説明

自転車用靴

【課題】クリートを固定可能な自転車用靴において、クリートをペダルに係止しなくてもペダルから靴が容易に脱落するのを防止する。
【解決手段】自転車用靴10は、自転車のペダルPDと共に使用するためのクリート40を固定可能な靴である。自転車用靴10は、アッパー部12と、靴底部14と、クリート固定部20と、靴脱落防止部24bと、を備えている。アッパー部12は、足の甲を覆う。靴底部は、アッパー部に固定されている。クリート固定部20は、靴底部12に設けられクリート40を固定可能である。靴脱落防止部24bは、靴底部14のクリート固定部20の後方に凹んで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴、特に、自転車のペダルと共に使用するためのクリートを固定可能な自転車用靴に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車用の靴には、自転車のペダルと共に使用するためのクリートを固定可能なものが従来知られている。クリートは、ペダルに設けられたビンディングに着脱自在に係止可能である。従来の自転車用靴は、足の甲を覆うアッパー部と、アッパー部に固定された靴底部と、を備えている。靴底部には、クリートを固定するためのねじ孔を有するクリート固定部が装着されている。
【0003】
この種の自転車用靴、特にマウンテンバイク用の靴において、ライダーの歩行を行いやすくするために、クリートが靴底より飛び出さないようにしたものが従来知られている(例えば、特許文献1参照)。従来の自転車用靴は、クリートを収納可能なクリート収納部を靴底部に形成している。これにより、歩行時にクリートが接地面に接触しなくなり、クリートを装着しても、ライダーが歩行しやすくなる。クリート収納部の後方は概ね平坦な面で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−523148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デュアルスラローム、ダウンヒル及びクロスカントリなどのマウンテンバイクのレースでは、ライダーは、ビンディングからクリートを外し、靴をペダルの踏み面に載せて走行することがある。例えば、連続するコーナーを走行する際には、ビンディングからクリートを外してカーブに合わせて足を出すときがある。このような場合、前記従来の自転車用靴では、クリート固定部の後部が概ね平坦であるため、クリートをペダルから外すと、走行路の凹凸による振動により、靴がペダルの外側に脱落することがある。
【0006】
本発明の課題は、クリートを固定可能な自転車用靴において、クリートをペダルに係止しなくてもペダルから靴が容易に脱落するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る自転車用靴は、自転車のペダルと共に使用するためのクリートを固定可能な靴である。自転車用靴は、アッパー部と、靴底部と、クリート固定部と、靴脱落防止部と、を備えている。アッパー部は、足の甲を覆う。靴底部は、アッパー部に固定されている。クリート固定部は、靴底部に設けられクリートを固定可能である。靴脱落防止部は、靴底部のクリート固定部の後方に凹んで形成されている。
【0008】
この自転車用靴では、通常はクリートをペダルに係止させる。クリートをペダルから外してペダルに靴底部を載せるときには、クリート固定部の後方に靴をずらす。すると、クリート固定部の後方に凹んで形成された靴脱落防止部がペダルに配置される。靴脱落防止部をペダルに配置すると、凹んで形成れた靴脱落防止部の縁部がペダルに引っ掛かる。このため、クリートをペダルに係止しなくても、ペダルが左右に移動しにくくなり、ペダルから靴が容易に脱落するのを防止できる。
【0009】
発明2に係る自転車用靴と、発明1に記載の靴において、靴底部は、クリート固定部を含むように形成され、クリートが底面から突出しないようにクリートを収納可能なクリート収納部を有し、脱落防止部は、クリート収納部と連続して形成されている。
【0010】
この場合には、靴をクリート固定部から後方にずらす際に邪魔な凹凸が生じないので、靴をスムーズに移動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、靴脱落防止部をペダルに配置すると、凹んで形成された靴脱落防止部の縁部がペダルに引っ掛かる。このため、クリートをペダルに係止しなくても、ペダルが左右に移動しにくくなり、ペダルから靴が容易に脱落するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による自転車用靴の側面図。
【図2】本発明の一実施形態による自転車用靴の平面図。
【図3】その底面図。
【図4】図3のIV−IV断面図。
【図5】靴底部の分解斜視図。
【図6】下ソール部の平面図。
【図7】上ソール部の平面図。
【図8】中間ソール部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から図3において、本発明の一実施形態による自転車用靴10は、ビンディングを有するペダルPDと共に使用するためのクリート40を固定可能な靴である。自転車用靴10は、足の甲を覆うアッパー部12と、アッパー部12に固定された靴底部14とを備えている。また、自転車用靴10は、靴底部14から突出するスパイク16と、靴底部14に設けられスパイク16を固定するスパイク固定部18と、クリート40を固定するためのクリート固定部20と、を備えている。
【0014】
アッパー部12は、通気性を有する布地と合成皮革とを用いて構成されている。アッパー部12には、面ファスナで足の甲を締め付け可能な、複数(例えば3本)の締め付けベルト22a,22b,22cが装着されている。アッパー部12は、図4に示すように、靴底部14の後述する下ソール部24と上ソール部26との隙間に挿入されて下ソール部24及び上ソール部26に接着剤により固定されている。
【0015】
靴底部14は、図4及び図5に示すように、アッパー部12に固定された下ソール部24と、上ソール部26と、中間ソール部28と、敷き皮29と、を有している。
【0016】
下ソール部24は、例えば合成ゴム等の弾性体製の部材である。下ソール部24は、図3から図6に示すように、下面にクリート40を収納可能なクリート収納部24aと、ペダルPDから自転車用靴10が脱落するのを防止する靴脱落防止部24bと、を有している。また、つま先側にスパイク16が貫通するスパイク貫通孔24cが形成されている。下ソール部24は、上面に中間ソール部28を収納可能な収納凹部24dを有している。収納凹部24dは、中間ソール部28の厚みと実質的に同じ長さ凹んで形成されている。これにより、中間ソール部28の上面と下ソール部24の上面とが実質的に面一となる。
【0017】
クリート収納部24aは、クリート固定部20を含むように凹んで形成されている。クリート収納部24aは、クリート固定部20に固定されたクリート40を底面から突出しないように収納可能であり、この実施形態では、下ソール部24の上下面を貫通して形成されている。靴脱落防止部24bは、クリート固定部20の後方に凹んで形成されている。靴脱落防止部24bは、クリート収納部24aと連続して形成されており、後方に行くに従い先細りに形成されている。したがって、この実施形態では、靴脱落防止部24bは下ソール部24を貫通していない。
【0018】
上ソール部26は、図4,図5及び図7に示すように、下ソール部24の上方に、足底に対向して配置される部材である。上ソール部26は、例えばポリアミド樹脂等の比較的硬質な合成樹脂製の部材である。上ソール部26は、下ソール部24より僅かに小さい外形を有している。上ソール部26は、上面にクリート40を固定するためのボルト部材42がねじ込まれる雌ねじを有するナット部材44を配置するための概ね矩形の配置凹部26aを有している。配置凹部26aには、クリート固定部20を構成する2本のスリット20a,20bが前後方向に沿って形成されている。スリット20a,20bには、ナット部材44が装着されている。これにより、クリート40の装着位置を前後方向に調整できる。
【0019】
ナット部材44は、図4に示すように、第1スリット20a,20b及び後述する第2スリット20c,20dに嵌合する2つのナット部44aと、2つのナット部44aが両端に配置されたプレート部44bと、を有している。また、上ソール部26は、下面に中間ソール部28に密着する密着凸部26bを有している。密着凸部26bは、中間ソール部28の外形と実質的に同じ形状に突出して形成されている。このため、上ソール部26と下ソール部24との間には、密着凸部26bの周囲に隙間30(図4)が形成される。この隙間30に前述したようにアッパー部12が挿入されて固定される。
【0020】
中間ソール部28は、図4,図5及び図8に示すように、下ソール部24と上ソール部26との間に配置されている。具体的には、下ソール部24に形成された収納凹部24dに配置されている。中間ソール部28は、例えば、ポリアミド樹脂にガラス繊維を混入させたガラス繊維強化樹脂製であり、上ソール部26より硬質で機械的強度が高くなっている。中間ソール部28の前部(つま先側)には、間隔を隔てて一体形成された2つのスパイク固定部18が形成されている。スパイク固定部18は、筒状であり、その内周面にスパイク固定用の雌ねじ部18aが形成されている。スパイク固定部18は、前下方に向かって斜めに形成されている。中間ソール部28のスリット20a,20bに対向する位置には、クリート固定部20を構成する第2スリット20c,20dが形成されている。第2スリット20c,20dは、第1スリット20a,20bより僅かに幅が狭い。中間ソール部28と上ソール部26とは、両者のいずれか一方から突出して形成された位置決め凸部及びいずれか他方に凹んで形成された位置決め凹部により位置決めされる。
【0021】
敷き皮29は、例えば、上ソール部26の上面に接着されており、足底にあわせて湾曲して形成されている。なお、敷き皮29を上ソール部26に接着しなくても良い。
【0022】
スパイク16は、図5に示すように、先端に金属製の鋲部16aが一体形成された合成樹脂製の部材である。スパイクの基端には、ねじ部16bが形成されており、スパイク固定部18の雌ねじ部18aにねじ込み固定される。
【0023】
スパイク固定部18は、前述したように中間ソール部28の先端に中間ソール部28と一体形成されている。
【0024】
クリート固定部20は、前述したスリット20a,20b及びスリット20c,20dと、ボルト部材42と、ナット部材44と、を有している。クリート40には、一面に長円形凹部40aが形成されており、長円形凹部40aには、長円形凹部40aより小径の長円形孔40bが形成されている。長円形凹部40aには、2つの固定孔46aを有する長円形のワッシャ部材46が装着されている。この固定孔46aを貫通して2本のボルト部材42がナット部材44にねじ込まれてクリート40が自転車用靴10に固定されている。また、このとき、上ソール部26と中間ソール部28とがボルト部材42により締結される。
【0025】
このように構成された自転車用靴10では、靴底部14が、下ソール部24と、上ソール部26と、中間ソール部28の3つの部材で構成され、中間に配置された中間ソール部28にスパイク固定部18が設けられている。このため、スパイク16に衝撃が作用しても、その衝撃が、中間ソール部28から上ソール部26を介して足底に伝わる。このため、衝撃が直接足底に伝達されなくなり、スパイク16を装着しても足底に衝撃が伝わりにくくなる。
【0026】
また、クリート40をペダルPDから外して自転車用靴10を前方にずらし、図3に示すように、靴脱落防止部24bをペダルPDに配置すると、凹んで形成された靴脱落防止部24bの縁部がペダルPDに引っ掛かる。このため、クリート40をペダルPDに係止しなくても、ペダルPDが左右に移動しにくくなり、ペダルPDから自転車用靴10が容易に脱落するのを防止できる。
【0027】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0028】
(a)前記実施形態では、靴底部を下ソール部24と上ソール部26と中間ソール部28とで構成したが、靴底部の3つの部材を一体形成しても良い。また、上ソール部と中間ソール部とを一体形成しても良い。
【0029】
(b)前記実施形態では、靴底部14の下ソール部24にクリート収納部24aを形成したが、クリート収納部を形成しなくても良い。
【符号の説明】
【0030】
10 自転車用靴
12 アッパー部
14 靴底部
20 クリート固定部
24a クリート収納部
24b 靴脱落防止部
40 クリート
PD ペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のペダルと共に使用するためのクリートを固定可能な自転車用靴であって、
足の甲を覆うアッパー部と、
前記アッパー部に固定された靴底部と、
前記靴底部に設けられ前記クリートを固定可能なクリート固定部と、
前記靴底部の前記クリート固定部の後方に凹んで形成された靴脱落防止部と、
を備えた自転車用靴
【請求項2】
前記靴底部は、前記クリート固定部を含むように凹んで形成され、前記クリートが底面から突出しないように前記クリートを収納可能なクリート収納部をさらに有し、
前記脱落防止部は、前記クリート収納部と連続して形成されている、請求項1に記載の自転車用靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−263970(P2010−263970A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116145(P2009−116145)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】