説明

自転車用電子システム及びプログラム

【課題】自転車の傾きを正確にリアルタイムに測定し表示手段に表示することができる自転車用電子システム及びそのプログラムを提供する。
【解決手段】傾斜角度算出処理が開始されると、CPUは、加速度センサの検出値を読み込む(S11)。自転車が水平線に対して、所定角度だけ上に向けて傾斜し、且つ、前方に加速していた場合には、加速度センサに掛かる加速度は、重力と進行方向への加速度の合成されたものになる。従って、加速度センサ値のスカラー値は1Gでなくなるので(S12:NO)、ジャイロセンサの検出値を読み込む(S14)。次いで、現在の傾斜角度をRAMに記憶している前回の傾斜角度から、(S14)で読み込んだジャイロセンサの値を加算して傾斜角度を求め(S15)、当該傾斜角度をRAMに時系列に記憶し(S16)、ディスプレイ部に傾斜角度を文字や図形で表示する(S17)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車の走行に関する様々な情報を計測し表示手段に表示する自転車用電子システム及びそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自転車の走行に関する様々な情報としては、例えば走行速度、現在位置表示、平均速度、目的地までのラップ計測、クランクの回転速度(ケイデンス)、走行中の心拍状態(ハートレート)等がある。従来、これらの様々な情報を自転車の使用者に走行中に表示手段に表示して目視させることができるサイクルコンピュータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1参照に記載の計測装置では、速度センサ、ケイデンスセンサおよび表示部に加えて、速度センサとケイデンスセンサによって検知された信号を無線によって表示部へ送るための送信部を備えている。送信部には、一方向に延在する軸部が設けられて、ケイデンスセンサと速度センサとが回動可能に軸支されている。速度センサ、ケイデンスセンサおよび送信部を含む計測本体部は、チェーンステーに取り付けられている。表示部は自転車に乗った状態で視界に入るハンドルの部分に取り付けられ、送信部から送られる信号を受信してその信号を処理し、所定の情報を表示する機能を有している。
【0003】
また、傾斜角度測定センサとしては、特許文献2に記載のものが提案されている。この傾斜角度測定センサでは、加速度成分を測定するための第1センサ部と、角速度成分を測定するための第2センサ部と、演算処理部から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−67354号公報
【特許文献2】特開2007−232662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すようなサイクルコンピュータでは、現在の勾配の測定は、GPS又は気圧センサによる高度差とGPS又は速度センサから求めた進んだ距離にて勾配を算出していたため、過去の道の勾配しか表示できず違和感があるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2に記載に傾斜角度センサでは、演算処理に誤りが有るため一つの測定軸からの出力しか上手く求めることが出来ず、三つの測定軸からの出力は演算処理できないという問題点があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、自転車の傾きを正確にリアルタイムに測定し表示手段に表示することができる自転車用電子システム及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第一態様に係る自転車用電子システムは、基準面に対する自転車の傾斜角度を測定し、その傾斜角度に基づいた表示を表示手段に行う自転車用電子システムであって、三つの測定軸について加速度を検出可能な加速度検出手段と、三つの測定軸ついて角速度を検出可能な角速度検出手段と、前記加速度検出手段によって検出された加速度が重力加速度と同等か否かを判断する加速度判断手段と、前記傾斜角度を算出する傾斜角度算出手段とを備え、前記傾斜角度算出手段は、前記加速度検出手段によって検出された加速度が重力加速度と同等であると判断した場合には、前記加速度センサの出力値に基づいて現在の傾斜角度を設定し、前記加速度検出手段によって検出された加速度が重力加速度と同等でないと判断した場合には前記現在の傾斜角度に対して前記角速度検出手段の出力値に基づき積算していくことで現在の傾斜角度を更新することを特徴とする。尚、加速度検出手段としては、三軸のセンサに限られず、一軸のセンサを三つ組み合わせても良い。
【0009】
このような構成であれば、自転車の傾きとして、自転車の前後方向の傾き、左右方向の傾き、車体の曲がりを正確に測定し、表示手段に表示することができる。
【0010】
また、本発明に係る自転車用電子システムでは、前記傾斜角度算出手段は、リアルタイムに前記傾斜角度を算出するようにしても良い。
【0011】
このような構成であれば、自転車の傾きを即時に計測し、表示手段に表示することができる。
【0012】
また、本発明に係る自転車用電子システムでは、前記リアルタイムとは、前記表示手段に表示される自転車の傾斜角度の状態が現在の自転車の傾斜角度の状態を反映していると使用者が感じる時間間隔であるようにするとよい。
【0013】
このような構成であれば、自転車に乗っている使用者が感じた通りの自転車の傾きを表示手段に表示することができ、使用者が違和感を感じることがない。
【0014】
また、本発明に係る自転車用電子システムでは、前記自転車の移動速度を算出する移動速度算出手段を備え、当該移動速度算出手段の算出する移動速度が速くなればなるほど、前記傾斜角度算出手段は、前記傾斜角度を算出する時間間隔を短くするとよい。
【0015】
このような構成であれば、自転車の移動速度が速くなっても、正確に自転車の傾斜角度を算出することができる。
【0016】
また、本発明に係る自転車用電子システムでは、前記傾斜角度算出手段は、前記自転車の1ダンシング間に所定回数、前記傾斜角度を算出するようにしてもよい。尚、自転車の1ダンシング間とは、例えば、自転車の傾斜角度が直立状態から左方向の傾斜角度のピークを経て直立状態となり右方向の傾斜角度のピークを経て再度直立状態に達するといった、ダンシングの1周期の時間などから求めた時間であっても、通常自転車を漕ぐ1ダンシング時間として一般的に想定される時間でもよい。
【0017】
このような構成であれば、自転車の1ダンシング間に予め定められた複数回前記傾斜角度を算出するので、ダンシング中の傾斜角度を正確に算出することができる。
【0018】
また、本発明に係る自転車用電子システムでは、前記傾斜角度算出手段の算出した前記傾斜角度をその時系列を特定可能に記録する記録手段を備えるようにしてもよい。
【0019】
このような構成であれば、時系列に応じて自転車の傾斜角度を記憶でき、後で自転車の移動時の傾斜角度の履歴を表示手段に表示することができる。
【0020】
また、本発明に係る自転車用電子システムでは、前記傾斜角度算出手段の算出した前記傾斜角度に基づいて前記表示手段に3D画像の表示を行う表示制御手段を備えるようにしてもよい。
【0021】
このような構成であれば、自転車傾斜角度に基づいて表示手段に3D画像の表示ができるので、自転車に乗っている使用者は、現在の自転車の傾斜角度を目視で容易に認識することができる。
【0022】
また、本発明の第二態様に係るプログラムでは、コンピュータを請求項1〜7の何れかに記載の自転車用電子システムの各処理手段として機能させることを特徴とする。
【0023】
このような構成のプログラムであれば、スマートフォンやホータブルナビゲーション装置等でも上記自転車用電子システムと同様の動作をさせることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、自転車の傾きをリアルタイムに正確に測定し表示手段に表示するので、表示手段を見る使用者に違和感を与えない自転車用電子システム及びそのプログラムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態のサイクルコンピュータ10の平面図である。
【図2】サイクルコンピュータ10を自転車1にセットした状態の概略を説明する説明図である。
【図3】サイクルコンピュータ10の電気的構成を説明するブロック図である。
【図4】センサボックス8の電気的構成を説明するブロック図である。
【図5】傾斜角度算出処理のフローチャートである。
【図6】移動速度算出処理のフローチャートである。
【図7】自転車1が傾斜して停止した状態を示す図である。
【図8】自転車1が傾斜し、斜め上方へ進行する状態を示す図である。
【図9】検出された角速度を示すグラフである。
【図10】角速度から求められた角度を示すグラフである。
【図11】水平状態の自転車1の図である。
【図12】自転車1の前後方向での傾きを示す図である。
【図13】自転車1の左右方向での傾きを示す図である。
【図14】自転車1の自立航法が可能なことを示す図である。
【図15】ディスプレイ部16での自転車1の3D表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の自転車用電子システムの一実施の形態としてのサイクルコンピュータについて図面を参照して説明する。図1に示すように、サイクルコンピュータ10は、平面視、略長方形の筐体11を備え、筐体11の内部には、電子回路及び電池を内蔵し、筐体11には額縁状の枠部15を備えている。また、枠部15内には表示手段としてのディスプレイ部16を備えている。ディスプレイ部16は一例として、3インチの小型の液晶ディスプレイから構成される。また、ディスプレイ部16は入力手段としてのタッチパネルを兼ねる。また、筐体11右側面には電源ボタン17が形成され、左側面にはメニューボタン18が形成されている。枠部15におけるディスプレイ部16の図1に於ける下位置には充電状況を報知する充電報知ランプ20が設けられている。サイクルコンピュータ10は一例として、リチウムイオン電池からなるバッテリー(二次電池)を電源とし、図示しない裏蓋を取り外して筐体11内部に収容するようにしている。また、後述するメモリカードリーダーも筐体11内部に配設され、裏蓋を取り外して外付け記憶媒体としてのSDカード等のメモリーカードをこのメモリカードリーダーに脱着するようにしている。
【0027】
図2に示すように、サイクルコンピュータ10は取り付け手段としての結束バンド12によって自転車1のハンドル13上のユーザーの目視しやすい位置に図示しないホルダーを介して取り付けられるようになっている。サイクルコンピュータ10は車輪回転数検出手段としての車輪回転センサ21を備えている。車輪回転センサ21は別体で用意された移動検出体としてのマグネット22とセット化されている。図2に示すように、車輪回転センサ21は例えば自転車1のフロントフォーク24の前輪25のスポーク26に面した位置に結束バンド12によって取り付けることが可能である。マグネット22は前輪25のいずれかのスポーク26に対して前輪25の回転によって車輪回転センサ21と交差する軌跡上の位置に取り付ける。車輪回転センサ21は前輪25の回転とともに周回するマグネット22の磁力線を前輪25の一回転ごとに1回ずつ検出する。
【0028】
図2に示すように、サイクルコンピュータ10はクランク回転速度算出手段としてのクランク回転センサ27を備えている。クランク回転センサ27は別体で用意された移動検出体としてのマグネット23とセット化されている。クランク回転センサ27は例えば自転車1のチェーンステイ28に対してクランク29側のペダル30に面した位置に結束バンド12によって取り付けることが可能である。マグネット23はペダル30に対して取り付ける。マグネット23の取り付け位置はペダル30の回転によってクランク回転センサ27と交差する位置とする。クランク回転センサ27はペダル30の回転とともに周回するマグネット23の磁力線をクランク29の一回転ごとに1回ずつ検出する。
【0029】
また、図2に示すように、自転車1には、後述する加速度センサ34と、ジャイロセンサ41、センサ信号送信機40等を内蔵したセンサボックス8が上管2に結束バンド12により固定されている。
【0030】
次に、図3のブロック図を参照して、サイクルコンピュータ10の電気的構成を説明する。尚、本発明とは直接関係のない構成については省略する。サイクルコンピュータ10の筐体11内の図示外の回路基板には、サイクルコンピュータ10の主制御を司るメインコントローラ3が設けられている。メインコントローラ3は、各種の計算処理を行うCPU4と、各種プログラム等を記憶したROM5と、データを一時的に記憶するRAM6と、図示外のタイマ等から構成されている。メインコントローラ3には位置検出器31、メモリカードリーダー32、報知アラーム33、データベース35、センサ信号受信機36、ディスプレイ部16、電源ボタン17、メニューボタン18及び図示外の電池がそれぞれ接続されている。
【0031】
メインコントローラ3内のROM5にはセンサ信号受信機36によって受信された車輪回転センサ21からの出力に基づいて走行速度を求めるための走行速度計算プログラム、センサ信号受信機36によって受信されたクランク回転センサ27からの出力に基づいて1分当たりに換算したクランクの回転速度を求めるためのクランク回転速度計算プログラム、後述する傾斜角度算出処理プログラム及び移動速度算出プログラム等が記憶されている。
【0032】
また、ROM5には、位置検出器31と関連するプログラムとして、位置検出器31のGPS受信器37によって受信されたGPS情報を処理するGPS情報処理プログラム、地図データを呼び出し位置検出器31のGPS受信器37によって受信された位置データと関連付けてディスプレイ部16に表示させる地図表示プログラム、位置検出器31のGPS受信器37によって受信された位置データと単位時間当たりの移動距離から走行速度を求めるための第2の走行速度計算プログラム、GPS受信器37によって受信された走行履歴(ログデータ)をSDカードに記憶させる履歴保存プログラム、位置検出器31のGPS受信器37によって受信された位置データとGPS受信器37から取得した時刻から経過時間や走行距離を計算し消費カロリーを計算する計算する消費カロリー計算プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラムが記憶されている。また、RAM6内には上記各計算プログラムで計算された計算値や位置検出器31で検出された位置情報が一旦記憶される。
【0033】
現在位置取得手段、速度取得手段、現在時刻取得手段としての位置検出器31は構成の中核としてGPS情報を取得する公知の時刻取得手段としてのGPS受信器37を備えており、メインコントローラ3の指示に基づいて取得した位置情報と移動距離に基づいて速度計算を行う。検出される位置情報は自車の緯度、経度、高度である。メモリカードリーダー32はSDカードのデータを読み取り、あるいはSDカードのデータを更新する。報知手段としての報知アラーム33はサイクルコンピュータ10の設定の際や設定したイベントの開始や終了の際に音声報知を行う。
【0034】
データベース35はメインコントローラ3内、あるいはメインコントローラ3に外付けした不揮発性メモリ(例えばEEPROM)である。本実施の形態ではデータベース35内には待ち受け状態でディスプレイ部16に表示させるオブジェクトデータ、マスター画像データ、ディスプレイ部16に表示させる各種フォントデータ等が記憶されている。尚、これらデータは上記ROMに記憶させるようにしてもよい。
【0035】
センサ信号受信機36は集積化された素子群からなる受信用チップであって、車輪回転センサ21及びクランク回転センサ27側のセンサ信号送信機38,39及び後述するセンサボックス8のセンサ信号送信機40から送信された検出データを受信する。センサ信号受信機36とセンサ信号送信機38,39,40とは近距離無線通信用のANTプラス(+)を無線通信プロトコルとするが、他の通信プロトコル、例えばブルートゥースを通信プロトコルとしてもよい。また、メインコントローラ3は数msecのタイミングでディスプレイ部16への接触状態を検出しており、GUI入力による命令に従って処理を行う。
【0036】
次に、図4を参照して、センサボックス8の電気的構成について説明する。センサボックス8内の図示外の回路基板には、加速度を検出する加速度センサ34と、角速度を検出するジャイロセンサ41と、当該加速度センサ34及びジャイロセンサ41からの出力信号をメインコントローラ3に伝えるセンサ信号送信機40及び図示外の電池等が設けられている。
【0037】
加速度取得手段としての加速度センサ34は3軸(X,Y,Z)それぞれの方向の加速度及び傾きを検出する3軸タイプのセンサであって、常時検出値を出力する。傾斜は重力方向の加速度と考えることができるため加速度センサ34は同時に傾斜も検出可能である。また、角速度検出手段としてのジャイロセンサ41は、3軸(X,Y,Z)それぞれの方向の角速度を検出する3軸タイプのセンサであって、常時検出値を出力する。尚、傾斜検出のために加速度センサ34とは別に傾斜センサを備えるようにすることも可能である。
【0038】
上記のような電気的構成において、メインコントローラ3はプログラムに従って次のような計算あるいは判断を実行する。
1)走行速度の算出処理
本実施の形態では2つ走行速度の計算方法を備えている。まず車輪回転センサ21によるものである。この場合には前提としてユーザーによる当該自転車の車輪(前輪25)の周長の入力が必要である。車輪回転センサ21によるマグネット22の磁力線検出は前輪25の1回転ごとに行われるため、検出信号のカウント数(=車輪の回転数)と周長を乗ずることで、走行距離が算出できるため、その走行距離を単位時間当たりのカウント数で除することで走行速度を求めることが可能である。この場合の取得した走行速度を第1の走行速度とする。
【0039】
いま一つはGPS受信器37によるものである。本サイクルコンピュータ10ではGPS受信器37を備えているため現在時間における自車の位置を検出し、取得した位置情報と移動距離に基づいて速度を得ることが可能である。この場合の取得した走行速度を第2の走行速度とする。
【0040】
本実施の形態では即応性を考慮して移動速度算出処理には第1の走行速度を使用する。一方、ログデータや消費カロリー値の計算については第2の走行速度を使用する。
2)クランク速度の算出処理
クランク回転センサ27によるマグネット22の磁力線検出はペダル30(=クランク29)の1回転ごとに行われるため、一分あたりに間に換算した検出信号のカウント数(=クランク29の回転数)をケイデンス(単位は回転毎分:rpm)として得る。
【0041】
3)傾斜角度(勾配)の算出処理
次に、図5の傾斜角度算出処理のフローチャートと、図6の移動速度算出処理のフローチャートを参照して、本発明の傾斜角度(以下、「勾配」とも言う。)の算出処理について説明する。尚、傾斜角度算出処理のプログラム及び移動速度算出処理プログラムは、メインコントローラ3のROM5に記憶され、CPU4が実行する。自転車1が位置している道の現在の勾配は、従来は、GPSまたは気圧センサによる高度差とGPSまたは車輪回転センサ(速度センサ)から求めた進んだ距離にて傾斜角度を算出していたため、過去の道の勾配しか算出できなかった。従って、自転車の運転者には違和感があった。
【0042】
そこで、本実施の形態では、自転車1の車体に加速度センサ34とジャイロセンサ41を内蔵したセンサボックス8を付けて、サイクルコンピュータ10のCPU4が図5に示す傾斜角度算出処理を行うようにしている。この傾斜角度算出処理は、所定時間間隔で繰り返しCPU4により実行される。この傾斜角度算出処理が開始されると、まず、CPU4は、加速度センサ34の検出値をセンサ信号受信機36を介して読み込む(S11)。次いで、加速度センサ34から受信したセンサ値のスカラー値が1Gか否かを判断する(S12)。図2に示すように、自転車1が水平に止まっていれば、自転車のセンサボックス8の加速度センサ34に掛かる重力は、図2の矢印A方向に1Gのみが掛かる。また、図7に示すように、自転車1が水平線H1対して角度θ1だけ斜め上に傾斜していても、自転車1が止まっていれば、自転車1には、加速度が働かないので、自転車1のセンサボックス8の加速度センサ34に掛かる重力は、図7の矢印A方向に1Gのみが掛かる。従って、加速度センサ34のスカラー値は1Gと判断される(S12:YES)。
【0043】
この場合には、現在の傾斜角度を加速度センサ34のセンサ値から従来と同様の方法で求める(S13)。S13で求めた現在の傾斜角度をメインコントローラ3のRAM6に時系列を特定可能にタイムスタンプ等を付加して記憶する(S16)。その後、S13の処理で求めた現在の傾斜角度をサイクルコンピュータ10のディスプレイ部16に傾斜角度を文字や図形で表示する(S17)。
【0044】
ここで、図8に示すように、自転車が水平線H1に対して、角度θ1だけ上に向けて傾斜し、且つ、自転車が矢印C方向に加速していた場合には、自転車1のセンサボックス8の加速度センサ34に掛かる重力は、図8の矢印A方向に1Gが掛かる。また、図8の仮想線H2方向に自転車1が矢印Cの加速度を有していた場合には、加速度センサ34の測定する重力と矢印Cの加速度の合成の加速度は、矢印Bとなる。この場合には、加速度センサ値のスカラー値は1Gでなくなるので(S12:NO)、ジャイロセンサ41の検出値をセンサ信号受信機36を介して読み込む(S14)。
【0045】
次いで、現在の傾斜角度をRAM6に記憶している前回の傾斜角度から、S14で読み込んだジャイロセンサ41の値を加算して傾斜角度を求める(S15)。具体的には、ジャイロセンサ41は、角速度の出力する。それを単位時間当たりの変化角度を求め、積算することで現在の傾斜角度(傾き)を求めることができる。ここで、積算誤差を減らすために、加速度センサ34にて重力加速度をセンシングし、現在の自転車の傾きの絶対値を求める。その値を利用し、ジャイロセンサ41の積算値をクリアする。
【0046】
ジャイロセンサ41が測定した角速度から角度を求めるためには、単位時間の角速度から前回の座標系からの移動量を計算し、その座標から角度を計算する。その時に使用するオイラー角の公式は、下記の数1の式を使用する。
【数1】

角速度から角度を求めるためには、角速度なので、それら軸単位で積算すれば良いと思いがちであるが、絶対的なZ,Y,Zの座標系の上でのものであれば問題なく積算できる。しかし、ジャイロセンサ41の角度(姿勢や位置)が変化するため回転軸は常に変化する。そのため、絶対的な座標軸に置き換えて計算する必要がある。
【0047】
ここで、図9にジャイロセンサ41が測定した角速度を示し、図10にS15の処理により求めた角度を示す。
【0048】
S14の処理に次いでS15で求めた現在の傾斜角度をメインコントローラ3のRAM6に時系列を特定可能にタイムスタンプ等を付加して記憶する(S16)。その後、S15の処理で求めた傾斜角度をサイクルコンピュータ10のディスプレイ部16に傾斜角度を文字や図形で表示する(S17)。
【0049】
次に、図6のフローチャートを参照して、移動速度に応じて傾斜角度算出間隔を短くする移動速度計算処理を説明する。この移動速度計算処理では、メインコントローラ3のCPU4はセンサ信号受信機36を介して、車輪回転センサ21からセンサ値を読み込む(S21)。次いで、S21で読み込んだセンサ値から移動速度を算出する(S22)。算出された移動速度が所定値よりも速い場合には(S23:YES)、図5に示す傾斜角度算出処理を実行する時間間隔を基本の間隔よりも短くする(S24)。また、出された移動速度が所定値よりも速くない場合には(S23:NO)、図5に示す傾斜角度算出処理を実行する時間間隔を基本の間隔で行う(S25)。例えば、基本の間隔を500ms間隔とし、移動速度が20km/hより速い場合には(S23:YES)、傾斜角度算出処理を実行する時間間隔を250ms間隔等に短くする(S24)。これにより、自転車1の1ダンシング間に所定回数、傾斜角度を算出することができる。よって、前記ディスプレイ部16に表示される自転車1の傾斜角度の状態が現在の自転車の傾斜角度の状態を反映していると使用者が感じる時間間隔でリアルタイムに表示を行うことができる。従って、人の目で見て自然な間隔でディスプレイ部16に傾斜角度の表示を更新できる。
【0050】
加速度センサ34で加速度の絶対値を求めるには、自転車1が静止している状態または、等速運動しているときに行う必要がある。自転車1が加速中であれば、速度センサ(車輪回転センサ21)との組み合わせにて速度センサ(車輪回転センサ21)より求められた速度により単位時間の加速度を算出する。その加速度を加速度センサ34からの出力値から差し引けば重力加速度を求めることができる。
【0051】
次に、図11〜図15を参照して、本実施の形態の効果を説明する。まず、図11及び図12を参照して、自転車1の前後方向の傾きについて説明する。図11に示すように自転車1が水平な状態から図12に示すように傾きが変化した場合には、平坦(H1)からの自転車1の前後方向での傾きをθ2とし、斜面の勾配はθ3とすると、θ2とθ3とは、ほぼ等しくなる。従って、本実施の形態では、ジャイロセンサ41を用いて、自転車1の前後方向の傾きを計測することで、斜面の勾配などをリアルタイムに表示することができる。また、実際の坂道ではなく、自分が通ったラインの勾配が測定できる。実際の坂道の勾配は地図などから読み取ることができる。
【0052】
次に、図13を参照して、自転車1の左右方向の傾きの把握について説明する。図13に示すように自転車1が左右方向にθ4だけ傾いた場合には、ジャイロセンサ41を用いて、自転車1の左右方向の傾きθ4を計測することで、ダンシングやコーナーでの自転車1の挙動が把握できる。従って、ダンシングの場合、上り坂でのダンシングや加速時のダンシングなど自分のトレーニングに役立てることが可能になる。
【0053】
次に、図14を参照して、自転車1の車体の曲がりについて説明する。本実施の形態によれば、自転車1の進む角度を算出でき、自転車1でも自立航法を可能にできる。
【0054】
尚、本実施の形態では、加速度センサ34を利用して、加速度センサ34の前後方向の数値にて、ペダリングのスムーズさが測定できる。即ち、ペダル30の死点の状態、踏み込み、引き揚げなどの状態を前後方向の加速度にて測定できる。速度の加速度または減速時など以外では、一定のリズムにてペダリングする方が良い。その時、前後方向の加速度は変化が少なくなる。
【0055】
上記実施の形態では、加速度センサ34が「加速度検出手段」の一例であり、ジャイロセンサ41が「角速度検出手段」一例である。また、CPU4が実行するS12の処理がが「加速度判断手段」の一例であり、S15の処理が「傾斜角度算出手段」の一例であるまた、CPU4が実行するS22の処理が、「移動速度算出手段」の一例である。RAM6が「傾斜角度算出手段の算出した傾斜角度をその時系列を特定可能に記録する記録手段」の一例である。
【0056】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、各種の変形が可能である。例えば、サイクルコンピュータ10のディスプレイ部16に表示する計測された傾斜角度の値は、リアルタイムに表示または後日、結果を確認できるように、図示外のメモリーカードにメモリカードリーダー32を用いて記憶しても良い。また、ディスプレイ部16への傾斜角度の表示は、図12及び図13に示すような図でも良いが、図15に示すように3D表示のごとく自転車を教示しても良い。また、水準器のようなもので、加速度を差し引いたものを表示しても良い。
【0057】
また、上記実施の形態では、加速度センサ34及びジャイロセンサ41を備えたセンサボックス8を自転車1の上管2に固定しているが、加速度センサ34及びジャイロセンサ41は、サイクルコンピュータ10の筐体11内に内蔵しても良い。また、本発明の自転車用電子システムは、サイクルコンピュータ10に限らず、例えば、スマートフォンやポータブルナビゲーションシステム等にも適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 自転車
3 メインコントローラ
4 CPU
5 ROM
6 RAM
8 センサボックス
10 サイクルコンピュータ
11 筐体
16 ディスプレイ部
17 電源ボタン
21 車輪回転センサ
22 マグネット
23 マグネット
27 クランク回転センサ
34 加速度センサ
36 センサ信号受信機
38,39,40 センサ信号送信機
41 ジャイロセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に対する自転車の傾斜角度を測定し、その傾斜角度に基づいた表示を表示手段に行う自転車用電子システムであって、
三つの測定軸について加速度を検出可能な加速度検出手段と、
三つの測定軸ついて角速度を検出可能な角速度検出手段と、
前記加速度検出手段によって検出された加速度が重力加速度と同等か否かを判断する加速度判断手段と、
前記傾斜角度を算出する傾斜角度算出手段と
を備え、
前記傾斜角度算出手段は、前記加速度検出手段によって検出された加速度が重力加速度と同等であると判断した場合には、前記加速度センサの出力値に基づいて現在の傾斜角度を設定し、前記加速度検出手段によって検出された加速度が重力加速度と同等でないと判断した場合には前記現在の傾斜角度に対して前記角速度検出手段の出力値に基づき積算していくことで現在の傾斜角度を更新することを特徴とする自転車用電子システム。
【請求項2】
前記傾斜角度算出手段は、リアルタイムに前記傾斜角度を算出することを特徴とする請求項1に記載の自転車用電子システム。
【請求項3】
前記リアルタイムとは、前記表示手段に表示される自転車の傾斜角度の状態が現在の自転車の傾斜角度の状態を反映していると使用者が感じる時間間隔であることを特徴とする請求項2に記載の自転車用電子システム。
【請求項4】
前記自転車の移動速度を算出する移動速度算出手段を備え、
当該移動速度算出手段の算出する移動速度が速くなればなるほど、前記傾斜角度算出手段は、前記傾斜角度を算出する時間間隔を短くすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自転車用電子システム。
【請求項5】
前記傾斜角度算出手段は、前記自転車の1ダンシング間に所定回数、前記傾斜角度を算出することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自転車用電子システム。
【請求項6】
前記傾斜角度算出手段の算出した前記傾斜角度をその時系列を特定可能に記録する記録手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の自転車用電子システム。
【請求項7】
前記傾斜角度算出手段の算出した前記傾斜角度に基づいて前記表示手段に3D画像の表示を行う表示制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の自転車用電子システム。
【請求項8】
コンピュータを請求項1〜7の何れかに記載の自転車用電子システムの各処理手段として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−95306(P2013−95306A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240978(P2011−240978)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)