説明

臭気成分分解性膜および機能材

【課題】本発明の目的は、簡単な構成で消臭効果が期待できる臭気成分分解性膜または成形品を提供することである。
【解決手段】本発明は、長波長の電磁波の存在下でも効率よく有機物を分解することができるナノメートルレベルの酸化チタンまたはそのチタンの一部を他の金属元素で置換した臭気成分分解性膜または成形品およびそれらを用いた各種家電品、自動車などに関するものである。すなわち、本発明は電磁波の存在下で有機物の分解性を有する保護膜であって、樹脂マトリックスに、平均粒径1〜100ナノメートルの酸化チタン粒子がマクロ的に見て均一に分散していることを特徴とする臭気成分分解性膜を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波の存在下で有機物、無機物からなる臭気成分を分解する膜、成形品、およびそれらを構成品とする各種製品たとえば食器洗浄機などの家庭電器品、生ごみ処理機、自動車などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる光触媒は、各種家電品等において、臭気成分を分解するために、たとえば真空掃除機や空調機のフィルターに、吹きつけなどにより担持させることが知られている。また、特許文献1に開示されているように、食器洗浄機の食器かご等に、光触媒を担持させて、その光触媒に紫外線を照射する構成により、臭気成分を分解している。冷蔵庫においても、庫内の構成部品に光触媒を担持させて、紫外線源を設けて有機物等の臭気成分を分解している。また、ナノレベルの酸化チタン粒子を消臭・抗菌剤として使用することは非特許文献1に記載されている。
【0003】
以上の従来技術においては、光触媒の触媒機能を発揮させるためには、紫外線レベルの短波長の電磁波が必要であるため、その応用品のコストが上昇することが考えられる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−276960号公報
【非特許文献1】(加工技術、第39巻、第2号、p.32−36(2004))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食器洗浄機、空調機、生ごみ処理機などにおいては、食器を乾燥したり、室温を調節したり、発酵を起こさせたりするために、何らかの熱源を持っているが、従来の光触媒を用いる限り、更に紫外線源等が必要となるという問題がある。したがって、本発明の目的は、簡単な構成で消臭効果が期待できる臭気成分分解性膜または成形品を提供することである。
【0006】
本発明は、各種有機物単独または他の成分と共存することによって発生する臭気を簡便かつ安価な方法で除去する技術に関する。特に、本発明は、従来公知のいわゆる光触媒とは異なって、波長の長い、たとえば赤外線のような電磁波の存在下において極めて有効に臭気の原因物質となるトリメチルアミン、メチルメルカプタンなどの有機物、硫化水素、アンモニアなどの無機物を効果的に分解する技術に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長波長の電磁波の存在下でも効率よく有機物を分解することができるナノメートルレベルの酸化チタンまたはそのチタンの一部を他の金属元素で置換し、または酸化チタン粒子に他の金属原子が担持された臭気成分分解性膜または成形品およびそれらを用いた各種家電品、自動車、消臭器などに関するものである。
【0008】
すなわち、本発明は電磁波の存在下で有機物等の臭気成分の分解性を有する保護膜であって、樹脂マトリックスに、平均粒径1〜100ナノメートルの酸化チタン粒子がマクロ的に見て均一に分散していることを特徴とする臭気成分分解性膜を提供するものである。
【0009】
更に、本発明は、電磁波の存在下で有機物の分解性を有する機能材であって、1〜100ナノメートルの平均粒径の酸化チタン粒子がマクロ的に見て樹脂マトリックスに均一に分散していることを特徴とする臭気成分分解性機能材を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、電磁波の存在下で臭気成分の分解性を有する機能材であって、平均粒径が1〜10、000ミクロン、好ましくは50〜1、000ミクロン、特に好ましくは80〜100ミクロンの樹脂粒子の表面に、平均粒径が1〜100ナノメートルの酸化チタン粒子が付着していることを特徴とする臭気成分分解性機能材を提供するものである。ナノ酸化チタン粒子の添加量は、樹脂の重量の0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%、特に0.25〜0.5重量%が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既に存在する熱源を利用して、または安価な熱源を利用して、臭気成分を効率よく分解し、臭気、汚れ、細菌等の成分を除去することができる。本発明の臭気成分分解性膜および臭気成分分解性機能材は、従来と同様に紫外線等の短波長の電磁波の存在下での使用法にも適用できることは勿論であるが、製品のコスト等の観点から、既存の熱源を利用することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、臭気成分分解性膜とは、樹脂マトリックスに平均粒径が1〜100ナノメートルの酸化チタン粒子が、マクロ的に見て均一に分散しているものを指す。樹脂マトリックスを構成する樹脂材料としては、ナイロン、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ウレタン樹脂などがあり、用途に応じて選択する。
【0013】
臭気成分分解性機能材とは、成形品等の樹脂マトリックスにマクロ的に均一に上記酸化チタン粒子が均一に分散しているものである。マトリックスを構成する樹脂は上記と同様である。
【0014】
上記において、マクロ的に均一に分散しているとは、顕微鏡的には不均一といえるかもしれないが、通常の感覚たとえば肉眼観察では均一に分散している状態を指す。元来、1〜100ナノメートルレベルの超微細な粒子は、通常、樹脂混練物内で凝集してしまい、肉眼による観察レベルでも均一分散とはなり難い場合が多い。本発明では、後で詳細に説明する方法等により、超微細粒子を樹脂内にマクロ的に均一に分散する方法によって、超微細な粒子の凝集を確実に防止したものである。また、ミクロ的に見てとは、例えば顕微鏡による観察を意味する。
【0015】
上記酸化チタン粒子は、平均粒径が1〜100ナノメートルであり、好ましくは3〜50ナノメートル、特に4〜10ナノメートルの平均粒径であることが好ましい。この酸化チタン粒子のチタン原子の一部を他の金属原子で置換してもよく、たとえば、亜鉛などがある。
【0016】
本発明は、種々の製品に適用できるが、その代表例として、食器洗浄機、真空掃除機、空調機、生ごみ処理機、冷蔵庫、自動車などがある。また、消臭が必要な場所に設置する据え置き型の消臭器としても適用できる。この場合、赤外線等の熱源を付加することが望ましい。電磁波としては、白色光、赤外線のほか、従来用いられた紫外線でも良いが、安価な白色光や熱線として用いられる赤色または赤外線が好適である。
【0017】
以下本発明を具体的な実験例等により説明する。
【0018】
ヤシ殻活性炭などの活性炭は臭気成分を吸着・捕捉するため、飽和吸着に達すれば、それ以上臭気成分を捕捉できない。しかし本発明は臭気成分を触媒作用により分解するため、基本的に触媒作用が飽和に達することがなく、その持続作用がはるかに長い。
【0019】
ナノレベルの酸化チタン粒子を消臭・抗菌剤として使用することは非特許文献1に記載されているが、酸化チタン粒子それ自体に臭気成分を接触し、あるいは活性炭にナノ粒子の希釈液(有効成分1%)を含浸、乾燥して臭気成分と接触することが試みられているだけである。またその用途例としては、インテリア(繊維分野)などが記載されている。
【0020】
このようなナノレベルの酸化チタンの具体例として、触媒化成工業(株)から販売されているATOMY BALL−(TZ−R)がある。この酸化チタンの平均粒径は5ナノメートルで、更に活性メタルとして、亜鉛が担持されている。非特許文献1によれば、この材料の毒性、安全性当も検討されていて、いずれも問題がないとされている。
【0021】
しかし、このナノ酸化チタンを有効に活用するにはいくつかの解決すべき問題点がある。特に、ナノ酸化チタンは粒径がきわめて小さいために、有効量を樹脂材料と混合しようとすると、ナノ酸化チタンが凝集して、一様な混合物が作れないことである。もし樹脂とナノ酸化チタンの均一混合物ができれば、これを種々の物品の表面に塗布し、その部品の表面に消臭効果のある被覆面を形成することができる。
【0022】
本発明者の検討により、ナノ酸化チタンの量を例えばマトリックスを構成する樹脂の0.2重量%あるいは0.5重量%にしても、マクロ的に見て均一分散した機能性膜または被覆あるいは成形品を得ることに成功した。この成功により、従来はきわめて用途が限られていたナノ酸化チタンの用途が著しく広がり、しかも有効量のナノ酸化チタンを含む製品を得ることが可能となった。
【0023】
本発明者の実験により、本発明の機能性膜または成形品は、紫外線および/または可視光の存在下は勿論のこと、単に赤外線のような長波長の電磁波の存在下で極めて高い触媒活性を示すことが明らかとなった。前記非特許文献1においては、ナノ酸化チタンは紫外線照射により触媒活性を増すと記載されているが、可視光や赤外線などの熱線照射によって高い触媒活性を示すことは、実用上きわめて重要な特徴である。
【0024】
すなわち、食器洗浄機、真空掃除機、生ごみ処理機、空調機など、何らかの熱源を持っている電気製品が多く、またこれらの熱源は当然紫外線ではなく、熱線を発生し、または利用している。したがって、本発明の機能性膜あるいは成形品を電気製品に用いれば、他の光源を用いることなく高い触媒作用が期待できる。また、上記の熱源を持たない電気製品においては、安価な熱源を付加すればよい。紫外線光源に比べて、長波長の熱源より安価な光源となりうる商品は多数存在する。
【0025】
本発明の具体例を説明する。上記酸化チタン粒子のチタン原子の一部が他の金属原子で置換または他の金属原子が上記酸化チタン粒子に付加または担持されていてもよい。上記他の金属原子は亜鉛、銅、銀、クロムなどである。
【0026】
上記樹脂マトリックスを構成する樹脂としては、ナイロンがある。ナイロンはナノ酸化チタンを含む樹脂組成物を各種家電品の構成部品に付着して機能性膜を形成するのに適している。本発明において、ナノ酸化チタンと樹脂との混合物は、非溶媒型であることが望ましい。溶媒または分散媒が含まれると、ナノ酸化チタンが組成物中で安定に存在せずに、分離または凝集することがあるからである。しかし、場合によってはナノ酸化チタンを不安定化しない種類と量の溶媒または分散媒を含んでもよい。この場合、溶媒または分散媒の量は、分散性を損なわない範囲で極力少なくすることが好ましい。
【0027】
食器洗浄機の内部構成部品の一部または全部が前記臭気成分分解性膜で被覆されている。内部構成部品としては、食器籠、洗浄ノズル、残菜フィルターなどがある。
【0028】
また、真空掃除機の排気通路の一部または全部が前記臭気成分分解性膜または臭気成分分解性機能材を有する真空掃除機がある。排気通路とは真空掃除機の本体、その中に配置されるフィルター、本体の排気口、吸い口、ホース、モータ等の内部構成品が含まれる。
【0029】
さらに、発酵を利用して生ごみを処理する生ごみ処理機の内壁または内部構成品の一部または全部が前記臭気成分分解性膜または臭気成分分解性機能材であってもよい。
【0030】
冷蔵庫の保冷庫の内部構成品または冷気の循環経路の一部または全部が前記臭気成分分解性膜または臭気成分分解性機能材である。冷蔵庫の場合は、通常庫内に熱源を持たないので、庫内の冷蔵機能を損なわないような熱源または光源を付加して、前記機能性膜または成形品の触媒作用を促進する。
【0031】
また、空調機の排気通路の一部または全部が前記臭気成分分解性膜または臭気成分分解性機能材である。空調機の場合は、発熱する要素、たとえばコンプレッサやモータが用いられるので、それらの熱を機能性膜または成形品の触媒作用を促進するように構成してもよい。勿論、別途熱源や光源を付加してもよい。
【0032】
更に、自動車の内部構成品および/または内装品が、前記臭気成分分解性膜または臭気成分分解性機能材を用いてもよい。自動車の場合、ある意味で密閉空間であるため、臭気成分が貯留しやすい。そこで、消臭器の消臭剤として前記機能性膜や成形品を用いると、持続する触媒作用によって車内の臭気を分解、除去することができる。この機能性材料を施す対象は多数あり、別置きの消臭器のほか、ハンドル、ダッシュボード、天井など任意に選択できる。
【0033】
実験例を説明する前に、典型的な適用対象例である食器洗浄機について簡単に説明する。なお、本発明の本質は、消臭機能を持った機能性膜または成形品にあるので、食器洗浄機それ自体についての詳細な説明は省略する。
【0034】
図1は本発明が適用される食器洗浄機の構成を示す正面図であり、底が深い食器1b、皿のような底の浅い食器1aを載せる食器かご2が洗浄槽3に収納される。食器かご2の下方には洗浄ノズル4および残菜フィルター6が設けられている。更に洗浄水を加熱し、食器を乾燥するために使用されるヒータ10が設けられている。洗浄水は循環ポンプ5により循環される。洗浄槽3は、上下にスライド可能な蓋8とそれを支える容器7とから構成され、食器洗浄機の操作を、操作パネル9により行う。
【0035】
図2は食器かごの構造を示す斜視図で、かご材11の表面に有機物または無機物(臭気成分)を分解する前記膜を形成する。この膜は樹脂マトリックスにナノ酸化チタンがマクロ的に見て均一に分散した機能性膜である。
【0036】
図3は食器洗浄機に用いられる洗浄ノズルの斜視図であって、ノズル本体13に複数の噴射口12a、12bが形成される。前記機能性膜はノズル本体13の表面に形成する。
【0037】
図4は食器洗浄機の残菜フィルターの斜視図であり、フィルター本体14は多孔質のフィルターを有する。前記機能性膜はフィルター14の表面に形成するか、フィルター自体を前記機能性成形品で作ることも可能である。食器洗浄機の場合、前記のすべての構成部品に機能性膜を形成し、あるいは機能性成形品で作る必要はなく、そのうちの少なくとも1つまたは一部に本発明を適用すればよい。
【0038】
本発明による機能性膜および成形品を説明する。図5は本発明の方法によって、マトリックスを構成する樹脂粒子16の表面にナノ酸化チタン粒子17を分散、担持した状態を示す平面図である。この状態の組成物を、たとえばFBC(流動床塗装法、FBC法;Fluidized Bed Coating)によって、被覆すべき物品を加熱下で付着し、これを冷却すれば、図6に示す目的の機能性膜18が形成される。ミクロ的(顕微鏡観察)には図6の機能性膜の酸化チタン粒子は均一であるとはいえない部分も存在するが、マクロ的(通常の肉眼観察)に見て、均一分散しているということができる。すなわち、ミクロ的に見ると不均一な分散であっても、マクロ的に観察したとき、一定面積に対するナノ酸化チタン粒子はほぼ均一になっている。
【0039】
成形品においても、組成物および成形品はそれぞれ図5および図6で示すことができる。またその物性も、機能性膜と同様である。本発明において、樹脂マトリックス材料に、ナノ酸化チタン粒子を可能な限り均一に分散させることが重要である。
【0040】
次に、臭気成分分解性膜または臭気成分分解性機能材の製造法を簡単に説明する。
【0041】
図7は、本発明の機能性膜の製造法の例を示すフロー図である。図において、樹脂マトリックスを構成する樹脂粉末たとえばナイロンパウダーとナノ酸化チタン水分散液(5%濃度のナノ酸化チタンをナイロンパウダー重量の5重量%添加)し、攪拌する(a)。
【0042】
本実施例ではナイロン12のパウダーを用いたが、これに限定されることは無く、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、その他のナイロン樹脂を用いることができる。しかしながら、食器洗浄機のように熱及び水分に接触する機器の場合、ナイロンは加水分解することが知られており、加水分解に対する耐性が高いナイロン11、ナイロン12等が望ましい。
【0043】
攪拌を継続し、ナイロンパウダーの粒子表面にナノ酸化チタン粒子を付着させる(b)。この工程を続けることにより、混合物は水分を失い徐々に乾燥する。この(a)および(b)の工程を取ることにより、通常は凝集してしまう超微細なナノ酸化チタン粒子をナイロンパウダーの表面に、凝集を起こすことなく、満遍なく分散することができる。このときに得られる組成物は成形材料としても用いることができる。
【0044】
次に得られた乾燥粉末を用いて、加熱した食器かご(鉄製)を、FBCベッドに浸漬し、塗装する(c)。これを取り出せば、臭気成分分解性膜が形成された食器かごが得られる(d)。
(実験例1)
ナノ酸化チタン粒子をナイロン樹脂粒子に担持させた組成物をFBC法により鋼平板に塗布し、本発明の機能性膜を形成し、以下に示す実験条件により消臭実験を行なった。
(実験条件)
アズワン株式会社製テドラーバッグ(5L)にサンプル(下記)および3Lの試験ガスを封入し、ガス濃度の経時変化を検知管法により測定した。
サンプル:ナイロン粒子(ダイセル・テグザ社製VESTOSINT 1121;ナノ酸化チタン含有率0.5%/ナイロン重量)、サンプル総表面積:12,600mm
実験条件:テドラーバック(5L)にサンプル(下記)および3Lの試験ガスを封入した。
【0045】
サンプル:ナイロン粒子(ダイセル・テグザナイロンコート;ナノ酸化チタン含有率5重量%/ナイロン重量)、サンプル総表面積;4200mmx3
ナノ酸化チタン;ATOMY BALL(TZ−R)
試験ガス;アンモニア
上記条件で消臭試験を行った結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1の結果を図にすると、図8のようになる。以上の結果から、本発明の場合は、ナノ酸化チタンを用いない場合と比べて顕著な触媒効果が認められる。本実験により、ナイロンコートのみでもある程度の消臭効果が認められなくはないが、本発明の場合と比べると、きわめて不十分である。
(実験例2)
次に、にナノ酸化チタン粒子をナイロン樹脂粒子に担持させた組成物をFBC法により食器かごに塗布し、本発明の機能性膜を形成し、以下に示す実験条件により消臭実験を行った。
【0048】
試験条件:テドラーバック(5L)にサンプルおよび3Lのガスを封入した。
【0049】
サンプル:ナイロン粒子(ダイセル・テグザ社製VESTOSINT 1121;ナノ酸化チタン含有率0.25%/ナイロン重量)、サンプル総表面積:138,600mm
サンプル総表面積:138、600mm(コーティングかご表面積:135、228mm
ナノ酸化チタン:ATOMYBALL(TZ−R)
試験ガス:アンモニア
上記の試験結果を表2に示す。またそれをグラフ化して図9に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
上記試験結果から、本発明の臭気成分分解性膜を有する食器かごは優れた臭気分解性を有することが明らかである。この特性はヤシ殻活性炭とほぼ同等である。しかし活性炭の場合は臭気成分を分解するのではなく、吸着捕捉するものであるため、飽和に達すれば活性炭を再生しない限り、更なる消臭効果は期待できない。しかし本発明の場合は触媒作用により、臭気成分を分解する機能が飽和することなく長期間その機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明が適用される食器洗浄機の構成を示す外力断面図。
【図2】食器洗浄機の食器かごの構造を示す斜視図。
【図3】食器洗浄機の戦場ノズルの構造を示す斜視図。
【図4】食器洗浄機の残菜フィルターの構造を示す斜視図。
【図5】本発明による臭気成分分解性機能材または膜を得るための樹脂粒子とナノ酸化チタン粒子の混合物の構成を示す平面図。
【図6】本発明による臭気成分分解性機能材または膜の平面図。
【図7】本発明における機能性膜の形成法を説明するフロー図。
【図8】本発明による機能性膜および比較例の消臭実験結果を示すグラフ。
【図9】本発明による機能性膜および比較例の他の消臭実験結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0053】
1a…食器、1b…食器、2…食器かご、3…洗浄槽、4…洗浄ノズル、5…循環ポンプ、6…残菜フィルター、7…容器、8…蓋、9…操作パネル、10…ヒータ、11…酸化チタン、12…噴射孔、13…ノズル本体、14…フィルター本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の存在下で臭気成分の分解性を有する保護膜であって、樹脂マトリックスに、平均粒径1〜100ナノメートルの酸化チタン粒子がマクロ的に見て均一に分散していることを特徴とする臭気成分分解性膜。
【請求項2】
電磁波の存在下で臭気成分の分解性を有する機能材であって、1〜100ナノメートルの平均粒径の酸化チタン粒子がマクロ的に見て樹脂マトリックスに均一に分散していることを特徴とする臭気成分分解性機能材。
【請求項3】
電磁波の存在下で臭気成分の分解性を有する機能材であって、平均粒径が1〜10、000ミクロンの樹脂粒子の表面に、平均粒径が1〜100ナノメートルの酸化チタン粒子が付着していることを特徴とする臭気成分分解性機能材。
【請求項4】
上記酸化チタン粒子のチタン原子の一部が他の金属原子で置換され、または酸化チタン粒子に他の金属原子が担持されていることを特徴とする請求項1記載の臭気成分分解性膜。
【請求項5】
上記他の金属原子が亜鉛であることを特徴とする請求項4記載の臭気成分分解性膜。
【請求項6】
上記樹脂がナイロンであることを特徴とする請求項1記載の臭気成分分解性膜。
【請求項7】
上記酸化チタン粒子のチタン原子の一部が他の金属原子で置換され、または酸化チタン粒子に他の金属原子が担持されていることを特徴とする請求項2記載の臭気成分分解性機能材。
【請求項8】
上記他の金属原子が亜鉛であることを特徴とする請求項7記載の臭気成分分解性機能材。
【請求項9】
上記樹脂がナイロンであることを特徴とする請求項2記載の臭気成分分解性機能材。
【請求項10】
上記酸化チタン粒子のチタン原子の一部が他の金属原子で置換され、または酸化チタン粒子に他の金属原子が担持されていることを特徴とする請求項3記載の臭気成分分解性機能材。
【請求項11】
上記他の金属原子が亜鉛であることを特徴とする請求項10記載の臭気成分分解性機能材。
【請求項12】
上記樹脂がナイロンであることを特徴とする請求項3記載の臭気成分分解性機能材。
【請求項13】
食器洗浄機の内部構成部品の一部または全部が請求項1記載の臭気成分分解性膜で被覆されていることを特徴とする食器洗浄機。
【請求項14】
内部構成部品が食器かごであることを特徴とする請求項13記載の食器洗浄機。
【請求項15】
真空掃除機の排気通路の一部または全部が請求項1記載の臭気成分分解性膜または請求項2記載の臭気成分分解性機能材を有することを特徴とする真空掃除機。
【請求項16】
発酵を利用して生ごみを処理する生ごみ処理機の内壁または内部構成品の一部または全部が請求項1記載の臭気成分分解性膜または請求項2記載の臭気成分分解性機能材であることを特徴とする生ごみ処理機。
【請求項17】
冷蔵庫の保冷庫の内部構成品の一部または全部が請求項1記載の臭気成分分解性膜または請求項2記載の臭気成分分解性機能材であることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項18】
空調機の排気通路の一部または全部が請求項1記載の臭気成分分解性膜または請求項2記載の臭気成分分解性機能材であることを特徴とする空調機。
【請求項19】
自動車の内部構成品および/または内装品が、請求項1記載の臭気成分分解性膜または請求項2記載の臭気成分分解性機能材を用いていることを特徴とする自動車。
【請求項20】
マトリックス樹脂を構成する樹脂粒子および平均粒径が1〜100ナノメートルの酸化チタン粒子を分散媒と共に分散し、混合、攪拌した後、分散媒を徐々に除去して乾燥し、得られた組成物を物品に塗布して樹脂を融着して一体化することを特徴とする臭気成分分解性膜の製造法。
【請求項21】
マトリックス樹脂を構成する樹脂粒子および平均粒径が1〜100ナノメートルの酸化チタン粒子を分散媒に分散し、混合、攪拌した後、分散媒を徐々に除去して乾燥し、得られた組成物を成形して樹脂を融着して一体化することを特徴とする臭気成分分解性機能材の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−272063(P2006−272063A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91818(P2005−91818)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(502131431)日立ホーム・アンド・ライフ・ソリューション株式会社 (302)
【Fターム(参考)】