説明

舌診支援プログラム、舌診支援装置

【課題】比較的正確に患者の舌に対応する舌画像を特定することができながら、処理負荷を軽く、迅速に舌画像を特定することができる舌診支援プログラム等を提供することを目的とする。
【解決手段】舌診支援装置1は、入力装置、表示装置、記憶部、及びCPUを備える。記憶部には、舌画像の特徴を表し、かつ当該舌画像の属性に応じて4つのグループ(実寒グループ、虚寒グループ、実熱グループ及び虚熱グループ)のうち何れかに分類された舌画像特徴パラメータが、複数種類の舌画像分だけ記憶される。そして、CPUは、入力装置からの入力情報に基づいて患者の舌の特徴を表す患者舌特徴パラメータを生成し、記憶部に記憶されている複数の舌画像特徴パラメータと患者舌特徴パラメータとに基づいて患者の舌の属性に合致したグループを複数のグループの中から特定する。CPUは、特定されたグループに基づいて舌画像一覧G1を表示装置から出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の舌画像の中から患者の舌に対応する舌画像を特定するための舌診支援プログラム及び舌診支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中医学においては、患者の体質と患者の症状とで特定される証に基づいて、治療方法(治療穴や漢方薬剤等)が決定される。この証の決定は原則として医師の五感に頼っており、証の決定を行う技術は、長年の経験によってのみ習得され、熟練の医師のみしか持ち得ないものである。具体的には、この証の決定は、「望診」、「聞診」、「問診」、「切診」の四大診法によって行われる。ここで、「望診」は医師の視覚による診察であり、「聞診」は医師の聴覚や嗅覚による診察であり、「問診」は質問に対する患者の答えによる診察であり、「切診」は脈診と按診である。
【0003】
上記のうち「望診」、特に患者の舌の「望診」である「舌診」は中医学では重要視されている。「舌診」においては、例えば、患者の舌の色、形、苔の状態、唾液(津)の状態が診断される。「舌診」は、特に医師の熟練を必要とする高度な診断技術である。従って、熟練した医師だけが、正確に「舌診」を行うことができる。
【0004】
近年、「舌診」の技術の高度性に鑑みて、「舌診」の技術が不足している医師でも正確に「舌診」を行うことができるように、医師の「舌診」を補助(支援)する舌診支援装置が提案されている。例えば、特許文献1には、複数の舌画像を登録したデータベースを記憶する舌診支援装置が開示されている。この舌診支援装置は、患者の舌をデジタルカメラで撮像した画像(患者の舌画像)が入力され、この画像と近似した所定個数(1〜8個)の舌画像をデータベースから取得してディスプレイに表示する。なお、この舌診支援装置は、患者への問診の結果が入力され、この問診結果を患者の舌画像と合わせて使用して、患者の舌に対応する舌画像をデータベースから取得して、ディスプレイに表示する。そして、この舌診支援装置は、表示した舌画像に対応する治療方法(治療情報)も表示する。
【0005】
上述したように、上記舌診支援装置を用いると、患者の舌画像と、患者への問診結果を舌診支援装置に入力するだけで、患者の舌に対応する舌画像を取得して表示することができ、断技術の不足した医師でも、比較的正確に「舌診」を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−314376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の舌診支援装置は、患者の舌画像に基づいて生成した患者の情報と、舌画像の特徴を表す情報等とを比較する処理をデータベースの全ての舌画像に対して行うことで、患者の舌に対応する舌画像を特定する。このため、データベースに登録される舌画像の数が多い程、患者の舌に対応する舌画像を特定するための処理負荷がかかり、迅速に患者の舌に対応する舌画像を特定することができなかった。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、比較的正確に患者の舌に対応する舌画像を特定することができながら、処理負荷が軽く、迅速に舌画像を特定することができる舌診支援プログラム及び舌診支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明にかかる舌診支援プログラムは、舌画像の特徴を表し、かつ当該舌画像の属性に応じて複数のグループのうち何れかに分類された舌画像特徴パラメータを、複数種類の舌画像分だけ記憶する記憶部、入力装置及び出力装置を備えた情報処理装置のコンピュータを、生成手段、グループ特定手段、および出力手段、として機能させる舌診断支援プログラムである。ここで、生成手段は、入力装置からの入力情報に基づいて、患者の舌の特徴を表す患者舌特徴パラメータを生成する。グループ特定手段は、記憶部に記憶されている複数の舌画像特徴パラメータと患者舌特徴パラメータとに基づいて、患者の舌の属性に合致したグループを複数のグループの中から特定する。出力手段は、特定されたグループに基づいて、舌画像に関連する情報を出力装置から出力する。
【0010】
上記構成によれば、舌画像の特徴を表す舌画像特徴パラメータが、舌画像の属性に応じて複数のグループのち何れかに分類された状態で記憶されている。そして、患者の舌の特徴を表す患者舌特徴パラメータと、舌画像特徴パラメータとに基づいて、患者の舌の属性に合致した舌画像となる。そして、特定されたグループに基づいて、舌画像に関連する情報が出力装置(例えば、表示装置やスピーカ)から出力される。例えば、特定されたグループの中から患者の舌に対応する一つの舌画像が特定されて、この特定された舌画像が上記舌画像に関連する情報として識別可能に表示される。
【0011】
なお、特定されたグループの舌画像が上記舌画像に関連する情報として出力装置から出力されてもよい。また、特定されたグループを特定する情報が上記舌画像に関連する情報として出力装置から出力されてもよい。例えば、特定されたグループを示すように、複数の舌画像のうちの全部又は一部が表示装置に表示されてもよい。
【0012】
上述したように、舌画像の属性(例えば、寒属性、熱属性、実属性、虚属性等の属性)に応じて、この舌画像の特徴を表す舌画像特徴パラメータが予め複数のグループの何れかに分類されている。このため、患者の舌の特徴を表す患者舌特徴パラメータと複数の舌画像特徴パラメータとに基づいて、患者の舌の属性に合致したグループを特定するだけの簡易な処理によって、患者の舌の属性に合致した舌画像を特定することができる。
【0013】
(2)上述した舌診支援プログラムにおいて、記憶部は、複数の舌画像を記憶してもよい。出力装置は、表示装置であってもよい。更に、舌診支援プログラムは、コンピュータを、舌画像特定手段として更に機能させてもよい。ここで、舌画像特定手段は、グループ特定手段によって特定されたグループに対応する属性の舌画像の中から、患者の舌に対応する一つの舌画像を特定する。出力手段は、舌画像特定手段によって特定された舌画像を示すように、複数の舌画像のうちの一部又は全部を記憶部から読み出して表示装置に表示させる。
【0014】
上記構成によれば、患者の舌に対応する一つの舌画像が特定されて識別可能に表示されるため、舌診を行なうにあたっての有益な情報をユーザに報知することができる。また、患者の舌の属性に合致するグループの舌画像の中から、患者の舌画像に対応する一つの舌画像が特定されるため、全ての舌画像の中から当該一つの舌画像を特定するよりも、処理負荷が軽くなり、迅速に当該一つの舌画像を特定することができる。また、異なった属性の舌画像が患者の舌に対応する一つの舌画像として特定されることがなくなり、比較的正確に患者の舌に対応する一つの舌画像の特定を行なうことができる。
【0015】
(3)上述した舌診支援プログラムにおいて、記憶部は、互いに対極な属性である第1属性及び第2属性と、互いに対極な属性である第3属性及び第4属性とに応じた複数のグループの何れかに分類された、複数の舌画像特徴パラメータを記憶してもよい。また、出力手段は、縦方向において第1属性及び第2属性のレベルに応じた順番に配置し、横方向において第3属性及び第4属性のレベルに応じた順番に配置するよう、複数の舌画像の少なくとも一部をマトリクス状に並べて表示装置に表示してもよい。更に、舌診支援プログラムは、コンピュータを、変更手段として機能させてもよい。ここで、変更手段は、特定された舌画像を変更する操作を入力装置で受け付けた場合に、出力手段によって表示された複数の舌画像のうち何れかに特定された舌画像を変更する。
【0016】
上記構成によれば、複数の舌画像がマトリクス状に配置されて表示される。そして、マトリクスにおいて、舌画像は、縦方向において第1属性及び第2属性のレベルに応じた順番に配置され、横方向において第3属性及び第4属性のレベルに応じた順番に配置される。従って、特定された舌画像とその周辺の舌画像とは大抵同じ属性でありかつこの属性のレベルも似ていることになる。このため、特定された舌画像が患者の舌にやや合致しないと考えたときに、ユーザは、特定された舌画像の周辺に位置する舌画像の何れかに、特定された舌画像を変更することで、舌画像の特定の微調整を行なうことができる。
【0017】
(4)上述した舌診支援プログラムにおいて、記憶部は、複数の舌画像を記憶してよい。また、出力装置は、表示装置であってもよい。更に、出力手段は、グループ特定手段によって特定されたグループを示すように、複数の舌画像のうちの一部又は全部を記憶部から読み出して表示装置に表示させてもよい。この構成によれば、特定されたグループをユーザに示して、複数の舌画像のうちの一部又は全部が表示される。
【0018】
上記構成によれば、コンピュータではなくユーザ自身が、表示された複数の舌画像の中から、患者の舌に対応する一つの舌画像の特定又はこの特定の変更を行なう場合に、次のような利点がある。すなわち、特定されたグループの舌画像は患者の舌の属性に対応するものであるため、ユーザが、患者の舌に対応する属性の舌画像のみから、患者の舌に対応する一つの舌画像の特定を行なうことができる。従って、比較的正確に患者の舌に対応する一つの舌画像の特定又はこの特定の変更を行なうことができる。
【0019】
(5)上述した舌診支援プログラムにおいて、生成手段は、患者の舌の特徴に関するユーザの望診結果を表す望診情報を入力装置から入力した場合に、この望診情報に基づいて患者舌特徴パラメータを算出する。この構成によれば、例えば、ユーザが、望診のための設問(望診用説明)に対応する回答を情報処理装置に入力することで、望診情報がコンピュータに入力される。そして、この望診情報に基づいて患者舌特徴パラメータが算出される。ここで、患者の舌を撮像して、この撮像画像に基づいて患者舌特定パラメータを生成する方法もあるが、この方法では唾液等の情報を取得し難く、正確に患者の舌の特徴を表す患者舌特徴パラメータを生成し難い。従って、この構成によれば、患者の舌の特徴を比較的正確に表す患者舌特徴パラメータを生成することができ、比較的正確に患者の舌の属性に合致したグループを特定することができる。
【0020】
(6)上述した舌診支援プログラムにおいて、グループ特定手段は、グループの特定のために、複数の舌画像特徴パラメータを教師データとして用い、サポートベクターマシンを含む所定の機械学習アルゴリズムに基づいて、患者舌特徴パラメータを複数のグループの何れかに分類してもよい。
【0021】
上記構成によれば、比較的簡易な処理で、複数のグループの中から何れかのグループを特定することができ、処理負荷が軽く、かつ迅速にグループの特定を行なうことができる。また、サポートベクターマシンのような、2値分類器を使用すると、互いに対極な2つの属性に分類されたグループのうち何れかを特定する場合に、特に簡易な処理で行なうことができる。
【0022】
(7)上述した舌診支援プログラムにおいて、記憶部は、複数種類の舌画像毎に、患者の身体における複数の部位に対応する複数の治療情報を記憶してもよい。また、コンピュータを、部位特定手段、および治療情報表示処理手段、として、更に機能させてもよい。ここで、部位特定手段は、入力情報とは別に、患者への問診結果を表す問診情報が入力装置から入力されたときに、患者の身体における複数の部位のなかから治療が必要な部位を問診情報に基づいて特定する。また、治療情報表示処理手段は、舌画像特定手段によって特定された舌画像と、部位特定手段によって特定された部位とに対応する治療情報を、記憶部から取得して表示装置に表示させる。
【0023】
上記構成によれば、ユーザは、特定された舌画像に対応する治療方法を取得することができ、患者の治療に役立てることができる。また、患者の病変部位に応じて、同じ舌画像が特定されていても、異なった治療方法で治療を行なう方が良い場合もある。上記構成では、患者への問診結果を表す問診情報に基づいて、患者の身体における複数の部位のなかから治療が必要な部位が特定される。そして、この特定された部位と特定された舌画像とに対応する治療情報が表示される。これによって、ユーザは、舌診の結果(特定された舌画像)と、問診の結果(治療が必要な部位)とに対応する、治療情報を取得することができ、患者の治療に大変効果的な情報を取得することができる。
【0024】
(8)本発明にかかる舌診支援装置は、入力装置及び出力装置を備え、記憶部、生成手段、グループ特定手段、および出力手段、を備える。ここで、記憶部は、舌画像の特徴を表し、かつ当該舌画像の属性に応じて複数のグループのうち何れかに分類された舌画像特徴パラメータを、複数種類の舌画像分だけ記憶する。生成手段は、入力装置からの入力情報に基づいて、患者の舌の特徴を表す患者舌特徴パラメータを生成する。グループ特定手段は、記憶部に記憶されている複数の舌画像特徴パラメータと患者舌特徴パラメータとに基づいて、患者の舌の属性に合致したグループを複数のグループの中から特定する。出力手段は、特定されたグループに基づいて、舌画像に関連する情報を出力装置から出力する。
【0025】
上記(8)の舌診支援装置では、上記(1)の舌診支援プログラムと同様の作用効果を奏する。なお、舌診支援装置は、単一の装置で構成されても、複数の装置から構成されてもよい。
【発明の効果】
【0026】
上述した舌診支援装置によれば、舌画像の属性(例えば、寒属性、熱属性、実属性、虚属性等の属性)に応じて、この舌画像の特徴を表す舌画像特徴パラメータが予め複数のグループの何れかに分類されている。このため、患者の舌の特徴を表す患者舌特徴パラメータと複数の舌画像特徴パラメータとに基づいて、患者の舌の属性に合致したグループを特定するだけの簡易な処理によって、患者の舌の属性に合致した舌画像を比較的正確に特定することができる。これによって、比較的正確に、処理負荷を軽く、かつ迅速に患者の舌に対応する舌画像を特定することができる舌診支援プログラム及び舌診支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態にかかる舌診支援装置で表示される舌画像一覧の一例を示す図
【図2】舌画像一覧における各舌画像に対応付けられた属性を説明するための図
【図3】中医学における寒、熱、虚、実の基本概念を説明するための図
【図4】中医学における寒、熱のレベルに対応する舌の特徴を説明するための図
【図5】望診用設問の一例を表示する画面図
【図6】望診リストテーブルの一例を示す図
【図7A】寒熱データベースの一例を示す図
【図7B】虚実データベースの一例を示す図
【図7C】詳細データベースの一例を示す図
【図8A】問診リストテーブルの一例を示す図
【図8B】一般参考患者画像の一例を表示する画面図
【図8C】治療方法テーブルの一例を示す図
【図8D】一般治療画像の一例を表示する画面図
【図9】第1の実施形態にかかる舌診支援装置の内部構造の一例を示すブロック図
【図10】第1の実施形態にかかる舌診支援処理の一例を示すフローチャート(その1)
【図11】第1の実施形態にかかる舌診支援処理の一例を示すフローチャート(その2)
【図12】第2の実施形態にかかる舌診支援処理の一例を示すフローチャート(その1)
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明を適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、図1を参照して、第1の実施形態の特徴を説明する。
【0029】
(第1の実施形態の特徴)
図1は、第1の実施形態にかかる舌診支援装置で表示される舌画像一覧の一例を示す図である。図1を参照して、第1の実施形態にかかる舌診支援装置は、複数種類の舌画像(本実施形態では、32種類の舌画像)を記憶するとともに、これらの舌画像を横方向(行方向)に8個、縦方向(列方向)に4個のマトリクス状に配置してディスプレイ141に一覧表示する。以下、複数の舌画像を一覧表示する画像を、「舌画像一覧G1」と記載する。舌画像一覧G1は、医師による患者の舌の「舌診」を補助するためのものである。具体的には、舌診支援装置1は、患者の舌に対応する(近似する)一つの舌画像を特定して、舌画像一覧G1において識別可能に医師等のユーザに表示する。例えば、太枠で囲む、マークで示す等して、この特定を識別可能にユーザに表示する。この特定された舌画像を、以下「特定舌画像G10」と記載する。
【0030】
特定舌画像G10を特定するために、舌診支援装置1は、舌画像一覧G1の表示前に、医師等のユーザに患者の舌を「舌診」するための設問(以下、「望診用設問一覧」と記載する。)を表示する。そして、舌診支援装置1は、この設問に対するユーザの回答の入力結果に基づいて、特定舌画像G10を特定する。そして、ユーザは、操作によって、特定舌画像G10を舌画像一覧G1における他の舌画像に変更することができる。そして、舌診支援装置1は、特定舌画像G10に対応する舌診内容(熟練の医師等の舌診の内容)と治療方法とを表示することができる。なお、望診用設問一覧を表示し、患者の舌に対応する舌画像を特定舌画像G10として特定し、舌画像一覧G1を表示し、特定舌画像G10に対応する舌診内容及び治療方法を表示する一連の処理を、以下、「舌診支援処理」と記載する。
【0031】
この舌画像一覧G1における各舌画像は、それぞれ、属性(寒属性、熱属性、実属性、虚属性の属性)に基づいて4つのグループの何れかに分類されている(対応付けられている)。そして、舌画像一覧G1において、各舌画像は応付けられている属性とこの属性のレベル(属性の強さの程度)に応じた並びに配置されている。
【0032】
本実施形態は、舌画像一覧G1において、上記並びで各舌画像が並べられ、かつ特定舌画像G10を示す舌画像一覧G1が表示され、かつ特定舌画像G10をユーザの操作によって変更することができる点が第1の特徴である。この第1の特徴によって、特定舌画像G10とこの特定舌画像G10の周辺の舌画像とは、互いに似た属性で、かつその属性のレベルが近いものとなる。従って、ユーザは、特定舌画像G10がやや患者の舌と合致していないと考えたときに、その周辺の舌画像に特定舌画像G10を変更することで、舌画像の特定の微調整を行なうことができる。
【0033】
また、各舌画像はその属性に応じてグループに分類され、舌診支援装置1が、特定舌画像G10の特定の前に、望診用設問一覧に対するユーザの回答の入力結果から患者の舌に対応するグループを特定する点が第2の特徴である。そして、舌診支援装置1が、特定したグループの舌画像の中から特定舌画像G10を特定する。従って、32個の全ての舌画像の中から特定舌画像G10を特定するのに比較して、簡易かつ迅速に特定舌画像G10を特定することができる。また、患者の舌の属性とは異なる属性の特定舌画像G10を特定してしまうことを防止することができる。
【0034】
(舌画像一覧G1:舌画像の属性)
次に、図1〜図4を用いて舌画像一覧G1についてより詳細に説明する。まず、図1及び図2を参照して、各舌画像に対応付けられている属性を説明する。図2は、舌画像一覧における各舌画像に対応付けられた属性を説明するための図である。32種類の舌画像のうち、図1及び図2における上側2行の16個の舌画像が実属性に対応付けられている。一方、下側2行の16個の舌画像が虚属性に対応付けられている。そして、図1及び図2における左側4列の16個の舌画像が寒属性に対応付けられている。一方、右側4列の16個の舌画像が熱属性に対応付けられている。従って、左側4列×上側2行の8個の舌画像は、実属性と寒属性に分類された「実寒グループ」に属する。また、左側4列×下側2行の8個の舌画像は、虚属性と寒属性に分類された「虚寒グループ」に属する。そして、右側4列×上側2行の8個の舌画像は、実属性と熱属性に分類された「実熱グループ」に属する。また、右側4列×下側2行の8個の舌画像は、虚属性と熱属性に分類された「虚熱グループ」に属する。
【0035】
なお、図3及び図4を用いて、実属性及び虚属性、熱属性及び寒属性の関係について説明する。図3は、中医学における寒、熱、虚、実の基本概念を説明するための図である。また、図4は、中医学における寒、熱のレベルに対応する舌の特徴を説明するための図である。まず、図3で示すように、実属性と虚属性とは互いに対極な属性である。すなわち、舌画像が、実属性であれば虚属性であることはなく、また、逆に、虚属性であれば実属性であることはない。そして、寒属性と熱属性もまた互いに対極な属性である。すなわち、舌画像が、寒属性であれば熱属性であることはなく、逆に熱属性であれば寒属性であることはない。
【0036】
具体的には、病の邪気と正気の盛衰を表すのが「虚実」である。実属性は、中医学において「陽」に属し、邪気が多い状態である。また、虚属性は、中医学において「陰」に属し、生気が足りない状態である。また、病の性質を表すのが「寒熱」である。寒属性は、中医学において「陰」に属し、病が寒に傾いている状態を示す。病が「寒」にかたむくと、患者は「顔面蒼白、もしくは青く、体動揺するのをこばむ」等の様々な傾向が出てくるようになる。熱属性は、中医学において「陽」に属し、病が熱に傾いている状態を示す。病が熱に傾くと、「顔面紅、眼目紅、壮熱」等の様々な傾向が出てくるようになる。
【0037】
図3で示すように、「舌診」において、舌が、熱属性になると「紅」色になるとともに、唾液が少なく、舌苔が黄色っぽい色になる。対して、舌が、寒属性になると「淡白」や「青紫」色になり、唾液が多く、舌苔が白や黒っぽい色になる。そして、舌が実属性になると、舌苔が厚くなり、舌が虚属性になると、舌に歯痕が残る等する。
【0038】
図4で示すように、舌は、寒属性又は熱属性のレベル、実属性又は虚属性のレベル(程度)に応じて異なる特徴(色、形、唾液、舌苔の特徴)を有する。例えば、寒属性及び熱属性に関しては、舌が淡紅舌(淡紅色の舌)であり、舌苔が「薄白苔(薄く白い苔)」である場合、この舌は正常な舌(熱属性にも寒属性にも傾いていない舌)である。そして、正常な舌から熱属性のレベルが強くなるにつれ、舌は「紅舌(紅色の舌)」から「絳紫舌(紫色の舌)」、「暗紫舌(暗い紫色の舌)」、「黒舌(黒い舌)」へと変化する。舌苔も同様に、黄色から黒へと変化する。一方、正常な舌から寒属性のレベルが強くなるにつれ、舌は「淡白舌(淡い白色の舌)」から「青紫舌(青紫色の舌)」、「青色舌(青色の舌)」、「黒舌(黒い舌)」へと変化する。舌苔も同様に白色から灰色、黒色へと変化する。
【0039】
上述したように、寒属性又は熱属性のレベルに応じて舌及び舌苔が変化するが、実属性又は虚属性のレベルに応じても、同様に舌の特徴は変化する。
【0040】
(舌画像一覧G1:舌画像の属性と舌画像の配置との関係)
図1を参照して、舌画像一覧G1では、行方向には(横方向には)寒属性と熱属性のレベルに応じた順番に舌画像が並べられ、列方向には(縦方向には)実属性と虚属性のレベルに応じた順番に舌画像が並べられている。具体的には、左から4行目には、寒属性でも、熱属性でもない正常舌の画像が配置されている。そして、正常舌から左側に配置される程、寒属性のレベルが強くなるように舌画像が並べされる。また、正常舌から右側に配置される程、熱属性のレベルが強くなるように舌画像が並べられる。なお、正常舌は本来、寒属性でも熱属性でもないが、本実施形態では、正常舌の舌画像は、寒属性のグループ(実寒グループ、虚寒グループ)へと分類されている。
【0041】
また、舌画像一覧G1では、上側2列が実属性を示すが、上に行くほど実属性のレベルが強くなるように舌画像が並べられる。また、下側2列が虚属性を示すが、下の列に行くほど虚属性のレベルが強くなるように舌画像が並べられる。なお、本実施形態では、舌画像一覧G1は、8行×4列の32個の舌画像を含むが、この構成に限定されず、更に少ない行、列で構成されていてもよいし、多い行、列で構成されていてもよい。
【0042】
上述したように、舌画像一覧G1では、各舌画像が属性のレベル(実属性及び虚属性のレベル、寒属性及び熱属性のレベル)に応じた順番に並べられている。従って、特定舌画像G10とその周辺の舌画像とは、大抵同じ属性で、かつその属性レベルも似ていることになる。このため、現在の特定舌画像G10が患者の舌とやや(微妙に)違うとユーザが判断した場合、ユーザが、特定舌画像G10をその周辺の舌画像に変更することで、舌画像の特定の微調整を行なうことができる。
【0043】
(特定舌画像G10の特定方法)
次に、図5〜図7Cを用いて、舌診支援装置1が特定舌画像G10を特定する方法の一例を説明する。この特定舌画像G10の特定は、望診用設問に基づく患者の舌の情報を生成する処理(患者舌情報生成処理)、この生成した情報に基づいて患者の舌の属性が寒属性及び熱属性のどちらであるか決定する処理(寒熱属性決定処理)、この生成した情報に基づいて患者の舌の属性が実属性及び虚属性のどちらであるか決定する処理(虚実属性決定処理)、寒熱属性決定処理と虚実属性決定処理の結果に基づいて、患者の舌の属性に対応するグループを特定する処理(グループ特定処理)、及び特定したグループの舌画像から患者の舌に対応する一つの舌画像を特定する処理(対応舌画像特定処理)によって行なわれる。以下、これらの処理について説明する。
【0044】
(特定舌画像G10の特定方法:患者舌情報生成処理)
まず、図5及ぶ図6を用いて患者舌情報生成処理を説明する。図5は、望診用設問の一例を表示する画面図である。図6は、望診リストテーブルの一例を示す図である。まず、図5を参照して、舌診支援装置1のディスプレイ141には、上述したように望診用設問を複数表示する。この望診用設問は、患者の舌の属性を表す、舌の特徴を問うための設問である。例えば、望診用設問は、舌の色、唾液の状態、苔の色や位置、舌の肥大等を問う設問である。また、望診用設問に対する回答は択一形式であり、この回答の選択肢もディスプレイ141に表示される。
【0045】
図6を参照して、望診リストテーブルD1には、上述したように、ディスプレイ141に表示される複数の望診用設問と、これらの複数の望信用設問に対する複数の選択肢(回答)が対応付けて登録されている。例えば、設問Aに対する選択肢として回答a1、a2、a3が登録されている。また、各選択肢(回答)に対して、3種類のパラメータ(寒熱パラメータP1、虚実パラメータP2及び詳細パラメータP3)が割り当てられている。寒熱パラメータP1は、寒属性及び熱属性に関するパラメータである。ユーザが望診リストテーブルD1に登録されている全ての望診用設問に対しての回答(望診情報)を入力したとき、舌診支援装置1は、ユーザの回答に割り当てられた全ての寒熱パラメータP1を加算する。そして、この算出値は、寒属性及び熱属性に関する患者の舌の特徴を表すパラメータ(寒熱患者舌特徴パラメータP4´)となる。
【0046】
また、虚実パラメータP2は、実属性及び虚属性に関するパラメータである。ユーザが望診リストテーブルD1に登録されている全ての望診用設問に対しての回答(望診情報)を入力したとき、舌診支援装置1は、ユーザの回答に割り当てられた全ての虚実パラメータP2を加算する。そして、この算出値は、実属性及び虚属性に関する患者の舌の特徴を表すパラメータ(虚実患者舌特徴パラメータP5´)となる。
【0047】
なお、詳細パラメータP3は、上記寒熱パラメータP1と虚実パラメータP2とは異なり、ユーザの各望診用設問への回答内容(結果)を示すためのパラメータである。ユーザが望診リストテーブルD1に登録されている全ての望診用設問に対しての回答(望診情報)を入力したとき、舌診支援装置1は、これらの詳細パラメータP3を用いて、ユーザの全ての望診用設問への回答内容(結果)を具体的に(例えば関数として表す)患者舌詳細情報P6´を生成する。
【0048】
(特定舌画像G10の特定方法:寒熱属性決定処理)
以下、図7Aを参照して、寒熱属性決定処理の一例を説明する。図7Aは、寒熱データベースの一例を示す図である。32個の各舌画像には、ID(以下、「舌ID」と記載する)が対応付けられており、寒熱データベースD2には、32個の舌IDに対応する、寒熱舌画像特徴パラメータP4とクラスとが登録されている。寒熱舌画像特徴パラメータP4は、舌IDの舌画像の寒属性及び熱属性に関する特徴を表すパラメータである。具体的には、舌IDに対応する舌画像の舌の持ち主が、上記望診用設問を回答したならば取得し得たであろう寒熱患者舌特徴パラメータP4´の値を、「舌診」に関して熟練した技能を持った医師等が推測し、この推測された値が寒熱舌画像特徴パラメータP4として登録されている。寒熱舌画像特徴パラメータP4は、次のような方法で生成されてもよい。すなわち、熟練した技能を持った医師等が舌画像の舌の持ち主による回答を推測して情報処理装置に入力し、情報処理装置がこの回答から上記寒熱患者舌特徴パラメータP4´の生成と同じ方法によって(同じアルゴリズムで)寒熱舌画像特徴パラメータP4を生成してもよい。
【0049】
また、クラスは、「1」か「−1」のどちらかが登録されており、「1」が寒属性を示し、「−1」が熱属性を示す。なお、「舌診」に関して熟練した技能を持った医師等が、舌IDに対応する舌画像の舌を寒属性であるか熱属性であるか判断し、この判断結果を示すクラスが当該舌IDに対応付けて登録されている。
【0050】
舌診支援装置1は、患者の舌の属性を決定するために、上記寒熱患者舌特徴パラメータP4´と32個の寒熱舌画像特徴パラメータP4とを用いて寒熱属性決定処理を行う。寒熱属性決定処理では、上記の32個の寒熱舌画像特徴パラメータP4を教師データとして用いて、所定の機械学習法を用いて、寒熱患者舌特徴パラメータP4´を2値分類(「1」か「−1」かに分類)する。なお、所定の機械学習法は、2値分類可能なものであれば何でもよいが、例えば、「サポートベクターマシン入門」(「共立出版」、「大北剛」訳)等に記載されている公知のサポートベクターマシン法(Support Vector Machine法)等である。これによって、舌診支援装置1は、患者の舌を寒属性と熱属性の何れに属するか判定する。
【0051】
なお、例えば、サポートベクターマシン法を用いて、寒熱患者舌特徴パラメータP4´を2値分類する方法を説明する。サポートベクターマシン法では、以下の式を用いて、寒熱患者舌特徴パラメータP4´を2値分類する。
[式1]

この式において、(x,y),(x,y)、・・・(x、y)を教師データであるとすると、x=(x、x、・・・、x)は固体の特徴ベクトル、yは目的変数である。そして、クラス「1」に分類された側(正側)と、クラス「−1」に分類された側(負側)のマージンが大きい程オープンデータで誤った分類をする可能性が低いため、係数Wはこのマージンを最大にする係数である。上記式によって、WX+b≧1のときには、寒熱患者舌特徴パラメータP4´はクラス「1」すなわち寒属性に分類され、WX+b≦−1のときには、寒熱患者舌特徴パラメータP4´はクラス「−1」すなわち熱属性に分類される。
【0052】
(特定舌画像G10の特定方法:虚実属性決定処理)
図7Bは、虚実データベースの一例を示す図である。虚実データベースD3には、複数の(32個の)舌IDに対応する、虚実舌画像特徴パラメータP5とクラスとが登録されている。虚実舌画像特徴パラメータP5は、舌IDの舌画像の実属性及び虚属性に関する特徴を表すパラメータである。具体的には、舌IDに対応する舌画像の舌の持ち主が、上記望診用設問を回答したならば取得し得たであろう虚実患者舌特徴パラメータP5´の値を、「舌診」に関して熟練した技能を持った医師等が推測し、この推測された値が登録されている。この虚実舌画像特徴パラメータP5は、例えば寒熱舌画像特徴パラメータP4と同様の方法で生成される。
【0053】
クラスは、「1」か「−1」のどちらかが登録されており、「1」が実属性を示し、「−1」が虚属性を示す。なお、「舌診」に関して熟練した技能を持った医師等が、舌IDの示す舌画像の舌を実属性であるか虚属性であるかを判断し、この判断結果に合致したクラスが当該舌IDに対応付けて登録されている。
【0054】
また、舌診支援装置1は、上記患者の舌の属性を決定するために、上記虚実患者舌特徴パラメータP5´と32個の虚実舌画像特徴パラメータP5とを用いて、虚実属性決定処理を行う。虚実属性決定処理では、舌診支援装置1は、上記の32個の虚実舌画像特徴パラメータP5を教師データとして用いて、上述したような、公知のサポートベクターマシン法等のような所定の機械学習法を用いて、虚実患者舌特徴パラメータP5´を2値分類(「1」か「−1」かに分類)する。これによって、舌診支援装置1は、患者の舌を実属性と虚属性の何れに属するか判定することができる。なお、サポートベクターマシン法を用いて虚実患者舌特徴パラメータP5´を2値分類する方法は、上記寒熱患者舌特徴パラメータP4´を2値分類する方法と同じである。
【0055】
(特定舌画像G10の特定方法:グループ特定処理)
舌診支援装置1は、グループ特定処理において、上記寒熱患者舌特徴パラメータP4´と上記虚実患者舌特徴パラメータP5´とを用いて、複数の舌画像から患者の舌に対応するグループ(図2の実寒グループ、虚寒グループ、実熱グループ及び虚熱グループの何れか)を特定する処理を行なう。
【0056】
上述したように、舌診支援装置1は、対応舌画像特定処理前に、患者の舌の属性に対応するグループを特定する。従って、続く対応舌画像特定処理において、判定したグループの舌画像(8個)のみを用いて患者の舌に対応する一つの特定舌画像G10を特定することができる。このため、患者の舌に対応する一つの舌画像を特定するにあたっての判断対象を減らすことができ、簡易な処理で迅速に特定舌画像G10を特定することができる。
【0057】
(特定舌画像G10の特定方法:対応舌画像特定処理)
次に、図7Cを参照して、上記対応舌画像特定処理を説明する。図7Cは、詳細データベースの一例を示す図である。詳細データベースD4には、4つのグループ(実寒グループ、虚寒グループ、実熱グループ、虚熱グループ)に対応付けて、それぞれ複数の舌ID(例えば8個の舌ID)が登録されている。本実施形態では、実寒グループに対応付けて舌ID1〜舌ID8が登録されており、虚寒グループに対応付けて舌ID9〜舌ID16が登録されている。そして、実熱グループに対応付けて舌ID17〜舌ID24が登録されており、虚熱グループに対応付けて舌ID25〜舌ID32が登録されている。
【0058】
また、詳細データベースD4には、各舌ID(32個の舌ID)に対応する舌画像詳細情報P6が登録されている。舌画像詳細情報P6は、舌IDの示す舌画像の特徴を上記寒熱舌画像特徴パラメータP4及び虚実舌画像特徴パラメータP5よりも詳細に表す情報である。具体的には、舌IDの示す舌画像の舌の持ち主が上述した望診用設問を回答した場合に取得し得たであろう患者舌詳細情報P6´を、「舌診」に関して熟練した技能を持った医師等が推測し、この推測された患者舌詳細情報P6´が舌画像詳細情報P6として詳細データベースD4に登録される。例えば、かかる医師等が舌画像の舌の持ち主による回答を推測して情報処理装置(図略)に入力し、情報処理装置(図略)はこの推測された回答から上記患者舌詳細情報P6´の生成と同じ方法によって(同じアルゴリズムで)舌画像詳細情報P6を生成してもよい。
【0059】
舌診支援装置1は、判定したグループに対応する舌ID(8個の舌ID)と、この舌IDに対応する8個の舌画像詳細情報P6を詳細データベースD4から読み出す。そして、舌診支援装置1は、読み出した8個の舌画像詳細情報P6を教師データとして用いて、所定の機械学習法によって患者舌詳細情報P6´に最も類似する舌画像詳細情報P6の舌IDを特定する。この特定された舌IDの舌画像が特定舌画像G10としてディスプレイ141に表示される。なお、所定の機械学習法は、例えば、「パターン認識と学習アルゴリズム」(「文一総合出版」、「上坂吉則、尾関和彦」著)等に記載されている公知のK最近傍法(k−Nearest Neighbour法)等である。
【0060】
患者舌詳細情報P6´と舌画像詳細情報P6は、上述したように、全ての望診用設問の回答内容(結果)を具体的に示す情報である。すなわち、望診用設問に対しての回答結果を全ての望診用説明について示す情報である。このため、患者舌詳細情報P6´と舌画像詳細情報P6は、寒熱患者舌特徴パラメータP4´、虚実患者舌特徴パラメータP5´、寒熱舌画像特徴パラメータP4及び虚実舌画像特徴パラメータP5よりも舌画像又は患者の舌の特徴をより詳細に示す情報である。このような患者舌詳細情報P6´と舌画像詳細情報P6とを用いて、特定舌画像G10を特定するため、8個の舌画像の中から精度よく患者の舌に対応する特定舌画像G10を特定することができる。
【0061】
もっとも、患者舌詳細情報P6´と舌画像詳細情報P6とを用いて特定舌画像G10を特定するのは、特定精度は良いが処理負荷が重い。本実施形態では、対応舌画像特定処理の前に、患者の舌の属性に対応するグループを特定することで、特定したグループの舌画像(8個の舌画像)のみに対応舌画像特定処理の判断対象を絞っている。従って、32個の舌画像について対応舌画像特定処理を行うのに比較して、処理負荷が軽くかつ迅速に特定舌画像G10を特定することができる。
【0062】
また、全く異なった属性を持ち、異なったグループに属する舌画像同士であるにもかかわらず、舌画像詳細情報P6が同じになってしまう場合も時折生じる。本実施形態では、患者の舌の属性に対応した一つのグループを特定し、このグループの舌画像に対してのみ対応舌画像特定処理が行われる。このため、全く異なった属性の舌画像を特定舌画像G10として特定してしまうことを効果的に防止することができ、32個全ての舌画像に対して対応舌画像特定処理を実行するよりもより精度良く、患者の舌に対応する一つの舌画像を特定舌画像G10として特定することができる。
【0063】
(舌診内容と治療方法の表示)
本実施形態では、舌診支援装置1は対応舌画像特定処理によって特定された特定舌画像G10に対応する舌診内容及び治療方法(治療情報の一例)を表示する。この舌診内容及び治療方法の表示について、以下に説明する。本実施形態では、望診用設問に対する回答をユーザが入力したときに、舌診支援装置1は、ユーザの操作によって問診用設問の一覧(問診用設問一覧)を表示することができる。例えば、図5を参照すると、ディスプレイ141には望診用設問一覧の下に2つの操作子(「確定(サブ画面表示あり)」操作子B1、「確定(サブ画面表示なし)」操作子B2)が表示されている。このうち、「確定(サブ画面表示あり)」操作子B1がカーソルによってオンされたときには、舌診支援装置1は、問診用一覧の表示指示を受け付けたとして、問診用設問一覧を表示する。一方、「確定(サブ画面表示なし)」操作子B2がカーソルによってオンされたときには、問診用一覧の表示指示を受け付けたとして、問診用設問一覧を表示しない。
【0064】
問診用設問に対する回答(問診情報)の入力をユーザから受け付けた場合には、舌診支援装置1はこの回答結果を踏まえて患者の身体における複数の部位(例えば五臓:肺、脾臓、心臓、腎臓、肝臓)のうち病のある部位(病変部位)を特定する処理(以下、「病変部位特定処理」と記載する。)を行う。そして、舌診支援装置1は、病変部位を特定した場合には、特定した病変部位に対応する舌診内容及び治療方法を表示する。
【0065】
(舌診内容と治療方法の表示:病変部位特定処理)
図8A〜図8Dを用いて、病変部位特定処理について具体的に説明する。図8Aは、問診リストテーブルの一例を示す図である。問診リストテーブルD5には、患者の体における複数の部位(例えば五臓)と、この複数の部位に対応する複数の問診用設問及び閾値パラメータP7が登録されている。そして、問診リストテーブルD5には、各問診用設問に対応付けて条件症状パラメータP8が登録されている。各問診用設問は、本実施形態ではYES、NOで回答することができる設問である。そして、ユーザが問診用設問にYESと回答したときに、問診リストテーブルD5に登録されている条件症状パラメータP8(当該問診用設問に対応する条件症状パラメータP8)がユーザに付与される。
【0066】
舌診支援装置1は、各部位毎に、付与された全ての条件症状パラメータP8を加算する。舌診支援装置1は、この加算によって生じる値を、当該部位に対応する閾値パラメータP7と比較する。そして、閾値パラメータP7以上の値であれば、当該部位を病変部位として特定する。例えば、病変部位が「肺」において、設問A´(条件症状パラメータP8が「1」)と設問C´(条件症状パラメータP8が「2」)についてのみユーザがYESと回答した場合には、「1」と「2」が加算される。そして、この算出値「3」は「肺」の閾値パラメータP7の「3」以上の値であるため、「肺」が病変部位として特定される。
【0067】
(舌診内容と治療方法の表示:舌診内容と治療方法の特定)
次に、図8B〜図8Dを用いて、舌診支援装置1が、上記特定された病変部位に基づいて舌診内容と治療方法を特定して表示する処理を説明する。図8Bは、一般参考患者画像の一例を表示する画面図である。図8Cは、治療方法テーブルの一例を示す図である。図8Dは、一般治療画像の一例を表示する画面図である。
【0068】
舌診支援装置1は、特定した病変部位がない場合には、図8Cで示すような治療方法テーブルD6から特定舌画像G10に対応した一般参考患者画像G2を取得して、ディスプレイ141に表示する。図8Bで示すように、一般参考患者画像G2は、サンプルとなる患者(サンプル患者)の舌を撮影した舌画像と、このサンプル患者の生年月日、症状、舌診等の内容とを表す画像である。このサンプル患者の舌診の内容によって、ユーザは、舌画像に対応する舌診内容(熟練の医師の舌診内容)を取得することができる。なお、一般参考患者画像G2は、特定の病変部位に対応した(特化した)症状を示すのではなく、様々な病変部位について当てはまるような一般的な症状等を示す。
【0069】
そして、舌診支援装置1は、例えば、図8Bで示すように一般参考患者画像G2とともに、「治療画像表示」操作子B3を表示し、この「治療画像表示」操作子B3へのユーザの操作によって、図8Dで示すような、一般治療画像G3を表示する。具体的には、舌診支援装置1は、治療方法テーブルD6から特定舌画像G10に対応した一般治療画像G3を取得してディスプレイ141に表示する。一般治療画像G3は、特定舌画像G10に対応する治療方法を示す画像である。具体的には、一般治療画像G3は、サンプル患者についての、治療の大局を示す「治療指針」と、「治療穴と経過」と、治療過程で撮像された複数の舌画像とを示す。「治療穴と経過」は、初診から複数回の診察時における、患者の身体における治療針を刺した治療穴(治療方法)、症状、及び「舌診」の結果等を示す。複数の舌画像は、治療過程による舌の推移を示すためのものであり、治療過程において順次、サンプル患者の舌を撮像して生成される。これによって、舌診支援装置1は、舌診の結果に基づく治療方針を表示することができる。
【0070】
舌診支援装置1は、特定された病変部位がある場合には、当該特定された病変部位及び特定舌画像G10に対応した、部位毎の参考患者画像G4を治療方法テーブルD6から取得して、ディスプレイ141に表示する。部位毎の参考患者画像G4は、図8Bで示す一般参考患者画像G2と同じ種類の情報を示す画像である。もっとも、一般参考患者画像G2は、特定の病変部位に対応した(特化した)症状等を示すのではなく、様々な病変部位について当てはまるような一般的な症状等を示すが、部位毎の参考患者画像G4は、特定の病変部位に対応した(特化した)症状等を示す。この様に、病変部位に対応する症状をユーザに提供するため、ユーザはこの症状を見て、サンプル患者の症状と自己の患者の症状とが合致するかを判断することができ、特定舌画像G10が患者の舌に本当に合致するかを判断することができる。
【0071】
そして、舌診支援装置1は、ユーザの指示に応じて、特定された病変部位及び特定舌画像G10に対応する部位毎の治療画像G5を治療方法テーブルD6から取得して表示する。例えば、部位毎の参考患者画像G4とともに、図8Bで示すような「治療画像表示」操作子B3を表示し、この「治療画像表示」操作子B3へのユーザの操作によって、部位毎の治療画像G5を表示する。部位毎の治療画像G5は、図8Dで示す一般治療画像G3と同じ種類の情報を示す画像である。もっとも、一般治療画像G3は、特定の病変部位に特化した情報ではなく様々な病変部位について当てはまるような一般的な情報(「治療指針」、「治療穴と経過等」、舌画像)を示すが、部位毎の治療画像G5は、特定の病変部位に対応した(特化した)情報を示す。例えば、病変部位が肺であれば、肺の情報を示す。これによって、舌診の結果に対応するだけでなく、病変部位に対応する治療方法がユーザに表示され、患者の治療のために有益な情報を提供することができる。
【0072】
以下図8Cを参照して、治療方法テーブルD6について説明する。治療方法テーブルD6には、32個の舌IDに対応づけて、それぞれ一つの一般参考患者画像G2及び一般治療画像G3が登録されている。また、治療方法テーブルD6には、32個の舌IDに対応づけて、それぞれ5つの病変部位(肺、脾臓、心臓、腎臓、肝臓)が登録されている。そして、治療方法テーブルD6には、舌IDに対応する5つの病変部位毎に、部位毎の参考患者画像G4、部位毎の治療画像G5が登録されている。
【0073】
なお、治療方法テーブルD6には画像G2〜G5のデータが登録されているが、これに代えて、画像G2〜G5を特定するための画像のID(画像ID)が登録されていてもよい。この場合には、CPU18は、治療方法テーブルD6に登録されている画像IDを特定し、この画像IDに対応する画像G2〜G5のデータをHDD17から読み出してディスプレイ141に表示させる。
【0074】
(舌診支援装置の構成)
次に、図9を用いて舌診支援装置1の構成を説明する。図9は、本実施形態にかかる舌診支援装置1の内部構造の一例を示すブロック図である。本実施形態では、舌診支援装置1は、パーソナルコンピュータ等の汎用機である。舌診支援装置1は、ディスク駆動部11、通信部12、入力装置13、表示装置14a、スピーカ14b、ROM(Read Only Memory)15、RAM(Random Access Memory)16、HDD(ハードディスク)17及びCPU(Central Processing Unit)18を有する。各部11〜18は、内部バスによって信号の入出力可能に互いに接続されている。
【0075】
ディスク駆動部11は、光ディスク2等の記録媒体からプログラムやデータ等を入力するためのものである。通信部12は、通信インタフェースとして機能し、サーバ等の他の情報処理装置(図略)との間で有線又は無線の通信を行うことで、他の装置からプログラムやデータ等を受信する。入力装置13は、ユーザの操作を受け付けるためのものであり、例えば、マウスやキーボード等で構成されている。なお、入力装置13は、タッチパネル等を有していてもよい。表示装置14aは、例えば液晶表示装置であり、上記ディスプレイ141を備える。スピーカ14bは、CPU18から入力される音声信号に基づいて音声を出力する。ROM15は、舌診支援装置1を起動するための起動用プログラム(ブートプログラム)等を記憶する。RAM16は、CPU18の作業領域として機能する。
【0076】
HDD17は、上記望診リストテーブルD1、寒熱データベースD2、虚実データベースD3、詳細データベースD4、問診リストテーブルD5及び治療方法テーブルD6を記憶している。更に、HDD17は、舌診支援処理をCPU18に実行させるためのプログラム(舌診支援プログラムD7)と、各舌画像の画像データ(32個の舌画像データD8)を記憶している。舌診支援処理の詳細については図10及び図11を用いて後述する。また、32個の舌画像データD8は、データベースD2〜D4に登録されている舌IDが対応付けられている。なお、望診リストテーブルD1、寒熱データベースD2、虚実データベースD3、詳細データベースD4、問診リストテーブルD5、治療方法テーブルD6、舌診支援プログラムD7、及び舌画像データD8は、光ディスク2等の記録媒体から読み出してHDD17に記憶されてもよいし、通信部12を介して他の情報処理装置(図略)から取得して、HDD17に記憶されてもよい。
【0077】
CPU18は、HDD17に記憶されているプログラムを実行することで所定の処理を行う。例えば、CPU18は、上記舌診支援プログラムD7を実行することで、上記舌診支援処理を実行する。また、CPU18は、通信部12を用いて他の情報処理装置との間で通信を行う。そして、CPU18は、入力装置13から操作信号を入力し、この操作信号に基づいた処理を行う。また、CPU18は、表示装置14aに画像データを入力して、表示装置14aのディスプレイ141に画像を表示させる。例えば、CPU18は、表示装置14aに舌画像一覧G1を表示させたり、望診用設問一覧や、問診用設問一覧を表示させる。
【0078】
(第1の実施形態における舌診支援処理)
以下、図10及び図11を用いて、舌診支援処理を詳細に説明する。図10及び図11は、第1の実施形態にかかる舌診支援処理の一例を示すフローチャート(その1)及び(その2)である。
【0079】
図10を参照して、まず、CPU18は、望診リストテーブルD1(図6を参照)に登録されている各望診用設問を図5で示すようにディスプレイ141に表示させる(S1)。そして、CPU18は、ユーザの望診用設問に対する回答の入力と、この回答を確定するための入力とを入力装置13から受け付ける(S2)。この入力は、例えば、表示されているカーソル(図5を参照)で回答をチェックする操作をユーザが行うことで行われる。この後、CPU18は、図6を用いて上述した患者舌情報生成処理を行なう(S3)。これによって、寒熱患者舌特徴パラメータP4´、虚実患者舌特徴パラメータP5´及び患者舌詳細情報P6´が算出される。
【0080】
次に、CPU18は、問診用一覧の表示指示が入力装置13から入力されたか否かを判断する(S4)。そして、問診用一覧の表示指示が入力装置13から入力されたと判断した場合には(S4でYES)、CPU18は、問診リストテーブルD5(図8Aを参照)に登録されている問診用設問をディスプレイ141に表示させる(S5)。この後、CPU18は、問診用設問に対するユーザの回答の入力を入力装置13から受け付ける(S6)。そして、CPU18は、ステップS6で入力した回答に基づいて、図8Aを用いて上述した病変部位特定処理を実行する(S7)。これによって、患者の身体の病変部位が特定される。この後、CPU18は後述のステップS8に処理を進める。一方、問診用一覧の表示指示が入力装置13から入力されていないと判断した場合には(S4でNO)、CPU18は、上記ステップS5〜S7の処理を実行せずに後述のステップS8に処理を進める。
【0081】
ステップS8において、CPU18は、ステップS3で算出した寒熱患者舌特徴パラメータP4´と寒熱データベースD2とに基づいて、図7Aを用いて上述した寒熱属性決定処理を行う。この処理によって、患者の舌に対応する属性が寒属性であるか熱属性であるかが決定される。続いて、CPU18は、ステップS3で算出した虚実患者舌特徴パラメータP5´と虚実データベースD3とに基づいて、図7Bを用いて上述した虚実属性決定処理を行う(S9)。この処理によって、患者の舌に対応する属性が実属性であるか虚属性であるかが決定される。この後、ステップS8とステップS9とで判定した属性に基づいて、CPU18は、上述したグループ特定処理を行う(S10)。この処理によって、患者の舌の属性に対応するグループが実寒グループ、虚寒グループ、実熱グループ及び虚熱グループの中から特定される。
【0082】
CPU18は、ステップS3で算出した患者舌詳細情報P6´と詳細データベースD4とに基づいて、図7Cを用いて上述した対応舌画像特定処理を実行する(S11)。この処理によって、特定したグループの舌画像(8個の舌画像)の中から特定舌画像G10が特定される。
【0083】
この後、CPU18は、全ての舌画像データD8を舌IDの順番に並べて舌画像一覧G1を生成し、この後、図1で示すような舌画像一覧G1をディスプレイ141に表示させる(S12)。また、ステップS12において、CPU18は、舌画像一覧G1において、ステップS11で特定された特定舌画像G10を識別可能にディスプレイ141に表示させる。
【0084】
図11を参照して、この後、CPU18は、特定舌画像G10の変更指示を入力装置13から入力したか否かを判断する(S13)。例えば、ユーザがマウス等で異なる舌画像を選択する操作等を行うことで、この特定舌画像G10の変更指示が入力される。ここで、特定舌画像G10の変更指示を入力装置13から入力したと判断した場合には(S13でYES)、CPU18はこの変更指示に従って特定舌画像G10を変更してディスプレイ141に表示させる(S14)。この後、CPU18は後述のステップS15に処理を進める。一方、特定舌画像G10の変更指示を入力装置13から入力していないと判断した場合には(S13でNO)、CPU18は、上記ステップS14を実行することなく、後述のステップS15を実行する。
【0085】
ステップS15において、CPU18は、特定舌画像G10の確定指示を入力装置13から入力したか否かを判断する。特定舌画像G10の確定指示を入力装置13から入力していないと判断した場合には(S15でNO)、CPU18は処理をステップS13に戻す。特定舌画像G10の確定指示の入力があるまで、ステップS13からS15の処理が繰り返し行われる。
【0086】
また、特定舌画像G10の確定指示を入力装置13から入力したと判断した場合には(S15でYES)、CPU18は病変部位が特定されたか否かを判断する(S16)。ここで、ステップS7の病変部位特定処理自体が行われなかった場合だけでなく、病変部位特定処理を行ったが病変部位が特定されなかった場合にも、ステップS16でNOと判断される。
【0087】
病変部位が特定されていないと判断した場合には(S16でNO)、CPU18は、特定舌画像G10の舌IDで治療方法テーブルD6を検索することで、舌IDに対応する一般参考患者画像G2を取得する。そして、CPU18は、取得した一般参考患者画像G2をディスプレイ141に表示させる(S17)。
【0088】
次に、CPU18は、治療方法の表示指示を入力装置13から入力したか否かを判断する(S18)。なお、例えば、ステップS17において、図8Bで示すような「治療画像表示」操作子B3が表示され、この操作子B3を選択する操作をユーザが行ったときに、CPU18には治療方法の表示指示が入力装置13から入力される。
【0089】
治療方法の表示指示を入力装置13から入力したと判断したときには(S18でYES)、CPU18は、治療方法テーブルD6を特定舌画像G10の舌IDで検索して、この舌IDに対応する一般治療画像G3を取得する。そして、取得した一般治療画像G3をディスプレイ141に表示させる(S19)。この後、CPU18は、後述のステップS20に処理を進める。一方、治療方法の表示指示を入力装置13から入力していないと判断したときには(S18でNO)、CPU18は、上記ステップS19を実行することなく、後述のステップS20の処理を進める。
【0090】
ステップS20において、CPU18は、舌画像一覧G1に表示を戻す指示を入力装置13から入力したか否かを判断する。例えば、図8B及び図8Dで示すように、一般参考患者画像G2が表示されているときにも、一般治療画像G3が表示されているときにも、「舌画像一覧に戻る」操作子B4と、「終了」操作子B5とが表示される。そして、「舌画像一覧に戻る」操作子B4を選択する操作をユーザが行ったときに、CPU18には、舌画像一覧G1に表示を戻す指示が入力装置13から入力される。
【0091】
そして、舌画像一覧G1に表示を戻す指示を入力装置13から入力したと判断したときには(S20でYES)、CPU18は、処理を図10のステップS12に戻し、再度舌画像一覧G1をディスプレイ141に表示させる。一方、舌画像一覧G1に表示を戻す指示を入力装置13から入力していないと判断したときには(S20でNO)、CPU18は、舌診支援処理を終了する。なお、本実施形態では、「終了」操作子B5を選択する操作をユーザが行ったときに、CPU18はステップS20でNOと判断する。
【0092】
次に、ステップS16でYESの場合の処理について説明する。病変部位が特定されていると判断した場合には(S16でYES)、CPU18は、ステップS7において特定された病変部位と特定舌画像G10の舌IDとで、治療方法テーブルD6を検索し、この病変部位及び舌IDに対応する部位毎の参考患者画像G4を取得する。そして、CPU18は取得した部位毎の参考患者画像G4をディスプレイ141に表示させる(S21)。なお、本実施形態では、病変部位が複数ある場合には、部位毎の参考患者画像G4が複数ディスプレイ141に表示される。
【0093】
この後、CPU18は、治療方法の表示指示を入力装置13から入力したか否かを判断する(S22)。なお、例えば、ステップS21において、図8Bで示すような治療画像表示の操作子B3が表示され、この操作子B3を選択する操作等をユーザが行ったときに、CPU18には治療方法の表示指示が入力装置13から入力される。
【0094】
治療方法の表示指示を入力装置13から入力したと判断したときには(S22でYES)、CPU18は、ステップS7において特定された病変部位と特定舌画像G10の舌IDとで、治療方法テーブルD6を検索し、この病変部位及び舌IDに対応する部位毎の治療画像G5を取得する。そして、CPU18は取得した部位毎の治療画像G5をディスプレイ141に表示させる(S23)。なお、本実施形態では、病変部位が複数ある場合には、部位毎の治療画像G5が複数ディスプレイ141に表示される。
【0095】
この後、CPU18は、上記ステップS20に処理を進める。一方、治療方法の表示指示を入力装置13から入力していないと判断したときには(S22でNO)、CPU18は、上記ステップS23を実行することなく、上記ステップS20に処理を進める。
【0096】
なお、上記ステップS20において、CPU18は、舌画像一覧G1に表示を戻す指示を入力装置13から入力したか否かを判断する。ここで、部位毎の参考患者画像G4が表示されているときにも、部位毎の治療画像G5が表示されているときにも、例えば、図8B及び図8Dで示すような「舌画像一覧に戻る」操作子B4と、「終了」操作子B5とが表示される。そして、「舌画像一覧に戻る」操作子B4をマウス等で選択する操作をユーザが行ったときに、CPU18には、舌画像一覧G1に表示を戻す指示が入力装置13から入力される。なお、本実施形態では、「終了」操作子B5をマウス等で選択する操作をユーザが行ったときに、CPU18はステップS20でNOと判断する。
【0097】
そして、上述したように、舌画像一覧G1に表示を戻す指示を入力装置13から入力したと判断したときには(S20でYES)、CPU18は、処理を図10のステップS12に戻し、再度舌画像一覧G1を表示する。一方、舌画像一覧G1に表示を戻す指示を入力装置13から入力していないと判断したときには(S20でNO)、CPU18は、舌診支援処理を終了する。
【0098】
上述したように、本実施形態では、特定舌画像G10を特定するために、まず、患者の舌の属性に対応するグループを特定する。そして、この特定したグループの舌画像のみから、特定舌画像G10を特定する。このように、特定舌画像G10を特定するために、予め患者の舌に対応する属性の舌画像に判断対象を絞り、絞った判断対象の中から特定舌画像G10が特定される。このため、処理負荷が軽く、迅速に特定舌画像G10の特定を行うことができる。
【0099】
また、互いに異なった属性を有する複数の舌画像が、同じ舌画像詳細情報を持つ場合も時折生じるが、このような場合でも、全く異なった属性の舌画像を、特定舌画像G10に特定してしまうことを効果的に防止することができる。これによって、迅速に特定舌画像G10を特定することができるだけでなく、精度良く特定舌画像G10を特定することができる。
【0100】
更に、本実施形態では、複数の舌画像をマトリクス状に一覧表示し、かつこれらの舌画像の中から特定舌画像G10を識別可能に表示する。更に、このマトリクスにおける縦方向(列方向)において、実属性及び虚属性のレベルに応じた順番で舌画像が並べられ、横方向(行方向)において、寒属性及び熱属性のレベルに応じた順番で舌画像が並べられている。そして、ユーザの操作に応じて、特定舌画像G10を変更することができる。ここで、特定舌画像G10の周辺(周囲)の舌画像は、大抵は特定舌画像G10と同じ属性であり、かつその属性のレベルも特定舌画像G10に似ている。このため、ユーザは、特定舌画像G10が患者の舌にやや合致しないと判断したときに、特定舌画像G10をその周辺に配置された舌画像に変更することで、舌画像の特定を微調整することができる。
【0101】
〔第2の実施形態〕
以下に、本発明の第2の実施形態を図10、図11及び図12を参照して説明する。
第1の実施形態では、舌診支援装置1は、舌画像一覧G1として全ての(32個)の舌画像を表示していた。そして、舌診支援装置1は、対応舌画像特定処理を実行することで、患者の舌に対応する一つの舌画像を特定舌画像G10として特定して識別可能に表示していた。しかしながら、第2の実施形態では、舌診支援装置1は、特定舌画像G10の特定(対応舌画像特定処理)を行わない。そして、舌診支援装置1は、全ての舌画像ではなく、患者の舌に対応するグループの舌画像のみを一覧表示する。第2の実施形態では、ユーザが、この表示された舌画像の一覧の中から、一つの舌画像を選択し、舌診支援装置1は、この選択された一つの舌画像を特定舌画像G10として特定する。
【0102】
〔第2の実施形態における舌診支援処理〕
図12は、第2の実施形態にかかる舌診支援処理の一例を示すフローチャート(その1)である。第2の実施形態にかかる舌診支援処理において、図10で示した第1の実施形態にかかる舌診支援処理と同じ処理をするステップについては同じ符号を付与する。また、第2の実施形態にかかる舌診支援処理は、以下に説明する点を除けば、第1の実施形態にかかる舌診支援処理と同じであり、かかる同じ部分については説明を省略する。
【0103】
まず、図10と図12を参照して、第2の実施形態にかかる舌診支援処理においては、まず、ステップS3に代えてステップS31を実行する点が、第1の実施形態にかかる舌診支援処理とは異なっている。ステップS3では、寒熱患者舌特徴パラメータP4´、虚実患者舌特徴パラメータP5´の他、患者舌詳細情報P6´を算出するが、ステップS31では、寒熱患者舌特徴パラメータP4´、虚実患者舌特徴パラメータP5´のみを算出し、患者舌詳細情報P6´を算出しない。このため、図6の望診リストテーブルD1には、詳細パラメータP3が登録されない。
【0104】
また、第2の実施形態にかかる舌診支援処理においては、第1の実施形態にかかる舌診支援処理のステップS11を実行しない。すなわち、対応舌画像特定処理を実行しない。このため、HDD17は図7Cで示す詳細データベースD4を記憶しない。本実施形態では、患者の舌に対応する舌画像の特定を、舌診支援装置1ではなくユーザが行なうからである。
【0105】
そして、第2の舌診支援処理では、ステップS12に代えてステップS32を実行する点が、第1の実施形態にかかる舌診支援処理とは異なっている。ステップS12では、全ての舌画像(32個の舌画像)の全てを一覧表示するための処理を行なうが、ステップS32では、ステップS10のグループ特定処理で特定されたグループの舌画像のみを一覧表示する。例えば、図1を参照すると、左側4行×上2列の8個の舌画像(実寒グループ)、右側4行×上2列の8個の舌画像(実熱グループ)、左側4行×下2列の8個の舌画像(虚寒グループ)、及び右側4行×下2列の8個の舌画像(虚熱グループ)のうちの、何れかのみが表示されることになる。
【0106】
図10、図11及び図12を参照して、第2の舌診支援処理では、ステップS32とステップS13の間に、ステップS33、S34を実行する。すなわち、CPU18は、舌画像の特定の指示を入力装置13から入力したか否かを判断する(S33)。なお、舌画像の特定の指示は、ユーザがマウス等で舌画像を選択する操作を行ったときにCPU18に入力される。ここで、CPU18は、舌画像の特定の指示を入力装置13から入力した(ステップS33でYES)と判断するまで、繰り返しステップS33を実行する。そして、画像の特定の指示を入力装置13から入力したと判断した場合に(ステップS33でYES)、CPU18は、舌画像の特定の指示に合致した一つの舌画像を選択し、この舌画像を特定舌画像G10としてディスプレイ141に表示させる(S34)。この後、CPU18は、図11のステップS13に処理を進める。
【0107】
本実施形態では、ディスプレイ141には、患者の舌に対応するグループの舌画像(同じ属性の舌画像)のみを表示する。このため、ユーザは、患者の舌の属性に合致したグループの舌画像のみから特定舌画像G10を選択することができるため、「舌診」に熟練した技能を持たない医師等のユーザであっても精度良く、舌診を行なうことができる。
【0108】
〔変形例〕
(1)第1の実施形態において、舌画像一覧G1においてHDD17に記憶されている全ての舌画像データD8の舌画像を表示しているが、この構成に限定されない。例えば、特定舌画像G10の周囲の所定個数の舌画像のみを表示してもよいし、患者の舌に対応するとして特定されたグループの舌画像のみ表示してもよい。
【0109】
(2)第1の実施形態において、舌画像一覧G1を表示しているが、必ず表示しなくてもよい。特定舌画像G10として特定された舌画像のみを表示する構成であってもよい。
【0110】
(3)第1及び第2の実施形態において、複数の舌画像は、寒属性及び熱属性の何れかに対応付けられており、かつ実属性及び虚属性の何れかに対応付けられている。しかしながら、舌画像が対応付けられる属性は、必ずしもこれらの属性に限定されない。例えば、中医学における陰又は陽を表す他の属性(例えば、表裏等)に対応付けられていてもよい。
【0111】
(4)第1の実施形態において、舌画像一覧G1はマトリクス状に表示されているが、必ずしもマトリクス状に表示されなくてもよい。例えば、マトリクスが90度回転したようなひし形状等に、舌画像一覧G1が表示されていてもよい。
【0112】
(5)グループは4つ(実寒グループ、虚寒グループ、実熱グループ及び虚熱グループ)でなくてもよい。例えば、左4列×第1行の4個の舌画像を第1の実寒グループ、左4列×第2行の4個の舌画像を第2の実寒グループとする等のように更に細かいグループに分割してもよい。
【0113】
(6)舌診支援装置1は、パーソナルコンピュータに限定されず、携帯電話、PDA、ゲーム機等であってよい。また、舌診支援装置1は、汎用機に限定されず、舌診の支援のための専用機であってもよい。
【0114】
(7)舌診支援装置1は、単一の情報処理装置で構成されるに限定されず、複数の装置で構成されてもよい。例えば、舌診支援装置1は、情報処理装置と、この情報処理装置とは別体の表示装置や、入力装置とで構成されてもよい。また、舌診支援装置1は、複数の情報処理装置で構成されてもよい。例えば、上述した舌診支援処理の一部の処理が、サーバで負担されてもよい。
【0115】
(8)上記第1及び第2の実施形態の構成は、あくまで本発明の一例であり、同じ目的及び効果を達成することができれば、上述した第1及び第2の実施形態の構成とは同一ではなくてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 舌診支援装置(本発明の情報処理装置の一例)
13 入力装置
14 表示装置(本発明の出力装置の一例)
16 RAM(本発明の記憶部の一例)
17 HDD(本発明の記憶部の一例)
18 CPU(本発明の生成手段、グループ特定手段、出力手段、舌画像特定手段、変更手段、部位特定手段、および治療情報表示処理手段の一例)
D1 舌診支援プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舌画像の特徴を表し、かつ当該舌画像の属性に応じて複数のグループのうち何れかに分類された舌画像特徴パラメータを、複数種類の前記舌画像分だけ記憶する記憶部、入力装置及び出力装置を備えた情報処理装置のコンピュータを、
前記入力装置からの入力情報に基づいて、患者の舌の特徴を表す患者舌特徴パラメータを生成する生成手段、
前記記憶部に記憶されている複数の前記舌画像特徴パラメータと前記患者舌特徴パラメータとに基づいて、前記患者の舌の属性に合致した前記グループを前記複数のグループの中から特定するグループ特定手段、および
前記特定されたグループに基づいて、前記舌画像に関連する情報を前記出力装置から出力する出力手段、
として機能させる舌診断支援プログラム。
【請求項2】
前記記憶部は、前記複数の舌画像を記憶し、
前記出力装置は、表示装置であり、
前記コンピュータを、
前記グループ特定手段によって特定されたグループに対応する属性の前記舌画像の中から、前記患者の舌に対応する一つの前記舌画像を特定する舌画像特定手段として更に機能させ、
前記出力手段は、前記舌画像特定手段によって特定された舌画像を示すように、前記複数の舌画像のうちの一部又は全部を前記記憶部から読み出して前記表示装置に表示させる、
請求項1に記載の舌診断支援プログラム。
【請求項3】
前記記憶部は、互いに対極な前記属性である第1属性及び第2属性と、互いに対極な前記属性である第3属性及び第4属性とに応じた前記複数のグループの何れかに分類された、前記複数の舌画像特徴パラメータを記憶し、
前記出力手段は、縦方向において前記第1属性及び前記第2属性のレベルに応じた順番に配置し、横方向において前記第3属性及び前記第4属性のレベルに応じた順番に配置するよう、前記複数の舌画像の少なくとも一部をマトリクス状に並べて前記表示装置に表示し、
前記コンピュータを、
前記特定された舌画像を変更する操作を前記入力装置で受け付けた場合に、前記出力手段によって表示された複数の舌画像のうち何れかに前記特定された舌画像を変更する変更手段、として機能させる、
請求項3に記載の舌診断支援プログラム。
【請求項4】
前記記憶部は、前記複数の舌画像を記憶し、
前記出力装置は、表示装置であり、
前記出力手段は、前記グループ特定手段によって特定されたグループを示すように、前記複数の舌画像のうちの一部又は全部を前記記憶部から読み出して前記表示装置に表示させる、
請求項1に記載の舌診断支援プログラム。
【請求項5】
前記生成手段は、患者の舌の特徴に関するユーザの望診結果を表す望診情報を前記入力装置から入力した場合に、この望診情報に基づいて前記患者舌特徴パラメータを算出する、
請求項1〜4の何れかに記載の舌診断支援プログラム。
【請求項6】
前記グループ特定手段は、前記グループの特定のために、前記複数の舌画像特徴パラメータを教師データとして用い、サポートベクターマシンを含む所定の機械学習アルゴリズムに基づいて、前記患者舌特徴パラメータを前記複数のグループの何れかに分類する、
請求項1〜5の何れかに記載の舌診断支援プログラム。
【請求項7】
前記記憶部は、前記複数種類の舌画像毎に、前記患者の身体における複数の部位に対応する複数の治療情報を記憶し、
前記コンピュータを、
前記入力情報とは別に、前記患者への問診結果を表す問診情報が前記入力装置から入力されたときに、前記患者の身体における複数の部位のなかから治療が必要な部位を前記問診情報に基づいて特定する部位特定手段、および
前記入力装置において、前記舌画像特定手段によって特定された舌画像と、前記部位特定手段によって特定された部位とに対応する前記治療情報を、前記記憶部から取得して前記表示装置に表示させる治療情報表示処理手段、
として、更に機能させる請求項3又は4に記載の舌診断支援プログラム。
【請求項8】
入力装置及び出力装置を備えた舌診支援装置であって、
舌画像の特徴を表し、かつ当該舌画像の属性に応じて複数のグループのうち何れかに分類された舌画像特徴パラメータを、複数種類の前記舌画像分だけ記憶する記憶部、
前記入力装置からの入力情報に基づいて、患者の舌の特徴を表す患者舌特徴パラメータを生成する生成手段、
前記記憶部に記憶されている複数の前記舌画像特徴パラメータと前記患者舌特徴パラメータとに基づいて、前記患者の舌の属性に合致した前記グループを前記複数のグループの中から特定するグループ特定手段、および
前記特定されたグループに基づいて、前記舌画像に関連する情報を前記出力装置から出力する出力手段、
を備えた舌診支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−17660(P2013−17660A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153433(P2011−153433)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(511169173)
【出願人】(511169623)
【Fターム(参考)】