説明

臭気成分の分解又は殺菌装置、臭気成分を分解又は雑菌類を殺菌する方法及び空気清浄装置

【課題】臭気成分の分解及び雑菌類の殺菌効率をさらに向上させることができるとともに、残留毒性の危険性が無く、安全に使用できる臭気成分の分解又は殺菌装置、臭気成分を分解又は雑菌類を殺菌する方法及び空気清浄装置を提供する。
【解決手段】一重項酸素を臭気成分又は雑菌類と接触させて臭気成分を分解又は雑菌類を殺菌する分解又は殺菌装置であって、光増感色素を含んでいる液体を内部に有する処理槽と、前記臭気成分又は前記雑菌類を含む気体又は液体を前記処理槽の前記液体中に供給する気体供給器とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一重項酸素を用いた臭気成分の分解・殺菌装置、臭気成分を分解又は雑菌類を殺菌する方法及び空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、脱臭・殺菌を行う方法として、オゾンや紫外線を用いた方法、活性炭に吸着させる方法、高温ヒーターに接触させて分解する方法が知られている。しかしながら、オゾンを用いた方法は、人体に有害な物質である残留オゾンが殺菌・脱臭装置から放出される危険性があり、紫外線を用いた方法は紫外線によって容器が損傷しやすいという問題があった。また、活性炭による脱臭方法は、吸着量の増加に伴い、活性が低下するため、所定時間毎に活性炭を再生する必要がある。さらに、加熱による脱臭方法は、加熱に多大なエネルギーを必要とするため、高コストになるという問題があった。
【0003】
上記問題を解決する脱臭方法として、例えば、下記特許文献1のものが挙げられる。この特許文献1に開示されている脱臭方法は、光の吸収により三重項励起状態となり得る有機色素および/またはフラーレン類を担体に固定化し、該有機色素および/またはフラーレン類に酸素を含む気相内で紫外線などを照射することにより一重項酸素を発生させ、一重項酸素を気相中の臭気成分と接触させて臭気成分を分解する。
【特許文献1】特開2006−212383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような脱臭方法では、オゾンを用いていないため残留毒性の危険性が無く、安全に使用ができ、且つ極めて簡単な装置と低いランニングコストにより気相中の臭気成分を除去できる。しかしながら、気相中では臭気成分が拡散しており、気相中の臭気成分と一重項酸素との気気接触では、十分に臭気成分を分解できないことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、従来に比べ、臭気成分の分解及び雑菌類の殺菌効率をさらに向上させることのできる臭気成分の分解又は殺菌装置、臭気成分を分解又は雑菌類を殺菌する方法及び空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
(1) 本発明の分解又は殺菌装置は、一重項酸素を臭気成分又は雑菌類と接触させて臭気成分を分解又は雑菌類を殺菌する分解又は殺菌装置であって、光増感色素を含んでいる液体を内部に有する処理槽と、前記臭気成分又は前記雑菌類を含む気体又は液体を前記処理槽の前記液体中に供給する供給器とを有していることを特徴とする。
【0007】
(2) 本発明の分解又は殺菌装置は、前記光増感色素に光線を照射する光源を有していることが好ましい。
【0008】
上記(1)及び(2)の構成によれば、一重項酸素と液体に溶解した臭気成分及び雑菌類とが気液又は液液接触するため、より確実に一重項酸素と臭気成分及び雑菌類とを接触させることができ、臭気成分の分解及び雑菌類の殺菌効率をさらに向上させる装置を提供することができる。また、一重項酸素の寿命は極めて短く、有害性のあるオゾンも用いていないので、残留毒性の危険性が無く、安全に使用できる。さらに、処理槽が密閉容器であることから、一重項酸素が装置外部へ飛び出すことがなく、安全な装置を提供することができる。
なお、光源は可視光や太陽光を利用することができ、これらを使用すると光源に関するランニングコストを殆ど必要とすることが無い。また、太陽光を用いると光源を設置する必要がない。
【0009】
(3) 本発明の分解又は殺菌装置は、酸素を含むマイクロバブルを前記処理槽の前記液体に供給するマイクロバブル供給器を有していることが好ましい。
【0010】
上記(3)の構成によれば、処理槽内部の液体に供給されるマイクロバブルによって、臭気成分の分解及び雑菌類の殺菌をさらに促進させることができる。
【0011】
(4) 本発明の分解又は殺菌装置は、前記処理槽内部の前記液体が、水又は水を主成分とする溶液であり、前記酸素を含むマイクロバブルが、空気を用いて発生させたものであることが好ましい。
【0012】
上記(4)の構成によれば、環境汚染の心配が無く、処理槽内部の液体やマイクロバブルに関するランニングコストを殆ど必要とすることが無い。
【0013】
(5) 本発明の臭気成分を分解又は雑菌類を殺菌する方法は、光増感色素を含んでいる液体に光線を照射し、一重項酸素を発生させる工程と、前記一重項酸素と臭気成分又は雑菌類とを気液又は液液接触させる工程とからなることを特徴とする。
【0014】
上記(5)の構成によれば、従来に比べ臭気成分の分解及び雑菌類の殺菌効率をさらに向上させることができる方法を提供することができる。また、一重項酸素の寿命は極めて短く、有害性のあるオゾンも用いていないので、残留毒性の危険性が無く、安全な臭気成分の分解又は殺菌方法を提供することができる。なお、光源は可視光や太陽光を利用することができ、これらを利用すると光源に関するランニングコストを殆ど必要とすることが無い。
【0015】
(6) 本発明の空気清浄装置は、臭気成分又は雑菌類を含む空気から、清浄な空気と臭気成分又は雑菌類とに分別するスクラバーと、前記臭気成分又は雑菌類を含む空気をスクラバー内部に送入する送入器とを有する空気清浄装置であって、前記スクラバーで分別された臭気成分又は雑菌類を分解又は殺菌する(1)〜(4)のいずれか1に記載の分解又は殺菌装置を有することを特徴とする。
【0016】
上記(6)の構成によれば、臭気成分の分解及び雑菌類の殺菌効率をさらに向上させることができる空気清浄装置を提供することができる。また、分解又は殺菌装置で用いる一重項酸素の寿命は極めて短く、さらに、有害性のあるオゾンを用いていないので、残留毒性の危険性が無く、安全な空気清浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る臭気物質分解装置について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る臭気物質分解装置を示す模式図である。
【0018】
図1において、臭気物質分解装置1は、気体供給装置2と、処理槽6と、光照射装置9と、回収装置11とを有している。
【0019】
気体供給装置2は、流速計3と、鶏ふん5が配置されている臭気発生装置4とを有している。流速計3は、臭気発生装置4における鶏ふん5が収容されている空間と管を介して連通しており、気体供給装置2の上流側に設置されている。この流速計3は、気体供給装置2に供給される気体の流量を測定するものである。臭気発生装置4は、流速計3を通過した送風12と、鶏ふん5とから臭気を発生させるものである。
【0020】
処理槽6は、臭気発生装置4の鶏ふん5が収容されている空間と管を介して連通しており、前記管の少なくとも一端が浸漬される程度の量の光増感色素溶液7を内部に有している。光増感色素溶液7には、光増感色素が含まれており、光増感色素として、例えば、メチレンブルー、チオニン、ローズベンガル、エリトロシン、エオシンY、フルオレッセイン、プロフラビン、フルオレノン、ローダミンB、テトラフェニルポルフィリン、クロロフィル(葉緑素)類、クロロフィリン、ヘモグロビン類、ヘミン等の有機色素およびその誘導体を好適に用いることができる。また、フラーレン類としては、C60やC70を好適に用いることができる。気体8は、気体供給装置2から供給された気体から、光増感色素溶液7に溶解した臭気成分が除去されたもの又は除去途中のものである。
【0021】
光照射装置9は、光増感色素溶液7へ白色光10を照射するものである。なお、光増感色素としてローズベンガルを用いる際に照射する光の波長は、好ましくは490〜580nmである。また、光照射装置9にはLEDなどの光源を使用することができ、光照射装置9の代わりに太陽光を用いてもよい。
【0022】
回収装置11は、光増感色素溶液7に溶解した臭気成分が除去された気体8を回収するもので、処理槽6の内部と連通している。
【0023】
次に、本発明の第1実施形態に係る臭気物質分解装置の臭気成分の分解方法について説明する。気体供給装置2へ供給された送風12は、流速計2を通過し、臭気発生装置4で鶏ふん5と接触して臭気成分を発生する。発生した臭気成分を含む気体は、処理槽6の光増感色素溶液7へ直接供給され、気体中の臭気成分が光増感色素溶液7へ溶解する。この溶解によって臭気成分が除去された気体8は、処理槽6から回収装置11へ移動し、回収装置11で回収される。
【0024】
ここで、処理槽6の光増感色素溶液7内での臭気成分の除去について、詳細に説明する。光照射装置9から発光された白色光10が光増感色素へ照射され、光増感色素を基底状態から一重項励起状態、更に三重項励起状態とし、そのエネルギーが気体供給装置2から供給された気体中に存在する基底状態の酸素分子に与えられ、一重項酸素が発生する。そして、発生した一重項酸素と溶解している臭気成分とが接触し、臭気成分が分解される。なお、処理槽6の光増感色素溶液7へマイクロバブルを供給すると、臭気成分の分解をさらに促進させることができる。
【0025】
なお、一重項酸素は活性酸素の一種で、極めて不安定な物質であり、強力な酸化作用を有する。しかしながら、その寿命が、水中では半減期で10−6秒、空気中では10−3秒と極めて短く、水中で数センチメートル以内、空気中では数十センチメートル以内の範囲でのみ強力な酸化作用が発生し、それより離れた場所では普通の酸素に戻る。従って、一重項酸素による残留毒性の危険性が無く、また、処理槽6の密閉容器外部へ飛び出す心配も無い。
【0026】
本実施形態によれば、一重項酸素と液体に溶解した臭気成分とが気液接触するため、より確実に臭気成分と一重項酸素とを接触させることができ、臭気成分の分解効率をさらに向上させる装置1及び臭気成分を分解する方法を提供できる。また、一重項酸素の寿命は極めて短く、有害性のあるオゾンも用いていないので、残留毒性の危険性が無く、さらに、処理槽6の密閉容器外部へ一重項酸素が飛び出すことがないので、安全な臭気物質分解装置1及び臭気物質を分解する方法を提供することができる。また、光源9として太陽光や白色光を利用することができ、光増感色素溶液7として水に光増感色素を溶解したものを利用することができる。これらを利用すると、光源9や溶液7に関するランニングコストを殆ど必要とすることが無く、環境汚染の心配もない。
【0027】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置について説明する。図2は、本発明に係る空気清浄装置を示す模式図である。
【0028】
図2において、空気清浄装置21は、フィルター22と、モーター23、26と、スクラバー24と、空気調和機27と、臭気物質分解・殺菌装置28と、マイクロバブル32を発生させるマイクロバブル発生装置29とからなる。
【0029】
フィルター22は、空気清浄装置21の入口に設置されており、粒子の大きい塵埃を除去するものである。
【0030】
モーター23は、汚染空気33を空気清浄装置21に吸入し、フィルター22によって粒子の大きい塵埃が除去された汚染空気33をスクラバ−24内部へ送入するもので、フィルター22の下流側に設置されている。
【0031】
スクラバー24は、汚染空気33に洗浄液25を噴射して、汚染空気33に含まれる臭気成分及び雑菌類を分別するものである。
【0032】
モーター26は、スクラバー24で噴射された洗浄液25を臭気物質分解・殺菌装置28内部へ送入するもので、スクラバー24と臭気物質分解・殺菌装置28との間に設置されている。
【0033】
臭気物質分解・殺菌装置28は、内部に光増感色素溶液30を有しているものである。可視光・太陽光31が光増感色素溶液30へ照射されると、光増感色素が基底状態から一重項励起状態、更に三重項励起状態となり、そのエネルギーがマイクロバブル32内に存在する基底状態の酸素分子に与えられ、一重項酸素が発生する。
【0034】
マイクロバブル発生装置29は、スクラバー24内の空気からマイクロバブル32を発生させるものである。発生したマイクロバブル32が臭気物質分解・殺菌装置28へ送られると、臭気物質分解・殺菌装置28内の臭気物質の分解及び殺菌が促進される。
【0035】
空気調和機27は、スクラバー24の上部と連通している管を有し、スクラバー24から送入された空気の清浄度・温度・湿度・圧力などを指示された範囲内に調節して保つものである。
【0036】
次に、空気清浄装置21の作動を説明する。汚染空気33は、モーター23によって空気清浄機21に吸入されると、フィルター22によって粒子の大きい塵埃が除去され、その後さらにモーター23によってスクラバー24内部へ送入される。スクラバー24内では、汚染空気33に洗浄液25が噴射され、汚染空気33に含まれる臭気成分及び雑菌類が洗浄液25に溶解し分別される。臭気成分及び雑菌類が分別及び除去された空気は、空気調和機27へ送入され、清浄度・温度・湿度・圧力などが調整された後、空気清浄機21外部へ放出される。一方、スクラバー24内で分別された臭気成分及び雑菌類は、洗浄液25に溶解した状態でモーター26によって臭気物質分解・殺菌装置28へ送入される。
【0037】
臭気物質分解・殺菌装置28内では、可視光・太陽光31が光増感色素溶液30に照射され、光増感色素を基底状態から一重項励起状態、更に三重項励起状態とし、そのエネルギーがマイクロバブル32内に存在する基底状態の酸素分子に与えられ一重項酸素が発生する。発生した一重項酸素と臭気物質分解・殺菌装置28内に送入された臭気成分及び雑菌類とが接触し、臭気成分の分解及び雑菌類の殺菌が行われる。なお、臭気物質分解・殺菌装置28内では、マイクロバブル発生装置29からマイクロバブル32が供給されているので、臭気成分の分解及び雑菌類の殺菌がさらに促進される。また、マイクロバブル32は、スクラバー24内の空気を利用して発生させたものであり、汚染空気33が有効に利用されている。臭気成分の分解及び雑菌類の殺菌が行われた光増感色素溶液30は、スクラバー24に送られ、洗浄液25として繰返し利用される。なお、光増感色素として、例えば、メチレンブルー、チオニン、ローズベンガル、エリトロシン、エオシンY、フルオレッセイン、プロフラビン、フルオレノン、ローダミンB、テトラフェニルポルフィリン、クロロフィル(葉緑素)類、クロロフィリン、ヘモグロビン類、ヘミン等の有機色素およびその誘導体を好適に用いることができる。また、フラーレン類として、C60やC70を好適に用いることができる。さらに、光増感色素溶液30として、水又は水を主成分とする溶液に上記光増感色素を溶解したものを用いることができる。
【0038】
本実施形態によれば、臭気物質分解・殺菌装置28で、一重項酸素と汚染空気33に含まれている臭気成分及び雑菌類とが気液又は液液接触するため、より確実に一重項酸素と臭気成分及び雑菌類とを接触させることができ、臭気成分の分解及び雑菌類の殺菌効率をさらに向上させることができる空気清浄装置21を提供することができる。また、臭気物質分解・殺菌装置28で用いられる一重項酸素の寿命は極めて短く、さらに、有害性のあるオゾンを用いていないので、残留毒性の危険性が無く、安全な空気清浄装置21を提供することができる。
【0039】
次に、本発明の第1実施形態に係る臭気物質分解装置と同様の構成の臭気物質分解・殺菌装置の実施例を説明する。
【0040】
本発明の第1実施形態に係る臭気物質分解装置とほぼ同様の構成の臭気物質分解・殺菌装置を用いて、臭気成分の分解量を測定した。実施例1及び2で用いた臭気物質分解・殺菌装置は、気体供給装置を用いず、あらかじめ特定の臭気成分をメタノール水溶液に溶解させ、この溶液を用いた光増感色素溶液を処理槽内部の液体として用いる点が、第1実施形態に係る臭気物質分解装置と異なっている。なお、実施例1及び2において、光増感色素としてローズベンガル(RB)を用いた10μM RB溶液300mLを、処理槽内部の液体に用いた。また、RB溶液に50mL/分で気泡を送入した。
【0041】
(実施例1)
臭気成分として、メチルメルカプタン、硫化メチル及び二硫化メチルを50(%)v/vメタノール水溶液に溶解させ、メチルメルカプタン濃度100μg/L、硫化メチル濃度186μg/L及び二硫化メチル100μg/LのRB溶液を作成した。このRB溶液に白色光を照射し、RB溶液の臭気成分濃度の経時変化(10分後、20分後、30分後、60分後)をガスクロマトグラフィーで測定した。また、RB溶液に白色光を照射しなかった場合のRB溶液の臭気成分濃度の経時変化(10分後、20分後、30分後、60分後)をガスクロマトグラフィーで測定した。なお、測定は、各時間における処理槽内部の液体3mLを採取し、10(%)v/vメタノール水溶液で5倍に希釈させたものをヘッドスペースサンプラーで気化させ、ガスクロマトグラフィーで分析した。得られた結果を図3〜図5に示す。
【0042】
実施例1で用いたヘッドスペースサンプラー及びガスクロマトグラフィーの測定条件を以下に示す。
〔ヘッドスペースサンプラー(7694 Headspace sampler Agilent製)条件〕
オーブン温度:60℃
ループ温度:120℃
transfer line 温度:220℃
Incubation時間:45分
〔ガスクロマトグラフィー測定条件〕
ガスクロマトグラフィー:6890N(Agilent製)
カラム:DB−1(内径0.32mm、長さ60m、膜厚5μm) (Agilent製)
昇温条件:35℃で5分間保持した後、250℃まで昇温(昇温速度10℃/分)し、250℃で3分間保持
試料注入口温度:220℃
検出器:5380 PFPD(O−I−Analytical製)
検出温度:250℃
キャリアガス流速:ヘリウム1.5mL/分
【0043】
(実施例2)
臭気成分として、インドール及びスカトールを10(%)v/vメタノール水溶液に溶解させ、インドール濃度10.6mg/L、スカトール濃度12.5mg/LのRB溶液を作成した。このRB溶液に白色光を照射し、RB溶液の臭気成分濃度の経時変化(10分後、20分後、30分後、60分後)を液体クロマトグラフィーで測定した。また、RB溶液に白色光を照射しなかった場合及び処理槽内部の溶液にインドール濃度10.6mg/L、スカトール濃度12.5mg/Lの10(%)v/vのメタノール水溶液300mLを使用した場合の処理槽内部の溶液の臭気成分濃度の経時変化(10分後、20分後、30分後、60分後)を液体クロマトグラフィーで測定した。なお、測定は、各時間の処理槽内部の液体3mLを採取し、10(%)v/vメタノール水溶液で5倍に希釈させたものを液体クロマトグラフィーで分析した。得られた結果を図6及び図7に示す。
【0044】
実施例2で用いた液体クロマトグラフィーの測定条件を以下に示す。
〔液体クロマトグラフィー測定条件〕
カラム:JASCO Finepak SIL C−18(内径4.6mm、長さ250mm、膜厚5μm)
カラム温度:40℃
溶離液(移動相):メタノール:水=45:55
流速:1mL/分
検出器:UV−8000(TOYOSODA製)
検出波長:UV280nm
【0045】
図3〜図7から、RB溶液に白色光線を照射した場合は臭気成分が分解され、メチルメルカプタン、硫化メチル及びスカトールは供給量のほぼ全てが分解されていることがわかる。一方、RB溶液に光線を照射しなかった場合や光増感色素(ローズベンガル)を使用しなかった場合は、臭気成分がほとんど分解されていないことがわかる。従って、臭気成分の分解には、光増感色素及び光線が必要であり、いずれかが欠けると臭気成分がほとんど分解されないことがわかる。
【0046】
(実施例3)
次に、本発明の第1実施形態に係る臭気物質分解装置と同様の構成の臭気物質分解・殺菌装置を用いて、家畜の排泄物に含まれる硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、インドール及びスカトールの濃度を測定した。
【0047】
臭気発生装置に配置する家畜の排泄物は、下記の方法で作製した排泄物を用いた。まず、鶏の排泄物320gに純水120mLを加え、均一になるように混合した。実験を行うまで、この混合物を液体窒素で瞬間凍結して保存後、冷蔵庫で解凍した。解凍した鶏の排泄物50gを臭気発生装置に配置した。
【0048】
本実施例では、気体供給装置へ100mL/分で10時間通気し、鶏の排泄物から発生した臭気成分を含む気体を処理槽内部へ供給した。処理槽内部の液体は、10μM RB溶液1400mLを用いた。そして、RB溶液に白色光を照射した場合と照射しなかった場合のRB溶液の硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、インドール及びスカトールの濃度を測定した。なお、硫化水素、メチルメルカプタン及び硫化メチルの濃度は、ガスクロマトグラフィーで測定し、実施例1と同様の条件で行った。また、インドール及びスカトールは、液体クロマトグラフィーで測定し、実施例2と同様の条件で行った。得られた結果を図8に示す。図8(a)は、RB溶液に白色光を照射しなかった場合のガスクロマトグラフィーの測定結果を示す図、(b)は、RB溶液に白色光を照射した場合のガスクロマトグラフィーの測定結果を示す図である。なお、インドールの発生量は0に近く、スカトールは検出不能な微量であったため、インドール及びスカトールの結果を省略する。
【0049】
図8から、鶏の排泄物から硫化水素が多量に発生していることがわかる(図8(a)参照)。また、RB溶液に白色光を照射した場合は発生した硫化水素の殆どが分解されている(図8(b)参照)が、RB溶液に白色光を照射しなかった場合は硫化水素が分解されていないことがわかる(図8(a)参照)。従って、本発明に係る実施形態は、家畜排泄物から多量に発生する硫化水素の分解に効果的であることがわかる。また、メチルメルカプタンは硫化メチルよりも発生量が多く、全て分解されていることがわかる。
【0050】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。例えば、第1実施形態において、光照射装置を用いずに太陽光を用いると、光照射装置を設置する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る臭気物質分解装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置を示す模式図である。
【図3】本発明の実施例1に係るメチルメルカプタン濃度の経時変化を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る硫化メチル濃度の経時変化を示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係る二硫化メチル濃度の経時変化を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係るインドール濃度の経時変化を示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係るスカトール濃度の経時変化を示す図である。
【図8】(a)は、本発明の実施例3に係るRB溶液に白色光を照射しなかった場合のガスクロマトグラフィーの測定結果を示す図、(b)は、本発明の実施例3に係るRB溶液に白色光を照射した場合のガスクロマトグラフィーの測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 臭気物質分解装置
2 気体供給装置
3 流速計
4 臭気発生装置
5 鶏ふん
6 処理槽
7 光増感色素溶液
8 気体
9 光照射装置
10 白色光
11 回収装置
12 送風
21 空気清浄装置
22 フィルター
23 モーター
24 スクラバー
25 洗浄液
26 モーター
27 空気調和機
28 臭気物質分解・殺菌装置
29 マイクロバブル発生装置
30 ローズベンガル溶液
31 可視光、太陽光
32 マイクロバブル
33 汚染空気
34 浄化空気







【特許請求の範囲】
【請求項1】
一重項酸素を臭気成分又は雑菌類と接触させて臭気成分を分解又は雑菌類を殺菌する分解又は殺菌装置であって、
光増感色素を含んでいる液体を内部に有する処理槽と、
前記臭気成分又は前記雑菌類を含む気体又は液体を前記処理槽の前記液体中に供給する供給器とを有していることを特徴とする分解又は殺菌装置。
【請求項2】
前記光増感色素に光線を照射する光源を有していることを特徴とする請求項1に記載の分解又は殺菌装置。
【請求項3】
酸素を含むマイクロバブルを前記処理槽の前記液体中に供給するマイクロバブル供給器を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の分解又は殺菌装置。
【請求項4】
前記処理槽内部の前記液体が、水又は水を主成分とする溶液であり、前記酸素を含むマイクロバブルが、空気を用いて発生させたものであることを特徴とする請求項3に記載の分解又は殺菌装置。
【請求項5】
光増感色素を含んでいる液体に光線を照射し、一重項酸素を発生させる工程と、
前記一重項酸素と臭気成分又は雑菌類とを気液又は液液接触させる工程とからなることを特徴とする臭気成分を分解又は雑菌類を殺菌する方法。
【請求項6】
臭気成分又は雑菌類を含む空気から、清浄な空気と臭気成分又は雑菌類とに分別するスクラバーと、前記臭気成分又は雑菌類を含む空気をスクラバー内部に送入する送入器とを有する空気清浄装置であって、
前記スクラバーで分別された臭気成分又は雑菌類を分解又は殺菌する請求項1〜4のいずれか1項に記載の分解又は殺菌装置を有することを特徴とする空気清浄装置。
























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−284272(P2008−284272A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133989(P2007−133989)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、農林水産省、農林水産バイオリサイクル委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(399074710)株式会社横田工業商会 (3)
【Fターム(参考)】