説明

臭素酸イオンの測定方法及び測定装置

【課題】測定に必要な塩酸濃度を低下させつつ臭素酸イオン濃度を精度高く測定すること。
【解決手段】臭素酸イオンとの共存によって蛍光強度が変化する蛍光物質を試料水に添加し、塩酸添加により酸性条件とする第1工程と、蛍光物質の蛍光強度を計測する第2工程と、臭素酸イオンを含まない標準試料水の蛍光強度と計測された蛍光強度との差を蛍光強度差として算出する第3工程と、予め求めた蛍光強度差と臭素酸イオン濃度との検量線を用いて、算出された蛍光強度差から臭素酸イオン濃度を算出する第4工程とを含む臭素酸イオンの測定方法において、第2工程が、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び480nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時のうちのいずれかの時の蛍光強度を計測する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料水中の臭素酸イオン濃度を測定する臭素酸イオンの測定方法及び測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川水等の水道原水中には臭化物イオン(Br)が含まれており、水道原水に対しオゾン処理を施すと、臭化物イオンとオゾンとが反応し、臭素酸イオン(BrO)が生成される。臭素酸イオンは、発がん性物質であると考えられている。このため、WHO(世界保健機構)は、飲料水中における臭素酸イオン濃度のガイドライン値を10μg/Lに定めている。また日本国では、2003年5月30日付けで公布された水質基準に関する省令の改正を行い、水道水中における臭素酸イオン濃度の基準値を10μg/Lと定めている。
【0003】
水中における臭素酸イオン濃度の測定方法として、イオンクロマトグラフ−ポストカラム吸光光度法(IC−PC法)が知られている。IC−PC法は、陰イオン交換カラムを用いて試料水中の臭素酸イオンを分離し、臭素酸イオンの溶出液に硫酸と亜硝酸ナトリウム・臭化ナトリウム混合液とを加えることによって臭素酸イオンを三臭化物イオンに変換し、三臭化物イオンの紫外光吸光度を測定することによって臭素酸イオンを定量する方法である。このIC−PC法では、2段階反応が行われ、第1段反応では臭化カリウム/硫酸溶液によって臭素酸を三臭化物イオンに変換し、第2段反応で亜硝酸ナトリウム溶液を用いて低濃度領域における検量線の直線性を確保する必要がある。このため、IC−PC法による臭素酸イオン濃度の測定操作は煩雑であり、プロセス機器への適用は難しい。
【0004】
このような背景から、近年、蛍光強度を利用して臭素酸イオン濃度を測定する方法が提案されている。この方法では、試料水に臭素酸イオンとの共存により反応する蛍光物質であるリフルオペラジン(TFP)と塩酸を添加し励起波長300nm及び蛍光波長480nmで蛍光強度を計測し、臭素酸イオンを含まない標準試料との蛍光強度差を算出する。そして、蛍光強度差と臭素酸イオン濃度との検量線を用いて算出された蛍光強度差から臭素酸イオン濃度を測定する。この方法によれば、臭素酸イオンを簡便、迅速、且つ、高精度に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−119925号公報
【特許文献2】国際公開第09/116554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、TFPは励起波長及び測定蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時に消光反応を示す。しかしながら、励起波長が300nmで、測定蛍光波長480nmのとき、検量線の直線性を確保できる最適な塩酸濃度は6Nときわめて高い。このため、従来の方法では、測定に用いる塩酸濃度が高いために、機器が腐食しやすく、またランニングコストが高くなる。さらに、この測定条件では、共存する硝酸イオンによって検量線の傾きが変化することにより臭素酸イオン濃度を正確に測定できないことがあった。このような背景から、測定に必要な塩酸濃度を低下させつつ臭素酸イオン濃度を共存物質の影響を受けずに精度高く測定可能な技術の提供が期待されていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、測定に必要な塩酸濃度を低下させつつ臭素酸イオン濃度を精度高く測定可能な臭素酸イオンの測定方法及び測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る臭素酸イオンの測定方法は、臭素酸イオンとの共存によって蛍光強度が変化する蛍光物質を試料水に添加し、塩酸添加により酸性条件とする第1工程と、蛍光物質の蛍光強度を計測する第2工程と、臭素酸イオンを含まない標準試料水の蛍光強度と計測された蛍光強度との差を蛍光強度差として算出する第3工程と、予め求めた蛍光強度差と臭素酸イオン濃度との検量線を用いて、算出された蛍光強度差から臭素酸イオン濃度を算出する第4工程とを含む臭素酸イオンの測定方法において、前記第2工程が、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び480nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時のうちのいずれかの時の蛍光強度を計測する工程を含む。
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る臭素酸イオンの測定装置は、臭素酸イオンとの共存によって蛍光強度が変化する蛍光物質を試料水に添加し、塩酸添加により酸性条件とする手段と、蛍光物質の蛍光強度を計測する手段と、臭素酸イオンを含まない標準試料水の蛍光強度と計測された蛍光強度との差を蛍光強度差として算出する手段と、予め求めた蛍光強度差と臭素酸イオン濃度との検量線を用いて、算出された蛍光強度差から臭素酸イオン濃度を算出する手段とを備える臭素酸イオンの測定装置において、前記計測する手段が、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び480nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時のうちのいずれかの時の蛍光強度を計測する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る臭素酸イオンの測定方法及び測定装置によれば、測定に必要な塩酸濃度を低下させつつ臭素酸イオン濃度を精度高く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、臭素酸イオン濃度がそれぞれ0μg/L及び20μg/Lである試料水にTFP溶液を添加し、塩酸添加により酸性条件とした時のTFPの励起蛍光スペクトルを示す図である。
【図2】図2は、塩酸濃度が6mol/Lである時の各ピーク波長における臭素酸イオン濃度の変化に対する蛍光強度(F.I.)の変化を示す図である。
【図3】図3は、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時の、塩酸濃度の変化に伴う臭素酸イオン濃度が0μg/Lの時の蛍光強度(F.I.)及び臭素酸イオン濃度が0μg/Lである時の蛍光強度と臭素酸イオン濃度が20μg/Lである時の蛍光強度との蛍光強度差の絶対値(ΔF.I.)の変化を示す図である。
【図4】図4は、塩酸濃度が各ピーク波長における最適塩酸濃度である時の各ピーク波長について求められた蛍光強度(F.I.)と臭素酸イオン濃度との検量線を示す図である。
【図5】図5は、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時の、臭素酸イオン濃度がそれぞれ0μg/L及び20μg/Lである試料水に関する反応時間の経過に伴う蛍光強度(F.I.)及び臭素酸イオン濃度が0μg/Lである時の蛍光強度と臭素酸イオン濃度が20μg/Lである時の蛍光強度との蛍光強度差の絶対値(ΔF.I.)の変化を示す図である。
【図6】図6は、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時の、硝酸イオン濃度の変化に伴う蛍光強度(F.I.)及び臭素酸イオン濃度が0μg/Lである時の蛍光強度と臭素酸イオン濃度が20μg/Lである時の蛍光強度との蛍光強度差の絶対値(ΔF.I.)の変化を示す図である。
【図7】図7は、各ピーク波長における塩素酸イオンの濃度変化に対する臭素酸イオン濃度が0μg/Lの時の蛍光強度(F.I.)の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である臭素酸イオンの測定方法について説明する。
【0013】
〔蛍光スペクトル解析〕
本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねてきた結果、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時以外にもTFPの蛍光強度が変化することを発見した。具体的には、図1(a),(b)はそれぞれ、臭素酸イオン濃度が0μg/L及び20μg/Lである試料水にTFP溶液(294μM)を添加し、塩酸添加により酸性条件とした時のTFPの励起蛍光スペクトルを示す図である。励起蛍光スペクトルは、株式会社島津製作所製の分光蛍光光度計RF−5300PC及び日立ハイテクノロジーズ株式会社製の分光蛍光光度計F−2700を用いて測定した。
【0014】
図1(a)と図1(b)との比較から明らかなように、試料水中に臭素酸イオンが存在する場合には、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時(領域R1)、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時(領域R2)、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び480nmである時(領域R3)、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時(領域R4)に、励起蛍光スペクトルのピークが測定された。
【0015】
そこで、本発明の発明者らは、励起蛍光スペクトルのピークが測定される励起波長及び蛍光波長(以下、ピーク波長と表記)における、臭素酸イオン濃度の変化に対する蛍光強度の変化を解析した。図2は、各ピーク波長における臭素酸イオン濃度の変化に対する蛍光強度(F.I.)の変化を示す図である。図2に示すように、蛍光波長が480nm(領域R3,R4のピーク波長)である時には、臭素酸イオン濃度の増加に伴い蛍光強度が減少する消光反応が生じることが確認された。これに対して、蛍光波長が400nm(領域R1,R2のピーク波長)である時には、臭素酸イオン濃度の増加に伴い蛍光強度が増加する蛍光反応が生じることが確認された。
【0016】
〔最適塩酸濃度の評価〕
次に、本発明の発明者らは、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時の最適塩酸濃度を評価した。図3(a),(b)はそれぞれ、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時の、塩酸濃度(HCl)の変化に伴う臭素酸イオン濃度が0μg/Lの時の蛍光強度(F.I.)及び臭素酸イオン濃度が0μg/Lである時の蛍光強度と臭素酸イオン濃度が20μg/Lである時の蛍光強度との蛍光強度差の絶対値(ΔF.I.)の変化を示す図である。
【0017】
図3(b)に示すように、従来の測定波長である励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時には、塩酸濃度が4.5〜6mol/L[N]の範囲内において塩酸濃度の変化に対する蛍光強度差が最大であり、また直線性も保たれた。最適塩酸濃度は4.5〜6mol/L[N]の範囲内であったが、4.5mol/L[N]では十分な再現性が得られなかったため、再現性から最適な塩酸濃度は6mol/L[N]であるとした。一方、図3(a)に示すように、新たに確認されたピーク波長である励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時には、塩酸濃度が1.5〜3mol/L[N]の範囲内において塩酸濃度の変化に対する蛍光強度差が最大であり、また直線性が保たれた。最適な塩酸濃度は1.5〜3mol/L[N]の範囲内であったが、再現性から最適な塩酸濃度は3mol/L[N]であるとした。
【0018】
以上のことから、励起波長及び蛍光波長をそれぞれ264nm及び400nmとすることによって、従来の塩酸濃度の1/2程度に塩酸濃度を低下させることができることが発見された。なお、図示しないが、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び480nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時にも同様に、塩酸濃度を低下できることが知見された。従って、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び480nmである時のうちのいずれかの時の蛍光強度を測定することによって、測定に必要な塩酸濃度を低下させることができる。
【0019】
なお、図4は、上述の各ピーク波長における最適塩酸濃度での臭素酸イオン濃度の変化に対する蛍光強度(F.I.)を複数回測定した結果を示す図である。図4に示すように、蛍光波長が480nmである時には蛍光強度のばらつきが大きく、検量線の傾きも変動したが、蛍光波長が400nmである時には蛍光強度のばらつきが小さく、傾きも変動しなかった。また、図示していないが塩酸濃度を3mol/L[N]として従来の測定条件と同様に室温で蛍光強度を測定したところ、蛍光強度にばらつき等が見受けられなかった。このため、従来の測定条件と同様の反応温度で蛍光強度を測定することとした。
【0020】
図5(a)〜(c)はそれぞれ、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時の、臭素酸イオン濃度がそれぞれ0μg/L及び20μg/Lである試料水に関する、反応時間の経過に伴う蛍光強度(F.I.)及び臭素酸イオン濃度が0μg/Lである時の蛍光強度と臭素酸イオン濃度が20μg/Lである時の蛍光強度との蛍光強度差の絶対値(ΔF.I.)の変化を示す図である。濃度3mol/L[N]の塩酸を添加した時間を反応時間0分として、臭素酸イオン濃度がそれぞれ0μg/L及び20μg/Lである試料水について反応時間の経過に伴う蛍光強度及び蛍光強度差の変化を各ピーク波長について測定したところ、図5(a)〜(c)に示すように、各ピーク波長において蛍光強度差は10分後に安定することが確認された。このため、従来の測定条件と同様の反応時間で蛍光強度を測定することとした。
【0021】
〔硝酸イオンの影響の評価〕
本発明の発明者らは、励起波長及び蛍光波長をそれぞれ264nm及び400nmとした時の蛍光強度に対する硝酸イオンの影響を評価した。図6(a),(b)はそれぞれ、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時の、硝酸イオン濃度(NO)の変化に伴う臭素酸イオン濃度が0μg/Lの時の蛍光強度(F.I.)及び臭素酸イオン濃度が0μg/Lである時の蛍光強度と臭素酸イオン濃度が20μg/Lである時の蛍光強度との蛍光強度差の絶対値(ΔF.I.)の変化を示す図である。図6(b)に示すように、従来の測定波長である励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び480nmである時には、硝酸イオン濃度の変化に伴う蛍光強度のばらつきが大きく、また強度変化の傾きも変動するために、臭素酸イオン濃度を正確に算出することが困難であった。一方、図6(a)に示すように、新たに確認されたピーク波長である励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時には、硝酸イオン濃度の変化に伴う蛍光強度のばらつきが小さく、傾きも変動しないため、臭素酸イオン濃度を正確に算出することができた。このことから、励起波長及び蛍光波長をそれぞれ264nm及び400nmとすることによって、硝酸イオンの影響を受けずに臭素酸イオン濃度を精度高く測定できることが知見された。なお、図示しないが、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時にも同様に、硝酸イオンの影響を受けずに臭素酸イオン濃度を精度高く測定できることが確認された。
【0022】
〔塩素酸イオンの影響の評価〕
原水に対しオゾン処理を行う際、原水に遊離塩素が含まれている場合には、遊離塩素が蛍光強度の測定精度に影響を及ぼす。また、原水に遊離塩素が含まれている場合、オゾン処理によって塩素酸イオン(ClO)が生成する。そこで、本発明の発明者らは、臭素酸イオン濃度0μg/Lの溶液について、各ピーク波長における塩素酸イオンの濃度変化に対する蛍光強度の変化を測定した。図7は、各ピーク波長における塩素酸イオンの濃度変化に対する臭素酸イオン濃度が0μg/Lの時の蛍光強度(F.I.)の変化を示す図である。図7に示すように、各ピーク波長における蛍光強度は塩素酸イオンの濃度が変化しても大きく変化しなかった。このことから、塩素酸イオンは蛍光強度を正確に測定する上では妨害物質とはならないことを確認できた。
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である臭素酸イオンの測定方法は、臭素酸イオンとの共存によって蛍光強度が変化する蛍光物質を試料水に添加し、塩酸添加により酸性条件とする第1工程と、蛍光物質の蛍光強度を計測する第2工程と、臭素酸イオンを含まない標準試料水の蛍光強度と計測された蛍光強度との差を蛍光強度差として算出する第3工程と、予め求めた蛍光強度差と臭素酸イオン濃度との検量線を用いて、算出された蛍光強度差から臭素酸イオン濃度を算出する第4工程とを含む臭素酸イオンの測定方法において、前記第2工程が、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び480nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時のうちのいずれかの時の蛍光強度を計測する工程を含むので、測定に必要な塩酸濃度を低下させつつ臭素酸イオン濃度を精度高く測定できる。
【0024】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭素酸イオンとの共存によって蛍光強度が変化する蛍光物質を試料水に添加し、塩酸添加により酸性条件とする第1工程と、蛍光物質の蛍光強度を計測する第2工程と、臭素酸イオンを含まない標準試料水の蛍光強度と計測された蛍光強度との差を蛍光強度差として算出する第3工程と、予め求めた蛍光強度差と臭素酸イオン濃度との検量線を用いて、算出された蛍光強度差から臭素酸イオン濃度を算出する第4工程とを含む臭素酸イオンの測定方法において、
前記第2工程が、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び480nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時のうちのいずれかの時の蛍光強度を計測する工程を含むこと
を特徴とする臭素酸イオンの測定方法。
【請求項2】
臭素酸イオン臭素酸イオンとの共存によって蛍光強度が変化する蛍光物質を試料水に添加し、塩酸添加により酸性条件とする手段と、蛍光物質の蛍光強度を計測する手段と、臭素酸イオンを含まない標準試料水の蛍光強度と計測された蛍光強度との差を蛍光強度差として算出する手段と、予め求めた蛍光強度差と臭素酸イオン濃度との検量線を用いて、算出された蛍光強度差から臭素酸イオン濃度を算出する手段とを備える臭素酸イオンの測定装置において、
前記計測する手段が、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び400nmである時、励起波長及び蛍光波長がそれぞれ264nm及び480nmである時、及び励起波長及び蛍光波長がそれぞれ300nm及び400nmである時のうちのいずれかの時の蛍光強度を計測すること
を特徴とする臭素酸イオンの測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24807(P2013−24807A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162170(P2011−162170)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【Fターム(参考)】