説明

臭気量平準化方法及び装置

【課題】生物脱臭装置は微生物が生体活動を行うために臭気成分を消費することを利用する。したがって、微生物が効果的に臭気成分を分解する条件と量を供給することが、効果的な脱臭運転につながる。しかし、堆肥原料を堆肥化する間は、発生する臭気ガス量は大きく変化する。
【解決手段】流入してくる臭気ガスを水に接触させ、単位時間当たりに放出する臭気ガス中の臭気成分の流出量を平準化する臭気量平準化方法を提供する。本発明の方法によれば、臭気源からの臭気成分の供給が時間的に不安定であっても、微生物に所定の臭気成分量を供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆肥化装置等に設置する生物脱臭装置の小型化を図るため、生物脱臭装置の性能を悪化させる原因となるアンモニア等の変動を平準化する発明である。
【背景技術】
【0002】
堆肥化装置とは、動物の排泄物や、生ゴミといった廃棄有機物(堆肥原料)を土壌に還元可能なまでに分解させる(堆肥化する)装置である。堆肥化は堆肥原料中に存在する微生物によって行うため、処理には時間がかかる。堆肥化された堆肥原料は、土壌に有用な物質となるが、堆肥化前および堆肥化中は堆肥原料は臭気源となる。これらの臭気をそのまま大気中に放出するのは、環境や周囲住民への影響が大きい。従って、堆肥原料からの臭気は脱臭し、放出するのが好ましい。
【0003】
堆肥化装置からの臭気は複合臭気であり、粉塵や水蒸気なども含む。そのため、堆肥装置からの臭気を脱臭するには、生物(微生物)脱臭装置が適している。微生物は、比較的多種類の臭気を分解することができるからである。
【0004】
しかし、臭気の発生量は、堆肥化の過程の進行度合いによって大きく変動するため、生物脱臭装置の性能の維持が難しい。生物脱臭装置は微生物が臭気の成分を生体活動に使うことを利用しているので、微生物が消費する量以上の臭気を処理することはできないからである。また、逆に微生物が生体活動に必要な量の臭気を供給できなければ微生物の死滅に繋がる。
【0005】
従って、生物脱臭装置を利用する場合は、発生する臭気のピーク(最大量)に合せた設計が必要となり脱臭装置が大型化するという問題があった。
【0006】
また、生物脱臭装置は、微生物が臭気を消費することで生体活動を行うことを利用するので、臭気で微生物を飼育しているともいえる。したがって、微生物が最も活発に臭気を消費する条件で臭気の供給を行うことが、効率的に生物脱臭装置を運転することに繋がる。
【0007】
このように、臭気ガス源からの臭気ガスが経時的に大きく変化する場合に、生物脱臭装置へ供給する臭気ガス量をコントロールする技術思想は、開示されている。特許文献1では、臭気ガス処理能力の変化に合わせて、或いは充填塔式生物脱臭装置へ導入される臭気ガスの濃度に合わせて、臭気ガス量をコントロールする充填塔式生物脱臭装置の運転方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−197447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
堆肥原料を堆肥化するには、堆肥原料を放置するだけでなく、鋤き返しといった堆肥原料のかき混ぜ工程や、堆肥の発酵が進行するにしたがって、臭気の発生量が減少するといった状態の変化がある。したがって、堆肥化装置から発生する臭気ガスの量は新たな生フンが供給されるまでの間に大きく変化する。例えば、鋤き返しの工程では、発酵槽を開放し、ショベルローダで堆肥原料を堆積し直すので、堆肥化装置からの臭気ガスは極短に減少することとなる。すなわち、特許文献1の状況と類似している。
【0010】
しかし、このような状態に対して、特許文献1では、微生物に供給する臭気ガスの導入量をコントロールする手段としては、ブロアの回転数を制御する方法が開示されているだけである。確かに、ブロアの回転数を制御する方法では、過剰な臭気ガスの到来に対して、微生物に所定の量の臭気ガスを供給することはできる。しかし、臭気ガスが来ない場合に、どのように微生物に臭気ガスを供給するかが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、臭気ガスの到来若しくは未到来に係らず、生物脱臭装置に臭気ガスを供給する量を一定にする(平準化する)ことを目的とする臭気量平準化方法及び装置を提供するものである。
【0012】
より具体的に本発明の臭気量平準化方法は、
流入してくる臭気ガスを水に接触させ、単位時間当たりに放出する臭気ガス中の臭気成分の流出量を平準化することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の臭気量平準化装置は、
流入された臭気ガスを水に吸収および放出させ前記臭気ガス中の臭気成分量を平準化する平準化手段と、前記平準化手段を経た臭気ガスを流出させる流出手段を備えた事を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、臭気ガスを吸収および放出する蓄積体となる液体(水)を蓄積しておく蓄積槽を有するので、堆肥化装置等の臭気源からの臭気ガスが多くなり循環水では吸収できなくなった場合は、循環水を蓄積槽に移し、臭気ガスに接触していない新たな水を回収水槽に供給するため、蓄積槽の量だけ、臭気ガスを吸収することができる。
【0015】
また、本発明は、臭気ガスの量が減少した場合は、臭気ガスを吸収した回収水を生物脱臭装置に供給するので、生物脱臭装置側からみると、常に一定の臭気成分を供給されることとなる。したがって、生物脱臭装置の効率的な運転が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の臭気量平準化装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照しながら、本発明の臭気量平準化方法とそれを実施する臭気量平準化装置について説明する。なお、以下の説明は本発明の一例を示すのであって、本発明の趣旨の範囲内で変更することができる。
【0018】
図1を参照して、本発明の臭気量平準化装置10は、湿式のスクラバーであり、その取入れ口10iと図示しない臭気源(堆肥化装置等)とが連結されている。また、排気口10oはブロア26を介して生物脱臭装置70が連結されている。
【0019】
臭気量平準化装置10は、回収水槽12と、気液接触部14と、蓄積槽24と、ブロア26と熱交換器22、23を含む。気液接触部14は、縦型のパイプ形状であり、下方部に臭気ガスGaの取入れ口10iが設けられ、上方部に排気口10oが設けられている。すなわち、臭気ガスは気液接触部14の下方部から入り、上方部から出る。取入れ口10iには、三方弁52が連結されており、臭気ガスGaに空気(Air)を混在させることができる。内部には循環水Wcが下部から上部に向かう流通部16が設けられている。
【0020】
流通部16は、内部に循環水Wcが通るパイプである。流通部16の周囲には、その表面に垂直方向に固定された板材で、下方部から上方部に向かって螺旋状に形成された螺旋部18が設けられている。すなわち、螺旋部18は気液接触部14の内面と、流通部16の表面との間に下方から上方に向かう螺旋状の通路を形成する。
【0021】
また、流通部16の表面には、螺旋部18に沿って、散水口20が複数箇所に形成されている。図1(b)には、気液接触部14を上方から見た断面図を示す。気液接触部14の内側に螺旋部18が形成され、散水口20から循環水Wcが散水されている。循環水Wcは、散水口20から螺旋部18に沿った方向に噴霧される。
【0022】
回収水槽12は、気液接触部14の下方に配置される。ここには、気液接触部14内部に散水された循環水Wcが貯留される。貯留された循環水Wcは、再び流通部16の散水口20まで運ばれ、気液接触部14内部で散水されるので、循環ポンプ28が回収水槽12中に配置されている。つまり、循環ポンプ28が循環水Wcを流通部16に沿って送水する。循環ポンプ28には、空気取入れ口32が連結され、空気の混入した循環水Wcを気液接触部14内に散水することができる。従って、回収水槽12、循環ポンプ28および流通部16は水供給手段であり、散水口20は散水手段である。
【0023】
また、回収水槽12には、これまで使用されていない水(非回収水)Wvを供給する非回収水供給手段30が連結される。非回収水供給手段30は、再生水を含む工業用水等が好適に利用できる。また、回収水槽12には、回収水槽12内の循環水Wcを汲みだすポンプ36も配置されている。後述するように循環水Wcを汲み出すためである。
【0024】
ポンプ36からは、循環水Wc移送用のパイプが、三方弁54を介して、蓄積槽24若しくはさらに三方弁56を介して生物脱臭装置70の噴霧手段65に連結されている。
【0025】
また、回収水槽12には、熱交換器22も連結されている。熱交換器22は、回収水槽12内の循環水Wcを加熱若しくは冷却することができる。
【0026】
蓄積槽24は、回収水槽12に並設される貯留タンクである。ここには、気液接触部14で、臭気ガスGaと接触し、臭気ガスGaを吸収した回収水Wnが貯留されている。蓄積槽24には、回収水Wnを汲みだすポンプ38と熱交換器23が配置されている。ポンプ38からは回収水Wnの移送用パイプが三方弁56を介して生物脱臭装置70内の噴霧手段65に連結されている。なお、循環水Wcも臭気ガスGaと接触しているので、回収水Wnと同じものであるといえる。回収水槽12内に留まって、気液接触部14中を循環している間は循環水Wcと呼ぶ。
【0027】
また、蓄積槽24には、マイクロバブル発生装置29が設けられていてもよい。さらに、ここでも非回収水Wvを供給する非回収水供給手段34が設けられていてもよい。
【0028】
気液接触部14の排気口10oからは、循環水Wcと接触した臭気ガスGbを送流するダクトが三方弁58を介してブロア26に連結される。三方弁58の他の一方は大気になっており、臭気ガスGbに空気を混入させることができる。ブロア26の出口からのダクトは生物脱臭装置70に繋がる。つまりブロア26は臭気ガスの流出手段である。
【0029】
また、気液接続部14の取入れ口10iには臭気ガスセンサ42、回収水槽12には臭気成分センサ43と液温センサ44、蓄積槽24には液温センサ45と臭気成分センサ46、ブロア26の出口には温湿度センサ47と風量センサ48と臭気ガスセンサ49がそれぞれ設けられている。
【0030】
以上のセンサ類と、循環ポンプ28、熱交換器22、23、マイクロバブル発生装置29、ポンプ36、38、三方弁52、54、56、58、空気取入れ口32、非回収水供給手段30、34は、制御装置60と電気的に連結されており、制御装置60はそれぞれに開閉若しくは駆動の指示を出すことができ、また、センサ類からは、その測定値を信号として得る事ができる。
【0031】
なお、生物脱臭装置70について簡単に説明する。生物脱臭装置70は、硝化槽72と脱窒槽74とpH調整剤供給手段76と混合手段78を有する。硝化槽72には、好気性微生物が付着した担体が充填された硝化層72aが筒状に設けられ硝化層72aの外面と硝化槽72の内面の間に嫌気性微生物を付着させた担体を充填した脱窒層72bが形成されている。
【0032】
硝化層72aと脱窒層72bの底面は硝化槽72の底面から底上げされており、これらの下方に硝酸性物質貯留槽72cが構成されている。硝酸性物質貯留槽72cにはポンプ73が配置され、脱窒槽74中に配置された噴霧手段75に連結されている。
【0033】
一方、脱窒槽74の内部には、嫌気性微生物が付着した担体が充填された脱窒層74aが筒状に設けられ脱窒層74aの外面と脱窒槽74の内面の間を通路74bが形成されている。
【0034】
これらの下方にはアルカリ液貯留槽74cが形成されている。また、アルカリ液貯留槽74cからは排水パイプに混合手段78が接続されており、混合手段78にはpH調整剤供給手段76が連結されている。
【0035】
次に生物脱臭装置70の動作を簡単に説明する。ブロア26から送られた臭気ガスGcは、硝化槽72の上部から硝化層72aに吹き込まれる。臭気ガスGc中の臭気成分(主にはアンモニアガス)は、好気性微生物によって水と硝酸性物質に分解される。そして、硝酸性物質のうち、蒸発性ガスGdは、脱窒層72bを通過する間に、窒素に分解され硝化槽72上部から放出される。ここでは臭気性成分は分解されているので、放出しても環境や近隣の住民の負担にはならない。
【0036】
また、硝酸性物質貯留槽72cに溜まった硝酸性物質は、ポンプ73を介して脱窒槽74の噴霧手段75に送られる。噴霧手段75は、嫌気性微生物を有する担体が充填された脱窒層74a内に硝酸性物質を噴霧する。すると嫌気性微生物が硝酸性物質をアルカリ液と窒素に分解する。
【0037】
窒素は通路74bを通過して脱窒槽74の上部から放出される。また、アルカリ液貯留槽74cに溜まったアルカリ液は、pH調整剤供給手段76からのpH調整剤で中和された後、再生水Wrとして放出若しくは再利用される。
【0038】
このような生物脱臭装置70に連結される臭気量平準化装置10の動作について説明する。臭気源から発生した臭気ガスGaは、三方弁52を介して取入れ口10iから気液接触部14内に導入される。この時、循環ポンプ28は駆動しており、循環水Wcが流通部16を昇りながら、散水口20から気液接触部14内に散水されている。循環水Wcは、熱交換器22によって所定の温度に調整されている。循環水Wcの水温は液温センサ44からの液温データに基づいて制御装置60が熱交換器23を制御して所定の値に調整する。
【0039】
気液接触部14内に導入された臭気ガスGaは、循環水Wcと接触し、臭気成分の一部を循環水に吸収される。また、循環水Wcによって温度湿度が所定の値になる。さらに、臭気ガスGaの供給がない場合でも、気液接触部14内で循環水Wcを散水することで、臭気ガスを放出することができる。
【0040】
すなわち、臭気成分の濃度および温度湿度が所定の値に調整された臭気ガスGbとして排気口10oから排出されるとともに、後段(生物脱臭装置70)への供給量も平準化される。特に後述する実施例によれば、臭気成分の吸収および放出は単位臭気ガス当たりに散水する量である液ガス比(L/m)で制御することができる。気液接触部14からの臭気ガスGbは、ブロア26で所定の風量に設定され、臭気ガスGcとなって生物脱臭装置70に送られる。
【0041】
ブロア26からの臭気ガスGcの温湿度、風量、臭気成分量は、それぞれ温湿度センサ47、風量センサ48、臭気ガスセンサ49によって測定される。これらの計測値は、制御装置60に送られ、制御装置60がこれらの値をモニタする。臭気ガスGcの温湿度、風量、臭気成分量は、生物脱臭装置70内の微生物にとって、摂取し易い条件に整えられる。
【0042】
特に臭気ガスGbの湿度は80%以上に調整されるのが望ましい。高湿度の気体は、微生物をよく活性化するからである。また、臭気ガスGcによって単位時間に微生物に供給される臭気成分量は、風量センサ48および臭気ガスセンサ49からの測定値で算出することができる。つまり、風量センサ48および臭気ガスセンサ49と制御装置60が臭気成分検出手段を構成する。
【0043】
上記のように、臭気ガスGc内の臭気成分量の変化は液ガス比によって平準化することができるが、ブロアの制御だけでも行うことができる。例えば、臭気ガスGc内の臭気成分量がわずかに上昇した(濃度が上昇した)とする。臭気ガスセンサ49を介してこれを検知した制御装置60は、ブロア26の風量を下げる。風量を下げることで、単位時間内に生物脱臭装置70に送られる臭気成分の量は減少する。つまり、微生物側からみると、臭気ガスGc内の臭気成分量が変化しても、一定の臭気成分量を供給されていることになる。
【0044】
また、制御装置60は、三方弁58からわずかに空気を導入して、臭気成分の濃度を下げてもよい。また、風量調整と、空気の導入を交互に行いながら調整してもよい。また、臭気ガスGc内の臭気成分量がわずかに減少した(濃度が低下した)場合は、制御装置60は逆にブロア26の風量を上昇させ、やはり単位時間内に微生物に供給する臭気成分量を所定の値に保つことができる。
【0045】
循環水Wcは、臭気ガスGaと接触することで臭気成分の一部を取り込む(臭気成分が溶け込む)ので、循環水Wc内の臭気成分量は時間と共に上昇する。循環水Wc内の臭気成分量は臭気成分センサ43によって制御装置60がモニタしている。臭気成分を含んだ循環水Wcは、回収水Wnと呼ぶ。回収水Wnは、その温度ではそれ以上の臭気成分をほとんど吸収することができない。
【0046】
しかし、臭気源からの臭気ガスGaが減ることで臭気ガスGc中の臭気成分量が低下した場合は、逆に臭気成分を含んだ循環水Wc(回収水Wn)は、気液接触部14内に散布されることで空気中に臭気成分を放出する。つまり、回収水Wnを気液接触部14内に散布することは、結果的に臭気ガスGc中の臭気成分量の変動を吸収し(平準化し)、微生物に所定の値の臭気成分を供給することができる(実施例における供給濃度0ppm参照)。
【0047】
しかし、循環水Wcが臭気成分を十分に吸収し、なおかつ臭気ガスGaの量が増え、ブロア26による風量調整でも、生物脱臭装置70側に所定量以上の臭気成分が送られる場合は、循環水Wcの一部を蓄積槽24に移し、臭気成分に接触していない非回収水Wvを非回収水供給手段30から回収水槽12内に導入する。このようにすることで、循環水Wc中の臭気成分量は減少し、臭気ガスGa中の臭気成分を吸収することができる。すなわち、再び微生物に所定の値の臭気成分を供給することができる。
【0048】
なお、循環水Wcを蓄積槽24に移動させるのは、制御装置60の指示によって、ポンプ36、三方弁54、を駆動させることで行うことができる。その後、非回収水供給手段30から非回収水Wvを導入する。また、制御装置60は、循環水Wc中の臭気成分量を臭気成分センサ43で知り、また臭気ガスセンサ42によって臭気ガスGa中の臭気成分情報を得た後、所定の判断基準で上記の指示を出す。
【0049】
次に臭気源からの臭気ガスGaの供給が停止若しくは非常に減少してしまった場合について説明する。臭気ガスGaの停止は、臭気源である堆肥化装置内で、鋤き返し等の作業を行う場合や、堆肥原料の入れ替えを行う場合、若しくは、堆肥原料の発酵が進んで、臭気ガスGaの発生が無くなってきた場合に起こり得る。
【0050】
このような場合は、まず臭気成分を吸収し回収水Wnとなっている循環水Wcを気液接触部14内で散布を行う。これによって、回収水Wn内の臭気成分が放出されるので、臭気成分を微生物に供給することができる。
【0051】
しかし、それでも微生物に供給する臭気成分量が不足する場合は、蓄積槽24内の回収水Wnをポンプ38によって三方弁56を介して、噴霧手段65によって硝化槽72内の硝化層72aの上方から噴霧する。その際、蓄積槽24内の回収水Wnの温度を液温センサ45で確認し、所定の温度に足りない場合は、熱交換器23によって温度を上げる。もちろん、所定の温度より高い場合は熱交換器23によって回収水Wnの温度を下げる。
【0052】
また、この際に使用する回収水Wnにはマイクロバブル発生装置29によって、マイクロバブルを混入させてもよい。マクロバブルは細かい気泡であって、特に硝化層72a中の好気性微生物にとっては、取り込みやすい大きさの空気泡となるので、微生物の活動が活性化させる。マイクロバブル発生としては、高圧下で溶解させた気体を減圧してマイクロバブルを発生させる方法、あるいは、毎秒400〜600回転の渦流を生成させて巻き込んだ空気を剪断力でマイクロバブルに粉砕する方法などがある。
【0053】
以上のように、ブロア26、気液接触部14、回収水槽12および蓄積槽24によって、臭気源からの臭気ガスの量が変化しても、後段である生物脱臭装置70への臭気成分の供給量を平準化することができるので、これらは、平準化手段と呼べる。
【実施例】
【0054】
次に、気液接触部14内での一定温度の循環水Wcの散水によって、気液接触部14からの臭気ガスGbの方出力がどの程度平準化されるかを調べた結果を示す。臭気成分はアンモニアとして、濃度0ppmと濃度900ppmの臭気ガスを風量3m/分で供給したときに、単位風量当たりに散水する水の量(液ガス比)と、気液接触部14から排出される臭気ガス中のアンモニア濃度を調べた。なお、臭気ガスの温度は12℃〜14℃であり散水する循環水の液温は32℃〜35℃でほぼ一定であった。
【0055】
また、濃度0ppmからと濃度900ppmの実験はできるだけ交互に行った。濃度0ppmからの実験は、循環水中のアンモニアの放出の様子が知りたく、また濃度900ppmからの実験は、循環水中へのアンモニアの吸収の様子が知りたいからである。
【0056】
表1にアンモニア濃度900ppmの時の液ガス比と、出口でのアンモニア濃度の値を示す。液ガス比が3.8L(リットル)/m(立法メートル)では、900ppmの濃度が667ppmまで低下し、循環水に吸収されたと考えられる。液ガス比を増加させると、出口でのアンモニア濃度は低下し、45.9L/mでは、400ppmまで低下した。
【0057】
【表1】

【0058】
表2にアンモニア濃度が0ppmの時の液ガス比と出口でのアンモニア濃度の値を示す。液ガス比が3.8L/mでは、0ppmの濃度が132ppmまで上昇した。これは循環水中のアンモニアが放出されたと考えられる。出口でのアンモニア濃度は、液ガス比を上げるに従って上昇し、液ガス比が45.9L/mの時には、出口でのアンモニア濃度は320ppmまで上昇した。
【0059】
【表2】

【0060】
以上の結果より、循環水の液ガス比を変化させることで、臭気成分が多い場合は、所定量まで循環水中に臭気成分を吸収させることができ、また、臭気成分が少ない場合は、所定量まで循環水中の臭気成分を放出させることができる。これは、微生物に供給する臭気成分量を平準化している。
【0061】
また、表1、表2の結果から、平準化のために必要な単位風量当たりに散水する水の量である液ガス比(散水量L/風量m)は、略30(L/m)以上にするのが好ましい。また、散水量は少ない程、省エネである。従って、実用上平準化に対して効果があるのは、液ガス比と散水量を考慮し、30〜50(L/m)程度が好ましい範囲であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、臭気源からの臭気ガスを生物脱臭装置で脱臭する際に、臭気ガスの生物脱臭装置に供給量を平準化することができる。従って、生物脱臭装置の前段に利用すれば、生物脱臭装置の効果的な運転が可能となる。
【符号の説明】
【0063】
10 臭気量平準化装置
10i 取入れ口
10o 排気口
12 回収水槽
14 気液接触部
16 流通部
18 螺旋部
20 散水口
22、23 熱交換器
24 蓄積槽
26 ブロア
28 循環ポンプ
29 マイクロバブル発生装置
30 非回収水供給手段
32 空気取入れ口
34 非回収水供給手段
36 ポンプ
38 ポンプ
42 臭気ガスセンサ
43 臭気成分センサ
44 液温センサ
45 液温センサ
46 臭気成分センサ
47 温湿度センサ
48 風量センサ
49 臭気ガスセンサ
52、54、56、58 三方弁
60 制御装置
65 噴霧手段
70 生物脱臭装置
72 硝化槽
72a 硝化層、72b 脱窒層、72c 硝酸性物質貯留槽
73 ポンプ
74 脱窒槽
74a 脱窒層、74b 通路、74c アルカリ液貯留槽
75 噴霧手段
76 pH調整剤供給手段
78 混合手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入してくる臭気ガスを水に接触させ、単位時間当たりに放出する臭気ガス中の臭気成分の流出量を平準化する臭気量平準化方法。
【請求項2】
前記流入してくる臭気ガスに一定温度の水を散水して、前記単位時間当たりに放出する臭気ガス中の臭気成分の流出量の平準化を行う請求項1記載の臭気量平準化方法。
【請求項3】
前記散水した水を回収し、当該回収した水を再度前記臭気ガスに散水する請求項2記載の臭気量平準化方法。
【請求項4】
前記臭気成分の流出量が所定量より多い場合は、
前記所定量になるように散水する水に非回収水を混入する請求項3記載の臭気量平準化方法。
【請求項5】
前記臭気成分の流出量が所定量より少ない場合は、前記所定量になるように前記回収した水も前記後段に供給する請求項3記載の臭気量平準化方法。
【請求項6】
前記回収した水にマイクロバブルを混入することを特徴とする請求項5記載の臭気量平準化方法。
【請求項7】
前記臭気ガスを、前記後段に送る臭気ガス量を増減して平準化を行う請求項1乃至6のいずれかに記載の臭気量平準化方法。
【請求項8】
前記臭気ガスの温度を所定温度に制御し、湿度を80%以上に制御する請求項1乃至7のいずれかに記載の臭気量平準化方法。
【請求項9】
前記後段には、前記臭気を脱臭する微生物が配置される請求項1乃至8のいずれかに記載の臭気量平準化方法。
【請求項10】
流入された臭気ガスを水に吸収および放出させ前記臭気ガス中の臭気成分量を平準化する平準化手段と、
前記平準化手段を経た臭気ガスを流出させる流出手段を備えた臭気量平準化装置。
【請求項11】
前記平準化手段は、
一定水温の水を供給する水供給手段と、前記水を散水する散水手段からなる請求項10記載の臭気量平準化装置。
【請求項12】
前記散水した水を回収水として回収する回収水槽を備え、前記回収水を前記水供給手段に供給する請求項11記載の臭気量平準化装置。
【請求項13】
臭気ガスセンサをさらに備え、前記臭気ガスセンサにより前記放出する臭気ガスの臭気成分量を求める臭気成分検出手段と、
前記放出する臭気ガス中の臭気成分量が所定量より多い場合は、前記所定量になるように
前記回収水槽に非回収水を供給する非回収水供給手段を有する請求項12記載の臭気量平準化装置。
【請求項14】
臭気ガスセンサをさらに備え、前記臭気ガスセンサにより前記放出する臭気ガスの臭気成分量を求める臭気成分検出手段と、
前記放出する臭気ガス中の臭気成分量が所定量より少ない場合は、臭気成分量の不足分を含む量の前記回収水を送水する回収水後段供給手段を有する請求項12記載の臭気量平準化装置。
【請求項15】
前記流出手段は臭気ガスを後段に送風する送風手段を含み、前記送風手段により後段に送る臭気ガス量を増減して平準化を行う請求項10乃至14のいずれかに記載の臭気量平準化装置。
【請求項16】
前記臭気ガスの温度を所定温度に制御する制御手段を備えた請求項10乃至15のいずれかに記載の臭気平準化装置。
【請求項17】
後段を微生物脱臭装置とする請求項10乃至16のいずれかに記載の臭気量平準化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−27817(P2013−27817A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165288(P2011−165288)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(591261336)パナソニック環境エンジニアリング株式会社 (29)
【Fターム(参考)】