説明

自転車用駐輪装置

【課題】 自転車を勢いよく進入させても、前輪タイヤがロック装置に乗り上げてオーバーランすることがなく、前輪タイヤを安全、且つ、確実にロックすることができると共に、前輪タイヤがロック装置に乗り上げた場合でも、ロック装置が前輪タイヤを必ずロックするようにして、不正駐輪を防止し、且つ、駐輪装置の強度性を高めて、自転車の転倒等の外力が加わっても、簡単に壊れないように工夫した自転車用駐輪装置を提供する。
【解決手段】 自転車BS1又はBS2の前輪タイヤS1A,S2Aをロックするロック装置20の上側部に、進行して来る前輪タイヤS1A,S2Aを嵌め込むことによって、ロック装置20に乗り上げて前進するオーバーランを規制するオーバーラン規制ガイド部10Dを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用の駐輪場に実施して好適な個別ロック式の自転車用駐輪装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部および都市近郊の駅周辺部の放置自転車の問題が深刻であったが、徐々に駅前再開発に伴った駐輪施設の建設が促進され、大型の駐輪場が各自治体や民間業者によって整備されてきている。ところが、大型化に伴い駐輪場係員を多人数配備して不正使用を監視したり、不適切な利用を指導するために人件費がかかっている。また、往々にして朝の通勤ラッシュ時など、急いでいる利用者が自転車を勢いよく駐輪装置に進入させるため、駐輪装置の故障や破損が絶えず発生して、メンテナンス費用が嵩んでいるのも実情である。
【0003】
また、最近の自転車は通勤・通学用途に使用されるものであって、通常の26インチ、28インチといった大きな車輪サイズの実用車ばかりではなく、20インチ以下の車輪サイズの折りたたみ式自転車なども普及しており、駐輪装置はこれらの色々なサイズの車輪タイヤに対して適切な駐輪及び確実なロックが可能なことが求められている。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載されているように、自転車の車輪の一部を挟み込んだ状態で閉じることができる一対の鉤型部材を、予め定められた高さで、水平方向から予め定められた仰角で上向きに傾斜して固定した構造の駐輪装置が開発された。
【特許文献1】特開2006−56396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載の自転車用駐輪装置には、以下に述べる如き問題点を有していた。
【0006】
<乗り上げの危険性>
図11は、折りたたみ式の16インチの車輪を有する自転車BS2の通常の駐輪状態を示したものであって、従来の特許文献1にある様な駐輪装置100では、鉤型ロック部101の高さは16インチの車輪BKの半径の高さH1(約200mm)とほぼ等しい高さに設定してある。駐輪時には車輪ガイド102に前輪タイヤBKを沿わせて車輪ガイド内に進入させ、そのまま進行させるとロック装置103の車輪保持部104の車輪検知スライダー105に前輪タイヤBKが当接し、さらに自転車を進行させると車輪検知スライダー105が押圧されて図示しない内部のスイッチがONとなることで、前輪タイヤBKが検知され、鉤型ロック部101を有するアームが動作して前輪タイヤBKを退出不可状態にロックするように構成されている。
【0007】
ところが、勢いよく自転車BS2を駐輪装置100に進行させた場合などでは、車輪検知スライダー105に前輪タイヤBKが当接して車輪検知アームが押圧されて検知状態となっても、前輪タイヤBKが進行方向に回転しようとしているため、車輪検知スライダー105を押し切った後でも前輪タイヤBKが車輪検知スライダー105の表面を乗り上げるように回転して進行し、図12に示す様な乗り上げ状態になりやすく、また、この様な状態になると、利用者にとって非常に危険であった。
【0008】
また、図12の位置に乗り上げて停止した場合、その状態でも車輪検知スライダー105が押されて車輪検知ON状態であれば、ロック装置103の鉤型ロック部101が前輪タイヤBKのリムBTやタイヤBKを挟んでしまって、リムBTに傷をつけてしまう場合があり、この様に傷をつけてしまった場合には、その後のブレーキ操作時の振動や異音、ブレーキシューの異常摩耗などを引き起こす危険性があり、加えて、タイヤBKを挟んでしまった場合には、最悪はパンクを引き起こす危険性もあった。
【0009】
<不正駐輪>
更に、従来の駐輪装置100では、図13に示す様にわざと車輪検知スライダー105が前輪タイヤBKを検知しない状態にしたままでも、前輪タイヤBKをロック装置103に乗り上げた状態にすることが可能であり、併せて後輪側のスタンドSTを立てておけば、自転車BS2はその姿勢を維持することが容易に出来るため、前輪タイヤBKが検知されない状態でも、一見すると通常通りに駐輪しているものと見えなくもなく、従って、斯かる状態で不正な駐輪が可能となってしまう問題があった。
【0010】
尚、これら従来例では、16インチの車輪を有する折りたたみ式自転車BS2で例示したが、一般的な26インチ車輪を有する自転車などにおいても同様の乗り上げ・不正駐輪などが可能であることは、勿論である。
【0011】
<強度性>
加えて、図14に示す様に、駐輪装置100に正しく進入させずに、前輪タイヤBKを駐輪装置100の車輪ガイド102に挿入させただけで放置して不正駐輪することも可能であり、その後、自転車BS2を転倒させるような外力が加わった場合には、車輪ガイド102の接合部110に多大な荷重が加わるため、溶接接合などが破断したり、車輪ガイド102の接合部110の近傍が変形したりしやすく、保守や修理にも費用がかさんでしまう問題もあった。
【0012】
本発明は上述した乗り上げの危険性と不正駐輪、及び、強度性の各問題を解決するべく開発されたものであって、その技術的課題は、自転車を勢いよく進入させても、前輪タイヤがロック装置に乗り上げてオーバーランすることがなく、前輪タイヤを安全、且つ、確実にロックすることができると共に、前輪タイヤがロック装置に乗り上げた場合でも、ロック装置が前輪タイヤを必ずロックするようにして、不正駐輪を防止し、且つ、駐輪装置の強度性を高めて、自転車の転倒等の外力が加わっても、簡単に壊れないように工夫した自転車用駐輪装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 上記の技術的課題を解決するために、本発明は前記請求項1に記載の如く、自転車の前輪タイヤが左右のガイドレール部に案内されて所定部位まで押し込まれると、ロック装置が前輪タイヤをロックするように構成した自転車用駐輪装置であって、上記ロック装置の上側部に、前進して来る上記自転車の前輪タイヤを嵌め込むことによって、当該前輪タイヤがロック装置に乗り上げて前進するオーバーランを規制することができるオーバーラン規制ガイド部を立設したことを特徴としている。
【0014】
(2) また、本発明は前記請求項2に記載の如く、前記オーバーラン規制ガイド部が、前進して来る前輪タイヤの前部側を嵌め込むことができるように、棒状又はパイプ状の部材を用いて逆U字状に屈曲形成され、且つ、このオーバーラン規制ガイド部の上記ロック装置から上記逆U字状に屈曲形成した上端折り返し部に至るまでの長さ寸法が、少なくとも駐輪対象とする自転車における前輪タイヤの標準直径寸法よりも短く設定されていることを特徴としている。
【0015】
(3) また、本発明は前記請求項3に記載の如く、前進して来る前輪タイヤの前部側が嵌め込まれる前記オーバーラン規制ガイド部を構成する棒状又はパイプ状部材の間隔が、少なくとも自転車の前輪タイヤを前フォークに取付けるハブ軸の長さ、又は、このハブ軸の両端部に取付けられる締め付け用ナット間の間隔よりも狭く設定されていることを特徴としている。
【0016】
(4) また、本発明は前記請求項4に記載の如く、左右に並設したガイドレールと、これ等左右のガイドレールの間に架設して固定されるタイヤガイド板とによって構成されるガイドレール部は、最下部の入口から斜め上方に傾斜する上昇スロープ部と、この上昇スロープ部の頂点より斜め下方に傾斜する下降スロープ部とを一体に連設した全体が略へ字状に構成されており、且つ、上記左右のガイドレールを、上記下降スロープ部の途中から斜め上方に向けて屈曲させることにより、両ガイドレールの間に前記自転車の前輪タイヤが嵌り込む連架部を構成すると共に、上記斜め上方に向けて傾斜させた左右のガイドレールの先端側を、平行間隔を保ちながら更に垂直方向に延長することによって、両ガイドレールの上端部側に逆U字状に屈曲した上端折り返し部を備えたオーバーラン規制ガイド部を一体的に連設して、少なくともこのオーバーラン規制ガイド部の下側で、且つ、上記下降スロープの終端部近傍には、前記ロック装置を仰向けに傾斜させて設けたことを特徴としている。
【0017】
(5) また、本発明は前記請求項5に記載の如く、前記ロック装置を、中央部の前面に自転車の前輪タイヤが嵌め込まれる嵌合溝を凹設したケース体と、このケース体の内部に、左右から上記嵌合溝に嵌め込まれた前輪タイヤの一部を挟み込んだ状態にロックできるように取付けられた一対の鉤型アーム体と、上記嵌合溝内に嵌め込まれた前輪タイヤに押されると、上記一対の鉤型アーム体を挟み作動する前輪タイヤ検知体とによって構成する一方、前記左右のガイドレールの一部を、上記ケース体における上記嵌込溝を挟んだ左右両側部分に対して上下方向に挿通して固定せしめたことを特徴としている。
【0018】
(6) 更に、本発明は前記請求項6に記載の如く、前記のロック装置を、前記自転車の前輪タイヤがガイドレールに案内されて所定部位まで押し込まれた位置と、前輪タイヤがロック装置に乗り上げて前記オーバーラン規制ガイド部に規制された位置の、いずれの位置に押し込まれた場合であっても、前輪タイヤが前記前輪タイヤ検知体を押して、前記一対の鉤型アーム体が前輪タイヤのリム内側を挟み込んでロックすることができる高さ位置に仰向けに傾斜させて設けたことを特徴としている。
【0019】
前記(1)で述べた請求項1に係る手段によれば、自転車をロック装置に対して勢いよく進入させても、オーバーラン規制ガイド部によって自転車の前輪タイヤの前部側を嵌め込むことによって、前輪タイヤがロック装置に乗り上げて前進するオーバーランを規制するため、前輪タイヤの脱輪を防止して、自転車の前輪タイヤを確実にロック装置にロックさせることができる。
【0020】
前記(2)と(3)で述べた請求項2及び3に係る各手段によれば、例えば車輪の径が28インチや26インチの大径車輪自転車がロック装置を乗り越えようとした場合は、オーバーラン規制ガイド部の逆U字状に形成した上端折り返し部で、前輪タイヤの上方向のオーバーランを規制するため、前輪タイヤがロック装置に乗り上げてオーバーランすることはない。
【0021】
また、例えば車輪の径が16インチの小径車輪自転車の前輪タイヤがロック装置を乗り越えようとした場合には、上記オーバーラン規制ガイド部を構成する棒状又はパイプ状部材の間隔が、前輪取付け用のハブ軸の両端部、又は、締め付け用ナットに係合することによって、前輪タイヤの進行方向(前進方向)のオーバーランを規制して、前輪タイヤがロック装置に乗り上げてオーバーランすることを防止することができる。従って、利用者が勢いよく自転車をロック装置に向けて進入させたとしても、オーバーランによる脱輪等を引き起こすことがなく、安全、且つ、確実に前輪タイヤをロックして自転車を駐輪させることを可能にする。
【0022】
前記(4)で述べた請求項4に係る手段によれば、進入して来る自転車の前輪タイヤをロック装置に導くガイドレール部が、入口側を上昇スロープ部として、次いで、下降スロープ部を連設した略へ字状に構成すると共に、下降スロープ部の先にロック装置を仰向け状態に傾斜させて設けた構成に成っているため、自転車を駐輪させるには、先ず、前輪タイヤを上昇スロープ部に沿わせて昇るように押し上げなくてはならず、また、上昇スロープ部を登った後は、下降スロープ部に沿って前輪タイヤが自然に前進下降され、次いで、そのままの状態でロック装置にロックされることになるから、自転車のロックを確実に行うことができると共に、前輪タイヤをロック装置にロックさせないで放置する不正駐輪を防止することができる。
【0023】
更に、上記(4)で述べた請求項4に係る手段によれば、自転車の前輪タイヤの走行路となるガイドレール部が左右平行なガイドレールと、これ等左右のガイドレールの間に架設されて固定されるタイヤガイド板とによって構成され、且つ、ガイドレールとこれに続くロック部、及び、上端部に折り返し部を設けた逆U字状に屈曲形成したオーバーラン規制ガイド部の全ては、1本の棒状又はパイプ状の部材を屈曲して形成できるため、機械的に堅牢で、装置全体を強靱にして耐久性を向上させることができるものであって、自転車の乱暴な駐輪操作に対しても、充分に対応することを可能にしている。
【0024】
前記(5)で述べた請求項5に係る手段によれば、自転車の前輪タイヤがロック装置のケース体に設けられた嵌合溝に嵌合して前輪タイヤ検知体を押すと、一対の鉤型アーム体が回動して前輪タイヤの一部を挟み込んだ状態にロックし、退出不可能に保持することができる。また、ケース体には前記オーバーラン規制ガイド部を構成するガイドレールの一部が上下方向に挿通固定されているため、外力に対してガイドレールとロック装置が一体的に撓むことで強度性がアップされて、製造誤差によるズレ等も生じないようにすることができる。
尚、上記ロック装置の解錠は、例えば駐輪料金の精算を済ませると、ロック装置が自動的に解錠作動するように構成されている。
【0025】
前記(6)で述べた請求項6に係る手段によれば、自転車の前輪タイヤが所定位置に押し込まれた場合と、ロック装置に乗り上げたオーバーラン規制位置に押し込まれたいずれの場合であっても、ロック装置の鉤型アーム体が前輪タイヤのリム内側を挟み込んでロックして、退出不可能に保持するため、わざと前輪タイヤをロック装置に乗り上げさせることにより、ロックをONさせずに自転車を放置する不正駐輪を防止できると共に、ロック時に誤って鉤型アーム体がリムやタイヤを挟み込んでしまう不都合を防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上述べた次第で、本発明に係る自転車用駐輪装置によれば、大径車輪と小径車輪のいずれの自転車でも、確実にロックして駐輪させることができるため、車輪の径が異なる各種形式の自転車の駐輪に利用できる利点を備え、また、自転車を勢いよく駐輪装置に進入させた場合でも、オーバーラン規制ガイド部がオーバーランによる脱輪を防止して、安全に駐輪することができる利点を備えるものであって、装置全体が強靱で耐久性に優れ、保守・修理費が軽減できる経済性を備える点、ロック装置によるロック時に、誤ってリムやタイヤを挟み込んでしまうことがなく、利用者にとって安心な駐輪装置を提供できる点、及び、前輪タイヤの検知をONさせないで自転車を放置又は駐輪させる不正駐輪を防止できる点と相俟って、駐輪場の利便性を向上できる利点を発揮することができる駐輪装置として、頗る好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、上述した本発明に係る自転車用駐輪装置の実施の形態を図面と共に説明すると、図1は本発明の実施例に係る自転車用駐輪装置1の外観図、図2はその側面図を示したものであって、通常は、スペース効率を考えて、図示の如く駐輪装置1の高さを高低2通りに構成したものを組み合わせて、それを横方向に多数連設して使用しているが、図示したものは実施の一例であって、同じ高さに作った多数台の駐輪装置1を横方向に並べて構成してもよく、その選択は任意とする。
【0028】
上記の各図において、夫々符号10で全体的に示したのは、最下部の入口10Hから斜め上方に傾斜する上昇スロープ部10Aと、この上昇スロープ部10Aの頂点より斜め下方に傾斜する下降スロープ部10Bとを一体に連設した、全体が略へ字状に構成されたガイドレール部であって、これ等各ガイドレール部10は、上記の各図と、図2のA−A線とB−B線に沿った各断面図を示した図3に記載の如く、駐輪させる自転車の前輪タイヤをガイドできるように、左右平行な間隔をあけて並設した金属製ガイドレール11,12の間に、金属製のタイヤガイド板13,14を架設、溶接することによって構成されている。尚、ガイドレール11,12の材料としては、丸棒、角棒、六角棒、或いは、それらの中空パイプ材が使用される。
【0029】
2と3は、駐輪場の路面上に前後に間隔をあけて敷設したベース材、4と5は後部側のベース材3に設けた高低2段の支持台で、上記略へ字状に形成したガイドレール部10…は、各上昇スロープ部10Aの入口10H…の部分を前部側のベース材2に固定し、各下降スロープ部10Bの後端部側タイヤガイド板14の部分を、夫々取付部材15A,15Bを介して上記後部側ベース材3側に固定することによって、その略へ字形状と、各間隔が保たれる仕組みに成っている。
【0030】
更に図中、10Cは上記各ガイドレール部10を構成する左右のガイドレール11,12を、下降スロープ部10Bの途中から斜め上方に向けて屈曲することによって構成した連架部で、後端部側タイヤガイド板14が架設されていない底抜け状態のこの連架部10Cの間隔には、図9並びに図10に示すように、自転車の前輪タイヤの前部下側部分が嵌め込まれる。
【0031】
上記図9において、BS1は車輪サイズが通常の26インチ又は28インチの車輪を有する大径車輪の自転車で、S1Aはその前輪タイヤ(前車輪)を示し、S1Bはリム、S1Cは自転車BS1の前フォーク、S1Nはこの前フォークS1Cに前輪タイヤS1Aを取付けるハブ軸(図示省略)の締付用ナットを示す。
【0032】
また、図7と図10において、BS2は車輪サイズが例えば16インチの車輪を有する小径車輪の自転車、S2Aはその前輪タイヤ(前車輪)を示し、S2Bはリム、S2Cは自転車BS2の前フォーク、S2Nはこの前フォークS2Cに前輪タイヤS2Aを取付けるハブ軸S2D(図8参照)の締付用ナット(オーバーロックナイト)である。
【0033】
更に図1と図2において、10Dは上記連架部10Cを構成する左右のガイドレール11,12の上端部を、間隔を保ちながら更に上方に向けて垂直方向に延長することによって構成したオーバーラン規制ガイド部、10Eは垂直方向に延長する左右のガイドレール11,12を逆U字状に屈曲して連設形成した上端折り返し部であって、このオーバーラン規制ガイド部10Dにおける上記上端折り返し部10Eから、後述するロック装置20(具体的にはロック装置20の前輪タイヤ検知体25の上端部)に至るまでの間隔距離(長さ寸法)が、少なくとも駐輪対象とする自転車の前輪タイヤの標準寸法(26インチ又は28インチ)よりも短く形成されていて、斯かる間隔内を自転車の26インチ又は28インチのタイヤが通過(オーバーラン)しないように構成されている。
【0034】
また、上記オーバーラン規制ガイド部10Dを構成する左右のガイドレール11,12の間隔は、前記大径及び小径の前輪タイヤS1A、S2Aは挿通可能であるが、少なくとも小径の前輪タイヤS2Aのハブ軸S2Dの長さ、又は、このハブ軸S2Dの両端部に取付けた締付用ナットS2N、S2Nを含んだハブ軸S2Dの全体の長さ寸法よりも狭く造られていて、このガイドレール11,12の間隔を小径の前輪タイヤS2Aが通過(オーバーラン)できないように構成されている。即ち、図8に示した図7のD−D線に沿った断面図に示す如く、一般的には、締付用ナットS2N、S2Nの内部幅(オーバーロックナット幅)は、前輪タイヤS2Aの幅Wより広い幅L1で規定されており、更に多くの自転車では、このL1の寸法は100mmの規格品が使用されている。その外側に二股に分かれた前フォークS2C、S2Cが存在し、更にその外側に締付用ナットS2N、S2Nが止められていて、全部でL2の幅を有している。
【0035】
本発明の実施例において、上記オーバーラン規制ガイド部10Dを構成するガイドレール11,12の間隔は、少なくとも前記L2幅よりも小さければ前輪タイヤS2Aが通過することはないが、逆にタイヤ幅Wの規格を考慮して、60mm程度の幅に設定しておけば、上記のオーバーロックナット幅100mmよりも小さいために確実に前輪タイヤSAの進行を規制することができる。なお、自転車のタイヤ幅はJIS規格でも最大54mm程度であるため、ガイドレール11,12の間隔は54〜100mmの範囲が実現可能であり、60mmであれば好適と言える。
【0036】
次に、符号20で示したのは前記支持台4及び5の上端部で、且つ、上記オーバーラン規制ガイド部10Dの下側部分に、仰向けに傾斜させて設けたロック装置であって、このロック装置20は、図4に示した上蓋ケース体を外した平面図と、図5に示した図4のC−C線に沿った断面図の記載から明らかな如く、前面部に駐輪する自転車の前輪タイヤが嵌め込まれる嵌合溝22を凹設したケース体21と、このケース体21の内部に左右から上記嵌合溝22に嵌め込まれた前輪タイヤを挟み込んだ状態にロックすることができるように取付けた一対の鉤型アーム体23,23と、上記嵌合溝22に嵌め込まれた前輪タイヤに押されて図面上左方向にスライドする前輪タイヤ検知スライダー25を備えている。
【0037】
上記一対の鉤型アーム体23,23は、中央部の内側に検知用の突起23B,23Bが突設されていて、進入して来る前輪タイヤS1A又はS2Aによって前輪タイヤ検知体としての前輪タイヤ検知スライダー25がスライダー軸25Tにガイドされて図面上左方向に押動されると、上記突起23B,23Bが押されて鉤型アーム体23,23をバネ26を伸張しながら支軸24,24を中心に図4の2点鎖線の位置に回動して、先端の鉤型ロック部23A,23Aが前輪タイヤS1A又はS2Aをロックすると共に、スイッチ28が一方の鉤型アーム体23の根端部に押されてスイッチONされる。すると、ケース体21内に取付けたソレノイド29が消勢(OFF)され、係止レバー27を図5の2点鎖線に示す位置に回動して、両鉤型アーム体23,23の根端部間に介在するため、それ以後の鉤型アーム体23,23の開放回動を規制して、ロック状態が維持される仕組みに成っている。
【0038】
上記のロック状態を解錠するには、駐輪場内に設けた駐輪料金精算機(図示省略)にコインを投入して、当該駐輪装置1の番号を入力すれば、前記ソレノイド29を励磁(ON)して係止レバー27を図5の実線に示す位置に回動するため、両鉤型アーム体23,23がバネ26の牽引力によって図4の実線に示す位置に開放回動して、前輪タイヤS1A又はS2Aに対するロックを解くことができる。
【0039】
尚、本実施例のソレノイド29はプランジャー部の解放状態と吸引状態を選択的に動作できるラッチ式ソレノイドを想定しているが、通常の通電により吸引し非通電状態で開放されるソレノイドとスプリングを組み合わせたり、ロータリー式ソレノイドを使用することも可能である。また、ロック装置20のケース体21には、図4の如くガイドレール11,12を嵌合溝22の側壁より装置内部に挿通して固定することにより、ロック装置20とオーバーラン規制ガイド部10Dとの位置関係を一定に固定(保持)しているため、オーバーラン規制ガイド部10Dを構成するガイドレール11,12の間に進入した前輪タイヤS1A又はS2Aを、ロック装置20の嵌合溝22内に確実に導いてロックすることができる。
【0040】
更に上記ロック装置20にガイドレール11、12を貫装させて固定するためのカバー体21Bを構成する材料として、耐摩耗性に優れた材質(例えばステンレス鋼帯等)を選択することによって、前輪タイヤS1A又はS2Aが直接当たるロック装置20の前縁部及び嵌合溝22の周縁部を摩耗或いは破損から守ることができる。
【0041】
次に、図6は本発明を構成する各部材の位置関係を説明した構成図であって、図中、想定する小さい車輪半径をRS、大きい車輪半径をRLとし、夫々RS=16インチ車輪で約200mm、RL=26インチ車輪で約330mmと想定している。また、想定される最大の車輪の半径として、RMax=28インチで355mmを想定している。更に、図6においては、高い位置に設けたロック装置20の位置関係を記したが、低い位置のロック装置20においても下降スロープ部10Bから鉤型アーム体23までの高さHや、下降スロープ部10Bとロック装置20のなす仰角α、下降スロープ部10Bの傾斜角度βなどは、全て同じである。
【0042】
また、本発明においては、前述した特許文献1に記載の駐輪装置100とは異なり、上述した下降スロープ部10Bから鉤型アーム体23までの高さHを、小径車輪半径RSよりも大きく設定している。具体的には、上記のHは240mmであり、好ましくは230〜250mmが最適である。
【0043】
次に、本発明の動作に付いて説明すると、図9(1)は大径車輪自転車BS1を通常通り本発明に係る駐輪装置1に駐輪させた状態を示したものであって、正常な駐輪の場合は、ロック装置20の前輪タイヤ検知スライダー25が前輪タイヤS1Aを検知した状態で、鉤型アーム体23が前輪タイヤS1AのリムS1Bよりも内側のスポーク周辺部を挟み込んで、退出不可能な状態にロックしている。
【0044】
一方、図9(2)は、大径車輪自転車BS1を図9(1)の状態からそのまま進行方向に移動(進入)させることによって、前輪タイヤS1Aがロック装置20に乗り上げようとしている状態を示したものであって、図示の如く、前輪タイヤS1Aの上部外周面がオーバーラン規制ガイド部10Dの上端折り返し部10Eに制止されて、上方向へのオーバーランが規制されるため、大径車輪自転車BS1のそれ以上の進行が規制されて、上記ロック装置20による前輪タイヤS1Aのロックが通常通り行われる。
【0045】
尚、図9(1)、(2)では大径車輪自転車BS1として車輪サイズが26インチの自転車を示したが、28インチの自転車では上記上端折り返し部10Eと前輪タイヤS1Aとの間隔が狭くなるため、オーバーラン規制が図示した26インチの自転車よりも早目に行われる。一方、車輪サイズが24インチ、22インチと小径になるに従って、上記上端折り返し部10Eと前輪タイヤS1Aとの間隔が広がって、ロック装置20に乗り上げようとする移動距離が増加することになるが、前記前輪タイヤ検知スライダー25と上端折り返し部10Eとの間隔(距離)を、駐輪対象とする自転車の車輪サイズよりも狭く(短く)構成しておけば、前輪タイヤS1Aをロック装置20に対して乗り上げきることはできないため、オーバーランを確実に規制することが可能となる。
【0046】
図10は、小径車輪自転車BS2の駐輪状態を示したものであって、具体的には、車輪サイズが16インチの折り畳み式自転車が示されている。
【0047】
図10(1)には、小径車輪自転車BS2が通常通り駐輪装置1に駐輪した状態が示されていて、ロック装置20の前輪タイヤ検知スライダー25が前輪タイヤS2Aを検知した状態で、鉤型アーム体23の先端部の鉤型ロック部23Aが前輪タイヤS2AのリムS2Bよりも内側のスポーク周辺部を挟み込んで、退出不可能な状態にロックしている。
【0048】
一方、図10(2)は、小径車輪自転車BS2を図10(1)の状態からそのまま進行方向に移動(進入)させることによって、前輪タイヤS2Aがロック装置20に乗り上げようとしている状態を示したものであって、図示の如く、前輪タイヤS2Aを前フォークS2Cに取付けるハブ軸S2D(図8参照)の長さ、又は、このハブ軸S2Dの両端部に取付ける締付用ナットS2N,S2N間の距離が、前記オーバーラン規制ガイド部10Dを構成する左右2本のガイドレール11,12の間隔よりも長く形成されていて、ハブ軸S2Dの両端部、或いは、両側の締付用ナットS2N,S2Nがガイドレール11,12に係止されてオーバーランを制止するため、小径車輪自転車BS2のそれ以上の進行が規制されて、上記ロック装置20による前輪タイヤS2Aのロックが通常通り行われる。また、このロック状態おいて、鉤型アーム体23の先端部の鉤型ロック部23Aが前輪タイヤS2AのリムS2Bよりも内側のスポーク周辺部を挟み込んで、退出不可能な状態にロックしている。
【0049】
更に、上記図9及び図10に示したいずれの場合も、前輪タイヤS1A,S2Aがロック装置20の前輪タイヤ検知スライダー25を有効に押圧してON状態にしていて、前輪タイヤS1A又はS2Aを、例えば図13に示すようにロック装置20に乗り上げさせて放置するような不正駐輪を行うことができないため、不正駐輪を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る自転車用駐輪装置の全体を説明した斜視図。
【図2】図1に示した自転車用駐輪装置の側面図。
【図3】図2のA−A線及びB−B線に沿った断面図。
【図4】上蓋を取り外したロック装置の平面図。
【図5】図4のC−C線に沿った断面図。
【図6】本発明を構成する各部材の位置関係を説明した説明図。
【図7】小径車輪自転車の一例を示した側面図。
【図8】図7のD−D線に沿った断面図。
【図9】(1)は大径車輪自転車の通常駐輪の状態を説明した側面図、(2)は大径車輪自転車がロック装置に乗り上げようとした場合の側面図。
【図10】(1)は小径車輪自転車の通常駐輪の状態を説明した側面図、(2)は小径車輪自転車がロック装置に乗り上げようとした場合の側面図。
【図11】小径車輪自転車が従来の駐輪装置に駐輪している状態を説明した側面図。
【図12】小径車輪自転車が従来の駐輪装置に乗り上げようとした状態を説明した側面図。
【図13】従来の不正駐輪の状態を説明した側面図。
【図14】従来の他の不正駐輪の状態を説明した側面図。
【符号の説明】
【0051】
1 駐輪装置
10 ガイドレール部
10A 上昇スロープ部
10B 下降スロープ部
10C 連架部
10H 入口部
10D オーバーラン規制ガイド部
10E 上端折り返し部
11,12 ガイドレール
13,14 タイヤガイド板
20 ロック装置
21 ケース体
22 嵌合溝
23 鉤型アーム体
25 前輪タイヤ検知スライダー
BS1 大径車輪自転車
S1A 前輪タイヤ
BS2 小径車輪自転車
S2A 前輪タイヤ
S2B リム
S2C 前フォーク
S2D ハブ軸
S2N ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の前輪タイヤが左右に並設されたガイドレール部に案内されて所定部位まで押し込まれると、ロック装置が前輪タイヤをロックするように構成した自転車用駐輪装置であって、
上記ロック装置の上側部に、前進して来る上記自転車の前輪タイヤを嵌め込むことによって、当該前輪タイヤがロック装置に乗り上げて前進するオーバーランを規制することができるオーバーラン規制ガイド部を立設したことを特徴とする自転車用駐輪装置。
【請求項2】
前記オーバーラン規制ガイド部が、前進して来る前輪タイヤの前部側を嵌め込むことができるように、棒状又はパイプ状の部材を用いて逆U字状に屈曲形成され、且つ、このオーバーラン規制ガイド部の上記ロック装置から上記逆U字状に屈曲形成した上端折り返し部に至るまでの長さ寸法が、少なくとも駐輪対象とする自転車における前輪タイヤの標準直径寸法よりも短く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の自転車用駐輪装置。
【請求項3】
前進して来る前輪タイヤの前部側が嵌め込まれる前記オーバーラン規制ガイド部を構成する棒状又はパイプ状部材の間隔が、少なくとも自転車の前輪タイヤを前フォークに取付けるハブ軸の長さ、又は、このハブ軸の両端部に取付けられる締め付け用ナット間の間隔よりも狭く設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自転車用駐輪装置。
【請求項4】
左右に並設したガイドレールと、これ等左右のガイドレールの間に架設して固定されるタイヤガイド板とによって構成されるガイドレール部は、最下部の入口から斜め上方に傾斜する上昇スロープ部と、この上昇スロープ部の頂点より斜め下方に傾斜する下降スロープ部とを一体に連設した全体が略へ字状に構成されており、且つ、上記左右のガイドレールを、上記下降スロープ部の途中から斜め上方に向けて屈曲させることにより、両ガイドレールの間に前記自転車の前輪タイヤが嵌り込む連架部を構成すると共に、上記斜め上方に向けて傾斜させた左右のガイドレールの先端側を、平行間隔を保ちながら更に垂直方向に延長することによって、両ガイドレールの上端部側に逆U字状に屈曲した上端折り返し部を備えたオーバーラン規制ガイド部を一体的に連設して、少なくともこのオーバーラン規制ガイド部の下側で、且つ、上記下降スロープの終端部近傍には、前記ロック装置を仰向けに傾斜させて設けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の自転車用駐輪装置。
【請求項5】
前記ロック装置を、中央部の前面に自転車の前輪タイヤが嵌め込まれる嵌合溝を凹設したケース体と、このケース体の内部に、左右から上記嵌合溝に嵌め込まれた前輪タイヤの一部を挟み込んだ状態にロックできるように取付けられた一対の鉤型アーム体と、上記嵌合溝内に嵌め込まれた前輪タイヤに押されると、上記一対の鉤型アーム体を挟み作動する前輪タイヤ検知体とによって構成する一方、前記左右のガイドレールの一部を、上記ケース体における上記嵌込溝を挟んだ左右両側部分に対して上下方向に挿通して固定せしめたことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の自転車用駐輪装置。
【請求項6】
前記ロック装置を、前記自転車の前輪タイヤがガイドレールに案内されて所定部位まで押し込まれた位置と、前輪タイヤがロック装置に乗り上げて前記オーバーラン規制ガイド部に規制された位置の、いずれの位置に押し込まれた場合であっても、前輪タイヤが前記前輪タイヤ検知体を押して、前記一対の鉤型アーム体が前輪タイヤのリム内側を挟み込んでロックすることができる高さ位置に仰向けに傾斜させて設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の自転車用駐輪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−30662(P2008−30662A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207660(P2006−207660)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)