説明

自転車用錠装置、および自転車、および電動自転車

【課題】電動および手動の何れでも解錠できるだけでなく、省スペース化をも図ることができる自転車用錠装置を提供する。
【解決手段】略C字形状の錠杆14をロックするロック部材15として、錠杆14の外周部に対して出退自在なものを用いるとともに、手動解錠機構22の手動駆動カム21と電動解錠機構26の電動駆動カム25とを、ロック部材15を挟んで表面側と裏面側とに配設した。これにより、ロック部材15に手動駆動カム21と電動駆動カム25とを近接させて配置でき、ひいては、ロック部材の周りに手動解錠機構22や電動解錠機構26を近接させて配置したコンパクトな自転車用錠装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動だけでなく電動でも解錠できる自転車用錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自転車には盗難防止用の錠装置が設けられるが、この種の自転車用錠装置として、リモコン操作により解錠できる錠装置が既に知られている。この自転車用錠装置は、リモコン送信機に設けられている押ボタン等を押すことにより、所定の識別番号を含んだ解錠指示信号が、自転車に取り付けられた錠装置に内蔵されたリモコン受信部に送られ、解錠指示信号に含まれた前記識別番号などが、予め設定されている識別番号と一致すると解錠される構成とされている。
【0003】
このような錠装置を自転車に取り付けると、一般の錠装置などのように鍵を差し込んで解錠する操作を行わなくても解錠できるので、例えば、多数の自転車が混み合った状態で駐輪されている場合など、鍵の差し込み動作を行い難い状況下でも、少し離れた箇所から容易に解錠できて便利である。
【0004】
この種の自転車用錠装置としては、例えば特許文献1等に開示されている。図15に示すように、自転車用錠装置は、解錠指示信号を発信するリモコン送信機50と、解錠指示信号の受信部75を内蔵した錠装置本体60とからなる。
【0005】
リモコン送信機50は、解錠指示信号を発信する信号発信部51と、この信号発信部51に給電する送信機側バッテリ52と、解錠指示信号の発信を手動で指示するための送信用押しボタンスイッチ53とを備えている。
【0006】
図15、図16に示すように、錠装置本体60は、いわゆるサークル錠形式とされて自転車の後輪の一部を囲むように左右のシートステー(バックホーク)に取り付けられ、後輪が通る空間部62を有する基台61(ケースの一部としても兼用される)と、図15、図16に示すように、空間部62の下方側部分62aを出退自在とされて、車輪の回転を阻止する施錠位置(図16(a)参照)と車輪の回転の阻止を解除する解錠位置(図16(b)参照)とに移動自在な正面視略C字形状で断面略コ字形状の錠杆63と、錠杆63を施錠状態にロックするロック位置(図16(a)参照)と、ロック位置から後退して錠杆63が解錠位置に戻ることを許容するロック解除位置(図16(b)参照)とに回動軸64を中心として揺動自在な正面視略Y字形状のロック部材65と、ロック部材65をロック位置側に付勢する付勢ばね69と、シリンダ式の錠部66に鍵を手動で挿入して操作することで駆動させる手動駆動部材としての手動駆動ロッド67によりロック部材65をロック解除位置に移動させる手動解錠機構と、電動駆動源としての電動モータ68により駆動される電動駆動部材としてのカム部材70によりロック部材65をロック解除位置に移動させる電動解錠機構などを備えている。
【0007】
また、図16における、71は、錠杆63の断面略コ字形状の凹部分に内装され、一端71aが基台61に、他端71bが錠杆63に固定されて錠杆63を解錠位置側に付勢する引張ばねからなる錠杆戻しばね、72は錠杆63に取り付けられて錠杆63を操作するための手動操作つまみ、65aは、ロック部材65において、錠杆63の端部に係合離脱するロック起立部、65bは、手動駆動ロッド67に係合する手動ロック解除起立部、65cは、カム部材70に係合する電動ロック解除起立部、図15における、73は表面側ケース、74は裏面側ケースである。なお、図示しないが、錠装置本体60においてもバッテリや制御回路が内蔵され、このバッテリにより解錠指示信号を受信可能な状態に維持するとともに、解錠指示信号を受信した際には、電動モータ68を駆動する。また、電動モータ68とカム部材70との間には、減速機構が介装されている。
【0008】
施錠する際には、手動操作レバー72を操作して、錠杆63を錠杆戻しばね71の付勢力に抗して図16(a)に示す施錠位置まで移動させる。これにより、ロック部材65が、付勢ばね69の付勢力により、図16(a)に示すロック位置に回動されてロック起立部65aが錠杆63の端部に係合し、この結果、錠杆63が施錠位置に保持される。
【0009】
リモコンを用いて解錠する際には、リモコン送信機50の押しボタンスイッチ53を押すことで解錠指示信号が送信される。この解錠指示信号を錠装置本体60側で受信すると、電動モータ68が駆動されてカム部材70が回転され、この結果、図16(b)に示すように、ロック部材65がf方向に回動してそのロック起立部65aが錠杆63の端部から離脱し、これに伴い、錠杆戻しばね71の付勢力により錠杆63が解錠位置に回動されて解錠される。
【0010】
また、リモコン送信機50の送信機側バッテリー52が電池切れとなった際などには、鍵をシリンダ式の錠部66に挿入して操作することで、手動駆動ロッド67がg方向に移動する。この結果、ロック部材65の手動ロック解除起立部65bが押圧されてロック部材65がf方向に回動され、ロック起立部65aが錠杆63の端部から離脱し、これに伴って、錠杆戻しばね71の付勢力により錠杆63が解錠位置に回動されて解錠される。
【特許文献1】特開2001−90414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来構成の自転車用錠装置では、錠杆63を施錠状態にロックするためのロック部材65として、回動軸64を中心として三方向(略Y字形状)に延びるものを用いているとともに、シリンダ式の錠部66や手動駆動ロッド67が設けられている手動解錠機構と、電動モータ68やカム部材70などが設けられている電動解錠機構とが離れた位置に配設される構造であるため、これらのロック部材65、手動解錠機構、電動解錠機構を配設するために多大なスペースが必要となり、小型化できない問題があった。
【0012】
また、このため、前記配設部分が側方(図16(a)、(b)においては右側)に大きく突出し、例えば、多数の自転車が混み合った状態で駐輪されている場合などに、この突出部分が、近接して駐輪されている自転車に当接するなどして、自転車を引き出し難いなどの不具合を生じることがあった。
【0013】
本発明は上記問題を解決するもので、電動および手動の何れでも解錠できるだけでなく、省スペース化をも図ることができる自転車用錠装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題等を解決するために本発明の自転車用錠装置は、車輪の回転を阻止する施錠位置と車輪の回転の阻止を解除する解錠位置とに移動自在な錠杆と、錠杆を施錠状態にロックするロック位置とロック位置から後退して錠杆が解錠位置に戻ることを許容するロック解除位置とに所定の線状軌跡に沿って出退自在なロック部材と、鍵を手動で挿入して操作することで駆動させる手動駆動部材によりロック部材をロック解除位置に移動させる手動解錠機構と、電動駆動源により駆動される電動駆動部材によりロック部材をロック解除位置に移動させる電動解錠機構とを備え、手動解錠機構の手動駆動部材と電動解錠機構の電動駆動部材とを、ロック部材が出退する線状軌跡に臨む互いに異なる位置に配設したことを特徴とする。
【0015】
この構成により、錠杆をロックするロック部材として、所定の線状軌跡に沿って出退自在なものを用いるとともに、手動解錠機構の手動駆動部材と電動解錠機構の電動駆動部材とを、ロック部材が出退する線状軌跡に臨む互いに異なる位置に配設したので、ロック部材として、ロッド形状など、小さくて簡単な形状のものを用いることができるとともに、このロック部材に手動解錠機構の手動駆動部材と電動解錠機構の電動駆動部材とを近接させて配置でき、ひいては、ロック部材の周りに手動解錠機構や電動解錠機構を近接させて配置したコンパクトな自転車用錠装置を得ることができる。
【0016】
また、手動解錠機構の手動駆動部材と電動解錠機構の電動駆動部材とをロック部材を挟んで、略前後方向などに、互いに対向する姿勢で配置すると好適であり、この場合には、自転車用錠装置として側方への突出部分を最小限に抑えることができる。
【0017】
また、自転車用錠装置の本体部分として、所定面内における環状の軌跡に沿って移動する略C字形状の錠杆を有するサークル錠を用いて、ロック部材を、錠杆の外側から錠杆の外周部に向けてC字形状の略中心部分に向かうように出退自在に配設し、手動解錠機構と電動解錠機構とを、ロック部材を挟んで前記所定面に臨む表側と裏側とに配設しても好適である。
【0018】
また、手動解錠機構の手動作動部材と、電動解錠機構の電動作動部材とにより、ロック部材に設けた同じ押圧部を同方向に押圧することでロック解除するように構成することで、ロック部材と手動作動部材と電動作動部材とを極めて少ないスペースに近接させて配設することが可能となる。すなわち、手動解錠機構の手動作動部材により押圧する押圧部と、電動解錠機構の電動作動部材により押圧する押圧部とを別個に設けた場合には、2つの押圧部を設けなければならないため、その分だけ多くの設置スペースが必要となり、また、手動解錠機構の手動作動部材と電動解錠機構の電動作動部材との配置場所も、押圧部同士の離間距離に対応する寸法分離れることとなり、これらをあわせた設置空間として大きなスペースが必要となるが、上記のように、手動作動部材と電動作動部材とにより同じ押圧部を押圧するように構成することで、このようなことがなく、よりコンパクトに配置することができる。
【0019】
また、本発明の自転車用錠装置として、解錠指示信号を送信するリモコン送信部と、解錠指示信号を受信するリモコン受信部とを備えると好適である。
また、このようにリモコン送信部とリモコン受信部とを備える自転車用錠装置と、人力駆動力に加える補助駆動力を発生させる補助駆動力発生手段と、補助駆動力発生手段の駆動源としてのモータに給電するバッテリとを備え、前記バッテリによりリモコン受信部と電動解錠機構の電動解錠手段とにも給電する構成とすることで、錠装置用のバッテリを設けなくて済むので、錠装置用のバッテリを交換する手間を省くことができる。
【0020】
すなわち、従来構成の自転車用錠装置では、錠装置内に内蔵したバッテリにより解錠指示信号を受信可能な状態に維持するとともに電動モータを駆動する構成であるため、比較的頻繁(例えば、2〜3箇月毎)に錠装置本体内のバッテリを交換しなければならず、手間がかかる問題があったが、このような手間を省くことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、錠杆をロックするロック部材として、所定の線状軌跡に沿って出退自在なものを用いるとともに、手動解錠機構の手動駆動部材と電動解錠機構の電動駆動部材とを、ロック部材が出退する線状軌跡に臨む異なる位置に配設することにより、ロック部材の周りに手動解錠機構や電動解錠機構を近接させて配置したコンパクトな自転車用錠装置を得ることができる。
【0022】
また、手動解錠機構の手動駆動部材と電動解錠機構の電動駆動部材とをロック部材を挟んで、略前後方向などに、互いに対向する姿勢で配置したり、自転車用錠装置の本体部分として、所定面内における環状の軌跡に沿って移動する略C字形状の錠杆を有するサークル錠を用いて、ロック部材を、錠杆の外側から錠杆の外周部に向けてC字形状の略中心部分に向かうように出退自在に配設し、手動解錠機構と電動解錠機構とを、ロック部材を挟んで前記所定面に臨む表側と裏側とに配設したりすることで、自転車用錠装置として側方への突出部分を最小限に抑えることができ、例えば、多数の自転車が混み合った状態で駐輪されている場合などでも、自転車を引き出し難いなどの不具合を生じることを最小限に抑えることができる。
【0023】
また、手動解錠機構の手動作動部材と、電動解錠機構の電動作動部材とにより、ロック部材に設けた同じ押圧部を同方向に押圧するように構成することで、ロック部材と手動作動部材と電動作動部材とをさらに近接させて配設することが可能となり、一層のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
また、このようにリモコン送信部とリモコン受信部とを備える自転車用錠装置と、人力駆動力に加える補助駆動力を発生させる補助駆動力発生手段と、補助駆動力発生手段の駆動源としてのモータに給電するバッテリとを備え、前記バッテリによりリモコン受信部と電動解錠機構の電動解錠手段とにも給電する構成とすることで、錠装置用のバッテリを設けなくて済むので、錠装置用のバッテリを交換する手間を省くことができて、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る自転車用錠装置を備えた電動自転車の全体側面図である。図1に示すように、本実施の形態では、自転車の1例としての電動自転車1に自転車用錠装置が設けられている。
【0026】
図1、図2に示すように、自転車用錠装置は、解錠指示信号を発信するリモコン送信機40と、解錠指示信号を受信するリモコン受信機(解除信号受信部)35と、錠装置本体10などからなる。ここで、図2に示すように、リモコン送信機40には、解錠指示信号を発信する信号発信部41と、この信号発信部に給電する送信機側バッテリ42と、解錠指示信号の発信を手動で指示するための送信用押しボタンスイッチ43とが設けられている。
【0027】
図1に示すように、電動自転車1のフレームの一部をなす立てパイプ2の上部から後方に向けて斜め下方に延びる左右一対のシートステー(バックホーク)3が配設され、これらの左右のシートステー3に跨る姿勢で、略C字形状(いわゆるサークル錠形式)の錠装置本体10が取付ブラケット10aを介して取り付けられている。
【0028】
図3〜図7に示すように、錠装置本体10は、後輪4が通る空間部5を有するケース本体11およびケース裏板12と、これらのケース本体11およびケース裏板12とにより内部に形成されたC字形状の収容空間13から空間部5の下方側部分5aを出退自在とされて、後輪4の回転を阻止する施錠位置(図4(a)参照)と後輪4の回転阻止を解除する解錠位置(図4(b)参照)とに移動自在な正面視略C字形状で中実(断面視して、中空部のない円形または矩形)の錠杆14と、収容空間13の一部に収容された状態で、一端がケース本体11内に立設された係止用ロッド19aに、また他端が錠杆14の一端部に係止され、錠杆14を解錠位置側に付勢する引張ばねからなる錠杆戻しばね19と、錠杆14に一体的に固定された状態で外部に露出して錠杆14を施錠操作する施錠つまみ20と、錠杆14を施錠状態にロックするロック位置(図4(a)参照)とロック位置から後退して錠杆14が解錠位置に戻ることを許容するロック解除位置(図4(b)参照)とに出退自在なロック部材15と、ロック部材15をロック位置側に付勢するロック側付勢ばね16と、シリンダ式の錠部17に鍵18を手動で挿入して操作することで駆動させる手動駆動部材としての手動駆動カム21によりロック部材15をロック解除位置に移動させる手動解錠機構22(図5参照)と、電動駆動源としての解錠用モータ23により減速機構24を介して駆動される電動駆動部材としての電動駆動カム25によりロック部材15をロック解除位置に移動させる電動解錠機構26(図5参照)などを備えている。そして、手動解錠機構22の手動駆動カム21と、電動解錠機構26の電動駆動カム25とがロック部材15を挟んで互いに対向する姿勢、この実施の形態では、ロック部材15を挟んで錠装置本体10の表面側と裏面側とに対向する状態で配置されている。なお、図3などにおける27は電動解錠機構26を覆う電動部カバーである。
【0029】
ここで、錠杆14にはその外周部の一部にロック用切欠部14aが形成され、ロック部材15のロック時には、このロック用切欠部14aにロック部材15の先端部(後述する出退部15a)が突入してロック状態が保持される。ロック部材15は、図4などに示すように、背面側から見て細幅の出退部15aとこれに一体的に続く広幅の基部15bとからなり、ケース本体11内に形成されたロック部材15の収容空間内で、略C字形状の錠装置本体10の略中心部側(錠杆14が移動する収容空間13側)に向かう直線状軌跡に沿ってスライド自在に配設されている。そして、図5に示すように、ロック部材15の出退部15aの一部にロック側付勢ばね16が内装されて、このロック側付勢ばね16により、ロック部材15がa方向に突出するように付勢されている。
【0030】
ロック部材15の基部15bには、その下方寄り部分に、手動駆動カム21に設けられた係合突起21aが突入された手動駆動カム収容凹部15cが形成され、また、前面側部分に、電動駆動カム25が収容された電動駆動カム収容凹部15dが形成され、さらに、これらの手動駆動カム収容凹部15cと電動駆動カム収容凹部15dとの両者に基端部側から臨むように押圧部15eが形成されており、この押圧部15eに、電動駆動カム25と手動駆動カム21とが個別に当接離間自在とされている。
【0031】
手動駆動カム21は、シリンダ式の錠部17に所定の鍵18が差し込まれて操作された際に鍵18とともに回動する回転板部21bと、この回転板部21bの平面部分における外周部近傍の一部に設けられた係合突起21aとが設けられている。そして、図7(a)に示すように、ロック部材15の出退部15aが錠杆14のロック用切欠部14aに突入している施錠状態において、錠部17に所定の形状の鍵18が差し込まれて操作されることで、手動駆動カム21がc方向に回動され、これに伴って手動駆動カム21の係合突起21aによりロック部材15の押圧部15eが押圧され、この結果、ロック部材15がa方向に移動されて、ロック部材15の先端部がロック用切欠部14aから離脱し、錠杆戻しばね19の付勢力で錠杆14がd方向に回動して解錠される。
【0032】
また、電動解錠機構26においては、複数の歯車24a〜24dからなる減速機構24を介して、電動回転軸28が回転され、これに伴って、この電動回転軸28の先端に一体的に組み付けられた電動駆動カム25が回転されるよう構成されている。電動回転軸28には、電動駆動カム25の姿勢(位置)を検知するための位置検知カム29も取り付けられており、この位置検知カム29には、リミットスイッチからなる位置検知スイッチ31の検知部が接触されている。なお、この実施の形態では、図6などに簡略的に示す(図6では、減速機構24を省いて図示している)ように、電動駆動カム25は、平面視略卵形状部分に偏心して電動回転軸28が取り付けられて構成され、位置検知カム29は一箇所に凹部29aを有する円板形状とされている。そして、図8(a)に示すように、電動駆動カム25における電動回転軸28から長く延びた部分が、ロック部材15の押圧部15eとは反対側に向いた姿勢となった状態で、位置検知スイッチ31の検知部が位置検知カム29の凹部29aにはまり込むように、電動回転軸28に対して電動駆動カム25と位置検知カム29とが取り付けられている。なお、この実施の形態では、位置検知カム29の凹部29aが位置検知スイッチ31の検知部に位置した際に位置検知スイッチ31がOFF状態になり、位置検知スイッチ31の検知部が位置検知カム29の凹部29a以外の箇所に当接した状態では、位置検知スイッチ31がON状態になるよう構成されている。
【0033】
また、電動自転車1には、人力駆動力に加える補助駆動力を発生させる補助駆動力発生用のバッテリ7(2次電池)が設けられているが、このバッテリ7が、電動解錠機構26の解錠用モータ23の駆動用バッテリとしても兼用されている。さらに、補助駆動力(アシスト力)を発生させる駆動源としてのアシスト駆動用モータ6と、アシスト制御機能を有する制御部8とがモータユニット30に内蔵されているが、前記制御部8の一部に、電動解錠機構26の解錠駆動用モータ23を制御する解錠制御部8aも含まれて設けられている。また、この実施の形態では、モータユニット30内に、解錠指示信号を受信するリモコン受信機(解除信号受信部)35の回路も配設されている。なお、これに代えて、錠装置本体10内にリモコン受信機(解除信号受信部)35を内蔵させてもよい。また、何れの場合も、例えば、リモコン受信機(解除信号受信部)35の受信アンテナ部分を電動自転車1のフレームに接触させて取り付けると好適であり、この場合には受信感度を向上させることができる。
【0034】
また、電動自転車1の一部、例えば、ハンドル33の一部には、アシスト動作の動作、停止を指示するためのスイッチやその表示、並びにバッテリ7の残量などを表示ならびに操作する表示操作部32が設けられているが、この表示操作部32に、リモコン受信機(解除信号受信部)35で解錠指示信号を受信して、後述するように開錠動作を行った際に、この開錠動作の実行を音や点滅表示などで知らせる(ランプで知らせたり、音およびランプの両方で知らせたりしてもよい)解錠報知部36が設けられている。なお、解錠報知部36を表示操作部32に配設する代わりに、錠装置本体10や、モータユニット30に配設してもよい。
【0035】
解錠制御部8aには、図9に示すように、解錠を行うための解錠スイッチ37と解錠用タイマ38とを直列に接続した回路が設けられているとともに、解錠用タイマ38のタイマ接点38aと位置検知スイッチ31とが並列に繋がられた回路が解錠用モータ23に直列に接続されている。なお、タイマ接点38aは解錠用タイマ38がON状態となった際に、所定時間だけ、ON状態を維持する。
【0036】
施錠状態において、所有者のリモコン送信機40の押しボタンスイッチ43が押されて解錠指示信号が発信され、この解錠指示信号をリモコン受信機(解除信号受信部)35で受信すると、図10に示すように、解錠指示信号の受信に応じて解錠スイッチ37がON状態となり、このON状態で解錠用タイマ38が作動開始される。これに伴い、タイマ接点38aが所定時間だけON状態になり、解錠用モータ23が駆動されて電動駆動カム25が所定方向に回動開始される。この電動駆動カム25の回動が開始されると、タイマ接点38aがON状態である限り、継続して解錠用モータ23が回動されるが、その後にタイマ接点38aがOFF状態に切り換わるまでに、位置検知スイッチ31がOFF状態からON状態に切り換わるため、タイマ接点38aがOFF状態に切り換わった後でも、その後、位置検知スイッチ31がOFF状態に切り換わるまで、続けて解錠用モータ23が駆動される。これにより、電動駆動カム25が、図8(a)に示す状態から回動して図8(b)に示す状態となり、再度図8(a)に示す状態となった時点で停止されて、確実に1回転される。
【0037】
したがって、電動駆動カム25が回動されて、図8(b)に示す姿勢となった(あるいはこの姿勢に近づいた)時点で、ロック部材15がa方向に移動されて、ロック部材15の先端部がロック用切欠部14aから離脱し、錠杆戻しばね19の付勢力で錠杆14がd方向に回動して解錠される。
【0038】
以上のように、シリンダ式の錠部17に鍵18を差し込んで解錠操作すること、または、所有者がリモコン送信機40の押しボタンスイッチ43を押すことの、何れの動作を行っても、錠装置を解錠できる。なお、通常はリモコン送信機40を用いて解錠すれば便利であり、リモコン送信機40の送信機側バッテリ42が電池切れを生じた場合など、緊急の場合に鍵18を用いて手動で解錠すればよい。
【0039】
また、上記構成によれば、錠杆14をロックするロック部材15として、所定の線状軌跡に沿って出退自在なものを用いたことで、ロック部材15自体が、ロッド形状など小さくて簡単な形状のものを用いることができるとともに、このロック部材15に手動解錠機構22の手動駆動部材としての手動駆動カム21と、電動解錠機構26の電動駆動部材としての電動駆動カム25とを近接させて配置でき、これにより、手動解錠機構22や電動解錠機構26自体も、ロック部材15の周りに近接させて極めてコンパクトな配置とすることができる。
【0040】
また特に、手動駆動カム21を含めた手動解錠機構22と、電動駆動カム25を含めた電動解錠機構26とをロック部材15を挟んで、略前後方向に互いに対向する姿勢で配置したので、錠本体10としても、錠杆14を覆う部分と、ロック部材15およびこれらの近傍の手動解錠機構22や電動解錠機構26が設けられている部分以外は側方に殆ど出っ張りがない構造となり、この結果、例えば、多数の自転車が混み合った状態で駐輪されている場合などでも、隣り合う自転車と干渉することを最小限に抑えることができて、自転車を引き出し難いなどの不具合を生じることも最小限に抑えることができる。
【0041】
また、手動駆動カム21と電動駆動カム25とが、ロック部材15に設けた同じ押圧部15eを押圧するする構成としたので、これによっても、手動駆動カム21と電動駆動カム25とを極めて近接させて配設できて、ひいては、ロック部材15および手動解錠機構22、電動解錠機構26を小さなスペースでコンパクトに配設することができる。
【0042】
すなわち、手動解錠機構の手動作動部材(手動駆動カム)により押圧する押圧部と、電動解錠機構の電動作動部材(電動駆動カム)により押圧する押圧部とを別個に設けた場合には、2つの押圧部を設けなければならないため、その分だけ多くの設置スペースが必要となり、また、手動解錠機構の手動作動部材と電動解錠機構の電動作動部材との配置場所も、押圧部同士の離間距離に対応する寸法分離れることとなり、これらをあわせた設置空間として大きなスペースが必要となるが、上記のように、手動駆動カム21と電動駆動カム25とにより同じ押圧部を押圧するように構成することで、このようなことがなく、よりコンパクトに配置することができる。
【0043】
また、上記のように、補助駆動力を発生させる補助駆動力発生用のバッテリ7を、電動解錠機構26の解錠用モータ23の駆動用バッテリとしても兼用して、給電する構成とすることで、錠装置用の専用バッテリを設けなくて済むので、この専用バッテリを交換する手間を省くことができて、利便性が向上するとともに製造コストの低減化も図ることができる。
【0044】
また、上記の実施の形態では、錠杆14を施錠操作する施錠つまみ20と、手動解錠機構22の錠部17とが同じ側(図3(b)に示すように、正面から見て左側)に設けられているので、施錠する動作と、鍵18で手動で開錠する場合の操作とが同じ側、すなわち決まった側から行うことができ、図15に示す従来の錠装置の場合のように、手動施錠つまみ72と手動解錠用の錠装置66が異なる側(一方が左側で他方が右側)の場合のように、操作する際に運転者が目で確認しながら移動する動作が不要となり、便利である。
【0045】
また、上記の実施の形態では、電動解錠機構26の駆動源として電動モータで構成される解除用モータ23を用いた場合を述べたが、これに限るものではなく、図11に示すように、着磁部44aを有するソレノイド44を用いたり、ロッドが出退するソレノイドを用いたり(図示せず)、さらには、図14に示すようにロッド45aが回転する回転型ソレノイド45を用いてもよい。
【0046】
着磁部44aを有するソレノイド44を用いる場合には、例えば、図11に示すように、ソレノイド44の着磁部44aに吸着可能な磁着部46aをその一端部に有する電動駆動レバー46を、枢支部47を中心として回動自在に配設し、電動駆動レバー46の他端部に設けた押圧片46bにより、ロック部材15の押圧部15eを押圧できるように配置する。そして、解錠制御部8aに、図12に示すように、解錠を行うための解錠スイッチ37と解錠用タイマ38とを直列に接続した回路を設けるとともに、これらと並列に、解錠用タイマ38のタイマ接点38aとソレノイド44とを直列に接続した回路を、接続する。
【0047】
この構成において、所有者のリモコン送信機40から発信された解錠指示信号をリモコン受信機(解除信号受信部)35で受信すると、図13に示すように、解錠指示信号の受信に応じて解錠スイッチ37がON状態となり、このON状態で解錠用タイマ38が作動開始され、これに伴い、タイマ接点38aが所定時間だけON状態になり、ソレノイド44が所定時間駆動されて、電動駆動レバー46の磁着部46aがソレノイド44の着磁部44aに吸着され、この結果、電動駆動レバー46の押圧片46bが矢印方向に移動してロック部材15の押圧部15eを矢印方向に押圧する。したがって、ロック部材15がb方向に移動されて、ロック部材15の先端部がロック用切欠部14aから離脱し、錠杆戻しばね19の付勢力で錠杆14がd方向に回動して解錠される。
【0048】
このように、電動解錠機構26の駆動源として、着磁部44aを有するソレノイド44を用いた場合でも良好に解錠することができ、この場合には、電動解錠機構26の駆動源として電動モータで構成される解除用モータ23を用いた場合のような減速機構24を必要としないので、構造がより簡単となり、さらに省スペース化を図ることも可能となる。
【0049】
また、図14に示すように、ロッド45aが回転する回転型ソレノイド45を用いた場合には、回転型ソレノイド45で回転されるロッド45aにより、ロック部材15の押圧部15eを直接押圧できるので、構造をさらに簡単化できて、省スペース化を一層図ることができる。なお、この場合にも、解錠制御部8aとしては、図12に示すようなものを用いるとよい。
【0050】
また、上記の実施の形態では、錠部17を含めた手動解錠機構22を錠装置本体10の表面側(すなわち電動自転車の背面側)に設け、電動解錠機構26を錠装置本体10の裏面側(前面側)に設けた場合を述べたが、これに限るものではなく、手動解錠機構22を錠装置本体10の裏面側(すなわち電動自転車の前面側)に設け、電動解錠機構26を錠装置本体10の表面側(背面側)に設けてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、錠装置を電動自転車1に取り付けた場合を述べたが、これに限るものではなく、一般の自転車に取り付けることも可能であり、この場合には、錠装置内部に、制御回路およびバッテリを内蔵するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の自転車用錠装置は、電動自転車用として好適であるが、一般の自転車用錠装置としても取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る自転車用錠装置を取り付けた電動自転車の側面図
【図2】同自転車用錠装置の制御に関する機能部品を簡略的に示す図
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ同自転車用錠装置の、側面図、略後方から見た背面図、略前面から見た正面図
【図4】(a)、(b)は同自転車用錠装置の本体におけるケース裏板を外した状態を概略的に示す図で、(a)は施錠状態、(b)は解錠状態
【図5】同自転車用錠装置におけるロック部材およびその近傍箇所の断面図
【図6】同自転車用錠装置におけるロック部材およびその近傍箇所の分解斜視図
【図7】(a)および(b)は、同自転車用錠装置の、手動で解錠を行う場合のロック部材およびその近傍箇所の拡大断面図で、(a)はロック状態、(b)はロック解除状態
【図8】(a)および(b)は、同自転車用錠装置の、リモコンで解錠を行う場合のロック部材およびその近傍箇所の拡大断面図で、(a)はロック状態、(b)はロック解除状態
【図9】同自転車用錠装置の解錠制御部の回路を簡略的に示す図
【図10】同自転車用錠装置の解錠制御部に関するON・OFF状態を簡略的に示すタイムチャート
【図11】本発明の他の実施の形態に係る自転車用錠装置におけるロック部材およびその近傍箇所の断面図
【図12】同自転車用錠装置の解錠制御部の回路を簡略的に示す図
【図13】同自転車用錠装置の解錠制御部に関するON・OFF状態を簡略的に示すタイムチャート
【図14】本発明のその他の実施の形態に係る自転車用錠装置におけるロック部材およびその近傍箇所の断面図
【図15】従来の自転車用錠装置の斜視図
【図16】(a)および(b)は、同従来の自転車用錠装置を示す図で、(a)は施錠状態、(b)は解錠状態
【符号の説明】
【0054】
1 電動自転車
6 アシスト駆動用モータ
7 バッテリ
8 制御部
8a 解錠制御部
10 錠装置本体
11 ケース本体
12 ケース裏板
14 錠杆
15 ロック部材
16 ロック側付勢ばね
17 錠部
18 鍵
19 錠杆戻しばね
20 施錠つまみ
21 手動駆動カム(手動駆動部材)
22 手動解錠機構
23 解錠用モータ(電動駆動源)
24 減速機構
25 電動駆動カム(電動駆動部材)
26 電動解錠機構
29 位置検知カム
30 モータユニット
31 位置検知スイッチ
32 表示操作部
35 リモコン受信機(解除信号受信部)
36 解錠報知部
37 解錠スイッチ
38 解錠用タイマ
40 リモコン送信機
44 ソレノイド
45 回転型ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転を阻止する施錠位置と車輪の回転の阻止を解除する解錠位置とに移動自在な錠杆と、
錠杆を施錠状態にロックするロック位置とロック位置から後退して錠杆が解錠位置に戻ることを許容するロック解除位置とに所定の線状軌跡に沿って出退自在なロック部材と、
鍵を手動で挿入して操作することで駆動させる手動駆動部材によりロック部材をロック解除位置に移動させる手動解錠機構と、
電動駆動源により駆動される電動駆動部材によりロック部材をロック解除位置に移動させる電動解錠機構と
を備え、
手動解錠機構の手動駆動部材と電動解錠機構の電動駆動部材とを、ロック部材が出退する線状軌跡に臨む互いに異なる位置に配設した
ことを特徴とする自転車用錠装置。
【請求項2】
手動解錠機構の手動駆動部材と電動解錠機構の電動駆動部材とをロック部材を挟んで、互いに対向する姿勢で配置した
ことを特徴とする請求項1記載の自転車用錠装置。
【請求項3】
錠装置本体が、所定面内における環状の軌跡に沿って移動する略C字形状の錠杆を有するサークル錠であって、
ロック部材を、錠杆の外側から錠杆の外周部に向けてC字形状の略中心部分に向かうように出退自在に配設し、
手動解錠機構と電動解錠機構とを、ロック部材を挟んで前記所定面に臨む表側と裏側とに配設した
ことを特徴とする請求項2記載の自転車用錠装置。
【請求項4】
手動解錠機構の手動作動部材と、電動解錠機構の電動作動部材とにより、ロック部材に設けた同じ押圧部を押圧することでロック解除するように構成したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自転車用錠装置。
【請求項5】
解錠指示信号を送信するリモコン送信部と、
解錠指示信号を受信するリモコン受信部とを備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の自転車用錠装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の自転車用錠装置を備えたことを特徴とする自転車。
【請求項7】
請求項5に記載の自転車用錠装置と、人力駆動力に加える補助駆動力を発生させる補助駆動力発生手段と、補助駆動力発生手段の駆動源としてのモータに給電するバッテリとを備え、前記バッテリによりリモコン受信部と電動解錠機構の電動解錠手段とにも給電する構成としたことを特徴とする電動自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−37377(P2008−37377A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217603(P2006−217603)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】