第2鉄芯22の下面に当接するリブを突出させることにより、ダイナモケース1の内壁に圧入嵌合されている鉄芯42の落下を確実に阻止することもできる。
【0026】
このキャップ35には出力端子38の一端側を外部に突出した状態で出力端子38が保持される。この出力端子38の他端側は容易に下方へ撓むように水平方向に延設されてV字状に屈曲され、キャップ35をダイナモケース1に取り付けた際に出力端子38の他端側がリベット26に弾圧され、コイル20の他端側が出力端子38に電気的に接続される。
【0027】
出力端子38は、図7に示すように、自転車車体に適宜取り付けられたヘッドライト60の電球(図示せず)の一端に接続される。なお図7は、ダイナモケース1に泥除けカバーを被せた状態の図である。
【0028】
39は自転車のホーク65(図7参照)に取り付けられる鉄製のダイナモホルダーで、上部にホルダー軸28が枢支される。このホルダー軸28の周囲には、ローラ15がタイヤに接する方向(倒れる方向)へホルダー軸28が回動するように常時付勢するばね40が巻装されている。また、ダイナモホルダー39には上下に操作されるワーキングレバー41が設けられている。このワーキングレバー41を上方へ操作すると、ローラ15がタイヤから離れた位置でダイナモケース1が保持され、ワーキングレバー41を下方に操作すると、ばね40の付勢力にてダイナモケース1が倒れる方向にホルダー軸28が回転し、ローラ15がタイヤに圧接される。
【0029】
上述した如く、コイル20の他端側は鉄芯42(ここでは第1鉄芯18)に接続され、ダイナモホルダー39に保持された連結板27を鉄芯42(ここでは第2鉄芯22)にコイルスプリング50を介して電気的に接続したことにより、コイル20の一端側を鉄芯42、連結板27、ホルダー軸28、ダイナモホルダー39を介して車体へ容易に電気的に接地することができる。
【0030】
ワーキングレバー41を下方に操作すると、ローラ15がタイヤに圧接され、前輪が回転するとローラ15が回転するようになる。ローラ15が回転するとマグネット12が回転し、このマグネット12の磁界とコイル20との電磁誘導作用により発電が行われる。
【0031】
この際の磁気回路は、マグネット12と鉄芯42とコイル20で構成され、鉄芯42とコイル20の間を磁束が通る。鉄芯42は、車体へ接地するために連結板27に電気的に接続されているが、上述の如く、コイルスプリング50を介して電気的に接続されているので、鉄芯42を通る磁束の連結板27への漏洩を極力防止することができ、発電出力の低下を阻止できる。
【0032】
また連結板27は、先行技術文献の欄で掲げた特許文献1で開示されたように、非磁性体としなくてもコスト面や加工性の面で優れた鉄製のものでよい。因みに実験の結果によると、特許文献1に開示された形状の連結板を鉄製とした場合に比べて、本発明の構成にすれば、発電電圧を4%向上させることができた。
【0033】
また鉄芯42と連結板27とを電気的に接触させるのに、コイルスプリング50を用いているので、鉄芯42や連結板27に寸法のバラツキがあっても、コイルスプリングの弾性でバラツキを吸収でき、電気的接触を安定化させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は発電効率を向上できる自転車用発電機に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
15 ローラ
1 ダイナモケース
12 マグネット
42 鉄芯
38 出力端子
20 コイル
39 ダイナモホルダー
27 連結板
50 コイルスプリング
28 ホルダー軸
31 スプリング受片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端よりローラを突出するダイナモケース内に、前記ローラと共に回転するマグネットと、鉄芯と、一端を鉄芯に且つ他端を出力端子に接続するコイルとを設け、前記ダイナモケースを起倒自在に支持して前記ローラを自転車のタイヤに接離させるダイナモホルダーと前記ダイナモケースとを連結板にて連結し、該連結板と前記鉄芯とを電気的に接続して、前記コイルの前記一端側を車体へ電気的に接地する自転車用発電機において、前記連結板と前記鉄芯との間にコイルスプリングを介在させ、コイルスプリングを介して、連結板と鉄芯とを電気的に接続したことを特徴とする自転車用発電機。
【請求項2】
前記連結板の基端には、前記ダイナモホルダーに回転自在に枢支されたホルダー軸を連結すると共に、先端には、前記鉄芯の下方に位置するスプリング受片を一体に形成し、該スプリング受片と前記鉄芯の下面との間に、前記コイルスプリングを介在させてなる請求項1に記載の自転車用発電機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−20664(P2012−20664A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160288(P2010−160288)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)