説明

自閉症圏障害の診断および処置

本発明は、特に増大した頭の大きさ(外周)および社会的行動における欠陥によって特徴づけられる自閉症圏障害のための、自閉症圏障害の診断および処置のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮出願連番61/145,294、2009年1月16日出願の35 U.S.C. § 119(e)の下での利益を請求し、その開示を、参照によって本明細書中にその全体において包含させる。
【0002】
発明の分野
本発明は、特に増大した頭の大きさ(外周)および社会的行動における欠陥によって特徴づけられる自閉症圏障害のための、自閉症圏障害の診断および処置のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
自閉症圏障害(ASD)は、高度に遺伝性であって、兄弟において2〜3%の再発率であり、一卵性双生児において60〜90%の一致率である。しかし、既知の遺伝的原因−例えば単一の遺伝子障害、例えば脆弱Xもしくは結節性硬化症、または染色体異常−は、ASD症例の約10%を占める。したがって、ASDの症例の大多数は、現在原因不明である。現在の推定は、ASD感受性が、互いに別の遺伝子と、および環境的要因と相互作用する多数の遺伝子によって付与されることである。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
PTENおよび/またはSLC6A4についてヘテロ接合性のマウスを用いて行った実験に基づいて、本出願人らは、これらの遺伝子およびそれらの発現産物が自閉症圏障害についてのバイオマーカーであることを決定した。PTENおよび/またはSLC6A4の発現産物の生化学的相互作用に基づいて、本出願人は、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤が、予想外にもヒトASD療法の実行可能な候補であることを決定した。
【0005】
自閉症圏障害(ASD)についての、特に増大した頭の大きさ(外周)および社会的行動における欠陥によって特徴づけられるASDについてのバイオマーカーを提供する。バイオマーカーは、PTENの低減した発現もしくは機能(PTEN欠乏)をもたらす遺伝的または後成的変化(epigenetic variations)、および/またはSLC6A4の低減した発現もしくは機能(SLC6A4欠乏)をもたらす遺伝的または後成的変化である。バイオマーカーとして用いることができる後成的変化の例は、PTEN転写を抑制する作用を奏するTGF−ベータの上方調節およびPTENを抑制するアラキドン酸への露出をもたらす炎症を含む(Covey et al., Oncogene. 26(39):578457-92, 2007を参照)。ASDについての追加のバイオマーカーは、上昇した循環セロトニン濃度である。
【0006】
ASDを処置する方法もまた提供する。いくつかの態様において、当該処置方法は、脳セロトニンの利用能を低減させることを含む。特定の態様において、SLC6A4のアゴニストを用いて、脳セロトニンの利用能を低減させる。他の態様において、当該処置方法は、PI3キナーゼ経路の活性化を低減させるか、またはセロトニン受容体タイプ5−HT2c経路を阻害することを含む。特定の態様において、ASDは、以下の1つまたは2つ以上によって特徴づけられる:PTEN欠乏、SLC6A4欠乏、頭の大きさ(外周)の増大、増大した循環セロトニン。
【0007】
本発明の1つの側面において、自閉症圏障害を処置するための方法を提供する。当該方法は、かかる処置を必要とする対象に、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤である1種または2種以上の治療的分子を投与することを含む。いくつかの態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤は、対象を処置するのに有効な量における、(1)5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt、mTOR、Crebおよび/もしくはNF−カッパBのアンタゴニストもしくは阻害剤、ならびに/または(2)GSK−3ベータの活性化剤のアゴニストである。
【0008】
いくつかの態様において、5−HT2c受容体のアンタゴニストまたは阻害剤、好ましくは脳の中へ通過することができるアンタゴニストまたは阻害剤を投与する。特定の態様において、5−HT2c受容体のアンタゴニストまたは阻害剤は、SB242084である。いくつかの態様において、投与するSB 242084の用量は、約0.1〜1mg/kg/日である。他の態様において、投与するSB 242084の用量は、約1〜10mg/kg/日である。尚他の態様において、SB 242084を、約0.1〜10mg/kgの用量にて間欠的に投与する。
【0009】
いくつかの態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤は、非定型抗精神病薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)またはPPAR−ガンマアゴニストとしては市販されていない(本出願の出願日現在)。特定の態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤は、リスペリドン、オランザピン、ジプラシドン、フルオキセチンまたはチアゾリジンジオンではない。
【0010】
いくつかの態様において、PI3Kのアンタゴニストまたは阻害剤、好ましくは脳の中へ通過することができるアンタゴニストまたは阻害剤を投与する。特定の態様において、PI3Kのアンタゴニストまたは阻害剤は、スニチニブ(SUTENT(登録商標))である。
いくつかの態様において、Aktのアンタゴニストまたは阻害剤、好ましくは脳の中へ通過することができるアンタゴニストまたは阻害剤を投与する。特定の態様において、Aktのアンタゴニストまたは阻害剤は、クロザピンまたはNelfinavir(VIRACEPT)である。
【0011】
いくつかの態様において、mTORのアンタゴニストまたは阻害剤、好ましくは脳の中へ通過することができるアンタゴニストまたは阻害剤を投与する。特定の態様において、mTORのアンタゴニストまたは阻害剤は、ラパマイシン(シロリムス)である。
いくつかの態様において、当該方法は、Crebのアンタゴニストもしくは阻害剤、NF−カッパBのアンタゴニストもしくは阻害剤、またはGSK−3ベータの活性剤のアゴニストを投与することを含み、その各々は、好ましくは脳の中へ通過することができる。
【0012】
いくつかの態様において、対象はヒトである。
いくつかの態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、経口的に、静脈内に、筋肉内に、鼻腔内に、腹膜内に、皮下に、またはクモ膜下腔内に投与する。
【0013】
いくつかの態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、自閉症圏障害の診断後に投与する。
いくつかの態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、自閉症圏障害の診断前に予防的に投与する。
いくつかの態様において、対象は、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤での処置を他の方法で必要としている徴候を有しない。
【0014】
いくつかの態様において、当該方法はまた、対象をPTEN欠乏および/またはSLC6A4欠乏および/または増大した循環セロトニンについて試験することを含む。特定の態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、PTEN欠乏および/またはSLC6A4欠乏および/または増大した循環セロトニンが試験によって検出される場合にのみ、対象に投与する。
【0015】
いくつかの態様において、当該方法はまた、対象を大頭症(脳の過成長)および/または社会的行動における欠陥、例えば社会的相互作用における欠陥および/または社会的記憶における欠陥について試験することを含む。特定の態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、大頭症および/または社会的行動における欠陥が試験によって検出される場合にのみ、対象に投与する。
【0016】
いくつかの態様において、当該方法はまた、自閉症圏障害のための第2の治療薬を対象に投与することを含み、ここで当該第2の治療薬および5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、対象を処置するのに有効な併用量で投与する。特定の態様において、第2の治療薬は、リスペリドン、オランザピン、ジプラシドン、フルオキセチンまたはPPAR−ガンマアゴニストである。
【0017】
本発明の他の側面において、自閉症圏障害を処置する方法を提供する。当該方法は、かかる処置を必要とする対象に、5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt、mTOR、Crebおよび/もしくはNF−カッパBの発現を低減する1種もしくは2種以上の分子、ならびに/またはGSK−3ベータの発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子の有効量を投与して、対象を処置することを含む。
【0018】
いくつかの態様において、発現を低減する当該1種または2種以上の分子は、RNA干渉を誘導する1種または2種以上の分子である。特定の態様において、RNA干渉を誘導する当該1種または2種以上の分子は、1種または2種以上の低分子干渉核酸(siNA)である。いくつかの態様において、当該1種または2種以上のsiNA分子は、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および低分子ヘアピン型RNA(shRNA)分子である。
【0019】
いくつかの態様において、対象はヒトである。
いくつかの態様において、発現を低減する当該1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、経口的に、静脈内に、筋肉内に、鼻腔内に、腹膜内に、皮下に、またはクモ膜下腔内に投与する。
【0020】
いくつかの態様において、発現を低減する当該1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、自閉症圏障害の診断後に投与する。
いくつかの態様において、発現を低減する当該1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、自閉症圏障害の診断前に予防的に投与する。
いくつかの態様において、対象は、発現を低減する当該1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子での処置を他の方法で必要としている徴候を有しない。
【0021】
いくつかの態様において、当該方法はまた、対象をPTEN欠乏および/またはSLC6A4欠乏および/または増大した循環セロトニンについて試験することを含む。特定の態様において、発現を低減する当該1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、PTEN欠乏および/またはSLC6A4欠乏および/または増大した循環セロトニンが試験によって検出される場合にのみ、対象に投与する。
【0022】
いくつかの態様において、当該方法はまた、対象を大頭症(脳の過成長)および/または社会的行動における欠陥、例えば社会的相互作用における欠陥および/または社会的記憶における欠陥について試験することを含む。特定の態様において、発現を低減する当該1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、大頭症および/または社会的行動における欠陥が試験によって検出される場合にのみ、対象に投与する。
【0023】
いくつかの態様において、当該方法はまた、自閉症圏障害のための第2の治療薬を対象に投与することを含む。第2の治療薬ならびに発現を低減する当該1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、対象を処置するのに有効な併用量で投与する。特定の態様において、当該第2の治療薬は、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤である。他の態様において、当該第2の治療薬は、リスペリドン、オランザピン、ジプラシドン、フルオキセチンまたはPPAR−ガンマアゴニストである。
【0024】
本発明の他の側面において、増大した頭の大きさ(外周)および/または社会的行動における欠陥によって特徴づけられる、自閉症圏障害を診断する方法を提供する。当該方法は、対象からの生体試料を、自閉症圏障害についての1種または2種以上のバイオマーカーの存在について分析することを含む。当該1種または2種以上のバイオマーカーは、例えば(1)1もしくは2以上の突然変異もしくは後成的変化のPten遺伝子および/もしくはSlc6a4遺伝子における存在、ならびに/または(2)正常な範囲の循環セロトニン濃度に対して増大した循環セロトニン濃度である。自閉症圏障害についての当該1種または2種以上のバイオマーカーが存在することによって、対象が、増大した頭の大きさ(外周)および/または社会的行動における欠陥によって特徴づけられる自閉症圏障害を有することが示される。
【0025】
いくつかの態様において、Pten遺伝子および/またはSlc6a4遺伝子における当該1または2以上の突然変異または後成的変化の結果、PTENの低減された発現もしくは機能および/またはSLC6A4の低減された発現もしくは機能に至る。
いくつかの態様において、当該方法はまた、自閉症圏障害に関する対象の状態を示す報告を作成することを含む。
【0026】
いくつかの態様において、当該方法は、健康管理を対象に対して施す臨床医に生体試料の分析を提供することを含む。
いくつかの態様において、社会的行動における欠陥は、社会的相互作用における欠陥および/または社会的記憶における欠陥である。
【0027】
本発明のこれらのおよび他の側面、ならびに種々の利点および有用性は、本発明の詳細な説明を参照してより明らかである。本発明の各々の側面は、以下の記載によって理解される種々の態様を包含し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、Pten+/−;Slc6a4+/−マウスにおける大頭症に関する図である。
【図2】図2は、Pten+/−マウスの行動学的特徴づけに関する図である。
【図3AB】図3ABは、PtenおよびSlc6a4ハプロ不全マウスにおける社会的行動および前パルス阻害に関する図である。
【図3CD】図3CDは、PtenおよびSlc6a4ハプロ不全マウスにおける社会的行動および前パルス阻害に関する図である。
【図4A】図4Aは、遺伝子型にわたる、および遺伝子型内の脳質量と社交性との間の相関関係に関する図である。
【図4BCDE】図4BCDEは、遺伝子型にわたる、および遺伝子型内の脳質量と社交性との間の相関関係に関する図である。
【図5】図5は、5−HT2cRアンタゴニストSBに関する図である。
【図6】図6は、匂い認識および識別についての嗅覚的馴化/脱馴化アッセイは、新規な匂いへの馴化および脱馴化のパターンに関する図である。
【図7】図7は、セロトニンおよびPI3Kシグナル経路が、いかにしてSlc6a4およびPtenを介して相互作用し、脳の大きさおよび社交性に影響し得るかについてのモデルに関する図である。
【0029】
図1:Pten+/−;Slc6a4+/−マウスにおける大頭症
図1(A)雄のPten+/+;Slc6a4+/+、Pten+/−;Slc6a4+/+、Pten+/+;Slc6a4+/−およびPten+/−;Slc6a4+/−マウスからの脳の背面から見た代表的な画像。脳を、12週齢にて採集した。
図1(B)および(C) 野生型の対照と比較して、PtenおよびSlc6a4ハプロ不全マウスは、脳質量の有意な増大を示す。(B) 雌における脳質量は、Pten+/+;Slc6a4+/+、Pten+/−;Slc6a4+/+およびPten+/+;Slc6a4+/−マウスと比較して、Pten+/−;Slc6a4+/−マウスにおいて有意に増大する(F3,42=20.6;P<0.001)。n=10 Pten+/+;Slc6a4+/+、10 Pten+/−;Slc6a4+/+、10 Pten+/+;Slc6a4+/−および13 Pten+/−;Slc6a4+/−マウス。
【0030】
(C)雄における脳質量は、Pten+/−;Slc6a4+/−マウスにおいて、Pten+/+;Slc6a4+/+、Pten+/−;Slc6a4+/+およびPten+/+;Slc6a4+/−マウスと比較して有意に増大する(F3,33=30.0;P<0.001)。n=6 Pten+/+;Slc6a4+/+、6 Pten+/−;Slc6a4+/+、11 Pten+/+;Slc6a4+/−および11 Pten+/−;Slc6a4+/−マウス。 P<0.05、** P<0.01(テューキーHSD検定)。週齢は、8〜12週齢であった。動物間の体重の差異を説明するため、データを体重に対して正規化する。
【0031】
図2:Pten+/−マウスの行動学的特徴づけ
図2(A)社会的接近行動(social approach behavior)をアッセイするために用いる装置の静止画像である。社会的刺激マウスは、チャンバ1中のアクリル製のケージ中に存在し、チャンバ3中のアクリル製のケージを、対照として空のままとする。対象のマウスについて、チャンバ2においてアッセイを開始し、当該アッセイを10分間ビデオに録画し、次に各々のチャンバにおいて費やされる時間のパーセントを定量する。
【0032】
図2(B)および(C) 刺激マウスを保持するケージを含むチャンバ(チャンバ1)、空のチャンバ(チャンバ2)または刺激マウスがいないケージを含むチャンバ(チャンバ3)において費やされる時間のパーセントを示すデータ。試験したすべてのマウスは、12週齢であった。(B) 雌において、Pten+/+マウスは、チャンバ3と比較してチャンバ1についての有意に選好性(preference)を示す一方、この選好性は、Pten+/−マウスにおいては見られない。(C) 雄において、Pten+/+マウスおよびPten+/−マウスは共に、チャンバ3と比較してチャンバ1についての有意な選好性を示す。 P<0.05、チャンバ1とチャンバ3との群間比較内の分散分析(ANOVA)。各々の遺伝子型についてn=17匹の雄、12匹の雌。エラーバーは、SEMを示す。各々の群のバーにおいて、順序は以下の通りである:左側のバー=チャンバ1、中央のバー=チャンバ2、右側のバー=チャンバ3。
【0033】
図2(D) Pten+/−マウスにおける聴覚的驚愕応答の前パルス阻害。試験したすべてのマウスは、12週齢であった。Pten+/+マウスと比較して、Pten+/−マウスは、背景の上方12dBまたは16dBの前パルスにおける驚愕阻害において有意に欠陥を有する。 P<0.05、所定の前パルス強度についての遺伝子型間の分散分析比較。各々の遺伝子型についてn=12匹のマウス(6匹の雌)。各々の群のバーにおいて、順序は以下の通りである:左側のバー=Pten+/+、右側のバー=Pten+/−
【0034】
図3:PtenおよびSlc6a4ハプロ不全マウスにおける社会的行動および前パルス阻害
図3(A)8週齢の雌Pten+/+;Slc6a4+/+(n=13)、Pten+/−;Slc6a4+/+(n=13)、Pten+/+;Slc6a4+/−(n=11)およびPten+/−;Slc6a4+/−(n=13)マウスについての社会的接近のデータ。 P<0.05、チャンバ1とチャンバ3との群間比較内の分散分析。エラーバーは、SEMを示す。各々の群のバーにおいて、順序は以下の通りである:左側のバー=チャンバ1、中央のバー=チャンバ2、右側のバー=チャンバ3。
【0035】
図3(B)遺伝子型にわたる分析について接近−回避スコアとして提示したパネル(A)からの社会的接近のデータ。チャンバ1中で社会的刺激マウスについて費やされた時間は、Pten+/−;Slc6a4+/−マウスにおいて、Pten+/+;Slc6a4+/+、Pten+/−;Slc6a4+/+およびPten+/+;Slc6a4+/−マウスと比較して有意に減少する(F3,49=25.3;P<0.001)。 P<0.05、** P<0.01(テューキーHSD検定)。
【0036】
図3(C)8週齢の雄マウスについての社会的接近および認知データ。試行1の間に、刺激マウス(チャンバ1中に配置した)および対象マウスを、10分間相互作用させた。次に、これらを30分間分離した。次に試行2を行い、その間対象マウスおよび刺激マウスを、5分間相互作用させた。Pten+/+;Slc6a4+/+(n=12)、Pten+/−;Slc6a4+/+(n=10)、Pten+/+;Slc6a4+/−(n=8)およびPten+/−;Slc6a4+/−(n=8)マウス。 P<0.05、チャンバ1とチャンバ3との群間比較内の分散分析。エラーバーは、SEMを示す。各々の群のバーにおいて、順序は以下の通りである:左側のバー=チャンバ1、中央のバー=チャンバ2、右側のバー=チャンバ3。
【0037】
図3(D)8週齢のPten+/−;Slc6a4+/−マウスにおける聴覚的驚愕応答の前パルス阻害。Pten+/−;Slc6a4+/+およびPten+/−;Slc6a4+/−マウスは、背景の上方16dBの前パルスにおける驚愕阻害において有意の欠陥を有する(F3,46=3.6;P<0.05)。 P<0.05(テューキーHSD検定)。n=11 Pten+/+;Slc6a4+/+(8匹の雌)、10 Pten+/−;Slc6a4+/+(7匹の雌)、13 Pten+/+;Slc6a4+/−(7匹の雌)および13 Pten+/−;Slc6a4+/−(9匹の雌)マウス。
【0038】
図4:遺伝子型にわたる、および遺伝子型内の脳質量と社交性との間の相関関係
図4(A)8週齢の雌Pten+/+;Slc6a4+/+(n=7)、Pten+/−;Slc6a4+/+(n=8)、Pten+/+;Slc6a4+/−(n=10)およびPten+/−;Slc6a4+/−(n=11)マウスについての、脳質量(体重に対して正規化した)(X軸)および社会的接近−回避スコア(Y軸)についての母平均のプロット。r=−0.98。
【0039】
(B〜E)脳質量(体重に対して正規化した)(X軸)および社会的接近−回避スコア(Y軸)についてプロットした、遺伝子型によって配置したパネル(A)からの個別の対象。
図4(B)Pten+/+;Slc6a4+/+:r=0.77;P<0.05(rからPへの換算)。
図4(C)Pten+/−;Slc6a4+/+:r=0.70;P<0.05
図4(D)Pten+/+;Slc6a4+/−:r=0.60;P=0.07
図4(E)Pten+/−;Slc6a4+/−:r=0.65;P<0.05
【0040】
群の大きさは、社会的接近についてアッセイしたすべての動物を脳質量について測定したわけではないため、図3A〜Bにおいて報告したものと異なる。
【0041】
図5:5−HT2cRアンタゴニストSB 242084のPtenハプロ不全マウスにおける社会的接近行動に対する効果。
試験したマウスは、8週齢の雌の同腹仔であった。アッセイの開始の20分前に、マウスに0.3mg/kgのSB 242084またはビヒクルのIP注射を施与した。社会的刺激マウスをチャンバ1中に配置し、同一の空のおりをチャンバ3中に配置した。対象のマウスが刺激マウスと相互作用することに費やされた時間のパーセントを、10分にわたり定量した。SB 242084で処理したPtenハプロ不全マウスは、刺激マウスと相互作用することについて有意に選好性を示し、対照的に、ビヒクルで処理したこの遺伝子型のマウスとはこの選好性を示さない。ビヒクルで処理した群について、n=6;SB 242084で処理した群について、n=8。 P<0.05、チャンバ1とチャンバ3との群間比較内の分散分析。各々の群のバーにおいて、順序は以下の通りである:左側のバー=チャンバ1、中央のバー=チャンバ2、右側のバー=チャンバ3。
【0042】
図6:匂い認識および識別についての嗅覚的馴化/脱馴化アッセイは、新規な匂いへの馴化および脱馴化のパターンがPtenおよびSlc6a4ハプロ不全マウスにおいて不変であることを示す。各々の時点についての遺伝子型間の差異は、分散分析によって有意ではない。動物を、6〜9週齢にて試験した。n=10 Pten+/+;Slc6a4+/+(8匹の雌)、10 Pten+/−;Slc6a4+/+(8匹の雌)、9 Pten+/+;Slc6a4+/−(4匹の雌)、9 Pten+/−;Slc6a4+/−(4匹の雌)。
【0043】
図7:セロトニンおよびPI3Kシグナル経路が、いかにしてSlc6a4およびPtenを介して相互作用し、脳の大きさおよび社交性に影響し得るかについてのモデル。Slc6a4は、セロトニン受容体に対して利用可能な細胞外セロトニン(5−HT)の量に影響する。Ptenは、5−HT2C受容体と結合し、その機能に拮抗する。セロトニンシグナリングはまた、PI3K経路を活性化することができる。提唱された下流のエフェクターは、mTOR、GSK−3ベータ、CrebおよびNF−カッパBを含み、そのすべては、脳形態形成、成長および神経機能に影響することが可能である。
【0044】
図面は例示的であるに過ぎず、本発明の実施可能性のためには必要ではないことを理解すべきである。
【0045】
発明の詳細な説明
病識を特発性自閉症に付与する2種の遺伝子は、PTENおよびSLC6A4である。PTENは、PI3キナーゼ(PI3K)経路(1)の負のレギュレーターとして作用する。ヘテロ接合性PTEN突然変異は、自閉症および大頭症を有する個体の部分集合において確認され、したがって罹患した個体PTENをハプロ不全とした(2〜5)。PTENハプロ不全個体における認知障害の臨床表現型提示は、変化する。したがって、PTEN突然変異を保因する自閉症圏障害(ASD)を有する個体は、ASD臨床表現型の第2の部位の遺伝子の修飾因子についてスクリーニングする感作群を表し得ることが示唆された(4)。
【0046】
SLC6A4は、この神経伝達物質の細胞外濃度に影響するセロトニンの膜結合トランスポーターをコードする。SLC6A4は、ASDにおけるASD候補感受性遺伝子および第2部位の遺伝的修飾因子の両方として関係した(6、7)。脳の過成長(8)および重篤な社会的行動障害(9)は、低発現Slc6a4プロモーター多型性対立遺伝子を保因するASDを有する個体において報告された。さらに、SLC6A4は、細胞外セロトニン濃度を調節し、ASDにおける末梢性バイオマーカーの最も複製された報告の1つは、ASD(6)を有する個体中の細胞外セロトニンの増大した濃度である。ELISAアッセイおよび同様の免疫吸着アッセイを用いて、循環セロトニン濃度をアッセイすることができる。ASDと関連していたセロトニンの濃度は、対照の(非ASD)母平均を上回る≧2の標準偏差である。
【0047】
ASDへのそれらの関係がある場合には、PTENおよびSLC6A4は共に、両方の遺伝子が多面発現性(pleiotropic)であり、これと共に発現および機能がCNSの外側にある点で、潜在的な末梢性バイオマーカーである。しかし、これらのマーカーの発現の変化したレベルの影響を、生物学的および行動学的尺度に対して立証する必要がある。セロトニン経路(ここでSlc6a4が作用する)がPI3K経路(これに対してPtenが作用する)と脳において交差することを示唆する証拠がある。Ptenとセロトニン受容体5−HT2cとの間の物理的相互作用、これと共にこの受容体の活性を調節するPtenのホスファターゼ活性についての証拠が、見出された(10)。さらに、神経細胞および非神経性細胞におけるいくつかの研究によって、Aktがセロトニン受容体アゴニストによって活性化され、この活性化がPI3K依存的な様式で発生することが例証された((11)において概説されている)。しかし、セロトニンおよびPI3K経路が、共にASDの病因において強度に関係する一方、ASD関連の生物学的および行動学的表現型についてのこれらの相互作用の重要性は、現在明白ではない。
【0048】
部分集合がASDを有するカウデン病患者において、PTENにおけるミスセンス変異は、エクソン5の中心的な触媒ホスファターゼドメインにおいてクラスター化する傾向があり、これらは、タンパク質のホスファターゼ機能を不活性化する傾向がある(12)。これらの遺伝子病変に近似するマウスモデルとして、本発明者らは、以前に産生したPten変異体株であって、エクソン5、したがって中心的な触媒ホスファターゼドメインが欠失したものを用いた(13)。この変異体対立遺伝子についてホモ接合性のマウスは、生存可能ではない;しかし、この対立遺伝子についてヘテロ接合性のマウスは、成人期になるまで生存し、したがって、脳構造および機能に対してPtenハプロ不全性の発達上の結果を調査するための、ならびにかかる表現型の第2部位の遺伝的および環境的修飾因子についてスクリーニングするのに耐えうるツールとする。
【0049】
PTENに加えて、PI3キナーゼ経路の他のリプレッサーにおける突然変異はまた、ASD、特に結節性硬化症遺伝子TSC1およびTSC2(14)、ならびにニューロフィブロミン1(15、16)と関連していた。したがって、Ptenハプロ不全マウスは、ASD候補遺伝子中で豊富化されるシグナル経路、即ちPI3キナーゼ経路が感作される一般的に有用な手段を表す。これらのマウスはまた、自閉症に関連する脳の大きさおよび行動学的尺度への影響において、遺伝子−環境相互作用のより広い問題を調査する機会を提供する。
【0050】
これらの観察に基づいて、本発明者らは、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤が、予想外にPtenハプロ不全マウスにおける機能を回復し、したがって、自閉症圏障害療法として有用であることを決定した。
【0051】
したがって、本発明は、いくつかの側面において、有効量の5 HT2c受容体シグナル経路の1種または2種以上のアンタゴニストまたは阻害剤を、自閉症圏障害を有するかまたは自閉症圏障害を有すると考えられる対象に投与して、対象を処置することを含む。用語「処置」または「処置する」は、状態の予防、寛解、防止または治癒を含むことを意図する。状態の後の処置は、状態および/もしくはその関連する徴候の1種もしくは2種以上を低減、寛解もしくは完全に解消するか、またはそれがより悪化するのを防止する、述べた目的を有する。状態前の対象の処置は、当該状態に罹患する危険を低減し、かつ/または当該状態に後に罹患した場合にその重篤度を低下させる、開始された(即ち予防的処置)目的を有する。
【0052】
本明細書中で用いる用語「防止する」は、処置が、対象が病気の状態に罹患する可能性の低減をもたらすか、または状態が、処置が欠如していたときより重篤でない可能性の増大をもたらす、病気の状態に罹患する危険にある対象の予防的処置を指す。処置によって、本発明に従って本明細書中に記載したようにして処置していない対象と比較して、病気の状態を有する対象の、その状態および/またはその関連する徴候の1種もしくは2種以上が低減、寛解もしくは完全に解消されるか、または、それがより悪化するのが防止され得る。
【0053】
「対象」とは、ヒトまたは、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、齧歯動物、例えばラットおよびマウス、ならびに霊長類、例えばサルを含むがこれらには限定されない動物を意味する。好ましい対象は、ヒト対象である。ヒト対象は、小児科的対象、成人対象または高齢者対象であり得る。
【0054】
対象が、かかる療法の影響を受けやすい特定の自閉症圏障害を有することを知ることができ、またはかかる障害を有すると考えることができる。いくつかの態様において、対象は、他の方法で5 HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤での処置を必要とする徴候を有しない。
【0055】
自閉症圏障害(ASD)は、単一の、および複合の多重遺伝子病因を共に有する臨床的に診断される障害である。コミュニケーション能力、社会的相互作用および行動の制限された、反復的な、かつ型にはまったパターンにおける様々な程度の障害によって特徴づけられる自閉症圏障害は、自閉症、PDD−NOS(他に特定しない広汎性発達障害)、アスペルガー症候群、レット症候群および小児期崩壊性障害を含む(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM-IVを参照)。
【0056】
対象の社会的およびコミュニケーション的発達を評価するための数種の検診機器が、当該分野において知られており、したがって自閉症圏障害についての検診およびその診断における補助として用いることができる。これらは、Checklist of Autism in Toddlers(CHAT)、the modified Checklist for Autism in Toddlers(M−CHAT)、the Screening Tool for Autism in Two-Year-Olds(STAT)、the Social Communication Questionnaire(SCQ)(4歳およびそれより年長の小児向け)、the Autism Spectrum Screening Questionnaire(ASSQ)、the Australian Scale for Asperger’s Syndromeならびにthe Childhood Asperger Syndrome Test(CAST)を含む。
【0057】
典型的に、診断評価は、神経学的および遺伝的アセスメントを、徹底的な認識および言語試験と共に含むことができる。特に自閉症を診断するために開発された追加的な尺度は、the Autism Diagnosis Interview-Revised(ADI−R)、the Autism Diagnostic Observation Schedule(ADOS−G)およびthe Childhood Autism Rating Scale(CARS)を含む。
【0058】
本明細書中に記載した方法は、自閉症圏障害に加えて他の障害へのより広い適用を有する。当該方法をまた、双極性障害、統合失調症、強迫性障害ならびに種々の関連する人格障害および気分障害の処置のために用いることができる。
【0059】
本明細書中に記載したように、自閉症圏障害を、5−HT2c(セロトニン)受容体経路のアンタゴニストまたは阻害剤で処置し、それは、本明細書中で同等に、個別にアンタゴニストまたは阻害剤のいずれかと称され得る。本明細書中で用いる「5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤」は、5−HT2c受容体シグナル経路またはPI3Kシグナル経路の生物活性を部分的にまたは完全に遮断、阻害または中和するすべての分子である。かかるアンタゴニストまたは阻害剤は、5−HT2c受容体シグナル経路またはPI3Kシグナル経路の個別のポリペプチドに対して、個別のポリペプチドの活性を低減するかまたは増大させる方式で作用し得、効果は、5−HT2c受容体シグナル経路またはPI3Kシグナル経路を介してのシグナリングの拮抗作用または阻害である。
【0060】
例えば、5−HT2c受容体シグナル経路またはPI3Kシグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤は、(1)5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt(プロテインキナーゼB/PKB)、mTOR、CrebもしくはNF−カッパBのアンタゴニストもしくは阻害剤、または(2)GSK−3ベータのアゴニストもしくはアクチベーターであり得る。アンタゴニストまたは阻害剤はまた、インバースアゴニスト、例えば5−HT2c受容体シグナル経路のポリペプチドにて負の有効性を有する分子、例えば5−HT2c受容体であり得る。5−HT2c受容体シグナル経路の図式的描写について、図7を参照されたい。
【0061】
5−HT2cの活性化(阻害)がPI3Kシグナル経路の重要なアクチベーター(阻害剤)である一方、この経路は、図7に示すよりも多くの要素を含むことが、当該分野において知られている。PI3Kシグナル経路の追加のアクチベーターは、IGF1受容体のIGF1活性化である。したがって、IGF1および関連する分子を、本明細書中に記載した方式で、自閉症圏障害、より特定的には本明細書中で同定した自閉症圏障害の部分集合の処置のために用いることができる。好適なIGF1および関連する治療的分子は、WO 2008/153929(その開示を本明細書中に参照によって包含する)、例えば12〜17頁に記載されている。
【0062】
追加の態様において、PPAR−ガンマアゴニスト(例えばロシグリタゾン(Avandia)、ピオグリタゾン(Actos)、トログリタゾン(Rezulin)、MCC−555、リボグリタゾンおよびシグリタゾンを含むチアゾリジンジオン(TZD))を、本明細書中に記載した方法において用いて(特に本明細書中で同定したASDの部分集合についての一次療法として、または二次療法として)、かかる分子がPTENの転写的上方調節によってPI3K経路と拮抗する場合に、PTENまたはSLC6A4欠乏を有する個体を処置することができる(例えばZhang et al., Cancer Biol Ther. 2006. (8):1008-14; Teresi et al., Int J Cancer. 2006. 118(10):2390-8; Patel et al., Curr Biol. 2001. 11(10):764-8を参照)。
【0063】
好適なアンタゴニストまたは阻害剤は、小分子(特に有機小分子)、アンタゴニスト抗体またはその抗原結合断片、5−HT2c受容体シグナル経路の固有の構成要素の断片またはアミノ酸配列バリアント、ペプチド、RNA干渉を誘導して5−HT2c受容体シグナル経路のポリペプチドの発現を低減する核酸、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどを含む。アンタゴニストまたは阻害剤を同定するための方法は、5−HT2c受容体シグナル経路のポリペプチドを候補分子と接触させ、通常ポリペプチドと関連する1種または2種以上の生物活性の検出可能な変化を測定することを含む。アンタゴニストまたは阻害剤を同定するための他の方法は、細胞を候補分子と接触させ、5−HT2c受容体シグナル経路のポリペプチドまたは5−HT2c受容体シグナル経路のポリペプチドをコードする核酸の発現の検出可能な変化を測定することを含む。
【0064】
5−HT2c受容体の例示的なアンタゴニストまたは阻害剤は、SB 242084(6−クロロ−5−メチル−1−[[2−(2−メチルピリド−3−イルオキシ)ピリド−5−イル]カルバモイル]インドリン)(例えばBromidge et al., J. Med. Chem. 40: 3494-3496, 1997; Kennett et al., Neuropharmacology 36: 609-620, 1997を参照);SB 243213(5−メチル−1−[[−2−[(2−メチル−3−ピリジル)オキシ]−5−ピリジル]カルバモイル]−6−トリフルオロメチルインドリン塩酸塩)(例えばWood et al., Neuropharmacology. 41(2):186-199, 2001を参照);RS 102221(N−{5−[5−(2,4−ジオキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−8−イル)ペンタノイル]−2,4−ジメトキシフェニル}−4−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホンアミド)(例えばBonhaus et al., Neuropharmacology. 36: 621-629, 1997を参照);
【0065】
SB 206553;SB 200646A;SB 221284;SB 204741;SB 228357;SB 200646;VALDOXAN(登録商標)(アゴメラチン;S 20098)(例えばLoo et al., Int Clin Psychopharmacol 2002 Sep;17(5):239-47を参照);ケタンセリン(Bonanno et al., Eur J Pharmacol 126: 317-321);リタンセリン;アザミアンセリン(azamianserine);(+)−トランス−1−(5−クロロ−3−(4−フルオロフェニル)−1−インダニル)−4−(2−(3−イソプロピル−2−イミダゾリジノン−1−イル)エチル)−ピペラジン;2,5−ジメチル−3−(4−フルオロフェニル)−1−[1−[2−(イミダゾリジン−2−オン−1−イル)エチル]−ピペリジン−4−イル]−1H−インドール;フルオキセチン;デラムシクラン;ミルタザピン;ミアンセリン;ネファゾドン;トラゾドン;YM 35992;Ro 60−0759((+)−トランス−8−エチル−7−ヒドロキシ−9−メトキシ−2−メチル−1,3,4,4a,5,10b−ヘキサヒドロベンゾ[h]イソキノリン−6(2H)−オン);
【0066】
Org 38457;Org 12962;EGIS 8465;EGIS−9933;5−HT2c受容体にて効果を有する抗精神病薬、例えばセルチンドール、オランザピンおよびリスペリドン;LY 53857;メテルゴリン;メスレルギン(mesulergine);ピレペロン(pireperone);スピロペロン;クロザピン;ダポキセチン;メチセルジド;セラザピン;Ro 60−0491(N−(2−ナフチル)−N’−(3−ピリジル)尿素 1:1 HCl、N−(2−ナフチル)−N’−(3−ピリジル)−尿素塩酸塩);S16924;シアメマジン;ナフトキサジン(naphtoxazine)(SDZ NVI−085);S32006(Dekeyne et al., Psychopharmacologia 199: 549-568, 2008)ならびにWO 96/23783、WO 97/48699、WO 97/48700、WO 2002/014273、EP1782813、Hamprecht et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 17(2):424-7 (2007)、Hamprecht et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 17(2):428-33 (2007)およびBromidge et al., Bioorg Med Chem Lett. 10(16):1867-1870 (2000)に記載されている追加のアンタゴニストまたは阻害剤分子を含む。
【0067】
以前に自閉症圏障害を処置するために有用であると記載されている数種の分子が、5−HT2c受容体シグナル経路またはPI3Kシグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤として機能し得ることを注記する。これらの分子、例えばリスペリドン、オランザピン、ジプラシドン、フルオキセチンおよびPPAR−ガンマアゴニスト(例えば本明細書中に記載した)は、本明細書中に記載した自閉症圏障害を処置する方法の特定のものにおける使用から除外される。これらの分子、例えばリスペリドン、オランザピン、ジプラシドン、フルオキセチンおよびPPAR−ガンマアゴニスト(例えば本明細書中に記載した)は、本明細書中に記載した自閉症圏障害を処置する方法の特定のものにおける使用(第2の治療的分子として以外の)から除外される。したがって特定の態様において、かかる分子を、PtenもしくはSlc6a4についてハプロ不全であるそれらのASD個体の一次処置として、および/またはすべてのASD個体の処置のための第2の治療的分子として用いる。
【0068】
特定の態様において、5−HT2c受容体アンタゴニストまたは阻害剤は、SB 242084またはRS 102221である。
【0069】
いくつかの態様において、5−HT2c受容体アンタゴニストまたは阻害剤は、5−HT2aおよび/または5−HT2b受容体に対して、5倍より高い選択性、10倍より高い選択性、20倍より高い選択性、30倍より高い選択性、40倍より高い選択性、50倍より高い選択性、60倍より高い選択性、70倍より高い選択性、20倍より高い選択性、80倍より高い選択性、90倍より高い選択性、100倍より高い選択性または150倍より高い選択性を有する。特定の態様において、5−HT2C受容体アンタゴニストまたは阻害剤は、他の5−HT、ドーパミンおよびアドレナリン受容体に対する同様の選択性を有する。
【0070】
ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)の例示的なアンタゴニストまたは阻害剤は、以下のものを含む:LY294002(2−(4−モルホリニル)−8−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン);ワートマニン;SU6668(3−[2,4−ジメチル−5−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−1H−ピロール−3−イル]−プロピオン酸);スニチニブリンゴ酸塩(SU11248、SUTENT(登録商標));ゲニステイン(4’,5,7−トリヒドロキシイソフラボン);PX−866(Ihle et al., Mol Cancer Ther, 4(9), 1349-1357, 2005);XL147(Exelixis)ならびに米国公開出願2008/0306057 A1(例えば段落[0079]および[0106]〜[0288]、特許請求の範囲および当該明細書中に引用されている公開された出願を参照)、および2008/0293706 A1(例えば段落[0493]〜[0494]および特許請求の範囲を参照)に記載されている追加のPI3Kアンタゴニスト。
【0071】
Aktはまた、プロテインキナーゼB(PKB)として知られている。Aktアンタゴニストまたは阻害剤は、Akt1、Akt2および/またはAkt3のアンタゴニストまたは阻害剤であり得る。例示的なアンタゴニストまたは阻害剤は、以下のものを含む:LY294005(1L−6−ヒドロキシメチル−キロ−イノシトール2(R)−2−O−メチル−3−O−オクタデシルカーボネート);クロザピン、ALX−349(Alexis Biochemical; San Diego, CA);VQD−002(トリシリビンリン酸塩(triciribine phosphate)一水和物、VioQuest Pharmaceuticals);ホスファチジルイノシトールエーテル脂質類似体;ネルフィナビル(VIRACEPT);Akt/プロテインキナーゼBシグナリング阻害剤−2(Yang et al., Cancer Res, 64(13), 4394-4399, 2004);ならびにWO 2006/113837、Zhu et al., Bioorg. Med Chem Lett. 16: 3150-3155 (2006)、およびLindsley et al., Current Cancer Drug Targets. 8(1): 7-18 (2008)に記載されている追加のAktアンタゴニスト。
【0072】
mTORアンタゴニストは、ラパマイシン(シロリムス);テムシロリムス(CCI−779、Wyeth; Nat Genet. 2004;36:585-95; J Clin Oncol. 2004;22:2336-47);エベロリムス(RAD001、Novartis);デフォロリムス(AP23573、ARIAD Pharmaceuticals);ゾタロリムス(ABT−578);SDZ RAD(40−O(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン);ならびにWO 2008/027013に記載されているラパマイシンプロドラッグおよび類似体を含む。
【0073】
nV−128(Novogen Limited)は、Akt-mTOR/p70s6kシグナル伝達カスケードを脱共役させる。
Crebアンタゴニスト、NF−カッパ−BアンタゴニストおよびGSK−3ベータアゴニストもまた、本明細書中に記載した処置方法において用いることができる。
すべての態様において、脳の中へ通過する(例えば血液脳関門を通る)ことができるアンタゴニストが、好ましい。
【0074】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤の種々の代替の形態、例えば本明細書中に記載した有機小分子の塩、溶媒和物または多形もまた、本明細書中に記載した自閉症圏障害を処置するために有用である。かかる代替の形態は、当業者に知られている。
【0075】
特定の態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤は、RNA干渉を誘導する分子、例えば5−HT2c受容体シグナル経路中のポリペプチドの遺伝子転写物に特異的な低分子干渉核酸(siNA)である。例えば、本明細書中で、治療方法において好適に拮抗されるかまたは阻害されると記載した遺伝子の遺伝子産物(例えば5−HT2c受容体、PI3K、Akt、mTOR、CrebおよびNF−カッパB)を、このようにして阻害することができる。siNA(1種または2種以上)は、5−HT2c受容体シグナル経路中のポリペプチドのmRNAおよびタンパク質の量を減少させ、それによって5−HT2c受容体シグナル経路を阻害する。
【0076】
低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および低分子ヘアピン型RNA(shRNA)分子を含む低分子干渉核酸(siNA)である阻害剤分子を用いて、標的遺伝子の発現を阻害する。本発明のsiNA、例えばsiRNAは、典型的に標的メッセンジャーRNA(mRNA)の標的RNA転写物切断/分解または翻訳抑制を介して遺伝子発現を調節する。1つの態様において、siRNAsを、細胞に外因的に送達する。特定の態様において、5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt(プロテインキナーゼB/PKB)、mTOR、CrebまたはNF−カッパBを特異的に標的とするsiRNA分子が、発生する。
【0077】
本発明の低分子干渉核酸(siNA)は、修飾されていないかまたは化学的に修飾され得る。本発明のsiNAを、化学的に合成するか、ベクターから発現させるか、または酵素的に合成することができる。本発明はまた、細胞中での遺伝子発現または活性をRNA干渉(RNAi)によって阻害することができる種々の化学的に修飾された合成低分子干渉核酸(siNA)分子を特徴とする。化学的に修飾されたsiNAを用いることによって、固有のsiNA分子の種々の特性が、例えばインビボでのヌクレアーゼ分解に対する増大した耐性によって、および/または改善された細胞取り込みによって改善される。さらに、複数の化学的修飾を有するsiNAは、そのRNAi活性を保持し得る。
【0078】
例えば、いくつかの場合において、siRNAを修飾して、効力、標的親和性、安全性プロフィールおよび/または安定性を変化させて、それらを細胞内分解に対して耐性であるかまたは部分的に耐性であるようにする。修飾、例えばホスホロチオエートを、例えばsiRNAに対して行って、ヌクレアーゼ分解、結合親和性および/または取り込みに対する耐性を増大させることができる。さらに、疎水性化(hydrophobization)およびバイオコンジュゲーション(bioconjugation)によって、siRNA送達およびターゲティングが増強され(De Paula et al., RNA. 13(4):431-56, 2007)、リボ−ジフルオロトルイル(ribo-difluorotoluyl)ヌクレオチドを有するsiRNAは、遺伝子サイレンシング活性を維持する(Xia et al., ASC Chem. Biol. 1(3):176-83, (2006)。
【0079】
アミドに結合したオリゴリボヌクレオシドを有するsiRNAsが産生され、それは、S1ヌクレアーゼ分解に対してより耐性である(Iwase R et al. 2006 Nucleic Acids Symp Ser 50: 175-176)。さらに、2’−糖位におけるsiRNAおよびリン酸ジエステル結合の修飾によって、改善された血清安定性が効力を失わずに付与される(Choung et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 342(3):919-26, 2006)。1つの研究において、2’−デオキシ2’−フルオロ−ベータ−D−アラビノ核酸(arabinonucleic acid)(FANA)含有アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである2’−O−メチル−RNA/DNAキメラオリゴヌクレオチドおよびsiRNAに対して、抑制効力および分解に対する耐性の点で便宜的に比較された(Ferrari N et a. 2006 Ann N Y Acad Sci 1082: 91-102)。
【0080】
いくつかの態様において、siNAは、ゲノムに組み込まれた導入遺伝子またはプラスミドに基づく発現ベクターによってコードされ、それから発現されるshRNA分子である。したがって、いくつかの態様において、遺伝子発現を阻害することができる分子は、小さな干渉核酸をコードする導入遺伝子またはプラスミドに基づく発現ベクターである。かかる導入遺伝子および発現ベクターは、ポリメラーゼIIまたはポリメラーゼIIIプロモーターのいずれかを用いて、これらのshRNAの発現を駆動し、細胞中の機能的なsiRNAをもたらすことができる。前者のポリメラーゼは、誘導可能であり、かつ組織特異的な発現システムを含む古典的なタンパク質発現ストラテジーを用いることを可能にする。
【0081】
いくつかの態様において、導入遺伝子および発現ベクターを、組織特異性プロモーターによって制御する。他の態様において、導入遺伝子および発現ベクターを、誘導型プロモーター、例えばテトラサイクリン誘導型発現システムによって制御する。哺乳動物細胞における遺伝子サイレンシングのための、かかるヘアピン型RNAを作製および使用する例は、例えば以下に記載されている(Paddison et al., Genes Dev, 2002, 16:948-58; McCaffrey et al., Nature, 2002, 418:38-9; McManus et al., RNA 2002, 8:842-50; Yu et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2002, 99:6047-52)。
【0082】
本明細書中の1つの態様は、1種または2種以上の発現ベクターを送達するための遺伝子療法、例えば、例えば5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt(プロテインキナーゼB/PKB)、mTOR、CrebまたはNF−カッパB)の発現を阻害することができる1種または2種以上の小さな干渉核酸をコードする、ウイルスに基づく遺伝子療法を用いることを予期する。本明細書中で用いる遺伝子療法は、遺伝性疾患、例えば癌を、shRNAを含む治療的遺伝子産物をコードする1種または2種以上の発現ベクターを、疾患を有する細胞に送達することによって処置することに焦点を合わせた療法である。発現ベクターの構築および送達のための方法は、当業者に知られている。
【0083】
したがって、本発明は、siRNA(shRNAなど)のインビトロでの使用、ならびに生理学的条件下でそれらの安定性および/または細胞取り込みを増大させるために修飾されたsiRNA(shRNAなど)であり得るsiRNA(shRNAなど)を含むインビボでの医薬製剤を予期し、それは、核酸コード、例えば5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt(プロテインキナーゼB/PKB)、mTOR、CrebまたはNF−カッパB)を薬学的に許容し得る担体と共に特異的に標的化する。
【0084】
特定の態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤は、アンチセンス核酸である。アンチセンス核酸は、低分子のオリゴヌクレオチドおよびより高分子の核酸を含む。好ましくは、アンチセンス核酸は、5−HT2c受容体シグナル経路中の1種または2種以上のポリペプチドのコード配列の部分または5’非翻訳配列と相補的であり、かつそれに結合し、それによって機能的なポリペプチドの翻訳を阻害する。転写を低減するかまたは遮断する他のアンチセンス核酸もまた、有用である。
【0085】
したがって、本発明は、ポリペプチド(1種または2種以上)を5−HT2c受容体シグナル経路においてコードする核酸分子に選択的に結合して、ポリペプチド(1種または2種以上)の発現(転写または翻訳)を低減するアンチセンスオリゴヌクレオチドを包含する。本明細書中で用いる「アンチセンスオリゴヌクレオチド」の用語は、5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt(プロテインキナーゼB/PKB)、mTOR、CrebまたはNF−カッパBをコードする遺伝子を含むDNAに生理学的条件下でハイブリダイズし、それによって当該遺伝子の転写および/または当該mRNAの翻訳を阻害する、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドである、オリゴヌクレオチドを記載する。
【0086】
当業者は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの正確な長さおよびその標的との相補性のその程度が、標的の配列および当該配列を含む特定の塩基を含む選択された特定の標的に依存することを認識する。アンチセンスオリゴヌクレオチドが、標的と生理学的条件下で選択的に結合する、即ち生理学的条件下で標的細胞中のすべての他の配列よりも実質的に大幅に標的配列にハイブリダイズするように構築され、配置されるのが好ましい。
【0087】
対立遺伝子の、または相同性のゲノムおよび/またはcDNA配列を含む、5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt(プロテインキナーゼB/PKB)、mTOR、CrebまたはNF−カッパB核酸の配列に基づいて、当業者は、本発明において用いるための多数の適切なアンチセンス分子をすべて容易に選択し、合成することができる。
【0088】
阻害のために十分に選択的かつ強力であるために、かかるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的と相補的である少なくとも10個、より好ましくは少なくとも15個の連続する塩基を含まなければならないが、特定の場合において、7塩基長程度の短い修飾オリゴヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチドとして成功裏にに用いられた(Wagner et al., Nature Biotechnol. 14:840-844, 1996)。最も好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、20〜30個の塩基の相補的配列を含む。
【0089】
遺伝子またはmRNA転写物のすべての領域に対するアンチセンスであるオリゴヌクレオチドを選択してもよいが、好ましい態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、N末端または5’上流部位、例えば翻訳開始、転写開始もしくはプロモーター部位に一致する。さらに、3’非翻訳領域を標的としてもよい。mRNAスプライス部位へのターゲティングはまた、当該分野において用いられてきたが、選択的mRNAスプライシングが起こる場合には、より好ましくない場合がある。さらに、アンチセンスを、好ましくは、mRNAの二次構造が期待されない(例えばSainio et al., Cell Mol. Neurobiol. 14(5):439-457, 1994を参照)、およびタンパク質が結合することが期待されない部位に対して標的とする。
【0090】
最後に、当業者は、5−HT2c受容体シグナル経路中のポリペプチド(1または2以上)と一致するcDNA配列およびゲノムDNAを、データベースおよび公開された文献から容易に導き出すことができる。したがって、本発明はまた、5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt(プロテインキナーゼB/PKB)、mTOR、CrebまたはNF−カッパBをコードする核酸と一致するゲノムDNAと相補的であるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。同様に、対立遺伝子または相同的cDNAおよびゲノムDNAに対するアンチセンスが、過度の実験を伴わずに可能になる。
【0091】
1つの組の態様において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、「天然の」デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはそのすべての組み合わせから構成してもよい。即ち、1種の未変性ヌクレオチドの5’末端および他の未変性ヌクレオチドの3’末端は、天然のシステムにおけるように、ホスホジエステルヌクレオシド間結合を介して共有結合していてもよい。これらのオリゴヌクレオチドを、手動で、または自動化された合成装置によって行ってもよく、当該分野において認識された方法によって調製してもよい。それらをまた、ベクターによって組み換えで製造してもよい。
【0092】
しかし、好ましい態様において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、「修飾」オリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。即ち、オリゴヌクレオチドを、それらがそれらの標的にハイブリダイズするのを防止せず、それらの安定性もしくはターゲティングを増強するか、または他の方法でそれらの治療的有効性を増強する多数の方法で修飾してもよい。
【0093】
本明細書中で用いる「修飾オリゴヌクレオチド」の用語は、(1)そのヌクレオチドの少なくとも2つが合成ヌクレオシド間結合(即ち1つのヌクレオチドの5’末端と他のヌクレオチドの3’末端との間のホスホジエステル結合以外の結合)を介して共有結合した、および/または(2)通常核酸と関連していない化学基がオリゴヌクレオチドに共有結合したオリゴヌクレオチドを記載する。好ましい合成ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホロアミデート、カルバメート、カーボネート、リン酸三エステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびペプチドである。
【0094】
「修飾オリゴヌクレオチド」の用語はまた、共有結合的に修飾された塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチドを包含する。例えば、修飾オリゴヌクレオチドは、3’位における水酸基以外の、および5’位におけるリン酸基以外の低分子量の有機基に共有結合する骨格糖を有するオリゴヌクレオチドを含む。したがって、修飾オリゴヌクレオチドは、2’−O−アルキル化リボース基を含んでいてもよい。さらに、修飾オリゴヌクレオチドは、糖、例えばアラビノースをリボースの代わりに含んでいてもよい。
【0095】
したがって、本発明は、アンチセンス分子のインビトロでの使用、ならびに5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt(プロテインキナーゼB/PKB)、mTOR、CrebまたはNF−カッパBをコードする核酸と生理学的条件下で相補的であり、これとハイブリダイズ可能である修飾されたアンチセンス分子を、薬理学的に許容し得る担体と共に含むインビボ医薬製剤を意図する。
【0096】
他の態様において、本発明のアンチセンス核酸を、その中に導入される発現ベクターによって細胞中での発現によって製造してもよい。適切なベクターの選択および設計は、当業者の能力および裁量内である。
【0097】
発現のためのすべての必要な要素を含む発現ベクターは、商業的に入手でき、当業者に知られている。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照。この態様において、細胞を、アンチセンス核酸をコードする異種DNA(RNA)を細胞中に導入することによって遺伝子操作する。アンチセンス核酸を、転写エレメントの作動可能な(operable)制御下に置いて、アンチセンス核酸の宿主細胞中での発現を可能にする。アンチセンス核酸の送達のための追加のベクターは、当業者に知られている。
【0098】
種々の技術を、核酸を宿主においてインビトロで導入するかインビボで導入するかに依存して、本発明に従ってアンチセンス核酸を細胞中に導入するために用いてもよい。かかる技術は、核酸−CaPO沈殿物のトランスフェクション、DEAEと関連する核酸のトランスフェクション、関連する核酸を含むウイルスでのトランスフェクションまたは感染、リポソームで媒介されたトランスフェクションなどを含む。特定の使用について、核酸を特定の細胞に対して標的するのが好ましい。
【0099】
かかる例において、本発明の核酸を細胞中に送達するために用いるビヒクル(例えばレトロウイルス、アデノウイルスまたは他のウイルス;リポソーム)は、それに付着した標的分子を有することができる。例えば、分子、例えば標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体または標的細胞上の受容体のためのリガンドを、核酸送達ビヒクルに結合するかまたはその内部に包含させることができる。リポソームを用いて本発明の核酸を送達する個所において、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質を、ターゲティングのために、および/または取り込みを促進するためにリポソーム処方物中に包含させてもよい。
【0100】
かかるタンパク質は、カプシドタンパク質または特定の細胞タイプについて向性のその断片、内部移行をサイクリングにおいて経るタンパク質のための抗体、細胞内局所化を標的し、細胞内半減期を増強するタンパク質などを含む。また、ポリマー送達系を成功に用いて、核酸を細胞中に送達し、それは当業者に知られている通りである。かかるシステムはさらに、核酸の経口的な送達を可能にする。
【0101】
特定の態様において、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤は、抗体または、ポリペプチドの触媒活性の低減をもたらすこの経路のポリペプチドに特異的に結合するその抗原結合断片である。
【0102】
本発明の抗体を、タンパク質、タンパク質の断片、タンパク質またはその断片を発現する細胞などを動物に投与して、ポリクローナル抗体を誘導することを含むすべての種々の方法によって作製する。モノクローナル抗体の作製を、当該分野において周知の手法によって行う。抗体分子の小さい部分、即ちパラトープのみが抗体をそのエピトープに結合させることに関与することは、当該分野において周知である(一般的に、Clark, W.R., 1986, The Experimental Foundations of Modern Immunology, Wiley & Sons, Inc., New York; Roitt, I., 1991, Essential Immunology, 第7版、Blackwell Scientific Publications, Oxfordを参照)。
【0103】
pFc’およびFc領域は、例えば、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合に関与しない。pFc’領域が酵素的に切断されたか、またはF(ab’)2断片と称されるpFc領域なしで作製された抗体は、インタクトな抗体の抗原結合部位を共に保持する。同様に、Fc領域が酵素的に切断されたか、またはFab断片と称されるFc領域なしで作製された抗体は、インタクトな抗体分子の抗原結合部位の1つを保持する。Fab断片は、共有結合した抗体軽鎖およびFdを示す抗体重鎖の一部からなる。Fd断片は、抗体特異性(単一のFd断片は抗体特異性を変化させずに10までの異なる軽鎖と関連し得る)の主要な決定因子であり、Fd断片は単離におけるエピトープ結合能力を保持する。
【0104】
抗体の抗原結合部分内で、当該分野において周知であるように、相補性決定領域(CDR)があり、それは抗原およびフレームワーク領域(FR)のエピトープと直接相互作用し、それはパラトープの三次構造を維持する(一般的に、Clark, 1986; Roitt, 1991を参照)。IgG免疫グロブリンの重鎖Fd断片および軽鎖の両方において、それぞれ3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)によって分離される4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)がある。CDR、および特にCDR3領域、およびさらに特に重鎖CDR3は、抗体特性に対して大いに関与する。
【0105】
哺乳動物抗体の非CDR領域を、非特異性の、または異種特異的な抗体の同様の領域と置き換え、同時に最初の抗体のエピトープ特異性を保持することができることは、現在当該分野において十分確立されている。これは、非ヒトCDRがヒトFRおよび/またはFc/pFc’領域に共有結合して、機能的抗体を産生する「ヒト化」抗体の開発および使用において、最も明確に明示される。例えば、米国特許第4,816,567号、第5,225,539号、第5,585,089号、第5,693,762号および第5,859,205号を参照。完全なヒトモノクローナル抗体をまた、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖部位の大きい部分についてトランスジェニックなマウスを免疫化することによって調製することができる。これらのマウス(例えばXenoMouse(Abgenix)、HuMAbマウス(Medarex/GenPharm))の免疫化に続いて、モノクローナル抗体を、標準的なハイブリドーマ技術に従って調製することができる。これらのモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンアミノ酸配列を有し、したがってヒトに投与したときにヒトの抗マウス抗体(HAMA)応答を引き起こさない。
【0106】
したがって、当業者に明らかであるように、本発明はまた、F(ab’)2、Fab、FvおよびFd断片;Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列によって置き換えられたキメラ抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列によって置き換えられたキメラF(ab’)2断片抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列によって置き換えられたキメラFab断片抗体;ならびにFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が相同のヒトまたは非ヒト配列によって置き換えられたキメラFd断片抗体を提供する。本発明はまた、いわゆる単鎖抗体、ドメイン抗体および重鎖抗体を含む。
【0107】
したがって、本発明は、5−HT2c受容体シグナル経路のポリペプチドに特異的に結合し、機能的活性を阻害する、多数の大きさおよびタイプのポリペプチドを含む。これらのポリペプチドはまた、抗体技術以外の供給源由来となり得る。例えば、かかるポリペプチド結合剤を、溶液において、固定された形態において、またはファージディスプレイライブラリーとして容易に作製することができる、縮重(degenerate)ペプチドライブラリーによって提供することができる。コンビナトリアルライブラリーをまた、1種または2種以上のアミノ酸を含むペプチドで合成することができる。ライブラリーをさらに、ペプチドおよび非ペプチド合成部分で合成することができる。
【0108】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、対象における自閉症圏障害を処置するのに有効な量で投与する。有効量は、医学的に所望される応答を提供するのに十分な治療的分子(1種または2種以上)の投与量である。例えば、所望される応答は、自閉症圏障害の進行を阻害し得る。これは、自閉症圏障害の進行を一時的に遅くすることのみを含み得るが、より好ましくは、それは、自閉症圏障害の進行を永久に停止させることを含む。これを、当業者に知られている日常的な診断方法によってモニタリングすることができる。
【0109】
本発明の治療的分子を用いて、自閉症圏障害を処置するかまたは防止する、即ちそれらを、自閉症圏障害を罹患することの危険にある対象において予防的に用いることができることを理解すべきである。したがって、有効量は、自閉症圏障害に罹患する危険を低下させ、重篤度を減少させ、または場合によっては完全に防止することができる当該量である。
【0110】
有効量を決定することに関係する要因は、当業者に周知であり、日常的な実験のみで対処することができる。最大用量の本発明の治療的分子(単独で、または他の治療的分子もしくは処置計画と組み合わせて)、即ち妥当な医学的判断による最も高い安全な用量を用いるのが、一般的に好ましい。しかし、患者が医学的理由、精神学的理由のために、または事実上すべての他の理由のために、より低い用量または耐容可能な量を要求し得ることは、当業者によって理解される。
【0111】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、単独で、医薬組成物において投与するか、あるいは他の治療的分子(1種もしくは2種以上)または処置計画と組み合わせてもよい。任意に、他の治療的分子(1種または2種以上)を、同時に、または連続して投与してもよい。他の治療的分子(1種または2種以上)を同時に投与するときには、それらを、同一の、または別個の製剤において投与することができるが、同時に投与する。他の治療的分子(1種または2種以上)を、互いに連続して、また他の治療的分子(1種もしくは2種以上)および5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤の投与が時間的に分離しているときには5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤と共に投与してもよい。これらの分子の投与の間の時間における分離は、わずか数分間であり得るか、またはそれは、より長く、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12時間またはそれ以上であり、1、2、3、4、5、6、7日またはそれ以上を含み得る。
【0112】
本発明の方法において用いる医薬組成物は、好ましくは無菌であり、対象への投与に適する重量または体積の単位において所望の応答を発生させるための、5−HT2c受容体シグナル経路の有効量のアンタゴニストまたは阻害剤を含む。対象に投与する5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤の用量を、種々のパラメーターに従って、特に用いる投与の方式および対象の状態に従って選択することができる。他の要因は、処置の所望の期間を含む。
【0113】
対象における応答が適用した初期量にて不十分である場合には、より高い用量(または種々のより局所的な送達経路による有効により高い用量)を、患者の耐容能が可能にする程度に用いてもよい。5−HT2c受容体シグナル経路の1種または2種以上のアンタゴニストまたは阻害剤の投与量を、特にすべての合併症の場合において、個別の医師または獣医によって調節してもよい。治療的に有効な量は、典型的に、毎日1または2以上の用量投与において、1日または2日以上について0.01mg/kg〜約1000mg/kg、好ましくは約0.1〜10mg/kg、例えば約0.1〜1mg/kg/日または約1〜10mg/kg/日で変動する。
【0114】
薬物を所望の組織、細胞または体液に有効に送達する投与の種々の方式は、当業者に知られている。本発明の分子の投与は、経口、静脈内、皮下、筋肉内、局所、蓄積注射、移植、持続放出型方式、腔内、鼻腔内、吸入、クモ膜下腔内、眼内および放出制御を含むが、これらには限定されない。いくつかの態様において、本発明の医薬組成物を、非経口的に、経粘膜的に(例えば経口的に)、鼻腔内に、クモ膜下腔内に、直腸内に、膣内に、舌下に、粘膜下に、または経皮的に導入する。
【0115】
非経口投与は、消化管を通してではなく、例えば静脈内、皮下、筋肉内、クモ膜下腔内、腹膜内、眼窩内、関節内、脊椎内、胸骨内(intrasternal)、動脈内または皮内投与を経るいくつかの他の経路を通しての投与である。本明細書中に記載した有機小分子について、経口投与が好ましい。当業者は、特定の利点および欠点を、投与の方式を選択するにあたり考慮するべきであることを十分理解することができる。
【0116】
本発明は、本明細書中に開示した投与の特定の方式によって制限されない。当該分野における標準的な参考文献(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 第20版、Lippincott, Williams and Wilkins, Baltimore MD, 2001)によって、医薬担体中の種々の医薬製剤および処方物の送達のための投与および処方の方式が提供されている。本発明の薬物の投与に有用な他のプロトコルは、当業者に知られており、ここで投与量、投与の計画、投与の部位、投与の方法などは、本明細書中に提示したものとは異なるものになる。
【0117】
本発明の薬物のヒト以外の哺乳動物への、例えば、試験目的または獣医学的治療目的のための投与を、上記に記載したように実質的に同一の条件下で行う。本発明がヒトおよび動物の両方の疾患に適用可能であることは、当業者によって理解されている。
【0118】
投与するとき、本発明の医薬製剤を、薬理学的に許容し得る量で、および薬理学的に許容し得る組成物において適用する。「薬理学的に許容し得る」の用語は、活性成分の生物活性の有効性を妨げない無毒性物質を意味する。かかる製剤は、塩、緩衝剤、防腐剤、適合性の担体および任意に他の治療的分子を日常的に含んでいてもよい。
【0119】
医薬において用いるとき、塩は、薬理学的に許容し得なければならないが、薬学的に許容し得ない塩を便宜的に用いて、その薬学的に許容し得る塩を調製してもよく、本発明の範囲から除外されない。かかる薬理学的に、および薬学的に許容し得る塩は、以下の酸から調製されるものを含むが、これらには限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。また、薬学的に許容し得る塩を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩として調製することができる。
【0120】
薬物または組成物を、所望により薬学的に許容し得る担体と組み合わせてもよい。本明細書中で用いる「薬学的に許容し得る担体」の用語は、ヒト中に投与するのに適する1種または2種以上の適合性の固体または液体充填剤、希釈剤または被包物質を意味する。「担体」の用語は、天然の、または合成の、有機または無機の成分を示し、それと、活性成分を組み合わせて、適用を容易にする。医薬組成物の構成成分はまた、本発明の薬物と、および互いに、所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用がないように混合することが可能である。
【0121】
医薬組成物は、上記で記載したように好適な緩衝剤を含んでいてもよく、それは以下のものを含む:前述の化合物のアセテート、ホスフェート、シトレート、グリシン、ボレート、カーボネート、ビカーボネート、水酸化物(および他の塩基)ならびに薬学的に許容し得る塩。医薬組成物はまた、任意に、好適な防腐剤、例えば:塩化ベンザルコニウム;クロロブタノール;パラベンおよびチメロサールを含んでいてもよい。
【0122】
医薬組成物は、単位剤形で便宜的に提示され得、薬学の分野において周知の方法のすべてによって調製することができる。すべての方法は、活性剤を担体と会合させる段階を含み、それは、1種または2種以上の付帯的成分を構成する。一般的に、組成物を、活性化合物を液体担体、微粉化された固体担体または両方と均一かつ密に会合させ、次に所要に応じて生成物を成形することによって調製する。
【0123】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、それらを全身的に送達することが所望されるときには、注射による、例えば大量瞬時投与または持続点滴による非経口投与のために処方してもよい。注射のための処方物は、単位剤形において、例えばアンプルにおいて、または複数投与(multi-dose)容器において、加えられた防腐剤と共に提示され得る。組成物は、油性の、または水性のビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとり得、フォーミュラトリー剤(formulatory agent)、例えば懸濁剤、安定剤および/または分散剤を含んでいてもよい。
【0124】
非経口投与のための医薬組成物は、活性化合物の水溶液を水溶性形態で含む。さらに、活性化合物の懸濁液を、適切な油性注射懸濁液として調製してもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルは、脂肪油、例えば胡麻油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増大させる物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランを含んでいてもよい。任意に、当該懸濁液はまた、化合物の可溶性を増大させる好適な安定剤または剤を含んで、高度に濃縮された溶液を調製するのを可能にしてもよい。
【0125】
あるいはまた、当該化合物は、使用前に好適なビヒクル(例えば生理食塩水、緩衝液または滅菌発熱物質非含有水)と共に構成するために、粉末形態であってもよい。
経口投与に適する組成物は、各々が所定量の活性化合物(1種または2種以上)を含む別個の単位、例えばカプセル、錠剤、丸剤、トローチ剤として提示され得る。他の組成物は、水性液体または非水性液体に懸濁させた懸濁液、例えばシロップ、エリキシル剤、エマルジョンまたはゲルを含む。
【0126】
経口的使用のための医薬製剤を、固体賦形剤として得、任意に得られた混合物を粉砕し、好適な補助剤を加えた後に顆粒の混合物を加工して、所望により錠剤または糖衣錠コアを得ることができる。好適な賦形剤は、特に充填剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトールを含む糖、またはセルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。所望により、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを、加えてもよい。任意に、経口処方物をまた、生理食塩水または緩衝液、即ち内部の酸性状態を中和するためのEDTA中に処方してもよいか、またはいかなる担体をも伴わずに投与してもよい。
【0127】
また、特定的に意図するのは、上記の構成成分(1種または2種以上)の経口剤形である。構成成分(1種または2種以上)を、誘導体の経口送達が有効であるように化学的に修飾してもよい。一般的に、意図する化学的修飾は、少なくとも1つの部分を当該構成成分分子自体に付着させることであり、ここで前記部分によって、(a)タンパク質分解の阻害;および(b)胃または腸からの血流中への取り込みが可能になる。また所望されるのは、構成成分(1種または2種以上)の全体的な安定性の増大および身体中での循環時間の増大である。
【0128】
構成成分(または誘導体)について、放出の位置は、胃、小腸(十二指腸、空腸もしくは回腸)または大腸であり得る。当業者は、胃中で溶解しないが、十二指腸中で、または腸中の他の箇所中で当該物質を放出する利用可能な処方物を有する。好ましくは、放出は、胃環境の悪影響を、分子(1種もしくは2種以上)の保護によって、または生物学的に活性な分子(1種もしくは2種以上)の胃環境を越えた、例えば腸中での放出によって回避する。
【0129】
最大限の胃の耐性を確実にするために、少なくともpH5.0に対して不透過性であるコーティングが、必須である。腸溶コーティングとして用いられる、より一般的な不活性成分の例は、セルロースアセテートトリメリテート(cellulose acetate trimellitate)(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、セルロースアセテートフタレート(CAP)、Eudragit L、Eudragit Sおよびセラックである。これらのコーティングを、混合フィルムとして用いてもよい。
【0130】
コーティングまたはコーティングの混合物をまた、錠剤に対して用いることができ、それは胃に対する保護を意図しない。これは、糖コーティングまたは嚥下するのがより容易である錠剤を作製するコーティングを含むことができる。カプセルは、乾燥治療薬、即ち粉末を送達するための硬質のシェル(例えばゼラチン)からなってもよい;液体形態のために、軟質のゼラチンシェルを用いてもよい。カシェーのシェル材料は、厚いデンプンまたは他の食用の紙であり得る。丸剤、トローチ剤、成形した錠剤または錠剤粉末のために、湿式凝集(moist massing)技術を用いることができる。
【0131】
治療的分子の量を不活性材料で希釈するかまたは増大させてもよい。これらの希釈剤は、炭水化物、特にマンニトール、a−ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、修飾されたデキストランおよびデンプンを含むことができる。特定の無機塩をまた、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む充填剤として用いてもよい。数種の商業的に入手できる希釈剤は、Fast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、EmcompressおよびAvicellである。
【0132】
崩壊剤を、治療剤の処方物において固体剤形中に包含させてもよい。崩壊剤として用いる材料は、デンプンを含むがこれには限定されず、これは、デンプン、Explotabに基づく市販の崩壊剤を含む。ナトリウムデンプングリコレート、Amberlite、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ウルトラミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジの皮、酸性カルボキシメチルセルロース、海綿およびベントナイトのすべてを、用いてもよい。崩壊剤の他の形態は、不溶性カチオン交換樹脂である。粉末状ゴムを、崩壊剤として、およびバインダーとして用いてもよく、これらは、粉末状のゴム、例えば寒天、Karayaまたはトラガカントゴムを含むことができる。アルギン酸およびそのナトリウム塩はまた、崩壊剤として有用である。
【0133】
結合剤を用いて、治療的分子を保持し、これと共に硬質錠剤を形成し、天然産物からの材料、例えばアカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチンを包含させてもよい。他のものは、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を共に、アルコール溶液中で用いて、治療剤を顆粒化することができる。
【0134】
減摩剤を、治療剤の処方物中に包含させて、処方プロセスの間に粘着するのを防止してもよい。潤滑油を、治療剤とダイ壁との間の層として用いてもよく、これらは、以下のものを含むことができるが、これらには限定されない;マグネシウム塩およびカルシウム塩を含むステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油およびろう。可溶性潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、種々の分子量のポリエチレングリコール、Carbowax 4000および6000をまた、用いてもよい。
【0135】
処方の間の薬物の流動特性を改善し、圧縮の間の再配列を助けることができる流動促進剤を、加えてもよい。流動促進剤は、デンプン、タルク、発熱性シリカおよび水和ケイアルミン酸塩を含んでいてもよい。
【0136】
治療剤の水性環境中への溶解を助けるために、界面活性剤を、湿潤剤として加えてもよい。界面活性剤は、アニオン性洗浄剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホスクシネートおよびジオクチルナトリウムスルホネートを含んでいてもよい。カチオン性洗浄剤を用いてもよく、それは、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含むことができる。処方物中に界面活性剤として包含させることができる可能性のある非イオン性洗剤のリストは、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50および60、グリセロールモノステアレート、ポリソルベート40、60、65および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースならびにカルボキシメチルセルロースである。これらの界面活性剤は、処方物中に単独で、または種々の比率での混合物として存在することができる。
【0137】
経口的に用いることができる医薬製剤は、ゼラチン製の押し込み型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤製の軟質の密封カプセル、例えばグリセロールまたはソルビトールを含む。押し込み型カプセルは、充填剤、例えばラクトースとの混合物における活性成分、結合剤、例えばデンプン、および/または潤滑剤、例えばタルクもしくはステアリン酸マグネシウム、および任意に安定剤を含むことができる。柔質カプセルにおいて、活性化合物を、好適な液体、例えば脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールに溶解するかまたは懸濁させてもよい。さらに、安定剤を加えてもよい。
【0138】
鼻腔内に、または吸入によって投与するために、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾール噴霧提示の形態で、好適な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適な気体を用いて便宜的に送達してもよい。加圧エアゾールの場合において、投薬単位を、弁を提供して計量された量を送達することによって決定してもよい。例えば吸入具(inhaler)または吸入器(insufflator)において用いるための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジを、化合物と好適な粉末ベース、例えばラクトースまたはデンプンとの粉末混合物を包含させて処方してもよい。
【0139】
また本明細書中で意図するのは、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤の肺送達である。分子(1種または2種以上)を、吸入の間に哺乳動物の肺に送達し、肺上皮層を通じて血流へ通り抜ける。
【0140】
本発明を実施するにあたり使用に意図するのは、治療的生成物の肺送達のために設計される広範囲の機械的デバイスであり、それは、噴霧器、定量噴霧式吸入器および粉末吸入器を含むが、それらに限定されず、それらはすべて、当業者に精通されている。
【0141】
本発明の医薬組成物の経鼻の(または鼻腔内の)送達もまた、意図する。経鼻の送達によって、本発明の医薬組成物が、治療的生成物を鼻に投与した後に、当該生成物を肺中に堆積させることを必要とせずに血流に直接通過するのが可能になる。
【0142】
経鼻投与のために、有用なデバイスは、定量噴霧式噴霧器を取り付けた小さい堅いビンである。1つの態様において、定量された用量を、本発明の溶液の医薬組成物を所定の容積のチャンバ中に引き込むことによって送達し、当該チャンバは、エアゾール処方物を、チャンバ中の液体を圧縮したときに噴霧を形成することによってエアロゾル化するような大きさにされた開口を有する。チャンバを圧縮して、本発明の医薬組成物を投与する。特定の態様において、チャンバはピストン配置である。かかるデバイスは、商業的に入手できる。
【0143】
あるいはまた、スプレーを形成することによってエアゾール製剤をエアロゾル化するような大きさにされた開口または開放部を有するプラスチックスクイーズボトルを、圧迫されるときに用いる。開放部は通常、ビンの最上部において見出され、当該最上部は一般的に、エアゾール処方物の効果的な投与のために鼻道中に部分的にはめ込むために先細りになっている。好ましくは、経鼻吸入器は、定量された用量の薬物を投与するために、定量された量のエアゾール処方物を供給する。
【0144】
前に記載した処方物に加えて、化合物をまた、蓄積製剤として処方してもよい。かかる長時間作用する処方物を、好適なポリマーもしくは疎水性材料(例えば許容し得る油中のエマルジョンとして)、またはイオン交換樹脂で、あるいは難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として処方してもよい。
【0145】
医薬組成物はまた、好適な固体の、またはゲル相の担体または賦形剤を含んでいてもよい。かかる担体または賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー、例えばポリエチレングリコールを含むが、それらには限定されない。
【0146】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤は、種々の薬物送達系において用いるのに適する。薬物送達のための方法の簡潔な概説について、Langer, Science 249:1527-1533, 1990を参照。それを、参照によって本明細書中に包含する。
【0147】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、放出制御系中に包含させてもよい。「放出制御」の用語は、処方物からの薬物放出の方式およびプロフィールが制御されるすべての薬物含有処方物を指すことを意図する。これは、即時の、および即時でない放出の処方物を指し、即時でない放出の処方物は、徐放および遅延された放出の処方物を含むが、これらには限定されない。
【0148】
「徐放」(また「延長された放出」と呼ぶ)の用語を、長期間にわたる薬物の徐々の放出を提供し、必ずしもではないが好ましくは、長期間にわたり薬物の実質的に一定の血中濃度をもたらす、薬物処方物を指すその慣用の意味において用いる。「遅延放出」の用語を、処方物の投与と薬物のそこからの放出との間の時間遅延がある薬物処方物を指すその慣用の意味において用いる。「遅延放出」は、長期間にわたる薬物の徐々の放出を伴う場合があるか、または伴わない場合があり、したがって「徐放」である場合があるか、またはそうでない場合がある。
【0149】
長期の徐放移植片の使用は、特に慢性の状態の処置に適する場合がある。本明細書中で用いる「長期の」放出は、移植片を構成し、配置して、治療的濃度の活性成分を少なくとも7日および好ましくは30〜60日間送達することを意味する。長期の徐放移植片は、当業者には周知であり、上記の放出系のいくつかを含む。
【0150】
本発明はまた、キットの使用を意図する。本発明のいくつかの側面において、本明細書中に記載したように、当該キットは、医薬製剤バイアル、医薬製剤希釈剤バイアルおよび5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を含むことができる。医薬製剤のための希釈剤を含むバイアルは、任意である。希釈剤バイアルは、希釈剤、例えば分子(1種もしくは2種以上)の濃縮された溶液または凍結乾燥された粉末であり得るものを希釈するための生理食塩水を含む。
【0151】
説明書は、特定の量の希釈剤を特定の量の濃縮された医薬製剤と混合し、それによって注射または注入のための最終的な処方物を調製するための指示を含むことができる。説明書は、対象を有効量の分子(1種または2種以上)で処置するための指示を含んでいてもよい。また、製剤を含む容器が、当該容器がビン、隔壁を有するバイアル、隔壁を有するアンプル、注入袋などであっても、製剤をオートクレーブ処理したかまたは他の方法で殺菌したときに色が変化する慣用の印などの証印を含むことができることが、理解される。
【0152】
また意図するのは、自閉症圏障害についてのバイオマーカーの本明細書中での識別に基づく診断方法、およびかかる診断方法の療法と組み合わせての使用である。当該診断方法を用いて、適切な療法および/または患者集団(例えば臨床試験のために)の選択において補助してもよい。
【0153】
当該診断方法は、対象を、自閉症圏障害についての、特に増大した頭の大きさ(外周)および/または社会的行動における欠陥によって特徴づけられる自閉症圏障害についてのバイオマーカーの存在について評価することを含む。本明細書中に示すように、社会的行動における欠陥は、いくつかの態様において、社会的相互作用における欠陥および/または社会的記憶における欠陥である。
【0154】
例えば、増大した頭の大きさ(外周)および社会的行動における欠陥によって特徴づけられる自閉症圏障害は、本明細書中で、Pten遺伝子および/またはSlc6a4遺伝子における突然変異または変化と関連し、かつ/またはそれによって引き起こされ、本明細書中に示したこれらの遺伝子(1種または2種以上)のハプロ不全をもたらすと例証される。したがって、対象を、かかる突然変異、変化またはハプロ不全について検診することができる。当該診断方法はまた、対象を、大頭症(脳の過成長)および/または低下した社交性(社会的接近行動における欠陥)について試験することを含むことができる。
【0155】
より詳細には、当該診断方法は、生体試料を、PTENの低下した発現もしくは機能(PTEN欠乏)をもたらす遺伝的な、もしくは後成的な変化および/またはSLC6A4の低下した発現もしくは機能(SLC6A4欠乏)をもたらす遺伝的な、もしくは後成的な変化の存在について分析することを含む。
【0156】
診断方法はさらに、または代替的に、対象の生体試料を、増大した循環セロトニンについて分析することを含む。ELISAアッセイおよび同様の免疫吸着アッセイを用いて、循環セロトニン濃度をアッセイすることができる。ASDと関連していたセロトニンの濃度は、対照(非ASD)集団平均を上回る≧2の標準偏差である。さらに、HPLC、質量分析法およびプロテオミクスアレイ(proteomic array)をまた用いて、循環セロトニン濃度をアッセイすることができる。
【0157】
当該診断方法をまた、本明細書中に記載した治療方法と組み合わせてもよい。診断方法と治療方法との組み合わせを用いて、例えば診断方法を処置の前に用いて、いずれの対象を処置するかを決定するときに、処置を導くことができる。診断方法と治療方法との組み合わせを用いて、例えば診断方法を、処置の間または処置の後に用いて、対象の処置の有効性を決定するときに、処置の過程および/または障害の過程に続けることができる。診断方法の治療方法と組み合わせたかかる適用は、医学分野において日常的に実施されている。
【0158】
診断方法を、処置の前に行って、対象を、本明細書中に記載した5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤で処置することについての好適性を決定することができる。また、この遺伝的基礎を有し、本明細書中に記載した療法の影響を受けやすい他の疾患、状態および障害を有する対象をまた、同様に診断し、処置することができる。特に、Pten遺伝子および/もしくはSlc6a4遺伝子の標的であるか、または5−HT2c受容体の下流である遺伝子中に突然変異もしくは変化を有する対象は、本明細書中に記載した療法の影響を受けやすく、同様に診断し、処置することができる。
【0159】
標準的な臨床的診断方法は、当該分野において周知である。典型的に、これらの方法は、試料を対象から得ることを含み、それは、限定されずに組織試料、生検、流体試料(例えば血液、尿、唾液、脳脊髄液)などであり得、次に試料に診断方法を施す。多くの周知の方法が、試料を分析するために開業医に利用可能であり、それは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応に基づく方法を含む種々の核酸検出および増幅方法、ならびに抗体に基づく検出方法を含む種々のタンパク質検出方法である。他の例において、非侵襲性診断のための画像診断技術を用いることが可能であり得る。
【0160】
本発明を、以下の例によってさらに例示し、それは、いかなる方法によってもさらに限定的であるものと解釈するべきではない。
【0161】

例1:Ptenおよびセロトニントランスポーターについてのハプロ不全は、脳の大きさおよび社会的行動に協調的に影響する
材料および方法
動物:用いた家系(strain)は、B6.129−Ptentm1Rps(13)(the National Cancer Institute at Frederickから)およびB6.129−Slc6a4tm1Kpl(23)(Taconicから)であった。それらのそれぞれの施設にて、各々の系統を、コンジェニックとなるように10世代にわたりC57BL/6背景に対して交雑させた。本発明者らは、本研究のためのマウスを2種の交雑種から発生させた:Pten+/−;Slc6a4+/+×Pten+/+;Slc6a4+/+マウス、Pten+/+;Slc6a4+/+(「野生型」)およびPten+/−;Slc6a4+/+(「Ptenハプロ不全」)マウスを得た、ならびにPten+/−;Slc6a4+/+×Pten+/+;Slc6a4−/−マウス、Pten+/+;Slc6a4+/−(「Slc6a4ハプロ不全」)およびPten+/−;Slc6a4+/−(「PtenおよびSlc6a4ハプロ不全」)マウスを得た。本発明者らは、このアプローチが、Pten+/−;Slc6a4+/マウスにおける高い比率の胎生期の、および出生後早期の死亡率のために、Pten+/−×Slc6a4+/−交配ストラテジーよりも有利であることを見出した。
【0162】
行動試験を、8週または12週齢にて行った。遺伝子型間の収容における差異なしで、すべての動物を、ケージあたり2〜5匹のマウスの群に収容した。食物および水を自由に入手可能とし、動物を12時間の明/暗サイクルにおいて保持した。すべての行動試験を、明サイクルの終了時近くに行った。実験を、Massachusetts Institute of Technology Committee on Animal Careによって承認されたプロトコルに従って、かつNIHガイドラインに従って行った。
【0163】
社会的接近:マウスを、不透明な壁を有する最上部が開放されたアクリル箱(24”L×12”W×12”H)中に配置した。箱を、チャンバ間の通路を提供する穴を有する不透明なアクリルパネルによって分離された3つの(8”L×12”W)チャンバに分けた。基準として、チャンバを、左から右に1、2および3と番号付けした。チャンバ1において、野生型の性別および家系が整合する、見慣れないマウスを、適切な換気、ならびに2匹のマウス間の視覚的、触覚的および嗅覚的接触を可能にする多数の穴を備えた、透明な円筒形のアクリル製ケージ(4”直径×8”H)中に保持した。同一のケージを、チャンバ3中に配置したが、空のままとした。試験室中の装置の配向は、試行間で一致させて保持した。本発明者らは、試験室に対して装置の配向を無作為化することでは、結果は変化しないことを以前に見出していた。
【0164】
試験の前に、刺激マウスおよび対象マウスを、個別に1日につき5分間3日間社会的接近装置に順応させた。試験の日に、マウスを再び装置に5分間順応させた。この間に、対象マウスを、チャンバ1または3に対するバイアスについて観察した−かかるバイアスは、いずれの遺伝子型についても観察されなかった。次に、刺激マウスを装置に加え、ビデオ録画を、10分間の試行にとった。得られたビデオを、ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij/)中に取り込むことによって、コンピュータ補助を伴って記録し、ここで各々のチャンバを、独自のスクリプト(script written in-house)を用いて関心領域(ROI)として定義し、マウスが各々の関心領域に存在したフレームの数を定量化した。すべてのデータセットを、遺伝子型に対して盲検の、訓練された観察者によって手作業でチェックして、正確さを確実にした。
【0165】
嗅覚:プロトコルを、(30、59)から適合させた。各々のマウスを、家庭用ケージと同一の清浄なプラスチックケージ中に配置し、5分間放置して順応させた。10μlの蒸留水で湿潤させたスワブを、ケージのふたを通して、10cmの高さにて1分間挿入した。スワブを、合計3図の提示のために、新たなスワブと2回交換し、次に、10μlのバニラ抽出物(Frontier, Norway, IA)で湿潤させたスワブの1分間の提示を3回続けた。バニラの提示の後に、5μlのレモン抽出物(Simply Organic, Boulder, CO)で湿潤させたスワブを、各々1分間3回提示した。各々のスワブ提示について、スワブからの3cm未満を嗅ぐことの頻度および継続期間(単位秒)を、記録した。
【0166】
前パルス阻害:本発明者らは、ASR−PRO1聴覚性驚愕反射試験装置(Med Associates, St. Albans, VT)を用いた。試験の前に、マウスを試験室に1時間順応させた。マウスを、試行の開始前に装置に2分間順応させた。試行を、3〜8秒の間隔(無作為化した)にて行った。試行は、40msの驚愕刺激のみ(110dBのホワイトノイズ)または、背景(60bdのホワイトノイズ)より上の8db、12dbもしくは16dbであった20msのホワイトノイズ前パルスによって100ms早く先行される驚愕刺激からなった。各々の刺激設定について5回の試行を、Startle Reflex Software(Med Associates, St. Albans, VT)を用いて記録した。
【0167】
結果
PtenとSlc6a4との間の潜在的相互作用について試験するために、本発明者らは先ず、ASDに関連する表現型の読み出しを確認する必要があった。ASDにおいて報告された、最も広く報告された神経解剖学的異常の1つは、大頭症であり、成人期において10〜30%および発達の間の60%までの発生率であった(17)。ASD患者における研究によって、脳の大きさが、ASD関連尺度における行動学的表現型の重篤度と正に相関することが示された(18、19)。マウス脳におけるPtenの条件的ノックアウトからの報告には、大頭症表現型が記載されており、細胞体(cell soma)の大きさおよび神経突起肥大の増大は、これらの表現型に寄与している傾向がある(20〜22)。本発明者らは、PtenおよびSlc6a4複合ヘテロ接合性変異体マウスを、Ptenハプロ不全マウスを機能対立遺伝子の前に記載したSlc6a4損失を保因する系統に対して交雑させることによって発生させた(23)。本発明者らは、生殖系列ヘテロ接合性マウスに焦点を当てて、臨床的関連性を最大にした。
【0168】
PtenまたはSlc6a4ハプロ不全マウスが脳の過成長を示すか否かを試験するために、本発明者らは、体重に対して正規化された全体的な脳質量の測定を得て、身体の大きさにおける変化を説明した。これらのデータは、PtenまたはSlc6a4についてのハプロ不全の結果、雄および雌の両方において大頭症表現型が生じることを示した(図1A〜C)。さらに、Pten+/−;Slc6a4+/−マウスは、PtenまたはSlc6a4ハプロ不全マウスのいずれかにおいて見られるよりも重篤な追加の脳の過成長表現型を有していた(図1A〜C)。成長に対する細胞機構の根本的な効果が依然として同定されるべきであるが、これらのデータは、PtenおよびSlc6a4が協調的に作用して、ASD、脳の過成長に関連する表現型に影響することを示す。
【0169】
上記の結果は、Ptenハプロ不全マウスが、多遺伝子性ASDに関連する方式でPtenと相互作用する第2の部位の遺伝的修飾因子を試験するための、ならびに環境的修飾の効果および治療的化合物の効果を試験するための有用な手段であり得ることを主張する。Ptenハプロ不全マウスがASDに関連する行動学的表現型についての表面の有効性を有するか否かを調査するために、本発明者らは、12週齢のマウスを、いくつかの行動学的アッセイを用いて試験した。本発明者らが用いたアッセイは、社交性を試験し、それは、ASD(24)、および前パルス阻害、即ちASDを有する個体において異常であると報告された感覚運動ゲーティングの尺度を有する個体において見られる中心的な診断欠陥を反映する(25〜27)。
【0170】
社会的行動における嗅覚機能の可能な交絡因子について試験するために、本発明者らは、Ptenハプロ不全マウスおよび対照に嗅覚的馴化−脱馴化試験を施し、これらのマウスが正常に応答することを見出し(図6)、それは、それらが嗅覚機能における全体的な障害を有しないことを示した。社会的接近行動を測定するために、本発明者らは、マウスが、性別および週齢が整合する、見慣れない刺激マウスまたは無生物との間で、相互作用に費やす時間を選択しなければならない装置の変形を用いた(28、29)(図2A)。
【0171】
両方の性別の野生型のマウスが社会的チャンバ中で費やす時間についての有意な選好性を示した一方、Ptenハプロ不全雌マウスはこの選好性を示さず、社会的チャンバおよび非社会的チャンバ中でほぼ同等な時間を過ごした(図2B)。雄のPtenハプロ不全マウスは、社会的接近行動においてこの同一の欠陥を示さなかった(図2C)。Ptenハプロ不全マウスおよび対照における感覚運動ゲーティングの試験において、本発明者らは、両方の性別が音響的驚愕応答の前パルス阻害における欠陥を有することを見出した(図2D)。
【0172】
Ptenハプロ不全マウスについての本発明者らの結果は、一般的にCNSに特異性の条件的Ptenノックアウトマウスからの行動学的結果と整合し(21)、ここで動物を、種々のASDに関連する表現型について試験した。雄において社会的接近についての最初の傾向において差異が見られ、ここで条件的ノックアウトは欠陥を示し、Ptenハプロ不全マウスは欠陥を示さない。これらの差異は、これらの2種の相補的モデルにおける遺伝子操作の種々の性質に起因する傾向が最も高い。これらのモデルにおける種々の行動学的な表現型についての神経生物学的基礎を確認することによって、PtenがいかにしてASDに関連する神経回路の発達に影響するかについての洞察を提供するだろう。
【0173】
本発明者らがPten+/−雌マウスにおいて観察した社会的接近表現型が、脳の大きさに伴って起こるようにSlc6a4についてハプロ不全によって修正され得るか否かを試験するために、本発明者らは、8週齢の雌の野生型マウス、Ptenハプロ不全マウス、Slc6a4ハプロ不全マウスおよびPten+/−;Slc6a4+/−複合突然変異マウスを試験した。Slc6a4ハプロ不全マウスおよびPten+/−;Slc6a4+/−マウスは、嗅覚的馴化−脱馴化の試験において正常に応答し(図6)、これは、これらのマウスにおいて嗅覚の全体的な障害がないことを示す。本発明者らは、Slc6a4ハプロ不全マウスが、野生型マウスと比較して、社会的接近アッセイにおいて刺激マウスと相互作用することについての低下した選好性を示すことを見出したが、これは、有意性についてのしきい値より低い範囲にはなかった。
【0174】
しかし、Pten+/−;Slc6a4+/−マウスは、刺激マウスとの相互作用について有意な選好性を示さなかった(図3A)。社会的接近−回避スコア(28)(社会的チャンバ1における時間から非社会的チャンバ3における時間を減ずる)を用いたこれらのデータを分析して、本発明者らは、刺激マウスと相互作用することに費やされる時間が、Pten+/−;Slc6a4+/−マウスにおいて、野生型のマウス、Ptenハプロ不全マウスまたはSlc6a4ハプロ不全マウスにおけるよりも有意により少ないことを見出した(図3B)。この結果は、ASD関連の行動学的表現型、社会的接近に影響するために加算的に作用するPtenおよびSlc6a4について、ハプロ不全と整合する。
【0175】
Pten+/−雄マウスにおける他の社会的接近を試験するために、本発明者らは、8週齢の雄の野生型マウス、Ptenハプロ不全マウス、Slc6a4ハプロ不全マウスおよびPten+/−;Slc6a4+/−マウスを、社会的接近および認識行動について試験した。これを行うために、本発明者らは、本発明者らの3つのチャンバ装置を、Oxytocinノックアウトマウスにおける社会的認知を試験するために用いるプロトコルに適合させ、それは、正常な最初の社会的調査行動を示すが、30分後に再び曝露したときに同一の社会的標的を認識しない(30〜32)。12週齢の雄の野生型マウスおよびPtenハプロ不全マウスについての本発明者らの発見(図2C)と整合して、本発明者らは、社会的相互作用についての選好性における有意の変化を、最初の10分間の試行(試行1)について、雄の群におけるこれらの遺伝子型のいずれにおいても観察しなかった(図3C)。
【0176】
試行2(5分)において同一の社会的標的に再び曝露したときに、野生型マウスは、対照の、および刺激マウスを含むチャンバを調査することにおける同等の関心を示し、この効果は、おそらく馴化のためである(図3C)。対照的に、Ptenハプロ不全、Slc6a4ハプロ不全およびPten+/−;Slc6a4+/−マウスは、第1の試行と第2の試行との間の社会的調査についての選好性の低減を示さなかった(図3D)。この発見は、PtenおよびSlc6a4についてのハプロ不全が、雄マウスにおいて社会的認知を損ない得ることを示す;しかし、社会的認知経路(即ちOxytocin-Vasopressin-Dopamine)における特定の欠陥対社会的相互作用における維持された関心を分離するのに更なる試験が必要である。
【0177】
前パルス阻害の試験において、Ptenハプロ不全とSlc6a4ハプロ不全との関係は、付加的であるよりむしろ上位に(epistatically)優性であると見られ、Ptenハプロ不全およびPten+/−;Slc6a4+/−マウスは各々、野生型と比較して顕著に損なわれているが、互いと比較しては損なわれていない(図3D)。これによって、PtenとSlc6a4との間の相互作用が、行動の根本となる脳回路の発達に関してある程度の特異性を有し得ることが示唆される。本発明者らは、PtenおよびSlc6a4の協調的機能が社会的行動に関与する回路の組み立ておよび機能のために特に重要であり、その理由は、それが脳の大きさの制御のためであるが、他のASD関連行動、例えば感覚運動ゲーティングに関与する回路については必ずしもそうではないからであると思索する。
【0178】
本発明者らは次に、社会的接近表現型が脳の大きさに、遺伝子型を通じておよび各々の遺伝子型内で関連するか否かを尋ねた。集団平均を分析することによって、脳の大きさ(体重に対して)と社会的接近−回避スコアとの間の、遺伝子型を通じての負の相関が明らかになった(図4A)。驚くべきことに、各々の遺伝子型内の個別の対象の分析によって、各々の群においてこれらの手段の間で有意な正の相関が示され、可能な例外は、より大きい可変性を示したSlc6a4ハプロ不全マウスである(図4B〜E)。これは、PtenおよびSlc6a4についてのハプロ不全が脳の大きさの増大に伴って社交性の低下に至ることを示す。しかし、これらの遺伝子型の各々内で、群内の要因は、社交性の増大を脳の大きさの増大で調節すると見られる。
【0179】
セロトニンシグナル経路(Slc6a4を含む)およびPI3K経路(Ptenを含む)が相互作用して脳発達に影響し得る機構を、図7に図示する。1つの可能性は、Ptenおよびセロトニン受容体が調節的方式で物理的に相互作用して、脳発達に影響し得ることである。ニューロンにおいて、Ptenは5−HT2c受容体と結合し、またそのホスファターゼ活性を介して、この受容体のアゴニストによって誘導された活性化を制限し、ドーパミン作動性ニューロンの腹側被蓋野における発火頻度を調節する(10)。
【0180】
本発明者らは、5−HT2c受容体、即ちSB 242084(33)の特定のアンタゴニストの、雌Ptenハプロ不全マウスにおける社会的接近行動に対する効果の予備的試験を行い、この薬物が、社会的接近行動における欠陥を相殺することができることを見出した(図5)。自閉症の徴候を軽減すると報告されていた当該3種の薬物に注目することは、興味深い−非定型抗精神病薬リスペリドン(34)およびオランザピン(35)、ならびに抗うつ薬フルオキセチン(36)−すべては、5−HT2c受容体に対する拮抗的効果を、セロトニンおよびドーパミン経路の他の要素を標的とする周知の効果に加えて有する。本明細書中で報告した本発明者らの発見に基づいて、本発明者らは、5−HT2c受容体の拮抗作用が自閉症におけるこれらの薬物の作用について関連し得ることを提唱する。
【0181】
考察
脳構造および機能に関して、本発明者らは、両方の性別のPtenハプロ不全マウスが脳の過成長を有し、雌が社会的接近行動において欠陥を有することを見出す。本発明者らは、これらの表現型を、Slc6a4ハプロ不全によって付加的な様式で修正することができることを見出す。これらの発見は、自閉症が雌に対して雄を約4:1の比率にて侵す場合には顕著である。現在、本発明者らは、なぜ本発明者らにはPtenハプロ不全マウスにおいて社会的行動における性別の区別的な効果が見られるかを知らない。本発明者らが用いた社会的接近アッセイが、社会的行動の1つの側面のみを、ASDに関連し得る齧歯動物においてとらえることを強調することは、重要である。超音波発声または社会的報酬などの行動のさらなる試験は、これらのマウスにおける社会的障害の程度および性質を完全に特徴づけるのに必要である;かかる試験によって、雄のPtenハプロ不全マウスにおける欠陥がさらに明らかにされ得ることが可能である。
【0182】
しかし、本発明者らのアッセイにおけるこれらの性別の差異についての1つの興味深く、可能性のある手がかりは、免疫系の異常、特に自己免疫とASDとの間の関連についての証拠の報告に由来する(19、37、38)。事後の研究はまた、ASDにおける神経炎症(neuroinflammation)についての数種のマーカーの発現の増大を示した(39)。重要なことに、Pten+/−マウスは、自己免疫を含む免疫系の異常を有し、これらの効果は、雄マウスと比較して雌マウスにおいてより顕著である(40)。これは、Ptenハプロ不全マウスが、性別および免疫系機能障害の神経の発生に対する影響を研究するための有用なモデルであると主張する。
【0183】
本発明者らは、セロトニン受容体5−HT2cRの変調がASDについての潜在的な治療的標的であることを提唱する。SB 24208に加えて、リスペリドン(34)、オランザピン(35)およびフルオキセチン(36)より高い特異性で5−HT2cRに作用して拮抗する数種の他の薬物が、開発された;本発明者らは、これらがまた、ASDのための治療剤として有用であり得ると予測する。かかる薬物の例は、FR 260010(41)およびRS 102221(42)を含む。セロトニン受容体5−HT2cRに対して作用することに加えて、PI3K/Akt経路をセロトニンシグナリングによって直接変調することもまた、可能である。培養した齧歯動物の海馬ニューロンにおいて、5−HT1Aレセプターアゴニストを加えることによって、Aktを活性化することができ、この活性化を、PI3Kの薬理学的阻害を介して遮断することができる(43)。
【0184】
5−HT1A受容体は、胚形成中期(mid-embryogenesis)という早い時期に脳において発現され(44)、これは、この受容体の変化した活性が脳発達の過程を、形態形成の初期段階からさえも修正することができることを示唆する。5−HT1B受容体の刺激もまた、Aktを活性化させることが可能である(45)。この受容体が、発生している新皮質において誘導キュー(guidance cue)に対する軸索の応答を変調させる証拠(46)、およびこの受容体に対して作用する過剰のセロトニンが、Slc6a4ノックアウトマウスにおいて特定の細胞構築的異常の原因となる証拠(47)がある。
【0185】
いずれかの機構は、形態形成、成長およびニューロン機能に影響することが可能である分子に収束することができ、それは、mTOR、GSK−3ベータ、CrebおよびNF−カッパ−Bを含む。興味深いことに、セロトニン作動性刺激は増大し(48)、セロトニン欠乏は、マウス脳中でセリン9にてリン酸化されたGSK−3ベータのレベルを減少させる(49)。Aktを介してのPtenによるセリン9におけるGSK−3ベータの調節は、神経的方向性を確立し、維持することに関連しており(50)、ホスホ−GSK−3ベータのレベルは、PtenがCNSにおいて条件的にノックアウトされたマウスの脳において上昇すると報告されている(21)。さらなる実験がこのモデルを立証するのに必要である一方、セロトニンおよびPten−PI3K経路が収束する分子によって、ASDを有する個体の部分集合に有用なバイオマーカーおよび治療的標的が証明され得る。
【0186】
本発明者らのデータはまた、負の相関が、本研究において試験した遺伝子型を通じて脳の大きさと社交性との間に存在することを示唆する。しかし、所定の遺伝子型の群内の個別の動物のレベルにて、本発明者らは、脳の大きさと社交性との間の有意な正の相関を見出している。本発明者らは、この発見を、社交性に関して、脳の大きさを変化させる有益な方法および有害な方法が共にあることを示すものと解釈する。本発明者らは、PtenおよびSlc6a4についてのハプロ不全を、脳の大きさの相関した増大および低下した社交性に追加的に至りながら確認した。
【0187】
おそらくこれに対して二次的に作用し、場合によっては神経可塑性に対する環境的効果を反映して、本発明者らは、特定の経路が脳の大きさに、社交性に関して有益な方式で影響すると思索する。自閉症である一方、臨床的データによって、頭外周と社交性との間の負の相関が示され(18、19)、正相関が、霊長類および他の動物において脳の大きさと社会的複雑さとの間に存在するという多数の研究から、証拠が存在する((51)において概説されている)。異なる生物学的経路が脳の大きさに影響し、社交性に関しては区別的な結果をもたらすという可能性によって、この逆説を説明することの助けとなり得る。本発明者らは、これらの経路が種内の、および種を通じた社会的行動における変化のための進化的基質(evolutionary substrates)として作用し得ると仮定する。
【0188】
本発明者らの結果はまた、全体的な脳の大きさが、セロトニンおよびPI3K経路との相互作用について検診するための便宜的な表現型読み出しとしての役割を果たし得ると主張する。将来の研究は、本明細書中に報告した解剖学的および行動学的表現型、ならびに遺伝的、環境的および薬理学的操作が、いかにしてこれらの表現型に影響するかの根本にある機構を特徴づけすることを目的とする。増大した励起/阻害比率(52)および前頭皮質における変化した局所的対長距離の結合性(53)を含むASD病態生理学の提唱された機構が、このモデルにおいて明らかであるか否かを試験することは、興味深い。新規のゲノムコピー数変化の高い率は、ASDにおいて観察された(54)。
【0189】
Ptenがゲノム安定性の維持における役割を有し、Ptenの損失によって二本鎖DNA中断の蓄積がもたらされる(55、56)場合には、PTENハプロ不全の背景が、二次的な修飾事象、例えばASDに関連する遺伝子におけるコピー数の変化が発生する可能性を増大させ得ることが、可能である。環境的修飾因子に関して、ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、新皮質の発達を中断させることが可能である有機化合物の群であり、ASD病因における遺伝的感受性と相互作用するための候補である(57)。実験的な証拠が、PCB、PCB77、変化する一酸化窒素シグナリングおよびPI3K経路を介してのNF−カッパ−B活性について存在し、この効果をPI3Kを阻害することによって相殺することができる(58)。PI3Kシグナリングの負のレギュレーターとしてのPTENの役割があれば、本発明者らは、PTENについてのハプロ不全がPI3K経路に対して影響する環境毒素、例えばPCBへの曝露に対する応答におけるASD感受性についての遺伝的危険因子であり得ると仮定する。
【0190】
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【0204】
用いた用語および表現は、記載的用語として用いられ、限定するものではなく、示され記載された特徴またはその部分のいかなる等価なものをも除外する用語および表現を使用する意図はなく、種々の改変が、本発明の範囲内で可能であることが認識される。
【0205】
本出願を通して引用した参照(文献の参照、刊行された特許、公開された特許出願を含む)またはその関連する部分のすべての内容全体を、本明細書中で引用した目的のために、参照によって本明細書中に明白に包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自閉症圏障害を処置するための方法であって、
かかる処置を必要とする対象に、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤である1種または2種以上の治療的分子を投与する
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤が、対象を処置するのに有効な量における、(1)5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt、mTOR、Crebおよび/もしくはNF−カッパBのアンタゴニストもしくは阻害剤、ならびに/または(2)GSK−3ベータの活性化剤のアゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
5−HT2c受容体のアンタゴニストまたは阻害剤を投与する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
5−HT2c受容体のアンタゴニストまたは阻害剤が、脳の中へ通過することができるアンタゴニストまたは阻害剤である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
5−HT2c受容体のアンタゴニストまたは阻害剤がSB 242084である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
投与されるSB 242084の用量が、約0.1〜1mg/kg/日である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
投与されるSB 242084の用量が、約1〜10mg/kg/日である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
SB 242084を、約0.1〜10mg/kgの用量にて間欠的に投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤が、非定型抗精神病薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)またはPPAR−ガンマアゴニストとしては市販されていない(本出願の出願日現在)、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤が、リスペリドン、オランザピン、ジプラシドン、フルオキセチンまたはチアゾリジンジオンではない、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
PI3Kのアンタゴニストまたは阻害剤を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
PI3Kのアンタゴニストまたは阻害剤が、脳の中へ通過することができるアンタゴニストまたは阻害剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
PI3Kのアンタゴニストまたは阻害剤が、スニチニブ(SUTENT(登録商標))である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
Aktのアンタゴニストまたは阻害剤を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
Aktのアンタゴニストまたは阻害剤が、脳の中へ通過することができるアンタゴニストまたは阻害剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
Aktのアンタゴニストまたは阻害剤が、クロザピンまたはNelfinavir(VIRACEPT)である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
mTORのアンタゴニストまたは阻害剤を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
mTORのアンタゴニストまたは阻害剤が、脳の中へ通過することができるアンタゴニストまたは阻害剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
mTORのアンタゴニストまたは阻害剤が、ラパマイシン(シロリムス)である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
Crebのアンタゴニストまたは阻害剤を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
NF−カッパBのアンタゴニストまたは阻害剤を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
GSK−3ベータのアゴニストまたは活性化剤を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
対象がヒトである、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、経口的に、静脈内に、筋肉内に、鼻腔内に、腹膜内に、皮下に、またはクモ膜下腔内に投与する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、自閉症圏障害の診断後に投与する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、自閉症圏障害の診断前に予防的に投与する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
対象が、5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤での処置を他の方法で必要としている徴候を有しない、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
さらに、対象をPTEN欠乏および/またはSLC6A4欠乏および/または増大した循環セロトニンについて試験することを含む、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、PTEN欠乏および/またはSLC6A4欠乏および/または増大した循環セロトニンが試験によって検出される場合にのみ、対象に投与する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
さらに、対象を大頭症(脳の過成長)および/または社会的行動における欠陥、例えば社会的相互作用における欠陥および/または社会的記憶における欠陥について試験することを含む、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、大頭症および/または社会的行動における欠陥が試験によって検出される場合にのみ、対象に投与する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
さらに自閉症圏障害のための第2の治療薬を対象に投与することを含み、ここで第2の治療薬および5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤を、対象を処置するのに有効な併用量で投与する、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
第2の治療薬が、リスペリドン、オランザピン、ジプラシドン、フルオキセチンまたはPPAR−ガンマアゴニストである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
自閉症圏障害を処置する方法であって、
かかる処置を必要とする対象に、5−HT2c受容体、ホスホイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、Akt、mTOR、Crebおよび/もしくはNF−カッパBの発現を低減する1種もしくは2種以上の分子、ならびに/またはGSK−3ベータの発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子の有効量を投与して、対象を処置する
ことを含む、前記方法。
【請求項35】
発現を低減する1種または2種以上の分子が、RNA干渉を誘導する1種または2種以上の分子である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
RNA干渉を誘導する1種または2種以上の分子が、1種または2種以上の低分子干渉核酸(siNA)である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
1種または2種以上のsiNA分子が、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および低分子ヘアピン型RNA(shRNA)分子である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
対象がヒトである、請求項34〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
発現を低減する1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、経口的に、静脈内に、筋肉内に、鼻腔内に、腹膜内に、皮下に、またはクモ膜下腔内に投与する、請求項34〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
発現を低減する1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、自閉症圏障害の診断後に投与する、請求項34〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
発現を低減する1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、自閉症圏障害の診断前に予防的に投与する、請求項34〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
対象が、発現を低減する1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子での処置を他の方法で必要としている徴候を有しない、請求項34〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
さらに、対象をPTEN欠乏および/またはSLC6A4欠乏および/または増大した循環セロトニンについて試験することを含む、請求項34〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
発現を低減する1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、PTEN欠乏および/またはSLC6A4欠乏および/または増大した循環セロトニンが試験によって検出される場合にのみ、対象に投与する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
さらに、対象を大頭症(脳の過成長)および/または低下した社交性(社会的接近行動における欠陥)について試験することを含む、請求項34〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
発現を低減する1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、大頭症および/または低下した社交性が試験によって検出される場合にのみ、対象に投与する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
さらに自閉症圏障害のための第2の治療薬を対象に投与することを含み、ここで第2の治療薬ならびに発現を低減する1種もしくは2種以上の分子および/または発現を増大させる1種もしくは2種以上の分子を、対象を処置するのに有効な併用量で投与する、請求項34〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
第2の治療薬が5−HT2c受容体シグナル経路のアンタゴニストまたは阻害剤である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
第2の治療薬が、リスペリドン、オランザピン、ジプラシドン、フルオキセチンまたはPPAR−ガンマアゴニストである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
増大した頭の大きさ(外周)および/または社会的行動における欠陥によって特徴づけられる自閉症圏障害を診断する方法であって、
対象からの生体試料を、自閉症圏障害についての1種または2種以上のバイオマーカーの存在について分析することを含み、ここで1種または2種以上のバイオマーカーが、(1)1もしくは2以上の突然変異もしくは後成的変化のPten遺伝子および/もしくはSlc6a4遺伝子における存在、ならびに/または(2)正常な範囲の循環セロトニン濃度に対して増大した循環セロトニン濃度であり、
ここで自閉症圏障害についての1種または2種以上のバイオマーカーが存在することによって、対象が、増大した頭の大きさ(外周)および/または社会的行動における欠陥によって特徴づけられる自閉症圏障害を有することが示される、前記方法。
【請求項51】
Pten遺伝子および/またはSlc6a4遺伝子中の1または2以上の突然変異または後成的変化の結果、PTENの低下した発現もしくは機能および/またはSLC6A4の低下した発現もしくは機能がもたらされる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
さらに、自閉症圏障害に関する対象の状態を示す報告を作成することを含む、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
さらに、健康管理を対象に対して施す臨床医に生体試料の分析を提供することを含む、請求項50〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
社会的行動における欠陥が、社会的相互作用における欠陥および/または社会的記憶における欠陥である、請求項50〜53のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3AB】
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【図3CD】
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【図4A】
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【図4BCDE】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−515202(P2012−515202A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546263(P2011−546263)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/000097
【国際公開番号】WO2010/083044
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】