説明

自閉式引き戸

【課題】風の強い日に出入りする場合、スライドクローザーによって自動的に閉じ動作す
る引き戸本体が風圧によって面外方向に撓み変形しても、引き戸本体が閉じ位置まで復帰
することによって、撓み変形を修正できるようにした自閉式引き戸を容易かつ安価に実現
する。
【解決手段】自転車置場用建屋1等の外部に面する出入口2にガイドレール3で吊下げ支
持された状態に設置され、手動により開き動作し、スライドクローザー4により閉じ動作
するように構成された引き戸本体5を備え、引き戸本体の開口側縦枠11と対向する戸当
り用縦枠7に引き戸用自動施錠錠8を設けた自閉式引き戸において、戸当り用縦枠におけ
る開口側の側面で且つ上下方向中間部に、引き戸本体の開口側縦枠と嵌合する凹溝aが形
成された位置決め用嵌合部材19を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車置場用建屋の出入口あるいは障碍者施設、高齢者施設などの玄関引き
戸にガイドレールで吊下げ支持された状態に設置され、手動により開き動作し、スライド
クローザーにより閉じ動作するように構成された引き戸本体を備え、引き戸本体の開口側
縦枠と対向する戸当り用縦枠に引き戸用自動施錠錠を設けた自閉式引き戸に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自転車置場の自閉式引き戸においては、自転車を出し入れする際、自転車のハ
ンドルを一方の手で支えたまま、他方の手で引き戸本体を開き動作するのが普通であり、
それ故、片手で軽く開けられるようにすることが要求される。また、引き戸本体の閉じ動
作がスライドクローザーによって自動的に行われるから、引き戸本体が大重量物であると
、戸当り用縦枠と引き戸本体の開口側縦枠との間に手指などを挟まれたとき、怪我をする
虞があり、安全面で問題がある。また、障碍者施設等では、車イスにより引き戸を開き動
作する場合に同様の安全面での問題がある。
【0003】
そのため、この種の自転車置場等の自閉式引き戸においては、引き戸本体の面板や四周
の枠材として、アルミパンチングメタルやアルミ押出成形品のような軽量な部材を使用す
ることにより、引き戸本体の軽量化が図られている。
【0004】
しかしながら、引き戸本体の構成部材としてアルミパンチングメタルやアルミ押出成形
品のような軽量な部材を使用した従来の自転車置場等の外部に面する出入口の自閉式引き
戸では、次のような問題点が指摘されていた。
【0005】
即ち、引き戸本体の軽量化に伴い、引き戸本体の剛性が低くなっているので、風の強い
日に自転車を出し入れすると、引き戸本体がスライドクローザーによって自動的に閉じ動
作する際、風圧によって面外方向に撓み変形したまま、閉じ位置に向けて復帰することに
なる。その結果、戸当り用縦枠に設けられた引き戸用自動施錠錠のデッドボルトと、引き
戸本体の開口側縦枠に設けられたストライクの位置がずれてしまい、施錠されないことが
ある。
【0006】
この状態でも、引き戸本体の把手を面外方向に押すか引くかして、引き戸本体の撓み変
形を修正することで、デッドボルトとストライクの位置を合致させ、施錠することは可能
であるが、集合住宅の自転車置場のように多くの住民に共用される自転車置場では、全て
の住民が確実に施錠してくれるとは限られず、不完全な施錠が種々のトラブルの原因とも
なり得る。障碍者施設等でも、全ての施設利用者が確実に施錠してくれるとは限らず、同
様の問題が生じる。
【0007】
尚、住宅の屋内の引き戸を対象とする公知技術ではあるが、特許文献1には、引き戸の
開口側縦枠と対向する戸当り側縦枠に、引き戸の幅(厚み)よりも若干広い凹溝を形成し
ておき、引き戸を閉めたとき、引き戸の側端部が凹溝に嵌まり込むようにした構成が記載
されている。しかし、この公知技術は、引き戸を閉めたとき、引き戸の側端部が凹溝に嵌
まり込むことによって、隣接する部屋等からの光を遮断するようにしたものであるから、
凹溝は、戸当り側縦枠の上下方向全長にわたって設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−296366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題点を踏まえてなされたものであって、その目的とするところは
、風の強い日に出入りする場合、スライドクローザーによって自動的に閉じ動作する引き
戸本体が風圧によって面外方向に撓み変形しても、引き戸本体が閉じ位置まで復帰するこ
とによって、引き戸本体の撓み変形を修正できるようにした自閉式引き戸を容易かつ安価
に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、
請求項1に記載の発明は、建屋の外部に面する出入口にガイドレールで吊下げ支持された
状態に設置され、手動により開き動作し、スライドクローザーにより閉じ動作するように
構成された引き戸本体を備え、引き戸本体の開口側縦枠と対向する戸当り用縦枠に引き戸
用自動施錠錠を設けた自閉式引き戸であって、前記戸当り用縦枠における開口側の側面で
且つ上下方向中間部に、引き戸本体の開口側縦枠と嵌合する凹溝が形成された位置決め用
嵌合部材を取り付けてあることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自閉式引き戸であって、位置決め用嵌合部
材の下端が出入口の床面より上方に位置することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の自閉式引き戸であって、位置決め用
嵌合部材が引き戸用自動施錠錠とは位置を上下方向にずらして取り付けられていることを
特徴している。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の自閉式引き戸であって、凹溝
の底部にクッション材が貼着されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、戸当り用縦枠における開口側の側面で且つ上下方向中
間部に、引き戸本体の開口側縦枠と嵌合する凹溝が形成された位置決め用嵌合部材を取り
付けてあるので、風の強い日に自転車置場に自転車を出し入れする場合、スライドクロー
ザーによって自動的に閉じ動作する引き戸本体が風圧によって面外方向に撓み変形しても
、引き戸本体が閉じ位置まで復帰することによって、引き戸本体の撓み変形を修正でき、
戸当り用縦枠に設けた引き戸用自動施錠錠の施錠が確実に行われることになる。
【0015】
即ち、風圧による引き戸本体の面外方向への撓み変形量は、引き戸本体の上下方向中間
部が最も大きいが、引き戸本体の上下方向中間部が戸当り用縦枠の上下方向中間部に取り
付けられている位置決め用嵌合部材の凹溝に嵌り込むことにより、凹溝内側面による案内
作用ないしは位置決め作用が発揮されることによって、引き戸本体引き戸本体の撓み変形
が修正され、引き戸用自動施錠錠のデッドボルトとストライクの位置を合致させて、施錠
することができる。
【0016】
また、戸当り用縦枠の側面に位置決め用嵌合部材を取り付けることにより、風圧による
引き戸本体の面外方向への撓み変形を修正する構造であるため、戸当り用縦枠の側面に直
接、凹溝を加工する場合のように、必要のない位置まで、つまり、風圧による面外方向へ
の撓み変形が生じない引き戸本体の上端部や下端部に対向する位置まで、凹溝を形成する
必要がなく、必要最小限の部材追加により、容易且つ安価に実施でき、位置決め用嵌合部
材を有しない既存の自転車置場の自閉式引き戸にも適用が可能である。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、位置決め用嵌合部材の下端が出入口の床面より上方に
位置するので、出入口の床面を掃除する際、位置決め用嵌合部材が邪魔にならず、位置決
め用嵌合部材の凹溝に塵が溜まる虞もない。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、位置決め用嵌合部材が引き戸用自動施錠錠とは位置を
上下方向にずらして取り付けられているので、凹溝の底部に引き戸用自動施錠錠のデッド
ボルトの通過を許容するための貫通孔を加工する必要がなく、位置決め用嵌合部材の形状
の単純化され、位置決め用嵌合部材の製作が容易である。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、凹溝の底部にクッション材が貼着されているので、位
置決め用嵌合部材と引き戸本体との衝突の衝撃を吸収緩和でき、位置決め用嵌合部材の追
加による騒音発生を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る自転車置場の自閉式引き戸を内部側から見た正面図である。
【図2】要部の縦断側面図である。
【図3】要部の横断平面図である。
【図4】要部を拡大して示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は、本発明に係る自転
車置場の自閉式引き戸Aの一例を示す。この自閉式引き戸Aは、自転車置場用建屋1の出
入口2にガイドレール3で吊下げ支持された状態に設置され、手動により開き動作し、既
知構造のスライドクローザー4により閉じ動作するように構成された引き戸本体5を備え
、引き戸本体5の開口側縦枠6と対向する戸当り用縦枠7に既知構造の引き戸用自動施錠
錠8を設けたものである。引き戸用自動施錠錠8は、内外両側から操作可能なレバー8a
、8bにより開錠が可能なキーレス方式となっている。
【0022】
9は引き戸本体5の上端部に軸支され、ガイドレール3上を転動するコロである。10
は床面Fに設けた溝状のガイドレールであり、引き戸本体5の下端部をスライド自在に案
内し、面外方向への移動(振れ)を防止している。引き戸本体5は、開口側縦枠6、反対
側縦枠11、上枠12、下枠13、中桟14、面板としてのアルミパンチングメタル15
等で構成されている。開口側縦枠6、反対側縦枠11、上枠12、下枠13、中桟14と
しては、内側をステンレスで補強したアルミ押出成形品が使用されている。5a、5bは
引き戸本体5の把手である。5c、5dは引き戸本体5の開口側縦枠6と反対側縦枠11
に取り付けたクッション材である。16は戸当りゴム、17はシーリング材、18はその
バックアップ材である。
【0023】
前記戸当り用縦枠7には、開口側の側面で且つ上下方向中間部に、引き戸本体5の開口
側縦枠11と嵌合する凹溝aが形成された位置決め用嵌合部材19が皿ビス20により取
り付けられている。位置決め用嵌合部材19は、引き戸用自動施錠錠8を中心として上下
方向に延設して取り付けられており、位置決め用嵌合部材19の下端は出入口2の床面F
より上方に位置している。21は、凹溝aの底部に貼着されたゴム板等のクッション材で
ある。
【0024】
図示の位置決め用嵌合部材19は、戸当り用縦枠7の側面に当接させて皿ビス20で取
り付ける底板部と、その幅方向内端から立ち上がった後、外側へ二つ折りした第一の立上
り板部と、底板部の幅方向外端から斜めに立ち上がった後、外側に折れ曲り、さらに戸当
り用縦枠7の側面と当接する位置まで略直角に折り返された第二の立上り板部とで構成さ
れている。第一の立上り板部と第二の立上り板部の間が前記凹溝aに形成されており、凹
溝aは外拡がりとされ、引き戸本体5に面外方向への撓み変形があっても、引き戸本体5
が閉じ位置まで復帰することにより、溝aの両内側面による案内作用ないしは位置決め作
用が発揮され、引き戸本体5の撓み変形が修正され、引き戸用自動施錠錠8のデッドボル
ト(図示せず)とストライク(図示せず)の位置が合致するように構成されている。第二
の立上り板部は、引き戸用自動施錠錠8を外部からバール等を差し込み、こじ開ける等の
行為を防止する防犯ガードを兼ねている。
【0025】
上記の構成によれば、戸当り用縦枠7における開口側の側面で且つ上下方向中間部に、
引き戸本体5の開口側縦枠11と嵌合する凹溝aが形成された位置決め用嵌合部材19を
取り付けてあるので、風の強い日に自転車置場に自転車を出し入れする場合、スライドク
ローザー4によって自動的に閉じ動作する引き戸本体5が風圧によって面外方向に撓み変
形しても、引き戸本体5が閉じ位置まで復帰することによって、引き戸本体5の撓み変形
を修正でき、戸当り用縦枠7に設けた引き戸用自動施錠錠8の施錠が確実に行われること
になる。
【0026】
即ち、風圧による引き戸本体5の面外方向への撓み変形量は、引き戸本体5の上下方向
中間部が最も大きいが、引き戸本体5の上下方向中間部が戸当り用縦枠11の上下方向中
間部に取り付けられている位置決め用嵌合部材19の凹溝aに嵌り込むことにより、凹溝
a内側面による案内作用ないしは位置決め作用が発揮されることによって、引き戸本体5
の撓み変形が修正され、引き戸用自動施錠錠8のデッドボルトとストライクの位置を合致
させて、施錠することができる。
【0027】
また、戸当り用縦枠7の側面に位置決め用嵌合部材19をビス止めすることにより、風
圧による引き戸本体5の面外方向への撓み変形を修正する構造であるため、戸当り用縦枠
7の側面に直接、凹溝を加工する場合のように、必要のない位置まで、つまり、風圧によ
る面外方向への撓み変形が生じない引き戸本体5の上端部や下端部に対向する位置まで、
凹溝を形成する必要がなく、必要最小限の部材追加により、容易且つ安価に実施でき、位
置決め用嵌合部材19を有しない既存の自転車置場の自閉式引き戸にも適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 自転車置場用建屋
2 出入口
3 ガイドレール
4 スライドクローザー
5 引き戸本体
5a、5b 把手
5c、5d クッション材
6 開口側縦枠
7 戸当り用縦枠
8 引き戸用自動施錠錠
8a、8b レバー
9 コロ
10 ガイドレール
11 反対側縦枠
12 上枠
13 下枠
14 中桟
15 アルミパンチングメタル
16 戸当りゴム
17 シーリング材
18 バックアップ材
19 位置決め用嵌合部材
20 皿ビス
21 クッション材
A 自閉式引き戸
a 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の外部に面する出入口にガイドレールで吊下げ支持された状態に設置され、手動に
より開き動作し、スライドクローザーにより閉じ動作するように構成された引き戸本体を
備え、引き戸本体の開口側縦枠と対向する戸当り用縦枠に引き戸用自動施錠錠を設けた自
閉式引き戸であって、前記戸当り用縦枠における開口側の側面で且つ上下方向中間部に、
引き戸本体の開口側縦枠と嵌合する凹溝が形成された位置決め用嵌合部材を取り付けてあ
ることを特徴とする自閉式引き戸。
【請求項2】
位置決め用嵌合部材の下端が出入口の床面より上方に位置することを特徴とする請求項
1に記載の自閉式引き戸。
【請求項3】
位置決め用嵌合部材が引き戸用自動施錠錠とは位置を上下方向にずらして取り付けられ
ていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自閉式引き戸。
【請求項4】
凹溝の底部にクッション材が貼着されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに
記載の自閉式引き戸。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate